ロボット、搬送装置、及び慣性センサーを用いた制御方法
【課題】慣性センサーの出力の誤差によって制御装置が情報を誤認識することで、正しい制御が損なわれることを抑制することができるロボット、搬送装置、及び慣性センサーを用いた制御方法を提供する。
【解決手段】搬送装置は、移動部と、移動部の駆動源と、駆動源の位置情報を出力する位置センサーと、移動部が移動させられる際の慣性力情報を出力する慣性センサーと、移動部の移動を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備える搬送装置であって、移動部の移動動作を制御する際に、慣性力情報を用いるか否かを決定する制御切替決定部と、制御切替決定部が慣性力情報を用いることを決定した場合には、制御指令、位置情報、及び慣性力情報に拠って第一の制御を実施し、制御切替決定部が、慣性力情報を用いないことを決定した場合には、制御指令、及び位置情報に拠って第一の制御とは異なる第二の制御を実施する動作制御部と、を備える。
【解決手段】搬送装置は、移動部と、移動部の駆動源と、駆動源の位置情報を出力する位置センサーと、移動部が移動させられる際の慣性力情報を出力する慣性センサーと、移動部の移動を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備える搬送装置であって、移動部の移動動作を制御する際に、慣性力情報を用いるか否かを決定する制御切替決定部と、制御切替決定部が慣性力情報を用いることを決定した場合には、制御指令、位置情報、及び慣性力情報に拠って第一の制御を実施し、制御切替決定部が、慣性力情報を用いないことを決定した場合には、制御指令、及び位置情報に拠って第一の制御とは異なる第二の制御を実施する動作制御部と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームの先端に取り付けられた端末装置を所望の位置に移動させるロボット、移動部材に取り付けられた端末装置を所望の位置に移動させる搬送装置、及びこれらの装置を制御する慣性センサーを用いた制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アームを回動などさせることによってアームの先端に取り付けられた端末装置を所望の位置に移動させて、当該位置において、端末装置を稼動させるロボットなどの装置が知られている。例えば、把持端末を備え、加工装置に対して被加工部材を給除材する給除材装置や、塗装端末を備えた塗装ロボットや、溶接端末を備えた溶接ロボットなどが知られている。
ロボットを駆動させる際には、ロボットのアームを駆動するモーターなどの駆動源の回転角度を測定し、測定した角度情報に基づいてアームの先端位置などを制御する制御方法が用いられている。しかし、駆動源からアームに駆動力を伝達する伝達機構やアームは剛体ではないことに起因して、伝達機構やアームが変形するために、角度情報に基づいて位置制御されたアームの先端側の位置が必ずしも実際の位置と一致しない場合があった。また、動作時に伝達機構やアームが変形することによって、振動を生ずるという問題があった。これらの問題に対し、アーム先端に慣性センサーを取り付けて先端の動きを測定し、得られた慣性センサーによる角速度情報を制御に用いる方法が考案されている。特許文献1には、慣性センサーの出力信号によってアームの動作を制御することによって、剛性が低い場合でも高精度の位置決めができると共に、振れによる精度低下を防止することができる多関節ロボットの制御方法及び多関節ロボットが開示されている。
【0003】
しかし、慣性センサーの出力からアームの回動角度を求めるためには、慣性センサーの出力を積分する必要があり、積分を繰り返すと慣性センサーの基準電位のドリフトの影響を受けやすくなり、制御装置が情報を誤認識する可能性が高くなるという課題があった。特許文献2には、角度センサーの出力の低周波成分を用いて、角速度センサーの出力は出力の積分値の高周波成分のみを制御に用いることによって、基準電位のドリフトなどの低周波で変動する誤差要因を排除したロボット制御装置およびロボットの制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−9374号公報
【特許文献2】特開2005−242794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、慣性センサーの出力には、ノイズの影響や、信号伝達の遅延の影響などによる誤差が含まれる可能性があり、これらの誤差によって制御装置が情報を誤認識する可能性が高くなるという課題があった。慣性センサーのノイズの影響や、信号伝達の遅延の影響などは高周波でも起こる現象であり、特許文献2に開示された制御装置や制御方法では対応できない課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかるロボットは、一端を回動自在に支持されたアームと、前記アームを回動させるための駆動源と、前記駆動源の回動角度を検出し、前記駆動源の回動角度情報を出力する角度センサーと、前記アームに取り付けられており、前記アームが回動する角速度を検出して前記アームの角速度情報を出力する慣性センサーと、前記アームの回動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備えるロボットであって、制御切替決定部と、アーム動作制御部と、を備え、前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記アームの動作を制御する際に、前記角速度情報を用いるか否かを決定し、前記アーム動作制御部は、前記制御切替決定部が、前記角速度情報を用いることを決定した場合には、前記制御指令、前記回動角度情報、及び前記角速度情報に拠って第一の制御を実施することで前記駆動源を制御して前記アームの動作を制御し、前記制御切替決定部が、前記角速度情報を用いないことを決定した場合には、前記制御指令、及び前記回動角度情報に拠って前記第一の制御とは異なる第二の制御を実施することで、前記駆動源を制御して前記アームの動作を制御することを特徴とする。
【0008】
本適用例にかかるロボットによれば、制御切替決定部が、アームの動作を制御する際に、角速度情報を用いるか否かを決定し、アーム動作制御部は、制御切替決定部の決定に従って、制御指令、回動角度情報、及び角速度情報に拠って第一の制御を、又は制御指令及び回動角度情報、に拠って第二の制御を実施する。これにより、適切な制御を実施するために、角速度情報を用いることによる効果が大きい場合と効果が小さい場合とで、又は角速度情報の誤差が比較的大きい場合と小さい場合とで、角速度情報を適切に使用した又は使用しない制御を選択して実施することができる。また、角速度情報を用いることが効果的な制御方法を選択して実施することができる。
第一の制御は、制御指令、回動角度情報、及び角速度情報を用いることで、振動などを抑制できる制御方法であって、例えば状態フィードバック制御と呼ばれる制御方法である。第二の制御は、制御指令及び回動角度情報を用いて安定して目的の位置に到達させることができる制御方法であって、例えば角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID(Proportional Integral Differential)制御などである。
【0009】
[適用例2]本適用例にかかるロボットは、一端を回動自在に支持されたアームと、前記アームを回動させるための駆動源と、前記駆動源の回動角度を検出することによって、前記駆動源の回動角度情報を出力する角度センサーと、前記アームに取り付けられており、前記アームが回動する角速度を検出して前記アームの角速度情報を出力する慣性センサーと、前記アームの回動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備えるロボットであって、制御切替決定部と、アーム動作制御部と、を備え、前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記アームの動作を制御する際の、前記角速度情報の重み付け定数を決定し、前記アーム動作制御部は、前記制御指令、前記回動角度情報、及び前記制御切替決定部が決定した前記重み付け定数を乗じた前記角速度情報に拠って、前記駆動源を制御することによって前記アームの動作を制御することを特徴とする。
【0010】
本適用例にかかるロボットによれば、制御切替決定部が、角速度情報の重み付け定数を決定し、アーム動作制御部は、制御指令、回動角度情報、及び制御切替決定部が決定した重み付け定数を乗じた角速度情報を用いてアームの動作を制御する。これにより、適切な制御を実施することに対して、角速度情報を用いることによる効果及び角速度情報の誤差が及ぼす影響を総合的に考慮して重み付け定数を決定することで、総合的に角速度情報を用いることによる効果が大きくなり、角速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、アームの動作の制御を実施することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかるロボットは、前記角速度情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記角速度情報を当該閾値と比較して、前記角速度情報を用いるか否かを、又は前記角速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0012】
このロボットによれば、角速度情報を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かが、又は角速度情報の重み付け定数が決定される。角速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、角速度が小さくなると、角速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる角速度情報の誤差の影響を受け、角度情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。角速度情報を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かを、又は角速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に角速度情報を用いることによる効果が大きくなり、角速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、アームの動作の制御を実施することができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかるロボットは、前記回動角度情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記回動角度情報を当該閾値と比較して、前記角速度情報を用いるか否かを、又は前記角速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0014】
このロボットによれば、回動角度情報を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かが、又は角速度情報の重み付け定数が決定される。角速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、回動角度が大きくなって目的の角度に近づいた状態では、角速度が小さくなり、角速度が小さくなると、角速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる角速度情報の誤差の影響を受け、角度情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。回動角度情報を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かを、又は角速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に角速度情報を用いることによる効果が大きくなり、角速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、アームの動作の制御を実施することができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかるロボットは、前記角速度情報の一回以上の積分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記角速度情報の一回以上の積分値を当該閾値と比較して、前記角速度情報を用いるか否かを、又は前記角速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0016】
このロボットによれば、角速度情報の一回以上の積分値を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かが、又は角速度情報の重み付け定数が決定される。角速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、角速度が小さくなると、角速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる角速度情報の誤差の影響を受け、角度情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。角速度情報の一回以上の積分値を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かを、又は角速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に角速度情報を用いることによる効果が大きくなり、角速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、アームの動作の制御を実施することができる。角速度情報の一回以上の積分値を閾値と比較することは、角速度情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。角速度情報の一回以上の積分値を扱うことで、回動角度情報などと単位を共通にして扱いやすくすることができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかるロボットは、前記回動角度情報の一回以上の微分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記回動角度情報の一回以上の微分値を当該閾値と比較して、前記角速度情報を用いるか否かを、又は前記角速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0018】
このロボットによれば、回動角度情報の一回以上の微分値を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かが、又は角速度情報の重み付け定数が決定される。角速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、回動角度が大きくなって目的の角度に近づいた状態では、角速度が小さくなり、角速度が小さくなると、角速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる角速度情報の誤差の影響を受け、角度情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。角度情報の一回以上の微分値を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かを、又は角速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に角速度情報を用いることによる効果が大きくなり、角速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、アームの動作の制御を実施することができる。回動角度情報の一回以上の微分値を閾値と比較することは、回動角度情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。回動角度情報の一回以上の微分値を扱うことで、角速度情報などと単位を共通にして扱いやすくすることができる。
【0019】
[適用例7]上記適用例にかかるロボットは、前記制御指令の特徴点をもとに時間軸における閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記特徴点からの経過時間を当該閾値と比較して、前記角速度情報を用いるか否かを、又は前記角速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0020】
このロボットによれば、制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かが、又は角速度情報の重み付け定数が決定される。角速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、角速度が小さくなると、角速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる角速度情報の誤差の影響が大きくなる。制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かを、又は角速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に角速度情報を用いることによる効果が大きくなり、角速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、アームの動作の制御を実施することができる。
例えば移動する目的の位置のような制御指令の特徴点から一定以上の時間が経過すると、角速度情報の値は、制御指令において規定された特徴点における角速度の値となる。制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較することで、角速度情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。経過時間を基準とすることで、角速度情報などを閾値と比較する場合にくらべて、制御を簡単にすることができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例にかかるロボットは、前記角速度情報に影響を与えるノイズに閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記角速度情報に影響を与えるノイズを当該閾値と比較して、前記角速度情報を用いるか否かを、又は前記角速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0022】
このロボットによれば、角速度情報に影響を与えるノイズを閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かが、又は角速度情報の重み付け定数が決定される。角速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、角速度情報に影響を与えるノイズが大きくなると、ノイズなどによる角速度情報の誤差の影響が大きくなるため、角速度情報を用いる効果が減少する。角速度情報に影響を与えるノイズを閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かを、又は角速度情報の重み付け定数を決定することで、角速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、アームの動作の制御を実施することができる。
【0023】
[適用例9]本適用例にかかる搬送装置は、摺動自在に支持された移動部と、前記移動部を移動させるための駆動源と、前記駆動源による駆動量を検出し、前記駆動源の位置情報を出力する位置センサーと、前記移動部に取り付けられており、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する加速度の加速度情報を出力する慣性センサーと、前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備える搬送装置であって、制御切替決定部と、動作制御部と、を備え、前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際に、前記加速度情報を用いるか否かを決定し、前記動作制御部は、前記制御切替決定部が、前記加速度情報を用いることを決定した場合には、前記制御指令、前記位置情報、及び前記加速度情報に拠って第一の制御を実施することで前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御し、前記制御切替決定部が、前記加速度情報を用いないことを決定した場合には、前記制御指令、及び前記位置情報に拠って前記第一の制御とは異なる第二の制御を実施することで、前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御することを特徴とする。
【0024】
本適用例にかかる搬送装置によれば、制御切替決定部が、移動部の移動動作を制御する際に、加速度情報を用いるか否かを決定し、動作制御部は、制御切替決定部の決定に従って、制御指令、位置情報、及び加速度情報に拠って第一の制御を、又は制御指令及び位置情報、に拠って第二の制御を実施する。これにより、適切な制御を実施するために、加速度情報を用いることによる効果が大きい場合と効果が小さい場合とで、又は加速度情報の誤差が比較的大きい場合と小さい場合とで、加速度情報を適切に使用した又は使用しない制御を選択して実施することができる。また、加速度情報を用いることが効果的な制御方法を選択して実施することができる。
第一の制御は、制御指令、位置情報、及び加速度情報を用いることで、振動などを抑制できる制御方法であって、例えば状態フィードバック制御と呼ばれる制御方法である。第二の制御は、制御指令及び位置情報を用いて安定して目的の位置に到達させることができる制御方法であって、例えば角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID制御などである。
【0025】
[適用例10]本適用例にかかる搬送装置は、摺動自在に支持された移動部と、前記移動部を移動させるための駆動源と、前記駆動源による駆動量を検出し、前記駆動源の位置情報を出力する位置センサーと、前記移動部に取り付けられており、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する加速度の加速度情報を出力する慣性センサーと、前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備える搬送装置であって、制御切替決定部と、動作制御部と、を備え、前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際の、前記加速度情報の重み付け定数を決定し、前記動作制御部は、前記制御指令、前記位置情報、及び前記制御切替決定部が決定した前記重み付け定数を乗じた前記加速度情報に拠って、前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御することを特徴とする。
【0026】
本適用例にかかる搬送装置によれば、制御切替決定部が、加速度情報の重み付け定数を決定し、動作制御部は、制御指令、位置情報、及び制御切替決定部が決定した重み付け定数を乗じた加速度情報を用いて移動部の移動動作を制御する。これにより、適切な制御を実施することに対して、加速度情報を用いることによる効果及び加速度情報の誤差が及ぼす影響を総合的に考慮して重み付け定数を決定することで、総合的に加速度情報を用いることによる効果が大きくなり、加速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【0027】
[適用例11]上記適用例にかかる搬送装置は、前記加速度情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部が、前記加速度情報を当該閾値と比較して、前記加速度情報を用いるか否かを、又は前記加速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0028】
この搬送装置によれば、加速度情報を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かが、又は加速度情報の重み付け定数が決定される。加速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、加速度が小さくなると、加速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる加速度情報の誤差の影響を受け、位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。加速度情報を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かを、又は加速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に加速度情報を用いることによる効果が大きくなり、加速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【0029】
[適用例12]上記適用例にかかる搬送装置は、前記位置情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部が、前記位置情報を当該閾値と比較して、前記加速度情報を用いるか否かを、又は前記加速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0030】
この搬送装置によれば、位置情報を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かが、又は加速度情報の重み付け定数が決定される。加速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、移動量が一定の量より大きくなって等速で移動する位置において移動している状態や、目的の位置に近づいて移動速度が小さくなった状態では、加速度が小さくなる。加速度が小さくなると、加速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる加速度情報の誤差の影響を受け、位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。位置情報を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かを、又は加速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に加速度情報を用いることによる効果が大きくなり、加速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【0031】
[適用例13]上記適用例にかかる搬送装置は、前記加速度情報の一回以上の積分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部が、前記加速度情報の一回以上の積分値を当該閾値と比較して、前記加速度情報を用いるか否かを、又は前記加速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0032】
この搬送装置によれば、加速度情報の一回以上の積分値を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かが、又は加速度情報の重み付け定数が決定される。加速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、加速度が小さくなると、加速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる加速度情報の誤差の影響を受け位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。加速度情報の一回以上の積分値を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かを、又は加速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に加速度情報を用いることによる効果が大きくなり、加速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。加速度情報の一回以上の積分値を閾値と比較することは、加速度情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。加速度情報の一回以上の積分値を扱うことで、位置情報などと単位を共通にして扱いやすくすることができる。
【0033】
[適用例14]上記適用例にかかる搬送装置は、前記位置情報の一回以上の微分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部が、前記位置情報の一回以上の微分値を当該閾値と比較して、前記加速度情報を用いるか否かを、又は前記加速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0034】
この搬送装置によれば、位置情報の一回以上の微分値を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かが、又は加速度情報の重み付け定数が決定される。加速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、移動量が一定の量より大きくなって等速で移動する位置において移動している状態や、目的の位置に近づいて移動速度が小さくなった状態では、加速度が小さくなり、加速度が小さくなると、加速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる加速度情報の誤差の影響を受け、位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。位置情報の一回以上の微分値を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かを、又は加速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に加速度情報を用いることによる効果が大きくなり、加速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。位置情報の一回以上の微分値を閾値と比較することは、位置情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。位置情報の一回以上の微分値を扱うことで、加速度情報などと単位を共通にして扱いやすくすることができる。
【0035】
[適用例15]上記適用例にかかる搬送装置は、前記制御指令の特徴点をもとに時間軸における閾値を予め設定し、前記制御切替決定部が、前記特徴点からの経過時間を当該閾値と比較して、前記加速度情報を用いるか否かを、又は前記加速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0036】
この搬送装置によれば、制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かが、又は加速度情報の重み付け定数が決定される。加速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、加速度が小さくなると、加速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる加速度情報の誤差の影響を受け位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かを、又は加速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に加速度情報を用いることによる効果が大きくなり、加速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
例えば移動する目的の位置のような制御指令の特徴点から一定以上の時間が経過すると、加速度情報の値は、制御指令において規定された特徴点における加速度の値となる。制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較することで、加速度情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。経過時間を基準とすることで、加速度情報などを閾値と比較する場合にくらべて、制御を簡単にすることができる。
【0037】
[適用例16]上記適用例にかかる搬送装置は、前記加速度情報に影響を与えるノイズに閾値を予め設定し、前記制御切替決定部が、前記加速度情報に影響を与えるノイズを当該閾値と比較して、前記加速度情報を用いるか否かを、又は前記加速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0038】
この搬送装置によれば、加速度情報に影響を与えるノイズを閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かが、又は加速度情報の重み付け定数が決定される。加速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、加速度情報に影響を与えるノイズが大きくなると、ノイズなどによる加速度情報の誤差の影響が大きくなるため、加速度情報を用いる効果が減少する。加速度情報に影響を与えるノイズを閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かを、又は加速度情報の重み付け定数を決定することで、加速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【0039】
[適用例17]本適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、回動又は摺動自在に支持された移動部を、前記移動部を回動又は摺動させるための駆動源を、前記移動部に配設された慣性センサーの出力を用いて制御する慣性センサーを用いた制御方法であって、前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生工程と、前記駆動源の位置情報を検出する位置情報検出工程と、前記慣性センサーによって、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する慣性力情報を検出する慣性力情報検出工程と、前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際に、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する制御切替決定工程と、前記制御切替決定工程において、前記慣性力情報を用いることが決定された場合には、前記位置情報及び前記慣性力情報に拠って第一の制御を実施することで、前記制御指令に従って前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御し、前記制御切替決定工程において、前記慣性力情報を用いないことが決定された場合には、前記位置情報に拠って前記第一の制御とは異なる第二の制御を実施することで、前記制御指令に従って前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御する駆動制御工程と、を有することを特徴とする。
【0040】
本適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法によれば、制御切替決定工程において、移動部の移動動作を制御する際に、慣性力情報を用いるか否かを決定し、駆動制御工程において、制御切替決定工程における決定に従って、制御指令、位置情報、及び慣性力情報に拠って第一の制御を、又は制御指令及び位置情報、に拠って第二の制御を実施する。これにより、適切な制御を実施するために、慣性力情報を用いることによる効果が大きい場合と効果が小さい場合とで、又は慣性力情報の誤差が比較的大きい場合と小さい場合とで、慣性力情報を適切に使用した又は使用しない制御を選択して実施することができる。また、慣性力情報を用いることが効果的な制御方法を選択して実施することができる。
第一の制御は、制御指令、位置情報、及び慣性力情報を用いることで、振動などを抑制できる制御方法であって、例えば状態フィードバック制御と呼ばれる制御方法である。第二の制御は、制御指令及び位置情報を用いて安定して目的の位置に到達させることができる制御方法であって、例えば角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID制御などである。
【0041】
[適用例18]本適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、回動又は摺動自在に支持された移動部を、前記移動部を回動又は摺動させるための駆動源を、前記移動部に配設された慣性センサーの出力を用いて制御する慣性センサーを用いた制御方法であって、前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生工程と、前記駆動源による駆動量を検出することによって、前記駆動源の位置情報を検出する位置情報検出工程と、前記慣性センサーによって、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する慣性力情報を検出する慣性力情報検出工程と、前記慣性力情報を用いて前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際の、前記慣性力情報の重み付け定数を決定する定数決定工程と、前記制御指令と、前記位置情報と、前記定数決定工程において決定された前記重み付け定数を乗じた前記慣性力情報と、を用いて前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する駆動制御工程と、を有することを特徴とする。
【0042】
本適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法によれば、定数決定工程において、慣性力情報の重み付け定数を決定し、駆動制御工程において、制御指令、位置情報、及び制御切替決定部が決定した重み付け定数を乗じた慣性力情報を用いて移動部の移動動作を制御する。これにより、適切な制御を実施することに対して、慣性力情報を用いることによる効果及び慣性力情報の誤差が及ぼす影響を総合的に考慮して重み付け定数を決定することで、総合的に慣性力情報を用いることによる効果が大きくなり、慣性力情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【0043】
[適用例19]上記適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程が、前記慣性力情報を、前記慣性力情報について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることが好ましい。
【0044】
この慣性センサーを用いた制御方法によれば、制御切替決定工程又は定数決定工程において、慣性力情報を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かが、又は慣性力情報の重み付け定数が決定される。慣性力情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、慣性力が小さくなると、慣性力情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる慣性力情報の誤差の影響を受け、位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。慣性力情報を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かを、又は慣性力情報の重み付け定数を決定することで、総合的に慣性力情報を用いることによる効果が大きくなり、慣性力情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【0045】
[適用例20]上記適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程が、前記位置情報を、前記位置情報について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることが好ましい。
【0046】
この慣性センサーを用いた制御方法によれば、制御切替決定工程又は定数決定工程において、位置情報を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かが、又は慣性力情報の重み付け定数が決定される。慣性力情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、移動量が一定の量より大きくなって等速で移動する位置において移動している状態や、目的の位置に近づいて移動速度が小さくなった状態では、慣性力が小さくなり、慣性力が小さくなると、慣性力情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる慣性力情報の誤差の影響を受け、位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。位置情報を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かを、又は慣性力情報の重み付け定数を決定することで、総合的に慣性力情報を用いることによる効果が大きくなり、慣性力情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【0047】
[適用例21]上記適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程が、前記慣性力情報の一回以上の積分値を、前記慣性力情報の一回以上の積分値について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることが好ましい。
【0048】
この慣性センサーを用いた制御方法によれば、制御切替決定工程又は定数決定工程において、慣性力情報の一回以上の積分値を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かが、又は慣性力情報の重み付け定数が決定される。慣性力情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、慣性力が小さくなると、慣性力情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる慣性力情報の誤差の影響を受け位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。慣性力情報の一回以上の積分値を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かを、又は慣性力情報の重み付け定数を決定することで、総合的に慣性力情報を用いることによる効果が大きくなり、慣性力情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。慣性力情報の一回以上の積分値を閾値と比較することは、慣性力情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。慣性力情報の一回以上の積分値を扱うことで、位置情報などと単位を共通にして扱いやすくすることができる。
【0049】
[適用例22]上記適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程が、前記位置情報の一回以上の微分値を、前記位置情報の一回以上の微分値について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることが好ましい。
【0050】
この慣性センサーを用いた制御方法によれば、制御切替決定工程又は定数決定工程において、位置情報の一回以上の微分値を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かが、又は慣性力情報の重み付け定数が決定される。慣性力情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、移動量が一定の量より大きくなって等速で移動する位置において移動している状態や、目的の位置に近づいて移動速度が小さくなった状態では、慣性力が小さくなり、慣性力が小さくなると、慣性力情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる慣性力情報の誤差の影響を受け位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。位置情報の一回以上の微分値を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かを、又は慣性力情報の重み付け定数を決定することで、総合的に慣性力情報を用いることによる効果が大きくなり、慣性力情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。位置情報の一回以上の微分値を閾値と比較することは、位置情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。位置情報の一回以上の微分値を扱うことで、慣性力情報などと単位を共通にして扱いやすくすることができる。
【0051】
[適用例23]上記適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程が、前記制御指令の特徴点からの経過時間を、予め設定された前記制御指令の特徴点を基点にした時間軸における閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることが好ましい。
【0052】
この慣性センサーを用いた制御方法によれば、制御切替決定工程又は定数決定工程において、制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かが、又は慣性力情報の重み付け定数が決定される。慣性力情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、慣性力が小さくなると、慣性力情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる慣性力情報の誤差の影響を受け位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かを、又は慣性力情報の重み付け定数を決定することで、総合的に慣性力情報を用いることによる効果が大きくなり、慣性力情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
例えば移動する目的の位置のような制御指令の特徴点から一定以上の時間が経過すると、慣性力情報の値は、制御指令において規定された特徴点における慣性力の値となる。制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較することで、慣性力情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。経過時間を基準とすることで、慣性力情報などを閾値と比較する場合にくらべて、制御を簡単にすることができる。
【0053】
[適用例24]上記適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程が、前記慣性力情報に影響を与えるノイズを、予め設定された前記ノイズの閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることが好ましい。
【0054】
この慣性センサーを用いた制御方法によれば、制御切替決定工程又は定数決定工程において、慣性力情報に影響を与えるノイズを閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かが、又は慣性力情報の重み付け定数が決定される。慣性力情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、慣性力情報に影響を与えるノイズが大きくなると、ノイズなどによる慣性力情報の誤差の影響が大きくなるため、慣性力情報を用いる効果が減少する。慣性力情報に影響を与えるノイズを閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かを、又は慣性力情報の重み付け定数を決定することで、慣性力情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】給除材装置の概略構成を示す外観斜視図。
【図2】ロボット機構を駆動させる機能的構成を示す機能構成ブロック図。
【図3】アーム駆動モーターの駆動を制御することによって給除材アームを回動させる工程を示すフローチャート。
【図4】(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と角速度の関係及び角速度の閾値の例を示す説明図。(b)は、給除材アームが停止する間際の時間経過と角速度の関係及び角速度の閾値の例を示す説明図。
【図5】ロボット機構を駆動させる機能的構成を示す機能構成ブロック図。
【図6】アーム駆動モーターの駆動を制御することによって給除材アームを回動させる工程を示すフローチャート。
【図7】(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と角速度の関係及び角速度の閾値の例を示す説明図。(b)は、角速度情報の例を示す説明図。
【図8】(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と回動角度の関係及び角度の閾値の例を示す説明図。(b)は、給除材アームが停止する間際の時間経過と角度の関係及び角度の閾値の例を示す説明図。
【図9】(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と角速度の関係、及び制御指令値の特徴点である目的の停止位置に対して時間軸において規定された閾値の例を示す説明図。(b)は、制御指令値の特徴点である目的の停止位置近傍の時間経過と角速度の関係、及び制御指令値の特徴点である目的の停止位置に対して時間軸において規定された閾値の例を示す説明図。
【図10】給除材装置の概略構成を示す外観斜視図。
【図11】搬送装置の概略構成を示す外観斜視図。
【図12】レーザープリンターの要部の概略構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、ロボット、搬送装置、及び慣性センサーを用いた制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する図面では、構成部材をわかり易く表示するために、部材又は部分の縦横の縮尺や部分ごとの縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0057】
(第一の実施形態)
ロボット、搬送装置、及び慣性センサーを用いた制御方法の一実施形態である第一の実施形態について、説明する。本実施形態は、搬送装置の一例である、給除材装置を例にして説明する。本実施形態の給除材装置は、例えば、半導体装置の製造工程において、半導体装置を構成する複数の半導体チップが区画形成されたウェハーを取扱う給除材装置である。
【0058】
<給除材装置>
最初に、給除材装置10の機械的構成について、図1を参照して説明する。図1は、給除材装置の概略構成を示す外観斜視図である。
図1に示すように、給除材装置10は、保持ハンド12と、ロボット機構20と、給除材装置制御部30と、角速度センサー32と、角度センサー34(図2参照)と、を備えている。
【0059】
ロボット機構20は、ハンド保持機構24と、給除材アーム21と、アーム軸部26と、機台28と、を備えている。機台28は、内蔵する軸受機構(図示省略)を介して、アーム軸部26をアーム軸部26の回動軸回りに回動自在に、且つ精密に位置決め固定可能に支持している。アーム軸部26は、機台28に内蔵されたアーム駆動モーター22(図2参照)と、アーム駆動機構23(図2参照)を介して接続されており、アーム駆動モーター22によって回動させられる。アーム駆動モーター22には角度センサー34が接続されており、角度センサー34によってアーム駆動モーター22の回動角度が測定される。
アーム軸部26の機台28に支持された側と反対側の端には、給除材アーム21の一端が固定されている。給除材アーム21は、アーム駆動モーター22によって、アーム軸部26の回動軸を中心に回動させられる。給除材アーム21の回動角度は、角度センサー34によってアーム駆動モーター22の回動角度を測定することによって近似的に測定される。
【0060】
給除材アーム21のアーム軸部26に固定された反対側の端には、ハンド保持機構24が固定されている。ハンド保持機構24は、給除材アーム21に固定された保持軸受24aと、保持軸受24aに摺動自在に、且つ精密に位置決め固定可能に支持された保持機構軸24bとを備えている。保持機構軸24bは、図示省略した上下駆動源によって、保持軸受24aに対して保持機構軸24bの軸方向に摺動可能である。保持機構軸24bの軸方向は、アーム軸部26の軸方向と略平行である。
保持機構軸24bの自由端には、保持ハンド12が取り付けられている。給除材アーム21を回動させることによって、保持ハンド12を搬送対象物に臨む位置に位置させる。保持軸受24aに対して保持機構軸24bを摺動させることによって、保持ハンド12を搬送対象物に離接させると共に、保持ハンド12によって保持した搬送対象物を、載置場所から持ち上げたり、載置場所に接近させたりする。
保持ハンド12が取り付けられているハンド保持機構24には、保持ハンド12と反対側に角速度センサー32が固定されている。すなわち、角速度センサー32は、給除材アーム21の先端に固定されており、給除材アーム21が回動させられる角速度を測定可能である。
給除材装置制御部30は、情報入出力装置(図示省略)を介して予め入力された制御プログラムに基づいて、給除材装置10の各部の動作を統括制御する。
【0061】
<ロボット機構駆動の機能的構成>
次に、ロボット機構20を駆動させる機能的構成について、図2を参照して説明する。図2は、ロボット機構を駆動させる機能的構成を示す機能構成ブロック図である。
上述したように、給除材アーム21を回動させるために、給除材装置10は、アーム駆動モーター22と、アーム駆動機構23と、角速度センサー32と、角度センサー34と、給除材装置制御部30とを備えている。
角速度センサー32としては、例えばジャイロセンサーを用いることができる。角度センサー34としては、例えばエンコーダーを用いることができる。給除材アーム21がアームに相当し、ロボット機構20がロボットに相当し、アーム駆動モーター22が駆動源に相当し、角速度センサー32が慣性センサーに相当する。
【0062】
図2に示すように、給除材装置制御部30は、アーム駆動モーター22を制御するためのロボット制御部31を備えている。ロボット制御部31は、制御指令発生部36と、制御切替決定部37と、アーム動作制御部38と、モータードライバー39とを備えている。
制御指令発生部36は、給材又は除材の稼動指令に基づくロボット機構20の動作指令を実行するための給除材アーム21の動作指令を出力する。稼動指令は、図示省略した入力装置から給除材装置10に入力される。稼動指令に基づくロボット機構20の動作指令は、給除材装置制御部30が備える統括制御部(図示省略)から制御指令発生部36に出力される。制御指令発生部36が出力する給除材アーム21の動作指令は、例えば、給除材アーム21の先端の軌道が、時間ごとの給除材アーム21の角度として指令される。
【0063】
アーム動作制御部38は、制御指令発生部36が出力する給除材アーム21の動作指令を実行するためのアーム駆動モーター22の制御信号を出力する。アーム動作制御部38は、角度情報使用制御部38aと、角度情報及び角速度情報使用制御部38bと、を有している。角度情報使用制御部38aは、給除材アーム21の動作指令を実行するために最適なアーム駆動モーター22の制御信号を、角度センサー34からの角度情報に拠って、生成して出力する。角度情報及び角速度情報使用制御部38bは、給除材アーム21の動作指令を実行するために最適なアーム駆動モーター22の制御信号を、角度センサー34からの角度情報、及び角速度センサー32からの角速度情報に拠って、生成して出力する。角度情報使用制御部38aと角度情報及び角速度情報使用制御部38bとの切替は、制御切替決定部37によって決定される。角度情報使用制御部38aと角度情報及び角速度情報使用制御部38bとは、それぞれ専用のハードウェアを設けても良いし、単一のハードウェアを制御プログラムによって、角度情報使用制御部38a又は角度情報及び角速度情報使用制御部38bとして機能させてもよい。アーム動作制御部38又はアーム動作制御部38が有する角度情報使用制御部38a及び角度情報及び角速度情報使用制御部38bが、アーム動作制御部に相当する。
【0064】
制御切替決定部37は、角度情報使用制御部38a、又は角度情報及び角速度情報使用制御部38bを用いることを選択して決定する。制御切替決定部37は、角度センサー34からの角度情報、角速度センサー32からの角速度情報、又は制御指令発生部36からの給除材アーム21の動作指令などに拠って、角度情報使用制御部38a、又は角度情報及び角速度情報使用制御部38bを用いることを選択して決定する。
【0065】
<給除材アーム21の回動>
次に、アーム駆動モーター22の駆動を制御することによって給除材アーム21を回動させて、給除材アーム21の先端に配設された保持ハンド12を所定の位置に位置させる工程について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、アーム駆動モーターの駆動を制御することによって給除材アームを回動させる工程を示すフローチャートである。図4は、制御を切替える基準とする角速度の閾値の例を示す説明図である。図4(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と角速度の関係及び角速度の閾値の例を示す説明図であり、図4(b)は、給除材アームが停止する間際の時間経過と角速度の関係及び角速度の閾値の例を示す説明図である。
【0066】
最初に、図3のステップS21では、「モーター停止指令」の有無を判定する。モーター停止指令は、アーム駆動モーター22を停止させ、制御を終了する指令である。
モーター停止指令があった場合(ステップS21でYES)には、アーム駆動モーター22の駆動を制御することによって給除材アーム21を回動させて給除材アーム21の先端に配設された保持ハンド12を所定の位置に位置させる工程を終了する。
モーター停止指令がない場合(ステップS21でNO)には、ステップS22に進む。
【0067】
次に、ステップS22では、制御指令値、角度情報、及び角速度情報を取得する。詳細には、制御指令発生部36が出力してアーム動作制御部38に入力された制御指令値が、制御切替決定部37に入力される。アーム駆動モーター22に接続された角度センサー34によって測定されたアーム駆動モーター22の回動角度から求められる給除材アーム21の回動角度の角度情報が、制御切替決定部37及びアーム動作制御部38に入力される。給除材アーム21の先端近くに固定された角速度センサー32によって測定された給除材アーム21の角速度の角速度情報が、制御切替決定部37及びアーム動作制御部38に入力される。
【0068】
次に、ステップS23では、制御切替決定部37が、角速度センサー32から出力された角速度情報から給除材アーム21の角速度が所定の閾値を超えたか否かを判定する。所定の閾値を閾値Sと表記する。
【0069】
給除材アーム21の角速度が所定の閾値Sを超えた(ステップS23でYES)場合には、制御切替決定部37は、角度情報及び角速度情報使用制御部38bを用いることを決定し、ステップS24に進む。
ステップS24では、角度情報及び角速度情報使用制御部38bが、制御指令値、角度情報、及び角速度情報から、トルク指令値を演算する。
【0070】
給除材アーム21の角速度が所定の閾値Sより小さい(ステップS23でNO)場合には、制御切替決定部37は、角度情報使用制御部38aを用いることを決定し、ステップS25に進む。
ステップS25では、角度情報使用制御部38aが、制御指令値、及び角度情報から、トルク指令値を演算する。
【0071】
図4(a)に示すように、給除材アーム21が回動を始めて、角速度が閾値S以下の段階と、目的位置に近づいて、角速度が閾値Sより小さくなった段階では、角速度情報を用いることなく、制御指令値、及び角度情報を用いた制御を実施する。当該制御は、例えば、角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID(Proportional Integral Differential)制御を用いる。この場合のPID制御などが、第二の制御に相当する。
回動動作の中間において角速度が閾値Sより大きい段階では、角速度情報、制御指令値、及び角度情報を用いた制御を実施する。当該制御は、例えば、いわゆる状態フィードバック制御と呼ばれる制御方法を用いる。この場合の状態フィードバック制御などが、第一の制御に相当する。
図4に二点鎖線で示した角速度は、制御指令値として経過時間ごとに指定された角速度である。図4に破線で示した角速度は、制御指令値及び角度情報を用いた角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID制御を実施した場合の経過時間ごとの角速度の例である。図4に実線で示した角速度は、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いて、状態フィードバック制御などを実施した場合の経過時間ごとの角速度の例である。
なお、図4では、PID制御を実施した場合の角速度を示す破線と、状態フィードバック制御などを実施した場合の角速度を示す実線と、を互いに分離して明示するために、状態フィードバック制御などを実施した場合の角速度を示す実線を時間的に遅いほうにずらして示している。
【0072】
ステップS24又はステップS25の次に、ステップS26では、角度情報使用制御部38a又は角度情報及び角速度情報使用制御部38bによって演算されて求められたトルク指令値を、モータードライバー39に入力する。
【0073】
次に、ステップS27では、モータードライバー39によってトルク指令値に対応する電力がアーム駆動モーター22に供給される。アーム駆動モーター22は、供給された電力に対応するトルクを発生する。
次に、ステップS28では、アーム駆動モーター22が発生したトルクによって、アーム駆動モーター22に接続されたアーム駆動機構23が作動して、アーム駆動モーター22にアーム駆動機構23を介して接続された給除材アーム21の角速度が、アーム駆動モーター22が発生したトルクによって加速又は減速される。
【0074】
ステップS28の次に、ステップS21に戻り、ステップS21においてモーター停止指令があった場合(ステップS21でYES)に、アーム駆動モーター22の駆動を制御することによって給除材アーム21を回動させて給除材アーム21の先端に配設された保持ハンド12を所定の位置に位置させる工程を終了する。
【0075】
図4(b)に示すように、制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合には、目的の位置を通り過ぎた保持ハンド12を戻すように給除材アーム21を回動させることによる残留振動が発生する可能性がある。当該残留振動の発生により、給除材アーム21が目的の位置にほぼ到達してから停止するまでに、当該残留振動が納まるまでの時間が必要である。
制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた制御を実施した場合には、振動をほとんど生じないため、給除材アーム21が目的の位置にほぼ到達してから停止するまでに、ほとんど時間を要しない。角速度情報にノイズが載った場合には、当該ノイズによって振動が生ずるため、精度が悪くなる。制御を切替える角速度の閾値をノイズによる振動の角速度より大きくすることで、ノイズによる影響を排除することができる。制御指令値と角度情報を用いた制御に切替えても、ノイズを含む角速度情報を用いる場合に比べて、大きな振動が生ずることを抑制することができる。
また、制御を切替える角速度の閾値を、制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合の残留振動の最大角速度より小さくすることで、制御を切替える時点より前は、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた制御を実施することで振動が生じることを抑制できる。このため、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた制御を実施することなく制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合にくらべて、残留振動の最大角速度を小さくして、該残留振動が納まるまでの時間を低減することができる。
【0076】
(第二の実施形態)
次に、ロボット、搬送装置、及び慣性センサーを用いた制御方法の一実施形態である第二の実施形態について、説明する。本実施形態における搬送装置の一例である給除材装置210は、第一の実施形態で図1を参照して説明した給除材装置10と、実質的に同様の機械的構成を備えている。給除材装置10と一部が異なるロボット機構駆動の機能的構成、及び給除材アーム21を回動させる工程について説明する。
【0077】
<ロボット機構駆動の機能的構成>
最初に、本実施形態の給除材装置210におけるロボット機構20を駆動させる機能的構成について、図5を参照して説明する。図5は、ロボット機構を駆動させる機能的構成を示す機能構成ブロック図である。
給除材装置10と同様に、給除材装置210は、給除材アーム21を回動させるために、アーム駆動モーター22と、アーム駆動機構23と、角速度センサー32と、角度センサー34と、給除材装置制御部230とを備えている。
【0078】
図5に示すように、給除材装置制御部230は、アーム駆動モーター22を制御するためのロボット制御部231を備えている。ロボット制御部231は、制御指令発生部36と、制御切替決定部237と、アーム動作制御部238と、ゲイン調整部235と、モータードライバー39とを備えている。
制御指令発生部36は、給材又は除材の稼動指令に基づくロボット機構20の動作指令を実行するための給除材アーム21の動作指令を出力する。稼動指令は、図示省略した入力装置から給除材装置210に入力される。稼動指令に基づくロボット機構20の動作指令は、給除材装置制御部230が備える統括制御部(図示省略)から制御指令発生部36に出力される。制御指令発生部36が出力する給除材アーム21の動作指令は、例えば、給除材アーム21の先端の軌道が、時間ごとの給除材アーム21の角度として指令される。
【0079】
アーム動作制御部238は、制御指令発生部36が出力する給除材アーム21の動作指令を実行するためのアーム駆動モーター22の制御信号を出力する。アーム動作制御部238は、角度情報及び角速度情報使用制御部238bを有している。角度情報及び角速度情報使用制御部238bは、給除材アーム21の動作指令を実行するために最適なアーム駆動モーター22の制御信号を、角度センサー34からの角度情報、及び角速度センサー32からの角速度情報に拠って、生成して出力する。ゲイン調整部235は、角度情報及び角速度情報使用制御部238bが角度情報及び角速度情報に拠ってアーム駆動モーター22の制御信号を生成する際の、角速度情報のゲインを調整して、出力する。角速度情報のゲインの切替は、制御切替決定部237によって決定される。この場合は、ゲイン調整部235と制御切替決定部237とが、制御切替決定部に相当する。
角速度情報のゲインが、慣性力情報の重み付け定数に相当する。アーム動作制御部238又はアーム動作制御部238が有する角度情報及び角速度情報使用制御部238bが、アーム動作制御部に相当する。
【0080】
制御切替決定部237は、角度センサー34からの角度情報、角速度センサー32からの角速度情報、又は制御指令発生部36からの給除材アーム21の動作指令などに拠って、角速度情報のゲインの切替を決定する。
【0081】
<給除材アーム21の回動>
次に、給除材装置210において、アーム駆動モーター22の駆動を制御することによって給除材アーム21を回動させて、給除材アーム21の先端に配設された保持ハンド12を所定の位置に位置させる工程について、図6を参照して説明する。図6は、アーム駆動モーターの駆動を制御することによって給除材アームを回動させる工程を示すフローチャートである。
【0082】
最初に、図6のステップS41では、「モーター停止指令」の有無を判定する。モーター停止指令は、アーム駆動モーター22を停止させ、制御を終了する指令である。
モーター停止指令があった場合(ステップS41でYES)には、アーム駆動モーター22の駆動を制御することによって給除材アーム21を回動させて給除材アーム21の先端に配設された保持ハンド12を所定の位置に位置させる工程を終了する。
モーター停止指令がない場合(ステップS41でNO)には、ステップS42に進む。
【0083】
次に、ステップS42では、制御指令値、角度情報、及び角速度情報を取得する。詳細には、制御指令発生部36が出力してアーム動作制御部238に入力された制御指令値が、制御切替決定部237にも入力される。アーム駆動モーター22に接続された角度センサー34によって測定されたアーム駆動モーター22の回動角度から求められる給除材アーム21の回動角度の角度情報が、制御切替決定部237及びアーム動作制御部238に入力される。給除材アーム21の先端近くに固定された角速度センサー32によって測定された給除材アーム21の角速度の角速度情報が、制御切替決定部237及びアーム動作制御部238に入力される。
【0084】
次に、ステップS43では、制御切替決定部237が、角速度センサー32から出力された角速度情報から給除材アーム21の角速度が所定の閾値を超えたか否かを判定する。所定の閾値を閾値Sと表記する。
【0085】
給除材アーム21の角速度が所定の閾値Sを超えた(ステップS43でYES)場合には、制御切替決定部37は、角速度情報のゲインを1に決定し、ステップS45に進む。
【0086】
給除材アーム21の角速度が所定の閾値Sより小さい(ステップS43でNO)場合には、制御切替決定部237は、角速度情報のゲインを変更することを決定し、ステップS44に進む。
ステップS44では、ゲイン調整部235が、角度情報及び角速度情報使用制御部238bが角度情報及び角速度情報に拠ってアーム駆動モーター22の制御信号を生成する際の、角速度情報のゲインを1より小さい値に決定して、角度情報及び角速度情報使用制御部238bに出力する。ステップS44の次に、ステップS45に進む。
【0087】
ステップS43又はステップS44の次に、ステップS45では、角度情報及び角速度情報使用制御部238bが、制御指令値、角度情報、角速度情報、及び角速度情報のゲインから、トルク指令値を演算する。
【0088】
次に、ステップS46では、角度情報及び角速度情報使用制御部238bによって演算されて求められたトルク指令値を、モータードライバー39に入力する。
【0089】
次に、ステップS47では、モータードライバー39によってトルク指令値に対応する電力がアーム駆動モーター22に供給される。アーム駆動モーター22は、供給された電力に対応するトルクを発生する。
次に、ステップS48では、アーム駆動モーター22が発生したトルクによって、アーム駆動モーター22に接続されたアーム駆動機構23が作動して、アーム駆動モーター22にアーム駆動機構23を介して接続された給除材アーム21の角速度が、アーム駆動モーター22が発生したトルクによって加速又は減速される。
【0090】
ステップS48の次に、ステップS41に戻り、ステップS41においてモーター停止指令があった場合(ステップS41でYES)に、アーム駆動モーター22の駆動を制御することによって給除材アーム21を回動させて給除材アーム21の先端に配設された保持ハンド12を所定の位置に位置させる工程を終了する。
【0091】
(第三の実施形態)
次に、第一の実施形態及び第二の実施形態の変形例としての第三の実施形態について、説明する。本実施形態では、第一の実施形態又は第二の実施形態においてトルク指定値を演算する際に、角速度情報の使用又は不使用を決定する、又はゲインの値を決定する基準とする閾値について、上述した例の他の例について説明する。
【0092】
<閾値例1>
最初に、角速度情報に対して閾値を規定する他の例について、図7を参照して説明する。図7は、制御を切替える基準とする角速度の閾値の例を示す説明図である。図7(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と角速度の関係及び角速度の閾値の例を示す説明図であり、図7(b)は、角速度情報の例を示す説明図である。
図7(a)に二点鎖線で示した角速度は、制御指令値として経過時間ごとに指定された角速度であり、実線で示した角速度は、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた状態フィードバック制御などを実施した場合の経過時間ごとの角速度の例である。図7(b)に実線で示した角速度は、ダイナミックレンジが大きい角速度センサーを用いて測定した角速度であり、破線で示した角速度は、ダイナミックレンジが比較的小さい角速度センサーを用いて測定した角速度である。
【0093】
一般的に、角速度センサーの出力は例えば電圧として出力され、出力できる電圧は有限である。このため、分解能を高くするとダイナミックレンジが小さくならざるを得ない。図7(b)に示したダイナミックレンジが比較的小さい角速度センサーのダイナミックレンジは概ね300dpsであり、図7(b)に示したように、測定対象の角速度がダイナミックレンジを超えると、角速度の出力は一定値となる。このため、測定対象の角速度がダイナミックレンジを超えた場合に角速度情報を用いてロボットの制御を実施すると、誤った制御を実施する可能性が高い。ダイナミックレンジを小さくすることで、分解能を高くすることが可能となり、角速度の小さな変動も検知可能となるため、緻密な制御が可能となる。
本閾値例では、図7(a)に示したように、角速度が閾値S2を超えた場合には、角速度情報を使用しない、又は角速度情報のゲインを1未満とする制御を実施する。
【0094】
<閾値例2>
次に、角度情報に対して閾値を規定する例について、図8を参照して説明する。図8は、制御を切替える基準とする角度の閾値の例を示す説明図である。図8(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と回動角度の関係及び角度の閾値の例を示す説明図であり、図8(b)は、給除材アームが停止する間際の時間経過と角度の関係及び角度の閾値の例を示す説明図である。
図8(a)に示すように、給除材アーム21が回動して、回動した角度が閾値S3を超えた段階では、角速度情報を用いることなく、制御指令値及び角度情報を用いた、例えば角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID制御、又は制御指令値と角度情報とゲインを1未満に設定した角速度情報とを用いた例えば状態フィードバック制御を実施する。回動動作を開始して回動角度が閾値S3より小さい段階では、角速度情報、制御指令値、及び角度情報を用いた制御を実施する。当該制御は、例えば、状態フィードバック制御を用いる。
図8に二点鎖線で示した回動角度は、制御指令値として経過時間ごとに指定された角度であり、破線で示した角度は、制御指令値及び角度情報を用いた角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID制御を実施した場合の経過時間ごとの角度の例であり、実線で示した角度は、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた状態フィードバック制御などを実施した場合の経過時間ごとの角度の例である。
なお、図8では、PID制御を実施した場合の角度を示す破線と、状態フィードバック制御などを実施した場合の角度を示す実線と、を互いに分離して明示するために、状態フィードバック制御などを実施した場合の角度を示す実線を時間的に遅いほうにずらして示している。
【0095】
図8(b)に示すように、制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合には、目的の位置を通り過ぎた保持ハンド12を戻すように給除材アーム21を回動させることによる残留振動が発生する可能性がある。当該残留振動の発生により、給除材アーム21が目的の位置にほぼ到達してから停止するまでに、当該残留振動が納まるまでの時間が必要である。
制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた制御を実施した場合には、振動をほとんど生じないため、給除材アーム21が目的の位置にほぼ到達してから停止するまでに、ほとんど時間を要しない。
【0096】
角速度情報にノイズが載った場合には、当該ノイズによって振動が生ずるため、精度が悪化する。制御を切替える角度の閾値を、目的の停止位置に対して、角速度情報のノイズによる振動の角度より離れた値にすることで、ノイズによる影響を排除することができる。制御指令値と角度情報を用いた制御に切替えても、ノイズを含む角速度情報を用いる場合に比べて、大きな振動が生ずることを抑制することができる。
また、制御を切替える角度の閾値を、目的の停止位置に対して、制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合の残留振動の最大振れ角度より近い位置の角度とすることで、制御を切替える時点より前は、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた制御を実施することで振動が生じることを抑制できる。制御を切替える時点での給除材アーム21の回動位置(角度)は、目的の停止位置に対して制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合の残留振動の最大振れ角度より近くにあることが推定できる。制御指令値及び角度情報を用いた制御であっても、制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合の残留振動の最大振れ角度を超える振動を生ずることなく、給除材アーム21を目的の停止位置に位置させることができる可能性が高い。このため、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた制御を実施することなく制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合にくらべて、残留振動の最大振れ角度を小さくして、該残留振動が納まるまでの時間を低減することができる。
【0097】
<閾値例3>
次に、制御指令値の特徴点に対して時間軸において閾値を規定する例について、図9を参照して説明する。図9は、制御を切替える基準とする、制御指令値の特徴点に対して時間軸において規定された閾値の例を示す説明図である。図9(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と角速度の関係、及び制御指令値の特徴点である目的の停止位置に対して時間軸において規定された閾値の例を示す説明図である。図9(b)は、制御指令値の特徴点である目的の停止位置近傍の時間経過と角速度の関係、及び制御指令値の特徴点である目的の停止位置に対して時間軸において規定された閾値の例を示す説明図である。
【0098】
図9に二点鎖線で示した角速度は、制御指令値として経過時間ごとに指定された角速度であり、実線で示した角度は、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた状態フィードバック制御などを実施した場合の経過時間ごとの角速度の例である。
図9(a)及び(b)に示すように、制御指令値において、角速度が0になって、目的の停止位置に到達した時点から閾値である時間T1だけ経過した後は、角速度情報を用いることなく、制御指令値及び角度情報を用いた、例えば角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID制御、又は制御指令値と角度情報とゲインを1未満に設定した角速度情報とを用いた例えば状態フィードバック制御を実施する。回動動作を開始してから、制御指令値において、角速度が0になるまでの間、及び角速度が0になった時点から時間T1の間は、角速度情報、制御指令値、及び角度情報を用いた制御を実施する。当該制御は、例えば、状態フィードバック制御を用いる。
【0099】
図9(b)に示すように、制御指令値の角速度が0になった時点から一定の時間T1が経過すると、一般的に、給除材アーム21の角速度は0になる。給除材アーム21の角速度が0にならず、さらにアーム駆動モーター22を駆動させるようなトルク指令値が出力されるような状態は、制御系に異常が発生した可能性が高い状態である。制御系の異常とは、例えば、角速度センサー32が故障した状態や、ノイズなどに起因して角速度情報が正しくない状態などである。制御指令値及び角度情報を用いた制御、又は制御指令値と角度情報とゲインを1未満に設定した角速度情報とを用いた制御を実施することで、これらの異常要因を排除することができる。
制御指令値の角速度が0になった時点から一定の時間T1が経過すると、給除材アーム21の回動位置(角度)は、目的の停止位置の近くにあることが推定できる。このため、制御指令値及び角度情報を用いた制御であっても、ほとんど振動を生ずることなく、給除材アーム21を目的の停止位置に位置させることができる可能性が高い。
【0100】
(第四の実施形態)
次に、ロボット、搬送装置、及び慣性センサーを用いた制御方法の一実施形態である第四の実施形態について、説明する。本実施形態では、第一の実施形態又は第二の実施形態で説明した給除材装置とは異なるロボット又は搬送装置の例について説明する。
【0101】
<給除材装置>
ロボット、搬送装置、及び慣性センサーを用いた制御方法の一実施形態である給除材装置であって、第一の実施形態又は第二の実施形態で説明した給除材装置10又は給除材装置210とは異なる、給除材装置310について、図10を参照して説明する。図10は、給除材装置の概略構成を示す外観斜視図である。
図10に示すように、給除材装置310は、保持ハンド12と、ロボット機構320と、給除材装置制御部330と、角速度センサー332aと、角速度センサー332bと、2個の角度センサー(図示省略)と、を備えている。
【0102】
ロボット機構320は、ハンド保持機構24と、給除材アーム321と、アーム軸部326と、機台328と、を備えている。機台328は、内蔵する軸受機構(図示省略)を介して、アーム軸部326をアーム軸部326の回動軸回りに回動自在に、且つ精密に位置決め固定可能に支持している。アーム軸部326は、機台328に内蔵されたアーム駆動モーター(図示省略)と、アーム駆動機構(図示省略)を介して接続されており、アーム駆動モーターによって回動させられる。アーム駆動モーターには角度センサーが接続されており、角度センサーによってアーム駆動モーターの回動角度が測定される。
【0103】
アーム軸部326の機台328に支持された側と反対側の端には、給除材アーム321の一端が固定されている。給除材アーム321は、アーム部321aと、アーム部321bと、アーム関節部323とを備えている。アーム部321aの一端とアーム部321bの一端とは、アーム関節部323で接続されている。アーム部321bのアーム関節部323に接続された一端の反対側の一端が、アーム軸部326に固定されている。アーム軸部326は、機台328に対してアーム軸部326の回動軸回りに回動自在であるため、アーム軸部326に一端を固定されたアーム部321bは、機台328に対してアーム軸部326の回動軸回りに回動自在である。
アーム部321bは、アーム部321aを、アーム関節部323を介して、アーム関節部323の回動軸を中心に回動可能に支持している。アーム関節部323のアーム部321aが固定された部分は、アーム部321bに内蔵されたアーム部駆動モーター(図示省略)と、アーム部駆動機構(図示省略)を介して接続されており、アーム部駆動モーターによって回動させられる。アーム部321aとアーム部321bとは、アーム関節部323において互いのなす角度を調整可能である。即ち、給除材アーム321は、アーム関節部323において屈伸可能である。アーム部駆動モーターにはアーム角度センサーが接続されており、アーム角度センサーによってアーム部駆動モーターの回動角度が測定される。アーム部駆動モーターの回動角度を測定することで、アーム部321bに対するアーム部321aの回動角度を測定することができる。
アーム軸部326の回動軸の軸方向と、アーム関節部323の回動軸の軸方向とは、互いに略平行である。
【0104】
アーム部321aのアーム関節部323に固定された反対側の端には、ハンド保持機構24が固定されている。ハンド保持機構24は、アーム部321aに固定された保持軸受24aと、保持軸受24aに摺動自在に、且つ精密に位置決め固定可能に支持された保持機構軸24bとを備えている。保持機構軸24bは、図示省略した上下駆動源によって、保持軸受24aに対して保持機構軸24bの軸方向に摺動可能である。保持機構軸24bの軸方向は、アーム軸部326の回動軸の軸方向及びアーム関節部323の回動軸の軸方向と略平行である。
保持機構軸24bの自由端には、保持ハンド12が取り付けられている。給除材アーム321を回動及び屈伸させることによって、保持ハンド12を搬送対象物に臨む位置に位置させる。保持軸受24aに対して保持機構軸24bを摺動させることによって、保持ハンド12を搬送対象物に離接させると共に、保持ハンド12によって保持した搬送対象物を、載置場所から持ち上げたり、載置場所に接近させたりする。
【0105】
保持ハンド12が取り付けられているハンド保持機構24には、保持ハンド12と反対側に角速度センサー332aが固定されている。すなわち、角速度センサー332aは、アーム部321aの先端に固定されており、アーム部321aが回動させられる角速度を測定可能である。
アーム部321bのアーム関節部323に接続された一端の側面には、角速度センサー332bが固定されている。したがって、角速度センサー332bは、アーム部321bの先端に固定されており、アーム部321bが回動させられる角速度を測定可能である。
給除材装置制御部330は、情報入出力装置(図示省略)を介して予め入力された制御プログラムに基づいて、給除材装置310の各部の動作を統括制御する。給除材装置制御部330は、角速度センサー332bによる角速度情報と機台328に内蔵された角度センサーによる角度情報とによって、アーム部321bの動作を制御可能である。同時に、角速度センサー332aによる角速度情報とアーム部321bに内蔵されたアーム角度センサーによる角度情報とによって、アーム部321aのアーム部321bに対する相対動作を制御可能である。すなわち、アーム部321aの動作とアーム部321bを統括した給除材アーム321の動作を、上述した実施形態と同様に、角速度情報と角度情報とを用いて制御することができる。
【0106】
<搬送装置>
次に、搬送対象物を保持する保持装置などが直交座標系に沿って平行移動する構成を備える搬送装置について、図11を参照して説明する。図11は、搬送装置の概略構成を示す外観斜視図である。図11(a)は、天吊搬送装置の概略構成を示す外観斜視図であり、図11(b)は、印刷装置におけるヘッド搬送装置の概略構成を示す外観斜視図である。
【0107】
<天吊搬送装置>
図11(a)に示すように、天吊搬送装置410は、主走査方向移動機構402と、副走査方向移動機構403と、昇降移動機構404と、保持機構412と、距離センサーと、加速度センサー432と、搬送装置制御部(図示省略)と、を備えている。
【0108】
主走査方向移動機構402は、主走査方向に延在する一対の主走査ガイドレール421,421と、主走査ガイドレール421に形成された主走査リニアモーターと、走査プレート422に形成された主走査スライダーとを備えている。走査プレート422は、一対の主走査ガイドレール421,421の間に架け渡されて、主走査方向と略直交する副走査方向に延在している。走査プレート422は、主走査リニアモーターと主走査スライダーとによって、主走査方向に自在に移動させられる。一対の主走査ガイドレール421,421は、例えば天井などに懸吊されて固定されている。
副走査方向移動機構403は、走査プレート422に形成された副走査リニアモーターと、副走査枠423に形成された副走査スライダーとを備えている。副走査枠423は、副走査リニアモーターと副走査スライダーとによって、副走査方向に自在に移動させられる。
昇降移動機構404は、副走査枠423に配設されたボール軸受と、ボール軸受駆動モーターと、昇降軸424に固定されたボールねじとを備えている。昇降軸424は、ボール軸受とボール軸受駆動モーターとボールねじとによって、昇降させられる。
昇降軸424のボールねじと反対側に固定された保持機構412を、主走査方向移動機構402と、副走査方向移動機構403と、によって主走査方向及び副走査方向の任意の位置に移動し、昇降移動機構404によって、搬送対象物に対して離接させることができる。
搬送装置制御部は、情報入出力装置(図示省略)を介して予め入力された制御プログラムに基づいて、天吊搬送装置410の各部の動作を統括制御する。
【0109】
主走査リニアモーターと、副走査リニアモーターと、ボール軸受駆動モーターとには、それぞれによる駆動距離を測定する距離センサーが接続されている。
副走査枠423又は保持機構412には、加速度センサー432a、加速度センサー432b、又は加速度センサー432cが固定されている。加速度センサー432a、加速度センサー432b、及び加速度センサー432cは、主走査方向、副走査方向、又は昇降方向の加速度を測定可能である。
主走査リニアモーター、副走査リニアモーター、又はボール軸受駆動モーターに接続された距離センサーによる、それぞれの方向における移動距離情報と、加速度センサー432a、加速度センサー432b、又は加速度センサー432cによる、それぞれの方向における加速度情報と、によって、保持機構412の移動を制御することができる。距離センサーとしては、例えばリニアエンコーダーを用いることができる。距離センサーが、位置センサーに相当する。
【0110】
移動距離情報及び加速度情報を用いて保持機構412の移動の制御を実行する際は、移動距離情報又は加速度情報などに閾値を予め設定し、搬送装置制御部の制御切替決定部が、移動距離情報又は加速度情報などを当該閾値と比較して、制御に加速度情報を使用するか否か、又は加速度情報に乗ずる定数を決定する。搬送装置制御部の動作制御部が、制御切替決定部の決定に従って、制御指令値と移動距離情報とを用いた制御、制御指令値と移動距離情報と加速度情報とを用いた制御、又は制御指令値と移動距離情報と加速度情報のゲインを乗じた加速度情報とを用いた制御を実施する。当該制御を実施することによって、主走査方向移動機構402、副走査方向移動機構403、及び昇降移動機構404の動作を制御して、保持機構412を任意の位置に移動し、位置決めする。
【0111】
<ヘッド搬送装置>
図11(b)に示すように、ヘッド搬送装置460は、印刷装置の吐出ヘッド462を移動させるものであり、ヘッドキャリッジ476と、キャリッジ軸474と、駆動ベルト473と、駆動プーリー472と、駆動モーター471と、加速度センサー482と、エンコーダー484と、を備えている。印刷装置は、印刷装置の各部の動作を統括制御する印刷装置制御部(図示省略)を備えている。
【0112】
駆動モーター471は図示省略した装置枠に固定されており、駆動軸の一端に駆動プーリー472が固定されている。駆動プーリー472と図示省略した従動プーリーとに、駆動ベルト473が張渡されており、駆動ベルト473は、駆動モーター471によって駆動される。キャリッジ軸474は、駆動ベルト473の延在方向と平行に配設されている。キャリッジ軸474には、ヘッドキャリッジ476がキャリッジ軸474の軸方向に摺動自在に嵌合して支持されている。ヘッドキャリッジ476は、駆動ベルト473と固定されており、駆動ベルト473が駆動されることによって、キャリッジ軸474に沿って移動させられる。ヘッドキャリッジ476に保持された吐出ヘッド462は、キャリッジ軸474の軸方向に移動させられ、任意の位置に保持される。
印刷装置制御部は、情報入出力装置(図示省略)を介して予め入力された制御プログラムに基づいて、印刷装置の各部の動作を統括制御する。
【0113】
エンコーダー484は、駆動モーター471の駆動軸に接続されており、駆動モーター471の回動角度を測定することによって、吐出ヘッド462の移動距離を測定することができる。当該移動距離に対応する吐出ヘッド462の位置に対応する駆動モーター471の回動角度情報を、駆動モーター471の位置情報と表記する。加速度センサー482はヘッドキャリッジ476に固定されており、ヘッドキャリッジ476が駆動されることによってヘッドキャリッジ476に作用する加速度を測定可能である。エンコーダー484による位置情報と、加速度センサー482による加速度情報と、によって、ヘッドキャリッジ476に保持された吐出ヘッド462の移動を制御することができる。エンコーダー484が、位置センサーに相当する。
【0114】
位置情報及び加速度情報を用いて吐出ヘッド462の移動の制御を実行する際は、位置情報又は加速度情報などに閾値を設定し、印刷装置制御部の制御切替決定部が、位置情報又は加速度情報などを当該閾値と比較して、制御に加速度情報を使用するか否か、又は加速度情報に乗ずる重み付け定数を決定する。印刷装置制御部の動作制御部が、制御切替決定部の決定に従って、制御指令値と位置情報とを用いた制御、制御指令値と位置情報と加速度情報とを用いた制御、又は制御指令値と位置情報と重み付け定数を乗じた加速度情報とを用いた制御を実施する。当該制御を実施することによって、駆動モーター471の動作を制御して、ヘッドキャリッジ476に保持された吐出ヘッド462を任意の位置に移動し、位置決めする。
【0115】
<レーザープリンター>
次に、ドラム状の部材の回動を制御する例として、レーザープリンター510について図12を参照して説明する。図12は、レーザープリンターの要部の概略構成を示す説明図である。
図12に示すように、レーザープリンター510は、感光体ドラム524と、ドラム駆動モーター522と、エンコーダー534と、駆動伝達機構523と、チャージ装置541と、レーザー発振装置542と、トナー供給装置543と、転写ローラー544と、定着ローラー546及び定着ローラー547と、トナー回収装置548と、角速度センサー532と、プリンター制御部(図示省略)と、を備えている。
【0116】
感光体ドラム524は、駆動伝達機構523を介してドラム駆動モーター522に接続されており、ドラム駆動モーター522によって回動軸回りに回動させられる。感光体ドラム524の表面は、チャージ装置541によってマイナスに帯電させられ、レーザー発振装置542によって、帯電部分が印刷物の形状に残されることで印刷物の形状が描かれ、トナー供給装置543によって供給されたトナーが、帯電した印刷物の形状に付着する。用紙549が転写ローラー544によって感光体ドラム524に圧着されて、トナーが用紙549に転写される。用紙549に転写されたトナーは、定着ローラー546及び定着ローラー547によって圧力と熱を加えて定着させる。トナーを転写した感光体ドラム524の表面は、トナー回収装置548によって不要なトナーが回収されて、再び上記工程が繰り返される。
プリンター制御部は、情報入出力装置(図示省略)を介して予め入力された制御プログラムに基づいて、レーザープリンター510の各部の動作を統括制御する。
【0117】
ドラム駆動モーター522の駆動軸には、エンコーダー534が接続されており、エンコーダー534によってドラム駆動モーター522の回動角度を測定することによって、感光体ドラム524の回動角度情報を取得することができる。角速度センサー532は感光体ドラム524に固定されており、角速度センサー532によって感光体ドラム524が回動する角速度の情報を取得することができる。エンコーダー534によるドラム駆動モーター522の回動角度情報と、角速度センサー532による角速度情報と、によって、感光体ドラム524の回動を制御することができる。
【0118】
回動角度情報及び角速度情報を用いて感光体ドラム524の回動の制御を実行する際は、回動角度情報又は角速度情報などに閾値を設定し、プリンター制御部の制御切替決定部が、回動角度情報又は角速度情報などを当該閾値と比較して、制御に角速度情報を使用するか否か、又は角速度情報に乗ずる重み付け定数を決定する。プリンター装置制御部の動作制御部が、制御切替決定部の決定に従って、制御指令値と回動角度情報とを用いた制御、制御指令値と回動角度情報と角速度情報とを用いた制御、又は制御指令値と回動角度情報と重み付け定数を乗じた角速度情報とを用いた制御を実施する。当該制御を実施することによって、ドラム駆動モーター522の動作を制御して、感光体ドラム524を任意の角度、回動させる。
【0119】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0120】
(変形例1)前記実施形態においては、回動角度情報や角速度情報や移動距離情報や加速度情報や位置情報などについて閾値を規定する例や、制御指令値の特徴点に対して時間軸において閾値を規定する例について説明したが、閾値を規定する対象はこれらに限らない。角速度情報や加速度情報の値に影響を及ぼすノイズに閾値を設定して、当該ノイズのレベルによって、角速度情報や加速度情報の使用又は不使用の決定、又は角速度情報や加速度情報の影響を調整するために角速度情報や加速度情報に乗ずる定数の決定を実施してもよい。角速度情報や加速度情報の値に影響を及ぼすノイズとしては、装置自身の機械振動や、周囲に存在する装置などの振動や、装置に供給される電力の振れや、周囲の電磁ノイズなどが挙げられる。
【0121】
(変形例2)前記実施形態においては、角速度センサー32による角速度情報や、加速度センサー432による加速度情報について閾値を規定する例について説明したが、閾値を規定する対象はこれらに限らない。閾値は、角速度情報や加速度情報の一回以上の積分値について規定してもよい。加速度情報の積分値は速度情報であって、速度情報は、角速度情報と同様に取り扱うことができる。加速度情報の二回積分値及び角速度情報の積分値は移動距離の情報であって、移動距離の情報は、角度情報や位置情報と同様に取り扱うことができる。
【0122】
(変形例3)前記実施形態においては、角度センサー34による角度情報や、距離センサーによる移動距離情報について閾値を規定する例について説明したが、閾値を規定する対象はこれらに限らない。閾値は、角度情報や移動距離情報の一回以上の微分値について規定してもよい。角度情報又は移動距離情報の微分値は、角速度又は移動速度であって、上述した角速度情報と同様に取り扱うことができる。角度情報又は移動距離情報の二回微分値は、角加速度又は加速度であって、上述した加速度情報と同様に取り扱うことができる。
【0123】
(変形例4)前記実施形態においては、回動角度情報や角速度情報や移動距離情報や加速度情報や位置情報などについて閾値を規定する例や、制御指令値の特徴点に対して時間軸において閾値を規定する例について説明した。これらの閾値を規定した対象は、制御を実行する際は、それぞれ単独で用いられていたが、閾値を規定した複数の対象を用いて制御を実行してもよい。例えば、回動角度情報及び角速度情報が共に閾値を超えた場合のみ、角速度情報を用いない制御を実行し、回動角度情報又は角速度情報の少なくとも一方が閾値を超えていない場合には、回動角度情報及び角速度情報を用いる制御を実行してもよい。また、回動角度情報や角速度情報や移動距離情報や加速度情報や位置情報などや、制御指令値の特徴点に対する時間軸などと、変形例1で説明した角速度情報や加速度情報の値に影響を及ぼすノイズレベルとを組み合わせてもよい。この場合、例えば、回動角度情報や角速度情報や移動距離情報や加速度情報や位置情報などや、制御指令値の特徴点に対する時間軸などと、ノイズレベルとの両方が共に閾値を超えた場合のみ、角速度情報などを用いない制御を実行し、少なくとも一方が閾値を超えていない場合には、回動角度情報など及び角速度情報などを用いる制御を実行する。これにより、角速度情報などのノイズレベルが低レベルに保たれているにも関わらず、ノイズによる悪影響を回避するために、角速度情報などを使用しない制御を実施するというような状態を回避することができる。
【0124】
(変形例5)前記実施形態においては、ロボット及び搬送装置の例として、ロボット機構20を備える給除材装置10、ロボット機構320を備える給除材装置310、天吊搬送装置410、印刷装置が備えるヘッド搬送装置460、レーザープリンター510が備えるドラム駆動装置、などを例に説明した。しかし、上述した慣性センサーを用いた制御方法を用いて好適に制御できるロボット及び搬送装置は、これらの例示した装置に限らない。上述した慣性センサーを用いた制御方法を用いることで、移動体を所定の目的位置まで速やかに移動させると共に、当該位置に精度良く速やかに停止させることが好ましい装置を好適に制御することができる。
【符号の説明】
【0125】
10,210…給除材装置、20…ロボット機構、21…給除材アーム、22…アーム駆動モーター、30,230…給除材装置制御部、31,231…ロボット制御部、32…角速度センサー、34…角度センサー、36…制御指令発生部、37,237…制御切替決定部、38,238…アーム動作制御部、235…ゲイン調整部、310…給除材装置、320…ロボット機構、321…給除材アーム、321a,321b…アーム部、323…アーム関節部、330…給除材装置制御部、332a,332b…角速度センサー、402…主走査方向移動機構、403…副走査方向移動機構、404…昇降移動機構、410…天吊搬送装置、432,432a,432b,432c…慣性センサー、460…ヘッド搬送装置、462…吐出ヘッド、471…駆動モーター、476…ヘッドキャリッジ、482…加速度センサー、484…エンコーダー、510…レーザープリンター、522…ドラム駆動モーター、524…感光体ドラム、532…角速度センサー、534…エンコーダー。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アームの先端に取り付けられた端末装置を所望の位置に移動させるロボット、移動部材に取り付けられた端末装置を所望の位置に移動させる搬送装置、及びこれらの装置を制御する慣性センサーを用いた制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アームを回動などさせることによってアームの先端に取り付けられた端末装置を所望の位置に移動させて、当該位置において、端末装置を稼動させるロボットなどの装置が知られている。例えば、把持端末を備え、加工装置に対して被加工部材を給除材する給除材装置や、塗装端末を備えた塗装ロボットや、溶接端末を備えた溶接ロボットなどが知られている。
ロボットを駆動させる際には、ロボットのアームを駆動するモーターなどの駆動源の回転角度を測定し、測定した角度情報に基づいてアームの先端位置などを制御する制御方法が用いられている。しかし、駆動源からアームに駆動力を伝達する伝達機構やアームは剛体ではないことに起因して、伝達機構やアームが変形するために、角度情報に基づいて位置制御されたアームの先端側の位置が必ずしも実際の位置と一致しない場合があった。また、動作時に伝達機構やアームが変形することによって、振動を生ずるという問題があった。これらの問題に対し、アーム先端に慣性センサーを取り付けて先端の動きを測定し、得られた慣性センサーによる角速度情報を制御に用いる方法が考案されている。特許文献1には、慣性センサーの出力信号によってアームの動作を制御することによって、剛性が低い場合でも高精度の位置決めができると共に、振れによる精度低下を防止することができる多関節ロボットの制御方法及び多関節ロボットが開示されている。
【0003】
しかし、慣性センサーの出力からアームの回動角度を求めるためには、慣性センサーの出力を積分する必要があり、積分を繰り返すと慣性センサーの基準電位のドリフトの影響を受けやすくなり、制御装置が情報を誤認識する可能性が高くなるという課題があった。特許文献2には、角度センサーの出力の低周波成分を用いて、角速度センサーの出力は出力の積分値の高周波成分のみを制御に用いることによって、基準電位のドリフトなどの低周波で変動する誤差要因を排除したロボット制御装置およびロボットの制御方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−9374号公報
【特許文献2】特開2005−242794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、慣性センサーの出力には、ノイズの影響や、信号伝達の遅延の影響などによる誤差が含まれる可能性があり、これらの誤差によって制御装置が情報を誤認識する可能性が高くなるという課題があった。慣性センサーのノイズの影響や、信号伝達の遅延の影響などは高周波でも起こる現象であり、特許文献2に開示された制御装置や制御方法では対応できない課題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかるロボットは、一端を回動自在に支持されたアームと、前記アームを回動させるための駆動源と、前記駆動源の回動角度を検出し、前記駆動源の回動角度情報を出力する角度センサーと、前記アームに取り付けられており、前記アームが回動する角速度を検出して前記アームの角速度情報を出力する慣性センサーと、前記アームの回動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備えるロボットであって、制御切替決定部と、アーム動作制御部と、を備え、前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記アームの動作を制御する際に、前記角速度情報を用いるか否かを決定し、前記アーム動作制御部は、前記制御切替決定部が、前記角速度情報を用いることを決定した場合には、前記制御指令、前記回動角度情報、及び前記角速度情報に拠って第一の制御を実施することで前記駆動源を制御して前記アームの動作を制御し、前記制御切替決定部が、前記角速度情報を用いないことを決定した場合には、前記制御指令、及び前記回動角度情報に拠って前記第一の制御とは異なる第二の制御を実施することで、前記駆動源を制御して前記アームの動作を制御することを特徴とする。
【0008】
本適用例にかかるロボットによれば、制御切替決定部が、アームの動作を制御する際に、角速度情報を用いるか否かを決定し、アーム動作制御部は、制御切替決定部の決定に従って、制御指令、回動角度情報、及び角速度情報に拠って第一の制御を、又は制御指令及び回動角度情報、に拠って第二の制御を実施する。これにより、適切な制御を実施するために、角速度情報を用いることによる効果が大きい場合と効果が小さい場合とで、又は角速度情報の誤差が比較的大きい場合と小さい場合とで、角速度情報を適切に使用した又は使用しない制御を選択して実施することができる。また、角速度情報を用いることが効果的な制御方法を選択して実施することができる。
第一の制御は、制御指令、回動角度情報、及び角速度情報を用いることで、振動などを抑制できる制御方法であって、例えば状態フィードバック制御と呼ばれる制御方法である。第二の制御は、制御指令及び回動角度情報を用いて安定して目的の位置に到達させることができる制御方法であって、例えば角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID(Proportional Integral Differential)制御などである。
【0009】
[適用例2]本適用例にかかるロボットは、一端を回動自在に支持されたアームと、前記アームを回動させるための駆動源と、前記駆動源の回動角度を検出することによって、前記駆動源の回動角度情報を出力する角度センサーと、前記アームに取り付けられており、前記アームが回動する角速度を検出して前記アームの角速度情報を出力する慣性センサーと、前記アームの回動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備えるロボットであって、制御切替決定部と、アーム動作制御部と、を備え、前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記アームの動作を制御する際の、前記角速度情報の重み付け定数を決定し、前記アーム動作制御部は、前記制御指令、前記回動角度情報、及び前記制御切替決定部が決定した前記重み付け定数を乗じた前記角速度情報に拠って、前記駆動源を制御することによって前記アームの動作を制御することを特徴とする。
【0010】
本適用例にかかるロボットによれば、制御切替決定部が、角速度情報の重み付け定数を決定し、アーム動作制御部は、制御指令、回動角度情報、及び制御切替決定部が決定した重み付け定数を乗じた角速度情報を用いてアームの動作を制御する。これにより、適切な制御を実施することに対して、角速度情報を用いることによる効果及び角速度情報の誤差が及ぼす影響を総合的に考慮して重み付け定数を決定することで、総合的に角速度情報を用いることによる効果が大きくなり、角速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、アームの動作の制御を実施することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかるロボットは、前記角速度情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記角速度情報を当該閾値と比較して、前記角速度情報を用いるか否かを、又は前記角速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0012】
このロボットによれば、角速度情報を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かが、又は角速度情報の重み付け定数が決定される。角速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、角速度が小さくなると、角速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる角速度情報の誤差の影響を受け、角度情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。角速度情報を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かを、又は角速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に角速度情報を用いることによる効果が大きくなり、角速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、アームの動作の制御を実施することができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかるロボットは、前記回動角度情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記回動角度情報を当該閾値と比較して、前記角速度情報を用いるか否かを、又は前記角速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0014】
このロボットによれば、回動角度情報を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かが、又は角速度情報の重み付け定数が決定される。角速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、回動角度が大きくなって目的の角度に近づいた状態では、角速度が小さくなり、角速度が小さくなると、角速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる角速度情報の誤差の影響を受け、角度情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。回動角度情報を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かを、又は角速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に角速度情報を用いることによる効果が大きくなり、角速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、アームの動作の制御を実施することができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかるロボットは、前記角速度情報の一回以上の積分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記角速度情報の一回以上の積分値を当該閾値と比較して、前記角速度情報を用いるか否かを、又は前記角速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0016】
このロボットによれば、角速度情報の一回以上の積分値を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かが、又は角速度情報の重み付け定数が決定される。角速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、角速度が小さくなると、角速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる角速度情報の誤差の影響を受け、角度情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。角速度情報の一回以上の積分値を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かを、又は角速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に角速度情報を用いることによる効果が大きくなり、角速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、アームの動作の制御を実施することができる。角速度情報の一回以上の積分値を閾値と比較することは、角速度情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。角速度情報の一回以上の積分値を扱うことで、回動角度情報などと単位を共通にして扱いやすくすることができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかるロボットは、前記回動角度情報の一回以上の微分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記回動角度情報の一回以上の微分値を当該閾値と比較して、前記角速度情報を用いるか否かを、又は前記角速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0018】
このロボットによれば、回動角度情報の一回以上の微分値を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かが、又は角速度情報の重み付け定数が決定される。角速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、回動角度が大きくなって目的の角度に近づいた状態では、角速度が小さくなり、角速度が小さくなると、角速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる角速度情報の誤差の影響を受け、角度情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。角度情報の一回以上の微分値を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かを、又は角速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に角速度情報を用いることによる効果が大きくなり、角速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、アームの動作の制御を実施することができる。回動角度情報の一回以上の微分値を閾値と比較することは、回動角度情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。回動角度情報の一回以上の微分値を扱うことで、角速度情報などと単位を共通にして扱いやすくすることができる。
【0019】
[適用例7]上記適用例にかかるロボットは、前記制御指令の特徴点をもとに時間軸における閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記特徴点からの経過時間を当該閾値と比較して、前記角速度情報を用いるか否かを、又は前記角速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0020】
このロボットによれば、制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かが、又は角速度情報の重み付け定数が決定される。角速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、角速度が小さくなると、角速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる角速度情報の誤差の影響が大きくなる。制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かを、又は角速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に角速度情報を用いることによる効果が大きくなり、角速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、アームの動作の制御を実施することができる。
例えば移動する目的の位置のような制御指令の特徴点から一定以上の時間が経過すると、角速度情報の値は、制御指令において規定された特徴点における角速度の値となる。制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較することで、角速度情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。経過時間を基準とすることで、角速度情報などを閾値と比較する場合にくらべて、制御を簡単にすることができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例にかかるロボットは、前記角速度情報に影響を与えるノイズに閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記角速度情報に影響を与えるノイズを当該閾値と比較して、前記角速度情報を用いるか否かを、又は前記角速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0022】
このロボットによれば、角速度情報に影響を与えるノイズを閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かが、又は角速度情報の重み付け定数が決定される。角速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、角速度情報に影響を与えるノイズが大きくなると、ノイズなどによる角速度情報の誤差の影響が大きくなるため、角速度情報を用いる効果が減少する。角速度情報に影響を与えるノイズを閾値と比較して、角速度情報を用いるか否かを、又は角速度情報の重み付け定数を決定することで、角速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、アームの動作の制御を実施することができる。
【0023】
[適用例9]本適用例にかかる搬送装置は、摺動自在に支持された移動部と、前記移動部を移動させるための駆動源と、前記駆動源による駆動量を検出し、前記駆動源の位置情報を出力する位置センサーと、前記移動部に取り付けられており、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する加速度の加速度情報を出力する慣性センサーと、前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備える搬送装置であって、制御切替決定部と、動作制御部と、を備え、前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際に、前記加速度情報を用いるか否かを決定し、前記動作制御部は、前記制御切替決定部が、前記加速度情報を用いることを決定した場合には、前記制御指令、前記位置情報、及び前記加速度情報に拠って第一の制御を実施することで前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御し、前記制御切替決定部が、前記加速度情報を用いないことを決定した場合には、前記制御指令、及び前記位置情報に拠って前記第一の制御とは異なる第二の制御を実施することで、前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御することを特徴とする。
【0024】
本適用例にかかる搬送装置によれば、制御切替決定部が、移動部の移動動作を制御する際に、加速度情報を用いるか否かを決定し、動作制御部は、制御切替決定部の決定に従って、制御指令、位置情報、及び加速度情報に拠って第一の制御を、又は制御指令及び位置情報、に拠って第二の制御を実施する。これにより、適切な制御を実施するために、加速度情報を用いることによる効果が大きい場合と効果が小さい場合とで、又は加速度情報の誤差が比較的大きい場合と小さい場合とで、加速度情報を適切に使用した又は使用しない制御を選択して実施することができる。また、加速度情報を用いることが効果的な制御方法を選択して実施することができる。
第一の制御は、制御指令、位置情報、及び加速度情報を用いることで、振動などを抑制できる制御方法であって、例えば状態フィードバック制御と呼ばれる制御方法である。第二の制御は、制御指令及び位置情報を用いて安定して目的の位置に到達させることができる制御方法であって、例えば角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID制御などである。
【0025】
[適用例10]本適用例にかかる搬送装置は、摺動自在に支持された移動部と、前記移動部を移動させるための駆動源と、前記駆動源による駆動量を検出し、前記駆動源の位置情報を出力する位置センサーと、前記移動部に取り付けられており、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する加速度の加速度情報を出力する慣性センサーと、前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備える搬送装置であって、制御切替決定部と、動作制御部と、を備え、前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際の、前記加速度情報の重み付け定数を決定し、前記動作制御部は、前記制御指令、前記位置情報、及び前記制御切替決定部が決定した前記重み付け定数を乗じた前記加速度情報に拠って、前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御することを特徴とする。
【0026】
本適用例にかかる搬送装置によれば、制御切替決定部が、加速度情報の重み付け定数を決定し、動作制御部は、制御指令、位置情報、及び制御切替決定部が決定した重み付け定数を乗じた加速度情報を用いて移動部の移動動作を制御する。これにより、適切な制御を実施することに対して、加速度情報を用いることによる効果及び加速度情報の誤差が及ぼす影響を総合的に考慮して重み付け定数を決定することで、総合的に加速度情報を用いることによる効果が大きくなり、加速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【0027】
[適用例11]上記適用例にかかる搬送装置は、前記加速度情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部が、前記加速度情報を当該閾値と比較して、前記加速度情報を用いるか否かを、又は前記加速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0028】
この搬送装置によれば、加速度情報を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かが、又は加速度情報の重み付け定数が決定される。加速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、加速度が小さくなると、加速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる加速度情報の誤差の影響を受け、位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。加速度情報を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かを、又は加速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に加速度情報を用いることによる効果が大きくなり、加速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【0029】
[適用例12]上記適用例にかかる搬送装置は、前記位置情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部が、前記位置情報を当該閾値と比較して、前記加速度情報を用いるか否かを、又は前記加速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0030】
この搬送装置によれば、位置情報を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かが、又は加速度情報の重み付け定数が決定される。加速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、移動量が一定の量より大きくなって等速で移動する位置において移動している状態や、目的の位置に近づいて移動速度が小さくなった状態では、加速度が小さくなる。加速度が小さくなると、加速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる加速度情報の誤差の影響を受け、位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。位置情報を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かを、又は加速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に加速度情報を用いることによる効果が大きくなり、加速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【0031】
[適用例13]上記適用例にかかる搬送装置は、前記加速度情報の一回以上の積分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部が、前記加速度情報の一回以上の積分値を当該閾値と比較して、前記加速度情報を用いるか否かを、又は前記加速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0032】
この搬送装置によれば、加速度情報の一回以上の積分値を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かが、又は加速度情報の重み付け定数が決定される。加速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、加速度が小さくなると、加速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる加速度情報の誤差の影響を受け位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。加速度情報の一回以上の積分値を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かを、又は加速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に加速度情報を用いることによる効果が大きくなり、加速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。加速度情報の一回以上の積分値を閾値と比較することは、加速度情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。加速度情報の一回以上の積分値を扱うことで、位置情報などと単位を共通にして扱いやすくすることができる。
【0033】
[適用例14]上記適用例にかかる搬送装置は、前記位置情報の一回以上の微分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部が、前記位置情報の一回以上の微分値を当該閾値と比較して、前記加速度情報を用いるか否かを、又は前記加速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0034】
この搬送装置によれば、位置情報の一回以上の微分値を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かが、又は加速度情報の重み付け定数が決定される。加速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、移動量が一定の量より大きくなって等速で移動する位置において移動している状態や、目的の位置に近づいて移動速度が小さくなった状態では、加速度が小さくなり、加速度が小さくなると、加速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる加速度情報の誤差の影響を受け、位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。位置情報の一回以上の微分値を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かを、又は加速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に加速度情報を用いることによる効果が大きくなり、加速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。位置情報の一回以上の微分値を閾値と比較することは、位置情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。位置情報の一回以上の微分値を扱うことで、加速度情報などと単位を共通にして扱いやすくすることができる。
【0035】
[適用例15]上記適用例にかかる搬送装置は、前記制御指令の特徴点をもとに時間軸における閾値を予め設定し、前記制御切替決定部が、前記特徴点からの経過時間を当該閾値と比較して、前記加速度情報を用いるか否かを、又は前記加速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0036】
この搬送装置によれば、制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かが、又は加速度情報の重み付け定数が決定される。加速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、加速度が小さくなると、加速度情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる加速度情報の誤差の影響を受け位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かを、又は加速度情報の重み付け定数を決定することで、総合的に加速度情報を用いることによる効果が大きくなり、加速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
例えば移動する目的の位置のような制御指令の特徴点から一定以上の時間が経過すると、加速度情報の値は、制御指令において規定された特徴点における加速度の値となる。制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較することで、加速度情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。経過時間を基準とすることで、加速度情報などを閾値と比較する場合にくらべて、制御を簡単にすることができる。
【0037】
[適用例16]上記適用例にかかる搬送装置は、前記加速度情報に影響を与えるノイズに閾値を予め設定し、前記制御切替決定部が、前記加速度情報に影響を与えるノイズを当該閾値と比較して、前記加速度情報を用いるか否かを、又は前記加速度情報の重み付け定数を決定することが好ましい。
【0038】
この搬送装置によれば、加速度情報に影響を与えるノイズを閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かが、又は加速度情報の重み付け定数が決定される。加速度情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、加速度情報に影響を与えるノイズが大きくなると、ノイズなどによる加速度情報の誤差の影響が大きくなるため、加速度情報を用いる効果が減少する。加速度情報に影響を与えるノイズを閾値と比較して、加速度情報を用いるか否かを、又は加速度情報の重み付け定数を決定することで、加速度情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【0039】
[適用例17]本適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、回動又は摺動自在に支持された移動部を、前記移動部を回動又は摺動させるための駆動源を、前記移動部に配設された慣性センサーの出力を用いて制御する慣性センサーを用いた制御方法であって、前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生工程と、前記駆動源の位置情報を検出する位置情報検出工程と、前記慣性センサーによって、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する慣性力情報を検出する慣性力情報検出工程と、前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際に、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する制御切替決定工程と、前記制御切替決定工程において、前記慣性力情報を用いることが決定された場合には、前記位置情報及び前記慣性力情報に拠って第一の制御を実施することで、前記制御指令に従って前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御し、前記制御切替決定工程において、前記慣性力情報を用いないことが決定された場合には、前記位置情報に拠って前記第一の制御とは異なる第二の制御を実施することで、前記制御指令に従って前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御する駆動制御工程と、を有することを特徴とする。
【0040】
本適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法によれば、制御切替決定工程において、移動部の移動動作を制御する際に、慣性力情報を用いるか否かを決定し、駆動制御工程において、制御切替決定工程における決定に従って、制御指令、位置情報、及び慣性力情報に拠って第一の制御を、又は制御指令及び位置情報、に拠って第二の制御を実施する。これにより、適切な制御を実施するために、慣性力情報を用いることによる効果が大きい場合と効果が小さい場合とで、又は慣性力情報の誤差が比較的大きい場合と小さい場合とで、慣性力情報を適切に使用した又は使用しない制御を選択して実施することができる。また、慣性力情報を用いることが効果的な制御方法を選択して実施することができる。
第一の制御は、制御指令、位置情報、及び慣性力情報を用いることで、振動などを抑制できる制御方法であって、例えば状態フィードバック制御と呼ばれる制御方法である。第二の制御は、制御指令及び位置情報を用いて安定して目的の位置に到達させることができる制御方法であって、例えば角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID制御などである。
【0041】
[適用例18]本適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、回動又は摺動自在に支持された移動部を、前記移動部を回動又は摺動させるための駆動源を、前記移動部に配設された慣性センサーの出力を用いて制御する慣性センサーを用いた制御方法であって、前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生工程と、前記駆動源による駆動量を検出することによって、前記駆動源の位置情報を検出する位置情報検出工程と、前記慣性センサーによって、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する慣性力情報を検出する慣性力情報検出工程と、前記慣性力情報を用いて前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際の、前記慣性力情報の重み付け定数を決定する定数決定工程と、前記制御指令と、前記位置情報と、前記定数決定工程において決定された前記重み付け定数を乗じた前記慣性力情報と、を用いて前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する駆動制御工程と、を有することを特徴とする。
【0042】
本適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法によれば、定数決定工程において、慣性力情報の重み付け定数を決定し、駆動制御工程において、制御指令、位置情報、及び制御切替決定部が決定した重み付け定数を乗じた慣性力情報を用いて移動部の移動動作を制御する。これにより、適切な制御を実施することに対して、慣性力情報を用いることによる効果及び慣性力情報の誤差が及ぼす影響を総合的に考慮して重み付け定数を決定することで、総合的に慣性力情報を用いることによる効果が大きくなり、慣性力情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【0043】
[適用例19]上記適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程が、前記慣性力情報を、前記慣性力情報について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることが好ましい。
【0044】
この慣性センサーを用いた制御方法によれば、制御切替決定工程又は定数決定工程において、慣性力情報を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かが、又は慣性力情報の重み付け定数が決定される。慣性力情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、慣性力が小さくなると、慣性力情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる慣性力情報の誤差の影響を受け、位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。慣性力情報を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かを、又は慣性力情報の重み付け定数を決定することで、総合的に慣性力情報を用いることによる効果が大きくなり、慣性力情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【0045】
[適用例20]上記適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程が、前記位置情報を、前記位置情報について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることが好ましい。
【0046】
この慣性センサーを用いた制御方法によれば、制御切替決定工程又は定数決定工程において、位置情報を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かが、又は慣性力情報の重み付け定数が決定される。慣性力情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、移動量が一定の量より大きくなって等速で移動する位置において移動している状態や、目的の位置に近づいて移動速度が小さくなった状態では、慣性力が小さくなり、慣性力が小さくなると、慣性力情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる慣性力情報の誤差の影響を受け、位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。位置情報を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かを、又は慣性力情報の重み付け定数を決定することで、総合的に慣性力情報を用いることによる効果が大きくなり、慣性力情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【0047】
[適用例21]上記適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程が、前記慣性力情報の一回以上の積分値を、前記慣性力情報の一回以上の積分値について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることが好ましい。
【0048】
この慣性センサーを用いた制御方法によれば、制御切替決定工程又は定数決定工程において、慣性力情報の一回以上の積分値を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かが、又は慣性力情報の重み付け定数が決定される。慣性力情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、慣性力が小さくなると、慣性力情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる慣性力情報の誤差の影響を受け位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。慣性力情報の一回以上の積分値を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かを、又は慣性力情報の重み付け定数を決定することで、総合的に慣性力情報を用いることによる効果が大きくなり、慣性力情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。慣性力情報の一回以上の積分値を閾値と比較することは、慣性力情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。慣性力情報の一回以上の積分値を扱うことで、位置情報などと単位を共通にして扱いやすくすることができる。
【0049】
[適用例22]上記適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程が、前記位置情報の一回以上の微分値を、前記位置情報の一回以上の微分値について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることが好ましい。
【0050】
この慣性センサーを用いた制御方法によれば、制御切替決定工程又は定数決定工程において、位置情報の一回以上の微分値を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かが、又は慣性力情報の重み付け定数が決定される。慣性力情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができる。しかし、移動量が一定の量より大きくなって等速で移動する位置において移動している状態や、目的の位置に近づいて移動速度が小さくなった状態では、慣性力が小さくなり、慣性力が小さくなると、慣性力情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる慣性力情報の誤差の影響を受け位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。位置情報の一回以上の微分値を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かを、又は慣性力情報の重み付け定数を決定することで、総合的に慣性力情報を用いることによる効果が大きくなり、慣性力情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。位置情報の一回以上の微分値を閾値と比較することは、位置情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。位置情報の一回以上の微分値を扱うことで、慣性力情報などと単位を共通にして扱いやすくすることができる。
【0051】
[適用例23]上記適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程が、前記制御指令の特徴点からの経過時間を、予め設定された前記制御指令の特徴点を基点にした時間軸における閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることが好ましい。
【0052】
この慣性センサーを用いた制御方法によれば、制御切替決定工程又は定数決定工程において、制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かが、又は慣性力情報の重み付け定数が決定される。慣性力情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、慣性力が小さくなると、慣性力情報を用いる効果が減少すると共に、ノイズなどによる慣性力情報の誤差の影響を受け位置情報のみを使用した場合よりも精度が落ちる。制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かを、又は慣性力情報の重み付け定数を決定することで、総合的に慣性力情報を用いることによる効果が大きくなり、慣性力情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
例えば移動する目的の位置のような制御指令の特徴点から一定以上の時間が経過すると、慣性力情報の値は、制御指令において規定された特徴点における慣性力の値となる。制御指令の特徴点からの経過時間を閾値と比較することで、慣性力情報を閾値と比較する場合と同様の判断基準とすることができる。経過時間を基準とすることで、慣性力情報などを閾値と比較する場合にくらべて、制御を簡単にすることができる。
【0053】
[適用例24]上記適用例にかかる慣性センサーを用いた制御方法は、前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程が、前記慣性力情報に影響を与えるノイズを、予め設定された前記ノイズの閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることが好ましい。
【0054】
この慣性センサーを用いた制御方法によれば、制御切替決定工程又は定数決定工程において、慣性力情報に影響を与えるノイズを閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かが、又は慣性力情報の重み付け定数が決定される。慣性力情報を用いることで、用いない場合に比べてより好適な制御を実施することができるが、慣性力情報に影響を与えるノイズが大きくなると、ノイズなどによる慣性力情報の誤差の影響が大きくなるため、慣性力情報を用いる効果が減少する。慣性力情報に影響を与えるノイズを閾値と比較して、慣性力情報を用いるか否かを、又は慣性力情報の重み付け定数を決定することで、慣性力情報の誤差が及ぼす影響が小さくなる、移動部の移動動作の制御を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】給除材装置の概略構成を示す外観斜視図。
【図2】ロボット機構を駆動させる機能的構成を示す機能構成ブロック図。
【図3】アーム駆動モーターの駆動を制御することによって給除材アームを回動させる工程を示すフローチャート。
【図4】(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と角速度の関係及び角速度の閾値の例を示す説明図。(b)は、給除材アームが停止する間際の時間経過と角速度の関係及び角速度の閾値の例を示す説明図。
【図5】ロボット機構を駆動させる機能的構成を示す機能構成ブロック図。
【図6】アーム駆動モーターの駆動を制御することによって給除材アームを回動させる工程を示すフローチャート。
【図7】(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と角速度の関係及び角速度の閾値の例を示す説明図。(b)は、角速度情報の例を示す説明図。
【図8】(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と回動角度の関係及び角度の閾値の例を示す説明図。(b)は、給除材アームが停止する間際の時間経過と角度の関係及び角度の閾値の例を示す説明図。
【図9】(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と角速度の関係、及び制御指令値の特徴点である目的の停止位置に対して時間軸において規定された閾値の例を示す説明図。(b)は、制御指令値の特徴点である目的の停止位置近傍の時間経過と角速度の関係、及び制御指令値の特徴点である目的の停止位置に対して時間軸において規定された閾値の例を示す説明図。
【図10】給除材装置の概略構成を示す外観斜視図。
【図11】搬送装置の概略構成を示す外観斜視図。
【図12】レーザープリンターの要部の概略構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、ロボット、搬送装置、及び慣性センサーを用いた制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明において参照する図面では、構成部材をわかり易く表示するために、部材又は部分の縦横の縮尺や部分ごとの縮尺を実際のものとは異なるように表す場合がある。
【0057】
(第一の実施形態)
ロボット、搬送装置、及び慣性センサーを用いた制御方法の一実施形態である第一の実施形態について、説明する。本実施形態は、搬送装置の一例である、給除材装置を例にして説明する。本実施形態の給除材装置は、例えば、半導体装置の製造工程において、半導体装置を構成する複数の半導体チップが区画形成されたウェハーを取扱う給除材装置である。
【0058】
<給除材装置>
最初に、給除材装置10の機械的構成について、図1を参照して説明する。図1は、給除材装置の概略構成を示す外観斜視図である。
図1に示すように、給除材装置10は、保持ハンド12と、ロボット機構20と、給除材装置制御部30と、角速度センサー32と、角度センサー34(図2参照)と、を備えている。
【0059】
ロボット機構20は、ハンド保持機構24と、給除材アーム21と、アーム軸部26と、機台28と、を備えている。機台28は、内蔵する軸受機構(図示省略)を介して、アーム軸部26をアーム軸部26の回動軸回りに回動自在に、且つ精密に位置決め固定可能に支持している。アーム軸部26は、機台28に内蔵されたアーム駆動モーター22(図2参照)と、アーム駆動機構23(図2参照)を介して接続されており、アーム駆動モーター22によって回動させられる。アーム駆動モーター22には角度センサー34が接続されており、角度センサー34によってアーム駆動モーター22の回動角度が測定される。
アーム軸部26の機台28に支持された側と反対側の端には、給除材アーム21の一端が固定されている。給除材アーム21は、アーム駆動モーター22によって、アーム軸部26の回動軸を中心に回動させられる。給除材アーム21の回動角度は、角度センサー34によってアーム駆動モーター22の回動角度を測定することによって近似的に測定される。
【0060】
給除材アーム21のアーム軸部26に固定された反対側の端には、ハンド保持機構24が固定されている。ハンド保持機構24は、給除材アーム21に固定された保持軸受24aと、保持軸受24aに摺動自在に、且つ精密に位置決め固定可能に支持された保持機構軸24bとを備えている。保持機構軸24bは、図示省略した上下駆動源によって、保持軸受24aに対して保持機構軸24bの軸方向に摺動可能である。保持機構軸24bの軸方向は、アーム軸部26の軸方向と略平行である。
保持機構軸24bの自由端には、保持ハンド12が取り付けられている。給除材アーム21を回動させることによって、保持ハンド12を搬送対象物に臨む位置に位置させる。保持軸受24aに対して保持機構軸24bを摺動させることによって、保持ハンド12を搬送対象物に離接させると共に、保持ハンド12によって保持した搬送対象物を、載置場所から持ち上げたり、載置場所に接近させたりする。
保持ハンド12が取り付けられているハンド保持機構24には、保持ハンド12と反対側に角速度センサー32が固定されている。すなわち、角速度センサー32は、給除材アーム21の先端に固定されており、給除材アーム21が回動させられる角速度を測定可能である。
給除材装置制御部30は、情報入出力装置(図示省略)を介して予め入力された制御プログラムに基づいて、給除材装置10の各部の動作を統括制御する。
【0061】
<ロボット機構駆動の機能的構成>
次に、ロボット機構20を駆動させる機能的構成について、図2を参照して説明する。図2は、ロボット機構を駆動させる機能的構成を示す機能構成ブロック図である。
上述したように、給除材アーム21を回動させるために、給除材装置10は、アーム駆動モーター22と、アーム駆動機構23と、角速度センサー32と、角度センサー34と、給除材装置制御部30とを備えている。
角速度センサー32としては、例えばジャイロセンサーを用いることができる。角度センサー34としては、例えばエンコーダーを用いることができる。給除材アーム21がアームに相当し、ロボット機構20がロボットに相当し、アーム駆動モーター22が駆動源に相当し、角速度センサー32が慣性センサーに相当する。
【0062】
図2に示すように、給除材装置制御部30は、アーム駆動モーター22を制御するためのロボット制御部31を備えている。ロボット制御部31は、制御指令発生部36と、制御切替決定部37と、アーム動作制御部38と、モータードライバー39とを備えている。
制御指令発生部36は、給材又は除材の稼動指令に基づくロボット機構20の動作指令を実行するための給除材アーム21の動作指令を出力する。稼動指令は、図示省略した入力装置から給除材装置10に入力される。稼動指令に基づくロボット機構20の動作指令は、給除材装置制御部30が備える統括制御部(図示省略)から制御指令発生部36に出力される。制御指令発生部36が出力する給除材アーム21の動作指令は、例えば、給除材アーム21の先端の軌道が、時間ごとの給除材アーム21の角度として指令される。
【0063】
アーム動作制御部38は、制御指令発生部36が出力する給除材アーム21の動作指令を実行するためのアーム駆動モーター22の制御信号を出力する。アーム動作制御部38は、角度情報使用制御部38aと、角度情報及び角速度情報使用制御部38bと、を有している。角度情報使用制御部38aは、給除材アーム21の動作指令を実行するために最適なアーム駆動モーター22の制御信号を、角度センサー34からの角度情報に拠って、生成して出力する。角度情報及び角速度情報使用制御部38bは、給除材アーム21の動作指令を実行するために最適なアーム駆動モーター22の制御信号を、角度センサー34からの角度情報、及び角速度センサー32からの角速度情報に拠って、生成して出力する。角度情報使用制御部38aと角度情報及び角速度情報使用制御部38bとの切替は、制御切替決定部37によって決定される。角度情報使用制御部38aと角度情報及び角速度情報使用制御部38bとは、それぞれ専用のハードウェアを設けても良いし、単一のハードウェアを制御プログラムによって、角度情報使用制御部38a又は角度情報及び角速度情報使用制御部38bとして機能させてもよい。アーム動作制御部38又はアーム動作制御部38が有する角度情報使用制御部38a及び角度情報及び角速度情報使用制御部38bが、アーム動作制御部に相当する。
【0064】
制御切替決定部37は、角度情報使用制御部38a、又は角度情報及び角速度情報使用制御部38bを用いることを選択して決定する。制御切替決定部37は、角度センサー34からの角度情報、角速度センサー32からの角速度情報、又は制御指令発生部36からの給除材アーム21の動作指令などに拠って、角度情報使用制御部38a、又は角度情報及び角速度情報使用制御部38bを用いることを選択して決定する。
【0065】
<給除材アーム21の回動>
次に、アーム駆動モーター22の駆動を制御することによって給除材アーム21を回動させて、給除材アーム21の先端に配設された保持ハンド12を所定の位置に位置させる工程について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、アーム駆動モーターの駆動を制御することによって給除材アームを回動させる工程を示すフローチャートである。図4は、制御を切替える基準とする角速度の閾値の例を示す説明図である。図4(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と角速度の関係及び角速度の閾値の例を示す説明図であり、図4(b)は、給除材アームが停止する間際の時間経過と角速度の関係及び角速度の閾値の例を示す説明図である。
【0066】
最初に、図3のステップS21では、「モーター停止指令」の有無を判定する。モーター停止指令は、アーム駆動モーター22を停止させ、制御を終了する指令である。
モーター停止指令があった場合(ステップS21でYES)には、アーム駆動モーター22の駆動を制御することによって給除材アーム21を回動させて給除材アーム21の先端に配設された保持ハンド12を所定の位置に位置させる工程を終了する。
モーター停止指令がない場合(ステップS21でNO)には、ステップS22に進む。
【0067】
次に、ステップS22では、制御指令値、角度情報、及び角速度情報を取得する。詳細には、制御指令発生部36が出力してアーム動作制御部38に入力された制御指令値が、制御切替決定部37に入力される。アーム駆動モーター22に接続された角度センサー34によって測定されたアーム駆動モーター22の回動角度から求められる給除材アーム21の回動角度の角度情報が、制御切替決定部37及びアーム動作制御部38に入力される。給除材アーム21の先端近くに固定された角速度センサー32によって測定された給除材アーム21の角速度の角速度情報が、制御切替決定部37及びアーム動作制御部38に入力される。
【0068】
次に、ステップS23では、制御切替決定部37が、角速度センサー32から出力された角速度情報から給除材アーム21の角速度が所定の閾値を超えたか否かを判定する。所定の閾値を閾値Sと表記する。
【0069】
給除材アーム21の角速度が所定の閾値Sを超えた(ステップS23でYES)場合には、制御切替決定部37は、角度情報及び角速度情報使用制御部38bを用いることを決定し、ステップS24に進む。
ステップS24では、角度情報及び角速度情報使用制御部38bが、制御指令値、角度情報、及び角速度情報から、トルク指令値を演算する。
【0070】
給除材アーム21の角速度が所定の閾値Sより小さい(ステップS23でNO)場合には、制御切替決定部37は、角度情報使用制御部38aを用いることを決定し、ステップS25に進む。
ステップS25では、角度情報使用制御部38aが、制御指令値、及び角度情報から、トルク指令値を演算する。
【0071】
図4(a)に示すように、給除材アーム21が回動を始めて、角速度が閾値S以下の段階と、目的位置に近づいて、角速度が閾値Sより小さくなった段階では、角速度情報を用いることなく、制御指令値、及び角度情報を用いた制御を実施する。当該制御は、例えば、角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID(Proportional Integral Differential)制御を用いる。この場合のPID制御などが、第二の制御に相当する。
回動動作の中間において角速度が閾値Sより大きい段階では、角速度情報、制御指令値、及び角度情報を用いた制御を実施する。当該制御は、例えば、いわゆる状態フィードバック制御と呼ばれる制御方法を用いる。この場合の状態フィードバック制御などが、第一の制御に相当する。
図4に二点鎖線で示した角速度は、制御指令値として経過時間ごとに指定された角速度である。図4に破線で示した角速度は、制御指令値及び角度情報を用いた角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID制御を実施した場合の経過時間ごとの角速度の例である。図4に実線で示した角速度は、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いて、状態フィードバック制御などを実施した場合の経過時間ごとの角速度の例である。
なお、図4では、PID制御を実施した場合の角速度を示す破線と、状態フィードバック制御などを実施した場合の角速度を示す実線と、を互いに分離して明示するために、状態フィードバック制御などを実施した場合の角速度を示す実線を時間的に遅いほうにずらして示している。
【0072】
ステップS24又はステップS25の次に、ステップS26では、角度情報使用制御部38a又は角度情報及び角速度情報使用制御部38bによって演算されて求められたトルク指令値を、モータードライバー39に入力する。
【0073】
次に、ステップS27では、モータードライバー39によってトルク指令値に対応する電力がアーム駆動モーター22に供給される。アーム駆動モーター22は、供給された電力に対応するトルクを発生する。
次に、ステップS28では、アーム駆動モーター22が発生したトルクによって、アーム駆動モーター22に接続されたアーム駆動機構23が作動して、アーム駆動モーター22にアーム駆動機構23を介して接続された給除材アーム21の角速度が、アーム駆動モーター22が発生したトルクによって加速又は減速される。
【0074】
ステップS28の次に、ステップS21に戻り、ステップS21においてモーター停止指令があった場合(ステップS21でYES)に、アーム駆動モーター22の駆動を制御することによって給除材アーム21を回動させて給除材アーム21の先端に配設された保持ハンド12を所定の位置に位置させる工程を終了する。
【0075】
図4(b)に示すように、制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合には、目的の位置を通り過ぎた保持ハンド12を戻すように給除材アーム21を回動させることによる残留振動が発生する可能性がある。当該残留振動の発生により、給除材アーム21が目的の位置にほぼ到達してから停止するまでに、当該残留振動が納まるまでの時間が必要である。
制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた制御を実施した場合には、振動をほとんど生じないため、給除材アーム21が目的の位置にほぼ到達してから停止するまでに、ほとんど時間を要しない。角速度情報にノイズが載った場合には、当該ノイズによって振動が生ずるため、精度が悪くなる。制御を切替える角速度の閾値をノイズによる振動の角速度より大きくすることで、ノイズによる影響を排除することができる。制御指令値と角度情報を用いた制御に切替えても、ノイズを含む角速度情報を用いる場合に比べて、大きな振動が生ずることを抑制することができる。
また、制御を切替える角速度の閾値を、制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合の残留振動の最大角速度より小さくすることで、制御を切替える時点より前は、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた制御を実施することで振動が生じることを抑制できる。このため、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた制御を実施することなく制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合にくらべて、残留振動の最大角速度を小さくして、該残留振動が納まるまでの時間を低減することができる。
【0076】
(第二の実施形態)
次に、ロボット、搬送装置、及び慣性センサーを用いた制御方法の一実施形態である第二の実施形態について、説明する。本実施形態における搬送装置の一例である給除材装置210は、第一の実施形態で図1を参照して説明した給除材装置10と、実質的に同様の機械的構成を備えている。給除材装置10と一部が異なるロボット機構駆動の機能的構成、及び給除材アーム21を回動させる工程について説明する。
【0077】
<ロボット機構駆動の機能的構成>
最初に、本実施形態の給除材装置210におけるロボット機構20を駆動させる機能的構成について、図5を参照して説明する。図5は、ロボット機構を駆動させる機能的構成を示す機能構成ブロック図である。
給除材装置10と同様に、給除材装置210は、給除材アーム21を回動させるために、アーム駆動モーター22と、アーム駆動機構23と、角速度センサー32と、角度センサー34と、給除材装置制御部230とを備えている。
【0078】
図5に示すように、給除材装置制御部230は、アーム駆動モーター22を制御するためのロボット制御部231を備えている。ロボット制御部231は、制御指令発生部36と、制御切替決定部237と、アーム動作制御部238と、ゲイン調整部235と、モータードライバー39とを備えている。
制御指令発生部36は、給材又は除材の稼動指令に基づくロボット機構20の動作指令を実行するための給除材アーム21の動作指令を出力する。稼動指令は、図示省略した入力装置から給除材装置210に入力される。稼動指令に基づくロボット機構20の動作指令は、給除材装置制御部230が備える統括制御部(図示省略)から制御指令発生部36に出力される。制御指令発生部36が出力する給除材アーム21の動作指令は、例えば、給除材アーム21の先端の軌道が、時間ごとの給除材アーム21の角度として指令される。
【0079】
アーム動作制御部238は、制御指令発生部36が出力する給除材アーム21の動作指令を実行するためのアーム駆動モーター22の制御信号を出力する。アーム動作制御部238は、角度情報及び角速度情報使用制御部238bを有している。角度情報及び角速度情報使用制御部238bは、給除材アーム21の動作指令を実行するために最適なアーム駆動モーター22の制御信号を、角度センサー34からの角度情報、及び角速度センサー32からの角速度情報に拠って、生成して出力する。ゲイン調整部235は、角度情報及び角速度情報使用制御部238bが角度情報及び角速度情報に拠ってアーム駆動モーター22の制御信号を生成する際の、角速度情報のゲインを調整して、出力する。角速度情報のゲインの切替は、制御切替決定部237によって決定される。この場合は、ゲイン調整部235と制御切替決定部237とが、制御切替決定部に相当する。
角速度情報のゲインが、慣性力情報の重み付け定数に相当する。アーム動作制御部238又はアーム動作制御部238が有する角度情報及び角速度情報使用制御部238bが、アーム動作制御部に相当する。
【0080】
制御切替決定部237は、角度センサー34からの角度情報、角速度センサー32からの角速度情報、又は制御指令発生部36からの給除材アーム21の動作指令などに拠って、角速度情報のゲインの切替を決定する。
【0081】
<給除材アーム21の回動>
次に、給除材装置210において、アーム駆動モーター22の駆動を制御することによって給除材アーム21を回動させて、給除材アーム21の先端に配設された保持ハンド12を所定の位置に位置させる工程について、図6を参照して説明する。図6は、アーム駆動モーターの駆動を制御することによって給除材アームを回動させる工程を示すフローチャートである。
【0082】
最初に、図6のステップS41では、「モーター停止指令」の有無を判定する。モーター停止指令は、アーム駆動モーター22を停止させ、制御を終了する指令である。
モーター停止指令があった場合(ステップS41でYES)には、アーム駆動モーター22の駆動を制御することによって給除材アーム21を回動させて給除材アーム21の先端に配設された保持ハンド12を所定の位置に位置させる工程を終了する。
モーター停止指令がない場合(ステップS41でNO)には、ステップS42に進む。
【0083】
次に、ステップS42では、制御指令値、角度情報、及び角速度情報を取得する。詳細には、制御指令発生部36が出力してアーム動作制御部238に入力された制御指令値が、制御切替決定部237にも入力される。アーム駆動モーター22に接続された角度センサー34によって測定されたアーム駆動モーター22の回動角度から求められる給除材アーム21の回動角度の角度情報が、制御切替決定部237及びアーム動作制御部238に入力される。給除材アーム21の先端近くに固定された角速度センサー32によって測定された給除材アーム21の角速度の角速度情報が、制御切替決定部237及びアーム動作制御部238に入力される。
【0084】
次に、ステップS43では、制御切替決定部237が、角速度センサー32から出力された角速度情報から給除材アーム21の角速度が所定の閾値を超えたか否かを判定する。所定の閾値を閾値Sと表記する。
【0085】
給除材アーム21の角速度が所定の閾値Sを超えた(ステップS43でYES)場合には、制御切替決定部37は、角速度情報のゲインを1に決定し、ステップS45に進む。
【0086】
給除材アーム21の角速度が所定の閾値Sより小さい(ステップS43でNO)場合には、制御切替決定部237は、角速度情報のゲインを変更することを決定し、ステップS44に進む。
ステップS44では、ゲイン調整部235が、角度情報及び角速度情報使用制御部238bが角度情報及び角速度情報に拠ってアーム駆動モーター22の制御信号を生成する際の、角速度情報のゲインを1より小さい値に決定して、角度情報及び角速度情報使用制御部238bに出力する。ステップS44の次に、ステップS45に進む。
【0087】
ステップS43又はステップS44の次に、ステップS45では、角度情報及び角速度情報使用制御部238bが、制御指令値、角度情報、角速度情報、及び角速度情報のゲインから、トルク指令値を演算する。
【0088】
次に、ステップS46では、角度情報及び角速度情報使用制御部238bによって演算されて求められたトルク指令値を、モータードライバー39に入力する。
【0089】
次に、ステップS47では、モータードライバー39によってトルク指令値に対応する電力がアーム駆動モーター22に供給される。アーム駆動モーター22は、供給された電力に対応するトルクを発生する。
次に、ステップS48では、アーム駆動モーター22が発生したトルクによって、アーム駆動モーター22に接続されたアーム駆動機構23が作動して、アーム駆動モーター22にアーム駆動機構23を介して接続された給除材アーム21の角速度が、アーム駆動モーター22が発生したトルクによって加速又は減速される。
【0090】
ステップS48の次に、ステップS41に戻り、ステップS41においてモーター停止指令があった場合(ステップS41でYES)に、アーム駆動モーター22の駆動を制御することによって給除材アーム21を回動させて給除材アーム21の先端に配設された保持ハンド12を所定の位置に位置させる工程を終了する。
【0091】
(第三の実施形態)
次に、第一の実施形態及び第二の実施形態の変形例としての第三の実施形態について、説明する。本実施形態では、第一の実施形態又は第二の実施形態においてトルク指定値を演算する際に、角速度情報の使用又は不使用を決定する、又はゲインの値を決定する基準とする閾値について、上述した例の他の例について説明する。
【0092】
<閾値例1>
最初に、角速度情報に対して閾値を規定する他の例について、図7を参照して説明する。図7は、制御を切替える基準とする角速度の閾値の例を示す説明図である。図7(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と角速度の関係及び角速度の閾値の例を示す説明図であり、図7(b)は、角速度情報の例を示す説明図である。
図7(a)に二点鎖線で示した角速度は、制御指令値として経過時間ごとに指定された角速度であり、実線で示した角速度は、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた状態フィードバック制御などを実施した場合の経過時間ごとの角速度の例である。図7(b)に実線で示した角速度は、ダイナミックレンジが大きい角速度センサーを用いて測定した角速度であり、破線で示した角速度は、ダイナミックレンジが比較的小さい角速度センサーを用いて測定した角速度である。
【0093】
一般的に、角速度センサーの出力は例えば電圧として出力され、出力できる電圧は有限である。このため、分解能を高くするとダイナミックレンジが小さくならざるを得ない。図7(b)に示したダイナミックレンジが比較的小さい角速度センサーのダイナミックレンジは概ね300dpsであり、図7(b)に示したように、測定対象の角速度がダイナミックレンジを超えると、角速度の出力は一定値となる。このため、測定対象の角速度がダイナミックレンジを超えた場合に角速度情報を用いてロボットの制御を実施すると、誤った制御を実施する可能性が高い。ダイナミックレンジを小さくすることで、分解能を高くすることが可能となり、角速度の小さな変動も検知可能となるため、緻密な制御が可能となる。
本閾値例では、図7(a)に示したように、角速度が閾値S2を超えた場合には、角速度情報を使用しない、又は角速度情報のゲインを1未満とする制御を実施する。
【0094】
<閾値例2>
次に、角度情報に対して閾値を規定する例について、図8を参照して説明する。図8は、制御を切替える基準とする角度の閾値の例を示す説明図である。図8(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と回動角度の関係及び角度の閾値の例を示す説明図であり、図8(b)は、給除材アームが停止する間際の時間経過と角度の関係及び角度の閾値の例を示す説明図である。
図8(a)に示すように、給除材アーム21が回動して、回動した角度が閾値S3を超えた段階では、角速度情報を用いることなく、制御指令値及び角度情報を用いた、例えば角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID制御、又は制御指令値と角度情報とゲインを1未満に設定した角速度情報とを用いた例えば状態フィードバック制御を実施する。回動動作を開始して回動角度が閾値S3より小さい段階では、角速度情報、制御指令値、及び角度情報を用いた制御を実施する。当該制御は、例えば、状態フィードバック制御を用いる。
図8に二点鎖線で示した回動角度は、制御指令値として経過時間ごとに指定された角度であり、破線で示した角度は、制御指令値及び角度情報を用いた角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID制御を実施した場合の経過時間ごとの角度の例であり、実線で示した角度は、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた状態フィードバック制御などを実施した場合の経過時間ごとの角度の例である。
なお、図8では、PID制御を実施した場合の角度を示す破線と、状態フィードバック制御などを実施した場合の角度を示す実線と、を互いに分離して明示するために、状態フィードバック制御などを実施した場合の角度を示す実線を時間的に遅いほうにずらして示している。
【0095】
図8(b)に示すように、制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合には、目的の位置を通り過ぎた保持ハンド12を戻すように給除材アーム21を回動させることによる残留振動が発生する可能性がある。当該残留振動の発生により、給除材アーム21が目的の位置にほぼ到達してから停止するまでに、当該残留振動が納まるまでの時間が必要である。
制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた制御を実施した場合には、振動をほとんど生じないため、給除材アーム21が目的の位置にほぼ到達してから停止するまでに、ほとんど時間を要しない。
【0096】
角速度情報にノイズが載った場合には、当該ノイズによって振動が生ずるため、精度が悪化する。制御を切替える角度の閾値を、目的の停止位置に対して、角速度情報のノイズによる振動の角度より離れた値にすることで、ノイズによる影響を排除することができる。制御指令値と角度情報を用いた制御に切替えても、ノイズを含む角速度情報を用いる場合に比べて、大きな振動が生ずることを抑制することができる。
また、制御を切替える角度の閾値を、目的の停止位置に対して、制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合の残留振動の最大振れ角度より近い位置の角度とすることで、制御を切替える時点より前は、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた制御を実施することで振動が生じることを抑制できる。制御を切替える時点での給除材アーム21の回動位置(角度)は、目的の停止位置に対して制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合の残留振動の最大振れ角度より近くにあることが推定できる。制御指令値及び角度情報を用いた制御であっても、制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合の残留振動の最大振れ角度を超える振動を生ずることなく、給除材アーム21を目的の停止位置に位置させることができる可能性が高い。このため、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた制御を実施することなく制御指令値と角度情報を用いた制御を実施した場合にくらべて、残留振動の最大振れ角度を小さくして、該残留振動が納まるまでの時間を低減することができる。
【0097】
<閾値例3>
次に、制御指令値の特徴点に対して時間軸において閾値を規定する例について、図9を参照して説明する。図9は、制御を切替える基準とする、制御指令値の特徴点に対して時間軸において規定された閾値の例を示す説明図である。図9(a)は、給除材アームを回動させる間の時間経過と角速度の関係、及び制御指令値の特徴点である目的の停止位置に対して時間軸において規定された閾値の例を示す説明図である。図9(b)は、制御指令値の特徴点である目的の停止位置近傍の時間経過と角速度の関係、及び制御指令値の特徴点である目的の停止位置に対して時間軸において規定された閾値の例を示す説明図である。
【0098】
図9に二点鎖線で示した角速度は、制御指令値として経過時間ごとに指定された角速度であり、実線で示した角度は、制御指令値と角速度情報及び角度情報を用いた状態フィードバック制御などを実施した場合の経過時間ごとの角速度の例である。
図9(a)及び(b)に示すように、制御指令値において、角速度が0になって、目的の停止位置に到達した時点から閾値である時間T1だけ経過した後は、角速度情報を用いることなく、制御指令値及び角度情報を用いた、例えば角度センサーの角度やその微分値の角速度を基にしたPID制御、又は制御指令値と角度情報とゲインを1未満に設定した角速度情報とを用いた例えば状態フィードバック制御を実施する。回動動作を開始してから、制御指令値において、角速度が0になるまでの間、及び角速度が0になった時点から時間T1の間は、角速度情報、制御指令値、及び角度情報を用いた制御を実施する。当該制御は、例えば、状態フィードバック制御を用いる。
【0099】
図9(b)に示すように、制御指令値の角速度が0になった時点から一定の時間T1が経過すると、一般的に、給除材アーム21の角速度は0になる。給除材アーム21の角速度が0にならず、さらにアーム駆動モーター22を駆動させるようなトルク指令値が出力されるような状態は、制御系に異常が発生した可能性が高い状態である。制御系の異常とは、例えば、角速度センサー32が故障した状態や、ノイズなどに起因して角速度情報が正しくない状態などである。制御指令値及び角度情報を用いた制御、又は制御指令値と角度情報とゲインを1未満に設定した角速度情報とを用いた制御を実施することで、これらの異常要因を排除することができる。
制御指令値の角速度が0になった時点から一定の時間T1が経過すると、給除材アーム21の回動位置(角度)は、目的の停止位置の近くにあることが推定できる。このため、制御指令値及び角度情報を用いた制御であっても、ほとんど振動を生ずることなく、給除材アーム21を目的の停止位置に位置させることができる可能性が高い。
【0100】
(第四の実施形態)
次に、ロボット、搬送装置、及び慣性センサーを用いた制御方法の一実施形態である第四の実施形態について、説明する。本実施形態では、第一の実施形態又は第二の実施形態で説明した給除材装置とは異なるロボット又は搬送装置の例について説明する。
【0101】
<給除材装置>
ロボット、搬送装置、及び慣性センサーを用いた制御方法の一実施形態である給除材装置であって、第一の実施形態又は第二の実施形態で説明した給除材装置10又は給除材装置210とは異なる、給除材装置310について、図10を参照して説明する。図10は、給除材装置の概略構成を示す外観斜視図である。
図10に示すように、給除材装置310は、保持ハンド12と、ロボット機構320と、給除材装置制御部330と、角速度センサー332aと、角速度センサー332bと、2個の角度センサー(図示省略)と、を備えている。
【0102】
ロボット機構320は、ハンド保持機構24と、給除材アーム321と、アーム軸部326と、機台328と、を備えている。機台328は、内蔵する軸受機構(図示省略)を介して、アーム軸部326をアーム軸部326の回動軸回りに回動自在に、且つ精密に位置決め固定可能に支持している。アーム軸部326は、機台328に内蔵されたアーム駆動モーター(図示省略)と、アーム駆動機構(図示省略)を介して接続されており、アーム駆動モーターによって回動させられる。アーム駆動モーターには角度センサーが接続されており、角度センサーによってアーム駆動モーターの回動角度が測定される。
【0103】
アーム軸部326の機台328に支持された側と反対側の端には、給除材アーム321の一端が固定されている。給除材アーム321は、アーム部321aと、アーム部321bと、アーム関節部323とを備えている。アーム部321aの一端とアーム部321bの一端とは、アーム関節部323で接続されている。アーム部321bのアーム関節部323に接続された一端の反対側の一端が、アーム軸部326に固定されている。アーム軸部326は、機台328に対してアーム軸部326の回動軸回りに回動自在であるため、アーム軸部326に一端を固定されたアーム部321bは、機台328に対してアーム軸部326の回動軸回りに回動自在である。
アーム部321bは、アーム部321aを、アーム関節部323を介して、アーム関節部323の回動軸を中心に回動可能に支持している。アーム関節部323のアーム部321aが固定された部分は、アーム部321bに内蔵されたアーム部駆動モーター(図示省略)と、アーム部駆動機構(図示省略)を介して接続されており、アーム部駆動モーターによって回動させられる。アーム部321aとアーム部321bとは、アーム関節部323において互いのなす角度を調整可能である。即ち、給除材アーム321は、アーム関節部323において屈伸可能である。アーム部駆動モーターにはアーム角度センサーが接続されており、アーム角度センサーによってアーム部駆動モーターの回動角度が測定される。アーム部駆動モーターの回動角度を測定することで、アーム部321bに対するアーム部321aの回動角度を測定することができる。
アーム軸部326の回動軸の軸方向と、アーム関節部323の回動軸の軸方向とは、互いに略平行である。
【0104】
アーム部321aのアーム関節部323に固定された反対側の端には、ハンド保持機構24が固定されている。ハンド保持機構24は、アーム部321aに固定された保持軸受24aと、保持軸受24aに摺動自在に、且つ精密に位置決め固定可能に支持された保持機構軸24bとを備えている。保持機構軸24bは、図示省略した上下駆動源によって、保持軸受24aに対して保持機構軸24bの軸方向に摺動可能である。保持機構軸24bの軸方向は、アーム軸部326の回動軸の軸方向及びアーム関節部323の回動軸の軸方向と略平行である。
保持機構軸24bの自由端には、保持ハンド12が取り付けられている。給除材アーム321を回動及び屈伸させることによって、保持ハンド12を搬送対象物に臨む位置に位置させる。保持軸受24aに対して保持機構軸24bを摺動させることによって、保持ハンド12を搬送対象物に離接させると共に、保持ハンド12によって保持した搬送対象物を、載置場所から持ち上げたり、載置場所に接近させたりする。
【0105】
保持ハンド12が取り付けられているハンド保持機構24には、保持ハンド12と反対側に角速度センサー332aが固定されている。すなわち、角速度センサー332aは、アーム部321aの先端に固定されており、アーム部321aが回動させられる角速度を測定可能である。
アーム部321bのアーム関節部323に接続された一端の側面には、角速度センサー332bが固定されている。したがって、角速度センサー332bは、アーム部321bの先端に固定されており、アーム部321bが回動させられる角速度を測定可能である。
給除材装置制御部330は、情報入出力装置(図示省略)を介して予め入力された制御プログラムに基づいて、給除材装置310の各部の動作を統括制御する。給除材装置制御部330は、角速度センサー332bによる角速度情報と機台328に内蔵された角度センサーによる角度情報とによって、アーム部321bの動作を制御可能である。同時に、角速度センサー332aによる角速度情報とアーム部321bに内蔵されたアーム角度センサーによる角度情報とによって、アーム部321aのアーム部321bに対する相対動作を制御可能である。すなわち、アーム部321aの動作とアーム部321bを統括した給除材アーム321の動作を、上述した実施形態と同様に、角速度情報と角度情報とを用いて制御することができる。
【0106】
<搬送装置>
次に、搬送対象物を保持する保持装置などが直交座標系に沿って平行移動する構成を備える搬送装置について、図11を参照して説明する。図11は、搬送装置の概略構成を示す外観斜視図である。図11(a)は、天吊搬送装置の概略構成を示す外観斜視図であり、図11(b)は、印刷装置におけるヘッド搬送装置の概略構成を示す外観斜視図である。
【0107】
<天吊搬送装置>
図11(a)に示すように、天吊搬送装置410は、主走査方向移動機構402と、副走査方向移動機構403と、昇降移動機構404と、保持機構412と、距離センサーと、加速度センサー432と、搬送装置制御部(図示省略)と、を備えている。
【0108】
主走査方向移動機構402は、主走査方向に延在する一対の主走査ガイドレール421,421と、主走査ガイドレール421に形成された主走査リニアモーターと、走査プレート422に形成された主走査スライダーとを備えている。走査プレート422は、一対の主走査ガイドレール421,421の間に架け渡されて、主走査方向と略直交する副走査方向に延在している。走査プレート422は、主走査リニアモーターと主走査スライダーとによって、主走査方向に自在に移動させられる。一対の主走査ガイドレール421,421は、例えば天井などに懸吊されて固定されている。
副走査方向移動機構403は、走査プレート422に形成された副走査リニアモーターと、副走査枠423に形成された副走査スライダーとを備えている。副走査枠423は、副走査リニアモーターと副走査スライダーとによって、副走査方向に自在に移動させられる。
昇降移動機構404は、副走査枠423に配設されたボール軸受と、ボール軸受駆動モーターと、昇降軸424に固定されたボールねじとを備えている。昇降軸424は、ボール軸受とボール軸受駆動モーターとボールねじとによって、昇降させられる。
昇降軸424のボールねじと反対側に固定された保持機構412を、主走査方向移動機構402と、副走査方向移動機構403と、によって主走査方向及び副走査方向の任意の位置に移動し、昇降移動機構404によって、搬送対象物に対して離接させることができる。
搬送装置制御部は、情報入出力装置(図示省略)を介して予め入力された制御プログラムに基づいて、天吊搬送装置410の各部の動作を統括制御する。
【0109】
主走査リニアモーターと、副走査リニアモーターと、ボール軸受駆動モーターとには、それぞれによる駆動距離を測定する距離センサーが接続されている。
副走査枠423又は保持機構412には、加速度センサー432a、加速度センサー432b、又は加速度センサー432cが固定されている。加速度センサー432a、加速度センサー432b、及び加速度センサー432cは、主走査方向、副走査方向、又は昇降方向の加速度を測定可能である。
主走査リニアモーター、副走査リニアモーター、又はボール軸受駆動モーターに接続された距離センサーによる、それぞれの方向における移動距離情報と、加速度センサー432a、加速度センサー432b、又は加速度センサー432cによる、それぞれの方向における加速度情報と、によって、保持機構412の移動を制御することができる。距離センサーとしては、例えばリニアエンコーダーを用いることができる。距離センサーが、位置センサーに相当する。
【0110】
移動距離情報及び加速度情報を用いて保持機構412の移動の制御を実行する際は、移動距離情報又は加速度情報などに閾値を予め設定し、搬送装置制御部の制御切替決定部が、移動距離情報又は加速度情報などを当該閾値と比較して、制御に加速度情報を使用するか否か、又は加速度情報に乗ずる定数を決定する。搬送装置制御部の動作制御部が、制御切替決定部の決定に従って、制御指令値と移動距離情報とを用いた制御、制御指令値と移動距離情報と加速度情報とを用いた制御、又は制御指令値と移動距離情報と加速度情報のゲインを乗じた加速度情報とを用いた制御を実施する。当該制御を実施することによって、主走査方向移動機構402、副走査方向移動機構403、及び昇降移動機構404の動作を制御して、保持機構412を任意の位置に移動し、位置決めする。
【0111】
<ヘッド搬送装置>
図11(b)に示すように、ヘッド搬送装置460は、印刷装置の吐出ヘッド462を移動させるものであり、ヘッドキャリッジ476と、キャリッジ軸474と、駆動ベルト473と、駆動プーリー472と、駆動モーター471と、加速度センサー482と、エンコーダー484と、を備えている。印刷装置は、印刷装置の各部の動作を統括制御する印刷装置制御部(図示省略)を備えている。
【0112】
駆動モーター471は図示省略した装置枠に固定されており、駆動軸の一端に駆動プーリー472が固定されている。駆動プーリー472と図示省略した従動プーリーとに、駆動ベルト473が張渡されており、駆動ベルト473は、駆動モーター471によって駆動される。キャリッジ軸474は、駆動ベルト473の延在方向と平行に配設されている。キャリッジ軸474には、ヘッドキャリッジ476がキャリッジ軸474の軸方向に摺動自在に嵌合して支持されている。ヘッドキャリッジ476は、駆動ベルト473と固定されており、駆動ベルト473が駆動されることによって、キャリッジ軸474に沿って移動させられる。ヘッドキャリッジ476に保持された吐出ヘッド462は、キャリッジ軸474の軸方向に移動させられ、任意の位置に保持される。
印刷装置制御部は、情報入出力装置(図示省略)を介して予め入力された制御プログラムに基づいて、印刷装置の各部の動作を統括制御する。
【0113】
エンコーダー484は、駆動モーター471の駆動軸に接続されており、駆動モーター471の回動角度を測定することによって、吐出ヘッド462の移動距離を測定することができる。当該移動距離に対応する吐出ヘッド462の位置に対応する駆動モーター471の回動角度情報を、駆動モーター471の位置情報と表記する。加速度センサー482はヘッドキャリッジ476に固定されており、ヘッドキャリッジ476が駆動されることによってヘッドキャリッジ476に作用する加速度を測定可能である。エンコーダー484による位置情報と、加速度センサー482による加速度情報と、によって、ヘッドキャリッジ476に保持された吐出ヘッド462の移動を制御することができる。エンコーダー484が、位置センサーに相当する。
【0114】
位置情報及び加速度情報を用いて吐出ヘッド462の移動の制御を実行する際は、位置情報又は加速度情報などに閾値を設定し、印刷装置制御部の制御切替決定部が、位置情報又は加速度情報などを当該閾値と比較して、制御に加速度情報を使用するか否か、又は加速度情報に乗ずる重み付け定数を決定する。印刷装置制御部の動作制御部が、制御切替決定部の決定に従って、制御指令値と位置情報とを用いた制御、制御指令値と位置情報と加速度情報とを用いた制御、又は制御指令値と位置情報と重み付け定数を乗じた加速度情報とを用いた制御を実施する。当該制御を実施することによって、駆動モーター471の動作を制御して、ヘッドキャリッジ476に保持された吐出ヘッド462を任意の位置に移動し、位置決めする。
【0115】
<レーザープリンター>
次に、ドラム状の部材の回動を制御する例として、レーザープリンター510について図12を参照して説明する。図12は、レーザープリンターの要部の概略構成を示す説明図である。
図12に示すように、レーザープリンター510は、感光体ドラム524と、ドラム駆動モーター522と、エンコーダー534と、駆動伝達機構523と、チャージ装置541と、レーザー発振装置542と、トナー供給装置543と、転写ローラー544と、定着ローラー546及び定着ローラー547と、トナー回収装置548と、角速度センサー532と、プリンター制御部(図示省略)と、を備えている。
【0116】
感光体ドラム524は、駆動伝達機構523を介してドラム駆動モーター522に接続されており、ドラム駆動モーター522によって回動軸回りに回動させられる。感光体ドラム524の表面は、チャージ装置541によってマイナスに帯電させられ、レーザー発振装置542によって、帯電部分が印刷物の形状に残されることで印刷物の形状が描かれ、トナー供給装置543によって供給されたトナーが、帯電した印刷物の形状に付着する。用紙549が転写ローラー544によって感光体ドラム524に圧着されて、トナーが用紙549に転写される。用紙549に転写されたトナーは、定着ローラー546及び定着ローラー547によって圧力と熱を加えて定着させる。トナーを転写した感光体ドラム524の表面は、トナー回収装置548によって不要なトナーが回収されて、再び上記工程が繰り返される。
プリンター制御部は、情報入出力装置(図示省略)を介して予め入力された制御プログラムに基づいて、レーザープリンター510の各部の動作を統括制御する。
【0117】
ドラム駆動モーター522の駆動軸には、エンコーダー534が接続されており、エンコーダー534によってドラム駆動モーター522の回動角度を測定することによって、感光体ドラム524の回動角度情報を取得することができる。角速度センサー532は感光体ドラム524に固定されており、角速度センサー532によって感光体ドラム524が回動する角速度の情報を取得することができる。エンコーダー534によるドラム駆動モーター522の回動角度情報と、角速度センサー532による角速度情報と、によって、感光体ドラム524の回動を制御することができる。
【0118】
回動角度情報及び角速度情報を用いて感光体ドラム524の回動の制御を実行する際は、回動角度情報又は角速度情報などに閾値を設定し、プリンター制御部の制御切替決定部が、回動角度情報又は角速度情報などを当該閾値と比較して、制御に角速度情報を使用するか否か、又は角速度情報に乗ずる重み付け定数を決定する。プリンター装置制御部の動作制御部が、制御切替決定部の決定に従って、制御指令値と回動角度情報とを用いた制御、制御指令値と回動角度情報と角速度情報とを用いた制御、又は制御指令値と回動角度情報と重み付け定数を乗じた角速度情報とを用いた制御を実施する。当該制御を実施することによって、ドラム駆動モーター522の動作を制御して、感光体ドラム524を任意の角度、回動させる。
【0119】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0120】
(変形例1)前記実施形態においては、回動角度情報や角速度情報や移動距離情報や加速度情報や位置情報などについて閾値を規定する例や、制御指令値の特徴点に対して時間軸において閾値を規定する例について説明したが、閾値を規定する対象はこれらに限らない。角速度情報や加速度情報の値に影響を及ぼすノイズに閾値を設定して、当該ノイズのレベルによって、角速度情報や加速度情報の使用又は不使用の決定、又は角速度情報や加速度情報の影響を調整するために角速度情報や加速度情報に乗ずる定数の決定を実施してもよい。角速度情報や加速度情報の値に影響を及ぼすノイズとしては、装置自身の機械振動や、周囲に存在する装置などの振動や、装置に供給される電力の振れや、周囲の電磁ノイズなどが挙げられる。
【0121】
(変形例2)前記実施形態においては、角速度センサー32による角速度情報や、加速度センサー432による加速度情報について閾値を規定する例について説明したが、閾値を規定する対象はこれらに限らない。閾値は、角速度情報や加速度情報の一回以上の積分値について規定してもよい。加速度情報の積分値は速度情報であって、速度情報は、角速度情報と同様に取り扱うことができる。加速度情報の二回積分値及び角速度情報の積分値は移動距離の情報であって、移動距離の情報は、角度情報や位置情報と同様に取り扱うことができる。
【0122】
(変形例3)前記実施形態においては、角度センサー34による角度情報や、距離センサーによる移動距離情報について閾値を規定する例について説明したが、閾値を規定する対象はこれらに限らない。閾値は、角度情報や移動距離情報の一回以上の微分値について規定してもよい。角度情報又は移動距離情報の微分値は、角速度又は移動速度であって、上述した角速度情報と同様に取り扱うことができる。角度情報又は移動距離情報の二回微分値は、角加速度又は加速度であって、上述した加速度情報と同様に取り扱うことができる。
【0123】
(変形例4)前記実施形態においては、回動角度情報や角速度情報や移動距離情報や加速度情報や位置情報などについて閾値を規定する例や、制御指令値の特徴点に対して時間軸において閾値を規定する例について説明した。これらの閾値を規定した対象は、制御を実行する際は、それぞれ単独で用いられていたが、閾値を規定した複数の対象を用いて制御を実行してもよい。例えば、回動角度情報及び角速度情報が共に閾値を超えた場合のみ、角速度情報を用いない制御を実行し、回動角度情報又は角速度情報の少なくとも一方が閾値を超えていない場合には、回動角度情報及び角速度情報を用いる制御を実行してもよい。また、回動角度情報や角速度情報や移動距離情報や加速度情報や位置情報などや、制御指令値の特徴点に対する時間軸などと、変形例1で説明した角速度情報や加速度情報の値に影響を及ぼすノイズレベルとを組み合わせてもよい。この場合、例えば、回動角度情報や角速度情報や移動距離情報や加速度情報や位置情報などや、制御指令値の特徴点に対する時間軸などと、ノイズレベルとの両方が共に閾値を超えた場合のみ、角速度情報などを用いない制御を実行し、少なくとも一方が閾値を超えていない場合には、回動角度情報など及び角速度情報などを用いる制御を実行する。これにより、角速度情報などのノイズレベルが低レベルに保たれているにも関わらず、ノイズによる悪影響を回避するために、角速度情報などを使用しない制御を実施するというような状態を回避することができる。
【0124】
(変形例5)前記実施形態においては、ロボット及び搬送装置の例として、ロボット機構20を備える給除材装置10、ロボット機構320を備える給除材装置310、天吊搬送装置410、印刷装置が備えるヘッド搬送装置460、レーザープリンター510が備えるドラム駆動装置、などを例に説明した。しかし、上述した慣性センサーを用いた制御方法を用いて好適に制御できるロボット及び搬送装置は、これらの例示した装置に限らない。上述した慣性センサーを用いた制御方法を用いることで、移動体を所定の目的位置まで速やかに移動させると共に、当該位置に精度良く速やかに停止させることが好ましい装置を好適に制御することができる。
【符号の説明】
【0125】
10,210…給除材装置、20…ロボット機構、21…給除材アーム、22…アーム駆動モーター、30,230…給除材装置制御部、31,231…ロボット制御部、32…角速度センサー、34…角度センサー、36…制御指令発生部、37,237…制御切替決定部、38,238…アーム動作制御部、235…ゲイン調整部、310…給除材装置、320…ロボット機構、321…給除材アーム、321a,321b…アーム部、323…アーム関節部、330…給除材装置制御部、332a,332b…角速度センサー、402…主走査方向移動機構、403…副走査方向移動機構、404…昇降移動機構、410…天吊搬送装置、432,432a,432b,432c…慣性センサー、460…ヘッド搬送装置、462…吐出ヘッド、471…駆動モーター、476…ヘッドキャリッジ、482…加速度センサー、484…エンコーダー、510…レーザープリンター、522…ドラム駆動モーター、524…感光体ドラム、532…角速度センサー、534…エンコーダー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を回動自在に支持されたアームと、前記アームを回動させるための駆動源と、前記駆動源の回動角度を検出し、前記駆動源の回動角度情報を出力する角度センサーと、前記アームに取り付けられており、前記アームに作用する慣性力の慣性力情報を出力する慣性センサーと、前記アームの回動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備えるロボットであって、
制御切替決定部と、
アーム動作制御部と、を備え、
前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記アームの動作を制御する際に、前記慣性力情報を用いるか否かを決定し、
前記アーム動作制御部は、前記制御切替決定部が、前記慣性力情報を用いることを決定した場合には、前記制御指令、前記回動角度情報、及び前記慣性力情報に拠って第一の制御を実施することで前記駆動源を制御して前記アームの動作を制御し、
前記制御切替決定部が、前記慣性力情報を用いないことを決定した場合には、前記制御指令、及び前記回動角度情報に拠って前記第一の制御とは異なる第二の制御を実施することで、前記駆動源を制御して前記アームの動作を制御することを特徴とするロボット。
【請求項2】
一端を回動自在に支持されたアームと、前記アームを回動させるための駆動源と、前記駆動源の回動角度を検出し、前記駆動源の回動角度情報を出力する角度センサーと、前記アームに取り付けられており、前記アームに作用する慣性力の慣性力情報を出力する慣性センサーと、前記アームの回動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備えるロボットであって、
制御切替決定部と、
アーム動作制御部と、を備え、
前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記アームの動作を制御する際の、前記慣性力情報の重み付け定数を決定し、
前記アーム動作制御部は、前記制御指令、前記回動角度情報、及び前記制御切替決定部が決定した前記重み付け定数を乗じた前記慣性力情報に拠って、前記駆動源を制御することによって前記アームの動作を制御することを特徴とするロボット。
【請求項3】
前記慣性力情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記慣性力情報を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項4】
前記回動角度情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記回動角度情報を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項5】
前記慣性力情報の一回以上の積分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記慣性力情報の一回以上の積分値を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項6】
前記回動角度情報の一回以上の微分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記回動角度情報の一回以上の微分値を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項7】
前記制御指令の特徴点をもとに時間軸における閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記特徴点からの経過時間を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項8】
前記慣性力情報に影響を与えるノイズに閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記慣性力情報に影響を与えるノイズを当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項9】
摺動自在に支持された移動部と、前記移動部を移動させるための駆動源と、前記駆動源による駆動量を検出し、前記駆動源の位置情報を出力する位置センサーと、前記移動部に取り付けられており、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する慣性力の慣性力情報を出力する慣性センサーと、前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備える搬送装置であって、
制御切替決定部と、
動作制御部と、を備え、
前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際に、前記慣性力情報を用いるか否かを決定し、
前記動作制御部は、前記制御切替決定部が、前記慣性力情報を用いることを決定した場合には、前記制御指令、前記位置情報、及び前記慣性力情報に拠って第一の制御を実施することで前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御し、
前記制御切替決定部が、前記慣性力情報を用いないことを決定した場合には、前記制御指令、及び前記位置情報に拠って前記第一の制御とは異なる第二の制御を実施することで、前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
摺動自在に支持された移動部と、前記移動部を移動させるための駆動源と、前記駆動源による駆動量を検出し、前記駆動源の位置情報を出力する位置センサーと、前記移動部に取り付けられており、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する慣性力の慣性力情報を出力する慣性センサーと、前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備える搬送装置であって、
制御切替決定部と、
動作制御部と、を備え、
前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際の、前記慣性力情報の重み付け定数を決定し、
前記動作制御部は、前記制御指令、前記位置情報、及び前記制御切替決定部が決定した前記重み付け定数を乗じた前記慣性力情報に拠って、前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項11】
前記慣性力情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記慣性力情報を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項9又は10に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記位置情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記位置情報を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項9又は10に記載の搬送装置。
【請求項13】
前記慣性力情報の一回以上の積分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記慣性力情報の一回以上の積分値を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項9又は10に記載の搬送装置。
【請求項14】
前記位置情報の一回以上の微分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記位置情報の一回以上の微分値を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項9又は10に記載の搬送装置。
【請求項15】
前記制御指令の特徴点をもとに時間軸における閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記特徴点からの経過時間を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項9又は10に記載の搬送装置。
【請求項16】
前記慣性力情報に影響を与えるノイズに閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記慣性力情報に影響を与えるノイズを当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項9又は10に記載の搬送装置。
【請求項17】
回動又は摺動自在に支持された移動部を、前記移動部を回動又は摺動させるための駆動源を、前記移動部に配設された慣性センサーの出力を用いて制御する慣性センサーを用いた制御方法であって、
前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生工程と、
前記駆動源による駆動量を検出し、前記駆動源の位置情報を検出する位置情報検出工程と、
前記慣性センサーによって、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する慣性力情報を検出する慣性力情報検出工程と、
前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際に、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する制御切替決定工程と、
前記制御切替決定工程において、前記慣性力情報を用いることが決定された場合には、前記位置情報及び前記慣性力情報に拠って第一の制御を実施することで、前記制御指令に従って前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御し、前記制御切替決定工程において、前記慣性力情報を用いないことが決定された場合には、前記位置情報に拠って前記第一の制御とは異なる第二の制御を実施することで、前記制御指令に従って前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御する駆動制御工程と、を有することを特徴とする慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項18】
回動又は摺動自在に支持された移動部を、前記移動部を回動又は摺動させるための駆動源を、前記移動部に配設された慣性センサーの出力を用いて制御する慣性センサーを用いた制御方法であって、
前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生工程と、
前記駆動源による駆動量を検出することによって、前記駆動源の位置情報を検出する位置情報検出工程と、
前記慣性センサーによって、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する慣性力情報を検出する慣性力情報検出工程と、
前記慣性力情報を用いて前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際の、前記慣性力情報の重み付け定数を決定する定数決定工程と、
前記制御指令と、前記位置情報と、前記定数決定工程において決定された前記重み付け定数を乗じた前記慣性力情報と、を用いて前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する駆動制御工程と、を有することを特徴とする慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項19】
前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程は、前記慣性力情報を、前記慣性力情報について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項20】
前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程は、前記位置情報を、前記位置情報について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項21】
前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程は、前記慣性力情報の一回以上の積分値を、前記慣性力情報の一回以上の積分値について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項22】
前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程は、前記位置情報の一回以上の微分値を、前記位置情報の一回以上の微分値について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項23】
前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程は、前記制御指令の特徴点からの経過時間を、予め設定された前記制御指令の特徴点を基点にした時間軸における閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項24】
前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程は、前記慣性力情報に影響を与えるノイズを、予め設定された前記ノイズの閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項1】
一端を回動自在に支持されたアームと、前記アームを回動させるための駆動源と、前記駆動源の回動角度を検出し、前記駆動源の回動角度情報を出力する角度センサーと、前記アームに取り付けられており、前記アームに作用する慣性力の慣性力情報を出力する慣性センサーと、前記アームの回動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備えるロボットであって、
制御切替決定部と、
アーム動作制御部と、を備え、
前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記アームの動作を制御する際に、前記慣性力情報を用いるか否かを決定し、
前記アーム動作制御部は、前記制御切替決定部が、前記慣性力情報を用いることを決定した場合には、前記制御指令、前記回動角度情報、及び前記慣性力情報に拠って第一の制御を実施することで前記駆動源を制御して前記アームの動作を制御し、
前記制御切替決定部が、前記慣性力情報を用いないことを決定した場合には、前記制御指令、及び前記回動角度情報に拠って前記第一の制御とは異なる第二の制御を実施することで、前記駆動源を制御して前記アームの動作を制御することを特徴とするロボット。
【請求項2】
一端を回動自在に支持されたアームと、前記アームを回動させるための駆動源と、前記駆動源の回動角度を検出し、前記駆動源の回動角度情報を出力する角度センサーと、前記アームに取り付けられており、前記アームに作用する慣性力の慣性力情報を出力する慣性センサーと、前記アームの回動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備えるロボットであって、
制御切替決定部と、
アーム動作制御部と、を備え、
前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記アームの動作を制御する際の、前記慣性力情報の重み付け定数を決定し、
前記アーム動作制御部は、前記制御指令、前記回動角度情報、及び前記制御切替決定部が決定した前記重み付け定数を乗じた前記慣性力情報に拠って、前記駆動源を制御することによって前記アームの動作を制御することを特徴とするロボット。
【請求項3】
前記慣性力情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記慣性力情報を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項4】
前記回動角度情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記回動角度情報を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項5】
前記慣性力情報の一回以上の積分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記慣性力情報の一回以上の積分値を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項6】
前記回動角度情報の一回以上の微分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記回動角度情報の一回以上の微分値を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項7】
前記制御指令の特徴点をもとに時間軸における閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記特徴点からの経過時間を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項8】
前記慣性力情報に影響を与えるノイズに閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記慣性力情報に影響を与えるノイズを当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項1又は2に記載のロボット。
【請求項9】
摺動自在に支持された移動部と、前記移動部を移動させるための駆動源と、前記駆動源による駆動量を検出し、前記駆動源の位置情報を出力する位置センサーと、前記移動部に取り付けられており、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する慣性力の慣性力情報を出力する慣性センサーと、前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備える搬送装置であって、
制御切替決定部と、
動作制御部と、を備え、
前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際に、前記慣性力情報を用いるか否かを決定し、
前記動作制御部は、前記制御切替決定部が、前記慣性力情報を用いることを決定した場合には、前記制御指令、前記位置情報、及び前記慣性力情報に拠って第一の制御を実施することで前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御し、
前記制御切替決定部が、前記慣性力情報を用いないことを決定した場合には、前記制御指令、及び前記位置情報に拠って前記第一の制御とは異なる第二の制御を実施することで、前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項10】
摺動自在に支持された移動部と、前記移動部を移動させるための駆動源と、前記駆動源による駆動量を検出し、前記駆動源の位置情報を出力する位置センサーと、前記移動部に取り付けられており、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する慣性力の慣性力情報を出力する慣性センサーと、前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生部と、を備える搬送装置であって、
制御切替決定部と、
動作制御部と、を備え、
前記制御切替決定部は、前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際の、前記慣性力情報の重み付け定数を決定し、
前記動作制御部は、前記制御指令、前記位置情報、及び前記制御切替決定部が決定した前記重み付け定数を乗じた前記慣性力情報に拠って、前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御することを特徴とする搬送装置。
【請求項11】
前記慣性力情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記慣性力情報を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項9又は10に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記位置情報に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記位置情報を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項9又は10に記載の搬送装置。
【請求項13】
前記慣性力情報の一回以上の積分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記慣性力情報の一回以上の積分値を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項9又は10に記載の搬送装置。
【請求項14】
前記位置情報の一回以上の微分値に閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記位置情報の一回以上の微分値を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項9又は10に記載の搬送装置。
【請求項15】
前記制御指令の特徴点をもとに時間軸における閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記特徴点からの経過時間を当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項9又は10に記載の搬送装置。
【請求項16】
前記慣性力情報に影響を与えるノイズに閾値を予め設定し、前記制御切替決定部は、前記慣性力情報に影響を与えるノイズを当該閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定することを特徴とする、請求項9又は10に記載の搬送装置。
【請求項17】
回動又は摺動自在に支持された移動部を、前記移動部を回動又は摺動させるための駆動源を、前記移動部に配設された慣性センサーの出力を用いて制御する慣性センサーを用いた制御方法であって、
前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生工程と、
前記駆動源による駆動量を検出し、前記駆動源の位置情報を検出する位置情報検出工程と、
前記慣性センサーによって、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する慣性力情報を検出する慣性力情報検出工程と、
前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際に、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する制御切替決定工程と、
前記制御切替決定工程において、前記慣性力情報を用いることが決定された場合には、前記位置情報及び前記慣性力情報に拠って第一の制御を実施することで、前記制御指令に従って前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御し、前記制御切替決定工程において、前記慣性力情報を用いないことが決定された場合には、前記位置情報に拠って前記第一の制御とは異なる第二の制御を実施することで、前記制御指令に従って前記駆動源を制御して前記移動部の移動動作を制御する駆動制御工程と、を有することを特徴とする慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項18】
回動又は摺動自在に支持された移動部を、前記移動部を回動又は摺動させるための駆動源を、前記移動部に配設された慣性センサーの出力を用いて制御する慣性センサーを用いた制御方法であって、
前記移動部の移動動作を規定する制御指令を出力する制御指令発生工程と、
前記駆動源による駆動量を検出することによって、前記駆動源の位置情報を検出する位置情報検出工程と、
前記慣性センサーによって、前記移動部が移動させられる際に前記移動部に作用する慣性力情報を検出する慣性力情報検出工程と、
前記慣性力情報を用いて前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する際の、前記慣性力情報の重み付け定数を決定する定数決定工程と、
前記制御指令と、前記位置情報と、前記定数決定工程において決定された前記重み付け定数を乗じた前記慣性力情報と、を用いて前記駆動源を制御することによって前記移動部の移動動作を制御する駆動制御工程と、を有することを特徴とする慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項19】
前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程は、前記慣性力情報を、前記慣性力情報について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項20】
前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程は、前記位置情報を、前記位置情報について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項21】
前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程は、前記慣性力情報の一回以上の積分値を、前記慣性力情報の一回以上の積分値について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項22】
前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程は、前記位置情報の一回以上の微分値を、前記位置情報の一回以上の微分値について予め設定された閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項23】
前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程は、前記制御指令の特徴点からの経過時間を、予め設定された前記制御指令の特徴点を基点にした時間軸における閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の慣性センサーを用いた制御方法。
【請求項24】
前記制御切替決定工程、又は前記定数決定工程は、前記慣性力情報に影響を与えるノイズを、予め設定された前記ノイズの閾値と比較して、前記慣性力情報を用いるか否かを決定する工程、又は前記慣性力情報の重み付け定数を決定する工程であることを特徴とする、請求項17又は18に記載の慣性センサーを用いた制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−284770(P2010−284770A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141943(P2009−141943)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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