説明

ロボットの軌道計画システム及び軌道計画方法

【課題】ロードマップを用いて軌道計画を行う場合に、複雑な環境下でも指定されるタスクに応じた軌道計画を実現可能とし、かつ、軌道算出可能性を保証しつつ軌道計画に要する処理コストを低減可能とする。
【解決手段】ロボットの軌道計画システム20は、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、に応じて構成された複数のノードがそれぞれ登録された複数のロードマップを記憶するロードマップ記憶部21と、入力されるタスク種類と、入力される初期姿勢及び最終姿勢と、から、対応するロードマップIDを特定するロードマップ選択器22と、周辺の環境情報を取得する環境情報取得器23と、ロードマップIDから対応するロードマップを特定して、入力される初期姿勢及び最終姿勢と、環境情報と、から、軌道を計画する軌道計画器24と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの軌道計画システム及び軌道計画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットは、環境情報を反映したロボットアームの軌道計画を、様々に変化する環境下においても自律的に行うことが求められる。ロボットアームの軌道計画とは、ロボット自身と環境とが干渉しないように、ロボットのエンドエフェクタが初期姿勢から最終姿勢へと到達する経路を算出する問題である。
【0003】
この問題の解法の一つとして、ロードマップを使用した手法が知られている。ロードマップとは、ロボットが取り得る姿勢(関節角度ベクトル)を予め複数のノードとして登録したものである。ノード情報は、軌道計画を行う際に経由点として利用される。ロードマップを使用した軌道計画とは、ロードマップの中からロボット自身と環境とが干渉しないノードを探索し、探索した各ノードを接続することで、軌道を算出するものである。
【0004】
ロードマップを使用した軌道計画についてより具体的に説明する。(a)初期姿勢から最終姿勢へと至る経路を求める際に、ロードマップに登録されたロボット姿勢(ノード)のうち、ロボット自身と環境とが干渉しない姿勢を経由点候補とする。(b)そして、複数の経由点候補の中から適切な基準(距離最小など)に基づいてノードを選択していき、初期姿勢から最終姿勢へと至る計画を行う。(c)結果として、選択した複数のノードを連結することで、初期姿勢から最終姿勢へと至り、かつ、環境と干渉しない軌道を算出することができる。
【0005】
図5に、ロードマップの例を示す。図に示す例では、ロードマップ100には、ノード101〜109が登録されており、軌道計画時には、初期姿勢に対応するノード201から開始して、最終姿勢に対応するノード202へと到達するまでに経由するノードが、ノード101〜109のうちから探索される。
【0006】
また、ロボットの軌道計画に関連する技術としては、他にも、特許文献1乃至11などに開示された技術がある。例えば特許文献1には、障害物回避軌道を発見すると共に、移動制御などに用い易くすることを目的として、RRTを用いて発見した軌道を平滑化する技術が開示されている。特許文献2及び3には、高速で経路計画を実行することを目的として、ロボットの作業環境が与えられた場合に、経由点の探索を高速に実行する技術が開示されている。また、特許文献4乃至7においても、高速で経路計画を実行することを目的として、空間を2段階で離散化しておき、最初は粗い空間で大域的に経路を計画し、次に、より微小な空間で詳細に経路を計画する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献8には、ロボットの始点、1つ以上の経由点、終点が与えられており、これらを補間した補間軌道をロボット駆動部への動作指令として使用する際に、この補間軌道の短縮化を目的とする技術が開示されている。特許文献8では、計算する元になったある経由点のうち、最も実行に時間のかかる部分(ボトルネック駆動部)に対する目標値を、実行時間が短くなるように変更し、この変更後の軌道が実行可能である(環境との干渉が無い)場合、ボトルネック駆動部以外の駆動部に対する目標値を、実行時間が短くなるように変更し、これらの変更を反映させた経由点を、最初に軌道を計算する元になった経由点と入れ替えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−211571号公報
【特許文献2】特開2000−20117号公報
【特許文献3】特許4103057号
【特許文献4】特開2000−181539号公報
【特許文献5】特開2000−339012号公報
【特許文献6】特開2002−73130号公報
【特許文献7】特許4244443号
【特許文献8】特開2009−172721号公報
【特許文献9】特開2009−134352号公報
【特許文献10】特開2009−134532号公報
【特許文献11】特開2008−269012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ロードマップを用いた軌道計画手法によれば複雑かつ様々に変化する環境下においても軌道を算出することが可能となるものの、以下の問題がある。
まず、複雑な環境下で初期姿勢から最終姿勢へと至る軌道を確実に算出可能とするためには、ロボットの姿勢を可能な限り多くロードマップに予め登録しておく必要がある。しかし、登録した姿勢の個数が増加するにつれて軌道計画時に探索すべき範囲が広がるために、軌道算出の処理コスト(処理時間や記憶容量など)が増してしまうという問題がある。一方で、ロードマップに登録した姿勢の個数が不十分な場合には、環境と干渉せずに初期姿勢から最終姿勢へと至る軌道を算出することができず、軌道計画に失敗する可能性があるという問題がある。このように、ロードマップに登録した姿勢の個数が多いと探索に処理コストを要することになり、個数が少ないと軌道が算出できないという背反事項が成立する。
【0010】
また、工場などの限定された環境下で定型動作を実行するだけのロボットとは異なり、実環境下で自律動作するロボットには、ユーザから指定される様々なタスク(環境内に存在する物体に対する作業)を実行可能とすることが強く求められる。しかし、上述したような従来技術では、ロードマップを用いて軌道計画を行う際にタスクの種類を考慮して探索を行うものではなく、任意のタスクに対しても軌道を確実に算出可能とするためには、冗長な構成のロードマップが必要となる。
【0011】
従って、本発明は、上述した課題を解決して、ロードマップを用いて軌道計画を行う場合に、複雑な環境下においても指定されるタスクに応じた軌道計画を実現可能とし、かつ、軌道算出可能性を保証しつつ軌道計画に要する処理コストを低減可能なロボットの軌道計画システム及び軌道計画方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る第一の態様のロボットの軌道計画システムは、ロボットが取り得る姿勢をノードとして、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、に応じて構成された複数のノードがそれぞれ登録された複数のロードマップを記憶するロードマップ記憶部と、入力されるタスク種類と、入力される初期姿勢及び最終姿勢と、から、対応するロードマップ識別情報を特定するロードマップ選択器と、前記ロボットの周辺の環境の環境情報を取得する環境情報取得器と、前記ロードマップ選択器で特定された前記ロードマップ識別情報から、前記ロードマップ記憶部に記憶された前記複数のロードマップのうちで対応するロードマップを特定し、当該特定したロードマップと、前記入力される初期姿勢及び最終姿勢と、前記環境情報取得器で取得された前記環境情報と、から、前記入力される初期姿勢から前記入力される最終姿勢へと至る軌道であって、かつ、前記環境と干渉しない軌道を計画する軌道計画器と、を備えることを特徴とするものである。
【0013】
これにより、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、に応じた複数のロードマップから、指定されるタスクに対応したロードマップを選択して、選択したロードマップを用いて環境と干渉しないように軌道計画を行うため、ロードマップを用いて軌道計画を行う場合に、複雑な環境下においても指定されるタスクに応じた軌道計画を実現可能とし、かつ、軌道算出可能性を保証しつつ軌道計画に要する処理コストを低減することができる。
【0014】
また、前記ロードマップ選択器は、前記タスク種類と、前記初期姿勢と、前記最終姿勢と、前記ロードマップ識別情報と、が対応付けられたテーブルを保持しており、当該テーブルを参照して、前記入力されるタスク種類と、前記入力される初期姿勢及び最終姿勢と、から、対応するロードマップのロードマップ識別情報を特定するようにしてもよい。これにより、タスクに応じたロードマップを簡単かつ高速に特定することができる。
【0015】
さらにまた、前記ロードマップ記憶部は、前記複数のロードマップ間で互いに共通する姿勢を示す重複ノードが存在する場合には、前記複数のロードマップのそれぞれから前記重複ノードを除いて記憶すると共に、当該重複ノードを登録したロードマップを追加して記憶し、前記ロードマップ選択器は、前記入力されるタスク種類と、前記入力される初期姿勢及び最終姿勢と、から、対応する複数のロードマップ識別情報を特定し、前記軌道計画器は、前記ロードマップ選択器で特定された前記複数のロードマップ識別情報から、前記ロードマップ記憶部に記憶された前記複数のロードマップのうちで対応する複数のロードマップを特定し、当該特定した複数のロードマップを用いて軌道を計画するようにしてもよい。このように、ロードマップ記憶部に記憶する複数のロードマップについて、複数のロードマップ間で重複ノードが存在する場合にその重複部分については、追加するロードマップに独立して記憶することで、複数のロードマップのそれぞれに登録するノードの個数を削減することができ、ロードマップ記憶部に要するメモリ容量の増加を抑制することができる。
【0016】
本発明に係る第二の態様のロボットの軌道計画システムは、環境内に存在する物体であって、当該物体に対して定められたタスクに応じた所定のロードマップ識別情報を有する対象物体と、ロボットが取り得る姿勢をノードとして、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、に応じて構成された複数のノードがそれぞれ登録された複数のロードマップを記憶するロードマップ記憶部と、前記対象物体が有する前記ロードマップ識別情報を含む、前記ロボットの周辺の環境の環境情報を取得する環境情報取得器と、前記環境情報取得器で取得された前記ロードマップ識別情報から、前記ロードマップ記憶部に記憶された前記複数のロードマップのうちで対応するロードマップを特定し、当該特定したロードマップと、入力される初期姿勢及び最終姿勢と、前記環境情報取得器で取得された前記環境情報と、から、前記入力される初期姿勢から前記入力される最終姿勢へと至る軌道であって、かつ、前記環境と干渉しない軌道を計画する軌道計画器と、を備えることを特徴とするものである。
【0017】
これにより、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、に応じた複数のロードマップから、対象物体のロードマップ識別情報に対応したロードマップを選択して、選択したロードマップを用いて環境と干渉しないように軌道計画を行うため、ロードマップを用いて軌道計画を行う場合に、対象物体のタスクに応じた適切なロードマップを確実に選択可能として、複雑な環境下においてもタスクに応じた軌道計画を実現可能とし、かつ、軌道算出可能性を保証しつつ軌道計画に要する処理コストを低減することができる。
【0018】
本発明に係る第三の態様の軌道計画方法は、ロボットが取り得る姿勢をノードとして、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、に応じて構成された複数のノードがそれぞれ登録された複数のロードマップを用いて前記ロボットの軌道を計画する軌道計画方法であって、入力されるタスク種類と、入力される初期姿勢及び最終姿勢と、から、対応するロードマップ識別情報を特定するステップと、前記ロボットの周辺の環境の環境情報を取得するステップと、前記特定した前記ロードマップ識別情報から、前記複数のロードマップのうちで対応するロードマップを特定し、当該特定したロードマップと、前記入力される初期姿勢及び最終姿勢と、前記取得した前記環境情報と、から、前記入力される初期姿勢から前記入力される最終姿勢へと至る軌道であって、かつ、前記環境と干渉しない軌道を計画するステップと、を備えることを特徴とするものである。
【0019】
これにより、ロードマップを用いて軌道計画を行う場合に、複雑な環境下においても指定されるタスクに応じた軌道計画を実現可能とし、かつ、軌道算出可能性を保証しつつ軌道計画に要する処理コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ロードマップを用いて軌道計画を行う場合に、複雑な環境下においても指定されるタスクに応じた軌道計画を実現可能とし、かつ、軌道算出可能性を保証しつつ軌道計画に要する処理コストを低減可能なロボットの軌道計画システム及び軌道計画方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態1に係るロボットの概略構成を示す全体図である。
【図2】実施の形態1に係るロボットの軌道計画システムの構成図である。
【図3】実施の形態1に係るロードマップの例を示す図である。
【図4】実施の形態1に係るロードマップ選択器が有するテーブルの例を示す図である。
【図5】ロードマップの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1.
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下では、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0023】
図1は、本実施の形態に係るロボットの概略構成を示す全体図である。
図1では、ロボット10の外観構成を例示しており、ロボット10は、胴体1と、胴体1に連結されたアーム2と、アーム2に連結されたハンド3と、を備えている。アーム2は、複数の関節と、関節を介して接続される複数のリンクと、を備えている。また、ハンド3は、手首関節を介してアーム2の端部に連結されている。なお、詳細についての図示は省略するが、ハンド3は、掌部と、関節を介して掌部に接続される複数本の指と、を備えていてもよい。各指は、複数の指関節と、指関節を介して接続される複数のリンクと、を備えていてもよい。
【0024】
各関節に備えられたモータなどのアクチュエータ(不図示)が駆動されることで、各関節は、所望の角度及び角速度で動作する。その結果、アーム2の位置及び姿勢と、ハンド3の位置及び姿勢と、指の位置及び姿勢と、を所望の位置及び姿勢に制御することができる。このように、アクチュエータは、ロボット10が動作する際の、動力発生手段に相当する。
【0025】
ロボット10は、ユーザから指定される様々なタスク(環境内に存在する物体に対する作業)を実行する。例えば、ロボット10は、環境内に存在する物体を、ハンド3により把持する。ロボット10は、このようなタスクを実行するためにアーム2の軌道計画を実行し、計画した軌道に追従するように、各関節を駆動制御する。なお、軌道とは、初期姿勢を示す関節角度ベクトルから最終姿勢を示す関節角度ベクトルへと至る関節角度ベクトルの系列であり、後述するロードマップを用いて算出される。
【0026】
図2は、本実施の形態に係るロボットの軌道計画システムの構成図である。軌道計画システム20は、ロードマップ記憶部21と、ロードマップ選択器22と、環境情報取得器23と、軌道計画器24と、を備えている。
【0027】
ロードマップ記憶部21は、複数のロードマップを記憶している。複数のロードマップには、互いを識別するためのロードマップの識別情報(以下、ロードマップIDと称する。)がそれぞれ付与されている。
【0028】
ロボット10と環境とが干渉しない軌道を計画するために、軌道上の経由点情報としてのロードマップを利用するが、ロボット10の取り得る全ての姿勢をロードマップに登録しておくと大規模なロードマップとなり、冗長なロードマップを登録することになる。そこで、本実施の形態では、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、に応じた複数のロードマップであって、比較的小規模又は中規模なロードマップを、ロードマップ記憶部21に記憶しておく。
【0029】
各ロードマップには、ロボット10が取り得る姿勢をノードとして、複数のノードが登録されている。各ロードマップは、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、に応じたノード構成となっている。ここで、各ノードは、あるタスク種類について、初期姿勢から最終姿勢へと至る軌道が算出できるように、ユーザにより予め注意深く選ばれている。
【0030】
ロボット10が実行するタスクとしては、例えば、環境内に存在する物体を取る、引き出しを開ける/閉める、ドアを開ける/閉める等が挙げられる。ロボット10がタスクを実行する際に取り得る軌道は、タスク種類と、ロボット10の初期姿勢と、最終姿勢と、に依存していることが経験的に分かっている。例えば、床の上から物を拾うタスクの軌道と、棚の上にある物を取るタスクの軌道とでは、これら軌道に含まれる姿勢は互いに重複しないものが多数ある。このため、軌道を計画するために用いるロードマップのノードの構成についても、タスクに応じて大きく異なる。
【0031】
図3に、ロードマップ記憶部21に記憶された複数のロードマップの例を示す。なお、図に示すロードマップは2次元平面上の概念図として説明しているが、実際には、ロードマップは関節の個数nに対応するn次元の空間上において定義されている。図3(a)は、環境内に存在する物体を取る(Take)場合に用いるロードマップ30を例示している。ロードマップ30には、ノード31〜39が登録されている。図3(b)は、環境内に存在する引き出しを開ける/閉める(Open/Close)場合に用いるロードマップ40を例示している。ロードマップ40には、ノード41〜47が登録されている。図3(c)は、環境内に物体を配置する(Place)場合に用いるロードマップ50を例示している。ロードマップ50には、ノード51〜57が登録されている。
【0032】
ロードマップ選択器22は、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、が入力されると、それらに対応するロードマップIDを特定し、軌道計画器23へとロードマップIDを出力する。ユーザは、軌道計画システム20に備えられたインタフェース(不図示)を介して、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、を入力することができる。なお、初期姿勢については、ロボット10の現在の姿勢をそのまま初期姿勢として与えるものとしてもよい。
【0033】
本実施の形態では、ロードマップ選択器22は、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、ロードマップIDと、が対応付けられたテーブルを保持しており、そのテーブルを参照してロードマップIDを特定する。テーブルを参照して特定することで、タスクに応じたロードマップを簡単かつ高速に特定することができる。
【0034】
図4に、ロードマップ選択器22が保持するテーブルの例を示す。図に示すテーブルを参照することで、タスク種類と、初期姿勢(初期姿勢範囲1、2)と、最終姿勢(最終姿勢範囲1、2)と、から、これらに対応するロードマップのロードマップIDを特定することができる。例えば、タスク種類をTake(物体を取る)とし、現在のロボット10の手先の位置をロボット座標系のZ軸上で80cmとし、目的とする手先の位置がZ軸上で70cmかつY軸上で5cmとした場合、ロードマップIDとして「3」が特定される。なお、図に示す例では、初期姿勢範囲と最終姿勢範囲を二段階に区分してテーブルに登録しているが、三段階以上の多段階に区分して登録してもよい。
【0035】
環境情報取得器23は、ロボット10の周辺の環境の環境情報を取得する。環境情報取得器23は、各種のセンサを用いて構成され、ロボット10の周辺の環境内に存在する物体の位置や形状などの環境情報を取得する。センサとしては、例えば、ステレオカメラやレーザーレンジファインダを用いて、環境内の物体について3次元の点群情報を取得し、ロボット10から物体までの距離情報を取得する。環境情報取得器23は、取得した物体の距離情報に基づいて、環境内の物体を、例えば、直方体形状のボクセル情報や、3次元の物体モデルとして生成し、環境情報として軌道計画器24に出力する。
【0036】
軌道計画器24は、ロードマップ選択器22で特定されたロードマップIDから、ロードマップ記憶部21に記憶された複数のロードマップのうちで対応するロードマップを特定する。そして、その特定したロードマップと、入力される初期姿勢及び最終姿勢と、環境情報取得器23で取得された環境情報と、から、入力される初期姿勢から入力される最終姿勢へと至る軌道であって、かつ、環境と干渉しない軌道を計画する。なお、ロードマップ上でのノードの探索方法については限定されず、ダイクストラ法などの公知の手法を用いればよい。
【0037】
軌道計画器24により計画された軌道は、ロボット10の制御器(不図示)へと入力される。制御器は、軌道に含まれる関節角度ベクトルに基づいてロボット10のアクチュエータへの制御指令を生成し、フィードバック制御を行う。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態に係る軌道計画システムでは、それぞれタスクに応じたロードマップを複数セット用意しておき、ロボット10に与えられたタスク種類/初期姿勢/最終姿勢に応じて適切なロードマップを選択することで、複雑な環境下においても指定されるタスクに応じた軌道計画を実現可能とし、かつ、軌道算出可能性を保証しつつ軌道計画に要する処理コストを低減することができる。
【0039】
より具体的に説明すると、ロードマップに登録するノードの構成をタスクに応じた最適な構成とすることで、タスクを実現するための軌道に関して探索候補となる可能性の高いノードは残したまま不要なノードについては登録せずに済むため、ロードマップに登録するノードの個数を冗長化せずに軌道算出可能性を保証することができる。
【0040】
さらに、ノードの構成がタスクに応じて登録されたロードマップでは、ロボット10が取り得る全ての姿勢を記憶した一つのロードマップを用いる場合と比較して、探索すべきノード数を大幅に削減することができるため、軌道計画に要する処理コストを大幅に低減することができる。
【0041】
その他の実施の形態.
上述した実施の形態1では、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、に応じた個数のロードマップをロードマップ記憶部21に記憶するものとして説明したが、類似する動作を行う場合には、複数のロードマップ間で、重複するノードが含まれていることも想定される。このため、複数のロードマップ間で互いに共通する姿勢を示す重複ノードが存在する場合には、複数のロードマップのそれぞれから重複ノードを除いて記憶すると共に、当該重複ノードを登録したロードマップを追加してロードマップ記憶部21へと記憶するものとしてもよい。例えば、IDが1のロードマップと、IDが2のロードマップとの間で、その姿勢(ノード)が共通する重複ノードが存在する場合には、重複ノードを除いたIDが1のロードマップと、重複ノードを除いたIDが2のロードマップと、重複ノードを登録したIDが3のロードマップと、をロードマップ記憶部21に記憶する。
【0042】
そして、上述した実施の形態1では、ロードマップ選択器22は、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、に対応する1つのロードマップIDを出力する場合を例に説明したが、対応するロードマップとして複数のロードマップIDを出力するものとしてもよい。軌道計画器24は、例えば、ロードマップIDが1のロードマップとIDが3のロードマップとを用いて、軌道計画を行う。
【0043】
このように、複数のロードマップ間で重複ノードが存在する場合にその重複部分については、追加するロードマップに独立して記憶することで、複数のロードマップのそれぞれに登録するノードの個数を削減することができ、ロードマップ記憶部21に要するメモリ容量の増加を抑制することができる。
【0044】
また、上述した実施の形態1では、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、に応じてロードマップ選択器22がロードマップIDを選択するものとして説明したが、ロードマップIDを環境内の物体に備えるものとしてもよい。具体的には、環境内に存在する対象物体についてタスクを定め、そのタスクに応じた所定のロードマップIDを対象物体に保持させる。そして、環境情報取得器23により対象物体からロードマップIDを取得し、取得したロードマップIDに対応するロードマップを用いて軌道計画を行う。なお、ロードマップIDの対象物体への保持方法及び取得方法は特に限定されず、公知の手法を用いればよい。
【0045】
これにより、ロードマップを用いて軌道計画を行う場合に、対象物体のタスクに応じた適切なロードマップを確実に選択可能として、複雑な環境下においてもタスクに応じた軌道計画を実現可能とし、かつ、軌道算出可能性を保証しつつ軌道計画に要する処理コストを低減することができる。また、図4に例示したテーブルをロボット10に保持させずに済み、処理コストをより低減させることができる。
【0046】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 胴体、
2 アーム、
3 ハンド、
10 ロボット、
20 軌道計画システム、
21 ロードマップ記憶部、
22 ロードマップ選択器、
24 軌道計画器、
30、40、50、100 ロードマップ、
31〜39、41〜47、51〜57、101〜109 ノード、
201 初期姿勢、
202 最終姿勢

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットが取り得る姿勢をノードとして、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、に応じて構成された複数のノードがそれぞれ登録された複数のロードマップを記憶するロードマップ記憶部と、
入力されるタスク種類と、入力される初期姿勢及び最終姿勢と、から、対応するロードマップ識別情報を特定するロードマップ選択器と、
前記ロボットの周辺の環境の環境情報を取得する環境情報取得器と、
前記ロードマップ選択器で特定された前記ロードマップ識別情報から、前記ロードマップ記憶部に記憶された前記複数のロードマップのうちで対応するロードマップを特定し、当該特定したロードマップと、前記入力される初期姿勢及び最終姿勢と、前記環境情報取得器で取得された前記環境情報と、から、前記入力される初期姿勢から前記入力される最終姿勢へと至る軌道であって、かつ、前記環境と干渉しない軌道を計画する軌道計画器と、
を備えることを特徴とするロボットの軌道計画システム。
【請求項2】
前記ロードマップ選択器は、
前記タスク種類と、前記初期姿勢と、前記最終姿勢と、前記ロードマップ識別情報と、が対応付けられたテーブルを保持しており、当該テーブルを参照して、前記入力されるタスク種類と、前記入力される初期姿勢及び最終姿勢と、から、対応するロードマップのロードマップ識別情報を特定する
ことを特徴とする請求項1に記載のロボットの軌道計画システム。
【請求項3】
前記ロードマップ記憶部は、
前記複数のロードマップ間で互いに共通する姿勢を示す重複ノードが存在する場合には、前記複数のロードマップのそれぞれから前記重複ノードを除いて記憶すると共に、当該重複ノードを登録したロードマップを追加して記憶し、
前記ロードマップ選択器は、
前記入力されるタスク種類と、前記入力される初期姿勢及び最終姿勢と、から、対応する複数のロードマップ識別情報を特定し、
前記軌道計画器は、
前記ロードマップ選択器で特定された前記複数のロードマップ識別情報から、前記ロードマップ記憶部に記憶された前記複数のロードマップのうちで対応する複数のロードマップを特定し、当該特定した複数のロードマップを用いて軌道を計画する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のロボットの軌道計画システム。
【請求項4】
環境内に存在する物体であって、当該物体に対して定められたタスクに応じた所定のロードマップ識別情報を有する対象物体と、
ロボットが取り得る姿勢をノードとして、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、に応じて構成された複数のノードがそれぞれ登録された複数のロードマップを記憶するロードマップ記憶部と、
前記対象物体が有する前記ロードマップ識別情報を含む、前記ロボットの周辺の環境の環境情報を取得する環境情報取得器と、
前記環境情報取得器で取得された前記ロードマップ識別情報から、前記ロードマップ記憶部に記憶された前記複数のロードマップのうちで対応するロードマップを特定し、当該特定したロードマップと、入力される初期姿勢及び最終姿勢と、前記環境情報取得器で取得された前記環境情報と、から、前記入力される初期姿勢から前記入力される最終姿勢へと至る軌道であって、かつ、前記環境と干渉しない軌道を計画する軌道計画器と、
を備えることを特徴とするロボットの軌道計画システム。
【請求項5】
ロボットが取り得る姿勢をノードとして、タスク種類と、初期姿勢と、最終姿勢と、に応じて構成された複数のノードがそれぞれ登録された複数のロードマップを用いて前記ロボットの軌道を計画する軌道計画方法であって、
入力されるタスク種類と、入力される初期姿勢及び最終姿勢と、から、対応するロードマップ識別情報を特定するステップと、
前記ロボットの周辺の環境の環境情報を取得するステップと、
前記特定した前記ロードマップ識別情報から、前記複数のロードマップのうちで対応するロードマップを特定し、当該特定したロードマップと、前記入力される初期姿勢及び最終姿勢と、前記取得した前記環境情報と、から、前記入力される初期姿勢から前記入力される最終姿勢へと至る軌道であって、かつ、前記環境と干渉しない軌道を計画するステップと、
を備えることを特徴とする軌道計画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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