ロボットシステム及びロボットの状態判定方法
【課題】ロボットの機能性を向上する。
【解決手段】ロボットシステム1は、アーム103L,103Rを有するロボット100と、アーム103L,103Rを構成する構造材料よりも固有振動数が大きい圧電体を有するセンサ122と、センサ122の出力値Vに基づいて、ロボット100が常態であるか非常態であるかを判定する判定部164を備えたロボットコントローラ150とを有している。ロボットコントローラ150は、アーム103L,103Rが常態時に所定の動作を行う間のセンサ122の出力値Vの時間履歴を規範データとして記憶する規範データ記録部163を有し、判定部164は、稼働時において、アーム103L,103Rが所定の動作を行う際のセンサ122の出力値Vの出力データと、規範データ記録部163に記録された規範データとを比較することにより、ロボット100が常態であるか非常態であるかを判定する。
【解決手段】ロボットシステム1は、アーム103L,103Rを有するロボット100と、アーム103L,103Rを構成する構造材料よりも固有振動数が大きい圧電体を有するセンサ122と、センサ122の出力値Vに基づいて、ロボット100が常態であるか非常態であるかを判定する判定部164を備えたロボットコントローラ150とを有している。ロボットコントローラ150は、アーム103L,103Rが常態時に所定の動作を行う間のセンサ122の出力値Vの時間履歴を規範データとして記憶する規範データ記録部163を有し、判定部164は、稼働時において、アーム103L,103Rが所定の動作を行う際のセンサ122の出力値Vの出力データと、規範データ記録部163に記録された規範データとを比較することにより、ロボット100が常態であるか非常態であるかを判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームを有するロボット、ひずみセンサ、及び制御ユニットを有するロボットシステム、並びに、ロボットの状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットの分野では、ロボット自身あるいはロボットの周囲に存在する物体に対して過剰な負荷が生じることを回避することが求められている。このため、ロボットに対する接触(外力)の有無を検出することが必要となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロボットアームの基端に外力を検出するための力検出器を取り付け、力検出器の検出結果に基づいてロボットアームの動作を停止させたり、過度な外力がかかった場合に外力が低減する方向にロボットアームを動作させる等の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−21287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術において、ロボットの機能性の向上を図るためには、ロボットアームに対する接触の有無等を高精度に検出することが要求される。
【0006】
上記従来技術では、力検出器で検出した力よりロボットアーム自身の動作により生じる内力を差し引くことにより、ロボットアームに作用する実際の外力を算出しているため、ロボットアームの接触に対する応答性が遅いことが考えられる。また、軽度の接触や瞬間的な接触等の場合に十分な検出をすることができないことも考えられる。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ロボットの機能性を向上できるロボットシステム及びロボットの状態判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のロボットシステムは、ロボットアームを有するロボットと、前記ロボットアームを構成する構造材料よりも固有振動数が大きい圧電体を有するひずみセンサと、前記ひずみセンサの出力値に基づいて、前記ロボットが常態であるか非常態であるかを判定する判定部を備えた制御ユニットと、を有することを特徴としている。
【0009】
また、前記制御ユニットは、前記ロボットアームが常態時に所定の動作を行う間の前記ひずみセンサの出力値の時間履歴を規範データとして記録する規範データ記録部を有し、前記判定部は、稼働時において、前記ロボットアームが前記所定の動作を行う際の前記ひずみセンサの出力値の出力データと、前記規範データ記録部に記録された前記規範データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定することが好ましい。
【0010】
また、前記判定部は、前記出力データと前記規範データとの差が予め設定された閾値の範囲内である場合には、前記ロボットが前記常態であると判定し、前記差が前記閾値を超えた場合には、前記ロボットが前記非常態であると判定することが好ましい。
【0011】
また、前記制御ユニットは、前記閾値を設定する閾値設定部をさらに有することが好ましい。
【0012】
また、前記制御ユニットは、前記規範データ記録部により前記ひずみセンサの出力値の時間履歴を前記規範データとして記録する区間を設定する区間設定部をさらに有することが好ましい。
【0013】
また、前記制御ユニットは、前記区間設定部で設定した区間に対応する前記所定の動作を前記ロボットアームが実行する毎に、前記ひずみセンサの零点調整を行う零点調整部をさらに有することが好ましい。
【0014】
また、前記制御ユニットは、前記ひずみセンサの出力信号の高周波振動成分を抽出するハイパスフィルタ部をさらに有し、前記判定部は、前記ハイパスフィルタ部により抽出された前記高周波振動成分に基づく前記規範データと前記出力データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定することが好ましい。
【0015】
また、前記制御ユニットは、前記ひずみセンサの出力信号の低周波振動成分を抽出するローパスフィルタ部をさらに有し、前記判定部は、前記ローパスフィルタ部により抽出された前記低周波振動成分に基づく前記規範データと前記出力データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定することが好ましい。
【0016】
また、前記ひずみセンサは、圧電体として水晶が用いられたセンサであることが好ましい。
【0017】
また、本発明のロボットの状態判定方法は、ロボットアームを有するロボットが常態であるか非常態であるかを判定するロボットの状態判定方法であって、前記ロボットアームを構成する構造材料よりも固有振動数が大きい圧電体を有するひずみセンサの出力値を取得する出力値取得手順と、前記ひずみセンサの出力値に基づいて、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定する判定手順と、を有することを特徴としている。
【0018】
また、前記ロボットアームが常態時に所定の動作を行う間に、前記ひずみセンサの出力値の時間履歴を規範データとして記録する規範データ記録手順をさらに有し、前記判定手順は、稼働時において、前記ロボットアームが前記所定の動作を行う際の前記ひずみセンサの出力値の出力データと、前記記録された規範データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ロボットの機能性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態のロボットシステムの全体構成を概念的に表すシステム構成図である。
【図2】ロボットの構成を表すロボットの上面図である。
【図3】ロボットコントローラの機能構成を表す機能ブロック図である。
【図4】接触検出部の機能構成を表す機能ブロック図である。
【図5】センサ部、ハイパスフィルタ部、及び判定部の詳細を説明するための説明図である。
【図6】アームが物体の接触のない状態で実行する所定の動作、及び、その間のセンサの出力値を説明するための説明図である。
【図7】稼働時においてアームが実行する所定の動作、及び、その間のセンサの出力値を説明するための説明図である。
【図8】アームに対する物体の接触を検出する手法を説明するための説明図である。
【図9】ロボットコントローラが実行する、本発明の一実施の形態のロボットの状態判定方法による制御手順を表すフローチャートである。
【図10】障害物の接触検出に適用する変形例において、稼働時においてアームが実行する所定の動作を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、本発明のロボットシステム及びロボットの状態判定方法を、一例として、2つのロボットアームを有する双腕ロボットによる物品把持制御に適用した場合の例である。
【0022】
図1は、本実施形態のロボットシステムの全体構成を概念的に表すシステム構成図である。図2は、ロボットの構成を表すロボットの上面図である。
【0023】
図1及び図2において、本実施形態のロボットシステム1は、複数の物品Pを搬送するベルトコンベア2の一方側に設けられたロボット100と、このロボット100を制御するロボットコントローラ150(制御ユニット)とを備えている。ロボット100は、双腕ロボットであり、基台101、胴体部102、2つのアーム103L,103R(ロボットアーム)、及び、2つのセンサ部120L,120Rを有している。
【0024】
基台101は、設置面(床部等)に対し図示しないアンカーボルト等により固定されている。胴体部102は、回転軸Ax1周りに回転駆動するアクチュエータAc1が設けられた第1関節部を有している。この胴体部102は、基台101に対し第1関節部を介して旋回可能に設置されており、第1関節部に設けられたアクチュエータAc1の駆動により上記設置面と略水平な方向に沿って旋回する。また、この胴体部102は、別体として構成されたアーム103L,103Rを、それぞれ一方側(図1及び図2中右側)及び他方側(図1及び図2中左側)において支持する。
【0025】
アーム103Lは、胴体部102の一方側に設けられたマニピュレータであり、肩部104L、上腕A部105L、上腕B部106L、下腕部107L、手首A部108L、手首B部109L、フランジ110L、及びハンド111Lと、これら各部をそれぞれ回転駆動するアクチュエータAc2〜Ac8がそれぞれ設けられた第2〜第8関節部とを有している。
【0026】
肩部104Lは、胴体部102に対し第2関節部を介して回転可能に連結されており、第2関節部に設けられたアクチュエータAc2の駆動により上記設置面に対して略水平な回転軸Ax2周りに回転する。上腕A部105Lは、肩部104Lに対し第3関節部を介して旋回可能に連結されており、第3関節部に設けられたアクチュエータAc3の駆動により回転軸Ax2に対して直交する回転軸Ax3周りに旋回する。上腕B部106Lは、上腕A部105Lの先端に対し第4関節部を介して回転可能に連結されており、第4関節部に設けられたアクチュエータAc4の駆動により回転軸Ax3に対して直交する回転軸Ax4周りに回転する。下腕部107Lは、上腕B部106Lに対し第5関節部を介して旋回可能に連結されており、第5関節部に設けられたアクチュエータAc5の駆動により回転軸Ax4に対して直交する回転軸Ax5周りに旋回する。手首A部108Lは、下腕部107Lの先端に対し第6関節部を介して回転可能に連結されており、第6関節部に設けられたアクチュエータAc6の駆動により回転軸Ax5に対して直交する回転軸Ax6周りに回転する。手首B部109Lは、手首A部108Lに対し第7関節部を介して旋回可能に連結されており、第7関節部に設けられたアクチュエータAc7の駆動により回転軸Ax6に対して直交する回転軸Ax7周りに旋回する。フランジ110Lは、手首B部109Lの先端に対し第8関節部を介して回転可能に連結されており、第8関節部に設けられたアクチュエータAc8の駆動により回転軸Ax7に対して直交する回転軸Ax8周りに回転する。ハンド111Lは、フランジ110Lの先端に対し取り付けられており、フランジ110Lの回転により従動的に回転する。
【0027】
アーム103Rは、胴体部102の他方側に設けられたマニピュレータであり、上記アーム103Lと同様の構造を備えている。このアーム103Rは、肩部104R、上腕A部105R、上腕B部106R、下腕部107R、手首A部108R、手首B部109R、フランジ110R、及びハンド111Rと、これら各部をそれぞれ回転駆動するアクチュエータAc9〜Ac15がそれぞれ設けられた第9〜第15関節部とを有している。
【0028】
肩部104Rは、胴体部102に対し第9関節部を介して回転可能に連結されており、第9関節部に設けられたアクチュエータAc9の駆動により上記設置面に対して略水平な回転軸Ax9周りに回転する。上腕A部105Rは、肩部104Rに対し第10関節部を介して旋回可能に連結されており、第10関節部に設けられたアクチュエータAc10の駆動により回転軸Ax9に対して直交する回転軸Ax10周りに旋回する。上腕B部106Rは、上腕A部105Rの先端に対し第11関節部を介して回転可能に連結されており、第11関節部に設けられたアクチュエータAc11の駆動により回転軸Ax10に対して直交する回転軸Ax11周りに回転する。下腕部107Rは、上腕B部106Rに対し第12関節部を介して旋回可能に連結されており、第12関節部に設けられたアクチュエータAc12の駆動により回転軸Ax11に対して直交する回転軸Ax12周りに旋回する。手首A部108Rは、下腕部107Rの先端に対し第13関節部を介して回転可能に連結されており、第13関節部に設けられたアクチュエータAc13の駆動により回転軸Ax12に対して直交する回転軸Ax13周りに回転する。手首B部109Rは、手首A部108Rに対し第14関節部を介して旋回可能に連結されており、第14関節部に設けられたアクチュエータAc14の駆動により回転軸Ax13に対して直交する回転軸Ax14周りに旋回する。フランジ110Rは、手首B部109Rの先端に対し第15関節部を介して回転可能に連結されており、第15関節部に設けられたアクチュエータAc15の駆動により回転軸Ax14に対して直交する回転軸Ax15周りに回転する。ハンド111Rは、フランジ110Rの先端に対し取り付けられており、フランジ110Rの回転により従動的に回転する。
【0029】
なお、この例では、アーム103L,103Rは、7つの関節部すなわち7自由度(冗長自由度)を有しているが、アーム103L,103Rの自由度は「7」に限られない。
【0030】
これらアーム103L,103Rの肩部104L,104R、上腕A部105L,105R、上腕B部106L,106R、下腕部107L,107R、手首A部108L,108R、手首B部109L,109R、フランジ110L,110R、及びハンド111L,111Rを構成する構造材料は、例えば鉄やアルミニウム等の金属材料により構成されている。
【0031】
また、図2に示すように、第1関節部の回転軸Ax1と第2及び第9関節部の各回転軸Ax2,Ax9とは、上記設置面と略水平な方向に長さD1だけオフセットされるように、基台101に対して胴体部102が第1関節部から第2及び第9関節部にかけて水平前方にせり出すように形成されている。これにより、肩部104L,104Rの下方側の空間を作業スペースとすることができると共に、回転軸Ax1を回転させることでアーム103L,103Rの可到範囲が拡大される。
【0032】
さらに、第11関節部の回転軸Ax11と第12関節部の回転軸Ax12とは、上面視での位置が長さD2だけオフセットされるように、上腕B部106Rの形状が設定されている。そして、第12関節部の回転軸Ax12と第13関節部の回転軸Ax13とは、上面視での位置が長さD3だけオフセットされるように、下腕部107Rの形状が設定されており、回転軸Ax11と回転軸Ax13とが略水平となる姿勢をとったときに、回転軸Ax11と回転軸Ax13とのオフセット長さが(D2+D3)となるようになっている。これにより、人間の「肘」に相当する第12関節部を屈曲させたときに、人間の「上腕」に相当する上腕A部105R及び上腕B部106Rと、人間の「下腕」に相当する下腕A部107Rとの間のクリアランスを大きく確保することができ、ハンド111Rをより胴体部102に近づけた場合でもアーム103Rの動作自由度が拡大される。
【0033】
またさらに、図2では明示していないが、アーム103Lについても同様に、第4関節部の回転軸Ax4と第5関節部の回転軸Ax5とは、上面視での位置が長さD2だけオフセットされるように、上腕B部106Lの形状が設定されている。そして、第5関節部の回転軸Ax5と第6関節部の回転軸Ax6とは、上面視での位置が長さD3だけオフセットされるように、下腕部107Lの形状が設定されており、回転軸Ax4と回転軸Ax6とが略水平となる姿勢をとったときに、回転軸Ax4と回転軸Ax6とのオフセット長さが(D2+D3)となるようになっている。
【0034】
センサ部120L,120Rは、それぞれ、図2に示すように、円盤状のセンサ固定治具121と、少なくとも1個(この例では3個)の略直方体状のセンサ122(ひずみセンサ)とにより構成されている。センサ部120Lのセンサ固定治具121は、アーム103Lの最も基端側に設けられたアクチュエータAc2の固定子の基部に取り付けられ、このセンサ固定治具121に設けられた各センサ122は、アーム103Lにかかる力(詳細には、力の大きさそのものではなく、アーム103Lにかかる衝撃力に起因する振動等によるひずみ量)をそれぞれ検出可能となっている。センサ部120Rのセンサ固定治具121は、アーム103Rの最も基端側に設けられたアクチュエータAc9の固定子の基部に取り付けられ、このセンサ固定治具121に設けられた各センサ122は、アーム103Rにかかる力(詳細には、力の大きさそのものではなく、アーム103Rにかかる衝撃力に起因する振動等によるひずみ量)をそれぞれ検出可能となっている。このセンサ部120L,120Rの詳細については、後述する。
【0035】
上記のように構成されたロボット100は、アーム103L,103Rが上記ベルトコンベア2上の物品Pの両側より内側に向けて動作し、アーム103L,103Rに対する物体の接触が検出された際に、動作を停止してハンド111L,111Rで物品Pを把持するように、各アクチュエータAc1〜Ac15を含む各駆動部位の動作が、ロボットコントローラ150により制御されている。また、各アクチュエータAc1〜Ac15は、それぞれ、図示しないケーブルを挿通可能な中空部を有する減速機一体型のサーボモータにより構成されており、各アクチュエータAc1〜Ac15の回転位置は、各アクチュエータAc1〜Ac15に内蔵された図示しないエンコーダからの信号として、ロボットコントローラ150にケーブルを介して入力されるようになっている。
【0036】
図3は、ロボットコントローラ150の機能構成を表す機能ブロック図である。
【0037】
図3において、ロボットコントローラ150は、図示しない演算器、記憶装置、入力装置等を備えたコンピュータにより構成されており、ロボット100の各駆動部位や各センサ122とケーブルを介して相互通信可能に接続されている。このロボットコントローラ150は、動作指令部151、位置指令遮断部152、平滑化処理部153、サーボ部154、接触検出部155、把持トルク補償部156、及び重力トルク補償部157を有している。
【0038】
動作指令部151は、入力装置を介して教示された各アーム103L,103Rに対する教示情報(動作開始位置及び動作完了位置の情報)等に基づき、各アクチュエータAc1〜Ac15に対する位置指令(動作指令)をそれぞれ算出し、位置指令遮断部152を介して平滑化処理部153にプールする。
【0039】
平滑化処理部153は、所定の演算周期毎に、プールされた上記位置指令をサーボ部154に順次出力する。
【0040】
サーボ部154は、各アクチュエータAc1〜Ac15毎に、各アクチュエータAc1〜Ac15のエンコーダの検出値による関節角度フィードバック回路Fpと、各アクチュエータAc1〜Ac15のエンコーダの検出値から得られる角速度検出値による関節角度フィードバック回路Fvとを有している。このサーボ部154は、平滑化処理部153より順次入力される上記位置指令に基づき、上記所定の演算周期毎に、各アクチュエータAc1〜Ac15に対するトルク指令Trefを生成して出力する。
【0041】
接触検出部155は、センサ部120L,120Rの各センサ122の出力値V(出力信号)に基づき、ロボット100が常態であるか非常態であるかを検出する。なお、本明細書では、アーム103L,103Rに対し物体の接触がない状態を常態と定義し、アーム103L,103Rに対し物体の接触がある状態を非常態と定義する。また、「もの」として認識しうる対象物を物体と定義する。したがって、物体には、把持対象である物品Pのほか、ロボット100自身、ベルトコンベア2などの作業機器、壁などの建造物の一部、人体などの生物体等も含まれる。すなわち、本実施形態では、接触検出部155は、センサ部120L,120Rの各センサ122の出力値V(出力信号)に基づき、アーム103L,103Rに対する物体の接触の有無を検出する。この接触検出部155の詳細については、後述する。
【0042】
位置指令遮断部152は、接触検出部155によりアーム103L,103Rに対する物体の接触が検出された場合に、動作指令部151から平滑化処理部153への上記位置指令の出力を遮断し、サーボ部154に伝達される位置指令を遮断する。なお、サーボ部154への位置指令が遮断されると、フィードバックにより出力されるトルク指令Trefの値が減少して、アーム103L,103Rは速やかに停止動作に入る。
【0043】
把持トルク補償部156は、各アクチュエータAc1〜Ac15に対するサーボ部154により生成される上記トルク指令Trefに、アーム103L,103Rが物品Pを把持するための把持補償トルクを付加する。
【0044】
重力トルク補償部157は、各アクチュエータAc1〜Ac15に対するサーボ部154により生成される上記トルク指令Trefに、自重分の重力補償トルクを付加する。
【0045】
図4は、接触検出部155の機能構成を表す機能ブロック図である。
【0046】
図4において、接触検出部155は、ハイパスフィルタ部161、区間設定部162、規範データ記録部163、判定部164、零点調整部165、及び閾値設定部166を有している。
【0047】
ハイパスフィルタ部161は、センサ部120L,120Rの各センサ122の出力信号に含まれる外乱に起因する周波数成分を除去するために、各センサ122の出力信号の高周波振動成分をそれぞれ抽出する。このハイパスフィルタ部161の詳細については、後述する。
【0048】
区間設定部162は、入力装置を介して入力された入力情報に基づき、規範データ記録部163によりセンサ122の出力値Vの時間履歴を波形で表した規範波形(規範データ)として記録する区間(以下適宜、単に「記録区間」と称する)を設定する。
【0049】
規範データ記録部163は、常態時に、すなわち物体の接触のない状態で、区間設定部162で設定した記録区間に対応する所定の動作を、アーム103L,103Rが行う間の、ハイパスフィルタ部161により抽出された高周波振動成分に基づく各センサ122の出力値Vの時間履歴を、各センサ122毎に規範波形としてそれぞれ記録する。なお、所定の動作とは、入力装置を介して教示された教示情報(動作開始位置及び動作完了位置の情報)等に基づいて上記動作指令部151により算出された位置指令に応じた動作である。
【0050】
閾値設定部166は、入力装置を介して入力された入力情報に基づき、判定部164における接触有無の判定値となる閾値Dthを設定する。
【0051】
判定部164は、稼働時においてアーム103L,103Rが上記所定の動作を行う際のハイパスフィルタ部161により抽出された高周波振動成分に基づく各センサ122の出力値Vの出力データと、規範データ記録部163に各センサ122毎に記録された規範波形とを、各センサ122毎にそれぞれ比較することにより、各センサ122毎に出力データと規範波形との差(詳細には当該差の絶対値)|D|をそれぞれ算出する。そして、各センサ122毎に算出した差|D|と、閾値設定部166により予め設定された閾値Dthとを、各センサ122毎にそれぞれ比較することにより、ロボット100が常態であるか非常態であるか、すなわちアーム103L,103Rに対する物体の接触の有無を判定する。この判定部164の詳細については、後述する。
【0052】
零点調整部165は、アーム103L,103RのアクチュエータAc2〜Ac15の発熱等による周囲温度の変動や自己発熱によって生じる各センサ122の温度ドリフトの影響を抑制するために、区間設定部162で設定した記録区間に対応する上記所定の動作をアーム103L,103Rが実行する毎に、各センサ122に対しリセット信号をそれぞれ出力して、各センサ122の零点調整をそれぞれ行う。
【0053】
図5は、センサ部120L,120R、ハイパスフィルタ部161、及び判定部164の詳細を説明するための説明図である。
【0054】
図5において、前述したように、センサ部120L,120Rは、それぞれ、円盤状のセンサ固定治具121と、3個の略直方体状のセンサ122とにより構成されている。センサ部120Lの3個のセンサ122は、センサ固定治具121の内側の面、すなわち上記アクチュエータAc2の固定子の基部への取り付け面ではない方の面(図2中左側の面、図5中紙面手前側の面)に、略同一円周上に略等間隔に配置され、各センサ122が放射状の向きとなるように配置されている。センサ部120Rの3個のセンサ122は、センサ固定治具121の内側の面、すなわち上記アクチュエータAc9の固定子の基部への取り付け面ではない方の面(図2中右側の面、図5中紙面手前側の面)に、略同一円周上に略等間隔に配置され、各センサ122が放射状の向きとなるように配置されている。
【0055】
本実施形態では、各センサ122として、アーム103L,103Rの各部を構成する構造材料である上記金属材料よりも固有振動数(あるいは剛性)が大きい材質の圧電体を有する力センサ、この例では圧電体として水晶が用いられたセンサが、それぞれ使用されている。これは、一般に、固有振動数が大きい力センサほど、より高い周波数成分を含んだ変動力を検出することができ、水晶は、アーム103L,103Rの各部を構成する構造材料である上記金属材料よりも固有振動数(あるいは剛性)が大きいためである。したがって、アーム103L,103Rの各部の構造材料に伝わる微小な高周波振動(速い変形)までも検知することができる。
【0056】
なお、各センサ122としては、圧電体として水晶が用いられたセンサに限られず、アーム103L,103Rの各部を構成する構造材料よりも固有振動数が大きい圧電体を有する力センサであればよい。センサ部120Lの各センサ122は、それぞれ、アーム103Lにかかる力に起因するセンサ固定治具121のラジアル方向のひずみ量を電圧として検出し、センサ部120Rの各センサ122は、それぞれ、アーム103Rにかかる力に起因するセンサ固定治具121のラジアル方向のひずみ量を電圧として検出する。各センサ部122で得られた電圧は、アンプ部123を介してそれぞれ増幅され、ハイパスフィルタ部161の各ハイパスフィルタ161A(後述)にそれぞれ入力されるようになっている。
【0057】
ハイパスフィルタ部161は、センサ122の出力信号の高周波振動成分を抽出可能な複数のハイパスフィルタ161A(又は高周波数帯域を通過帯域とするバンドパスフィルタでもよい)を有しており、これら各ハイパスフィルタ161Aにより、アンプ部123を介して増幅された各センサ122の出力信号の高周波振動成分をそれぞれ抽出する。なお、各ハイパスフィルタ161Aは、例えばアクチュエータAc2〜AC15の動作等の接触以外の事象に起因する周波数成分を除去できるように、カットオフ周波数が決定されている。
【0058】
判定部164は、上述したように、稼働時において各センサ122毎に算出した差|D|と、閾値設定部166により予め設定された閾値Dthとを、各センサ122毎にそれぞれ比較することにより、アーム103L,103Rに対する物体の接触の有無を判定する。具体的には、各センサ122に係わる差|D|のうち、全てのセンサ122に係わる差|D|が閾値Dthの範囲内である場合には、アーム103L,103Rに対する物体の接触がないと判定し、各センサ122に係わる差|D|のうち、いずれか1つのセンサ122に係わる差|D|が閾値Dthを超えた場合には、アーム103L,103Rに対する物体の接触があると判定する。
【0059】
図6は、アーム103L,103Rが物体の接触のない状態で実行する所定の動作、及び、その間のセンサ122の出力値Vを説明するための説明図である。なお、図6(a)には、アーム103L,103Rが物体の接触のない状態で実行する所定の動作を模式的に表している。図6(b)には、横軸に時間tをとり、縦軸にセンサ122の出力値Vをとって、アーム103L,103Rが図6(a)に示す動作を行う間のセンサ122の出力値Vの時間履歴を波形で表している。
【0060】
図6(a)(b)において、例えば教示時に、アーム103L,103Rは、把持対象である物品Pが存在せず、ロボット100の周囲(アーム103L,103Rの可動範囲内)に物体(障害物)が存在しないような環境下、すなわちアーム103L,103Rに対する物体の接触がない状態で、ロボットコントローラ150からの上記位置指令に応じた所定の動作、すなわち教示された動作開始位置(図6(a)中左側に示す位置)から教示された動作完了位置(図6(a)中右側に示す位置)までの動作を実行する。なお、動作完了位置は、ハンド111L,111Rが上記ベルトコンベア2により搬送される物品Pのうち最小の物品Pを把持可能な位置に設定されている。
【0061】
ここで、前述したように、センサ部120L,120Rの各センサ122は、アーム103L,103Rにかかる力を検出している。アーム103L,103Rにかかる力としては、アーム103L,103R自身の動作によって生じる内力、及び、アーム103L,103Rに外部から作用する外力が考えられる。アーム103L,103Rが図6(a)に示すような物体の接触がない状態において動作する間は、アーム103L,103Rに外力が作用していないので、各センサ122は、内力に起因する振動だけを検出する。
【0062】
図7は、稼働時においてアーム103L,103Rが実行する所定の動作、及び、その間のセンサ122の出力値Vを説明するための説明図である。なお、図7(a)には、稼働時においてアーム103L,103Rが実行する所定の動作を模式的に表している。図7(b)には、横軸に時間tをとり、縦軸にセンサ122の出力値Vをとって、アーム103L,103Rが図7(a)に示す動作を行う間のセンサ122の出力値Vの時間履歴を波形で表している。
【0063】
図7(a)(b)において、稼働時には、アーム103L,103Rは、ロボットコントローラ150からの上記位置指令に応じた上記所定の動作、すなわち教示された動作開始位置(図7(a)中左側に示す位置)から教示された動作完了位置までの動作を実行する。このとき、アーム103L,103Rは、動作開始位置から上記ベルトコンベア2(図7(a)では図示省略)上の物品Pの両側より内側に向けて動作し、動作完了位置まで動作するまでの間にアーム103L,103Rに対する物体の接触が検出されたら、その位置(図7(a)中右側に示す位置)で動作を停止してハンド111L,111Rで物品Pを把持する。
【0064】
ここで、アーム103L,103Rが物体の接触がない状態において動作する間は、アーム103L,103Rに外力が作用していないので、各センサ122は、内力に起因する振動だけを検出する。そして、稼働中にアーム103L,103Rに対して物体が接触した際(この例ではハンド111L,111Rの内側に対して物品Pが接触した際)には、アーム103L,103Rに内力に加え外力が作用するので、各センサ122は、内力及び外力に起因する振動を検出する。このため、図7(b)に示すように、稼働中にアーム103L,103Rに対して物体が接触した際には、外力に起因する分だけセンサ122の出力値Vが大きくなる。なお、アーム103L,103Rは、物体の接触があった時点で動作を停止して物品Pを把持するので、物体の接触があった以降は、図7(b)に示すようにセンサ122の出力値Vはほぼ一定の値となる。
【0065】
図8は、アーム103L,103Rに対する物体の接触を検出する手法を説明するための説明図である。図8(a)には、横軸に時間tをとり、縦軸にセンサ122の出力値Vをとって、上記規範波形を表すと共に、稼働時におけるセンサ122の出力値Vの時間履歴を波形で表している。図8(b)には、横軸に時間tをとり、縦軸に上記差|D|をとって、差|D|の時系列変化を波形で表している。
【0066】
図8(a)(b)において、前述したように、上記規範データ記録部163には、上記区間設定部162で設定した記録区間に対応する上記所定の動作をアーム103L,103Rが行う間の各センサ122の出力値Vの時間履歴が、規範波形として記録されている。なお、規範波形の記録は、アーム103L,103Rに対する物体の接触のない状態であればいつでも可能であるが、本実施形態ではロボット100への所定の動作の教示時に記録する場合を一例として説明する。規範波形は、教示時にアーム103L,103Rが物体の接触のない状態において動作する間に実際に記録されたセンサ122の出力値Vの時間履歴のデータであるので、内力に相当する。したがって、当該規範波形と稼働時のセンサ122の出力値Vの出力データとを比較することにより、具体的には、出力データと規範波形との差|D|を算出することにより、稼働中にアーム103L,103Rに作用した外力を検出することができる。すなわち、差|D|は、外力に相当する。したがって、稼働中に、上記差|D|と、上記閾値設定部166により予め設定した接触有無の判定値となる閾値Dthとを比較することにより、アーム103L,103Rに外力が作用したかどうか、すなわちアーム103L,103Rに対する物体の接触の有無を判定することができる。具体的には、上記差|D|が閾値Dthの範囲内である場合には、アーム103L,103Rに外力が作用していない、すなわちアーム103L,103Rに対する物体の接触がないと判定し、上記差|D|が閾値Dthを超えた場合には、アーム103L,103Rに外力が作用した、すなわちアーム103L,103Rに対する物体の接触があったと判定することができる。
【0067】
なお、図8に示す稼働時のセンサ122の出力値Vの時間履歴の波形は、例えばボールがアーム103L,103Rに当たった場合のように、瞬間的に物体の接触があった場合(接触後、すぐに外力が作用しなくなる場合)における波形を一例として表したものである。上記手法によれば、このような瞬間的な接触でも検出することが可能である。本実施形態のように双腕ロボットによる物品把持制御に本手法を適用した場合には、図7において前述したように、センサ122の出力値Vの時間履歴の波形は接触があった以降はほぼ一定の値となる。
【0068】
図9は、ロボットコントローラ150が実行する、本実施形態のロボットの状態判定方法による制御手順を表すフローチャートである。
【0069】
図9において、このフローに示す処理は、例えば入力装置を介して所定の動作開始操作が行われることによって開始される。まずステップS10で、ロボットコントローラ150は、入力装置を介して入力された入力情報に基づき、ロボット100の動作モードが、教示を行う「教示モード」と、稼働を行う「稼働モード」とのうち、「教示モード」であるかどうかを判定する。ロボット100の動作モードが「教示モード」である場合には、ステップS10の判定が満たされて、ステップS20に移る。
【0070】
ステップS20では、ロボットコントローラ150は、区間設定部162において、入力装置を介して入力された入力情報に基づき、前述の記録区間を設定する。
【0071】
その後、ステップS30で、ロボットコントローラ150は、零点調整部165において、各センサ122に対し上記リセット信号を出力して、各センサ122の零点調整を行う。
【0072】
そして、ステップS40に移り、ロボットコントローラ150は、入力装置を介して教示された各アーム103L,103Rに対する教示情報(動作開始位置及び動作完了位置の情報)等に基づいて動作指令部151において算出した各アクチュエータAc1〜Ac15に対する位置指令を、各アクチュエータAc1〜Ac15に対して出力して、物体の接触のない状態でアーム103L,103Rに当該位置指令に応じた所定の動作(図6(a)参照)を開始させる。
【0073】
その後、ステップS50で、ロボットコントローラ150は、各センサ122の出力値Vの入力(取得)を開始すると共に、規範データ記録部163において、各センサ122毎に規範波形の記録を開始する。したがって、物体の接触のない状態で、上記ステップS20で設定した記録区間に対応する上記ステップS40で開始した所定の動作をアーム103L,103Rが行う間は、上記アンプ部123を介して増幅され、上記各ハイパスフィルタ161Aにより抽出された高周波振動成分に基づく各センサ122の出力値Vを入力すると共に、規範データ記録部163は、当該入力した各センサ122の出力値Vの時間履歴を、各センサ122毎に規範波形として記録する。
【0074】
そして、アーム103L,103Rが動作完了位置まで動作したら、ステップS60に移り、ロボットコントローラ150は、アーム103L,103Rに動作を完了させる。
【0075】
その後、ステップS70で、ロボットコントローラ150は、各センサ122の出力値Vの入力(取得)を完了すると共に、規範データ記録部163において、各センサ122についての規範波形の記録を完了する。そして、このフローに示す処理を終了する。なお、このフローに示す処理は、入力装置を介して所定の動作開始操作が行われる度に、ロボットコントローラ150により実行される。
【0076】
一方、上記ステップS10において、ロボット100の動作モードが「稼働モード」であった場合には、ステップS10の判定が満たされず、ステップS80に移る。
【0077】
ステップS80では、ロボットコントローラ150は、閾値設定部166において、入力装置を介して入力された入力情報に基づき、前述の閾値Dthを設定する。
【0078】
そして、ステップS90に移り、ロボットコントローラ150は、零点調整部165において、上記ステップS30と同様、各センサ122の零点調整を行う。
【0079】
その後、ステップS100で、ロボットコントローラ150は、入力装置を介して教示された各アーム103L,103Rに対する教示情報(動作開始位置及び動作完了位置の情報)等に基づいて動作指令部151において算出した各アクチュエータAc1〜Ac15に対する位置指令を、各アクチュエータAc1〜Ac15に対して出力して、アーム103L,103Rに当該位置指令に応じた所定の動作(図7(a)参照)を開始させる。
【0080】
そして、ステップS110に移り、ロボットコントローラ150は、上記アンプ部123を介して増幅され、上記各ハイパスフィルタ161Aにより抽出された高周波振動成分に基づく各センサ122の出力値Vを入力しつつ、判定部164において、上記ステップS100で開始した所定の動作をアーム103L,103Rが行う際の、当該入力した各センサ122の出力値Vの出力データと、規範データ記録部163に各センサ122毎に記録された規範波形とを、各センサ122毎に比較することにより、各センサ122毎に前述の差|D|を算出する。そして、各センサ122毎に算出した差|D|と、閾値設定部166により予め設定された閾値Dthとを、各センサ122毎に比較することにより、アーム103L,103Rに対する物体の接触の有無を判定する。具体的には、前述したように、全てのセンサ122に係わる差|D|が閾値Dthの範囲内である場合には、アーム103L,103Rに対する物体の接触がないと判定し、いずれか1つのセンサ122に係わる差|D|が閾値Dthを超えた場合には、アーム103L,103Rに対する物体の接触があると判定する。
【0081】
その後、ステップS120に移り、ロボットコントローラ150は、アーム103L,103Rが動作完了位置まで動作するまでの間に、上記ステップS110でアーム103L,103Rに対する物体の接触があると判定されたかどうかを判定する。アーム103L,103Rが動作完了位置まで動作するまでの間に、上記ステップS110でアーム103L,103Rに対する物体の接触があると判定された場合には、ステップS120の判定が満たされて、ステップS130に移る。
【0082】
ステップS130では、ロボットコントローラ150は、位置指令遮断部152において、動作指令部151から平滑化処理部153への上記位置指令の出力を遮断すると共に、サーボ部154により生成される前述のトルク指令Trefに、前述の把持補償トルクを付加して、各アクチュエータAc1〜Ac15に出力して、アーム103L,103Rに動作を停止させ、ハンド11L,111Rにより物品Pを把持させる。その後、このフローに示す処理を終了する。
【0083】
一方、上記ステップS120において、アーム103L,103Rが動作完了位置まで動作するまでの間に、上記ステップS110でアーム103L,103Rに対する物体の接触があると判定されなかった場合(把持対象である物品Pが存在しなかった場合)には、ステップS120の判定が満たされず、ステップS140に移り、ロボットコントローラ150は、アーム103L,103Rに動作を完了させる。そして、このフローに示す処理を終了する。
【0084】
なお、上記において、ステップS50及びステップS70の手順が、特許請求の範囲に記載の規範データ記録手順に相当し、ステップS110の手順が、判定手順に相当する。また、これらステップS50、ステップS70、及びステップS110の手順は、出力値取得手順も兼ねている。
【0085】
以上説明したように、本実施形態のロボットシステム1においては、規範データ記録部163には、アーム103L,103Rが接触のない状態で所定の動作を行う間の各センサ122の出力値Vの時間履歴が規範波形として記録される。判定部164は、稼働時においてアーム103L,103Rが所定の動作を行う際の各センサ122の出力値Vの出力データと、規範データ記録部163に記録された規範波形とを比較することにより(上記の例では差|D|と閾値Dthを比較することにより)、アーム103L,103Rに対する物体の接触の有無を判定する。規範波形は、前述したように、アーム103L,103Rが接触のない状態において動作する際に実際に記録されたセンサ122の出力値Vの時間履歴のデータであるため、アーム103L,103R自身の動作によって生じる内力に相当する。このため、当該規範波形と稼働時のセンサ122の出力値Vの出力データとを比較することにより、稼働中にアーム103L,103Rに作用した外力を検出することができ、アーム103L,103Rに対する接触があるか否かを高精度に検出することができる。その結果、接触の有無に基づいてアーム103L,103Rの動作を停止させたり、接触による外力が低減する方向にアーム103L,103Rを動作させたり等の制御を精度良く行うことができるので、ロボット100の機能性を向上することができる。
【0086】
また、本実施形態では、各センサ122として、アーム103L,103Rの各部を構成する構造材料(上記の例では鉄やアルミニウム等の金属材料)よりも固有振動数が大きい圧電体を有する力センサを使用している。上記の例では特に、圧電体として水晶が用いられたセンサを使用している。これにより、障害物の衝突等によりアーム103L,103Rの各部の構造材料に生じた高い周波数の衝撃や振動等についても検出することができ、アーム103L,103Rに対する接触の有無をより高精度に検出することができる。
【0087】
さらに、物品把持制御に適用した本実施形態では、次の効果が得られる。すなわち、従来の技術において形状が不確定なものを把持するためには、アーム103L,103Rのハンド111L、111R部分に特別なセンサを取り付ける等により、把持状態を検出し確認するための手段が必要である。これに対し、本実施形態では、2つのアーム103L,103Rを物品Pの両側より内側に向けて動作させ、接触を検出した際に動作を停止させて物品Pをハンド111L、111Rにより把持するように制御するので、上記のような特別なセンサを設ける必要がなくなり、ハンド111L、111R部分をシンプルな構成としつつ、形状が不確定なものでも確実に把持することが可能なロボット100による物品把持制御を実現することができる。
【0088】
また、本実施形態では特に、判定部164は、出力データと規範波形との差|D|が、予め設定された閾値Dthの範囲内である場合には、アーム103L,103Rに対する接触がないと判定し、閾値Dthを超えた場合には、アーム103L,103Rに対する接触があると判定する。すなわち、出力データと規範波形との差|D|は、前述したように、アーム103L,103Rに作用する外力に相当するため、その差|D|に基づき判定を行うことにより、アーム103L,103Rに対する接触の有無を高精度に検出することができる。また、接触有無の判定値として所定の閾値Dthを設定することにより、外乱による誤検出を抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態では特に、ロボットコントローラ150が、閾値Dthを設定する閾値設定部166を有している。この閾値設定部166により、ロボット100の仕様や稼働環境等に応じて閾値Dthを任意の値に設定することができるので、外乱による誤検出を抑制し、アーム103L,103Rに対する物体の接触の有無をより高精度に検出することができる。
【0090】
また、本実施形態では特に、ロボットコントローラ150が、規範データ記録部163によりセンサ122の出力値Vの時間履歴を規範波形として記録する記録区間を設定する区間設定部162を有している。この区間設定部162により、アーム103L,103Rが任意の動作内容を行う区間を記録区間として設定することができる。これにより、稼働時にアーム103L,103Rが行う所定の動作と同じ動作内容を行う区間を記録区間として設定し、規範波形を記録しておけば、稼働時にアーム103L,103Rに対する物体の接触があるか否かを確実に検出することができる。また、異なる動作内容ごとに規範波形を記録することができるので、稼働時にアーム103L,103Rが行う多様な動作の各動作に対応させて規範波形を記憶することができる。
【0091】
また、本実施形態では特に、ロボットコントローラ150が、区間設定部162で設定した記録区間に対応する所定の動作をアーム103L,103Rが実行する毎に、各センサ122の零点調整を行う零点調整部165を有している。この零点調整部165により、各センサ122の温度ドリフトの影響を抑制することができ、接触検出の精度が低下するのを防止できる。特に、稼働時においてアーム103L,103Rが所定の動作を繰り返し行う場合、動作の度に毎回零点調整を行うので、温度ドリフトの影響を極力抑制することができる。
【0092】
また、本実施形態では特に、ロボットコントローラ150が、各センサ122の出力信号の高周波振動成分を抽出するハイパスフィルタ部161を有しており、判定部164は、ハイパスフィルタ部161により抽出された高周波振動成分に基づく各センサ122の出力値Vの出力データと上記規範波形とを比較することにより、アーム103L,103Rに対する接触の有無を判定する。これにより、外乱に起因する周波数成分を除去することができるので、アーム103L,103Rに対する接触の有無をより高精度に検出することができる。
【0093】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0094】
(1)障害物の接触検出に適用する場合
上記実施形態では、本発明を物品把持制御に適用したが、これに限られず、本発明を障害物の接触検出に適用してもよい。すなわち、図10に示すように、稼働時において、アーム103L,103Rがロボットコントローラ150からの上記位置指令に応じた上記所定の動作、すなわち教示された動作開始位置(図10(a)中左側に示す位置)から教示された動作完了位置までの動作を実行する間に、判定部164が、上記実施形態と同様の手法によりアーム103L,103Rに対する障害物Bの接触の有無を判定する。そして、アーム103L,103Rに対する障害物の接触が検出されたら、その位置(図10(a)中右側に示す位置)でアーム103L,103Rの動作を停止させる。本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ロボット100自身あるいはロボット100の周囲に存在する物体に対して過剰な負荷が生じることを回避することができる。
【0095】
(2)ローパスフィルタを設ける場合
上記実施形態では、接触検出部155にセンサ122の出力信号の高周波振動成分を抽出するハイパスフィルタ161Aを有するハイパスフィルタ部161を設け、判定部164が、ハイパスフィルタ部161により抽出された高周波振動成分に基づく規範波形と出力データとを比較することにより、アーム103L,103Rに対する物体の接触の有無を判定していたが、これに限られない。すなわち、接触検出部155に上記ハイパスフィルタ部161とは別にセンサ122の出力信号の低周波振動成分を抽出するローパスフィルタ(又は低周波数帯域を通過帯域とするバンドパスフィルタでもよい)を有するローパスフィルタ部を設け、判定部164が、ローパスフィルタ部により抽出された低周波振動成分に基づく規範波形と出力データとを比較することにより、アーム103L,103Rに対する物体(特に、段ボール箱等の柔軟性を備えた物品)の接触の有無を判定するようにしてもよい。本変形例によれば、低周波振動成分を抽出することができるので、アーム103L,103Rに対する段ボール箱等の柔軟性を備えた物品の接触等、比較的遅い接触の有無を精度よく検出することができる。
【0096】
(3)単腕ロボットに適用する場合
以上においては、本発明を2つのアーム103L、103Rを有する双腕ロボットであるロボット100に適用していたが、これに限られず、本発明を1つのロボットアームを有する単腕ロボットに適用してもよい。この場合も、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0098】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0099】
1 ロボットシステム
100 ロボット
103L,R アーム(ロボットアーム)
122 センサ(ひずみセンサ)
150 ロボットコントローラ(制御ユニット)
161 ハイパスフィルタ部
162 区間設定部
163 規範データ記録部
164 判定部
165 零点調整部
166 閾値設定部
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームを有するロボット、ひずみセンサ、及び制御ユニットを有するロボットシステム、並びに、ロボットの状態判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットの分野では、ロボット自身あるいはロボットの周囲に存在する物体に対して過剰な負荷が生じることを回避することが求められている。このため、ロボットに対する接触(外力)の有無を検出することが必要となる。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロボットアームの基端に外力を検出するための力検出器を取り付け、力検出器の検出結果に基づいてロボットアームの動作を停止させたり、過度な外力がかかった場合に外力が低減する方向にロボットアームを動作させる等の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−21287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術において、ロボットの機能性の向上を図るためには、ロボットアームに対する接触の有無等を高精度に検出することが要求される。
【0006】
上記従来技術では、力検出器で検出した力よりロボットアーム自身の動作により生じる内力を差し引くことにより、ロボットアームに作用する実際の外力を算出しているため、ロボットアームの接触に対する応答性が遅いことが考えられる。また、軽度の接触や瞬間的な接触等の場合に十分な検出をすることができないことも考えられる。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、ロボットの機能性を向上できるロボットシステム及びロボットの状態判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のロボットシステムは、ロボットアームを有するロボットと、前記ロボットアームを構成する構造材料よりも固有振動数が大きい圧電体を有するひずみセンサと、前記ひずみセンサの出力値に基づいて、前記ロボットが常態であるか非常態であるかを判定する判定部を備えた制御ユニットと、を有することを特徴としている。
【0009】
また、前記制御ユニットは、前記ロボットアームが常態時に所定の動作を行う間の前記ひずみセンサの出力値の時間履歴を規範データとして記録する規範データ記録部を有し、前記判定部は、稼働時において、前記ロボットアームが前記所定の動作を行う際の前記ひずみセンサの出力値の出力データと、前記規範データ記録部に記録された前記規範データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定することが好ましい。
【0010】
また、前記判定部は、前記出力データと前記規範データとの差が予め設定された閾値の範囲内である場合には、前記ロボットが前記常態であると判定し、前記差が前記閾値を超えた場合には、前記ロボットが前記非常態であると判定することが好ましい。
【0011】
また、前記制御ユニットは、前記閾値を設定する閾値設定部をさらに有することが好ましい。
【0012】
また、前記制御ユニットは、前記規範データ記録部により前記ひずみセンサの出力値の時間履歴を前記規範データとして記録する区間を設定する区間設定部をさらに有することが好ましい。
【0013】
また、前記制御ユニットは、前記区間設定部で設定した区間に対応する前記所定の動作を前記ロボットアームが実行する毎に、前記ひずみセンサの零点調整を行う零点調整部をさらに有することが好ましい。
【0014】
また、前記制御ユニットは、前記ひずみセンサの出力信号の高周波振動成分を抽出するハイパスフィルタ部をさらに有し、前記判定部は、前記ハイパスフィルタ部により抽出された前記高周波振動成分に基づく前記規範データと前記出力データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定することが好ましい。
【0015】
また、前記制御ユニットは、前記ひずみセンサの出力信号の低周波振動成分を抽出するローパスフィルタ部をさらに有し、前記判定部は、前記ローパスフィルタ部により抽出された前記低周波振動成分に基づく前記規範データと前記出力データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定することが好ましい。
【0016】
また、前記ひずみセンサは、圧電体として水晶が用いられたセンサであることが好ましい。
【0017】
また、本発明のロボットの状態判定方法は、ロボットアームを有するロボットが常態であるか非常態であるかを判定するロボットの状態判定方法であって、前記ロボットアームを構成する構造材料よりも固有振動数が大きい圧電体を有するひずみセンサの出力値を取得する出力値取得手順と、前記ひずみセンサの出力値に基づいて、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定する判定手順と、を有することを特徴としている。
【0018】
また、前記ロボットアームが常態時に所定の動作を行う間に、前記ひずみセンサの出力値の時間履歴を規範データとして記録する規範データ記録手順をさらに有し、前記判定手順は、稼働時において、前記ロボットアームが前記所定の動作を行う際の前記ひずみセンサの出力値の出力データと、前記記録された規範データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ロボットの機能性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態のロボットシステムの全体構成を概念的に表すシステム構成図である。
【図2】ロボットの構成を表すロボットの上面図である。
【図3】ロボットコントローラの機能構成を表す機能ブロック図である。
【図4】接触検出部の機能構成を表す機能ブロック図である。
【図5】センサ部、ハイパスフィルタ部、及び判定部の詳細を説明するための説明図である。
【図6】アームが物体の接触のない状態で実行する所定の動作、及び、その間のセンサの出力値を説明するための説明図である。
【図7】稼働時においてアームが実行する所定の動作、及び、その間のセンサの出力値を説明するための説明図である。
【図8】アームに対する物体の接触を検出する手法を説明するための説明図である。
【図9】ロボットコントローラが実行する、本発明の一実施の形態のロボットの状態判定方法による制御手順を表すフローチャートである。
【図10】障害物の接触検出に適用する変形例において、稼働時においてアームが実行する所定の動作を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、本発明のロボットシステム及びロボットの状態判定方法を、一例として、2つのロボットアームを有する双腕ロボットによる物品把持制御に適用した場合の例である。
【0022】
図1は、本実施形態のロボットシステムの全体構成を概念的に表すシステム構成図である。図2は、ロボットの構成を表すロボットの上面図である。
【0023】
図1及び図2において、本実施形態のロボットシステム1は、複数の物品Pを搬送するベルトコンベア2の一方側に設けられたロボット100と、このロボット100を制御するロボットコントローラ150(制御ユニット)とを備えている。ロボット100は、双腕ロボットであり、基台101、胴体部102、2つのアーム103L,103R(ロボットアーム)、及び、2つのセンサ部120L,120Rを有している。
【0024】
基台101は、設置面(床部等)に対し図示しないアンカーボルト等により固定されている。胴体部102は、回転軸Ax1周りに回転駆動するアクチュエータAc1が設けられた第1関節部を有している。この胴体部102は、基台101に対し第1関節部を介して旋回可能に設置されており、第1関節部に設けられたアクチュエータAc1の駆動により上記設置面と略水平な方向に沿って旋回する。また、この胴体部102は、別体として構成されたアーム103L,103Rを、それぞれ一方側(図1及び図2中右側)及び他方側(図1及び図2中左側)において支持する。
【0025】
アーム103Lは、胴体部102の一方側に設けられたマニピュレータであり、肩部104L、上腕A部105L、上腕B部106L、下腕部107L、手首A部108L、手首B部109L、フランジ110L、及びハンド111Lと、これら各部をそれぞれ回転駆動するアクチュエータAc2〜Ac8がそれぞれ設けられた第2〜第8関節部とを有している。
【0026】
肩部104Lは、胴体部102に対し第2関節部を介して回転可能に連結されており、第2関節部に設けられたアクチュエータAc2の駆動により上記設置面に対して略水平な回転軸Ax2周りに回転する。上腕A部105Lは、肩部104Lに対し第3関節部を介して旋回可能に連結されており、第3関節部に設けられたアクチュエータAc3の駆動により回転軸Ax2に対して直交する回転軸Ax3周りに旋回する。上腕B部106Lは、上腕A部105Lの先端に対し第4関節部を介して回転可能に連結されており、第4関節部に設けられたアクチュエータAc4の駆動により回転軸Ax3に対して直交する回転軸Ax4周りに回転する。下腕部107Lは、上腕B部106Lに対し第5関節部を介して旋回可能に連結されており、第5関節部に設けられたアクチュエータAc5の駆動により回転軸Ax4に対して直交する回転軸Ax5周りに旋回する。手首A部108Lは、下腕部107Lの先端に対し第6関節部を介して回転可能に連結されており、第6関節部に設けられたアクチュエータAc6の駆動により回転軸Ax5に対して直交する回転軸Ax6周りに回転する。手首B部109Lは、手首A部108Lに対し第7関節部を介して旋回可能に連結されており、第7関節部に設けられたアクチュエータAc7の駆動により回転軸Ax6に対して直交する回転軸Ax7周りに旋回する。フランジ110Lは、手首B部109Lの先端に対し第8関節部を介して回転可能に連結されており、第8関節部に設けられたアクチュエータAc8の駆動により回転軸Ax7に対して直交する回転軸Ax8周りに回転する。ハンド111Lは、フランジ110Lの先端に対し取り付けられており、フランジ110Lの回転により従動的に回転する。
【0027】
アーム103Rは、胴体部102の他方側に設けられたマニピュレータであり、上記アーム103Lと同様の構造を備えている。このアーム103Rは、肩部104R、上腕A部105R、上腕B部106R、下腕部107R、手首A部108R、手首B部109R、フランジ110R、及びハンド111Rと、これら各部をそれぞれ回転駆動するアクチュエータAc9〜Ac15がそれぞれ設けられた第9〜第15関節部とを有している。
【0028】
肩部104Rは、胴体部102に対し第9関節部を介して回転可能に連結されており、第9関節部に設けられたアクチュエータAc9の駆動により上記設置面に対して略水平な回転軸Ax9周りに回転する。上腕A部105Rは、肩部104Rに対し第10関節部を介して旋回可能に連結されており、第10関節部に設けられたアクチュエータAc10の駆動により回転軸Ax9に対して直交する回転軸Ax10周りに旋回する。上腕B部106Rは、上腕A部105Rの先端に対し第11関節部を介して回転可能に連結されており、第11関節部に設けられたアクチュエータAc11の駆動により回転軸Ax10に対して直交する回転軸Ax11周りに回転する。下腕部107Rは、上腕B部106Rに対し第12関節部を介して旋回可能に連結されており、第12関節部に設けられたアクチュエータAc12の駆動により回転軸Ax11に対して直交する回転軸Ax12周りに旋回する。手首A部108Rは、下腕部107Rの先端に対し第13関節部を介して回転可能に連結されており、第13関節部に設けられたアクチュエータAc13の駆動により回転軸Ax12に対して直交する回転軸Ax13周りに回転する。手首B部109Rは、手首A部108Rに対し第14関節部を介して旋回可能に連結されており、第14関節部に設けられたアクチュエータAc14の駆動により回転軸Ax13に対して直交する回転軸Ax14周りに旋回する。フランジ110Rは、手首B部109Rの先端に対し第15関節部を介して回転可能に連結されており、第15関節部に設けられたアクチュエータAc15の駆動により回転軸Ax14に対して直交する回転軸Ax15周りに回転する。ハンド111Rは、フランジ110Rの先端に対し取り付けられており、フランジ110Rの回転により従動的に回転する。
【0029】
なお、この例では、アーム103L,103Rは、7つの関節部すなわち7自由度(冗長自由度)を有しているが、アーム103L,103Rの自由度は「7」に限られない。
【0030】
これらアーム103L,103Rの肩部104L,104R、上腕A部105L,105R、上腕B部106L,106R、下腕部107L,107R、手首A部108L,108R、手首B部109L,109R、フランジ110L,110R、及びハンド111L,111Rを構成する構造材料は、例えば鉄やアルミニウム等の金属材料により構成されている。
【0031】
また、図2に示すように、第1関節部の回転軸Ax1と第2及び第9関節部の各回転軸Ax2,Ax9とは、上記設置面と略水平な方向に長さD1だけオフセットされるように、基台101に対して胴体部102が第1関節部から第2及び第9関節部にかけて水平前方にせり出すように形成されている。これにより、肩部104L,104Rの下方側の空間を作業スペースとすることができると共に、回転軸Ax1を回転させることでアーム103L,103Rの可到範囲が拡大される。
【0032】
さらに、第11関節部の回転軸Ax11と第12関節部の回転軸Ax12とは、上面視での位置が長さD2だけオフセットされるように、上腕B部106Rの形状が設定されている。そして、第12関節部の回転軸Ax12と第13関節部の回転軸Ax13とは、上面視での位置が長さD3だけオフセットされるように、下腕部107Rの形状が設定されており、回転軸Ax11と回転軸Ax13とが略水平となる姿勢をとったときに、回転軸Ax11と回転軸Ax13とのオフセット長さが(D2+D3)となるようになっている。これにより、人間の「肘」に相当する第12関節部を屈曲させたときに、人間の「上腕」に相当する上腕A部105R及び上腕B部106Rと、人間の「下腕」に相当する下腕A部107Rとの間のクリアランスを大きく確保することができ、ハンド111Rをより胴体部102に近づけた場合でもアーム103Rの動作自由度が拡大される。
【0033】
またさらに、図2では明示していないが、アーム103Lについても同様に、第4関節部の回転軸Ax4と第5関節部の回転軸Ax5とは、上面視での位置が長さD2だけオフセットされるように、上腕B部106Lの形状が設定されている。そして、第5関節部の回転軸Ax5と第6関節部の回転軸Ax6とは、上面視での位置が長さD3だけオフセットされるように、下腕部107Lの形状が設定されており、回転軸Ax4と回転軸Ax6とが略水平となる姿勢をとったときに、回転軸Ax4と回転軸Ax6とのオフセット長さが(D2+D3)となるようになっている。
【0034】
センサ部120L,120Rは、それぞれ、図2に示すように、円盤状のセンサ固定治具121と、少なくとも1個(この例では3個)の略直方体状のセンサ122(ひずみセンサ)とにより構成されている。センサ部120Lのセンサ固定治具121は、アーム103Lの最も基端側に設けられたアクチュエータAc2の固定子の基部に取り付けられ、このセンサ固定治具121に設けられた各センサ122は、アーム103Lにかかる力(詳細には、力の大きさそのものではなく、アーム103Lにかかる衝撃力に起因する振動等によるひずみ量)をそれぞれ検出可能となっている。センサ部120Rのセンサ固定治具121は、アーム103Rの最も基端側に設けられたアクチュエータAc9の固定子の基部に取り付けられ、このセンサ固定治具121に設けられた各センサ122は、アーム103Rにかかる力(詳細には、力の大きさそのものではなく、アーム103Rにかかる衝撃力に起因する振動等によるひずみ量)をそれぞれ検出可能となっている。このセンサ部120L,120Rの詳細については、後述する。
【0035】
上記のように構成されたロボット100は、アーム103L,103Rが上記ベルトコンベア2上の物品Pの両側より内側に向けて動作し、アーム103L,103Rに対する物体の接触が検出された際に、動作を停止してハンド111L,111Rで物品Pを把持するように、各アクチュエータAc1〜Ac15を含む各駆動部位の動作が、ロボットコントローラ150により制御されている。また、各アクチュエータAc1〜Ac15は、それぞれ、図示しないケーブルを挿通可能な中空部を有する減速機一体型のサーボモータにより構成されており、各アクチュエータAc1〜Ac15の回転位置は、各アクチュエータAc1〜Ac15に内蔵された図示しないエンコーダからの信号として、ロボットコントローラ150にケーブルを介して入力されるようになっている。
【0036】
図3は、ロボットコントローラ150の機能構成を表す機能ブロック図である。
【0037】
図3において、ロボットコントローラ150は、図示しない演算器、記憶装置、入力装置等を備えたコンピュータにより構成されており、ロボット100の各駆動部位や各センサ122とケーブルを介して相互通信可能に接続されている。このロボットコントローラ150は、動作指令部151、位置指令遮断部152、平滑化処理部153、サーボ部154、接触検出部155、把持トルク補償部156、及び重力トルク補償部157を有している。
【0038】
動作指令部151は、入力装置を介して教示された各アーム103L,103Rに対する教示情報(動作開始位置及び動作完了位置の情報)等に基づき、各アクチュエータAc1〜Ac15に対する位置指令(動作指令)をそれぞれ算出し、位置指令遮断部152を介して平滑化処理部153にプールする。
【0039】
平滑化処理部153は、所定の演算周期毎に、プールされた上記位置指令をサーボ部154に順次出力する。
【0040】
サーボ部154は、各アクチュエータAc1〜Ac15毎に、各アクチュエータAc1〜Ac15のエンコーダの検出値による関節角度フィードバック回路Fpと、各アクチュエータAc1〜Ac15のエンコーダの検出値から得られる角速度検出値による関節角度フィードバック回路Fvとを有している。このサーボ部154は、平滑化処理部153より順次入力される上記位置指令に基づき、上記所定の演算周期毎に、各アクチュエータAc1〜Ac15に対するトルク指令Trefを生成して出力する。
【0041】
接触検出部155は、センサ部120L,120Rの各センサ122の出力値V(出力信号)に基づき、ロボット100が常態であるか非常態であるかを検出する。なお、本明細書では、アーム103L,103Rに対し物体の接触がない状態を常態と定義し、アーム103L,103Rに対し物体の接触がある状態を非常態と定義する。また、「もの」として認識しうる対象物を物体と定義する。したがって、物体には、把持対象である物品Pのほか、ロボット100自身、ベルトコンベア2などの作業機器、壁などの建造物の一部、人体などの生物体等も含まれる。すなわち、本実施形態では、接触検出部155は、センサ部120L,120Rの各センサ122の出力値V(出力信号)に基づき、アーム103L,103Rに対する物体の接触の有無を検出する。この接触検出部155の詳細については、後述する。
【0042】
位置指令遮断部152は、接触検出部155によりアーム103L,103Rに対する物体の接触が検出された場合に、動作指令部151から平滑化処理部153への上記位置指令の出力を遮断し、サーボ部154に伝達される位置指令を遮断する。なお、サーボ部154への位置指令が遮断されると、フィードバックにより出力されるトルク指令Trefの値が減少して、アーム103L,103Rは速やかに停止動作に入る。
【0043】
把持トルク補償部156は、各アクチュエータAc1〜Ac15に対するサーボ部154により生成される上記トルク指令Trefに、アーム103L,103Rが物品Pを把持するための把持補償トルクを付加する。
【0044】
重力トルク補償部157は、各アクチュエータAc1〜Ac15に対するサーボ部154により生成される上記トルク指令Trefに、自重分の重力補償トルクを付加する。
【0045】
図4は、接触検出部155の機能構成を表す機能ブロック図である。
【0046】
図4において、接触検出部155は、ハイパスフィルタ部161、区間設定部162、規範データ記録部163、判定部164、零点調整部165、及び閾値設定部166を有している。
【0047】
ハイパスフィルタ部161は、センサ部120L,120Rの各センサ122の出力信号に含まれる外乱に起因する周波数成分を除去するために、各センサ122の出力信号の高周波振動成分をそれぞれ抽出する。このハイパスフィルタ部161の詳細については、後述する。
【0048】
区間設定部162は、入力装置を介して入力された入力情報に基づき、規範データ記録部163によりセンサ122の出力値Vの時間履歴を波形で表した規範波形(規範データ)として記録する区間(以下適宜、単に「記録区間」と称する)を設定する。
【0049】
規範データ記録部163は、常態時に、すなわち物体の接触のない状態で、区間設定部162で設定した記録区間に対応する所定の動作を、アーム103L,103Rが行う間の、ハイパスフィルタ部161により抽出された高周波振動成分に基づく各センサ122の出力値Vの時間履歴を、各センサ122毎に規範波形としてそれぞれ記録する。なお、所定の動作とは、入力装置を介して教示された教示情報(動作開始位置及び動作完了位置の情報)等に基づいて上記動作指令部151により算出された位置指令に応じた動作である。
【0050】
閾値設定部166は、入力装置を介して入力された入力情報に基づき、判定部164における接触有無の判定値となる閾値Dthを設定する。
【0051】
判定部164は、稼働時においてアーム103L,103Rが上記所定の動作を行う際のハイパスフィルタ部161により抽出された高周波振動成分に基づく各センサ122の出力値Vの出力データと、規範データ記録部163に各センサ122毎に記録された規範波形とを、各センサ122毎にそれぞれ比較することにより、各センサ122毎に出力データと規範波形との差(詳細には当該差の絶対値)|D|をそれぞれ算出する。そして、各センサ122毎に算出した差|D|と、閾値設定部166により予め設定された閾値Dthとを、各センサ122毎にそれぞれ比較することにより、ロボット100が常態であるか非常態であるか、すなわちアーム103L,103Rに対する物体の接触の有無を判定する。この判定部164の詳細については、後述する。
【0052】
零点調整部165は、アーム103L,103RのアクチュエータAc2〜Ac15の発熱等による周囲温度の変動や自己発熱によって生じる各センサ122の温度ドリフトの影響を抑制するために、区間設定部162で設定した記録区間に対応する上記所定の動作をアーム103L,103Rが実行する毎に、各センサ122に対しリセット信号をそれぞれ出力して、各センサ122の零点調整をそれぞれ行う。
【0053】
図5は、センサ部120L,120R、ハイパスフィルタ部161、及び判定部164の詳細を説明するための説明図である。
【0054】
図5において、前述したように、センサ部120L,120Rは、それぞれ、円盤状のセンサ固定治具121と、3個の略直方体状のセンサ122とにより構成されている。センサ部120Lの3個のセンサ122は、センサ固定治具121の内側の面、すなわち上記アクチュエータAc2の固定子の基部への取り付け面ではない方の面(図2中左側の面、図5中紙面手前側の面)に、略同一円周上に略等間隔に配置され、各センサ122が放射状の向きとなるように配置されている。センサ部120Rの3個のセンサ122は、センサ固定治具121の内側の面、すなわち上記アクチュエータAc9の固定子の基部への取り付け面ではない方の面(図2中右側の面、図5中紙面手前側の面)に、略同一円周上に略等間隔に配置され、各センサ122が放射状の向きとなるように配置されている。
【0055】
本実施形態では、各センサ122として、アーム103L,103Rの各部を構成する構造材料である上記金属材料よりも固有振動数(あるいは剛性)が大きい材質の圧電体を有する力センサ、この例では圧電体として水晶が用いられたセンサが、それぞれ使用されている。これは、一般に、固有振動数が大きい力センサほど、より高い周波数成分を含んだ変動力を検出することができ、水晶は、アーム103L,103Rの各部を構成する構造材料である上記金属材料よりも固有振動数(あるいは剛性)が大きいためである。したがって、アーム103L,103Rの各部の構造材料に伝わる微小な高周波振動(速い変形)までも検知することができる。
【0056】
なお、各センサ122としては、圧電体として水晶が用いられたセンサに限られず、アーム103L,103Rの各部を構成する構造材料よりも固有振動数が大きい圧電体を有する力センサであればよい。センサ部120Lの各センサ122は、それぞれ、アーム103Lにかかる力に起因するセンサ固定治具121のラジアル方向のひずみ量を電圧として検出し、センサ部120Rの各センサ122は、それぞれ、アーム103Rにかかる力に起因するセンサ固定治具121のラジアル方向のひずみ量を電圧として検出する。各センサ部122で得られた電圧は、アンプ部123を介してそれぞれ増幅され、ハイパスフィルタ部161の各ハイパスフィルタ161A(後述)にそれぞれ入力されるようになっている。
【0057】
ハイパスフィルタ部161は、センサ122の出力信号の高周波振動成分を抽出可能な複数のハイパスフィルタ161A(又は高周波数帯域を通過帯域とするバンドパスフィルタでもよい)を有しており、これら各ハイパスフィルタ161Aにより、アンプ部123を介して増幅された各センサ122の出力信号の高周波振動成分をそれぞれ抽出する。なお、各ハイパスフィルタ161Aは、例えばアクチュエータAc2〜AC15の動作等の接触以外の事象に起因する周波数成分を除去できるように、カットオフ周波数が決定されている。
【0058】
判定部164は、上述したように、稼働時において各センサ122毎に算出した差|D|と、閾値設定部166により予め設定された閾値Dthとを、各センサ122毎にそれぞれ比較することにより、アーム103L,103Rに対する物体の接触の有無を判定する。具体的には、各センサ122に係わる差|D|のうち、全てのセンサ122に係わる差|D|が閾値Dthの範囲内である場合には、アーム103L,103Rに対する物体の接触がないと判定し、各センサ122に係わる差|D|のうち、いずれか1つのセンサ122に係わる差|D|が閾値Dthを超えた場合には、アーム103L,103Rに対する物体の接触があると判定する。
【0059】
図6は、アーム103L,103Rが物体の接触のない状態で実行する所定の動作、及び、その間のセンサ122の出力値Vを説明するための説明図である。なお、図6(a)には、アーム103L,103Rが物体の接触のない状態で実行する所定の動作を模式的に表している。図6(b)には、横軸に時間tをとり、縦軸にセンサ122の出力値Vをとって、アーム103L,103Rが図6(a)に示す動作を行う間のセンサ122の出力値Vの時間履歴を波形で表している。
【0060】
図6(a)(b)において、例えば教示時に、アーム103L,103Rは、把持対象である物品Pが存在せず、ロボット100の周囲(アーム103L,103Rの可動範囲内)に物体(障害物)が存在しないような環境下、すなわちアーム103L,103Rに対する物体の接触がない状態で、ロボットコントローラ150からの上記位置指令に応じた所定の動作、すなわち教示された動作開始位置(図6(a)中左側に示す位置)から教示された動作完了位置(図6(a)中右側に示す位置)までの動作を実行する。なお、動作完了位置は、ハンド111L,111Rが上記ベルトコンベア2により搬送される物品Pのうち最小の物品Pを把持可能な位置に設定されている。
【0061】
ここで、前述したように、センサ部120L,120Rの各センサ122は、アーム103L,103Rにかかる力を検出している。アーム103L,103Rにかかる力としては、アーム103L,103R自身の動作によって生じる内力、及び、アーム103L,103Rに外部から作用する外力が考えられる。アーム103L,103Rが図6(a)に示すような物体の接触がない状態において動作する間は、アーム103L,103Rに外力が作用していないので、各センサ122は、内力に起因する振動だけを検出する。
【0062】
図7は、稼働時においてアーム103L,103Rが実行する所定の動作、及び、その間のセンサ122の出力値Vを説明するための説明図である。なお、図7(a)には、稼働時においてアーム103L,103Rが実行する所定の動作を模式的に表している。図7(b)には、横軸に時間tをとり、縦軸にセンサ122の出力値Vをとって、アーム103L,103Rが図7(a)に示す動作を行う間のセンサ122の出力値Vの時間履歴を波形で表している。
【0063】
図7(a)(b)において、稼働時には、アーム103L,103Rは、ロボットコントローラ150からの上記位置指令に応じた上記所定の動作、すなわち教示された動作開始位置(図7(a)中左側に示す位置)から教示された動作完了位置までの動作を実行する。このとき、アーム103L,103Rは、動作開始位置から上記ベルトコンベア2(図7(a)では図示省略)上の物品Pの両側より内側に向けて動作し、動作完了位置まで動作するまでの間にアーム103L,103Rに対する物体の接触が検出されたら、その位置(図7(a)中右側に示す位置)で動作を停止してハンド111L,111Rで物品Pを把持する。
【0064】
ここで、アーム103L,103Rが物体の接触がない状態において動作する間は、アーム103L,103Rに外力が作用していないので、各センサ122は、内力に起因する振動だけを検出する。そして、稼働中にアーム103L,103Rに対して物体が接触した際(この例ではハンド111L,111Rの内側に対して物品Pが接触した際)には、アーム103L,103Rに内力に加え外力が作用するので、各センサ122は、内力及び外力に起因する振動を検出する。このため、図7(b)に示すように、稼働中にアーム103L,103Rに対して物体が接触した際には、外力に起因する分だけセンサ122の出力値Vが大きくなる。なお、アーム103L,103Rは、物体の接触があった時点で動作を停止して物品Pを把持するので、物体の接触があった以降は、図7(b)に示すようにセンサ122の出力値Vはほぼ一定の値となる。
【0065】
図8は、アーム103L,103Rに対する物体の接触を検出する手法を説明するための説明図である。図8(a)には、横軸に時間tをとり、縦軸にセンサ122の出力値Vをとって、上記規範波形を表すと共に、稼働時におけるセンサ122の出力値Vの時間履歴を波形で表している。図8(b)には、横軸に時間tをとり、縦軸に上記差|D|をとって、差|D|の時系列変化を波形で表している。
【0066】
図8(a)(b)において、前述したように、上記規範データ記録部163には、上記区間設定部162で設定した記録区間に対応する上記所定の動作をアーム103L,103Rが行う間の各センサ122の出力値Vの時間履歴が、規範波形として記録されている。なお、規範波形の記録は、アーム103L,103Rに対する物体の接触のない状態であればいつでも可能であるが、本実施形態ではロボット100への所定の動作の教示時に記録する場合を一例として説明する。規範波形は、教示時にアーム103L,103Rが物体の接触のない状態において動作する間に実際に記録されたセンサ122の出力値Vの時間履歴のデータであるので、内力に相当する。したがって、当該規範波形と稼働時のセンサ122の出力値Vの出力データとを比較することにより、具体的には、出力データと規範波形との差|D|を算出することにより、稼働中にアーム103L,103Rに作用した外力を検出することができる。すなわち、差|D|は、外力に相当する。したがって、稼働中に、上記差|D|と、上記閾値設定部166により予め設定した接触有無の判定値となる閾値Dthとを比較することにより、アーム103L,103Rに外力が作用したかどうか、すなわちアーム103L,103Rに対する物体の接触の有無を判定することができる。具体的には、上記差|D|が閾値Dthの範囲内である場合には、アーム103L,103Rに外力が作用していない、すなわちアーム103L,103Rに対する物体の接触がないと判定し、上記差|D|が閾値Dthを超えた場合には、アーム103L,103Rに外力が作用した、すなわちアーム103L,103Rに対する物体の接触があったと判定することができる。
【0067】
なお、図8に示す稼働時のセンサ122の出力値Vの時間履歴の波形は、例えばボールがアーム103L,103Rに当たった場合のように、瞬間的に物体の接触があった場合(接触後、すぐに外力が作用しなくなる場合)における波形を一例として表したものである。上記手法によれば、このような瞬間的な接触でも検出することが可能である。本実施形態のように双腕ロボットによる物品把持制御に本手法を適用した場合には、図7において前述したように、センサ122の出力値Vの時間履歴の波形は接触があった以降はほぼ一定の値となる。
【0068】
図9は、ロボットコントローラ150が実行する、本実施形態のロボットの状態判定方法による制御手順を表すフローチャートである。
【0069】
図9において、このフローに示す処理は、例えば入力装置を介して所定の動作開始操作が行われることによって開始される。まずステップS10で、ロボットコントローラ150は、入力装置を介して入力された入力情報に基づき、ロボット100の動作モードが、教示を行う「教示モード」と、稼働を行う「稼働モード」とのうち、「教示モード」であるかどうかを判定する。ロボット100の動作モードが「教示モード」である場合には、ステップS10の判定が満たされて、ステップS20に移る。
【0070】
ステップS20では、ロボットコントローラ150は、区間設定部162において、入力装置を介して入力された入力情報に基づき、前述の記録区間を設定する。
【0071】
その後、ステップS30で、ロボットコントローラ150は、零点調整部165において、各センサ122に対し上記リセット信号を出力して、各センサ122の零点調整を行う。
【0072】
そして、ステップS40に移り、ロボットコントローラ150は、入力装置を介して教示された各アーム103L,103Rに対する教示情報(動作開始位置及び動作完了位置の情報)等に基づいて動作指令部151において算出した各アクチュエータAc1〜Ac15に対する位置指令を、各アクチュエータAc1〜Ac15に対して出力して、物体の接触のない状態でアーム103L,103Rに当該位置指令に応じた所定の動作(図6(a)参照)を開始させる。
【0073】
その後、ステップS50で、ロボットコントローラ150は、各センサ122の出力値Vの入力(取得)を開始すると共に、規範データ記録部163において、各センサ122毎に規範波形の記録を開始する。したがって、物体の接触のない状態で、上記ステップS20で設定した記録区間に対応する上記ステップS40で開始した所定の動作をアーム103L,103Rが行う間は、上記アンプ部123を介して増幅され、上記各ハイパスフィルタ161Aにより抽出された高周波振動成分に基づく各センサ122の出力値Vを入力すると共に、規範データ記録部163は、当該入力した各センサ122の出力値Vの時間履歴を、各センサ122毎に規範波形として記録する。
【0074】
そして、アーム103L,103Rが動作完了位置まで動作したら、ステップS60に移り、ロボットコントローラ150は、アーム103L,103Rに動作を完了させる。
【0075】
その後、ステップS70で、ロボットコントローラ150は、各センサ122の出力値Vの入力(取得)を完了すると共に、規範データ記録部163において、各センサ122についての規範波形の記録を完了する。そして、このフローに示す処理を終了する。なお、このフローに示す処理は、入力装置を介して所定の動作開始操作が行われる度に、ロボットコントローラ150により実行される。
【0076】
一方、上記ステップS10において、ロボット100の動作モードが「稼働モード」であった場合には、ステップS10の判定が満たされず、ステップS80に移る。
【0077】
ステップS80では、ロボットコントローラ150は、閾値設定部166において、入力装置を介して入力された入力情報に基づき、前述の閾値Dthを設定する。
【0078】
そして、ステップS90に移り、ロボットコントローラ150は、零点調整部165において、上記ステップS30と同様、各センサ122の零点調整を行う。
【0079】
その後、ステップS100で、ロボットコントローラ150は、入力装置を介して教示された各アーム103L,103Rに対する教示情報(動作開始位置及び動作完了位置の情報)等に基づいて動作指令部151において算出した各アクチュエータAc1〜Ac15に対する位置指令を、各アクチュエータAc1〜Ac15に対して出力して、アーム103L,103Rに当該位置指令に応じた所定の動作(図7(a)参照)を開始させる。
【0080】
そして、ステップS110に移り、ロボットコントローラ150は、上記アンプ部123を介して増幅され、上記各ハイパスフィルタ161Aにより抽出された高周波振動成分に基づく各センサ122の出力値Vを入力しつつ、判定部164において、上記ステップS100で開始した所定の動作をアーム103L,103Rが行う際の、当該入力した各センサ122の出力値Vの出力データと、規範データ記録部163に各センサ122毎に記録された規範波形とを、各センサ122毎に比較することにより、各センサ122毎に前述の差|D|を算出する。そして、各センサ122毎に算出した差|D|と、閾値設定部166により予め設定された閾値Dthとを、各センサ122毎に比較することにより、アーム103L,103Rに対する物体の接触の有無を判定する。具体的には、前述したように、全てのセンサ122に係わる差|D|が閾値Dthの範囲内である場合には、アーム103L,103Rに対する物体の接触がないと判定し、いずれか1つのセンサ122に係わる差|D|が閾値Dthを超えた場合には、アーム103L,103Rに対する物体の接触があると判定する。
【0081】
その後、ステップS120に移り、ロボットコントローラ150は、アーム103L,103Rが動作完了位置まで動作するまでの間に、上記ステップS110でアーム103L,103Rに対する物体の接触があると判定されたかどうかを判定する。アーム103L,103Rが動作完了位置まで動作するまでの間に、上記ステップS110でアーム103L,103Rに対する物体の接触があると判定された場合には、ステップS120の判定が満たされて、ステップS130に移る。
【0082】
ステップS130では、ロボットコントローラ150は、位置指令遮断部152において、動作指令部151から平滑化処理部153への上記位置指令の出力を遮断すると共に、サーボ部154により生成される前述のトルク指令Trefに、前述の把持補償トルクを付加して、各アクチュエータAc1〜Ac15に出力して、アーム103L,103Rに動作を停止させ、ハンド11L,111Rにより物品Pを把持させる。その後、このフローに示す処理を終了する。
【0083】
一方、上記ステップS120において、アーム103L,103Rが動作完了位置まで動作するまでの間に、上記ステップS110でアーム103L,103Rに対する物体の接触があると判定されなかった場合(把持対象である物品Pが存在しなかった場合)には、ステップS120の判定が満たされず、ステップS140に移り、ロボットコントローラ150は、アーム103L,103Rに動作を完了させる。そして、このフローに示す処理を終了する。
【0084】
なお、上記において、ステップS50及びステップS70の手順が、特許請求の範囲に記載の規範データ記録手順に相当し、ステップS110の手順が、判定手順に相当する。また、これらステップS50、ステップS70、及びステップS110の手順は、出力値取得手順も兼ねている。
【0085】
以上説明したように、本実施形態のロボットシステム1においては、規範データ記録部163には、アーム103L,103Rが接触のない状態で所定の動作を行う間の各センサ122の出力値Vの時間履歴が規範波形として記録される。判定部164は、稼働時においてアーム103L,103Rが所定の動作を行う際の各センサ122の出力値Vの出力データと、規範データ記録部163に記録された規範波形とを比較することにより(上記の例では差|D|と閾値Dthを比較することにより)、アーム103L,103Rに対する物体の接触の有無を判定する。規範波形は、前述したように、アーム103L,103Rが接触のない状態において動作する際に実際に記録されたセンサ122の出力値Vの時間履歴のデータであるため、アーム103L,103R自身の動作によって生じる内力に相当する。このため、当該規範波形と稼働時のセンサ122の出力値Vの出力データとを比較することにより、稼働中にアーム103L,103Rに作用した外力を検出することができ、アーム103L,103Rに対する接触があるか否かを高精度に検出することができる。その結果、接触の有無に基づいてアーム103L,103Rの動作を停止させたり、接触による外力が低減する方向にアーム103L,103Rを動作させたり等の制御を精度良く行うことができるので、ロボット100の機能性を向上することができる。
【0086】
また、本実施形態では、各センサ122として、アーム103L,103Rの各部を構成する構造材料(上記の例では鉄やアルミニウム等の金属材料)よりも固有振動数が大きい圧電体を有する力センサを使用している。上記の例では特に、圧電体として水晶が用いられたセンサを使用している。これにより、障害物の衝突等によりアーム103L,103Rの各部の構造材料に生じた高い周波数の衝撃や振動等についても検出することができ、アーム103L,103Rに対する接触の有無をより高精度に検出することができる。
【0087】
さらに、物品把持制御に適用した本実施形態では、次の効果が得られる。すなわち、従来の技術において形状が不確定なものを把持するためには、アーム103L,103Rのハンド111L、111R部分に特別なセンサを取り付ける等により、把持状態を検出し確認するための手段が必要である。これに対し、本実施形態では、2つのアーム103L,103Rを物品Pの両側より内側に向けて動作させ、接触を検出した際に動作を停止させて物品Pをハンド111L、111Rにより把持するように制御するので、上記のような特別なセンサを設ける必要がなくなり、ハンド111L、111R部分をシンプルな構成としつつ、形状が不確定なものでも確実に把持することが可能なロボット100による物品把持制御を実現することができる。
【0088】
また、本実施形態では特に、判定部164は、出力データと規範波形との差|D|が、予め設定された閾値Dthの範囲内である場合には、アーム103L,103Rに対する接触がないと判定し、閾値Dthを超えた場合には、アーム103L,103Rに対する接触があると判定する。すなわち、出力データと規範波形との差|D|は、前述したように、アーム103L,103Rに作用する外力に相当するため、その差|D|に基づき判定を行うことにより、アーム103L,103Rに対する接触の有無を高精度に検出することができる。また、接触有無の判定値として所定の閾値Dthを設定することにより、外乱による誤検出を抑制することができる。
【0089】
また、本実施形態では特に、ロボットコントローラ150が、閾値Dthを設定する閾値設定部166を有している。この閾値設定部166により、ロボット100の仕様や稼働環境等に応じて閾値Dthを任意の値に設定することができるので、外乱による誤検出を抑制し、アーム103L,103Rに対する物体の接触の有無をより高精度に検出することができる。
【0090】
また、本実施形態では特に、ロボットコントローラ150が、規範データ記録部163によりセンサ122の出力値Vの時間履歴を規範波形として記録する記録区間を設定する区間設定部162を有している。この区間設定部162により、アーム103L,103Rが任意の動作内容を行う区間を記録区間として設定することができる。これにより、稼働時にアーム103L,103Rが行う所定の動作と同じ動作内容を行う区間を記録区間として設定し、規範波形を記録しておけば、稼働時にアーム103L,103Rに対する物体の接触があるか否かを確実に検出することができる。また、異なる動作内容ごとに規範波形を記録することができるので、稼働時にアーム103L,103Rが行う多様な動作の各動作に対応させて規範波形を記憶することができる。
【0091】
また、本実施形態では特に、ロボットコントローラ150が、区間設定部162で設定した記録区間に対応する所定の動作をアーム103L,103Rが実行する毎に、各センサ122の零点調整を行う零点調整部165を有している。この零点調整部165により、各センサ122の温度ドリフトの影響を抑制することができ、接触検出の精度が低下するのを防止できる。特に、稼働時においてアーム103L,103Rが所定の動作を繰り返し行う場合、動作の度に毎回零点調整を行うので、温度ドリフトの影響を極力抑制することができる。
【0092】
また、本実施形態では特に、ロボットコントローラ150が、各センサ122の出力信号の高周波振動成分を抽出するハイパスフィルタ部161を有しており、判定部164は、ハイパスフィルタ部161により抽出された高周波振動成分に基づく各センサ122の出力値Vの出力データと上記規範波形とを比較することにより、アーム103L,103Rに対する接触の有無を判定する。これにより、外乱に起因する周波数成分を除去することができるので、アーム103L,103Rに対する接触の有無をより高精度に検出することができる。
【0093】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を説明する。
【0094】
(1)障害物の接触検出に適用する場合
上記実施形態では、本発明を物品把持制御に適用したが、これに限られず、本発明を障害物の接触検出に適用してもよい。すなわち、図10に示すように、稼働時において、アーム103L,103Rがロボットコントローラ150からの上記位置指令に応じた上記所定の動作、すなわち教示された動作開始位置(図10(a)中左側に示す位置)から教示された動作完了位置までの動作を実行する間に、判定部164が、上記実施形態と同様の手法によりアーム103L,103Rに対する障害物Bの接触の有無を判定する。そして、アーム103L,103Rに対する障害物の接触が検出されたら、その位置(図10(a)中右側に示す位置)でアーム103L,103Rの動作を停止させる。本変形例においても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。また、ロボット100自身あるいはロボット100の周囲に存在する物体に対して過剰な負荷が生じることを回避することができる。
【0095】
(2)ローパスフィルタを設ける場合
上記実施形態では、接触検出部155にセンサ122の出力信号の高周波振動成分を抽出するハイパスフィルタ161Aを有するハイパスフィルタ部161を設け、判定部164が、ハイパスフィルタ部161により抽出された高周波振動成分に基づく規範波形と出力データとを比較することにより、アーム103L,103Rに対する物体の接触の有無を判定していたが、これに限られない。すなわち、接触検出部155に上記ハイパスフィルタ部161とは別にセンサ122の出力信号の低周波振動成分を抽出するローパスフィルタ(又は低周波数帯域を通過帯域とするバンドパスフィルタでもよい)を有するローパスフィルタ部を設け、判定部164が、ローパスフィルタ部により抽出された低周波振動成分に基づく規範波形と出力データとを比較することにより、アーム103L,103Rに対する物体(特に、段ボール箱等の柔軟性を備えた物品)の接触の有無を判定するようにしてもよい。本変形例によれば、低周波振動成分を抽出することができるので、アーム103L,103Rに対する段ボール箱等の柔軟性を備えた物品の接触等、比較的遅い接触の有無を精度よく検出することができる。
【0096】
(3)単腕ロボットに適用する場合
以上においては、本発明を2つのアーム103L、103Rを有する双腕ロボットであるロボット100に適用していたが、これに限られず、本発明を1つのロボットアームを有する単腕ロボットに適用してもよい。この場合も、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0098】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0099】
1 ロボットシステム
100 ロボット
103L,R アーム(ロボットアーム)
122 センサ(ひずみセンサ)
150 ロボットコントローラ(制御ユニット)
161 ハイパスフィルタ部
162 区間設定部
163 規範データ記録部
164 判定部
165 零点調整部
166 閾値設定部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットアームを有するロボットと、
前記ロボットアームを構成する構造材料よりも固有振動数が大きい圧電体を有するひずみセンサと、
前記ひずみセンサの出力値に基づいて、前記ロボットが常態であるか非常態であるかを判定する判定部を備えた制御ユニットと、を有する
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記制御ユニットは、
前記ロボットアームが常態時に所定の動作を行う間の前記ひずみセンサの出力値の時間履歴を規範データとして記録する規範データ記録部を有し、
前記判定部は、
稼働時において、前記ロボットアームが前記所定の動作を行う際の前記ひずみセンサの出力値の出力データと、前記規範データ記録部に記録された前記規範データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記判定部は、
前記出力データと前記規範データとの差が予め設定された閾値の範囲内である場合には、前記ロボットが前記常態であると判定し、前記差が前記閾値を超えた場合には、前記ロボットが前記非常態であると判定する
ことを特徴とする請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記制御ユニットは、
前記閾値を設定する閾値設定部をさらに有する
ことを特徴とする請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記制御ユニットは、
前記規範データ記録部により前記ひずみセンサの出力値の時間履歴を前記規範データとして記録する区間を設定する区間設定部をさらに有する
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記制御ユニットは、
前記区間設定部で設定した区間に対応する前記所定の動作を前記ロボットアームが実行する毎に、前記ひずみセンサの零点調整を行う零点調整部をさらに有する
ことを特徴とする請求項5に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記制御ユニットは、
前記ひずみセンサの出力信号の高周波振動成分を抽出するハイパスフィルタ部をさらに有し、
前記判定部は、
前記ハイパスフィルタ部により抽出された前記高周波振動成分に基づく前記規範データと前記出力データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定する
ことを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記制御ユニットは、
前記ひずみセンサの出力信号の低周波振動成分を抽出するローパスフィルタ部をさらに有し、
前記判定部は、
前記ローパスフィルタ部により抽出された前記低周波振動成分に基づく前記規範データと前記出力データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定する
ことを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記ひずみセンサは、
圧電体として水晶が用いられたセンサである
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項10】
ロボットアームを有するロボットが常態であるか非常態であるかを判定するロボットの状態判定方法であって、
前記ロボットアームを構成する構造材料よりも固有振動数が大きい圧電体を有するひずみセンサの出力値を取得する出力値取得手順と、
前記ひずみセンサの出力値に基づいて、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定する判定手順と、を有する
ことを特徴とするロボットの状態判定方法。
【請求項11】
前記ロボットアームが常態時に所定の動作を行う間に、前記ひずみセンサの出力値の時間履歴を規範データとして記録する規範データ記録手順をさらに有し、
前記判定手順は、
稼働時において、前記ロボットアームが前記所定の動作を行う際の前記ひずみセンサの出力値の出力データと、前記記録された規範データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定する
ことを特徴とする請求項10に記載のロボットの状態判定方法。
【請求項1】
ロボットアームを有するロボットと、
前記ロボットアームを構成する構造材料よりも固有振動数が大きい圧電体を有するひずみセンサと、
前記ひずみセンサの出力値に基づいて、前記ロボットが常態であるか非常態であるかを判定する判定部を備えた制御ユニットと、を有する
ことを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
前記制御ユニットは、
前記ロボットアームが常態時に所定の動作を行う間の前記ひずみセンサの出力値の時間履歴を規範データとして記録する規範データ記録部を有し、
前記判定部は、
稼働時において、前記ロボットアームが前記所定の動作を行う際の前記ひずみセンサの出力値の出力データと、前記規範データ記録部に記録された前記規範データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記判定部は、
前記出力データと前記規範データとの差が予め設定された閾値の範囲内である場合には、前記ロボットが前記常態であると判定し、前記差が前記閾値を超えた場合には、前記ロボットが前記非常態であると判定する
ことを特徴とする請求項2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記制御ユニットは、
前記閾値を設定する閾値設定部をさらに有する
ことを特徴とする請求項3に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記制御ユニットは、
前記規範データ記録部により前記ひずみセンサの出力値の時間履歴を前記規範データとして記録する区間を設定する区間設定部をさらに有する
ことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記制御ユニットは、
前記区間設定部で設定した区間に対応する前記所定の動作を前記ロボットアームが実行する毎に、前記ひずみセンサの零点調整を行う零点調整部をさらに有する
ことを特徴とする請求項5に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記制御ユニットは、
前記ひずみセンサの出力信号の高周波振動成分を抽出するハイパスフィルタ部をさらに有し、
前記判定部は、
前記ハイパスフィルタ部により抽出された前記高周波振動成分に基づく前記規範データと前記出力データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定する
ことを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項8】
前記制御ユニットは、
前記ひずみセンサの出力信号の低周波振動成分を抽出するローパスフィルタ部をさらに有し、
前記判定部は、
前記ローパスフィルタ部により抽出された前記低周波振動成分に基づく前記規範データと前記出力データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定する
ことを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項9】
前記ひずみセンサは、
圧電体として水晶が用いられたセンサである
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項10】
ロボットアームを有するロボットが常態であるか非常態であるかを判定するロボットの状態判定方法であって、
前記ロボットアームを構成する構造材料よりも固有振動数が大きい圧電体を有するひずみセンサの出力値を取得する出力値取得手順と、
前記ひずみセンサの出力値に基づいて、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定する判定手順と、を有する
ことを特徴とするロボットの状態判定方法。
【請求項11】
前記ロボットアームが常態時に所定の動作を行う間に、前記ひずみセンサの出力値の時間履歴を規範データとして記録する規範データ記録手順をさらに有し、
前記判定手順は、
稼働時において、前記ロボットアームが前記所定の動作を行う際の前記ひずみセンサの出力値の出力データと、前記記録された規範データとを比較することにより、前記ロボットが前記常態であるか前記非常態であるかを判定する
ことを特徴とする請求項10に記載のロボットの状態判定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−139769(P2012−139769A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293843(P2010−293843)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】
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