説明

ロボットハンドの駆動機構

【課題】自在に曲げ変形或いは撓み変形した状態でも回転力を伝達できるフレキシブルシャフトを用いることにより、設計自由度が高く、且つ、十分に実用性のあるロボットハンドの駆動機構を提供する。
【解決手段】モータの回転力が減速機20を介して入力されるロボットハンド10の駆動機構であって、前記モータの回転力は、ガイドチューブGで外周が覆われたフレキシブルシャフトSを介して、前記減速機の入力軸20に伝達される、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロボットハンドの駆動機構、特に、モータの回転力が減速機を介して入力されるロボットハンドの駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、産業用ロボットのハンド部(所謂、ロボットハンド)としては、例えばグリッパと称されるものなど、特定の単一ワークを取り扱い対象とした専用ハンドが主流を占めてきたが、近年では、ユーザの使用現場での取り扱いワークの多様化などに起因して、多種類のワークに対応できる汎用ハンドのニーズが高まっている。
かかる汎用ハンドの一種として、対象ワークのサイズや形状に合わせて各指部や各爪部の形態をそれぞれ変化させることができる、所謂、電動多軸ハンドが知られている。このタイプのハンドでは、多くの場合、ワークに対する把持力を微細に調整することも可能である。
【0003】
しかしながら、電動多軸ハンドの場合、各指部や各爪部の形態をそれぞれ変化可能とするために多くの電動モータが必要とされ、これらモータは指部や爪部またはその近傍に配置されることになるので、ロボットハンドを設計する際にはこのモータの配置が大きな制約となり、また、不可避的にハンドが大型化するという難点がある。
【0004】
例えば、指部の関節部分に直接にモータを取り付けた場合には、狭隘作業が求められる指部においてモータが出っ張ることになり、必要とされる作業を行う上で大きな妨げとなる。このため、例えば、特許文献1では、パラレルリンク機構を採用すること等により、モータを指部からある程度離間したベース部(例えばハンドの拳部)に配置し、指部のスリム化を図ることが提案されている。
【0005】
かかる構成によれば、確かに、指部はスリム化され狭隘作業が阻害されることもなくなるのであるが、反面、ベース部(拳部)の重厚化を招くこととなり、また、モータを一箇所(ベース部:拳部)に集中配置するために、コネクタの配置スペースや中継ケーブルの案内スペースなども十分に確保する必要があり、ハンド全体としては、やはり大型化を免れることは困難である。
【0006】
ところで、自在に曲げ変形或いは撓み変形が可能で、このように変形した状態でも回転力を伝達できる動力伝達手段として、所謂フレキシブルシャフトは公知である。かかるフレキシブルシャフトを動力伝達手段に採用することにより、動力源であるモータを、動力使用要素から十分に離間して配置することが可能になる。このフレキシブルシャフトをロボットアーム等の動力伝達に適用することが、従来、試みられている。
【0007】
例えば、特許文献2には、複数の回転駆動源(モータ)をロボット本体に配置する一方、これらモータの駆動力を伝達するためのフレキシブルシャフトをロボットアームの内部に挿入し、フレキシブルシャフトを介してロボットアームのアーム駆動機構を作動させるようにした構成が開示されている。また、特許文献3には、駆動源(モータ)をロボットアーム内に配置し、アーム内に挿入したフレキシブルシャフトを介して、モータの駆動力をロボットの手首に伝達するようにした構成が開示されている。更に、特許文献4には、一種のフレキシブルシャフトとしてのワイヤをロボットハンドに用いることが提案されている。
【特許文献1】特開2005−205519号公報
【特許文献2】特開昭61−12692号公報
【特許文献3】特開昭58−102694号公報
【特許文献4】特開昭60−242991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献1,2,3に開示された構成は何れも、フレキシブルシャフトをロボットアームや手首の駆動に適用することを前提としたもので、このような用途では、a)フレキシブルシャフトでは余り大きな荷重に耐えられない、b)フレキシブルシャフトは捩れ剛性が低いのでアーム先端に無視し得ない位置誤差が生じる、c)フレキシブルシャフト交換時にアームの自重を保持できない、等の問題があり、実用化にはほど遠いのが現状である。
【0009】
また、特許文献4に開示された構成は、フレキシブルシャフト(ワイヤ)をロボットハンドの駆動に適用することを念頭に置いたものではあるが、あくまでもロボットハンドの減速機出力軸の大トルクをワイヤで指部に伝達して駆動するものであり、ワイヤに高い張力が繰り返し作用する結果、ワイヤの疲労寿命が著しく短くなるという問題がある。従って、実用に耐え得るものとは言い難い。
【0010】
この発明は、以上の技術的課題に鑑みてなされたもので、自在に曲げ変形或いは撓み変形した状態でも回転力を伝達できるフレキシブルシャフトを用いることにより、設計自由度が高く、且つ、十分に実用性のあるロボットハンドの駆動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このため、本発明に係るロボットハンドの駆動機構は、モータの回転力が減速機を介して入力されるロボットハンドの駆動機構であって、モータの回転力は、ガイドチューブで外周が覆われたフレキシブルシャフトを介して、減速機の入力軸要素に伝達される、ことを特徴としたものである。
この構成では、モータの回転力をフレキシブルシャフトによって減速機の入力軸要素に伝達することにより、モータの動力で駆動される指部や爪部等の駆動対象(動力使用要素)から離間した箇所にモータを配置することが可能になり、従来に比して、ロボットハンドの設計自由度が高まる。
【0012】
特に、前記モータは、ロボットハンドを保持するロボットアームに取り付けられることが好ましい。
モータをロボットアームに取り付けることにより、ロボットハンドのコンパクト化が可能となる。特に、多数のモータが必要とされることが多い電動多軸ハンドの場合には、とりわけ大きなコンパクト化の効果が得られる。
【0013】
この場合において、特に、フレキシブルシャフトは、具体的には、ロボットアームの手首部の内部を挿通していることが、より好ましい。
フレキシブルシャフトをロボットアームの手首部の内部を挿通させることにより、手首部の外側でフレキシブルシャフトを取り回す場合に比して、外部の部品や部材等との干渉を有効に回避でき、フレキシブルシャフトの配索の簡素化も図ることができる。また、見映えも向上する。
【0014】
以上の場合において、減速機の入力軸要素とガイドチューブとフレキシブルシャフトとで一体的に取り扱い可能なユニットを構成し、該ユニットをロボットハンドに対し一体として着脱可能とすることができる。
この構成では、減速機の入力軸要素とガイドチューブとフレキシブルシャフトとで形成したユニットをロボットハンドに対し一体として着脱でき、ロボットハンドの組立や、その後のフレキシブルシャフトのメインテナンスを行う際には、その作業性が大いに向上する。
尚、この場合において、モータの出力側の連結要素とガイドチューブとフレキシブルシャフトとで一体的に取り扱い可能なユニットを構成し、該ユニットをモータの出力側に対し一体として着脱可能とすることが、より好ましい。この場合には、モータの出力側の連結要素とガイドチューブとフレキシブルシャフトとで形成したユニットをモータに対し一体として着脱でき、ロボットハンドの組立や、その後のフレキシブルシャフトのメインテナンスを行う際には、その作業性が大いに向上する。
【0015】
また、以上の場合において、減速機の入力軸要素とフレキシブルシャフトの両方が軸受により回転自在に支承されていることが好ましい。
この構成では、減速機の入力軸要素とフレキシブルシャフトの両方が軸受に支承されているので、ロボットハンドの組立時に、両者の芯合わせ作業を容易かつ精度良く行える。また、フレキシブルシャフトが軸受により回転自在に支承されることで、出力側の負荷によるフレキシブルシャフトの振動や撓み等が緩和され、フレキシブルシャフトとガイドチューブとが擦れ合うことにより生じる摩耗も低減される。
【0016】
更に、以上の場合において、減速機の入力軸要素および/またはモータの出力軸とフレキシブルシャフトとがカップリングにて連結され、フレキシブルシャフトが軸受により回転自在に支承されるようにしてもよい。
この構成では、カップリングを用いることにより、減速機の入力軸要素および/またはモータの出力軸とフレキシブルシャフトとを、簡便かつ確実に連結することができる。また、フレキシブルシャフトが軸受により回転自在に支承されることにより、入力側から伝わるフレキシブルシャフトの振動または出力側の負荷によるフレキシブルシャフトの振動や撓み等が緩和され、フレキシブルシャフトとガイドチューブとが擦れ合うことにより生じる摩耗も低減される。
【0017】
また更に、以上の場合において、フレキシブルシャフトの出力側の端部の外周に金属製の筒体が固着され、この筒体が減速機の入力軸要素に対しセットビスを用いて固定されているようにしてもよい。
この構成では、フレキシブルシャフトの出力側の端部の外周に固着した金属製の筒体を、減速機の入力軸要素に対しセットビスを用いて固定することで、フレキシブルシャフトの出力側の端部を減速機の入力軸要素に対して、より確実で堅固に固定される。
【0018】
また更に、以上の場合において、フレキシブルシャフトの出力側の端部にエンコーダが取り付けられ、該エンコーダの検出値に基づいて前記モータの回転が制御されることが好ましい。
この構成では、エンコーダをフレキシブルシャフトの出力側の端部に配設したことにより、自在に曲げ変形或いは撓み変形した状態でも回転力を伝達できる(つまり柔軟性のある)フレキシブルシャフトを用いた場合に生じ得るフレキシブルシャフトの捩れの影響を受けることなく、モータの動力で駆動される駆動対象(動力使用要素)の姿勢を検出することができる。そして、前記エンコーダの検出信号に基づき、フレキシブルシャフトの捩れによる制御の遅れをも考慮に入れながら、モータの回転を制御し前記動力使用要素の制御を行うことができる。
【0019】
また更に、以上の場合において、ロボットハンドに、当該ロボットハンドの動力使用要素の位置を検出するカメラが取り付けられ、該カメラの撮像データに基づいて前記モータの回転が制御されるようにしてもよい。
この構成においても、ロボットハンドの動力使用要素の位置を検出するカメラを設けたことにより、自在に曲げ変形或いは撓み変形した状態でも回転力を伝達できる(つまり柔軟性のある)フレキシブルシャフトを用いた場合に生じ得るフレキシブルシャフトの捩れの影響を受けることなく、モータの動力で駆動される指部や爪部等の動力使用要素の位置を検出することができる。そして、前記カメラの撮像データに基づき、フレキシブルシャフトの捩れによる制御の遅れをも考慮に入れながら、モータの回転を制御し前記動力使用要素の制御を行うことができる。
【0020】
また更に、以上の場合において、モータと減速機との間に、モータ回転力の伝達方向を変換する剛体より成る動力伝達機構を設けることもできる。
この構成では、フレキシブルシャフトのみでは不可能な急角度での動力伝達方向の変化も可能となる。尚、かかるモータ回転力の伝達方向を変換する剛体より成る動力伝達機構としては、例えば、ベベルギヤ(傘歯車)機構が挙げられる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、モータの回転力は、自在に曲げ変形或いは撓み変形した状態でも回転力を伝達できるフレキシブルシャフトを介して、ロボットハンドの減速機の入力軸要素に伝達されるので、モータの動力で駆動される駆動対象(動力使用要素)から離間した箇所にモータを配置することができ、ロボットハンドの設計自由度を大いに高めることができる。この場合、フレキシブルシャフトは、モータから減速機の入力軸要素への動力伝達に用いられるものであり、減速機出力軸の大トルクを動力使用要素に伝達する従来のように、フレキシブルシャフトに高い張力が作用することはなく、実用性を阻害するような早期寿命の問題を招来することもない。また、フレキシブルシャフトは、その外周がガイドチューブで覆われていることにより、その自在な動作が円滑にガイドされ、また、周囲の部品あるいは部材との直接の干渉や周囲の塵埃等の異物の侵入からも保護される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
まず、第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るロボットアームに保持されたロボットハンドの構成を概略的に示す正面図である。図2は、前記ロボットハンドに伝達される回転力を発生させるモータとフレキシブルシャフトとの結合構造を示す説明図である。図3は、前記ロボットハンドとフレキシブルシャフトとの結合構造を示す断面図である。また、図4は前記図3の要部を拡大して示す拡大断面図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係るロボット装置では、ロボットアーム2の所定部位に、当該ロボットアーム2の一部を構成する手首部4が装着され、このロボットアーム2の手首部4にロボットハンド10が取り付けられている。前記手首部4は、軸線L4を中心にしてロボットアーム2に対し回転可能に装着され、その端部に取付板5を備えている。ロボットハンド10は、その主要な構成要素の少なくとも大部分を搭載する基台部11を備え、該基台部11の底壁部11bが前記取付板5に固定されることにより、ロボットアーム2の手首部4に堅固に保持されている。
【0024】
ロボットハンド10の前記基台部11は、底壁部11bの両端にそれぞれ立設された一対の縦壁部(第1縦壁部11a及び第2縦壁部11c)を備え、両縦壁11a,11c間に、後述する減速機20(図3参照)の出力軸要素27,28に連接された第1駆動軸15が底壁部11bと略平行に伸長している。この第1駆動軸15の途中部に、ロボットハンド10の指部および/または爪部(共に不図示)に連係する第2駆動軸16が取り付けられている。
【0025】
図3に示すように、前記縦壁部11a,11cのうち手首部4により近い側(図3における左側)の第1縦壁部11aには、ロボットハンド10の円筒状の本体部12が組み込まれ、該筒状本体部12の内部には減速機20が収容されている。この減速機20は、ロボットハンド10の駆動源としての電動モータ30(図2参照)の出力軸30sから伝達された動力(回転)を減速して出力するもので、従来公知のものと同様の減速機構26を備えたものである。減速機20の減速機構26自体の構成は本発明の要旨とするところではないので、その内部構造の図示および詳細な説明等は省略する。尚、かかる減速機20としては、例えば、所謂ハーモニックドライブ(登録商標)と称される波動歯車減速機構、或いは遊星歯車減速機構や特殊歯形減速機構、更には、伝動歯車群や伝動ベルトを用いた減速機構などによって実現される種々の公知の構造のものが適用可能である。本実施形態では、減速機20として、例えばハーモニックドライブ方式の減速機構を備えたものを使用する場合について説明する。
【0026】
筒状本体部12の手首部4に近い側(図3における左側)の端部の内側には、減速機20の入力軸要素として筒状の入力軸21が配置されている。前記筒状本体部12の端部内周には軸受J1が組み込まれており、入力軸21は、この軸受J1を介して筒状本体部12に対し回転自在に支承されている。
また、筒状本体部12の手首部4に近い側の開口はカバー部材14によって覆われており、該カバー部材14は、複数のボルト部材B1により、筒状本体部12に対して着脱可能に取り付けられている。
【0027】
一方、筒状本体部12の手首部4から遠い側(図3における右側)には、軸受機構J3を介して減速機20の出力軸要素(出力軸27及び出力リング体28)が回転自在に支承され、この出力軸要素27,28の出力リング体28に、取付フランジ15fを介して前記第1駆動軸15が締結固定されている。この第1駆動軸15の端末側は、手首部4から遠い側の第2縦壁部11cに組み込まれた軸受J4により、回転自在に支承されている。尚、筒状本体部12の手首部4から遠い側の開口は、第1駆動軸15の取付フランジ15fによって覆われている。
【0028】
本実施形態では、ロボットハンド10の駆動源としての電動モータ30(図2参照)からの動力(回転力)をロボットハンド10に伝達するために、自在に曲げ変形或いは撓み変形が可能で、このように変形した状態でも回転力を伝達できる動力伝達手段である所謂フレキシブルシャフトSを用いている。
【0029】
また、本実施形態に係るフレキシブルシャフトSは、その外周がガイドチューブGで覆われている。フレキシブルシャフトSの外周をガイドチューブGで覆うことにより、フレキシブルシャフトSの自在な動作が円滑にガイドされ、また、周囲の部品あるいは部材とフレキシブルシャフトSとの直接の干渉を防止できる。更に、周囲の塵埃等の異物の侵入からも保護できる。
このガイドチューブGとしては、例えば金属や樹脂あるいはゴムなど、種々の材質のものが適用可能であるが、フレキシブルシャフトSに対するガイド特性や保護特性、更には耐久性などの観点から、薄板ステンレス鋼製の所謂フレキシブルチューブを用いることが好ましい。
【0030】
前記フレキシブルシャフトSのロボットハンド10側の端部は、図4に詳しく示されるように、前記カバー部材14に設けられた貫通孔14hを挿通した上で、入力軸21の内周部に所定の締め代をもって嵌合固定されている。
尚、この代わりに、フレキシブルシャフトSの出力側(ロボットハンド10側)の端部の外周に金属製の筒体を固着し、この筒体を減速機20の入力軸要素21に対しセットビスを用いて固定するようにしてもよい。かかる構成を採用することにより、フレキシブルシャフトSの出力側の端部を、減速機20の入力軸要素21に対しより確実で堅固に固定することができる。
【0031】
また、カバー部材14の貫通孔14hの減速機20側の端部には、小型の軸受J5が組み込まれており、フレキシブルシャフトSはこの軸受J5により回転自在に支承されている。前述のように、減速機20の入力軸21は、その外周部を軸受J1によって支持されているので、減速機20の入力軸要素(入力軸21)とフレキシブルシャフトSの両方が軸受J1,J5により回転自在に支承されていることになる。
【0032】
このように、減速機20の入力軸要素21とフレキシブルシャフトSの両方が軸受J1,J5に支承された構成とすることにより、ロボットハンド10の組立時に、両者の芯合わせ作業を容易かつ精度良く行うことができる。また、フレキシブルシャフトSが軸受J5により回転自在に支承されることにより、出力側の負荷によるフレキシブルシャフトSの振動や撓み等が緩和され、フレキシブルシャフトSとガイドチューブGとが擦れ合うことにより生じる摩耗も低減することが可能になる。
【0033】
一方、フレキシブルシャフトSのモータ30側の端部は、図2に示されるように、一対の連結要素が組み合わされてなる所謂カップリング32(軸継手)を介してモータ30の出力軸30sと連結されている。周知のように、前記カップリング32は、同軸上に配列された2本の軸部材を比較的簡便かつ確実に連結するもので、かかるカップリング32としては、従来公知の種々の構造のものを用いることができる。
このように、カップリング32を用いたことにより、モータ30の出力軸30sとフレキシブルシャフトSとを、簡便かつ確実に連結することができる。尚、かかるカップリング32を、減速機20の入力軸要素21とフレキシブルシャフトSとの間の結合に用いることもできる。
【0034】
モータ30を固定するモータベース34には、フレキシブルシャフトSを保持するためのシャフトホルダ36が、複数のボルト部材B2によりモータベース34に対し着脱可能に取り付けられている。フレキシブルシャフトSのモータ30側の端部は、前記シャフトホルダ36に設けられた貫通孔36hを挿通した上で、カップリング32の内周部に所定の締め代をもって嵌合固定されている。
【0035】
シャフトホルダ36の貫通孔36hのカップリング32側の端部には、例えば複列の小型軸受J6が組み込まれており、フレキシブルシャフトSはこの軸受J6により回転自在に支承されている。
このように、フレキシブルシャフトSの端部が軸受J6により回転自在に支承されることにより、入力側から伝わるフレキシブルシャフトSの振動や撓み等が緩和され、フレキシブルシャフトSとガイドチューブGとが擦れ合うことにより生じる摩耗も低減される。
【0036】
尚、前述のロボットハンド10及びロボットアーム2を有するロボット装置は、例えばマイクロコンピュータを主要部として構成された制御ユニット8(図2参照)を備えており、前記モータ30は、この制御ユニット8に対して信号授受可能に接続され、この制御ユニット8からの制御信号に応じて駆動制御されるようになっている。
【0037】
以上のように、自在に曲げ変形或いは撓み変形した状態でも回転力を伝達できる前記フレキシブルシャフトSを動力伝達手段に採用することにより、動力源であるモータ30を、動力使用要素(ロボットハンド10の指部や爪部)から十分に離間して配置することが可能になる。
【0038】
本実施形態では、より好ましくは、モータ30は、ロボットハンド10を保持するロボットアーム2の適所に配設されている。
このように、モータ30をロボットアーム2に取り付けることにより、ロボットハンド10のコンパクト化が可能となる。特に、多数のモータが必要とされることが多い電動多軸ハンドの場合には、とりわけ大きなコンパクト化の効果が得られる。
【0039】
この場合において、フレキシブルシャフトSは、具体的には、ロボットアーム2及びその手首部4の内部にそれぞれ形成された中空部2H,4H(図1における破線表示参照)を挿通して配索されている。
このように、フレキシブルシャフトSをロボットアーム2の手首部4の内部4Hを挿通させることにより、手首部4の外側でフレキシブルシャフトSを取り回す場合に比して、外部の部品や部材等との干渉を有効に回避でき、フレキシブルシャフトSの配索の簡素化も図ることができる。また、見映えも向上する。
【0040】
以上、説明したように、本実施形態によれば、モータ30の回転力は、自在に曲げ変形或いは撓み変形した状態でも回転力を伝達できるフレキシブルシャフトSを介して、ロボットハンド10の減速機20の入力軸要素21に伝達されるので、モータ30の動力で駆動される指部や爪部等の駆動対象(動力使用要素)から離間した箇所にモータ30を配置することができ、ロボットハンド10の設計自由度を大いに高めることができる。この場合、フレキシブルシャフトSは、モータ30から減速機20の入力軸要素21への動力伝達に用いられるものであり、減速機出力軸27の大トルクを動力使用要素に伝達する従来のように、フレキシブルシャフトSに高い張力が作用することはなく、実用を阻害するような早期寿命の問題を招来することもない。
【0041】
また、ロボットハンド10の駆動力の伝達にフレキシブルシャフトSを適用した結果、例えばハンド10が周囲の部材や部品等の障害物にぶつかった場合などには、ロボットハンド10の他の駆動系構成要素に比して一般に強度が低く外力の作用で破断し易いフレキシブルシャフトSが一種のメカニカルヒューズの役割を果たし、他の駆動系やロボットハンド10自体が大きなダメージを受けることを回避することも可能である。
【0042】
モータ30からの動力をロボットハンド10に伝達するために、自在に曲げ変形或いは撓み変形した状態でも回転力を伝達できる動力伝達手段であるフレキシブルシャフトSを用いた場合、長期間の使用に伴ってフレキシブルシャフトSの交換あるいは修理等のメインテナンスが必要であるが、このようなフレキシブルシャフトSのメインテナンスを行う際やフレキシブルシャフトSのロボットハンド10への初期組付時の作業は、ロボットハンド10及び/又はロボットアーム2への組付状態のままで行おうとすれば、かなり煩雑で狭隘な作業となり、なかなかの困難を伴うものである。
【0043】
そこで、本実施形態では、減速機20の入力軸要素21とガイドチューブGとフレキシブルシャフトSとで一体的に取り扱い可能なユニットを構成し、該ユニットをロボットハンド10に対し一体として着脱可能とすることができるようにしている。
すなわち、前述のように、フレキシブルシャフトSのロボットハンド10側の端部を挿通させたカバー部材14は、複数のボルト部材B1により、ロボットハンド10の筒状本体部12に対して着脱可能に取り付けられているので、フレキシブルシャフトSのメインテナンスが必要な場合には、前記ボルト部材B1を螺脱することにより、カバー部材14を筒状本体部12から容易に取り外すことができる。
【0044】
このカバー部材14の取り外し動作に伴って、軸受J5の内周部に嵌合されたフレキシブルシャフトSと、該フレキシブルシャフトSが内周部に嵌合した入力軸21と、該入力軸21の外周部を支承する軸受J1とが、一体的に減速機20の内部から取り外される。このカバー部材14の取り外しに際しては、入力軸21の外周部を支承する軸受J1の外周部とロボットハンド10の筒状本体部12の内周部との間の嵌合力を越える抜脱力をカバー部材14に加えればよい。尚、この代わりに、軸受J1の内周部と入力軸21の外周部との間で取り外しができるように構成することも可能である。
【0045】
本実施形態では、このようにカバー部材14の取り外し動作に伴って入力軸21を減速機20の内部から取り外し可能とするために、減速機20の第1段目ギヤと第2段目ギヤ(共に不図示)とは、その噛み合わせ及び相対位置に関して、第1段目ギヤをその回転軸線に沿って抜脱する方向を第1段目ギヤの抜き方向と称すれば、その抜き方向に第2段目ギヤが存在しないように設定されている。従って、入力軸21を減速機20の内部から取り外す際に、入力軸21に連結された第1段目ギヤが第2段目ギヤと干渉して、その抜脱動作が阻害されることはない。
【0046】
以上のようにしてカバー部材14をロボットハンド10の筒状本体部12から取り外した後に、比較的広い作業環境で、フレキシブルシャフトSの端部を減速機20の入力軸21の内周部および軸受J5の内周部から若干の無理抜きを行って抜脱することにより、容易にフレキシブルシャフトSの端部を取り外して当該フレキシブルシャフトSの交換あるいは修理等のメインテナンスを行うことができる。この場合には、フレキシブルシャフトSの端部を取り外す際の作業の自由度が高く、良好な作業性を確保することができる。メインテナンスを終えた後、カバー部材14をロボットハンド10の筒状本体部12に取り付ける際には、以上と逆の動作となる。
【0047】
以上のように構成したことにより、減速機20の入力軸要素21とガイドチューブGとフレキシブルシャフトSとで形成したユニットをロボットハンド10に対し一体として着脱でき、ロボットハンド10の組立や、その後のフレキシブルシャフトSのメインテナンスを行う際には、その作業性が大いに向上する。
【0048】
また、フレキシブルシャフトSのモータ30側の端部においては、前述のように、フレキシブルシャフトSのモータ30側の端部を挿通させたシャフトホルダ36は、複数のボルト部材B2により、モータ30のモータベース34に対して着脱可能に取り付けられているので、フレキシブルシャフトSのメインテナンスが必要な場合には、前記ボルト部材B2を螺脱し、且つカップリング32の入力側連結要素32aと出力側連結要素32bとの締結を解除することにより、シャフトホルダ36をモータベース34から容易に取り外すことができる。
【0049】
このシャフトホルダ36の取り外し動作に伴って、カップリング32の出力側連結要素32bと、軸受J6の内周部に嵌合されたフレキシブルシャフトS及びガイドチューブGとが、一体的にモータ出力軸30sから(つまり、カップリング32の出力側連結要素32bから)取り外される。
【0050】
このようにしてシャフトホルダ36をモータベース34から取り外した後に、比較的広い作業環境で、フレキシブルシャフトSの端部をカップリング32の出力側連結要素32bの内周部および軸受J6の内周部から若干の無理抜きを行って抜脱することにより、フレキシブルシャフトSの端部を取り外して当該フレキシブルシャフトSの交換あるいは修理等のメインテナンスを行うことができる。この場合においても、フレキシブルシャフトSの端部を取り外す際の作業の自由度が高く、良好な作業性を確保することができる。メインテナンスを終えた後、シャフトホルダ36をモータベース34に取り付ける際には、以上と逆の動作となる。
【0051】
この場合には、カップリング32の出力側連結要素32bと、軸受の内周部に嵌合されたフレキシブルシャフトS及びガイドチューブGとで形成したユニットをモータ出力軸30sに対し一体として着脱でき、ロボットハンド10の組立や、その後のフレキシブルシャフトSのメインテナンスを行う際には、その作業性が大いに向上する。
【0052】
尚、フレキシブルシャフトSをロボットアーム2や手首部4の中空部2H,4Hを挿通させるレイアウトでも中空部2H,4Hに十分なスペースの余裕がある場合や、フレキシブルシャフトSを手首部4の外側で取り回すように配索した場合など、フレキシブルシャフトSの配索経路や配索状況によっては、或いは、前記カバー部材14やシャフトホルダ36の大きさによっては、減速機20の入力軸要素21から、ガイドチューブG及びフレキシブルシャフトS、更にはカップリング32の出力側連結要素32bに至るまでを、一体的に取り扱い可能なユニットを構成することも可能である。
この場合には、ロボットハンド10の組立や、その後のフレキシブルシャフトSのメインテナンスを行う際の作業性が、更に大きく向上することになる。
【0053】
尚、モータ30からの動力をロボットハンド10に伝達する動力伝達手段としてフレキシブルシャフトSを用いた場合、自在に曲げ変形或いは撓み変形した状態でも回転力を伝達できる反面、動力伝達時の回転遅れに伴ってフレキシブルシャフトSに捩れが生じ、これに起因してモータ30の動力で駆動される駆動対象(動力使用要素:指部や爪部)の位置誤差が生じることが考えられる。ロボットハンド10の出力端(指部や爪部)の場合、一般に、これら出力端の位置制御よりも、出力端での把持力などの力制御がより重要であるとされているが、前記のような位置誤差はできるだけ抑制されることが望ましいのは当然である。
【0054】
かかる観点から、本実施形態では、より好ましくは、フレキシブルシャフトSの出力側の端部(例えば、減速機入力軸21の近傍)に、前記制御ユニット8に対し信号授受可能に接続されたエンコーダ(不図示)を配設し、このエンコーダの検出信号に基づいてロボットハンド10の現在姿勢を把握するようにしている。
【0055】
このように、エンコーダをフレキシブルシャフトSの出力側の端部に配設したことにより、フレキシブルシャフトSの捩れの影響を受けることなく、ロボットハンド10の姿勢を検出することができる。そして、前記エンコーダの検出信号に基づき、フレキシブルシャフトSの捩れによる制御の遅れをも考慮に入れながら、モータ30の回転を制御しロボットハンド10の制御を行うことができる。
【0056】
また、前記エンコーダの適用に代えて、或いはこれに加えて、ロボットハンド10に、当該ロボットハンド10の出力端(指部や爪部)の位置を検出するために、前記制御ユニット8に対し信号授受可能に接続されたカメラ(例えばCCDカメラ:不図示)を取り付けておき、このカメラの撮像データに基づいて、ロボットハンド10の指部や爪部の位置を把握するようにしてもよい。
この場合においても、フレキシブルシャフトSの捩れの影響を受けることなく、ロボットハンド10の出力端(指部や爪部)の位置を検出することができる。そして、前記カメラの撮像データに基づき、フレキシブルシャフトSの捩れによる制御の遅れをも考慮に入れながら、モータ30の回転を制御しロボットハンド10の制御を行うことができる。
【0057】
前述の第1の実施形態では、モータ30からの動力をロボットハンド10に伝達する動力伝達手段としてフレキシブルシャフトSを用いているので、モータ30からの動力の伝達方向を急角度(例えば90度など)で変換することは一般に極めて困難であるが、モータ30と減速機20との間に、剛体より成る動力伝達機構を設けることによって、モータ30からの動力の伝達方向を急角度で変換することが可能である。
【0058】
次に、このような急角度での動力伝達方向の変換を対応可能とした本発明の第2の実施形態について説明する。尚、以下の説明において、第1の実施形態おける場合と同様の構成を備え同様の作用をなすものについては、同一の符号を付し、それ以上の説明は省略する。
【0059】
図5は、本発明の第2の実施形態に係るロボットハンドとフレキシブルシャフトとの結合構造を示す断面図である。この図に示すように、第2の実施形態に係るロボットハンド50では、筒状本体部52の入力側(図5における下側)の開口は略筒状のハウジング体56で覆われている。尚、筒状本体部52には、当該ロボットハンド50をロボットアーム2の手首部4の適所に取り付けるために、取付フランジ部52fが一体的に形成されている。
【0060】
本実施形態では、前記ハウジング体56の内部に、剛体より成る動力伝達機構として、従来公知のベベルギヤ(傘歯車)セットK1,K2が収容されている。
該ベベルギヤセットK1,K2は、入力ギヤとしての第1ベベルギヤK1と出力ギヤとしての第2ベベルギヤK2とで構成され、両ベベルギヤK1,K2の回転軸線が互いに直交するように組み合わせて用いられる。つまり、第1ベベルギヤK1から入力された動力は、90度方向変換されて第2ベベルギヤK2から出力され、急角度での動力伝達方向の変換に好適に対応することができる。
【0061】
この第2ベベルギヤK2は、その出力軸53が減速機20の入力軸51と同軸上に配列されるように、ハウジング体56内に組み付けられている。すなわち、ハウジング体56の反変速機側(図5における下側)に設けた開口に軸受J12が組み込まれており、この軸受J12の内周部に、第2ベベルギヤK2のギヤ本体の外周部が所定の締め代をもって嵌合固定されている。尚、これに加えて、セットビス54を用いて、第2ベベルギヤK2の出力軸53と減速機20の入力軸51とを、より強固に結合するようにしてもよい。
【0062】
一方、ハウジング体56の側部(図5における右側部)に設けた開口には軸受J11が組み込まれており、この軸受J11の内周部に、第1ベベルギヤK1のギヤ本体の外周部が所定の締め代をもって嵌合固定されている。この第1ベベルギヤK1及び軸受J11の外方(図5における右側方)は、フレキシブルシャフトSを導入するためのアダプタ57で覆われている。
【0063】
フレキシブルシャフトSのロボットハンド50側の端部は、前記アダプタ57に設けられた貫通孔57hを挿通した上で、第1ベベルギヤK1のギヤ本体の内周部に所定の締め代をもって嵌合固定されている。本実施形態では、フレキシブルシャフトSが結合された第1ベベルギヤK1が、減速機20の入力軸要素の役割を果たしている。
尚、フレキシブルシャフトSの端部を、前述のように第1ベベルギヤK1のギヤ本体の内周部に嵌合固定する代わりに、或いはこれに加えて、フレキシブルシャフトSの出力側(ロボットハンド50側)の端部の外周に金属製の筒体を固着し、この筒体を第1ベベルギヤK1のギヤ本体に対しセットビスを用いて、より強固に固定するようにしてもよい。
【0064】
また、アダプタ57の貫通孔57hの第1ベベルギヤK1側の端部には、例えば複列の小型軸受J13が組み込まれており、フレキシブルシャフトSはこの軸受J13により回転自在に支承されている。前述のように、第1ベベルギヤK1は、そのギヤ本体の外周部を軸受J11によって支持されているので、減速機20の入力軸要素(第1ベベルギヤK1)とフレキシブルシャフトSの両方が軸受J11,J13により回転自在に支承されていることになる。
【0065】
このように、減速機20の入力軸要素K1とフレキシブルシャフトSの両方が軸受J11,J13に支承された構成とすることにより、ロボットハンド50の組立時に、両者の芯合わせ作業を容易かつ精度良く行うことができる。また、フレキシブルシャフトSが軸受J13により回転自在に支承されることにより、出力側の負荷によるフレキシブルシャフトSの振動や撓み等が緩和され、フレキシブルシャフトSとガイドチューブGとが擦れ合うことにより生じる摩耗も低減することが可能になる。
【0066】
前記アダプタ57は、ハウジング体56への取付のためのフランジ部57fを備えており、このフランジ部57fが複数のボルト部材B11で固定されることにより、ハウジング体56に対して着脱可能に取り付けられている。
すなわち、フレキシブルシャフトSのロボットハンド50側の端部を挿通させたアダプタ57は、複数のボルト部材B11により、ロボットハンド50のハウジング体56に対して着脱可能に取り付けられているので、フレキシブルシャフトSのメインテナンスが必要な場合には、前記ボルト部材B11を螺脱することにより、アダプタ57をハウジング体56から容易に取り外すことができる。
【0067】
このアダプタ57の取り外し動作に伴って、軸受J13の内周部に嵌合されたフレキシブルシャフトSと、該フレキシブルシャフトSが内周部に嵌合した第1ベベルギヤK1と、該第1ベベルギヤK1のギヤ本体の外周部を支承する軸受J11とが、一体的にハウジング体56の内部から取り外される。このアダプタ57の取り外しに際しては、第1ベベルギヤK1のギヤ本体の外周部を支承する軸受J11の外周部とハウジング体56の側部開口の内周部との間の嵌合力を越える抜脱力をアダプタ57に加えればよい。尚、この代わりに、軸受J11の内周部と第1ベベルギヤK1のギヤ本体の外周部との間で取り外しができるように構成することも可能である。
【0068】
この場合、第1ベベルギヤK1をギヤ本体の回転軸線に沿って抜脱する方向(図5における右方)を第1ベベルギヤK1の抜き方向と称すれば、その抜き方向に第2ベベルギヤK2は存在しておらず、従って、第1ベベルギヤK1の抜脱動作が第2ベベルギヤK2によって阻害されることはない。
【0069】
このようにしてアダプタ57をロボットハンド50のハウジング体56から取り外した後に、第1の実施形態における場合と同様に、比較的広い作業環境で、フレキシブルシャフトSの端部を第1ベベルギヤK1のギヤ本体の内周部および軸受J13の内周部から若干の無理抜きを行って抜脱することにより、容易にフレキシブルシャフトSの端部を取り外して当該フレキシブルシャフトSの交換あるいは修理等のメインテナンスを行うことができる。すなわち、フレキシブルシャフトS1のメインテナンスに関しても、第1の実施形態における場合と同様の作用効果を得ることができるのである。
【0070】
以上、説明したように、本発明の第2の実施形態によれば、前述の第1の実施形態における場合と同様の作用効果を奏することができ、しかも、モータ30と減速機20との間に、モータ回転力の伝達方向を変換する剛体より成る動力伝達機構として、第1ベベルギヤK1と第2ベベルギヤK2とで構成されたベベルギヤセットK1,K2を配置したことにより、フレキシブルシャフトSのみでは不可能な急角度(90度)での動力伝達方向の変換にも、好適に対応することができるのである。
【0071】
尚、以上の各実施形態でロボットハンド10,50等に組み込まれた種々の軸受J1〜J5,J11〜J13としては、例えば玉軸受等の転がり軸受を好適に用いることができるが、これに限定されるものでは決してなく、例えば他のタイプの転動体が組み込まれた転がり軸受、更には、所謂メタル軸受等の滑り軸受けなど、他の種々のタイプの軸受も支障なく用いることができる。
【0072】
また、以上の各実施形態では、ロボットハンド10,50に動力(回転力)を供給するモータ30はロボットアーム2の適所に配置されるようになっていたが、本発明は、かかるモータ配置に限定されるものではなく、モータ30の動力で駆動される指部や爪部等の駆動対象(動力使用要素)から離間した箇所であればよく、スペースの余裕さえあれば、例えばロボットハンドの拳部などに配置するようにしてもよい。
【0073】
このように、本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、変更および改良等がなされるものであることは、いうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、モータの回転力が減速機を介して入力されるロボットハンドの駆動機構に関し、自在に曲げ変形或いは撓み変形した状態でも回転力を伝達できるフレキシブルシャフトを用いることにより、設計自由度が高く、且つ、十分に実用性のあるロボットハンドの駆動機構を実現することができ、例えば、溶接ロボットや組立ロボット等の種々のロボットについて、そのロボットハンドの駆動機構として、有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るロボットアームに保持されたロボットハンドの構成を概略的に示す正面図である。
【図2】前記ロボットハンドに伝達される回転力を発生させるモータとフレキシブルシャフトとの結合構造を示す説明図である。
【図3】前記ロボットハンドとフレキシブルシャフトとの結合構造を示す断面図である。
【図4】前記図3の要部を拡大して示す拡大断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るロボットハンドとフレキシブルシャフトとの結合構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
2 ロボットアーム
4 手首部
4H (手首部の)中空部
8 制御ユニット
10,50 ロボットハンド
20 減速機
21,51 (減速機の)入力軸
30 電動モータ
30s (モータの)出力軸
32 カップリング
B1,B2,B11 ボルト部材
G ガイドチューブ
J1〜J5,J11〜J13 軸受
K1 第1ベベルギヤ
K2 第2ベベルギヤ
S フレキシブルシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転力が減速機を介して入力されるロボットハンドの駆動機構であって、
前記モータの回転力は、ガイドチューブで外周が覆われたフレキシブルシャフトを介して、前記減速機の入力軸要素に伝達される、ことを特徴とするロボットハンドの駆動機構。
【請求項2】
前記モータは、前記ロボットハンドを保持するロボットアームに取り付けられている、ことを特徴とする請求項1に記載のロボットハンドの駆動機構。
【請求項3】
前記フレキシブルシャフトは、前記ロボットアームの手首部の内部を挿通している、ことを特徴とする請求項2に記載のロボットハンドの駆動機構。
【請求項4】
前記減速機の入力軸要素とガイドチューブとフレキシブルシャフトとが一体的に取り扱い可能なユニットを構成し、該ユニットは前記ロボットハンドに対し一体として着脱可能である、ことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のロボットハンドの駆動機構。
【請求項5】
前記減速機の入力軸要素と前記フレキシブルシャフトの両方が軸受により回転自在に支承されている、ことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のロボットハンドの駆動機構。
【請求項6】
前記減速機の入力軸要素および/または前記モータの出力軸と前記フレキシブルシャフトとがカップリングにて連結され、前記フレキシブルシャフトが軸受により回転自在に支承されている、ことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のロボットハンドの駆動機構。
【請求項7】
前記フレキシブルシャフトの出力側の端部の外周に金属製の筒体が固着され、この筒体が前記減速機の入力軸要素に対しセットビスを用いて固定されている、ことを特徴とする請求項1から6の何れかに記載のロボットハンドの駆動機構。
【請求項8】
前記フレキシブルシャフトの出力側の端部にエンコーダが取り付けられ、該エンコーダの検出値に基づいて前記モータの回転が制御される、ことを特徴とする請求項1から7の何れかに記載のロボットハンドの駆動機構。
【請求項9】
前記ロボットハンドに、当該ロボットハンドの動力使用要素の位置を検出するカメラが取り付けられ、該カメラの撮像データに基づいて前記モータの回転が制御される、ことを特徴とする請求項1から8の何れかに記載のロボットハンドの駆動機構。
【請求項10】
前記モータと前記減速機との間に、モータ回転力の伝達方向を変換する剛体より成る動力伝達機構が設けられている、ことを特徴とする請求項1から9の何れかに記載のロボットハンドの駆動機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−69580(P2010−69580A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240379(P2008−240379)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】