説明

ロボットハンド及びウェーハハンドリング装置

【課題】本発明は、構成が簡単で安価なウェーハハンドリングロボット装置およびロボットハンドを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、ロボット本体と、前記ロボット本体に設けられたアームと、前記アームに設けられ、ウェーハの搬送をするロボットハンドと、前記ロボット本体を制御する制御装置と、前記ロボット本体、および前記制御装置を載置する装置ベースと、前記装置ベースをアースに設置するアース手段を有し、前記ロボットハンドは、電気抵抗が10〜10Ωであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体ウェーハをハンドリングする装置に用いられるロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶表示器の製造工程においては、薄型基板に帯電した静電気の放電により素子が破壊されたり、電磁波ノイズの発生によりプロセス装置やロボットが誤作動するなどの静電気障害が発生するおそれがある。
【0003】
半導体ウェーハをロボットハンドでハンドリングして半導体製造装置や半導体検査装置へ搬送するウェーハ搬送装置では、上記の原因によりロボットハンドの制御装置に障害が発生し、ロボットハンドの誤作動や作動停止と言った問題があった。
【0004】
これに対し、ロボットハンドがイオン化気体噴出口を有し、該イオン化気体噴出孔からイオン化気体が噴き出されることによって静電気除去機能をもたされる除電技術が例えば、特許文献1に知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2000−082732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1に示される静電気除去機能付きウェーハハンドリング装置は、イオン化気体を作るイオン化気体発生装置を必要とする。また、作ったイオン化気体をウェーハハンドに導き、噴出させる気体通路機構を設けなければならなく、ウェーハハンドリング装置としての構成が複雑で高価になる。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑み、構成が簡単で安価なウェーハハンドリングロボット装置およびロボットハンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ロボット本体と、前記ロボット本体に設けられ、ウェーハの搬送をするロボットハンドと、前記ロボット本体をアースに設置するアース手段を有し、前記ロボットハンドは、少なくとも表面の電気抵抗が、アース手段の電気抵抗を含めた前記ロボット本体側の電気抵抗よりも高いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ウェーハ搬送においてウェーハが帯電していてもロボットハンドによりアース接地されたロボット本体を通してアースへ静電気を逃がすことができ、かつ、ロボットハンドの電気抵抗がアース手段の電気抵抗を含めた前記ロボット本体側の電気抵抗よりも高いので、ロボット本体や制御装置を静電気による誤動作や破壊から保護することができる。
【0010】
また、静電気の除電と静電気からの装置保護には、特別な装置を必要としないので構成が簡単で安価にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施例について、図を引用して説明する。
【0012】
まず、図1に沿ってウェーハハンドリングロボット装置の概要から説明する。
【0013】
ウェーハ16は、樹脂製ケース17に収納されている。
【0014】
この時、ウェーハ16は、高い静電気電圧で帯電している場合がある。
【0015】
ロボット本体11は、伸縮自在なる多段のアーム12と、アーム12の先端に備えたロボットハンド1を有する。
【0016】
帯電しているウェーハ16の上げ下ろしは、ロボットハンド1に載せて行なわれる。この上げ下ろしに際しては、ウェーハ16がロボットハンド1から落下しないように吸着(後述する)して行なわれる。
【0017】
ウェーハ16に帯電している静電気は、ロボットハンド1、多段アーム12、ロボット本体11、および制御装置13、並びに装置ベース14を介してアース15(アース手段)へと流れ、除電される。
【0018】
ウェーハ16に接するロボットハンド1の表面電気抵抗を、ロボット本体11ないし制御装置13の電気抵抗より極めて高くする。これにより、ロボット本体11ないし制御装置13にかかる静電気の電圧を低くおさえるとともに放電される電流値を小さくして、ロボット本体11ないし制御装置13を静電気より保護する。
【0019】
ロボットハンドは、ウェーハの裏面を吸着するタイプと、ウェーハの周囲エッジを掴むエッジチャックタイプがある。いずれも、ウェーハと直に接する表面電気抵抗を高めることを静電気に対する保護が行なわれる。
【0020】
図2−A、図2−B、図2−C、図2−Dを引用し、吸着式のロボットハンドについて説明する。
【0021】
ロボットハンド1は、ウェーハを吸着する吸着面4、吸着する為の真空孔5、真空を通す真空路6、真空を供給する真空口7を有す。
【0022】
図2−Cに示すロボットハンド1の材料は、内側の基材材料3と表面の表面材料2からなる。基材材料3は、金属やセラミック、又は、その複合材からなる。
【0023】
また、図2−Dに示すロボットハンド1の材料は、基材材料3からなる。基材材料3は、金属やセラミック、又は、その複合材からなるとともに基材材料3の表面電気抵抗が10Ω〜10Ωの導電材である。
【0024】
また、機械的な硬度が十分であれば、全体を表面基材2と同じ材料で構成しても良い。
【0025】
次に、ウェーハハンドリングロボット装置の電気抵抗に関する電気的モデル図(図3)を引用して説明する。
【0026】
ウェーハ16に帯電した静電気は、ロボットハンド1の電気抵抗値R22へ静電気電圧Vs21として入力される。ロボットハンド1のもつ電気抵抗値10Ω〜10Ωにより制御装置13に印加される電圧は、ロボットハンド1の持つ表面電気抵抗R22とロボット本体11の電気抵抗値R23と制御装置13の電気抵抗値R24との合成電気抵抗との分圧比だけ小さくなる。
【0027】
アース接地されたロボット本体11の電気抵抗値R23と制御装置13の電気抵抗値R24の各接地電気抵抗値は、R23、R24とも0.1Ωとすると、合成電気抵抗で0.05Ωとなる。
【0028】
ロボット本体11の電気抵抗値R23と制御装置13に電気抵抗値R24にかかる電圧V26は、V26=Vs21×((R23・R24/(R23+R24)/(R22+((R23・R24)/(R23+R24)))となる。
【0029】
静電気電圧Vs21を25kVとすると電圧V26は、0.0125Vとなりロボット本体11、制御装置13に使用される電子部品を静電気による破壊や誤動作から保護できる。ロボット本体11内に制御装置がある場合も同様に保護される。
【0030】
また全電流I25はI25=Vs/(R22+((R23・R24)/(R23+R24)))となりアース15へと流れ除電する。
【0031】
このように、ロボット本体11側(ロボット本体11、装置ベース14、アース手段を含む)の電気抵抗は、ロボットハンド1の少なくとも表面の電気抵抗値に比べ、格段に低く、ロボット本体11や制御装置13にかかる電圧が低くなる。
【0032】
このため、ロボット本体11や制御装置13の電気部品は静電気による破壊や誤動作から保護される。
【0033】
図4は、本実施例の仕様決定(電気抵抗値、印加電圧、放電時間)表を示す。
【0034】
ロボットハンドの表面電気抵抗値は、図4により決定した。図4は、静電気がロボットハンド1に印加された時、制御装置に印加される電圧と除電されるまでの時間を表す。
【0035】
制御部(制御装置13やロボット本体11内に制御回路)への印加電圧31は、ロボットハンド表面電気抵抗値が10Ω以上の場合1.25V以下となり、ICを破壊や誤動作を発生させる電圧よりも低い。
【0036】
放電時間32は、ロボットハンド表面電気抵抗値が10Ω以下の場合10−3s以下となり除電時間が短く、除電効果が高いことを示す。
【0037】
制御部への印加電圧31の囲部と放電時間32の囲部がクロスした範囲がロボットハンド1に最適な表面電気抵抗値33である。
【0038】
次に、図5を引用して他の実施例に係るウェーハハンドリングロボット装置について説明する。
【0039】
ウェーハ16は、樹脂製ケース17に収納されている。この時、ウェーハ16は高い静電気電圧で帯電している場合がある。ロボット11は、多段のアーム12を伸ばし、ロボットハンドで帯電しているウェーハ16を吸着して樹脂製ケース17より取出す。
【0040】
ウェーハ16に帯電している静電気は、ロボットハンドを通り高い電気抵抗に樹脂スペーサ18を通り、多段アーム12を経て、ロボット11の本体で制御装置13と並列になり装置ベース14を通って、アース15へと流れて除電される。
【0041】
高い電気抵抗の樹脂スペーサ18により静電気電圧により流れる電流は、小さくなる。高い電気抵抗の樹脂スペーサ18は、ロボットハンドと多段のアーム12の間に挟んで使用する。
【0042】
高い電気抵抗の樹脂スペーサ18を使用するのは、ロボットハンドの表面電気抵抗値が10Ω以下の場合に適用する。
【0043】
この実施例は、高い電気抵抗のスペーサをロボットハンドと多段のアームを間に介在したところが特徴である。こうすることにより、ロボットハンドを金属の材料だけで形成でき、表面の電気抵抗を考慮する必要がないメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例に係わるもので、ウェーハハンドリングロボット装置示す図。
【図2−A】本発明の実施例に係わるもので、ロボットハンドの平面図。
【図2−B】本発明の実施例に係わるもので、ロボットハンドの側面図。
【図2−C】本発明の実施例に係わるもので、図2−AのA−A断面図。
【図2−D】本発明の実施例に係わるもので、図2−AのA−A断面図で図2−Cとは違う材料のものを示す。
【図3】本発明の実施例に係わるもので、ウェーハハンドリングロボット装置の電気抵抗に関する電気的モデル図。
【図4】本発明の実施例に係わるもので、本実施例の仕様決定(電気抵抗値、印加電圧、放電時間)表を示す図。
【図5】本発明の他の実施例に係るウェーハハンドリングロボット装置を示す図。
【符号の説明】
【0045】
1…ロボットハンド、2…基材表面、3…基材材料、4…吸着面、5…真空孔、6…真空路、7…真空口、11…ロボット本体、12…多段アーム、13…制御装置、14…装置ベース、15…アース、16…ウェーハ、17…樹脂製ケース、18…高い電気抵抗の樹脂スペーサ、21…静電気電圧Vs、22…ロボットハンド1の電気抵抗値R、23…ロボット11の電気抵抗値R、24…制御装置13の電気抵抗値R、25…全電流、26…制御装置13の電気抵抗値R24にかかる電圧V、31…制御部への印加電圧、32…放電時間、33…最適な表面電気抵抗値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット本体と、前記ロボット本体に設けられ、ウェーハの搬送をするロボットハンドと、前記ロボット本体をアースに設置するアース手段を有し、
前記ロボットハンドは、少なくとも表面の電気抵抗がアース手段の電気抵抗を含めた前記ロボット本体の電気抵抗よりも高いことを特徴とするウェーハハンドリングロボット装置。
【請求項2】
ロボット本体と、前記ロボット本体に設けられ、ウェーハの搬送をするロボットハンドと、前記ロボット本体をアースに設置するアース手段を有し、
前記ロボットハンドは、少なくとも表面の電気抵抗が10〜10Ωであることを特徴とするウェーハハンドリングロボット装置。
【請求項3】
ロボット本体と、前記ロボット本体に設けられ、ウェーハの搬送をするロボットハンドと、前記ロボット本体をアースに設置するアース手段を有し、
前記ロボットハンドは、内側になる基材材料と、表面の表面材料とを有し、
前記表面材料の電気抵抗が10〜10Ωであることを特徴とするウェーハハンドリングロボット装置。
【請求項4】
ロボット本体と、前記ロボット本体に設けられたアームと、前記アームに設けられ、ウェーハの搬送をするロボットハンドと、前記ロボット本体を制御する制御装置と、前記ロボット本体、および前記制御装置を載置する装置ベースと、前記装置ベースをアースに設置するアース手段を有し、
前記ロボットハンドは、少なくとも表面の電気抵抗が10〜10Ωであることを特徴とするウェーハハンドリングロボット装置。
【請求項5】
アースされているロボット本体に設けられ、ウェーハの搬送をするウェーハハンドリングロボット装置のロボットハンドにおいて、
ロボットハンドは、少なくとも表面の電気抵抗が10〜10Ωであることを特徴とするウェーハハンドリングロボット装置のロボットハンド。

【図1】
image rotate

【図2−A】
image rotate

【図2−B】
image rotate

【図2−C】
image rotate

【図2−D】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−147241(P2008−147241A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329524(P2006−329524)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000233549)株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ (130)
【Fターム(参考)】