説明

ロボット動作状態把握システム及び方法

【課題】製造を自動化して行うためのロボットの動作状態をより正確に把握できるようにする。
【解決手段】 動作制御機能部103が備える制御対象のロボットに製品製造のための所定の動作を行わせるためのプログラムは、制御対象のロボットの動作が所定の工程毎に区切られて構成され、各工程には、各工程を識別するための識別子が付与されている。動作制御機能部103が実行しているプログラムの工程に付与されている識別子を出力する。このようして出力された識別子と時刻取得機能部106により取得された時刻とを含む工程データが、データ送出部108より送出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造を自動化して行うためのロボットの動作状態を把握するためのロボット動作状態把握システム及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生産工場において、例えば、複数の工程から構成されている生産ラインの各工程に要している時間を把握することは、無駄時間を抑制して効率的な生産を管理する上で重要である(特許文献1,2参照)。人手による作業が主体の製造では、各工程に要している時間は、比較的容易に計測可能である。これに対し、近年では、人件費の抑制や24時間の稼働を目的とし、生産ラインにロボット(産業用ロボット)が用いられるようになっている。ロボットを用いた製造では、予め作成されているプログラムに従ってロボットを制御して動作させることで、製品の加工や組み立てが行われている。
【0003】
このようなロボットを用いた製造においても、より効率的に生産を行うことが重要となっており、ロボットの動作状態を把握することが重要となっている。例えば、ロボットを用いた製造においても、部品の取り出し,取り出した部品の移動,部品の加工,及び加工した部品の組み立てなど、細分化された複数の工程(過程)を備えている。従って、ロボットの動作状態を把握してより効率的な生産を行うためには、ロボットにおける各工程に要している時間を把握することが重要となる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−190166号公報
【特許文献2】特開2006−040160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人手による作業に比較して高速なロボットを用いた生産において、効率化をより進めるためには、細分化されている各工程に要している時間を、百分の1秒の単位で検証することになる。しかしながら、ロボットの動作は非常に高速であり、細分化されている工程各々時間を必要な精度で計測することは、非常に困難である。このように、従来では、ロボットの動作状態を正確に把握することが容易ではなかった。
【0006】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、製造を自動化して行うためのロボットの動作状態をより正確に把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るロボット動作状態把握システムは、予め設定された複数の工程に渡るロボットの動作を制御する動作制御手段と、動作制御手段がロボットに行わせている工程を識別する識別子を所定の時間毎に出力する制御工程情報出力手段と、制御工程情報出力手段から出力された識別子及びこの識別子が出力された時刻を含む工程データを送出するデータ送出手段と、このデータ送出手段より送出された工程データを受信するデータ受信手段と、このデータ受信手段が受信した工程データを記憶するデータ記憶手段と、このデータ記憶手段に記憶された工程データに基づいて工程毎の作業時間を算出するデータ処理手段と、このデータ処理手段が生成した集計データを視認可能に表示するデータ表示手段とを少なくとも備えるようにしたものである。
【0008】
上記ロボット動作状態把握システムにおいて、データ処理手段は、例えば、データ記憶手段に記憶された複数の工程データを識別子毎に分類し、識別子毎に分類された工程データに含まれている時刻を集計して工程毎に要した作業時間を算出し、工程毎に作業時間が対応付けられた集計データを生成する。また、データ処理手段は、作業時間の平均値を算出し、データ表示手段は、データ処理手段が算出した平均値より既定の値以上の作業時間となっている工程のデータを、他のデータとは異なる表示状態に表示するようにしてもよい。
【0009】
また、本発明に係るロボット動作状態把握方法は、予め設定された複数の工程の内、現在ロボットに行わせている工程を識別する識別子を、ロボットの動作を制御する動作制御装置から所定の時間毎に出力するステップと、出力された識別子及びこの識別子が出力された時刻を含む工程データを送出するステップと、送出された工程データを受信して記憶するステップと、記憶された工程データに基づいて工程毎の作業時間を算出するステップと、生成された集計データを視認可能に表示するステップとを少なくとも備えるようにしたものである。
【0010】
上記ロボット動作状態把握方法において、作業時間を算出するステップは、記憶された複数の工程データを識別子毎に分類し、識別子毎に分類された工程データに含まれている時刻を集計して工程毎に要した作業時間を算出し、工程毎に作業時間が対応付けられた集計データを生成するようにすればよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、ロボットが制御されている工程を識別する識別子及びこの識別子が出力された時刻を含む工程データを収集し、集計した複数の工程データより、工程毎に作業時間が対応付けられた集計データを生成するようにしたので、製造を自動化して行うためのロボットの動作状態をより正確に把握できるようになるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるロボット動作状態把握システムの構成例を示す構成図である。本システムは、製造工場などで用いられている自動化設備のロボットを制御するためのロボット制御装置101と、ロボット制御装置101から出力される情報を収集するデータ収集装置120と、ロボット制御装置101及びデータ収集装置120を接続するネットワーク130とを備えている。
【0013】
ロボット制御装置101は、まず、ロボット制御部102,時間を測定して例えば時刻を出力する時計部105,ロボット制御部102から出力される工程データを送出(送信)するデータ送出部108,記憶部109、及び操作者からの指示やプログラムなどが入力される入力部110を備えている。
【0014】
ロボット制御部102は、制御対象のロボットの動作を制御する動作制御機能部103を備えている。動作制御機能部103には、制御対象のロボットに製品製造のための所定の動作(工程)を行わせるためのプログラムが、予め設定されている。このプログラムは、制御対象のロボットの動作が所定の工程毎に区切られて構成されている。また、プログラムを構成している各工程には、各工程を識別するための識別子が付与されている。
【0015】
また、ロボット制御部102は、設定されている時間の経過を計測する時間計測機能部104と、時間計測機能部104により計測されている時間毎に時計部105が出力している時刻を取得する時刻取得機能部106とを備える。また、ロボット制御部102は、動作制御機能部103が制御している(ロボットに行わせている)工程を識別する識別子を、時間計測機能部104により計測されている時間毎に出力する制御工程情報出力機能部107を備えている。制御工程情報出力機能部107は、動作制御機能部103が実行しているプログラムの工程に付与されている識別子を出力する。
【0016】
これらのように構成されたロボット制御部102において、時刻取得機能部106により取得された「時刻」、及び制御工程情報出力機能部107から出力された工程の「識別子」を含む工程データが、データ送出部108より送出される。
【0017】
一方、データ収集装置120は、ロボット制御装置101(データ送出部108)より送出された工程データを、ネットワーク130を介して受信するデータ受信部121,データ受信部121が受信した工程データを記憶するデータ記憶部122,データ記憶部122に記憶された工程データに基づいて工程毎の作業時間を算出するデータ処理部123,及びデータ処理部123により生成された集計データを、操作者に視認可能に表示するデータ表示部124を備えている。データ処理部123は、例えば、データ記憶部122に記憶された複数の工程データを識別子毎に分類し、識別子毎に分類した工程データに含まれている時刻を集計して工程毎に要した時間(作業時間)を算出し、工程毎に作業時間が対応付けられた集計データを生成する。
【0018】
次に、本実施の形態におけるロボット動作状態把握システムにおけるロボット制御装置101の動作例について、図2のフローチャートを用いて説明する。まず、本システムを起動すると、ロボット制御部102において、動作制御機能部103が、予め設定されているプログラムに従って、制御対象のロボットに製品製造のための所定の動作を行わせる。次いで、時間計測機能部104が、設定されている時間の経過の計測を開始する(ステップS201)。
【0019】
次に、時間計測機能部104が、設定されている時間が経過したことを計測すると(ステップS202)、時刻取得機能部106が、時計部105が出力している時刻を取得する(ステップS203)。また、制御工程情報出力機能部107が、動作制御機能部103の制御により制御対象のロボットが現在行っている工程の識別子を出力する(ステップS204)。次に、データ送出部108が、取得した時刻と出力された工程の識別子とからなる工程データを送出する(ステップS205)。送出された工程データは、ネットワーク130を介してデータ収集装置120のデータ受信部121に受信される。
【0020】
この後、工程データの送出の終了指示が入力されていることを確認し(ステップS206)、終了指示が入力されていなければ、ステップS201に戻り、ステップS202〜ステップS205を繰り返す。
【0021】
次に、データ収集装置120の動作例について、図3のフローチャートを用いて説明する。まず、本システムを起動すると、データ受信部121が、ロボット制御装置101(データ送出部108)より送信された工程データの受信を開始する。データ受信部121が、送信された工程データを受信すると(ステップS301)、データ受信部121は、受信した工程データをデータ記憶部122に記憶する(ステップS302)。
【0022】
次に、データ処理部123が、データ記憶部122に記憶された工程データに含まれている工程の識別子(例えば工程番号)を確認し、記憶された工程データが最終工程のデータであることを確認する(ステップS303)。例えば、データ処理部123は、工程データに含まれている工程の識別子と、予め設定されている最終工程の識別子と比較し、一致した場合、記憶された工程データが最終工程データであると認識し、一致しない場合、最終工程データではないと認識する。
【0023】
ステップS303で、最終工程データであることが確認されるまで、ステップS301〜ステップS303を繰り返し、最終工程までの複数の工程データがデータ記憶部122に記憶され、ステップS303で最終工程データであることが確認されると、データ処理部123は、データ記憶部122に記憶されている複数の工程データを、識別子毎に分類し、また、識別子毎に分類した工程データに含まれている時刻を時系列に集計(合計)し、工程毎に要した作業時間を算出する(ステップS304)。この後、データ表示部124が、データ処理部123により集計処理され、工程毎に作業時間が対応付けられた一覧データ(集計データ)を表示する(ステップS305)。
【0024】
図4は、データ表示部124により表示された集計データの1例を示す説明図である。各工程の概略的な作業内容(ロボットの動作)は、以下に示すとおりである。
【0025】
工程番号:作業内容
1050:製品番号、新位置情報の設定
1400:ロボットが部品Aのトレイ位置へ移動
1401:接合状態確認
1402:スタート,スイッチ又は終了指令待ち
1403:搬送トレイを装置内部に移動
1405:部品Aの画像処理、画像保存
1410:ロボットアームがトレイ上の部品Aへ移動
1411:ロボットアームがトレイから部品Aを取り出す
1420:ロボットアームがカメラ撮影位置に移動
1425:画像処理
1430:画像記録
1435:撮影カメラの変更
1436:治具の側面ガイド開放状態の確認
1440:ロボットアームを治具へ移動
1450:ロボットアームが治具へ部品Aを設置
1460:撮影カメラの変更
1470:部品Aを治具でクランプしているか確認
1480:画像処理
1490:画像記録
1500:ロボットアームが部品Bトレイ位置へ移動
1505:部品Bの画像処理、画像保存
1509:撮影カメラの変更
1510:ロボットアームがトレイ上の部品Bへ移動
1511:ロボットアームが部品Bをトレイからの取り出す
1520:ロボットアームがカメラ撮影位置に移動
1525:画像処理
1530:画像記録
1531:撮影カメラの変更
1535:冶具で吸着
1536:治具の側面ガイド開放状態の確認
1540:ロボットアームを治具へ移動
1560:ロボットアームが治具へ部品Bを設置
1570:撮影カメラの変更
1590:画像記録
1595:治具の側面ガイドを閉じる
1600:ロボットアームが部品Cトレイ位置へ移動
1603:治具の側面ガイドが閉じられていることを確認
1605:部品Cの画像処理、画像保存
1609:撮影カメラの変更
1610:ロボットアームがトレイ上の部品Cに移動
1611:ロボットアームが部品Cをトレイから取り出す
1620:撮影カメラの変更
1625:画像処理
1630:画像記録
1635:撮影カメラの変更
1640:ロボットアームを治具へ移動
1650:ロボットアームが部品Cを治具へ設置
1670:撮影カメラの変更
1690:画像記録
1700:ロボットアームを上方に移動
1710:治具で接合開始,ロボットアームをホームポジションへ移動
1750:治具で接合を行う
1800:ロボットアームを治具の上方へ移動
1805:接合終了
1807:冶具の吸着状態を解放
1808:ロボットアームを治具へ移動
1810:ロボットアームで部品Cをピックアップ
1811:治具の側面ガイドを開放する
1815:撮影カメラの変更
1816:画像記録
1817:治具の側面ガイドの開放状態を確認
1818:冶具で吸着
1820:ロボットアームを部品Cのトレイへ移動
1830:ロボットアームが部品Cをトレイに設置
2300:撮影カメラの変更
2320:治具のクランプ開放状態を確認
2321:治具の側面ガイドの開放状態を確認
2322:冶具の吸着状態を解放
2323:ロボットアームを治具へ移動
2324:治具の吸着状態の解放を確認
2325:ロボットアームで完成品をピックアップ
2400:撮影カメラの変更
2410:画像処理
2420:画像記録
2500:撮影カメラの変更
2510:ロボットアームが完成品を搬送トレイに設置
2520:撮影カメラの変更
2530:画像記録
2590:接合状態画面切り替え
2600:搬送トレイを装置外部に移動
2620:ログファイルの送信
【0026】
図4に示すように、工程を識別するための識別子としての工程番号毎に、実際の動作に要した作業時間が示される。この一覧表示より、工程番号1750の工程が、他の工程に比較してより多くの時間を要していることが容易に識別できる。
【0027】
なお、データ処理部123が、各工程(識別子)毎に作業時間を算出するとともに、各工程(工程番号)毎に集積されている過去の作業時間の平均値を算出し、データ表示部124が、算出した平均値より既定の値以上もしくは既定の値以下の作業時間となっている工程のデータを、他のデータとは異なる表示状態に表示してもよい。過去の作業時間の平均値に比較して規定値を超えて異なっている作業時間の工程には、異常が発生しているものと判断できるなど、各工程の変化を認識することができる。また、上記平均値として、例えば、工程開始から最終工程までの一連の工程の作業時間の平均値を算出するようにしてもよい。この平均値に比較して規定値を超えて作業時間が長い工程は、他の工程に比較してより無駄が存在する工程として判断することが可能である。
【0028】
また、データ表示部124は、例えば、作業時間が上記平均値より既定の値以上となっている工程のデータは、他とは異なる色で表示してもよく、当該データは、点滅させて表示しても良い。また、当該データは、他より大きい文字で表示するようにしてもよく、また、当該データは、表示色を反転表示させるようにしても良い。このように区別して表示することで、操作者がより識別しやすい状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態におけるロボット動作状態把握システムの構成例を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるロボット動作状態把握システムの動作例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態におけるロボット動作状態把握システムの動作例を示すフローチャートである。
【図4】データ表示部124により表示された集計データの1例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0030】
101…ロボット制御装置、102…ロボット制御部、103…動作制御機能部、104…時間計測機能部、105…時計部、106…時刻取得機能部、107…制御工程情報出力機能部、108…データ送出部、109…記憶部、110…入力部、120…データ収集装置、121…データ受信部、122…データ記憶部、123…データ処理部、124…データ表示部、130…ネットワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された複数の工程に渡るロボットの動作を制御する動作制御手段と、
前記動作制御手段が前記ロボットに行わせている工程を識別する識別子を所定の時間毎に出力する制御工程情報出力手段と、
前記制御工程情報出力手段から出力された前記識別子及びこの識別子が出力された時刻を含む工程データを送出するデータ送出手段と、
このデータ送出手段より送出された前記工程データを受信するデータ受信手段と、
このデータ受信手段が受信した前記工程データを記憶するデータ記憶手段と、
このデータ記憶手段に記憶された前記工程データに基づいて工程毎の作業時間を算出するデータ処理手段と、
このデータ処理手段が生成した集計データを視認可能に表示するデータ表示手段と
を少なくとも備えることを特徴とするロボット動作状態把握システム。
【請求項2】
請求項1記載のロボット動作状態把握システムにおいて、
前記データ処理手段は、
前記データ記憶手段に記憶された複数の工程データを前記識別子毎に分類し、識別子毎に分類された工程データに含まれている時刻を集計して工程毎に要した作業時間を算出し、工程毎に前記作業時間が対応付けられた集計データを生成する
ことを特徴とするロボット動作状態把握システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載のロボット動作状態把握システムにおいて、
前記データ処理手段は、前記作業時間の平均値を算出し、
前記データ表示手段は、前記データ処理手段が算出した平均値より既定の値以上の作業時間となっている工程のデータを、他のデータとは異なる表示状態に表示する
ことを特徴とするロボット動作状態把握システム。
【請求項4】
予め設定された複数の工程の内、現在ロボットに行わせている工程を識別する識別子を、前記ロボットの動作を制御する動作制御装置から所定の時間毎に出力するステップと、
出力された前記識別子及びこの識別子が出力された時刻を含む工程データを送出するステップと、
送出された前記工程データを受信して記憶するステップと、
記憶された前記工程データに基づいて工程毎の作業時間を算出するステップと、
生成された集計データを視認可能に表示するステップと
を少なくとも備えることを特徴とするロボット動作状態把握方法。
【請求項5】
請求項4記載のロボット動作状態把握方法において、
前記作業時間を算出するステップは、
記憶された複数の前記工程データを前記識別子毎に分類し、識別子毎に分類された工程データに含まれている時刻を集計して工程毎に要した作業時間を算出し、工程毎に前記作業時間が対応付けられた集計データを生成する
ことを特徴とするロボット動作状態把握方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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