説明

ロータリーテーブルの割出誤差補正装置

【課題】簡単に割出誤差を補正できる、ロータリーテーブルの割出誤差補正装置を提供する。
【解決手段】演算部は指令部からの割出位置(角度θ)の入力を受付ける(S11)。入力された割出位置に対応する割出誤差をy=a×sin(θ+α)で演算する(S12)。演算された値に基づいて割出誤差の補正を行なう(S13)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はNC(Numerical Control)装置に使用される割出誤差補正装置に関するもので、特に、ロータリーテーブルの割出誤差補正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
NC装置で制御されるマシニングセンタにおいて、ワークを保持するロータリーテーブルが従来から用いられている。図9はロータリーテーブルの分解斜視図である。図9を参照して、ロータリーテーブル10は、テーブル11と、その下部に連続して設けられた主軸12と、ウオームギヤ13と、ウオームギヤ13に係合するウオームねじ14と、ウオームねじ14のシャフトに設けられたメインギヤ15と、メインギヤ15に係合するモータギヤ16と、モータギヤ16に接続されたサーボモータ17とを含む。
【0003】
ウオームギヤ13とウオームねじ14とがかみ合っており、サーボモータ17の回転力を、モータギヤ16、メインギヤ15経由でウオームねじ14に伝えて、ウオームギヤ13を回転させる。ロータリーテーブルの主軸12の外周にウオームギヤ13が取付けられているので、ウオームギヤ13の回転に伴ってテーブル11が回転する。
【0004】
ロータリーテーブルのようなNC装置で位置決めされる装置において割出の誤差を補正する方法が例えば、下記の特許文献1に記載されている。
【0005】
特許文献1によれば、割出誤差の一例としてのピッチエラー補正量を記憶する補正量記憶手段を設け、そこに、現在位置を含む補正区間及び移動方向に応じて誤差補正量が記憶され、その値が読み出されて補正を行なっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−72913号公報(要約等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のピッチエラー補正等のロータリーテーブルの割出誤差の補正は時計方向の回転および反時計方向の回転でウオームギヤの歯ピッチごとの割出精度を測定し、補正値テーブルを作成することで行われていた。これはロータリーテーブルが無負荷の時の測定値である。負荷条件が変われば割出精度も異なってくるため、負荷条件が変わるごとに再度歯ピッチごとに割出精度を測定して新たな補正値テーブルを作成する必要があった。したがって、割出誤差の補正のためのデータの作成や、それを用いた割出誤差の補正に手間がかかるという問題があった。
【0008】
この発明は上記のような問題を解消するためになされたもので、簡単に割出誤差の補正ができる、ロータリーテーブルの割出誤差補正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る割出誤差補正装置は、NC装置に使用されるロータリーテーブルの割出誤差を補正する。割出誤差補正装置は、予め測定されたロータリーテーブルの割出誤差に基づいて割出誤差補正用の三角関数を記憶する記憶手段と、割出位置の入力を受付ける受付手段と、受付手段の受付けた割出位置に基づいて割出誤差補正用の三角関数を用いて割出位置の誤差を補正するために必要な補正値を演算する演算手段と、演算手段の演算した補正値に基づいてロータリーテーブルの割出誤差を補正する補正手段とを含む。
【0010】
好ましくは、三角関数は、最大誤差と位相ずれとをパラメータとする正弦関数または余弦関数である。
【0011】
ロータリーテーブルは時計方向および反時計方向の両方向に回転駆動され、記憶手段は、割出誤差補正用の三角関数としてそれぞれの方向用の三角関数を記憶する。
【0012】
補正手段は、ロータリーテーブルが一方向から他方向に逆回転されたとき、割出誤差の補正とは別に、バックラッシュの補正を行なうのが好ましい。
【0013】
ロータリーテーブルには荷重が偏心して載置される場合があり、割出誤差補正用の三角関数は、ロータリーテーブル上に荷重が偏心して載置されたときの偏荷重による割出誤差を補正してもよい。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る割出誤差補正装置においては、受付けた割出位置に基づいて割出誤差補正用の三角関数を用いて割出位置の誤差を補正するために必要な補正値を演算し、その演算した補正値に基づいてロータリーテーブルの割出誤差を補正する。
【0015】
その結果、簡単に割出誤差の補正ができる、ロータリーテーブルの割出誤差補正装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】NC装置の要部を示すブロック図である。
【図2】演算部の行なう動作を示すフローチャートである。
【図3】ロータリーテーブルの割出精度を示すグラフである。
【図4】他のロータリーテーブルの割出精度を示すグラフである。
【図5】さらに他のロータリーテーブルの割出精度を示すグラフである。
【図6】ロータリーテーブルに芯ずれが有る場合の円周方向におけるずれの状態を示す図である。
【図7】図6に示す芯ずれを有するロータリーテーブルの割出精度を示すグラフである。
【図8】ロータリーテーブル上に偏心してワークを載置したときの割出精度等を示す図である。
【図9】ロータリーテーブルの構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、この発明の原理について説明する。発明者は、多くのロータリーテーブルの割出精度を測定した。その測定結果の一例を図3〜図5に示す。図3はロータリーテーブルを360°回転したときの1°ごとに誤差を測定した場合の割出精度を示すグラフである。横軸は回転角(0〜360°)であり、縦軸は割出精度(秒)を示す。同様に、図4は他のロータリーテーブルにおいて誤差を測定した場合の割出精度を示すグラフであり、図5はさらに他のロータリーテーブルにおいて誤差を測定した場合の割出精度を示すグラフである。
【0018】
図3〜図5を参照して、発明者は、これらは全て全体として正弦曲線に似ているということを発見した。
【0019】
一方、発明者はこの原因は、ロータリーテーブルの回転軸の芯ずれによるものであると考えて、ロータリーテーブルの芯ずれとその場合の割出精度とを調査した。その結果を図6および図7に示す。図6はウオームギヤのPCD(Pitch Circle Diameter)が126mmのロータリーテーブルに0.001mmの芯ずれが有る場合の円周方向におけるずれの状態を示す図である。ここでは上下方向に芯ずれしている。この場合の割出精度を図7において実線で示す。図7における角度(0〜360°)は、図6の芯ずれを示す図の外周に記載された角度に対応している。
【0020】
図6および図7を参照して、ロータリーテーブルに0.001mmの芯ずれが有る場合、ロータリーテーブルは±約3.5秒の誤差を有した正弦曲線で表されることが分かる。この曲線は図3〜5に示した曲線とよく似ている。
【0021】
以上から、発明者はロータリーテーブルの割出誤差を補正するには正弦関数を用いれば簡単に誤差の補正ができると気付いてこの発明に至った。
【0022】
すなわち、この発明に係るロータリーテーブルの割出誤差補正装置は、割出誤差を補正する補正曲線を、補正量をyとしたとき、y=a(最大誤差)×sin(θ+α)で表される正弦関数で表し、割出角度(θ)に対して、a(最大誤差)と位相ずれ(α)とをパラメータとして入力することによって必要な補正量(y)を簡単に得るというものである。
【0023】
この補正用の正弦関数は次のようにして求める。今、ロータリーテーブルが、図4で示した割出精度を有しているものとする。これは図7に実線で示した芯ずれを有している場合のグラフに近似できるとする。そこで、ロータリーテーブルの割出誤差を補正する正弦関数を図7に実線で示した正弦曲線を基に作成する。
【0024】
図7に実線で示した正弦曲線は0°(360°)において−3.5秒であり、180°で+3.5秒である。これを補正するには、このグラフを割出精度が0の直線に載るように補正すればよいから図7において点線で示すように、同一の位相を有し、反対の振幅を表す正弦関数で補正すればよい。そこで、これを補正用の正弦関数とする。ここでは、位相ずれが存在するため、補正用の正弦関数はy=−3.5×sin(θ−90)となる。この補正用の正弦関数を用いて割出誤差の補正を行なう。以下、具体的に説明する。
【0025】
図1は、この発明の一実施の形態を説明するためのNC装置の要部を示すブロック図である。図1を参照して、NC装置40は、制御部20と駆動部30とを含む。制御部20はNC装置40全体を制御する指令部21と、指令部21からの指令を受けてロータリーテーブル10の制御を行なう演算部22と、ハードディスクのような記憶部(記憶手段)24とを含む。記憶部24は演算部22で駆動されるロータリーテーブル10の割出誤差補正用のプログラム25と、補正用のプログラム25によって使用される割出誤差補正関数26とを含む。この割出誤差補正関数26は、上記した補正用の正弦関数である。
【0026】
駆動部30は、サーボモータ用アンプと、それ用のサーボモータとの組合せを含み、それぞれがX軸〜Z軸用(なお、図1ではX軸用のみを示している)、および、ロータリーテーブル軸用を含む。
【0027】
図2は演算部22がプログラム25を用いて割出誤差補正を行なう動作を示すフローチャートである。図2を参照して、まず、演算部22は指令部21からの割出位置(角度θ)の入力を受付ける(ステップS11、以下、ステップを省略する)。入力された割出位置に対応する割出誤差の補正値をy=a×sin(θ+α)で演算する(S12)。演算された値に基づいて割出誤差の補正を行なう(S13)この補正は、演算部22による演算結果に基づいて演算部22の指示によって駆動部30が行なう。
【0028】
以上のように、この実施の形態においては、割出位置を入力すれば、簡単に割出誤差の補正値を演算でき、それを用いて割出誤差の補正が可能である。
【0029】
なお、演算部22は、割出位置の入力を受付ける受付手段と、受付手段の受付けた割出位置に基づいて割出誤差補正用の三角関数を用いて割出位置の誤差を補正するために必要な補正値を演算する演算手段と、演算手段の演算した補正値に基づいてロータリーテーブルの割出誤差を補正する補正手段として作動する。
【0030】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。図8はロータリーテーブルの上に偏心してワーク(荷重)が載置された場合のロータリーテーブルの回転角と割出精度と示すグラフである。図8(A)はロータリーテーブルの回転角と割出精度と示すグラフであり、図8(B)は図8(A)に示した回転角における、ロータリーテーブルのテーブルの上にワークが偏心して載置された状態から時計方向(以下、「CW方向」という)に回転移動されたときの状態を示し、図8(C)は図8(B)において360°回転された後に逆方向である反時計方向(以下、「CCW方向」という)にロータリーテーブルを回転したときの状態を示す図である。
【0031】
ここでは、基準位置としてワークがロータリーテーブルのY軸方向の下端部に偏心して載置された状態とする。また、図8(A)において、三角形と線で示したのがCW方向へ回転移動したときの割出精度を示すグラフであり、四角形との線で示したのがCCW方向への移動時のグラフである。
【0032】
図8(A)を参照して、割出精度を示すグラフは正弦曲線であり、上記した芯ずれの場合のグラフと同様である。したがって、ロータリーテーブル上に偏心してワークが載置されたときも割出精度の誤差と同様の処理が可能である。
【0033】
この場合のNC装置の制御部の構成と動作は基本的に上記と同じであるので異なる点について以下に説明する。
【0034】
この場合は、図8(A)に示すように、CW方向およびCCW方向の両方向について割出誤差の傾向が異なる。したがって、両方向において異なる補正をするために、それぞれの方向の割出誤差補正関数を格納しておく。したがって、記憶部24に格納される割出誤差補正関数は、CW方向における補正三角関数y1=a×sin(θ+α1)と、CCW方向における補正三角関数y2=b×sin(θ+α2)の2つである。
【0035】
この場合、演算部22は、ロータリーテーブル10の回転方向と割出位置を入力して、いずれかの補正三角関数を選択し、必要な補正量を演算して補正する。
【0036】
なお、ロータリーテーブル10の回転方向が異なるときはバックラッシュの補正をする必要があるが、これはこの割出誤差の補正とは別途行なう。
【0037】
また、上記実施の形態においては、割出誤差補正関数が正弦関数である場合について説明したが、これに限らず、余弦関数等の他の三角関数であってもよい。
【0038】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明にかかる割出誤差補正装置は、割出誤差の補正のための補正値を簡単に得ることができるため、ロータリーテーブルの割出誤差補正装置として有利に使用される。
【符号の説明】
【0040】
10 ロータリーテーブル、11 テーブル、12 主軸、13 ウオームギヤ、14 ウオームねじ、20 制御部、21 指令部、22 演算部、24 記憶部、25 プログラム、26 割出誤差補正関数、40 NC装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NC装置に使用されるロータリーテーブルの割出誤差補正装置であって、
予め測定されたロータリーテーブルの割出誤差に基づいて割出誤差補正用の三角関数を記憶する記憶手段と、
割出位置の入力を受付ける受付手段と、
前記受付手段の受付けた割出位置に基づいて前記割出誤差補正用の三角関数を用いて割出位置の誤差を補正するために必要な補正値を演算する演算手段と、
前記演算手段の演算した補正値に基づいてロータリーテーブルの割出誤差を補正する補正手段とを含む、ロータリーテーブルの割出誤差補正装置。
【請求項2】
前記三角関数は、最大誤差と位相ずれとをパラメータとする正弦関数または余弦関数である、請求項1に記載のロータリーテーブルの割出誤差補正装置。
【請求項3】
前記ロータリーテーブルは時計方向および反時計方向の両方向に回転駆動され、
前記記憶手段は、前記割出誤差補正用の三角関数としてそれぞれの方向用の三角関数を記憶する、請求項1または2に記載のロータリーテーブルの割出誤差補正装置。
【請求項4】
前記補正手段は、前記ロータリーテーブルが一方向から他方向に逆回転されたとき、前記割出誤差の補正とは別に、バックラッシュの補正を行なう、請求項3に記載のロータリーテーブルの割出誤差補正装置。
【請求項5】
前記ロータリーテーブルには荷重が偏心して載置される場合があり、
前記割出誤差補正用の三角関数は、ロータリーテーブル上に荷重が偏心して載置されたときの偏荷重による割出誤差を補正する、請求項1〜4のいずれかに記載のロータリーテーブルの割出誤差補正装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−35367(P2012−35367A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177597(P2010−177597)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(591028072)株式会社日研工作所 (43)
【Fターム(参考)】