説明

ロータリーバルブ

【課題】高耐用かつ粉粒体のシール性に優れた粉粒体切り出し用ロータリーバルブを提供すること。
【解決手段】ローターブレードと、ローターブレードの先端部にはめ込み可能なチップと、チップをローターブレードに固定する固定具からなる構造とすることにより、ケーシング内面に対し均一な密着が可能となり、シール性が向上する。また、ケーシング内部のエッジ部分に前記チップが接触する時の初期抵抗を緩和するため、エッジ部に逃げコーナー部を設けることにより、チップの磨耗を軽減して寿命延長を可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体切り出し用ロータリーバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロータリーバルブは、粉粒体の搬送装置の一部として広く使用されている。図1に示すように、粉粒体のホッパーからの定量切り出し、および搬送気体の圧力シール用として有用な装置となっている。
【0003】
一般的に、ホッパーからの定量切り出しや、空気輸送管への混入機として使用する場合は、管内圧力のエアシール用としてロータリーバルブが使用されている。ロータリーバルブは、主にロータリーバルブ全体を覆っているケーシング、ローターブレード、前記ローターブレードと一体化しているローターシャフト、前記ローターシャフトを回転させる駆動装置で構成され、ケーシング上部から粉粒体を、ロータリーバルブの回転運動によってケーシング下部へ移動させ、前記ケーシングから排出するものである。
【0004】
ロータリーバルブのローターブレードは、使用用途や取り扱う材料により各種の形状・材質があり、シール性、噛み込み防止、付着防止など、目的に応じて選定される。特に空気輸送管(図示せず)への混入機(図示せず)と使う場合など、シール性が求められる用途については、ケーシングとローターブレードとの隙間を小さくするため製作精度を高めたものや、ローターブレードにゴムやウレタン等の弾力性のある材質を用い、ローターブレードの先端部を押し付けることによりシール性を高めた一体成型のロータリーバルブ(従来技術1、図2)やローターブレード先端にゴム板を取り付けたロータリーバルブ(従来技術2、図3)が用いられている。
【先行技術文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−2452公報
【特許文献2】特開2008−137776公報
【0006】
特許文献1はロータリーバルブの回転に伴う粉体や気体のホッパーへの逆流を防止手段に関する発明である。
【0007】
特許文献2は、ケーシングと回転羽根との隙間の調整を簡単に行えるようにして、高精度な材料切り出しをできるようにしたものである。
以上、先行技術文献を2件挙げたが、本発明と直接関係するものではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ケーシングとロータリーバルブの隙間を小さくしたタイプは、取り扱う材料により材料の噛み込みが発生し、過負荷停止することが多い。これを避けるため、図2や図3に示したような、ロータリーバルブ先端部にゴム、ウレタン、樹脂等の弾力性のある材質を用い、シール性向上と併せて、噛み込み防止の軽減を図っているロータリーバルブもある。
【0009】
図2に示す従来技術1の一体成型のロータリーバルブ1aでは、初期のシール性能は高いが、ゴム等が磨耗してきた場合、ロータリーバルブ全体を交換する必要があり、コスト的にも高い。
【0010】
図3に示す従来技術2のゴム板付きロータリーバルブ1bでは、ゴム板磨耗時にゴム板4だけを取り外して交換可能であるが、ゴム板4をローターブレード6に押え板5とボルトで締め込み固定する必要があり、ゴム板4を位置出ししながらボルト締めする作業に時間を要していた。また、図3に示すロータリーバルブにおいて、ローターブレード6とゴム板4の境界面にてゴム板が短期破断しやすい。これは、シール性を高めるためにゴム板4をケーシング(図示せず)に押し付けていることに加え、ゴム板4をローターブレード6に押え板5にてボルト締込固定していることから、回転前にすでにゴム4板に圧縮および引っ張り力が作用し、これが回転するとケーシングとの摺動抵抗にてさらに引っ張り力が作用することにより許容限界を超え、破断するに至っている。加えて、図3のロータリーバルブでは、ゴム板4に圧縮と引っ張りが作用していることから、ゴム板4先端が波打ち状になりやすく(図示せず)、ロータリーバルブのシール性を低下させる要因となっている。
【0011】
一方、ゴム板の短期破断については、ゴム板がケーシング入口および出口エッジ部に接触する際の抵抗が大きく影響しており、ゴム板の短期破断の要因のひとつとなっている(図8参照)。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、耐用性とシール性を兼ね備えた以下の構成▲1▼および構成▲2▼からなるロータリーバルブを開発した(図5〜7)。
【0013】
構成▲1▼
ゴム板とローターブレードとの境界面での短期破断を改善するため、所定の形状に成型された天然ゴム、合成ゴム、ウレタン、樹脂等で作られた弾力性のあるチップ7はローターブレード6の先端部6aにはめ込みセットされる構造にした。前記チップ7がロータリーバルブの回転による遠心力やケーシング11内の粉粒体やケーシング11内面と接触する外力によって抜けないようにするために、固定具8で前記チップ7とローターブレード本体部6aを固定できるようにして、チップ自体にはセット段階で引っ張り力や圧縮力がかからないようにした(図5,図6)。
【0014】
構成▲2▼
ケーシング11の入口11aと出口11bの開口エッジ部11a’および11b’に、チップ7が最初に接触する時の初期抵抗を軽減させるための逃げコーナー部12aおよび12bを設け、チップ7の寿命延長を図った(図7)。
【発明の効果】
【0015】
以上に述べた構造によって、以下3つの効果があった。
一つ目は、ロータリーバルブの構造をはめ込み式のチップにすることにより、従来技術2のようにローターブレードに押さえ板を介してゴム板を取り付ける構造ではないので、チップ自体には、セット段階で余分な力が作用しなくなる。そのため、チップと固定具との境界を基点としたゴム破断のリスクは回避でき、寿命延長が可能となった。
【0016】
二つ目として、チップはローターブレードにはめ込み構造としたことで、従来技術(図2、図3)のように一体的ローターブレードまたはゴム板の先端部での波打ちがなくなることから、ケーシング内面に対し均一な密着が可能となり、シール性が向上する。
【0017】
三つ目は、ケーシング11の入口11aと出口11bそれぞれの開口エッジで、チップ7が最初に接触する方の開口エッジ部にチップのための逃げコーナー部(12a、12b)を設けたことにより、ローターブレードにはめ込んだチップが最初に開口エッジ部に接触する時の初期抵抗を緩和させることができ、前記チップの磨耗を軽減して、チップの寿命延長が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来技術のロータリーバルブ装置の概要図
【図2】従来の一体成型ゴムロータリーバルブの側面図と断面図
【図3】従来のゴム板付きロータリーバルブの側面図と断面図
【図4】本発明のロータリーバルブ装置の上面図
【図5】本発明のロータリーバルブ装置の断面図と側面図
【図6】本発明のロータリーバルブの概要図
【図7】本発明のロータリーバルブ装置のケーシング出入口エッジ部の逃げコーナー部の概要図
【図8】従来のケーシング入口部の断面の部分図
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態を図2〜図8を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
本発明にかかるロータリーバルブの概要を図4〜図7に示す。ローターシャフト2には、チップ取り付け用のローターブレード6を取り付けており、このローターブレードの先端部6aにチップ7を差し込む構造としている。チップ7の固定は、チップ7の側面に設けられた少なくとも1ヶ所以上の段差状に加工した部分(以下、「テラス部分7a」という)を固定具8で上からかぶせて押さえるようにして抜け防止している。固定具8とローターシャフト2はボルト等で外れないよう固定されている。チップ7の両サイドのシールは、ロータリーバルブ本体の両側面に側壁を設け、側壁の外周をグランドパッキン10にてシールすることとした(図5、図6)。
【0021】
ローターブレード6の先端部6aは面取り加工がされており、ロータリーバルブ1の回転によってチップ7が湾曲した時も、チップ7に無理な力が作用しないようにしている。
【0022】
チップ7はゴム、ウレタン、樹脂等といった弾力性のある材質を用いる。チップ7の先端部の形状は図6のような鋭角形状、面取り加工をして丸みを帯びた形状(図示せず)、あるいは平面形状(図示せず)など任意の形状を選択することができる。このようにチップには、ローターブレードに固定するための外力が作用しないことから、回転の際にチップに作用する力は、引っ張り力だけとなり、従来技術2のゴム板と押さえ板との境界部分での短期破断が防止できる。さらに、従来技術2のようなチップを押さえ板で締め付け固定としないことから、チップに圧縮と引っ張り力が作用せず、チップ先端の波打ちがなくなり、ロータリーバルブとケーシング内面とのシール性が向上する。この方法により、チップ自体には、従来技術2のような締め付け固定による引っ張り力や圧縮力が作用しなくなる(図6)。また、チップ7の側面には段差状のテラス部分7aを設けたと既に述べているが、前記テラス部分7aの形状は段差状の他にも、図示されていないが、テーパー状も可能である。
【0023】
固定具8は鋳鉄、ステンレス、アルミニウム、それらの合金といった金属製、また、プラスチック、ゴム、ウレタンといった非金属製の材質のものでも良い。粉粒体と常に接していることや、長期間使用することを考慮すると耐用性のある材質が好ましい。また、固定具8は前記テラス部分7aを設けた前記チップと嵌合できるように形状が加工されている。
【0024】
本発明は、チップが磨耗した時、そのチップに隣り合っている固定具8のみ取り外せば、当該チップのみ交換できることから、従来技術1のようにロータリーバルブ全体を交換しなくてすむ。本発明は固定具8と隣り合うチップ7がはまり合うような構造としていることで、従来技術2のようにチップとローターブレードとを直接ボルトやピンで固定しないですむので、チップをローターブレードから脱着する際に位置出しする手間が削減される効果もある(図6)。
【0025】
ケーシング11については、入口と出口の開口エッジ部(11a’、11b’)に逃げコーナー部(12a、12b)を設けた(図7)。逃げコーナー部(12a、12b)の逃げしろは、ケーシング11内面に対して、0.5〜3mm凹になるように加工し、できるだけケーシング内面に滑らかに沿うよう丸みを帯びるように円形に加工している。円形でなくテーパー状の傾斜でも可能だが、チップのエッジ部に接触する際の初期抵抗を緩和する効果を考慮すると円形に加工したほうが好ましい。ケーシングのサイズによって異なるので一概には決められないが、ケーシング内面にコーナー加工する幅W(以下、加工幅W)のサイズは任意で設定できる。加工幅Wが狭くて、チップ7とケーシング11内面が滑らかに接触できないと、チップ7がケーシング11の開口エッジ部11a’または11b’に接触した時の初期抵抗が緩和できず、エッジ部にコーナー加工をした効果が得られない。一方、前記加工幅Wを広く取りすぎた場合、チップ7とケーシング11内面とのシール範囲が狭くなりすぎて、ロータリーバルブのシール性を低下させる恐れがあり、好ましくない。
【0026】
図7に示してあるように、ケーシング11の入口11aと出口11bの開口エッジ部11a’および11b’に、チップ7が最初にケーシングに接触する時の初期抵抗を軽減させるための逃げコーナー12aおよび12bを設け、チップ7の寿命延長を図ったと述べた。ケーシング11の開口エッジ部(図7の破線の輪で囲んである部分)11a’および11b’を、ケーシング内面の円周よりも逃げしろが0.5〜3mm凹になるように加工する。前記逃げしろは1〜2mm凹になるように加工することがより好ましい。この加工により、チップ7がケーシングの開口エッジ部(12a、12b)に接触する衝撃を緩和させることができるので、チップ7の寿命が従来よりも2倍以上伸びた。
【0027】
以上に述べたケーシング構造によって、ロータリーバルブ1を構成するチップ7が最初に接触する時の初期抵抗を軽減できる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によるロータリーバルブのチップの交換簡素化およびチップの磨耗軽減による寿命延長、そしてロータリーバルブのシール性向上は、ロータリーバルブを利用する者にとっては大いにメリットがある。
【符号の説明】
【0029】
1 ロータリーバルブ
1a、1b 従来技術のロータリーバルブ
2 ローターシャフト
3 一体成型ゴムローターブレード
4 ゴム板
5 押さえ板
6 ローターブレード
6a ローターブレード先端部
7 チップ(はめ込み型)
7a チップ7に設けられたテラス部分
8 固定具
9 側壁
10 グランドパッキン(側壁用)
11 ケーシング
11a ケーシング11の入口
11b ケーシング11の出口
11a’、11b’ ケーシング11の開口エッジ部
12a、12b 逃げコーナー部
13 軸受ケース
14 グランドパッキン(シャフト用)
15 パッキン押さえ
16 寸切ボルト
17 駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体ホッパーの底部に取り付けられ、上部に粉粒体の供給口、下部に粉粒体の排出口を付設した横円筒形のケーシングを連結し、前記ケーシング内部に少なくとも2以上のローターブレードからなるロータリーバルブを付設し、前記粉粒体ホッパーから前記ケーシング内に投入された粉粒体を前記ロータリーバルブの回転運動をもって、前記粉粒体の排出口へ排出するロータリーフィーダーに用いるロータリーバルブにおいて、
前記ロータリーバルブがローターブレードと、
前記ローターブレード先端部にはめ込む構造としたチップと、
前記チップをローターブレードに固定する固定具からなることを特徴とするロータリーバルブ。
【請求項2】
前記チップはその側面に少なくとも1ヶ所以上の段差またはテーパーを設け、
前記固定具にも少なくとも1ヶ所以上の段差またはテーパーを設け、かつ、前記固定具をローターブレードにセットした時に前記チップと嵌合する形状であることを特徴とする請求項1記載のロータリーバルブ。
【請求項3】
前記チップは弾力性のある材質を用いたことを特徴とする請求項1または請求項2記載のロータリーバルブ。
【請求項4】
前記ケーシングの粉粒体供給口および粉粒体排出口の開口エッジ部には前記チップの先端部が前記開口エッジ部に接触する時に、前記チップ先端部が接触する部分に前記チップが受ける初期抵抗を緩和するための逃げコーナー部を設けたことを特徴とする請求項1〜3記載のロータリーバルブを用いたロータリーフィーダー。
【請求項5】
前記逃げコーナー部の逃げしろは、ケーシング内面の他の部分よりも0.5〜3mm凹となるようにし、かつ、前記逃げコーナー部とケーシング内面の他の部分との境目が丸みを帯びるように加工されていることを特徴とする請求項4記載のロータリーフィーダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−241089(P2011−241089A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126256(P2010−126256)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000001971)品川リフラクトリーズ株式会社 (112)
【Fターム(参考)】