説明

ローラユニット及び定着装置

【課題】線材が抜け出ることがなく、その巻きピッチも変動しないローラユニットを提供する。
【解決手段】定着ローラ10の芯金124の中空部には、芯金124の長手方向(矢印L方向)に延びると共にこの芯金124の長さと略同じ長さの線材12が挿入されて配置されている。この線材12のうち芯金124の長手方向両端部には、この長手方向両端部の内壁面を外側に押圧する一対の両端環状部14が形成されている。各両端環状部14は、互いに密着した複数の環14aから構成されている。両端環状部14は芯金124の長手方向両端部のみに形成されている。また、一対の両端環状部14は、芯金124の内壁面に接触して矢印L方向に延びる接続部16によって接続されている。線材12は、一本の線材を適宜に折り曲げて形成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他のローラとで記録媒体などを挟持しながら搬送するローラユニット及びこのローラユニットを用いた定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータやワークステーションの出力装置として、粉体の現像剤(トナー)を用いて記録媒体に画像を形成する電子写真方式の画像形成装置が知られている。このような画像形成装置では、例えば、画像情報を担持する光(例えばレーザ光)を感光ドラムなどの像担持体に照射して静電潜像を形成し、この静電潜像に現像ローラを用いてトナーを供給して現像像を形成し、転写ローラなどを使用してこの現像像を記録媒体に転写して転写像(現像像)を形成する。転写像が形成された記録媒体は定着装置に搬送され、定着装置では転写像が記録媒体に定着される。定着装置には、通常、ヒータを内蔵した定着ローラとこの定着ローラに圧接する加圧ローラとが備えられている。転写像を記録媒体に定着する際は、定着ローラと加圧ローラとで記録媒体を挟持して搬送しながら転写像を所定の定着温度で加熱すると同時に加圧する。この加熱と加圧で転写像が記録媒体に定着される。転写像が定着された記録媒体は排紙ローラなどに挟持されながら排出される。
【0003】
図14を参照して、定着装置について説明する。
【0004】
図14は、従来の定着装置の概略構成を示す模式図である。
【0005】
定着装置100は、記録紙などの記録媒体104にトナー(像)102を永久可視像化するためのものである。搬送部(図示せず)によって矢印A方向に搬送された記録媒体104は定着入口ガイド106に案内されて、定着ローラ120と加圧ローラ130の間のニップ部108に進入する。
【0006】
定着ローラ120はトナー102を加熱して溶融するためのものである。定着ローラ120の外周面(表面)にはサーミスタ140が接触しており、このサーミスタ140は定着ローラ120の外周面の温度を測定するように構成されている。また、定着ローラ120にはハロゲンヒータ122などの熱源(発熱体)が内蔵されている。サーミスタ140で測定された外周面温度に基づいて制御器(図示せず)がハロゲンヒータ122を制御し、これにより定着ローラ120の外周面温度が所定の定着温度に保持される。
【0007】
定着ローラ120としては、例えば鉄製やアルミニウム製のパイプ状部材からなる芯金124の外周面に、離型性の良いフッ素樹脂層126を被覆したものが一般的に用いられる。定着ローラ120は駆動源(図示せず)によって矢印B方向に回転する。
【0008】
加圧ローラ130は、定着ローラ120に記録媒体104を所定圧力で押し付けるためのものである。加圧ローラ130としては、例えば金属製の芯金132の外周面に、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等の弾性体層134を所定の厚み被覆したものが一般的に用いられる。加圧ローラ130を定着ローラ120に所定圧力で押し付けて矢印C方向に回転させながら、記録媒体104にトナー102を定着させるための荷重を付与する。
【0009】
記録媒体104がニップ部108に進入する(ニップ部108で挟持される)ことにより、記録媒体104上のトナー102が上記の定着温度で溶融すると共にこの溶融しているトナー102が上記の荷重で記録媒体104に押さえ付けられてこの記録媒体104に定着される。トナー102が定着された記録媒体104は分離爪142によって定着ローラ120から分離されて排紙ローラ(図示せず)に到達し、この排紙ローラによって機外に排出される。
【0010】
上記した定着ローラ120には、待ち時間短縮の観点から素早い立ち上がりが求められている。このため、画像形成装置本体が完全に冷え切った状態からメインスイッチを入れて最初のコピーが排出されるまでの時間(立上り時間)が30秒間以下の画像形成装置がある。この立ち上がり時間は年々短くなっている。
【0011】
また、省エネルギの観点から画像形成装置本体のメインスイッチが入っている待機状態において、定着装置を暖めておくための消費電力を極力少なくすることが求められている。このため、上記の待機状態では、定着装置のヒータを完全に切っておく必要に迫られている。このように待機状態で定着装置のヒータを完全に切っておく場合、ヒータをオンにするとほぼ同時に定着ローラの表面を所定温度にするためには、定着ローラの肉厚を薄くしてその熱容量を小さくしておく必要がある。このために、熱伝導率の良い薄肉のアルミニウム合金製の定着ローラが使用されることが多い。
【0012】
上記した立ち上がり時間を短くするために、最近ではアルミニウム製の定着ローラ120の肉厚は0.8mm程度まで薄くなっている。定着ローラ120の肉厚をこれ以上薄くした場合、定着ローラ120と加圧ローラ130との間(ニップ部108)に記録媒体104を挟持して現像像を熱と圧力で定着するときに、定着ローラ120が変形するおそれがある。
【0013】
上記のような問題を解決するために、定着ローラ120の内部に螺旋状のコイルばねを差し込んで定着ローラ120を補強する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0014】
この技術を、図15から図18までを参照して説明する。
【0015】
図15は、コイルばねが差し込まれた定着ローラを示す断面図である。図16は、芯金から抜け出たコイルばねを示す模式図である。図17は、ストッパが形成された芯金を示す断面図である。図18は、巻きピッチが変動したコイルばねを示す断面図である。これらの図では、図14に示された構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。
【0016】
芯金124の内部空間には、図15に示すように、螺旋状に巻かれたコイルばね150が差し込まれている。このコイルばね150は芯金124の長手方向に延びており、芯金124の内周面に接触してこの内周面を押圧している。芯金124は非常に薄いので定着ローラ120の外周面が受ける押圧力はコイルばね150にも影響が及ぶ。このため、定着ローラ120が回転し始めると共に加圧ローラ130が回転し始めることにより、押圧された定着ローラ120及びコイルばね150はその長手方向にもわずかに移動し始める。この場合、定着ローラ120の移動はローラストッパ(図示せず)によって抑えられるが、コイルばね150は定着ローラ120に差し込まれているだけなので、コイルばね150は矢印D方向に徐々に移動して芯金124から抜け出始める(図16参照)。定着ローラ120と加圧ローラ130が回転し続けた場合、コイルばね150は芯金124から抜け落ちてしまう。
【0017】
そこで、図17に示すように、芯金124の長手方向両端部にストッパ124aを形成しておき、コイルばね150が芯金124から抜け出ないようにする技術が提案されている。
【特許文献1】特開平10−116675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところが、図17に示す技術では、コイルばね150は芯金124から抜け出ないものの、図18に示すように、コイルばね150が芯金124の内部で移動してその巻きピッチが変動することがある。このようにコイルばね150の巻きピッチが変動した場合、芯金124を補強する強度が芯金124の長手方向において変動してニップ圧が変ってくるので記録媒体が斜行する。また、巻きピッチが「密」な部分では「疎」な部分よりも熱容量が大きくなるので、定着ローラ120の全体の表面温度の変化が一様にならない。この結果、定着不良や温度制御が困難になるなどの不都合が生じる。
【0019】
本発明は、上記事情に鑑み、線材が抜け出ることがなく、その巻きピッチも変動しないローラユニット及びこのローラユニットを内蔵した定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するための本発明のローラユニットは、
(1)中空の円筒状ローラと、
(2)該円筒状ローラの中空部をその長手方向に延びると共に該円筒状ローラの長さと略同じ長さであって、且つ、該円筒状ローラの長手方向両端部の内壁面を外側に押圧する一対の両端環状部が形成された線材とを備え、
(3)この一対の両端環状部は、それぞれ、
(3−1)前記円筒状ローラの長手方向に直交する直交方向と該両端環状部の直径方向とが成すピッチ角度をαとし、前記円筒状ローラの内壁面と前記両端環状部のうち前記内壁面に接触する部分との動摩擦力係数をμvとし、該動摩擦係数の補正係数をξとしたときに、
(3−2)α<tan−1(μv)、又はα<tan−1(ξμv) を満たすものであることを特徴とするものである。
【0021】
ここで、
(4)前記線材は、前記両端環状部と同じ形状の中間環状部が、前記一対の両端環状部の間に形成されたものであってもよい。
【0022】
また、
(5)前記線材は、前記両端環状部及び前記中間環状部のうち隣り合うもの同士を接続する、前記円筒状ローラの長手方向に延びる複数の接続部が形成されたものであり、
(6)これら複数の接続部それぞれは、前記円筒状ローラの円周方向において互いに異なる位置に形成されたものであってもよい。
【0023】
さらに、
(7)前記接続部は、前記円筒状ローラの内壁面から離れているものであってもよい。
【0024】
さらにまた、
(8)前記線材は、その熱膨張率が前記円筒状ローラの熱膨張率よりも大きいものであり、且つ、
(9)前記両端環状部の外径は、前記円筒状ローラの内径よりも小さいものであってもよい。
【0025】
さらにまた、
(10)前記線材は、その熱膨張率が前記円筒状ローラの熱膨張率よりも大きいものであり、且つ、
(11)前記両端環状部及び前記中間環状部の外径は、前記円筒状ローラの内径よりも小さいものであってもよい。
【0026】
さらにまた、
(12)前記線材は、分割された複数の部分線材から構成されたものであってもよい。
【0027】
さらにまた、
(13)前記両端環状部それぞれは、複数の環が密着してなるものであってもよい。
【0028】
さらにまた、
(14)前記両端環状部及び前記中間環状部は、複数の環が密着してなるものであってもよい。
【0029】
さらにまた、
(15)前記両端部環状部の前記ピッチ角度は略0度であってもよい。
【0030】
さらにまた、
(16)前記両端部環状部及び前記中間環状部双方の前記ピッチ角度は略0度であってもよい。
【0031】
上記目的を達成するための本発明の定着装置は、内部に熱源が配置された定着ローラと該定着ローラに押し付けられる加圧ローラとを備え、前記定着ローラと前記加圧ローラとの間で記録媒体を挟持しながら搬送してこの記録媒体に画像を定着する定着装置において、
(17)上記した円筒状ローラを前記定着ローラとして用いたものであることを特徴とするものである。
【0032】
ここで、図10から図13までを参照して、本発明のピッチ角度などについて説明する。
【0033】
図10は、従来の定着装置が動作中において定着ローラが加圧ローラから受ける押圧力を模式的に示す、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。図11は、定着ローラの強度が低下した場合における定着ローラ外周壁の変形を示す模式図である。図12は、図11の定着ローラを示す断面図である。図13は、加圧ローラの回転時に定着ローラからコイルばねが受ける応力を示す模式図である。
【0034】
通常は、加圧ローラ130(図14参照)若しくは定着ローラ120は逆クラウン形状に製作される。このため、定着ローラ120が加圧ローラ130によって押圧された場合、定着ローラ120の長手方向両端部から中央部に渡って加圧力fが微小に変化する。しかし、ニップ部108(図14参照)では、加圧ローラ130からほぼ等しい分布の荷重(加圧力f)が定着ローラ120に負荷されると考えられる。
【0035】
定着装置が動作中には、定着ローラ120及びコイルばね150は、定着ローラ120に内蔵されたヒータ122(図14参照)から放射熱を受けるのでその剛性がある程度低下する。定着ローラ120は薄肉のものであるので、この剛性低下に起因して、図11と図12に示すように、定着ローラ120の内周面のうちコイルばね150が接触している部分の周辺では、わずかに突出する変形120aが発生する。このような変形120aは、定着ローラ120の全周において螺旋状に生じる。従って、定着ローラ120と加圧ローラ130の回転に伴ってコイルばね150が定着ローラ120から受ける応力(作用力)の方向はコイルばね150のピッチ角方向へある程度規制される。また、コイルばね150が定着ローラ120の内部で固定されていないので、加圧ローラ130が定着ローラ120を押圧する押圧力によってコイルばね150に撓み(変形)が生じる際に、定着ローラ120とコイルばね150との間に隙間が生じる。このように隙間が生じるときは、定着ローラ120の回転に伴って、この隙間においてコイルばね150の径が縮小と拡大を繰り返し、さらに、コイルばね150は定着ローラ120の内部で自在に回動する。この結果、加圧ローラ130の回転に伴う作用力の影響によってコイルばね150が定着ローラ120の内部を移動する。
【0036】
この移動の際に、定着ローラ120がヒータ122から受ける放射熱に起因して変形する(撓む)ので、定着ローラ120の内周壁とコイルばね150がねじ対偶を形成する。このため、コイルばね150は定着ローラ120の内部を螺子運動のごとくコイルばね150の巻き方向に依存した長手方向へ移動する。
【0037】
加圧ローラ130の回転時に定着ローラ120からコイルばね150が受ける力(作用力)について説明する。図13では、コイルばね150のうち定着ローラ120の内壁面に接触する部分(支持部)のある一点のみに作用力が作用しているように示されているが、実際には作用力はコイルばね150の全周にわたって作用している。
【0038】
先ず、コイルばね150の1巻き分に相当する支持部全周に作用する力を検討する。図13に示すように、加圧ローラ130からの押圧力によってコイルばね150に作用する定着ローラ120の回転軸方向への力Fxは、
【0039】
Fx=F・sinα (1)
となる。ここで、Fxは定着ローラ120の回転軸方向への作用力であり、Fは定着ローラ120の内壁面からコイルばね150の支持部に働く作用力である。また、αはコイルばね150のピッチ角度である。Fxで表される作用力に対して、コイルばね150の移動を妨げる方向には、式(2)で表される摩擦力Ffが作用する。なお、Fyは、定着ローラ120の回転軸方向に直交する方向への作用力である。
【0040】
Ff=μs・F・cosα (2)
もしくは、
【0041】
F’f=μv・F・cosα
【0042】
(3)
ここで、μsは定着ローラ120の内壁面と上記の支持部に作用する静止摩擦力の大きさを示す静止摩擦係数である。μvは、クーロン摩擦力や粘性摩擦力に代表される動摩擦力係数である。一般的には、μs>μvであり、静止摩擦力はコイルばね150が定着ローラ120内部を移動する瞬間に作用し、動摩擦力はコイルばね150が定着ローラ120の内部を移動しているときに作用する。従って、式(1),(2),(3)より、
定着ローラ120の内部をコイルばね150が移動しないための条件は、式(4)になる。
【0043】
F’f>Fx (4)
よって、式(4)を満足するコイルばね150のピッチ角度αは式(5)で表される。
【0044】
α<tan−1(μv) (5)
【0045】
ここでは、コイルばね150の1巻き分について検討した。しかし、上述したように定着ローラ120が加圧ローラ130からの押圧力に対してコイルばね150の長手方向にほぼ等しい分布の荷重を受けていると考えられるので、コイルばね150の各支持部はどの位置においても均等に押圧力を受ける。この条件はコイルばね150の全体が移動しない条件として成立する。従って、式(5)の条件を満足するようにコイルばね150のピッチ角度αを形成することにより、コイルばね150は定着ローラ120内部で移動しないこととなる。
【0046】
以上のことから分かるように、コイルばね150の移動はコイルばね150の支持部に作用する力に依存せずに、コイルばね150の支持部と定着ローラ120の内壁面との間に作用する摩擦係数に依存する。
【0047】
また、厳密には加圧ローラ130による押圧力はニップ部108において最大となる。しかし、この押圧力によって、定着ローラ120の内部のコイルばね150も押圧方向に対して変形(撓み)が生じると共に、押圧方向に対して相対角度が90度を成す部分になる程その径がなだらかに拡大する。すなわち、加圧ローラ130からの押圧力によってコイルばね150の全体形状が楕円形状となる。このとき、ニップ部108における変形量(撓み量)と、押圧方向に対して相対角度が90度を成す部分での撓み量とは互いに異なる。この結果、コイルばね150の支持部は必ずしも全周において均一な摩擦力を受けるとは限らない。そこで、コイルばね150に作用する摩擦力の摩擦係数に経験的な補正係数ξを加味することによってピッチ角度αを補正した式(6)
【0048】
α<tan−1(ξμv) 式(6)
を用いてもよい。
【0049】
本発明では、式(5)若しくは式(6)の条件を満足するピッチ角度αになるように形成した線材を例えば定着ローラ(本発明にいう円筒状ローラの一例である)の内部に挿入して配置しておくことにより、線材を移動させずに定着ローラの剛性を確保する。
【発明の効果】
【0050】
本発明のローラユニットでは、円筒状ローラにその外側から外力が作用した場合、円筒状ローラの長手方向両端部は両端環状部によって外側に押圧されているのでこの長手方向両端部はほとんど変形しない。従って、円筒状ローラの疲労破壊を防止できる。また、両端環状部が上記の数式を満たすので、この両端環状部は円筒状ローラの長手方向に移動しない。従って、線材が円筒状ローラから抜け出たり、円筒状ローラ内部で片寄ったりしない。
【0051】
ここで、前記線材は、前記両端環状部と同じ形状の中間環状部が、前記一対の両端環状部の間に形成されたものである場合は、中間環状部が円筒状ローラの内壁面を外側に押圧するので、円筒状ローラにその外側から外力が作用しても円筒状ローラはほとんど変形しない。
【0052】
また、前記線材は、前記両端環状部及び前記中間環状部のうち隣り合うもの同士を接続する、前記円筒状ローラの長手方向に延びる複数の接続部が形成されたものであり、これら複数の接続部それぞれは、前記円筒状ローラの円周方向において互いに異なる位置に形成されたものである場合は、円筒状ローラがその内部から加熱されるときは、複数の接続部が円筒状ローラの円周方向において互いに異なる位置に形成されているので、円筒状ローラの周壁は一様に加熱されて温度斑は生じない。
【0053】
さらに、前記接続部は、前記円筒状ローラの内壁面から離れているものである場合は、接続部が円筒状ローラの内壁面から離れているので、円筒状ローラにその外側から一様な外力が作用したときには円筒状ローラが接続部においては一様に変形する。
【0054】
さらにまた、前記線材は、その熱膨張率が前記円筒状ローラの熱膨張率よりも大きいものであり、且つ、前記両端環状部の外径は、前記円筒状ローラの内径よりも小さいものである場合は、円筒状ローラの中空部に線材を挿入し易い。また、円筒状ローラが加熱されたときは線材も加熱されるので、このときは、線材の両端環状部が円筒状ローラの内壁面を外側に押圧する。この結果、円筒状ローラは線材によって補強されることとなる。
【0055】
さらにまた、前記線材は、その熱膨張率が前記円筒状ローラの熱膨張率よりも大きいものであり、且つ、前記両端環状部及び前記中間環状部の外径は、前記円筒状ローラの内径よりも小さいものである場合は、円筒状ローラの中空部に線材を挿入し易い。また、円筒状ローラが加熱されたときは線材も加熱されるので、このときは、線材の両端環状部お呼び中間環状部が円筒状ローラの内壁面を外側に押圧する。この結果、円筒状ローラは線材によって補強されることとなる。
【0056】
さらにまた、前記線材は、分割された複数の部分線材から構成されたものである場合は、部分線材は小型になるので製造し易い。
【0057】
さらにまた、前記両端環状部それぞれは、複数の環が密着してなるものである場合は、円筒状ローラをいっそう補強できる。
【0058】
さらにまた、前記両端環状部及び前記中間環状部は、複数の環が密着してなるものである場合は、円筒状ローラをいっそう補強できる。
【0059】
さらにまた、前記両端部環状部の前記ピッチ角度は略0度である場合は、円筒状ローラの中空部で線材が移動することをいっそう確実に防止できる。
【0060】
さらにまた、前記両端部環状部及び前記中間環状部双方の前記ピッチ角度は略0度である場合は、円筒状ローラの中空部で線材が移動することをいっそう確実に防止できる。
【0061】
また、本発明の定着装置によれば、定着ローラが線材によって補強されるだけでなく、この線材が円筒状ローラの長手方向に移動しないので、定着ローラの温度斑が防止されて定着性能が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0062】
図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【実施例1】
【0063】
図1を参照して、本発明のローラユニットの実施例1を説明する。
【0064】
図1は、ローラユニットの実施例1を示す断面図である。この図では、図15に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、ローラユニットの一例として定着ローラを挙げて説明する。
【0065】
定着ローラ10の芯金124(本発明にいう円筒状ローラの一例である)の中空部には、芯金124の長手方向(矢印L方向)に延びると共にこの芯金124の長さと略同じ長さの線材12が挿入されて配置されている。この線材12のうち芯金124の長手方向両端部には、この長手方向両端部の内壁面を外側に押圧する一対の両端環状部14が形成されている。各両端環状部14は、互いに密着した複数の環(輪ともいい、ここでは2つの環を示す)14aから構成されている。両端環状部14は芯金124の長手方向両端部のみに形成されている。また、一対の両端環状部14は、芯金124の内壁面に接触して矢印L方向に延びる接続部16によって接続されている。線材12は、一本の線材を適宜に折り曲げて形成されたものである。
【0066】
芯金124の長手方向(矢印L方向)に直交する直交方向(矢印Y方向)と両端環状部14の直径方向とが成すピッチ角度をαとし、芯金124の内壁面と両端環状部14のうち内壁面に接触する部分との動摩擦力係数をμvとし、この動摩擦係数の補正係数をξとしたときに、
【0067】
α<tan−1(μv)、又はα<tan−1(ξμv) を満たす。ここでは、ピッチ角度αを0度にしている。
【0068】
定着ローラ10に加圧ローラ130(図15参照)の押圧力が作用した場合、芯金124の長手方向両端部は両端環状部14によって外側に押圧されているのでこの長手方向両端部はほとんど変形しない。従って、芯金124の疲労破壊を防止できる。また、両端環状部14のピッチ角度αが上記の数式を満たすので、この両端環状部14は芯金124の長手方向に移動しない。従って、線材12が芯金124から抜け出たり、芯金124の内部で片寄ったりしない。
【実施例2】
【0069】
図2から図5までを参照して、本発明のローラユニットの実施例2を説明する。
【0070】
図2は、ローラユニットの実施例2を示す斜視図である。図3は、線材の一例を示す斜視図である。図4は、芯金の一部を破断してその内部を示す部分破断図である。図5は、図2の縦断面図である。これらの図では、図15に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、ローラユニットの一例として定着ローラを挙げて説明する。
【0071】
定着ローラ20の芯金124(本発明にいう円筒状ローラの一例である)の中空部には、芯金124の長手方向(矢印L方向)に延びると共にこの芯金124の長さと略同じ長さの線材22が挿入されて配置されている。この線材22のうち芯金124の長手方向両端部には、この長手方向両端部の内壁面を外側に押圧する一対の両端環状部24が形成されている。また、線材22では、両端環状部24と同じ形状で同じサイズの中間環状部26が、一対の両端環状部24の間に形成されている。これら一対の両端環状部24と中間環状部26は、芯金124の内壁面に接触して矢印L方向に延びる接続部28によって接続されている。線材22は、一本の線材を適宜に折り曲げて形成されたものである。
【0072】
各両端環状部24は、互いに密着した複数の環(輪ともいい、ここでは2つの環を示す)24aから構成されている。両端環状部24は芯金124の長手方向両端部のみに形成されている。また、一つの中間環状部26は、互いに密着した複数の環(輪ともいい、ここでは2つの環を示す)26aから構成されている。ここでは3つの中間環状部26を示しているが、2つ若しくは4つ以上の中間環状部26を形成してもよい。
【0073】
芯金124の長手方向(矢印L方向)に直交する直交方向(矢印Y方向)と両端環状部24及び中間環状部26の直径方向(矢印D方向)とが成すピッチ角度をαとし、芯金124の内壁面と両端環状部24(及び中間環状部26)のうち内壁面に接触する部分との動摩擦力係数をμvとし、この動摩擦係数の補正係数をξとしたときに、
【0074】
α<tan−1(μv)、又はα<tan−1(ξμv) を満たす。ここでは、ピッチ角度αを0度にしている。
【0075】
定着ローラ20に加圧ローラ130(図15参照)の押圧力が作用した場合、芯金124の長手方向両端部は両端環状部24によって外側に押圧されているのでこの長手方向両端部はほとんど変形しない。また、中間環状部26が、芯金124の長手方向中間部を補強しているのでこの中間部は変形しない。従って、芯金124の疲労破壊や変形を防止できる。また、両端環状部24のピッチ角度αが上記の数式を満たすので、この両端環状部24は芯金124の長手方向に移動しない。従って、線材22が芯金124から抜け出たり、芯金124の内部で片寄ったりしない。
【実施例3】
【0076】
図6を参照して、本発明のローラユニットの実施例3を説明する。
【0077】
図6は、ローラユニットの実施例3を示す縦断面図である。この図では、図15に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、ローラユニットの一例として定着ローラを挙げて説明する。
【0078】
定着ローラ30の芯金124(本発明にいう円筒状ローラの一例である)の中空部には、芯金124の長手方向(矢印L方向)に延びる4つの部分線材32,34,36,38が挿入されて配置されている。各部分線材32,34,36,38の長さは、芯金124の長さの約4分の1である。従って、4つの部分線材32,34,36,38を合計した長さは、芯金124の長さと略同じ長さである。部分線材32と部分線材38は同一形状、同一サイズであるが、芯金124の中空部では互いに逆向きに配置されている。また、部分線材34と部分線材36は同一形状、同一サイズである。
【0079】
部分線材32の長手方向一端部には2つの環状部32a,32aが密接して形成されており、長手方向他端部には、1つの環状部32bが形成されている。環状部32aと環状部32bは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部32cで接続されている。部分線材38も、部分線材32と同様に、その長手方向一端部には1つの環状部38aが形成されており、長手方向他端部には、2つの環状部38b,38bが密接して形成されている。環状部38aと環状部38bは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部38cで接続されている。
【0080】
また、部分線材34の長手方向両端部には1つずつ環状部34a,34bが形成されている。環状部34a,34bは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部34cで接続されている。部分線材36も、部分線材34と同様に、その長手方向両端部に1つずつ環状部36a,36bが形成されており、環状部36a,36bは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部36cで接続されている。従って、4つの部分線材32,34,36,38を芯金124の中空部に挿入して配置した状態は、図5に示す線材22と極めて似た状態である。
【0081】
芯金124の中空部に配置された4つの部分線材32,34,36,38を全体として見た場合、芯金124の長手方向両端部に、この長手方向両端部の内壁面を外側に押圧する一対の両端環状部32a,38bが形成されている。また、4つの部分線材32,34,36,38では、両端環状部32a,38bと同じ形状で同じサイズの中間環状部32b,34a(36a,34b)(38a,36b)が、一対の両端環状部32a,38bの間に形成されている。
【0082】
芯金124の長手方向(矢印L方向)に直交する直交方向(矢印Y方向)と各環状部32a,32b,34a,34b,36a,36b,38a,38bの直径方向とが成すピッチ角度をαとし、芯金124の内壁面と各環状部32a,32b,34a,34b,36a,36b,38a,38bのうち内壁面に接触する部分との動摩擦力係数をμvとし、この動摩擦係数の補正係数をξとしたときに、
【0083】
α<tan−1(μv)、又はα<tan−1(ξμv) を満たす。ここでは、ピッチ角度αを0度にしている。
【0084】
定着ローラ30に加圧ローラ130(図15参照)の押圧力が作用した場合、芯金124の長手方向両端部は両端環状部32a,38bによって外側に押圧されているのでこの長手方向両端部はほとんど変形しない。また、中間環状部32b,34a,34b,36a,36b,38aが、芯金124の長手方向中間部を補強しているのでこの中間部は変形しない。従って、芯金124の疲労破壊や変形を防止できる。また、各環状部32a,32b,34a,34b,36a,36b,38a,38bのピッチ角度αが上記の数式を満たすので、これらの環状部は芯金124の長手方向に移動しない。従って、部分線材32,34,36,38が芯金124から抜け出たり、芯金124の内部で片寄ったりしない。また、各部分線材32,34,36,38は短いので、形成加工上の精度を向上できると共に,芯金124にいっそう容易に挿入できる。なお、部分線材の本数を増やすことによって定着ローラ30の強度を増大できる。
【実施例4】
【0085】
図7を参照して、本発明のローラユニットの実施例4を説明する。
【0086】
図7は、ローラユニットの実施例4を示す縦断面図である。この図では、図15に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、ローラユニットの一例として定着ローラを挙げて説明する。
【0087】
定着ローラ40の芯金124(本発明にいう円筒状ローラの一例である)の中空部には、芯金124の長手方向(矢印L方向)に延びる4つの部分線材41,42,43,44が挿入されて配置されている。各部分線材41,42,43,44の長さは、芯金124の長さの約4分の1である。従って、4つの部分線材41,42,43,44を合計した長さは、芯金124の長さと略同じ長さである。各部分線材41,42,43,44は同一形状、同一サイズである。芯金124の内部においては、部分線材41,43は同じ向きに配置されており、この向きとは反対向きに部分線材42,44が配置されている。
【0088】
部分線材41の長手方向両端部にはそれぞれ1つの環状部41a,41bが形成されており、これら一対の環状部41a,41bの間には、1つの環状部41cが形成されている。環状部41aと環状部41cは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部41dで接続されている。同様に、環状部41cと環状部41bは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部41dで接続されている。
【0089】
部分線材42の長手方向両端部にはそれぞれ1つの環状部42a,42bが形成されており、これら一対の環状部42a,42bの間には、1つの環状部42cが形成されている。環状部42aと環状部42cは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部42dで接続されている。同様に、環状部42cと環状部42bは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部42dで接続されている。接続部41dと接続部42dとは、芯金124の外周方向において180度離れた位置に配置されている。
【0090】
部分線材43の長手方向両端部にはそれぞれ1つの環状部43a,43bが形成されており、これら一対の環状部43a,43bの間には、1つの環状部43cが形成されている。環状部43aと環状部43cは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部43dで接続されている。同様に、環状部43cと環状部43bは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部43dで接続されている。
【0091】
部分線材44の長手方向両端部にはそれぞれ1つの環状部44a,44bが形成されており、これら一対の環状部44a,44bの間には、1つの環状部44cが形成されている。環状部44aと環状部44cは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部44dで接続されている。同様に、環状部44cと環状部44bは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部44dで接続されている。接続部44dと接続部43dとは、芯金124の外周方向において180度離れた位置に配置されている。さらに、上述したように接続部41dと接続部42dも芯金124の外周方向において180度離れた位置に配置されているので、ヒータ122(図14参照)からの輻射熱によって内壁面が比較的一様に加熱される。この結果、定着ローラ40の外周面や周壁は一様に昇温及び冷却されるので温度斑は生じない。
【0092】
芯金124の中空部に配置された4つの部分線材41,42,43,44を全体として見た場合、芯金124の長手方向両端部に、この長手方向両端部の内壁面を外側に押圧する一対の両端環状部41a,44bが形成されている。また、4つの部分線材41,42,43,44では、両端環状部41a,44bと同じ形状で同じサイズの中間環状部41c,41b,42a,42c,42b,43a,43c,43b,44a,44cが、一対の両端環状部41a,44bの間に形成されている。
【0093】
芯金124の長手方向(矢印L方向)に直交する直交方向(矢印Y方向)と各環状部部41a,41c,41b,42a,42c,42b,43a,43c,43b,44a,44c,44bの直径方向とが成すピッチ角度をαとし、芯金124の内壁面と各環状部41a,41c,41b,42a,42c,42b,43a,43c,43b,44a,44c,44bのうち内壁面に接触する部分との動摩擦力係数をμvとし、この動摩擦係数の補正係数をξとしたときに、
【0094】
α<tan−1(μv)、又はα<tan−1(ξμv) を満たす。ここでは、ピッチ角度αを0度にしている。
【0095】
定着ローラ40に加圧ローラ130(図15参照)の押圧力が作用した場合、芯金124の長手方向両端部は両端環状部41a,44bによって外側に押圧されているのでこの長手方向両端部はほとんど変形しない。また、中間環状部41c,41b,42a,42c,42b,43a,43c,43b,44a,44cが、芯金124の長手方向中間部を補強しているのでこの中間部は変形しない。従って、芯金124の疲労破壊や変形を防止できる。また、各環状部41a,41c,41b,42a,42c,42b,43a,43c,43b,44a,44c,44bのピッチ角度αが上記の数式を満たすので、これらの環状部は芯金124の長手方向に移動しない。従って、部分線材41,42,43,44が芯金124から抜け出たり、芯金124の内部で片寄ったりしない。また、各部分線材41,42,43,44は短いので、形成加工上の精度を向上できると共に,芯金124にいっそう容易に挿入できる。なお、部分線材の本数を増やすことによって定着ローラ40の強度を増大できる。
【実施例5】
【0096】
図8を参照して、本発明のローラユニットの実施例5を説明する。
【0097】
図8は、ローラユニットの実施例5を示す縦断面図である。この図では、図15に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、ローラユニットの一例として定着ローラを挙げて説明する。
【0098】
定着ローラ50の芯金124(本発明にいう円筒状ローラの一例である)の中空部には、芯金124の長手方向(矢印L方向)に延びる4つの部分線材51,52,53,54が挿入されて配置されている。各部分線材51,52,53,54の長さは、芯金124の長さの約4分の1である。従って、4つの部分線材51,52,53,54を合計した長さは、芯金124の長さと略同じ長さである。各部分線材51,52,53,54は同一形状、同一サイズである。芯金124の内部においては、各部分線材51,52,53,54は互いに異なる向きに配置されている。
【0099】
部分線材51の長手方向両端部にはそれぞれ1つの環状部51a,51bが形成されており、環状部51aと環状部51bは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部51cで接続されている。
【0100】
部分線材52の長手方向両端部にはそれぞれ1つの環状部52a,52bが形成されており、環状部52aと環状部52bは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部52cで接続されている。
【0101】
部分線材53の長手方向両端部にはそれぞれ1つの環状部53a,53bが形成されており、環状部53aと環状部53bは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部53cで接続されている。
【0102】
部分線材54の長手方向両端部にはそれぞれ1つの環状部54a,54bが形成されており、環状部54aと環状部54bは、矢印L方向に延びて芯金124の内壁面に接触した接続部54cで接続されている。
【0103】
4つの接続部51c,52c,53c,54cは、芯金124の外周方向において互いに90度ずつ離れた位置に配置されている。このため、ヒータ122(図14参照)からの輻射熱によって内壁面が比較的一様に加熱される。この結果、定着ローラ50の外周面や周壁は一様に昇温及び冷却されるので温度斑は生じない。
【0104】
芯金124の中空部に配置された4つの部分線材51,52,53,54を全体として見た場合、芯金124の長手方向両端部に、この長手方向両端部の内壁面を外側に押圧する一対の両端環状部51a,54bが形成されていることとなる。また、4つの部分線材51,52,53,54では、両端環状部51a,54bと同じ形状で同じサイズの中間環状部51b,52a,52b,53a,53b,54aが、一対の両端環状部51a,54bの間に形成されていることとなる。
【0105】
芯金124の長手方向(矢印L方向)に直交する直交方向(矢印Y方向)と各環状部部51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bの直径方向とが成すピッチ角度をαとし、芯金124の内壁面と各環状部51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bのうち内壁面に接触する部分との動摩擦力係数をμvとし、この動摩擦係数の補正係数をξとしたときに、
【0106】
α<tan−1(μv)、又はα<tan−1(ξμv) を満たす。ここでは、ピッチ角度αを0度にしている。
【0107】
定着ローラ50に加圧ローラ130(図15参照)の押圧力が作用した場合、芯金124の長手方向両端部は両端環状部51a,54bによって外側に押圧されているのでこの長手方向両端部はほとんど変形しない。また、中間環状部51b,52a,52b,53a,53b,54aが、芯金124の長手方向中間部を補強しているのでこの中間部は変形しない。従って、芯金124の疲労破壊や変形を防止できる。また、各環状部51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54bのピッチ角度αが上記の数式を満たすので、これらの環状部は芯金124の長手方向に移動しない。従って、部分線材51,52,53,54が芯金124から抜け出たり、芯金124の内部で片寄ったりしない。また、各部分線材51,52,53,54は短いので、形成加工上の精度を向上できると共に,芯金124にいっそう容易に挿入できる。なお、部分線材の本数を増やすことによって定着ローラ50の強度を増大できる。
【実施例6】
【0108】
図9を参照して、本発明のローラユニットの実施例6を説明する。
【0109】
図9は、ローラユニットの実施例6を示す縦断面図である。これらの図では、図15に示す構成要素と同一の構成要素には同一の符号が付されている。ここでは、ローラユニットの一例として定着ローラを挙げて説明する。
【0110】
定着ローラ60の芯金124(本発明にいう円筒状ローラの一例である)の中空部には、芯金124の長手方向(矢印L方向)に延びると共にこの芯金124の長さと略同じ長さの線材62が挿入されて配置されている。この線材62のうち芯金124の長手方向両端部には、この長手方向両端部の内壁面を外側に押圧する一対の両端環状部64が形成されている。また、線材62では、両端環状部64と同じ形状で同じサイズの中間環状部66が、一対の両端環状部64の間に形成されている。これら一対の両端環状部64と中間環状部66は、芯金124の内壁面124aから離れて(接触せずに)矢印L方向に延びる接続部68によって接続されている。接続部68が定着ローラ60の内壁面124aに接触していないので、定着温調時に加圧ローラ130(図14参照)が定着ローラ60を押圧する際にニップ圧が変化しない。この結果、ニップ圧の変化に起因する画像への悪影響を軽減できる。なお、線材62は、一本の線材を適宜に折り曲げて形成されたものである。
【0111】
各両端環状部64は、互いに密着した複数の環(輪ともいい、ここでは2つの環を示す)64aから構成されている。両端環状部64は芯金124の長手方向両端部のみに形成されている。また、一つの中間環状部66は、互いに密着した複数の環(輪ともいい、ここでは2つの環を示す)66aから構成されている。ここでは3つの中間環状部66を示しているが、2つ若しくは4つ以上の中間環状部26を形成してもよい。
【0112】
芯金124の長手方向(矢印L方向)に直交する直交方向(矢印Y方向)と両端環状部64及び中間環状部66の直径方向とが成すピッチ角度をαとし、芯金124の内壁面124aと両端環状部64(及び中間環状部66)のうち内壁面に接触する部分との動摩擦力係数をμvとし、この動摩擦係数の補正係数をξとしたときに、
【0113】
α<tan−1(μv)、又はα<tan−1(ξμv) を満たす。ここでは、ピッチ角度αを0度にしている。
【0114】
定着ローラ60に加圧ローラ130(図15参照)の押圧力が作用した場合、芯金124の長手方向両端部は両端環状部64によって外側に押圧されているのでこの長手方向両端部はほとんど変形しない。また、中間環状部66が、芯金124の長手方向中間部を補強しているのでこの中間部は変形しない。従って、芯金124の疲労破壊や変形を防止できる。また、両端環状部64及び中間環状部66のピッチ角度αが上記の数式を満たすので、両端環状部64及び中間環状部66は芯金124の長手方向に移動しない。従って、線材62が芯金124から抜け出たり、芯金124の内部で片寄ったりしない。
【実施例7】
【0115】
上記した実施例1から実施例6までは、線材22等の両端環状部24等及び中間環状部26等が芯金124の内壁面124aを常温のときも高温のときも常に押圧している。このような線材22に代えて、実施例7では、熱膨張率が芯金124の熱膨張率よりも大きいものであり、且つ、両端環状部24等及び中間環状部26等の外径が芯金124の内径よりも小さい線材を使用した。このような材質の線材を使用した場合、芯金124の中空部に線材を挿入し易い。また、芯金124が加熱されたときは線材も加熱されて膨張するので、線材の両端環状部24等及び中間環状部26等が芯金124の内壁面を外側に押圧する。この結果、芯金124は線材によって補強されることとなる。
【0116】
上記した各実施例では、線材の両端部の形状はオープンエンドあるいはクローズドエンドどちらでもよい。さらに、芯金124に挿入する線材の巻き方向によってその移動方向は異なるが、上記の各実施形態においてはそのピッチ角度を略0度、あるいは内部で線材が移動しない程度に小さく形成しているので、どちらの巻き方向でもよい。また、線材はその環状部の巻き数に応じて定着ローラの内部を補強する強度が変化するので、この巻き数を変更することにより補強する強度を調節できる。なお、治具等を用いて線材の径が縮小する方向へ捻じりながら挿入することにより、各線材をローラ内部に組み付ける作業を行える。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】ローラユニットの実施例1を示す断面図である。
【図2】ローラユニットの実施例2を示す斜視図である。
【図3】線材の一例を示す斜視図である。
【図4】芯金の一部を破断してその内部を示す部分破断図である。
【図5】図2の縦断面図である。
【図6】ローラユニットの実施例3を示す縦断面図である。
【図7】ローラユニットの実施例4を示す縦断面図である。
【図8】ローラユニットの実施例5を示す縦断面図である。
【図9】ローラユニットの実施例6を示す縦断面図である。
【図10】従来の定着装置が動作中において定着ローラが加圧ローラから受ける押圧力を示す模式的に示す、(a)は正面図であり、(b)は側面図である。
【図11】定着ローラの強度が低下した場合における定着ローラ外周壁の変形を示す模式図である。
【図12】図11の定着ローラを示す断面図である。
【図13】加圧ローラの回転時に定着ローラからコイルばねが受ける応力を示す模式図である。
【図14】従来の定着装置の概略構成を示す模式図である。
【図15】コイルばねが差し込まれた定着ローラを示す断面図である。
【図16】芯金から抜け出たコイルばねを示す模式図である。
【図17】ストッパが形成された芯金を示す断面図である。
【図18】巻きピッチが変動したコイルばねを示す断面図である。
【符号の説明】
【0118】
10,20,30,40,50,60 定着ローラ
12,22 線材
14,24,64 両端環状部
26,66 中間環状部
32,34,36,38,41,42,43,44,51,52,53,54 部分線材
32a,32a,34a,34b,36a,36b,38a,38b,41a,41c,41b,42a,42c,42b,43a,43c,43b,44a,44c,44b,51a,51b,52a,52b,53a,53b,54a,54b 環状部
16,28,32c,34c,36c,38c,41d,42d,43d,44d,51c,52c,53c,54c,68 接続部
124 芯金
124a 芯金の内壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の円筒状ローラと、
該円筒状ローラの中空部をその長手方向に延びると共に該円筒状ローラの長さと略同じ長さであって、且つ、該円筒状ローラの長手方向両端部の内壁面を外側に押圧する一対の両端環状部が形成された線材とを備え、
この一対の両端環状部は、それぞれ、
前記円筒状ローラの長手方向に直交する直交方向と該両端環状部の直径方向とが成すピッチ角度をαとし、前記円筒状ローラの内壁面と前記両端環状部のうち前記内壁面に接触する部分との動摩擦力係数をμvとし、該動摩擦係数の補正係数をξとしたときに、
α<tan−1(μv)、又はα<tan−1(ξμv) を満たすものであることを特徴とするローラユニット。
【請求項2】
前記線材は、
前記両端環状部と同じ形状の中間環状部が、前記一対の両端環状部の間に形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のローラユニット。
【請求項3】
前記線材は、
前記両端環状部及び前記中間環状部のうち隣り合うもの同士を接続する、前記円筒状ローラの長手方向に延びる複数の接続部が形成されたものであり、
これら複数の接続部それぞれは、
前記円筒状ローラの円周方向において互いに異なる位置に形成されたものであることを特徴とする請求項2に記載のローラユニット。
【請求項4】
前記接続部は、
前記円筒状ローラの内壁面から離れているものであることを特徴とする請求項3に記載のローラユニット。
【請求項5】
前記線材は、その熱膨張率が前記円筒状ローラの熱膨張率よりも大きいものであり、且つ、
前記両端環状部の外径は、前記円筒状ローラの内径よりも小さいものであることを特徴とする請求項1に記載のローラユニット。
【請求項6】
前記線材は、その熱膨張率が前記円筒状ローラの熱膨張率よりも大きいものであり、且つ、
前記両端環状部及び前記中間環状部の外径は、前記円筒状ローラの内径よりも小さいものであることを特徴とする請求項2,3,又は4に記載のローラユニット。
【請求項7】
前記線材は、
分割された複数の部分線材から構成されたものであることを特徴とする請求項1から6までのうちのいずれか一項に記載のローラユニット。
【請求項8】
前記両端環状部それぞれは、複数の環が密着してなるものであることを特徴とする請求項1から7までのうちのいずれか一項に記載のローラユニット。
【請求項9】
前記両端環状部及び前記中間環状部は、複数の環が密着してなるものであることを特徴とする請求項1から7までのうちのいずれか一項に記載のローラユニット。
【請求項10】
前記両端部環状部の前記ピッチ角度は略0度であることを特徴とする請求項1に記載の円筒状ローラ。
【請求項11】
前記両端部環状部及び前記中間環状部双方の前記ピッチ角度は略0度であることを特徴とする請求項2から9までのうちのいずれか一項に記載の円筒状ローラ。
【請求項12】
内部に熱源が配置された定着ローラと該定着ローラに押し付けられる加圧ローラとを備え、前記定着ローラと前記加圧ローラとの間で記録媒体を挟持しながら搬送してこの記録媒体に画像を定着する定着装置において、
請求項1から11までのうちのいずれか一項に記載の円筒状ローラを前記定着ローラとして用いたものであることを特徴とする定着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−126421(P2006−126421A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313659(P2004−313659)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000208743)キヤノンファインテック株式会社 (1,218)
【Fターム(参考)】