説明

ローラ加圧機構及びこれを備えた画像形成装置

【課題】ローラの加圧状態と加圧解除状態との間の切替動作に要する駆動力を軽減すると共に、切替動作の向きが変わるのに応じて発生する負荷変動を平滑化することができるようにする。
【解決手段】定着ローラ32を保持するレバー部材38と、このレバー部材を加圧方向に付勢する第1のばね51と、この第1のばねによる加圧状態と加圧解除状態とを切り替えるクランク部材52と、加圧状態と加圧解除状態との間の状態遷移のために第1のばねの弾性力に抗して行われるクランク部材の切替動作を補助する向きに付勢すると共に、第1のばねの弾性力に任せて行われるクランク部材の切替動作を抑制する向きに付勢する第2のばね58とを備えたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラの加圧状態と加圧解除状態とを切替可能なローラ加圧機構及びこれを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスにより記録紙に画像を形成する画像形成装置(プリンタ、ファクシミリ装置、複写機、及び複合機など)では、感光体から記録紙上に転写された未定着のトナーを熱と圧力により記録紙に定着させる定着装置が設けられている。
【0003】
この定着装置では、所要の温度に昇温されたローラとこれに対向するローラとの間に記録紙を挟み込んで加圧する構成が一般的であり、待機時の放熱を低減する目的で、また紙ジャムの処理を容易にする目的で、ローラの加圧状態と加圧解除状態とを切り替えることができるように構成されたローラ加圧機構を設けた技術が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特開2004−317811号公報(第4図)
【特許文献2】特開平11−65350号公報(第2図、第3図)
【特許文献3】特開平4−358188号公報(第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記の定着装置では、低コストに安定した加圧力を得るためにばねが利用されており、このばねには、記録紙に対するトナーの定着を適切に行うために大きな弾性力を備えたものが採用されている。したがって、ローラの加圧状態と加圧解除状態との間の切替動作がばねの弾性力に抗して行われる場合には、大きな駆動力が必要となり、これとは逆に、切替動作の方向がばねの弾性力と一致する場合には、逆向きの負荷が発生するため、動作方向が変化するのに応じて大きな負荷変動が発生する。
【0005】
このため、ローラの加圧状態と加圧解除状態との切替動作を自動で行わせる場合には、高出力で且つトルク変動に対応可能な駆動源が必要となり、装置が大型化すると共に製造コストが嵩むという問題があり、他方、手動で操作する場合には操作力が重くなり、使い勝手が低下するという問題が生じる。さらに大きな負荷変動に伴ってローラ加圧機構を構成する軸受けなどの部品に偏摩耗が発生して耐久性を低下させ、また騒音が発生するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消するべく案出されたものであり、その主な目的は、ローラの加圧状態と加圧解除状態との間の切替動作に要する駆動力を軽減すると共に、切替動作の向きが変わるのに応じて発生する負荷変動を平滑化することができるように構成されたローラ加圧機構及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、1対のローラの一方を保持するローラ保持体と、このローラ保持体を加圧方向に付勢する第1の弾性体と、この第1の弾性体による加圧状態と加圧解除状態とを切り替える状態切替手段と、加圧状態と加圧解除状態との間の状態遷移のために前記第1の弾性体の弾性力に抗して行われる前記状態切替手段の切替動作を補助する向きに付勢すると共に、前記第1の弾性体の弾性力に任せて行われる前記状態切替手段の切替動作を抑制する向きに付勢する第2の弾性体とを備えた構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ローラの加圧状態と加圧解除状態との間の切替動作に要する駆動力を軽減すると共に、切替動作の方向が変わるのに応じて発生する負荷変動を平滑化することができる。このため、自動で駆動させる場合には小型で安価な駆動源で済むため、装置の小型化及び製造コストの低減を図ることができ、他方、手動で操作する場合には操作力が軽くなるため、使い勝手を向上させることができ、さらに軸受け部品などの偏摩耗を低減して耐久性を高め、また騒音を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の第1の態様に係るローラ加圧機構は、1対のローラの一方を保持するローラ保持体と、このローラ保持体を加圧方向に付勢する第1の弾性体と、この第1の弾性体による加圧状態と加圧解除状態とを切り替える状態切替手段と、加圧状態と加圧解除状態との間の状態遷移のために前記第1の弾性体の弾性力に抗して行われる前記状態切替手段の切替動作を補助する向きに付勢すると共に、前記第1の弾性体の弾性力に任せて行われる前記状態切替手段の切替動作を抑制する向きに付勢する第2の弾性体とを備えたものである。これによれば、ローラの加圧状態と加圧解除状態との間の切替動作に要する駆動力を軽減すると共に、切替動作の向きが変わるのに応じて発生する負荷変動を平滑化することができる。
【0010】
本発明の第2の態様に係るローラ加圧機構は、前記状態切替手段が、回転軸周りに回転可能に設けられて、一端が前記ローラ保持体に係止された前記第1の弾性体の他端が偏心位置に係止されるクランク部材であり、このクランク部材の回転に応じて加圧状態と加圧解除状態とが切り替えられるものである。これによれば、簡単な構成で加圧状態と加圧解除状態とを切り替えることができる。
【0011】
本発明の第3の態様に係るローラ加圧機構は、前記第2の弾性体が、一端を固定部材に係止され、他端を、前記第1の弾性体の他端に近接させて前記クランク部材の偏心位置に係止され、前記第1の弾性体とは逆向きに前記クランク部材を付勢するものである。これによれば、簡単な構成で、所要の付勢力を第2の弾性体に発生させることができる。
【0012】
この場合、第1・第2の弾性体は、コイルばねが好適であるが、この他に板ばねなどのばね部材や、ゴム材料からなる弾性部材なども可能であり、また引張ばね及び圧縮ばねのいずれも可能である。
【0013】
本発明の第4の態様に係るローラ加圧機構は、前記ローラ保持体が、支軸周りに揺動可能に設けられたレバー部材であり、このレバー部材におけるローラ保持部の遊端側に前記第1の弾性体の一端が係止されたものである。これによれば、第1の弾性体の弾性力がてこの原理により増大されてローラに作用することから、第1の弾性体の弾性力を小さく設定することができるため、状態切替手段の駆動力をより一層軽減することができる。
【0014】
本発明の第5の態様に係るローラ加圧機構は、複数の前記第2の弾性体が、互いに異なる向きに配置され、各弾性力の合力により、前記状態切替手段の切替動作を補助する向きの付勢力及び前記状態切替手段の切替動作を抑制する向きの付勢力を得るものである。これによれば、第2の弾性体の配置自由度が向上するため、配置スペースを削減し、また限られた設計スペースで、適切な方向及び大きさの付勢力を得ることができる。
【0015】
本発明の第6の態様に係るローラ加圧機構は、前記状態切替手段の加圧状態を検知する加圧状態検知手段を備え、この加圧状態検知手段の検知結果に基づいて、前記状態切替手段に切替動作を行わせる駆動手段を制御するものである。これによれば、状態切替手段を的確に動作させることができる。
【0016】
本発明の第7の態様に係るローラ加圧機構は、前記加圧状態検知手段が、所要の位置に切り欠きが形成されて前記状態切替手段と連動する複数の遮光板と、この複数の遮光板の各切り欠きを検出する複数のフォトセンサとを備えたものである。これによれば、状態切替手段の加圧状態を精度良く検知して、状態切替手段の切替動作を確実に制御することができる。
【0017】
本発明の第8の態様に係るローラ加圧機構は、前記ローラ保持体が、転がり軸受けを介して前記ローラの回動軸を保持するものである。これによれば、ローラの回転軸の摩耗を抑制して耐久性をより一層向上させることができる。
【0018】
本発明の第9の態様に係るローラ加圧機構は、前記状態切替手段に切替動作を行わせる駆動手段が、前記ローラを回転駆動させるモータであり、このモータの動力を前記ローラに伝達する経路と、前記モータの動力を前記状態切替手段に伝達する経路とを切り替える経路切替手段を備えたものである。これによれば、状態切替手段に切替動作を行わせるために電磁アクチュエータのような専用の駆動源を設ける必要がなくなるため、製造コストの削減、省スペース及び省エネルギーを実現することができる。
【0019】
なお、本発明は、この他に手動操作の操作力により状態切替手段に切替動作を行わせる構成も可能である。
【0020】
本発明の第10の態様に係るローラ加圧機構は、前記経路切替手段が、前記ローラを回転駆動させる正転方向の回転力のみを伝達する第1のワンウェイクラッチと、前記状態切替手段に切替動作を行わせる逆転方向の回転力のみを伝達する第2のワンウェイクラッチとからなり、前記モータの出力軸とピニオンギアとの間に介装されたものである。これによれば、省スペースを実現することができる。
【0021】
本発明の第11の態様に係る画像形成装置は、第1の態様乃至第10の態様のいずれかに記載のローラ加圧機構を備えたものである。これによれば、ローラの加圧状態と加圧解除状態との間の切替動作に要する駆動力を軽減すると共に、切替動作の方向が変化するのに応じて発生する負荷変動を平滑化することができるため、自動で駆動させる場合には小型の安価な駆動源を採用して画像形成措置の小型化及び製造コストの低減を図ることができ、他方、手動で操作する場合には操作力が軽くなるため、使い勝手を向上させることができ、さらに軸受け部品などの偏摩耗を低減して耐久性を高め、また騒音を低減することができる。これは特にローラに大きな加圧力を必要とする定着装置に有効である。
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明が適用されるカラー画像形成装置を示す概略構成図である。このカラー画像形成装置は、帯電、露光、現像、転写及び定着の各プロセスを経て記録紙に画像を形成する画像形成部1を備え、この画像形成部1には、給紙部2の給紙カセットに収容された記録シート3が給紙部2から画像形成部1に向かう給紙経路Aを経て逐次送り込まれ、画像形成部1にて所要の画像が形成された記録シート3は画像形成部1から装置外へと向かう排紙経路Bを経て排紙部4に排出される。
【0024】
画像形成部1は、イエロー、マゼンタ、シアン、及び黒の各色ごとのトナー像を形成する複数のプロセスユニット11〜14と、この各プロセスユニット11〜14内の各感光体ドラム11a〜14aの作像面に対して露光用の光束を走査するレーザ・スキャニング・ユニット(以下LSUという)16と、各プロセスユニット11〜14内の各感光体ドラム11a〜14a上に作像された各色ごとのトナー像が順次転写されて合成される中間転写ベルト(中間転写体)17とを有し、各色ごとの感光体ドラム11a〜14aが中間転写ベルト17に沿って並んで配置されたタンデム型の構造となっている。
【0025】
各プロセスユニット11〜14内では、各帯電器11b〜14bにより均一に帯電させた各感光体ドラム11a〜14aの作像面に対してLSU16から露光用の光束が走査されることで静電潜像が形成され、この各感光体ドラム11a〜14aの静電潜像が、各現像器11c〜14cから供給される各色のトナーで現像されて各色ごとの単色トナー像が各感光体ドラム11a〜14aの作像面に形成される。
【0026】
中間転写ベルト17は、駆動ローラ21、従動ローラ22に巻き掛けられて支持され、この中間転写ベルト17の内側には、中間転写ベルト17を加圧して各感光体ドラム11a〜14a上のトナー像を中間転写ベルト17に転写する各色ごとの1次転写ローラ24〜27が設けられている。また中間転写ベルト17の端部側方には、中間転写ベルト17上のトナー像を記録シート3に転写する2次転写ローラ28が配設されている。
【0027】
この2次転写ローラ28によりトナー像が転写された記録シート3は、定着器19に搬送されて熱及び圧力によりトナー像を記録シート3に定着させる処理が行われる。その後、記録シート3は排紙経路Bを経て排紙ローラ20により排紙部4上に排出される。
【0028】
図2は、図1に示した定着器19の要部斜視図である。定着器19は、駆動ローラ31と、この駆動ローラ31との間に記録シートを挟み込んで記録シート上のトナーを加熱すると共に押圧する定着ローラ32と、駆動ローラ31を回転駆動させるモータ33と、このモータ33の動力を駆動ローラ31に伝達するローラ駆動用ギア機構34とを有している。定着ローラ32は、これに接する駆動ローラ31の回転に伴って連れ回りで回転する。
【0029】
駆動ローラ31は、その両端部を転がり軸受け36を介してフレーム37に支持されている。一方、定着ローラ32は、その両端部をレバー部材38に転がり軸受け39を介して保持されており、レバー部材38は、フレーム37に固定された支軸40により下端部を枢支され、この支軸40周りに揺動して、駆動ローラ31と定着ローラ32との軸間距離を拡縮させ、これにより加圧状態と加圧解除状態とを切り替えることができる。
【0030】
定着ローラ32は、電磁誘導加熱方式により加熱され、図示しない励磁コイルや磁性体コアなどを収容した電磁誘導加熱ユニットが、駆動ローラ31と相反する外周側に配置される。なお、定着ローラ32は、電磁誘導加熱ユニットやハロゲンランプなどの発熱体を内部に収容した構成も可能である。
【0031】
定着ローラ32は、芯金の周囲に発泡シリコーンゴムなどのスポンジ材からなる弾性層が形成された、いわゆるソフトローラであり、弾性層を大きく変形させて駆動ローラ31との間のニップ部を長く確保して、定着速度を高めるようにしたものである。
【0032】
さらにこの定着器19は、定着ローラ32の加圧状態と加圧解除状態とを切り替えるローラ加圧機構42と、このローラ加圧機構42を動作させるためにモータ33の動力を伝達する加圧切替用ギア機構43と、定着ローラ32の加圧状態を検知する加圧状態検知機構44とを有している。
【0033】
ローラ加圧機構42は、定着ローラ32の両端部に1対設けられており、互いに同期して動作するように、連動軸46を介して相互に連結されている。
【0034】
図3は、図2に示したローラ加圧機構42の側面図であり、(A)に加圧状態を、(B)に加圧解除状態をそれぞれ示している。このローラ加圧機構は、定着ローラ32を保持するレバー部材(ローラ保持体)38と、このレバー部材38を加圧方向に付勢する第1のばね(第1の弾性体)51と、この第1のばね51による加圧状態と加圧解除状態とを切り替えるクランク部材(状態切替手段)52とを備えている。
【0035】
第1のばね51は、一端がレバー部材38のばね取付部53に係止され、他端がクランク部材52のばね取付部54に係止されている。レバー部材38のばね取付部53は、ローラ保持部55の遊端側に設けられており、第1のばね51の弾性力がてこの原理により増大されて定着ローラ32に作用する。
【0036】
クランク部材52は、回転軸56を中心にして回転可能に設けられており、第1のばね51の他端が係止されるばね取付部54は、回転軸56から偏心した位置に配置され、クランク部材52の回転に応じてばね取付部54が変位することで、第1のばね51が伸縮して加圧状態と加圧解除状態とが切り替えられる。
【0037】
図3(A)に示す加圧状態では、クランク部材52の回転軸56を挟んでレバー部材38のばね取付部53と相反する側にクランク部材52のばね取付部54が位置し、2つのばね取付部53・54が大きく離間して第1のばね51が伸長されており、これによりレバー部材38をクランク部材52側に引き寄せる向きの弾性力が第1のばね51に発生して、定着ローラ32が加圧状態となる。
【0038】
他方、図3(B)に示す加圧解除状態では、図3(A)に示す加圧状態からクランク部材52が180度回転され、クランク部材52の回転軸56に対して2つのばね取付部53・54が同じ側に位置して互いに近接しており、第1のばね51は伸長されない初期状態にあり、第1のばね51の弾性力は発生しない。
【0039】
さらにこのローラ加圧機構42は、加圧状態と加圧解除状態との間の状態遷移のために第1のばね51の弾性力に抗して行われるクランク部材52の切替動作を補助する向きに付勢すると共に、第1のばね51の弾性力に任せて行われるクランク部材52の切替動作を抑制する向きに付勢する第2のばね(第2の弾性体)58を備えている。この第2のばね58は、一端がフレームに設けられたばね取付部59に係止され、他端が第1のばね51と同様にクランク部材52のばね取付部54に係止されている。
【0040】
図3(B)に示す加圧解除状態から図3(A)に示す加圧状態への状態遷移のためにクランク部材52を回転させる際には、クランク部材52の回転に応じて第1のばね51が伸びるため、この第1のばね51の弾性力に抗してクランク部材52を回転させることになり、ここで、第2のばね58は伸長状態でクランク部材52のばね取付部54をフレームのばね取付部59側に引き寄せる向きの弾性力が発生しており、この第2のばね58の弾性力がクランク部材52の回転動作を補助するように作用して、切替動作に要する駆動力が軽減される。
【0041】
他方、図3(A)に示す加圧状態から図3(B)に示す加圧解除状態への状態遷移のためにクランク部材52を回転させる際には、第1のばね51の弾性力がクランク部材52のばね取付部54をレバー部材38側に引き寄せる向きに作用し、このときモータの駆動力によるものとは逆向きのトルクが、クランク部材52の回転軸56や加圧切替用ギア機構43に作用しようとするが、ここで、クランク部材52の回転に応じて第2のばね58が次第に伸びて、クランク部材52のばね取付部54をフレームのばね取付部59側に引き寄せる向きの弾性力が発生して、この第2のばね58の弾性力が第1のばね51の弾性力と打ち消し合うため、モータ33の駆動力によるものとは逆向きの大きなトルクが発生することを避けることができ、これにより切替動作の向きが変化するのに応じて発生する負荷変動を平滑化することができる。
【0042】
またここでは、定着ローラ32を駆動ローラ31に圧接させる向きにレバー部材38を付勢する第3のばね61が設けられている。この第3のばね61は、一端がフレームに係止され、他端がレバー部材38に係止されており、第1のばね51の弾性力が発生しない図3(B)に示す加圧解除状態で、定着ローラ32を駆動ローラ31に低い圧力で接触させた軽圧状態に保持される。
【0043】
なお、このローラ加圧機構42は、同一構成のものが定着ローラ32の両側に設けられている。
【0044】
図4は、図2に示したローラ駆動用ギア機構34及び加圧切替用ギア機構43を示す模式的な斜視図である。モータ33の出力軸65には、正転方向の回転力のみを伝達するワンウェイクラッチ66が内蔵された第1のピニオンギア67と、逆転方向の回転力のみを伝達するワンウェイクラッチ68が内蔵された第2のピニオンギア69とが取り付けられている。
【0045】
第1のピニオンギア67は、ギア74に歯合し、このギア74に回転軸75を介して固定されたギア76が、駆動ローラ31に同軸的に固定されたギヤ77に歯合しており、また第2のピニオンギア69は、ギア78に歯合し、このギア78に同軸且つ一体的に設けられたギア79が、ギア74に同軸且つ一体的に設けられたギア80に歯合しており、これによりモータ33が正転及び逆転のいずれの方向に回転しても、同一方向の駆動力が駆動ローラ31に伝達され、モータ33の回転方向に関係なく、常時、駆動ローラ31が1方向に回転する。
【0046】
さらに第2のピニオンギア69が歯合するギア78に同軸且つ一体的に設けられたギア79は、ギア81に歯合し、このギア81に同軸且つ一体的に設けられたギア82が、ギア83に歯合し、さらにこのギア83に同軸且つ一体的に設けられたギア84が、クランク部材52(図3参照)と回転軸56を介して固定されたギア85に歯合しており、これによりモータ33を逆転させた場合にその駆動力がクランク部材52に伝達され、クランク部材52が回転して加圧状態と加圧解除状態との切り替えが行われる。
【0047】
またクランク部材52を回転させるギア85は、連動軸46(図2参照)に固定されたギア86に歯合し、モータ33の駆動力が連動軸46を介して他端側のローラ加圧機構42に伝達され、この他端側のローラ加圧機構42では、図2に示したように、連動軸46に固定されたギア91が、クランク部材52の回転軸に固定されたギア92に歯合しており、定着ローラ32の両側の1対のローラ加圧機構42のクランク部材52が連動して動作する。
【0048】
図5は、図3に示したクランク部材52のロック機構を示す側面図である。このロック機構は、図3に示した加圧位置及び加圧解除位置でクランク部材52を停止保持するものであり、つめ車状の戻り防止板101と、この戻り防止板101に係合して戻り防止板101の正転を許容しつつ逆転を阻止する戻り止め部材103とを有している。
【0049】
戻り止め部材103は、支軸106周りに回転可能にフレームに支持され、係合部104が戻り防止板101に圧接する向きにばね105により付勢されている。
【0050】
戻り防止板101は、回転軸56を介してクランク部材52に固定されてクランク部材52と連動回転し、回転軸56を中心にした対称位置に1対の切り欠き102が形成されており、この切り欠き102の径方向に延在する端縁部102aに戻り止め部材103の係合部104が当接することで戻り防止板101の逆転が阻止され、他方、正転時には、戻り止め部材103の係合部104が、切り欠き102の略周方向に延在する端縁部102bに沿って切り欠き102から抜け出すため、戻り防止板101は支障なく正転する。
【0051】
戻り防止板101の逆転が阻止される回転角度は、図3(A)に示した加圧状態及び図3(B)に示した加圧解除状態にそれぞれ対応し、加圧状態からクランク部材52を180度回転させた加圧解除状態では、加圧状態で戻り止め部材103が嵌合する切り欠き102と対称位置にある切り欠き102に戻り止め部材103が係合してクランク部材52の逆転が阻止される。
【0052】
このようなロック機構により、図3(A)に示した加圧状態では、クランク部材52の逆転が阻止されるため、第1のばね51の付勢力が確実にレバー部材38に作用すると共に、クランク部材52の角度位置が精度良く位置決めされ、且つ変化することを防止することができ、これにより定着ローラ32の加圧力が一定に保持される。また、図3(B)に示した加圧解除状態では、第2のばね58の付勢力が遮断されるため、レバー部材38には第2のばね58の付勢力が作用せず、定着ローラ32は第3のばね61の付勢力により軽圧状態に保持される。
【0053】
なお、このロック機構は、同一構成のものが定着ローラ32の両側に設けられている。
【0054】
図6は、図2に示した加圧状態検知機構44を詳しく示す斜視図である。図7は、図6に示した加圧状態検知機構の動作要領を示す模式図である。
【0055】
この加圧状態検知機構44は、図2に示したように定着ローラ32の他端側に設けられており、クランク部材52と同軸的に固定された第1・第2の2枚の遮光板111・112と、この遮光板111・112を挟み込む態様で発光素子と受光素子とが対向配置された第1・第2のフォトセンサ113・114とを有している。フォトセンサ113・114の出力信号は、制御ユニット118に入力されており、制御ユニット118にてフォトセンサ113・114の出力信号に基づいてモータ33の駆動制御が行われる。
【0056】
第1の遮光板111には、図7に示したように、外周部における回転軸56を中心にした対称位置に2つの切り欠き115が形成されており、第2の遮光板112には、周方向の半分の角度範囲で外周部に切り欠き116が形成されており、切り欠き115・116がフォトセンサ113・114の検出位置に整合すると、発光素子が発する光が受光素子で検出されてオン信号が出力される。
【0057】
図7(A)に示す加圧状態では、第1フォトセンサ113がオン、第2フォトセンサ114がオフとなり、図7(C)に示す加圧解除状態では、第1・第2の両フォトセンサ114がオンとなる。また図7(B)に示す加圧状態から加圧解除状態への遷移途中では、第1・第2の両フォトセンサ114がオフとなり、図7(D)に示す加圧解除状態から加圧状態への遷移途中では、第1フォトセンサ113がオフ、第2フォトセンサ114がオンとなり、フォトセンサ113・114の出力信号に基づいて各状態を判別することができる。
【0058】
また、フォトセンサ113・114の出力信号は、各遮光板111・112の切り欠き115・116の端縁部がフォトセンサ113・114の検出位置を通過したところでのオン・オフが切り替わり、この信号変化が第1のフォトセンサ113の直前に第2のフォトセンサ114で行われるような相対角度をもって第1・第2の遮光板111・112が固定されている。
【0059】
そして図7(A)に示す加圧状態の直前に、第2フォトセンサ114がオンからオフに変化したタイミングでモータ33の停止動作を開始し、第1フォトセンサ113がオフからオンに変化したタイミングでモータ33が完全に停止するように制御する。これによりクランク部材52が所定の加圧位置で確実に停止される。また図7(C)に示す加圧解除状態の直前に、第2フォトセンサ114がオフからオンに変化したタイミングでモータ33の停止動作を開始し、第1フォトセンサ113がオフからオンに変化したタイミングでモータ33が完全に停止するように制御する。これによりクランク部材52が所定の加圧解除位置で確実に停止される。
【0060】
図8は、本発明によるローラ加圧機構の別の例を示す側面図である。このローラ加圧機構では、前記の例と異なり、複数(ここでは2つ)の第2のばね(第2の弾性体)121・122が、互いに異なる向きに配置され、各弾性力の合力により、クランク部材52の切替動作を補助する向きの付勢力及びクランク部材52の切替動作を抑制する向きの付勢力を得るようになっている。
【0061】
一方の第2のばね121は、一端が上方に配置されたフレーム側のばね取付部123に係止され、他端が係止されるクランク部材52のばね取付部54を斜め上向きに牽引し、他方の第2のばね122は、一端が下方に配置されたフレーム側のばね取付部124に係止され、他端が係止されるクランク部材52のばね取付部54を斜め下向きに牽引し、これらの合力が前記の例での第2のばね58の弾性力と同様に作用する。
【0062】
この構成では、第2のばね121・122の配置自由度が向上し、特にクランク部材52とフレームのばね取付部123との間の横方向の寸法が制限される場合でも、適切な方向及び大きさのばね付勢力を得ることができる。
【0063】
なお以上の説明では、記録シート上のトナーを加熱する定着ローラを可動として、これをモータにより駆動される駆動ローラに圧接させる構成としたが、本発明はこのような構成に限定されるものではなく、例えば記録シート上のトナーを加熱する加熱ローラをモータにより駆動させ、これに対向する加圧ローラを可動として加熱ローラに圧接させる構成も可能である。
【0064】
また、本発明はこのような定着装置のローラに限定されるものではなく、画像形成装置に設けられる搬送ローラや転写ローラなどにも適用することができ、さら画像形成装置以外のローラ加圧機構にも広く適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明にかかるローラ加圧機構及びこれを備えた画像形成装置は、ローラの加圧状態と加圧解除状態との間の切替動作に要する駆動力を軽減すると共に、切替動作の向きが変わるのに応じて発生する負荷変動を平滑化することができる効果を有し、ローラの加圧状態と加圧解除状態とを切替可能なローラ加圧機構及びこれを備えた画像形成装置、例えばプリンタ、複写機、ファクシミリ、複合機などとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明が適用される画像形成装置を示す概略構成図
【図2】図1に示した定着器の要部斜視図
【図3】図2に示したローラ加圧機構の側面図
【図4】図2に示したローラ駆動用ギア機構及び加圧切替用ギア機構を示す模式的な斜視図
【図5】図3に示したクランク部材のロック機構を示す側面図
【図6】図2に示した加圧状態検知機構を詳しく示す斜視図
【図7】図6に示した加圧状態検知機構の動作要領を示す模式図
【図8】本発明によるローラ加圧機構の別の例を示す側面図
【符号の説明】
【0067】
19 定着器
31 駆動ローラ
32 定着ローラ
33 モータ(駆動手段)
34 ローラ駆動用ギア機構
37 フレーム(固定部材)
38 レバー部材(ローラ保持体)
39 転がり受け
40 支軸
42 ローラ加圧機構
43 加圧切替用ギア機構
44 加圧状態検知機構(加圧状態検知手段)
46 連動軸
51 第1のばね(第1の弾性体)
52 クランク部材(状態切替手段)
53 ばね取付部
54 ばね取付部
55 ローラ保持部
56 回転軸
58 第2のばね(第2の弾性体)
59 ばね取付部
65 出力軸
66 ワンウェイクラッチ
67 ピニオンギア
68 ワンウェイクラッチ
69 ピニオンギア
101 戻り防止板
102 切り欠き
103 戻り止め部材
104 係合部
111・112 遮光板
113・114 フォトセンサ
115・116 切り欠き
118 制御ユニット
121・122 第2のばね(第2の弾性体)
123・124 ばね取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のローラの一方を保持するローラ保持体と、このローラ保持体を加圧方向に付勢する第1の弾性体と、この第1の弾性体による加圧状態と加圧解除状態とを切り替える状態切替手段と、加圧状態と加圧解除状態との間の状態遷移のために前記第1の弾性体の弾性力に抗して行われる前記状態切替手段の切替動作を補助する向きに付勢すると共に、前記第1の弾性体の弾性力に任せて行われる前記状態切替手段の切替動作を抑制する向きに付勢する第2の弾性体とを備えたことを特徴とするローラ加圧機構。
【請求項2】
前記状態切替手段が、回転軸周りに回転可能に設けられて、一端が前記ローラ保持体に係止された前記第1の弾性体の他端が偏心位置に係止されるクランク部材であり、このクランク部材の回転に応じて加圧状態と加圧解除状態とが切り替えられることを特徴とする請求項1に記載のローラ加圧機構。
【請求項3】
前記第2の弾性体が、一端を固定部材に係止され、他端を、前記第1の弾性体の他端に近接させて前記クランク部材の偏心位置に係止され、前記第1の弾性体とは逆向きに前記クランク部材を付勢することを特徴とする請求項2に記載のローラ加圧機構。
【請求項4】
前記ローラ保持体が、支軸周りに揺動可能に設けられたレバー部材であり、このレバー部材におけるローラ保持部の遊端側に前記第1の弾性体の一端が係止されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のローラ加圧機構。
【請求項5】
複数の前記第2の弾性体が、互いに異なる向きに配置され、各弾性力の合力により、前記状態切替手段の切替動作を補助する向きの付勢力及び前記状態切替手段の切替動作を抑制する向きの付勢力を得ることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のローラ加圧機構。
【請求項6】
前記状態切替手段の加圧状態を検知する加圧状態検知手段を備え、この加圧状態検知手段の検知結果に基づいて、前記状態切替手段に切替動作を行わせる駆動手段を制御することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のローラ加圧機構。
【請求項7】
前記加圧状態検知手段が、所要の位置に切り欠きが形成されて前記状態切替手段と連動する複数の遮光板と、この複数の遮光板の各切り欠きを検出する複数のフォトセンサとを備えたことを特徴とする請求項6に記載のローラ加圧機構。
【請求項8】
前記ローラ保持体が、転がり軸受けを介して前記ローラの回動軸を保持することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のローラ加圧機構。
【請求項9】
前記状態切替手段に切替動作を行わせる駆動手段が、前記ローラを回転駆動させるモータであり、このモータの動力を前記ローラに伝達する経路と、前記モータの動力を前記状態切替手段に伝達する経路とを切り替える経路切替手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載のローラ加圧機構。
【請求項10】
前記経路切替手段が、前記ローラを回転駆動させる正転方向の回転力のみを伝達する第1のワンウェイクラッチと、前記状態切替手段に切替動作を行わせる逆転方向の回転力のみを伝達する第2のワンウェイクラッチとからなり、前記モータの出力軸とピニオンギアとの間に介装されたことを特徴とする請求項9に記載のローラ加圧機構。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のローラ加圧機構を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−32870(P2008−32870A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204134(P2006−204134)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】