ロールオーバ保護装置
【課題】 乗員の頭部をより確実に保護することができ、かつ、車体への組付けが容易なロールオーバ保護装置を提供する。
【解決手段】 ロールオーバ保護装置11Bは、ロールオーバ保護部材46を収納位置から支持位置66へ移動させる第1の駆動力発生手段と、車両の衝突や横転を検出する車両状態検出手段17と、車両状態検出手段の横転情報Eに基づいて横転を判別する起動判定手段18Bを備え、車両状態検出手段で横転情報を検出し、横転情報が所定値を超えた場合には起動判定手段は起動信号Kを出力して第1の駆動力発生手段及び緩衝手段15Bの第2の駆動力発生手段を起動させることで、ロールオーバ保護部材を支持位置へ移動させ、緩衝手段の緩衝部材を展開位置で展開させる。
【解決手段】 ロールオーバ保護装置11Bは、ロールオーバ保護部材46を収納位置から支持位置66へ移動させる第1の駆動力発生手段と、車両の衝突や横転を検出する車両状態検出手段17と、車両状態検出手段の横転情報Eに基づいて横転を判別する起動判定手段18Bを備え、車両状態検出手段で横転情報を検出し、横転情報が所定値を超えた場合には起動判定手段は起動信号Kを出力して第1の駆動力発生手段及び緩衝手段15Bの第2の駆動力発生手段を起動させることで、ロールオーバ保護部材を支持位置へ移動させ、緩衝手段の緩衝部材を展開位置で展開させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の横転時など乗員を保護する必要があるときに作動するロールオーバ保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロールオーバ保護装置は、車両が横転した時に、主に地面に対する衝撃を緩和するもので、乗員の頭部の上方に配置したパイプ部材などの支持部材(ロールバー)で車体を支持し、乗員を保護する。支持部材には、固定式と可動式がある。
可動式では、必要な時に、乗員の頭部上方まで支持部材を引き出す技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】独国特許発明第19838989号明細書
【0003】
ロールバーは、自動車が横転した時に乗員と地面との間に空間を確保する目的で用いられる。しかし、乗員がシートベルトを着用していなかったり、適切に着用されていない場合には、乗員を十分に拘束できない可能性があり、結果的に、ロールバーによる保護性能は低下する。
【0004】
また、ロールバーによって乗員の上側の空間を確保したとしても、自動車の側面衝突等によって発生する横転の際には、乗員は左方向若しくは右方向に揺れて、乗員の一方の肩に掛けたベルトの拘束力が不足する可能性があり、結果的に、ロールバーによる保護性能は低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、乗員の頭部をより確実に保護することができ、かつ、車体への組付けが容易なロールオーバ保護装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車両の屋根の少なくとも一部が開閉可能な車体に取付けて横転時に車体を支持するロールオーバ保護部材と、ロールオーバ保護部材に配置し、乗員に対して緩衝する緩衝手段と、を備えたロールオーバ保護装置において、車両に取付けて車両の衝突や横転を検出する車両状態検出手段と、車両状態検出手段の横転情報に基づいて横転を判別する起動判定手段を備え、横転情報が所定値を超えた場合には起動判定手段は起動信号を出力して緩衝手段の駆動力発生手段を起動させ、緩衝手段の緩衝部材を展開位置で展開させることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、車両の屋根の少なくとも一部が開閉可能な車体に取付けて横転時に車体を支持するロールオーバ保護部材と、ロールオーバ保護部材に配置し、乗員に対して緩衝する緩衝手段と、を備えたロールオーバ保護装置において、ロールオーバ保護部材を作動させる可動機構と、可動機構を介して収納位置から支持位置へ移動させる第1の駆動力発生手段と、車両に取付けて車両の衝突や横転を検出する車両状態検出手段と、車両状態検出手段の横転情報に基づいて横転を判別する起動判定手段を備え、横転情報が所定値を超えた場合には起動判定手段は起動信号を出力して第1の駆動力発生手段及び緩衝手段の第2の駆動力発生手段を起動させることで、ロールオーバ保護部材を支持位置へ移動させ、緩衝手段の緩衝部材を展開位置で展開させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明では、起動信号は、第1の駆動力発生手段に対して出力する第1の起動信号と、第2の駆動力発生手段に対して出力する第2の起動信号とからなり、ロールオーバ保護部材及び緩衝部材を個別に作動させることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、第1の起動信号の出力開始時点と第2の起動信号の出力開始時点との間に、所定の時間差を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、起動判定手段は、ロールオーバ保護部材が作動したことを検出する作動検出手段を備え、ロールオーバ保護部材が所定位置に達したときに、第2の起動信号を出力し、緩衝部材を展開させることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、第1の起動信号は、横転情報が所定の第1の値を超えたときに出力し、ロールオーバ保護部材を作動させ、第2の起動信号は、横転情報が第1の値より大きく設定した所定の第2の値を超えたときに出力し、緩衝部材を作動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、車両の衝突や横転を検出する車両状態検出手段と、車両状態検出手段の横転情報に基づいて横転を判別する起動判定手段を備え、横転情報が所定値を超えた場合には起動判定手段は起動信号を出力して緩衝手段の駆動力発生手段を起動させ、緩衝手段の緩衝部材を展開位置で展開させるので、車両が横転を始めると、展開した緩衝部材(エアバッグ本体)は乗員と地面との間に介在し、乗員を受け止め、乗員の頭部をより確実に保護することができるという利点がある。
【0013】
また、緩衝手段を一体的に配置したロールオーバ保護部材を車体に組付けるので、車体への組付けは容易になる。
【0014】
請求項2に係る発明では、ロールオーバ保護部材を収納位置から支持位置へ移動させる第1の駆動力発生手段と、車両の衝突や横転を検出する車両状態検出手段と、車両状態検出手段の横転情報に基づいて横転を判別する起動判定手段を備え、横転情報が所定値を超えた場合には起動判定手段は起動信号を出力して第1の駆動力発生手段及び緩衝手段の第2の駆動力発生手段を起動させることで、ロールオーバ保護部材を支持位置へ移動させ、緩衝手段の緩衝部材を展開位置で展開させるので、車両が横転を始めると、展開した緩衝部材(エアバッグ本体)は乗員と地面との間に介在し、乗員を受け止め、乗員の頭部をより確実に保護することができるという利点がある。
【0015】
また、緩衝手段を一体的に配置したロールオーバ保護部材を車体に組付けるので、車体への組付けは容易になる。
さらに、ロールオーバ保護部材を可動式にし、かつ、可動するロールオーバ保護部材に緩衝手段(エアバッグ本体)を配置しても、ロールオーバ保護部材の上昇を制御することができるとともに、可動するロールオーバ保護部材に配置したエアバッグ本体の展開を制御することができる。従って、エアバッグ本体を備えないロールオーバ保護部材に比べ、乗員の保護性能を向上させることができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、起動信号は、第1の駆動力発生手段に対して出力する第1の起動信号と、第2の駆動力発生手段に対して出力する第2の起動信号とからなり、ロールオーバ保護部材及び緩衝部材を個別に作動させるので、それぞれに対して独立の起動条件を設定することができ、例えば、ロールオーバ保護部材を比較的横転の可能性が小さい状況で繰り返し作動させ、緩衝部材(エアバッグ本体)を横転の可能性が極めて大きいときだけに展開させることができるという利点がある。
【0017】
また、それぞれに対して独立の起動条件を設定することができ、例えば、車速の情報を緩衝部材(エアバッグ本体)の作動の制御に追加すると、ロールオーバ保護部材はロール角が大きいと作動するが、緩衝部材(エアバッグ本体)はロール角θが大きくても、車速が所定の車速以下のときには展開させないということができるという利点がある。
【0018】
請求項4に係る発明では、第1の起動信号の出力開始時点と第2の起動信号の出力開始時点との間に、所定の時間差を設けたので、ロールオーバ保護部材が収納位置から支持位置まで上昇した後に、緩衝手段(エアバッグ本体)を展開させることができるという利点がある。
【0019】
請求項5に係る発明では、起動判定手段は、ロールオーバ保護部材が作動したことを検出する作動検出手段を備え、ロールオーバ保護部材が所定位置に達したときに、第2の起動信号を出力し、緩衝部材を展開させるので、所定位置を支持位置に設定すると、支持位置までロールオーバ保護部材を完全に上昇させてから、緩衝部材(エアバッグ本体)を作動させることができるという利点がある。
【0020】
請求項6に係る発明では、第1の起動信号は、横転情報が所定の第1の値を超えたときに出力し、ロールオーバ保護部材を作動させ、第2の起動信号は、横転情報が第1の値より大きく設定した所定の第2の値を超えたときに出力し、緩衝部材を作動させるので、横転の可能性があっても横転に至らずに横転が回避された場合には、第2の起動信号は出力されず、不要な緩衝部材(エアバッグ本体)の展開を防止することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
請求項1は、第1の実施の形態に含まれる。図1〜図5に示す。
請求項2〜請求項4、請求項6は、第2の実施の形態に含まれる。図6〜図13に示す。
請求項5は、第3の実施の形態に含まれる。図14〜図15に示す。
【0022】
図1は、本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)を説明する図である。
第1の実施の形態のロールオーバ保護装置11は、車両12に採用したもので、助手席13に配置した車体支持手段14と、車体支持手段14に配置した緩衝手段15と、車両12の中央に配置した緩衝手段作動制御部16と、車両状態検出手段17と、起動判定手段18と、運転席に同様に配置した車体支持手段14と緩衝手段15を備える。19は車両12の制御装置、21は緩衝手段15の展開位置を示す。
【0023】
車両12は、屋根を開閉することができるコンバーチブルで、屋根を閉じた状態では、屋根の下方に緩衝手段15が展開する。なお、屋根は、樹脂製でもよく、金属製でもよい。
ここで、図上の軸は、座標軸であり、直線又は回転で動く方向を示す。Xは前後に水平な直線運動を示す軸、YはXに直交する軸、ZはX,Yに直交する鉛直軸、A(図2参照)はX軸の周りの旋回運動を示す軸、BはY軸の周りの旋回運動を示す軸、C(図2参照)はZ軸の周りの旋回運動を示す軸である。
【0024】
車両状態検出手段17は、車両12の横転(A,B軸方向)や衝突など車両12の状態、例えば、加速度(例えば、X軸方向)、ロール角θ(A軸方向、図4参照)、滑り(スリップ)角、ピッチ角α(B軸方向、図4参照)、車速Vを検出するもので、仕様は任意である。
【0025】
起動判定手段18は、車両状態検出手段17の横転情報Eに基づいて車両12の横転の可能性ありか否かや、横転か否かを判断するとともに、緩衝手段15を作動(展開)させるもので、仕様は任意である。
横転情報Eは、ロール角θ(図4(a)参照)とピッチ角α(図4(b)参照)とからなる。車速Vを含めてもよい。
【0026】
車体支持手段14は、助手席13の左右の下でかつ車体22に金属製の管23,23(図2参照)を固定し、管23,23に連ねてコ字状にロールオーバ保護部材24を形成したものである。
また、車体支持手段14は、ロールオーバ保護部材24に緩衝手段15を一体的に取付けた後に、組立てラインで車体22に組付けられる。
【0027】
図2は、本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)の斜視図で、緩衝手段15を透視した状態で示した。
緩衝手段15は、ロールオーバ保護部材24に金属製のケース25を一体的に取付け、ケース25を樹脂製の装飾パネル26で覆い、ケース25及び装飾パネル26に開口蓋部27を形成し、ケース25内に駆動力発生手段であるところのインフレータ(ガス発生装置)31及びインフレータ(ガス発生装置)31の反応ガスで展開する緩衝部材であるところのエアバッグ本体32を配置した。
【0028】
インフレータ(ガス発生装置)31は、既存のインフレータであり、例えば、助手席用としてインストルメントパネルに配置したインフレータとほぼ同様である。
【0029】
ロールオーバ保護装置11を助手席13を対象に説明したが、当然、運転席にも同様(車体中心に対し対称)に車体支持手段14と緩衝手段15を配置した。
【0030】
図3は、本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)のフローチャートであり、ST××はステップ番号を示す。図1、図2を併用して説明する。
ST01:車両12の衝突や横転を車両状態検出手段17で検出する。
ST02:横転情報Eに基づいて起動判定手段18は横転か否かを判断する。横転ではないときにはST01に戻る。横転のときはST03に進む。
ST03:起動判定手段18は起動信号Kを出力する。
ST04:駆動力発生手段(インフレータ)31が作動して緩衝部材(エアバッグ本体)32を展開する。
【0031】
なお、ST02で横転のときはST03に進めたが、「可能性あり」と判断したときにST03に進めてもよい。
【0032】
図4(a)、(b)は、本発明のロールオーバ保護装置の制御に用いる横転情報を説明する図である。(a)は、車両12のロール角θ、(b)は車両12のピッチ角αを示す。
(a)において、ロール角θ1は、「可能性あり」と判断する際の所定値であり、例えば、10°に設定する。つまり、ロール角θがθ1を超えたときは「可能性あり」と判断する。
ロール角θ7は、「横転」と判断する際の所定値であり、例えば、70°に設定する。つまり、ロール角θがθ7を超えたときは「横転」と判断する。
なお、「横転」とは、ロール角θがθ9=90°以上の状態や車両12の上下を逆さまに回転することである。
【0033】
(b)において、ピッチ角α5は、「可能性あり」と判断する際の所定値であり、例えば、50°に設定する。つまり、ロール角αがα5を超えたときは「可能性あり」と判断する。
ロール角α9は、「横転」と判断する際の所定値であり、例えば、90°に設定する。つまり、ロール角αがα9を超えたときは「横転」と判断する。
【0034】
なお、横転情報Eは、ロール角θとピッチ角αの2つとしたが、ロール角θのみでもよく、さらに追加して3つ以上でもよい。例えば、車速Vを設定してもよい。
【0035】
図5は、本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)の作用図である。
ロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)11では、車両12が横転を始め、横転情報Eが所定値としてのθ7,α9を超えた場合には、起動判定手段18は起動信号Kを出力して緩衝手段15の駆動力発生手段(インフレータ)31を起動させ、緩衝手段15の緩衝部材(エアバッグ本体)32を展開位置21で展開させる。その結果、乗員Mの上方でエアバッグ本体32が矢印a1,a1のように展開するので、ロールオーバ保護部材24で乗員Mと地面Gとの間に空間を確保し、さらに、展開したエアバッグ本体32は乗員Mと地面Gとの間に介在し、乗員Mを受け止め、乗員Mの頭部Hをより確実に保護することができる。
【0036】
また、図2に示すように、ロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)11では、緩衝手段15を一体的に取付けた車体支持手段14を車体22に組付けるので、車体22への組付けは容易になる。
【0037】
さらに、ロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)11では、所定値であるθ7,α9を基準に判断するので、所定値(角度)θ7,α9を大きくして、エアバッグ本体32の展開の頻度を小さくして展開を抑制することができる。
【0038】
次に、本発明のロールオーバ保護装置の「別の実施の形態」を説明する。
図6は、第2の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する図である。上記図1〜図5に示す実施の形態と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
【0039】
第2の実施の形態のロールオーバ保護装置11Bは、車両12に採用したもので、助手席13の座席38に配置した車体支持手段14Bと、車体支持手段14Bに配置した緩衝手段15Bと、車両12の中央に配置した緩衝手段作動制御部16と、車両状態検出手段17と、起動判定手段18Bと、運転席41(図7参照)の座席42に同様に配置した車体支持手段14Bと緩衝手段15Bを備える。
【0040】
起動判定手段18Bは、タイマ手段43を備え、起動信号Kを出力する。タイマ手段43は、時間を設定するもので、仕様は任意である。
起動信号Kは、車体支持手段14Bの第1の駆動力発生手段71(図9参照)に対して出力する第1の起動信号K1と、緩衝手段15Bの第2の駆動力発生手段103(図8参照)に対して出力する第2の起動信号K2とからなる。
【0041】
図7は、第2の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する平面図である。
図8は、第2の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する斜視図で、運転席41の座席42を透視した状態で示した。
図9は、図7の9−9線断面図である
図10は、図9の10−10線断面図である。
次に運転席41に配置した車体支持手段14Bと緩衝手段15Bを中心に説明する。
【0042】
車体支持手段14Bは、運転席41の座席42の後方に配置するとともにフロアパネル44に取付けた可動機構45と、可動機構45に連ねて形成したロールオーバ保護部材46と、ロールオーバ保護部材46を作動させる保護部材駆動装置47と、を備える。
また、車体支持手段14Bは、ロールオーバ保護部材46内に緩衝手段15Bを一体的に内蔵した後に、組立てラインで車体22に組付けられる。
【0043】
可動機構45は、左右のスライド支柱手段51,52と、左右のスライド支柱手段51,52のスライド部材53,54同士を接続するように取付けた可動梁部材55と、スライド支柱手段51,52の固定支柱56,57の下部に取付けた固定梁部材61と、を備える。
【0044】
また、可動機構45は、可動梁部材55と右のスライド支柱手段52間にストッパ機構63を配置し、左のスライド支柱手段51の固定支柱56に緩衝器64を配置した。65(図9参照)はロールオーバ保護部材46の収納位置、66(図9参照)はロールオーバ保護部材46の支持位置を示す。
なお、左右のスライド支柱手段51,52のスライド部材53,54同士を接続するようにロールオーバ保護部材46を取付けた。
【0045】
保護部材駆動装置47は、ロールオーバ保護部材46を上昇(Z軸方向)させることで飛び出させる第1の駆動力発生手段71と、ロック機構72と、からなる。
第1の駆動力発生手段71は、固定梁部材61と可動梁部材55との間に圧縮ばね73を配置し、圧縮ばね73を通すとともに固定梁部材61の中央にピン74の一端を固定し、他端を可動梁部材55に通したもので、ロールオーバ保護部材46を支持位置66まで二点鎖線(図9参照)で示すように上昇させる。
【0046】
ロック機構72は、車体22の右のサイドボデー77内に電動モータ81を配置し、電動モータ81に主動プーリ82を取付け、固定梁部材61にブラケット83を介して回動自在(A軸方向)にかつ、従動プーリ84と円盤85を一体的に接続した状態で取付け、円盤85の中心から所定距離だけ離した位置にロックピン86を取付け、ロックピン86に掛止する掛止部材87を可動梁部材55に取付け、従動プーリ84と主動プーリ82に歯付ベルト91を掛けた。
【0047】
また、助手席13(図7参照)側の固定梁部材61にブラケット83を介して回動自在(A軸方向)に円盤85を取付け、円盤85の中心から所定距離だけ離した位置にロックピン92(ロックピン86と同じもの。)を取付け、ロックピン92,86を連結アーム93で連結した。
【0048】
ストッパ機構63は、可動梁部材55に掛止部材95を取付け、掛止部材95に掛かる爪手段96を右のスライド支柱手段52の固定支柱57に取付け、ロールオーバ保護部材46を支持位置66で固定する。
【0049】
図11は、図9の11−11線断面図である。
左のスライド支柱手段51は、固定支柱56内にローラ97,97を取付けた。
右のスライド支柱手段52は、固定支柱57内にローラ97,97を取付けた。
なお、ローラ97・・・を介してスライド部材53,54を嵌めたが、ローラ97・・・を用いずにスライド部材53,54を嵌めることも可能である。
固定支柱56,57の断面形状は、任意である。
スライド部材53,54の断面形状は、任意である。
【0050】
緩衝手段15B(図8参照)は、ロールオーバ保護部材46内に緩衝部材であるところのエアバッグ本体102及びエアバッグ本体102を展開させる第2の駆動力発生手段であるところのインフレータ(ガス発生装置)103を配置し、展開するエアバッグ本体102によって開く開口蓋部104(図13も参照)をロールオーバ保護部材46に形成したものである。
【0051】
インフレータ(ガス発生装置)103は、反応(燃焼)ガスを発生させるもので、既存のインフレータであり、例えば、助手席用としてインストルメントパネルに配置したインフレータとほぼ同様である。
【0052】
ロールオーバ保護装置11Bを運転席41を対象に説明したが、助手席13にも同様(車体中心に対し対称)に可動機構45と第1の駆動力発生手段71を配置した。
【0053】
図12は、第2の実施の形態のフローチャートであり、ST××はステップ番号を示す。図4、図6、図9を併用して説明する。
ST21:車両12の衝突や横転を車両状態検出手段17で検出する。
ST22:横転情報Eは所定の第1の値A1を超えたか否かを起動判定手段18Bによって判断する。超えないときはST21に戻る。超えたときはST23に進む。
ST23:起動判定手段18Bは第1の起動信号K1を出力する。
ST24:ロールオーバ保護部材46を支持位置66まで作動させる。
ST25:起動判定手段18Bは所定の時間差Tだけ経過したか否かをタイマ手段43で判断する。経過したらST26に進む。
ST26:横転情報Eは所定の第2の値A2を超えたか否かを判断する。超えないときはST21に戻る。超えたときはST27に進む。
ST27:起動判定手段18Bは第2の起動信号K2を出力する。
ST28:緩衝手段15Bを作動させることで、緩衝部材(エアバッグ本体)102を展開する。
【0054】
ここでは、所定の第1の値A1は、図4に示すロール角θ1及びピッチ角α5とする。
所定の第2の値A2は、図4に示すロール角θ7及びピッチ角α9とする。
所定の時間差Tは、第1の起動信号K1の出力開始時点から第2の起動信号K2の出力開始時点までの間の時間とする。例えば、ロールオーバ保護部材46が支持位置66に達するまでの時間を設定する。
【0055】
なお、横転情報Eは、ロール角θとピッチ角αの2つとしたが、ロール角θのみでもよく、さらに追加して3つ以上でもよい。例えば、車速Vを設定してもよい。
【0056】
図13は、第2の実施の形態の作用図である。図6、図9、図10を併用して説明する。
車両12が横転を始めると、ロールオーバ保護部材46が飛び出し(矢印a2の方向)、支持位置66に達した時点で、エアバッグ本体102は膨らむ。従って、乗員Mの頭部Hをより確実に保護することができる。
【0057】
具体的には、車両12に何らかの理由で横転が起き始めると、車両状態検出手段17の横転情報E(例えば、θが10°を超え、αが50°を越え)に基づいて、起動判定手段18Bは横転の可能性ありと判断し、第1の起動信号K1で電動モータ81を作動させるので、図9に示すロック機構72はロックピン92,86を矢印a3のように回動しロックを解除する。引き続き、第1の駆動力発生手段71の圧縮ばね73によってロールオーバ保護部材46が収納位置65から支持位置66まで矢印a4のように上昇する。
【0058】
一方、タイマ手段43は、第1の起動信号K1によってカウントを開始し、時間差(設定時間)Tに達した時点で、車両状態検出手段17の横転情報E(例えば、θが70°以下か、αが90°以下)に基づいて起動判定手段18Bが横転ではないと判断したときには、ロールオーバ保護装置11Bはロールオーバ保護部材46のみを作動させて作動を終了する。
【0059】
経過時間のカウントが時間差(設定時間)Tに達した後、車両状態検出手段17の横転情報E(例えば、何れかがθ=80°、α=91°)に基づいて起動判定手段18Bが横転と判断すると、起動判定手段18Bは第2の起動信号K2によってインフレータ(ガス発生装置)103を作動させる。その結果、反応ガスをエアバッグ本体102に吹き込み、膨脹(広げる)させ、膨脹するエアバッグ本体102は開口蓋部104のティアラインを破断し、開口蓋部104を矢印a5のように開き、乗員Mの頭部Hの上方の空間へ矢印a6のように展開する。従って、乗員Mの頭部Hをより確実に保護することができる。
【0060】
このように、請求項2のロールオーバ保護装置(第2の実施の形態)11Bでは、横転情報Eが所定値であるθ7,α9を超えた場合には起動判定手段18Bは起動信号Kを出力して第1の駆動力発生手段71及び緩衝手段15Bの第2の駆動力発生手段(インフレータ)103を起動させるので、ロールオーバ保護部材46を上昇させて、緩衝手段15B(エアバッグ本体102)を膨脹(広げる)させることができる。従って、乗員Mの頭部Hをより確実に保護することができる。
【0061】
請求項4のロールオーバ保護装置11Bでは、第1の起動信号K1の出力開始時点と第2の起動信号K2の出力開始時点との間に、所定の時間差Tを設けたので、ロールオーバ保護部材46が収納位置65から支持位置66まで上昇(矢印a2の方向)した後に、緩衝手段15Bの緩衝部材(エアバッグ本体)102を膨脹(広げる)させることができる。
【0062】
また、請求項2のロールオーバ保護装置11Bでは、ロールオーバ保護部材46を可動式にし、かつ、可動するロールオーバ保護部材46に緩衝手段15B(エアバッグ本体102を含む。)を配置しても、ロールオーバ保護部材46の上昇を制御することができるとともに、可動するロールオーバ保護部材46に配置したエアバッグ本体102の展開を制御することができる。従って、エアバッグ本体を備えないロールオーバ保護部材に比べ、乗員Mの保護性能を向上させることができる。
【0063】
請求項3のロールオーバ保護装置11Bでは、ロールオーバ保護部材46及び緩衝部材(エアバッグ本体)102を個別に作動させるので、それぞれに対して独立の起動条件を設定することができ、例えば、ロールオーバ保護部材46を比較的横転の可能性が小さい状況で繰り返し作動させ、緩衝部材(エアバッグ本体)102を横転の可能性が極めて大きいときだけに展開させることができる。
【0064】
また、請求項3のロールオーバ保護装置11Bでは、ロールオーバ保護部材46及び緩衝部材(エアバッグ本体)102を個別に作動させるので、それぞれに対して独立の起動条件を設定することができ、例えば、車速Vの情報を緩衝部材(エアバッグ本体)102の作動の制御に追加すると、ロールオーバ保護部材46はロール角θが大きいと作動するが、緩衝部材(エアバッグ本体)102はロール角θが大きくても、車速Vが所定の車速以下のときには展開させないということができる。
【0065】
請求項6のロールオーバ保護装置11Bでは、第1の起動信号は、横転情報が所定の第1の値を超えたときに出力し、ロールオーバ保護部材を作動させ、第2の起動信号は、横転情報が第1の値より大きく設定した所定の第2の値を超えたときに出力し、緩衝部材を作動させるので、横転の可能性があっても横転に至らずに横転が回避された場合には、第2の起動信号K2は出力されず、不要な緩衝部材(エアバッグ本体)102の展開を防止することができる。
【0066】
図8に示すように、請求項2のロールオーバ保護装置11Bでは、緩衝手段15Bを一体的に取付けた車体支持手段14Bを車体22に組付けるので、車体22への組付けは容易になる。
【0067】
次に第3の実施の形態を説明する。
図14は、第3の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する図である。上記図1〜図13に示す実施の形態と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
図15は、図9に対応する第3の実施の形態図である
第3の実施の形態のロールオーバ保護装置11Cは、起動判定手段18Cを備え、起動判定手段18Cは、ロールオーバ保護部材46が作動したことを検出する作動検出手段107を備えたことを特徴とする。
【0068】
作動検出手段107は、ロールオーバ保護部材46が作動して、支持位置66に達したことを検出するもので、固定支柱56にブラケット108を介して、所定位置まで上昇した可動梁部材55に接触するように取付けた。
作動検出手段107としては、マイクロスイッチを用いる。なお、近接スイッチ(非接触)を採用することも可能である。
【0069】
ロールオーバ保護装置11Cでは、支持位置66までロールオーバ保護部材46が上昇すると、可動梁部材55は作動検出手段107を押すので、作動検出手段107は上昇限信号Uを出力する。上昇限信号Uに基づいて、起動判定手段18Cは緩衝手段作動制御部16を介して第2の駆動力発生手段(インフレータ)103を起動させるので、ロールオーバ保護部材46を確実に上昇させた後、緩衝手段15B(エアバッグ本体102)を膨脹(広げる)させることができる。従って、乗員Mの頭部Hをより確実に保護することができる。
【0070】
第3の実施の形態のロールオーバ保護装置11Cは、第2の実施の形態のロールオーバ保護装置11Bと同様の効果を発揮する。
つまり、乗員Mの頭部Hをより確実に保護することができる。また、車体22への組付けは容易になる。
【0071】
また、請求項5の第3の実施の形態のロールオーバ保護装置11Cでは、起動判定手段18Cは、ロールオーバ保護部材46が作動したことを検出する作動検出手段107を備え、ロールオーバ保護部材46が所定位置、例えば、支持位置66に達したときに、第2の起動信号K2Cを出力し、緩衝部材(エアバッグ本体)102を展開させるので、所定位置を支持位置66に設定すると、支持位置66までロールオーバ保護部材46を完全に上昇させてから、緩衝部材(エアバッグ本体)102を作動させることができる。
【0072】
尚、本発明のロールオーバ保護装置は、実施の形態では屋根の開閉が可能な自動車に適用したが、屋根のない自動車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のロールオーバ保護装置は、コンバーチブルやロードスターに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)を説明する図
【図2】本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)の斜視図
【図3】本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)のフローチャート
【図4】本発明のロールオーバ保護装置の制御に用いる横転情報を説明する図
【図5】本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)の作用図
【図6】第2の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する図
【図7】第2の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する平面図
【図8】第2の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する斜視図
【図9】図7の9−9線断面図
【図10】図9の10−10線断面図
【図11】図9の11−11線断面図
【図12】第2の実施の形態のフローチャート
【図13】第2の実施の形態の作用図
【図14】第3の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する図
【図15】図9に対応する第3の実施の形態図
【符号の説明】
【0075】
11,11B…ロールオーバ保護装置、12…車両、15,15B…緩衝手段、17…車両状態検出手段、18,18B…起動判定手段、21…展開位置、22…車体、24…ロールオーバ保護部材、31…駆動力発生手段(インフレータ)、32,102…緩衝部材(エアバッグ本体)、44…可動機構、65…収納位置、66…支持位置、71…第1の駆動力発生手段、103…第2の駆動力発生手段(インフレータ)、107…作動検出手段、θ7,α9…所定値、A1,θ1,α5…所定の第1の値、A2,θ7,α9…所定の第2の値、E…横転情報、K…起動信号、K1…第1の起動信号、K2…第2の起動信号、M…乗員、T…所定の時間差。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の横転時など乗員を保護する必要があるときに作動するロールオーバ保護装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロールオーバ保護装置は、車両が横転した時に、主に地面に対する衝撃を緩和するもので、乗員の頭部の上方に配置したパイプ部材などの支持部材(ロールバー)で車体を支持し、乗員を保護する。支持部材には、固定式と可動式がある。
可動式では、必要な時に、乗員の頭部上方まで支持部材を引き出す技術がある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】独国特許発明第19838989号明細書
【0003】
ロールバーは、自動車が横転した時に乗員と地面との間に空間を確保する目的で用いられる。しかし、乗員がシートベルトを着用していなかったり、適切に着用されていない場合には、乗員を十分に拘束できない可能性があり、結果的に、ロールバーによる保護性能は低下する。
【0004】
また、ロールバーによって乗員の上側の空間を確保したとしても、自動車の側面衝突等によって発生する横転の際には、乗員は左方向若しくは右方向に揺れて、乗員の一方の肩に掛けたベルトの拘束力が不足する可能性があり、結果的に、ロールバーによる保護性能は低下する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、乗員の頭部をより確実に保護することができ、かつ、車体への組付けが容易なロールオーバ保護装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、車両の屋根の少なくとも一部が開閉可能な車体に取付けて横転時に車体を支持するロールオーバ保護部材と、ロールオーバ保護部材に配置し、乗員に対して緩衝する緩衝手段と、を備えたロールオーバ保護装置において、車両に取付けて車両の衝突や横転を検出する車両状態検出手段と、車両状態検出手段の横転情報に基づいて横転を判別する起動判定手段を備え、横転情報が所定値を超えた場合には起動判定手段は起動信号を出力して緩衝手段の駆動力発生手段を起動させ、緩衝手段の緩衝部材を展開位置で展開させることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、車両の屋根の少なくとも一部が開閉可能な車体に取付けて横転時に車体を支持するロールオーバ保護部材と、ロールオーバ保護部材に配置し、乗員に対して緩衝する緩衝手段と、を備えたロールオーバ保護装置において、ロールオーバ保護部材を作動させる可動機構と、可動機構を介して収納位置から支持位置へ移動させる第1の駆動力発生手段と、車両に取付けて車両の衝突や横転を検出する車両状態検出手段と、車両状態検出手段の横転情報に基づいて横転を判別する起動判定手段を備え、横転情報が所定値を超えた場合には起動判定手段は起動信号を出力して第1の駆動力発生手段及び緩衝手段の第2の駆動力発生手段を起動させることで、ロールオーバ保護部材を支持位置へ移動させ、緩衝手段の緩衝部材を展開位置で展開させることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明では、起動信号は、第1の駆動力発生手段に対して出力する第1の起動信号と、第2の駆動力発生手段に対して出力する第2の起動信号とからなり、ロールオーバ保護部材及び緩衝部材を個別に作動させることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、第1の起動信号の出力開始時点と第2の起動信号の出力開始時点との間に、所定の時間差を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、起動判定手段は、ロールオーバ保護部材が作動したことを検出する作動検出手段を備え、ロールオーバ保護部材が所定位置に達したときに、第2の起動信号を出力し、緩衝部材を展開させることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、第1の起動信号は、横転情報が所定の第1の値を超えたときに出力し、ロールオーバ保護部材を作動させ、第2の起動信号は、横転情報が第1の値より大きく設定した所定の第2の値を超えたときに出力し、緩衝部材を作動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、車両の衝突や横転を検出する車両状態検出手段と、車両状態検出手段の横転情報に基づいて横転を判別する起動判定手段を備え、横転情報が所定値を超えた場合には起動判定手段は起動信号を出力して緩衝手段の駆動力発生手段を起動させ、緩衝手段の緩衝部材を展開位置で展開させるので、車両が横転を始めると、展開した緩衝部材(エアバッグ本体)は乗員と地面との間に介在し、乗員を受け止め、乗員の頭部をより確実に保護することができるという利点がある。
【0013】
また、緩衝手段を一体的に配置したロールオーバ保護部材を車体に組付けるので、車体への組付けは容易になる。
【0014】
請求項2に係る発明では、ロールオーバ保護部材を収納位置から支持位置へ移動させる第1の駆動力発生手段と、車両の衝突や横転を検出する車両状態検出手段と、車両状態検出手段の横転情報に基づいて横転を判別する起動判定手段を備え、横転情報が所定値を超えた場合には起動判定手段は起動信号を出力して第1の駆動力発生手段及び緩衝手段の第2の駆動力発生手段を起動させることで、ロールオーバ保護部材を支持位置へ移動させ、緩衝手段の緩衝部材を展開位置で展開させるので、車両が横転を始めると、展開した緩衝部材(エアバッグ本体)は乗員と地面との間に介在し、乗員を受け止め、乗員の頭部をより確実に保護することができるという利点がある。
【0015】
また、緩衝手段を一体的に配置したロールオーバ保護部材を車体に組付けるので、車体への組付けは容易になる。
さらに、ロールオーバ保護部材を可動式にし、かつ、可動するロールオーバ保護部材に緩衝手段(エアバッグ本体)を配置しても、ロールオーバ保護部材の上昇を制御することができるとともに、可動するロールオーバ保護部材に配置したエアバッグ本体の展開を制御することができる。従って、エアバッグ本体を備えないロールオーバ保護部材に比べ、乗員の保護性能を向上させることができる。
【0016】
請求項3に係る発明では、起動信号は、第1の駆動力発生手段に対して出力する第1の起動信号と、第2の駆動力発生手段に対して出力する第2の起動信号とからなり、ロールオーバ保護部材及び緩衝部材を個別に作動させるので、それぞれに対して独立の起動条件を設定することができ、例えば、ロールオーバ保護部材を比較的横転の可能性が小さい状況で繰り返し作動させ、緩衝部材(エアバッグ本体)を横転の可能性が極めて大きいときだけに展開させることができるという利点がある。
【0017】
また、それぞれに対して独立の起動条件を設定することができ、例えば、車速の情報を緩衝部材(エアバッグ本体)の作動の制御に追加すると、ロールオーバ保護部材はロール角が大きいと作動するが、緩衝部材(エアバッグ本体)はロール角θが大きくても、車速が所定の車速以下のときには展開させないということができるという利点がある。
【0018】
請求項4に係る発明では、第1の起動信号の出力開始時点と第2の起動信号の出力開始時点との間に、所定の時間差を設けたので、ロールオーバ保護部材が収納位置から支持位置まで上昇した後に、緩衝手段(エアバッグ本体)を展開させることができるという利点がある。
【0019】
請求項5に係る発明では、起動判定手段は、ロールオーバ保護部材が作動したことを検出する作動検出手段を備え、ロールオーバ保護部材が所定位置に達したときに、第2の起動信号を出力し、緩衝部材を展開させるので、所定位置を支持位置に設定すると、支持位置までロールオーバ保護部材を完全に上昇させてから、緩衝部材(エアバッグ本体)を作動させることができるという利点がある。
【0020】
請求項6に係る発明では、第1の起動信号は、横転情報が所定の第1の値を超えたときに出力し、ロールオーバ保護部材を作動させ、第2の起動信号は、横転情報が第1の値より大きく設定した所定の第2の値を超えたときに出力し、緩衝部材を作動させるので、横転の可能性があっても横転に至らずに横転が回避された場合には、第2の起動信号は出力されず、不要な緩衝部材(エアバッグ本体)の展開を防止することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
請求項1は、第1の実施の形態に含まれる。図1〜図5に示す。
請求項2〜請求項4、請求項6は、第2の実施の形態に含まれる。図6〜図13に示す。
請求項5は、第3の実施の形態に含まれる。図14〜図15に示す。
【0022】
図1は、本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)を説明する図である。
第1の実施の形態のロールオーバ保護装置11は、車両12に採用したもので、助手席13に配置した車体支持手段14と、車体支持手段14に配置した緩衝手段15と、車両12の中央に配置した緩衝手段作動制御部16と、車両状態検出手段17と、起動判定手段18と、運転席に同様に配置した車体支持手段14と緩衝手段15を備える。19は車両12の制御装置、21は緩衝手段15の展開位置を示す。
【0023】
車両12は、屋根を開閉することができるコンバーチブルで、屋根を閉じた状態では、屋根の下方に緩衝手段15が展開する。なお、屋根は、樹脂製でもよく、金属製でもよい。
ここで、図上の軸は、座標軸であり、直線又は回転で動く方向を示す。Xは前後に水平な直線運動を示す軸、YはXに直交する軸、ZはX,Yに直交する鉛直軸、A(図2参照)はX軸の周りの旋回運動を示す軸、BはY軸の周りの旋回運動を示す軸、C(図2参照)はZ軸の周りの旋回運動を示す軸である。
【0024】
車両状態検出手段17は、車両12の横転(A,B軸方向)や衝突など車両12の状態、例えば、加速度(例えば、X軸方向)、ロール角θ(A軸方向、図4参照)、滑り(スリップ)角、ピッチ角α(B軸方向、図4参照)、車速Vを検出するもので、仕様は任意である。
【0025】
起動判定手段18は、車両状態検出手段17の横転情報Eに基づいて車両12の横転の可能性ありか否かや、横転か否かを判断するとともに、緩衝手段15を作動(展開)させるもので、仕様は任意である。
横転情報Eは、ロール角θ(図4(a)参照)とピッチ角α(図4(b)参照)とからなる。車速Vを含めてもよい。
【0026】
車体支持手段14は、助手席13の左右の下でかつ車体22に金属製の管23,23(図2参照)を固定し、管23,23に連ねてコ字状にロールオーバ保護部材24を形成したものである。
また、車体支持手段14は、ロールオーバ保護部材24に緩衝手段15を一体的に取付けた後に、組立てラインで車体22に組付けられる。
【0027】
図2は、本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)の斜視図で、緩衝手段15を透視した状態で示した。
緩衝手段15は、ロールオーバ保護部材24に金属製のケース25を一体的に取付け、ケース25を樹脂製の装飾パネル26で覆い、ケース25及び装飾パネル26に開口蓋部27を形成し、ケース25内に駆動力発生手段であるところのインフレータ(ガス発生装置)31及びインフレータ(ガス発生装置)31の反応ガスで展開する緩衝部材であるところのエアバッグ本体32を配置した。
【0028】
インフレータ(ガス発生装置)31は、既存のインフレータであり、例えば、助手席用としてインストルメントパネルに配置したインフレータとほぼ同様である。
【0029】
ロールオーバ保護装置11を助手席13を対象に説明したが、当然、運転席にも同様(車体中心に対し対称)に車体支持手段14と緩衝手段15を配置した。
【0030】
図3は、本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)のフローチャートであり、ST××はステップ番号を示す。図1、図2を併用して説明する。
ST01:車両12の衝突や横転を車両状態検出手段17で検出する。
ST02:横転情報Eに基づいて起動判定手段18は横転か否かを判断する。横転ではないときにはST01に戻る。横転のときはST03に進む。
ST03:起動判定手段18は起動信号Kを出力する。
ST04:駆動力発生手段(インフレータ)31が作動して緩衝部材(エアバッグ本体)32を展開する。
【0031】
なお、ST02で横転のときはST03に進めたが、「可能性あり」と判断したときにST03に進めてもよい。
【0032】
図4(a)、(b)は、本発明のロールオーバ保護装置の制御に用いる横転情報を説明する図である。(a)は、車両12のロール角θ、(b)は車両12のピッチ角αを示す。
(a)において、ロール角θ1は、「可能性あり」と判断する際の所定値であり、例えば、10°に設定する。つまり、ロール角θがθ1を超えたときは「可能性あり」と判断する。
ロール角θ7は、「横転」と判断する際の所定値であり、例えば、70°に設定する。つまり、ロール角θがθ7を超えたときは「横転」と判断する。
なお、「横転」とは、ロール角θがθ9=90°以上の状態や車両12の上下を逆さまに回転することである。
【0033】
(b)において、ピッチ角α5は、「可能性あり」と判断する際の所定値であり、例えば、50°に設定する。つまり、ロール角αがα5を超えたときは「可能性あり」と判断する。
ロール角α9は、「横転」と判断する際の所定値であり、例えば、90°に設定する。つまり、ロール角αがα9を超えたときは「横転」と判断する。
【0034】
なお、横転情報Eは、ロール角θとピッチ角αの2つとしたが、ロール角θのみでもよく、さらに追加して3つ以上でもよい。例えば、車速Vを設定してもよい。
【0035】
図5は、本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)の作用図である。
ロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)11では、車両12が横転を始め、横転情報Eが所定値としてのθ7,α9を超えた場合には、起動判定手段18は起動信号Kを出力して緩衝手段15の駆動力発生手段(インフレータ)31を起動させ、緩衝手段15の緩衝部材(エアバッグ本体)32を展開位置21で展開させる。その結果、乗員Mの上方でエアバッグ本体32が矢印a1,a1のように展開するので、ロールオーバ保護部材24で乗員Mと地面Gとの間に空間を確保し、さらに、展開したエアバッグ本体32は乗員Mと地面Gとの間に介在し、乗員Mを受け止め、乗員Mの頭部Hをより確実に保護することができる。
【0036】
また、図2に示すように、ロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)11では、緩衝手段15を一体的に取付けた車体支持手段14を車体22に組付けるので、車体22への組付けは容易になる。
【0037】
さらに、ロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)11では、所定値であるθ7,α9を基準に判断するので、所定値(角度)θ7,α9を大きくして、エアバッグ本体32の展開の頻度を小さくして展開を抑制することができる。
【0038】
次に、本発明のロールオーバ保護装置の「別の実施の形態」を説明する。
図6は、第2の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する図である。上記図1〜図5に示す実施の形態と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
【0039】
第2の実施の形態のロールオーバ保護装置11Bは、車両12に採用したもので、助手席13の座席38に配置した車体支持手段14Bと、車体支持手段14Bに配置した緩衝手段15Bと、車両12の中央に配置した緩衝手段作動制御部16と、車両状態検出手段17と、起動判定手段18Bと、運転席41(図7参照)の座席42に同様に配置した車体支持手段14Bと緩衝手段15Bを備える。
【0040】
起動判定手段18Bは、タイマ手段43を備え、起動信号Kを出力する。タイマ手段43は、時間を設定するもので、仕様は任意である。
起動信号Kは、車体支持手段14Bの第1の駆動力発生手段71(図9参照)に対して出力する第1の起動信号K1と、緩衝手段15Bの第2の駆動力発生手段103(図8参照)に対して出力する第2の起動信号K2とからなる。
【0041】
図7は、第2の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する平面図である。
図8は、第2の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する斜視図で、運転席41の座席42を透視した状態で示した。
図9は、図7の9−9線断面図である
図10は、図9の10−10線断面図である。
次に運転席41に配置した車体支持手段14Bと緩衝手段15Bを中心に説明する。
【0042】
車体支持手段14Bは、運転席41の座席42の後方に配置するとともにフロアパネル44に取付けた可動機構45と、可動機構45に連ねて形成したロールオーバ保護部材46と、ロールオーバ保護部材46を作動させる保護部材駆動装置47と、を備える。
また、車体支持手段14Bは、ロールオーバ保護部材46内に緩衝手段15Bを一体的に内蔵した後に、組立てラインで車体22に組付けられる。
【0043】
可動機構45は、左右のスライド支柱手段51,52と、左右のスライド支柱手段51,52のスライド部材53,54同士を接続するように取付けた可動梁部材55と、スライド支柱手段51,52の固定支柱56,57の下部に取付けた固定梁部材61と、を備える。
【0044】
また、可動機構45は、可動梁部材55と右のスライド支柱手段52間にストッパ機構63を配置し、左のスライド支柱手段51の固定支柱56に緩衝器64を配置した。65(図9参照)はロールオーバ保護部材46の収納位置、66(図9参照)はロールオーバ保護部材46の支持位置を示す。
なお、左右のスライド支柱手段51,52のスライド部材53,54同士を接続するようにロールオーバ保護部材46を取付けた。
【0045】
保護部材駆動装置47は、ロールオーバ保護部材46を上昇(Z軸方向)させることで飛び出させる第1の駆動力発生手段71と、ロック機構72と、からなる。
第1の駆動力発生手段71は、固定梁部材61と可動梁部材55との間に圧縮ばね73を配置し、圧縮ばね73を通すとともに固定梁部材61の中央にピン74の一端を固定し、他端を可動梁部材55に通したもので、ロールオーバ保護部材46を支持位置66まで二点鎖線(図9参照)で示すように上昇させる。
【0046】
ロック機構72は、車体22の右のサイドボデー77内に電動モータ81を配置し、電動モータ81に主動プーリ82を取付け、固定梁部材61にブラケット83を介して回動自在(A軸方向)にかつ、従動プーリ84と円盤85を一体的に接続した状態で取付け、円盤85の中心から所定距離だけ離した位置にロックピン86を取付け、ロックピン86に掛止する掛止部材87を可動梁部材55に取付け、従動プーリ84と主動プーリ82に歯付ベルト91を掛けた。
【0047】
また、助手席13(図7参照)側の固定梁部材61にブラケット83を介して回動自在(A軸方向)に円盤85を取付け、円盤85の中心から所定距離だけ離した位置にロックピン92(ロックピン86と同じもの。)を取付け、ロックピン92,86を連結アーム93で連結した。
【0048】
ストッパ機構63は、可動梁部材55に掛止部材95を取付け、掛止部材95に掛かる爪手段96を右のスライド支柱手段52の固定支柱57に取付け、ロールオーバ保護部材46を支持位置66で固定する。
【0049】
図11は、図9の11−11線断面図である。
左のスライド支柱手段51は、固定支柱56内にローラ97,97を取付けた。
右のスライド支柱手段52は、固定支柱57内にローラ97,97を取付けた。
なお、ローラ97・・・を介してスライド部材53,54を嵌めたが、ローラ97・・・を用いずにスライド部材53,54を嵌めることも可能である。
固定支柱56,57の断面形状は、任意である。
スライド部材53,54の断面形状は、任意である。
【0050】
緩衝手段15B(図8参照)は、ロールオーバ保護部材46内に緩衝部材であるところのエアバッグ本体102及びエアバッグ本体102を展開させる第2の駆動力発生手段であるところのインフレータ(ガス発生装置)103を配置し、展開するエアバッグ本体102によって開く開口蓋部104(図13も参照)をロールオーバ保護部材46に形成したものである。
【0051】
インフレータ(ガス発生装置)103は、反応(燃焼)ガスを発生させるもので、既存のインフレータであり、例えば、助手席用としてインストルメントパネルに配置したインフレータとほぼ同様である。
【0052】
ロールオーバ保護装置11Bを運転席41を対象に説明したが、助手席13にも同様(車体中心に対し対称)に可動機構45と第1の駆動力発生手段71を配置した。
【0053】
図12は、第2の実施の形態のフローチャートであり、ST××はステップ番号を示す。図4、図6、図9を併用して説明する。
ST21:車両12の衝突や横転を車両状態検出手段17で検出する。
ST22:横転情報Eは所定の第1の値A1を超えたか否かを起動判定手段18Bによって判断する。超えないときはST21に戻る。超えたときはST23に進む。
ST23:起動判定手段18Bは第1の起動信号K1を出力する。
ST24:ロールオーバ保護部材46を支持位置66まで作動させる。
ST25:起動判定手段18Bは所定の時間差Tだけ経過したか否かをタイマ手段43で判断する。経過したらST26に進む。
ST26:横転情報Eは所定の第2の値A2を超えたか否かを判断する。超えないときはST21に戻る。超えたときはST27に進む。
ST27:起動判定手段18Bは第2の起動信号K2を出力する。
ST28:緩衝手段15Bを作動させることで、緩衝部材(エアバッグ本体)102を展開する。
【0054】
ここでは、所定の第1の値A1は、図4に示すロール角θ1及びピッチ角α5とする。
所定の第2の値A2は、図4に示すロール角θ7及びピッチ角α9とする。
所定の時間差Tは、第1の起動信号K1の出力開始時点から第2の起動信号K2の出力開始時点までの間の時間とする。例えば、ロールオーバ保護部材46が支持位置66に達するまでの時間を設定する。
【0055】
なお、横転情報Eは、ロール角θとピッチ角αの2つとしたが、ロール角θのみでもよく、さらに追加して3つ以上でもよい。例えば、車速Vを設定してもよい。
【0056】
図13は、第2の実施の形態の作用図である。図6、図9、図10を併用して説明する。
車両12が横転を始めると、ロールオーバ保護部材46が飛び出し(矢印a2の方向)、支持位置66に達した時点で、エアバッグ本体102は膨らむ。従って、乗員Mの頭部Hをより確実に保護することができる。
【0057】
具体的には、車両12に何らかの理由で横転が起き始めると、車両状態検出手段17の横転情報E(例えば、θが10°を超え、αが50°を越え)に基づいて、起動判定手段18Bは横転の可能性ありと判断し、第1の起動信号K1で電動モータ81を作動させるので、図9に示すロック機構72はロックピン92,86を矢印a3のように回動しロックを解除する。引き続き、第1の駆動力発生手段71の圧縮ばね73によってロールオーバ保護部材46が収納位置65から支持位置66まで矢印a4のように上昇する。
【0058】
一方、タイマ手段43は、第1の起動信号K1によってカウントを開始し、時間差(設定時間)Tに達した時点で、車両状態検出手段17の横転情報E(例えば、θが70°以下か、αが90°以下)に基づいて起動判定手段18Bが横転ではないと判断したときには、ロールオーバ保護装置11Bはロールオーバ保護部材46のみを作動させて作動を終了する。
【0059】
経過時間のカウントが時間差(設定時間)Tに達した後、車両状態検出手段17の横転情報E(例えば、何れかがθ=80°、α=91°)に基づいて起動判定手段18Bが横転と判断すると、起動判定手段18Bは第2の起動信号K2によってインフレータ(ガス発生装置)103を作動させる。その結果、反応ガスをエアバッグ本体102に吹き込み、膨脹(広げる)させ、膨脹するエアバッグ本体102は開口蓋部104のティアラインを破断し、開口蓋部104を矢印a5のように開き、乗員Mの頭部Hの上方の空間へ矢印a6のように展開する。従って、乗員Mの頭部Hをより確実に保護することができる。
【0060】
このように、請求項2のロールオーバ保護装置(第2の実施の形態)11Bでは、横転情報Eが所定値であるθ7,α9を超えた場合には起動判定手段18Bは起動信号Kを出力して第1の駆動力発生手段71及び緩衝手段15Bの第2の駆動力発生手段(インフレータ)103を起動させるので、ロールオーバ保護部材46を上昇させて、緩衝手段15B(エアバッグ本体102)を膨脹(広げる)させることができる。従って、乗員Mの頭部Hをより確実に保護することができる。
【0061】
請求項4のロールオーバ保護装置11Bでは、第1の起動信号K1の出力開始時点と第2の起動信号K2の出力開始時点との間に、所定の時間差Tを設けたので、ロールオーバ保護部材46が収納位置65から支持位置66まで上昇(矢印a2の方向)した後に、緩衝手段15Bの緩衝部材(エアバッグ本体)102を膨脹(広げる)させることができる。
【0062】
また、請求項2のロールオーバ保護装置11Bでは、ロールオーバ保護部材46を可動式にし、かつ、可動するロールオーバ保護部材46に緩衝手段15B(エアバッグ本体102を含む。)を配置しても、ロールオーバ保護部材46の上昇を制御することができるとともに、可動するロールオーバ保護部材46に配置したエアバッグ本体102の展開を制御することができる。従って、エアバッグ本体を備えないロールオーバ保護部材に比べ、乗員Mの保護性能を向上させることができる。
【0063】
請求項3のロールオーバ保護装置11Bでは、ロールオーバ保護部材46及び緩衝部材(エアバッグ本体)102を個別に作動させるので、それぞれに対して独立の起動条件を設定することができ、例えば、ロールオーバ保護部材46を比較的横転の可能性が小さい状況で繰り返し作動させ、緩衝部材(エアバッグ本体)102を横転の可能性が極めて大きいときだけに展開させることができる。
【0064】
また、請求項3のロールオーバ保護装置11Bでは、ロールオーバ保護部材46及び緩衝部材(エアバッグ本体)102を個別に作動させるので、それぞれに対して独立の起動条件を設定することができ、例えば、車速Vの情報を緩衝部材(エアバッグ本体)102の作動の制御に追加すると、ロールオーバ保護部材46はロール角θが大きいと作動するが、緩衝部材(エアバッグ本体)102はロール角θが大きくても、車速Vが所定の車速以下のときには展開させないということができる。
【0065】
請求項6のロールオーバ保護装置11Bでは、第1の起動信号は、横転情報が所定の第1の値を超えたときに出力し、ロールオーバ保護部材を作動させ、第2の起動信号は、横転情報が第1の値より大きく設定した所定の第2の値を超えたときに出力し、緩衝部材を作動させるので、横転の可能性があっても横転に至らずに横転が回避された場合には、第2の起動信号K2は出力されず、不要な緩衝部材(エアバッグ本体)102の展開を防止することができる。
【0066】
図8に示すように、請求項2のロールオーバ保護装置11Bでは、緩衝手段15Bを一体的に取付けた車体支持手段14Bを車体22に組付けるので、車体22への組付けは容易になる。
【0067】
次に第3の実施の形態を説明する。
図14は、第3の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する図である。上記図1〜図13に示す実施の形態と同様の構成については、同一符号を付し説明を省略する。
図15は、図9に対応する第3の実施の形態図である
第3の実施の形態のロールオーバ保護装置11Cは、起動判定手段18Cを備え、起動判定手段18Cは、ロールオーバ保護部材46が作動したことを検出する作動検出手段107を備えたことを特徴とする。
【0068】
作動検出手段107は、ロールオーバ保護部材46が作動して、支持位置66に達したことを検出するもので、固定支柱56にブラケット108を介して、所定位置まで上昇した可動梁部材55に接触するように取付けた。
作動検出手段107としては、マイクロスイッチを用いる。なお、近接スイッチ(非接触)を採用することも可能である。
【0069】
ロールオーバ保護装置11Cでは、支持位置66までロールオーバ保護部材46が上昇すると、可動梁部材55は作動検出手段107を押すので、作動検出手段107は上昇限信号Uを出力する。上昇限信号Uに基づいて、起動判定手段18Cは緩衝手段作動制御部16を介して第2の駆動力発生手段(インフレータ)103を起動させるので、ロールオーバ保護部材46を確実に上昇させた後、緩衝手段15B(エアバッグ本体102)を膨脹(広げる)させることができる。従って、乗員Mの頭部Hをより確実に保護することができる。
【0070】
第3の実施の形態のロールオーバ保護装置11Cは、第2の実施の形態のロールオーバ保護装置11Bと同様の効果を発揮する。
つまり、乗員Mの頭部Hをより確実に保護することができる。また、車体22への組付けは容易になる。
【0071】
また、請求項5の第3の実施の形態のロールオーバ保護装置11Cでは、起動判定手段18Cは、ロールオーバ保護部材46が作動したことを検出する作動検出手段107を備え、ロールオーバ保護部材46が所定位置、例えば、支持位置66に達したときに、第2の起動信号K2Cを出力し、緩衝部材(エアバッグ本体)102を展開させるので、所定位置を支持位置66に設定すると、支持位置66までロールオーバ保護部材46を完全に上昇させてから、緩衝部材(エアバッグ本体)102を作動させることができる。
【0072】
尚、本発明のロールオーバ保護装置は、実施の形態では屋根の開閉が可能な自動車に適用したが、屋根のない自動車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明のロールオーバ保護装置は、コンバーチブルやロードスターに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)を説明する図
【図2】本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)の斜視図
【図3】本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)のフローチャート
【図4】本発明のロールオーバ保護装置の制御に用いる横転情報を説明する図
【図5】本発明のロールオーバ保護装置(第1の実施の形態)の作用図
【図6】第2の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する図
【図7】第2の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する平面図
【図8】第2の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する斜視図
【図9】図7の9−9線断面図
【図10】図9の10−10線断面図
【図11】図9の11−11線断面図
【図12】第2の実施の形態のフローチャート
【図13】第2の実施の形態の作用図
【図14】第3の実施の形態のロールオーバ保護装置を説明する図
【図15】図9に対応する第3の実施の形態図
【符号の説明】
【0075】
11,11B…ロールオーバ保護装置、12…車両、15,15B…緩衝手段、17…車両状態検出手段、18,18B…起動判定手段、21…展開位置、22…車体、24…ロールオーバ保護部材、31…駆動力発生手段(インフレータ)、32,102…緩衝部材(エアバッグ本体)、44…可動機構、65…収納位置、66…支持位置、71…第1の駆動力発生手段、103…第2の駆動力発生手段(インフレータ)、107…作動検出手段、θ7,α9…所定値、A1,θ1,α5…所定の第1の値、A2,θ7,α9…所定の第2の値、E…横転情報、K…起動信号、K1…第1の起動信号、K2…第2の起動信号、M…乗員、T…所定の時間差。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の屋根の少なくとも一部が開閉可能な車体に取付けて横転時に車体を支持するロールオーバ保護部材と、ロールオーバ保護部材に配置し、乗員に対して緩衝する緩衝手段と、を備えたロールオーバ保護装置において、
前記車両に取付けて車両の衝突や横転を検出する車両状態検出手段と、前記車両状態検出手段の横転情報に基づいて横転を判別する起動判定手段を備え、
前記横転情報が所定値を超えた場合には起動判定手段は起動信号を出力して緩衝手段の駆動力発生手段を起動させ、緩衝手段の緩衝部材を展開位置で展開させることを特徴とするロールオーバ保護装置。
【請求項2】
車両の屋根の少なくとも一部が開閉可能な車体に取付けて横転時に車体を支持するロールオーバ保護部材と、ロールオーバ保護部材に配置し、乗員に対して緩衝する緩衝手段と、を備えたロールオーバ保護装置において、
前記ロールオーバ保護部材を作動させる可動機構と、可動機構を介して収納位置から支持位置へ移動させる第1の駆動力発生手段と、車両に取付けて車両の衝突や横転を検出する車両状態検出手段と、前記車両状態検出手段の横転情報に基づいて横転を判別する起動判定手段を備え、
前記横転情報が所定値を超えた場合には起動判定手段は起動信号を出力して第1の駆動力発生手段及び緩衝手段の第2の駆動力発生手段を起動させることで、ロールオーバ保護部材を支持位置へ移動させ、緩衝手段の緩衝部材を展開位置で展開させることを特徴とするロールオーバ保護装置。
【請求項3】
前記起動信号は、第1の駆動力発生手段に対して出力する第1の起動信号と、第2の駆動力発生手段に対して出力する第2の起動信号とからなり、ロールオーバ保護部材及び緩衝部材を個別に作動させることを特徴とする請求項2記載のロールオーバ保護装置。
【請求項4】
前記第1の起動信号の出力開始時点と第2の起動信号の出力開始時点との間に、所定の時間差を設けたことを特徴とする請求項2又は請求項3記載のロールオーバ保護装置。
【請求項5】
前記起動判定手段は、ロールオーバ保護部材が作動したことを検出する作動検出手段を備え、
ロールオーバ保護部材が所定位置に達したときに、第2の起動信号を出力し、緩衝部材を展開させることを特徴とする請求項4記載のロールオーバ保護装置。
【請求項6】
前記第1の起動信号は、横転情報が所定の第1の値を超えたときに出力し、ロールオーバ保護部材を作動させ、
前記第2の起動信号は、横転情報が前記第1の値より大きく設定した所定の第2の値を超えたときに出力し、緩衝部材を作動させることを特徴とする請求項4記載のロールオーバ保護装置。
【請求項1】
車両の屋根の少なくとも一部が開閉可能な車体に取付けて横転時に車体を支持するロールオーバ保護部材と、ロールオーバ保護部材に配置し、乗員に対して緩衝する緩衝手段と、を備えたロールオーバ保護装置において、
前記車両に取付けて車両の衝突や横転を検出する車両状態検出手段と、前記車両状態検出手段の横転情報に基づいて横転を判別する起動判定手段を備え、
前記横転情報が所定値を超えた場合には起動判定手段は起動信号を出力して緩衝手段の駆動力発生手段を起動させ、緩衝手段の緩衝部材を展開位置で展開させることを特徴とするロールオーバ保護装置。
【請求項2】
車両の屋根の少なくとも一部が開閉可能な車体に取付けて横転時に車体を支持するロールオーバ保護部材と、ロールオーバ保護部材に配置し、乗員に対して緩衝する緩衝手段と、を備えたロールオーバ保護装置において、
前記ロールオーバ保護部材を作動させる可動機構と、可動機構を介して収納位置から支持位置へ移動させる第1の駆動力発生手段と、車両に取付けて車両の衝突や横転を検出する車両状態検出手段と、前記車両状態検出手段の横転情報に基づいて横転を判別する起動判定手段を備え、
前記横転情報が所定値を超えた場合には起動判定手段は起動信号を出力して第1の駆動力発生手段及び緩衝手段の第2の駆動力発生手段を起動させることで、ロールオーバ保護部材を支持位置へ移動させ、緩衝手段の緩衝部材を展開位置で展開させることを特徴とするロールオーバ保護装置。
【請求項3】
前記起動信号は、第1の駆動力発生手段に対して出力する第1の起動信号と、第2の駆動力発生手段に対して出力する第2の起動信号とからなり、ロールオーバ保護部材及び緩衝部材を個別に作動させることを特徴とする請求項2記載のロールオーバ保護装置。
【請求項4】
前記第1の起動信号の出力開始時点と第2の起動信号の出力開始時点との間に、所定の時間差を設けたことを特徴とする請求項2又は請求項3記載のロールオーバ保護装置。
【請求項5】
前記起動判定手段は、ロールオーバ保護部材が作動したことを検出する作動検出手段を備え、
ロールオーバ保護部材が所定位置に達したときに、第2の起動信号を出力し、緩衝部材を展開させることを特徴とする請求項4記載のロールオーバ保護装置。
【請求項6】
前記第1の起動信号は、横転情報が所定の第1の値を超えたときに出力し、ロールオーバ保護部材を作動させ、
前記第2の起動信号は、横転情報が前記第1の値より大きく設定した所定の第2の値を超えたときに出力し、緩衝部材を作動させることを特徴とする請求項4記載のロールオーバ保護装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−69769(P2007−69769A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259640(P2005−259640)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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