説明

ワイヤハーネス及び電線保護具

【課題】ワイヤハーネスが、並列配置された複数の電線の周囲を覆う扁平な筒状の電線保護具を備える場合、電線保護具の撓みによって複数の電線が重なって放熱性が低下するという問題を解決すること。
【解決手段】ワイヤハーネス1において、コルゲートチューブ10を構成する第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、並列に配置された複数のフラットケーブル9及びそれらを一括して覆う編組線8の両側から組み合わされ、フラットケーブル9の周囲を覆う扁平な筒状である。第一カバー部材11及び第二カバー部材12各々における複数のフラットケーブル9各々の間に対向する位置に、貫通孔17及び棒状突起部18が形成されている。棒状突起部18は、複数のフラットケーブル9を個別に仕切るとともに第一カバー部材11の貫通孔17に通され、先端部分が、溶融加工によって貫通孔17からの抜け止め部18Aを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電線の周囲を覆う電線保護具及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、複数の電線の周囲を覆うコルゲートチューブなどの筒状の電線保護具を備えることが多い。電線は、電線保護具で覆われることにより、振動又は可動部の動きに応じて周囲の部材との接触することがなくなり、耐久性が高まる。
【0003】
また、特許文献1には、並列に配置された複数の電線の周囲を覆う扁平な筒状のコルゲートチューブが示されている。特許文献1に示されるような扁平な筒状の電線保護具は、複数の電線を並列に配置された状態で保持するため、自動車の車体の床下のスペースなどのように、高さの制限が特に厳しい配線スペースへのワイヤハーネスの配線に好適である。
【0004】
また、ワイヤハーネスにおいて、複数の電線が並列に配置された状態で保持された場合、複数の電線が縦方向及び横方向に積み重なる状態で保持される場合に比べ、電線束全体における輪郭を形成する部分の表面積が大きくなり、電線束全体の放熱性が高まる。
【0005】
特に、電線がフラットケーブルである場合、複数のフラットケーブルが、各フラットケーブルの扁平面に沿う方向に並列に配置された状態で保持された場合、複数のフラットケーブルが積み重なる状態で保持される場合に比べ、表面積の増大によって放熱性が向上する効果がより顕著となる。即ち、扁平な筒状の電線保護具が採用され、複数の電線が並列に配置された状態で保持された場合、円筒状の電線保護具が採用される場合に比べ、電線束全体の放熱性が高まる。
【0006】
ハイブリッド自動車及び電気自動車のような電動車両においては、ワイヤハーネスは、高出力のモータに対して大きな電力を供給する目的で使用される場合がある。この場合、電線の発熱量が大きい。従って、電動車両のワイヤハーネスにおいては、電線束全体の放熱性が高いことが重要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−47033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、コルゲートチューブなどの電線保護具は、一般に、樹脂成形の部材から構成される。樹脂製の電線保護具は、扁平な筒状に形成された場合、扁平面を形成する部分が幅方向において撓みやすい。特に、扁平な筒状の電線保護具が、複数のフラットケーブルを並列に配置された状態で保持する場合、扁平面を形成する部分は、幅がより広くなってより撓みやすくなる。
【0009】
そして、扁平な筒状の電線保護具において、扁平面を形成する部分が幅方向において外側へ膨らむように撓むと、撓みによって形成された隙間へ電線が移動し、複数の電線が積み重なる状態となってしまう。特に、フラットケーブルは、狭い隙間へも移動可能であるため、重なる状態となりやすい。複数の電線が積み重なると、電線束全体の放熱性が低下する。
【0010】
以上に示したように、従来の扁平な筒状の電線保護具は、その撓みによって複数の電線が積み重なる状態となり、電線束全体の放熱性が低下するという問題点を有している。特に、電線がフラットケーブルである場合、積み重なることによる放熱性の低下の問題がより顕著となる。
【0011】
本発明は、ワイヤハーネスが、並列配置された複数の電線の周囲を覆う扁平な筒状の電線保護具を備える場合、電線保護具の撓みによって複数の電線が積み重なる状態となり、電線束全体の放熱性が低下するという問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るワイヤハーネスは、複数の電線と電線保護具とを備える。電線保護具は、並列に配置された複数の電線の両側から組み合わされた第一カバー部材及び第二カバー部材を含み、第一カバー部材及び第二カバー部材が電線の周囲を覆う扁平な筒状に形成されている。さらに、第一カバー部材における複数の電線各々の間に対向する位置に貫通孔が形成されている。さらに、第二カバー部材における複数の電線各々の間に対向する位置に突起部が形成されている。さらに、突起部は、先端部分よりも根元側の部分が、複数の電線を個別に仕切るとともに第一カバー部材の貫通孔に通され、先端部分が、溶融加工によって貫通孔の径よりも大きな幅に形成されて第一カバー部材を保持する。
【0013】
また、本発明に係るワイヤハーネスが、電線保護具と電線との間において複数の電線を一括して覆う編組線をさらに備えることが考えられる。この場合、突起部は、編組線の編み目の隙間に通されかつ第一カバー部材の貫通孔に通されて、複数の電線を個別に仕切る。
【0014】
また、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、複数の電線各々はフラットケーブルであることが考えられる。
【0015】
また、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、第一カバー部材における貫通孔の縁部に、第二カバー部材の突起部と電線との隙間を埋める隆起部が形成され、第二カバー部材における突起部の根元部分は、第一カバー部材の貫通孔に通される部分よりも太く形成されていることが考えられる。
【0016】
また、本発明は、本発明に係るワイヤハーネスに採用される電線保護具の発明として捉えることもできる。即ち、本発明に係る電線保護具は、並列に配置された複数の電線の両側から組み合わされることにより、電線の周囲を覆う扁平な筒状となる第一カバー部材及び第二カバー部材を含む。さらに、本発明に係る電線保護具において、第一カバー部材における複数の電線各々の間に対向する位置に貫通孔が形成されている。さらに、第二カバー部材における複数の電線各々の間に対向する位置に、第一カバー部材の貫通孔に通される突起部が形成されている。
【0017】
なお、本発明に係る電線保護具において、第一カバー部材及び第二カバー部材が、並列に配置された複数の電線の両側から組み合わされた後に、第一カバー部材の貫通孔に通された第二カバー部材の突起部の先端部分は、溶融加工される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るワイヤハーネスにおいては、電線保護具を構成する第二カバー部材に形成された突起部が、電線保護具の中で複数の電線を個別に仕切る。さらに、突起部は、溶融加工された先端部分が第一カバー部材の貫通孔からの抜け止め部として機能することにより、第一カバー部材及び第二カバー部材を扁平な筒状に組み合わされた状態で保持する。
【0019】
従って、扁平な筒状の電線保護具において、突起部は、扁平面を形成する部分が幅方向において撓むこと自体を防止するとともに、電線が横方向へ移動して相互に重なることを阻止する。従って、本発明に係るワイヤハーネスにおいては、電線保護具の撓みによって複数の電線が積み重なる状態となって電線束全体の放熱性が低下する、という問題が生じない。
【0020】
また、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、突起部は、複数の電線が相互に重なることを防ぐ機能に加え、第一カバー部材を第二カバー部材に保持するロック機能も兼ねる。しかも、第一カバー部材の内側から外側へ突き出た突起部の先端部分を溶融加工する工程を自動化することは容易である。そのため、本発明に係るワイヤハーネスにおいては、第一カバー部材及び第二カバー部材を筒状に組み合わされた状態に保持するためのテーピング作業などの煩雑な工程を省略又は簡略化することが可能となる。
【0021】
また、ワイヤハーネスが、電線保護具と電線との間において複数の電線を一括して覆う編組線を備える場合、電線と編組線との間の摩擦抵抗が小さいため、電線は、編組線内で横滑りしやすい。従って、本発明に係るワイヤハーネスは、複数の電線を一括して覆う編組線が存在する場合に、電線が移動することを防止する効果がより顕著となる。さらに、突起部が編組線の編み目の隙間に通されることにより、電線保護具内での編組線の位置ずれが防止される。
【0022】
また、前述したように、電線がフラットケーブルである場合、積み重なることによる放熱性の低下の問題がより顕著となる。そのため、本発明は、並列に保持された複数のフラットケーブルを備えるワイヤハーネスに適用されれば、より効果的である。
【0023】
ところで、本発明に係るワイヤハーネスにおいて、電線保護具と電線との間の隙間が大きい場合、隙間の空気層が、電線束全体の放熱性を阻害する断熱層となる。また、編組線と電線との間の隙間が大きい場合、シールド効果が低下する。
【0024】
そこで、第一カバー部材における貫通孔の縁部に形成された隆起部、及び太く形成された突起部の根元部分が、突起部と電線との隙間を埋めることにより、電線保護具内における熱伝導性の悪い空気層が小さくなり、電線束全体の放熱性がより高まる。また、編組線が存在する場合、編組線が、隆起部及び突起部の根元部分によって電線に押し付けられ、シールド効果が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るワイヤハーネス1の主要部の分解斜視図である。
【図2】ワイヤハーネス1の主要部の分解横断面図である。
【図3】ワイヤハーネス1の主要部の横断面図である。
【図4】ワイヤハーネス1の主要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0027】
以下、図1から図4を参照しつつ、本発明の実施形態に係るワイヤハーネス1について説明する。ワイヤハーネス1は、例えば、電動車両のバッテリ又はインバータ回路などの電力供給源とモータなどの電装機器との間を接続する。図1から図4に示されるように、ワイヤハーネス1は、複数のフラットケーブル9と、編組線8と、コルゲートチューブ10とを備える。
【0028】
<フラットケーブル>
フラットケーブル9は、並列に配置された複数の導線91が絶縁被覆によって覆われた扁平な形状の電線である。フラットケーブル9は、導線91の総断面積が同等の丸ケーブルと比較して、表面積が大きく放熱性に優れている。また、フラットケーブル9は、丸ケーブルと比較して、高さの制限が厳しい配線スペースへの敷設に適している。
【0029】
複数のフラットケーブル9は、各フラットケーブル9の扁平面に沿う方向において並列に配置された状態で、その周囲がコルゲートチューブ10により覆われている。
【0030】
<編組線>
編組線8は、並列に配置された複数のフラットケーブル9を一括して覆う管状のシールド部材である。編組線8は、銅線などの金属細線が寄り合わされた撚り線が編まれた構造を有する導体であり、その編み構造により伸縮性を有している。
【0031】
複数のフラットケーブル9は、その周囲を覆う編組線8の外側から、コルゲートチューブ10によって覆われる。即ち、編組線8は、コルゲートチューブ10とフラットケーブル9との間において複数のフラットケーブル9を一括して覆う。
【0032】
<コルゲートチューブ>
コルゲートチューブ10は、並列に配置されて編組線8で覆われた複数のフラットケーブル9の一部の周囲を覆う扁平な筒状の電線保護具である。コルゲートチューブ10は、その長手方向に沿って表面に出っ張り部13とへこみ部14とが交互に連続して形成された蛇腹構造を有している。この蛇腹構造により、コルゲートチューブ10は、その長手方向において湾曲しやすい柔軟性を有している。
【0033】
ワイヤハーネス1の組み立て工程において、フラットケーブル9を編組線8とともに筒状のコルゲートチューブ10内に通すことは難しい。そこで、コルゲートチューブ10は、編組線8で覆われた複数のフラットケーブル9の両側から組み合わされる第一カバー部材11及び第二カバー部材12からなる。第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、それぞれ編組線8で覆われた複数のフラットケーブル9が嵌め入れられる浅い溝が形成されている。そして、第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、それらの溝の部分に、編組線8で覆われた複数のフラットケーブル9が嵌り込む状態で組み合わされることにより、編組線8の輪郭に沿う扁平な筒状となり、複数のフラットケーブル9を並列に配置された状態で覆いつつ保持する。
【0034】
コルゲートチューブ10を構成する第一カバー部材11及び第二カバー部材12各々は、例えば、ポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)又はABS樹脂などの非導電性の樹脂からなる一体成形部材である。
【0035】
なお、本実施形態において、各図に示されるコルゲートチューブ10内に配置されるフラットケーブル9は3本であるが、フラットケーブル9の数が2本又は4本以上である場合も考えられる。
【0036】
また、第一カバー部材11の扁平面を形成する部分における、複数のフラットケーブル9各々の間に対向する位置には、その内側から外側へ貫通する貫通孔17が形成されている。従って、貫通孔17は、第一カバー部材11の長手方向における予め定められた位置ごとに、フラットケーブル9の数に対して1つ少ない数だけ、第一カバー部材11の幅方向、即ち、フラットケーブル9の配列方向において並んで形成されている。フラットケーブル9の数が3本である場合、第一カバー部材11におけるその長手方向の予め定められた位置ごとに、2つの貫通孔17が、第一カバー部材11の幅方向において並んで形成されている。また、本実施形態においては、貫通孔17は、第一カバー部材11における、コルゲートチューブ10のへこみ部14となる部分に形成されている。
【0037】
なお、へこみ部14は、コルゲートチューブ10の外側の輪郭においてへこみを形成する部分であるが、コルゲートチューブ10の内側の輪郭においては、編組線8及びフラットケーブル9に近接する出っ張りを形成する部分である。
【0038】
一方、第二カバー部材12の扁平面を形成する部分の内側の面における、複数のフラットケーブル9各々の間に対向する位置には、フラットケーブル9の間に向かって突出する棒状突起部18が形成されている。各棒状突起部18は、第一カバー部材11及び第二カバー部材12が組み合わされた状態において、第一カバー部材11の各貫通孔17に対向する位置に形成されている。
【0039】
即ち、第一カバー部材11の貫通孔17及び第二カバー部材12の棒状突起部18は、コルゲートチューブ10の扁平面に直交する方向から見て同じ位置に形成されている。また、本実施形態においては、棒状突起部18は、コルゲートチューブ10のへこみ部14となる部分の内側の面、即ち、コルゲートチューブ10の内側の輪郭において出っ張りを形成する部分に形成されている。
【0040】
図2及び図3は、ワイヤハーネス1における、コルゲートチューブ10の棒状突起部18が形成された部分での横断面を示す図であり、図3は、コルゲートチューブ10における第一カバー部材11及び第二カバー部材12が組み合わされる前の分解横断面図である。また、図4は、ワイヤハーネス1における、コルゲートチューブ10の棒状突起部18が形成された部分での縦断面を示す図である。
【0041】
図2、図3及び図4に示されるように、第一カバー部材11及び第二カバー部材12がフラットケーブル9及び編組線8の両側から組み合わされることにより、第二カバー部材12の棒状突起部18は、編組線8の編み目の隙間に通され、かつ、第一カバー部材11の貫通孔17に通される。即ち、棒状突起部18は、編組線8、複数のフラットケーブル9各々の間及び第一カバー部材11を貫通する。これにより、棒状突起部18は、コルゲートチューブ10内において複数のフラットケーブル9を個別に仕切る。
【0042】
また、棒状突起部18は、フラットケーブル9から受ける横方向の圧力に対し、根元側の固定された部分と先端側の貫通孔17に通された部分との両側で支えられ、撓みが軽減される。
【0043】
また、第一カバー部材11における貫通孔17の縁部には、第二カバー部材12の棒状突起部18とフラットケーブル9との隙間を埋める隆起部171が形成されている。さらに、第二カバー部材12における棒状突起部18の根元部分は、第一カバー部材11の貫通孔17に通される部分よりも太く形成されている。以下、その根元部分のことを大径部181と称する。この大径部181は、棒状突起部18とフラットケーブル9との隙間を狭める。
【0044】
また、隆起部171は、その断面の大きさが編組線8の編み目の大きさよりも大きく形成されている。同様に、大径部181は、その断面の大きさが編組線8の編み目の大きさよりも大きく形成されている。そのため、隆起部171及び大径部181は、図2及び図3に示されるように、編組線8をフラットケーブル9側へ押し付け、編組線8とフラットケーブル9との隙間を狭める。
【0045】
また、貫通孔17に通された棒状突起部18の先端部は溶融加工され、これにより、棒状突起部18の先端部は、溶融して貫通孔17の径よりも幅の広い抜け止め部18Aに変形して固まる。その結果、第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、組み合わされた状態で保持される。棒状突起部18の先端部は、例えば、ヒータによる加熱及びその後の冷却によって溶融加工が施される。
【0046】
また、第一カバー部材11における幅方向の両側の縁部には、複数の箇所において第一連結部15が張り出して形成されている。同様に、第二カバー部材12における幅方向の両側の縁部には、複数の箇所において第二連結部16が張り出して形成されている。本実施形態では、第一連結部15及び第二連結部16が、コルゲートチューブ10における出っ張り部13を形成する部分に設けられている。
【0047】
第一連結部15及び第二連結部16は、フラットケーブル9及び編組線8の両側から組み合わされた第一カバー部材11及び第二カバー部材12を、組み合わされた状態で保持する部分である。
【0048】
より具体的には、第一連結部15には、貫通孔である連結孔151が形成されている。一方、第二連結部16には、突出した連結ピン161が形成されている。
【0049】
図2及び図3に示されるように、コルゲートチューブ10を構成する第一カバー部材11及び第二カバー部材12が、複数のフラットケーブル9及び編組線8を挟み込む状態で組み合わされることにより、第二連結部16の連結ピン161は、第一連結部15の連結孔151に挿入される。そして、連結孔151に通された連結ピン161の先端部に溶融加工が施されることにより、連結ピン161の先端部は、連結孔151の径よりも幅の広い抜け止め部161Aに変形して固まる。その結果、第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、組み合わされた状態でより強固に保持される。
【0050】
貫通孔17及び棒状突起部18のペアと、第一連結部15及び第二連結部16のペアとは、例えば、図1に示されるように、コルゲートチューブ10の長手方向における異なる位置に設けられる。これにより、第一カバー部材11及び第二カバー部材12は、その長手方向において分散した複数の位置において、貫通孔17及び棒状突起部18のペアと、第一連結部15及び第二連結部16のペアとによって筒状に保持される。
【0051】
<効果>
ワイヤハーネス1は、編組線8を備えるため、フラットケーブル9と編組線8との間の摩擦抵抗が小さく、フラットケーブル9は、編組線8内で横滑りしやすい。そのため、扁平な筒状のコルゲートチューブ10において、扁平面を形成する部分が幅方向において撓んだ場合に、フラットケーブル9が、コルゲートチューブ10の撓みによって形成された隙間へ移動しやすい。
【0052】
しかしながら、ワイヤハーネス1においては、コルゲートチューブ10を構成する第二カバー部材12に形成された棒状突起部18が、第一カバー部材11の貫通孔17に通されてコルゲートチューブ10の中で複数のフラットケーブル9を個別に仕切る。さらに、棒状突起部18は、溶融加工された先端部分が第一カバー部材11の貫通孔17からの抜け止め部18Aとして機能することにより、第一カバー部材11及び第二カバー部材12を扁平な筒状に組み合わされた状態で保持する。
【0053】
従って、扁平な筒状のコルゲートチューブ10において、棒状突起部18は、扁平面を形成する部分が幅方向において撓むこと自体を防止するとともに、フラットケーブル9が横方向へ移動して相互に重なることを阻止する。従って、ワイヤハーネス1においては、コルゲートチューブ10の撓みによって複数のフラットケーブル9が積み重なる状態となって放熱性が低下する、という問題が生じない。
【0054】
また、ワイヤハーネス1において、棒状突起部18は、複数のフラットケーブル9が相互に重なることを防ぐ機能に加え、第一カバー部材11を第二カバー部材12に保持するロック機能も兼ねる。しかも、第一カバー部材11の内側から外側へ突き出た棒状突起部18の先端部分を溶融加工する工程を自動化することは容易である。
【0055】
例えば、ワイヤハーネス1をベルトコンベアによって搬送しつつ、棒状突起部18の先端部分及び連結ピン161の先端部分の各々に、昇降機に支持されたヒータを近づけることにより、棒状突起部18及び連結ピン161各々の先端部分に溶融加工を施すことが考えられる。
【0056】
そのため、ワイヤハーネス1においては、第一カバー部材11及び第二カバー部材12を筒状に組み合わされた状態に保持するためのテーピング作業などの煩雑な工程を省略又は簡略化することが可能となる。
【0057】
また、棒状突起部18が編組線8の編み目の隙間に通されることにより、コルゲートチューブ10内での編組線8の位置ずれが防止される。
【0058】
また、貫通孔17の縁部に形成された隆起部171、及び太く形成された大径部181が、棒状突起部18とフラットケーブル9との隙間を埋めることにより、コルゲートチューブ10内における熱伝導性の悪い空気層が小さくなり、コルゲートチューブ10の束全体の放熱性がより高まる。また、編組線8が、隆起部171及び大径部181によってフラットケーブル9に押し付けられ、シールド効果が高まる。
【0059】
<その他>
以上に示されたワイヤハーネス1は、電線としてフラットケーブル9を備えるが、ワイヤハーネス1が、フラットケーブル9の代わりに丸ケーブルを備え、さらに、並列に配置された複数の丸ケーブルを覆って保持する扁平な筒状のコルゲートチューブ10を備えることも考えられる。
【0060】
また、以上に示されたワイヤハーネス1は、電線保護具としてコルゲートチューブ10を備えるが、ワイヤハーネス1が備える電線保護具は、表面に出っ張り部13及びへこみ部14が形成されていない扁平な筒状の部材であることも考えられる。
【0061】
また、棒状突起部18が形成されたコルゲートチューブ10は、複数の電線を一括して覆う編組線8を備えるワイヤハーネスへの適用が好適であるが、編組線8を備えていないワイヤハーネスへ適用されることも考えられる。例えば、以上に示されたワイヤハーネス1が、編組線8を除く残りの構成要素のみを備えることも考えられる。
【0062】
また、前述のワイヤハーネス1において、第一連結部15及び第二連結部16の部分に、第一カバー部材11及び第二カバー部材12を筒状に保持する他のロック機構が設けられることも考えられる。また、第一連結部15及び第二連結部16は、それら各々の縁部が溶着などによって接着されることも考えられる。また、第一連結部15及び第二連結部16が設けられることなく、第一カバー部材11及び第二カバー部材12が、棒状突起部18の抜け止め部18A及び貫通孔17の係合のみによって扁平な筒状に保持されることも考えられる。
【0063】
また、ワイヤハーネス1の一部としてフラットケーブル9に組み付けられる前のコルゲートチューブ10、即ち、棒状突起部18及び連結ピン161の先端部分が溶融加工される前の第一カバー部材11及び第二カバー部材12からなる電線保護具が、本発明の実施品として流通することも考えられる。
【符号の説明】
【0064】
1 ワイヤハーネス
8 編組線
9 フラットケーブル
10 コルゲートチューブ
11 第一カバー部材
12 第二カバー部材
13 出っ張り部
14 へこみ部
15 第一連結部
16 第二連結部
17 貫通孔
18 棒状突起部
18A 棒状突起部の抜け止め部
181 棒状突起部の大径部
91 導線
151 連結孔
161 連結ピン
161A 連結ピンの抜け止め部
171 隆起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線と、
並列に配置された複数の前記電線の両側から組み合わされた第一カバー部材及び第二カバー部材を含み、前記第一カバー部材及び前記第二カバー部材が前記電線の周囲を覆う扁平な筒状に形成された電線保護具と、を備えたワイヤハーネスであって、
前記第一カバー部材における複数の前記電線各々の間に対向する位置に貫通孔が形成され、
前記第二カバー部材における複数の前記電線各々の間に対向する位置で突出する突起部が形成され、
前記突起部は、先端部分よりも根元側の部分が、複数の前記電線を個別に仕切るとともに前記第一カバー部材の前記貫通孔に通され、先端部分が、溶融加工によって前記貫通孔の径よりも大きな幅に形成されて前記第一カバー部材を保持することを特徴とするワイヤハーネス。
【請求項2】
前記電線保護具と前記電線との間において複数の前記電線を一括して覆う編組線をさらに備え、
前記突起部は、前記編組線の編み目の隙間及び前記第一カバー部材の前記貫通孔に通されて、複数の前記電線を個別に仕切る、請求項1に記載のワイヤハーネス。
【請求項3】
複数の前記電線各々はフラットケーブルである、請求項1又は請求項2に記載のワイヤハーネス。
【請求項4】
前記第一カバー部材における前記貫通孔の縁部に、前記第二カバー部材の前記突起部と前記電線との隙間を埋める隆起部が形成され、
前記第二カバー部材における前記突起部の根元部分は、前記第一カバー部材の前記貫通孔に通される部分よりも太く形成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載のワイヤハーネス。
【請求項5】
並列に配置された複数の電線の両側から組み合わされることにより、前記電線の周囲を覆う扁平な筒状となる第一カバー部材及び第二カバー部材を含む電線保護具であって、
前記第一カバー部材における複数の前記電線各々の間に対向する位置に貫通孔が形成され、
前記第二カバー部材における複数の前記電線各々の間に対向する位置に、前記第一カバー部材の前記貫通孔に通される突起部が形成されていることを特徴とする電線保護具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−85440(P2012−85440A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229595(P2010−229595)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】