説明

ワイヤハーネス平型化用バンド

【課題】プロテクタ等の特別の部材を用いることなくワイヤハーネスの所望位置を平型化して配索を容易にするとともに、ワイヤハーネスのずれを抑制できるように構成したワイヤハーネス平型化用バンドを提供すること。
【解決手段】ワイヤハーネス平型化用バンド1は、ワイヤハーネス固定部4と、ワイヤハーネスの線状体の外周を当該線状体の長手方向と交差する方向から締め付けて線状体をワイヤハーネス固定部の表面に固定する結束部材7と、ワイヤハーネス固定部4に一体に設けられた、当該ワイヤハーネス固定部4を取り付け相手部材に取り付けるための係止具5と、を備えている。線状体のワイヤハーネス固定部4の表面上の部分が、平型化されるように、ワイヤハーネス固定部4の表面との間に結束部材7を介在することなく結束部材7による締め付けによってワイヤハーネス固定部4に押し付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスの電線束を含む線状体の一部を平型化するとともに、例えば車輌のパネル等に係止するように構成したワイヤハーネス平型化用バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
以下に、下記特許文献1により開示されたワイヤハーネスの配索構造について説明する。
車輌内に配索されるワイヤハーネスW/Hは、図16に示すようにグロメットの筒部30によって被覆された部分Saと、図17に示すように蛇腹部31によって被覆された部分Sbとを備えている。
【0003】
そして、図17に示すようなプロテクタ35を用いて、筒部30によって被覆された部分Saを平型形状に変形させて、車輌パネル等に固定していた。このように、ワイヤハーネスW/Hを平型化することで、狭いスペースにもワイヤハーネスW/Hを配索することができる。
【0004】
プロテクタ35は、本体部36と蓋部37とを薄肉ヒンジ38を介して連結し、蓋部37の一端に設けた係止爪(図示せず)を本体部36の下側部36aの端部に係止する構成になっている。また、下側部21aの下端には、プロテクタ35を車輌のパネル等に固定するためのクリップ39が設けられている。
【0005】
ワイヤハーネスW/Hを平型化する場合は、ヒンジ38を中心にして蓋部37を図17で時計方向に回動させ、本体部36の一側面を開口させる。次に、ワイヤハーネスW/Hを本体部36内に挿入し、蓋部37を閉じて図17に示すようにワイヤハーネスW/Hを平型化するとともに、プロテクタ35と一体化する。
【特許文献1】特開2004−236447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前記ワイヤハーネスの配索構造は、ワイヤハーネスW/Hを平型化するためにプロテクタ35が必要である。このため、ワイヤハーネスW/Hを平型化したい位置において、プロテクタ35のためのスペースが必要になる。従って、プロテクタ35を収容するスペースが無い場合は、ワイヤハーネスW/Hを平型化して配索することが困難であった。
【0007】
また、ワイヤハーネスW/Hの長さ、太さ等の形状の違いに合わせて多種のプロテクタが必要になるので、プロテクタ製造のために多種の金型を準備しなければならないという問題がある。
【0008】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、プロテクタ等の特別の部材を用いることなくワイヤハーネスの所望位置を平型化して配索を容易にするとともに、ワイヤハーネスのずれを抑制できるように構成したワイヤハーネス平型化用バンドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前記目的は、下記構成により達成される。
(1) ワイヤハーネスの電線束を含む線状体を部分的に平型化するためのワイヤハーネス平型化用バンドであって、
ワイヤハーネス固定部と、
前記線状体の外周を当該線状体の長手方向と交差する方向から締め付けて該線状体を前記ワイヤハーネス固定部の表面に固定する結束部材と、
を備え、
前記線状体の前記ワイヤハーネス固定部の表面上の部分が、平型化されるように、前記ワイヤハーネス固定部の表面との間に前記結束部材を介在することなく当該結束部材による締め付けによって前記ワイヤハーネス固定部に押し付けられていることを特徴とするワイヤハーネス平型化用バンド。
【0010】
(2) 前記ワイヤハーネス固定部は、前記結束部材により前記線状体を押し付けられる前記表面が形成された板部を有し、当該板部の表面形状が、平面状であることを特徴とする前記(1)に記載のワイヤハーネス平型化用バンド。
【0011】
(3) 前記ワイヤハーネス固定部の前記表面は、前記線状体の平型化された部分が該線状体の長手方向と交差する方向に傾斜するように形成された傾斜面を有していることを特徴とする前記(1)に記載のワイヤハーネス平型化用バンド。
【0012】
(4) 前記ワイヤハーネス固定部の前記表面には、前記線状体の平型化された部分を該線状体の長手方向と交差する方向に弧状に反らせる山型形状部が設けられていることを特徴とする前記(1)に記載のワイヤハーネス平型化用バンド。
【0013】
(5) 前記ワイヤハーネス固定部の前記表面には、前記線状体の平型化された部分を該線状体の長手方向と交差する方向に弧状に反らせる複数の山型形状部が前記長手方向に所定間隔を置いて設けられていることを特徴とする前記(1)に記載のワイヤハーネス平型化用バンド。
【0014】
(6) 前記ワイヤハーネス固定部の前記表面には、複数の係止突起が設けられていることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に記載のワイヤハーネス平型化用バンド。
【0015】
(7) 前記結束部材が、前記ワイヤハーネス固定部の前記線状体の長手方向と交差する方向に延長する貫通孔に挿通された結束バンドであることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のワイヤハーネス平型化用バンド。
【0016】
(8)
前記ワイヤハーネス固定部に一体に設けられた、当該ワイヤハーネス固定部を前記取り付け相手部材に取り付けるための係止具を、更に備えたことを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載のワイヤハーネス平型化用バンド。
【0017】
前記(1)のワイヤハーネス平型化用バンドによれば、ワイヤハーネス固定部の表面との間に結束部材を介在することなく結束部材による締め付けによってワイヤハーネス固定部にワイヤハーネスの線状体を締め付けて固定することにより、ワイヤハーネスの所望位置を固定部の表面形状に沿わせて平型化するとともに、ワイヤハーネスのずれを抑制することができる。
【0018】
なお、本発明における平型化とは、平坦な状態であることはもちろん、湾曲した状態であることをも含む。つまり、本発明における平型化とは、断面円形状のワイヤハーネスが押しつぶされてその断面形状が平たくなった状態を意味するものであり、平たくなった断面形状が平坦であってもよく、湾曲していてもよい。
【0019】
前記(2)、(3)、(4)の構成によれば、ワイヤハーネスの線状体をワイヤハーネス固定部の表面に沿わせて固定することにより平面状、傾斜状、山型状に平型化できる上に結束部材により固定されるので配索方向及び該配索方向と直交する方向の何れについても、ずれを抑制できる。特に、傾斜状、山型状に形成することにより結束時の締め付け効果を上げることができる。
【0020】
前記(5)の構成によれば、ワイヤハーネス固定部の表面に配索方向に所定間隔を介して複数の山型形状部が形成されているので、ワイヤハーネスの線状体が山型に沿って平型化されるとともに、複数の山型形状部の間において結束部材により締め付けることにより、この締め付け部分でワイヤハーネスが撓み変形し、ワイヤハーネスのずれ抑制が向上する。
【0021】
前記(6)の構成によれば、ワイヤハーネス固定部の表面に突起を設けられているので、ワイヤハーネス固定部にワイヤハーネスの線状体を固定する際に前記突起がワイヤハーネスに食い込んでワイヤハーネスを係止し、ワイヤハーネスのずれを確実に防止できる。
【0022】
前記(7)の構成によれば、結束部材として既存の結束バンドを用いることができるので、新たに専用の結束部材を作成する必要がない。
【0023】
前記(8)の構成によれば、ワイヤハーネスの線状体を固定したワイヤハーネス固定部を、係止具により取り付け相手部材に取り付けることにより、ワイヤハーネスを平型状態で容易に配索することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上に説明したように、本発明によれば、ワイヤハーネス固定部に結束部材を用いてワイヤハーネスの線状体を締め付け固定することにより、ワイヤハーネスの線状体をワイヤハーネス固定部の表面に沿わせるようにして平型化することができる。しかも、ワイヤハーネスの線状体はワイヤハーネス固定部に締め付けられて固定されるのであるから、ワイヤハーネスを曲げて配索する場合、或いは配索時に引いたり押したりすることがあってもずれにくくなる。
【0025】
また、プロテクタ等が不要であるから、狭小なスペースであってもプロテクタを用いずにワイヤハーネスを平型化して配索することができ、ワイヤハーネスの配索性が向上する。
【0026】
更に、プロテクタ製造のための金型等も不要になり、これらが相俟って低コスト化を図ることができるとともに、配索作業の効率化、ワイヤハーネスを使用する車輌、電子機器の設計自由度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
第1実施形態
図1は本発明の第1実施形態であるワイヤハーネス平型化用バンドの構成を示す斜視図、図2はワイヤハーネスの平型化を示す斜視図、図3はワイヤハーネスの平型化とクランプへの固定状態を示す断面図である。
【0028】
図1〜図3に示すように、ワイヤハーネス平型化用バンド(以下において、バンドと略称する)1には、長方形の板状に形成された基板部2に、ワイヤハーネス3の線状体(電線等)9を固定するための板部を有するワイヤハーネス固定部4と、車輌のパネル(以下において、パネルと略称する)等に基板部2を係止するための係止具5とを一体に設けたものである。なお、バンド1は係止具5を省略した構成であってもよい。
【0029】
基板部5の略中央部には、長手方向に貫通孔6が形成され、この貫通孔6には結束バンド7が挿通される。結束バンド7は、係止部7aとバンド部7bとを備え、係止部7aには挿入孔8aが設けられ、その内部には図示しない係止爪が設けられている。
【0030】
一方、バンド部7bには複数の係止孔8bが設けられ、バンド部7bを挿入口8a内に挿入することにより、図示しない係止爪が係止孔8bを係止して抜け出し不可になるように構成されている。
【0031】
ワイヤハーネス3は、複数の線状体9を図2の右端に示すように横断面略円形に束ねたものであり、その表面は変形可能な保護部材9aにより被覆されている。
【0032】
係止具5は、笠状に開いたフランジ部12と、その中央部に突出して設けられた軸部13と、弾性的に変形可能に設けられた係止部14とを備えている。
【0033】
一方、図3に想像線で示したように、パネル11には挿着孔11aが形成されている。そして、パネル11に前記バンド1を固定する場合は、挿着孔11aに係止部14の下端部を差込み、そのまま押し込み続ける。前記押し込みを継続することにより、係止部14が縮径し、係止部14が挿着孔11aを貫通した時点で元の形状に弾性的に復帰する。この結果、フランジ部12と係止部14とでパネル11を挟み付けるようになり、バンド1全体がパネル11に固定される。
【0034】
次に、ワイヤハーネス3の平型化及び車輌等のパネル11へのクランプ作用を説明する。
まず、貫通孔6に結束バンド7を挿通し、係止部7a及びバンド部7bをワイヤハーネス固定部4の両側に延在させた状態にする。
【0035】
次いで、ワイヤハーネス3の束状の線状体9をワイヤハーネス固定部4上に載置するのであるが、予め両手指でワイヤハーネス3の線状体9を押し潰して横断面楕円形に変形させながら載置することが好ましい。この作業に続いて、ワイヤハーネス3上にバンド部7bを掛け回し、バンド部7bの先端部を挿入口8aに挿通してからこの先端部を掴んで強く引き、結束バンド7でワイヤハーネス3の線状体9を締め付けるようにする。
【0036】
この結果、ワイヤハーネス3の線状体9全体がワイヤハーネス固定部4に強く押し付けられる。ワイヤハーネス固定部4の表面は平面状であるから、ワイヤハーネス3の線状体9はその表面形状に沿って幅方向に広がり、図2及び図3に示すように平型化される。
【0037】
ワイヤハーネス3の線状体9を平型化した位置では、係止部7a内に設けられた係止爪が複数の係止孔8bのうちの1つを係止している。この時点でバンド部7bを引いていた力を解除しても、結束バンド7が緩むことはなく、ワイヤハーネス3の平型化とバンド1への固定が同時に行われる。
【0038】
以上のように、ワイヤハーネス固定部4にワイヤハーネス3の線状体9を固定した後、前記のように係止部14の下端をパネル11に形成した挿着孔11aに差込み、そのまま押し込んでバンド1をパネル11に固定する。
【0039】
即ち、本実施形態では、ワイヤハーネス3の線状体9を結束バンド7を用いてワイヤハーネス固定部4に固定することにより、ワイヤハーネス3の線状体9がワイヤハーネス固定部4の表面に沿って広がり、平型化されるとともにバンド1と一体化される。次に、係止部14をパネル11の挿着孔11aに押し込むだけで、平型化されたワイヤハーネス3の線状体9がバンド1と一体にパネル11に固定されることになる。
【0040】
前記構成によれば、ワイヤハーネス3の線状体9は締め付けによりバンド1に固定されているので、ワイヤハーネス3の配索方向、言い換えれば長手方向へずれにくくなる。
【0041】
また、大きなスペースを必要とするプロテクタが不要であり、狭いスペースにワイヤハーネス3を配索することができる。更に、プロテクタ成形のための金型も不要になる等の種々の効果を得ることができる。
【0042】
第2実施形態
図4はワイヤハーネス平型化用バンド1の構成を示す斜視図、図5はワイヤハーネスの平型化を示す断面図である。
【0043】
なお、本実施形態と前記第1実施形態との主な相違点は、固定部4の表面形状が異なっていることにあり、他の構成は前記同様であってよい。従って、前記同様の構成については同一の符号を付して説明を省略あるいは簡略化する。
【0044】
本第2実施形態におけるバンド1にあっては、ワイヤハーネス固定部4の上面中央部を厚み方向に隆起させて山型形状部4aに形成するとともに、山型形状部4aの両側に浅い凹部4bを形成した。すなわち、ワイヤハーネス固定部4の表面には、線状体(図示せず)の平型化された部分を線状体の長手方向と交差する方向に弧状に反らせる山型形状部4aが設けられている。ワイヤハーネス固定部4にワイヤハーネス3の線状体を固定する場合は、前記第1実施形態と同様に、山型形状部4a上にワイヤハーネス3の線状体を載置し、貫通孔6を挿通した結束バンド7を掛け回して締め付ける。
【0045】
この際、山型形状部4aの頂部近傍に介在するワイヤハーネス3の線状体について、特に強い引締力が作用し、図5に示すようにワイヤハーネス3の線状体が山型形状部4aの斜面全体に沿うように広がり、ワイヤハーネス3の線状体が平型化される。
【0046】
ワイヤハーネス3の線状体を固定したバンド1をパネル11に固定する場合、前記同様に係止部14を挿着孔11aに押し込み、そのまま押し込み続ける。そして、係止部14が挿着孔11aを抜けると自身の弾性により開き、バンド1全体が固定される。
【0047】
本第2実施形態においても、プロテクタ等を用いることなく、ワイヤハーネス3の平型化、ワイヤハーネス3の配索方向へのずれ抑制を行うことができ、狭いスペースへのワイヤハーネス3の配索を行うこともできる。
【0048】
第3実施形態
図6はワイヤハーネス平型化用バンド1の第3実施形態を示す斜視図、図7はワイヤハーネスの平型化を示す断面図、図8はワイヤハーネスの撓み変形を示す断面図である。
【0049】
本第3実施形態におけるバンド1にあっては、ワイヤハーネス固定部4の短手方向の両端に山型形状部16a,16bが形成されている。すなわち、ワイヤハーネス固定部4の表面には、線状体(図示せず)の平型化された部分を線状体の長手方向と交差する方向に弧状に反らせる複数の山型形状部16a,16bがワイヤハーネス3の長手方向に所定間隔を置いて設けられている。
【0050】
ワイヤハーネス固定部4にワイヤハーネス3の線状体を固定する場合は、前記第1実施形態と同様に二つの山型形状部16a,16b上にワイヤハーネス3の線状体を載置し、前記同様に結束バンド7を掛け回して締め付ける。
【0051】
この結果、ワイヤハーネス3の線状体は、二つの山型形状部16a,16b上では、図7に想像線で示すように二つの山型形状部16a,16bの表面形状に沿って幅方向に拡幅して平型化される。
【0052】
一方、二つの山型形状部16a,16b間は谷間になっていて、ワイヤハーネス3の線状体は、この谷間部分で結束バンド7により締め付けられる。このため、谷間部分におけるワイヤハーネス3の線状体の下面は、図7に実線で示すように二つの山型形状部16a,16bの上面位置より低くなる。
【0053】
従って、ワイヤハーネス3の線状体は、図8に示すように、ワイヤハーネス固定部4上において撓み変形することになり、ワイヤハーネス3の長手方向へのずれ防止効果が向上する。
【0054】
なお、本実施形態においても、バンド1全体を前記第1実施形態同様にパネル11に固定することができる。
【0055】
以上の如く、本実施形態によっても、ワイヤハーネス固定部4の表面の形状、即ち二つの山型形状部16a,16bの表面形状に沿うようにしてワイヤハーネス3の線状体を平型化することができる。また、二つの山型形状部16a,16bを設けることにより、ワイヤハーネス3の線状体を撓み変形させることができ、この撓み変形によりワイヤハーネス3の配索方向へのずれをより確実に抑制することができる。
【0056】
更に、前記第1実施形態同様に、プロテクタ等は不要であり、狭いスペースであってもワイヤハーネス3を配索することができる。
【0057】
第4実施形態
図9は本発明の第4実施形態を示すワイヤハーネス平型化用バンド1の構成を示す斜視図、図10はワイヤハーネスの平型化を示す断面図である。
【0058】
この第4実施形態は、前記第1実施形態で示したワイヤハーネス固定部4上に複数の突起21を配設したものであり、他の構成は前記同様であってよい。複数の突起21は、短手方向及び長手方向の何れについても所定間隔で8個設けられているが、突起21の数や間隔は限定されない。
【0059】
ワイヤハーネス3の線状体9を平型化する場合は、前記同様にワイヤハーネス3の線状体9をワイヤハーネス固定部4上に載置し、結束バンド7を掛けまわして締め付ける。この結果、図10に示すようにワイヤハーネス3の線状体9がワイヤハーネス固定部4上に平型化されて固定されるが、結束バンド7による締め付けにともない、複数の突起21が図10に示すように線状体9間に食い込むようになる。このため、ワイヤハーネス3の線状体9全体がワイヤハーネス固定部4に係止されたようになり、ワイヤハーネス3の長手方向へのずれを防止することができる。
【0060】
以上のごとく、本第4実施形態の構成によれば、ワイヤハーネス3のずれ防止をより確実に行い得る上に、前記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
第5実施形態
図11は本発明の第5実施形態を示す斜視図、図12はワイヤハーネスの平型化と係止状態を示す断面図である。
【0062】
本第5実施形態は、前記第2実施形態で示したワイヤハーネス固定部4上に複数の突起21を配設したものである。但し、この第5実施形態では、前記第2実施形態で示した凹部4bは形成されていないが、他の構成は前記第2実施形態と同様である。
【0063】
複数の突起21は、短手方向及び長手方向の何れについても所定間隔で8個設けられているが、突起21の数や間隔は限定されない。
【0064】
ワイヤハーネス3の線状体(図示せず)を平型化する場合は、前記同様にワイヤハーネス3の線状体9をワイヤハーネス固定部4上に載置し、結束バンド7を掛けまわして締め付ける。この結果、図12に示すようにワイヤハーネス3の線状体がワイヤハーネス固定部4上に平型化されて固定されるが、結束バンド7による締め付けにともない、複数の突起21が線状体間に食い込むようになる。このため、ワイヤハーネス3の線状体全体がワイヤハーネス固定部4に係止されたようになり、ワイヤハーネス3の配索方向へのずれを防止することができる。
【0065】
以上のごとく、本第5実施形態の構成によれば、ワイヤハーネス3のずれ防止をより確実に行い得る上に、前記第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
第6実施形態
図13は本発明の第6実施形態を示すワイヤハーネス平型化用バンド1の構成を示す斜視図、図14はワイヤハーネスの平型化と係止作用を示す断面図である。
【0067】
この第6実施形態では、ワイヤハーネス固定部4の表面に段差が形成され、その中間が傾斜面に形成されている。すなわち、ワイヤハーネス固定部4の表面は、線状体(図示せず)の平型化された部分が線状体の長手方向と交差する方向に傾斜するように形成された傾斜面を有している。そして、段差面と傾斜面の双方に突起21が設けられているが、その数及び形成位置は図示の構成に限定されない。
【0068】
ワイヤハーネス3を平型化する場合は、前記同様にワイヤハーネス3の線状体をワイヤハーネス固定部4上に載置し、結束バンド7を掛けまわして締め付ける。この結果、図14に示すようにワイヤハーネス3の線状体がワイヤハーネス固定部4上に平型化されて固定されるが、結束バンド7による締め付けにともない、複数の突起21が線状体間に食い込むようになる。このため、ワイヤハーネス3の線状体全体がワイヤハーネス固定部4に係止されたようになり、ワイヤハーネス3の配索方向へのずれを防止することができる。
【0069】
以上のごとく、本第6実施形態の構成によれば、ワイヤハーネス3のずれ防止をより確実に行い得る上に、前記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0070】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0071】
例えば、ワイヤハーネス固定部の大きさ、形状等はワイヤハーネスの太さ、配索位置等に対応して自在に変更できる。結束バンドについては、ワイヤハーネスの保護を兼ねてより幅広に形成してもよい。また、線状体としては、電線の他に、外部チューブ、シース等が含まれる。
【0072】
また、結束部材をバンドのワイヤハーネス固定部に一体化して形成してもよい。すなわち、上記各実施形態における結束バンド7は、ワイヤハーネス固定部4と別体に構成されているが、結束バンド7は、図15に示すように、ワイヤハーネス固定部4と一体化されていてもよい。図15は図1に示す第1実施形態の結束バンド7の変形例を表すが、他の実施形態のバンドもこれと同じ構成であってもよい。このような構成によれば、ワイヤハーネス固定部4と結束バンド7とが常に一体であるので、結束バンド7を紛失するおそれがなく、作業性が向上する。
【0073】
また、上記各実施形態は、バンドに係止具を備えた構成であるが、係止具を省略した構成であってもよい。取付相手部材への係止が不要であったり、他の係止手段によりワイヤハーネスが固定されるような配索箇所であれば、バンドの係止具を省略した構成により、ワイヤハーネスを平型化するだけでも配索性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態を示すワイヤハーネス平型化用バンドの構成を示す斜視図である。
【図2】ワイヤハーネスの平型化を示す斜視図である。
【図3】ワイヤハーネスの平型化を示す断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示すワイヤハーネス平型化用バンドの構成を示す斜視図である。
【図5】ワイヤハーネスの平型化を示す断面図である。
【図6】本発明の第3実施形態を示すワイヤハーネス平型化用バンドの構成を示す斜視図である。
【図7】ワイヤハーネスの平型化を示す断面図である。
【図8】ワイヤハーネスの撓み変形を示す断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態を示すワイヤハーネス平型化用バンドの斜視図である。
【図10】ワイヤハーネスの平型化を示す断面図である。
【図11】本発明の第5実施形態を示すワイヤハーネス平型化用バンドの斜視図である。
【図12】ワイヤハーネスの平型化を示す断面図である。
【図13】本発明の第6実施形態を示すワイヤハーネス平型化用バンドの斜視図である。
【図14】ワイヤハーネスの平型化を示す断面図である。
【図15】結束バンドの変形例を表す斜視図である。
【図16】従来のワイヤハーネスの形状を示す斜視図である。
【図17】従来のワイヤハーネスの配索構造の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0075】
1 ワイヤハーネス平型化用バンド
2 基板部
3 ワイヤハーネス
4 ワイヤハーネス固定部
4a 山型
4b 凹部
5 係止具
6 貫通孔
7 結束バンド
7a 係止部
7b バンド部
8a 挿入口
8b 係止口
9 線状体
9a 保護部材
11 車輌等のパネル
11a 挿着孔
12 フランジ部
13 軸部
14 係止部
16a,16b 山型形状部
21 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスの電線束を含む線状体を部分的に平型化するためのワイヤハーネス平型化用バンドであって、
ワイヤハーネス固定部と、
前記線状体の外周を当該線状体の長手方向と交差する方向から締め付けて該線状体を前記ワイヤハーネス固定部の表面に固定する結束部材と、
を備え、
前記線状体の前記ワイヤハーネス固定部の表面上の部分が、平型化されるように、前記ワイヤハーネス固定部の表面との間に前記結束部材を介在することなく当該結束部材による締め付けによって前記ワイヤハーネス固定部に押し付けられていることを特徴とするワイヤハーネス平型化用バンド。
【請求項2】
前記ワイヤハーネス固定部は、前記結束部材により前記線状体を押し付けられる前記表面が形成された板部を有し、当該板部の表面形状が、平面状であることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス平型化用バンド。
【請求項3】
前記ワイヤハーネス固定部の前記表面は、前記線状体の平型化された部分が該線状体の長手方向と交差する方向に傾斜するように形成された傾斜面を有していることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス平型化用バンド。
【請求項4】
前記ワイヤハーネス固定部の前記表面には、前記線状体の平型化された部分を該線状体の長手方向と交差する方向に弧状に反らせる山型形状部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス平型化用バンド。
【請求項5】
前記ワイヤハーネス固定部の前記表面には、前記線状体の平型化された部分を該線状体の長手方向と交差する方向に弧状に反らせる複数の山型形状部が前記長手方向に所定間隔を置いて設けられていることを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス平型化用バンド。
【請求項6】
前記ワイヤハーネス固定部の前記表面には、複数の係止突起が設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のワイヤハーネス平型化用バンド。
【請求項7】
前記結束部材が、前記ワイヤハーネス固定部の前記線状体の長手方向と交差する方向に延長する貫通孔に挿通された結束バンドであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のワイヤハーネス平型化用バンド。
【請求項8】
前記ワイヤハーネス固定部に一体に設けられた、当該ワイヤハーネス固定部を前記取り付け相手部材に取り付けるための係止具を、更に備えたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のワイヤハーネス平型化用バンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−47141(P2010−47141A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213682(P2008−213682)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】