説明

ワイヤハーネス用クランプ

【課題】ワイヤハーネスをより確実に車両側ブラケットに固定可能にする。
【解決手段】ワイヤハーネス12の外周に帯状に巻き付けられる巻付部22は、先端の爪26を含むと共に板状に形成された平板部24を有し、ハーネス用係止部32とブラケット係止部36とを有する箱状の係止部30は、貫通孔31を有し、その貫通孔31を隔ててハーネス用係止部32とブラケット係止部36とが対面しており、巻付部22の平板部24が貫通孔31に挿入されて巻付部22をハーネス用係止部32に係止すると共に車両側ブラケット14が貫通孔31に挿入されて車両側ブラケット14をブラケット係止部36に係止したときに、巻付部22の平板部24と車両側ブラケット14とが隙間をもって向かい合う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネス用クランプに関し、詳しくは、自動車のエンジンルーム内に配索されるワイヤハーネスを板状の車両側ブラケットに固定する部材として用いられ、ワイヤハーネスの外周に帯状に巻き付けられると共に先端に爪が形成された巻付部と、巻付部を係止するハーネス用係止部と車両側ブラケットを係止するブラケット係止部とを有する箱状の係止部と、を備えるワイヤハーネス用クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のワイヤハーネス用クランプとしては、自動車のエンジンルーム内に配設されるワイヤハーネスを自動車のミッションに立設したロック片に固定する部材であって、ワイヤハーネスに巻き付けられると共に先端に係止片が形成された巻着バンドと、巻着バンド先端の係止片を受け入れ係止するバンド係止部およびバンド係止部の上部でロック片を受け入れロックするクランプロック部を有する箱状の係止部と、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このワイヤハーネス用クランプの係止部は、巻着バンド先端の係止片の爪と係合するように、バンド係止部とクランプロック部とを仕切る仕切り部分に爪が形成されており、この仕切り部分を境に巻着バンド先端の係止片とロック片とをそれぞれ受け入れる2つの貫通孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−107617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のワイヤハーネス用クランプを用いてワイヤハーネスが車両側のロック片に固定されたときには、ワイヤハーネスの配索などに際してワイヤハーネスから巻着バンドに大きな力が作用すると、ワイヤハーネスと車載機器との干渉等が発生する可能性がある。こうしたクランプは、樹脂などの射出成形により形成されるが、ワイヤハーネスから巻着バンドに大きな力が作用すると、巻着バンド先端の爪の周辺部位が仕切り部分に押し当てられ、この仕切り部分に僅かな変形が生じるなどにより係止部に変形が生じ、巻着バンド内でワイヤハーネスが設計上の想定範囲を超えて移動し、ワイヤハーネスと車載機器との干渉等が発生する可能性がある。また、ハイブリッド自動車などの近年の自動車のエンジンルームでは、ワイヤハーネスの配索スペースは限られており、ワイヤハーネスを配索する際に巻着バンドに大きい力が作用しやすい。
【0005】
本発明のワイヤハーネス用クランプは、ワイヤハーネスを車両側ブラケットにより確実に固定可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のワイヤハーネス用クランプは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のワイヤハーネス用クランプは、
自動車のエンジンルーム内に配索されるワイヤハーネスを板状の車両側ブラケットに固定する部材として用いられ、前記ワイヤハーネスの外周に帯状に巻き付けられると共に先端に爪が形成された巻付部と、前記巻付部の基端に取り付けられ前記巻付部の先端の爪の係合により該巻付部を係止するハーネス用係止部と前記車両側ブラケットを爪の係合により係止するブラケット係止部とを有する箱状の係止部と、を備えるワイヤハーネス用クランプにおいて、
前記巻付部は、前記先端の爪を含むと共に板状に形成された平板部位を有し、
前記係止部は、貫通孔を有し、該貫通孔を隔てて前記ハーネス用係止部と前記ブラケット係止部とが対面しており、前記巻付部の平板部位が前記貫通孔に挿入されて前記巻付部を前記ハーネス用係止部に係止すると共に前記車両側ブラケットが前記貫通孔に挿入されて該車両側ブラケットを前記ブラケット係止部に係止したときに、前記巻付部の平板部位と前記車両側ブラケットとが隙間をもって向かい合う、
ことを特徴とする。
【0008】
この本発明のワイヤハーネス用クランプでは、ワイヤハーネスの外周に帯状に巻き付けられる巻付部は、先端の爪を含むと共に板状に形成された平板部位を有し、ハーネス用係止部とブラケット係止部とを有する箱状の係止部は、貫通孔を有する。そして、その貫通孔を隔ててハーネス用係止部とブラケット係止部とが対面しており、巻付部の平板部位が貫通孔に挿入されて巻付部をハーネス用係止部に係止すると共に車両側ブラケットが貫通孔に挿入されて車両側ブラケットをブラケット係止部に係止したときに、巻付部の平板部位と車両側ブラケットとが隙間をもって向かい合う。すなわち、このクランプを用いてワイヤハーネスが車両側ブラケットに固定された状態では、巻付部の平板部位と板状の車両側ブラケットとの間に仕切りはなく、巻付部の平板部位と車両側ブラケットとは隙間をもって向かい合うのである。これにより、ワイヤハーネスから巻付部の先端の爪を含む平板部位に大きな力が作用したときに、巻付部の平板部位は、一般には鉄製の車両側ブラケットの方向に車両側ブラケットとの隙間分だけ移動すると、車両側ブラケットによって更なる移動が制限されることになる。この結果、ワイヤハーネスを車両側ブラケットにより確実に固定可能なクランプとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例のワイヤハーネス用クランプ20を使用する様子を説明する説明図である。
【図2】係止部30の外観を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の一実施例としてのワイヤハーネス用クランプ20を使用する様子を説明する説明図であり、図2は、ワイヤハーネス用クランプ20の係止部30の外観を示す外観図である。実施例のワイヤハーネス用クランプ20は、ハイブリッド自動車などの自動車のエンジンルーム内に配索される電力供給用のパワーケーブルまたは制御信号用のコントロールケーブルなどを束ねたワイヤハーネス12を保持すると共に、ワイヤハーネス12を保持した状態で車体やケースなどに固定するための部材である。ワイヤハーネス用クランプ20は、図示するように、ワイヤハーネス12の外周に帯状に巻き付けられる巻付部22と、巻付部22を係止すると共に車両側ブラケット14を係止する係止部30とを備える。このワイヤハーネス用クランプ20は、ポリプロピレンやナイロンなどの樹脂による射出成形によって形成されている。また、車両側ブラケット14は、車体やケース(例えば、モータを収納するケースやインバータを収納するケース,トランスミッションケースなど)に溶接やボルトなどにより固定されており、車体やケースと同様に鉄などの比較的剛性が高い(ワイヤハーネス用クランプ20を形成する樹脂よりも剛性が高い)材料により形成されている。
【0012】
巻付部22は、ワイヤハーネス12に巻き付けられる帯状のバンド部23と、このバンド部23の一端23aからバンド部23に対して直角に延出すると共に先端に爪26が形成された板状の平板部24とを有する。平板部24は、その基端(バンド部23の一端23a)と先端(爪26)との中間部位に折り目25が設けられており、図1中に点線で示すように、折り目25を支点にバンド部23側(ワイヤハーネス12側)に折り込み可能に形成されている。これにより、平板部24の爪26の係合により巻付部22を係止部30に係止する際の作業性を向上させることができる。なお、こうした折り目は、複数設けるものとしてもよい。
【0013】
係止部30は、ワイヤハーネス12と立体的に(図1中上方または下方からみたときに)交差する方向に形成された貫通孔31と、巻付部22のバンド部23の他端23bに取り付けられて貫通孔31側に爪34が形成されたハーネス用係止部32と、貫通孔31を隔ててハーネス用係止部32と対向する面に配置され貫通孔31側に爪38が形成されたブラケット係止部36とを有する。したがって、係止部30は、巻付部22先端の平板部24が貫通孔31に一方側(図1中右側)から挿入されると共に平板部24の爪26とハーネス用係止部32の爪34とが係合することにより巻付部22を係止することができる。また、係止部30は、車両側ブラケット14が貫通孔31に他方側(図1中左側)から挿入されると共に車両側ブラケット14に形成された孔16にブラケット係止部36の爪38を係止させることにより車両側ブラケット14を係止することができる。これにより、ワイヤハーネス12に巻付部22が巻き付けられた状態で巻付部22と車両側ブラケット14とを共に係止部30に係止することができ、実施例のワイヤハーネス用クランプ20を用いてワイヤハーネス12を車両側ブラケット14に固定することができる。
【0014】
また、巻付部22が係止部30のハーネス用係止部32に係止されると共に車両側ブラケット14が係止部30のブラケット係止部36に係止されたときには、係止部30においてハーネス用係止部32とブラケット係止部36とが貫通孔31を隔てて対面していることから(ハーネス用係止部32とブラケット係止部36との間には仕切りがないことから)、巻付部22先端の平板部24のハーネス用係止部32とは反対側(ブラケット係止部36側)の面と車両側ブラケット14のブラケット係止部36とは反対側(ハーネス用係止部32側)の面とは向かい合うことになる。このとき、実施例のワイヤハーネス用クランプ20では、平板部22と車両側ブラケット14とは所定の隙間をもって向かい合うものとした。所定の隙間は、平板部24の爪26とハーネス用係止部32の爪34との係合の解除が生じないように2つの爪26,34の係合代(係合深さ)よりも十分に小さい長さとして予め定められた間隔をもつものとした。これにより、ワイヤハーネス12から巻付部22の先端の爪26を含む平板部24に大きな力が作用したときに、巻付部22の平板部24は、車両側ブラケット14の方向に車両側ブラケット14との所定の隙間分だけ移動すると、車両側ブラケット14により更なる移動が制限されることになる。この結果、ワイヤハーネス12を車両側により確実に固定可能なクランプを提供することができ、ワイヤハーネス12とエンジンルーム内の車載機器との干渉等が発生するのを抑制することができる。
【0015】
なお、実施例のワイヤハーネス用クランプ20では、まず、ワイヤハーネス12に巻付部22を巻き付けると共に巻付部22をハーネス用係止部32に係止するだけの工程で、ワイヤハーネス12を予め固定することができる。その後、ワイヤハーネス用クランプ20を車両側ブラケット14と固定することにより、ワイヤハーネス12を車両側に固定することができる。
【0016】
以上説明した実施例のワイヤハーネス用クランプ20では、ワイヤハーネス12の外周に帯状に巻き付けられる巻付部22は、先端の爪26を含むと共に板状に形成された平板部24を有し、ハーネス用係止部32とブラケット係止部36とを有する箱状の係止部30は、貫通孔31を有し、その貫通孔31を隔ててハーネス用係止部32とブラケット係止部36とが対面しており、巻付部22の平板部24が貫通孔31に挿入されて巻付部22をハーネス用係止部32に係止すると共に車両側ブラケット14が貫通孔31に挿入されて車両側ブラケット14をブラケット係止部36に係止したときに、巻付部22の平板部24と車両側ブラケット14とが隙間をもって向かい合う。すなわち、このワイヤハーネス用クランプ20を用いてワイヤハーネス12が車両側ブラケット14に固定された状態では、巻付部22の平板部24と板状の車両側ブラケット14との間に仕切りはなく、巻付部22の平板部24と車両側ブラケット14とは隙間をもって向かい合うのである。これにより、ワイヤハーネス12を車両側ブラケット14により確実に固定可能なクランプとすることができる。
【0017】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、先端の爪26を含む平板部24を有する巻付部22が「巻付部」に相当し、貫通孔31とハーネス用係止部32とブラケット係止部36とを有する係止部30が「係止部」に相当する。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0018】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、自動車の製造産業に利用可能である。
【符号の説明】
【0020】
12 ワイヤハーネス、14 車両側ブラケット、16 孔、20 ワイヤハーネス用クランプ、22 巻付部、23 バンド部、23a 一端、23b 他端、24 平板部、25 折り目、26 爪、30 係止部、31 貫通孔、32 ハーネス用係止部、34 爪、36 ブラケット係止部、38 爪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のエンジンルーム内に配索されるワイヤハーネスを板状の車両側ブラケットに固定する部材として用いられ、前記ワイヤハーネスの外周に帯状に巻き付けられると共に先端に爪が形成された巻付部と、前記巻付部の基端に取り付けられ前記巻付部の先端の爪の係合により該巻付部を係止するハーネス用係止部と前記車両側ブラケットを爪の係合により係止するブラケット係止部とを有する箱状の係止部と、を備えるワイヤハーネス用クランプにおいて、
前記巻付部は、前記先端の爪を含むと共に板状に形成された平板部位を有し、
前記係止部は、貫通孔を有し、該貫通孔を隔てて前記ハーネス用係止部と前記ブラケット係止部とが対面しており、前記巻付部の平板部位が前記貫通孔に挿入されて前記巻付部を前記ハーネス用係止部に係止すると共に前記車両側ブラケットが前記貫通孔に挿入されて該車両側ブラケットを前記ブラケット係止部に係止したときに、前記巻付部の平板部位と前記車両側ブラケットとが隙間をもって向かい合う、
ことを特徴とするワイヤハーネス用クランプ。

【図2】
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【図1】
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【公開番号】特開2012−110133(P2012−110133A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257230(P2010−257230)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】