説明

ワイヤレス通信システムにおけるステータスレポート方法

ワイヤレス通信装置で再セグメント化されたデータ送信の欠落データをレポートするための方法が開示される。方法は、再セグメント化されたプロトコル・データ・ユニット(PDU)の再セグメント化された最終PDUが受信されていないと判断することを含む。最終PDUセグメントが受信されなかったと判断することに応答して、方法は、受信ワイヤレス通信装置でステータスレポートを生成することを含む。ステータスレポートは、少なくとも再セグメント化された最終PDUセグメントで搬送されるバイトのシーケンスを開始する元のPDUからのバイト位置を特定する開始セグメントオフセット値と、終端セグメント不明インジケータとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般にワイヤレス通信に関し、より詳細にはプロトコル・データ・ユニットのためのステータスレポートに関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP仕様においては、無線リンク制御(radio link control:RLC)プロトコル層が、無線インタフェースを介したプロトコル・データ・ユニット(protocol data unit:PDU)の送達を担う。プロトコル・データ・ユニットとは、無線で送信されるデータパケットのユニット部分のことである。信頼できるPDU送達を確実に行うために、肯定応答モードを使用してもよい。このモードでは、受信機が、PDUの受信成功を示すステータスレポートを送信する。受信機からのステータスレポートをトリガするために、ポーリングビットをRLC PDUヘッダに含めたり、ポーリング制御PDUを送信したりすることは公知である。
【0003】
一部のワイヤレス通信プロトコルでは、PDUが最初の送信で正常に受信されなかった場合に、RLC層がそのPDUを再セグメント化することができる。再セグメント化は、元のPDUセグメントを複数のPDUセグメントに分割した後、各PDUセグメントを個別に再送信することによって達成される。元のPDUは可変長であってよく、再セグメント化された各PDUセグメントが可変長であっても(すなわち、他のPDUセグメントの長さと異なっていても)よい。各PDUセグメントは、サブシーケンス番号によって、または元のPDUに対応するセグメントの最初のバイト位置によって特定することができる。
【0004】
このように、受信機がPDUセグメントの正常受信または損失を示す必要がある場合には、以下の二つの方法のいずれかによって、それを行うことができる。つまり、最初と最後のバイト位置を、それらがセグメント化されていない元のPDUに対応するように各PDUセグメントに含める方法か、PDUセグメントの最初のバイト位置と長さとを含めることによってPDUセグメントを特定する方法である。再セグメント化されたPDUを受信機が再構築するのを支援するために、PDUの最終セグメントは、「最終セグメントフラグ(last segment flag)」(LSF)を含むのが典型的である。
【0005】
再セグメント化と可変長セグメントは、データPDUの最終セグメントが送信中に失われると、再送信されるべきデータ・ユニット・セグメントがどれなのかを送信機に報告するために受信機がセグメントの最終バイトやセグメントの長さを判断することができないという結果をもたらし得る。元のPDUが最終長さインジケータを含まず、元のPDUセグメントの全長が受信機には不明であることから、特にこのような結果になりやすい。そのため、最終セグメントフィールド(LSF)が受信されていないと受信機が判断した場合、受信装置は、データが不完全であることは把握するものの、欠落している部分を送信機に正確に中継することはできない。従って、効率的なメカニズムを特定して、再セグメント化されたPDUの欠落データのIDをレポートすることにはメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】再セグメント化されたプロトコル・データ・ユニットの一実施形態を表す図である。
【図2】ステータスレポートの一実施形態を表す図である。
【図3】ステータスレポートの別の実施形態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示の各種態様、特徴、および効果は、以下に示す本開示の詳細な説明を添付図面と共に慎重に考慮すれば、当業者にとって十分に明らかになるであろう。図面は、明瞭化のために単純化された可能性があり、必ずしも正規のスケールで描かれているとは限らない。
【0008】
図1は、第3世代パートナーシッププロジェクト(Third Generation Partnership Project:3GPP)通信システムで用いられるプロトコル・データ・ユニット(PDU)100の一実施形態を示す。PDUは、複数のPDUセグメントに再セグメント化(すなわち分割)されている。本実施形態において、PDU 100は、第1のPDUセグメント101、第2のPDUセグメント102、および第3のPDUセグメント103という3つのセグメントに再セグメント化されている。第3の(すなわち最終の)PDUセグメント103は、本実施形態において、最終セグメントフィールド(LSF)105(最終セグメントフラグとも称される)を含み、これが元の(Original)PDU 100の最終セグメントであることを受信機に示すとともに、同セグメントの再構築を支援する。再セグメント化されたPDU最終セグメントであるセグメント、つまり本実施形態における第3のセグメントは、最終セグメントであることを示す「1」をLSFに有する。残りのセグメントは、LSF値を、最終セグメントでないことを示す「0」に設定する。そのため、残りのセグメント、すなわち第1のセグメント101と第2のセグメント102とは、LSFに「0」を有する。
【0009】
本実施形態における基地局または移動局でPDUを送信することから「送信機」と称されるエンティティは、さまざまな理由でPDU 100を再セグメント化することにしてよい。その後送信機は、再セグメント化された新しいPDUセグメントの全てが受信機で適切に受信されたかどうかを知る必要がある。一実施形態において、PDU 100は、以前に失敗したPDU 100の送信試行に応答して再セグメント化されている。別の実施形態において、PDU 100は、無線リソース割り当てストラテジの変更のために再セグメント化されている。当業者であれば、再セグメント化の理由が重要でないことを理解するであろう。
【0010】
元のPDU 100のサイズは、同じである場合もあれば、PDUによって異なる場合もある。同様に、複数のPDUセグメントの各PDUセグメントのサイズは、等しい場合もあれば、セグメントによって異なる場合もある。少なくともPDUセグメントの長さが異なる場合には、受信装置が個々のセグメントの長さを受信前に把握していることはない。
【0011】
本実施形態において、基地局は、通信システム用の3GPP準拠基地局である。基地局は、ユーザ局、移動通信機器、遠隔装置、ユーザ機器(UE)、移動局(MS)、モバイル機器等とも称されるワイヤレス通信装置とも通信する。基地局とMSとは、互いの間でデータを交換する。交換するデータは、音声通信データやユーザ間で交換されるデータなどのトラフィックデータ、およびトラフィックデータと関連付けられている制御データである可能性があり、PDUと、そのPDUに関連するステータスレポートとを含むことがある。
【0012】
本実施形態において、元のPDU 100の各PDUセグメントは、元のペイロード107の一部だけを搬送する。元のPDUは、本実施形態におけるヘッダに、PDUを特定するシーケンス番号を含む。ペイロード107は、複数のPDUセグメントへの再セグメント化時に複数のペイロードに分割される一連のビットである。
【0013】
再セグメント化されたPDUの各セグメントは、元のPDU 100のシーケンス番号(SN)106を含む。シーケンス番号は、各々の新しいPDUセグメントのヘッダのSNフィールドに格納される。本実施形態においては、第1のセグメントSNフィールド106と、第2のセグメントSNフィールド108と、第3のセグメントSNフィールド110とがある。再セグメント化されたPDUセグメントの各SNフィールドにおいて、SN値は同じ値、すなわちSNであり、再セグメント化されたPDUセグメントが元のPDU 100に由来することを示す。
【0014】
各PDUセグメントは、セグメント・オフセット(segment offset:SO)・フィールドを含む。元のPDUペイロード107の各バイト位置は、セグメント・オフセット・フィールドで参照されてもよい。セグメント・オフセット・フィールドの値は、PDUセグメントで搬送され、元のPDUペイロード107から分割される開始バイトのバイト位置を示す。本実施形態において、オフセット値は、元のPDUペイロードの最初のバイトと関連しており、最初のバイトはオフセット値ゼロを有する。別の実施形態において、オフセット値は、元のPDUの最初のバイトと関連しており、最初のバイトはオフセット値ゼロを有し、元のPDUペイロード107の最初のバイトは、ゼロより大きな数値を有する。そのため、PDUペイロード107の各バイトは、ペイロードが再セグメント化時に分割された後に特定のバイトを特定するために、セグメントオフセット番号、すなわちその番号と関連付けられているSOiを有する。セグメント・オフセット・フィールドは、元のPDUペイロード107のバイト位置のオフセットに対応するオフセット値を搬送する。この値は、PDUセグメントが、セグメントオフセット値SOを有するバイトから始まるペイロードの部分を搬送することを示す。
【0015】
例えば、元のPDU 100は、ペイロード107で搬送された0〜100バイトを有し得る。第1のPDUセグメント101は、セグメントオフセット開始フィールド(SO)の値として「0」を有し、このセグメントは、最初のバイト「0」から始まる元のペイロード107の一部を搬送する。同様に、第2のPDUセグメント102は、第2のオフセット開始フィールドの値として「33」を有し、このセグメントが、セグメントオフセット「33」に位置するバイトから始まる元のペイロード107の一部を搬送する。第3のPDUセグメント103は、第3のオフセット開始フィールドの値として「65」を有し、このセグメントが、セグメントオフセット「65」に位置するバイトから始まる元のペイロード107の一部を搬送する。
【0016】
受信機におけるPDUの配置を送信機に示すために、受信装置はステータスレポートを送信機に返送する。PDUステータスレポートの一例が図2に示されている。ステータスレポート200は、PDUの送信機によってリクエストされてよく、受信機によって自動的に生成されてもよい。再セグメント化されたPDUの送信時に受信機でデータが欠落している場合、受信機はデータが受信されなかったことを送信機に示す。
【0017】
本実施形態において、方法は、少なくとも最終セグメントが受信されていないと判断することを含む。一実施形態において、受信機は、LSFが「1」に設定されているセグメントを受信していないということにより、最終セグメントが受信されていないと判断する。最終セグメント以外のセグメントも欠落している場合がある。本実施形態において、例えば残りの欠落データセグメントは、第1のPDUセグメント101、第2のPDUセグメント102、または第3のPDUセグメント103のいずれかまたはそれらの一部である可能性がある。PDUセグメント全体、または1つ以上のセグメントの一部が欠落または不完全である可能性もある。そのため、受信機は、LSFを有するセグメント、すなわちLSFの値が「1」であるセグメントが受信されていない場合に、再セグメント化されたPDUの最終セグメントが受信されていないと判断する。受信されたPDUセグメントが最終セグメントであるという表示(indication)を受信しなければ、受信機は、最終セグメントの終端バイトがどれか、あるいは最終セグメントの長さがどれだけかといったことが把握できず、したがって再セグメント化された元のPDUの長さを把握できない。
【0018】
受信した最終PDUセグメントのセグメントオフセット値を判断したら、次のステップは、受信装置においてステータスレポートを生成することを含み、レポートは、開始シーケンスオフセット値402を含む。開始シーケンスオフセット値は、欠落PDUセグメントの最初のバイトを識別し、本実施形態においては最終PDUセグメントを識別する。一実施形態において、開始シーケンスオフセット値402は、前のPDUセグメントから最後に受信した終端セグメントオフセット値に基づいて判断される。例えば、前の終端セグメントオフセット値が「32」であれば、欠落PDUセグメントの開始値は「33」である。換言すれば、欠落セグメントの開始オフセット値は、最後に受信したPDUセグメントで受信した終端セグメントオフセットに1を加えることによって判断される。この例におけるステータスレポートは、第2のオフセット開始フィールドにおいて「33」という値を搬送する。
【0019】
ステータスレポートは、終端セグメント不明インジケータ204をさらに含む。図2に示す一実施形態において、終端セグメント不明インジケータは、最終バイト不明インジケータ204である。これは、セグメントの最終バイトが不明であることを送信機に示すもので、SOixによって表すことができる。一実施形態において、セグメントの最終バイトが不明である場合、このフィールドは「0」という値を含み、すなわちSOix=0である。
【0020】
図3に示す別の実施形態において、終端セグメント不明インジケータは、セグメント長不明インジケータ302である。本実施形態において、PDUステータスレポートは、前述の実施形態で述べたオフセット開始フィールドを特定する開始シーケンスオフセット値402と、セグメント長不明インジケータ302 Liとを含む。「0」という値は、識別された欠落セグメントの長さが不明であることを示す。
【0021】
ステータスレポートの受信に対し、送信機は、欠落データユニットを再送することによって応答する。本実施形態において、再セグメント化されたPDUのプロトコル・データ・ユニット・セグメントを再送信するための方法は、再セグメント化されたPDUの送信に対してPDUステータスレポートを受信することを含む。ステータスレポートは、開始オフセットインジケータと終端オフセット不明インジケータとを含むか、または開始オフセットインジケータとセグメント長不明インジケータとを含む。その後送信機は、ステータスレポートの開始オフセットインジケータによって表されるバイトで始まるペイロードを有するPDUセグメントを再送信する。
【0022】
以上、本開示およびその最良の形態を、所有権を確立し、当業者が同じものを製作し使用することが可能になる方法で記載してきたが、本開示にて開示される例示的な実施形態の等価物があり、本発明の範囲および技術思想を逸脱しない範囲でそれに対する修正および改変が施されてもよく、それは例示的な実施形態によってではなく、添付の請求の範囲によって制限されるべきであることは理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤレス通信装置における再セグメント化されたデータ送信の欠落データをレポートするための方法であって、
再セグメント化されたプロトコル・データ・ユニット(PDU)の再セグメント化された最終PDUセグメントが受信されていないと判断すること、
前記最終PDUセグメントが受信されていないと判断することに応答して、受信ワイヤレス通信装置においてステータスレポートを生成すること
を備え、前記ステータスレポートが、
少なくとも前記再セグメント化された最終PDUセグメントにおいて搬送されるバイトのシーケンスを開始する元のPDUからのバイト位置を識別する開始セグメントオフセット値と、
終端セグメント不明インジケータと
を含む、方法。
【請求項2】
最終セグメントフラグを有するPDUセグメントが受信されていないと判断することにより、前記再セグメント化された最終PDUが受信されていないと判断することをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記終端セグメント不明インジケータが、不明の終端セグメントオフセットIDである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記終端セグメント不明インジケータが不明のセグメント長である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記再セグメント化されたPDUの少なくとも一部が最終セグメントフィールドを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
再セグメント化されたPDUのプロトコル・データ・ユニット・セグメントを再送信するための方法であって、
再セグメント化されたPDUを送信することに応答して、開始オフセットインジケータと終端オフセット不明インジケータとを含むPDUステータスレポートを受信すること、
前記ステータスレポートの前記開始オフセットインジケータによって示されるバイトで始まるペイロードを有する前記PDUセグメントを再送信すること
を備える方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−541397(P2010−541397A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527074(P2010−527074)
【出願日】平成20年9月23日(2008.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/077340
【国際公開番号】WO2009/045787
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(390009597)モトローラ・インコーポレイテッド (649)
【氏名又は名称原語表記】MOTOROLA INCORPORATED
【Fターム(参考)】