説明

ワークの組付け検査方法及び装置

【課題】 ワークを組み付ける鋳造品の肌面の位置又は寸法が経時的に変化しても、当該肌面を基準面としてワークの組付けを正しく検査できる方法及び装置を提供する。
【解決手段】 ワーク1に対して撮像手段11の視線と交わる平面上で光を照射して撮像することにより、ワーク1を組み付ける別のワークの面3aを基準面として検査対象のワーク組付けを検査する方法において、撮像手段11の視野内には、検査対象のワーク1の他に、金型で鋳造された別のワーク3の鋳造肌のみが存在する場合、その鋳造肌面を基準面として、当該別のワーク3を鋳造した金型毎に移動平均法により基準面の位置を補正し、その補正された基準面に対するワーク1の位置を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークの組付け検査方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造品、鍛造品等のワークを撮像手段により撮影して寸法を測定するワークの寸法測定装置が知られている(特許文献1参照)。これは、撮像手段による撮像画像中に測定エリアを設定する測定エリア設定手段と、この測定エリア設定手段により設定された測定エリア内の画像のコントラストによってワークのエッジを検出するエッジ検出手段と、このエッジ検出手段により検出したエッジが撮像画像の特定位置に一致するように撮像手段を寸法測定方向に移動させる制御手段とを備えたものである。
【0003】
この装置によれば、ワークのエッジを確実に判断でき、ワークの寸法を容易に正確且つ迅速に測定できると共に、装置全体を簡単且つ小型化できる。
【0004】
これに対し、複数の部品から製品を組み立てる工程では、部品の組み付けが正しく行われていることを検査するために、部品を組み付けた状態で各部品の位置を測定することが必要である。
【0005】
例えば、図9に示すように、金型で成形された部品の座ぐり部3に別部品のワッシャ2を介してボルト1を締結する場合には、所定数(例えば1枚)のワッシャ2が正しく装着されたかどうかを検査するために、ワッシャ2を装着した部位を撮像手段であるカメラで撮像し、その画像から、ワッシャ2を挟んだボルト1の頭部1a下端のフランジ部1bと座ぐり部3の座面3aとの間の間隔D(ワッシャ2の厚みに相当)を計測することが必要となる。このため、ボルトのようなワークを装着した別のワークの特定の部位(図示例の場合、座面)を基準面(位置)として、検査対象ワークの位置もしくは寸法を測ることとなる。
【0006】
しかしながら、例えば、寸法精度が比較的高く機械加工された座ぐり部3の場合、その座面3aにワッシャ2を介してボルト1が締結された後では、座面3aがワッシャ2とボルト1の頭部1a又はフランジ部1bで隠されてしまい、座ぐり部3の撮像は実質的に鋳造肌面しか有しないものとなる。その鋳造肌面は、比較的寸法精度が劣るので、これを測定の基準面とすると、正規のワッシャ2が適正に締結されているか或いは数量が過不足ないか等を、正しく判断することが難しい。
【0007】
また、上記座ぐり部のような同一種類の部品を形成するワークでも、鋳造用金型が異なるとワークの鋳造肌面の寸法精度がばらつくし、同じ金型であっても、ワークの量産に伴って金型が磨耗する。そのため、鋳造肌の寸法及び肌面の位置は経時的に変化する。例えば、図9に示すように座ぐり部3が鋳造肌面より盛り上がってしまった場合には、基準面となる座面3aの位置が、その盛り上がった高さHだけ高くなる。かくして、位置計測の基準面が変化してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−311017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ワークを組み付ける鋳造品の肌面の位置又は寸法が経時的に変化しても、当該肌面を基準面としてワークの組付けを正しく検査できる方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の方法は、ワークに対して該撮像手段の視線と交わる平面上で光を照射して撮像することにより、該ワークを組み付ける別のワークの面を基準面として検査対象のワーク組付けを検査する組付け検査方法であって、
前記撮像手段の視野内には、前記検査対象のワークの他に、金型で鋳造された別のワークの鋳造肌のみが存在する場合、その鋳造肌面を前記基準面として、当該別のワークを鋳造した金型毎に移動平均法により前記基準面の位置を補正し、その補正された基準面に対する前記検査対象のワークの位置を検知することを特徴とする。
【0011】
本方法によれば、撮像手段の視野内には、検査対象のワークの他に、金型で鋳造された別のワークの鋳造肌のみが存在する場合に、当該別のワークを鋳造した金型毎に移動平均法により基準面を補正するので、鋳造肌の寸法又は面位置が経時的に変化しても、補正した基準面に基づいてワークの位置を正しく検知できる。これにより、ワークの組付け位置を検査することができる。
【0012】
本発明の装置は、
検査対象のワークを撮像する撮像手段と、
該ワークに対して該撮像手段の視線と交わる平面上で光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段から当該ワーク及びこれを組み付けた別のワークに光を照射し前記撮像手段で撮像して得られた画像において、前記別のワークの面を基準面として前記検査対象のワークの位置を算出する算出手段と、
前記撮像手段の視野内には、前記検査対象のワークの他に、金型で鋳造された別のワークの鋳造肌のみが存在する場合、当該別のワークを鋳造した金型を認知する認知手段と、
該認知手段で認知された金型毎に移動平均法により前記基準面の位置を補正する補正手段とを備え、
前記算出手段は、前記補正手段で補正された基準面に対する前記検査対象のワークの位置を検知し、その検知した位置から当該ワークの組み付けの正否を判定することを特徴とする。
【0013】
本装置によれば、撮像手段の視野内には、検査対象のワークの他に、金型で鋳造された別のワークの鋳造肌のみが存在する場合に、当該別のワークを鋳造した金型毎に移動平均法により基準面を補正し、その補正した基準面に基づいて検査対象のワークの位置を検知する。このため、基準面となる鋳造肌の寸法又は面位置が経時的に変化しても、ワークの位置を正しく検知して、ワークの組付けの正否を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態のワーク組付け検査装置の構成を示す図。
【図2】ワークの各検査部位を示す図。
【図3】本発明により組付け検査されるワークと光源と撮像画面の配置図。
【図4】本発明で用いる光切断法によるワークの位置検出の説明図。
【図5】ワークの撮像から検査までの処理手順を示すフローチャート。
【図6】検査処理の手順を示すフローチャート。
【図7】移動平均法により測定データの平均値を得る方法の説明図。
【図8】本発明の方法を用いて正否を検査するワークの組み付け例を示す図。
【図9】ワークの組み付け例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照して、本発明の実施形態を説明する。本実施形態は、図9に示したように、ワークとしてのボルト1を、別のワークである金型成形部品の座ぐり部3にワッシャ2を介して締結する場合に、所定数のワッシャ2が正しく装着されたかどうかを検査する方法及びこれを実施するための装置である。
【0016】
本実施形態では、図1に示すように、検査対象のワークであるボルト1がワッシャ2を介して座ぐり部3に装着されたとき、撮像手段11によりボルト1の検査部位を撮像する。ここで、ボルト1は、頭部1aと、頭部下端のフランジ部1bと、座ぐり部3にねじ込まれるねじ部1cとからなり、フランジ部1bと座面3aとの間にワッシャ2を介在させて座ぐり部3に締結されている。
【0017】
また、実施形態の検査装置は、例えばCCDカメラで構成される撮像手段11と、検査対象ワークのボルト1に対して撮像手段11の視線と交わる平面上で光を照射する光照射手段としてのレーザ光源12と、この光源12からの光(この実施形態では、レーザ光)の照射を制御すると共に、撮像手段11で得られた画像に基づいて後述の位置検出等の処理を行うコントローラ13とを備えている。
【0018】
ここで、コントローラ13は、例えばパーソナルコンピュータで構成され、そのCPUにより、後述のように撮像手段11で得られた画像に基づいてボルト1の各部の位置を算出する算出手段、検査対象のワークの他に別のワークを鋳造した金型を認知する認知手段、及び、移動平均法により基準面の位置を補正する補正手段として動作するものである。
【0019】
図1の構成によれば、検査時には、コントローラ13による制御下で、光源12から発射されるレーザ光Lをボルト1及びその周囲の検査部位に当て、その反射光による撮像画像に基づいてボルト1の各部の位置を計測する。
【0020】
詳細には、図2に示すように、レーザ光Lをボルト1の一方側からボルト1の頭部1aを越えて他方側まで斜線状に当てていくと、光Lは、座面3aからワッシャ2、ボルト1のフランジ部1b及び頭部1a上で、実線で示す軌跡となる。その反射光を受光して得られる画像上で、基準面となる座面3a上の点からワッシャ2、ボルト1のフランジ部1b及び頭部1a上の各点の位置を検出し、それらの位置から、フランジ部1bと座面3aとの間の間隔を算出する。そして、その間隔が所定数(例えば、1枚)のワッシャ2の厚みに等しいか否かにより、ボルト1がワッシャ2を介して正しく組み付けられたかどうかを判定することができる。以上の算出及び判定処理は、コントローラ13を構成するコンピュータのCPUで実行される。
【0021】
次に、本実施形態で用いられる光切断法によるワークの位置検出の原理を説明する。
【0022】
図3に示すように、光源12からレーザ光をワーク(図の例の場合、ボルト1)に照射し、ワーク上の曲がった帯状の光軌跡を撮像手段11で撮像する。そして、撮像手段11で得られた画像内の結像位置P1、P2、P3・・・から、検査部位(例えば、図2に示された座面3a、ワッシャ2、ボルト1のフランジ部1b及び頭部1a上の各点)の位置L1、L2、L3を求める。
【0023】
具体的には、図4に示すように、撮像手段(カメラ)11の画面の方向をx軸、撮像手段11から検査対象ワークに向かう方向をz軸とした3次元座標(x,y,z)を設定し、撮像手段11の画面位置を原点O、光源12の位置Sをx軸上とすると、上記検査部位L1の座標上の位置(x1,y1,z1)は、次式で表される。
【0024】
x1=d−z1・tanφ
y1=z1・tanα
z1=x1・tanθ
ここで、dはx軸上の光源Sとカメラとの間の距離、φはx−z平面上で光源Sから検査部位L1に向かう光線とz軸とのなす角度、αはy−z平面上で検査部位L1からカメラに向かう光線(反射光)とz軸とのなす角度、θはx−z平面上で検査部位L1からカメラに向かう光線(反射光)とz軸とのなす角度である。
【0025】
以下、本実施形態の検査装置で実施される方法について説明する。
【0026】
図5は、上記コントローラ13で実施されるワーク組付け検査方法の処理手順を示す。
【0027】
初めに、検査対象のワークであるボルト1に対して撮像手段11の視線と交わる平面上で光源12からレーザ光を照射し、検査部位(図1)を撮像する(ST1)。そして、画像を信号化する画像処理を行う(ST2)。その後、あるいはこの処理と並行して、ボルト1を組み付けた別ワークの座ぐり部3を鋳造した金型を認知する(ST3)。この処理のため、座ぐり部の製造に用いられる金型の型番等のデータを表(テーブル)として予めコンピュータの記憶部に格納しておき、当該座ぐり部に対する金型のデータを参照することにより、金型が認知される。
【0028】
次に、図6に示す組付け検査処理を実施する(ST4)。この処理では、初めに通常撮影、すなわち撮像手段11で検査対象のワークを撮像することにより、後の演算処理で用いるワーク中心座標(位置)を取得する(ST41)。
【0029】
次に、上記のレーザ光による撮像で得られた画像から、撮像手段11の視野内に検査対象のワークのほか、金型で鋳造された別のワークの鋳造肌のみが存在することを確認した後、その鋳造肌面を基準面としてその座標(位置)を取得する(ST42)。更に、検査対象ワークの座標(例えば、ボルト1のフランジ部1bの位置)も取得する(ST43)。その後、当該ワークの座標位置から基準面の位置を減算することにより位置の差(高低差)を得て(ST44)、この差が所定の許容値以下であるか否かを判定する(ST45)。
【0030】
この判定が“NO”であれば、NG(組付け不良)と判断し、それを出力(例えば、コンピュータの画面に表示)して(ST46)、検査処理を終了する。一方、“YES”であれば、OK(組付け良)と判断し、それを出力(例えば、コンピュータの画面に表示)する(ST46)。そして、以下のように基準面の補正を行って(ST48)、検査処理を終了する。
【0031】
上記ST48の基準面補正処理では、前述のように位置計測の基準面とした別ワークの鋳造肌面の位置を、これを鋳造した金型毎に移動平均法により補正する。具体的には、検査対象のワーク(例えば、ボルト1)とこれを組付ける別ワーク(例えば、座ぐり部3)は、これらを含む機種(製品もしくは部品)毎に組合せが決められるので、図7に示すように機種a,b,c,・・・毎に、次式により位置xの平均値<x>を算出し、基準面の位置xを補正する。
【0032】
<x>=(1/n)Σx[i](i=1〜n)
ここで、nは値xの平均をとる直前の計測回数である。
【0033】
従って、例えばn=20とすれば、今回(21回目)の検査で用いる値xは直前20回の計測値の平均値であり、次(22回目)の検査では、21回前の値を捨てて20回分の平均値を算出することとなる。
【0034】
また、図6のST45で用いられる許容値は、平均値<x>±αとする。αは許容の範囲を定める値である。
【0035】
本実施形態によれば、上記のように算出した平均値で補正した基準面(座面3a)の位置に対して検査対象のワークの所定部位(例えば、ボルト1のフランジ部下端)の位置を検知し、その検知した位置から当該ワークの組み付けの正否を判定することができる。
【0036】
具体的には、図8において、(B)に示すように、座面3aに1枚のワッシャ2を介在させてボルト1を装着した構造が適正であるのに対し、(A)に示すようにワッシャ2がない場合は、基準面となる座面3aの位置からボルト1のフランジ部1bまでの間隔が許容値より小さく、また、(C)に示すように2枚のワッシャ2が介在している場合は、基準面となる座面3aの位置からボルト1のフランジ部1bまでの間隔が許容値より大きく検出される。これにより、ボルト1が正しく(1枚のワッシャ2を介して)組み付けられたかどうかを判定することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態として、ワークとしてのボルトを別ワークの座ぐり部に組付けたものを検査する場合を説明したが、本発明はこれに限らず、ワークを組み付ける鋳造品等の基準面の位置又は寸法が経時的に変化しても、ワークの組付けを検査する工程に好適に用いることができる。
【0038】
また、上記実施形態では、撮像のために位相が揃ったレーザ光を用いて精密な計測を可能にしているが、照射する光はレーザに限らず、可視光、あるいは赤外線や紫外線のように計測のための画像を生成できるもの(電磁波)であればよい。
【符号の説明】
【0039】
1…ボルト、2…ワッシャ、3…座ぐり部、11…撮像手段、12…光源、13…コントローラ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して撮像手段の視線と交わる平面上で光を照射して撮像することにより、該ワークを組み付ける別のワークの面を基準面として検査対象のワーク組付けを検査する組付け検査方法であって、
前記撮像手段の視野内には、前記検査対象のワークの他に、金型で鋳造された別のワークの鋳造肌のみが存在する場合、その鋳造肌面を前記基準面として、当該別のワークを鋳造した金型毎に移動平均法により前記基準面の位置を補正し、その補正された基準面に対する前記検査対象のワークの位置を検知することを特徴とするワークの組付け検査方法。
【請求項2】
検査対象のワークを撮像する撮像手段と、
該ワークに対して該撮像手段の視線と交わる平面上で光を照射する光照射手段と、
前記光照射手段から当該ワーク及びこれを組み付けた別のワークに光を照射し前記撮像手段で撮像して得られた画像において、前記別のワークの面を基準面として前記検査対象のワークの位置を算出する算出手段と、
前記撮像手段の視野内には、前記検査対象のワークの他に、金型で鋳造された別のワークの鋳造肌のみが存在する場合、当該別のワークを鋳造した金型を認知する認知手段と、
該認知手段で認知された金型毎に移動平均法により前記基準面の位置を補正する補正手段とを備え、
前記算出手段は、前記補正手段で補正された基準面に対する前記検査対象のワークの位置を検知し、その検知した位置から当該ワークの組み付けの正否を判定することを特徴とするワークの組付け検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate