説明

ワーク搬送システム、および搬送室用フレーム構造体

【課題】ワーク搬送時の振動を抑制するのに適したワーク搬送システムを提供する。
【解決手段】ワーク搬送システムAは、ワーク搬送装置4が配置される搬送室1と、搬送室1に隣接して設けられ、ワーク収納用の容器21が載置されるロードポート2と、を備える。搬送室1は、鋼材により構成されるフレーム構造体1Aを含む。フレーム構造体1Aは、床面6に設置され、ワーク搬送装置4が載置される第1フレーム部材11と、この第1フレーム部材11に対して起立状に設けられ、ロードポート2を支持する第2フレーム部材12と、を備える。ワーク搬送装置4が載置されるフレーム構造体1Aは、鋼材によって構成されているため、比較的に比重が大きく、かつ剛性が高い。これにより、ワーク搬送装置4によるワーク搬送の際に当該ワーク搬送装置4において振動が生じても、フレーム構造体1Aにおける振動を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造等においてウエハ等の薄板状のワークを搬送するためのワーク搬送システムに関し、より詳しくは、ワーク搬送装置が配置される搬送室と、この搬送室に隣接して設けられるロードポートとを備えたワーク搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造等の分野において、ウエハ等のワークを搬送する際にワーク搬送用のロボット(ワーク搬送装置)が用いられており、たとえば、ワーク搬送装置が配置される搬送室を備えたワーク搬送システムが知られている(たとえば特許文献1を参照)。
【0003】
図6は、従来のワーク搬送システムの一例を示す。同図に示されたワーク搬送システムBは、搬送室91と、2つのロードポート92と、ワーク処理室93と、ワーク搬送装置94とを備えている。搬送室91は、たとえば所定の内部空間を有する略直方体形状とされており、この搬送室91内にワーク搬送装置94が配置される。ロードポート92は、搬送室91に隣接して設けられており、たとえば搬送室91の側壁部91aに支持されている。このロードポート92には、たとえば複数のワークWを収納したカセット921(容器)が載置される。ワーク処理室93は、搬送室91に対してロードポート92とは反対側に隣接して設けられている。ワーク処理室93においては、加熱処理、加工処理、あるいは検査処理などの処理がワークWに対してなされる。ワーク搬送装置94は、たとえば2段のアーム942,943およびワーク保持用のハンド944が互いに水平面内で回動自在に連結された水平多関節ロボットにより構成される。ワーク搬送装置94においては、2段のアーム942,943、およびハンド944の動作を適宜制御することにより、すべてのロードポート92およびワーク処理室93に対して、ワークWの搬出入が可能とされている。
【0004】
上記構成のワーク搬送システムBにおいて、搬送室91は、据付時の作業性や設計の自由度などを考慮して、たとえば、安価で軽量なアルミ引き抜き材(アルミプロファイル)を用いた骨組み構造を有しており、ワーク搬送装置94は、搬送室91の底面に載置固定される。
【0005】
ワーク搬送装置94によるワーク搬送において、搬送対象物であるワークWは大型化する傾向にある。たとえば半導体製造において、ウエハ(ワークW)のサイズは直径300mmを超えて大型化することが予想される。このようなワークWの大型化は、ワークWの高さ方向および水平方向における搬送距離を増大させる。
【0006】
その一方、ワークWを搬送するための所要時間は、生産性低下を防止する観点から延長することができず、ワークWが大きくなっても同程度もしくはそれ以下に保つ必要がある。したがって、ワークWが大きくなると、アーム942,943およびハンド944の回動動作を相対的に高速で行う必要があり、結果として、ワーク搬送の際の速度や加減速度も増大することになる。
【0007】
また、ワーク搬送装置94におけるワーク搬送においては、各部(アーム942,943およびハンド944)の速度変化に伴う慣性力によって、振動が発生する。そして、上記したようなワークの大型化に伴ってワーク搬送時の速度や加減速度が増大すると、このワーク搬送装置94において生ずる振動も増大する。特に、搬送室91がたとえば上述したように軽量なアルミプロファイルで構成されている場合、搬送室91に撓みや歪みが生じやすく、ワーク搬送装置94において振動が生ずると、その振動に起因して搬送室91が振動する。搬送室91が振動すると、この搬送室91に支持されるロードポート92およびワーク搬送装置94も振動する。また、搬送室91、ロードポート92、およびワーク搬送装置94における振動については、それぞれの振動状態が異なるので、ワーク搬送システムB全体として振動が増大したり、振動減衰の遅延が生じる場合もある。
【0008】
ロードポート92に載置されるカセット921においては、たとえば多数のワークWが、数mm程度の間隔を隔てて積み重なるように保持されており、ロードポート92側でのワークWの受け渡しを適切に行うためには、ワーク搬送を比較的に高精度で行うことが求められる。しかしながら、高速でワーク搬送を行うと、搬送室91、ロードポート92およびワーク搬送装置94(ワーク搬送システムB)の振動も大きくなるため、ワーク搬送を高精度で行うことは困難であった。また、ワーク搬送システムBの振動が大きくなると、当該ワーク搬送システムBの各種の締結部等の緩みやコネクタの接触不良なども発生しやすくなる。このように、ワーク搬送装置94の動作に起因した振動により、種々の不都合が生じ得た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−188231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、ワーク搬送装置が配置される搬送室と、この搬送室に隣接して設けられるロードポートとを備えたワーク搬送システムにおいて、ワーク搬送時の振動を抑制するのに適したワーク搬送システムを提供することを課題としている。また、本発明は、そのようなワーク搬送システムにおける搬送室を構成するのに適した搬送室用フレーム構造体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0012】
本発明の第1の側面によって提供されるワーク搬送システムは、ワーク搬送装置が配置される搬送室と、この搬送室に隣接して設けられ、ワーク収納用の容器が載置されるロードポートと、を備えたワーク搬送システムであって、上記搬送室は、鋼材により構成されるフレーム構造体を含み、上記フレーム構造体は、床面に設置され、上記ワーク搬送装置が載置される第1フレーム部材と、この第1フレーム部材に対して起立状に設けられ、上記ロードポートを支持する第2フレーム部材と、を備えることを特徴としている。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記第1フレーム部材と上記第2フレーム部材とは、リブを介して接合されている。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記第2フレーム部材の上端部と、上記第1フレーム部材における上記第2フレーム部材から離間する端部とは、連結手段により連結されている。
【0015】
好ましい実施の形態においては、上記連結手段は、上記ワーク搬送装置から伝わる振動を抑制するための制振機構を備える。
【0016】
好ましい実施の形態においては、上記第1フレーム部材は、床面を構成するコンクリート層に対して結合手段により固定される。
【0017】
好ましい実施の形態においては、上記搬送室は、上記フレーム構造体の周縁部に取り付けられ、上記フレーム構造体と協働して内部空間を形成するカバー体を備え、上記カバー体は、上記フレーム構造体よりも軽量な材料で構成され、かつ、上記フレーム構造体に対して弾性部材を介して取り付けられる。
【0018】
本発明の第2の側面によって提供される搬送室用フレーム構造体は、ワーク搬送装置が載置される搬送室を構成するフレーム構造体であって、鋼材により構成され、上記ワーク搬送装置が載置される第1フレーム部材と、鋼材により構成され、上記第1フレーム部材に対して起立状に設けられる第2フレーム部材と、を備えることを特徴としている。
【0019】
本発明に係るワーク搬送システムにおいて、ワーク搬送装置が載置されるフレーム構造体は、鋼材によって構成されている。このため、フレーム構造体は、比較的に比重が大きく、かつ剛性が高い。これにより、ワーク搬送装置によるワーク搬送の際に当該ワーク搬送装置において振動が生じても、フレーム構造体における振動を抑制することができる。そして、このフレーム構造体の第2フレーム部材に支持されたロードポートについても、振動を抑制することができる。したがって、上記構成のワーク搬送システムによれば、搬送室(フレーム構造体)、ロードポートおよびワーク搬送装置の振動を抑制することができる。その結果、たとえばワークの大型化にともなって高速でのワーク搬送が要求される場合においても、高精度でワーク搬送を行うことが可能となる。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るワーク搬送システムの全体構成を示す平面図である。
【図2】ワーク搬送装置の側面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う要部断面図である。
【図4】搬送室の分解斜視図である。
【図5】フレーム構造体の床面に対する取付構造を示す斜視図である。
【図6】従来のワーク搬送システムの一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0023】
図1は、本発明に係るワーク搬送システムの一例を示している。本実施形態のワーク搬送システムAは、搬送室1と、3つのロードポート2と、ワーク処理室3と、2台のワーク搬送装置4と、を備え、たとえばウエハ等の薄板状のワークWの搬送を行うように構成されたものである。
【0024】
搬送室1は、所定の内部空間を有する概略直方体形状とされており、この搬送室1内にワーク搬送装置4が配置される。図3および図4に表れているように、搬送室1は、フレーム構造体1Aと、カバー体1Bとを含んで構成されている。フレーム構造体1Aは、搬送室1の骨組み構造を担うものであり、床面に設置される第1フレーム部材11と、この第1フレーム部材11に対して起立状に設けられた第2フレーム部材12とを備えている。第1および第2フレーム部材11,12は、たとえば比較的に比重の大きい鋼材により構成されている。第1および第2フレーム部材11,12は、たとえば形鋼や鋼板を組み合わせて構成することができる。
【0025】
第1フレーム部材11は、搬送室1の底面を担う部分であり、後述するロードポート2が並ぶ方向X1−X2に長手状とされている。この第1フレーム部材11に対して、方向X1−X2に離間して2つのワーク搬送装置4が載置固定されている。第1フレーム部材11において、ワーク搬送装置4が載置される箇所より方向X1−X2の両端寄りには、切欠き11aが設けられており、また、2つのワーク搬送装置4間には、開口11bが形成されている。第1フレーム部材11は、たとえば1つの鋼材から形成してもよいが、複数の鋼材をボルト締結や溶接などの適宜手段により接合して形成することもできる。
【0026】
第2フレーム部材12は、ロードポート2を支持する部分であり、平面視において方向X1−X2と直交する方向Y1−Y2の端部において直立している。第2フレーム部材12は、ロードポート2の配置に対応した3つの開口12aを有し、より詳細には、方向X1−X2の両端部および隣接する開口12a,12a間に配され、上下に延びる4本の縦フレーム121と、上下両端部に配され、方向X1−X2に延びる2本の横フレーム122と、を備えた概略枠状とされている。第2フレーム部材12は、たとえば、複数の鋼材をボルト締結や溶接などの適宜手段により接合して形成される。
【0027】
第1および第2フレーム部材11,12は、複数のリブ13を介して接合されている。本実施形態では、リブ13は、第2フレーム部材12の縦フレーム121に対応した4箇所に設けられており、第1フレーム部材11の方向Y1−Y2における端部ないし中間部と、第2フレーム部材12の縦フレーム121の下端部ないし中間部とに接合している。各リブ13の端面13aは、図3に表れているように、側面視において、第2フレーム部材12から遠ざかるにつれて下方に変位する傾斜状とされている。第1および第2フレーム部材11,12、ならびに複数のリブ13における相互間の接合については、溶接やボルト締結などの適宜手段を採用することができる。
【0028】
本実施形態において、第1フレーム部材11と第2フレーム部材12とは、連結手段5により連結されている。連結手段5は、たとえば、方向X1−X2における両端部付近の2箇所に設けられ、鋼材などの剛性の高い材料からなるフレーム体51と、フレーム体51の中間に設けられる制振機構52(図中においてクロスハッチングで表す)とを備えて構成される。フレーム体51の一方の端部は第1フレーム部材11における第2フレーム部材12から離間する端部に取り付けられ、フレーム体51の他方の端部は第2フレーム部材12の上端部に取り付けられる。
【0029】
制振機構52は、後述するワーク搬送装置4から伝わる振動を抑制するためものである。詳細な図示説明は省略するが、制振機構52は、たとえば弾性部材を有するダンパもしくはリンク部材を有するスタビライザなどを備えて構成される。なお、連結手段5は、上記した制振機構52を具備しない構成としてもよく、たとえば連結手段5全体を剛性の高いフレーム体によって構成してもよい。
【0030】
カバー体1Bは、フレーム構造体1Aと協働して搬送室1の内部空間を形成するものであり、フレーム構造体1Aに取り付けられている。カバー体1Bは、フレーム構造体1Aよりも軽量な材料によって構成されており、詳細な図示は省略するが、たとえばアルミプロファイル材からなる骨組み構造と、この骨組み構造を覆う薄板パネルとを備える。図1および図3に表れているように、カバー体1Bは、たとえば、フレーム構造体1Aの周縁部に対して、たとえばゴムなどを用いて構成された弾性部材1Cを介して取り付けられている。
【0031】
ロードポート2は、搬送室1に隣接して設けられており、ワーク収納用のカセット21を載置するためのものである。ロードポート2は、たとえば、フレーム構造体1Aの縦フレーム121(第2フレーム部材12)に対してボルト締結などの適宜手段によって取り付けられている。ロードポート2に載置されるカセット21は、複数のワークWを積層状に保持可能なホルダ(図示略)を有する。なお、ロードポート2における搬送室1側の端部には、カセット21と搬送室1(第2フレーム部材12の開口12a)との間を開状態あるいは閉状態に切り替えるシャッタ(図示略)が設けられている。
【0032】
ワーク処理室3は、加熱処理、加工処理あるいは検査処理などの処理をワークWに対して行うためのものである。ワーク処理室3は、搬送室1に対して、ロードポート2とは反対側に隣接して設けられている。ワーク処理室3は、方向X1−X2における中央位置に設けられている。なお、ワーク処理室3と搬送室1(カバー体1B)との間には、開閉式のシャッタ(図示略)が設けられる。
【0033】
ワーク搬送装置4は、ロードポート2とワーク処理室3との間でワークWの搬送を行うためのものであり、搬送室1内に配置されている。図2、図3に表れているように、ワーク搬送装置4は、搬送室1のフレーム構造体1Aの第1フレーム部材11に対して固定される固定ベース40と、昇降ベース41と、長手状の下段アーム42および上段アーム43と、ハンド44とを備えている。
【0034】
昇降ベース41は、固定ベース40に支持されており、図示しない昇降駆動機構によって昇降可能とされている。下段アーム42は、昇降ベース41に対して垂直軸O1を中心として回動可能に基端が支持されており、図示しない下段アーム駆動機構によって垂直軸O1周りに回動させられる。上段アーム43は、下段アーム42の先端に対して垂直軸O2を中心として回動可能に基端が支持されており、図示しない上段アーム駆動機構によって垂直軸O2周りに回動させられる。ハンド44は、先端部が二股のフォーク状とされており、上段アーム43の先端に対して垂直軸O3を中心として回動可能に基端が支持されている。ハンド44は、図示しないハンド駆動機構によって垂直軸O3周りに回動させられる。なお、ワーク搬送装置4は、たとえば、真空吸引力を利用してワークWを吸着保持するための図示しないワーク保持機構を備えている。また、固定ベース40の下部側面には、上記各駆動機構やワーク保持機構に対する給電や制御信号の伝送を行うためのコネクタ(図示略)が設けられている。
【0035】
昇降ベース41、アーム42,43、およびハンド44の支持構造、ならびに昇降駆動機構、各アーム駆動機構、ハンド駆動機構、およびワーク保持機構については、詳細な図示説明は省略したが、たとえば特開2003−188231号公報記載の構造と同様の構造によって実現することができる。
【0036】
2台のワーク搬送装置4は、それぞれ、図示しないコントローラによって制御される。各ワーク搬送装置4においては、下段アーム駆動機構、上段アーム駆動機構、およびハンド駆動機構の動作を独立して制御することが可能であり、下段アーム42、上段アーム43、およびハンド44を垂直軸O1,O2,O3周りに回動させることができる。したがって、下段アーム42、上段アーム43、およびハンド44のそれぞれの回動を適宜制御することにより、これらが垂直軸O1,O2,O3周りに回動し得る範囲でハンド44を所望の位置に移動させることができる。また、昇降駆動機構を適宜制御することにより、ハンド44を所定範囲内で所望の高さに上下移動させることができる。そして、ワーク搬送装置4の各駆動機構を制御することにより、ハンド44をロードポート2上のカセット21、あるいはワーク処理室3に進入させて、これらカセット21およびワーク処理室3に対してワークWを搬出入することができる。なお、カセット21あるいはワーク処理室3でのワークWの受け渡しは、昇降ベース41を適宜昇降させ、ハンド44を上下動させることにより行う。
【0037】
なお、固定ベース40と昇降ベース41との間、昇降ベース41と下段アーム42との間、下段アーム42と上段アーム43との間、および上段アーム43とハンド44との間には、それぞれ、図示しないシール部材が介装される。これにより、ワーク搬送装置4の内部空間は外部に対して気密シールされ、たとえばワーク搬送装置4内部のパーティクルが搬送室1へ拡散することは防止される。
【0038】
図1に表れているように、上記構成の2台のワーク搬送装置4は、ワーク搬送時に相互の干渉を防止しうる程度に離間させられ、たとえば搬送室1の方向X1−X2における中央位置から互いに同じ距離の位置に配置されている。
【0039】
本実施形態のワーク搬送システムAは、クリーン環境下で使用される。図3に表れているように、たとえば搬送室1(カバー体1B)の上部には、清浄空気を搬送室1内に供給するためのファンフィルタユニット1Dが設けられている。ワーク搬送システムAが設置される半導体製造設備の建物の床面6には、多数の貫通孔61aが形成された通気床61が設けられている。通気床61は、搬送室1の下方に設けられており、また、通気床61の下方にはダクト62が設けられている。ファンフィルタユニット1Dから清浄空気が供給されると、搬送室1内ではダウンフローが生じ、搬送室1内の空気は、第1フレーム部材11の切欠き11aや開口11b、通気床61、およびダクト62を通じて外部に排出される。このような構成により、搬送室1の内部空間はクリーン環境に維持される。
【0040】
上記構成の搬送室1は、ボルト締結などの結合手段7によって設置される建物に固定されている。具体的には、たとえば、建物の床面6はコンクリート層によって構成されており、図3および図5に表れているように、当該コンクリート層の適所には搬送室1を支持するための支持部63が形成されている。結合手段7は、たとえば引張ボルト71および圧縮ボルト72を備えて構成される。支持部63は、周囲の通気床61よりも隆起しており、この支持部63に対して、フレーム構造体1Aの第1フレーム部材11が引張ボルト71および圧縮ボルト72を介して固定される。このような構成により、第1フレーム部材11および支持部63は、これらの間に隙間を有する状態で高さ調整自在に結合されており、搬送室1のレベル調整が可能となっている。
【0041】
本実施形態のワーク搬送システムAにおいて、ワーク搬送装置1が載置されるフレーム構造体1A(第1フレーム部材11)は、鋼材によって構成されている。このため、フレーム構造体1Aは、比較的に比重が大きく、かつ剛性が高い。これにより、ワーク搬送装置4によるワーク搬送の際に当該ワーク搬送装置4において振動が生じても、フレーム構造体1Aにおける振動を抑制することができる。そして、このフレーム構造体1Aの第2フレーム部材12に支持されたロードポート2についても、振動を抑制することができる。したがって、上記構成のワーク搬送システムAによれば、搬送室1(フレーム構造体1A)、ロードポート2およびワーク搬送装置4の振動を抑制することができる。その結果、たとえばワークWの大型化にともなって高速でのワーク搬送が要求される場合においても、高精度でワーク搬送を行うことが可能となる。
【0042】
搬送室1を構成するフレーム構造体1Aは、ワーク搬送装置4が載置される第1フレーム部材11と、ロードポート2を支持する第2フレーム部材12とによって構成されている。フレーム構造体1Aの構成材料である鋼材は比較的に材料費が高いところ、上記構成によれば、フレーム構造体1Aの占める範囲を必要最小限に抑えることができ、搬送室1の作製コストの上昇を防止することができる。
【0043】
フレーム構造体1Aの第1および第2フレーム部材11,12は、リブ13を介して溶接接合されている。このような構成によれば、フレーム構造体1Aの剛性をより高めることができ、フレーム構造体1A、ロードポート2およびワーク搬送装置4の振動を抑制するうえで好適である。
【0044】
フレーム構造体1Aにおいて、第1および第2フレーム部材11,12の端部どうしは、連結手段5によって連結されている。このよう連結手段5による第1および第2フレーム部材11,12の連結構造によれば、フレーム構造体1Aの剛性を高めるのに適している。また、連結手段5は制振機構52を備えるため、フレーム構造体1Aは、振動吸収能力により優れている。このような連結手段5を具備する構成は、フレーム構造体1Aの振動抑制に資する。
【0045】
フレーム構造体1Aは、建物の床面6を構成するコンクリート層(支持部63)に対して、ボルト締結などの結合手段7により結合されている。本実施形態のワーク搬送システムAはクリーン環境下で使用され、搬送室1の直下には通気床61が設けられるが、フレーム構造体1Aは、通気床61との間に隙間を確保しつつコンクリート層に対して強固に結合される。したがって、上記構成によれば、搬送室1の内部空間をクリーン環境に維持しつつ、ワーク搬送システムAが設置される建物を振動吸収の重量物として利用することができる。このことは、フレーム構造体1Aの振動抑制に資する。
【0046】
搬送室1を構成するカバー体1Bは、軽量な材料で構成されるとともに、弾性部材1Cを介してフレーム構造体1Aの周縁部に取り付けられている。このような構成によれば、たとえば搬送室1(カバー体1B)に隣接して設けられるワーク処理室3における処理によって振動が発生しても、当該振動は弾性部材1Cによって吸収される。したがって、ワーク処理室3側からの振動の影響を減らすことができ、搬送室1(カバー体1B)の軽量化および作製コストの削減を図ることができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の技術的範囲は上記した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るワーク搬送システムおよび搬送室用フレーム構造体の各部の具体的な構成は、発明の思想から逸脱しない範囲内で種々な変更が可能である。
【0048】
上記実施形態においては、搬送室1内に2台のワーク搬送装置4が配置された場合を例に挙げて説明したが、搬送室1内に配置されるワーク搬送装置4の数量はこれに限定されない。たとえば搬送室内に1台のワーク搬送装置が配置される構成としてもよい。
【0049】
上記実施形態においては、ワーク搬送装置4について、1つのハンド44を備えて構成されたワンハンド式の場合を例に挙げて説明したが、たとえば2つのハンドを備えて構成されたいわゆるダブルハンド式のワーク搬送装置についても本発明は適用可能である。
【0050】
上記実施形態において、フレーム構造体1Aの第1フレーム部材11は、建物の床面6と第1フレーム部材11との間に隙間を介在させた状態にて、床面6を構成するコンクリート層に対して結合手段7(引張ボルト71および圧縮ボルト72)を用いて結合されていたが、第1フレーム部材11と床面側との結合に係る構造は、これに限定されない。たとえば、結合手段については、たとえばダンパなどの振動吸収機能を具備する構成としてもよく、また、第1フレーム部材と床面との間に隙間を介在させずにアンカーボルトを用いて結合する構成としてもよい。また、本発明に係るワーク搬送システムをクリーン環境下で使用しない場合には、第1フレーム部材の下面全体を床面に密着させてもよい。
【符号の説明】
【0051】
A ワーク搬送システム
O1,O2,O3 垂直軸
1 搬送室
2 ロードポート
3 ワーク処理室
4 ワーク搬送装置
5 連結手段
6 床面
7 結合手段
1A フレーム構造体
1B カバー体
1C 弾性部材
11 第1フレーム部材
11a 切欠き
11b 開口
12 第2フレーム部材
12a 開口
121 縦フレーム
122 横フレーム
13 リブ
13a 端面
21 カセット(容器)
40 固定ベース
41 昇降ベース
42 下段アーム
43 上段アーム
44 ハンド
51 フレーム体
52 制振機構
61 通気床
61a 貫通孔
62 ダクト
63 支持部
71 引張ボルト
72 圧縮ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク搬送装置が配置される搬送室と、この搬送室に隣接して設けられ、ワーク収納用の容器が載置されるロードポートと、を備えたワーク搬送システムであって、
上記搬送室は、鋼材により構成されるフレーム構造体を含み、
上記フレーム構造体は、床面に設置され、上記ワーク搬送装置が載置される第1フレーム部材と、この第1フレーム部材に対して起立状に設けられ、上記ロードポートを支持する第2フレーム部材と、を備えることを特徴とする、ワーク搬送システム。
【請求項2】
上記第1フレーム部材と上記第2フレーム部材とは、リブを介して接合されている、請求項1に記載のワーク搬送システム。
【請求項3】
上記第2フレーム部材の上端部と、上記第1フレーム部材における上記第2フレーム部材から離間する端部とは、連結手段により連結されている、請求項1または2に記載のワーク搬送システム。
【請求項4】
上記連結手段は、上記ワーク搬送装置から伝わる振動を抑制するための制振機構を備える、請求項3に記載のワーク搬送システム。
【請求項5】
上記第1フレーム部材は、床面を構成するコンクリート層に対して結合手段により固定される、請求項1ないし4のいずれかに記載のワーク搬送システム。
【請求項6】
上記搬送室は、上記フレーム構造体の周縁部に取り付けられ、上記フレーム構造体と協働して内部空間を形成するカバー体を備え、
上記カバー体は、上記フレーム構造体よりも軽量な材料で構成され、かつ、上記フレーム構造体に対して弾性部材を介して取り付けられる、請求項1ないし5のいずれかに記載のワーク搬送システム。
【請求項7】
ワーク搬送装置が載置される搬送室を構成するフレーム構造体であって、
鋼材により構成され、上記ワーク搬送装置が載置される第1フレーム部材と、鋼材により構成され、上記第1フレーム部材に対して起立状に設けられる第2フレーム部材と、を備えることを特徴とする、搬送室用フレーム構造体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−164732(P2012−164732A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22405(P2011−22405)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】