説明

ワートマニン−ラパマイシンコンジュゲートおよびその使用

被験者への投与後にラパマイシンとワートマニンとが分離するような様式でラパマイシンとワートマニンとを互いに連結させることにより形成される、ラパマイシン−ワートマニンコンジュゲートについて開示する。抗腫瘍用のレジメンにおけるそのようなコンジュゲートの使用について開示する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗腫瘍活性を有するラパマイシン−ワートマニンコンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
ワートマニンおよびラパマイシンは、それぞれ、ホスファチジルイノシトール−3(OH)−キナーゼ(PI3K)およびmTORの高度に強力かつ特異的な阻害剤の2つのクラスである。PI3Kは、p85調節サブユニットおよびp110触媒サブユニットから成るヘテロ二量体酵素である。PI3Kは、増殖因子受容体刺激に応答して、細胞膜での脂質セカンドメッセンジャーであるホスファチジルイノシトール−3,4,5−三リン酸(PIP3)の産生を触媒する。次に、PIP3が、広範な下流の細胞基質の活性化に寄与する。PI3Kの下流にある最も重大なシグナル伝達介在物質としては、セリン/トレオニンキナーゼAKT、およびラパマイシンの哺乳動物標的(mTOR)が挙げられる。AKTは、優勢な生存シグナルを伝達し、多数の細胞死/アポトーシスタンパク質および細胞周期因子を直接リン酸化することにより、増殖を促進する。mTORは、細胞のタンパク質翻訳の制御を介した中心的な細胞増殖調節物質である。したがって、PI3K/AKT/TOR経路は、細胞の増殖(profileration)、増殖(growth)、生存および血管新生にとって決定的に重要である。
【0003】
【化1】

【0004】
ワートマニン(式(I))は、そのC−20位での求電子性のフラン環の開環によりPI3KのATP結合ポケット中のリシンに結合する、ナノモル濃度でのPI3Kの不可逆的阻害薬であり、動物における腫瘍異種移植片に対する抗腫瘍活性を有することが報告されている。[Schultz,R.M.ら、(1995)、「In vitro and in vivo antitumor activity of the phosphatidylinositol−3−kinase inhibitor,wortmannin」、Anticancer Res.、15、1135〜1140]。これまでに、ワートマニンを超える向上した特性を有する類似体を探索する取組みにおける、ワートマニン誘導体の合成およびSAR研究についての記載がある。例えば、ジボランを用いたワートマニンの還元により調製された17β−ヒドロキシワートマニンは、ワートマニンに比べ10倍の活性増加を示し、PI3KのIC50をナノモル以下の範囲(IC50は0.50nMであった)に抑えた。しかしながら、C3Hの乳房モデルにおける17β−ヒドロキシワートマニンの抗腫瘍活性は、0.5mg/kgの用量では阻害を示さず、1.0mg/kgの用量では毒性を示した。こうした知見から、著者らは、阻害薬の効力および抗腫瘍活性のためにワートマニンおよび関連の類似体の求電子性のC−20位への求核付加は必要であるが、この機序は、観察された毒性につながりがあるらしい、と結論するに至った。[Norman,Bryan H.ら、(1996)、「Studies on the Mechanism of Phosphatidylinositol 3−Kinase Inhibition by Wortmannin and Related Analogs」、J.Med.Chem.、39、1106〜1111、1109〜1110]。
【0005】
最近、ペグ化17β−ヒドロキシワートマニン(PEG−17−HWTコンジュゲート)は、17β−ヒドロキシワートマニンと比較してin vivoでの忍容性向上を示すことが見出された[Yu Kら、(2005)、「PWT−458、A Novel Pegylated−17−Hydroxywortmannin,Inhibits Phosphatidylinositol 3−Kinase Signaling and Suppresses Growth of Solid Tumors」、Cancer Biol Ther.、4(5)]。
【0006】
17β−ヒドロキシワートマニンをそのC−17ヒドロキシル部位でアセチル化すると活性の劇的な喪失が示され、その結果、著者らは「活性部位は、C−17での親油性または立体的なかさ高さを受け入れることができない」との結論に至った。[Creemer,L.C.ら、(1996)、「Synthesis and in Vitro Evaluation of New Wortmannin Esters:Potent Inhibitors of Phosphatidylinositol 3−Kinase」、J.Med.Chem.、39、5021〜5024、5022]。この結論は、その後解明された、ワートマニンに結合したPI3KのX線結晶構造と一致する[Walker,Edward H.ら、(2000)、「Structural Determinants of Phosphoinositide 3−Kinase Inhibition by Wortmannin,LY294002,Quercetin,Myricetin,and Staurosporine」、Molecular Cell、6(4)、909〜919]。
【0007】
その他のワートマニン誘導体は、C−20開環化合物である。C−20位で求核剤を用いてワートマニンを反応させることにより、フラン環が開く。このような開環化合物は、毒性および生物学的安定性が改善された一定範囲の生物活性を示す[Wipf,Peterら、(2004)、「Synthesis and biological evaluation of synthetic viridins derived from C(20)−heteroalkylation of the steroidal PI−3−kinase inhibitor wortmannin」、Org.Biomol.Chem.、2、1911〜1920]。Powisへの米国特許出願公開第US2003/0109572号も参照のこと。
【0008】
ラパマイシン(式(II))は、強力なmTOR阻害薬であり、腫瘍の増殖を阻害することが報告されている[Eng,C.P.ら、(1984)、「Activity of rapamycin against transplanted tumors」、J.Antibiot.、37、1231〜1237]。ラパマイシンの前臨床試験により、乳癌、大腸癌、前立腺癌および腎細胞癌など多くの固形腫瘍型に対する効力が確認され、典型的なIC50は<50nMであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
必要とされているのは、腫瘍治療の代替療法である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ラパマイシン−ワートマニンコンジュゲートを提供する。一実施形態では、本コンジュゲートは、式:
Rap−L−Wort
を有することを特徴とするか、またはその薬学上許容され得る塩もしくは水和物である(式中、Rapはラパマイシンであり、Wortはワートマニンであり、Lは、ラパマイシンおよびワートマニンに結合するリンカーである)。このコンジュゲートは、別々の化合物としてのラパマイシンおよびワートマニンの送達と比較した場合、抗腫瘍活性の向上および毒性の低下を示している。
【0011】
別の態様では、組成物が提供され、その組成物は、Rap−L−Wortコンジュゲートと薬学上許容され得る担体とを含有する。
【0012】
さらに別の態様では、抗腫瘍療法において有用な医薬を調製するための本明細書に記載のラパマイシン−ワートマニンコンジュゲートの使用が提供される。
【0013】
本発明のさらに別の態様および利点は、当業者には容易に明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】血漿中の42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体のin vitroでの切断ルートを示す図である。この代謝切断経路は、実施例15に記載の要領で、本コンジュゲートをヌードマウスの血液と共にインキュベートすることにより観察された。
【図2】複数サイクルの治療における、42,17’連結ワートマニン−アジペート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体のU87MG神経膠腫キセノグラフに対する持続的有効性を示すグラフである。
【図3】週1回×2ラウンド投与した際の42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体;ラパマイシン;17−ヒドロキシワートマニンN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体;およびラパマイシンと17−ヒドロキシワートマニンN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体との物理的組合せのU87MG神経膠腫キセノグラフに対する有効性を示すグラフである。
【図4】3通りの投与濃度で単回投与した後の42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体、およびラパマイシンのU87MG神経膠腫キセノグラフに対する有効性を示すグラフである。
【図5】週1回×4ラウンド投与した際の42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体;ラパマイシン;17−ヒドロキシワートマニンN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体;およびラパマイシンと17−ヒドロキシワートマニンN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体との物理的組合せのHT29大腸腫瘍キセノグラフに対する有効性を示すグラフである。
【図6】42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体;Intron(登録商標)A試薬;および42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体とIntron(登録商標)A試薬との組合せのA498腎細胞癌キセノグラフに対する有効性を示すグラフである。
【図7】42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体;Avastin(登録商標)薬;および42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体とAvastin(登録商標)薬との組合せのA498腎細胞癌キセノグラフに対する有効性を示すグラフである。23日目、ビヒクル群に、42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体とAvastin(登録商標)薬との組合せを再投与した。43日目、42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体群およびAvastin(登録商標)薬群に、42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体とAvastin(登録商標)薬との組合せを再投与した。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、式:
Rap−L−Wort
を有するラパマイシン−ワートマニンコンジュゲート、またはその薬学上許容され得る塩もしくは水和物(式中、Rapはラパマイシンであり、Wortはワートマニンであり、Lは、ラパマイシンおよびワートマニンに結合するリンカーである)を提供する。さらに、このコンジュゲートを含有する組成物、および抗腫瘍剤として有用な医薬を調製するためのその使用方法も提供される。
【0016】
当該Rap−L−Wortコンジュゲートは、単独の薬剤またはこの2種の薬剤の物理的(非連結的)組合せのいずれかを上回る明確な利益をもたらすことが期待される。理論に拘束されることを望むものではないが、特定の実施形態では、ラパマイシンにワートマニンを共有結合させると、ラパマイシン単独よりも溶解度が向上すると考えられている。溶解度向上は、臨床開発および製剤において重要な意味をもつ。さらに、癌療法は、組成物を多様に組み合わせたカクテルと標準的な化学療法とで構成される傾向があるため、2つの異なる臨床用製剤を必要とする2種の別々の阻害薬ではなく単一の水溶性の二重阻害薬を使用する単純性は、化合物製剤の観点から有利である。そのうえ、共有結合したこのRap−L−Wort化合物は、単独の薬剤をいずれもしのぐこと、さらに、2種の物理的組合せもしのぐことが期待される。例えば、予備実験では、Rap−L−Wort化合物は、2種の薬剤の物理的組合せを上回る、抗腫瘍性の有効性向上および忍容性向上を示している。
【0017】
本明細書で定義する場合、用語「ラパマイシン」は、上に示したラパマイシン核を有する免疫抑制化合物の1つのクラスを定義する。一実施形態では、本発明のコンジュゲート中のラパマイシン核は、式(IIa):
【0018】
【化2】

(式中、Rは、OH、エステル、エーテル、アミド、カルボネート、カルバメート、ホスフェートおよびテトラゾールの中から選択され;Rは、OH、エステルおよびエーテルの中から選択され;Rは、OH、エステル、アミド、カルボネート、カルバメートおよびエーテルの中から選択され;Rは、H、OH、エステルおよびエーテルの中から選択され;Rは、OH、エステルおよびエーテルの中から選択される)を有する。このコアに関しては、ラパマイシンは、RがOHであり、RがOMeであり、RがOHであり、RがOMeであり、RがOMeであることを特徴とする。別の実施形態では、Rは、OH、エステル、エーテル、およびLへの結合点の中から選択される。
【0019】
本明細書で定義する場合、用語「ラパマイシン」に含まれるものとしては、ラパマイシン、ならびに、ラパマイシンのエステル、エーテル、アミド、カルボネート、カルバメート、スルホネート、オキシム、ヒドラゾンおよびヒドロキシアミン、ならびに、例えば還元または酸化、テトラゾールなどの求核剤での置換により核上の官能基が改変されているラパマイシン、多様なデスメチルラパマイシン誘導体などラパマイシンの代謝産物、または開環ラパマイシン(米国特許第5,252,579号に記載のセコラパマイシンなど)がある。用語ラパマイシンには、ラパマイシンの薬学上許容され得る塩も包含されるが、ラパマイシンは、酸性部分または塩基性部分をいずれか有することから、そのような塩を形成する能力をもつ。
【0020】
一実施形態では、先に定義するラパマイシンコアは、41−デスメトキシラパマイシンを除外する。
【0021】
他に特定しない限り、「アミド」は−CONH−であり、式中の炭素原子は、通常は炭化水素基に結合する。アミドがラパマイシンコアのR〜Rのいずれかの置換基であるとき、Nはラパマイシンコアへの結合点を形成する。
【0022】
「カルボネート」は−OC(O)O−基を有する。カルボネートがラパマイシンコアのR〜Rのいずれかの置換基であるとき、一方の酸素原子は通常は炭化水素基に結合し、他方の酸素原子はラパマイシンコアへの結合点を形成する。
【0023】
「カルバメート」は−NH(CO)O−基を有し、式中の窒素または酸素のいずれかが、通常は炭化水素基に結合する。カルバメートがラパマイシンコアのR〜Rのいずれかの置換基であるとき、OまたはNのいずれかが、ラパマイシンコアへの結合点を形成する。
【0024】
「スルホネート」は−S(O)O−基を有し、式中のS原子は、通常は炭化水素基に結合する。スルホネートがラパマイシンコアのR〜Rのいずれかの置換基であるとき、Oはラパマイシンコアへの結合点を形成する。
【0025】
「ホスフェート」は−OP(O)(OR)−基を有し(式中、Rは、アルキル、アリール、アルケニルのいずれかである)、ホスフェートがラパマイシンコアのR〜Rのいずれかの置換基であるとき、Oはラパマイシンコアへの結合点を形成する。
【0026】
「エーテル」は構造−O−を有し、式中の酸素上の一方の基は、通常は炭化水素基である。エーテルがラパマイシンコアのR〜Rのいずれかの置換基であるとき、Oはラパマイシンコアへの結合点を形成する。
【0027】
「エステル」は構造−C(O)O−を有し、式中の炭素原子は、通常は炭化水素基に結合する。エステルがラパマイシンコアのR〜Rのいずれかの置換基であるとき、Oはラパマイシンコアへの結合点を形成する。このようなエステルの一例は、ラパマイシンがCCI−779であり、Rが、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸を有するエステルである場合である。
【0028】
本明細書で使用する場合、薬学上許容され得る塩としては、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、フッ化水素、硫酸、クエン酸、マレイン酸、酢酸、乳酸、ニコチン酸、コハク酸、シュウ酸、リン酸、マロン酸、サリチル酸、フェニル酢酸、ステアリン酸、ピリジン、アンモニウム、ピペラジン、ジエチルアミン、ニコチンアミド、ギ酸、尿素、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リチウム、ケイ皮酸、メチルアミノ、メタンスルホン酸、ピクリン酸、酒石酸、トリエチルアミノ、ジメチルアミノおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのものが挙げられるが、これらに限定されない。これ以外に薬学上許容され得る塩は、当業者には公知である。
【0029】
このコア(IIa)に関しては、ラパマイシンは、RがOHであり、RがOMeであり、RがOHであり、RがOMeであり、RがOMeであることを特徴とする。
【0030】
用語「O−デスメチルラパマイシン」および「デスメチルラパマイシン」は、他に特定しない限り、文献および本明細書を通して互換的に使用される。これらの用語は、示した基本のラパマイシン核を有するが、1つまたは複数のメチル基を欠く免疫抑制化合物のクラスを指す。一実施形態では、ラパマイシン核は、7位、32位もしくは41位またはその組合せからメチル基を欠く。デスメチルラパマイシンの生成についてはこれまでに記載がある。例えば、41−デスメチルラパマイシン[国際特許公開第WO2006/095185号およびWO2004/007709号]を参照のこと。他のデスメチルラパマイシンの合成は、ラパマイシン核中の他の位置からメチル基を欠くように遺伝子操作してよい。例えば、3−デスメチルラパマイシン[米国特許第6,358,969号]および17−デスメチルラパマイシン[米国特許第6,670,168号]を参照のこと。
【0031】
用語「デスメトキシラパマイシン」または「デスメトキシ」ラパログは、メトキシ基(OMe)を欠くラパマイシンまたはラパログコアを指す。一実施形態では、このラパマイシンは、41−デスメトキシラパマイシンを除外する。式(IIa)に関しては、Rがリンカーへの結合点でないとき、Rは、O基またはOMeでなければならない(すなわち、このラパマイシンは41−デスメトキシラパマイシンではない)。
【0032】
一実施形態では、ラパマイシンのエステルおよびエーテルは、ラパマイシン核の42位および/または31位のヒドロキシル基を有し、27位(27−ケトンの化学的還元後)のヒドロキシル基のエステルおよびエーテルであり、オキシム、ヒドラゾンおよびヒドロキシルアミンは、42位(42−ヒドロキシル基の酸化後)のケトン由来であり、ラパマイシン核の27−ケトン由来である。
【0033】
別の実施形態では、ラパマイシンの42−および/または31−エステルおよびエーテルが、以下の特許に記載されている:アルキルエステル(米国特許第4,316,885号);アミノアルキルエステル(米国特許第4,650,803号);フッ化エステル(米国特許第5,100,883号);アミドエステル(米国特許第5,118,677号);カルバメートエステル(米国特許第5,118,678号、同第5,411,967号、同第5,480,989号、同第5,480,988号、同第5,489,680号);アミノカルバメートエステル(米国特許第5,463,048号);シリルエーテル(米国特許第5,120,842号);アミノエステル(米国特許第5,130,307号);アセタール(米国特許第5,51,413号);アミノジエステル(米国特許第5,162,333号);スルホネートおよびスルフェートのエステル(米国特許第5,177,203号);エステル(米国特許第5,221,670号);アルコキシエステル(米国特許第5,233,036号);O−アリール、O−アルキル、O−アルケニルおよびO−アルキニルのエーテル(米国特許第5,258,389号);カルボネートエステル(米国特許第5,260,300号);アリールカルボニルおよびアルコキシカルボニルのカルバメート(米国特許第5,262,423号);カルバメート(米国特許第5,302,584号);ヒドロキシエステル(米国特許第5,362,718号);ヒンダードエステル(米国特許第5,385,908号);複素環エステル(米国特許第5,385,909号);gem−二置換エステル(米国特許第5,385,910号);アミノアルカン酸エステル(米国特許第5,389,639号);ホスホリルカルバメートエステル(米国特許第5,391,730号);ヒンダードN−オキシドエステル(米国特許第5,491,231号);ビオチンエステル(米国特許第5,504,091号);O−アルキルエーテル(米国特許第5,665,772号);およびラパマイシンのPEGエステル(米国特許第5,780,462号)。これらのエステルおよびエーテルの調製については、上に掲載した特許文献中に記載がある。
【0034】
さらに別の実施形態では、ラパマイシンの27−エステルおよびエーテルが、米国特許第5,256,790号に記載されている。これらのエステルおよびエーテルの調製については、上に掲載した特許文献中に記載がある。
【0035】
また別の実施形態では、ラパマイシンのオキシム、ヒドラゾンおよびヒドロキシルアミンが、米国特許第5,373,014号、同第5,378,836号、同第5,023,264号および同第5,563,145号に記載されている。このようなオキシム、ヒドラゾンおよびヒドロキシルアミンの調製については、上に掲載した特許文献中に記載がある。42−オキソラパマイシンの調製については、米国特許第5,023,263号に記載がある。
【0036】
別の実施形態では、ラパマイシンには、ラパマイシン[米国特許第3,929,992号]、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸を有するラパマイシン42−エステル[米国特許第5,362,718号]、42−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシン[米国特許第5,665,772号]および42−エピ−テトラゾリルラパマイシン[2006/0198870A1]が含まれる。ラパマイシンのヒドロキシエステル(CCI−779など)の調製および使用については、米国特許第5,362,718号および同第6,277,983号に記載がある。一実施形態では、42−ヘミスクシネート、42−ヘミグルタレートおよび42−ヘミアジペートなど、ジカルボン酸を有する42−エステル、ならびに式(IIb)の42−エステルが、本コンジュゲートの合成に使用される。
【0037】
【化3】

【0038】
別の態様では、mTOR阻害薬−L−ワートマニン複合体が提供される。本明細書で使用する場合、用語「mTOR阻害薬」は、G1からSの細胞周期の進行を遮断することにより細胞複製を阻害する化合物またはリガンド、またはその薬学上許容され得る塩を指す。この用語には、中性の三環化合物であるラパマイシン(シロリムス)、および例えば、ラパマイシン誘導体、ラパマイシン類似体など他のラパマイシン化合物、mTOR活性を阻害する他のマクロライド化合物、および用語「ラパマイシン」の以下の定義内に含まれる全ての化合物が含まれる。一実施形態では、mTOR阻害薬は、本明細書で定義するラパマイシンである。
【0039】
別の実施形態では、FK−506−L−ワートマニン複合体が提供される。例えば、そのような複合体は、以下に示す式(III)の構造を有するFK−506化合物由来のFK−506の32−エステル(式A)を利用してよい。
【0040】
【化4】

【0041】
別の実施形態では、mTOR阻害薬−L−wortコンジュゲートが記載されるが、但し、FK−506化合物は、本明細書に記載のコンジュゲートから除外される。
【0042】
また別の実施形態では、ラパマイシン−L−ワートマニンが記載されるが、41−デスメトキシラパマイシンは除外する。
【0043】
さらに別の実施形態では、mTOR阻害薬−L−ワートマニンが記載されるが、次の構造のラパマイシンは除外する:
【0044】
【化5】

[式中、Rは、OH、エステル、エーテル、およびLへの結合点の中から選択され(このLは、前記の基の1つを介してコアに結合し得る);Rは、メチルまたはHであり;Rは、H、OH、エステル、エーテル、およびリンカーへの結合点の中から選択され(このリンカーは、前記の基の1つを介してコアに結合し得る);Rは、OH、エステル、エーテル、アミド、カルボネート、カルバメート、ホスフェート、およびリンカーへの結合点の中から選択され(このリンカーは、前記の基の1つを介してコアに結合し得る);R、RおよびRは、H、アルキル、ハロおよびヒドロキシルの中から独立に選択され;R、Rは、H、Hまたは=Oであり;R10は、H、アルキル、ハロおよびヒドロキシルの中から選択され;X”は、結合もしくはCHR11であるか;または、−CHR−X”−CHR−は
【0045】
【化6】

であり、
【0046】
11、R12およびR13は、H、アルキル、ハロおよびヒドロキシルの中から独立に選択され;Rは、
【0047】
【化7】

の中から選択され、
【0048】
14およびR15は、H、OH、ハロゲン、チオール、アミン、アルキル、エステル、エーテル、アミド、カルボネート、カルバメート、スルホネート、ホスフェート、テトラゾール、およびリンカーへの結合点の中から独立に選択される(このリンカーは、前記の基の1つを介してコアに結合し得る)]。
【0049】
本明細書に記載のワートマニンは、ワートマニン核の誘導体として化学的または生物学的に改変されていることがあっても生物活性は保持しているワートマニンおよび化合物を指す。したがって、用語「ワートマニン」は、ワートマニン、ならびに、ワートマニンのエステル、エーテル、オキシム、ヒドラゾンおよびヒドロキシアミン、ならびに、例えば還元または酸化により核上の官能基が改変されているワートマニン、ワートマニンの代謝産物または開環ワートマニンを包含する。用語ワートマニンには、ワートマニンの薬学上許容され得る塩も包含されるが、ワートマニンは、酸性部分または塩基性部分をいずれか有することから、そのような塩を形成する能力をもつ。例えば、米国特許第5,378,725号を参照のこと。
【0050】
一実施形態では、「ワートマニン」は、以下に示す式(Ia)のコア構造:
【0051】
【化8】

(式中、R11は、O、OH、エステル、カルボネート、カルバメートおよびエーテルの中から選択され;R12およびR13は、Oヘテロ原子を介して互いに結合しているか、または、R12は、NR、SRおよびORの中から選択され、R13は、OH、エステル、エーテル、カルボネートおよびカルバメートの中から選択され、R、R、RおよびRは、水素、ヒドロキシル、アルキル、アルケニル、アリール、複素環およびアラルキルの中から独立に選択されるか、または、RおよびRは一緒になって環を形成してもよく;R15は、H、O、OH、エステル、カルボネートおよびカルバメートの中から選択される)
を有する化合物のクラスであることを特徴とする。
【0052】
別の実施形態では、R11はOであり、R15はOAcであり、R12およびR13は、Oヘテロ原子を介して互いに結合してワートマニンコアを形成する。
【0053】
またさらなる実施形態では、R12は、ジエチルアミン、ジアリルアミン、N,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン、ピペリジンおよびN,N−ジメチル−N’−エチル−エチレンジアミンの中から選択され、R13は−OHである。
【0054】
さらなる実施形態では、「ワートマニン」は、以下に示す式(Ia1)のコア構造:
【0055】
【化9】

(式中、R11は、O、OH、エステル、カルボネート、カルバメート、エーテル、およびLへの結合点の中から選択され;R12およびR13は、Oヘテロ原子を介して互いに結合しているか、または、R12は、エステル、エーテル、チオエーテル、チオエステル、アミノ、およびLへの結合点の中から選択され、R13は、OH、エステル、カルボネート、カルバメート、エーテル、およびLへの結合点の中から選択され;R14は、OH、エステル、エーテル、およびLへの結合点の中から選択され;R15は、O、OH、エステル、カルボネート、カルバメート、およびLへの結合点の中から選択され;R11、R12、R13、R14およびR15の少なくとも1つは、Lへの結合点である)
を有する化合物のクラスであることを特徴とする。
【0056】
またさらなる実施形態では、Lは、R11、R12、R13、R14またはR15の1つを介してワートマニンコアに結合する。
【0057】
またさらなる実施形態では、R12は、エステル、エーテル、チオエーテル、チオエステル、およびLへの結合点の中から選択される。別の実施形態では、R12はアミノである。さらなる実施形態では、R12はNH以外のアミノである。また別の実施形態では、R12はNRであり、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−(アルキル)−O−(アルキル)−、−(アルキル)−NR−、−(アルキル)−C(=O)NR−、シクロアルキル、アリールおよび複素環基の中から独立に選択され、但し、RおよびRが両方ともHであることはできないか、または、RおよびRは、一緒になって、最大3個のヘテロ原子を有する3から7員の複素環式環を形成してよく、この環は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、オキソ、アミノ、シアノ、C〜Cペルフルオロアルキル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アリールおよびヘテロアリールの中から独立に選択される1つから3つの置換基により置換されていてもよく;RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキルおよび複素環の中から独立に選択されるか、または、RおよびRは、一緒になって、最大3個のヘテロ原子を有する3から7員の環式環または複素環式環を形成し、この環は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、オキソ、アミノ、シアノおよびC〜Cペルフルオロアルキルの中から独立に選択される1つから3つの置換基により置換されていてもよい。さらなる実施形態では、RはHでありRはフェニルであるか、または、RおよびRは低級アルキルである。またさらなる実施形態では、R11はOである。また別の実施形態では、R12およびR13は、Oヘテロ原子を介して互いに結合している。
【0058】
一実施形態では、ワートマニンは、フラン環が開いている、すなわち、R12およびR13が独立の置換基である、開環ワートマニンであってよい。ワートマニンの求電子性のC−20位への求核付加の結果、フラン環が開いているワートマニン誘導体が得られる。そのような開環化合物については記載がある(Wipf,Peterら、(2004)、「Synthesis and biological evaluation of synthetic viridins derived from C(20)−heteroalkylation of the steroidal PI−3−kinase inhibitor wortmannin」、Org.Biomol.Chem.、2、1911〜1920);Powisへの米国特許出願公開第2003/0109572号、および同第2006/0128793号(2005年10月10日出願の出願第11/248,510号)。
【0059】
別の実施形態では、このワートマニン誘導体は、17−ヒドロキシワートマニンである。17−ヒドロキシワートマニンは、例えばジボランを用いたワートマニンの還元により調製してよい。17−ヒドロキシワートマニンおよび他の誘導体は、米国特許出願公開第2004/0213757号および同第2006/0128793号により調製してもよい。さらなるワートマニン誘導体は、C−17ヒドロキシル基のアセチル化から誘導してよい。17−ヒドロキシワートマニンをアミンなどの求核剤で処理して、フラン環開環化合物を得ることができる。また、17−ヒドロキシワートマニンを17位でホルミル化してから求核剤で処理して、フラン環開環化合物を得ることもできる。
【0060】
別の実施形態では、このワートマニン誘導体は11−O−デスアセチルワートマニンである。11−O−デスアセチルワートマニンは、文献に記載の手順により調製してよい(Creemer C.L.ら、(1996)、「Synthesis and in vitro Evaluation of New Wortmannin Esters:Potent Inhibitors of Phosphatidylinositol 3−Kinase」、J.Med.Chem.39、5021〜5024)。さらなる11−O−デスアセチルワートマニン誘導体は、求核剤を用いたフラン環開環化合物である。
【0061】
別の実施形態では、ワートマニンは、PEGなどの水溶性のポリマーに、米国特許出願公開第2004/0213757号および同第2006/0128793号(2005年10月13日出願の米国特許出願第11/248,510号)に記載のようにコンジュゲートしたものであってよい。
【0062】
生合成によるワートマニンの作製は当技術分野において公知であり、ワートマニンから誘導体が合成される。
【0063】
コンジュゲート
コンジュゲートは、リンカーを介してラパマイシンとワートマニンとを連結することにより形成される。適切には、コンジュゲートを被験者に投与した後、ラパマイシンまたはワートマニンの一方または両方から、全体的または部分的にリンカーが外れる。
【0064】
このリンカーは、限定することなく任意の過程、例えば、加水分解、酵素的に、pHなどにより外れてよい。一実施形態では、リンカーは加水分解性である。別の実施形態では、リンカーは酵素的に切断される。用語「加水分解される」または「加水分解性の」、および「酵素的に切断される」または「酵素的に切断可能な」は、本明細書で使用する場合、in vivoでリンカー基が放出される機序を指す。
【0065】
リンカーは、その結合相手(すなわち、ラパマイシンまたはワートマニン)の一方または両方から完全に外れてよい。そのような実施形態では、リンカー基が外れた後は、リンカー基の構成要素は、ラパマイシンまたはワートマニンに結合した状態では一切残らない。別の実施形態では、リンカーはその結合相手の一方または両方から部分的に外れる。この実施形態では、リンカーは、ラパマイシンおよびワートマニンが分離されるように切断されるが、リンカーの一部は、ラパマイシンまたはワートマニンに結合した状態で残る。一実施形態では、有効量のコンジュゲートを含む組成物は、部分的および完全に外れたリンカー−ラパマイシン、および/または、部分的および完全に外れたリンカー−ワートマニンという代謝産物の混合物が得られるように、コンジュゲートがin vivoで処理されてよい。例えば、哺乳動物対象における例示的なコンジュゲートの代謝経路を示す図1を参照のこと。
【0066】
一実施形態では、リンカーは、式(V):
−Z−X−Z− (V)
[式中、ZおよびZは、結合、O、−N(R)−、S、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−N(R)C(=O)−、−OC(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)N(R)−、−OC(=S)N(R)−、−N(R)C(=S)N(R)−および=N−N(R)−の中から独立に選択され、Rは、出現毎に、H、アルキル、アルケニルおよびアリールの中から独立に選択され;ならびに、Xは、1から16個の炭素原子を有する炭化水素鎖の中から選択され、この鎖は、分枝していても分枝していなくてもよく、飽和していても不飽和であってもよく、オキシ、アミン、スルフィド、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシ、ヒドロキシルおよびハロゲンの1つまたは複数で置換されていてもよく、/または、1つまたは複数のエーテル(−O−)、アミン(−NH−)、スルフィド(−S−)、−S(O)−、−N(R)−、−C(=O)N(R)−または−OC(=O)N(R)−により割り込まれていてもよく、nは0から2である]を特徴とする。Xは、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールアルキル、ヘテロアリールおよび複素環基の中から選択されてもよい。さらなる実施形態では、ZおよびZは独立に結合であり、すなわち、Lは、−Z−X−、−X−または−X−Zであってよい。
【0067】
一実施形態では、本コンジュゲートは、ラパログまたはwortコアとリンカーとの間の過酸化物(O−O)結合、O−N結合およびO−S結合を除外する。したがって、リンカーが末端のO、NまたはS基を有する場合、mTOR/ラパマイシンまたはwortコアは、その基にOを結合させない。
【0068】
本明細書で使用する場合、用語「アルキル」は、直鎖および分枝鎖両方の脂肪族の飽和炭化水素基を指す。一実施形態では、アルキル基は、1から約16個の炭素原子を有する。別の実施形態では、アルキル基は、1から10個の炭素原子または1から8個の炭素原子(すなわち、C、C、C、C、C、CまたはC)を有する。1から約6個の炭素原子(すなわち、C、C、C、C、CまたはC)を有するアルキル基を「低級アルキル」基と呼ぶことがある。さらなる実施形態では、アルキル基は、1から約4個の炭素原子(すなわち、C、C、CまたはC)を有する。とりわけ望ましいアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよびtert−ブチルが挙げられる。他の置換基を特定しない限り、アルキル基は、ハロ、CN、COR、C(O)R、C(O)NR、NR、NOおよびORから選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。他の適当な置換基は、「置換アルキル」の定義の中で本明細書に記載してある。
【0069】
用語「アルキルアリールアルキル」または「アルキルアラルキル」は、自身がアルキル基で置換されているアリール基で置換されていているアルキル基を指す。
【0070】
用語「アリール」は、本明細書で使用する場合、例えば約4から14個の炭素原子の芳香族の炭素環系を指すが、この系は、互いに縮合または連結された単環または多環式の芳香環を含むことができ、この縮合または連結された環の少なくとも一部が、コンジュゲートされた芳香族系を形成する。アリール基としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、テトラヒドロナフチル、フェナントリル、インデン、ベンゾナフチルおよびフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
用語「シクロアルキル」は、本明細書では、環状の飽和脂肪族炭化水素基を指すために使用する。一実施形態では、シクロアルキル基は、3から約8個の炭素原子(すなわち、C、C、C、C、CまたはC)を有する。別の実施形態では、シクロアルキル基は、3から約6個の炭素原子(すなわち、C、C、CまたはC)を有する。
【0072】
用語「アルコキシ」は、本明細書で使用する場合、O(アルキル)基を指し、このとき結合点は酸素原子を介しており、このアルキル基は、上述のように置換されていてよい。
【0073】
用語ハロまたはハロゲンは、元素のCl、Br、FもしくはI、またはそれらを有する基を指す。
【0074】
用語「複素環」または「複素環の」は、本明細書で使用する場合、飽和しているか、または部分的に不飽和の3から9員の単環式または多環式の安定な複素環式環を指すために互換的に使用されることがある。複素環式環は、その骨格中に、炭素原子、および窒素原子、酸素原子および硫黄原子など1個または複数のヘテロ原子を有する。一実施形態では、複素環式環は、環の骨格中に1から約4個のヘテロ原子を有する。複素環式環が環の骨格中に窒素原子または硫黄原子を有するとき、この窒素原子または硫黄原子を酸化させることができる。用語「複素環」または「複素環の」はさらに、複素環式環が約6から約14個の炭素原子のアリール環に縮合されている多環式環も指す。複素環式環は、ヘテロ原子または炭素原子を介してアリール環に結合することができるが、その結果得られる複素環式環の構造が化学的に安定であることが条件である。一実施形態では、複素環式環は、1から5個の環を有する多環式系を含む。
【0075】
さまざまな複素環基が当技術分野で公知であり、そのような基としては、酸素含有環、窒素含有環、硫黄含有環、混合ヘテロ原子含有環、縮合ヘテロ原子含有環、およびその組合せが挙げられるが、これらに限定されない。複素環基の例としては、テトラヒドロフラニル、ピペリジニル、2−オキソピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、ピラニル、ピロニル、ジオキシニル、ピペラジニル、ジチオリル、オキサチオリル、ジオキサゾリル、オキサチアゾリル、オキサジニル、オキサチアジニル、ベンゾピラニル、ベンゾキサジニルおよびキサンテニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書で使用する場合、5から14員の単環式または多環式の安定な芳香族のヘテロ原子含有環を指す。ヘテロアリール環は、その骨格中に、炭素原子、および窒素原子、酸素原子および硫黄原子など1個または複数のヘテロ原子を有する。一実施形態では、ヘテロアリール環は、環の骨格中に1から約4個のヘテロ原子を有する。ヘテロアリール環が環の骨格中に窒素原子または硫黄原子を有するとき、この窒素原子または硫黄原子を酸化させることができる。用語「ヘテロアリール」はさらに、ヘテロアリール環がアリール環に縮合されている多環式環も指す。ヘテロアリール環は、ヘテロ原子または炭素原子を介してアリール環に結合することができるが、その結果得られる複素環式環の構造が化学的に安定であることが条件である。一実施形態では、ヘテロアリール環は、1から5個の環を有する多環式系を含む。
【0077】
さまざまなヘテロアリール基が当技術分野で公知であり、そのような基としては、酸素含有環、窒素含有環、硫黄含有環、混合ヘテロ原子含有環、縮合ヘテロ原子含有環、およびその組合せが挙げられるが、これらに限定されない。ヘテロアリール基の例としては、フリル環、ピロリル環、ピラゾリル環、イミダゾリル環、トリアゾリル環、ピリジル環、ピリダジニル環、ピリミジニル環、ピラジニル環、トリアジニル環、アゼピニル環、チエニル環、ジチオリル環、オキサチオリル環、オキサゾリル環、チアゾリル環、オキサジアゾリル環、オキサトリアゾリル環、オキセピニル環、チエピニル環、ジアゼピニル環、ベンゾフラニル環、チオナフテン環、インドリル環、ベンザゾリル環、プリンジニル環、ピラノピロリル環、イソインダゾリル環、インドキサジニル環、ベンゾキサゾリル環、キノリニル環、イソキノリニル環、ベンゾジアゾニル環、ナフチルリジニル環、ベンゾチエニル環、ピリドピリジニル環、アクリジニル環、カルバゾリル環およびプリニル環が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
用語「置換複素環」および「置換ヘテロアリール」は、本明細書で使用する場合、1つまたは複数の置換基を有する複素環またはヘテロアリール基を指し、置換基としては、ハロゲン、CN、OH、NO、アミノ、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、CからCペルフルオロアルキル、CからCペルフルオロアルコキシ、アルコキシ、アリールオキシ、−O−(CからC10のアルキル)または−O−(CからC10の置換アルキル)などのアルキルオキシ、−CO−(CからC10のアルキル)または−CO−(CからC10の置換アルキル)などのアルキルカルボニル、−COO−(CからC10のアルキル)または−COO−(CからC10の置換アルキル)などのアルキルカルボキシ、−C(NH)=N−OH、−SO−(CからC10のアルキル)、−SO−(CからC10の置換アルキル)、−O−CH−アリール、アルキルアミノ、アリールチオ、アリール、置換アリール、ヘテロアリールまたは置換ヘテロアリールが挙げられ、これらの基は置換されていてもよい。置換複素環または置換ヘテロアリール基は、1、2、3または4つの置換基を有していてよい。
【0079】
用語「アルケニル」は、本明細書では、1つまたは複数の炭素−炭素二重結合を有する直鎖および分枝鎖両方のアルキル基を指すために使用される。一実施形態では、アルケニル基は、2から約8個の炭素原子(すなわち、C、C、C、C、C、CまたはC)を有する。別の実施形態では、アルケニル基は、1つまたは2つの炭素−炭素二重結合と、3から約6個の炭素原子(すなわち、C、C、CまたはC)とを有する。
【0080】
用語「アルキニル」は、本明細書では、1つまたは複数の炭素−炭素三重結合を有する直鎖および分枝鎖両方のアルキル基を指すために使用される。一実施形態では、アルキニル基は、2から約8個の炭素原子(すなわち、C、C、C、C、C、CまたはC)を有する。別の実施形態では、アルキニル基は、1つまたは2つの炭素−炭素三重結合と、3から約6個の炭素原子(すなわち、C、C、CまたはC)とを有する。
【0081】
用語「置換アルキル」、「置換アルケニル」、「置換アルキニル」および「置換シクロアルキル」は、それぞれ、1つまたは複数の置換基を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびシクロアルキル基を指し、この置換基としては、水素、ハロゲン、CN、OH、NO、アミノ、アリール、複素環基、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルオキシ、アルキルカルボニル、アルキルカルボキシ、アミノおよびアリールチオが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
一実施形態では、ZおよびZは、結合、O、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)N(R)−およびOC(=S)N(R)−の中から独立に選択される。
【0083】
一実施形態では、リンカーが末端のO、NまたはS基を有する場合、rapaまたはwortのコアは、この末端のO、NまたはSに結合するようにOを供給しない。
【0084】
一実施形態では、ZおよびZは結合であり、Xは1から10個の炭素原子のアルキル鎖であり、このアルキル鎖は、1つまたは複数のO基で置換されていてもよい。
【0085】
一実施形態では、Xは、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、シクロアルキル、アリールおよび複素環基の中から独立に選択される。別の実施形態では、Xは、O、−S(O)−、−N(R)−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)N(R)−および−OC(=O)N(R)−(式中、nは0から2である)の中から選択される少なくとも1つの基により割り込まれている1から16個の炭素原子のアルキル鎖の中から選択される。一実施形態では、Xは(CHCHO)であり、式中、nは1から8である。別の実施形態では、Xは、(CH、(CHおよび(CHの中から選択される。さらなる実施形態では、XはCHOCHである。
【0086】
一実施形態では、次式のジカルボン酸リンカーを介してワートマニンと共有結合しているラパマイシンが提供される:
【0087】
【化10】

(式中、Xは先に定義したとおりである)。例えば、Xは、式−(CH−(式中、nは1〜16である)の炭化水素鎖であってよい。あるいは、Xは、式:−(CH−O−(CH−(式中、nは1〜16である)を有するエーテル連結により割り込まれている炭化水素鎖であってよい。
【0088】
一実施形態では、コンジュゲートは、ラパマイシンおよびワートマニンを1:1の比率で含有する、すなわち、ラパマイシン1分子がワートマニン1分子に連結している。
【0089】
一実施形態では、ワートマニンに連結しているラパマイシンは、式(IIa)の構造を有する:
【0090】
【化11】

(式中、
・42位、すなわちRは、O、OH、エステル、エーテル、アミド、カルボネート、カルバメート、ホスフェート、テトラゾール、およびリンカーへの結合点の中から選択され、このときリンカーは、選択された基を介してrapaコアに結合していてもよく、
・41位、すなわちRは、O、OH、エステル、エーテル、およびリンカーへの結合点の中から選択され、このときリンカーは、選択された基を介してrapaコアに結合していてもよく、
・31位、すなわちRは、O、OH、エステル、アミド、カルボネート、カルバメート、エーテル、およびリンカーへの結合点の中から選択され、このときリンカーは、選択された基を介してrapaコアに結合していてもよく、
・32位、すなわちRは、H、O、OH、エステル、エーテル、およびリンカーへの結合点の中から選択され、このときリンカーは、選択された基を介してrapaコアに結合していてもよく、
・7位、すなわちRは、O、OH、エステル、エーテル、およびリンカーへの結合点の中から選択され、このときリンカーは、選択された基を介してrapaコアに結合していてもよく、ならびに
・R、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、リンカーへの結合点である)。
【0091】
一実施形態では、ラパマイシンは、41−デスメトキシラパマイシン、すなわち、RがHである場合を除外する。
【0092】
さまざまなラパマイシン−L−wort式の例を以下に示す:
【0093】
【化12】

【0094】
リンカーは、R〜R基のいずれかによるか、または架橋基を介してラパマイシン核に独立に結合してよい。そのような架橋基は、アルキル、オキシム、ヒドラゾン、ヒドロキシルアミン、エステル、エーテル、チオエステルおよびチオエーテルの中から独立に選択してよい。一実施形態では、架橋基は、42位のエステル、すなわちRである。
【0095】
一実施形態では、ラパマイシン核は、上述の多様なラパマイシン誘導体について記載したように、リンカーに結合していないR〜Rのいずれかの位置でさらに置換されていてよい。例えば、このラパマイシンは、CCI−779、すなわち、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸を有するラパマイシン42−エステルであってよい。一実施形態では、リンカーは、42−エステルを介してラパマイシン核に結合する。別の実施形態では、リンカーは別の位置、例えばR〜Rを介してラパマイシン核に結合する。
【0096】
一実施形態では、本コンジュゲート中で使用されるラパマイシンは、ラパマイシンである。別の実施形態では、使用されるコンジュゲート中で使用されるラパマイシンは、ラパマイシン42−エステルである。別の実施形態では、ラパマイシン42−エステルは、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸を有するラパマイシン42−エステルである。例えば、RAD001(エベロリムス、Novartis)、ABT478(Abbott)およびAP23573[Ariad]など、ラパマイシンのさらに他の適当な例は容易に明らかになるであろうし、本明細書に記載のラパマイシンの中から容易に選択でき、当業者には公知であると考えられる。
【0097】
一実施形態では、ワートマニンは、式(Ib)のコア構造を有する:
【0098】
【化13】

(式中、R11は、O、OH、エステル、カルボネート、カルバメート、エーテル、およびリンカーへの結合点の中から選択され、このときリンカーは、選択された基を介してコアに結合していてもよく;R12およびR13は、Oヘテロ原子を介して互いに結合しているか、または、R12は、エステル、エーテル、チオエーテル、チオエステル、アミノ、およびリンカーへの結合点の中から選択され、このときリンカーは、選択された基を介してコアに結合していてもよく、R13は、OH、エステル、カルボネート、カルバメート、エーテル、チオエーテル、およびリンカーへの結合点の中から選択され、このときリンカーは、選択された基を介してコアに結合していてもよく;R14は、OH、エステル、エーテル、およびリンカーへの結合点の中から選択され、このときリンカーは、選択された基を介してコアに結合していてもよく;R15は、O、OH、エステル、カルボネート、カルバメート、およびリンカーへの結合点の中から選択され、このときリンカーは、選択された基を介してコアに結合していてもよく;R11、R12、R13、R14およびR15の少なくとも1つは、リンカーへの結合点である)。リンカーは、R11〜R15基のいずれかに直接独立に結合してもよく、または、架橋基を介して結合してもよい。そのような架橋基は、R12〜R15について上に列挙してある基の中から独立に選択してよい。別の実施形態では、架橋基は、アルキル、エステル、エーテル、チオエステルおよびチオエーテルの中から選択してよい。
【0099】
一実施形態では、ワートマニン核は、上述の多様なワートマニン誘導体について記載したように、リンカーに結合していないR11〜R15のいずれかの位置でさらに置換されていてよい。例えば、このワートマニンは17−ヒドロキシワートマニンであってよい。一実施形態では、リンカーは、17位を介してワートマニン核に結合する。別の実施形態では、リンカーは、別の位置を介して17−ヒドロキシワートマニンに結合する。
【0100】
さまざまなワートマニン−L−Rap式の例を以下に示す:
【0101】
【化14】

【0102】
一実施形態では、R11は、リンカーへの結合点である。別の実施形態では、R11はOである。
【0103】
またさらなる実施形態では、R12はアミノ基である。一実施形態では、R12がアミノ基である場合、R12は式−NR−を有する[式中、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−(アルキル)−O−(アルキル)−、−(アルキル)−NR−、−(アルキル)−C(=O)NR−、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリールおよび複素環基の中から独立に選択されるか、または、RおよびRは、一緒になって、最大3個のヘテロ原子を有する3から7員の複素環式環を形成してよく、この環は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、オキソ、アミノ、シアノ、C〜Cペルフルオロアルキル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アリールおよびヘテロアリールの中から独立に選択される1つから3つの置換基により置換されていてもよく;RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキルおよび複素環の中から独立に選択されるか、または、RおよびRは、一緒になって、最大3個のヘテロ原子を有する3から7員の環式環または複素環式環を形成し、この環は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、オキソ、アミノ、シアノ、およびC〜Cペルフルオロアルキルの中から独立に選択される1つから3つの置換基により置換されていてもよい]。
【0104】
一実施形態では、R12は式−NHR−を有し、式中、Rは先に定義したとおりである。一実施形態では、Rはフェニルである。
【0105】
別の実施形態では、RおよびRは両方とも低級アルキルである。
【0106】
さらに別の実施形態では、R12およびR13は、Oヘテロ原子を介して互いに結合している。
【0107】
ワートマニンへの他の適当な結合点は、当業者には容易に明らかとなろう。
【0108】
本コンジュゲートを調製する方法
本明細書に記載の化合物は、市販の出発物質、または、文献に記載の手順を用いて調製できる出発物質を使用する以下のスキームにより、当業者には容易に調製される。これらのスキームは、ジエステル連結により「ラパマイシン」が「ワートマニン」と連結されているコンジュゲートの調製を示すものである。これらのスキームは、例証の目的で提供する実施例と共に本発明の原理を教示するものであるが、アミド、カルボネート、カルバメート、エーテル、チオ、ヒドラゾンなど他の型の官能基連結を介した、または他の連結位置を介したこのようなコンジュゲートは、本明細書に記載の手順およびプロトコールの改変またはこれらへの追加により容易に得られることは理解されよう。このような方法、または当技術分野で公知の他の方法に対する変形は、本明細書において提供される情報が与えられれば、当業者であれば容易に実施できる。
【0109】
本明細書に記載のジエステル連結による、ラパマイシン42−OH位置とワートマニン17−OH位置とを介したラパマイシン−ワートマニンコンジュゲートの合成の概略をスキーム1に示す。17−Nまたは11−N置換ワートマニン類似体へのワートマニンの変換、およびラパマイシンからの42−N、42−S置換ラパマイシン類似体の合成は、当業者であれば、例えば、「Comprehensive Organic Transformation」[Richard C.Larock、第2版、1999]および当技術分野で公知の他の文献に記載のような手法を用いて容易に実施できる。また、ラパマイシンについての米国特許第5,527,907号も参照のこと。
【0110】
【化15】

式中、Xは、1から16個の炭素原子を有する炭化水素鎖の中から選択され、この鎖は、分枝していても分枝していなくてもよく、飽和していても不飽和であってもよく、アミン、スルフィド、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシ、ヒドロキシルおよびハロゲンの1つもしくは複数で置換されていてもよく、または、1つもしくは複数のエーテル連結(−O−)、アミン連結(−NH−)またはスルフィド連結(−S−)、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールアルキル、ヘテロアリールおよび複素環基により割り込まれていてもよい。
【0111】
17−ヒドロキシワートマニン(Ic)を多様な環状無水物でアシル化して、ヘミ酸(Id)を得る。次に、例えば、N,N’−ジシクロヘキシル−カルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)または1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]−カルボジイミド塩酸塩(EDC)などのカップリング試薬、および4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)などの塩基の存在下で、これらのジカルボン酸モノエステルをラパマイシン31−トリメチルシリルエーテル(IIc)とカップリングさせて中間体Aを得、引き続き、希釈したHSOで脱保護することにより、所望の42,17’連結ワートマニン−ラパマイシンコンジュゲート1を得る。米国特許第6,277,983号に記載の手順により、ラパマイシン31−トリメチルシリルエーテルを合成してもよい。
【0112】
あるいは、そのようなジエステル連結ワートマニン−ラパマイシンコンジュゲートは、スキーム2に記載の要領で合成することもできる。まず、ジカルボン酸リンカーを、米国特許出願公開第2005/0234087号に記載のリパーゼ触媒によるアシル化法により、ラパマイシン部分中に取り付けた。次に、このラパマイシンヘミエステル(IIb)を、DCC/DMAPの組合せ下で17−ヒドロキシワートマニンとカップリングさせて、良好な収率でワートマニン−ラパマイシンコンジュゲートを得た。
【0113】
【化16】

【0114】
一実施形態では、Xは、(CH、(CHおよび(CHの中から、または先に定義した置換基の中から選択される。
【0115】
一実施形態では、本明細書に記載の手法を用いて容易に調製できる例示的なコンジュゲートとしては、例えば、次の構造を有するものが挙げられる:
【0116】
【化17】

【0117】
【化18】

【0118】
【化19】

【0119】
【化20】

【0120】
【化21】

【0121】
一実施形態では、チオール、アミン、とりわけ二級アミン、およびアルコールなどの求核剤を含有する多様なR12’を用いて、このようなラパマイシン−ワートマニンコンジュゲート化合物を、フラン環開環誘導体2にさらに変換できる(スキーム3)。このような求核剤は、例えば、2006年6月15日に公開された米国特許出願公開第2006/0128793号中に収められている一覧から選択できる。
【0122】
【化22】

式中、Xは、1から16個の炭素原子を有する炭化水素鎖の中から選択され、この鎖は、分枝していても分枝していなくてもよく、飽和していても不飽和であってもよく、ならびに、アミン、スルフィド、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシ、ヒドロキシルおよびハロゲンの1つもしくは複数で置換されていてもよく、または、1つもしくは複数のエーテル連結(−O−)、アミン連結(−NH−)またはスルフィド連結(−S−)、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールアルキルおよび複素環基により割り込まれていてもよく;R12’は、NR、SRおよびORの中から選択され、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−(アルキル)−O−(アルキル)−、−(アルキル)−NR−、−(アルキル)−C(=O)NR−、シクロアルキル、アリールおよび複素環基の中から独立に選択されるか、または、一緒になって、最大3個のヘテロ原子を有する3から7員の複素環式環を形成し、この環は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、オキソ、アミノ、シアノ、C〜Cペルフルオロアルキル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アリールおよびヘテロアリールの中から独立に選択される1つから3つの置換基により置換されていてもよく、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキルおよび複素環の中から独立に選択されるか、または、一緒になって、最大3個のヘテロ原子を有する3から7員の環式環または複素環式環を形成し、この環は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、オキソ、アミノ、シアノ、およびC〜Cペルフルオロアルキルの中から独立に選択される1つから3つの置換基により置換されていてもよく、RおよびRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよび複素環の中から独立に選択されるか、または、RおよびRは、一緒になって、最大3個のヘテロ原子を有する3から7員の環式環または複素環式環を形成し、この環は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、オキソ、アミノ、シアノ、およびC〜Cペルフルオロアルキルの中から独立に選択される1つから3つの置換基により置換されていてもよい。
【0123】
一実施形態では、アミン付加体の形態、すなわち、ワートマニン部分中のフラン環が多様な二級アミンにより開環された形態の例示的なコンジュゲートを以下に示す。
【0124】
【化23】

【0125】
【化24】

【0126】
【化25】

【0127】
【化26】

【0128】
【化27】

【0129】
別の実施形態では、本明細書に記載のジエステル連結による、ラパマイシン31−OH位置およびワートマニン17−OH位置を介したラパマイシン−ワートマニンコンジュゲートの合成の概要をスキーム4に示す。例えば、DCC、DIPCまたはEDCなどのカップリング試薬、およびDMAPなどの塩基の存在下で、ワートマニン17−ジカルボン酸モノ酸(Id)をラパマイシン42−TBSエーテル(IId)とカップリングさせて、中間体Bを得た。引き続き、希釈したHSOで脱保護することにより、所望の31,17’連結ワートマニン−ラパマイシンコンジュゲート3を得る。欧州特許第0507556A1号に記載の手順により、ラパマイシン42−TBSエーテルを合成してもよい。
【0130】
【化28】

式中、Xは本明細書で定義するとおりである。
【0131】
上述の調製による例証的な実施例としては以下の構造が挙げられるが、これに限定されない。
【0132】
【化29】

【0133】
一実施形態では、求核剤を含有するR12’で31,17’連結ワートマニン−ラパマイシンコンジュゲート3を処理して、スキーム5に示すようなフラン環開環コンジュゲート4を得ることができる。
【0134】
【化30】

式中、XおよびR12’は、本明細書で定義するとおりである。
【0135】
一実施形態では、以下の例示的な化合物が提供される:
【0136】
【化31】

【0137】
【化32】

【0138】
さらに別の実施形態では、本コンジュゲートは、スキーム6により、ラパマイシン42−OHとワートマニン11−OHとの連結位置を介して調製できる。ジエステル連結したワートマニン−ラパマイシンに関しては、このようなコンジュゲート(5)は、例えば、DCC、DIPCまたはEDCなどのカップリング試薬、およびDMAPなどの塩基の存在下で、11−デスアセチルワートマニン11−ジカルボン酸モノ酸(If)をラパマイシン31−TMSエーテル(IIc)とカップリングすることにより容易に得られ、次いで、希釈したHSOでの脱保護を行う結果、良好な全収率となる。
【0139】
【化33】

式中、Xは本明細書で定義するとおりである。
【0140】
上述の手順を用いることにより容易に調製できる例示的なコンジュゲートとしては次の構造が挙げられるが、これに限定されない:
【0141】
【化34】

【0142】
一実施形態では、求核剤を含有するR12’でこのような42,11’連結ワートマニン−ラパマイシンコンジュゲート5を処理して、スキーム7に示すようなフラン環開環コンジュゲート6を得ることができる。
【0143】
【化35】

式中、XおよびR12’は、本明細書で定義するとおりである。
【0144】
一実施形態では、以下の例示的な化合物が提供される:
【0145】
【化36】

【0146】
【化37】

【0147】
またさらに別の実施形態では、本コンジュゲートは、スキーム8により、ラパマイシン31−OHとワートマニン11−OHとの連結位置を介して調製できる。ジエステル連結したワートマニン−ラパマイシンに関しては、このようなコンジュゲート(7)は、例えば、DCC、DIPCまたはEDCなどのカップリング試薬、およびDMAPなどの塩基の存在下で、11−デスアセチルワートマニン11−ジカルボン酸モノ酸(If)をラパマイシン42−TBSエーテル(IId)とカップリングすることにより容易に得られ、次いで脱保護(例えば希釈したHSOを用いて)する結果、優れた全収率となる。
【0148】
【化38】

式中、Xは本明細書で定義するとおりである。
【0149】
上述の手順を用いることにより容易に調製できる例示的なコンジュゲートとしては、次のものが挙げられる:
【0150】
【化39】

【0151】
一実施形態では、求核剤を含有するR12’でこのような31,11’連結ワートマニン−ラパマイシンコンジュゲート7を処理して、スキーム9に示すようなフラン環開環コンジュゲート8を得ることができる。
【0152】
【化40】

式中、XおよびR12’は、本明細書で定義するとおりである。
【0153】
一実施形態では、以下の例示的な化合物が提供される:
【0154】
【化41】

【0155】
【化42】

【0156】
本コンジュゲート中に特定の置換基を存在させると、コンジュゲートの塩の形成を可能にし得る。適当な塩としては、薬学上または生理学上許容され得る塩、例えば、有機または無機の酸から誘導される酸付加塩、および無機または有機の塩基から誘導される塩が挙げられる。酸付加塩としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、リンゴ酸、フタル酸、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、メタンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、および同様に公知の許容され得る酸が挙げられる。無機塩基および有機塩基から誘導される塩としては、ナトリウム、リチウム、またはカリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ金属の塩、およびジメチルアミン、ジエチルアミン、モルホリン、ピペリジンの塩などの有機アミン塩が挙げられる。
【0157】
本コンジュゲートのとりわけ有用な塩としては、薬学上許容され得る塩、特に、薬学上許容され得る酸付加塩が挙げられる。当業者に公知の手順を用いることにより容易に調製できる、本コンジュゲートの例示的な塩としては、次の構造が挙げられるが、これに限定されない:
【0158】
【化43】

【0159】
他の塩および付加体は、当業者であれば容易に選択できる。本コンジュゲート、ならびに、ラパマイシンおよびワートマニンの化合物は、図示してある構造の生物活性を特徴とする、本明細書で提供する構造の互変異性形態を包含し得る。
【0160】
本明細書で説明するコンジュゲートはさらに、細胞または被験対象が化合物を処理することにより形成される独特な産生物である「代謝産物」も包含する。望ましくは、代謝産物はin vivoで形成される。
【0161】
一実施形態では、本明細書に記載の遊離塩基コンジュゲートの塩および/または付加体は、溶解度を向上させること、それによりコンジュゲートの製剤を容易にすることにとって望ましい。別の実施形態では、コンジュゲート(例えば遊離塩基)を、コンジュゲートの担体として有用な緩衝液と組み合わせた際に、ラパマイシンの溶解度向上が観察される。そのような緩衝液は、本明細書に記載してある。
【0162】
本発明のコンジュゲートの組成物および使用
別の態様では、医薬組成物を調製するうえでのラパマイシン−L−ワートマニンコンジュゲートの使用について記載する。典型的に、そのような組成物は、少なくとも、本コンジュゲートおよび薬学上許容され得る担体を含有する。
【0163】
一実施形態では、コンジュゲートを、所望のルートによる送達に生理学的に適合する液体担体と混合する。この担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール)、適当なその混合物および植物油を含有する溶媒または分散媒であってよい。一実施形態では、この担体は、緩衝生理食塩水溶液(例えば、ホスフェート緩衝食塩水、Hepes緩衝食塩水、トリス緩衝食塩水)の中から容易に選択でき、その多くは市販されている。
【0164】
この医薬組成物は、1種または複数種の賦形剤を含有してよい。賦形剤は、さまざまな目的で組成物に加えられる。
【0165】
希釈剤は、固形医薬組成物のかさを増やし、この組成物を含有する医薬剤形を、患者および看護者にとってより取り扱いやすくすることができる。固形組成物用の希釈剤としては、例えば、微結晶性セルロース(例えばAvicel(登録商標)試薬)、微細セルロース、乳糖、デンプン、アルファー化デンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、糖、デキストレート、デキストリン、ブドウ糖、二塩基性リン酸カルシウム二水和物、三塩基性リン酸カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、ポリメタクリレート(例えばEudragit(登録商標)試薬)、塩化カリウム、粉末状セルロース、塩化ナトリウム、ソルビトールおよびタルクが挙げられる。
【0166】
圧縮されて錠剤などの剤形になる固形医薬組成物としては賦形剤を挙げ得るが、その機能としては、加圧後に活性成分と他の賦形剤との互いの結合を助けることがある。固形医薬組成物用の結合剤としては、アカシアゴム、アルギン酸、カルボマー(例えばカルボポル)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーゴム、水素化植物油、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えばKlucel(登録商標)試薬)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばMethocel(登録商標)試薬)、液体グルコース、マグネシウムアルミニウムシリケート、マルトデキストリン、メチルセルロース、ポリメタクリレート、ポビドン(例えば、Kollidon(登録商標)およびPlasdone(登録商標)試薬)、アルファー化デンプン、アルギン酸ナトリウムおよびデンプンが挙げられる。
【0167】
患者の胃の中における、圧縮された固形医薬組成物の溶解速度は、組成物に崩壊剤を加えることにより増加し得る。崩壊剤としては、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えば、Ac−Di−Sol(登録商標)およびPrimellose(登録商標)試薬)、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(例えば、Kollidon(登録商標)およびPolyplasdone(登録商標)試薬)、グアーゴム、マグネシウムアルミニウムシリケート、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポラクリリンカリウム、粉末状セルロース、アルファー化デンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(例えばExplotab(登録商標)試薬)およびデンプンが挙げられる。
【0168】
圧縮されていない固形組成物の流動性を高め、投薬の正確さを高めるために、流動促進剤を加えることができる。流動促進剤として機能し得る賦形剤としては、コロイド状二酸化ケイ素、マグネシウムトリシリケート、粉末状セルロース、デンプン、タルクおよび三塩基性リン酸カルシウムが挙げられる。
【0169】
錠剤などの剤形を粉末状組成物の圧縮により作製するときは、打錠機からの圧力を組成物にかける。賦形剤および活性成分の中には、打錠機の表面に付着する傾向をもつものがあり、それが原因で、製品が、ピッティング、および他の表面不規則性を有するものとなることがある。付着を軽減して金型からの製品の取り外しを容易にするために、組成物に滑沢剤を加えることができる。滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリル、水素化ヒマシ油、水素化植物油、鉱油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルクおよびステアリン酸亜鉛が挙げられる。
【0170】
固形および液体の組成物は、その外見を向上させるため、および/または、製品および単位投与量レベルを患者が識別しやすいようにするために、薬学上許容され得る任意の着色料を用いて着色してもよい。
【0171】
液体医薬組成物においては、本コンジュゲートと他の任意の固形賦形剤とを、水、植物油、アルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールまたはグリセリンなどの液体担体中に溶解または懸濁させる。
【0172】
液体担体中に溶解しない活性成分または他の賦形剤を組成物全体に均一に分散させるために、液体医薬組成物は、乳化剤を含有してよい。液体組成物中で有用と考えられる乳化剤としては、例えば、ゼラチン、卵黄、カゼイン、コレステロール、アカシアゴム、トラガント、コンドラス、ペクチン、メチルセルロース、カルボマー、セトステアリルアルコールおよびセチルアルコールが挙げられる。
【0173】
製品の口当たりを向上させ、および/または消化管壁を覆うために、液体医薬組成物は、粘度増強剤を含有してもよい。そのような作用剤としては、アカシアゴム、アルギン酸ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウムまたはカルボキシメチルセルロースナトリウム、セトステアリルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチングアーゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、プロピレンカルボネート、アルギン酸プロピレングリコール、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプントラガントおよびキサンタンゴムが挙げられる。
【0174】
風味を向上させるために、ソルビトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、ショ糖、アスパルテーム、フルクトース、マンニトールおよび転化糖などの甘味剤を加えてよい。
【0175】
保存安定性を向上させるために、アルコール、安息香酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソールおよびエチレンジアミン四酢酸などの保存剤およびキレート化剤を、摂取に安全なレベルで加えてよい。
【0176】
液体組成物は、グルコン酸、乳酸、クエン酸または酢酸、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムまたは酢酸ナトリウムなどの緩衝剤を含有してもよい。賦形剤およびその使用量の選択は、製剤科学者であれば、経験、ならびに、当技術分野における標準的な手順および関連研究の考慮に基づき、容易に決定し得る。
【0177】
固形組成物としては、粉末、粒状体、凝集体および圧縮された組成物が挙げられる。投与量としては、経口、経口腔、経直腸、非経口(皮下、筋肉内および静脈内など)、吸入による投与、および眼への投与に適した投与量が挙げられる。いかなる所与の症例においても、最適な投与は、治療対象である病態の性質および重症度によって決まることになろう。投与量は、単位剤形の形態で便利なように提供されてよく、医薬技術分野で周知の方法のいずれによって調製してもよい。
【0178】
剤形としては、錠剤、粉末、カプセル、坐薬、サシェ、トローチおよびドロップなどの固形剤形、ならびに、液体シロップ、懸濁剤およびエリキシル剤が挙げられる。
【0179】
剤形は、組成物、例えば、粉末状または顆粒状の固形組成物を、ハードシェルまたはソフトシェルのいずれかの中に含有するカプセルであってよい。シェルはゼラチン製であってよく、グリセリンおよびソルビトールなどの可塑剤、ならびに、不透明化剤または着色料を場合により含有してもよい。
【0180】
活性成分および賦形剤は、当技術分野で公知の方法により、組成物および剤形に製剤してよい。
【0181】
錠剤化用またはカプセル充填用の組成物は、湿式造粒により調製してよい。湿式造粒では、粉末形態の活性成分および賦形剤の一部または全てをブレンドしてから、液体、典型的には水の存在下でさらに混合することにより、粉末を凝集させて顆粒にする。この粒状体を、ふるいにかけて、および/または、粉砕、乾燥させてからふるいにかけて、および/または、粉砕して、所望の粒径にする。次に、この粒状体を錠剤化してよく、または、錠剤化前に、流動促進剤および/または滑沢剤など、他の賦形剤を加えてよい。
【0182】
錠剤化する組成物は、従来どおり乾燥ブレンドにより調製してよい。例えば、活性剤と賦形剤とをブレンドした組成物を圧縮してスラグまたはシートにしてから細かく砕いて、圧縮顆粒にしてよい。続いて、圧縮顆粒を加圧して錠剤にしてよい。
【0183】
乾式造粒の代わりに、直接加圧法を用いて、ブレンド状組成物を直接加圧して、圧縮剤形にしてよい。直接加圧することにより、顆粒にしなくてもより均一な錠剤が作製される。直接加圧による錠剤化にとりわけ好適な賦形剤としては、微結晶性セルロース、噴霧乾燥乳糖、二リン酸カルシウム二水和物およびコロイド状シリカが挙げられる。直接加圧による錠剤化におけるさまざまな賦形剤の正しい使用については、直接加圧による錠剤化という独特の製剤に挑戦した経験および技能をもつ当業者には公知である。
【0184】
カプセル充填物としては、錠剤化に関して記載した前述のブレンド物および粒状体のいずれかを挙げ得るが、それらは、最終的な錠剤化ステップには供されない。
【0185】
使用および製品
別の態様では、抗腫瘍用の方法が提供され、その方法は、薬学上有効な量の本明細書に記載のコンジュゲートを被験者に投与することを含む。そのような腫瘍は、前立腺癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、卵巣癌、神経膠腫、軟部組織肉腫、肺の神経内分泌腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、頭部および頸部の癌、神経膠芽腫、非小細胞肺癌、膵臓癌、リンパ腫、黒色腫ならびに小細胞肺癌から典型的に選択される。
【0186】
併用療法では、本コンジュゲートは、別の薬剤を用いた療法を開始する前、その期間中または後、ならびにその任意の組合せ、すなわち、他方の抗癌療法を開始する前および期間中、開始前および後、期間中および後、または、開始前、期間中および後に投与してよい。
【0187】
抗癌療法が放射線療法である場合、放射線源は、治療対象の患者に対し、外部(外照射療法)または内部(小線源療法)のいずれかであってよい。患者に投与される抗癌療法の用量・線量は、多数の要因、例えば、薬剤のタイプ、治療対象となる腫瘍の型および重症度、ならびに薬剤の投与ルートなどによって決まる。
【0188】
場合により、この方法は、別の活性成分との併用レジメンにおいて本コンジュゲートの投与を行う。そのような活性成分は、例えば、免疫調節薬(例えば、免疫刺激薬または免疫抑制薬)、抗腫瘍剤または他の所望の成分の中から、当業者により容易に選択され得る。そのようなレジメンにおいて使用される場合、本コンジュゲートは、他方の活性成分の投与に先立ち、またはそれと同時に、またはそれに次いで投与してよい。さらに、本コンジュゲートおよび他方の活性成分は、同じ投与ルートまたは異なる投与ルートにより送達してよい。
【0189】
一実施形態では、本コンジュゲートは、免疫調節薬(例えば、インターフェロン、インターロイキン(例えばIL−2)またはBCG)を用いたレジメンにおいて投与される。適当なインターフェロンは、例えば、インターフェロンα、インターフェロンβまたはインターフェロンγなど、当業者に公知のものの中から容易に選択される。一実施形態では、インターフェロンはインターフェロンαである。インターフェロンα(IFN α)が1種、「Intron(登録商標)A」試薬として市販されている。
【0190】
別の実施形態では、本コンジュゲートは、抗VEGFモノクローナル抗体を用いたレジメンにおいて投与される。1種の適当な抗VEGFモノクローナル抗体が、例えばAVASTINとして入手可能である。
【0191】
腫瘍学的治療の場合に典型的であるが、投与レジメンは、患者の疾患の重症度、疾患に対する応答、毒性に関連する何らかの治療、年齢および健康など、多くの要素に基づき、治療する医師により綿密にモニターされる。投与レジメンは、投与ルートにより変わると予想される。
【0192】
この組成物の投与は、経口、静脈内(i.v.)、呼吸による(例えば、経鼻または気管支内の)、注入、非経口(i.v.の他、病巣内注射、腹腔内注射および皮下注射など)、腹腔内、経皮的(体表面、ならびに、上皮組織および粘膜組織など体管の内壁を越える全ての投与を含む)ならびに経膣(子宮内投与を含む)であってよい。リポソーム介在送達により、また、局所、経鼻、舌下、経尿道、くも膜下腔内、経眼または経耳送達、インプラント、経直腸、鼻腔内などの他の投与ルートも実施可能である。
【0193】
本発明のコンジュゲートの最初のi.v.注入投与量は、週単位の投与レジメンで投与する場合、約5から約175mg、または約5から約25mgになると見積もられる。コンジュゲートの経口投与量は、10mg/週から250mg/週、約20mg/週から約150mg/週、約25mg/週から約100mg/週、または約30mg/週から約75mg/週の範囲となるものと見積もられる。ラパマイシンの場合、見積もられる経口投与量は、0.1mg/日から25mg/日の間となろう。正確な投与量は、治療される個々の被験者についての経験に基づき、投与する医師により決定されることになろう。
【0194】
一実施形態では、1、1から4、またはより多くの単位(複数可)の単位剤形の形態のコンジュゲートと、場合により別の活性剤(例えば、インターフェロンまたは抗VEGFモノクローナル抗体)とを有する1つまたは複数の容器(複数可)が入っている製品または医薬パックがさらに含まれる。そのような製品には、他の構成要素、例えば、希釈剤、担体、注射器、および/または、本コンジュゲートを投与するための説明書などが入っていてよい。典型的には、医薬パックは、哺乳動物個体のための抗腫瘍用の投与レジメンを有する。
【0195】
別の実施形態では、医薬パックには、1単位のラパマイシン−ワートマニンコンジュゲートを単位剤形の形態で有する容器と、場合により別の活性剤の入った容器とを含む、哺乳動物一個体のための抗腫瘍用治療薬1クール分が入っている。他の実施形態では、ラパマイシンは、ラパマイシン、ラパマイシンのエステル(42−エステルなど)、エーテル(42−エーテルなど)、テトラゾール置換したもの(42−エピ−テトラゾリルなど)、アミド、カルボネート、カルバメートである。別の実施形態では、ラパマイシンは、42−O−(2−ヒドロキシ)エチルラパマイシンである。別の実施形態では、ラパマイシンはテムシロリムスである。さらに別の実施形態では、ラパマイシンは42−エピ−テトラゾリルラパマイシンであり、パックには、1、1から4、またはより多くの単位(複数可)のテムシロリムス(CCI−779)−ワートマニンコンジュゲートを含む1つまたは複数の容器(複数可)が、本明細書に記載の構成要素と共に入っている。
【0196】
いくつかの実施形態では、この組成物は、即時投与可能な形態でパックに入っている。他の実施形態では、この組成物は、濃縮された形態でパックに入っており、投与用の最終的な溶液を作製するために必要な希釈剤が同梱されていてもよい。さらに他の実施形態では、この製品には、本明細書に記載の有用な固形の形態の化合物と、場合により、本明細書に記載の有用な化合物に適した溶媒または担体の入った別の容器とが入っている。
【0197】
さらに別の実施形態では、上述のパック/キットには、他の構成要素、例えば、製品を希釈、混合および/または投与するための説明書、他の容器、注射器、針などが含まれる。パック/キットのそのような他の構成要素は、当業者には容易に明らかとなろう。
【実施例】
【0198】
以下の実施例は、本発明をさらに例証するものであるが、いかなる形でも、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。本明細書に開示される本発明の原理においては、当業者により変形が成され得ることを理解および推測されたく、また、そのような改変は本発明の範囲内に含まれるべきと考える。
【実施例1】
【0199】
42,17’連結ラパマイシン−スクシネート−ワートマニンコンジュゲートの合成
方法A:
CHCl(10mL)中の17−ヒドロキシワートマニン(430mg、1mmol)の溶液に、コハク酸無水物(250mg、2.5mmol)、次いでDMAP(244mg、2mmol)を加えた。次に、この混合物を室温で一晩撹拌した。ヘキサン/アセトンを用いたシリカゲルカラム溶出により未精製材料を精製して、白色の粉末としてのワートマニン17−ヘミスクシネート(470mg)を得た。MS(ESI)m/e553(M+Na)。
【0200】
MeCN(3mL)中のワートマニン17−ヘミスクシネート(132.5mg、0.25mmol)と、ラパマイシン31−OTMS(259mg、0.26mmol)と、触媒量のDMAP(5mg)との混合物を、0〜5℃に冷却し、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(62mg、0.3mmol)で処理した。この混合物を0〜5℃で16時間撹拌した。水性硫酸(0.5N、1.5mL)を滴加し、混合物を2時間撹拌した。EtOAcを加え、有機層を分離した。この有機層を、水、5%NaHCOおよび鹹水で洗浄した。真空下で溶媒が蒸発した後、未精製の残留物をシリカゲルカラムにより精製して、白色の泡としての所望の生成物を得た。MS(ESI)m/e1426。
【0201】
方法B:
0〜5℃のCHCl中の17−ヒドロキシワートマニン(129mg)と、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(93mg)と、DMAP(5mg)との溶液に、ラパマイシン42−ヘミスクシネート(304mg)を加えた。この混合物を0〜5℃で10時間、または、TLCによりモニターした場合に全ての出発物質が消失するまで撹拌した。反応混合物のシリカゲルカラム精製により、白色の泡としての所望の生成物(342mg)を得た。
【実施例2】
【0202】
42,17’連結ラパマイシン−スベレート−ワートマニンコンジュゲートの合成
方法A:
CHCl(10mL)中の17−ヒドロキシワートマニン(430mg、1mmol)の溶液に、スベレート無水物(234mg、1.5mmol)、次いでDMAP(153mg、1.25mmol)を加えた。次に、この混合物を室温で一晩撹拌した。ヘキサン/アセトンを用いたシリカゲルカラム溶出により未精製物を精製して、白色の粉末としてのワートマニン17−ヘミスベレート(200mg)を得た。MS(ESI)m/e609(M+Na)。
【0203】
MeCN(3mL)中のワートマニン17−ヘミスベレート(147mg、0.25mmol)と、ラパマイシン31−OTMS(247mg、0.25mmol)と、触媒量のDMAP(6mg)との混合物を、0〜5℃に冷却し、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(72mg、0.35mmol)で処理した。この混合物を0〜5℃で16時間撹拌した。水性硫酸(0.5N、1.5mL)を滴加し、混合物を2時間撹拌した。EtOAcを加え、有機層を分離した。この有機層を、水、5%NaHCOおよび鹹水で洗浄した。真空下で溶媒が蒸発した後。この未精製物をシリカゲルカラムにより精製して、白色の泡としての所望の生成物を得た。MS(ESI)m/e1482。
【0204】
方法B:
0〜5℃のCHCl(6mL)中の17−ヒドロキシワートマニン(172mg)と、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(124mg)と、DMAP(6mg)との溶液に、ラパマイシン42−ヘミスベレート(428mg)を加えた。この混合物を0〜5℃で16時間、または、TLCによりモニターした場合に全ての出発物質が消失するまで撹拌した。反応混合物のシリカゲルカラム精製により、白色の泡としての所望の生成物(370mg)を得た。
【実施例3】
【0205】
42,17’連結ラパマイシン−アジペート−ワートマニンコンジュゲートの合成
0〜5℃のCHCl(5mL)中の17−ヒドロキシワートマニン(129mg、0.3mmol)と、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(93mg、0.45mmol)と、DMAP(5mg)との溶液に、ラパマイシン42−ヘミアジペート(313mg、0.3mmol)を加えた。この混合物を0〜5℃で16時間、または、TLCによりモニターした場合に全ての出発物質が消失するまで撹拌した。反応混合物のシリカゲルカラム精製により、白色の泡としての所望の生成物(230mg)を得た。MS(ESI)m/e1454。
【実施例4】
【0206】
42,17’連結ラパマイシン−ワートマニンコンジュゲートのアミン付加体の合成
全般的な手順:
実施例1〜3で得たラパマイシン−ワートマニンコンジュゲートの有機溶媒中の0℃溶液に、溶媒中のアミン(0.11mmol)の溶液を加えた。TLCまたはHPLCによりモニターした場合に反応が終了するまで、この混合物を撹拌した。溶媒を真空中で除去した。溶媒を用いた研和、または、CHCl−MeOHを用いたシリカゲル溶出によるクロマトグラフィーのいずれかにより、生成物を精製した。
【0207】
例示的な実施例4a:42,17’連結ラパマイシン−スベレート−ワートマニンコンジュゲートのジアリルアミン付加体
実施例2で得た42,17’連結ラパマイシン−スベレート−ワートマニンコンジュゲート(1.0g)のTBME(30mL)中の溶液を、氷浴で冷却し、ジアリルアミン(0.15mL)で処理した。この混合物を48時間撹拌し、約10mLの体積に濃縮してから、ヘキサン(50mL)で研和した。ブフナー漏斗により、黄色の粉末(985mg)として、生成物を回収した。MS(ESI):(M)1580。
【0208】
適切なアミンおよびラパマイシン−ワートマニンコンジュゲートを用いることにより、表1にある代表的な化合物を合成した。
【0209】
【表1】

【0210】
例示的な実施例4b:42,17’連結ラパマイシン−スベレート−ワートマニンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン付加体。
実施例2で得た42,17’連結ラパマイシン−スベレート−ワートマニンコンジュゲート(7.70g、5.2mmol)のTBME(225mL)中の溶液を、−30から−35℃に冷却し、TBME(35mL)中のN,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン(694mg、5.98mmol)の溶液で45分かけて処理した。この混合物を−30℃で1時間撹拌してから、1時間かけて−20℃にゆっくり温め、−20℃でさらに1時間撹拌した。次に、温度を−15から−20℃に維持しながら、ヘキサン(280mL)を導入した。10分間撹拌の後、ブフナー漏斗により沈殿物を回収してから、冷たいヘキサン/TBME(1:0.8)で洗浄し、真空下で乾燥させると、黄色の粉末(7.8g)として生成物が得られた。MS(ESI):(M)1598。
【0211】
N,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミンおよび適切なラパマイシン−ワートマニンコンジュゲートを用いることにより、表2にある代表的な化合物を合成した。
【0212】
【表2】

【実施例5】
【0213】
31,17’連結ラパマイシン−スベレート−ワートマニンコンジュゲートの合成
1,2−ジクロロエタン(4mL)中のワートマニン17−ヘミスベレート(293mg、0.5mmol)と、ラパマイシン42−OTBS(411mg、0.4mmol)と、触媒量のDMAP(24.4mg、0.2mmol)との混合物を、0〜5℃に冷却し、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(101mg、0.8mmol)で処理した。この混合物を0〜5℃で16時間撹拌した。シリカゲルを介した精製により、白色の粉末606mgを得た(収率95%)。
【0214】
この白色の粉末(460mg)をMeCN(6mL)中に溶解させ、氷浴で冷却した。2N HSO(2.5mL)を滴加した。添加後、この混合物を0〜5℃で4時間撹拌した。EtOAcを加え、有機層を分離した。この有機層を、水、5%NaHCOおよび鹹水で洗浄してから、真空下で溶媒を蒸発させた。この未精製の生成物をシリカゲルカラムにより精製して、白色の泡としての所望の生成物を得た。MS(ESI):(M+Na)1505。
【実施例6】
【0215】
31,17’連結ラパマイシン−スベレート−ワートマニンのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体の合成
実施例5で得たラパマイシン−ワートマニンコンジュゲート(70mg)のTBME(0.4mL)中の溶液を、−30℃に冷却し、TBME(0.1mL)中のN,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン(7mg)の溶液で処理した。この混合物を−30℃で1時間撹拌した。ヘキサン(0.5mL)を加えた。10分間撹拌後、ブフナー漏斗により、黄色の粉末(70mg)として、生成物を回収した。MS(ESI):(M)1600。
【実施例7】
【0216】
31,17’連結ラパマイシン−スベレート−ワートマニンコンジュゲートのジアリルアミン付加体の合成
実施例5で得たラパマイシン−ワートマニンコンジュゲート(30mg)のTBME(0.2mL)中の溶液を、−20℃に冷却し、TBME(0.1mL)中のジアリルアミン(3mg)の溶液で処理した。この混合物を−20℃で30分間撹拌した。N気流により溶媒を除去し、ヘキサン(1mL)で研和した。ブフナー漏斗により、黄色の粉末(30mg)として、生成物を回収した。MS(ESI):(M+Na)1602。
【実施例8】
【0217】
42,11’連結ラパマイシン−スベレート−ワートマニンコンジュゲートの合成
1,2−ジクロロエタン(4mL)中のワートマニン11−ヘミスベレート(271mg、0.5mmol)と、ラパマイシン31−OTMS(395mg、0.4mmol)と、触媒量のDMAP(24.4mg、0.2mmol)との混合物を、0〜5℃に冷却し、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(101mg、0.8mmol)で処理した。この混合物を0〜5℃で5時間撹拌し、室温に温め、さらに12時間撹拌した。シリカゲルを介した精製により、白色の粉末340mgを得た(収率56%)。
【0218】
この白色の粉末(340mg)をMeCN(5mL)中に溶解させ、氷浴で冷却してから、0.5N HSO(4mL)を滴加した。添加後、この混合物を0〜5℃で3時間撹拌した。EtOAcを加え、有機層を分離した。この有機層を、水、5%NaHCOおよび鹹水で洗浄してから、真空下で溶媒を蒸発させた。この未精製物をシリカゲルカラムにより精製して、白色の泡(265mg)としての所望の生成物を得た。MS(ESI):(M+Na)1461。
【実施例9】
【0219】
42,11’連結ラパマイシン−スベレート−ワートマニンのピペリジン付加体の合成
実施例8で得たラパマイシン−ワートマニンコンジュゲート(30mg)のCHCl(0.2mL)中の溶液を、氷浴で冷却し、ピペリジン(4mg)で処理した。この混合物を30分間撹拌した。N気流により溶媒を除去し、ヘキサン(1mL)で研和した。ブフナー漏斗により、黄色の粉末(30mg)として、生成物を回収した。MS(ESI):(M+Na)1546。
【実施例10】
【0220】
42,11’連結ラパマイシン−スベレート−ワートマニンのN,N−ジメチル−N’−エチル−エチレンジアミン付加体の合成
実施例8で得たラパマイシン−ワートマニンコンジュゲート(76mg)のTBME(0.4mL)中の溶液を、−30℃に冷却し、TBME(0.1mL)中のN,N−ジメチル−N’−エチル−エチレンジアミン(8mg)の溶液で処理した。この混合物を−30℃で1時間撹拌した。ヘキサン(1mL)を加えた。10分間撹拌後、ブフナー漏斗により、黄色の粉末(80mg)として生成物を回収した。MS(ESI):(M)1556。
【実施例11】
【0221】
31,11’連結ラパマイシン−スベレート−ワートマニンコンジュゲートの合成
1,2−ジクロロエタン(4mL)中のワートマニン11−ヘミスベレート(271mg、0.5mmol)と、ラパマイシン42−OTBS(411mg、0.4mmol)と、触媒量のDMAP(24.4mg、0.2mmol)との混合物を、0〜5℃に冷却し、1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(101mg、0.8mmol)で処理した。この混合物を0〜5℃で4時間撹拌し、室温に温め、さらに12時間撹拌した。シリカゲルを介した精製により、白色の粉末590mgを得た(収率95%)。
【0222】
この白色の粉末(550mg)をMeCN(8mL)中に溶解させてから、氷浴で冷却した。2N HSO(3.5mL)を滴加した。添加後、この混合物を0〜5℃で4時間撹拌した。EtOAcを加え、有機層を分離した。この有機層を、水、5%NaHCOおよび鹹水で洗浄してから、真空下で溶媒を蒸発させた。この未精製の生成物をシリカゲルカラムにより精製して、白色の泡としての所望の生成物を得た(440mg、86%)。MS(ESI):(M+Na)1461。
【実施例12】
【0223】
31,11’連結ラパマイシン−スベレート−ワートマニンのジエチルアミン付加体の合成
実施例11で得たラパマイシン−ワートマニンコンジュゲート(30mg)のCHC1(0.2mL)中の溶液を、氷浴で冷却し、ジエチルアミン(2.2mg)で処理した。この混合物を30分間撹拌した。N気流により溶媒を除去し、ヘキサン(1mL)で研和した。ブフナー漏斗により、黄色の粉末(30mg)として生成物を回収した。MS(ESI):(M+Na)1535。
【実施例13】
【0224】
31,11’連結ラパマイシン−スベレート−ワートマニンのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体の合成
実施例11で得たラパマイシン−ワートマニンコンジュゲート(72mg)のTBME(0.4mL)中の溶液を、−30℃に冷却し、TBME(0.1mL)中のN,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン(8mg)の溶液で処理した。この混合物を−30℃で1時間撹拌した。ヘキサン(1mL)を加えた。10分間撹拌後、ブフナー漏斗により、黄色の粉末(72mg)として生成物を回収した。MS(ESI):(M)1555。
【実施例14】
【0225】
in vitroでの細胞培養物増殖アッセイ
ヒト腫瘍細胞系(表3)には、前立腺系のLNCapおよびPC3MM2、乳房系のMDA468、MCF7、腎臓系のHTB44(A498)、大腸系のHCT116、および卵巣系のOVCAR3が含まれる。96ウエルの培養プレート中に細胞を播種した。
【0226】
播種の1日後、以下のコンジュゲート(阻害薬)を細胞に加えた:
化合物A 42,17’連結ワートマニン−アジペート−ラパマイシンコンジュゲートのジエチルアミン付加体
化合物B 42,17’連結ワートマニン−アジペート−ラパマイシンコンジュゲート。
化合物C 42,17’連結ワートマニン−スクシネート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体
化合物D 42,17’連結ワートマニン−アジペート−ラパマイシンコンジュゲートのジアリルアミン付加体
化合物E 42,17’連結ワートマニン−アジペート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体
化合物F 42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体。
【0227】
薬物処理の3日後、MTS染料(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−5−(3カルボキシメトキシフェニル)−2−(4−スルホフェニル)−2H−テトラゾリウム、内塩)の代謝変換(生細胞による)、十分確立された細胞増殖アッセイにより、生細胞密度を定量した。Promega Corp.(Madison、WI)から購入したアッセイキットを用い、同キットに同梱されていたプロトコールに従い、アッセイを実施した。MTSアッセイの結果は、490nmでの吸光度を測定することにより、96ウエルのプレートリーダーにおいて読み取った。各処理の効果は、同じ培養プレート中で増殖させたビヒクル処理細胞に対する増殖制御の比率(%)として計算した。50%増殖阻害をもたらした薬物濃度をIC50(μg/mL)として定量した。表3を参照のこと。
【0228】
【表3】

【実施例15】
【0229】
雌のマウスの全血の安定性試験
この試験は、NaF/EDTA(エチレンジアミン四酢酸)管中に採取した雌のマウスの新鮮血液中での42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンN,N,N’−トリメチルプロパンジアミン(実施例14における化合物F)のin vitroでの安定性を定量するために実施した。血中において、最終濃度の1000ng/mLで化合物のストック溶液を調製した。コンジュゲートを添加した血液を、振動する水浴中において37℃でインキュベートし、インキュベーション後0、5、15、30、60、90および120分の時点で一定分量を取った。
【0230】
試料の一部を遠心分離して、血漿を入手した。血液(100μL)および血漿(100μL)の試料をアセトニトリル(400μL)で抽出し、2分間ボルテックスしてから3400rpmで10分間遠心分離した。上澄み(20μL)を、コンジュゲートおよびそれを加水分解した製品の分析用に、LC/MS/MS(Sciex API4000(商標)装置)中に注入した。HPLCシステムは、FluoroSep−RPm Phenyl(商標)HSカラムから成るものであった。アセトニトリル中の0.1%ギ酸の勾配移動相を、流速1mL/分で用いた。
【0231】
図1は、血漿中の42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体のin vitroでの切断ルートを示すものである。
【実施例16】
【0232】
異種移植片腫瘍の有効性試験の方法
生後10週間の雌のヌードマウスの側腹部上に、U87MG(ヒト神経膠芽腫)腫瘍細胞懸濁液200μLを皮下接種した。U87MG細胞は、完全増殖培地中に懸濁させ、マウス1匹当り1千万細胞の量で植え付けた。腫瘍がおよそ200mmの大きさに達した時点で、マウスは病期に入った。腫瘍を有する病期(0日目)のマウスを処置群(n=10)に無作為化した。コンジュゲートをD5Wビヒクル(グルコース−水)中で製剤し、0日目および7日目に静脈内投与した。
【0233】
実験期間中は腫瘍の増殖を週に2回モニターした。スライド式のノギスを用いて腫瘍の大きさを測定し、式(長さ×幅)/2を用いて腫瘍量を計算した。
【0234】
表4は、U87MG神経膠腫モデルにおける、異なるコンジュゲートのin vivoでの抗癌活性の概要を示したものである。薬物調製、投与ルート、レジメンなどについての実験方法(表4に掲載のもの)は、図中に示す実験と同様であった。表4中のデータと図中のデータとは、完全に異なる複数の実験から得たものである。表4内では、データには別々の実験が含まれた。
【0235】
【表4】

【0236】
図2は、42,17’連結ワートマニン−スクシネート−ラパマイシンのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体の1.5mg/kg(△)および4.5mg/kg(□)で週1回×2ラウンド、または、15mg/kg(■)で週1回×8ラウンド静脈投与した後の抗腫瘍活性を示すものであり、ビヒクル(●)は陰性対照の役割である。このデータは、最低用量では2ラウンドで腫瘍細胞増殖阻害が改善し、4.5mg/kgでは2週間でかなり改善することを示している。最高用量では、8ラウンドにわたり顕著な改善が観察された。このデータは、複数サイクルの治療における、42,17’連結ワートマニン−アジペート−rapaコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体のU87MG神経膠腫キセノグラフに対する持続的有効性を示すものである。
【0237】
図3は、週1回×2ラウンド投与した際の多様なコンジュゲートの抗腫瘍有効性を、(□)ラパマイシン単独(10mg/kg)と比較して示すものである:(塗りつぶした三角、▲)17−ヒドロキシワートマニンN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体単独(5mg/kg)、(■)、42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体(15mg/kg)、および(塗りつぶした菱形)ラパマイシン(10mg/kg)と17−ヒドロキシワートマニンN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体(5mg/kg)との物理的組合せ。
【0238】
これらのデータは、本コンジュゲートが、物理的組合せと少なくとも同程度に活性を有することを示す。しかし、ラパマイシンとワートマニンとの物理的組合せは忍容性に乏しく、死亡率30%の結果を招いた。
【0239】
図4は、42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体を3通りの投与濃度(30mg/kg(△)、45mg/kg(□)および60mg/kg(■))で単回投与した後のU87MG神経膠腫キセノグラフに対する有効性を、ビヒクル(●)と比較して示すものである。図4のデータは、本コンジュゲートは、週1回での投与レジメンに加え、間欠的なレジメン(例えば、2週毎に1回、1カ月に1回など)においても有効であることを示している。
【実施例17】
【0240】
HT29大腸腫瘍モデルにおけるin vivoでの抗癌有効性
実施例4に記載の要領で調製した42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体のヒト大腸癌モデルにおける効果を試験した。
【0241】
42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体(■、15mg/kg)、ラパマイシン(▲、10mg/kg)、17−ヒドロキシワートマニンN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体(▼、5mg/kg)、およびラパマイシン(10mg/kg)と17−ヒドロキシワートマニンN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体(5mg/kg)との物理的組合せを、HT29大腸腫瘍キセノグラフに対して、週1回×4ラウンド投与した。ビヒクルは、陰性対照としての役割を果たした(●)。
【0242】
図5でわかるように、初期の結果は、ラパマイシンと17−ヒドロキシワートマニンとの物理的組合せ(○)を用いた場合に顕著な腫瘍の減少を示したが、この組合せでは30%の死亡率が観察された。対照的に、コンジュゲートはこれより良好な忍容性を示し(■)、コンジュゲート投与群においては、試験期間にわたり顕著な腫瘍の減少が観察された。
【実施例18】
【0243】
HTB44/A498腎細胞癌モデルにおけるin vivoでの抗癌有効性
この試験は、先に記載の要領で実施された腎臓癌のモデルを利用した。例えば、Yu Kら、PWT−458、A Novel Pegylated−17−Hydroxywortmannin,Inhibits Phosphatidylinositol 3−Kinase Signaling and Suppresses Growth of Solid Tumors、Cancer Biol Ther.、2005年5月28日、4(5)を参照のこと。
【0244】
図6は、42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体(■)(15mg/kgで週1回×2ラウンド、静脈内投与)、(▲)Intron(登録商標)A試薬(0.5mUで週3回×2週間、腹腔内投与)、および(○)42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体(15mg/kg)とIntron(登録商標)A試薬(0.5mU)との物理的組合せのA498腎細胞癌キセノグラフに対する有効性を示すものである。コンジュゲート単独では、ビヒクルおよびIntron(登録商標)A試薬単独と比較した場合に、抗腫瘍活性の向上が示された。Intron(登録商標)A試薬とコンジュゲートとの物理的組合せについては、顕著な抗腫瘍活性が観察された。
【0245】
図7は、週1回×6ラウンド静脈内投与した、42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体(■、15mg/kg)、Avastin(登録商標)薬(▲、200μg)、および42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体とAvastin(登録商標)薬との組合せ(○)のA498腎細胞癌キセノグラフに対する有効性を示すものである。23日目、ビヒクル群(●)に、42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体(30mg/kg)とAvastin(登録商標)薬(200μg)との組合せを、5ラウンド再投与した。43日目、42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体群(30mg/kg)およびAvastin(登録商標)薬群(200μg)に、42,17’連結ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体とAvastin(登録商標)薬との組合せを、3ラウンド再投与した。
【0246】
図7のデータは、本コンジュゲートが、Avastin(登録商標)薬と組み合わせた場合に、非常に大きいサイズの腫瘍の顕著な退縮をもたらし得ることを示唆するものである。このレベルでの退縮は、これまでに観察されたことがなかった。
【0247】
本明細書中に引用されている全ての出版物、および配列表は、参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態を参照しながら本発明を説明してきたが、本発明の精神から逸脱することなく改変が成され得ることは理解されよう。そのような改変が、添付の特許請求の範囲に記載の範囲内に属することを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
Rap−L−Wort
(式中、Rapはラパマイシンであり、Wortはワートマニンであり、Lは、前記ラパマイシンおよび前記ワートマニンに結合するリンカーである。)
を有するコンジュゲート、またはその薬学上許容され得る塩もしくは水和物。
【請求項2】
Lが、in vivoにおいて、RapまたはWortの一方または両方から全体的または部分的に外れたものである、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
Lが、加水分解性であるか、または酵素的に切断される、請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
Lが、式(V):
−Z−X−Z− (V)
[式中、
およびZは、−O−、−N(R)−、−S−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−N(R)C(=O)−、−OC(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)N(R)−、−OC(=S)N(R)−、−N(R)C(=S)N(R)−、=N−N(R)−および単結合から成る群から独立に選択され、
は、出現毎に、H、アルキル、アルケニルおよびアリールから成る群から独立に選択され、
Xは、シクロアルキル、アリール、アルキルアリールアルキル、ヘテロアリールおよび複素環基、1から16個の炭素原子を有する炭化水素鎖から成る群から選択され、前記炭化水素鎖は、分枝していても分枝していなくても、飽和していても不飽和であってもよく、オキシ、アミン、スルフィド、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシ、ヒドロキシルおよびハロゲンの1つまたは複数で置換されていてもよく、1つまたは複数のエーテル(−O−)、アミン(−NH−)、スルフィド(−S−)、−S(O)−、−N(R)−、−C(=O)N(R)−または−OC(=O)N(R)−により割り込まれていてもよく、nは0から2またはその組合せである。]
を有する、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
またはZが、−O−、−N(R)−、−S−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−N(R)C(=O)−、−OC(=O)N(R)−、−N(R)C(=O)N(R)−、−OC(=S)N(R)−、−N(R)C(=S)N(R)−および=N−N(R)−から成る群から選択されるとき、Lを前記Rapまたはwortに結合させる基はさらなるO基を供給しない、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
Xが、O、−S(O)−、−N(R)−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−C(=O)N(R)−および−OC(=O)N(R)−から成る群から選択される1つまたは複数の基により割り込まれている1から16個の炭素原子のアルキル鎖から成る群から選択され、nが0から2である、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記リンカーが、式:
【化44】

を有する、請求項4から6のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
Xが、式−(CH−の炭化水素鎖である(式中、nは1〜16である)、請求項7に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
およびZが単結合であり、Xが、1から10個の炭素原子のアルキル鎖、または、1つ、2つまたは3つ以上のオキシ基で置換されている1から10個の炭素原子のアルキル鎖である、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項10】
Xが、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、(CHCHO)、CHOCH、シクロアルキル、アリールおよび複素環基から成る群から選択される、請求項4に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
Xが、(CH、(CH、(CHおよび(CHから成る群から選択される、請求項7に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
前記ラパマイシンが、式(IIa)のコア構造:
【化45】

(式中、
は、OH、エステル、エーテル、アミド、カルボネート、カルバメート、ホスフェート、テトラゾール、およびLへの結合点から成る群から選択され、
は、OH、エステル、エーテル、およびLへの結合点から成る群から選択され、
は、OH、エステル、エーテル、アミド、カルボネート、カルバメート、およびLへの結合点から成る群から選択され、
は、H、OH、エステル、エーテル、およびLへの結合点から成る群から選択され、
は、OH、エステル、エーテル、およびLへの結合点から成る群から選択され、
、R、R、RおよびRの少なくとも1つは、前記Lへの結合点である。)
を有するものであるか、または、構造IIaの薬学上許容され得る塩であり、但し、前記ラパマイシンは41−デスメトキシラパマイシンではない、
請求項1から11のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
Rapが、ラパマイシンまたはラパマイシン42−エステルである、請求項1から12のいずれかに記載のコンジュゲート。
【請求項14】
前記ラパマイシンが、3−ヒドロキシ−2−(ヒドロキシメチル)−2−メチルプロピオン酸を有するラパマイシン42−エステルである、請求項13に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
前記ワートマニンが、式(Ia1)のコア構造:
【化46】

(式中、
11は、O、OH、エステル、カルボネート、カルバメート、エーテル、およびLへの結合点から成る群から選択され;
12およびR13は、Oヘテロ原子を介して互いに結合しているか、または
12は、エステル、エーテル、チオエーテル、チオエステル、およびLへの結合点から成る群から選択され、
13は、OH、エステル、カルボネート、カルバメート、エーテル、およびLへの結合点から成る群から選択され;
14は、OH、エステル、エーテル、およびLへの結合点から成る群から選択され;
15は、O、OH、エステル、カルボネート、カルバメート、およびLへの結合点から成る群から選択され;
11、R12、R13、R14およびR15の少なくとも1つは、前記Lへの結合点である。)
を有するものである、請求項1から14のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
12が、NRであり、
およびRが、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、−(アルキル)−O−(アルキル)−、−(アルキル)−NR−、−(アルキル)−C(=O)NR−、シクロアルキル、アリールおよび複素環基から成る群から独立に選択され、但し、RおよびRが両方ともHであることはできないか、
または、RおよびRは、一緒になって、最大3個のヘテロ原子を有する3から7員の複素環式環を形成してよく、前記環は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、オキソ、アミノ、シアノ、C〜Cペルフルオロアルキル、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、アリールおよびヘテロアリールから成る群から独立に選択される1つから3つの置換基により置換されていてもよく;
およびRは、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、シクロアルキルおよび複素環から成る群から独立に選択されるか、または
およびRは、一緒になって、最大3個のヘテロ原子を有する3から7員の環式環または複素環式環を形成し、前記環は、ハロゲン、ヒドロキシル、チオ、アルキル、アルケニル、アルコキシ、オキソ、アミノ、シアノおよびC〜Cペルフルオロアルキルから成る群から独立に選択される1つから3つの置換基により置換されていてもよい、
請求項15に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
がHでありRがフェニルであるか、または
およびRが低級アルキルである、
請求項16に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
12が、ジエチルアミン、ジアリルアミン、N,N,N’−トリメチル−1,3−プロパンジアミン、ピペリジンおよびN,N−ジメチル−N’−エチル−エチレンジアミンから成る群から選択され、R13が−OHである、請求項16に記載のコンジュゲート。
【請求項19】
前記ラパマイシンの前記Lへの結合点が、R(42)またはR(31)である、請求項1から18のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項20】
前記ワートマニンの前記Lへの結合点が、R11(17’)またはR15(11’)である、請求項1から18のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項21】
ワートマニン−グルタレート−ラパマイシンコンジュゲート、
ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲート、
ワートマニン−ジグリコリネート−ラパマイシンコンジュゲート、
ワートマミン−アジペート−ラパマイシンコンジュゲート、
ワートマニン−スクシネート−ラパマイシンコンジュゲート、
ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体、
ワートマニン−アジペート−ラパマイシンコンジュゲートのジエチルアミン付加体、
ワートマニン−スクシネート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体、
ワートマニン−アジペート−ラパマイシンコンジュゲートのジアリルアミン付加体、
ワートマニン−アジペート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N,N’−トリメチル1,3−プロパンジアミン付加体、
ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのピペリジン付加体、
ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのN,N−ジメチ−N’エチル−エチレンジアミン付加体、
ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのジアリルアミン付加体、
ワートマニン−スベレート−ラパマイシンコンジュゲートのジエチルアミン付加体、
およびそれらの薬学上許容され得る塩
から成る群から選択される、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項22】
請求項1から21のいずれかに記載のコンジュゲートと薬学上許容され得る担体とを含む医薬組成物。
【請求項23】
薬学上有効な量の請求項1から21のいずれかに記載のコンジュゲートを被験者に投与することを含む、腫瘍を治療する方法。
【請求項24】
前記腫瘍が、前立腺癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、卵巣癌、神経膠腫、軟部組織肉腫、肺の神経内分泌腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、頭部および頸部の癌、神経膠芽腫、非小細胞肺癌、膵臓癌、リンパ腫、黒色腫ならびに小細胞肺癌から成る群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記コンジュゲートを、インターフェロンまたは抗VEGFモノクローナル抗体との併用レジメンにおいて投与することをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記インターフェロンがインターフェロンαである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記コンジュゲートが、前記インターフェロンまたは前記抗VEGFモノクローナル抗体の投与に先立ち、または前記投与と同時に、または前記投与に次いで投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記コンジュゲートが、前記腫瘍に直接投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
医薬の調製における、請求項1から21のいずれかに記載のコンジュゲートおよび薬学上許容され得る担体の使用。
【請求項30】
腫瘍を治療するために有用な医薬の調製における、請求項1から21のいずれかに記載のコンジュゲートの使用。
【請求項31】
前記腫瘍が、前立腺癌、乳癌、腎臓癌、大腸癌、卵巣癌、神経膠腫、軟部組織肉腫、肺の神経内分泌腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、頭部および頸部の癌、神経膠芽腫、非小細胞肺癌、膵臓癌、リンパ腫、黒色腫ならびに小細胞肺癌から成る群から選択される、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
前記医薬が、インターフェロンまたは抗VEGFモノクローナル抗体をさらに含む、請求項30に記載の使用。
【請求項33】
前記インターフェロンがインターフェロンαである、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
適当な容器に入った請求項1から21のいずれかに記載のコンジュゲートと、場合により、希釈剤、担体、注射器、および/または、前記コンジュゲートを投与するための説明書とを含む製品。
【請求項35】
本明細書中のスキーム1から9のいずれか1つに示す、請求項1に記載のコンジュゲートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−523566(P2010−523566A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−502132(P2010−502132)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/004331
【国際公開番号】WO2008/124026
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(591011502)ワイス エルエルシー (573)
【Fターム(参考)】