説明

一酸化炭素及び炭化水素変換のための層構造を有するディーゼル酸化触媒複合体

排ガス放出物の処理、例えば未燃焼炭化水素(HC)、及び一酸化炭素(CO)の酸化のための触媒粗製物、特にディーゼル酸化触媒が提供される。より特定的には、本発明は、少なくとも2層、特に3層の異なる層(その中の少なくとも1層は、白金族金属(PGM)成分、例えばパラジウム及び白金の大半のものから分離して、層中に存在する酸素貯蔵成分(OSC)を含む)を含む触媒構造体を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、35U.S.C.§119(e)の下に、2009年1月16日に提出したU.S.Provisional Application Serial No.61/145,367の利益を主張し、この文献は、これによりここに導入される。
【0002】
本願は、ディーゼルエンジンからの排ガス放出物を処理するための層状ディーゼル酸化触媒複合体、及びディーゼル排ガス流を処理するための方法に関する。より特定的には、本発明は、少なくとも2層、好ましくは3層の明確な層を含む触媒構造物に関する。少なくとも1層は、触媒的に活性な貴金属成分、例えば白金族金属(PGM)成分、例えば白金の大半から分離されているOSC成分を含む。他の層は、(パラジウムから分離された)ゼオライト等の分子篩を含む。
【背景技術】
【0003】
リーンバーン(希薄燃焼)エンジン、例えばディーゼルエンジン及びリーンバーンガソリンエンジンの運転は、使用者に卓越した燃料経済を提供し、及び(燃料希薄条件下における、その高空気/燃料割合のために)ガス相の炭化水素及び一酸化炭素の放出が非常に低い。ディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンに対して、特に、その燃料経済、耐久性、及び低速で高トルクを発生させる性能で大きな有利性を提供する。
【0004】
しかしながら、排ガス(排気)という観点からは、ディーゼルエンジンは、火花点火式のものと比較して、より厳しい問題を提起する。排ガス問題は、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)、未燃焼炭化水素(HC)、及び一酸化炭素(CO)に関するものである。NOxは、特に一酸化窒素(NO)及びに酸化窒素(NO2)を含む窒素酸化物の種々の化学的種を記載するのに使用される用語である。
【0005】
貴金属、例えば白金族金属(PGM)を耐火金属酸化物支持体の上に分散された状態で含む酸化触媒が、(炭化水素と一酸化炭素のガス状汚染物質の両方を、これらの汚染物質の酸化を触媒作用させることにより、二酸化炭素と水に変換するために)ディーゼルエンジンの排ガス処理に使用されることが公知である。このような触媒は、通常、ディーゼル酸化触媒(DOC)、又はより単純に触媒変換器と呼ばれるユニット(該ユニットは、ディーゼル駆動エンジンからの排ガス流路に配置され、排ガスが大気に放出される前に排ガスを処理する)内に含まれている。代表例では、ディーゼル酸化触媒は、セラミック又は金属製の基材キャリア支持体上に形成され、この上に、1種以上の触媒被覆組成物が沈澱される。ガス状のHC、CO及び粒子状物質のSOFフラクションの変換に加え、白金族金属(該白金族金属は、典型的には、耐火酸化物支持体上に分散されている)を含む酸化触媒が、一酸窒素(NO)のNO2への酸化を促進する。
【0006】
例えば、特許文献1(US5491120)は、セリア及びバルク第2金属酸化物(これらは、チタニア、ジルコニア、セリア−ジルコニア、シリカ、アルミナ−シリカ及びアルファ−アルミナの1種以上であって良い)を含む酸化触媒を開示している。
【0007】
特許文献2(US5627124)は、セリア及びアルミナを含む酸化触媒を開示している。同文献は、それぞれのものは、表面積が少なくとも10m2/gであると開示している。セリアのアルミナに対する質量割合は、1.5:1〜1:1.5であると開示されている。同文献は更に、任意に白金を含むことが開示されている。アルミナは、活性アルミナであることが好ましいと記載されている。特許文献1(US5491120)は、セリア及びバルク第2金属酸化物(これらは、チタニア、ジルコニア、セリア−ジルコニア、シリカ、アルミナ−シリカ及びアルファ−アルミナの1種以上であって良い)を含む酸化触媒を開示している。
【0008】
従来技術は、ディーゼル排ガスを処理するために、金属をドープしたゼオライトを含むゼオライトを意識的に使用することも示している。例えば、特許文献3(US4929581)は、ディーゼル排ガスのためのフィルター(該フィルター内で、排ガスが強制的に触媒壁を通って流され、煤粒子がろ過される)を開示している。白金族金属がドープ(添加)されたゼオライトを含む触媒がフィルターの壁上に分散され、煤の酸化に触媒作用を及ぼして、フィルターが塞らないようにしている。
【0009】
特許文献4(US2008/045405)は、排ガス放出(排ガス放出物)を処理(例えば、未燃焼炭化水素及び一酸化炭素の酸化、及び窒素酸化物の還元)するためのディーゼル酸化触媒を開示している。より特定的には、特許文献4(US2008/045405)は、Pt:Pdの質量割合が明確に異なる2層の異なるワッシュコート層を含む、ワッシュコート組成物に関するものである。
【0010】
(最先端の)従来技術では、触媒化された煤フィルター(CSF)のための、種々の触媒組成物を開示している。例えば、特許文献5(US2007/191219)は、ディーゼル粒子を除去するための触媒材料(該触媒材料は、第1成分(主成分)としてジルコニウム及びセリウムとイットリウムを除く希土類金属を含む、酸化物複合体を含んでいる)を開示している。この酸化物複合体は、結晶子径が13nm〜40nmである。
【0011】
特許文献6(US7250385)は、所定の触媒を開示している。この触媒は、セラミック支持体中の粒子の各表面を、アルミナの薄いフィルムで被覆し、そして活性触媒成分を薄いフィルムの表面上で保持することによって形成されている。この触媒は、孔径と空隙率が大きく、そして表面上でのアルミナの薄いフィルムの形成とは無関係に、圧力損失が小さい。そしてこの触媒は、例えば、セラミック支持体をアルミニウム含有金属化合物に漬け、事前に焼成し、熱水に漬け、乾燥させ、焼成し、そして最終的に活性触媒成分を、支持体表面上のアルミナの薄いフィルム上に保持することによって製造される。
【0012】
この技術分野では公知のように、内燃エンジンの排ガス処理に使用される触媒は、温度が比較的低い運転の期間中(例えば初期コールド−スタート期間中)は、効果的でない。この理由は、エンジン排ガスは、排ガス中の有害成分の触媒変換のためには、温度が十分に高くないからである。この目的のために、この技術分野では、ゼオライトであっても良い吸着剤を、(ガス状の汚染物質、通常は炭化水素を吸着し、そして初期コールド−スタート期間中これらを保持するために、)触媒処理システムの一部として含めることが公知である。排ガス温度が上昇するに従い、吸着した炭化水素は吸着剤から導かれ、そしてより高い温度で触媒処理に処される。このことについては、例えば特許文献7(US5125231)が参照される。この文献は、低温炭化水素吸着剤及び酸化触媒としての白金族金属をドープしたゼオライトの使用が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】US5491120
【特許文献2】US5627124
【特許文献3】US4929581
【特許文献4】US2008/045405
【特許文献5】US2007/191219
【特許文献6】US7250385
【特許文献7】US5125231
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記文献に開示されているように、耐火金属酸化物支持体上に分散した白金族金属(PGM)を含む酸化触媒を、ディーゼルエンジンからの排ガス放出の処理に使用することが公知である。白金(Pt)は、希薄条件(lean condition)下での高温エージングの後、及び燃料硫黄の存在中において、DOC中のCO及びHCを酸化するために最も効果的な白金族金属である。しかしながら、パラジウム(Pd)ベースの触媒を使用することの主たる長所の一つは、Ptと比較した場合にPdのコストが低いことである。しかしながら、PdベースのDOCsは、典型的には、COとHCのための点火温度がより高く、特にHC貯蔵材料と一緒に使用した場合にはそうであり、HC及び/又はCO点火が遅延する可能性がある。Pd含有DOCsは、パラフィンを変換する及び/又はNOを酸化するPtの活性を害し、及び触媒を硫黄汚染に対してより敏感にする(弱くする)ものである。これらの特徴は、典型的には、(特に、大半の運転条件で、温度が250℃未満に保持されている軽量ディーゼル(light duty diesel)の用途のための)希薄燃焼運転における酸化触媒としてのPdの使用を妨げる。
【0015】
排ガス放出の規制がより厳しくなり、改良された性能、例えば改良された点火性能を提供するディーゼル酸化触媒(DOC)システムを発展させる、絶え間ない目標が存在する。その結果、本発明は、触媒の触媒活性を犠牲にすることなく炭化水素貯蔵容量を最大限にするための、層設計を有するディーゼル酸化触媒を対象とする。DOCsの成分、例えばゼオライト、セリア、及びパラジウムを可能な限り効果的に使用するという目標も存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
要旨
排ガスシステム、及び成分、及び支持体上のディーゼル酸化触媒材料を使用するこれらの使用方法が提供される。支持体は、ディーゼル酸化触媒(DOC)のために使用される流通設計(flow-through design)、又は触媒化煤フィルターのために使用される壁流設計であることができる。第1の局面では、ディーゼルエンジンからの排ガス放出を処理するための、層構造のディーゼル酸化触媒複合体が提供される。このディーゼル酸化触媒複合体は、ディーゼル酸化触媒材料、キャリア支持体(ここで、触媒材料は、パラジウム成分を含み、及び少なくとも2層の層を含む):
少なくとも1種の分子篩を含む炭化水素トラップ層(ここで、炭化水素トラップ層は実質的にパラジウムを有していない);
実質的に分子篩を有せず、及び実質的に酸素貯蔵成分を有しない、パラジウム成分を含むパラジウム含有層(ここで、パラジウム成分は表面積が大きい、耐火金属酸化物支持体の上に設けられている);
を含み、
触媒材料が、任意に、キャリア支持体の上及び少なくとも2層の層の下側に設けられた下側被覆層を含み;及び
触媒材料が、更に、少なくとも1種の炭化水素トラップ及び任意の下側被覆層中に設けられた酸素貯蔵成分を含む。
【0017】
他の局面は、排ガス流が、炭化水素、一酸化炭素、及び他の排ガス成分を含み、排ガス流を、本発明の実施の形態に従う層状ディーゼル酸化触媒複合体と接触させることを含む、ディーゼルエンジンの排ガス流を処理する方法を提供する。他の方法は、更に、ディーゼル排ガス流を、一回以上、ディーゼル酸化触媒複合体の下流側に設けられた煤フィルター、及び触媒化煤フィルター(CSF)の上流又は下流に設けられた選択性触媒還元(SCR)触媒性物品に案内することを含むことができる。
【0018】
更なる局面は、炭化水素、一酸化炭素、及び他の排ガス成分を含むディーゼルエンジン排ガス流を処理するためのシステムであって、ディーゼルエンジンと排ガスマニホルドを介して流体連結している排ガス導管;前記キャリア支持体が、流通基材又は壁流基材である、本発明の実施の形態に従うディーゼル酸化触媒複合体;及び複合体と流体的に連結している、以下の:煤フィルター、選択的触媒還元(SCR)触媒物品、及びNOx貯蔵及び還元(NSR)触媒物品の1つ以上、を含むシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一酸化炭素変換データのグラフである。
【図2】炭化水素変換データのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ディーゼル排ガス放出システム、及び成分(これらにおいては、パラジウムが触媒材料中の分子篩、例えばゼオライトから分離され、及び酸素貯蔵成分(OSC)が、大半の貴金属成分、例えばパラジウム及び白金から分離されている)が提供される。従って、触媒材料中で、少なくとも2層の層が存在する:実質的にゼオライトを有しないパラジウム含有層、及び少なくとも1種のゼオライトを含み、及び実質的にパラジウムを含まない炭化水素トラップ層。任意に、下側被覆層も提供される。OSCは、炭化水素トラップ層又は下側被覆層中、又は両方の中に、パラジウム含有層中に配置された大半の貴金属成分から分離して存在することができる。OSCを大半のパラジウム成分から分離することにより、ディーゼル酸化条件下で、OSCによるパラジウムの汚染によってパラジウムの効果が損なわれることが最小限にされる。
【0021】
パラジウムのゼオライトからの分離は、パラジウムの効果を高め、及び貴金属(即ちパラジウム)のシリカ汚染、又は貴金属(即ちパラジウム)のゼオライト表面への移動(の可能性)に起因する、CO及びHC点火活性の損失を最小限にすることを意図するものである。ゼオライト含有層からのパラジウムの除去は、卓越した点火性能を与えることが見出された。ほとんど全て(例えば、>80%、85%、90%、又は95%)の貴金属成分をゼオライトから除去することも有利である。更に、パラジウムと白金のための(ゼオライトが存在しない)多孔性の高表面積の耐火金属酸化物支持体の使用も卓越した点火性能を提供する。下部層中の表面積の耐火金属酸化物支持体(実質的に貴金属が存在しない)を使用することも高変換における点火を改良する。
【0022】
このような触媒は、ディーゼルエンジンから放出された炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を酸化するのに効果的であり、ここで、炭化水素トラップ層は、ディーゼルエンジンに伴う条件下でHCを吸着するのに活性であり、及び貴金属、例えば白金及びパラジウムは、ディーゼル排ガスのHCとCOを酸化するために活性である。
【0023】
触媒複合体(触媒合成物)は、触媒成分、例えばHC、CO及び/又はNOxの酸化に触媒作用を及ぼすのに有効な貴金属成分を含む、1層以上のワッシュコート層を有するキャリア支持体基材、例えばハニカム基材を含む触媒物品を意味する。
【0024】
「本質的に無い(essentially no)」、「本質的に有しない(essentially free)」及び「実施的に有しない(substantially free)」は、上述した材料が上述した層内に意図的に設けられないことを意味する。しかしながら、この材料は、上述した層に、実効の無い最小限の量(即ち、材料の<10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%又は1%)で、移動又は拡散しても良い。従って、ここで使用されている「実質的に微小孔性の材料を有しない層」(例えば、ゼオライト材料)は、微小孔性の材料を10質量%以下の量で含む層、又は微小孔性の材料を完全に含まないものである。しかしながら、本発明に従い、「実質的に微小孔性の材料を有しない層」という記載は、層内に存在しても良い、マクロ−、又はメソ−多孔性である多孔性材料(例えばアルミナ材料)が、微小孔性の材料を微量の量で含むことを除外するものではない。
【0025】
高表面積耐火性金属酸化物は、20Åよりも大きい孔を有し、及び孔分布が広い支持体粒子である。ここに定義されるように、このような金属酸化物支持体は、分子篩、特定的にはゼオライトを除外する。高表面積耐火金属酸化物支持体、例えばアルミナ支持体材料(「ガンマアルミナ」又は「活性化アルミナ」とも称される)は、典型的には、BET表面積が、1グラム当たり60平方メートル(60m2/g)を超え、しばしば200m2/gまで、又はこれを超える。このような活性化アルミナは、通常、アルミナのガンマ及びデルタ層の混合物であるが、しかし、エータ、カッパ、及びシータアルミナ相を実質的な量で含んでも良い。使用する触媒中の少なくとも幾つかの触媒成分のために、活性化アルミナ以外の耐火金属酸化物を支持体として使用することができる。例えば、バルクセリア、ジルコニア、アルファアルミナ、又は他の材料がこのような用途のために公知である。これらの材料の多くが、活性化アルミナと比較して、BET面積が相当に小さいという短所を有しているにもかかわらず、この短所は、得られた触媒の耐久性が良好であることによって相殺される傾向にある。「BET表面積」は、N2吸着による表面積の測定のための、Brunauer,Emmett,Teller法を参照する通常の意味を有する。孔径及び孔体積は、BET−typeN2吸着を使用して測定可能である。望ましくは、活性アルミナは、比表面積が60〜350m2/g、及び典型的には90〜250m2/gである。耐火酸化物支持体上の搭載量(積載量)は、好ましくは約0.1〜約6g/in3、より好ましくは約2〜約5g/in3、及び最も好ましくは約3〜約4g/in3である。
【0026】
ここに使用されているように、分子篩、例えばゼオライトは、粒子の状態で触媒性貴金属金属を担持する材料を表し、該材料は、実質的に均一な孔分布を有し、平均孔径は20Å以下である。触媒層中の「非ゼオライト支持体」は、分子篩又はゼオライトではなく、及び(アソシエーション、分散、含浸、又は他の適切な方法によって)貴金属、安定剤、促進剤、バインダー、及びこれらに類似するものを受けるものを表す。このような支持体の例は、高表面積耐火金属酸化物を含むが、これらに限られるものではない。本発明の1つ以上の実施の形態では、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア、シリカ−アルミナ、ジルコニア−アルミナ、チタニア−アルミナ、ランタナ−アルミナ、ランタナ−ジルコニア−アルミナ、バリア−アルミナ、バリア−ランタナ−アルミナ、バリア−ランタナ−ネオジミア−アルミナ、ジルコニア−シリカ、チタニア−シリカ、及びジリコニア−チタニアから成る群から選ばれる活性化化合物を含む、高表面積耐火金属酸化物支持体を含む。
【0027】
OSC(酸素貯蔵成分)については、多価状態を有し、及び排ガス条件下で、酸素を活性的に貯蔵し及び放出することができる構成要素を表す。典型的には、酸素貯蔵成分は、1種以上の希土類金属の1種以上の還元性酸化物を含む。適切な酸素貯蔵成分の例は、セリアを含む。プラセオジミアもOSC又は促進剤として含むことができる。
【0028】
好ましくは、触媒は、ディーゼル酸化触媒(DOC)又は触媒化煤フィルター(CSF)である。従って、本発明は、ディーゼルエンジンからの排ガス放出の処理のためのディーゼル酸化触媒であって、(a)支持体基材、(b)少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む、少なくとも1層の層(LO)、(c)少なくとも1種の触媒的に活性なPGM成分を含む、少なくとも1層の層(LC)を含むディーゼル酸化触媒にも関する。
【0029】
他の実施の形態に従えば、本発明は、ディーゼルエンジンからの排ガス放出の処理のための触媒化された煤フィルターであって、(a)支持体基材、(b)少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む、少なくとも1層の層(LO)、(c)少なくとも1種の触媒的に活性なPGM成分を含む、少なくとも1層の層(LC)を含む、触媒化された煤フィルターにも関する。
【0030】
本発明に従う触媒組成物は、少なくとも2層の別個の層をキャリア支持体基材上に含み、ここで、ある層(LO)は、少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含み、そして他の層(LC)は、少なくとも1種の触媒的に活性なPGM成分を含む。層(LO)は、高い酸素貯蔵容量を有し、そして追加的な変換効率を与える。層の分離のために、層(LC)は、触媒的に活性なPGM成分と酸素貯蔵成分の間に、否定的な影響を及ぼすことなく、高い変換効率を有する。
【0031】
本発明に従う触媒組成物は、少なくとも2つの別個の層(LO)と(LC)を含む。本発明に従えば、少なくとも1種の触媒的に活性なPGM成分を含む層(LC)を、キャリア支持体基材上に被覆し、及び少なくとも1種の酸素貯蔵成分を含む層(LO)を、層(LC)の上から被覆することが可能である。しかしながら、少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む層(LO)を、キャリア支持体基材の上に被し、少なくとも1種の触媒的に活性なPGM成分を含む層(LC)を層(LO)の上に被覆することも可能である。
【0032】
本発明に従えば、触媒組成物は、更なる層を含むこともできる。特に、触媒組成物は、(少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む)2層以上の層(LO)、好ましくは2層の層(LO)を含むことができる。
【0033】
従って、一実施の形態に従えば、本発明は、上述した所定の触媒組成物(該触媒組成物は、少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む、2層の層(LO−1)及び(LO−2)を含む)に関する。
【0034】
好ましくは、本発明に従う触媒組成物は、少なくとも1種の触媒的に活性なPGM成分を含む、少なくとも1層の層(LC)、及びそれぞれが少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む、2層の層(LO−1)及び(LO−2)を含む。更に好ましくは、層(LC)は、2層の層(LO−1)及び(LO−2)の間に配置される。
【0035】
従って、一実施の形態に従えば、本発明は、上述した触媒組成物であって、(a)キャリア支持体基材、(b)上記キャリア支持体基材の上に被覆された少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む層(LO−1)、(c)上記層(LO−1)の上に被覆された、少なくとも1種の触媒的に活性なPGM成分を含む層(LC)、(d)上記層(LC)の上に被覆された、少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む層(LO−2)、を少なくとも含む触媒組成物に関する。
【0036】
本発明に従う触媒組成物は、更なる層を含むこともできる。層は任意の順序で配置することができ、及び上述した層の任意のものの間に中間層が存在することもできる。
【0037】
本発明の触媒組成物は、キャリア支持体基材を含む。原則として、この技術分野の当業者にとって公知の、適切な任意のキャリア支持体材料を、本発明に使用することができる。
【0038】
本発明に従えば、本発明の触媒組成物は、キャリア支持体基材の上に配置される。特にディーゼル酸化触媒のために、基材は、典型的には触媒の製造のために使用される材料の任意のものであって良く、及び好ましくはセラミック又は金属ハニカム構造体を含む。適切な任意の基材を使用して良く、例えば、基材の入口又は出口表面から延び、微細で、平行するガス流通路(該通路は、流体が流通するように開放されている)を有するタイプのモノリス基材(ここでは、流通基材と称される)を使用しても良い。その流体入口からその流体出口にかけて本質的に真っ直ぐな通路が、ワッシュコートとして触媒材料が被覆された壁によって規定され、これにより、通路を流れるガスが触媒材料と接触する。モノリス基材の流通通路は、薄い壁によるチャンネルであり、該チャンネルは、台形、長方形、正方形、正弦曲線、六角形、楕円形、円等の、適切な任意の断面形状と寸法を有することができる。
【0039】
触媒煤フィルターのために、基材は、ハニカム壁流フィルター、巻又は充填ファイバーフィルター、連続気泡フォーム、焼成金属フィルター等であっても良く、壁流フィルターが好ましい。CSF組成物を担持するために有用な壁流基材(wall flow substrate)は、複数の、微細で、実質的に平行なガス流通路(該ガス流通路は、基材の長さ方向軸に沿って伸びている)を有する。典型的には、各通路は、基材本体の一端が閉塞され、交互する通路が反対の端部表面で閉塞されている。
【0040】
本発明のシステムで使用するための、好ましい壁流基材は、(背圧、又は物品を横切る圧力を過剰に増加せることなく流体流が通過する)薄い多孔性の壁を有するハニカム(モノリス)を含む。通常、清浄な壁流物品の存在は、1水柱インチ〜10psigの背圧を形成する。本システム内に使用されるセラミック壁流基材は、多孔率が少なくとも40%(例えば、40〜70%)で、平均孔径が少なくとも5ミクロン(例えば5〜30ミクロン)の材料で形成されることが好ましい。より好ましくは、基材が、少なくとも50%の多孔率、及び少なくとも10ミクロンの平均孔径を有する。これらの多孔率、及びこれらの平均孔径を有する基材が以下に記載する技術を使用して被覆された場合、CFS触媒組成物の適切なレベルを基材に搭載(積載)でき、卓越したNOx変換効率と煤の燃焼が達成される。これらの基材は、(CFS触媒を搭載しているにもかかわらず)適切な排ガス流特性、すなわち、許容可能な背圧をなお保持することができる。適切な壁流基材は、例えばUS4329162に開示されている。
【0041】
本発明に従い使用される多孔性壁流フィルターは、任意に触媒化され、その中で、上記要素の壁が、その上又はその中に、1種以上の触媒材料を有する。このようなCFS触媒組成物については上述した。触媒材料は、要素の入口側に単独で存在しても良く、出口側に単独で存在しても良く、入口と出口側の両方に存在しても良く、又は壁が全て、又は部分的に触媒材料で構成されても良い。他の実施の形態では、本方法は、触媒材料の1層以上のワッシュコート層、及び要素の入口及び/又は壁上の触媒材料の1層以上の層の組み合わせを含む。
【0042】
このようなモノリスキャリア支持体は、断面の1平方インチ当たり、約900以上の流路(又は「セル」)を含んでも良く、これより少ないものが使用されても良い。例えば、キャリア支持体は、約50〜600、より一般的には、約200〜400(“cpsi”)のセルを1平方インチ当たりに有していても良い。セルは、長方形、正方形、円、楕円形、三角形、六角形、又は他の多角形形状を有することが可能である。流通基材は、典型的には、壁厚さが0.002〜1インチの範囲である。好ましい流通基材は、壁厚さが0.002〜0.015インチの範囲である。
【0043】
適切なセラミック基材は、適切な任意の耐火材料、例えばコージライト、コージライト−アルミナ、シリコン−ニトリド、シリコン−カーバイド、ジルコンムライト、シリア輝石、アルミナ−シリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、アルミナ、アルミノシリケート及びこれらに類似するもので作成されて良い。
【0044】
本発明の触媒組成物のために有用なキャリア支持体基材は、実質的に金属であっても良く、及び1種以上の金属又は金属合金で構成されても良い。金属基材は、種々の形状、例えば波形シート、又はモノリス形状で使用されて良い。好ましい金属支持体は、耐熱金属、及び金属合金、例えばチタニウム、及びステンレススチール、及び(鉄が実質的又は主要な成分である)他の金属を含む。このような合金は、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムの1種以上を含んでも良く、及びこれらの金属の合計量は、少なくとも15質量%の合金、例えば10〜25質量%のクロム、3〜8質量%のアルミニウム、及び20質量%以下のニッケルを含むことが有利である。合金は、少量又は微量の1種以上の他の金属、例えばマンガン、銅、バナジウム、チタニウム、及びこれらに類似するものを含んでも良い。表面又は金属基材を、高温、例えば1000℃以上で酸化し、基材の表面に酸化物層を形成することによって合金の腐食に対する抵抗性を改良しても良い。このような高温状態を含む酸化は、耐火金属酸化物及び触媒的な促進金属成分の基材への付着を高めても良い。
【0045】
有用な高表面積支持体は、1種以上の耐火性酸化物を含む。これらの酸化物は、例えば、シリカ及びアルミナ、チタニア、及びジルコニアを含み、及び混合状態、例えばシリカ−アルミナ、アルミノシリケート(これらはアモルファス又は結晶質であって良い)、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−セリア、及びこれらに類似するもの、及びチタニウム−アルミナ及びジルコニウム−シリケートを含む。一実施の形態では、支持体は、アルミナ、例えばガンマ及びエータアルミナ、及び存在する場合には、微量の他の耐火酸化物、例えば約20質量%以下のもので構成されることが好ましい。望ましくは、活性アルミナは、比表面積が60〜350m2/gであり、及び典型的には90〜250m2/gである。
【0046】
耐火性酸化物支持体の搭載量は、DOCについて、好ましくは約0.1〜約6g/in3、より好ましくは約0.5〜約5g/in3、及び最も好ましくは、約2〜約4g/in3及びCSFについて約0.2〜約1.0g/in3である。
【0047】
本発明に従い、本発明に従う触媒組成物の層(LC)は、少なくとも1種の触媒的に活性なPGM成分を含む。原則として、適切な任意の触媒的に活性な成分を使用することができる。好ましくは、触媒的に活性な成分は、白金族金属(PGM)の少なくとも1種の金属、例えば、Pt、Pd、Rh、Au及び/又はIrから選ばれる、少なくとも1種の金属である。本発明において、触媒的に活性な成分は、白金族金属の2種以上、特にPd及びPtを含むことも可能である。
【0048】
従って、更なる実施の形態に従えば、本発明は、上述した触媒組成物であって、触媒的に活性な成分が、白金族金属の少なくとも1種の金属を含む触媒組成物を対象とする。更なる実施の形態に従えば、本発明は、上述した触媒組成物であって、触媒的に活性な成分が、Pt、Pd、Rh、Au及びIrから選ばれる少なくとも1種の金属である触媒組成物を対象とする。一実施の形態に従えば、本発明は、上述した触媒組成物であって、触媒的に活性な成分が、Pt、及びPdを含む触媒組成物を対象とする。
【0049】
層(LC)が、追加的に、多孔性材料を含むことも可能である。特に、本発明に従い、層(LC)が、触媒的に活性なPGM成分、特にPt及びPdを多孔性支持体材料の上に分散した状態で含むことが可能である。
【0050】
従って、更なる実施の形態に従えば、本発明は、上述した触媒組成物であって、層(LC)がPt及びPdを多孔性支持体材料の上に含む触媒組成物を対象とする。
【0051】
適切な多孔性材料は、この技術分野の当業者にとって公知である。層(LC)の多孔性支持体材料は、(シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、チタニア及びこれらの混合物の化合物を含む群から選ばれる)卑金属酸化物及び/又は遷移金属酸化物が好ましい。好ましい支持体は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、シリカ−アルミナ、アルミナ−ジルコニア、アルミナ−クロミア、アルミナ−セリア、ジルコニウム−シリケート、及びチタニア−アルミナから成る群から選ばれる、活性化された高表面積化合物であることが好ましい。特に好ましいものは、Al23、ZrO2、CeO2、又はSiO2、及びこれらの混合物である。
【0052】
多孔性材料は、多孔率が0.2〜1.2mL/gであることが好ましく、この多孔率は、好ましくは0.6〜1.0mL/gである。多孔性材料は、BET表面積が30〜300m2/gであることが好ましく、70〜200m2/gであることがより好ましく、及び平均孔径が70Å〜150Åであることが好ましい。
【0053】
本発明の触媒組成物は、PtとPdを異なる割合で含むことができる。一実施の形態に従えば、触媒組成物はPtとPdを、約1/10〜約10/1のPt/Pd割合で含んでも良く、このPt/Pd割合は、好ましくは約1/2〜約4/1、特に1/1の周囲である。替わりの実施の形態に従えば、触媒組成物は、PtとPdを、2/1の周囲のPt/Pdで含んでも良い。
【0054】
触媒組成物の合計搭載量は、ディーゼル酸化触媒について、約1〜300g/ft3の範囲であっても良く、この範囲は、好ましくは約10〜約200g/ft3であり、及び触媒化された煤フィルターについて、好ましくは約1〜100g/ft3の範囲である。
【0055】
本発明に従えば、層(LO)、又は層(LO−1)及び/又は(LO−2)は、触媒的に活性な成分、特にPt及び/又はPdを含んでも良い。従って、一実施の形態に従えば、本発明は、上述した触媒組成物であって、層(LO)が追加的にPt又はPd又はPtとPdを含む触媒組成物を対象とする。
【0056】
本発明に従う触媒組成物が2層の層(LO−1)及び(LO−2)を含む場合、一方又は両方の層が、触媒的に活性な成分を含んでも良い。例えば、層(LO−1)がPdを含んでも良く、及び層(LO−2)が、触媒的に活性な成分を含まなくても良い。しかしながら、層(LO−1)が触媒的に活性な成分を含まなくても良く、及び層(LO−2)が追加的にPt又はPd、又はPtとPdを含んでも良い。従って、一実施の形態に従えば、本発明は上述した触媒組成物であって、層(LO−1)が追加的にPdを含む触媒組成物を対象とする。
【0057】
更に好ましい実施の形態に従えば、本発明は、上述した触媒組成物であって、層(LO−2)が、追加的にPt又はPd、又はPtとPdを含む触媒組成物を対象とする。
【0058】
触媒組成物がPt及びPdを、1/1の周囲のPt/Pd割合で含む場合、層(LC)は、PtとPdを、好ましくは1.5〜2.5のPt/Pd割合、特に1.7〜2.3のPt/Pd割合で含む。この場合、好ましくは、層(LO)、特に層(LO−1)は、追加的にPdを含む。従って、一実施の形態では、本発明は、上述した触媒組成物であって、層(LC)が、PtとPdを1.5〜2.5のPt/Pd割合で含む触媒組成物を対象とする。
【0059】
触媒組成物が、Pt及びPdを、2/1の周囲のPt/Pd割合で含む場合、層(LC)は、好ましくは、PtとPdを、1.7〜2.3のPt/Pd割合、特に1.9〜2.1、例えば2の周囲のPt/Pd割合で含む。この場合、好ましくは、層(LO)、特に層(LO−1)は、最初は追加的なPdを含まない。しかしながら、本発明に従えば、Pdを、層(LC)から層(LO)、特に層(LO−1)に浸出させることも可能である。
【0060】
Pdが層(LO)中、特に層(LO−1)中に存在する場合、層(LO)中、特に層(LO−1)中のPdの、触媒組成物中の貴金属の合計量(特に、PtとPdの合計量)に対する割合は、0.01〜0.4の範囲であることが好ましい。
【0061】
Pdが層(LO)中、特に層(LO−1)中に存在する場合、Pdの量は、約1〜50g/ft3の範囲であることが好ましい。
【0062】
層(LO)、特に層(LO−1)及び(LO−2)は、追加的に更なる金属を含んでも良い。
【0063】
Ptが層(LO−2)中に存在する場合、特に層(LO−2)中のPtの、触媒組成物中の貴金属の合計量(特に、PtとPdの合計量)に対する割合は、0.05〜0.1の範囲であることが好ましい。
【0064】
Ptが層(LO−2)中に存在する場合、Ptの量は、約1〜50g/ft3の範囲であることが好ましく、約2〜15g/ft3の範囲であることがより好ましい。
【0065】
Pdが層(LO−2)中に存在する場合、層(LO−2)中のPdの、触媒組成物中の貴金属の金属の合計量(特に、PtとPdの合計量)に対する割合は、0.005〜0.25の範囲であることが好ましい。
【0066】
Pdが層(LO−2)中に存在する場合、Pdの量は、約1〜30g/ft3の範囲であっても良く、及び約2〜15g/ft3の範囲であることがより好ましい。
【0067】
本発明に従えば、層(LO)又は層(LO−1)及び/又は(LO−2)は、多孔性支持体材料を含むこともできる。特に、層(LO)又は層(LO−1)及び/又は(LO−2)に含まれても良いPt及び/又はPdは、多孔性支持体材料中に分散されることが可能である。
【0068】
従って、更なる実施の形態に従えば、本発明は上述した触媒組成物であって、層(LO)又は層(LO−1)及び/又は(LO−2)が、多孔性支持体材料上のPt、又は多孔性支持体材料上のPd、又は多孔性支持体材料上のPt及びPdを含む触媒組成物を対象とする。
【0069】
他の実施の形態に従えば、本発明は、詳述した触媒組成物であって、層(LO−1)は、多孔性の支持体材料上のPdを含む触媒組成物を対象とする。
【0070】
本発明に従えば、層(LO)又は層(LO−1)及び/又は(LO−2)が、その上に如何なる金属も分散されていない多孔性支持体材料を含むことも可能である。適切な多孔性支持体材料については上述した。特に好ましいものは、卑金属酸化物及び遷移金属酸化物から選ばれる多孔性支持体材料であり、より好ましくは、多孔性支持体材料は、アルミナである。
【0071】
従って、更なる実施の形態に従えば、本発明は、上述した触媒組成物であって、多孔性支持体材料が卑金属酸化物及び遷移金属酸化物から選ばれる触媒組成物を対象とする。
【0072】
好ましい実施の形態に従えば、本発明は、上述した触媒組成物であって、多孔性材料がアルミナである触媒組成物を対象とする。
【0073】
本発明の触媒組成物の層(LO)、又は層(LO−1)及び/又は層(LO−2)は、酸素貯蔵化合物を含む。層(LO−1)及び(LO−2)は、同じ酸素貯蔵化合物を含むことができるが、異なる酸素貯蔵化合物を含むこともできる。
【0074】
本発明に従えば、適切な任意の酸素貯蔵化合物を使用することができる。好ましいものは、例えば、ZrO2及び/又はCeO2を含む酸素貯蔵化合物である。
【0075】
従って、更なる実施の形態に従えば、本発明は、上述した触媒組成物であって、酸素貯蔵化合物がZrO2及び/又はCeO2を含む触媒組成物を対象とする。
【0076】
本発明に従う酸素貯蔵化合物は、更なる金属、例えばY、La、Nd、Sm、Pr及びHf又はこれらの混合物を含んでも良い。
【0077】
本発明の触媒組成物の層(LC)は、追加的に、更なる成分、例えば更なる触媒的に活性な成分又は促進剤(promoter)を含むことができる。適切な促進剤は、この技術分野の当業者にとって公知である。好ましい促進剤は、例えばアルカリ性酸化物、例えばBaO、MgO、La23、又はこれらの混合物である。
【0078】
追加的に、層(LC)は、Sn、Si又はTi又はこれらの混合物を含む化合物を含んでも良い。
【0079】
更なる実施の形態に従えば、本発明の触媒組成物は、追加的にゼオライトを含んでも良い。ゼオライトは、酸素貯蔵化合物を含む、本発明に従う触媒組成物の1層以上の層中に存在することが好ましい。従って、一実施の形態に従えば、本発明は上述した触媒組成物であって、層(LO)が追加的にゼオライトを含む触媒組成物を対象とする。好ましい実施の形態に従えば、本発明は上述した触媒組成物であって、層(LO−1)及び/又は(LO−2)が追加的にゼオライトを含む触媒組成物を対象とする。
【0080】
典型的には、公知のゼオライトの任意のものが使用可能である。ゼオライトは、天然又は合成ゼオライト、例えばフォージャサイト、菱沸石、クリノプティロライト、モルデナイト、シリカライト、ゼオライトX、ゼオライトY、超安定ゼオライトY、ZSM−5ゼオライト、ZSM−12ゼオライト、SSZ−3ゼオライト、SAPO5ゼオライト、オフレタイト、又はベータゼオライトであることができる。好ましいゼオライト吸着剤は、シリカのアルミナに対する割合が高いものである。ゼオライトは、シリカ/アルミナモル割合が、少なくとも約25/1、好ましくは少なくとも約50/1、通常では約25/1〜1000/1の範囲、50/1〜500/1、及び約25/1〜300/1の範囲、約100/1〜250/1であっても良く、又は替わりに約35/1〜180/1も例示される。好ましいゼオライトは、ZSM、Y及びベータゼオライトを含む。特に好ましい吸着剤は、US6171556に開示されたタイプのベータゼオライトを含んでも良い。ゼオライトの搭載量(loading)は、十分なHC貯蔵容量を保証し、及び低温貯蔵の後の温度傾斜の間、貯蔵したパラフィンの解放が早過ぎることのないように、0.3g/in3よりも小さいものであるべきではない。ゼオライト成分の含有量は、0.4〜0.7g/in3の範囲であることが好ましい。ゼオライトからの芳香族化合物とパラフィンの解放が早過ぎると、CO及びHC点火の遅延を引き起こす。
【0081】
好ましくは、触媒組成物のために使用されるゼオライトは、孔径が0.3〜1.0nmである。
【0082】
一実施の形態では、1種以上のゼオライトが希土類金属とのイオン交換によって安定化されても良い。他の実施の形態では、本発明の(1層以上の)ワッシュコート層は、重質HCsの酸化を促進するために、1種以上の希土類酸化物(例えば、セリア)を含んでも良い。
【0083】
本発明の触媒組成物、即ちディーゼル酸化触媒、又は本発明の触媒化煤フィルターは、適切な任意の方法で製造することができる。
【0084】
本発明の触媒組成物(触媒構成体)の各層の組成は、この技術分野の公知の任意の方法によって、基材表面に施すことができる。例えば、触媒組成物は、スプレーコーティング、パウダーコーティング、又はブラッシングによって、又は表面を触媒組成物中に浸漬することによって施すことができる。
【0085】
特に、個々の層は、適切な如何なる方法によってでも施すことができ、及びある層が施された後、次の層が施される前に、乾燥工程、又は乾燥とか焼工程が施されることが好ましい。
【0086】
本発明に従えば、各層を、基材又は下側の層の上に、完全に、又は基材又は下側の層を、基材又は下側の層の長さの10〜100%の長さの量で覆う領域の状態で施すことができる。基材又は層の残りの未被覆の部分は、他の層で覆うことができる。ディーゼル酸化触媒として使用するために、このような領域は、下側の基材又は層の、好ましくは50〜100%の長さ、より好ましくは90〜100%の長さ、例えば100%の長さを覆う。触媒化された煤フィルターとして使用するために、このような領域は、下側の基材又は層の、好ましくは10〜50%の長さ、より好ましくは50%の長さを覆う。
【0087】
本発明は、未燃焼の炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を含むディーゼルエンジン排ガス流放出を処理する方法をも対象とする。ディーゼルエンジンからの排ガス流は、本発明の触媒組成物(すなわち、本発明のディーゼル酸化触媒又は触媒化された煤フィルター)を含む排ガス処理装置内で処理することができる。本発明に従い、排ガス流は、最初に頂部層と接触し、そして次に下側の(1層以上の)層と接触する。
【0088】
運転の間、希薄燃焼エンジンからの、炭化水素、一酸化炭素、酸化窒素、及び酸化硫黄を含むガス状の排ガス放出物は、最初に頂部層と出会い、その後で(1層以上の)下側層と出会う。
【0089】
活性再生によってCSFから煤を除去する間、COが煤の燃焼から放出される。これらの二次的な放出物は、最初に頂部層と出会い、そしてその後で下側の(1層以上の)層と出会う。
【0090】
運転の間、排ガスは、触媒組成物を、上流側端部から下流側端部へと流れる。層中に含まれる触媒的に活性な成分は、排ガス中に含まれるHC及びCO汚染物質を酸化する。
【0091】
一実施の形態では、本発明は、ディーゼル排ガス流を処理するための方法であって、以下の工程、
(i)
(a)キャリア支持体基材、
(b)少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む、少なくとも1層の層(LO)、
(c)少なくとも1種の触媒的に活性なPGM成分を含む、少なくとも1層の層(LC)、
を少なくとも含む、ディーゼル酸化触媒を用意する工程、
(ii)排ガス放出物を処理するために、上記ディーゼル排ガス流を、上記ディーゼル酸化触媒と接触させる工程、
を含む方法を対象とする。
【0092】
他の実施の形態では、本発明は、ディーゼル排ガス流を処理するための方法であって、以下の工程、
(i)
(a)キャリア支持体基材、
(b)少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む、少なくとも1層の層(LO)、
(c)少なくとも1種の触媒的に活性なPGM成分を含む、少なくとも1層の層(LC)、
を少なくとも含む、触媒化煤フィルターを用意する工程、
(ii)排ガス放出物を処理するために、上記ディーゼル排ガス流を、上記触媒化された煤フィルターと接触させる工程、
を含む方法を対象とする。
【0093】
本発明の触媒組成物の適切な実施の形態、即ち、本発明の方法のためのディーゼル酸化触媒、又は触媒化煤フィルターの適切な実施の形態については上述した。
【0094】
従って、一実施の形態に従えば、本発明は、上述した方法であって、触媒組成物が、少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む、2層の層(LO−1)及び(LO−2)を含む方法を対象とする。
【0095】
本発明の触媒組成物、即ち本発明のディーゼル酸化触媒、又は触媒煤フィルターは、ディーゼル排ガス放出物を処理するための、1種以上の追加的な成分を含む、統合された放出物処理システムに使用することができる。例えば、放出物処理システムは、本発明に従うディーゼル酸化触媒を含んでも良く、及び更に煤フィルター成分、及び/又は選択的触媒還元(SCR)成分を含んでも良い。ディーゼル酸化触媒は、煤フィルター、及び/又は選択的触媒還元成分の上流側、又は下流側に配置することができる。
【0096】
酸化触媒の使用を介して排ガス放出物を処理することに加え、本発明は、粒子状物質を除去するために、煤フィルターを使用しても良い。煤フィルターは、DOCの上流側、又は下流側に配置しても良く、しかしディーゼル酸化触媒の下流側に配置することが好ましい。好ましい実施の形態では、煤フィルターは、触媒化された煤フィルター(CSF)である。本発明に従い、適切な任意のCSFを使用することができる。しかしながら、本発明に従うDOCを、本発明に従うCSFと結合させることも可能である。
【0097】
本発明のCSFは、捕獲した煤を燃焼させるため、又は排ガス放出物を酸化するために、1種以上の触媒を含むワッシュコート層で被覆された基材(substrate)を含むことが好ましい。通常、煤燃焼触媒は、煤を燃焼させるための、公知の任意の触媒であることができる。例えば、CSFは、未燃焼炭化水素(及びある程度の粒子状物質)を燃焼させるために、1種以上の高面積耐火性酸化物(例えば、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ、ジルコニア、及びジルコニアアルミナ)及び/又は酸化触媒(例えば、セリア−ジルコニア)で被覆することができる。しかしながら、好ましくは、煤燃焼フィルターは、1種以上の貴金属(PM)(白金、パラジウム、及び/又はロジウム)を含む酸化触媒である。
【0098】
他の実施の形態に従えば、この技術分野の当業者にとって公知の、通常のDOCを、本発明に従うCSFと組み合わせることも可能である。
【0099】
本発明の排ガス処理システムは、更に、選択的触媒還元(SCR)成分を含んでも良い。SCR成分は、DOC及び/又は煤フィルターの上流側、又は下流側に配置されても良い。放出物処理システム中に使用するための適切なSCR触媒成分は、600℃未満の温度で、NOx成分の還元に効率的に触媒作用を及ぼすことができ、これにより、たとえ(特に排ガス温度が低温である場合について)搭載量が低い条件下であっても、適切なNOxレベルを処理することができる。好ましくは、触媒物品は、システムに加えられた還元剤の量に依存して、NOx成分の少なくとも50%をN2に変換可能なものである。この組成物についての他の望ましい特性は、この組成物が、O2と過剰のNH3の、N2とH2Oへの反応に触媒作用を及ぼす性能を有し、これにより、NH3が大気中に放出されないことである。放出物処理システム中に使用される、有用なSCR触媒組成物は、650℃を超える温度に対して熱的な抵抗性を有するべきである。このような高温は、上流の触媒煤フィルターの再生の間に遭遇するものである。
【0100】
適切なSCR触媒組成物は、例えばUS4961917及びUS5516497に記載されている。適切な組成物は、鉄及び銅の促進剤の一方又は双方で、これらは、促進剤とゼオライトを合わせた合計質量の約0.1〜30質量%、好ましくは約1〜5質量%の量でゼオライト中に存在することが適切である。NOxをNH3でN2へ還元する反応に触媒作用を及ぼす機能に加え、本組成物は、(特に、促進剤の濃度がより高いこれらの組成物について)過剰のNH3をO2で酸化する反応を促進することができる。
【0101】
本発明の排ガス処理システムは、更にNOx−トラップを含んでも良い。NOx−トラップは、DOC及び/又は煤フィルターの上流側、又は下流側に配置されても良い。好ましくは、NOx−トラップは、煤フィルター成分の下流側に配置される。本発明に従い、適切な任意のNOx−トラップを使用することができる。
【0102】
本発明の例としての実施の形態を幾つか記載する前に、本発明は、以下に記載された構成、又は工程の詳細に限定されるものではない。本発明は、他の実施の形態が可能であり、及び種々の方法(態様)で行うことができるものである。以下に、層構造の触媒(層状の触媒)の好ましい設計が記載されるが、このような組み合わせは、記載されたように単独で使用され、又は非限定的な組み合わせで使用されることを含み、このために、使用は本発明の他の局面のシステムと方法を含む。
【0103】
実施例1では、ディーゼルエンジンからの排ガス放出の処理のための触媒組成物であって、(a)キャリア支持体基材、(b)少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む、少なくとも1層の層(LO)、(c)少なくとも1種の触媒的に活性なPGM成分を含む、少なくとも1層の層(LC)を含む触媒組成物が提供される。
【0104】
以下に、層構造の触媒のための好ましい設計が記載されるが、これは、単独で、又は非限定的な組み合わせで使用される、記載された組み合わせを含み、このための使用は、本発明の他の局面のシステムと方法を含む。
【0105】
2.触媒がディーゼル酸化触媒である、実施例1に従う触媒組成物。
【0106】
3.触媒が触媒化された煤フィルターである、実施例1に従う触媒組成物。
【0107】
4.触媒組成物が、少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む2層の層(LO−1)及び(LO−2)を含む、実施例1〜3の何れかの触媒組成物。
【0108】
5.(a)キャリア支持体基材、(b)上記キャリア支持体基材上に被覆された、少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む、層(LO−1)、(c)上記層(LO−1)の上に被覆された、少なくとも1種の触媒的に活性なPGM成分を含む、層(LC)、(d)上記層(LC)の上に被覆された、少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む層(LO−2)を少なくとも含む、実施例1〜4の何れかの触媒組成物。
【0109】
6.触媒的に活性な成分が、少なくとも1種の、白金族金属の金属である、実施例1〜5の何れかの触媒組成物。
【0110】
7.触媒的に活性な成分が、Pt及びPdを含む、実施例1〜6の何れかに記載の触媒組成物。
【0111】
8.層(LC)が、Pt及びPdを、0.1/1〜10/1のPt/Pd割合で含む、実施例1〜7の何れかに記載の触媒組成物。
【0112】
9.層(LC)が、Pt及びPdを、1.5/1〜2.5/1のPt/Pd割合で含む、実施例1〜8の何れかに記載の触媒組成物。
【0113】
10.層(LO)が、追加的に、Pt又はPd、又はPtとPdを含む、実施例1〜4の何れかに記載の触媒組成物。
【0114】
11.層(LO−2)が、追加的に、Pt又はPd、又はPtとPdを含む、実施例5〜9の何れかに記載の触媒組成物。
【0115】
12.層(LO−1)が、追加的にPdを含む、実施例5〜9の何れかに記載の触媒組成物。
【0116】
13.酸素貯蔵化合物が、ZrO2及び/又はCeO2を含む、実施例1〜12の何れかに記載の触媒組成物。
【0117】
14.酸素貯蔵化合物が、Y、La、Nd、Sm、Pr、及びHf及びこれらの混合物の少なくとも1種を含むOSC変性剤(modifier)を含む、実施例1〜13の何れかに記載の触媒組成物。
【0118】
15.層(LO)、層(LC)、又は両方が、追加的にゼオライトを含む、実施例1〜4の何れかに記載の触媒組成物。
【0119】
16.層(LO−1)が、追加的にゼオライトを含む、実施例5〜14の何れかに記載の触媒組成物。
【0120】
17.層(LO−2)が、追加的にゼオライトを含む、実施例5〜14の何れかに記載の触媒組成物。
【0121】
18.層(LC)が、追加的にゼオライトを含む、実施例1〜17の何れかに記載の触媒組成物。
【0122】
19.ディーゼル排ガス流を処理するための方法であって、以下の工程、(i)(a)キャリア支持体基材、(b)少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む、少なくとも1層の層(LO)、(c)少なくとも1種の触媒的に活性なPGM成分を含む、少なくとも1層の層(LC)、を少なくとも含む、ディーゼル酸化触媒を用意する工程、及び(ii)排ガス放出物を処理するために、上記ディーゼル排ガス流を、上記ディーゼル酸化触媒と接触させる工程、を含む方法。
【0123】
20.ディーゼル排ガス流を処理するための方法であって、以下の工程、(i)(a)キャリア支持体基材、(b)少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む、少なくとも1層の層(LO)、(c)少なくとも1種の触媒的に活性なPGM成分を含む、少なくとも1層の層(LC)、を少なくとも含む、触媒化煤フィルターを用意する工程、及び(ii)排ガス放出物を処理するために、上記ディーゼル排ガス流を、上記触媒化煤フィルターと接触させる工程、を含む方法。
【0124】
21.触媒組成物が、少なくとも1種の酸素貯蔵化合物を含む、少なくとも2層の層(LO−1)及び(LO−2)を含む、実施例19又は20に記載の方法。
【0125】
他の特定の設計を、単独で、又は層構造(層状)のディーゼル酸化触媒組成物と組み合わせて、本発明に従って以下のように使用することもできる:
触媒材料は、パラジウム成分を、5〜75g/ft3(0.18〜2.65kg/m3)の量で含む;
触媒材料は、更に、白金成分を、10g/ft3〜150g/ft3(0.35〜5.30kg/m3)の範囲出含み、白金成分の20質量%以下の量が、少なくとも1種の分子篩中に組み込まれ、及び白金成分の少なくとも80質量%の量が、パラジウム含有層の高表面積、耐火金属酸化物支持体上に存在する;
パラジウム含有層は、Pt及びPdを、0.1/1〜10/1のPt/Pd割合、又はより特定的には、1.5/1〜2.5/1のPt/Pd割合で含む;
酸素貯蔵成分は、ZrO2、CeO2、又は両方を含む;
酸素貯蔵成分は、Y、La、Nd、Sm、Pr及びこれらの混合物の少なくとも1種を含むOSC変性剤を含む;
15〜225g/ft3(0.53〜7.95kg/m3)の範囲の量で搭載された、合計貴金属成分;
パラジウム含有層が、キャリア支持体上に配置され、及び炭化水素トラップ層が、パラジウム含有層上に配置される;
炭化水素トラップ層が、キャリア支持体上に配置され、及びパラジウム含有層が、炭化水素トラップ層の上に配置される;
高表面積耐火金属酸化物を含む下側被覆層;
パラジウム成分を含む下側被覆層(undercoat layer);
下側被覆層と炭化水素トラップ層の両方は、独立して酸素貯蔵成分を含む;
キャリア支持体が、触媒化された煤フィルターを与える流通基材、又は壁流基材である;
パラジウム含有層が、下側被覆層の上に配置され、及び炭化水素トラップ層がパラジウム含有層の上に配置され、ここで、炭化水素トラップ層は、ベータゼオライト、ガンマアルミナ、及び白金を含む;パラジウム含有層は、更に、白金及びガンマアルミナを含み、及びPt/Pd割合が、4/1〜1/2の範囲である;及び下側被覆層が、ガンマアルミナ、及び任意にパラジウムを含む。
【0126】
触媒材料は、NOx(窒素酸化物)貯蔵のために適切な量で、実質的に卑金属がフリーである;このような卑金属は、Ba、Mg、K及びLa、及びこれらに類似するものを含むが、これらに限られるものではない;
触媒材料は、ロジウムがフリーである。
【0127】
本発明を以下の実施例を使用して更に説明する。
【実施例】
【0128】
1.触媒の製造
1.1 120g/ft31/1(OSCを有するPt/Pdテクノロジー):(サンプルA)
第1(底部)層のために、硝酸パラジウム溶液を0.75g/in3の高多孔性γ−アルミナに加え、30g/ft3Pdを得た。得られたフリット(frit)を水と酸(例えば酢酸)中に分散させた。このスラリーに、0.75g/in3のOSC材料(ZrO2:45wt%、CeO2:45wt%、La23:8wt%、Pr611:2wt%)を分散させ、そして7マイクロメーターの粒子サイズd90にミルした。最終的なスラリーをモノリス上に被覆し、110℃で乾燥させ、そして空気中で450℃でか焼した。
【0129】
第2(中間)層のため、1.5g/in3の高多孔性γ−アルミナを硝酸パラジウムの水溶液で含浸させ、30g/ft3という最終的な乾燥Pdを得た。得られた粉を水中に分散させた。白金がアンミン安定化Pt錯体としてのものであるPt溶液を加え、Pt52g/ft3の乾燥内容物を得た。スラリーのpHを4.5に調節した後、スラリーを16μmの粒子サイズd90にミル(粉砕)した。このスラリーを、次に第1層上に被覆し、110℃で乾燥させ、そして空気中で450℃でか焼した。
【0130】
第3(頂部)層のために、0.25g/in3の高多孔性γ−アルミナ、0.5g/in3のOSC材料(ZrO2:45wt%、CeO2:45wt%、La23:8wt%、Pr611:2wt%)、0.5g/in3のH−ベータゼオライト及び8g/ft3の白金を与えるアンミン安定化Pt錯体としてのものである白金を、水と酸(例えば酢酸)中に分散させた。このスラリーを、15μmの粒子サイズd90にミルし、そして次にモノリス上に被覆し、110℃で乾燥させ、及び空気中で450℃でか焼させた。
【0131】
1.2 120g/ft32/1(OSCを有するPt/Pdテクノロジー):サンプルB)
第1(底部)層のために、0.25g/in3の高多孔性γ−アルミナ及び0.75g/in3のOSC材料(ZrO2:45wt%、CeO2:45wt%、La23:8wt%、Pr611:2wt%)を水及び酸(例えば酢酸)中に分散させ、そして8マイクロメーターの粒子サイズd90にミルした。最終的なスラリーをモノリス上に被覆し、110℃で乾燥させ、そして空気中で450℃でか焼した。
【0132】
第2(中間)層のため、1.5g/in3の高多孔性γ−アルミナを硝酸パラジウムの水溶液で含浸させ、40g/ft3という最終的な乾燥Pdを得た。得られた粉を水中に分散させた。白金がアンミン安定化Pt錯体としてのものであるPt溶液を加え、Pt72g/ft3の乾燥内容物を得た。スラリーのpHを4.5に調節した後、スラリーを16μmの粒子サイズd90にミルした。このスラリーを、次に第1層上に被覆し、110℃で乾燥させ、そして空気中で450℃でか焼した。
【0133】
第3(頂部)層のために、0.25g/in3の高多孔性γ−アルミナ、0.5g/in3のOSC材料(ZrO2:45wt%、CeO2:45wt%、La23:8wt%、Pr611:2wt%)、0.5g/in3のH−ベータゼオライト及び8g/ft3の白金を与えるアンミン安定化Pt錯体としてのものである白金を、水と酸(例えば酢酸)中に分散させた。このスラリーを、15μmの粒子サイズd90にミルし、そして次にモノリス上に被覆し、110℃で乾燥させ、及び空気中で450℃でか焼させた。
【0134】
1.3 120g/ft32/1(OSCを有しないPt/Pdテクノロジー、比較例):サンプルC)
第1(底部)層のために、1g/in3の高多孔性γ−アルミナを水及び酸(例えば酢酸)中に分散させ、そして15マイクロメーターの粒子サイズd90にミルした。最終的なスラリーをモノリス上に被覆し、110℃で乾燥させ、そして空気中で450℃でか焼した。
【0135】
第2(中間)層のため、1.5g/in3の高多孔性γ−アルミナを硝酸パラジウムの水溶液で含浸させ、40g/ft3という最終的な乾燥Pdを得た。得られた粉を水中に分散させた。白金がアンミン安定化Pt錯体としてのものであるPt溶液を加え、Pt72g/ft3の乾燥内容物を得た。スラリーのpHを4.5に調節した後、スラリーを16μmの粒子サイズd90にミルした。このスラリーを、次に第1層上に被覆し、110℃で乾燥させ、そして空気中で450℃でか焼した。
【0136】
第3(頂部)層のために、0.25g/in3の高多孔性γ−アルミナ、H−ベータゼオライト及び8g/ft3の白金を与えるアンミン安定化Pt錯体としてのものである白金を、水と酸(例えば酢酸)中に分散させた。このスラリーを、15μmの粒子サイズd90にミルし、そして次にモノリス上に被覆し、110℃で乾燥させ、及び空気中で450℃でか焼させた。
【0137】
2.従来技術触媒テクノロジーと本テクノロジーの状態の比較(HC/CO活性性能の試験)
試験サンプル:
2.1サンプルA:
以下の:
−第1層:30g/ft3のPd、0.75g/in3のOSC、0.75g/in3の高多孔性γ−アルミナ
−第2層:52g/ft3のPt、30g/ft3のPd、1.5g/in3の高多孔性γ−アルミナ
−第3層:8g/ft3のPt、0.25g/in3の高多孔性γ−アルミナ、0.5g/in3のH−ベータゼオライト、0.5g/in3のOSC
を含む3層触媒を試験した。
【0138】
2.2サンプルB:
以下の:
−第1層:0.75g/in3のOSC、0.25g/in3の高多孔性γ−アルミナ
−第2層:72g/ft3のPt、40g/ft3のPd、1.5g/in3の高多孔性γ−アルミナ
−第3層:8g/ft3のPt、0.25g/in3の高多孔性γ−アルミナ、0.5g/in3のH−ベータゼオライト、0.5g/in3のOSC
を含む3層触媒を試験した。
【0139】
2.3サンプルC:(比較例)
以下の:
−第1層:1g/in3の高多孔性γ−アルミナ
−第2層:72g/ft3のPt、40g/ft3のPd、1.5g/in3の高多孔性γ−アルミナ
−第3層:8g/ft3のPt、0.25g/in3の高多孔性γ−アルミナ、0.5g/in3のH−ベータゼオライト、
を含む3層触媒を試験した。
【0140】
3.試験手順(点火性能試験)
サンプルA)、B)及びC)を、COとHC点火性能のために試験した。試験の前に、サンプルを、(2.7Lエンジン置換の)4シリンダーライトデューティーディーゼルエンジンの排ガス流れ内で25時間熟成させた。排ガス流の温度を、上流側のバーナー−DOCを使用して上昇させ、触媒を750℃の定常状態で熟成させた。
【0141】
点火試験のために、このサンプルを、(3L置換の)6シリンダーライトデューティーディーゼルエンジンの排ガスライン内の下流側に配置した。排ガス流中のCO及びHC濃度は、1500ppm及び350ppm(C3ベース)で一定であった。標準条件下でのガス流は、約50m3/h
であった。温度傾斜は2℃/分であった。
【0142】
低点火温度は、より良好なガス活性を特性化する。
【0143】
3.1 サンプルA)、B)及びC)についてのCO点火曲線を図1に示す。CO変換(%、y軸)を温度(℃、x軸)に依存した状態で示す。
【0144】
サンプルA)及びB)は、サンプルC)と比較して、低温でのCO点火を示している。Pdのコストは、Ptよりも約4倍安価である(コストが約1/4である)。従って、1/1のPt/Pd割合のサンプルA)は、サンプルB)及びC)(Pt/Pd=2/1)よりも貴金属のコストが安い(15〜20%)。
【0145】
3.2 サンプルA)、B)及びC)についてのHC点火曲線を図2に示す。炭化水素変換(%、y軸)を触媒入口温度(℃、x軸)に依存した状態で示す。
【0146】
サンプルA)及びB)は、サンプルC)と比較して、低い温度でのHC点火を示す。Pdのコストは、Ptよりも約4倍安価である(コストが約1/4である)。従って、1/1のPt/Pd割合のサンプルA)は、サンプルB)及びC)(Pt/Pd=2/1)よりも貴金属のコストが安い。
【0147】
3.3 サンプルA)、B)及びC)についてのHC/CO点火温度を表1に示す。
【0148】
貴金属コストを低減したサンプルA)は、参照サンプルC)と比較して、4〜5℃低いT(50%)及びHCT(70%)を示している。サンプルB)は、参照サンプルC)と比較して、7〜8℃低いCOT(50%)及びHCT70%を示している。
【0149】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンからの排ガス放出物を処理するための層状ディーゼル酸化触媒複合体であって、
触媒材料が、パラジウム成分を含み、及び少なくとも2層の層を含む、ディーゼル酸化触媒材料、キャリア支持体;
少なくとも1種の分子篩を含み、且つ実質的にパラジウムを有していない炭化水素トラップ層;
実質的に分子篩を有せず、及び実質的に酸素貯蔵成分を有せず、パラジウム成分が高表面積の耐火金属酸化物支持体の上に設けられている、パラジウム成分を含むパラジウム含有層;
を含み、
触媒材料が、任意に、キャリア支持体の上及び少なくとも2層の層の下側に設けられた下側被覆層を含み;及び
触媒材料が、更に、少なくとも1種の炭化水素トラップ及び任意の下側被覆層中に設けられた酸素貯蔵成分を含む、
ことを特徴とする層状ディーゼル酸化触媒複合体。
【請求項2】
触媒材料は、パラジウム成分を、5〜75g/ft3(0.18〜2.65kg/m3)の量で含むことを特徴とする請求項1に記載の層状ディーゼル酸化触媒複合体。
【請求項3】
触媒材料が、更に、白金成分を、10g/ft3〜150g/ft3(0.35〜5.30kg/m3)の範囲で含み、白金成分の20質量%以下の量が少なくとも1つの分子篩中に組み込まれ、及び白金成分の少なくとも80質量%が、パラジウム含有層の、高表面積の耐火金属酸化物支持体の上に存在することを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の層状ディーゼル酸化触媒複合体。
【請求項4】
パラジウム−含有層が、PtとPdを、0.1/1〜10/1のPt/Pd割合で含むことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の層状ディーゼル酸化触媒複合体。
【請求項5】
酸素貯蔵成分が、ZrO2、CeO2、又は両方を含むことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の層状ディーゼル酸化触媒複合体。
【請求項6】
酸素貯蔵成分が、Y、La、Nd、Sm、Pr、及びこれらの混合物の少なくとも1種を含むOSC変性剤を含むことを特徴とする請求項5に記載の層状ディーゼル酸化触媒複合体。
【請求項7】
貴金属成分の合計装填量が15〜225ft3(0.53〜7.95kg/m3)の範囲であることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の層状ディーゼル酸化触媒複合体。
【請求項8】
パラジウム含有層が、キャリア支持体の上に設けられ、及び炭化水素トラップ層がパラジウム含有層の上に設けられていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の層状ディーゼル酸化触媒複合体。
【請求項9】
高表面積の耐火金属酸化物を含む下側被覆層を含むことを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の層状ディーゼル酸化触媒複合体。
【請求項10】
下側被覆層を含み、及び下側被覆層と炭化水素トラップ層の両方が、独立して、酸素貯蔵成分を含むことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の層状ディーゼル酸化触媒複合体。
【請求項11】
キャリア支持体が流通基材であることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の層状ディーゼル酸化触媒複合体。
【請求項12】
パラジウム含有層が下側被覆層の上に設けられ、及び炭化水素トラップ層がパラジウム含有層の上に設けられ、
炭化水素トラップ層がベータゼオライト、ガンマアルミナ、及び白金を含み;
パラジウム−含有層が、更に白金及びガンマアルミナを含み、及びPt/Pd割合が4/1〜1/2の範囲であり;及び
下側被覆層がガンマアルミナ、及び任意にパラジウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の層状ディーゼル酸化触媒複合体。
【請求項13】
排ガス流が、炭化水素、一酸化炭素、及び他の排ガス成分を含み、
排ガス流を、請求項1〜12の何れか1項に記載の層状ディーゼル酸化触媒複合体と接触させることを含む、ディーゼルエンジンの排ガス流を処理する方法。
【請求項14】
更に、ディーゼル排ガス流を、一回以上、ディーゼル酸化触媒複合体の下流側に設けられた煤フィルター、及び触媒化煤フィルター(CSF)の上流又は下流に設けられた選択性触媒還元(SCR)触媒性物品に案内することを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
炭化水素、一酸化炭素、及び他の排ガス成分を含むディーゼルエンジン排ガス流を処理するためのシステムであって、
ディーゼルエンジンと排ガスマニホルドを介して流体連結している排ガス導管;
前記キャリア支持体が、流通基材又は壁流基材である、請求項1〜16の何れか1項に記載のディーゼル酸化触媒複合体;及び
複合体と流体的に連結している、以下の:煤フィルター、選択的触媒還元(SCR)触媒物品、及びNOx貯蔵及び還元(NSR)触媒物品の1つ以上、
を含むシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−515085(P2012−515085A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546332(P2011−546332)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/021048
【国際公開番号】WO2010/083313
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】