説明

一酸化炭素変成触媒、一酸化炭素変成触媒の製造方法、一酸化炭素変成方法、及び水素製造方法

【課題】活性及び耐久性の高い一酸化炭素変成触媒を提供する。
【解決手段】銅、亜鉛、アルミニウム及び酸素を含む銅−亜鉛−アルミニウム触媒よりなる一酸化炭素変成触媒であって、前記銅、亜鉛、及びアルミニウムを、それぞれ、CuO、ZnO、及びAl23に換算したときに、CuOが30〜90質量%、ZnOが3〜30質量%、及びAl23が7〜60質量%であり、比表面積が80〜200m2/g、CuO結晶子径が120Å以下、嵩密度が0.6〜1.5g/cm3、細孔容積が0.3〜0.6cm3/g、及び平均細孔半径が45〜120Åであることを特徴とする一酸化炭素変成触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一酸化炭素変成触媒、一酸化炭素変成触媒の製造方法、一酸化炭素変成方法、及び水素製造方法に係り、特に、燃料電池用触媒として好適な一酸化炭素変成触媒及びその製造方法と、この一酸化炭素変成触媒を用いた一酸化炭素変成方法及び水素製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、燃料電池の原料水素を炭化水素から製造する際の一酸化炭素変成反応(水性ガスシフト反応)用触媒等として好適に用いられている。
すなわち、炭化水素は水蒸気改質反応により水素に変換されるが、この水蒸気改質反応により得られる改質ガスには一酸化炭素が含まれている。この改質ガス中の一酸化炭素濃度は、100ppm(容積)以下、好ましくは50ppm以下に低減される必要があり、通常、水性ガスシフト反応によって1容積%以下に低減された後、一酸化炭素選択酸化反応によりさらに低減される。水性ガスシフト反応には、多くの場合、高温シフト触媒と低温シフト触媒とが使用される。この水性ガスシフト反応の触媒、特に低温シフト触媒として、銅−亜鉛−アルミニウム触媒が好適に使用される。
【0003】
この銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、白金等の貴金属をチタニアやセリア等に坦持した貴金属触媒と比べて、低温での活性に優れている。
すなわち、この一酸化炭素変成反応(水性ガスシフト反応)は、化学平衡による制約を受け、低温になるほど一酸化炭素濃度を低減させることができる。銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、白金等の貴金属をチタニアやセリア等に坦持した貴金属触媒と比べて比較的低温で作動することができるため、一酸化炭素濃度を1%以下にまで低減させることができる。また、この銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、一定条件で運転を行う工業装置では長期間使用することができる。
【0004】
銅−亜鉛−アルミニウム触媒としては、種々のものが公知である。
特許文献1には、銅−亜鉛−アルミニウム触媒を、沈殿剤として水酸化ナトリウムを用いた共沈法により製造することが開示されている。特許文献2には、銅、亜鉛及びアルミニウムを含み、特定のX線回折パターンを有する触媒前駆体物質を焼成することにより、銅−亜鉛−アルミニウム触媒を製造することが開示されている。これらの銅−亜鉛−アルミニウム触媒は活性及び耐久性に優れる。
特許文献3には、ハイドロタルサイト形態のアルミニウムとハイドロタルサイトとは異なるアルミニウムとを含む触媒前駆体を用いて製造された銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、活性が高いことが開示されている。
特許文献4には、一定の粒度分布に揃えた銅−亜鉛−アルミニウム触媒粒子をタブレット化してタブレット型触媒を製造することが開示されている。但し特許文献4には、銅−亜鉛−アルミニウム触媒粒子の製造条件の記載はない。
特許文献5には、Cu/Zn/Al系触媒に増粘剤を添加し、圧縮成型してペレット化してなるメタノール合成触媒において、平均細孔径を12〜25nmとすることによりメタノール合成効率が向上することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2008/044707号公報パンフレット
【特許文献2】WO2008/126743号公報パンフレット
【特許文献3】特表2005-520689号公報
【特許文献4】特開平11−151442号公報
【特許文献5】特開2009−148674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、特許文献1〜5等のような銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、白金等の貴金属をチタニアやセリア等に坦持した貴金属触媒と比べて、低温での活性に優れているが、耐久性に劣るという問題がある。
すなわち、この銅−亜鉛−アルミニウム触媒は、燃料電池のように頻繁に起動停止を行い、温度の昇降が繰り返される条件では、水の蒸発に伴う酸化及び改質ガスによる還元が生じ、その結果銅のシンタリングによる粒成長が生じ、触媒が失活し易い。
【0007】
本発明は、燃料電池のように頻繁に起動停止を行い、温度の昇降が繰り返される条件においても、活性及び耐久性の高い一酸化炭素変成触媒(銅−亜鉛−アルミニウム触媒)及びその製造方法と、この触媒を用いた一酸化炭素変成方法及び水素製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記のような状況に鑑みて鋭意検討した結果、銅、亜鉛、及びアルミニウムの含有量を特定し、かつ、各種物性(比表面積、CuO結晶子径、嵩密度、細孔容積、及び平均細孔半径)を特定してなる一酸化炭素変成触媒が、活性及び耐久性に優れることを見出し、本発明に係る一酸化炭素変成触媒を完成させた。
また、本発明者らは、共沈法で得られたCu-Al-Zn系触媒前駆体に有機化合物添加剤を含有させて成型した後、この成型体を焼成することにより、高活性な一酸化炭素変成反応用の成型触媒が得られることを見出し、本発明に係る一酸化炭素変成触媒の製造方法を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[14]を提供するものである。
[1]銅、亜鉛、アルミニウム及び酸素を含む銅−亜鉛−アルミニウム触媒よりなる一酸化炭素変成触媒であって、前記銅、亜鉛、及びアルミニウムを、それぞれ、CuO、ZnO、及びAl23に換算したときに、CuOが30〜90質量%、ZnOが3〜30質量%、及びAl23が7〜60質量%であり、
比表面積が80〜200m2/g、CuO結晶子径が120Å以下、嵩密度が0.6〜1.5g/cm3、細孔容積が0.3〜0.6cm3/g、及び平均細孔半径が45〜120Åであることを特徴とする一酸化炭素変成触媒。
[2]X線回折パターンにおいて格子面間隔d(Å) 2.44±0.05,および2.86±0.05に半値幅1.0度以上のブロードなピークを有し、格子面間隔d(Å) 2.48±0.05、2.81±0.05、2.60±0.05のいずれにもピークが存在しない[1]に記載の一酸化炭素変成触媒。
[3]銅、亜鉛及びアルミニウムを含む金属塩溶液と、沈殿剤を含有する沈殿剤含有水溶液とを共沈させて触媒前駆体を得る共沈工程と、前記触媒前駆体の洗浄工程と、前記触媒前駆体の乾燥工程と、前記触媒前駆体を成型して成型体とする成型工程と、前記成型体を焼成して一酸化炭素変成触媒とする焼成工程とを含んでおり、前記成型工程よりも前に前記沈殿物に有機化合物添加剤を含有させる添加工程を有することを特徴とする[1]又は[2]に記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
[4]前記共沈工程において、前記沈殿剤としてアルカリ金属水酸化物を用い、pH8.5以上で共沈させる[3]に記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
[5]前記共沈工程において、前記金属塩溶液中における金属成分の原子比が、Cu/(Cu+Zn+Al)=0.3〜0.9、Zn/(Cu+Zn+Al)=0.05〜0.3、Al/(Cu+Zn+Al)=0.07〜0.6、Al/Zn=2〜10である[4]に記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
[6]前記共沈工程において、前記金属塩溶液中における金属成分の原子比が、Cu/(Cu+Zn+Al)=0.3〜0.9、Zn/(Cu+Zn+Al)=0.05〜0.3、Al/(Cu+Zn+Al)=0.07〜0.6、Al/Zn=2〜10であり、前記沈殿剤含有水溶液が、CO3を有する塩基性物質を含むものであり、前記金属塩溶液と前記沈殿剤含有水溶液とを、pH5〜7、温度65℃以下で共沈させて触媒前駆体を得る[3]に記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
[7]前記有機化合物添加剤が高分子系セルロース、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、グリセリン、でんぷん類、ゼラチン及びアルコール類の中から選ばれる1種又は2種以上である[3]〜[6]のいずれかに記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
[8]前記成型が打錠成型である[3]〜[7]のいずれかに記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
[9]前記成型が押出成型である[3]〜[7]のいずれかに記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
[10]無機バインダの添加を行わない[8]又は[9]に記載の一酸化炭素変[11][1]又は[2]に記載の一酸化炭素変成触媒を用いて、150〜500℃において一酸化炭素変成反応により一酸化炭素を含む水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低下させる一酸化炭素変成方法。
[12][3]〜[10]のいずれかに記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法によって製造された一酸化炭素変成触媒を用いて、150〜500℃において一酸化炭素変成反応により一酸化炭素を含む水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低下させる一酸化炭素変成方法。
[13][11]又は[12]に記載の一酸化炭素変成方法により一酸化炭素濃度を低下させた後、一酸化炭素選択酸化反応を用いないで一酸化炭素濃度を低下させる水素製造方法。
[14][11]又は[12]に記載の一酸化炭素変成方法により一酸化炭素濃度を低下させた後、一酸化炭素選択メタン化反応により一酸化炭素濃度を低下させる水素製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、細孔容積、細孔径が大きい上、CuO結晶子径が小さく、高活性かつ耐久性を示す一酸化炭素変成触媒を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の触媒のXRD解析結果を示す図面である。
【図2】実施例1の触媒の還元後のXRD解析結果を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
<一酸化炭素変成触媒の製造方法>
本発明の一酸化炭素変成触媒の製造方法は、銅、亜鉛及びアルミニウムを含む金属塩溶液と、沈殿剤を含有する沈殿剤含有水溶液とを共沈させて触媒前駆体を得る共沈工程と、前記触媒前駆体の洗浄工程と、前記触媒前駆体の乾燥工程と、前記触媒前駆体を成型して成型体とする成型工程と、前記成型体を焼成して一酸化炭素変成触媒とする焼成工程とを含んでおり、前記成型工程よりも前に前記沈殿物に有機化合物添加剤を含有させる(あるいは,添加する)添加工程を有することを特徴とする。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0013】
[共沈工程]
本工程では、銅、亜鉛及びアルミニウムを含む金属塩溶液と、沈殿剤を含有する沈殿剤含有水溶液とを共沈させて触媒前駆体を得る。
【0014】
(金属塩溶液)
銅及び亜鉛の塩種としては、硝酸塩や酢酸塩が好ましい。アルミニウム塩は硝酸塩、水酸化物、アルミン酸ナトリウム、プソイドベーマイトなどを用いることができ、硝酸塩、アルミン酸ナトリウムが好ましい。
【0015】
前記金属塩溶液中の銅、亜鉛及びアルミニウムの原子比としては、Cu/(Cu+Zn+Al)が好ましくは0.3〜0.9、より好ましくは0.45〜0.7、更に好ましくは0.65〜0.7である。また、Zn/(Cu+Zn+Al)は好ましくは0.05〜0.30、より好ましくは0.07〜0.2、更に好ましくは0.09〜0.1である。Al/(Cu+Zn+Al)は好ましくは0.07〜0.6、より好ましくは0.2〜0.4、更に好ましくは0.2〜0.25である。Al/Znは好ましくは2〜10、より好ましくは2.2〜3.5、更に好ましくは2.2〜2.5である。
金属の原子比を上記のような範囲とすると、この触媒前駆体を焼成したときに、耐水熱性に優れるZnAl24が生成する。これにより、触媒の耐久性(特に起動・停止を繰り返して使用する状態で、触媒が実用上満足できる活性を維持できる時間)の低下が防止されると共に、亜鉛原子が多すぎてジンサイト(zincite、ZnO)等が生成することが防止される。その結果、触媒の耐久性が向上する。また、ジンサイトのシンタリングは銅のシンタリングを促進し触媒活性の低下を引き起こすが、これが防止され、触媒活性に優れる。
【0016】
(沈殿剤)
上記沈殿剤としては、好ましくはアルカリ金属水酸化物及び/又はCO3を有する塩基性物質が挙げられる。
(1) アルカリ金属水酸化物
アルカリ金属水酸化物としては、好ましくは水酸化ナトリウムが用いられる。
このアルカリ金属水酸化物と上記金属塩溶液との共沈は、好ましくはpH8.5以上、更に好ましくは8.5〜11とする。pHをこの範囲内とすることにより、十分な活性と耐久性を有する触媒を得ることが可能となる。
このアルカリ金属水酸化物と上記金属塩溶液との共沈は、好ましくは0〜90℃、より好ましくは10〜80℃に維持する。温度をこの範囲内とすることにより、十分な活性と耐久性を有する触媒を得ることが可能となる。沈殿物は、熟成させてもよく、熟成させなくてもよい。
【0017】
このように沈殿剤としてアルカリ金属水酸化物を用いて得られた触媒前駆体は、銅、亜鉛及びアルミニウムを含み、spertiniite(Cu(OH)2)のX線回折パターンに類似したブロードなX線回折パターンを示す物質を有することが好ましい。
すなわち、この触媒前駆体は、X線回折パターンが格子面間隔d(Å)5.3±0.5、3.73±0.3、2.63±0.2、2.26±0.2及び1.71±0.1にピークを有することが好ましい。一方、spertiniite(Cu(OH)2)のX線回折パターンは、以下に回折線を有する。
d=2.63、d=3.73、d=5.29、d=2.266、d=1.718、d=2.50、d=2.361
【0018】
なお、この触媒前駆体は、上記のspertiniiteに類似するX線回折ピークの他に、格子面間隔d(Å)8.7±0.5、7.60±0.5及び5.3±0.5にピークを有していてもよい。この場合、格子面間隔d(Å)8.7±0.5及び7.60±0.5のピーク強度が5.3±0.5のピーク強度よりも大きいピークを有しないことが好ましい。この格子面間隔d(Å)8.7±0.5にピークを有する物質はscarbroiteであり、格子面間隔d(Å)7.60±0.5にピークを有する物質はハイドロタルサイト(hydrotalcite)であり、格子面間隔d(Å)5.3±0.5にピークを有する物質はspertiniiteである。このようにspertiniiteを多く含み、且つscarbroite及びハイドロタルサイトのような不純物の少ない触媒前駆体を用いることにより、活性の高い一酸化炭素変成触媒を得ることが容易となる。
【0019】
(2) CO3を有する塩基性物質
CO3を有する塩基性物質としては、好ましくは炭酸ナトリウムが用いられる。
沈殿剤としてこのCO3を有する塩基性物質を用い、且つ上記金属塩溶液中の銅、亜鉛及びアルミニウムの原子比を上記範囲内として共沈させて得た触媒前駆体は、MalachiteとHydrotalciteとからなるが、Malachiteに富み、Hydrotalciteが25質量%以下の銅、亜鉛、アルミニウム組成物となる。
Malachiteは通常Cu2(CO3)(OH)2であらわされるが、Cuの一部がZnに置き換わった構造をとることができる。この構造は、Zincian-Malachite[(Cu,Zn)2(OH)2CO3]、あるいはRosasiteといわれ、格子面間隔(Å) d=2.86Å,3.69Å,5.05Å,5.99Å,2.78Å,2.52Å,2.48Å,1.59Å,3.67Å,2.42ÅにX線回折ピークを有する。
【0020】
この共沈による触媒前駆体の形成においては、適度に攪拌しながら、pH5〜7、65℃以下で実施することが好ましい。攪拌が激しすぎると、Hydrotalciteの割合が増加し、Malachiteの割合が低下し、好ましくない。共沈温度が65℃を超えると、Hydrotalcite量が増えすぎたり、一部ZnOが生成する。沈殿物は2時間以上熟成させることが好ましい。
【0021】
なお、上記金属塩溶液と上記沈殿剤とを混合して触媒前駆体を共沈させる場合には、これらの溶液のいずれか一方を撹拌しながらもう一方を混合してもよい。また、それぞれの溶液をポンプなどで同時に供給して混合してもよい。また、沈殿物は2時間以上熟成させることが好ましい。
【0022】
[洗浄工程]
上記共沈工程で得られた触媒前駆体は、ゲル状のスラリーとなる。この触媒前駆体を、洗浄及び濾過する。このように洗浄及び濾過すると、微粒子間に水を多く含んで膨潤したケーキが得られる。
【0023】
[乾燥工程]
次いで、この触媒前駆体のケーキを乾燥する。この乾燥条件は、後述する成型工程での成型方法に応じて適宜設定される。
押出成型を行う場合には、この触媒前駆体のケーキを押出成型に適した水分量になるまで乾燥させる。例えば室温〜100℃程度で良好な可塑性が得られる程度まで水分を除けばよい。なお、この押出成型を行う場合には、押出成型後の成型体を、好ましくは80〜200℃で再度乾燥させてから、後述する焼成工程を行うことが好ましい。
打錠成型を行う場合には、この触媒前駆体のケーキを好ましくは80〜200℃で十分に乾燥させる。
【0024】
[添加工程]
後述する成型工程の前に、前記触媒前駆体に有機化合物添加剤を含有させる。この添加工程は、洗浄工程内の洗浄中、洗浄後、又は濾過後に実施することが好ましい。これにより、有機化合物添加剤を触媒前駆体に対して均一に含有させることができる。
但し、洗浄工程中のほか、洗浄工程前、洗浄工程と乾燥工程の間、乾燥工程中、及び乾燥工程後のいずれのタイミングで添加工程を実施してもよく、これらの複数のタイミングで添加工程を実施してもよい。
【0025】
この有機化合物添加剤としては、セルロース系高分子、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、グリセリン、でんぷん類、ゼラチン、アルコール類が使用できる。特に高分子系セルロース、ポリビニルアルコールが好ましい。高分子系セルロースとしてはメチルセルロース類、ヒドロキシエチルセルロース類、ヒドロキシプロピルセルロース類あるいはカルボキシメチルセルロース類が使用できる。
有機化合物添加剤の添加量は、触媒当たり0.5〜5質量%が好ましい。0.5質量%以上であると、添加による触媒活性向上効果が良好に発現する。10質量%以下であると、焼成の際の発熱が大きくなることによる銅成分の凝集が防止される。
【0026】
なお、この有機化合物添加剤のほかに、無機バインダを触媒前駆体に含有させてもよいが、触媒活性が低下することがあるので含有させないことが好ましい。これにより、相対的に有機化合物添加剤の添加量を多くすることができ、触媒の活性の向上を図ることができる。無機バインダとしては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、水酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、水ガラス等が挙げられる。
【0027】
[成型工程]
次いで、上記のとおり有機化合物添加剤を含有させた触媒前駆体を成型する。
成型方法としては、押出成型、転動造粒、打錠成型など特に制限はないが、成型の容易性から、押出成型及び打錠成型が好ましい。
【0028】
押出成型の場合は、上述のとおり触媒前駆体を押出成型に適した水分量になるまで乾燥させると共に有機化合物添加剤を添加した後に、常法により押出成型を行う。押出成型後の成型体は、上述のとおり好ましくは80〜200℃で十分に乾燥させる。
打錠成型の場合は、乾燥後の触媒前駆体を、0.05〜2mm程度の大きさに造粒又は粉砕して粉体又は顆粒とし、この粉体又は顆粒を打錠成型することが好ましい。例えば、乾燥後の触媒前駆体を粉砕して成型用の孔(金型)に充填し、圧壊強度が20〜40Nの範囲になるよう打錠成型することにより、この成型体を焼成してなる焼成体の嵩密度が0.6〜2.0g/cm3という適切な範囲内になりやすい。通常、打錠成型圧力を高くすると、圧壊強度は高くなり、成型触媒の嵩密度は大きくなるが、あまり高くすると触媒性能が低下することがあるので、圧壊強度が20〜40N程度になるよう打錠成型するのが好ましい。
【0029】
[焼成工程]
本工程では、上記の成型工程で得られた成型体を焼成する。この焼成工程により、触媒前駆体中に含有させた有機化合物添加剤は除去される。このようにして、所定の成型形状を有する一酸化炭素変成触媒(一酸化炭素変成反応用の成型触媒)が得られる。
焼成条件は特に制限はないが、200〜650℃程度で0.1時間〜10時間程度実施すれば、所望の物性を有する一酸化炭素変成触媒が得られる。すなわち、後述するとおり、比表面積が80〜200m2/g、CuO結晶子径が120Å以下、嵩密度0.6〜1.5g/cm3、細孔容積0.30〜0.60cm3/g、平均細孔半径45〜120Åであり、亜鉛の状態がZnOではなく亜鉛アルミニウムスピネル(ZnAl24)の状態で存在する触媒が得られる。650℃以下で焼成すると、CuO結晶子及び亜鉛アルミネートスピネル結晶子の径の増大が防止される。
【0030】
上記の製造方法によって得られる一酸化炭素変成触媒にあっては、活性の高い触媒となる。すなわち、Cu系触媒は、成型及び焼成によってCuOが凝集して大きくなり、活性低下の原因となる。例えば、特許文献1,2のような、アルカリ金属水酸化物で共沈させて得られる触媒にあっては、大きい比表面積を有する特徴があり、粉末での触媒性能は優れているものの、成型すると細孔径及び細孔容量が小さくなり、また、乾燥、焼成及び成型によりCuO結晶子が大きくなり、十分な触媒活性が得られなかった。これに対して上記製造方法では、触媒前駆体中に有機化合物添加剤が含有されている状態で、成型工程及び焼成工程の両工程を実施する。本方法には二つの優れた効果があることが見出された。銅系触媒は成型や焼成において銅が凝集しやすいが、この有機化合物添加剤の存在により、成型や焼成においても凝集が抑制され、高度に分散した結晶サイズの細かいCuO粒子を有する高活性な触媒が得られる。また、成型段階で有機化合物添加剤が含有され、続く焼成段階で有機化合物添加剤が燃焼除去されるため、大きい細孔容積と細孔径が形成される。その結果、触媒の内部では、反応の活性点が増えると共に、反応物質がスムーズに拡散するため、一酸化炭素変成反応性が向上する。本方法は水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物を用いた場合だけでなく、銅系触媒全般に本実施の形態に係る一酸化炭素触媒の製造方法が有効である。
【0031】
<一酸化炭素変成触媒>
本実施の形態に係る一酸化炭素変成触媒は、銅、亜鉛、アルミニウム及び酸素を含む銅−亜鉛−アルミニウム触媒よりなる一酸化炭素変成触媒であって、前記銅、亜鉛、及びアルミニウムを、それぞれ、CuO、ZnO、及びAl23に換算したときに、CuOが30〜90質量%、ZnOが3〜30質量%、及びAl23が7〜60質量%であり、比表面積が80〜200m2/g、CuO結晶子径が120Å以下、嵩密度が0.6〜1.5g/cm3、細孔容積が0.3〜0.6cm3/g、及び平均細孔半径が45〜120Åであることを特徴とするものである。この一酸化炭素変成触媒は、上記製造方法によって製造することができる。
【0032】
銅がCuO換算で30〜90質量%の下限値以上であると、活性種の銅原子が多くて触媒活性が向上し、上限値以下であると、相対的に亜鉛原子、アルミニウム原子が多くなるため、触媒の耐久性(特に起動・停止を繰り返して使用する状態で、触媒が実用上満足できる活性を維持できる時間。以下、単に耐久性と呼ぶ場合もある)が向上する。銅はCuO換算で、好ましくは50〜85質量%であり、更に好ましくは70〜75質量%である。
亜鉛がZnO換算で3〜30質量%の下限値以上であると、亜鉛原子が多くなることで触媒の活性が向上し、上限値以下であると、触媒の耐久性が向上する。亜鉛はZnO換算で、好ましくは5〜10質量%であり、更に好ましくは8〜10質量%である。
アルミニウムがAl23換算で7〜60質量%の下限値以上であると、触媒強度が向上し、また触媒の耐久性が向上する。また、上限値以下であると、相対的に銅原子が多くなって触媒活性が向上する。アルミニウムはAl23換算で、好ましくは10〜40質量%であり、更に好ましくは12〜14質量%である。
【0033】
比表面積が80〜200m2/gの範囲内であると、触媒活性が向上し、銅のシンタリング抑制効果も向上する。この比表面積は、好ましくは90〜140m2/gであり、更に好ましくは100〜130m2/gである。
【0034】
CuOの結晶子径が120Å以下であると、反応に有効な銅の活性点数が多くなり、活性が向上する。CuOの結晶子径は、好ましくは100Å以下であり、更に好ましくは80Å以下である。
【0035】
嵩密度が0.6〜1.5g/cm3の下限値以上であると活性が高くなり、上限値以下であると強度が高くなる。嵩密度がこの範囲内であると、この触媒を収容する反応器も小さくてすみ、家庭用燃料電池や燃料電池車に搭載するコンパクトな改質システムが可能となる。この嵩密度は、好ましくは0.7〜1.3g/cm3であり、更に好ましくは1.0〜1.3g/cm3である。
【0036】
この一酸化炭素変成触媒は、細孔容積が0.3〜0.6cm3/gである。細孔容積が下限値以上であると、触媒内部への一酸化炭素の拡散速度が速くなり、触媒の反応性が向上する。細孔容積が上限値以下であると、触媒の圧壊強度が高くなる。この細孔容積は、好ましくは0.3〜0.5cm3/gであり、より好ましくは0.3〜0.4cm3/gである。
【0037】
この一酸化炭素変成触媒は、平均細孔半径が45〜120Åである。平均細孔半径がこの範囲内であると、細孔容積が大きくなり、あるいは圧壊強度が高くなる。この平均細孔半径は、好ましくは50〜100Åであり、より好ましくは60〜80Åである。
【0038】
本実施の形態に係る一酸化炭素変成触媒は、X線回折パターンが、格子面間隔d(Å)2.44±0.05及び2.86±0.05に半値幅1.0度以上のブロードなピークを有することが好ましい。このX線回折パターンは、以下のピークを有する亜鉛アルミネートスピネル(ZnAl23)のX線回折パターンに相当するものである。
d=2.442、d=2.863、d=1.432、d=1.559、d=1.653、d=1.281
ここで半値幅とは、ベースラインからピークの最高点までの高さ(h)の半分の高さ(h/2)におけるピークの幅(すなわち、半値全幅)を意味する。
また、この一酸化炭素変成触媒は、X線回折パターンが、格子面間隔d(Å)2.48±0.05、2.81±0.05及び2.60±0.05のいずれにもピークを有しないものであることが好ましい。このX線回折パターンは、以下のピークを有するジンサイト(zincite、ZnO)のX線回折パターンに相当するものである。
d=2.475、d=2.814、d=2.602、d=1.625、d=1.477、d=1.378
【0039】
すなわち、この一酸化炭素変成触媒は、亜鉛アルミネートスピネルを有すると共に、ジンサイトを実質的に有しない。この亜鉛アルミネートスピネルは、水蒸気存在下でも安定に存在するため、銅のシンタリングが抑制される。また、ジンサイトは水蒸気存在下でジンサイト自体がシンタリングすることにより、銅のシンタリングをも促進するが、この一酸化炭素変成触媒はジンサイトを実質的に有しないため、銅のシンタリングが抑制される。これらにより、この触媒を水性ガスシフト反応用の触媒として燃料電池用改質器に搭載すると、起動・停止を繰り返しても活性の低下が少なく、長期間の使用が可能である。また、この触媒は耐熱性にも優れており、500℃までの高温においても使用することができるため、水性ガスシフト反応において、低温シフト触媒として使用できるのみならず、高温シフト触媒を兼ねることもできる。また、この一酸化炭素変成触媒は、例えば、水素製造触媒、メタノール合成触媒、メタノールのスチームリフォーミング触媒等として用いることも可能である。
亜鉛アルミネートスピネルの上記X線回折パターンはブロードなピークを有しており、これは粒径が小さいことを意味する。これにより、亜鉛アルミネートスピネルをCuOの近傍に存在させ、銅のシンタリングを良好に抑制することができる。
【0040】
<一酸化炭素変成方法>
本発明の一酸化炭素変成方法では、上記の一酸化炭素変成触媒を用いて150〜500℃、好ましくは150〜300℃において一酸化炭素変成反応(水性ガスシフト反応)により一酸化炭素を含む水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低下させる。
【0041】
この一酸化炭素を含む水素含有ガスとしては、炭化水素燃料を脱硫処理後、炭化水素を改質触媒の存在下に部分酸化改質、自己熱改質、水蒸気改質等の改質処理して得られた改質ガス、水性ガス、水添工程における排ガス等が好適に用いられる。炭化水素燃料としては、LPG、都市ガス、天然ガス、ナフサ、灯油および軽油のいずれも使用できる。
本発明の一酸化炭素変成方法において、ガス時空間速度(GHSV、ガス体積流量/触媒体積)は、好ましくは2000〜60000h-1、より好ましくは3000〜10000h-1の条件で行なわれる。
本発明の一酸化炭素変成方法において、前記銅−亜鉛−アルミニウム触媒は使用前に水素還元により還元するのが好ましい。水素還元は、通常、水素(例えば、水素/窒素混合ガス)気流下、150〜300℃程度の温度で、1〜10時間、好ましくは1〜3時間行う。
【0042】
本発明の一酸化炭素変成方法により、一酸化炭素濃度が1%以下、場合によっては0.2%以下に低減された水素含有ガスを製造することができる。
本発明の前記銅−亜鉛−アルミニウム触媒を使用すると、一酸化炭素濃度が低い(0.6容量%未満)原料ガス及び一酸化炭素濃度が比較的高い(0.6〜2.0容量%)原料ガスのいずれにおいても、一酸化炭素濃度を良好に低減することができ、水性ガスシフト反応器をよりコンパクトにすることができる。
【0043】
<水素製造方法>
本発明の水素製造方法では、上記の一酸化炭素変成方法を用いて得られた水素含有ガスの一酸化炭素濃度を、さらに一酸化炭素選択酸化反応又は一酸化炭素選択酸化反応以外の反応により低下させる。
上記の一酸化炭素変成方法を用いて得られた水素含有ガスとして、一酸化炭素を0.2%以下まで低減させた水素含有ガスを用いた場合、この水素含有ガスは、一酸化炭素選択酸化反応以外の反応により一酸化炭素の除去を行うことができる。これにより、一酸化炭素選択酸化反応器を必要とせず、他の種類の反応器を用いることができるため、装置をよりコンパクトにすることができる。なお、一酸化炭素選択酸化反応以外の反応としては、一酸化炭素選択メタン化反応、膜分離等が挙げられるが、一酸化炭素選択メタン化反応を行うことが好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、各例における諸特性は下記の方法に従って測定した。
【0045】
(1)組成
触媒のCu、Zn、Al量は、プラズマ発光(ICP)法で定量した。Cu、Zn、Alの定量値からCuO、ZnO、Al23量を求め、合計を100質量%になるよう換算した。
(2)比表面積
ユアサアイオニクス社製比表面積測定装置を用い、試料約100mgを試料管に充填し、前処理として200℃で20分間窒素気流中で加熱脱水した。次に液体窒素温度で窒素(30%)/ヘリウム(70%)混合ガスを流通させ窒素を吸着させた後、脱離させTCD(熱伝導度)検出器で測定した窒素の吸着量から比表面積を求めた。
(3)XRD測定
XRD測定はリガク社製のX線回折装置を用いて行なった。所定量の試料をガラス製試料セルに充填し、X線源としてCu−Kα(1.5406Å、グラファイトモノクロメーターにより単色化)を使用し、2θ−θ反射法により測定した。CuO、ZnAl24、ZnOの結晶子径はシェラー式から算出した。
(4)嵩密度
JISK3362に準じて評価した。
(5)細孔容積及び平均細孔半径
ユアサアイオニクス社製全自動ガス吸着量測定装置オートソーブを用い、窒素吸着法により、細孔容積及び平均細孔半径を求めた。
【0046】
(6)触媒の活性評価(出口CO濃度及び転化率)
触媒3cm3を内径12mmの反応管に充填した。反応管内で触媒をH2/N2=20/80(容量比)の気流中で、230℃で2時間、触媒の還元処理を行なった後、GHSV:2,500h-1の条件でH2/CO/CO2/H2O=50/10/10/30(容量%)のガスを導入し、200℃で1時間CO転化反応を行った。得られたガスをサンプリングしてガスクロマトグラフィーにてCO濃度を測定した。この結果をもとに、CO転化率を下記式により求めた。結果を第1表に示す。
CO転化率(%)=[(A−B)/A)]×100
上記式において、Aは反応器入口側のCO量[転化前のCO濃度(容量%)×転化前のガス量(cm3/分)]、Bは反応器出口側のCO量[転化後のCO濃度(容量%)×転化後のガス量(cm3/分)]である。
【0047】
(7)触媒の耐久性評価
触媒3cm3を内径12mmの反応管に充填した。反応管内で触媒をH2/N2=20/80(容量比)の気流中で、230℃で2時間、触媒の還元処理を行なった後、GHSV:1,400h-1の条件でH2/CO/CO2/H2O=50/10/10/30(容量%)のガスを導入し、170℃で1時間CO転化反応を行った後、水蒸気でパージしながら50℃まで冷却した。
水蒸気を止めて1時間保持した後、170℃、1時間の反応と50℃での冷却とを繰り返し実施した。この繰り返しによる活性の低下傾向、すなわち繰り返し回数によるCO転化率の低下から、耐久性を評価した。その結果を第2表に示す。
【0048】
実施例1
硝酸銅三水和物(純度99質量%以上)133.0g、硝酸亜鉛六水和物(純度99質量%以上)21.9g、硝酸アルミニウム九水和物(純度99質量%以上)66.2gを純水に溶解し、900mlの水溶液(A液)とした。
また、水酸化ナトリウム2N溶液をB液とした。
A液とB液を200mlの50℃の水の入った容器に同時に滴下して共沈操作を行った。A液は30ml/分の速度で滴下しながら、B液は沈殿物スラリーのpHが約9.8を維持するよう滴下速度を調整した。沈殿物を攪拌しながら50℃に維持した。この沈殿物を3時間熟成した後のpHは9.9であった。熟成後の沈殿物スラリーのpHを沈殿pHとして第1表に示す。次いで濾過し、十分水洗を行った。
【0049】
沈殿物に、有機化合物添加剤としてメチルセルロース(信越化学工業製メトローズ SM-4000)1.8gを添加したのち、120℃で一晩乾燥した。
乾燥させた沈殿物に、グラファイトを3質量%加えて、打錠成型機で3φ×3mmの成型体を調製した。
次いで、350℃で3時間乾燥し、触媒を得た。
この焼成した触媒の組成、物性、CO変成活性の評価結果を第1表に示す。また,焼成した触媒のXRD測定データを図1に、また、還元後の触媒のXRD測定データを図2に示す。
【0050】
焼成した触媒では、CuOとZnAl24のピークが重なっており明らかではないが、図2よりCuOを還元するとZnAl24ピークが存在することと、ZnOピークが存在しないことがわかる。
第2表に耐久性の評価結果を示す。反応(170℃、1h)と冷却(50℃)を100回繰り返した後のCO転化率の低下は、わずか1.0%であり、本触媒は耐久性が高いことが明らかになった。
【0051】
実施例2
有機化合物添加剤としてのメチルセルロースの添加量を、1.8gに代えて0.6gとしたこと以外は実施例1と同様に調製及び測定した。
触媒のXRD測定結果は実施例1と同様であった。
【0052】
実施例3
有機化合物添加剤としてのメチルセルロースの添加量を、1.8gに代えて3.0gとしたこと以外は実施例1と同様に調製及び測定した。
触媒のXRD測定結果は実施例1と同様であった。
【0053】
実施例4
硝酸銅三水和物94.4g、硝酸亜鉛六水和物37.7g、硝酸アルミニウム九水和物110.0gとしたこと以外は実施例1と同様に調製及び測定した。
触媒のXRDは実施例1と同様であった。
【0054】
実施例5
硝酸銅三水和物133.0g、硝酸亜鉛六水和物18.3g、硝酸アルミニウム九水和物73.6gとしたこと以外は実施例1と同様に調製及び測定した。
触媒のXRDは実施例1と同様であった。
【0055】
実施例6
有機化合物添加剤としてのメチルセルロースの添加量を、1.8gに代えて0.5gとしたこと以外は実施例1と同様に調製及び測定した。
触媒のXRD測定結果は実施例1と同様であった。
【0056】
実施例7
有機化合物添加剤としてのメチルセルロースに代えてポリビニルアルコールを0.5g添加したこと以外は実施例1と同様に調製及び測定した。
触媒のXRD測定結果は実施例1と同様であった。
【0057】
実施例8
有機化合物添加剤としてのメチルセルロースに代えてエタノールを3.0g添加したこと以外は実施例1と同様に調製及び測定した。
触媒のXRD測定結果は実施例1と同様であった。
【0058】
実施例9
実施例1で得た沈殿物を洗浄後、メチルセルロース1.8gを添加し、混合及び風乾した。
風乾後の沈殿物を原料として押出成型機で2φ×5mmの成型体を調製した。
次いで、120℃で一晩乾燥後、350℃で3時間焼成し、触媒を得た。
触媒のXRD測定結果は実施例1と同様であった。
【0059】
比較例1
硝酸銅三水和物133.0g、硝酸亜鉛六水和物21.9g、硝酸アルミニウム九水和物66.2gを用いて、実施例1と同様に共沈操作を行った。
水洗し、120℃で一晩乾燥後、350℃で3時間焼成を行った。
得られた焼成品にグラファイトを3質量%加えて打錠成型し、3φ×3mmの成型体を調製した。
触媒のXRDは実施例1と同様であった。
第1表に示すとおり、比較例1の触媒は、実施例の触媒よりもCuO結晶子径が大きく、細孔容積、細孔径が小さかった。また、比較例1の触媒の活性は実施例の触媒と同等だが、第2表のとおり耐久処理後は活性が4.1%低下し、実施例1より耐久性に劣っていた。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の一酸化炭素変成触媒は、活性及び耐久性ともに優れているため、コンパクトなシステムが可能となり、家庭用燃料電池や燃料電池車に搭載するコンパクトな改質システムが可能である。本発明の一酸化炭素変成触媒は、水性ガスシフト反応の低温シフト触媒の他、水性ガスシフト反応の高温シフト触媒、水素製造触媒、メタノール合成触媒、メタノールのスチームリフォーミング触媒等として利用することも可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅、亜鉛、アルミニウム及び酸素を含む銅−亜鉛−アルミニウム触媒よりなる一酸化炭素変成触媒であって、
前記銅、亜鉛、及びアルミニウムを、それぞれ、CuO、ZnO、及びAl23に換算したときに、CuOが30〜90質量%、ZnOが3〜30質量%、及びAl23が7〜60質量%であり、
比表面積が80〜200m2/g、CuO結晶子径が120Å以下、嵩密度が0.6〜1.5g/cm3、細孔容積が0.3〜0.6cm3/g、及び平均細孔半径が45〜120Åであることを特徴とする一酸化炭素変成触媒。
【請求項2】
X線回折パターンにおいて格子面間隔d(Å) 2.44±0.05,および2.86±0.05に半値幅1.0度以上のブロードなピークを有し、
格子面間隔d(Å) 2.48±0.05、2.81±0.05、2.60±0.05のいずれにもピークが存在しない請求項1に記載の一酸化炭素変成触媒。
【請求項3】
銅、亜鉛及びアルミニウムを含む金属塩溶液と、沈殿剤を含有する沈殿剤含有水溶液とを共沈させて触媒前駆体を得る共沈工程と、前記触媒前駆体の洗浄工程と、前記触媒前駆体の乾燥工程と、前記触媒前駆体を成型して成型体とする成型工程と、前記成型体を焼成して一酸化炭素変成触媒とする焼成工程とを含んでおり、
前記成型工程よりも前に前記沈殿物に有機化合物添加剤を含有させる添加工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
【請求項4】
前記共沈工程において、前記沈殿剤としてアルカリ金属水酸化物を用い、pH8.5以上で共沈させる請求項3に記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
【請求項5】
前記共沈工程において、前記金属塩溶液中における金属成分の原子比が、
Cu/(Cu+Zn+Al)=0.3〜0.9、
Zn/(Cu+Zn+Al)=0.05〜0.3、
Al/(Cu+Zn+Al)=0.07〜0.6、
Al/Zn=2〜10
である請求項4に記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
【請求項6】
前記共沈工程において、前記金属塩溶液中における金属成分の原子比が、
Cu/(Cu+Zn+Al)=0.3〜0.9、
Zn/(Cu+Zn+Al)=0.05〜0.3、
Al/(Cu+Zn+Al)=0.07〜0.6、
Al/Zn=2〜10
であり、
前記沈殿剤含有水溶液が、CO3を有する塩基性物質を含むものであり、
前記金属塩溶液と前記沈殿剤含有水溶液とを、pH5〜7、温度65℃以下で共沈させて触媒前駆体を得る請求項3に記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
【請求項7】
前記有機化合物添加剤が高分子系セルロース、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、グリセリン、でんぷん類、ゼラチン及びアルコール類の中から選ばれる1種又は2種以上である請求項3〜6のいずれかに記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
【請求項8】
前記成型が打錠成型である請求項3〜7のいずれかに記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
【請求項9】
前記成型が押出成型である請求項3〜7のいずれかに記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
【請求項10】
無機バインダの添加を行わない請求項8又は9に記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の一酸化炭素変成触媒を用いて、150〜500℃において一酸化炭素変成反応により一酸化炭素を含む水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低下させる一酸化炭素変成方法。
【請求項12】
請求項3〜10のいずれかに記載の一酸化炭素変成触媒の製造方法によって製造された一酸化炭素変成触媒を用いて、150〜500℃において一酸化炭素変成反応により一酸化炭素を含む水素含有ガス中の一酸化炭素濃度を低下させる一酸化炭素変成方法。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の一酸化炭素変成方法により一酸化炭素濃度を低下させた後、一酸化炭素選択酸化反応を用いないで一酸化炭素濃度を低下させる水素製造方法。
【請求項14】
請求項11又は12に記載の一酸化炭素変成方法により一酸化炭素濃度を低下させた後、一酸化炭素選択メタン化反応により一酸化炭素濃度を低下させる水素製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−183459(P2012−183459A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47006(P2011−47006)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係わる特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構固体高分子形燃料電池実用化推進技術開発/基盤技術開発/定置用燃料電池システムの低コスト化のためのMEA高性能化(高耐久性CO変成触媒およびCO選択メタン化触媒開発)委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】