説明

三次元形状造形物の製造方法及び製造装置

【課題】三次元形状造形物の製造方法において、加工精度を良くする。
【解決手段】三次元形状造形物の製造方法は、造形用プレート22に無機質又は有機質の粉末材料を供給して粉末層21を形成する粉末層形成工程と、粉末層21の所定の箇所に光ビームを照射して粉末層21を焼結、又は溶融硬化させ硬化層を形成する硬化工程とを備え、粉末層形成工程と硬化工程とを繰り返すことにより複数の硬化層が一体化された造形物11の形成の途中において、造形物11の表面及び表面内側を除去する除去工程を少なくとも1回以上繰り返す。そして、除去工程時に、造形用プレート22を所定の冷却手段により冷却する冷却工程を含み、この冷却工程により所定の温度まで冷却した後に除去仕上げ加工を行なう。除去仕上げ加工がされた後に造形物11が収縮しないので、加工精度が良くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機質あるいは有機質の粉末材料に光ビームの照射を行なう三次元形状造形物の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無機質あるいは有機質の粉末材料で形成した粉末層に光ビームを照射し、粉末層を溶融して硬化層を形成し、その硬化層の上に新たな粉末層を形成して光ビームを照射し、硬化層を形成することを繰り返して、三次元形状造形物を製造する方法が知られている。
【0003】
また、粉末層と硬化層の形成を繰り返す工程において、粉末層を焼結温度に近い温度まで加熱してから光ビームを照射することにより、三次元形状造形物の加工精度を良くする製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、粉末層と硬化層の形成を繰り返して三次元形状造形物を造形する間に、造形物の表面を切削加工し、三次元形状造形物の加工精度を良くする製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に示されるような製造方法においては、三次元形状造形物が焼結されたままであるので、加工精度は不十分であり、また特許文献2に示される製造方法においては、三次元形状造形物が焼結されて高温状態のときに切削されるので、常温まで冷却されて収縮すると加工精度が悪化する虞がある。
【特許文献1】特表平1−502890号公報
【特許文献2】特開2002−115004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであり、三次元形状造形物の加工精度が良い製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、造形用プレートに無機質又は有機質の粉末材料を供給して粉末層を形成する粉末層形成工程と、前記粉末層の所定の箇所に光ビームを照射して該粉末層を焼結、又は溶融硬化させ硬化層を形成する硬化工程とを備え、前記粉末層形成工程と硬化工程とを繰り返すことにより複数の硬化層が一体化された造形物の形成の途中に、該造形物の表面及び表面内側を除去する除去工程を少なくとも1回以上繰り返して三次元形状造形物を造形する方法において、前記除去工程時に、前記造形用プレートを所定の冷却手段により冷却する冷却工程を含み、この冷却工程により所定の温度まで冷却した後に除去仕上げ加工を行なうものである。
【0008】
請求項2の発明は、造形用プレートに無機質又は有機質の粉末材料を供給して粉末層を形成する粉末層形成工程と、前記粉末層の所定の箇所に光ビームを照射して該粉末層を焼結、又は溶融硬化させ硬化層を形成する硬化工程とを備え、前記粉末層形成工程と硬化工程とを繰り返すことにより複数の硬化層が一体化された造形物の形成の途中に、該造形物の表面及び表面内側を除去する除去工程を少なくとも1回以上繰り返して三次元形状造形物を造形する方法において、前記除去工程時に、前記造形物の周囲の雰囲気を所定の冷却手段により冷却する冷却工程を含み、この冷却工程により所定の温度まで冷却した後に除去仕上げ加工を行なうものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の三次元形状造形物の製造方法において、前記硬化工程時に、前記造形用プレートを所定の加熱手段により加熱する加熱工程を含み、この加熱工程により所定の温度まで加熱した後に硬化工程を行なうものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の三次元形状造形物の製造方法において、前記硬化工程時に、前記三次元形状造形物の周囲の雰囲気を所定の加熱手段により加熱する加熱工程を含み、この加熱工程により所定の温度まで加熱した後に硬化工程を行なうものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の三次元形状造形物の製造方法において、前記加熱工程及び冷却工程の両方又はいずれか一方において、造形中の造形物における上面全体の温度を測定し、予め定めた温度に達しているかを判断するステップを有するものである。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の三次元形状造形物の製造方法において、前記加熱工程及び冷却工程の両方又はいずれか一方において、前記除去仕上げ加工を行なう除去手段の主軸に温度センサを取り付け、前記温度センサによって造形中の造形物の所定箇所の温度を測定し、予め定めた温度に達しているかを判断するステップを有するものである。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の三次元形状造形物の製造方法において、前記冷却工程は、前記造形物を冷却するステップを有するものである。
【0014】
請求項8の発明は、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の三次元形状造形物の製造方法において、三次元形状造形物の造形前に、前記造形用プレートに前記除去仕上げ加工の基準位置となる基準点の作成及び該基準点の位置の検出を行い、前記除去工程の前に前記基準点の位置を再度検出し、三次元形状造形物の造形前に検出した該基準点の位置との測定差に基づいて、前記除去工程を行なうNCプログラムの加工位置の補正を行なう補正工程を有するものである。
【0015】
請求項9の発明は、造形用プレートに無機質又は有機質の粉末材料を供給して粉末層を形成する粉末層形成手段と、前記粉末層の所定の箇所に光ビームを照射して該粉末層を焼結、又は溶融硬化させ硬化層を形成する硬化手段と、三次元形状造形物を切削する除去手段と、を備え、前記粉末層の形成と、前記硬化層の形成とを繰り返すことにより複数の硬化層が一体化された造形物の形成の途中に、前記除去手段により該造形物の表面及び表面内側の除去を少なくとも1回以上繰り返して三次元形状造形物を製造する製造装置において、前記造形物の周囲の雰囲気及び前記造形用プレートの両方又はいずれか一方を冷却する冷却手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、造形物を冷却し、造形物の熱収縮が安定してから除去仕上げ加工を行なうので、除去仕上げ加工後の造形物の収縮が少なくなり、従って、除去仕上げの加工精度が良くなる。
【0017】
請求項2の発明によれば、造形物の周囲の雰囲気を冷却するので、造形物の冷却を効率良く行なうことができると共に、請求項1と同様の効果を得ることができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、造形物の温度が上昇してから硬化工程を行なうので、光ビームの照射エネルギーが少なくてよく、焼結を効率良く行なうことができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、造形物の周囲の雰囲気を加熱するので、造形物の加熱を効率良く行なうことができると共に、請求項3と同様の効果を得ることができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、造形物の温度を測定するので、加熱及び冷却を過不足なく行うことができ、造形の効率が良くなる。
【0021】
請求項6の発明によれば、造形物の任意の箇所の温度を測定するので、造形物の形状に拘わらずに、加熱及び冷却を過不足なく行うことができ、造形の効率が良くなる。
【0022】
請求項7の発明によれば、造形物自体を冷却するので、冷却を効率良く行なうことができる。
【0023】
請求項8の発明によれば、造形中に除去仕上げ加工の基準点のズレが補正されるので、加工精度が良くなる。
【0024】
請求項9の発明によれば、冷却手段により造形物を冷却し、熱収縮が安定してから除去仕上げ加工を行なうので、除去仕上げ加工の後の造形物の収縮が少なくなり、従って、除去仕上げの加工精度が良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る三次元形状造形物の製造方法について図面を参照して説明する。図1は、同製造方法に用いられる金属光造形加工機の構成を示す。金属光造形加工機1は、金属粉末2の粉末層21が敷かれる造形用プレート22と、造形用プレート22を保持し、上下に昇降する昇降テーブル23と、昇降テーブルの外周を囲み金属粉末2を保持する造形タンク24と、造形用プレート22に粉末層21を形成する粉末層形成部3と、光ビームにより粉末層21を焼結、又は溶融硬化させ硬化層25を形成する硬化部4と、造形物11を切削する切削除去部5と、金属光造形加工機1の動作を制御する制御部(図示なし)を備えている。
【0026】
粉末層形成部3は、金属粉末2を供給する粉末タンク31と、供給された金属粉末2によって造形用プレート22に粉末層21を敷く粉末供給ブレード32とを備えている。硬化部4は、光ビームLを発光する光ビーム発振機41と、光ビームLを集光する集光レンズ42と、集光された光ビームLを粉末層21の上にスキャニングするガルバノミラー43と、を備えている。切削除去部5は、造形物11を切削する切削工具51と、切削工具51を保持するミーリングヘッド52と、ミーリングヘッド52を切削位置に移動させるXY駆動部53と、種々の切削工具51を保有し待機するツールマガジン54とを備えている。金属粉末2は、例えば、平均粒径20μmの球形の鉄粉であり、光ビームは、例えば、炭酸ガスレーザである。
【0027】
ここで、本実施形態における製造方法を説明する前に、硬化層の積層後に造形物の冷却を行なわずに除去仕上げ加工を行なう従来の製造方法を説明する。図12は従来の製造方法のフローを、図13はその動作をそれぞれ示す。制御部は、昇降テーブル23に載置された造形用プレート22の上に、粉末タンク31の金属粉末2を粉末供給ブレード32によって供給し、粉末層21を形成する(ステップS101)(図13(a)参照)。このステップS101は粉末層形成工程を構成する。次に、ガルバノミラー43によって光ビームLを粉末層21の任意の箇所に走査させて金属粉末2を焼結、又は溶融硬化させ、造形用プレート22と一体化した硬化層25を形成する(ステップS102)(図13(b)参照)。このステップS102は、硬化工程を構成する。光ビームLの照射経路は、予め三次元CADモデルから生成したSTL(Stereo Lithography)データを、例えば、0.05mmの等ピッチでスライスした各断面の輪郭形状データに基づいて定める。この照射経路は、三次元形状造形物の少なくとも最表面が気孔率5%以下の高密度となるようにするのが好ましい。
【0028】
上記粉末層形成工程と硬化工程とを繰り返して硬化層25を積層し、硬化層25の層数が造形物11の表面を切削する切削工具51の有効刃長から求めた層数Nになるまで積層を繰り返す(ステップS101乃至S104)。この層数Nは、例えば、切削工具51が直径1mm、有効刃長3mmで深さ3mmの切削加工が可能であるボールエンドミルであり、粉末層の厚みが0.05mmであるならば、積層した粉末層の厚みが2.5mmとなる50層とする。そして、硬化層25の層数が定めた総数Nになると、制御部は、XY駆動部53によってミーリングヘッド52を移動させ、造形物11の表面を切削工具51によって除去する(ステップS105)(図13(c)参照)。このステップS105は除去仕上げ工程を構成する。こうして、三次元形状造形物の造形が終了するまで、硬化層25の形成と造形物11の表面の除去とを繰り返す(ステップS106、S107)。除去仕上げ工程は、造形物の表面に付着した粉末による低密度表面層を除去するものであるが、高密度部まで削り込むことによって造形物表面に高密度部を全面的に露出させるようにしてもよく、この場合は所望の形状よりも硬化層が少し大きくなるようにしておく。
【0029】
上記硬化工程では、光ビームLからエネルギーを受けて造形物11は加熱されて蓄熱する。光ビームLが照射された部分の金属粉末2及び造形物11は、局所的に1000°C以上の温度まで上昇する。造形物11は、放射や対流により冷却されるが、造形物内部に蓄熱する。さらに、造形物11は金属粉末2に囲われており、金属粉末2は熱伝導率が低いために蓄熱しやすい。造形中の造形物11の温度履歴を図14に示す。硬化工程中に光ビームの照射により造形物の温度は上昇し、粉末層形成工程中には放熱するが、蓄熱により温度は少ししか低下せず、硬化層を積層している間は造形物の温度は上昇を続ける。そして、高温状態まま除去仕上げ工程になり、除去仕上げ工程中に冷却される。
【0030】
このように、従来の製造方法においては、硬化工程後の造形物の温度が高い状態で除去仕上げ加工を行なうため、造形物が熱膨張した状態で加工することとなり、常温に戻ったときに熱収縮し、加工精度が悪くなる。造形物の熱収縮は、例えば、造形物の長さが100mmで温度が100°Cであった場合、線膨張係数を鋼と同じ1.0×10−5とすると、常温の25°Cに戻ったときの寸法差は、100×1.0×10−5×(100−25)=0.075mmとなり、造形物が金型の場合には許容できない大きな量となる。
【0031】
上記のような従来方法の問題を解消するため、本実施形態においては、除去仕上げ工程時の造形物の温度を下げて、除去仕上げ加工の寸法精度を良くするために、造形用プレートを冷却する。本実施形態における造形物の冷却状態を図2に示す。昇降テーブル23は内部に冷媒回路6を有し、冷媒回路6は冷媒配管61によって冷却温度調整装置62と繋がっており、冷却温度調整装置62は冷媒回路6に冷媒を循環させて昇降テーブル23を冷却する。冷却温度調整装置62は、プレート温度センサ63によって造形用プレート22の温度を測定しており、造形物を冷却するために、造形用プレート22を所定の温度まで冷却する。
【0032】
この製造方法のフローを図3に示し、その時の、造形物の温度履歴を図4に示す。制御部は、硬化層の層数が予め定めた層数Nになるまで、粉末層形成工程と硬化工程を繰り返し(ステップS1乃至S4)、層数Nになると造形用プレート22の温度が、例えば、25°Cの所定の温度に低下するまで、冷却温度調整装置62によって、昇降テーブル23を冷却し、所定の温度になるように温度調整を行なう(ステップS5乃至S7)。このステップS5乃至S7は、冷却工程を構成する。そして、所定の温度まで低下すると、温度調整を続けながら除去仕上げ工程を開始し(ステップS8)、除去仕上げが終了すると冷却を停止して温度調整を終了する(ステップS9)。こうして、三次元形状造形物の造形が終了するまで、硬化層25の形成と造形物11の表面の切削を繰り返す(ステップS10及びS11)。このように、造形物11を冷却してから除去仕上げ工程を行なうので、造形物11の加工後の熱収縮が少なく、加工誤差が小さくなる。
【0033】
次に、本実施形態における製造方法の第1の変形例について図5を参照して説明する。本変形例では、造形物の硬化層近傍を冷却する。図5は本変形例における造形物の冷却状態を示す。硬化工程が終了した後に放熱フィン64を有した放熱ブロック65を造形物11の上に載置し、冷却ファン66からの送風によって放熱ブロック65を冷却する。制御部は、放熱ブロック65と造形用プレート22のそれぞれの温度を、ブロック温度センサ67とプレート温度センサ63からのそれぞれの検出信号に基づいて、温度測定装置68によって測定し、放熱ブロック65と造形用プレート22とが所定の温度まで冷却されると除去仕上げ工程を行なう。放熱ブロック65によって、造形物の焼結が行なわれた直後の近傍部分を冷却するので、冷却を効率良く行なうことができる。また、この放熱ブロック65による冷却を、上述した昇降テーブル23による冷却と共に行なってもよい。さらに、効率良く冷却することができる。
【0034】
次に、本実施形態における製造方法の第2の変形例について説明する。本変形例では、三次元形状造形物の周囲の雰囲気を冷却することにより、三次元形状造形物を冷却する。雰囲気を冷却するには、例えば、粉末層を囲んでいるチャンバー内の不活性ガスの雰囲気を冷却したり、粉末層に冷却した不活性ガスを吹き込むことにより冷却する。三次元形状造形物を周囲から冷却するので効率良く冷却することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る三次元形状造形物の製造方法について図面を参照して説明する。本実施形態における造形物の加熱状態を図6に示す。本実施形態では、第1の実施形態における造形物の冷却に加えて、硬化工程の前に造形物を加熱する。昇降テーブル23は内部に冷媒回路6と共にヒータ69を有している。加熱冷却装置62aは冷媒回路6によって昇降テーブル23を冷却すると共に、ヒータ69によって昇降テーブル23を加熱する。
【0036】
図7は、同製造方法のフローを、図8は、同製造方法における三次元形状造形物の温度履歴を示す。三次元形状造形物を製造するときは、制御部は最初に昇降テーブル23に配設したヒータ69により、昇降テーブル23を加熱し、造形用プレート22を、例えば、200°Cの所定の温度まで昇温させ、所定温度以上に温度調整する(ステップS21乃至S23)。このステップS21及びS23は加熱工程を構成する。造形用プレート22が所定の温度まで昇温すると温度調整を続けながら、粉末層21の形成と焼結又は溶融硬化とを繰り返し硬化層を積層する(ステップS24乃至S27)。造形物11が加熱されているので、粉末層21の焼結又は溶融硬化が行い易い。そして、硬化層の層数が所定の層数Nに達した後は、加熱を停止して温度調整を終了し(ステップS28)、第1の実施形態と同様に造形物11の除去仕上げ加工を行なう(ステップS29乃至S35)。
【0037】
この製造方法において、造形物の加熱は、例えば、粉末層の上方に赤外線ヒータを設置し、赤外線によって三次元形状造形物を直接加熱したり、粉末層に加熱した不活性ガスを吹き込んで三次元形状造形物の周囲の雰囲気を加熱して行なってもよい。三次元形状造形物を効率良く加熱することができる。
【0038】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る三次元形状造形物の製造方法について図9を参照して説明する。図9は、同製造方法に用いられる金属光造形加工機の構成を示す。本実施形態では、加熱工程や冷却工程において、造形物の温度を測定し所定の温度に達しているかを判断するステップを有している。金属光造形加工機1は、第1の実施形態における金属光造形加工機の構成に加えて、赤外線放射温度計71を備えている。制御部は、加熱工程及び冷却工程において、赤外線放射温度計71によって、造形物11の上面全体の温度を測定し、加熱工程から粉末層形成工程への移行、及び冷却工程から削除仕上げ工程への移行を判断する。造形物11の温度を測定するので、加熱工程及び冷却工程を効率良く行なうことができる。
【0039】
次に、同製造方法の変形例について図10を参照して説明する。本変形例では、造形物の上面全体の温度を測定するのでなく、造形物の所定の箇所の温度を測定する。図10(a)は、本変形例において、局部温度センサがツールマガジンで待機している動作を、図10(b)及び(c)は、局部温度センサによって、造形物の任意の箇所の温度を測定している動作を示す。本変形例の金属光造形加工機は、ミーリングヘッド52に取り付けることができる局部温度センサ72を備えている。局部温度センサ72は、熱電対やサーミスタ等の接触式でも、赤外線放射温度計等の非接触式でもよい。ミーリングヘッド52が切削工具51を保持する部分はコレットタイプとなっており、局部温度センサ72は切削工具51と同一の直径の軸を有しているので、ミーリングヘッド52は局部温度センサ72を保持することができる。
【0040】
局部温度センサ72は、切削工具51と同様にツールマガジン54に置かれている。制御部は、冷却工程や加熱工程時に、ミーリングヘッド52に局部温度センサ72を取り付け、XY駆動部53によって、局部温度センサ72を造形物11の任意の箇所に移動させ温度を測定する。測定する箇所としては、例えば、三次元形状造形物のCADデータの断面輪郭形状データから、各断面の重心点や、輪郭線から最も遠い点等を設定する。造形する三次元形状造形物の形状に応じた箇所の温度を測定し、冷却や加熱の状態を検出することができるので、冷却や加熱を過不足なく効率良く行なうことができる。
【0041】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る三次元形状造形物の製造方法について図11を参照して説明する。三次元形状造形物の造形においては、造形中に加熱、冷却を繰り返すので、造形物、造形用プレート及び昇降テーブルは熱膨張、収縮を繰り返すこととなり、造形の基準点がずれる虞がある。そこで、本実施形態では、三次元形状造形物の造形前に切削工具によって、造形用プレートに除去仕上げ加工の基準位置となる基準点を作成する。図11(a)乃至(f)は、本実施形態での基準点の作成及び除去仕上げ加工の動作を示す。最初に、図11(a)に示すように、三次元形状造形物の造形前に、制御部は、ミーリングヘッド52を所定の位置に移動させて、切削工具51によって、造形用プレート22に除去仕上げ加工の基準位置となる、例えば、+形状の基準点8を形成し、図11(b)に示すように、基準点8をミーリングヘッド52に取り付けたCCDカメラ81によって検出しその位置データを記憶する。
【0042】
次いで、図11(c)に示すように、制御部は所定の層数の硬化層を積層した後、図11(d)に示すように、冷却中に基準点8が見えるように未焼結の金属粉末2を吸引機82により吸引する。次いで、図11(e)に示すように、制御部9はCCDカメラ81によって、基準点8を検出し、最初に記憶した位置データと比較して、その差に基づいて除去仕上げ工程を行なうNC(Numerical Control)プログラムの加工位置を補正する。この補正する動作は補正工程を構成する。次いで、図11(f)に示すように、補正したNCプログラムにより造形物11の除去仕上げ加工を行なう。除去仕上げ加工の前に加工位置の補正を行なうので、加工精度が良くなる。加工位置の補正は、除去仕上げ加工のプログラムだけでなく、光ビームを走査するプログラムの補正を行なってもよい。光ビームの走査位置が補正されるので、焼結の位置精度が良くなる。
【0043】
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態に係る三次元形状造形物の製造方法について説明する。本実施形態では、第1乃至第4の実施形態における製造方法と異なり、除去仕上げ工程前の冷却中の待機を、温度を測定して行なうのでなく、製造条件から待機時間を算出して待機する。硬化工程後の冷却中の三次元形状造形物の温度は、金属粉末の種類、粒径、光ビームのエネルギー吸収率及び熱伝導率等の材料特性や、光ビームの照射条件や、冷却条件に基づいて予測することができる。また、冷却温度の要因には、上述した要因以外に、前回の除去仕上げ工程の後の光ビームによる加熱量と、造形物の蓄熱量が大きな要因となる。
【0044】
上記待機時間を算出するには、前回の除去仕上げ工程の後の光ビームによる加熱量を表す指標として、前回の除去仕上げ工程後に造形した硬化層の面積Sを用いると共に、造形物の蓄熱量を表す指標としてそれまでに造形した体積Vを用いて、この面積Sと体積Vを変数とし、上述した金属粉末の材料特性等毎に基づいた式、待機時間T=f(S,V)を実験データ等から導きだす。そして、硬化工程の後、この式によって算出した待機時間Tの間、待機する。計算式から算出することにより、温度測定をすることなく、簡単に待機時間を決定することができる。また、除去仕上げ工程後の加熱工程での待機時間も、加熱量等を要因に加えて算出式を導き出し、待機時間を算出してもよい。温度測定をすることなく、簡単に加熱工程時の待機時間を決定することができる。
【0045】
なお、本発明は、上記各種実施形態の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、金属粉末の組成は、上記実施形態の構成に限られないし、また、有機質の粉末材料でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る製造方法に用いる金属光造形加工機の斜視図。
【図2】同製造方法における造形物の冷却状態を示す図。
【図3】同製造方法のフロー図。
【図4】同製造方法における造形物の温度履歴を表す図。
【図5】同製造方法の変形例における造形物の冷却状態を示す図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る製造方法における造形物の加熱状態を示す図。
【図7】同製造方法のフロー図。
【図8】同製造方法における造形物の温度履歴を表す図。
【図9】本発明の第3の実施形態に係る製造方法に用いる金属光造形加工機の斜視図。
【図10】(a)乃至(c)は、同製造方法の変形例を時系列に説明する図。
【図11】(a)乃至(f)は、本発明の第4の実施形態に係る製造方法を時系列に説明する図。
【図12】従来の製造方法のフロー図。
【図13】(a)乃至(c)は、同製造方法を時系列に説明する図。
【図14】同製造方法における造形物の温度履歴を表す図。
【符号の説明】
【0047】
1 金属光造形加工機(製造装置)
11 造形物(三次元形状造形物)
2 金属粉末(粉末材料)
21 粉末層
22 造形用プレート
25 硬化層
3 粉末層形成部(粉末層形成手段)
4 硬化部(硬化手段)
5 切削除去部(除去手段)
52 ミーリングヘッド(主軸)
6 冷媒回路(冷却手段)
61 冷媒配管(冷却手段)
62 冷却温度調整装置(冷却手段)
64 放熱フィン(冷却手段)
65 放熱ブロック(冷却手段)
66 冷却ファン(冷却手段)
69 ヒータ(加熱手段)
72 局部温度センサ(温度センサ)
8 基準点
L 光ビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形用プレートに無機質又は有機質の粉末材料を供給して粉末層を形成する粉末層形成工程と、前記粉末層の所定の箇所に光ビームを照射して該粉末層を焼結、又は溶融硬化させ硬化層を形成する硬化工程とを備え、前記粉末層形成工程と硬化工程とを繰り返すことにより複数の硬化層が一体化された造形物の形成の途中に、該造形物の表面及び表面内側を除去する除去工程を少なくとも1回以上繰り返して三次元形状造形物を造形する方法において、
前記除去工程時に、前記造形用プレートを所定の冷却手段により冷却する冷却工程を含み、この冷却工程により所定の温度まで冷却した後に除去仕上げ加工を行なうことを特徴とする三次元形状造形物の製造方法。
【請求項2】
造形用プレートに無機質又は有機質の粉末材料を供給して粉末層を形成する粉末層形成工程と、前記粉末層の所定の箇所に光ビームを照射して該粉末層を焼結、又は溶融硬化させ硬化層を形成する硬化工程とを備え、前記粉末層形成工程と硬化工程とを繰り返すことにより複数の硬化層が一体化された造形物の形成の途中に、該造形物の表面及び表面内側を除去する除去工程を少なくとも1回以上繰り返して三次元形状造形物を造形する方法において、
前記除去工程時に、前記造形物の周囲の雰囲気を所定の冷却手段により冷却する冷却工程を含み、この冷却工程により所定の温度まで冷却した後に除去仕上げ加工を行なうことを特徴とする三次元形状造形物の製造方法。
【請求項3】
前記硬化工程時に、前記造形用プレートを所定の加熱手段により加熱する加熱工程を含み、この加熱工程により所定の温度まで加熱した後に硬化工程を行なうことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項4】
前記硬化工程時に、前記三次元形状造形物の周囲の雰囲気を所定の加熱手段により加熱する加熱工程を含み、この加熱工程により所定の温度まで加熱した後に硬化工程を行なうことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程及び冷却工程の両方又はいずれか一方において、造形中の造形物における上面全体の温度を測定し、予め定めた温度に達しているかを判断するステップを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程及び冷却工程の両方又はいずれか一方において、前記除去仕上げ加工を行なう除去手段の主軸に温度センサを取り付け、
前記温度センサによって造形中の造形物の所定箇所の温度を測定し、
予め定めた温度に達しているかを判断するステップを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項7】
前記冷却工程は、前記造形物を冷却するステップを有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項8】
三次元形状造形物の造形前に、前記造形用プレートに前記除去仕上げ加工の基準位置となる基準点の作成及び該基準点の位置の検出を行い、
前記除去工程の前に前記基準点の位置を再度検出し、
三次元形状造形物の造形前に検出した該基準点の位置との測定差に基づいて、前記除去工程を行なうNCプログラムの加工位置の補正を行なう補正工程を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の三次元形状造形物の製造方法。
【請求項9】
造形用プレートに無機質又は有機質の粉末材料を供給して粉末層を形成する粉末層形成手段と、前記粉末層の所定の箇所に光ビームを照射して該粉末層を焼結、又は溶融硬化させ硬化層を形成する硬化手段と、三次元形状造形物を切削する除去手段と、を備え、前記粉末層の形成と、前記硬化層の形成とを繰り返すことにより複数の硬化層が一体化された造形物の形成の途中に、前記除去手段により該造形物の表面及び表面内側の除去を少なくとも1回以上繰り返して三次元形状造形物を製造する製造装置において、
前記造形物の周囲の雰囲気及び前記造形用プレートの両方又はいずれか一方を冷却する冷却手段を備えたことを特徴とする三次元形状造形物の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−307895(P2008−307895A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−127719(P2008−127719)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】