説明

三次元測定機の校正方法

【課題】接触式三次元測定機を容易に校正可能な三次元測定機の校正方法を提供する。
【解決手段】単一の基準球面1aにプローブ2を倣わせてその軌跡を測定データとして取得し、前記測定データを球状に座標変換する座標変換量とその球の半径を算出し、前記座標変換量から直角度誤差を校正し、前記球の半径から基準球面の半径を差し引くことで、プローブ先端球の半径を校正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元測定機の校正方法、すなわち、接触式三次元測定機の座標軸間の直角度誤差及びプローブ誤差の校正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非球面レンズなどの形状を高精度に測定する事ができる三次元測定機として図16Aに示す構成をしたものがある。この種の三次元測定機は、お互いに直交するX軸ステージ811とY軸ステージ812及びZ軸ステージ804からなる駆動部と、Z軸ステージ804に被測定物801の表面801aに追随するプローブ802を備えている。そのプローブ802に図16Bに示すスタイラス820が取り付けられており、スタイラス820の先端に、被測定物表面801aに接触する真球度の高い球体821が取り付けられている。前記プローブ802は、スタイラス820が被測定物表面801aに接触した際にスタイラス820が図16Bの上方へプローブ802内に押し込まれる構造をしており、被測定物表面801aの高さの変化を前記プローブ802で検出することができる。前記プローブ802の高さの変化の検出量に応じてZ軸ステージ804を移動させる事により、押込み量が一定となるような追従制御が行われる。この追従制御を行っている間に、X軸ステージ811とY軸ステージ812とを移動させると、プローブ802が被測定物表面801aに倣って移動する。このプローブ802の位置(X座標、Y座標、Z座標)を公知のレーザ測長光学系により測定することで、被測定物表面801aの形状を測定する事ができる。また、プローブ802とプローブ先端球821とは同様に移動するため、プローブ802の位置を測定する事はプローブ先端球821の位置を測定している事になる。
【0003】
この種の三次元測定機で形状を測定する場合、前記レーザ測長光学系により構成される測定座標系のX、Y、Z軸の直角度が測定精度に影響し、無視できない程度の測定誤差を生じる事が知られている。例えば、真球度の高い球の形状を直角度誤差を含む座標系で測定すると、楕円体状の結果となる。図3Aに各軸が直交する理想の座標系XYZと、図3B〜図3Dに、座標軸間の直角度誤差α、β、γを有する座標系X’Y’Z’を示す。
【0004】
また、測定精度にはプローブ誤差も影響する。接触式プローブ802を用いる場合においては、プローブ先端球821の半径誤差がプローブ誤差となる。図4を用いてプローブ誤差の影響を説明する。プローブ802の位置を測定データPとする。被測定物801の形状を測定するためには、プローブ先端球821と被測定物表面801aの接触点P’を求める必要がある。プローブ先端球821の半径Rが既知であれば接触点P’を求める事ができるが、前記半径Rが誤差を持つ場合においては、その影響を無視する事ができない場合がある。
【0005】
測定データの補正に用いる直角度誤差及びプローブ誤差の校正方法として、互いに相似形状を有する複数の基準測定物を測定し、測定された複数の基準測定物の測定データに基づいて直角度誤差α、β、γを求めるものがある(特許文献1参照)。この方法は、プローブ先端球821の半径に設計値を用いることで複数の基準測定物を測定して得られた各測定データを記憶しておき、前記各測定データと各基準測定物の設計形状との差をそれぞれ最小にするような直角度誤差を求めて、前記各々の直角度誤差とプローブ誤差の関係から直角度誤差を求めるものである。
【0006】
前述の技術で校正された直角度誤差α、β、γを用いると、測定データ(x’、y’、z’)に含まれる直角度誤差を下記式(1)により補正する事ができ、補正データ(x、y、z)が算出できる。
(数1)

【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−45231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1の方法では、プローブ先端球821の半径として設計値を用いる事で直角度誤差を校正する事が可能であるが、互いに相似の形状をした複数の基準測定物を測定する必要がある。また、複数の基準測定物を測定する際に測定誤差が生じる可能性がある。また、プローブ誤差を校正することが考慮されていなかった。
【0009】
本発明の目的は、これらの問題点を解決するもので、単一の基準球面を2本の測定経路に沿って測定するだけで直角度誤差α、β、γとプローブ先端球の半径とを校正することができる三次元測定機の校正方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0011】
本発明の第1態様によれば、被測定物の表面にプローブのスタイラスの先端の球を倣わせて前記表面の形状を測定する接触式三次元測定機の測定方法において、
単一の基準球面の異なる断面を水平方向に倣って前記プローブの軌跡を測定データとして測定データ取得部で取得し、
前記測定データを球の表面に座標変換する直角度誤差とその球の半径とを演算部で算出し、
前記球の半径から前記基準球面の半径を差し引く事により、前記座標変換で使用する座標軸の直角度誤差と前記プローブ先端球の半径とを演算部で校正する事を特徴とする三次元測定機の校正方法を提供する。
【0012】
本発明の第2態様によれば、さらに、測定時の前記プローブの前記スタイラスの傾きを傾き検出部で検出し、
前記演算部で、前記スタイラスの傾きに応じた前記プローブ先端球の変位量を算出して補正し、
前記傾き検出部の出力を前記スタイラスの傾きに換算する係数と、前記傾き検出部に含まれる取付角度誤差とを、前記基準球面に倣って測定されて前記測定データ取得部で取得された前記プローブの位置測定データと前記傾き検出部の出力データとから前記演算部で校正する事を特徴とする第1態様に記載の三次元測定機の校正方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、単一の基準球面を測定するだけで、測定座標系の直角度誤差とプローブ先端球の半径とを校正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明の一実施形態にかかる3次元測定機の構成図
【図1B】本発明の第1実施形態における校正処理の流れ図
【図1C】本発明の第1実施形態における校正処理を実施するための校正装置のブロック図
【図2A】本発明の前記第1実施形態における三次元測定機の斜視図
【図2B】本発明の前記第1実施形態における前記三次元測定機のプローブ部分の正面図
【図3A】従来の三次元測定機の装置座標軸間の直角度誤差定義の説明図
【図3B】前記従来の三次元測定機の装置座標軸間の直角度誤差定義の説明図
【図3C】前記従来の三次元測定機の装置座標軸間の直角度誤差定義の説明図
【図3D】前記従来の三次元測定機の装置座標軸間の直角度誤差定義の説明図
【図4】前記従来の三次元測定機のプローブ先端球の半径と測定データとの関係の説明図
【図5A】前記第1実施形態における前記三次元測定機の基準球面(凸面)に倣うプローブ先端球中心の軌跡の説明図
【図5B】前記第1実施形態における前記三次元測定機の基準球面(凹面)に倣うプローブ先端球中心の軌跡の説明図
【図6A】前記第1実施形態における前記三次元測定機の校正に用いる基準球面に対する測定経路の説明図
【図6B】前記第1実施形態における前記三次元測定機の校正に用いる基準球面に対する測定経路の説明図
【図6C】前記第1実施形態における前記三次元測定機の校正に用いる基準球面に対する測定経路の説明図
【図7A】前記第1実施形態における前記三次元測定機の直角度誤差αの影響の説明図
【図7B】前記第1実施形態における前記三次元測定機の直角度誤差αの影響の説明図
【図8A】前記第1実施形態における前記三次元測定機の直角度誤差γの影響の説明図
【図8B】前記第1実施形態における前記三次元測定機の直角度誤差γの影響の説明図
【図9A】前記第1実施形態における前記三次元測定機の理想球面半径Rの影響の説明図
【図9B】前記第1実施形態における前記三次元測定機の理想球面半径Rの影響の説明図
【図9C】前記第1実施形態における前記三次元測定機の理想球面半径Rの影響の説明図
【図9D】前記第1実施形態における前記三次元測定機の理想球面半径Rの影響の説明図
【図10A】前記第1実施形態における前記三次元測定機の原点誤差Xoの影響の説明図
【図10B】前記第1実施形態における前記三次元測定機の原点誤差Xoの影響の説明図
【図11A】前記第1実施形態における前記三次元測定機の原点誤差Zoの影響の説明図
【図11B】前記第1実施形態における前記三次元測定機の原点誤差Zoの影響の説明図
【図12】本発明の第2実施形態にかかる三次元測定機におけるプローブと傾き検出部の説明図((a)は傾き検出部の平面図、(b)は傾き検出部の全体の構成を示す側面図)
【図13】本発明の前記第2実施形態における傾き検出部の取付角度誤差の説明図((a)は傾き検出部の平面図、(b)は傾き検出部の全体の構成を示す側面図)
【図14A】本発明の前記第2実施形態における傾き検出部の誤差要因の影響の説明図
【図14B】本発明の前記第2実施形態における傾き検出部の誤差要因の影響の説明図
【図15】本発明の前記第2実施形態における校正処理の流れ図
【図16A】従来の三次元測定機の斜視図
【図16B】従来の前記三次元測定機のプローブ部分の正面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態にかかる三次元測定機の校正方法は、図1A〜図2Aに示す構成をした三次元測定機100Gにおいて、形状が既知で真球度の高い基準球面1aを測定する事で、測定座標系の直角度誤差とプローブ先端球21の半径とを校正する。
【0017】
校正方法について詳細に説明する前に、まず、三次元測定機100Gについて説明する。
【0018】
図1A及び図2Aに、本発明の第1実施形態にかかる3次元形状測定方法を実施可能な3次元形状測定機100Gの構成を示す。
【0019】
前記3次元形状測定機100Gは、非球面レンズなどの形状を高精度に測定する事ができる三次元測定機として構成している。
【0020】
この種の三次元形状測定機100Gは、お互いに直交するX軸ステージ112GとY軸ステージ113GとZ軸ステージ114Gとで構成する駆動部と、Z軸ステージ114Gに被測定物55の表面55aに追随する3次元形状測定機用プローブ2とを備えている。そのプローブ2に図2Bに示すスタイラス20が取り付けられており、スタイラス20の先端に、被測定物表面55aに接触する真球度の高い球体21が取り付けられている。前記プローブ2は、スタイラス20が被測定物表面55aに接触した際にスタイラス20が図2Bの上方へプローブ2内に押し込まれる構造をしており、被測定物表面55aの高さの変化を前記プローブ2で検出することができる。前記プローブ2の高さの変化の検出量に応じてZ軸ステージ114Gを移動させる事により、押込み量が一定となるような追従制御が行われる。この追従制御を行っている間に、X軸ステージ112GとY軸ステージ113Gとを移動させると、プローブ2が被測定物表面55aに倣って移動する。このプローブ2の位置(X座標、Y座標、Z座標)を公知のレーザ測長光学系により測定することで、被測定物表面55aの形状を測定する事ができる。また、プローブ2とプローブ先端球21とは同様に移動するため、プローブ2の位置を測定する事はプローブ先端球21の位置を測定している事になる。
【0021】
本発明の第1実施形態では、図2Aに示す構成をした前記三次元形状測定機100Gにおいて、被測定物1の表面である被測定面1aに代えて、形状が既知で真球度の高い基準球面1aを測定する事で、測定座標系の直角度誤差とプローブ先端球21の半径とを校正する。図2Aにおいて、基準球面1aを有する校正用被測定物1は、図5Aに示す凸面又は図5Bに示す凹面の半径Rの基準球面1aを有するものである。図5A及び図5Bは、基準球面1aにプローブ先端球21を倣わせて移動させた際の基準球面1aの中心Osを通る断面を示している。ここで、プローブ先端球21で基準球面1aを如何様に倣っても、プローブ先端球21の中心点21cが通る軌跡33は、点Os(基準球面1aの中心Os)を中心とする半径R=R+R(図5Aの凸面の場合)又はR=R−R(図5Bの凹面の場合)の球の一部になる事がわかる。ただし、プローブ先端球21の半径Rは設計値に対して製造誤差が含まれるため、前記プローブ先端球21の中心点21cが通る軌跡33の半径Rは、この段階では不明である。
【0022】
なお、本発明の第1実施形態にかかる三次元測定機の校正方法は、図1Cに示すように、制御装置111Gの制御下で、単一の基準球面1aの異なる断面を水平方向に倣わせる測定経路を設定する測定条件設定部52と、前記測定経路に従ってプローブ2を移動させる間に測定データ取得部50Aにおいて取得した測定データ(プローブ2の軌跡)を球の表面に座標変換する直角度誤差とその球の半径とを算出して、前記球の半径から前記基準球面の半径を差し引く事により前記プローブ先端球の半径とを校正する演算部51とで構成される校正装置53で行うものである。校正装置53には、必要に応じて、各部の出力又は入力のデータを記憶する記憶部54を備えればよい。校正装置53は制御装置111Gの制御の下に動作する。
【0023】
本発明の第1実施形態では、図6A〜図6Cに示すように、基準球面1aに対して高さの異なる2つの水平断面31a,32aの上に、互いに大きさの異なる2つの円形の測定経路31b、32bを測定条件設定部52で設定する。すなわち、2つの円形の測定経路31b、32bは、基準球面1aと2つの水平断面31a,32aとが交差して形成される曲線である。そして、大きさの異なる2つの円形の測定経路31b、32bに沿ってプローブ先端球21をそれぞれ倣わせてプローブ先端球21の位置を、レーザ測長光学系などの位置座標測定部50でそれぞれ測定して記憶部54にそれぞれ記憶されるとともに、それらの測定データから測定座標系の直角度誤差とプローブ先端球21の半径とを演算部51で校正する。ここで、位置座標測定部50は測定データ取得部50Aの一例として機能する。
【0024】
以下では、前述の測定経路31b、32bにより位置座標測定部50で得られた測定データから直角度誤差α、β、γと半径Rとを演算部51で求める方法を示す。
【0025】
位置座標測定部50で取得した測定データ(x’、y’、z’)を、直角度誤差α、β、γを初期値0として、前述の式(1)と同じ、以下の式(2)により、演算部51で補正する。補正データは(x、y、z)で表す。
(数2)

その補正したデータと、プローブ先端球21の中心点21cの軌跡を表面に持ちかつ中心がOs(Xo,Yo,Zo)で半径がRの球とを演算部51で比較する。校正する変数α、β、γ、Rと、それらを求めるために必要となる変数Xo,Yo,Zoとの計7個の変数に誤差が含まれなければ、測定データの直角度誤差を補正したデータと半径Rの球とを演算部51で比較して得られる測定誤差が、最も小さくなる。この測定誤差の傾向は、前記7個の変数ごとに異なるため、測定誤差の傾向から、測定誤差を低減する変数の値を演算部51で求める事が可能である。また、公知の最小二乗法を適用する事で、測定誤差を最小にする前記7個の変数を演算部51で容易に算出する事ができる。
【0026】
前記測定誤差の傾向から、図6A〜図6Cに示す軌跡(31b、32bで示される一点鎖線の円)を通る測定経路31b、32bにより位置座標測定部50で得られる測定データを用いる事で、前記7個の変数が分離できる事を、図7A〜図11Bを用いて以下に説明する。
【0027】
(1)直角度誤差の影響について
図7A及び図7Bは、それぞれ、基準球面1aを円形の測定経路31b、32bに沿って位置座標測定部50で測定して得られる測定データ(31b、32bの実線で示すデータ)に対して直角度誤差を演算部51で補正したデータを、補正データとして、点線71,73で示したものである。ここで、演算部51において、YZ軸間の直角度誤差αとXY軸間の直角度誤差γとをα=γ=0とし、XZ軸間の直角度誤差βをβ≠0として、その他の変数は全て誤差を持たない真値としている。図7Aは測定経路31bにおけるデータを図示し、図7Bは測定経路32bにおけるデータを図示したものである。このとき、直角度誤差βの特徴を以下にまとめる。
【0028】
・各水平断面31a、32aでの補正データ71,73は、それぞれ、円になる(図7A及び図7Bの点線の円71,73を参照)。
【0029】
・各水平断面31a、32aでの補正データ71,73の半径は、それぞれ、円形の軌跡31b,32b(図7A及び図7Bの実線の円31b,32bを参照)の半径に一致する。
【0030】
・各水平断面31a、32aでの補正データ71,73の中心72,74は、円形の軌跡31b,32bの中心に一致せず、それぞれ、X方向にZsinβだけずれる。前記Zは、原点Os(基準球面1aの中心Os)を通る水平断面から、各水平断面31a、32aまでの距離である。
【0031】
YZ軸間の直角度誤差αの特徴については、前記直角度誤差βの特徴がX方向に補正データをずらす事に対して、Y方向にずらす事が異なるだけなので、図示していない。その特徴を以下にまとめる。
【0032】
・各水平断面31a、32aでの補正データは、それぞれ、円になる。
【0033】
・各水平断面31a、32aでの補正データの半径は、それぞれ、円形の軌跡の半径に一致する。
【0034】
・各水平断面31a、32aでの補正データの中心は、円形の軌跡の中心に一致せず、それぞれ、Y方向にZsinαだけずれる。前記Zは、原点Os(基準球面1aの中心Os)を通る水平断面から、各水平断面31a、32aまでの距離である。
【0035】
XY軸間の直角度誤差γの特徴について、図8A及び図8Bに示す。図8A及び図8Bの意味は図7A及び図7Bと同様で、α=β=0、γ≠0として、その他の変数は全て正しい値としている。その特徴を以下にまとめる。
【0036】
・各水平断面31a、32aでの測定データ81,83は、それぞれ、45度傾斜した楕円になる(図8A及び図8Bの点線の円81,83を参照)。
【0037】
・各水平断面31a、32aでの測定データ81,83の楕円形状は、それぞれ、正しい直角度誤差γを用いて式(2)により演算部51で補正すれば、補正データはそれぞれ円形状になり(図8A及び図8Bの実線の円31b,32bを参照)、それぞれの半径は、それぞれ、円形の軌跡31b,32bの半径に一致する。
【0038】
・各水平断面31a、32aでの補正データの中心82,84は、それぞれ、円形の軌跡31b,32bの中心に一致する。
【0039】
(2)軌跡を表面に持つ球の半径の影響について
図9A〜図9Dは、プローブ先端球21の半径Rを、真値に微小値ΔRだけ加えた値に設定し、その他の変数は、全て正しい値としている。前記ΔRは製造誤差であり、図9Dでは真値Rに製造誤差ΔRを加えたものが、設計値となることを示している。軌跡を表面に持つ球の半径の影響について、その特徴を以下にまとめる。
【0040】
・各水平断面31a、32aでの補正データ91,93は、それぞれ、円になる(図9A及び図9Bの点線の円を参照)。
【0041】
・各水平断面31a、32aでの補正データ91,93の半径は、円形の軌跡31b,32b(図9A及び図9Bの実線の円を参照)の半径と一致せず、それぞれ、下記の誤差Δrを生じる。
【0042】
(数3)

式(3)のθは、図9Cに示すように各断面の傾斜角度を表す。
【0043】
・各水平断面31a、32aでの補正データ91,93の中心92,94は、それぞれ、円形の軌跡31b,32bの中心に一致する。
【0044】
(3)軌跡を表面に持つ球の原点の影響について
図10A及び図10Bは、基準球面1aの原点OsのX座標Xoを、正しい値に微小値ΔXoだけ加えた値に設定し、その他の変数は、全て正しい値としている。図10A及び図10Bの意味は図7A及び図7Bと同様である。その特徴を以下にまとめる。
【0045】
・各水平断面31a、32aでの補正データ101,103は、それぞれ、円になる(図10A及び図10Bの点線の円101,103を参照)。
【0046】
・各水平断面31a、32aでの補正データ101,103の半径は、それぞれ、円形の軌跡31b,32b(図10A及び図10Bの実線の円31b,32bを参照)の半径に一致する。
【0047】
・各水平断面31a、32aでの補正データ101,103の中心102,104は、円形の軌跡31b,32bの中心に一致せず、それぞれ、X方向にXoだけずれる。
【0048】
基準球面1aの原点OsのY座標Yoの特徴については、前記Xoの特徴がX方向に補正データをずらす事に対して、Y方向にずらす事が異なるだけなので図示していない。その特徴を以下にまとめる。
【0049】
・各水平断面31a、32aでの補正データは、それぞれ、円になる。
【0050】
・各水平断面31a、32aで補正データの半径は、それぞれ、円形の軌跡31b,32bの半径に一致する。
【0051】
・各水平断面31a、32aでの補正データの中心は、円形の軌跡31b,32bの中心に一致せず、それぞれ、Y方向にYoだけずれる。
【0052】
また、基準球面1aの原点OsのZ座標Zoの特徴について図11A及び図11Bに示す。Z座標Zoを、正しい値に微小値ΔZoだけ加えた値に設定し、その他の変数は、全て正しい値としている。図11A及び図11Bの意味は図7A及び図7Bと同様である。その特徴を以下にまとめる。
【0053】
・各水平断面31a、32aでの補正データ111,113は、それぞれ、円になる 。
【0054】
・各水平断面31a、32aでの補正データ111,113の中心112,114は、それぞれ、円形の軌跡31b,32bの中心に一致する。
【0055】
・各水平断面31a、32aでの補正データ111,113の半径は、円形の軌跡31b,32bの半径と一致せず、それぞれ、下記の誤差Δrを生じる。
【0056】
(数4)

ここで、式(4)のθは図9Cに示すように各断面の傾斜角度を表す。
【0057】
以上の特徴から、変数α、β、γ、R、Xo、Yo、Zoは下記のような調整方法で演算部51により決定する事ができる。
【0058】
γの調整:水平断面31a、32aでの各補正データの楕円形状が円形状になるように演算部51で調整する。
【0059】
βの調整:水平断面31a、32aでの各補正データの中心がX方向に一致するように演算部51で調整する。
【0060】
αの調整:水平断面31a、32aでの各補正データの中心がY方向に一致するように演算部51で調整する。
【0061】
Xoの調整:水平断面31a、32aでの各補正データの中心が軌跡31b,32bの中心とX方向に一致するように演算部51で調整する。
【0062】
Yoの調整:水平断面31a、32aでの各補正データの中心が軌跡31b,32bの中心とY方向に一致するように演算部51で調整する。
【0063】
Zoの調整:水平断面31aでの補正データの半径が軌跡32bの半径に一致するように演算部51で調整する。
【0064】
Rの調整 :水平断面31a、32aでの各補正データと軌跡31b,32bを比較した測定誤差が、最小となる値に演算部51で調整する。
【0065】
以上のように、図6Aに示す測定経路31b,32bにより位置座標測定部50で得られる測定データと球面形状とを演算部51で比較する事で、変数α、β、γ、R、Xo、Yo、Zoを演算部51で求める事ができる。また、前記の方法により求まる変数Rを用いて、プローブ先端球21の半径Rを、R=R−R(凸面の場合)又はR=R−R(凹面の場合)により演算部51で求める事ができる。
【0066】
以降では、図1Bに示す本発明の第1実施形態の校正処理の流れに基づいて説明する。
【0067】
まず、校正に使用する半径及び真球度の保証された基準球面1aを有する被測定物1を測定機100Gに設置して、被測定物表面1aにスタイラス20を接触させて、スタイラス20を基準球面1aに一定の力で押し込むように制御装置111Gで追従制御を行う(ステップS1)。
【0068】
次に、基準球面1aの中心点Osの近傍に測定座標系XYZの原点Oを測定条件設定部52で設定する(ステップS2)。
【0069】
そして、第1断面31aにおける第1測定経路31bに沿って、制御装置111Gの制御下で、X軸ステージ112GとY軸ステージ113Gをそれぞれ動作制御する事で、第1測定経路31b上のN点(Nは測定誤差の傾向を掴むために多いほど好ましい)の測定データp=(x,y,z)、i=1、2、・・・Nを位置座標測定部50で取得する(ステップS3)。
【0070】
同様に、第2断面32aにおける第2測定経路32bに沿って、制御装置111Gの制御下で、X軸ステージ112GとY軸ステージ113Gをそれぞれ制御して第2測定経路32b上のM点(Mは測定誤差の傾向を掴むために多いほど好ましい)の測定データp’=(x’,y’,z’)、j=1、2、・・・Mを位置座標測定部50で取得する(ステップS4)。
【0071】
以上の手順で位置座標測定部50で取得した第1及び第2測定経路31a、32bの測定データpとp’を用いて、直角度誤差α、β、γとプローブ先端球21の半径Rとを演算部51で校正する。
【0072】
変数α、β、γ、R、Xo、Yo、Zoの初期値を演算部51で設定する(ステップS5)。このとき、初期値の設定は、1回目の測定時には、α=β=γ=0、Rは設計値を用いて演算部51で校正し、2回目以降の測定時には、前回校正した結果の変数α、β、γ、Rを演算部51で用いる事が好ましい。変数Xo、Yo、Zoについては、常に、初期値を0とする。
【0073】
前記の変数を用いてプローブ先端球21の中心点21cの軌跡を表す補正データを演算部51で求め、その補正データと中心Os、半径Rの球とを演算部51で比較して測定誤差及びその二乗平均平方根(RMS)を演算部51で算出する(ステップS6)。
【0074】
前記RMSが所定の値よりも小さいと演算部51で判断した場合、あるいは変数α、β、γ、R、Xo、Yo、Zoの値を変更してもRMSが小さくできないと演算部51で判断した場合には、その各変数の値が最適であると考えて、最適化処理を演算部51で終了する(ステップS7)。
【0075】
前記RMSが最適でないと演算部51で判断した場合には、前述の調整方法に基づいてγ⇒β⇒α⇒Xo⇒Yo⇒Zo⇒Rの順で変数を演算部51で決定する(ステップS8)。
【0076】
そして、演算部51で、更新したα、β、γ、R、Xo、Yo、Zoを改めて初期値として(ステップS9)、再度、ステップS6を演算部51で行う。もし、ステップS7においてRMSが収束したと演算部51で判断した場合には、変数α、β、γが最適化されており、直角度誤差の校正が完了する。
【0077】
次に、プローブ先端球21の中心点21cが通る軌跡の半径Rが前述の方法で最適化されるため、プローブ先端球21の半径Rを、R=R−R(凸面の場合)又はR=R−R(凹面の場合)により、演算部51で校正する(ステップS10)。
【0078】
以上の手順で校正された直角度誤差α、β、γとプローブ先端球の半径Rとを記憶部54に記憶する(ステップS11)。
【0079】
以上が本発明の第1実施形態における三次元測定機100Gの校正方法である。以後の三次元形状測定において、前述の記憶部54に記憶した直角度誤差α、β、γとプローブ先端球21の半径Rとを適用する事が可能になる。
【0080】
前記第1実施形態によれば、形状が既知の基準球面1aの高さの異なる2つの断面を水平方向に測定して得られるプローブ先端球21の軌跡31b、32bを表す測定データを用いて、演算部51において直角度誤差の影響により楕円体の一部となる前記測定データを球の一部に変換するためのα、β、γを求めて直角度誤差を校正し、さらに前記測定データの直角度誤差を補正したデータを表面に持つ球の半径を求め、この半径から基準球面の半径を差し引く事でプローブ先端球の半径を校正することができる。すなわち、単一の基準球面1aを2本の測定経路31b、32bに沿って測定するだけで、直角度誤差α、β、γとプローブ先端球21の半径Rとを校正することができる。
【0081】
(第2実施形態)
図12は、本発明の第2実施形態の三次元測定機100Gに用いるプローブ部の斜視図である。このプローブ2を用いた従来技術として、プローブ2の位置の測定に加えて、プローブ2の先端に取り付けられたスタイラス20のX方向、Y方向への傾きθx、θyも測定し、スタイラス20の傾きにより生じるプローブ先端球21の変位量を補正するものがある(特開2006−284410号公報参照)。この従来技術を三次元測定機100Gで使用する場合について、まず、説明する。
【0082】
図12のプローブ2に取り付けられたスタイラス20は、被測定物1に対して水平方向へ接触させて、その接触力に応じて傾く事が可能である。その傾き量|θ|=sqrt(θx+θy)が一定となるように、制御装置111Gの制御下で、X軸ステージ112GとY軸ステージ113Gとをそれぞれ追従制御させる事で、被測定物表面1aに倣って測定できる。前記スタイラス20の傾きθx、θyは、スタイラス20の端面に取り付けられたミラー105Gにレーザ光を照射して、前記ミラー105Gからの反射光を傾き検出部106Gで受光し、反射光のスポット300Gbの移動量を電圧などに傾き検出部106Gで変換し、前記傾き検出部106Gの出力にX方向、Y方向の換算係数Gx、Gyを乗じて傾き検出部106Gで算出できる。傾き検出部106Gは例えば2次元のフォトダイオードで構成される。この傾き検出部106Gは、図13に示すようにレーザの光軸回りに角度誤差φをもって三次元測定機100Gに取り付けられる(以降では、この誤差φを取付角度誤差と呼ぶ)。この取付誤差φの影響は無視できないため、前記傾き検出部106Gの出力から換算された傾きθx’、θy’を角度φだけ補正して傾きデータθx、θyを演算部51で取得する。
【0083】
前記した従来技術における測定方法は、以下のようになる。被測定物表面1aに倣ってプローブ2を移動させて、プローブ2の位置測定データを位置座標測定部50で取得するとともに傾き検出部106Gの出力データを取得する。前記測定データには直角度誤差が含まれるため、前記測定データに含まれる直角度誤差を演算部51で補正する。傾き検出部106Gの出力データに前記X方向、Y方向の換算係数Gx、Gyを演算部51で乗じて傾きデータθx’、θy’に演算部51で換算する。さらに、傾きデータθx’、θy’に含まれる取付角度誤差φを演算部51で補正してスタイラスの傾きデータθx、θyを演算部51で求める。前記スタイラスの傾きデータθx、θyを用いてプローブ先端球21のX、Y方向の変位量データδx、δyを演算部51で求めて、前記直角度誤差を補正した測定データに前記変位量データδx、δyを演算部51で加える事で、被測定物表面1aを倣うプローブ先端球21の中心点の軌跡データを演算部51で取得する。最後に、前記プローブ先端球21の軌跡データに含まれるプローブ誤差を演算部51で補正する事で、被測定物1の形状データを演算部51で取得する。
【0084】
このとき、傾き検出部106Gの出力データをスタイラスの傾きデータθx、θyに演算部51で換算するためには、その換算係数Gx、Gyと、傾き検出部106Gの取付角度誤差φを校正しておく必要がある。
【0085】
現在までに、前記傾き検出部106Gの取付角度誤差φを校正する技術が提案されている(特開2008−304413号公報参照)。この校正方法は、同一の測定経路を相反する方向に走査してプローブの位置測定データと傾き検出部106Gの出力データを取得し、前記測定データの直角度誤差とスタイラス20の傾きによるプローブ先端球21の変位とを補正した結果が走査方向によらず一致するように、傾き検出部106Gの取付角度誤差φを調整するものである。
【0086】
しかしながら、特開2008−304413号公報の方法は、傾き検出部106Gの取付角度誤差φに対する校正方法しか与えられておらず、直角度誤差α、β、γ又はプローブ先端球21の半径R及び傾き検出部106Gの出力に対する換算係数Gx、Gyを校正する方法が記述されていない。前記傾き検出部106Gの取付角度誤差φを校正する際に、その他の校正結果の影響を強く受けるため、事前に直角度誤差などその他の誤差要因を別の手段で校正しておく必要があった。
【0087】
これに対して、本発明の第2実施形態は、このような従来技術の課題を解決するもので、単一の基準球面1aの2つの断面を水平方向に測定するだけで直角度誤差α、β、γとプローブ先端球21の半径Rと傾き検出部106Gとを演算部51で校正する方法を提供する事を目的とする。
【0088】
本発明の第2実施形態の三次元測定機100Gの校正方法は、形状が既知で真球度の高い図5に示す凸面(図5A参照)又は凹面(図5B参照)の半径Rの基準球面1にプローブ2を倣わせて、図6に示すように基準球面1aに対して高さの異なる2つの水平断面31a,32aの上に測定経路31b、32bを測定条件設定部52で設定して、その経路に沿ってプローブ先端球21を倣わせてプローブ2の位置測定データを位置座標測定部50で取得するとともに傾き検出部106Gの出力データを取得し、それらのデータから、演算部51で直角度誤差α、β、γと傾き検出部106G及びプローブ先端球21の半径Rとを校正するものである。
【0089】
以下では、前述の測定経路により位置座標測定部50で得たプローブ2の位置測定データと傾き検出部106Gの出力データとから、直角度誤差α、β、γと傾き検出部106G及びプローブ先端球21の半径Rとを演算部51で求める方法を示す。測定データを適当な直角度誤差α、β、γを用いて演算部51で補正する。その補正したデータと、傾き検出部106Gから換算して得られるスタイラス傾きデータとを用いて、プローブ先端球21の中心点のデータを演算部51で求め、前記データと、プローブ先端球21の中心点の軌跡を表面に持つ中心がOs(Xo,Yo,Zo)で半径がRの球とを演算部51で比較する。前記10個の変数α、β、γ、Xo,Yo,Zo、R、Gx、Gy、φを全て正しく演算部51で求めることができれば、補正して得られたプローブ先端球21の中心点のデータと半径Rの球とを演算部51で比較して得られる測定誤差を、最も小さくできる。逆に、1つの変数でも誤っていれば、前述の測定誤差は大きくなる。この測定誤差の傾向は、前記10個の変数ごとに異なるため、測定誤差の傾向から、測定誤差を低減する変数の値を演算部51で求める事が可能である。また、公知の最小二乗法を適用する事で測定誤差を最小にする前記10個の変数を演算部51で容易に算出する事ができる。
【0090】
前記測定誤差の傾向から、図6A〜図6Cに示す測定経路31b、32bにより位置座標測定部50で得られる測定データを用いる事で、前記10個の変数が分離できる事を以下に説明する。
【0091】
(1)直角度誤差の影響について
前記第1実施形態と同様の内容であるため省略する。
【0092】
(2)軌跡を表面に持つ球の半径の影響について
前記第1実施形態と同様の内容であるため省略する。
【0093】
(3)軌跡を表面に持つ球の原点の影響について
前記第1実施形態と同様の内容であるため省略する。
【0094】
(4)傾き検出部106Gの校正結果の影響について
図14A及び図14Bは、基準球面1aを測定経路31b、32bに沿って測定して得られるプローブ2の位置測定データと傾き検出部106Gの出力データとを用いて演算部51で求まるプローブ先端球21の中心点のデータ(以下、補正データと呼ぶ)を点線141,143で示したものである。ここで、傾き検出部106Gの出力を傾きθx’に換算する係数Gxを、正しい値に微小値ΔGxだけを加えた値に設定し、その他の変数は、全て正しい値としている。図14Aは測定経路31bにおける補正データを、図14Bは32bにおける補正データを図示したものである。このとき、換算係数Gxの特徴を以下にまとめる。
【0095】
・各水平断面31a、32aでの補正データ141、143は、それぞれ、円がX方向に伸縮した誤差を持つ。
【0096】
・換算係数Gxを正しく校正すると、補正データ141、143は、それぞれ、円になり、それぞれの半径は円形の軌跡31b、32bの半径に一致する。
【0097】
・各水平断面31a、32aでの補正データ141、143の中心142、144は、それぞれ、円形の軌跡31b、32bの中心に一致する。
【0098】
換算係数Gyの校正誤差の特徴については、前記Gxの特徴がX方向に形状を伸縮させる事に対して、Y方向に伸縮させる事が異なるだけなので、図示していない。その特徴を以下にまとめる。
【0099】
・各水平断面31a、32aでの補正データは、それぞれ、円がY方向に伸縮した誤差を持つ。
【0100】
・換算係数Gyを正しく校正すると、補正データは、それぞれ、円になり、それぞれの半径は円形の軌跡31b、32bの半径に一致する。
【0101】
・各水平断面31a、32aでの補正データの中心は、それぞれ、円形の軌跡31b、32bの中心に一致する。
【0102】
傾き検出部の取付誤差φの校正誤差の特徴は、特開2008−304413号公報に示されているように、水平断面32aにおける相反する方向に測定して得られた互いの補正データが一致しない。
【0103】
以上の特徴から、変数α、β、γ、R、Xo、Yo、Zoは下記のような調整方法で演算部51により決定する事ができる。
【0104】
γの調整:水平断面31a、32aでの各補正データの楕円形状が円形状になるように演算部51で調整する。
【0105】
βの調整:水平断面31a、32aでの各補正データの中心がX方向に一致するように演算部51で調整する。
【0106】
αの調整:水平断面31a、32aでの各補正データの中心がY方向に一致するように演算部51で調整する。
【0107】
Gxの調整:水平断面31a、32aでの各補正データのX方向に伸縮した形状が円形状になるように演算部51で調整する。
【0108】
Gyの調整:水平断面31a、32aでの各補正データのY方向に伸縮した形状が円形状になるように演算部51で調整する。
【0109】
φの調整:水平断面32aでの相反する方向に測定して得られた各補正データが一致するように演算部51で調整する。
【0110】
Xoの調整:水平断面31a、32aでの各補正データの中心が軌跡31b,32bの中心とX方向に一致するように演算部51で調整する。
【0111】
Yoの調整:水平断面31a、32aでの各補正データの中心が軌跡31b,32bの中心とY方向に一致するように演算部51で調整する。
【0112】
Zoの調整:水平断面31aでの補正データの半径が軌跡32bの半径に一致するように演算部51で調整する。
【0113】
Rの調整 :水平断面31a、32aでの各補正データと軌跡31b,32bを比較した測定誤差が最小となる値に演算部51で調整する。
【0114】
以上のように、図6Aに示す測定経路31b,32bにより位置座標測定部50で得られる測定データと球面形状とを演算部51で比較する事で、変数α、β、γ、R、Xo、Yo、Zo、Gx、Gy、φを演算部51で求める事ができる。また、前記の方法により求まる変数Rを用いて、プローブ先端球21の半径Rを、R=R−R(凸面の場合)又はR=R−R(凹面の場合)により演算部51で求める事ができる。
【0115】
以降では、図15に示す本発明の第2実施形態の校正処理の流れに基づいて説明する。
【0116】
まず、測定機100Gに、基準球面1aを有する被測定物1を設置し、被測定物表面1aにスタイラス20を接触させて、スタイラス20を基準球面1aに一定の力で押し込むようにスタイラス20を基準球面1aに追従制御を行う(ステップS1)。
【0117】
次に、測定座標系XYZの原点Oを基準球面1aの中心Osの近傍に測定条件設定部52で設定する(ステップS2)。
【0118】
そして、第1断面31aにおける第1測定経路31bに沿って、制御装置111Gの制御下で、X軸ステージ112GとY軸ステージ113Gとをそれぞれ制御する事で、第1測定経路31b上のプローブ2の位置測定データを位置座標測定部50で取得するとともに傾き検出部106Gの出力データを取得する(ステップS3)。
【0119】
次に、第2断面32aにおいて前記第2測定経路32bに沿って、制御装置111Gの制御下で、X軸ステージ112GとY軸ステージ113Gとをそれぞれ制御する事で、第2測定経路32b上のプローブ2の位置測定データを位置座標測定部50で取得するとともに傾き検出部106Gの出力データを取得する(ステップS4)。
【0120】
次に、第2断面32aにおいて前記第2測定経路32bをステップS4の測定方向と相反する方向に、制御装置111Gの制御下で、X軸ステージ112GとY軸ステージ113Gとをそれぞれ制御する事で、プローブ2の位置測定データを位置座標測定部50で取得するとともに傾き検出部106Gの出力データを取得する(ステップS5A)。
【0121】
以上の手順で位置座標測定部50で取得した第1及び第2測定経路31a、32bの3種のプローブ2の位置測定データと傾き検出部106Gの出力データとを用いて、以降の処理により直角度誤差α、β、γとプローブ先端球21の半径Rと傾き検出部校正項目Gx、Gy、φとを演算部51で校正する。
【0122】
まず、演算部51において変数α、β、γ、R、Xo、Yo、Zo、Gx、Gy、φの初期値を設定する(ステップS5)。このとき、初期値の設定は、1回目の測定時にはα=β=γ=0、φ=0とし、Gx、Gy、Rは設計値を用いて校正する。2回目以降の測定時には前回校正した結果の変数α、β、γ、R、Gx、Gy、φを用いる事が好ましい。変数Xo、Yo、Zoの初期値については、常に、Xo=Yo=Zo=0とする。
【0123】
前記の変数を用いてプローブ先端球21の中心点21cの軌跡を表す補正データを演算部51で求め、その補正データと中心Os、半径Rの球とを演算部51で比較して測定誤差及びその二乗平均平方根(RMS)を演算部51で算出する(ステップS6)。
【0124】
前記RMSが、所定の値よりも小さいと演算部51で判断した場合、あるいは変数α、β、γ、R、Xo、Yo、Zo、Gx、Gy、φの値を変更してもRMSが小さくできないと演算部51で判断した場合には、その各変数の値が最適であると考えて最適化処理を演算部51で終了する(ステップS7)。
【0125】
前記RMSが最適でないと演算部51で判断した場合には、前述の調整方法に基づいてγ⇒β⇒α⇒Gx⇒Gy⇒Xo⇒Yo⇒Zo⇒R⇒φの順で変数を演算部51で決定する(ステップS8)。
【0126】
そして、演算部51で、更新したα、β、γ、R、Xo、Yo、Zo、Gx、Gy、φを改めて初期値として(ステップS9)、再度、ステップS6を演算部51で行う。もし、ステップS7においてRMSが収束したと演算部51で判断した場合には、変数α、β、γ、Gx、Gy、φが最適化されており、直角度誤差及び傾き検出部106Gの校正が完了する。
【0127】
次に、プローブ先端球21の中心点21cが通る軌跡の半径Rが前述の方法で最適化されるため、プローブ先端球21の半径Rを、R=R−R(凸面の場合)又はR=R−R(凹面の場合)により、演算部51で校正する(ステップS10)。
【0128】
以上の手順で校正された直角度誤差α、β、γとプローブ先端球の半径Rと傾き検出部106Gの校正項目Gx、Gy、φとを記憶部54に記憶する(ステップS11)。
【0129】
以上が本発明の第2実施形態における三次元測定機100Gの校正方法である。以後の100G測定において、前述の記憶部54に記憶した直角度誤差α、β、γとプローブ先端球21の半径Rと傾き検出部106Gの校正項目Gx、Gy、φとを適用する事が可能になる。
【0130】
前記第2実施形態によれば、形状が既知の基準球面1aの高さの異なる2つの断面を水平方向に測定して得られるプローブ先端球21の軌跡31b、32bを表す測定データを位置座標測定部50で取得するとともに傾き検出部106Gの出力データを取得する。そして、これらのデータ用いて、演算部51において直角度誤差の影響により楕円体の一部となる前記測定データを球の一部に変換するためのα、β、γを求めて直角度誤差を校正する。さらに、前記測定データの直角度誤差を補正したデータと傾き検出部106Gの出力データから換算して得られるスタイラス傾きデータとを用いて、プローブ先端球21の中心点の軌跡を表面に持つ球の半径を求める。そして、この半径から基準球面の半径を差し引く事でプローブ先端球の半径を校正することができる。すなわち、単一の基準球面1aを2本の測定経路31b、32bに沿って測定するだけで、直角度誤差α、β、γとプローブ先端球21の半径Rと傾き検出部106Gとを校正することができる。
【0131】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の三次元測定機の校正方法によれば、単一の基準球面上を倣い測定し、測定されたプローブ位置座標データからプローブ半径誤差の影響を排除した上で装置座標軸の直角度誤差を容易に高精度に求めることができる。また、本発明の校正方法においてプローブの軌跡データに含まれる直角度誤差を補正した球体状のデータの半径から、基準球面の半径を差し引く事によりプローブ先端球の半径を校正する事が可能である。
【符号の説明】
【0133】
1 基準球面を有する校正用被測定物
1a 基準球面
2 3次元形状測定機用プローブ
20 スタイラス
20Gb 測定点(接触点)
21 プローブ先端球
31a 第1断面(水平断面)
31b 第1測定経路
32a 第2断面(水平断面)
32b 第2測定経路
33 プローブ先端球中心の軌跡
50 位置座標測定部
50A 測定データ取得部
51 演算部
52 測定条件設定部
53 校正装置
54 記憶部
55 被測定物
55a 被測定物表面
71,73 測定データに対して直角度誤差を補正したデータ
72,74 補正データ71,73の中心
80G 測定点情報決定部
81,83 水平断面31a、32aでの測定データ
82,84 円形の軌跡31b,32bの中心
91,93 水平断面31a、32aでの補正データ
91G 反射ミラー
92,94 補正データ91,93の中心
100G 3次元形状測定機
101,103 水平断面31a、32aでの補正データ
101G レーザ光源
102,104 補正データ101,103の中心
105G ミラー
106G 傾き検出部(例えばフォトダイオード)
111,113 水平断面31a、32aでの補正データ
111G 制御装置
112,114 補正データ111,113の中心
112c 位置ずれ防止部
112G X軸ステージ
113G Y軸ステージ
114G Z軸ステージ
115G Z軸参照ミラー
116G ミラー
141、143 水平断面31a、32aでの補正データ
142、144 補正データ141、143の中心
300Gb 受光面におけるレーザのスポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の表面にプローブのスタイラスの先端の球を倣わせて前記表面の形状を測定する接触式三次元測定機の測定方法において、
単一の基準球面の異なる断面を水平方向に倣って前記プローブの軌跡を測定データとして測定データ取得部で取得し、
前記測定データを球の表面に座標変換する直角度誤差とその球の半径とを演算部で算出し、
前記球の半径から前記基準球面の半径を差し引く事により、前記座標変換で使用する座標軸の直角度誤差と前記プローブ先端球の半径とを演算部で校正する事を特徴とする三次元測定機の校正方法。
【請求項2】
さらに、測定時の前記プローブの前記スタイラスの傾きを傾き検出部で検出し、
前記演算部で、前記スタイラスの傾きに応じた前記プローブ先端球の変位量を算出して補正し、
前記傾き検出部の出力を前記スタイラスの傾きに換算する係数と、前記傾き検出部に含まれる取付角度誤差とを、前記基準球面に倣って測定されて前記測定データ取得部で取得された前記プローブの位置測定データと前記傾き検出部の出力データとから前記演算部で校正する事を特徴とする請求項1に記載の三次元測定機の校正方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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