説明

三次元点群計測方法、三次元点群計測プログラム

【課題】GPS測位演算によりFix解が得られている場合であっても、GPS衛星が元々有する測位誤差要因により測位精度の劣化が生じている。静止測量では長時間の静止によって平均的な解を求めることで精度の劣化を低減できるが、移動体測量では静止ができない、あるいは低速で走れないことが通常であるので、静止測量のように時間平均により精度劣化を抑えることができない。
【解決手段】同じ走行路を複数回走行し、各走行でのレーザ点群の結果において位置が変化しない固定物を基準点とし、基準点が重ね合わさるように点群を伸縮する。この際、位置精度の信頼度で重み付けを行い、その平均的な結果を真値として扱う。また、走行中は常にGPS衛星の状態が変化するので、一点で補正するのではなく一定間隔ごとに固定物を特定して、各走行ごとに位置補正量を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、レーザースキャナやカメラを搭載し、GPS(Global Positioning System)とジャイロ(IMU:Inertial Measurement Unit)とを組み合わせた移動体計測車両により収集した移動体計測車両周辺の三次元点群のデータを用いて、後処理により、精度の高い三次元点群データを生成する三次元点群計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両にレーザースキャナやカメラを搭載し、車両周辺の位置情報を収集する移動体計測車両が開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
航空機等にレーザースキャナを搭載し地上にある建物等の位置情報を取得する場合、位置の精度を向上させる方法として、GCP(Grand Control Point)を利用する方法が知られている。
GCPを利用する方法は、予め精密測量や基準点など既知の座標点を用い、計測したデータの対応する点を探し出し、そのずれ量を補正する方法である。ずれ量を補正する方法としては、単純な場合はある一定区画を区切って点群を平行移動させることで行い、より複雑な場合は台形変換等をすることにより行う(例えば、特許文献3参照)。
GCPを利用する手法ではGCP点が多いほど精度が高められるが、GCPポイントの計測には静止測量等を用いるため、時間と費用がかかるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/024212号パンフレット
【特許文献2】特開2010−175423号公報
【特許文献3】特開2006−189372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーザスキャナを搭載しGPSとジャイロを組み合わせた計測車両で収集した三次元点群データの位置を標定する場合、三次元点群データの標定位置精度は主に(1)GPSによる計測車両の位置精度、(2)IMUやGPSジャイロ等を用いて推定される計測車両の姿勢角精度、により決定される。
【0006】
(1)GPSによる計測車両の位置精度に関しては、計測車両に搭載したGPS受信機がGPS信号を受信し測位演算によりFix解が得られた場合であっても、GPSが元々有している測位誤差要因によって位置精度の劣化が生じる。静止測量の分野では、長時間静止した状態で計測しその時間平均的な解を求めることで、より高精度な測位結果を得ることが行われている。しかしながら移動体である計測車両による位置計測の場合は、静止測量の場合と異なり、静止した状態での計測ができない、あるいは低速で走ることができないため、高精度化に対して静止測量で行われている手法は適用できないという課題があった。
【0007】
また、(2)計測車両の姿勢角精度に関しては、GPSジャイロの計測が有効な場合、すなわち計測車両に搭載した複数のGPSアンテナにより車両の姿勢角が予測できる場合であっても、GPSジャイロが元々有する測位誤差要因によって姿勢角精度の劣化が生じる。静止測量であれば、長時間静止し時間平均することで測位精度を向上させることができるが、移動体測量の場合は静止ができない、あるいは低速で走れないことが通常であるため、高精度化に対して静止測量で行われている手法は適用できないという課題があった。
【0008】
この発明は係る課題を解決するためになされたもので、計測車両による移動体測量の場合であっても、後処理により、位置精度の高い三次元点群データを生成可能な三次元点群計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る三次元点群計測方法は、レーザースキャナと、GPS受信機と、姿勢角検出器を搭載した車両が走行中に収集したデータ群であって、前記レーザースキャナで走査されたレーザー光により計測された前記車両の周囲の地物までの距離と前記地物への方位とからなる距離方位データと、前記GPS受信機により取得された前記車両の位置データと、前記姿勢角検出器により取得された前記車両の姿勢角データと、前記距離方位データ、前記位置データ、前記姿勢角データの各データを取得した時の取得時刻とが関連付けされたデータ群を用いて、前記レーザー光が照射された前記地物の照射点からなる三次元点群の座標位置を計測する三次元点群計測方法であって、前記車両が同一の走行路を複数回走行して取得した走行毎のデータ群を用い、各々のデータ群の信頼度に基き前記データ群に重み付けして前記三次元点群の座標位置を算出する。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る三次元点群計測方法によれば、後処理により、三次元点群についての高精度な座標位置を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施の形態1に係る三次元点群計測方法を説明する図である。
【図2】実施の形態2に係る三次元点群計測方法を説明する図である。
【図3】実施の形態3に係る三次元点群計測方法を説明する図である。
【図4】実施の形態4に係る三次元点群計測方法を説明する図である。
【図5】実施の形態5に係る三次元点群計測方法を説明する図である。
【図6】実施の形態6に係る三次元点群計測方法を説明する図である。
【図7】実施の形態7に係る三次元点群計測方法を説明する図である。
【図8】実施の形態1〜7に係る計測車両の構成を説明する図である。
【図9】実施の形態1〜7に係る自己位置計測装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明に係る三次元点群計測方法は、以下で説明する実施の形態1〜7に記載された内容の少なくとも1つの方法を用いて三次元点群(三次元座標の点の集合)の位置を計測する。実施の形態1〜7に記載された計測方法のうち、いずれか1つの計測方法だけを実行してもよいし、複数の計測方法を併用して実行するようにしてもよい。
【0013】
図8は、本発明に係る実施の形態1〜7において、三次元点群のデータを収集する計測車両100の概略構成を示す図である。この計測車両100は特許文献2に記載された計測車両と機能が同様のものである。
図9は、後処理により、三次元点群の座標位置を高精度に計測する移動体自己位置計測装置(単に計測装置ともいう)200の構成を示す図である。
実施の形態1〜7では、特許文献2に記載の計測車両と同等の計測車両を用いて三次元点群のデータ収集を行い、特許文献2に記載された自己位置計測装置200に備えられた地物位置計測部213が、カメラ映像281に投影された三次元点群292に基づいてカメラ映像281に写っている地物(計測対象地域に位置している地物)の三次元点群の座標をCPUを用いて算出する。計測車両100や移動体自己位置計測装置200の構成の詳細については特許文献2に記載があり、ここではそれらの概略について説明する。
【0014】
図8の計測車両100は、計測対象地域を走行し、計測対象地域の例えば三次元地図を生成するために必要な各種データを取得する。
【0015】
計測車両100は、天板に計測ユニット110が取り付けられている。また、計測車両100はユニット記憶部190(記憶装置)を備える。
計測ユニット110は、前方用カメラ111、路面用カメラ112、GPS113、上面用レーザースキャナ114、下面用レーザースキャナ115、IMU116および配線中継BOX117を備える。
【0016】
前方用カメラ111は、水平に取り付けられ、計測車両100の前方を撮像する。路面用カメラ112は、斜め下方に向けて取り付けられ、路面を撮像する。
【0017】
GPS113は、3か所に設置される。各GPS113は、GPS衛星から発信された測位信号(衛星軌道情報などを示す)を受信し、受信結果(GPS観測値)に基づいてGPS測位を行う装置である。
【0018】
上面用レーザースキャナ114は、斜め上方に向けて取り付けられ、計測ユニット110より高い場所に位置する地物(例えば、道路標識)を対象に距離方位の計測を行う。
下面用レーザースキャナ115は、斜め下方に向けて取り付けられ、計測ユニット110より低い場所に位置する地物(例えば、路面)を対象に距離方位の計測を行う。
距離方位とは、上面用レーザースキャナ114または下面用レーザースキャナ115から地物までの距離および方位を意味する。
距離方位の計測において、上面用レーザースキャナ114と下面用レーザースキャナ115とは、左右に首降りしながら左真横から前方および前方から右真横の180度の方向にレーザーを順次出射し、出射したレーザーが地物で反射して戻ってくるまでの時間を計測する。上面用レーザースキャナ114と下面用レーザースキャナ115とは、計測した時間に基づいてレーザーを反射した地物との距離を算出し、算出した距離とレーザーの出射方向とを地物の距離方位とする。
レーザースキャナは、LRF(Laser Range Finder)ともいう。
【0019】
IMU116(IMU:慣性航法装置)は、3軸方向(x、y、z)の角速度を計測する。例えば、IMU116としてジャイロが用いられる。
【0020】
上記の各機器は取得したデータを取得時刻(計測時刻)と共に配線中継BOX117に出力する。
【0021】
図9において、取得データ記憶部280は、計測車両100により取得された各データを記憶媒体を用いて記憶する記憶装置である。記憶部280には配線中継BOX117に出力されたデータが格納される。
計測データ記憶部290は、車両位置姿勢291、三次元点群292および地物位置293を記憶媒体を用いて記憶する記憶装置である。
地物位置計測部213は、カメラ映像281に投影された三次元点群292に基づいて、カメラ映像281に写っている地物(計測対象地域に位置している地物)の三次元座標(座標位置)をCPUを用いて算出する。
【0022】
以下の実施の形態1〜7では、地物位置計測部213が実行する三次元点群の座標位置の計測方法について説明する。
【0023】
実施の形態1.
実施の形態1に係る三次元点群計測方法は、計測対象となる道路を複数回走行し、走行毎に各種データを収集する。そして、走行毎の三次元点群の計測結果を平均処理するなどにより計測精度の向上を図る。あるいは、走行毎の測位情報の信頼度に応じて重み付けをした座標位置を算出することで、計測精度の向上を図る。
【0024】
図1は、実施の形態1に係る三次元点群計測方法の計測方法を説明する図である。
計測車両100は同じ走行路(例えば、位置A〜位置Bの間)を複数回走行する。走行する方向は同一方向(位置Aから位置Bに向かう方向)であってもよいし、逆の方向(位置Bから位置Aに向かう方向)であってもよい。
【0025】
レーザスキャナ114、115が複数回の走行で収集したレーザ点群(三次元点群292)において、位置が変化しない固定物に対応した三次元点群のデータを抽出する。
【0026】
位置が変化しない固定物の例としては、電柱や信号機、建物等が挙げられる。一方、位置が変化するものの例としては、車両や人、自転車等が挙げられる。ここでは、位置が変化しない固定物に対応する三次元点群のデータを抽出する。
次に、複数回の走行により取得された三次元点群のデータで、位置が変化しない固定物に対応する三次元点群の座標位置を、各回の走行ごとに算出する。各回の走行で算出された固定物の座標位置を用いて平均処理を行うなどして、その結果を固定物に対応する三次元点群の真の座標位置とみなす。
【0027】
図1に記載した例では、1度目の走行で、計測車両が位置Aにいるときに取得した三次元点群の中から位置が変化しない固定物(例えば電柱)を抽出し、抽出した固定物に対応する三次元点群の座標位置を求める。
また、1度目の走行で、計測車両が位置Bにいるときに取得した三次元点群の中から位置が変化しない固定物(例えば信号機)を抽出し、抽出した固定物に対応する三次元点群の座標位置を求める。
2度目の走行でも同様にして、計測車両が位置Aにいるときに取得した三次元点群の中から一度目の時と同一の固定物(電柱)を抽出し、抽出した固定物に対応する三次元点群の座標位置を求める。また、計測車両が位置Bにいるときに取得した三次元点群の中から一度目の時と同一の固定物(信号機)を抽出し、抽出した固定物に対応する三次元点群の座標位置を求める。
【0028】
1度目の走行と2度目の走行で取得した共通の固定物(電柱、信号機)の座標位置のデータを用い、これらのデータの平均処理を行うなどして、その結果を位置Aでの固定物(電柱)の真の座標位置とみなし、また位置Bでの固定物(信号機)の真の座標位置とみなす。
真の座標位置との差分をとることにより1度目の走行における位置Aでの補正量と位置Bでの補正量が求められる。同様にして、2度目の走行における位置Aでの補正量と位置Bでの補正量が求められる。
【0029】
このようにして1度目の走行で取得した座標位置のデータについて2点(電柱と信号機)の補正量が算出されたため、この2点の補正量に基いて補正量を比例配分することにより、1度目の走行で取得した三次元点群の座標位置のデータの全体を補正することができる。
同様にして、2度目の走行で取得した三次元点群の座標位置のデータの全体を補正することができる。
このように、変化しない固定物(電柱、信号機)が重ね合わさるように各走行で計測したレーザ点群を伸縮して、三次元点群の座標位置のデータの全体を補正することができる。
【0030】
このようにして補正した1度目走行による座標位置のデータと、2度目の走行による座標位置のデータを用いて平均処理を行うことにより、計測車両100が位置A〜位置Bの間を走行して取得した三次元点群の座標位置を、より精度の高いデータにすることができる。
【0031】
図1では、同じ走行路を2度走行して各種データを収集した例を説明しているが、3度以上(n度(n=3、4、・・・))走行した場合も同様にして、変化しない固定物が重ね合わさるように各走行で計測したレーザ点群を伸縮することで、三次元点群の座標位置を補正できる。
【0032】
なお、1度目の走行と2度目の走行で取得したデータの信頼度が異なる場合は、各々のデータに重み付けをして、最終的な三次元点群の座標位置を算出するようにしてもよい。
例えば1度目の走行結果の信頼度が低く、2度目の走行結果の信頼度が高い場合は、2度目の走行結果に重み付けをして、最終的な三次元点群の座標位置を算出するようにしてもよい。
【0033】
データの信頼度については、例えばGPS信号を用いた測位演算により演算結果がFixした場合であっても、測位演算に用いたGPS衛星数が多かったり、DOPが少ないことにより位置計測の結果の信頼性は変化する。そこで、DOPの結果にしたがって信頼性の高低を求め、位置精度の信頼度で重み付けを行い、その平均的な結果を真値として扱うようにしてもよい。
【0034】
このように、実施の形態1に係る三次元点群計測方法では、測定車両の走行中に常に衛星の状態が変化するため、1つの固定物を基準として補正するのではなく、一定間隔ごとに位置が変化しない固定物を特定して、各走行ごとの位置補正量を決定する。
【0035】
そして、GPSによる位置計測で元々発生し得る誤差を平均化することによってGPSの測位誤差を減少させ、全体の測位精度を向上することができる。すなわち、一度のGPS計測ではその計測ごとに誤差が生じるのに対して、複数回の走行結果を平均化することによって誤差を減少させ、より高精度な計測結果を得ることができる。
【0036】
実施の形態2.
実施の形態1では、同じ走行路を複数回走行することで誤差の減少を図ったが、実施の形態2では計測に使用する電子基準点を複数選択し、各々の電子基準点のデータに基き移動体の位置計測を行う。
【0037】
図2は、実施の形態2に係る三次元点群計測方法を説明する図である。
具体的には、近傍に複数の電子基準点がある場合、複数の電子基準点を用いて各電子基準点について移動体位置計測の後処理演算を行う。そして、電子基準点毎に得られた位置計測の結果を平均化して、平均後の結果を真の値とみなす。
図2の例では、計測エリアの近傍に3つの電子基準点があり、電子基準点1のデータを用いて取得した測位解(基準点1の測位解)、電子基準点2のデータを用いて取得した測位解(基準点2の測位解)、電子基準点3のデータを用いて取得した測位解(基準点3の測位解)が各々算出される。そして、基準点1の測位解と、基準点2の測位解と、基準点3の測位解を平均処理することで、最終の三次元点群の座標位置を取得する。
【0038】
GPSによる位置計測は電子基準点に起因する誤差を持っているが、実施の形態2に係る三次元点群計測方法では、複数の電子基準点を用いて演算し平均化することにより、電子基準点に起因する誤差を減少させることができる。
【0039】
実施の形態3.
実施の形態2では、近傍にある複数の電子基準点を利用して得られた測位結果につき、その平均をとるようにしたが、実施の形態3では、計測対象となる経路(位置A〜位置Bの経路)の近傍に新たに静止の私設測定局を設置し、新たに設置した静止の測定局の測位結果の経時変動に応じて、計測車両による三次元点群の座標位置を補正する。
【0040】
図3(a)、(b)は、実施の形態3に係る3次元点群計測方法を説明する図である。
図3(a)は計測車両による3次元点群の計測結果(測値)と、補正後の計測結果(補正値)を時間ごとに示した図である。図3(b)は、新たに設置した静止の私設測定局で静止計測した計測結果(測値)であり、予め真の位置(真値)が判っている電柱などの固定物の計測結果(測値)を時間ごとに示した図である。
【0041】
図3(b)のように、予め正確な位置(真値)が判っている静止点における静止測量を、計測車両による計測と同時間帯に行い、静止測量における各時刻(時刻T=T1、T2、・・・、T6)における計測結果(測値)と真値の差から、補正値(真値と測値の差)31〜36を算出する。
【0042】
次に、各時刻ごとに算出した補正値31〜36の分だけ、計測車両による同時刻の計測結果(測値)に補正することにより、計測車両による三次元点群の計測結果を補正する。
【0043】
このように実施の形態3に係る三次元点群計測方法は、静止の私設測定局を移動する計測車両の近傍に設けるようにした。そして、同時刻に発生する静止の私設測定局による測量誤差と計測車両による計測誤差の発生要因が同一であるとして、計測車両による計測結果から、静止の施設測定局による同時刻の測量誤差の分を補正するようにした。
実施の形態3に係る三次元点群計測方法によれば、計測車両を用いた三次元点群の計測誤差を低減することができる。
【0044】
なお、近傍に設けた静止の私設測定局は計測車両と共通の衛星を受信し、また電離層等の影響も同様であると考えらるため、全ての計測点につき補正を行うことが可能である。
【0045】
実施の形態4.
実施の形態3では、計測車両の近傍に新たに静止の私設測定局を設置し、得られた測位結果に基き計測車両による三次元点群の座標位置の補正を行うようにした。実施の形態4では、時間ごとに受信状況が変化するGPS衛星群において共通のGPS衛星だけを用いて3次元点群計測を行うようにする。
【0046】
GPS信号を受信して測位解または方位角を演算する場合、計測車両(移動体)の走行時には、位置計測に必要とされる衛星数よりも、より多くの数のGPS衛星を捉えられている場合がある。例えば、位置計測に最低必要とされる衛星数が5である場合に、計測車両(移動体)が8以上の衛星を捉えているような場合がある。
【0047】
図4は、実施の形態4に係る三次元点群計測方法を説明する図である。一般に、計測車両(移動体)の走行時には、計測車両が搭載するGPS受信機が捉えるGPS衛星の数は変化する。例えば図4(a)に示すように、GPS受信機が電波を捉えたGPS衛星の数(確保衛星数)は、5機、6機、7機、6機、・・・と経時変化する。
一般に、測位演算に用いるGPS衛星が変わると測位演算の結果が変動し、三次元点群計測の誤差要因となる。図4(b)は、電波を受信した衛星と受信した電波による測位結果を模式的に示したものである。このように、測位結果は、測位演算に用いる衛星によっても変化する。
【0048】
そこで、実施の形態4に係る三次元点群計測方法では、測位演算を行う際に共通のGPS衛星のみを用いて演算を行うようにする。すなわち、計測車両が移動しながら各種データを取得している時間内で、連続してGPS衛星からの電波を捉えているGPS衛星のみを用いるようにする。図4(a)で示した各衛星の受信状況の例では、GPS衛星A、C、F、G、Hからの電波が計測中に常時受信可能であるため、図4(c)に示すように、GPS衛星A、C、F、G、Hからの電波のみを用いて測位結果を得るようにする。
これにより、測位演算に用いるGPS衛星数の増減による位置の変動(変化)を低減することができる。
【0049】
実施の形態5.
実施の形態4では共通のGPS衛星を用いて三次元点群の計測を行うようにした。実施の形態5では、2周波GPSをGPSジャイロに搭載することで測位演算の誤差を低減させる。
【0050】
図5は、計測車両の天板に設置されたGPSアンテナの位置関係を説明する図である。 図5において、計測車両の天板に設置された3つのGPSアンテナ(GPS1〜GPS3)の位置関係は事前に計測されており既知とする。なお、GPSアンテナ1〜3はいずれも2周波GPSアンテナであるとする。
【0051】
次に、図5のGPS2、GPS3の測位結果を既知の位置関係に基きGPS1の位置に移動させる。GPS2、GPS3の測位結果をGPS1の位置に移動させたとき、測位誤差分だけGPS1の位置から外れて一致しないことになる。
このGPS2、GPS3の測位結果を既知の位置関係に基きGPS1の位置に移動させる動作を繰返し行い、GPS1の位置からのずれ量を平均化することで誤差を求めることができる。
【0052】
このように、実施の形態5に係る三次元点群計測方法は、複数の2周波受信機をGPSジャイロに搭載する。GPSジャイロでは元々、GPSアンテナ間の距離は精密に計測されているので、複数の2周波受信機の測位結果を原点に位置補正して、平均化することにより、時間平均と類似の効果を得ることができる。
【0053】
実施の形態6.
実施の形態5では複数の2周波GPSをGPSジャイロに搭載することで測位演算の誤差を低減させるようにした。実施の形態6では、一定距離を走行する毎に車両を一定時間静止させて静止測量を行い、GCSポイントとして代用することで位置精度を向上させる。
【0054】
図6は、実施の形態6に係る三次元点群計測方法を説明する図である。実施の形態6では、一定距離ごとに車両を一定時間静止させ、静止状態で所定の時間、三次元点群の計測を行う。そして、計測結果の時間平均をとる(図6(a)参照)。平均化されたポイントを、例えばGCP(Grand Control Point)ポイントとして代用する(図6(b)参照)。
【0055】
一般に、計測車両であっても、移動をせず計測車両を静止させて静止状態で測量を行うことで、加算平均による位置精度の向上が可能となる。このことは、測位に関しても姿勢においても同様である。静止している時間分だけ加算平均することで、GPSによる静止測量と同様に位置精度を向上させることができる。このように、車両を静止させ平均の位置姿勢から得たレーザ点の3次元データは、走行時のデータよりも精度が高いと考えられる。
【0056】
このように、実施の形態6に係る三次元点群計測方法によれば、予めGCPを用意することなく、時間平均処理したレーザ点をGCPとして用いることによって、三次元点群の位置精度を向上させることができる。
【0057】
実施の形態7.
実施の形態7では、通常は3つのGPSアンテナで構成されるGPSジャイロをより多くのアンテナで構成する。
【0058】
図7は、計測車両の上面に配置されたGPSアンテナの一例を示したもので、実施の形態7に係る三次元点群計測方法を説明する図である。
図7では、4つのGPSアンテナ(GPS1〜GPS4)が車両天板上に搭載されている。この場合のGPSジャイロの構成としては、(1)GPS1−GPS2−GPS3の組合せ(組合せ1)、(2)GPS1−GPS2−GPS4の組合せ(組合せ2)、(3)GPS1−GPS3−GPS4の組合せ(組合せ3)、(4)GPS2−GPS3−GPS4の組合せ(組合せ4)の4つの3角形が構成できる。各々の3角形により姿勢角を計算しその平均的な値を用いて姿勢角を算出することにより、一つのGPSジャイロでの姿勢角結果と比較して、精度を向上させることができる。
【0059】
このように、GPSアンテナを2個以上搭載して位置だけでなく姿勢を計測するのがGPSジャイロの考え方であるが、GPSアンテナを3個搭載すれば、ヨー角(Yaw)、ロール角(Roll)、ピッチ角(Pitch)の3つの姿勢角を計測できる。更に、GPSアンテナを4個搭載すれば3角形が4個形成できる。5個搭載すれば10個の3角形が形成できる。これらの三角形を用いてそれぞれ姿勢角を計算しその平均等を用いて姿勢角予測を行うことによって、時間平均と同様の平均効果を得ることができる。
【0060】
なお、実施の形態1〜7では測位衛星としてGPS衛星を用いて説明したが、GPS衛星は一例でありGLONASSやガリレオなどの衛星であっても本発明は同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0061】
1、2、3、4 GPSアンテナ、31〜36 実施の形態3における各補正量、100 計測車両、111、112 カメラ、113 GPSアンテナ、114、115 レーザースキャナ、116 IMU、200 移動体自己位置計測装置、213 地物位置計測部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザースキャナと、GPS受信機と、姿勢角検出器を搭載した車両が走行中に収集したデータ群であって、前記レーザースキャナで走査されたレーザー光により計測された前記車両の周囲の地物までの距離と前記地物への方位とからなる距離方位データと、前記GPS受信機により取得された前記車両の位置データと、前記姿勢角検出器により取得された前記車両の姿勢角データと、前記距離方位データ、前記位置データ、前記姿勢角データの各データを取得した時の取得時刻とが関連付けされたデータ群を用いて、前記レーザー光が照射された前記地物の照射点からなる三次元点群の座標位置を計測する三次元点群計測方法であって、
前記車両が同一の走行路を複数回走行して取得した走行毎のデータ群を用い、各々のデータ群の信頼度に基き前記データ群に重み付けして前記三次元点群の座標位置を算出することを特徴とする三次元点群計測方法。
【請求項2】
レーザースキャナと、GPS受信機と、姿勢角検出器を搭載した車両が走行中に収集したデータ群であって、前記レーザースキャナで走査されたレーザー光により計測された前記車両の周囲の地物までの距離と前記地物への方位とからなる距離方位データと、前記GPS受信機により取得された前記車両の位置データと、前記姿勢角検出器により取得された前記車両の姿勢角データと、前記距離方位データ、前記位置データ、前記姿勢角データの各データを取得した時の取得時刻とが関連付けされたデータ群を用いて、前記レーザー光が照射された前記地物の照射点からなる三次元点群の座標位置を計測する三次元点群計測方法であって、
前記GPS受信機は、GPS衛星から測位信号を受信すると共に、所定の間隔で地上に設置された複数の基準局から各々配信される補正情報を受信し、
各々の基準局から配信された補正情報に基いてそれぞれ計測された三次元点群の座標位置を用いて、前記三次元点群の座標位置を算出することを特徴とする三次元点群計測方法。
【請求項3】
レーザースキャナと、GPS受信機と、姿勢角検出器を搭載した車両が走行中に収集したデータ群であって、前記レーザースキャナで走査されたレーザー光により計測された前記車両の周囲の地物までの距離と前記地物への方位とからなる距離方位データと、前記GPS受信機により取得された前記車両の位置データと、前記姿勢角検出器により取得された前記車両の姿勢角データと、前記距離方位データ、前記位置データ、前記姿勢角データの各データを取得した時の取得時刻とが関連付けされたデータ群を用いて、前記レーザー光が照射された前記地物の照射点からなる三次元点群の座標位置を計測する三次元点群計測方法であって、
前記車両が走行するエリアの近傍に設けられた静止の測定局が計測した前記測定局の計測結果の経時変化に基き、前記三次元点群の座標位置を補正することを特徴とする三次元点群計測方法。
【請求項4】
レーザースキャナと、GPS受信機と、姿勢角検出器を搭載した車両が走行中に収集したデータ群であって、前記レーザースキャナで走査されたレーザー光により計測された前記車両の周囲の地物までの距離と前記地物への方位とからなる距離方位データと、前記GPS受信機により取得された前記車両の位置データと、前記姿勢角検出器により取得された前記車両の姿勢角データと、前記距離方位データ、前記位置データ、前記姿勢角データの各データを取得した時の取得時刻とが関連付けされたデータ群を用いて、前記レーザー光が照射された前記地物の照射点からなる三次元点群の座標位置を計測する三次元点群計測方法であって、
三次元点群の計測開示から計測終了までの間に前記GPS受信機が受信した測位信号のうち同一のGPS衛星からの測位信号のみを用いて、前記三次元点群の座標位置を計測することを特徴とする三次元点群計測方法。
【請求項5】
レーザースキャナと、GPS受信機と、姿勢角検出器を搭載した車両が走行中に収集したデータ群であって、前記レーザースキャナで走査されたレーザー光により計測された前記車両の周囲の地物までの距離と前記地物への方位とからなる距離方位データと、前記GPS受信機により取得された前記車両の位置データと、前記姿勢角検出器により取得された前記車両の姿勢角データと、前記距離方位データ、前記位置データ、前記姿勢角データの各データを取得した時の取得時刻とが関連付けされたデータ群を用いて、前記レーザー光が照射された前記地物の照射点からなる三次元点群の座標位置を計測する三次元点群計測方法であって、
前記車両が一旦停止して、停止した状態で静止測量した前記車両の位置をGCP(Grand Control Point)ポイントとして用いて、前記三次元点群の座標位置を計測することを特徴とする三次元点群計測方法。
【請求項6】
レーザースキャナと、GPS受信機と、姿勢角検出器を搭載した車両が走行中に収集したデータ群であって、前記レーザースキャナで走査されたレーザー光により計測された前記車両の周囲の地物までの距離と前記地物への方位とからなる距離方位データと、前記GPS受信機により取得された前記車両の位置データと、前記姿勢角検出器により取得された前記車両の姿勢角データと、前記距離方位データ、前記位置データ、前記姿勢角データの各データを取得した時の取得時刻とが関連付けされたデータ群を用いて、前記レーザー光が照射された前記地物の照射点からなる三次元点群の座標位置を計測する三次元点群計測方法であって、
前記姿勢角検出器はGPSジャイロであって、4個以上のGPSアンテナから抽出した3個のGPSアンテナの組合せで各々算出される前記車両の姿勢角データを用いて、前記三次元点群の座標位置を計測することを特徴とする三次元点群計測方法。
【請求項7】
前記請求項1〜6のいずれか記載の三次元点群計測方法により前記三次元点群の座標位置を計測することを特徴とする三次元点群計測プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−40886(P2013−40886A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179282(P2011−179282)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】