説明

三次元画像表示装置および画像処理装置

【課題】帯状の妨害画像を抑制するとともに、視域からサイドローブへの遷移する領域、またはその逆に遷移する領域で観察される画像の違和感を低減し、かつ、観察される領域を狭くすることを可能にする。
【解決手段】本実施形態の三次元画像表示装置は、マトリクス状に配列された画素を有する平面表示装置と、平面表示装置に対向して配置され、動作の際に複数の射出瞳によって画素からの光線を制御可能な光線制御素子と、複数の射出瞳それぞれに対して対応付けられた、平面表示装置の複数の画素を含む複数の画素グループの視差情報を読み出すとともに、複数の画素グループの境界に隣接する2つの画素を特定し、特定された2つ画素のうちいずれか一方を第1の画素とし、もう一方を第2の画素とする特定部と、特定された第1の画素の視差情報に前記第2の画素の視差情報を混在させる処理を行う処理部と、処理部によって処理された視差情報を三次元画像表示用の画像に変換する変換部と、を備え、平面表示装置は、三次元画像用の画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、三次元画像表示装置および画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
めがね無しで三次元画像を観察できる裸眼式三次元画像表示装置(以下、三次元画像表示装置ともいう)として、多眼式、稠密多眼式、インテグラルイメージング方式(II方式)、一次元II方式(1D−II方式:水平方向にのみ視差情報(視差画像の画素値)を表示)等が知られている。これらは、液晶表示装置(LCD)に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)の前面に、レンズアレイに代表される射出瞳を配するという共通の構造を持つ。射出瞳は一定間隔で設けられ、射出瞳ひとつに対して、複数のFPDの画素が割り当てられるが、本明細書中では、このひとつの射出瞳に割り当てられた複数の画素を画素グループと称する。射出瞳は三次元画像表示装置の画素に相当し、観察位置に応じて射出瞳を経由して見える画素が切り替わる。すなわち、観察位置によって画素情報が変わる三次元画像表示用画素として振舞う。
【0003】
このような構成の三次元画像表示装置においては、FPDの画素が有限なため画素グループを構成する画素数にも制限がある。例えば、一方向について2画素〜64画素であり、2画素の場合、特に二眼式と呼ぶ。このため、三次元画像が観察できる範囲(視域)が制限されることが避けられない。また、観察者が視域から左右に逸脱すると、本来の射出瞳に隣接した射出瞳に対応した画素グループの視差画像を観察することが避けられない。このとき観察者が観察する光線は、本来の射出瞳に隣接した射出瞳を経由した光線による三次元画像であることから、光線方向と視差情報が一致せず、歪を含む。しかしながら、観察位置の移動に応じて視差画像が切り替わることから、この場合も三次元画像として見える。各視差画像は、視距離Lに発生した集光点の位置から、表示面を投影面として撮影した多視点画像に相当する。このため、上記歪を含んだ三次元映像(偽像)が見える領域をサイドローブと呼ぶ場合もある。
【0004】
また、各射出瞳に割り当てられた画素グループの画素数を調整することで、三次元画像表示装置の視域を制御する方法が知られている。この方法は、nを2以上の自然数としたときに画素グループを構成する画素数をnと(n+1)との2値とし、(n+1)個の画素を有する画素グループの出現頻度を制御する。
【0005】
しかしながら、正しい視域からサイドローブに遷移する領域では、画素グループの境界の両側の視差画像を視差の並びが逆転した状態で見ることになるために、逆視と呼ばれる現象が発生し、凹凸が逆転した像が観察されたり、画素グループの境界の両側の視差画像を同時に見ることで、本来異なる視点で見るべき映像が多重に重なって見える多重像が生じることが知られている。
【0006】
多眼式の三次元画像表示装置では、このような偽像の対策方法の一つとして、視域境界に対応する視差画像を過度に平滑化した、ぼかし画像に置き換えることにより、偽像を視認しにくくする手法が知られている。
【0007】
また、偽像に由来する上記のような問題に対する対策の一つとして、例えば視域からサイドローブに遷移する領域でなんらかの警告画像を知覚できるように表示することで、違和感を減らすことはできなくても、サイドローブが正しい画像でないことを観察者に伝えるという手法が知られている。
【0008】
また、視域を制御する上記方法を用いた場合には、上記のような問題以外に帯状の妨害画像が発生することが知られている。この対策として、(n+1)個の画素を有する画素グループの両端の画素の視差情報のうち画面中央から左か右かによって決定される片側の画素を選択し、その画素の視差情報に対して、その画素に隣接する画素方向にn個だけ離れた2つ以上の画素の視差情報を混在させることで帯状の妨害画像を抑制するという手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3892808号公報
【特許文献2】特開2008−67092号公報
【特許文献3】特開2009−239665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、帯状の妨害画像を抑制するとともに、視域からサイドローブへの遷移する領域、またはその逆に遷移する領域で、観察される画像が自然かつ迅速に移行することのできる三次元画像表示装置および画像処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本実施形態の三次元画像表示装置は、マトリクス状に配列された画素を有する平面表示装置と、前記平面表示装置に対向して配置され、動作の際に複数の射出瞳によって前記画素からの光線を制御可能な光線制御素子と、前記複数の射出瞳それぞれに対して対応付けられた、前記平面表示装置の複数の画素を含む複数の画素グループの視差情報を読み出すとともに、前記複数の画素グループの境界に隣接する2つの画素を特定し、特定された2つ画素のうちいずれか一方を第1の画素とし、もう一方を第2の画素とする特定部と、特定された前記第1の画素の視差情報に前記第2の画素の視差情報を混在させる処理を行う処理部と、前記処理部によって処理された視差情報を三次元画像表示用の画像に変換する変換部と、を備え、前記平面表示装置は、前記三次元画像用の画像を表示することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(a)乃至1(d)は裸眼式三次元画像表示装置を説明する図。
【図2】図2(a)、2(b)は多眼式三次元画像表示装置を説明する図。
【図3】図3(a)乃至3(j)は、観察位置と、この位置から観察した三次元画像表示装置の表示面を構成する視差情報を示す図。
【図4】多眼式三次元画像表示装置を説明する図。
【図5】II方式三次元画像表示装置を説明する図。
【図6】図6(a)、6(b)は視域最適化が適用されたII方式三次元画像表示装置を説明する図。
【図7】図7(a)乃至7(j)は、II方式において射出瞳を経由して観察される視差情報について説明する図。
【図8】多眼式とII方式における観察距離と視差画像番号の切り替わりの頻度を示す図。
【図9】II方式における視差画像と視域境界を表すデータ空間を示す図。
【図10】II方式における視差画像と視域境界を表すデータ空間を示す図。
【図11】図11(a)、11(b)は第1実施形態による三次元画像表示装置に用いられる画像処理方法を説明する図。
【図12】第1実施形態の実施例1による三次元画像表示装置を示すブロック図。
【図13】第1実施形態の実施例1の画像処理手順を示すフローチャート。
【図14】第2実施形態の実施例2による三次元画像表示装置を示すブロック図。
【図15】第2実施形態の実施例2の画像処理手順を示すフローチャート。
【図16】実施例2の第1変形例による三次元画像表示装置を示すブロック図。
【図17】実施例2の第1変形例の画像処理手順を示すフローチャート。
【図18】実施例2の第2変形例による三次元画像表示装置を示すブロック図。
【図19】実施例2の第2変形例の画像処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態を説明する前に、II方式と多眼式との差および視域最適化について説明する。説明を簡単にするため、主に一次元について説明するが、二次元に適用が可能である。なお、以下の説明における上下左右縦横等の方向の説明は、下記の射出瞳のピッチ方向を横方向とした場合の相対的な方向を指す。従って、実空間における重力方向を下とした場合の、絶対的な上下左右縦横等とは必ずしも一致しない。
【0014】
三次元画像表示装置の水平断面図を図1(a)に示す。三次元画像表示装置は、平面表示装置10と、光線制御素子20とを備えている。平面表示装置10は、例えば、液晶表示パネルのように、画素が縦方向および横方向にマトリクス状に配列された平面画像表示部(表示パネル)を有している。光線制御素子20は、複数の射出瞳20〜20を有しており、上記画素からの光線を制御する。各射出瞳20(i=0,・・・,8)は、例えば、レンズまたはスリットを用いて構成される。ひとつの射出瞳に割り当てられた、平面画像表示部の複数の画素を画素グループという。この画素グループは三次元画像表示装置においては、三次元画像の画素となるから、図1(a)においては、8個の画素グループがあるから8個の三次元画像が見られる。
【0015】
図1(a)は、各射出瞳20(i=0,・・・,8)と、この射出瞳に対応する画素グループ15との位置関係を示す水平断面図である。各射出瞳20(i=0,・・・,8)から有限の距離Lで全射出瞳、すなわち光線制御素子20からの光線群が重畳するためには、Aを射出瞳のピッチ、Bを射出瞳ひとつに対応した画素グループの平均幅とし、光線制御素子20と、平面表示装置10との間の距離(ギャップ)をgとしたときに、
A=B×L/(L+g) ・・・(1)
を満たせばよい。
【0016】
二眼式の延長である多眼式や稠密多眼式においては、光線制御素子20から有限の距離Lの位置で、全ての射出瞳から射出した光線群が同一の領域に入射するように設計される。具体的には、全の画素グループのそれぞれが一定数(n(≧2)個)の画素から構成され、射出瞳のピッチAを画素グループの幅Bより若干狭くする。画素ピッチをPpとすると、
B=n×Pp ・・・(2)
(1)、(2)式より
A=B×L/(L+g)=(n×Pp)×L/(L+g) ・・・(3)
と設計される。このLを本明細書では視域最適化距離と称する。また、(3)式の設計を採用している方式を多眼式と称する。ところが、この多眼式では、距離Lで集光点が発生することが避けられず、自然な物体からの光線を再生できない。これは、多眼式は集光点に両眼を位置させ、両眼視差により立体視させるからである。また、三次元画像が見える範囲が広くなる距離Lが固定になる。
【0017】
より実際の物体からの光線に近い光線を再現することを目的に、観察距離で集光点を発生させずに、かつ観察距離を任意に制御する方法として、射出瞳のピッチAを、
A=n×Pp ・・・(4)
と設計する方法がある。
【0018】
一方、有限の距離Lで画素グループを構成する画素数を、nと(n+1)の2値とし、(n+1)個の画素を有する画素グループの発生頻度m(0≦m<1)を調節することで、(1)式を満たすことが可能である。すなわち(1)、(4)式より、
B=(L+g)/L×(n×Pp)=(n×Pp×(1−m)+(n+1)×Pp×m)
すなわち
(L+g)/L=(1−m)+(n+1)/n×m ・・・(5)
を満たすようにmを決めればよい。(3)、(4)式より、観察距離Lより集光点を後方にするためには、射出瞳のピッチAを
(n×Pp)×L/(L+g)<A≦n×Pp ・・・(6)
となるように設計すればよい。このように観察距離Lで集光点が発生することを防いだ方式を、本明細書中ではII方式と総称する。その最たる構成が、集光点を無限遠に設定した(4)式である。
【0019】
観察距離Lより後方で集光点が発生するII方式では、各画素グループを構成する画素数をnに固定すると、視域最適化距離が視距離Lより後方になる。このため、II方式では、画素グループを構成する画素数をnと(n+1)の2値にし、その画素グループの幅の平均値Bが(1)式を満たすように構成することで、有限の観察距離Lで視域を最大に確保することができる。以下、本明細書では、有限の観察距離Lで視域を最大にすることを視域最適化を適用すると云う。
【0020】
図1(b)、1(c)、1(d)に、視距離Lにおける各観察位置での三次元画像の見え方の水平断面図を模式的に示している。図1(b)は観察距離Lの右端の領域から見える画像、図1(c)は観察距離Lの中央の領域から見える画像、図1(d)は観察距離Lの左端の領域から見える画像を示す。以下、観察位置という表現がしばしば出てくるが、現象を簡単に記述するために、位置を一点として記載する。この点は単眼での観察や単一のカメラで撮影した状態に相当する。人が両眼で観察した場合については、両眼の間隔に設定された二点から、両眼の間隔における位置の相違に相当した視差のある画像を観察していると理解すればよい。多眼式とII方式では、視差画像の見え方が異なる。これについて以下に説明する。
【0021】
(多眼式)
比較のためにまず多眼式について説明する。これまで説明したように、多眼式では、視域最適化距離Lで集光点が発生する。図2(a)、2(b)に、9視差の場合の多眼式三次元画像表示装置の水平断面を示す。図2(a)は視差画像番号が付けられた画素グループを示し、図2(b)は観察距離Lの位置から各射出瞳に引かれた光線の、画素グループにおける入射位置を示している。図2(a)に示すように、全射出瞳ひとつに対応する画素グループ(G_0)に含まれる画素の数は9個であり、各画素には−4から4まで番号付けされた視差画像が表示される。右端の視差画像番号4の画素から射出瞳20を経由した光線は、距離Lで集光する。逆の面から言えば、視域最適化距離Lから観察すると、画素グループ(G_0)を構成する画素のうち同一視差画像番号の視差画像を表示した画素が全射出瞳20で拡大されて見える。
【0022】
図3(a)乃至図3(j)に、観察位置と、その位置から観察した三次元画像表示装置の表示面を構成する視差情報(視差画像の画素値)を示す。図3(a)は視差画像番号が付けられた画素グループを示す図、図3(b)は画素グループの平均ピッチBと、射出瞳のピッチAの関係を示す図、図3(c)〜図3(g)は観察距離Lから観察したときに観察される視差画像番号を示す図、図3(h)〜図3(j)は観察距離Lからはずれて観察したときに観察される視差画像番号を示す図である。距離Lの視域幅の中心から観察すると、全射出瞳20越しに観察される画素は、対応した画素グループ(G_0)の中心の画素になることから、観察される視差画像番号は0となる(図3(c))。視域の右端から観察すると、全射出瞳20越しに観察される画素は、対応した画素グループ(G_0)の左端の画素になることから、観察される視差画像番号は−4になる(図3(d))。視域幅の左端から観察すると、全射出瞳20越しに観察される画素は、対応した画素グループ(G_0)の右端の画素になることから、観察される視差画像番号は4になる(図3(e))。このように9つの視差画像が観察位置に応じて切り替わって見え、両眼でこれらの視差画像を観察することで、図1(b)乃至図1(c)に示した8個の三次元画像が7回切り替わって見える。
【0023】
さらに、右の視域境界を超えて観察した場合は、全射出瞳20越しに観察される画素は、対応した画素グループ(G_0)ではなく、その左に隣接する画素グループ(G_−1)の右端の画素になることから、観察される視差画像番号は画素グループ(G_−1)に属する4になる(図3(f))。右目に画素グループ(G_−1)の視差画像番号4、左目に画素グループ(G_0)の視差画像番号−4を観察すると、逆視、すなわち、凹凸の反転した像を観察する。
【0024】
さらに右に移動すると、視差画像は再び、視差画像番号が3、2、1、・・・となる視差画像に切り替わり、立体視も可能になるが、射出瞳ひとつだけ表示位置がシフトするとともに、観察位置から見たときの画面幅が視域内の正しい観察位置から見たときに比較して画面の横幅が狭く見える。このことから、縦長の三次元画像になる。画面幅の変化に応じて縦長になった画像は2次元画像では頻繁に見られる状態であることから、観察者は歪を意識しにくい。よって、これらの歪を含んだ三次元画像の観察範囲を一般的にサイドローブと呼ぶが、これを観察範囲に含む場合もある。左に移動した場合も対称的に変化するが、ここでは割愛する。
【0025】
一方、観察距離Lより前または後ろに移動して観察した場合は、画面を構成する視差画像に対応する視差画像番号が、同一画素グループ(G_0)の範囲で切り替わり、例えば、視差画像番号−4〜4になったり(図3(h))、視差画像番号2〜―2になったりする(図3(i))。さらに、著しく観察距離が短かったり、遠かったりすると、同一画素グループ内では対応できず、隣接した画素グループの画素の視差画像を観察することもある(図3(j))。
【0026】
図4に、観察距離L’が視域最適化距離Lより短くなった場合(L’<L)の多眼式三次元画像表示装置の水平断面を示す。観察距離L’が視域最適化距離Lより短いと、観察距離L’における位置から各射出瞳20(i=0,・・・,4)を経由して延びる光線の傾きの変化が大きくなり、結果的に各射出瞳20(i=0,・・・,4)で拡大される視差画像が画面内で連続的に変化する。図4において、最左側の画素グループ15に関しては、光線が経由した射出瞳20に対応する画素グループ15の右端の画素の視差画像が見えている。しかし、上記最左側の画素グループ15より右の画素グループ15に関しては、光線が経由した射出瞳20にとっての画素グループ(G_0)に対応する、画素グループ15の右端の画素の視差画像と、画素グループ(G_0)に隣接した、射出瞳20にとっての画素グループ(G_1)に対応し、かつ射出瞳20にとっての画素グループ(G_0)に対応する、画素グループ15の左端の画素の視差画像との境界が見えている。15、15、15に関しては、それぞれ光線が経由した射出瞳20、20、20にとっての画素グループ(G_0)に対応する、画素グループ15、15、15に隣接した画素グループ(G_1)の左端の画素の視差画像が観察される様子を示している。例えば、画素グループ15の右側に隣接した画素グループ15は、画素グループ15が、光線が経由した射出瞳20の右側に隣接した射出瞳20にとっては画素グループ(G_0)に相当する。
【0027】
以上、観察距離の変更に応じて、画面内で視差画像番号や画素グループが切り替わることを述べた。多眼式では、これまでも述べたように、観察距離Lにおいて両眼視差によって立体画像を知覚することから、両目のそれぞれに単一の視差画像が見えることが望ましい。射出瞳を経由して見える視差情報を単一にするためには、射出瞳を構成する例えばレンズのフォーカスを著しく絞ったり、射出瞳を構成するスリットやピンホールの開口幅を著しく狭くしたりする。
【0028】
また、当然ながら、集光点の距離は眼間の距離に略一致させられる。このような設計においては、観察距離より少しでも前後にシフトして、前述したように、観察される視差画像、すなわち観察される画素が画面内で切り替わる部分で、画素間の境界にある非画素領域が観察され、輝度が低下する。また、隣接した視差画像番号の視差画像への切り替わりも不連続に見える。すなわち、視域最適化距離Lの近傍以外で三次元画像を観察することはできない。
【0029】
(II方式)
次に、各実施形態の立体画像表示装置に関係するII方式について説明する。典型的なII方式では、(4)式に従って射出瞳の間隔を画素幅のn倍に設定する。図5に、全ての画素グループがn画素から構成された場合のII方式三次元画像表示装置の水平断面図と、観察距離Lから各射出瞳に引かれた線の画素グループにおける入射位置を示す。図5では、II方式の構成において、全ての画素グループをn個の画素で構成している。すなわち、図5は、(5)式でm=0にした場合に相当する。画素グループ(G_0)のうち、最も左の画素グループ15の右端の画素から射出瞳20を経由した光線は、観察距離Lの視域の左端に入射している。すなわち, 画素グループ(G_0)の右端の画素が観察される。この入射位置から透視投影的に、さらに右の射出瞳20を経由した線を引くと、次のことがわかる。射出瞳20を経由して見える情報は、経由した射出瞳20にとっての画素グループ(G_0)に対応する画素グループ15の右端の画素と、射出瞳20にとっての隣接した画素グループ(G_1)に対応し、かつ射出瞳20にとっての画素グループ(G_0)に対応する画素グループ15の左端の画素との境界になる。さらに右の射出瞳20からは,射出瞳20にとっての画素グループ(G_1)に対応するとともに射出瞳20にとっての画素グループ(G_0)に対応する画素グループ15の左端の画素になってしまう(図5)。
【0030】
図6(a)、6(b)に視域最適化が適用された場合のII方式三次元画像表示装置の水平断面図を示す。図6(a)は視差画像番号が付された画素グループを示す図、図6(b)は観察距離Lから各射出瞳に引かれた線の画素グループにおける入射位置を示す図である。
【0031】
図6(a)、6(b)では、ハードウェアはそのままに、離散的に(n+1)個の画素を有する画素グループを配した。これによって、有限の距離Lの左側の視域端から観察したときに、全ての射出瞳20〜20に対応した画素グループ15〜15の右端の画素に表示された視差情報を観察できるようになった。すなわち、三次元画像を観察できる幅を最大化した。II方式における視差画像番号は、射出瞳と画素との相対位置で定められ、同じ視差画像番号の視差画像を表示した画素から、射出瞳を経由して射出した光線同士は平行の関係になる。このため、(n+1)個の画素を有する画素グループ15を設けることで、射出瞳と画素グループの相対位置が1画素分だけシフトされるとともに、画素グループを構成する視差画像番号も、−4〜4から−3〜5に変化し、射出瞳から射出する光線群の傾きが変化する(図6(b))。
【0032】
II方式は、視距離Lで視域幅が最大化しうる点は多眼式と同じだが、射出瞳を経由して観察される視差情報については異なる。この様子を、図7(a)乃至7(j)を参照して説明する。図7(a)は視差画像番号が付された画素グループを示す図、図7(b)は画素グループの平均ピッチBと、射出瞳のピッチAの関係を示す図、図7(c)〜図7(g)は観察距離Lから観察したときに観察される視差画像番号を示す図、図7(h)〜図7(j)は観察距離Lからはずれて観察したときに観察される視差画像番号を示す図である。
【0033】
多眼式では視域最適化距離Lから観察したときに、射出瞳を経由して観察される視差画像番号は全画素グループで単一だった。しかし、II方式では画面内で視差画像番号が変動する。図6(a)、(b)に示す場合でも、(n+1)個の画素を有する画素グループの左側では、視差画像番号4が観察されるのに対し、(n+1)個の画素を有する画素グループの右側では、視差画像番号5が観察されている。図7(a)乃至図7(j)に示すように、視域最適化距離Lの中央では、画面内で視差画像番号−3〜3の視差画像が観察され(図7(c))、視域最適化距離Lの視域最適化距離Lの右よりでは、画面内で視差画像番号−4〜2の視差画像が観察され(図7(d))、左よりでは、画面内で視差画像番号―2〜4の視差画像が観察される(図7(e))。このように、観察される視差画像の組が観察位置に応じて変化し、それが両眼に入射することで、図1(b)〜図1(c)の見え方の変化を連続的に実現できる。
【0034】
このように、II方式の場合は、有限の観察距離から観察するときには必ず画面内で視差画像番号が切り替わることから、射出瞳を経由して画素部が見えたり画素境界部分が見えたりすることによる輝度変化は許されない。また、視差画像の切り替わりを連続的に見せる必要がある。
【0035】
よって、視差情報を混在させること(単一位置から複数の視差情報が見えるようにすること)、すなわちクロストークが積極的に行われる。クロストークは、同一の画素グループ(例えば、G_0)に所属する視差画像番号の中で切り替わりが生じる場合に、射出瞳経由で観察される位置の変動に応じて、隣接した二つの視差情報の比率が連続的に変化し、画像処理でいう線形補間のような効果をもたらす。
【0036】
またこのクロストークの存在により、観察距離が前後した場合の視差画像番号の入れ替わりも連続的に行われる。なお、極端に観察距離が短いときまたは遠いときには、画素グループの入れ替わりも連続的に行われる。表示面に近づくと、観察位置から各射出瞳に向けて引かれる線の傾きの変化が大きくなり、結果的に視差画像番号の切り替わりの頻度が増加する(図7(h))。
【0037】
表示面から離れると、逆に視差画像番号の切り替わりの頻度が減少する(図7(i))。すなわち、クロストークがあることにより、観察者は、視域最適化距離Lより表示面に対して近い位置から観察すれば、より透視度が高い三次元画像を見ることができる(図7(h))。また、視域最適化距離Lより遠い位置から観察すれば、より透視度の低い三次元画像を連続的に違和感なく見ることができる(図7(i))。すなわち、観察距離の変動に伴う透視投影度の変化を再生できており、これは、II方式が実物体からの光線を再生できているからに他ならない。この結果、図7(b)において斜線で示す領域では三次元映像は連続的に切り替わる視域であるといえる。
【0038】
II方式において視域境界を超えて観察した場合は、全射出瞳越しに観察される画素は、対応した画素グループ(G_−1)だったり(図7(f))、画素グループ(G_1)であったりする(図7(g))。すなわち、射出瞳ひとつだけシフトして表示された三次元画像が観察される。像の歪み方は多眼式と等しいので割愛する。
【0039】
次に、多眼式とII方式における観察距離と視差画像番号の切り替わりの頻度について、図8を参照して説明する。本明細書中においては、多眼式とII方式ともクロストークがあり、視域最適化距離Lの1点から観察したときに画面内が同一視差画像番号の視差画像で構成されるのが多眼式、視域最適化距離Lから観察したときに、画面内で視差画像番号が切り替わるのがII方式である。
【0040】
図9および図10は(4)式で与えられるII方式における視差画像と視域境界を表すデータ空間の概念図である。図9に示すデータ空間は、一般に光線空間(EPI)として知られているものとほぼ等価である。図9の横軸は射出瞳番号(画素グループの番号)を示し、縦軸は視差画像番号を示している。ここでは、最も左から二番目の射出瞳に対応した画素グループは、射出瞳に対して左側(図9では上方向)に配される。最も左の射出瞳に対応した画素グループは、左側の画素が欠けているが、これは物理的に射出瞳より外側の画素が存在していないことを意味する。略中央に位置する射出瞳に対応した画素グループは、射出瞳の真後ろに配され、右の射出瞳になるにつれ、画素グループが射出瞳に対して右側(図9では下方向)に配される。1つの四角形(それぞれ中央に点を描いてある)Pは、各視差画像の1画素の視差情報を表す。射出瞳に対する相対位置が同一の画素は、同一の視差画像に由来する視差情報Pが表示される。この1画素に表示される視差情報Pは、各視差画像の垂直方向の座標(y座標)のある1つの値についてのみデータ空間として示している。すなわち、図9に示す画素はすべて、同じy座標(縦座標)の視差画像を表している。また、実空間では、画素グループは画面水平方向に隣接して配されており、データ空間の中で、図9内に矢印で結んだ画素同士は単一の画素に表示された視差情報Pを意味している。(4)式で示されるII方式の場合は、視域境界を表す2本の破線21で囲まれる平行四辺形の領域が使用され、視差画像の数は視差数より多くなる。なお、視域境界の破線21(図9では上下2本示しているが、矢印で示した画素の関係と同様、実際は1本の線である)は、以下の式で求められる。
【0041】
画面中心より右側:Ncp=−(B−A)×(XP−0.5)+Nc(0)
画面中心より左側:Ncn=−(B−A)×(XP+0.5)+Nc(0) ・・・(7)
ここで、Ncp、Ncnは、視差画像番号(実数値)を示し、Aは射出瞳のピッチを示し、Bは射出瞳ひとつに対応した画素グループの平均幅を示し、XPは射出瞳番号を示し、Nc(0)=B/2の場合、上記(7)式は図9の上側の破線21を示し、−B/2の場合、上記式は下側の破線21を示す。ただし、式(7)は射出瞳の数が偶数の場合を表している。XPは画面中心を原点とした数値となっており、画面中心より右側は正の数、左側は負の数となる。なお、射出瞳の数が偶数の場合には画面中心に対応する画素グループが存在しないため、すなわち、原点が図9の中央の2つの画素グループの境界にくるため、原点の左右で射出瞳番号が飛ぶことに注意する。例えば射出瞳の数が4の場合、左から順に−2、−1、1、2の順で射出瞳番号が付けられることになる。射出瞳の数が奇数の場合にも同様の概念を用いることが出来るが、この場合には画面中心に対応する画素グループが存在するため、原点に対応する射出瞳番号が存在することになる。例えば射出瞳の数が3の場合、左から順に−1、0、1の順で射出瞳番号が付けられることになる。また、計算式は式(8)のようになる。
【0042】
画面中心より右側:Ncp=−(B−A)×XP+Nc(0)
画面中心より左側:Ncn=−(B−A)×XP+Nc(0) ・・・(8)
ここで、Ncp、Ncnは、視差画像番号(実数値)を示し、XPは射出瞳番号を示し、
Nc(0)=B/2の場合、上記(8)式は図9の上側の破線21を示し、−B/2の場合、上記(8)式は下側の破線21を示す。
【0043】
破線21で囲まれた領域の各射出瞳番号に対応するn個の画素、および(n+1)個の画素の画素群が、上述した説明におけるn画素グループ、および(n+1)画素グループにそれぞれ対応する。
【0044】
観測者がある視点から単眼で見ることは、図9のデータ空間において観察位置に応じて傾きと縦軸の切片が定義される直線(例えば破線22)が通過する画素群を見ることとほぼ等価である。画面までの距離(観察距離)が短い時は傾きが大きくなり、画面の正面から右にずれると、破線22は下にずれる。つまり、破線22も式(7)または式(8)を利用して表すことができ、観測者の観察距離に応じて、前述した式によりBの値が変化し、画面の正面からの左右へのずれによってNc(0)が決定される。この時のNc(0)は、視差画像番号0に対応する位置を画面の正面とし、破線21に対応する位置を視域の境界とした場合、画面正面から視域の境界までの距離と、画面正面から観察位置までの距離の比から求めることができる。ただし、実際には隣接した画素に表示された視差情報が射出瞳越しに混ざって(クロストークが存在して)観察されるため、直線が通過する画素の上下に隣接した画素の視差情報Pが混入されて見える。また、図9に示す概念図を射出瞳の間隔を基準に書き直すと、すなわち縦の画素群のピッチが射出瞳の間隔と一致するように書き直すと、図10のようにも表現できる。混乱を避けるため、この時の射出瞳の間隔で区切った画素グループを射出瞳基準画素グループと呼び、上述した画素グループと区別する。多眼式は、画素グループと射出瞳基準画素グループが一致しており、II方式は一致していないケースといえる。
【0045】
以上、多眼式とII方式における、観察位置と視差画像番号の切り替わりについて述べた。ところが、II方式の視域境界では、逆視、またはクロストークによって逆視の成分を同時に観察することによる二重像が見えることに加えて、さらに帯状の妨害画像が発生する。この現象について、以下に説明する。
【0046】
(II特有の帯状の妨害画像の説明)
II方式ではクロストークを積極的に利用していることを既に述べた。図5、図6(a)、図6(b)、図9、図10を参照して、視域境界で観察される帯状の妨害画像と、本来あるべき帯状の妨害が除かれた画像を、クロストークを考慮して説明する。視域最適化が適用されない図5に示す構成では、視域境界近傍に近いある観察位置から単眼で観察すると射出瞳が右にずれるにつれて、徐々に視差画像番号4の視差画像が見える割合が減少すると同時に視差画像番号−4の視差情報が見える割合が増加し、二重像の第一の像(例えば、視差画像番号4の視差情報)と第二の像(例えば、視差画像番号−4の視差情報、偽像の成分)の濃度(第一の像と、第二の像との割合)が連続的に切り替わる。
【0047】
視域最適化処理を施した図6(a)、6(b)に示す構成では、中央の(n+1)個の画素を有する画素グループ15が設けられることで、視差画像番号―4の視差情報が、視差画像番号5の視差情報に切り替わる。これによって、射出瞳20と射出瞳20の間で、不連続的に第一の像の濃度が増加する。このことは、図10において、視域境界を示す破線21が通過する画素に注目して考えれば理解することができる。例えば図10の太線に囲まれた領域23では、射出瞳基準画素グループ23の、破線21が通過する画素、すなわち、視域境界から単眼で観察される視差情報は本来、視差画像番号−4の視差情報が、視域境界を示す破線21がまたぐ画素の視差情報を表す矩形の下辺から破線21までの距離に応じて見えるとともに、画素グループ23(瞳基準画素グループ23と同一の射出瞳番号を持つ、図9における画素グループ)の視差画像番号5の視差情報が破線21がまたぐ画素を表す矩形の上辺から破線21までの距離に対応する割合だけ見えるべきである。同様に、射出瞳基準画素グループ23、23についても、破線と矩形の下辺、または上辺までの距離に応じた割合で、視差画像番号−4と5が見えるのが望ましい。しかしながら、視域最適化処理においては、射出瞳基準画素グループ23には−4が、射出瞳基準画素グループ23、23には視差画像番号5が表示されるため、この本来の見え方との差が原因で不連続な濃度変化が起こる。断続的な濃度変化は、(n+1)個の画素を有する画素グループ15の形成位置に生じることから、一定間隔で画面内に発生し、不自然な印象が強い。一次元II方式なら、この濃度変化は垂直な線として、二次元IIなら格子状に発生する。
【0048】
特開2009−239665号公報では(n+1)個の画素を有する画素グループ15を構成する最も外側の視差情報、例えば図6(a)では斜線で示す視差画像番号−4と視差画像番号5の視差情報を混在させて不連続な変化を緩和している。この処理だけでは緩和が不十分な場合はさらに(n+1)個の画素を有する画素グループに隣接した複数の画像グループに渡って混在させることで、妨害画像の原因である不連続な変化の緩和を試みている。これを図10に示す光線空間で置き換えて考えると、射出瞳基準画素グループ23のうち太線に囲まれた領域23に含まれる画素を中心に、射出瞳番号方向に並ぶ視差情報間で、バイリニア法、バイキュービック法といった一般的な補間方法で補間していることと等価と考えられる。これによっても偽像の濃度の不連続な変化をある程度緩和することが出来るが、前述の本来の見え方が考慮されていないために、不連続な変化を完全に緩和できないことに加え、より強く緩和をするために補間の範囲を広げると、本来視域に利用されていた視差情報にまで、他の視差情報が混在してしまう。例えば射出瞳基準画素グループ23の視差画像番号−4の視差情報に、この視差情報と関係ない、射出瞳基準画素グループ23の視差画像番号5の視差情報が混入してしまうため、それが新たな不自然さ(違和感)を産む可能性が有る。
【0049】
(第1実施形態)
第1実施形態による三次元画像表示装置に用いられる画像処理方法を説明する。本実施形態では、II方式における、視域境界で観察される妨害画像を抑制するとともにその違和感の低減を実現する画像処理を行う。この画像処理について、図6(b)、図10、図11(a)、図11(b)を参照して説明する。前述したように、視域最適化処理により、(n+1)個の画素を有する画素グループを設けることで、視差画像番号−4の視差画像を表示していた画素に、視差画像番号5の視差画像が表示される。隣接した射出瞳間での偽像の濃度の変化が不連続なために、帯状の妨害画像として視認される。そこで例えば図10に示す太線部23内の3つの第1の画素において、射出瞳基準画素グループ23の視差画像番号−4の視差情報に射出瞳基準画素グループ23の視差画像番号4の視差情報を混在させることで、観察者が視域境界から単眼で観察したときに射出瞳基準画素グループ23に対応した射出瞳を経由して見える視差情報を、本来の見え方に近づける。なお、本来は、画素グループ23(瞳基準画素グループ23と同一の射出瞳番号を持つ、図9における画素グループ)の視差画像番号5が混入するのが望ましいが、ここでは視差画像番号4で代用している。また、射出瞳基準画素グループ23の視差画像番号5の視差情報に射出瞳基準画素グループ23の視差画像番号−3の視差情報を混在させることで、観察者が視域境界から単眼で観察したときに、射出瞳基準画素グループ23に対応した射出瞳を経由して見える視差画像を、本来の見え方に近づける。なお、本来は、画素グループ23(瞳基準画素グループ23と同一の射出瞳番号を持つ、図9における画素グループ)の視差画像番号−4が混入するのが望ましいが、ここでは視差画像番号−3で代用している。こうすることにより、画素グループ23(瞳基準画素グループ23と同一の射出瞳番号を持つ、図9における画素グループ)と画素グループ23(瞳基準画素グループ23と同一の射出瞳番号を持つ、図9における画素グループ)に対応した射出瞳で見える像に、それぞれ見えるべき三次元画像に由来した視差情報の成分と偽像に由来した視差情報の成分が含まれる。この例では視差画像番号−4に視差画像番号4の、視差画像番号5に視差画像番号−3の視差情報成分が含まれるため、不連続な濃度変化を抑制することができる。本実施形態では、本来、視域境界で見えるべき見え方を画像処理でほぼ再現することから、不自然な濃度変化が現れることがない。この処理を、視域境界の破線21が通過する全ての画素に対して行う。このことは図6(b)においては、各画像グループの境界の両側に位置する画素のうち視域境界を示す破線21が通過している画素(第1の画素)の視差情報に対して、隣接した画素グループを構成する画素のうち第1の画素に隣接した画素(第2の画素)の視差情報を混在させることを意味する。この時の混在する割合の決定方法として最も好適なのは、図10に示した視域境界を示す破線21が通過する第1の画素の視差情報と、画素グループの物理的な境界線である図11(a)に示す境界線24を介して隣接している、第2の画素の視差情報を、視域境界の破線21が通る第1の画素の視差情報を意味する矩形の上辺から破線21までの距離(例えば図11(b)ではPと表記)と、視域境界の破線21が通る第1の画素の視差情報を意味する矩形の下辺から破線21までの距離(例えば図11(b)ではPと表記)に応じて混在させるというものである。例えば図11(b)の長さから決定された比が
の長さ:Pの長さ = 0.6:0.4
であった場合、第2の画素の視差情報を第1の画素の視差情報に0.4の割合で混在させたものを、第1の画素の視差情報とする。なお、P1およびP2の長さは、図11(b)に示すように、矩形の中心を通る縦方向の直線における長さであったが、上記矩形を通る縦方向の直線における長さであってもよい。
【0050】
以上は、境界線21が実空間における画素、データ空間における視差情報をまたぐ場合について説明したが、境界線21が実空間における画素境界、データ空間における視差情報境界に一致する場合は、第1の画素も第2の画素も発生せず、第1の視差情報に第2の視差情報を混在させる処理は発生しない(処理を行わなくても視域境界における本来の見え方を再現できている)。
【0051】
以上の説明で画素と表現した内容は、サブ画素と解釈してもよい。なぜなら画素がRGBのトリプレットにて構成可能なことから、サブ画素ピッチで視差情報を表示したほうが再生できる光線の方向を増やせる、すなわち、より高品位な三次元画像が表示できるからである。また、説明および図面はともに水平方向についてのみ説明したが、これに直交する垂直方向にも視差情報を提示する場合(マイクロレンズアレイを用いた二次元II方式など)には、本実施形態で説明した方法をそのまま垂直方向に適用可能である。
【0052】
(実施例1)
第1実施形態の三次元画像表示装置について実施例1として更に詳細に説明する。
まず、本実施例の三次元画像表示装置のブロック図を図12に示し、画像処理の手順を示すフローチャートを図13に示す。II方式の三次元画像表示装置は、例えば図7(b)に示すように、平面表示装置10と、光線制御素子20とを備えている。平面画像表示装置10は、例えば液晶表示装置であって、画素が縦方向および横方向にマトリクス状に配列された平面画像表示部を備えている。光線制御素子20は、複数の射出瞳を有し、上記平面画像表示部に対向して配置され、前記画素からの光線を制御する。また、本実施例の三次元画像表示装置は、画像データを処理するために、図12に示すように、画像データ処理装置30と、画像データ提示装置40とを更に備えている。
【0053】
画像データ処理装置(画像処理装置)30は、視差画像記憶部32と、提示情報入力部33と、混在領域特定部34と、混在処理部35とを備えている。また、画像データ提示装置40は三次元画像変換部44と、三次元画像提示部46とを備えている。この三次元画像提示部46は上記平面表示装置10の平面画像表示部と、光線制御素子20とを有している。
【0054】
例えば、RAMを用いた視差画像記憶部32には、取得したまたは与えられた視差画像群が記憶される。一方、提示情報入力部33には、三次元画像表示装置のスペック(射出瞳のピッチA、サブ画素ピッチのPp、平面画像表示部の画素数、光線制御素子と平面画像表示部との空気換算焦点距離(ギャップ)など)、観察位置が記憶されている。これらのスペックは外部から提示情報入力部33に入力される。
【0055】
混在領域特定部34では、提示情報入力部34で与えられた情報を基に図10の視域境界を示す破線21が通過する第1の画素と、これに隣接した画素グループに属する、第2の画素を射出瞳番号ごとに特定する。
【0056】
混在処理部35では、混在領域特定部34で射出瞳番号ごとに特定された第1の画素に第2の画素の視差情報を混在させる。この時の混在割合の決定方法として最も好適なのは、図10に示した視域境界を示す破線21が通過する第1の画素の視差情報と、画素グループの物理的な境界線である図11(a)に示す境界線24を介して隣接している、第2の画素の視差情報を、視域境界の破線21が通る第1の視差情報を意味する矩形の上辺から破線21までの距離(例えば図11(b)ではPと表記)と、視域境界の破線21が通る第1の画素の視差情報を意味する矩形の下辺から破線21までの距離(例えば図11(b)ではPと表記)に応じて混在させるというものである。例えば図11(b)の長さから決定された比が
の長さ:Pの長さ = 0.6:0.4
であった場合、第2の画素の視差情報を第1の視差情報に0.4の割合で混在させたものを、第1の画素の視差情報とする。ここまでが画像データ処理装置30が行う処理になる。すなわち、画像データ処理装置30の処理手順は、まず、視差画像記憶部32から視差画像を読み込む(図13のステップS1)。続いて、提示情報入力部33に記憶されている三次元画像表示装置のスペック(提示情報)を取得する(図13のステップS2)。この提示情報を基に、混在領域特定部34によって、射出瞳番号ごとに混在処理を行う画素群を特定する(図13のステップS3)。すなわち、図10の視域境界を示す破線21が通過する画素を特定する。続いて、混在処理部35によって、射出瞳番号ごとに特定された画素群で混在処理を行う(図13のステップS4)。すなわち、特定された画素に対して射出瞳番号ごとに異なる位置に存在する第1の混在画素と第2の混在画素を特定し、特定された第2の混在画素の視差画像を第1の混在画素の視差画像に混在させる処理を行う。
【0057】
この画像データ処理装置30より出力された混在処理後の視差画像群は画像データ提示装置40の三次元画像変換部44において並び替えられて三次元画像表示用の画像が生成される(図13のステップS5)。この生成された三次元画像表示用の画像を三次元画像提示部46において表示する(図13のステップS6)。典型的には、画像データ処理装置30は例えばPC(Personal Computer)から構成される。三次元画像変換部44での処理は、射出瞳ごとに各視差画像の構成要素である画素情報を並べ替えることに加え、各画素情報は一般的には3個のサブ画素(例えば、R(赤)、G(緑)、B(青))に対応した画像情報から構成されており、3個のサブ画素は水平方向に並んでいることが前提とされているが、本提案における三次元画像表示装置では、水平方向に並んだサブ画素で視差を与える必要があるので(異なる視差画像を割り当てる必要があるので)、一般的には水平方向に並んだ3つのサブ画素に表示されることを前提とされたサブ画素単位の情報を、例えば縦方向に並び替える処理を行う。サブ画素単位の並び替えを三次元画像変換部44で実行することで、処理速度の低下を防ぐことが可能である。
【0058】
以上説明したように、本実施形態によれば、射出瞳番号ごとに混在処理が施される第1の画素と、混在する情報を保持する第2の画素が特定され、視域境界を示す破線21の位置(=理想的な画素グループ境界)に応じて混在処理が行われるので、帯状の妨害画像を抑制するとともに、視域からサイドローブへの遷移する領域、またはその逆に遷移する領域で、観察される画像が自然かつ最小の遷移幅で移行することができる。
【0059】
なお、本実施形態では混在の比率を距離によって決定したが、画素の視差情報を意味する矩形の横幅に仮想的に値を設定すれば、これを面積と考えて混在の比率に利用することも考えられる。この場合、画素の視差情報を意味する矩形の内部のうち、視域の境界の破線21の外側にあたる面積(例えば図11(b)の斜線部の面積)と内側に含まれる面積(例えば図11(b)の網掛け部の面積)とをそれぞれ求め、その比を混在の割合とすればよい。
【0060】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態による三次元画像表示装置を説明する。
【0061】
上述したように、第1実施形態においては、II方式における、視域境界で観察される帯状の妨害画像を抑制することが可能である。しかしながら、依然として視域境界付近での逆視や多重像は発生する。この問題を防止する一つの方法が知られている(例えば、李 載鎔、宮下 哲哉、内田龍男、多眼式3Dディスプレイ内の逆視を除去する新方式、社団法人映像情報メディア学会技術報告、Vol.33,No.42, PP.37−40,Oct.2009(以下、単に文献という)。この文献によれば視域境界付近にぼかし画像を挿入することで片眼にのみぼかし画像が観測され、視野闘争の効果により鮮鋭なもう一方の目の映像が支配的になり、それにより偽像を目立ちにくくすることができる。しかしながら、この文献は多眼式を対象にした物であり、II方式に適用することは出来ない。
【0062】
そこで、第2実施形態では、II方式における視域境界付近にぼかし画像を挿入することにより、帯状の妨害画像の発生を抑制するとともにII方式で発生する多重像(主に二重像)を抑制する三次元画像表示装置を提供する。
【0063】
上述したように、多眼式において視域境界付近で見える画像は画素グループの両端に対応する視差画像であり、例えば図2に示すように、視差画像番号−4と視差画像番号4の視差画像となる。そのため、その画像をぼかし画像に置き換えればよいが、II方式では観測者が見る画面は複数の視差画像の足し合わせになっているため、そのような単純な置き換えでは達成することが出来ない。II方式において視域境界で観測される画素は図9、図10の視域境界を示す破線21上の画素群であり、この画素群にぼかし画像を挿入する必要がある。また、前述したようにII方式ではクロストークが利用されているため、視域境界を示す破線21を中心として設定されたオフセット範囲に含まれる画素にぼかし画像を混在させることが、最も好適な実現方法となる。
【0064】
(実施例2)
第2実施形態の三次元画像表示装置について実施例2として更に詳細に説明する。
まず、本実施例の三次元画像表示装置のブロック図を図14に示し、画像処理の手順を示すフローチャートを図15に示す。なお、第1実施例と同じブロックについての説明は省略する。
【0065】
本実施例の三次元画像表示装置は、図12に示す第1実施例の三次元画像表示装置において、画像データ処理装置30を画像データ処理装置30Aに置き換えた構成となっている。この画像データ処理装置30Aは、視差画像記憶部32と、提示情報入力部33と、挿入領域特定部36と、挿入画像生成部37と、挿入処理部39とを備えている。
【0066】
挿入画像生成部37では、まず視差画像記憶部32よりn枚の視差画像を読み出す(図15のステップS101)。nは視差画像記憶部32に記憶されている視差画像の数を最大値とする整数である。その後、図10に示す各射出瞳番号に対応する射出瞳基準画素グループの画素のうち、読み出したn枚の視差画像に対応する視差画像番号を持つ画素について、合計が1.0となるように加重平均して射出瞳ごとに1つの視差情報を決定する。なお、前述したように図9、図10は視差画像のあるy座標を持つ視差情報であるため、実際にはy座標ごとに視差情報が決定される。これが各射出瞳番号について行われるため、生成される画像は視差画像の解像度と同様の解像度を持つ画像となる。最後に、この画像に対して移動平均フィルタ、ガウシアンフィルタなどの画像処理で一般的な平滑化フィルタを適用したものが挿入画像となる(図15のステップS104)。
【0067】
挿入領域特定部36では、提示情報入力部34に記憶されている三次元画像表示装置のスペック(提示情報)を取得する(図15のステップS102)。この提示情報に基づいて、
図10に示すように、射出瞳番号ごとに視域境界を示す破線21を中心としたオフセット領域(破線21を中心に垂直方向の高さがオフセット値で定義される領域)の範囲に含まれる視差情報を挿入領域として特定する(図15のステップS103)。なお、注意するべきは、図10のデータ空間の視差情報を示す矩形の横幅は特に意味がなく、これまで述べてきたように、点が打たれている位置の矩形の上辺と下辺からの距離にのみ意味がある。よって、点を通り矩形の上辺、および下辺に垂直で両端が上辺または下辺上にある線分(以下、仮想画素線分)を考えた際に、その線分がオフセット領域に一部でも含まれる場合には挿入領域に含まれる物とする。このように、挿入領域は、オフセット値に依存する。図15に示すステップS102およびS103と、図15に示すステップS104とは、異なる部で行われるため、図15に示す手順でなくともよい。
【0068】
挿入処理部39では、挿入領域特定部36で射出瞳番号ごとに特定された挿入領域に対して、挿入画像を混在させる(図15のステップS105)。前述したように挿入画像は視差画像と同一の解像度を持ち、横方向の解像度は射出瞳の数と同等となる。この時の挿入画像のx座標と射出瞳の位置は対応し、最も左端の射出瞳に対応する挿入領域には挿入画像の左端の画素が混入される。射出瞳に対応する画素を以降、挿入画素と定義する。混在処理は、大きく2つのパターンに分かれる。
【0069】
第1のパターンとしては、挿入領域として特定された視差情報Pの仮想画素線分が破線21を中心としたオフセット領域に完全に含まれる画素については、その画素の視差情報を挿入画素の視差情報で置き換える。
【0070】
第2のパターンとしては、挿入領域として特定された視差情報Pの仮想画素線分が部分的に含まれる画素については、オフセット領域に含まれる長さを画素ごとに算出し、その長さの比に応じて挿入画像の視差情報を混在させる。例えば視差情報Pの仮想画素線分の長さを1.0とし、挿入領域と判定された画素の視差情報に注目した場合に、視域境界を示す破線21を中心としたオフセット領域に含まれている長さが0.3であれば、元の画素の重みを0.7、挿入画素の重みを0.3とする加重平均により新たな視差情報を生成する。また、処理負荷を軽くしたい場合には、第2のパターンに属する視差情報であっても第1のパターンと同様に、単純に挿入画素の視差情報で置き換えても良い。この場合は原理的に、挿入画像に帯状の妨害画像と同様の濃度変化が生じることになるが、偽像に由来する二重像の抑制効果は残る。
【0071】
本実施例によれば、帯状の妨害画像と偽像に起因する二重像の発生を同時に抑制することが可能となる。
【0072】
なお、本実施形態では混在の比率を仮想画素線分がオフセット領域に含まれる長さによって決定したが、画素の視差情報を意味する矩形の横幅に仮想的に値を設定すれば、これを面積と考えて混在の比率に利用することも考えられる。この場合、視差情報P内であり、かつオフセット領域の外側にあたる面積と内側に含まれる面積とをそれぞれ求め、その比を加重平均の重みとすればよい。このことは、以下の第1乃至第3変形例においても同様である。
【0073】
(実施例2の第1変形例)
実施例2では視差画像から挿入画像を生成したが、外部から読み込む等の方法で予め決められた挿入画像を挿入することも可能である。実施例2では視差画像を読み込む都度、挿入画像を生成したが、中間色(例えばグレー)の単色画像を挿入画像とする、予め決められた静止画、動画などの場合に事前に挿入画像を作成(動画の場合、全フレームを対象にあらかじめ作成)しておくなどにより処理負荷を低減することが可能である。
【0074】
事前に作成する際には、挿入画像生成部37で行っている処理を同様に行えばよい。動画の際には、nを全フレームの視差画像分に拡張して同様に処理する、または代表的なフレームをカット検出などにより抽出後に、抽出されたフレームを対象に静止画と同様に処理するなどが考えられる。また、この挿入画像に対して正常な立体像が見える領域ではないということを表す文字やシンボル(矢印など)を含めておくことで、観測者に理解しやすい形で偽像に由来する二重像や逆視などが観測される領域であることを教え、観測位置の変更を促すことも可能である。この文字やシンボルは挿入画像上の任意の位置に置くことが可能なため、自由度の高い警告の提示が可能となる。さらに、一般に観測者が全く動かずに画面を見ることは現実的ではないため、常に観察距離を一定に保つことはできない。そのため、図10の破線22の傾きは観察者が観察している間ある程度変化すると考えられる。この場合、前述した式(7)または式(8)より、図10の両端に近い位置に置いた警告は早めに提示され、中央付近に置いた警告は遅めに提示される。以上のように、警告を自由に配置できれば提示タイミングもある程度制御することが可能である。
【0075】
本変形例の三次元画像表示装置を図16に示し、画像処理手順を図17に示す。本変形例の三次元画像表示装置は、図14に示す実施例2の画像データ処理装置30Aを画像データ処理装置30Bに置き換えた構成となっている。この画像データ処理装置30Bは、実施例2の画像データ処理装置30Aにおいて挿入画像生成部37を削除するとともに挿入画像を記憶する挿入画像記憶部38を新たに設けた構成となっている。このため、図17に示す本変形例の画像処理手順は、図15に示す実施例2の画像処理手順において、ステップS104の代わりにステップS204を設けた構成となっている。
【0076】
挿入画像記憶部38には前述した方法などにより予め作成された画像や、正常な立体像が見える領域ではないということを表す文字やシンボル(矢印など)などで構成された警告を含む画像、単色の画像などが記憶される。ここでは警告の一般的な方法である文字やシンボルを挙げたが、警告の表示位置や表示する物については一般的な画像と同様の自由度があることは言うまでもない。各画素について透明度やマスク情報(画素ごとにマスクされているかが定義された情報)を保持することも可能であり、また、画像を複数種類持つことも可能である。
【0077】
挿入処理部39は実施例2で説明したものと基本的に同じであるが、挿入画像記憶部38から挿入画像を読み込む処理が前段に加わる。また、挿入画素に透明度(=1−アルファ値)などのブレンド比率やマスク情報が定義されている場合には、その情報に応じてブレンドの割合や挿入するかどうかを画素単位で切り換えても良い。例えば、挿入画素の透明度が0.5の場合には、前述した第2のパターンのように、オフセット領域に含まれる長さの比に応じて挿入画素の視差情報を混在させるのではなく、挿入画素の視差情報を50%の割合で混在するようにしてもよいし、挿入画素の透明度が0.0である場合やマスクされている場合はその挿入画素については混在処理をスキップするように構成してもよい。また、読み込む画像は時間や外部入力などによって切り換えても良い。さらに、挿入画像は必ずしも視差画像と同一の解像度を持つ必要はなく、視差画像より解像度が小さくても良いし、大きくても良い。視差画像より解像度が大きい場合、挿入画像の画素を間引くかあるいは縮小することにより、視差画像の解像度と同一かそれより小さくなるようにした後に挿入処理を行えばよい。挿入画像の画素を間引く方法、および縮小方法については、画像処理で周知な方法(例えば、画像の偶数ラインのみ、あるいは奇数ラインのみを間引く方法や、バイリニア法、バイキュービック法などの縮小方法)を用いればよい。視差画像より解像度が小さい場合には、挿入処理部39は挿入画像のx座標の終端で挿入処理を打ち切ればよい。例えば、視差画像の横解像度が256で挿入画像の横解像度が128の場合、128まで挿入処理を行った時点で処理を打ち切ればよい。
【0078】
また、予め設定されるか、または提示情報の一部として入力されたスキップ量sだけスキップした位置から挿入処理を始めてもよい。例えば、s=10で視差画像の横解像度が256で挿入画像の横解像度が128の場合、射出瞳番号が0から始まるとすると、射出瞳番号=9の位置までは挿入処理を行わず、射出瞳番号=10から挿入処理を行うようにしてもよい。その場合、挿入画像のx座標は、挿入画像のx座標+sの射出瞳番号と対応づくことになる。つまり、挿入画像の左端のx座標、および図10における左端の射出瞳番号を0とすると、s=10の時に挿入処理が行われるのは射出瞳番号10からであり、射出瞳番号10に対応づく挿入画素は挿入画像のx座標=0の位置の画素ということになる。
【0079】
以上説明したように、本変形例によれば、特定の条件下で処理負荷を軽減しながら帯状の妨害画像とその他の偽像に由来する逆視や二重像を同時に抑制することが可能となる。また、別の側面の効果として、観測者に理解しやすい形で上記のような問題が観測される領域であることを教え、観測位置の変更を促すことが可能となる。
【0080】
(実施例2の第2変形例)
実施例2の三次元画像表示装置のブロック図を図18に示し、画像処理の手順を示すフローチャートを図19に示す。
【0081】
本変形例の三次元画像表示装置は、図14に示す実施例2の画像データ処理装置30Aを画像データ処理装置30Cに置き換えた構成となっている。この画像データ処理装置30Cは、実施例2の画像データ処理装置30Aにおいて挿入画像を記憶する挿入画像記憶部38を新たに設けた構成となっている。このため、図19に示す本変形例の画像処理手順は、図15に示す実施例2の画像処理手順において、ステップS104の代わりにステップS104A、S104B、S104Cを設けた構成となっている。
【0082】
すなわち、本変形例は実施例2とは挿入画像生成部37の処理が異なる。挿入画像生成部37では、まず実施例2と同様の手順で第1の挿入画像を生成する(図19のステップS104A)。その後、挿入画像記憶部38から画像を読み込み、これを第2の挿入画像とする(図19のステップS104B)。そして、第1の挿入画像と第2の挿入画像を予め指定された割合で加重平均する(図19のステップS104C)。つまり、第1の挿入画像の各画素とXY座標が対応する第2挿入画像の各画素を、指定された割合でそれぞれ加重平均して最終的な挿入画像を生成する。
【0083】
なお、第2の挿入画像は必ずしも第1の挿入画像と同一の解像度を持つ必要はなく、第1の挿入画像より解像度が小さくても良いし、大きくても良い。第1の挿入画像より解像度が大きい場合、第2の挿入画像の画素を間引くかあるいは縮小することにより、第1の挿入画像の解像度と同一かそれより小さくなるようにした後に挿入処理を行えばよい。第2の挿入画像の画素を間引く方法、および縮小方法については、画像処理で周知の方法(例えば画像の偶数ラインのみ、あるいは奇数ラインのみを間引く方法や、バイリニア法、バイキュービック法などの縮小方法)を用いればよい。第1の挿入画像より解像度が小さい場合には、挿入処理部39は第2の挿入画像のx座標の終端で処理を打ち切ればよい。例えば、第1の挿入画像の横解像度が256で第2の挿入画像の横解像度が128の場合、128まで挿入処理を行った時点で処理を打ち切ればよい。また、予め設定されるかまたは提示情報の一部として入力されたスキップ量sだけスキップした位置から挿入処理を始めてもよい。例えば、s=10で第1の挿入画像の横解像度が256で第2の挿入画像の横解像度が128の場合、第1の挿入画像のx座標が0から始まるとすると、第1の挿入画像のx座標=9の位置までは挿入処理を行わず、第1の挿入画像のx座標=10から挿入処理を行うようにしてもよい。その場合、第2の挿入画像のx座標+sと第1の挿入画像のx座標が対応づくことになる。つまり、第1の挿入画像の左端のx座標、および第2の挿入画像の左端のx座標を0とすると、s=10の時に挿入処理が行われるのは第1の挿入画像のx座標=10からであり、それに対応づくのは第2の挿入画像のx座標=0の位置の画素ということになる。
【0084】
以上説明したように、本変形例によれば、処理負荷を軽減しながら帯状の妨害画像とその他の偽像に由来する逆視や二重像を同時に抑制すると共に、視差画像に左右されない情報を視域境界で視認される画面に含めることが可能となる。例えば警告情報を含めることができ、帯状の妨害や偽像に由来する逆視や二重像を抑制することでサイドローブへの遷移の際に不自然に見える領域を小さくするとともに、観測者に理解しやすい形で偽像に由来する逆視や二重像が観測される領域であることを教えて速やかな観測位置の変更を促すことが可能となる。
【0085】
(実施例2の第3変形例)
第1変形例では視域境界を示す破線21を中心としたオフセット領域の範囲に対して挿入処理を行ったが、挿入位置は必ずしも視域境界を示す破線21を基準に考える必要はない。例えば図10に示す破線22を基準にオフセット領域の範囲に対して挿入処理を行えば、挿入画像をある特定の視距離、および視点位置でのみ観測者に見せることが可能となる。これにより、例えば観察者の視点が十分に視域内に入っており偽像が見えない領域でのみ正しい位置で見ていることを知らせることが可能となる。
【0086】
また、図9に示すように、視域境界を示す破線21より平行四辺形領域の内側に一定量だけ移動した位置に挿入処理を行うようにした場合、この移動量によって正常な立体像が見える領域ではないということを観測者に知らせるタイミングを制御することが可能となる。なお、図9の概念図は視域境界を示す破線21を境に上下が1射出瞳番号ずれてつながっていると考えられるため、破線22が視差画像番号−5、−6、5,6の領域を通過する場合、図10では破線22は1本ではなく、通過したそれぞれの領域にも破線22が現れることに注意する。
【0087】
実際の挿入処理については第1変形例、第2変形例における挿入領域特定部36、および挿入処理部39における処理の基準となっている視域境界を示す破線21を、前述したように視距離と視点位置によって傾きと上下位置が変化する破線22に置き換えて処理すればよい。つまり、挿入領域特定部36では図10に示すように、射出瞳番号ごとに破線22を中心としたオフセット領域の範囲にある視差情報Pを挿入領域として特定すればよい。また、挿入処理部39は基本的には第1変形例、第2変形例と同様だが、上述した第2のパターン2で視差情報を混入させる際の比率を、破線22を基準として求めればよいことになる。その他の処理については同様であるので省略する。
【0088】
なお、他の変形例と同様に挿入画像は一般的な画像と同様の自由度がある。つまり、文字やシンボルのみでなくCG映像や自然画などと組み合わせてもよいし、動画像でもよい。動画像の場合には挿入画像記憶部38から時間に応じて異なるフレームの画像を取得するようにすればよい。なお、挿入画像は必ずしも視差画像と同一の解像度を持つ必要はなく、視差画像より解像度が小さくても良いし、大きくても良い。その場合、第1変形例と同様に処理すればよい。
【0089】
以上説明したように、本変形例によれば、観察者の視点位置に応じて文字や矢印など任意の画像(動画)を表示することが可能となり、現在の観察者の視点位置に応じた様々なナビゲーション情報を提示することが可能となる。これにより、例えば視域内にいる場合には可能な限り視域内にとどまるように、視域からサイドローブ(またはその逆)に移動する場合には自然かつ迅速に移行可能なように情報を提示するといった表示が可能である。
【0090】
なお、以上の実施例は各視差画像を基準に説明したが、特開2006−098779号公報には視差画像のうち実際に必要な部分のみをまとめることにより視差画像の伝送や圧縮に向くフォーマットに変換する方法が述べられている。これによって変換された画像はタイル画像と呼ばれており、各実施例およびその変形例に必要な視差画像を全て備えている。そのため、各実施形態および各実施例ならびに各変形例はタイル画像を経由しても同様に実施することが可能である。
【0091】
以上に説明したように、帯状の妨害画像および偽像に由来する逆視や二重像を抑制すると共に、サイドローブに遷移する領域、またはその他の領域でその位置に応じた文字や矢印など任意の画像を表示することによるナビゲーションを可能とし、視域の把握を容易にすると共に視域からサイドローブ(またはその逆)に自然かつ迅速に移行することが可能となる。
【0092】
第1及び第2実施形態では、視域最適化処理を行ったことで発生したnと(n+1)の画素グループとそれに表示されていた視差情報で対応できる視域境界対策について述べた。しかしながら、第1実施形態の中で、本来行うべき混在処理として記載した視差画像番号で処理を行うこともできる。すなわち、図10において、破線21で示される画素グループ境界を忠実に再現する。視域最適化処理後の視差情報には存在しない画素情報(例えば、画素グループ23の視差画像5や、画素グループ23の視差画像−4)が必要になるが、視域最適化処理を行う前に、第1実施形態における視差画像記憶部32が記憶する視差画像から抜き出すことができれば、このような処理も可能である。このとき、視域最適化処理で発生していた、nと(n+1)の画素グループの概念は解消し、離散的にしか存在しない画素に表示される視差画像の混入する割合によって、連続的な画素グループ境界を実現したといえる。
【0093】
また第1及び第2実施形態では、主に式(4)で表現されるII方式について説明されており、図9、10、11のデータ空間は直交座標で描画されているが、式(6)で示されるような関係では、射出瞳と画素の相対位置は射出瞳ごとにずれてくるので、水平の軸は傾くことになる。その場合においても、観察位置に応じた画素グループ境界に相当する破線21を描けば、第1及び第2実施形態と同様の処理を適用することが可能である。すなわち、第1及び第2実施形態の処理は、射出瞳と画素の相対位置には制約されず、画素グループ境界に相当する破線21と、物理的な画素の境界が一致しない場合の全てにおいて、帯状妨害を発生させないための効果的な手段といえる。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0095】
10 平面表示装置
15〜15 画素グループ
20 光線制御素子(全射出瞳)
20〜20 射出瞳
30 画像データ処理装置
30A 画像データ処理装置
30B 画像データ処理装置
30C 画像データ処理装置
32 視差画像記憶部
33 提示情報入力部
34 混在領域特定部
35 混在処理部
36 挿入領域特定部
37 挿入画像生成部
38 挿入画像記憶部
39 挿入処理部
40 画像データ提示部
44 三次元画像変換部
46 三次元画像提示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配列された画素を有する平面表示装置と、
前記平面表示装置に対向して配置され、動作の際に複数の射出瞳によって前記画素からの光線を制御可能な光線制御素子と、
前記複数の射出瞳それぞれに対して対応付けられた、前記平面表示装置の複数の画素を含む複数の画素グループの視差情報を読み出すとともに、前記複数の画素グループの境界に隣接する2つの画素を特定し、特定された2つ画素のうちいずれか一方を第1の画素とし、もう一方を第2の画素とする特定部と、
特定された前記第1の画素の視差情報に前記第2の画素の視差情報を混在させる処理を行う処理部と、
前記処理部によって処理された視差情報を三次元画像表示用の画像に変換する変換部と、
を備え、前記平面表示装置は、前記三次元画像用の画像を表示することを特徴とする三次元画像表示装置。
【請求項2】
前記処理部は、視域境界線上に位置する画素の視差情報を意味する光線空間における矩形を通りかつ縦方向に平行な直線の、前記矩形の上辺から前記視域境界線までの距離と、前記矩形の下辺から前記視域境界線までの距離の割合に基づいて、前記第1の画素の視差情報に前記第2の画素の視差情報を混在させることを特徴とする請求項1記載の三次元画像表示装置。
【請求項3】
マトリクス状に配列された画素を有する平面表示装置と、
前記平面表示装置に対向して配置され、動作の際に複数の射出瞳によって前記画素からの光線を制御可能な光線制御素子と、
前記複数の射出瞳それぞれに対して対応付けられた、前記平面表示装置の複数の画素を含む複数の画素グループの視差情報を読み出すとともに、各画素グループに対して前記画素グループ内に含まれる画素の視差画像を荷重平均した挿入画像を生成する挿入画像生成部と、
視域境界を中心としたオフセット領域に含まれる画素を特定する特定部と、
前記特定部によって特定された画素に対して、前記挿入画像の対応する画像を挿入する挿入処理部と、
前記挿入処理部によって処理された画像を三次元画像表示用の画像に変換する変換部と、
を備え、前記平面表示装置は、前記三次元画像用の画像を表示することを特徴とする三次元画像表示装置。
【請求項4】
画像を記憶する記憶部を更に備え、
前記挿入画像生成部は、生成した前記挿入画像と前記記憶部に記憶されている画像とに基づいて、新たな挿入画像を生成することを特徴とする請求項3記載の三次元画像表示装置。
【請求項5】
マトリクス状に配列された画素を有する平面表示装置と、
前記平面表示装置に対向して配置され、動作の際に複数の射出瞳によって前記画素からの光線を制御可能な光線制御素子と、
前記複数の射出瞳それぞれに対して対応付けられた、前記平面表示装置の複数の画素を含む複数の画素グループの視差情報を読み出すとともに、視域境界を中心としたオフセット領域に含まれる画素を特定する特定部と、
前記特定部によって特定された画素に対して挿入される挿入画像を記憶する挿入画像記憶部と、
前記特定部によって特定された画素に対して、前記挿入画像の対応する画像を挿入する挿入処理部と、
前記挿入処理部によって処理された画像を三次元画像表示用の画像に変換する変換部と、
を備え、前記平面表示装置は、前記三次元画像用の画像を表示することを特徴とする三次元画像表示装置。
【請求項6】
前記記憶部に記憶されている画像には画素ごとに挿入される割合が定義され、前記挿入処理部では定義された前記割合で前記挿入画像を挿入することを特徴とする請求項5記載の三次元画像表示装置。
【請求項7】
前記挿入処理部は、特定された画素のうち、前記オフセット領域に完全に含まれる画素については挿入画像の対応する画素と置き換え、前記オフセット領域に一部が含まれている画素については、前記オフセット領域に含まれている割合に基づいて挿入の割合を決定することを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の三次元画像表示装置。
【請求項8】
マトリクス状に配列された画素を有する平面表示装置と、前記平面表示装置に対向して配置され、動作の際に複数の射出瞳によって前記画素からの光線を制御可能な光線制御素子と、を備えた三次元画像表示装置に用いられる画像処理装置であって、
前記複数の射出瞳それぞれに対して対応付けられた、前記平面表示装置の複数の画素を含む複数の画素グループの視差情報を読み出すとともに、前記複数の画素グループの境界に隣接する2つの画素を特定し、特定された2つ画素のうちいずれか一方を第1の画素とし、もう一方を第2の画素とする特定部と、
特定された前記第1の画素の視差情報に前記第2の画素の視差情報を混在させる処理を行う処理部と、
を備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
マトリクス状に配列された画素を有する平面表示装置と、前記平面表示装置に対向して配置され、動作の際に複数の射出瞳によって前記画素からの光線を制御可能な光線制御素子と、を備えた三次元画像表示装置に用いられる画像処理装置であって、
前記複数の射出瞳それぞれに対して対応付けられた、前記平面表示装置の複数の画素を含む複数の画素グループの視差情報を読み出すとともに、各画素グループに対して前記画素グループ内に含まれる画素の視差画像を荷重平均した挿入画像を生成する挿入画像生成部と、
視域境界を中心としたオフセット領域に含まれる画素を特定する特定部と、
前記特定部によって特定された画素に対して、前記挿入画像の対応する画像を挿入する挿入処理部と、
を備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
マトリクス状に配列された画素を有する平面表示装置と、前記平面表示装置に対向して配置され、動作の際に複数の射出瞳によって前記画素からの光線を制御可能な光線制御素子と、を備えた三次元画像表示装置に用いられる画像処理装置であって、
前記複数の射出瞳それぞれに対して対応付けられた、前記平面表示装置の複数の画素を含む複数の画素グループの視差情報を読み出すとともに、視域境界を中心としたオフセット領域に含まれる画素を特定する特定部と、
前記特定部によって特定された画素に対して挿入される挿入画像を記憶する挿入画像記憶部と、
前記特定部によって特定された画素に対して、前記挿入画像の対応する画像を挿入する挿入処理部と、
を備えていることを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−80261(P2012−80261A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222490(P2010−222490)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】