説明

上塗りフォトレジストと共に使用するためのコーティング組成物

【課題】上塗りされるフォトレジストの下地となるコーティング組成物の樹脂成分を形成するための薬剤として特に有用なシアヌラート化合物の提供。
【解決手段】下記式


で表されるイソシアヌラート化合物。式中、ROOC(CX)n−、R−、およびROOC(CX)m−基の少なくとも2つは異なる酸またはエステル基であり;R、RおよびR、並びに各Xは、それぞれ独立して水素または非水素置換基であり;nおよびmは同じかまたは異なっており、かつそれぞれは整数である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上塗りフォトレジストの下地となるコーティング組成物の樹脂成分を形成する薬剤として特に有用なシアヌラート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは基体への像の転写に使用される感光膜である。フォトレジストの塗膜層が基体上に形成され、次いで、そのフォトレジスト層がフォトマスクを通して活性化放射線源に露光される。フォトマスクは活性化放射線に対して不透明な領域および活性化放射線に対して透明な他の領域を有する。活性化放射線への露光は、フォトレジスト塗膜の光誘起または化学変換をもたらし、それによって、フォトマスクのパターンをフォトレジストでコーティングされた基体に移す。露光に続いて、フォトレジストは現像されて、基体の選択的な処理を可能にするレリーフ像を提供する。
【0003】
フォトレジストの主たる用途は、高度に研磨された半導体切片、例えば、シリコンまたはガリウムヒ素を、回路の機能を果たす電子伝導経路の複雑なマトリックスに変換することを目的とする半導体製造における用途である。適切なフォトレジスト処理が、この目的を達成することの鍵となる。様々なフォトレジスト処理工程の間には強い相互依存性があるが、露光は、高解像フォトレジスト像を達成するのに最も重要な工程の一つであると考えられている。
【0004】
フォトレジストを露光するのに使用される活性化放射線の反射は、多くの場合、フォトレジスト層においてパターン形成される像の解像度に限界をもたらす。基体/フォトレジスト界面からの放射線の反射は、フォトレジスト内の放射線強度の空間的な変動を生じさせる場合があり、結果的に現像における不均一なフォトレジスト線幅をもたらしうる。放射線は基体/フォトレジスト界面から、露光が意図されないフォトレジストの領域に散乱することもあり、この場合も線幅の変動をもたらしうる。
【0005】
反射した放射線の問題を低減するために使用される一つの試みは、基体表面とフォトレジスト塗膜層との間に挿入される放射線吸収層の使用であった。米国特許第7425403号を参照。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7425403号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電子デバイス製造者は、反射防止塗膜層上にパターン形成されたフォトレジスト像の増大した解像度を継続して求めている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一形態においては、本発明者は、別個の下地反射防止コーティング組成物の樹脂を形成するのに有用な新規のシアヌラート型モノマーを提供する。
さらなる形態においては、本明細書において開示されるような、反応したシアヌラート型モノマーを含む樹脂が提供される。
好ましい形態においては、異なる(別個の)カルボキシ(例えば、−COOH)および/またはカルボキシエステル(例えば、COOR、[式中、Rは水素以外であり、例えば、C1−12アルキルである])置換による、複数のシアヌラート窒素環原子の置換を含むシアヌラート型化合物が提供される。この形態において、特に好ましい化合物には下記式Iのものが挙げられる:
【化1】

式中、ROOC(CX−、R−、およびROOC(CX−基の少なくとも2つは異なる酸またはエステル基であり;
、R、Rおよび各Xはそれぞれ独立して水素または非水素置換基、例えば、場合によって置換されたアルキル(例えば、場合によって置換されたC1−10アルキル)、場合によって置換され、好ましくは2〜約10の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル、例えば、アリル、場合によって置換され、好ましくは1〜約10の炭素原子を有するアルカノイル;場合によって置換され、好ましくは1〜約10の炭素原子を有するアルコキシ(エポキシなど)、例えば、メトキシ、プロポキシ、ブトキシ;場合によって置換され、好ましくは1〜約10の炭素原子を有するアルキルチオ;場合によって置換され、好ましくは1〜約10の炭素原子を有するアルキルスルフィニル;場合によって置換され、好ましくは1〜約10の炭素原子を有するアルキルスルホニル;場合によって置換され、好ましくは1〜約10の炭素原子を有するカルボキシ(当該カルボキシには、光酸と実質的に非反応性であるエステルをはじめとする、−COOR’[式中、R’はHもしくはC1−8アルキル]のような基が挙げられる);場合によって置換されたアルカリール、例えば、場合によって置換されたベンジル、場合によって置換された炭素環式アリール、例えば、場合によって置換されたフェニル、ナフチル、アセナフチル、または場合によって置換されたヘテロ脂環式もしくはヘテロ芳香族基、例えば、メチルフタルイミド、N−メチル−1,8−フタルイミドであり;
nおよびmはそれぞれ独立して整数、例えば、0、1、2、3または4であり、nおよび/またはmが正の整数、例えば1または2であるのが多くの場合好ましい。
【0009】
ある好ましい形態においては、nおよびmがそれぞれ1より大きい場合の式IのROOC(CX−、およびROOC(CX−基については、好ましくは、環窒素に直接共有結合したこの基の第1炭素では、X基の両方とも水素であり、たとえば、nおよびmがそれぞれ2であるこの基は、好ましくは、ベータ炭素上のX基の1以上が多くの場合水素以外、例えば、フルオロである式ROOC(CXCH)−、およびROOC(CXCH−を有する。
【0010】
多くの実施形態については、好ましい化合物には1以上のX基が水素である化合物、例えば、下記式IAの化合物が挙げられる:
【化2】

式中、ROOC(CX−、R−、およびROOC(CX−基の少なくとも2つは異なる酸またはエステル基であり;
、R、およびRはそれぞれ独立して水素または非水素置換基、例えば、場合によって置換されたアルキル(例えば、場合によって置換されたC1−10アルキル)、場合によって置換され、好ましくは2〜約10の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニル、例えば、アリル、場合によって置換され、好ましくは1〜約10の炭素原子を有するアルカノイル;場合によって置換され、好ましくは1〜約10の炭素原子を有するアルコキシ(エポキシなど)、例えば、メトキシ、プロポキシ、ブトキシ;場合によって置換され、好ましくは1〜約10の炭素原子を有するアルキルチオ;場合によって置換され、好ましくは1〜約10の炭素原子を有するアルキルスルフィニル;場合によって置換され、好ましくは1〜約10の炭素原子を有するアルキルスルホニル;場合によって置換され、好ましくは1〜約10の炭素原子を有するカルボキシ(当該カルボキシには、光酸と実質的に非反応性であるエステルをはじめとする、−COOR’[式中、R’はHもしくはC1−8アルキル]のような基が挙げられる);場合によって置換されたアルカリール、例えば、場合によって置換されたベンジル、場合によって置換された炭素環式アリール、例えば、場合によって置換されたフェニル、ナフチル、アセナフチル、または場合によって置換されたヘテロ脂環式もしくはヘテロ芳香族基、例えば、メチルフタルイミド、N−メチル−1,8−フタルイミドであり;
nおよびmはそれぞれ独立して整数、例えば、0、1、2、3または4であり、nおよび/またはmが正の整数、例えば1または2であるのが多くの場合好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、ROOC(CX−、R−、およびROOC(CX−基の少なくとも2つは異なる酸またはエステル基であること(または、式IAの場合には、ROOC(CH−、R−、およびROOC(CH−基の少なくとも2つは異なる酸またはエステル基である)を示すことは、少なくとも2つの基が少なくとも1つの原子の相違を有することを意味する。例えば、nおよびmの値が同じでない場合には、これらの基は異なる酸またはエステル基である。RおよびR基が同じでないならば(例えば、Rが−CHであり、RがHである)、これらの基は異なる酸またはエステル基である。Rが酸であり、Rが水素以外である場合には、これらの基は異なっている。多くの場合、これらの基においては、2以上の原子が異なっている。
【0012】
上記式IおよびIAにおいては、好ましいRおよびR部分には、場合によって置換されたアルキル(当該アルキルには、シクロアルキルも挙げられる)、好ましくは3〜8個の炭素を有するアルキル(当該アルキルには、シクロアルキルも挙げられる)が挙げられる。酸部分またはアルキルエステル部分を含むR基も好ましい。
【0013】
特定の実施形態においては、好ましい化合物は、R、RおよびRの少なくとも1つが1以上のハロゲン原子、特に1以上のフッ素原子および/または1以上の塩素原子を含む、例えば、ハロアルキルおよびアルキルアリール(例えば、ハロフェニルまたはハロナフチル)、例えば、−CF、>CF、−CHF、>CHF、−CHF、C5−x、C5−xCl、−CCl、>CCl、−CHCl、>CHCl、−CHClである、上記式IおよびIAの化合物である。一般的に好ましいのは、Rがハロゲン置換を有する式IおよびIAの化合物である。
【0014】
さらなる形態において、本明細書において開示される樹脂を含む反射防止組成物が提供される。
【0015】
上記式IおよびIAのR基は、この基を含む後に続くポリマーに様々な機能を導入するのに、例えば、所望のリソグラフィー特性、例えば、光学特性、エッチング速度、熱特性、コーティング溶媒における溶解度、および様々な基体表面上へのコーティング特性を付与するために有用であり得る。上記式IのR基は、より直線的かつ高分子のコーティングポリマー組成物を得るための重合プロセスにも影響しうる。
【0016】
本発明の好ましい樹脂は、薬剤として式IおよびIIの1種以上の化合物を使用して製造されうる。特に好ましい樹脂は、当該樹脂を含む適用された塗膜層の硬化をもたらす拘束された(共有結合した)架橋剤成分を含みうる。
【0017】
上述のように、本明細書において開示される1種以上の樹脂を好ましくは含むことができる下地コーティング組成物も提供される。下地組成物の好ましい追加の成分には架橋性官能基または物質が挙げられる。好ましい下地コーティング組成物は、所望の基体、例えば、マイクロエレクトロニクスウェハへのスピンオン適用のための有機溶媒組成物として配合される。
【0018】
本発明の好ましいコーティング組成物は水接触角を調節するために処理する前に架橋される。このような架橋には、1種以上の組成物成分間の硬化および共有結合形成反応が挙げられる。
【0019】
反射防止用途のためには、本発明の下地組成物は好ましくは、上塗りレジスト層を露光するために使用され、反射してレジスト層に戻る望まれない放射線を吸収することができる発色団を含む成分も含む。このような発色団は、樹脂または酸発生剤化合物のような他の組成物成分に存在することができ、または組成物は場合によって置換されたフェニル基、場合によって置換されたアントラセン基もしくは場合によって置換されたナフチル基の1種以上のような、1種以上の発色団部分を含むような発色団単位、例えば、低分子(例えば、約1000または500未満のMW)を含むことができる別の成分を含むことができる。
【0020】
本発明のコーティング組成物に含まれる概して好ましい発色団、特に反射防止用途に使用されるものには、単環および複数環双方の芳香族基、例えば、場合によって置換されたフェニル、場合によって置換されたナフチル、場合によって置換されたアントラセニル、場合によって置換されたフェナントラセニル、場合によって置換されたキノリニルなどが挙げられる。特に好ましい発色団は上塗りレジスト層を露光するのに使用される放射線に応じて変化しうる。より詳細には、248nmでの上塗りレジストの露光については、場合によって置換されたアントラセンおよび場合によって置換されたナフチルが、反射防止組成物の好ましい発色団である。193nmでの上塗りレジストの露光については、場合によって置換されたフェニルおよび場合によって置換されたナフチルが、反射防止組成物の特に好ましい発色団である。好ましくは、このような発色団は反射防止組成物の樹脂成分に結合している(例えば、ペンダント基)。
【0021】
上述のように、本発明のコーティング組成物は好ましくは架橋性組成物であり、例えば、熱または活性化放射線処理の際に架橋するかまたは別の方法で硬化する物質を含む。典型的には、この組成物は架橋剤成分、例えば、アミン含有物質、例えば、メラミン、グリコウリルもしくはベンゾグアナミン化合物または樹脂を含むことができる。
【0022】
好ましくは本発明の架橋性組成物は組成物塗膜層の熱処理を介して硬化されうる。好適には、コーティング組成物は、架橋反応を促進するために、酸またはより好適には酸発生剤化合物、特に熱酸発生剤化合物も含む。
【0023】
反射防止コーティング組成物並びに他の用途、例えば、ビアフィルとして使用するために、好ましくは、組成物は、この組成物層上にフォトレジスト組成物層を適用する前に架橋される。
【0024】
様々なフォトレジストが本発明のコーティング組成物と組み合わせて(すなわち、上塗りされて)使用されうる。本発明の反射防止組成物と共に使用するのに好ましいフォトレジストは化学増幅型レジスト、特に、1種以上の光酸発生剤化合物と、光により発生した酸の存在下でデブロッキング(deblocking)もしくは切断反応を受ける単位、例えば、光酸不安定(photoacid−labile)−エステル、アセタール、ケタールまたはエーテル単位を含む樹脂成分とを含むポジ型フォトレジストである。活性化放射線への露光の際に架橋(すなわち、硬化もしくは固化)するレジストのような、ネガ型フォトレジストも本発明のコーティング組成物と共に使用されうる。本発明のコーティング組成物と共に使用するのに好ましいフォトレジストは、比較的短い波長の放射線、例えば、300nm未満、もしくは260nm未満、例えば、約248nmの波長を有する放射線、または約200nm未満、例えば、193nmの波長を有する放射線で像形成されうる。
【0025】
本発明は、フォトレジストレリーフ像を形成する方法、および本発明のコーティング組成物を単独でもしくはフォトレジスト組成物と組み合わせてコーティングした基体(例えば、マイクロエレクトロニクスウェハ基体)を含む新規の製造物品をさらに提供する。
【0026】
本発明の他の形態が以下に開示される。
本発明者は、上塗りフォトレジスト層と併用されるのに特に有用な新規の有機コーティング組成物を提供する。本発明の好ましいコーティング組成物はスピンコーティング(スピンオン組成物)により適用されることができ、溶媒組成物として配合されうる。本発明のコーティング組成物は、上塗りフォトレジストのための反射防止組成物として、および/または上塗りフォトレジスト組成物塗膜層の平坦化またはビアフィル組成物として特に有用である。
【0027】
上述のように、好ましい形態においては、異なる(別個の)カルボキシ(例えば、−(CXCOOH、式中、Xおよびnは上記式Iに定義されたものである)および/またはカルボキシエステル(例えば、−(CH)nCOOR、式中Xおよびnは上記式Iに定義されたものであり、Rは水素以外であり、例えば、C1−12アルキルである)置換による複数のシアヌラート窒素環原子の置換を含むシアヌラート型化合物が提供される。このようなモノマー化合物の反応により提供される樹脂も好ましい。
【0028】
別の好ましい形態においては、ハロ置換、特にフッ素または塩素置換を含むシアヌラート型モノマーが提供される。このようなモノマー化合物の反応により提供される樹脂も好ましい。
【0029】
樹脂:
上述のように、好ましい樹脂には、上記式Iから選択される1種以上の薬剤を用いて形成されるものが挙げられる。酸性もしくは塩基性縮合反応が好適であり得る。好ましくは、式Iから選択される薬剤は、形成される樹脂の全繰り返し単位の少なくとも約5パーセントを構成し、より好ましくは、形成される樹脂の全繰り返し単位の少なくとも約10、15、20、25、30、35、40、45、50または55パーセントを構成する。
【0030】
1つの好ましい合成経路は次のスキームIに示される:
【化3】

上記スキームIにおいては、RおよびRは、上記式IおよびIAのRと同じであり、例えば、下記スキームIIに例示されるように、モノマー化合物に容易にグラフトされうる。上記スキームIにおけるRおよびRのそれぞれは独立して、上記式IおよびIAにおいてRおよびRについて定義されるのと同じである。
【化4】

【0031】
上記スキームIIにおいては、各Rは独立して、上記式IにおいてRについて定義される基であり、好ましくは、スキームIIにおける各Rは独立して、例えば、水素、C1−20アルキル、好ましくはC1−10アルキル、C1−20アルコキシ、好ましくはC1−10アルコキシ、C7−20アルキルアリールであり、スキームIIにおけるRは上記式IにおけるRと同じである。
【0032】
好適なポリオール剤には、ジオール、グリセロールおよびトリオール、例えば、ジオールとしてエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、シクロブチルジオール、シクロペンチルジオール、シクロヘキシルジオール、ジメチルロールシクロヘキサン、およびトリオールとしてグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどが挙げられる。
【0033】
特に好適な樹脂合成は下記の実施例にも示される。
論じられたように、反射防止用途のためには、反応して樹脂を形成する化合物の1種以上は、好適には、上塗りフォトレジスト塗膜層を露光するのに使用される放射線を吸収する発色団として機能しうる部分を含む。例えば、フタラート化合物(例えば、フタル酸もしくはフタル酸ジアルキル(すなわち、各エステルが1〜6個の炭素原子を有する様なジエステル、好ましくはフタル酸ジメチルもしくはフタル酸ジエチル))が芳香族もしくは非芳香族ポリオールおよび場合によって他の反応性化合物と重合されることができ、サブ200nmの波長、例えば、193nmで像形成されるフォトレジストと共に使用される反射防止組成物において特に有用であるポリエステルを提供できる。同様に、サブ300nmの波長またはサブ200nmの波長、例えば、248nmもしくは193nmで像形成される上塗りフォトレジストと併用の組成物中に使用される樹脂には、ナフチル化合物、例えば、1もしくは2もしくはそれより多いカルボキシル置換基を有するナフチル化合物、例えば、ナフタレンジカルボン酸ジアルキル、特に、ジ−C1−6アルキルが重合されうる。反応性アントラセン化合物、例えば、1以上のカルボキシもしくはエステル基、例えば、1以上のメチルエステルもしくはエチルエステル基を有するアントラセン化合物も好ましい。
【0034】
発色団単位を含む化合物は、1もしくは好ましくは2以上のヒドロキシ基も含むことができ、カルボキシル含有化合物と反応されうる。例えば、1、2もしくはそれより多いヒドロキシル基を有するフェニル化合物もしくはアントラセン化合物がカルボキシル含有化合物と反応させられうる。
【0035】
さらに、反射防止目的で使用される下地コーティング組成物は、水接触角調節をもたらす樹脂成分とは別に、発色団単位を含む物質を含むことができる(例えば、光酸不安定基および/または塩基反応性基を含む樹脂)。例えば、コーティング組成物は、フェニル、アントラセン、ナフチルなどの単位を含むポリマー化合物もしくは非ポリマー化合物を含むことができる。しかし、多くの場合、水接触角調節および発色団部分を提供する1種以上の樹脂が好ましい。
【0036】
本発明の下地コーティング組成物の樹脂は、好ましくは、約1,000〜約10,000,000ダルトン、より典型的には、約2,000〜約100,000ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有し、約500〜約1,000,000ダルトンの数平均分子量(Mn)を有する。本発明のポリマーの分子量(MwまたはMn)は好適にはゲル浸透クロマトグラフィーによって好適に決定される。
【0037】
示されるように、本発明の好ましい下地コーティング組成物は、例えば、熱および/または放射線処理によって架橋されうる。例えば、好ましい本発明の下地コーティング組成物は、このコーティング組成物の1種以上の他の成分と架橋することができる別個の架橋剤成分を含むことができる。概して、好ましい架橋性コーティング組成物は別個の架橋剤成分を含む。本発明の特に好ましいコーティング組成物は、別個の成分として、樹脂、架橋剤および酸源、例えば、熱酸発生剤化合物を含む。熱酸発生剤の活性化によるコーティング組成物の熱誘起架橋が概して好ましい。
【0038】
コーティング組成物における使用に好適な熱酸発生剤化合物には、反射防止組成物塗膜層の硬化中に架橋を触媒しまたは促進するための、イオン性または実質的に中性の熱酸発生剤、例えば、アンモニウムアレーンスルホナート塩が挙げられる。典型的には、1種以上の熱酸発生剤がコーティング組成物中に、組成物の全乾燥成分(溶媒キャリアを除いた全成分)の約0.1〜10重量パーセント、より好ましくは全乾燥成分の約2重量パーセントの量で存在する。
【0039】
本発明の好ましい架橋型コーティング組成物は架橋剤成分も含む。シプレイ(Shipley)欧州特許出願公開第542008号(参照により本明細書に組み込まれる)に開示される架橋剤をはじめとする様々な架橋剤が使用されうる。例えば、好適なコーティング組成物架橋剤には、アミンベースの架橋剤、例えば、メラミン物質、例えば、サイテックインダストリーズ(Cytec Industries)によって製造され、サイメル(Cymel)300、301、303、350、370、380、1116および1130の商品名で販売されているメラミン樹脂が挙げられる。サイテックインダストリーズから入手可能なグリコールウリルをはじめとするグリコールウリルが特に好ましい。サイテックインダストリーズからサイメル1123および1125の名称で入手可能なベンゾグアナミン樹脂、およびサイテックインダストリーズからパウダーリンク(Powderlink)1174および1196の名称で入手可能な尿素樹脂をはじめとする、ベンゾグアナミンおよび尿素ベースの物質も好適であり得る。市販のものに加えて、このようなアミンベースの樹脂は、例えば、アルコール含有溶液中でのアクリルアミドもしくはメタクリルアミドコポリマーとホルムアルデヒドとの反応によって、またはN−アルコキシメチルアクリルアミドもしくはメタクリルアミドと他の好適なモノマーとの共重合によって製造されうる。
【0040】
本発明のコーティング組成物の架橋剤成分は、一般に、反射防止組成物の全固形分(溶媒キャリア以外の全成分)の約5〜50重量パーセントの量で、より典型的には、全固形分の約7〜25重量パーセントの量で存在する。
【0041】
本発明のコーティング組成物、特に反射制御用途のコーティング組成物は、上塗りフォトレジスト層を露光するのに使用される放射線を吸収する追加の染料化合物も含むことができる。他の任意の添加剤には、表面平滑剤(surface leveling agent)、例えば、シルウェット(Silwet)7604の商品名で入手可能な平滑剤、または3Mカンパニーから入手可能な界面活性剤FC171またはFC431が挙げられる。
【0042】
本発明の下地コーティング組成物は、上塗りフォトレジスト組成物ついて使用するために論じられるような光酸発生剤をはじめとする光酸発生剤のような他の物質も含むことができる。反射防止組成物における光酸発生剤のこのような使用の論述については、米国特許第6261743号を参照。
【0043】
本発明の液体コーティング組成物を製造するために、コーティング組成物の成分は好適な溶媒、例えば、1種以上のオキシイソブチル酸エステル、特に、上述のようなメチル−2−ヒドロキシイソブチラート、乳酸エチル、もしくは1種以上のグリコールエーテル、例えば、2−メトキシエチルエーテル(ジグライム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル;エーテルおよびヒドロキシ部分双方を有する溶媒、例えば、メトキシブタノール、エトキシブタノール、メトキシプロパノールおよびエトキシプロパノール;2−ヒドロキシイソブチル酸メチル;エステル、例えば、メチルセロソルブアセタート、エチルセロソルブアセタート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタートおよび他の溶媒、例えば、2塩基エステル、プロピレンカーボナートおよびガンマ−ブチロラクトンなどに溶解される。溶媒中の乾燥成分の濃度は、適用方法のようないくつかの要因に依存しうる。一般に、下地コーティング組成物の固形分量はコーティング組成物の全重量の約0.5〜20重量パーセントで変動し、好ましくはこの固形分量はコーティング組成物の約0.5〜10重量で変動する。
【0044】
典型的なフォトレジスト系
ポジ型およびネガ型光酸発生組成物のような様々なフォトレジスト組成物が本発明のコーティング組成物と共に使用されうる。本発明の反射防止組成物と共に使用されるフォトレジストは、典型的には、樹脂バインダーおよび光活性成分、典型的には光酸発生剤化合物を含む。好ましくは、フォトレジスト樹脂バインダーは、像形成されるレジスト組成物に水性アルカリ現像可能性を付与する官能基を有する。
【0045】
上述のように、本発明の下地コーティング組成物と共に使用するのに特に好ましいフォトレジストは、化学増幅型レジストであり、特にポジ型化学増幅型レジスト組成物が挙げられ、このレジスト層において光活性化された酸は1種以上の組成物成分の脱保護型反応を誘導し、それにより、レジスト塗膜層の露光領域と未露光領域との間の溶解度差をもたらす。多くの化学増幅型レジスト組成物が、米国特許第4,968,581号;第4,883,740号;第4,810,613号;第4,491,628号および第5,492,793号に記載されている。本発明のコーティング組成物は、光酸の存在下でデブロッキングを受けるアセタール基を有するポジ型化学増幅型フォトレジストと共に、特に好適に使用される。このようなアセタールベースのレジストは、例えば、米国特許第5,929,176号および第6,090,526号に記載されている。
【0046】
本発明の下地コーティング組成物は、他のポジ型レジスト、例えば、極性官能基、例えば、ヒドロキシルもしくはカルボキシラートを含む樹脂バインダーを含むレジストと共に使用されることもでき、その樹脂バインダーは水性アルカリ溶液でレジストを現像可能にするのに充分な量でレジスト組成物中に使用される。一般に、好ましいレジスト樹脂バインダーはフェノール系樹脂であり、例えば、当該技術分野でノボラック樹脂として知られているフェノールアルデヒド縮合物、アルケニルフェノールのホモおよびコポリマー、並びにN−ヒドロキシフェニル−マレイミドのホモおよびコポリマーが挙げられる。
【0047】
本発明の下地コーティング組成物と共に使用するのに好ましいポジ型フォトレジストは、像形成有効量の光酸発生剤化合物および下記の群から選択される1種以上の樹脂を含む:
1)248nmでの像形成に特に好適な化学増幅ポジ型レジストを提供できる酸不安定基を含むフェノール系樹脂。この種の特に好ましい樹脂には以下のものが挙げられる:i)ビニルフェノールおよびアクリル酸アルキルの重合単位を含むポリマーであって、重合されたアクリル酸アルキル単位が光酸の存在下でデブロッキング反応を受けうるポリマー。光酸誘起デブロッキング反応を受けうる代表的なアクリル酸アルキルには、例えば、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチルアダマンチル、メタクリル酸メチルアダマンチル、および光酸誘起反応を受けうる他の非環式アルキルおよび脂環式アクリラートが挙げられ、例えば、米国特許第6,042,997号および第5,492,793号におけるポリマーが挙げられる;ii)ヒドロキシまたはカルボキシ環置換基を含まない、場合によって置換されたビニルフェニル(例えば、スチレン)、ビニルフェノール、および上記ポリマーi)について記載されるデブロッキング基のようなアクリル酸アルキルの重合単位を含むポリマー、例えば、米国特許第6,042,997号に記載されるポリマー;並びに、iii)光酸と反応できるアセタールまたはケタール部分を含む繰り返し単位を含み、および場合によってフェニルまたはフェノール性基のような芳香族繰り返し単位を含むポリマー;このようなポリマーは米国特許第5,929,176号および第6,090,526号に記載されている:
2)フェニルまたは他の芳香族基を実質的にまたは完全に含まず、サブ200nmの波長、例えば、193nmでの像形成に特に好適な化学増幅ポジ型レジストを提供できる樹脂。特に好ましいこの種の樹脂には次のものが挙げられる:i)非芳香族環式オレフィン(環内二重結合)、例えば、場合によって置換されたノルボルネンの重合単位を含むポリマー、例えば、米国特許第5,843,624号および第6,048,664号に記載されたポリマー;ii)アクリル酸アルキル単位、例えば、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチルアダマンチル、メタクリル酸メチルアダマンチル、および他の非環式アルキルおよび脂環式アクリラートを含むポリマー;このようなポリマーは米国特許第6,057,083号;欧州特許出願公開第EP01008913A1号およびEP00930542A1号;および米国特許出願第09/143,462号に記載されている;並びに、iii)重合された酸無水物単位、特に重合された無水マレイン酸および/または無水イタコン酸単位を含むポリマー、例えば、欧州特許出願公開第EP01008913A1号および米国特許第6,048,662号に開示されるポリマー:
3)ヘテロ原子、特に酸素および/または硫黄を含む繰り返し単位(ただし、酸無水物は除く、すなわち、この単位はケト環原子を含まない)を含み、かつ望ましくは実質的にまたは完全に芳香族単位を含まない樹脂。好ましくは、ヘテロ脂環式単位はこの樹脂骨格に縮合されており、さらに好ましいのは、樹脂が、ノルボルネン基の重合により提供されるような縮合炭素脂環式単位、および/または無水マレイン酸もしくは無水イタコン酸の重合により提供されるような酸無水物単位を含むものである。このような樹脂は国際出願第PCT/US01/14914号および米国特許出願番号第09/567,634号に開示されている:
4)フッ素置換を含む樹脂(フルオロポリマー)、例えば、テトラフルオロエチレン、フッ素化芳香族群、例えば、フルオロ−スチレン化合物などの重合により提供されうる樹脂。このような樹脂の例は、例えば、国際出願第PCT/US99/21912号に開示されている。
【0048】
本発明のコーティング組成物上に上塗りされるポジ型またはネガ型フォトレジストに使用するのに好適な光酸発生剤には、下記式の化合物のようなイミドスルホナートが挙げられる:
【化5】

式中、Rはカンフル、アダマンタン、アルキル(例えば、C1−12アルキル)およびフルオロアルキル、例えば、フルオロ(C1−18アルキル)、例えば、RCF−[式中、Rは場合によって置換されたアダマンチルである]である。
【0049】
上記スルホナートアニオン、特にペルフルオロアルキルスルホナート、例えば、ペルフルオロブタンスルホナートのようなアニオンと複合体を形成したトリフェニルスルホニウムPAGも好ましい。
他の既知のPAGも本発明のレジストにおいて使用されうる。特に193nmの像形成のためには、向上した透明性を提供するために、上記イミドスルホナートのような、芳香族基を含まないPAGが概して好ましい。
【0050】
本発明の組成物において使用するのに好適な他の光酸発生剤には、例えば、オニウム塩、例えば、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホナート;ニトロベンジル誘導体、例えば、2−ニトロベンジルp−トルエンスルホナート、2,6−ジニトロベンジルp−トルエンスルホナート、および2,4−ジニトロベンジルp−トルエンスルホナート;スルホン酸エステル、例えば、1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、および1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼン;ジアゾメタン誘導体、例えば、ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン;グリオキシム誘導体、例えば、ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、およびビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム;N−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体、例えば、N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル;並びに、ハロゲン含有トリアジン化合物、例えば、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、および2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンが挙げられる。このようなPAGの1種以上が使用されうる。
【0051】
本発明のレジストの好ましい任意成分の添加剤は追加塩基、特にテトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)またはテトラブチルアンモニウムラクタートであり、これは現像されたレジストレリーフ像の解像度を向上させることができる。193nmで像形成されるレジストについては、好ましい追加塩基はテトラブチルアンモニウムヒドロキシドの乳酸塩、並びに様々な他のアミン、例えば、トリイソプロパノール、ジアザビシクロウンデセンまたはジアザビシクロノネンである。追加塩基は比較的少量で、例えば、全固形分に対して約0.03〜5重量パーセントで好適に使用される。
【0052】
本発明の上塗りコーティング組成物と共に使用するのに好適なネガ型レジスト組成物は、酸および光酸発生剤への曝露の際に硬化、架橋または固化する物質の混合物を含む。
【0053】
特に好ましいネガ型レジスト組成物は、本発明のフェノール系樹脂のような樹脂バインダー、架橋剤成分および光活性成分を含む。このような組成物およびその使用は欧州特許出願公開第0164248号および第0232972号、並びにThackerayらへの米国特許第5,128,232号に開示されている。樹脂バインダー成分として使用するのに好ましいフェノール系樹脂には、上述のようなノボラックおよびポリ(ビニルフェノール)類が挙げられる。好ましい架橋剤には、アミンベースの物質、例えば、メラミン、グリコールウリル、ベンゾグアナミンベースの物質および尿素ベースの物質が挙げられる。メラミンホルムアルデヒド樹脂は概して最も好ましい。このような架橋剤は市販されており、例えば、メラミン樹脂は、サイメル300、301および303の商品名でサイテックインダストリーズによって販売されている。グリコールウリル樹脂はサイメル1170、1171、1172、パウダーリンク1174の商品名で販売されており、ベンゾグアナミン樹脂はサイメル1123および1125の商品名で販売されている。
【0054】
本発明のフォトレジストは他の任意物質も含むことができる。例えば、他の任意の添加剤には、ストリエーション防止(anti−striation)剤、可塑剤、速度増強剤、溶解阻止剤などが挙げられる。このような任意の添加剤は、充填剤および染料(これらは比較的高濃度、例えば、レジストの乾燥成分の全重量の約5〜30重量パーセントの量で存在できる)を除いて、典型的には、フォトレジスト組成物中で低濃度で存在することができる。
【0055】
リソグラフィー処理
使用において、本発明のコーティング組成物は、スピンコーティングのような様々な方法のいずれかによって、コーティング層として基体に適用される。コーティング組成物は一般に、約0.02〜0.5μmの乾燥層厚で、好ましくは、約0.04〜0.20μmの乾燥層厚で基体上に適用される。基体は好適には、フォトレジストに関連する方法において使用されるあらゆる基体である。例えば、基体はケイ素、二酸化ケイ素、またはアルミニウム−酸化アルミニウムマイクロエレクトロニクスウェハであることができる。ガリウムヒ素、炭化ケイ素、セラミック、石英または銅基体も使用されうる。液晶ディスプレイまたは他のフラットパネルディスプレイ用途のための基体、例えば、ガラス基体、インジウムスズ酸化物被覆基体なども好適に使用される。光学デバイスおよび光電子デバイス(例えば、導波路)のための基体も使用されうる。
【0056】
好ましくは、下地コーティング組成物上にフォトレジスト組成物が適用される前に、適用されたコーティング層を硬化させる。硬化条件は下地コーティング組成物の成分によって変動しうる。特に、硬化温度は、コーティング組成物において使用される具体的な酸または酸(熱)発生剤に依存しうる。典型的な硬化条件は約80℃〜225℃で約0.5〜5分である。硬化条件は好ましくは、コーティング組成物塗膜層をフォトレジスト溶媒およびアルカリ水性現像剤溶液に対して実質的に不溶性にする。
【0057】
このような硬化後、適用されたコーティング組成物の表面上にフォトレジストが適用される。下地コーティング組成物層の適用に関して、上塗りフォトレジストは、スピニング、ディッピング、メニスカスまたはローラーコーティングのようなあらゆる標準的な手段によって適用されうる。適用に続いて、フォトレジスト塗膜層は典型的には加熱によって乾燥させられ、好ましくはレジスト層が粘着性でなくなるまで溶媒を除去する。最適には、下地組成物層と上塗りフォトレジスト層との相互混合が本質的に起こるべきではない。
【0058】
次いで、レジスト層は、従来の方法で、マスクを通した活性化放射線で像形成される。露光エネルギーは、レジスト塗膜層におけるパターン形成された像を生じさせるためにレジスト系の光活性成分を有効に活性化するのに充分なものである。典型的には、露光エネルギーは、約3〜300mJ/cmの範囲であり、部分的には、露光ツールおよび使用される具体的なレジストおよびレジスト処理に依存する。露光されたレジスト層は、コーティング層の露光領域と非露光領域との間の溶解度差を作り出すかもしくは増強させることが望まれる場合には、露光後ベークにかけられうる。例えば、ネガ型硬化性フォトレジストは、典型的には、酸促進架橋反応を誘起させるために露光後加熱を必要とし、多くの化学増幅ポジ型レジストは酸促進脱保護反応を誘起するために露光後加熱を必要とする。典型的な露光後ベーク条件には、約50℃以上の温度、より具体的には、約50℃〜約160℃の範囲の温度が挙げられる。
【0059】
フォトレジスト層は液浸リソグラフィーシステム、すなわち、露光ツール(特に、投影レンズ)とフォトレジストでコーティングされた基体との間の空間が液浸流体、例えば、水もしくは、向上した屈折率の流体を提供しうる硫酸セシウムのような1種以上の添加剤と混合された水で占有されている液浸リソグラフィーシステムにおいて露光されてもよい。好ましくは、液浸流体(例えば、水)は気泡を回避するために処理されており、例えば、水はナノバブルを回避するために脱ガスされうる。
【0060】
本明細書において「液浸露光」または他の類似の用語についての言及は、露光が、露光ツールと、塗布されたフォトレジスト組成物層との間に挿入されるこのような流体層(例えば、水もしくは添加剤を含む水)を用いて行われることを示す。
【0061】
露光されたレジスト塗膜層は、次いで、現像され、好ましくは、水性現像剤、例えば、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、水性アンモニアなどによって例示されるようなアルカリで現像される。あるいは、有機現像剤が使用されうる。一般に、現像は、認識された手順に従う。現像に続いて、酸硬化性フォトレジストの最終ベークが、多くの場合、約100℃〜約150℃の温度で数分間行われ、現像された露光塗膜層領域をさらに硬化させる。
【0062】
現像された基体については、次いで、フォトレジストが除かれたこれら基体領域上が選択的に処理されることができ、例えば、当該技術分野で周知の手順に従ってフォトレジストが除かれた基体領域を化学的にエッチングまたはめっきすることができる。好適なエッチング剤には、フッ化水素酸エッチング溶液、およびプラズマガスエッチング、例えば、酸素プラズマエッチングなどが挙げられる。プラズマガスエッチングは下地塗膜層を除去する。
【0063】
プラズマエッチングは次のプロトコルによって行われた:コーティングされた基体(例えば、本発明に従って、下地コーティング組成物およびレジストでコーティングされた基体)は、25mTの圧力、600ワットのトップパワー(top power)、33CHF(Sccm)、7O(Sccm)および80Ar(Sccm)でプラズマエッチングチャンバーに配置される。
【0064】
次の非限定的な実施例は本発明の例示である。本明細書において言及される全ての文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0065】
実施例1
上記スキームIIに従った式Iのモノマーを製造するための一般的な合成手順
ブチルビス(カルボキシエチル)イソシアヌル酸エステル200gを、室温で、525gのTHFに溶解させる。均一な溶液を氷浴中で0℃に冷却し、続いて、125.14gのベンジルブロミドを添加する。透明な溶液が得られたら、98.7gの1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−ウンデセ−7−エン、すなわちDBU、が反応混合物にゆっくり添加される。DBUの添加完了後に、内容物が一晩室温で攪拌され、塩の濃厚な白色沈殿物を得る。この沈殿物がろ過され、有機層が500mlの酢酸エチルの添加によって希釈される。合わせた有機層が0.1NのHClで洗浄され、続いて水性層が中性pHとなるまで水洗する。この有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、続いて、真空乾燥して、約210gの粘稠なオイルを得る。このモノマーの純度はH NMR、13C NMRおよびHPLCを用いて、約99%より高いと決定された。
【0066】
実施例2〜12は実施例1の一般的な手順に従って製造された他の有用なモノマーである。
次の表において、R基は、上記スキームIIに示される化合物CのR置換基を示し、Rは、上記スキームIIに示される化合物AのR置換基を示す。
【0067】
【表1】

【0068】
実施例13 エピクロロヒドリンでのブチルビス(カルボキシエチル)イソシアヌル酸エステルのアルキル化
ブチルビス(カルボキシエチル)イソシアヌル酸エステル30g、炭酸ナトリウム8.16g、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド(3.85mmol)、エピクロロヒドリン8.5g、および100mLのジオキサンを、磁気攪拌機およびオーバーヘッド凝縮器を備えた250mLの丸底フラスコに入れた。このフラスコを90℃に設定した油浴に入れ、12時間攪拌した。反応内容物を冷却し、200mLの蒸留水で希釈した。内容物を、次いで、酢酸エチル(300mL)で抽出し、1回あたり200mLの水で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、続いてロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。生成物を真空下でさらに乾燥させ、粘稠なオイルを生じさせた(30g、収率89%)。
【0069】
実施例14
500mlの3つ口丸底フラスコに100gのモノマーB(RはHである)、133.18gの実施例5のモノマー、2.25gのパラ−トルエンスルホン酸、および164gのアニソールを添加した。内容物を激しく攪拌しつつ、このフラスコを140℃〜160℃に加熱した。アニソールを伴ったブタノールを、この反応フラスコからゆっくりと留出させた。6時間の間に145gの蒸留物を集めた。次いで、この粘稠のポリマー溶液を509gのメチル−2−ヒドロキシイソブチラートで希釈した。この溶液の100gのサンプルを1000mLのイソプロパノールに添加し、ポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物をフィルター上に集め、部分的に空気乾燥し、続いて、真空オーブン乾燥して、白色粉体を生じさせた。その特徴は表2に示される。
【0070】
実施例14に従った手順を使用して、実施例15〜22のポリマーを調製した。モノマーBは上記スキームIにおいて、R=H、R=(CHOHの化合物Bの構造を有する;これら実施例を通じてモノマーBへの言及は、上記スキームIの、このようなRおよびR基の化合物Bの構造を示し、このモノマーBはTHEICとしても知られている。このポリマー並びに実施例14のポリマーの特徴は表2に示される。表2においては、モノマーAとの言及は上記スキームIIに示されるような構造Aをいう。
【0071】
【表2】

【0072】
実施例23
実施例14に従った手順を使用して、過剰の1,2−プロパンジオール中の、実施例8のモノマーA、モノマーB(R=H)(1:1の供給比)を含んでなるターポリマーが製造された。このようにした縮合は、7460のMw、2.5のPD、1.926のn193および0.24のk193のポリマーを生じさせた。
【0073】
実施例24
トリ−酸およびトリ−アルコールを含んでなる反射防止ポリマー
1000mlの3つ口丸底フラスコに、304gのトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラート、201.0gのトリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌラート、5.39gのパラ−トルエンスルホン酸一水和物、201.1gのn−ブタノール、および342gのアニソールを入れた。このフラスコを140℃〜160℃に加熱し、内容物を激しく攪拌した。アニソールを伴ったブタノールをゆっくりと反応フラスコから留出させた。蒸留物の量を制御することにより様々なMwのポリマーが合成された。このポリマー溶液を、次いで、1587gのメチル2−ヒドロキシイソブチラートで希釈した。得られた溶液をトリエチルアミンで中和し、生成物を、10倍の体積の、イソプロピルアルコール/メチルt−ブチルエーテル(50/50)の溶液中で沈殿させた。このポリマーを集め、真空下で40〜60℃で一晩乾燥させた。GPC(THF)Mwは4623であり、多分散度は1.68であり、1.926のn193および0.24のk193であった。
【0074】
昇華を低減させるために、テトラメトキシメチルグリコウリルのような架橋剤が反射防止ポリマーに共有結合される。
【0075】
実施例25
【化6】

【0076】
実施例14からの約700gのポリマー溶液を50℃に加熱し、続いて、140gのメチル−2−ヒドロキシイソブチラートおよび35gのテトラメトキシメチルグリコールウリルを添加した。この内容物を3時間50℃で攪拌した。反応内容物を、次いで、周囲温度に冷却し、トリエチルアミンで中和した。60/40イソプロパノール/ヘプタン(10倍過剰)で沈殿を行った。沈殿物をヘプタンで洗浄し、一晩真空乾燥させて上記構造のポリマーを生じさせた。得られたポリマーのMwは22175であり、PDは6.18であり、n193は1.993であり、k193は0.32であった。13C NMRを用いて、約13.5重量パーセントの架橋剤がポリマーに結合していたことが推定された。
【0077】
実施例26および27は、本発明の反射防止コーティング組成物の代表例である。
実施例26
実施例19からのポリマーを3.237g、5.768gのテトラメトキシメチルグリコールウリル、アンモニア化パラトルエンスルホン酸の溶液を0.371g、および490.624gのメチル−2−ヒドロキシイソブチラートを含む反射防止キャスティング溶液を、0.2μテフロン(登録商標)フィルターを通してろ過して、シリコンウェハ上にスピンキャストした。この膜を205℃で60秒間ベークし、その厚みを測定し、次いで、60秒間PGMEAのパドルで覆った。回転乾燥後、膜の厚みを再び測定した。厚みの有意な低下および増大は検出されなかった。膜の厚みの低下および増大がないことは、同じ方法で処理された新しい膜がMF26A現像剤で60秒間覆われた場合にも観察された。これらの試験は、硬化した膜が硬度に架橋し、溶媒または現像剤によって影響を受けないことを示す。
【0078】
実施例27
適用により要求されるコーティングおよび光学特性を最適化するために、本発明の反射防止ポリマー組成物をブレンドすることが望まれる場合がある。よって、実施例19のポリマーを1.913g、実施例25のポリマーを1.913g、4.29gのテトラメトキシメチルグリコールウリル、アンモニア化パラトルエンスルホン酸の溶液を0.371g、および490.624gのメチル−2−ヒドロキシイソブチラートを含む溶液が0.2μテフロン(登録商標)フィルターを通してろ過され、シリコンウェハ上にスピンキャストされた。実施例26に使用されるベークおよび剥離試験手順に従って、この膜はPGMEA(プロピレングリコールメチルエーテルアセタート)および0.26N水性アルカリ現像剤によって影響受けないことが見いだされた。
【0079】
実施例28
ポリマーIIの合成および特性
【化7】

【0080】
500mlの3つ口丸底フラスコに70g(0.268mol)のTHEIC、133.86g(0.0268mol)のブチル−BCEIC−tBuアセタート、30.60g(0.268mol)のシクロヘキシルメタノール、1.99g(全モノマーの1重量%)のp−TSA、および142.7gのアニソールを入れた。このフラスコを140℃〜160℃に加熱し、内容物を激しく攪拌した。アニソールを伴ったn−ブタノールをゆっくりと反応フラスコから留出させた。蒸留物の量を制御することにより様々なポリマーのMwの範囲が維持される。このポリマー反応溶液を、次いで、650gのメチル2−ヒドロキシイソブチラートで希釈した。得られた溶液を50℃に加熱し、続いて45.5gのテトラメトキシメチルグリコウリルを添加し、187gのメチル−2−ヒドロキシイソブチラートを添加した。この内容物をこの温度で3時間穏やかに攪拌した。3時間後、反応混合物をトリエチルアミンで中和し、このポリマーを、10倍の体積の、イソプロピルアルコール/メチルt−ブチルエーテル(50/50)中で沈殿させた。このポリマーを真空オーブン中で40℃〜60℃で乾燥させ、次いでGPC、C13 NMRおよび偏光解析(WVASE32偏光解析装置)によって特徴づけた。このポリマーは約16,000ダルトンのMw、約23%のペンダントグリコールウリル基、1.93のn193および0.27のk193を示した。ポリマー自己架橋特性は、実施例26に概説される手順に従って試験された。硬化したポリマー膜がPGMEAおよび0.26N現像剤で覆われた場合に、有意な膜の厚みの低下は観察されなかった。
【0081】
実施例29:C−グリセロール−デカンジオールポリマーの合成
【化8】

【0082】
モノマーC(上記スキームIIの化合物C、式中RはHである)(200g、45mol%)、グリセロール(60g、40mol%)および1,2−デカンジオール(42.5g、15mol%)が1000mlの3つ口丸底フラスコに入れられ、続いて、1重量%のp−TSAおよびアニソールを添加する。この内容物を145℃で5〜7時間激しく振とうさせ、約35g〜45gの蒸留物を集める。この反応は反応温度を80℃に低下させ、続いて、THFを添加することによりクエンチされる。残留するモノマーCはろ過され、濾液はメチル−t−ブチルエーテル/イソプロパノール(50/50 v/v)混合物で沈殿させられ、過熱下で真空オーブン中で乾燥された白色粉体を生じさせた。このポリマーはヘプタン、ジ−イソプロピルエーテルなどのような他の様々な溶媒から沈殿させられることができた。
【0083】
このポリマーは様々な分析試験にかけられた。
13C NMRは、54%のモノマーC(RはHである)、43%のグリセロールおよび3%の1,2−デカンジオールからなる組成を示す。光学特性:n193=1.949、k193=0.192。
様々な組成の他のポリマーが、ジオールモノマーの添加量を増加もしくは減少させることにより合成されうる。ポリマー組成は、様々な沈殿溶媒混合物中で分画することによってもある程度変えられうる。
例えば、上記ポリマーは、異なる極性の溶媒混合物から沈殿させられた場合にジオール含量が増加し、13C NMRで決定される場合、48%のモノマーC(上記スキームIIの化合物C、式中、RはHである)、47%のグリセロールおよび5.5%のデカンジオールを含んでなる新たなポリマー組成をもたらした。
【0084】
実施例30:ポリマー鎖内への疎水性成分の組み込み
理論に拘束されるものではないが、立体的要因のために、大きな疎水性モノマー、例えば、1,2−デカンジオールの組み込みがポリマー鎖の末端において主として起こることが考えられる。ポリマー鎖内での疎水性成分の向上した分布のために、疎水性成分が反応性重合性基からさらに離れているモノマーを使用することが望ましい。
モノマーC(上記スキームIIの化合物C、式中Rはブチルであり、Rはシクロヘキシルエチルである)とモノマーC(RおよびRはHである)およびグリセロールモノマーCとの縮合はスキームIIに従って調製される。
疎水性成分はモノマーC(Rはブチルであり、Rはシクロヘキシルエチルである)、モノマーC(RおよびRはHである)およびグリセロールまたは他のポリオールを使用することによりポリマー中に組み込まれうる。
【0085】
【化9】

【0086】
ポリマー合成は上記実施例14に従って行われる。
代表的なポリマー構造として次のものが挙げられる。
【0087】
【化10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なるカルボキシおよび/またはカルボキシエステル基による、複数のシアヌラート窒素環原子の置換を含む、シアヌラート化合物。
【請求項2】
当該化合物が下記式I:
【化1】

(式中、ROOC(CX−、R−、およびROOC(CX−基の少なくとも2つは異なる酸またはエステル基であり;
、RおよびR、並びに各Xは、それぞれ独立して水素または非水素置換基であり;
nおよびmは同じかまたは異なっており、かつそれぞれは整数である)
に対応する、請求項1に記載のシアヌラート化合物。
【請求項3】
当該化合物が下記式IA:
【化2】

(式中、ROOC(CH−、R−、およびROOC(CH−基の少なくとも2つは異なる酸またはエステル基であり;
、RおよびRはそれぞれ独立して水素または非水素置換基であり;
nおよびmは同じかまたは異なっており、かつそれぞれは整数である)
に対応する、請求項1に記載のシアヌラート化合物。
【請求項4】
当該化合物がハロゲン置換を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の化合物を含む樹脂。
【請求項6】
前記化合物が共有結合された架橋剤基を含む請求項5に記載の樹脂。
【請求項7】
架橋剤基が反応性ヒドロキシル、窒素、カルボキシおよび/またはエポキシ基を含む、請求項6に記載の樹脂。
【請求項8】
当該樹脂がポリエステル結合を含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載の樹脂。
【請求項9】
上塗りフォトレジスト組成物と共に使用するための反射防止組成物であって、請求項5〜8のいずれか1項に記載の樹脂を含む反射防止組成物。
【請求項10】
請求項9の反射防止組成物の層;
前記コーティング組成物層上のフォトレジスト層;
を含むコーティングされた基体。
【請求項11】
請求項9の反射防止コーティング組成物を基体上に適用し;
前記コーティング組成物層上にフォトレジスト組成物を適用し;
前記フォトレジスト層を露光し、現像して、レジストレリーフ像を提供する;
ことを含む、フォトレジストレリーフ像を形成する方法。
【請求項12】
フォトレジスト組成物を適用する前に、前記反射防止組成物が架橋される、請求項11に記載の方法。

【公開番号】特開2011−42645(P2011−42645A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−115664(P2010−115664)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(591016862)ローム・アンド・ハース・エレクトロニック・マテリアルズ,エル.エル.シー. (270)
【Fターム(参考)】