説明

上部ユニットケースの開閉装置

【課題】上部ユニットケースを閉止するときには制動作用を発揮し、開き回動するとき軽快に移動できる開閉装置を提供する。
【解決手段】下部ユニットケースの下部案内部材6と上部ユニットケースの上部案内部材7とに沿って移動可能に連結された移動体10に設けられたブレーキ体22は支持軸21の軸線に沿って進退動可能であり、バネ手段にて移動体10から離間する方向に押す。下部案内部材6に設けられた第1の規制部27は開放端部側に接近するに従って案内条26との間隔が狭まるように形成され、移動体10が開放端部側に接近するに従って、バネ手段の付勢力により第1の規制部27に対してブレーキ体22の側面が押圧され、傾斜案内面29は第1の規制部27に隣接し且つ案内条26より遠い側に形成され、上部ユニットケースを開放動作するとき、ブレーキ体22が開放端部側から傾斜案内面29を通る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下部ユニットケースに対して、開閉回動可能に装着される上部ユニットケースの開閉装置に係り、より詳しくはその上部ユニットケースの閉止方向終端時に緩慢に閉まる一方、軽快に開き動作することができるようにした上部ユニットケースの開閉装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリンタ、ファクシミリ、複写機等の画像記録装置において、給紙部、記録部等を搭載した下部ユニットケースに対して、原稿読取部を搭載した上部ユニットケースの一側をヒンジを介して開閉回動可能に装着し、メンテナンス時や紙詰まり処理などに際して上部ユニットケースを一旦大きく開いた状態から閉じるとき、閉じ終わり区間で、上部ユニットケースの回動に制動を掛ける構成が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の技術では、上部ユニットケースと下部ユニットケースとをガススプリングにて連結すると共に、上部ユニットケースの下面自由端側に下向きにコイルスプリングを配置し、上部ユニットケースの閉じ終わり区間でコイルスプリングの一端が下部ユニットケースにおける受け部で支持されて、上部ユニットケースが急激に閉じるのを防止する構成が開示されている。
【0004】
他方、特許文献2では、上部ユニットケース(カバー)の側面に下向きに突設させた円弧状のガイド部材(案内部材)には、円弧状のガイド溝が形成され、下部ユニットケース(筐体)の一側に設けたボルト軸をガイド溝に挿通すると共に、このボルトの頭とバネ材にて案内部材を挟み付けすることにより、上部ユニットケースの任意の回動角度で位置保持できるように構成し、さらに、上部ユニットケースが下部ユニットケースに対して閉止位置では、下部ユニットケースに設けたトーションスプリングにて上部ユニットケースを上向き付勢する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-38714号公報(図1及び図2参照)
【特許文献2】実公平1−29815号公報(第3図及び第6図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献 1及び2の開閉装置では、ガススプリングなどの寸法の大きい部品を必要とする。上部ユニットケースを下部ユニットケースに対して閉じるときの速度を緩慢にするために、ガススプリングに代えて直線状のオイルダンパーを設けたり、ヒンジ部にロータリオイルダンパーを付加することも考えられるが、このようにすると、開閉装置の構成がますます複雑になったり、下部ユニットケース等の製品全体に占める開閉装置の割合が大きくなり、製品が大型化するという問題があった。
【0007】
本発明は、構成部品の簡素化及び小型化を図りながら、上部ユニットケースの閉止方向の移動時に緩慢に閉まる一方、軽快に開き動作することができるようにした上部ユニットケースの開閉装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明の上部ユニットケースの開閉装置は、下部ユニットケースと上部ユニットケースとを一側に設けたヒンジ部を介して上下開閉回動可能に装着し、前記下部ユニットケースには下部案内部材を、前記上部ユニットケースには上部案内部材を、前記ヒンジ部側から開放端部側に延びるようにそれぞれ備え、前記下部案内部材と上部案内部材とに沿って移動可能に連結する移動体には、前記上部案内部材に嵌まって移動可能な回転体と、前記下部案内部材に嵌まって移動可能な回転体とをそれぞれ備え、前記移動体には、前記回転体における支軸の軸線と平行に設けられた支持軸に沿って進退動可能なブレーキ体と、前記移動体と前記ブレーキ体の間に配置されたバネ手段とからなるブレーキ機構を備え、前記一方の案内部材には、これに沿って設けられた案内条と第1の規制部とこの両者の間に形成された案内溝部と傾斜案内面とを有し、前記回転体は前記案内条に沿って移動可能であり、前記第1の規制部は前記開放端部側に接近するに従って前記案内条との間隔が狭まるように形成され、前記上部ユニットケースを閉止動作するとき、前記移動体が前記開放端部側に接近するに従って、前記バネ手段の付勢力により前記第1の規制部に対して前記ブレーキ体の側面が押圧され、前記傾斜案内面は前記第1の規制部に隣接し且つ前記案内条より遠い側に形成され、前記上部ユニットケースを開放動作するとき、前記ブレーキ体が前記開放端部側から前記傾斜案内面を通り、前記ヒンジ部側において、前記案内溝部内に前記ブレーキ体が位置するように構成されているものである。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の上部ユニットケースの開閉装置において、前記一方の案内部材に設けられた第2の規制部は、前記ヒンジ部側に接近するに従って前記案内条との間隔が狭まるように形成され、前記上部ユニットケースを開放動作するとき、前記移動体が前記ヒンジ部側に接近するに従って、前記バネ手段の付勢力により前記第2の規制部に対して前記ブレーキ体の側面が押圧されるものである。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の上部ユニットケースの開閉装置において、前記支持軸には前記ブレーキ体が前記移動体から離間する距離を限定するためのストッパが設けられているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、上部ユニットケースを閉じ方向に押圧すると、下部案内部材と上部案内部材とに沿って移動可能に連結された移動体が開放端部に近づくように移動するとき、案内条との間隔が狭まるように形成された第1の規制部に、ブレーキ機構におけるブレーキ体の側面がバネ手段の付勢力により押圧される。
【0012】
これにより、上部ユニットケースの閉じ方向への移動に負荷が掛かって制動作用が発揮されるので、ゆっくり閉めることができる。他方、上部ユニットケースを開くときには、ブレーキ体がブレーキ作用を解除された状態で、開放端部側から前記傾斜案内面を通り、前記ヒンジ部側において、前記案内溝部内に前記ブレーキ体が位置するので、軽快に開くことができる。そして、開閉装置の構成を簡単且つ小型化することができるという効果を奏する。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、一方の案内部材に設けられた第2の規制部は、前記ヒンジ部側に接近するに従って前記案内条との間隔が狭まるように形成されているので、上部ユニットケースを全開したときにも、前記ブレーキ体の側面を第2の規制部に押圧し、上部ユニットケースの全開状態を保持できる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、支持軸には前記ブレーキ体が前記移動体から離間する距離を限定するためのストッパが設けられているものであるから、ブレーキ体が支持軸から脱落しない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】下部案内部材と上部案内部材の第1実施例を示し、(A)は第1実施例の下部ユニットケースに対して上部ユニットケースが開いた途中の状態を示す斜視図、(B)は上部ユニットケースを閉じた状態の斜視図である。
【図2】(A)は第1実施例の下部ユニットケースに対して上部ユニットケースが開いた途中の状態を示す概略側面図、(B)は上部ユニットケースを閉じた状態の概略側面図である。
【図3】第1実施例における下部案内部材とブレーキ機構付き移動体を示す概略平面図であり、(A)はブレーキ作用状態を示す図、(B)は開放区に移動体が位置してブレーキ作用解除状態を示す図である。
【図4】図3(A)のIV−IV線矢視拡大断面図である。
【図5】ブレーキ作用状態におけるブレーキ機構の拡大断面図である。
【図6】規制部と土手部及びその傾斜案内面を示す下部案内部材の側断面図である。
【図7】図3(B)のVII −VII 線矢視拡大断面図である。
【図8】傾斜案内面を通過中のブレーキ機構の拡大断面図である。
【図9】第2実施例のブレーキ機構を示す側断面図である。
【図10】(A)は土手部の他の実施例の斜視図、(B)は一部拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第1実施例を図1〜図8を参照して説明する。
【0017】
本実施例の画像記録装置1は、プリンタ機能、コピー機能、スキャナ機能、ファクシミリ機能を備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device )に本発明を適用したものであり、図1及び図2に示すように、画像記録装置1における合成樹脂製の下部ユニットケース2の一側部に、上部ユニットケース3はヒンジ部4を介して上下回動可能に連結されている。
【0018】
なお、図示しないが、下部ユニットケース2内にはインクジェット式等の記録部が給紙カセットより上側に配置されており、給紙カセットから給送された用紙(被記録媒体)が、後側に着脱可能に配置されたUターン状の搬送経路体を介して記録部に搬送され、記録後の用紙は給紙カセットの上方であって下部ユニットケース2の側面に開口した開口部から排紙されるように構成されている。給紙カセットも開口部から差込み可能に配置されている。
【0019】
上部ユニットケース3には、コピー機能やファクシミリ機能における原稿読取などのための原稿自動送り装置及び画像読取装置と、原稿載置用ガラス板及びその上面を覆う原稿カバー体と、各種操作ボタンや液晶表示部等を備えた操作パネル部とが設けられている(共に図示せず)。
【0020】
次に、本発明の下部ユニットケース2と上部ユニットケース3とを開閉可能とする開閉装置について説明する。下部ユニットケース2には下部案内部材6がヒンジ部4側から開放端部側に延びるように設けられ、同様に上部ユニットケース3にも上部案内部材7がヒンジ部4側から開放端部側に延びるように設けられている。下部案内部材6と上部案内部材7とに沿ってのみ移動可能に連結される移動体10は側面視三角形状のフレーム11を有する。
【0021】
フレーム11の上側頂部には、支軸12aを介して第1回転体12が回転可能に装着されている。フレーム11の下辺部の各頂部には、それぞれ支軸17を介して第2回転体13、第3回転体14が回転可能に装着されている。
【0022】
第1回転体12は上部案内部材7に沿って転がり移動可能であり、第2回転体13及び第3回転体14は下部案内部材6に沿って転がり移動可能である。第1実施例では、下部案内部材6はヒンジ部4側から開放端部側に向かって実質的に水平状且つ直線状に延びるように形成されている。他方、上部案内部材7は、ヒンジ部4側から開放端部側に下向き凸湾曲線状に延びるように形成されている(図1(A)、図1(B)、図2(A)及び図2(B)参照)。
【0023】
下部案内部材6及び上部案内部材7は共に断面コ字状に形成され、第1〜第3回転体12、13、14が上記各案内溝15、16内に沿って転がるように構成されている。下部案内部材6は下部ユニットケース2の上面2aに設けられ、案内溝15は下部ユニットケース2の側方の外面に向かって開口するように配置されている。上部案内部材7は上部ユニットケース3の側面板3aの内面にて案内溝16が内向きに開口するように配置されている(図4参照)。上部ユニットケース3が下部ユニットケース2に対して閉止された状態で、下向き凸湾曲状の上部案内部材7の中途部が下部ユニットケース2と干渉しないように、側面板3a及び上部案内部材7は下部ユニットケース2の側面板2bよりも外側に位置している(図4参照)。
【0024】
そして、ユーザーが上部ユニットケース3を下部ユニットケース2に対して開放する動作につれて、移動体10が上下両案内部材6、7に沿って開放端部側からヒンジ部4側に近づく方向に順次移動するように構成されている。また、上部ユニットケース3を下部ユニットケース2に対して閉止する動作につれて、移動体10が上下両案内部材6、7に沿ってヒンジ部4側から開放端部側に近づく方向に順次移動するように構成されている。
【0025】
次に、上部ユニットケース3を閉止動作するとき、開放端部側に近づくに従って移動体10の移動速度を遅く(ブレーキ作用が強くなる)、逆に上部ユニットケース3を開放動作するときは移動体10を軽快に動くようにするためのブレーキ機構20について説明する。
【0026】
図4及び図5はブレーキ機構20の第1実施例を示す。ブレーキ機構20は、いずれの回転体に設けられても良いが、図示のものでは、第3回転体14の支軸17に関連して設けられている。即ち、支軸17と共通の支持軸21は移動体10のフレーム11に対して第3回転体14と反対側に水平に突出させる。この支持軸21には円板状のブレーキ体22が進退動可能且つ回転可能に設けられている。支持軸21の先端にはブレーキ体22を脱落させないようにするためのストッパ23が設けられている。従って、ブレーキ体22はフレーム11の側面から距離L1以上に離間することがない(図4及び図5参照)。また、バネ手段24は、支持軸21に遊嵌されてブレーキ体22の側面に設けられた摩擦板25とフレーム11の側面との間でブレーキ体22をストッパ23方向に付勢するように配置されている。
【0027】
他方、下部案内部材6には、その長手方向に沿って、直線状の案内溝15に隣接して同じく直線状の案内条26と平面視で(下部ユニットケース2の上面と直交する方向から見て)傾斜状の第1の規制部27とこの両者の間に形成された案内溝部28と傾斜案内面29とを有する(図3、図4及び図5参照)。第2及び第3回転体13、14は案内条26に沿って移動可能であり、案内溝部28へ入り込めない。案内条26はフレーム11をほぼ垂直状態に保持するための部材である。より詳しく説明すると、下部案内部材6の平面視において(下部ユニットケース2の上面と直交する方向から見て)、図3(A)及び図3(B)に示すように、案内条26を挟んで案内溝15と反対側に土手部30が設けられている。土手部30のうち、ヒンジ部4に最も近い側のC−D区間は土手部30と案内条26との間隔が狭い第2の規制部31であり、これに続くD−E区間は開放端部側に行くに従って土手部30と案内条26との間隔が次第に広がる。これに続くE−F−G区間は開放端部側に接近するに従って案内条26との間隔が次第に狭まるように形成されている。そのうち、E−F区間では土手部30と案内条26との間隔がフレーム11の側面から支持軸21のストッパ23までの距離L1より長い。
【0028】
F−G区間は第1の規制部27に相当し、この区間では第1の規制部27と案内条26との間隔がフレーム11の側面から支持軸21のストッパ23までの距離L1より短かく且つ、開放端部側に接近するに従って案内条26との間隔が次第に狭まるように形成されている。それに続くG−J−K区間では、土手部30と案内条26との間隔がフレーム11の側面から支持軸21のストッパ23までの距離L1より長い解放区32となる。
【0029】
F−G−J区間では土手部30の上面が傾斜案内面29に形成されている。G−J線上では案内溝部28と同一の高さであり、Fの箇所では、案内溝部28からH1の最大高さとなっている。他方、案内溝部28からの案内条26の高さは、傾斜案内面29の最大高さH1より大きいH2に設定されている(図4参照)。なお、フレーム11のうち案内条26と対面する側面には、支持軸21を挟む両側等に突条などの複数の突起33が設けられており、フレーム11の側面が案内条26の側面に小さい面積で当接することで移動時の摩擦を少なくするように構成されている。
【0030】
上記の構成により、上部ユニットケース3を全開位置から閉止動作するときのブレーキ作用について説明する。全開位置では、移動体10におけるブレーキ体22がC−D区間に位置しているため、バネ手段24の付勢力により第2の規制部31に対してブレーキ体22の側面が押圧され、その反力でフレーム11の突起33が案内条26の側面に当たり、ブレーキ作用が発揮される。その結果、ユーザーが上部ユニットケース3から手を離しても、上部ユニットケース3の全開状態を保持できる。
【0031】
上記の状態からユーザーが上部ユニットケース3を閉止方向に押圧する時、移動体10がヒンジ部4から離間する方向(閉止方向)に移動する。ブレーキ体22が案内溝部28に沿ってD−E区間にくると、バネ手段24の付勢力により押されるブレーキ体22が土手部30の側面に向かって押圧されるが、D−E区間は開放端部側に行くに従って土手部30と案内条26との間隔が次第に広がるので、ブレーキ作用が弱まる。土手部30と案内条26との間隔がフレーム11の側面から支持軸21のストッパ23までの距離L1より大きくなるE−F区間では、ブレーキ作用が解除され、上部ユニットケース3の自重で移動体10が開放端部側に移動する。
【0032】
図3(A)及び図5の実線状態に示すように、移動体10におけるブレーキ体22が案内案内溝部28に沿って第1の規制部27に相当するF−G区間に位置すると、移動体10が開放端部側に接近するに従って、バネ手段24の付勢力により第1の規制部27に対してブレーキ体22の側面が押圧される力が大きくなり、ブレーキ作用が次第に強くなる。従って、移動体10の閉止方向への移動速度を緩慢にすることができる結果、上部ユニットケース3が下部ユニットケース2に対して急激に閉まることがない。
【0033】
図3(B)、図6及び図7に示すように、ブレーキ体22がG−J−K区間(解放区32)に来ると、土手部30と案内条26との間隔がフレーム11の側面から支持軸21のストッパ23までの距離L1より長いとなるから、バネ手段24の付勢力があっても、ブレーキ体22が土手部30の側面に当接することがなく、ブレーキ作用が解除される。この状態では上部ユニットケース3が全閉となる。
【0034】
全閉状態から上部ユニットケース3を開放動作するとき、移動体10におけるブレーキ体22が案内溝部28から傾斜案内面29に乗りあげる(図5の二点鎖線参照)。図3(B)に示すように、傾斜案内面29はヒンジ部側に行くに従って案内条26から遠ざかるように形成され、F点では土手部30と案内条26との間隔がフレーム11の側面から支持軸21のストッパ23までの距離L1より大きくなるので、ブレーキ体22は案内溝部28に嵌まる(図6参照)。なお、F点でブレーキ体22は案内溝部28よりH1だけ高い位置まで登るが、案内条26の高さH2はそれより大きいから、フレーム11は案内条26から外れることはない。
【0035】
ブレーキ体22が傾斜案内面29を通過中はブレーキ作用が解除されている。また、ブレーキ体22が少なくともE−F区間では土手部30と案内条26との間隔がフレーム11の側面から支持軸21のストッパ23までの距離L1より長いので、この区間でもブレーキ作用が解除されるから、上部ユニットケース3を軽い力で開くことができる。E−D区間からD−C区間にブレーキ体22が入ると、上述のように、バネ手段24の付勢力により第2の規制部31に対してブレーキ体22の側面が押圧されて、上部ユニットケース3の全開状態を保持できる。
【0036】
図9に示す第2実施例では、ブレーキ体22の支持軸21が回転体13、14の支軸17とは別体にするものであり、例えば、回転体13、14の間の位置でフレーム11に支持軸21を突設させる。その他の構成は第1実施例と同じであるから、同じ構成には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。第1及び第2実施例の作用効果は同じである。
【0037】
図10(A)及び図10(B)は、土手部30の他の実施例を示す。この実施例では、土手部30の上面のうち、G−J線からF点方向への初の区間は高さが次第に高くなる傾斜案内面29に形成されている。この斜案内面29に続いてF点までの区間では、土手部30の上面に、側面視で波形や鋸歯型に形成されたブレーキ体停止可能部33が設けられている。この構成により、上部ユニットケース3を開くときには、ブレーキ体22がブレーキ体停止可能部33の波形や鋸歯型の上端に軽く摺接しながら上部ユニットケース3を開くことができる。その途中でユーザーが手を離すと、上部ユニットケース3の自重で、ブレーキ体停止可能部33における波形や鋸歯型の底部にブレーキ体22の下面部位が嵌まり込むことにより、上部ユニットケース3が不用意に閉止方向に移動することを防止できる。このブレーキ体停止可能部33はF点方向へ行くに従って高くなるように形成しても良い。
【0038】
本発明において、ブレーキ体は必ずしも円板状でなくても良く、また、ブレーキ体は支持軸21まわりに回転しなくても良い。ブレーキ体は回転体12、13、14のいずれかに関連させて設けられていても良い。
【0039】
このようにして、本発明では、構成部品の簡素化及び小型化を図りながら、上部ユニットケース3の閉止方向の移動時に、緩慢に閉まり、上部ユニットケース3の開放動作時には、移動体10の移動を軽快にすることができるという効果を奏する。
【0040】
本発明は上記の実施形態の他、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態を採用することができる。例えば、上部案内部材7は、ヒンジ部4側から開放端部側に向かって実質的に水平状且つ直線状に延びるように形成され、下部案内部材6は、ヒンジ部4側から開放端部側に上向き凸湾曲線状に延びるように形成し、移動体10の第1回転体12を下部案内部材6に回転可能に嵌合し、第2回転体13及び第3回転体14を上部案内部材7に回転可能に嵌合する構成であっても良い。これらの場合、ブレーキ機構をいずれの回転体に関連させて設けても良い。また、下部ユニットケース2及び上部ユニットケース3は種々の電気製品や家具などの什器類に対して適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1画像記録装置
2下部ユニットケース
3上部ユニットケース
4ヒンジ部
6下部案内部材
7上部案内部材
10移動体
12第1回転体
13第2回転体
14第3回転体
15下部案内部材の案内溝
16上部案内部材の案内溝
20ブレーキ機構
22ブレーキ体
23ストッパ
24バネ手段
26案内条
27第1の規制部
28案内溝部
29傾斜案内面
30土手部
31第2の規制部
32解放区
33ブレーキ体停止可能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部ユニットケースと上部ユニットケースとを一側に設けたヒンジ部を介して上下開閉回動可能に装着し、
前記下部ユニットケースには下部案内部材を、前記上部ユニットケースには上部案内部材を、前記ヒンジ部側から開放端部側に延びるようにそれぞれ備え、
前記下部案内部材と上部案内部材とに沿って移動可能に連結する移動体には、前記上部案内部材に嵌まって移動可能な回転体と、前記下部案内部材に嵌まって移動可能な回転体とをそれぞれ備え、
前記移動体には、前記回転体における支軸の軸線と平行に設けられた支持軸に沿って進退動可能なブレーキ体と、前記移動体と前記ブレーキ体の間に配置されたバネ手段とからなるブレーキ機構を備え、
前記一方の案内部材には、これに沿って設けられた案内条と第1の規制部とこの両者の間に形成された案内溝部と傾斜案内面とを有し、
前記回転体は前記案内条に沿って移動可能であり、
前記第1の規制部は前記開放端部側に接近するに従って前記案内条との間隔が狭まるように形成され、
前記上部ユニットケースを閉止動作するとき、前記移動体が前記開放端部側に接近するに従って、前記バネ手段の付勢力により前記第1の規制部に対して前記ブレーキ体の側面が押圧され、
前記傾斜案内面は前記第1の規制部に隣接し且つ前記案内条より遠い側に形成され、
前記上部ユニットケースを開放動作するとき、前記ブレーキ体が前記開放端部側から前記傾斜案内面を通り、前記ヒンジ部側において、前記案内溝部内に前記ブレーキ体が位置するように構成されていることを特徴とする上部ユニットケースの開閉装置。
【請求項2】
前記一方の案内部材に設けられた第2の規制部は、前記ヒンジ部側に接近するに従って前記案内条との間隔が狭まるように形成され、
前記上部ユニットケースを開放動作するとき、前記移動体が前記ヒンジ部側に接近するに従って、前記バネ手段の付勢力により前記第2の規制部に対して前記ブレーキ体の側面が押圧されることを特徴とする請求項1に記載の上部ユニットケースの開閉装置。
【請求項3】
前記支持軸には前記ブレーキ体が前記移動体から離間する距離を限定するためのストッパが設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の上部ユニットケースの開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−48108(P2012−48108A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191989(P2010−191989)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】