説明

上部体及びこれを備えた建設機械

【課題】上部体上のエンジンのメンテナンス用のスペースの確保と、エンジンの冷却効率の向上とを両立することができる上部体及びこれを備えた建設機械を提供すること。
【解決手段】取付部5、6とエンジン7との間に設けられた通路と、エンジン7を上から覆うことにより当該エンジン7を取り囲むエンジン室S1を形成するための被覆部材14とを備え、被覆部材14は、エンジン7の少なくとも一部を被覆するガード本体17と、通路8を上から覆う被覆パネル23とを備え、被覆パネル23は、通路8の少なくとも一部を上から被覆した状態でエンジン室S1を形成するための被覆姿勢と、ガード本体17によりエンジン7の少なくとも一部を被覆したまま前記通路8を上方に露出させる露出姿勢との間でガード本体17に対して変位可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械の上部体及びこれを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自走式の下部走行体と、下部走行体上に搭載された上部体とを備えた建設機械が知られている。
【0003】
この種の建設機械の上部体上には、当該上部体上の搭載物のメンテナンス用の作業ステップが設けられている。具体的に、例えば特許文献1に開示される上部旋回体は、メインフレームと、作業アタッチメントを起伏可能に取り付けるための取付部と、この取付部の後方に設けられ、エンジン等を搭載するための後部機器搭載部と、平面視で後部機器搭載部と取付部との間に設けられた作業ステップとを備えている。
【特許文献1】特開平11−200415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に係る上部旋回体では、平面視で取付部と後部機器搭載部との間に作業ステップを設けているため、当該作業ステップの分だけ後部機器搭載部を後に配置することを要し、メインフレームの大きさを一定にしたまま後部機器搭載部の容積を水平方向に大きくすることができないという問題があった。そのため、特許文献1の上部旋回体では、後部機器搭載部の内部の風の流れを形成することが難しく、これに伴い後部機器搭載部の内部の機器の冷却効率を上げるのが難しかった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、上部体上のエンジンのメンテナンス用のスペースの確保と、エンジンの冷却効率の向上とを両立することができる上部体及びこれを備えた建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、作業アタッチメントと自走式の下部走行体とを有する建設機械の上部体であって、前記下部走行体上に設けられたベースフレームと、前記ベースフレーム上に設けられ前記作業アタッチメントを取り付けるための取付部と、前記取付部の後部でベースフレーム上に設けられたエンジンと、前後方向で前記取付部とエンジンとの間に設けられた通路と、前記エンジンを上から覆うことにより当該エンジンを取り囲むエンジン室を前記ベースフレームとの間に形成するための被覆部材とを備え、前記被覆部材は、前記エンジンの少なくとも一部を被覆するエンジン被覆部と、前記エンジン被覆部の前部に設けられ前記通路の少なくとも一部を覆う通路被覆部とを有し、前記通路被覆部は、前記通路の少なくとも一部を上から被覆した状態で前記エンジン室を形成するための被覆姿勢と、前記エンジン被覆部によりエンジンの少なくとも一部を被覆したまま前記通路を上方に露出させる露出姿勢との間でエンジン被覆部に対して変位可能に構成されていることを特徴とする建設機械の上部体を提供する。
【0007】
本発明によれば、通路を使用しないときに通路被覆部を被覆姿勢として、当該通路被覆部と当該通路被覆部に覆われた通路の少なくとも一部との間の領域をエンジン室の一部として利用することができるので、常時通路を上に露出させていた従来の上部体と比較して、エンジン室の容積を水平方向に大きくすることができる。
【0008】
一方、本発明では、エンジンのメンテナンスを行う際には、通路被覆部を露出姿勢として通路を上方に露出させることにより、エンジンのメンテナンス用のスペースを確保することができる。
【0009】
ここで、本発明では、被覆部材の全体を変位させるのではなく、エンジン被覆部によりエンジンを被覆したまま、被覆部材の一部である通路被覆部を変位させることにより通路を露出させることができるので、大掛かりな変位機構を設けることが不要となるだけでなく、通路の開放操作も容易となる。
【0010】
したがって、本発明によれば、エンジンのメンテナンス用のスペースの確保と、エンジンの冷却効率の向上とを両立することができる。
【0011】
また、本発明では、通路被覆部を露出姿勢に変位させることにより、当該通路被覆部により閉じられていた開口部を介して通路だけでなくエンジン室内の機器をも被覆部材の外側に露出させることができる。
【0012】
そのため、メンテナンス時において、前記開口部を通してメンテナンスの対象となるエンジンやエンジンの付属機器を視覚的に確認することができるようになり、メンテナンス対象機器の視認性を向上することができる。さらに、前記開口部を通してメンテナンス対象機器にアクセスすることができるようになり、従来であれば届かなかったような所まで作業者の手が届くようになる。したがって、本発明によれば、通路被覆部を露出姿勢とすることにより形成される開口部によって、メンテナンス性を向上することもできる。
【0013】
前記上部体において、前記エンジン被覆部は、前記通路よりも上で、かつ、後ろに配置された前縁部を有し、前記通路被覆部は、前記被覆姿勢において前記エンジン被覆部の前縁部から前記通路の上面までの間に前下がりに傾斜していることが好ましい。
【0014】
このようにすれば、エンジン被覆部の前縁部から垂直な壁を形成して通路を上方に露出させていた従来の構成と比較して、側面視で通路被覆部を斜辺とする三角形の領域をエンジン室として拡大することが可能となる。
【0015】
ここで、通路被覆部により覆われる通路の面積が大きくなるほど、例えば、通路被覆部の傾斜角を通路に対して垂直に近づけるほど、エンジン室の容積を大きくすることができるが、前記取付部は、左右方向に延びる起伏軸回りに前記作業アタッチメントを起伏可能に支持するように構成され、前記被覆姿勢にある通路被覆部の傾斜角度は、最も起立した状態にある作業アタッチメントと非接触となる角度に設定されていることが特に好ましい。
【0016】
このようにすれば、作業アタッチメントを最も起立させた状態においても、当該作業アタッチメントと通路被覆部との接触を防止しながら、エンジン室の容積をできるだけ大きくすることが可能となる。
【0017】
前記通路被覆部がエンジン被覆部に支持されている構成を除外する趣旨ではないが、前記エンジン被覆部は、前記エンジンの上に設けられたパネルと、前記パネルに形成された孔を被覆した状態と前記孔を露出させた状態とで切換可能となるように前記パネルに取り付けられた開閉部材とを備え、前記通路被覆部の下部は、左右方向に延びる回動軸回りに回動可能となるように前記通路の上面に支持されていることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、通路被覆部が通路の上面に支持されているので、通路被覆部をエンジン被覆部に支持させる場合と比較して、エンジンのメンテナンスの作業性を向上することができる。その理由は次の通りである。
【0019】
例えば、通路被覆部がパネルに支持されている場合、メンテナンスを行う際には通路被覆部を後方へ変位させて通路を露出させる必要があるが、この露出姿勢にある通路被覆部がパネルの孔の上に被さってしまい、当該孔を通して行うエンジンのメンテナンス作業が行ない難くなるおそれがある。また、通路被覆部が開閉部材に支持されている場合には、当該開閉部材の開動作に伴い通路被覆部も露出姿勢に変位させることもできるものの、このようにした場合には開閉部材の重量が大きくなり、当該開閉部材の開閉動作が行い難くなるおそれがある。これに対し、前記構成のように通路被覆部が通路に支持されていることにより、パネルの孔を塞ぐことや、開閉部材の開閉動作に影響を与えることなく通路被覆部を前に倒して通路を露出させることができるので、通路被覆部をエンジン被覆部に支持させる場合よりも作業性を向上することができる。
【0020】
前記上部体において、前記作業アタッチメントは、前記回動軸回りに回動された露出姿勢にある通路被覆部を保持する保持部を備えていることが好ましい。
【0021】
このようにすれば、露出姿勢にある通路被覆部を作業アタッチメントに保持させることができるので、通路が露出した状態をより安定して維持することができる。
【0022】
前記上部体において、前記通路被覆部には、前記被覆姿勢においてエンジン室内に外気を取り入れることが可能な孔が形成されていることが好ましい。
【0023】
このようにすれば、通路被覆部の孔を通してエンジン室内に外気を取り入れることができるので、エンジンの冷却効率をより向上することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、上部体上のエンジンのメンテナンス用のスペースの確保と、エンジンの冷却効率の向上とを両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る油圧ショベルの上部旋回体を示す斜視図である。図2は、図1の上部旋回体の平面図である。図3は、図2のIII−III線断面図である。
【0027】
図1〜図3を参照して、建設機械の一例としての油圧ショベルは、クローラ等を有する自走式の下部走行体(図示せず)と、この下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体2と、この上部旋回体2に設けられた作業アタッチメント3(図2参照)とを備えている。なお、上部旋回体2のキャブ9内のオペレータから見た方向を用いて以下説明する。
【0028】
上部旋回体2は、下部走行体上に設けられた旋回フレーム(ベースフレーム)4と、この旋回フレーム4の前部に設けられた左右一対の取付部5及び取付部6と、これら取付部5、6の後部に設けられたエンジン7と、前記各取付部5、6とエンジン7との間に設けられた通路8と、前記取付部6の左側に設けられたキャブ9と、前記取付部5の右側に設けられたトランクボックス10と、このトランクボックス10の後部で左右に並ぶ燃料タンク11及び作動油タンク12と、前記エンジン7を上から覆う被覆部材14と、被覆部材14の後部に設けられたカウンタウェイト15とを備えている。
【0029】
旋回フレーム4は、前記下部走行体(図示せず)上に旋回可能に設けられている。この旋回フレーム4上には、前記取付部5、6、エンジン7、通路8、キャブ9、トランクボックス10、燃料タンク11、作動油タンク12、被覆部材14及びカウンタウェイト15が設けられている。
【0030】
取付部5、6は、前記旋回フレーム4上に立設された板状の部材である。両取付部5、6は、当該取付部5、6の間に配置された作業アタッチメント3の基端部を左右方向に延びる起伏軸16(図3参照)回りに起伏可能に軸支するようになっている。この取付部5、6に軸支された作業アタッチメント3は、図3に示す前倒姿勢から図5に示す起立姿勢までの間で起伏することができる。
【0031】
エンジン7は、長手方向を左右方向に向けた姿勢で取付部5、6の後方に設けられている。
【0032】
通路8は、図3に示すように、取付部5、6とエンジン7との間で左右方向に延びる通路である。また、通路8は、前記起伏軸16よりも高く、後述する被覆部材14のパネル20よりも低い位置に形成されている。このように構成された通路8は、エンジン7のメンテナンスを行う際に主に利用される。具体的に、作業者は、図1及び図2に示すように、トランクボックス10に形成された階段状のステップ10aを利用して当該トランクボックス10上に昇り、燃料タンク11及び作動油タンク12の上を経由して通路8に至ることができる。
【0033】
被覆部材14は、エンジン7を上から覆うことにより当該エンジン7を取り囲むエンジン室S1(図3参照)を旋回フレーム4との間に形成する。具体的に、被覆部材14は、前記旋回フレーム4のうち、通路8、キャブ9、燃料タンク11及び作動油タンク12の後ろの範囲を上から覆うガード本体(エンジン被覆部)17と、前記ガード本体17の前部に設けられ、通路8の一部を覆う被覆パネル(通路被覆部)23とを備えている。
【0034】
ガード本体17は、エンジン7の上方、左右側方、及び後方を覆うパネル20と、このパネル20上に設けられたボンネット(開閉部材)18と、パネル20を旋回フレーム4上に支持するためのフレーム(例えば、図3のフレーム21)とを備えている。前記パネル20は、エンジン7及び通路8よりも高い位置に設けられている。また、パネル20の前縁部は、キャブ9の後部に沿った部分と、通路8の後部に沿った部分と、燃料タンク11及び作動油タンク12の後部に沿った部分とに大別される。パネル20の前縁部のうち通路8の後部に沿った部分は、当該通路8よりも後ろに配置され、左右方向に延びるフレーム21によって支持されている。また、パネル20には、前記エンジン7に対応する位置で上下に貫通する孔20b(図3参照)が設けられている。
【0035】
ボンネット18は、前記パネル20の孔20bを塞いだ姿勢(図1〜図3に示す姿勢)と、孔20bを露出させた姿勢(図示せず)との間で変位可能となるように、前記パネル20に取り付けられている。具体的に、ボンネット18の後縁部は、左右方向に延びる図外の軸回りに前後に回動可能となるようにパネル20に取り付けられている。したがって、作業者は、通路8上に立って後方にボンネット18を開け、前記孔20bを介してエンジン7のメンテナンスを行うことができる。
【0036】
図4は、図3の被覆パネル23の周辺構造を拡大して示す断面図である。
【0037】
図1〜図4を参照して、被覆パネル23は、通路8上に固定されたヒンジ部材22により通路8に対して揺動可能に取り付けられている。また、この被覆パネル23の後方への揺動は、ストッパ24によって規制されている。
【0038】
ヒンジ部材22は、通路8上の前寄りの位置に設けられている。また、ヒンジ部材22は、左右方向に沿った回動軸25を備えている。
【0039】
被覆パネル23は、通路8と同等の左右寸法を有し、かつ、図3に示すようにヒンジ部材22からフレーム21まで跨ぐことができる幅寸法を有している。つまり、被覆パネル23は、通路8とパネル20との間に形成された開口部19を塞ぐことができる略長方形の板状に形成されている。
【0040】
また、被覆パネル23は、前記ガード本体17によりエンジン7を上から被覆したまま、ヒンジ部材22により回動軸25回りに揺動可能に通路8に取り付けられている。具体的に、被覆パネル23は、通路8のうちヒンジ部材22よりも後ろの部分を上から被覆した状態でエンジン室S1を形成するための被覆姿勢(図4の実線)と、通路8を上に露出させる露出姿勢(図4の二点鎖線及び図6参照)との間で揺動可能とされている。
【0041】
被覆姿勢にある被覆パネル23は、前記フレーム21からヒンジ部材22までの間で前下がりに傾斜した姿勢とされる。被覆姿勢にある被覆パネル23の傾斜角度は、図5に示すように、最も起立した姿勢(起立姿勢)にある作業アタッチメント3と非接触となる角度に設定されている。このように被覆パネル23を被覆姿勢とすることにより、通路8のうちヒンジ部材22よりも後ろの部分がエンジン室S1内に配置されることになるため、通路8の全体を常に上に露出させておく従来の構成と比較して、側面視で三角形の領域E1(図4参照)の分だけエンジン室S1を水平方向に広くすることができる。
【0042】
一方、露出姿勢にある被覆パネル23は、図3に示すように、最も前倒した姿勢(前倒姿勢)にある作業アタッチメント3に保持される。具体的に、作業アタッチメント3の背面には、保持部26が立設され、この保持部26上に露出姿勢とされた被覆パネル23の先端部が載置される。この保持部26は、被覆パネル23を着脱可能に構成することもできる。
【0043】
そして、被覆パネル23が露出姿勢に変位することにより、前記通路8のうち、ヒンジ部材22よりも後ろに位置する部分が上に露出することになる。また、被覆パネル23を露出姿勢に変位させると、当該被覆パネル23により閉じられていた開口部19を介して通路8だけでなくエンジン室S1内の機器(エンジン7やその周辺機器)をも被覆部材14の外側に露出させることができる。本実施形態では、エンジン7の前上方に開口部19が形成されているので、当該開口部19を通して、作業者は、例えば、エンジン7の前面や上面についてメンテナンス作業を行なうことが可能となる。
【0044】
ストッパ24は、通路8の左右に立ち上がる側壁に設けられ、被覆姿勢にある被覆パネル23の左右の縁部を支持するようになっている。具体的に、通路8の左側には、パネル20から通路8の左縁部に垂下された側壁20a(図2参照)が設けられている一方、通路8の右側には、作動油タンク12の側壁12a(図2参照)が配設されており、これら側壁12a、20aにそれぞれストッパ24が取り付けられている。これらストッパ24は、被覆姿勢にある被覆パネル23がさらに下に倒れるのを阻止するように、当該被覆パネル23を下から支持するようになっている。
【0045】
以下、エンジン7のメンテナンスを行う際の手順について説明する。
【0046】
まず、作業者は、作業アタッチメント3を図3に示すように前倒姿勢とする。次に、作業者は、トランクボックス10に形成されたステップ10aを利用して当該トランクボックス10の上に昇り、作動油タンク12の上まで移動する。ここで、作業者は、図1に示すように被覆姿勢にある被覆パネル23を、図6に示すように露出姿勢とすることにより、通路8を上に露出させる。露出姿勢とされた被覆パネル23の先端部は、図3に示すように作業アタッチメント3に形成された保持部26によって保持される。次いで、作業者は、通路8の上に乗り、ボンネット18を開放する。これにより、パネル20の孔20bを通してエンジン7が上に露出するため、このエンジン7についてメンテナンスを行うことができる。
【0047】
以上説明したように、前記実施形態によれば、通路8を使用しないときに被覆パネル23を被覆姿勢として、当該被覆パネル23と当該被覆パネル23に覆われた通路8の一部との間の領域をエンジン室S1の一部として利用することができるので、常時通路を上に露出させていた従来の上部旋回体と比較して、エンジン室S1の容積を水平方向に大きくすることができる。
【0048】
一方、前記実施形態では、エンジン7のメンテナンスを行う際には、被覆パネル23を露出姿勢として通路8を上方に露出させることにより、エンジン7のメンテナンス用のスペースを確保することができる。
【0049】
ここで、前記実施形態では、被覆部材14の全体を変位させるのではなく、ガード本体17によりエンジン7を被覆したまま、被覆部材14の一部である被覆パネル23を変位させることにより通路8を露出させることができるので、大掛かりな変位機構を設けることが不要となるだけでなく、通路8の開放操作も容易となる。
【0050】
したがって、前記実施形態によれば、エンジン7のメンテナンス用のスペースの確保と、エンジンの冷却効率の向上とを両立することができる。
【0051】
また、前記実施形態では、被覆パネル23を露出姿勢に変位させることにより、当該被覆パネル23により閉じられていた開口部19を介して通路8だけでなくエンジン室S1内の機器をも被覆部材14の外側に露出させることができる。
【0052】
そのため、メンテナンス時において、前記開口部19を通してメンテナンスの対象となるエンジン7やエンジン7の付属機器を視覚的に確認することができるようになり、メンテナンス対象機器の視認性を向上することができる。さらに、開口部19を通してメンテナンス対象機器にアクセスすることができるようになり、従来であれば届かなかったような所(例えば、エンジン7の前面)まで作業者の手が届くようになる。したがって、前記実施形態によれば、被覆パネル23を露出姿勢とすることにより形成される開口部19によって、メンテナンス性を向上することができる。
【0053】
前記実施形態のように、被覆パネル23をフレーム21から通路8までの間で前下がりに傾斜させた構成とすることにより、フレーム21から垂直な壁を形成して通路8を上方に露出させていた従来の構成と比較して、側面視で被覆パネル23を斜辺とする三角形の領域E1をエンジン室S1として拡大することができる。
【0054】
ここで、被覆パネル23により覆われる通路8の面積が大きくなるほど、例えば、被覆パネル23の傾斜角を通路8に対して垂直に近づけるほど、エンジン室S1の容積を大きくすることができるが、前記実施形態のように、被覆姿勢とされた被覆パネル23の傾斜角度が、起立姿勢にある作業アタッチメント3と非接触となるように設定されていることにより、起立姿勢にある作業アタッチメント3と被覆パネル23との接触を防止することができるので、エンジン室S1の容積をできるだけ大きくしながら作業アタッチメント3の起伏範囲の維持を図ることができる。
【0055】
前記実施形態のように、ガード本体17がエンジン7の上に設けられたパネル20と、パネル20に形成された孔20bを被覆した状態と孔20bを露出させた状態とで切換可能となるようにパネル20に取り付けられたボンネット18とを備え、被覆パネル23が通路8の上面に支持されている構成とすることにより、被覆パネル23がガード本体17に支持されている場合と比較して、エンジン7のメンテナンスの作業性を向上することができる。その理由は次の通りである。
【0056】
例えば、被覆パネル23がパネル20に支持されている場合、メンテナンスを行う際には被覆パネル23を後方へ変位させて通路8を露出させる必要があるが、この露出姿勢にある被覆パネル23がパネル20の孔20bに被さってしまい、当該孔20bを通して行うエンジン7のメンテナンス作業が行ない難くなるおそれがある。また、被覆パネル23がボンネット18に支持されている場合には、当該ボンネット18の開動作に伴い被覆パネル23も露出姿勢に変位させることもできるものの、このようにした場合にはボンネット18の重量が大きくなり、ボンネット18の開閉動作が行い難くなるおそれがある。これに対し、前記実施形態のように被覆パネル23が通路8に支持されていることにより、パネル20の孔20bを塞ぐことや、ボンネット18の開閉動作に影響を与えることなく被覆パネル23を前に倒して通路8を露出させることができるので、被覆パネル23をガード本体17に支持させる場合よりも作業性を向上することができる。
【0057】
前記実施形態のように、作業アタッチメント3が露出姿勢にある被覆パネル23を保持するための保持部26を備えた構成によれば、通路8が露出した状態をより安定して維持することができる。
【0058】
なお、前記被覆パネル23には、被覆姿勢においてエンジン室S1内に外気を取り入れることが可能な孔を設けるができる。このようにすれば、被覆パネル23の孔を通してエンジン室S1内に外気を取り入れることができるので、エンジン7の冷却効率をより向上することができる。
【0059】
また、前記実施形態では、ヒンジ部材22により通路8に対して回動する被覆パネル23について説明したが、図7及び図8に示すように、シャッター29を採用することもできる。
【0060】
図7は、本発明の別の実施形態に係る通路被覆部(シャッター)の周辺構造を示す図4相当図であり、被覆姿勢を示したものである。図8は、図7の通路被覆部(シャッター)の露出姿勢を示したものである。
【0061】
本実施形態に係る油圧ショベルは、前記通路8の左右に立ち上がる側壁12a及び20a(図2参照)に設けられたレール28と、このレール28に沿って摺動可能なシャッター(通路被覆部)29とを備えている。
【0062】
レール28は、前記フレーム21から前下がりに形成されるとともに、通路8の前を経由して当該通路8の下に回り込み、さらに通路8の後方に延びて形成されている。シャッター29は、複数の羽根を左右方向の軸回りに回動可能に連結して、たわみ性を持たせることにより、レール28に沿って摺動することが可能とされている。具体的に、シャッター29は、図7に示す被覆姿勢から図8に示す露出姿勢までの間で移動可能とされている。本実施形態において、被覆姿勢とされたシャッター29は、通路8の全体を被覆するようになっている。
【0063】
この実施形態においても、シャッター29を被覆姿勢とすることにより通路8をエンジン室S1内に格納して当該エンジン室S1を水平方向に拡張することができるとともに、シャッター29を露出姿勢とすることにより通路8を上に露出させてエンジン7のメンテナンス用のスペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの上部旋回体を示す斜視図である。
【図2】図1の上部旋回体の平面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図3の被覆パネルの周辺構造を拡大して示す断面図である。
【図5】作業アタッチメントが起立姿勢とされた状態を示す図3相当図である。
【図6】被覆パネルが露出姿勢とされた状態を示す斜視一部略図である。
【図7】本発明の別の実施形態に係る通路被覆部(シャッター)の周辺構造を示す図4相当図であり、被覆姿勢を示したものである。
【図8】図7の通路被覆部(シャッター)の露出姿勢を示したものである。
【符号の説明】
【0065】
S1 エンジン室
2 上部旋回体(上部体)
3 作業アタッチメント
4 旋回フレーム(ベースフレーム)
5、6 取付部
7 エンジン
8 通路
14 被覆部材
17 ガード本体(エンジン被覆部)
18 ボンネット
20 パネル
23 被覆パネル(通路被覆部)
25 回動軸
26 保持部
29 シャッター(通路被覆部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業アタッチメントと自走式の下部走行体とを有する建設機械の上部体であって、
前記下部走行体上に設けられたベースフレームと、
前記ベースフレーム上に設けられ前記作業アタッチメントを取り付けるための取付部と、
前記取付部の後部でベースフレーム上に設けられたエンジンと、
前後方向で前記取付部とエンジンとの間に設けられた通路と、
前記エンジンを上から覆うことにより当該エンジンを取り囲むエンジン室を前記ベースフレームとの間に形成するための被覆部材とを備え、
前記被覆部材は、前記エンジンの少なくとも一部を被覆するエンジン被覆部と、前記エンジン被覆部の前部に設けられ前記通路の少なくとも一部を覆う通路被覆部とを有し、
前記通路被覆部は、前記通路の少なくとも一部を上から被覆した状態で前記エンジン室を形成するための被覆姿勢と、前記エンジン被覆部によりエンジンの少なくとも一部を被覆したまま前記通路を上方に露出させる露出姿勢との間でエンジン被覆部に対して変位可能に構成されていることを特徴とする建設機械の上部体。
【請求項2】
前記エンジン被覆部は、前記通路よりも上で、かつ、後ろに配置された前縁部を有し、前記通路被覆部は、前記被覆姿勢において前記エンジン被覆部の前縁部から前記通路の上面までの間に前下がりに傾斜していることを特徴とする請求項1に記載の建設機械の上部体。
【請求項3】
前記取付部は、左右方向に延びる起伏軸回りに前記作業アタッチメントを起伏可能に支持するように構成され、前記被覆姿勢にある通路被覆部の傾斜角度は、最も起立した状態にある作業アタッチメントと非接触となる角度に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の建設機械の上部体。
【請求項4】
前記エンジン被覆部は、前記エンジンの上に設けられたパネルと、前記パネルに形成された孔を被覆した状態と前記孔を露出させた状態とで切換可能となるように前記パネルに取り付けられた開閉部材とを備え、
前記通路被覆部の下部は、左右方向に延びる回動軸回りに回動可能となるように前記通路の上面に支持されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の建設機械の上部体。
【請求項5】
前記作業アタッチメントは、前記回動軸回りに回動された露出姿勢にある通路被覆部を保持する保持部を備えていることを特徴とする請求項4に記載の建設機械の上部体。
【請求項6】
前記通路被覆部には、前記被覆姿勢においてエンジン室内に外気を取り入れることが可能な孔が形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の建設機械の上部体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−90622(P2010−90622A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262001(P2008−262001)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】