説明

下水汚泥の処理方法および装置

【課題】下水汚泥を焼却処理し、集塵機で燃焼排ガス中の焼却灰を捕集し、その焼却灰を簡単な操作で、強度の高い安定した固形物とすることが可能な下水汚泥の処理方法および装置を提供する。
【解決手段】下水汚泥とカルシウム含有物質を約800〜950℃の高温に保たれた流動層炉内に供給して、下水汚泥を焼却し、その高温燃焼排ガスを冷却後、排ガス中に存在する焼却灰を集塵機で捕集し、該捕集焼却灰に水を加えて造粒・固化させるようにした。
また、前記流動層炉に供給する前記カルシウム含有物質中のカルシウム成分の量MC(モル)と、下水汚泥中のケイ素成分の量MS(モル)と下水汚泥中のアルミニウム成分の量MA(モル)とを加えたMS+MAとの比MC/(MS+MA)が0.1〜2となるように流動層炉に供給するカルシウム含有物質の供給量を制御するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥を焼却処理する場合に発生する焼却灰を、簡単な手段により、取扱い性がよく、かつ、高い強度を有する固形物とすることが可能な下水汚泥の処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理によって発生する汚泥は、下水道の普及に伴って増加している。この汚泥は主に埋め立てにより処理されているが、近年は埋立地の減少や環境の観点から埋め立て処分が困難となっている。
このため、下水汚泥を処理するのに、汚泥の減量化や汚泥の有効利用の途が探られている。例えば、汚泥を脱水してコンポスト化し、有機質土壌改良剤として利用する方法、あるいは脱水汚泥を焼却して焼却灰を埋め立て処分する方法などが実施されている。
しかし、汚泥を脱水してコンポスト化しても有害な重金属が含有されており、利用が制限されることからこの方法はあまり採用されておらず、焼却灰を埋め立てる方法がより多く実施されている。
【0003】
しかしながら、焼却灰として減容しても、やはり、埋立地の確保が困難である。そこで、汚泥焼却灰を資源として、再利用、有効利用する方法が提案されている。例えば、焼却灰を加熱溶融したのち冷却し、スラグ化して建築材料の骨材などとして利用する方法、焼却灰を圧縮成型して煉瓦として利用する方法、焼却灰にセメントなどの結合剤を加えて軽量骨材として利用する方法、あるいは、焼却灰をセメント原料の一部として利用する方法などがある。
【0004】
ただ、下水汚泥焼却灰の溶融や焼成には、多大の熱量を消費する上に、特別の設備を必要とするなどの問題が有る。また、セメントなどの結合剤を使用して固化する方法では、結合剤が必要であり、コストがかかるし、処分量の増大をまねくという問題がある。
【0005】
また、汚泥などの廃棄物を焼却処理する方法として、焼却炉からの高温燃焼排ガス中にカルシウムを主成分とする添加剤を添加し、焼却炉で発生する塩化水素および硫黄酸化物を添加剤のカルシウム分に吸着させて除去したあと、添加剤を微粉状ダストとして、飛散ダストと共に回収し、これを成型し、水蒸気オートクレーブ処理を行って無害化固形物を得る廃棄物の焼却処理方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この方法は、排ガス中の塩化水素および硫黄酸化物を除去することができ、集塵機で回収される添加物を含む焼却飛灰は、高温処理や他の結合剤などを用いることなく取扱い性がよく、また重金属などの溶出が防止できる固形物として処分できるという利点を有している。
しかし、集塵機で回収されるダストに水を添加して固化させるのに必要な水硬性が十分でないため、強度の高い水硬性固形物を得るには水蒸気オートクレーブで馴養する必要がある。
【0007】
【特許文献1】特開昭55−35870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、下水汚泥とカルシウム含有物質を高温の流動層炉に供給し、流動層炉内で焼却残渣と酸化カルシウムを反応させ、焼却排ガス中から組成が均一で、かつ、水硬性に優れた焼却飛灰(以下、単に焼却灰と記す)を集塵機で捕集し、その焼却灰を簡単な操作により強度の高い安定した固形物とすることが可能な下水汚泥の処理方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を達成するためになされたもので、以下の手段で解決された。
下水汚泥の処理方法であって、下水汚泥とカルシウム含有物質を約800〜950℃の高温に保たれた流動層炉に供給して、下水汚泥を焼却し、その高温燃焼排ガスを冷却後、排ガス中に存在する焼却灰を集塵機で捕集し、該捕集焼却灰に水を加えて造粒・固化させるようにした。
【0010】
前記流動層炉に供給する前記カルシウム含有物質中のカルシウム成分の量MC(モル)と、下水汚泥中のケイ素成分の量MS(モル)と下水汚泥中のアルミニウム成分の量MA(モル)とを加えたMS+MAとの比MC/(MS+MA)が0.1〜2となるように流動層炉に供給するカルシウム含有物質の供給量を制御すること、前記流動層炉に供給するカルシウム含有物質中のカルシウム成分の重量Maと下水汚泥中の窒素成分の重量Mbとの比Ma/Mbが0.1〜0.45になるように、カルシウム含有物質の供給量を制御することも特徴とする。
【0011】
下水汚泥の処理装置であって、下水汚泥を焼却する流動層炉と、下水汚泥とカルシウム含有物質を該流動層炉にそれぞれ定量供給する定量供給機と、定量供給された下水汚泥とカルシウム含有物を該流動層炉内に個別に、あるいは、混合して供給する供給機と、該流動層炉より排出される高温燃焼排ガスを冷却する冷却塔と、冷却された排ガス中の焼却灰を捕集する集塵機と、該集塵機で除塵された排ガスを処理する排煙処理装置と、該集塵機で捕集された焼却灰に水を添加して、造粒・固化する造粒機とを備えるようにした。
前記集塵機で回収された焼却飛灰に水を加えて予め混練する混練機と、該混練機で混練された混合物を成型・固化する成型機とを備えることも特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
下水汚泥とカルシウム含有物質を高温に保たれた流動層炉に供給し、流動層炉内で汚泥を焼却すると共に、均一に混合された状態の流動層炉内で焼却残渣と酸化カルシウムとの焼成反応を行わせることにより、焼却灰は流動層炉内で組成が均一で、かつ、水硬性に優れたSiO、Al、CaOなどからなる焼成物となる。このため、集塵機で捕集された焼却排ガス中の焼却灰は、単に、水を添加して造粒するという簡単な操作のみで、粉塵に比べて取扱い性がよく、しかも、強度の高い安定した固形物とすることができる。
【0013】
本発明の下水汚泥の処理方法および装置によれば、従来の捕集ダストに結合剤などを加えて固化する方法、高圧反応器を用いて馴養して固化する方法、高温で焼成や溶融処理して固化する方法などに比べて、結合剤の添加や高温の加熱処理が不要であるという利点を有している。
また、固化のためのオートクレーブなどの馴養設備も不要である。このため下水汚泥を低コストで能率よく処理できるので経済的である。
また、捕集ダストに別途結合剤などを加える必要が無いので、副生物や廃棄物の増加を抑制することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に関する好適な実施形態を添付図面に沿って説明するが、本発明は下記の実施の形態になんら限定されるものではなく、適宜変更して実施することが可能である。
図1は、本発明による下水汚泥を処理する装置の構成例を示す概略図である。1は下水汚泥を焼却する循環流動層炉(以下、単に流動層炉と記す)、2は排ガス中に含まれる未燃の固形物などを分離して分離物を炉内に戻すサイクロン、3は空気予熱器、4は白煙防止用予熱器、5は白煙防止用ファン、6は冷却塔、7はバグフィルタなどの集塵機、8は洗浄塔などの排煙処理装置、9は排ガスを誘引するファン、10は処理された排ガスを大気に放出するための煙突である。
【0015】
11は集塵機で捕集した焼却灰を貯留する灰ホッパ、12は灰ホッパ11の排出口に装着された定量供給機、13は造粒機、14は造粒製品受けである。
100は下水処理設備、101は下水汚泥脱水機、102は脱水汚泥ホッパである。103は石灰石ホッパであり、カルシウム含有物質である微粉状の石灰石が貯留される。
104、105はそれぞれ脱水汚泥ホッパ102と石灰石ホッパ103の排出口に装着された定量供給機、106は脱水汚泥と石灰石を混合して、流動層炉1内に投入するための供給機である。
【0016】
したがって、下水処理設備100において発生する下水汚泥は、脱水機101で脱水処理されて脱水汚泥ホッパ102に貯留される。この脱水汚泥ホッパ102の脱水汚泥が定量供給機104から供給機106に定量供給されると共に、石灰石ホッパ103の石灰石が定量供給機105から供給機106に定量供給され、脱水汚泥と微粉状の石灰石とが供給機106によって混合されながら、流動層炉1内に供給される。
【0017】
流動層炉1内で汚泥は焼却され、不燃分は焼却残渣となる。一方、脱水汚泥と共に流動層炉1内に供給された石灰石は約800〜950℃の高温条件下にある流動層炉1内において分解し、酸化カルシウム(CaO)になる。そして、SiO2、Alなどを主成分とする汚泥の焼却残渣とCaOの固相反応が900℃前後の高温条件下で進行し、CaO・SiO、2CaO・SiO、CaO・Alなどの焼成物となる。これらの焼成物も焼却灰として燃焼排ガスに伴って流動層炉1から排出される。
【0018】
流動層炉1で発生した高温排ガス(例えば約900℃)は流動層炉1に備えられたサイクロン2に導入される。サイクロン2によって排ガス中の未燃物などは分離され、その分離物は流動層炉1内に戻されて焼却され、その焼却残渣は、同様に流動層炉1内で酸化カルシウムと反応して焼成物となる。珪砂などの流動媒体を使用する流動層炉の場合には、流動媒体もサイクロン2で捕集され、流動層炉1内に戻される。一部は排ガスに伴って飛散し、後段の集塵機7で捕集される。
なお、流動媒体としての珪砂は粒度が大きく、かつ、非常に安定な物質のため、900℃前後の温度では、流動層炉1内に供給されるカルシウム成分とはほとんど反応しない。
【0019】
サイクロン2を出た高温排ガスは空気予熱器3へ導入される。空気予熱器3で高温排ガスは流動層炉1内に供給される燃焼用空気と熱交換されて約500℃になる。約500℃になった排ガスは、後述する白煙防止用の加熱空気を得るために白煙防止予熱器4に供給され、ファン5によって供給される空気と熱交換される。
【0020】
白煙防止予熱器4を出た排ガスは水噴霧式などの冷却塔6に導入される。白煙防止用予熱器4で加熱された空気は配管Lを通して、後段の煙突10の入口に導入されて煙突10から排出される排気ガスの温度を上げ、白煙の発生を防止する。
冷却塔6に送られた排ガスは、ダイオキシン類等の有害な有機塩素化合物の生成防止や集塵機7として微細なダストも捕集できるバグフィルタを使用する場合のろ布の耐熱性などを考慮して約200℃以下に冷却される。
【0021】
冷却された排ガスは集塵機7に導入されて、排ガス中のダストが取り除かれる。
集塵機7を通過した排ガスは、流動層炉1内で塩化水素や硫黄酸化物の一部が石灰石の投入で取り除かれているが、残存している塩化水素、硫黄酸化物、さらに、シアン化水素等の有害物質を除去するために、水または水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液が噴霧される排煙処理装置8に通されて処理され、処理された排ガスは誘引ファン9によって煙突10から大気に放出される。
なお、集塵機7としてはバグフィルタのほかに電気集塵機、移動層集塵機など各種のものを使用することも可能である。
【0022】
また、排ガス中にダイオキシン類等の有害塩素化合物や水銀などが存在する場合には、集塵機7の前で排ガス中に活性炭、活性コークス等の炭素質吸着剤粉末を添加して吸着させ、集塵機7で捕集することにより効率よく除去することができる。
【0023】
また、排ガス中に窒素酸化物が存在する場合には、冷却塔6の前段に、または集塵機7の後段に脱硝触媒を充填した脱硝塔(図示していない)を設け、この脱硝塔入口の排ガスにアンモニアを注入することによって、窒素酸化物を除去することができる。脱硝塔に充填される触媒としては、TiO−V系触媒や活性コークス等の炭素質触媒などを使用することができる。
【0024】
集塵機7で捕集された焼却灰は灰ホッパ11に貯留され、この捕集焼却灰を定量供給機12を介して下水処理設備の処理水などの水と共に造粒機13に供給して、造粒・固化させる。すなわち、水を添加し、造粒して天日乾燥するだけで、粒径1〜15mm、圧縮強度8kg/cm以上のペレットを得ることが可能である。50〜100℃程度の低温のスチームで加熱して造粒すると、さらに、圧縮強度が20kg/cm以上の優れた固形物を得ることが可能である。
【0025】
造粒機13としては、焼却灰に水を混合して、混合と同時に造粒(成型も含む)・固化を行うパン型やドラム型の転動造粒機、もしくは、焼却灰に水を加えて予め混練した後、成型・固化する押出成型機やプレス成型機など各種のものを使用することができる。なかでも、転動造粒機が安価で操作性に優れている。
【0026】
本発明で流動層炉1に供給するカルシウム含有物質としては石灰石、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、あるいは、カルシウムを多く含有する各種の貝殻やドロマイトなどの鉱石などを使用することもできる。
【0027】
カルシウム含有物質は、カルシウム含有物質中のカルシウム成分の量MC(モル)と、下水汚泥中のケイ素成分の量MS(モル)と下水汚泥中のアルミニウム成分の量MA(モル)とを加えたMS+MAとの比MC/(MS+MA)が0.1〜2となるように流動層炉1内に供給される。
【0028】
すなわち、前記比MC/(MS+MA)=0.1〜2
になるようにカルシウム含有物質を約800〜950℃の高温に保持された流動層炉1内に供給することにより、流動層炉1内で焼却残渣と酸化カルシウムが均一に分散、混合され、効率よく固相反応が進行してCaO・SiO、2CaO・SiO、CaO・Alなどの焼成物が生成する。特に、CaO・Al、2CaO・SiOは水硬性を有するので、焼却灰を固形物にするのに有効である。
【0029】
上記の比が0.1未満では十分な強度を有する固形物が得られず、また、2を超えるとカルシウム分が過剰になり、未反応のカルシウム分が多くなって十分な固化ができない上に、アルカリ分が溶出して二次公害を引き起こす可能性がある。
なお、消石灰などを用いて脱水処理した下水汚泥では、カルシウム含有量が多い場合があるので、流動層炉1内に供給するカルシウム含有物質の量をその分、減じてもよい。
【0030】
特に、流動層炉1内に供給するカルシウム含有物質中のカルシウム成分の重量Maと下水汚泥中の窒素成分の重量Mbとの比Ma/Mbを0.1〜0.45となるように、言い換えれば、カルシウム含有物質中のカルシウム成分の量MC(モル)と下水汚泥中の窒素成分の量MN(モル)との比MC/MNで0.035〜0.16となるように、カルシウム含有物質の供給量を調整すると、図2に示すように、流動層炉1で発生する燃焼排ガス中の窒素酸化物とシアン化水素の含有量を低減化できるので、流動層炉1の後段に配設される排ガス処理設備8の負担を軽減できるということを本発明者らは見い出し、先に特許出願した(特願2003−093932)。
【0031】
なお、図2において、縦軸は燃焼排ガス中のシアン化水素(HCN)と窒素酸化物(NOx)の含有量である。
図より、Ma/Mbが0.1〜0.45になるようにカルシウム含有物質の供給量を調整することにより、流動層炉1から発生する排ガス中のHCN濃度およびNOx濃度を双方ともに適正な濃度に抑えることが可能である。
【0032】
通常、下水汚泥中の窒素成分の量MN(モル)と、下水汚泥中のケイ素成分の量MS(モル)と下水汚泥中のアルミニウム成分の量MA(モル)とを加えたMS+MAとの比MN/(MS+MA)は約4前後なので、Ma/Mbが0.1〜0.45(MC/MNとして0.035〜0.16に相当する)となるカルシウム含有物質の供給量は、前述のカルシウム含有物質中のカルシウム成分の量MC(モル)と、下水汚泥中のケイ素成分の量MS(モル)と下水汚泥中のアルミニウム成分の量MA(モル)とを加えたMS+MAとの比MC/(MS+MA)として約0.14〜0.64に相当する。そして、この値は水硬性のよい焼却灰を得るのに必要な値である0.1〜2の範囲にある。
【0033】
すなわち、Ma/Mbが0.1〜0.45になるようにカルシウム含有物質の供給量を調整することにより、排ガス処理設備8の負荷の低減ができると共に、捕集焼却灰の固化も簡単にできるという効果がある。
【0034】
流動層炉1内に供給される脱水汚泥の含水率は、流動層炉1内での汚泥の燃焼を良好に保つと共に、燃費の削減を図る上で、脱水機101で通常約80%以下、好ましくは、約70%以下に脱水処理される。流動層炉1内の温度を高温に、かつ、安定に保つことにより、均一で、水硬性に優れた焼成物である焼却灰を得ることができる。
【0035】
含水率があまり高いと、流動層炉1内の温度が上がらず、また安定しないので、良好な焼成物ができない。また、汚泥の焼却が十分に行われないと、集塵機7で捕集される焼却灰中の炭素などの未燃分が多くなり、水硬性の良好な焼却灰が得られない。
逆に、含水率が非常に低い脱水汚泥を得るには、高価な薬剤が多量に必要であったり、あるいは、高価な脱水機が必要になり、経済的ではない。
【0036】
本発明では、下水汚泥とカルシウム含有物質が、高温に保たれた流動層炉1内に供給されるので、流動層炉1内での焼成反応が均一の条件で進行すること、また、水硬性に優れた焼成物の生成に適した量のカルシウム含有物質が流動層炉1内に供給されるので、組成が均一で、かつ、水硬性に優れた焼成物が得られるという特徴がある。
使用する焼却炉は流動層炉1であり、焼却灰とカルシウム含有物質が高温条件の下に、均一に混合されて焼成反応が進行するので、均一で、かつ、水硬性のよい焼成物を得るのに適している。
【0037】
流動層炉1としては、気泡式流動層炉や循環式流動層炉などが使用できる。また、流動層炉1内に珪砂などの流動媒体を添加する形式のものも使用することができる。
なお、図1では下水汚泥とカルシウム含有物質を1台の供給機106を用いて、混合して流動層炉1内に供給しているが、供給機を2台設け、それぞれを個別に流動層炉1内に供給することも可能である。
【実施例】
【0038】
図1に示す装置を用い、下水汚泥の焼却処理を行った。灰分組成としてSiO2、45重量%、Al3、16重量%、CaO、3重量%を含有する下水汚泥と微粉の石灰石を850〜900℃に保持した循環流動層炉に供給した。
循環流動層炉に供給する石灰石の量は、石灰石中のカルシウム成分の量MC(モル)と、下水汚泥中のケイ素成分の量MS(モル)と下水汚泥中のアルミニウム成分の量MA(モル)を加えたMS+MAとの比MC/(MS+MA)が、それぞれ0.05、0.1、0.5、1.0、2.0、3.0となるように変化させた。集塵機で捕集した焼却灰はドラム式の転動造粒機を用い、水を25%加えて造粒後、乾燥して直径約3〜10mmのペレットを製作した。
【0039】
得られた造粒製品の圧縮強度(kg/cm)は、それぞれ5、7、8、9、8、6であった。
すなわち、MC/(MS+MA)の値を0.1〜2の範囲になるように流動層炉1に供給するカルシウム含有物質の量を制御することによって、強度の高いペレットを得ることが可能である。
【0040】
本発明の方法は、焼成反応が進行しにくい排ガス温度が低下した煙道などにカルシウム含有物質を添加するのではなく、上述したように、下水汚泥とカルシウム含有物質を高温の流動層炉1内に供給して下水汚泥を焼却処理するために、流動層炉1内で焼却残渣とカルシウム化合物が均一に分散、混合され、かつ、高温状態のため焼成反応が効果的に進行する。このため、集塵機7で回収される焼却灰は組成が均一で、かつ、水硬性に優れているので、水を加えて造粒するという簡単な操作のみで、強度に優れた固形物を得ることができる。
【0041】
本発明の処理方法および装置により得られる造粒製品は、粒径約1〜15mm、圧縮強度8kg/mm以上の球状成型物などであるので、花卉肥料や融雪剤、脱硫剤、地盤改良剤等に使用することが可能である。
【0042】
また、下水処理場の汚泥消化槽などの脱臭剤としても良好な機能を有しているので、各種の臭気ガスの脱臭剤としても利用することが可能である。
また、造粒品の形状や粒径は各用途の使用に適したものとして調整することが可能である。例えば、ドラム式の転動造粒機を使用する場合、造粒時間や攪拌の回転数を変えることにより、球状製品の粒径を調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明による下水汚泥を処理する装置の構成例を示す概略図である。
【図2】下水汚泥を焼却した際のMa/Mbの値と流動層炉から発生する排ガス中の窒素酸化物濃度、シアン化水素濃度との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0044】
1 流動層炉
2 サイクロン
3 空気予熱器
4 白煙防止用予熱器
5 白煙防止用ファン
6 冷却塔
7 集塵機
8 排煙処理装置
9 誘引ファン
10 煙突
11 灰ホッパ
12 定量供給機
13 造粒機
14 造粒製品受け
100 下水処理設備
101 脱水機
102 脱水汚泥ホッパ
103 石灰石ホッパ
104、105 定量供給機
106 供給機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下水汚泥とカルシウム含有物質を約800〜950℃の高温に保たれた流動層炉に供給して、下水汚泥を焼却し、その高温燃焼排ガスを冷却後、排ガス中に存在する焼却飛灰を集塵機で捕集し、該捕集焼却飛灰に水を加えて造粒・固化することを特徴とする下水汚泥の処理方法。
【請求項2】
前記流動層炉に供給する前記カルシウム含有物質中のカルシウム成分の量MC(モル)と、下水汚泥中のケイ素成分の量MS(モル)と下水汚泥中のアルミニウム成分の量MA(モル)とを加えたMS+MAとの比MC/(MS+MA)が0.1〜2となるように流動層炉に供給するカルシウム含有物質の供給量を制御することを特徴とする請求項1記載の下水汚泥の処理方法。
【請求項3】
前記流動層炉に供給するカルシウム含有物質中のカルシウム成分の重量Maと下水汚泥中の窒素成分の重量Mbとの比Ma/Mbが0.1〜0.45になるように、カルシウム含有物質の供給量を制御することを特徴とする請求項1記載の下水汚泥の処理方法。
【請求項4】
下水汚泥を焼却する流動層炉と、下水汚泥とカルシウム含有物質を該流動層炉にそれぞれ供給する定量供給機と、定量供給された下水汚泥とカルシウム含有物質を該流動層炉に個別に、あるいは、混合して供給する供給機と、該流動層炉より排出される高温燃焼排ガスを冷却する冷却塔と、冷却された排ガス中の焼却飛灰を捕集する集塵機と、該集塵機で除塵された排ガスを処理する排煙処理装置と、該集塵機で捕集された焼却飛灰と水を供給して、造粒・固化する造粒機とを備えることを特徴とする下水汚泥の処理装置。
【請求項5】
前記集塵機で回収された焼却飛灰に水を加えて予め混練する混練機と、該混練機で混練された混合物を成型・固化する成型機とを備えることを特徴とする請求項4記載の下水汚泥の処理装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−3013(P2006−3013A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179949(P2004−179949)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】