説明

下痢を予防するかまたは低減する方法及び組成物

哺乳類における下痢を予防するかまたは低減する方法であって、下痢予防または下痢低減量のジェランガムを前記哺乳類に投与することを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野及び背景技術】
【0001】
全ての哺乳類は、持続的な成長及び通常の満足な状態のための健康的な食餌及びこの食餌の適切な消化を必要としている。しかしながら、胃腸の窮迫は食品の通常の消化を妨げる。こうした問題の幾つか、例えばクローン病、過敏性腸症候群、他の慢性状態及びその他同様なものは、かなり深刻となり得、本格的な治療を必要とし得る。他のもの、例えば食品媒介ウイルス、腸管流感及びその他同様なものは、より深刻でない状態を有し、本質的に自己限定的となり得る。これらのほとんど全ては、下痢であるゆるい水状大便を伴い、これは、この状態を有する哺乳類またはペットが排便した後に清掃しなければならないペット所有者にとって、特に慢性的な場合に極めて不快となり得る。
【0002】
幾つかのペットフードは、下痢状態を引き起こすかまたは悪化させる傾向があることが見い出された。例えば、2001年8月28日に発行された米国特許第6,280,779号を参照されたい。特に“チャンク及びグレービー”食を食するペットの場合、下痢はかなりの問題となり得る。食餌中のかなりの量のガムの存在、主に化工デンプンまたはガムであるが、より少ない程度に通常の天然デンプン及びガムでさえもが、この問題に関連してきた。
【0003】
現在、特定のガムは、哺乳類において下痢状態を引き起こすかまたは悪化させる傾向を有しないだけでなく、哺乳類におけるこのような下痢を予防するかまたは低減する能力を有することが見い出された。
【発明の開示】
【0004】
本発明によれば、哺乳類における下痢を予防するかまたは低減する方法であって、下痢予防または下痢低減量のジェランガムを前記哺乳類に投与することを含む方法が存在する。
【0005】
さらに、薬剤用キャリアと共同して、哺乳類における下痢を予防するかまたは下痢を低減するのに十分な1日用量または1日用量の一部分のジェランガムを含む、哺乳類への経口投与に適した医薬単位剤形が存在する。
【0006】
加えて、犬または猫による摂取に適し、少なくとも1つのフード成分及び下痢予防または下痢低減量のジェランガムを有するウエットフード組成物が存在する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
前述のものとしての“チャンク及びグレービー”食は、チャンクが肉または肉副産物の部片であるような食餌を含む。これは、チャンクの基本的な内容物である。またチャンク中に存在するのは通常、穀物及び繊維質材料並びにビタミン及び栄養素である。こうした材料は一般に、チャンクの少ない方の部分として存在する。グレービー部分は通常流体特性を有し、芳香、おいしさ、及び幾つかの追加の栄養上の特性を基礎製品の例えば追加のビタミン、ミネラル、及びその他同様なものに供給する。また市場に存在するのは、個別の肉部分中の幾分細長い他の個別の肉様形態であり、デリカテッセンのスライス肉同様に比較的に平らである。本明細書及び請求の範囲の全体にわたって利用する“チャンク”という用語は、薄片並びに食餌の個別のグレービー成分から分離した任意の他の個別の肉含有組成物を含むものとする。こうした各々の場合において、“チャンク”はグレービーと共に単一のユニットとして存在し、例えば容器に入れて販売される。
【0008】
特定のガム、ジェランの使用は、哺乳類が排便する際に下痢を実質的に低減することが現在見い出された。特に時々下痢を有する傾向を有する哺乳類において、ジェランガムは哺乳類における下痢を予防できる。ジェランガムはまた既に下痢を経験している哺乳類における下痢を低減する能力を有する。これは、下痢状態の低減の簡単な目視観察から統計的に有意な低減と事実上の除去または減退へと進み得る低減である。これは、少なくとも部分的に下痢の状態を特徴とするほぼ全ての病因によって発生し得る。しかしながら、病因が、未知であるか、または細菌、ウイルス(両方とも好ましくは短期)若しくは食餌処方計画によって誘発されることが好ましい。
【0009】
ジェランガムを、哺乳類、好ましくはこのような投与を必要とするものに、例えば経口、直腸、及びその他同様なもののような多くの様式のうちの任意の1つで投与することができるが、経口が確かに好ましい。ジェランガムを、表面に噴霧または沈殿させることによって、ウエット食中にまたは任意の食餌成分の表面に取り入れて、ウエット食で投与することができる。これは、栄養食自体の中にまたはスナック若しくはトリート中に存在することができる。これはまた、食餌の液体部分の例えば水または別の流体中に存在することができる。ジェランは粉末固体または液体の例えばゲルとして投与することができる。希望するなら、ジェランガムを、カプセル、錠剤、カプレット、シリンジ、及びその他同様なもののような医薬剤形で経口投与することができる。剤形内部で、ジェランガムは粉末または液体の例えばゲルとして存在することができる。通常の薬剤用キャリアの例えば水、グルコース、スクロース及びその他同様なもののいずれでも、ジェランガムと一緒に用いることができる。
【0010】
犬または猫への投与に関して、最小1日用量は、フードの少なくとも約0.1重量%または少なくとも約0.05g/kgbwt、好ましくは少なくとも約0.2重量%、最も好ましくは少なくとも約0.5重量%または少なくとも約0.3g/kgbwtである。最大量は、有意な望ましくない副作用をもたらし得るもの未満である。一般に、フードの約1.5若しくは2重量%を超えないもの及びフードの約4重量%を超えないものまたは1若しくは2g/kgbwtを用いることができる。ヒトに投与するための最小用量は、約0.05g/kgbwtまたは好ましくは少なくとも約0.1g/kgbwtである。最大量は、有意な望ましくない副作用をもたらし得るもの未満である。一般に、フードの約1若しくは2g/kgbwtまたは約4重量%を超えないものを用いることができる。
【0011】
最も興味深いことに、下痢の原因がフード成分であると思われる場合に、ジェランガムが下痢に対処する際に有効であるためには、成分を食餌から完全にまたは任意の大きな程度に除去する必要は無い。
【0012】
本明細書及び請求の範囲において使用する“ジェランガム”という用語は、スフィンゴモナス・パウシモビリス(Sphingomonas paucimobilis)(カナダモ)(ATCC31461)によって発酵から製造された線状多糖を指す。ガムの工業的製造は、スフィンゴモナス・パウシモビリスを、グルコース、グルクロン酸及びラムノースを含む発酵ブロスに接種して、2:1:1の比で四糖反復単位を形成することによって実行することができる。その未変性の形態において、これは1.5個のアシル基、アセチル及びグリセレート/反復単位を用いて高度にアシル化される。ジェランガムの基本的な下痢止め活性が有意に減少しない限り、数及びタイプの両方においてアシル基の変性を行うことができる。こうした様々な形態を、CPケルコ(CP Kelco)から様々な商品名で得ることができ、これはジェルライト(登録商標)(Gelrite(登録商標))、K9A50及び他のケルコジェランガム(Kelco gellan gum)を含み、ケルコジェルLT(登録商標)(Kelcogel LT(登録商標))、ケルコジェルF7及びケルコジェルLT100(登録商標)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。本明細書の全体にわたって使用する“ジェラン”は、下痢止め機能を維持する限りは天然ガムまたはアシル変性ガムを指す。
【0013】
下記のものは、本発明の広い範囲及び性質を示す本発明の実施例である。数字1〜5を使用して、大便の物理的性質を示す場合、こうした数字は、以下の観察された大便の物質の物理的状態と一致する。
【0014】
等級1:排便において大便の3分の2を超えるものが液体である。大便は全ての形態を失い、水たまりまたは噴出液のように見える。
等級2:固体−液体大便は、柔らかい大便と液体大便との間に位置する。排便において大便のうちほぼ等しい量が柔らかいもの及び液体である。
【0015】
等級3:排便において大便の3分の2を超えるものが柔らかい。大便は積み重なるのに十分な形態を保持しているが、その硬い円柱形の外観を失っている。
等級4:硬い−柔らかい大便は、硬い等級と柔らかい等級との間に位置する。排便において大便のうちほぼ等しい量が硬いもの及び柔らかいものである。
【0016】
等級5:排便において大便の3分の2を超えるものが硬い。これは、わずかに扁平な円柱形の形状を有する。
等級1及び2は許容不可能であり、等級4及び5は好ましい。
【実施例】
【0017】
実施例I:猫
慢性下痢を有する12匹の成猫であるショートヘアのイエネコ(8匹は雄、4匹は雌)は、缶入り対照及び試験食(組成が同様であるが、ただし0.2%のケルガムを、1%のジェランガムブレンド(37%のジェランガム、33%のスクロース、18%の乳酸カルシウム)または0.4%の純ジェランガムで置き換えた)を摂取した。研究の最中に、通常プレドニゾンを摂取していた猫は、研究の開始の5日前にプレドニゾン摂取を止めた。食餌の組成は表1に示す通りである。
【0018】
【表1】

【0019】
二重交差法(double crossover design)において、14日間6匹の猫に対照を供給し、6匹の猫に試験食を供給した。これに続いて、14日間のワッシュアウト期間をおき、この間これらが全て同様のワッシュアウト食を摂取した。次にさらに14日間、猫に対照または試験食の交差法を行った(crossed over)。研究の間中毎日大便を等級分けした。等級1〜5を使用し、1は液体水状下痢であり、5は形を成す硬い大便である。結果は、対照食(23%)と比較して、試験食(4%)を消費した場合、大便スコア1及び2の頻度の有意な減少が存在したことを示した。試験において、対照群と比較して、大便スコア4及び5の頻度の大きな増大(49%対27%)が存在した。試験食の開始の前に、平均大便スコアは2.7だった。試験食の場合、平均大便スコアは3.9だった。
実施例2:猫の用量反応
慢性下痢を有する12匹の猫を研究において使用し、14日間各6匹の猫に試験食または対照食を供給した。配合において0、0.2、0.3及び0.4%のジェランガムの様々な用量で試験を繰り返した。表2は、各食餌内で様々なタイプの大便の%発生を示す。
【0020】
【表2】

【0021】
結果は、食餌の0.4%の濃度でジェランガムは下痢(大便1〜2)の発生を予防することができ、一方、食餌の0.1〜0.3%の濃度で、対照と比較してジェランガムは下痢の発生を2倍低減できることを示した。
実施例3:犬
グロサリー(grocery)ブランドのチャンク及びグレービー配合を供給された犬は、有意な下痢の発生を有することを示した。このモデルを使用して、犬における下痢の発生を低減する際のジェランガムの効力を試験した。7日間、対照群において、グロサリーブランドのチャンク及びグレービー配合を犬に供給した。試験群において、0.4%のジェランガムをゲルの形態でフードに加えた同じチャンク及びグレービー配合を犬に供給した。大便の格付けを7日間得た。表3における結果は、ジェランガムを食餌に加えることは、このモデルにおいて下痢の発生を予防することを示した。
【0022】
【表3】

【0023】
実施例4:犬の用量反応
犬の下痢のモデルのために様々なチャンク及びグレービー配合を使用し、ジェランガムを様々なレベルでグレービー配合中に取り入れた。対照及び試験食のために、1%のグアーガムを用いてグレービーを配合した。結果を下記に示す。
【0024】
【表4】

【0025】
結果は、0.1%のジェランガムは下痢の発生を対照における27%と比較して10%発生率まで減少できることを示した。大便の格付け1(水状下痢)の発生はほとんどないから全く無いまでであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類における下痢を予防するかまたは低減する方法であって、下痢予防または下痢低減量のジェランガムを前記哺乳類に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記哺乳類はヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ジェランガムは経口投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ジェランガムは液体または固体の形態で投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ジェランガムは、カプセル、錠剤またはカプレットの形態で固体として投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ジェランガムはゲルとして投与される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ジェランガムはヒトの食餌において投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記ジェランガムは前記食餌内部に取り入れられるかまたは食餌成分の表面に存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ジェランガムは約0.05g/kgbwt〜約2g/kgbwt/日の割合で投与される、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記哺乳類は犬または猫である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ジェランガムは経口投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ジェランガムは液体または固体の形態で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ジェランガムは、カプセル、錠剤またはカプレットの形態で固体として投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ジェランガムはゲルとして投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ジェランガムは前記犬または猫の食餌において投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記ジェランガムは前記食餌内部に取り入れられるかまたは食餌成分の表面に存在する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ジェランガムは約0.05g/kgbwt〜約2g/kgbwt/日の割合で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
薬剤用キャリアと共同して、哺乳類における下痢を予防するかまたは下痢を低減するのに十分な1日用量または1日用量の一部分のジェランガムを含む、哺乳類への経口投与に適した医薬単位剤形。
【請求項19】
カプセル、錠剤またはカプレットからなる群から選択される、請求項18に記載の医薬単位剤形。
【請求項20】
犬または猫による摂取に適し、少なくとも1つのフード成分及び下痢予防または下痢低減量のジェランガムを有するフード組成物。
【請求項21】
前記フードは、犬または猫の栄養上の必要性を満たすのに十分な日常食またはトリート、またはスナックから選択される、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記ジェランガムは前記組成物の成分の表面にある、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記ジェランガムは前記組成物の約0.1〜約4重量%である、請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
前記ジェランガムはジェラン下痢止め効果を必要とするヒトに投与される、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記ジェランガムはジェラン下痢止め効果を必要とする犬または猫に投与される、請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2006−519863(P2006−519863A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509003(P2006−509003)
【出願日】平成16年3月2日(2004.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2004/006358
【国際公開番号】WO2004/080206
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(502329223)ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド (138)
【Fターム(参考)】