説明

下肢訓練装置

【課題】 使用者が自らの下肢体力を客観的かつ定量的に評価でき、評価結果に基づいて訓練を行うことができる、下肢訓練装置を提供する。
【解決手段】 使用者の下肢の少なくとも一部を押し付けるための訓練具と使用者の足裏を置くための足置き部とを有する荷重受部と、前記荷重受部にかかる荷重を検出する少なくとも一つの荷重センサと、前記荷重に基づいて使用者の下肢体力を演算する演算装置と、
前記演算装置の演算結果を出力する出力装置と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の訓練装置に関する。より詳しくは、下肢の訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
膝の疾患や加齢は、下肢の体力が低下する原因となる。下肢体力が低下すると、歩行や安定した立位姿勢が困難になる。高齢者では転倒により骨折を招く恐れがあり、骨折が原因となって寝たきりの状態になる可能性もある。下肢体力を強化することは、健康維持にとって極めて重要な課題と言える。
【0003】
下肢体力を強化するための従来の装置として、例えば、特開平11−290301号公報に開示された大腿四頭筋筋力測定装置がある。この大腿四頭筋筋力測定装置は、足首支持台と、膝裏支持台と、膝裏高さ調節手段と、荷重検出手段と、表示装置とを備える。使用者は、足首を足首支持台で固定し、膝裏を用いて膝裏支持台に荷重を加える。荷重は、膝裏支持台に備えられた検出器により検出され、その値が表示部に表示される。この大腿四頭筋筋力測定装置によれば、使用者は、大腿筋の最大筋力を測定することができ、また、荷重の強度を確認しながら訓練することが可能となる。
【特許文献1】特開平11−290301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
下肢の体力を強化する場合、適正な強度で訓練を行う必要がある。しかし、前記従来の四頭筋筋力測定装置では、訓練の強度を適切に決定するための手段が提供されておらず、適正な訓練を行うためには、医師や理学療法士、専門のトレーナー等による補助を受けねばならなかった。使用者が自らの主観で強度を設定すれば、強度不足で十分に訓練の効果を得られない可能性や、強度過剰で怪我をする危険性があった。
【0005】
もし下肢体力を客観的かつ定量的に評価することができれば、評価結果に基づいて訓練の内容を適切に決定できる。下肢体力の評価ができれば、目標を設定することで、訓練の継続性を促すことにもつながる。しかし、前記従来の四頭筋筋力測定装置では、下肢体力の指標は最大筋力のみである。最大筋力は、年齢や性別、体重等によって様々に変化する。このため、最大筋力が分かったとしても、自分の下肢体力が適正であるのか客観的に把握することはできない。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、使用者が自らの下肢体力を客観的かつ定量的に評価でき、評価結果に基づいて訓練を行うことができる、下肢訓練装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の下肢訓練装置は、使用者の下肢の少なくとも一部を押し付けるための訓練具と使用者の足裏を置くための足置き部とを有する荷重受部と、前記荷重受部にかかる荷重を検出する少なくとも一つの荷重センサと、前記荷重に基づいて使用者の下肢体力を演算する演算装置と、前記演算装置の演算結果を出力する出力装置と、を備える。
【0008】
かかる構成により、下肢を押し付けることによって生じる荷重を検出し、検出結果に基づいて下肢体力を評価することができる。下肢体力の評価結果は、出力装置により出力されるため、使用者は、自らの下肢体力を客観的かつ定量的に評価でき、評価結果に基づいて目標を持って訓練を行うことができる。
【0009】
本発明の下肢訓練装置は、さらに、前記演算結果を記憶する記憶装置を備えてもよい。
【0010】
かかる構成により、下肢体力の評価結果を記憶させておくことが可能となる。記憶された下肢体力の評価結果は出力装置により出力されるため、使用者は、自らの下肢体力のこれまでの変動を客観的かつ定量的に評価でき、その変動に基づいて訓練を行うことで、達成感を得ることができ、また新たな目標設定が可能となる。
【0011】
本発明の下肢訓練装置は、さらに、使用者の身体特定情報を入力するための入力装置を備え、前記演算装置は、前記荷重と、前記入力装置により入力された使用者の身体特定情報とに基づいて、前記下肢体力を演算し、前記記憶装置は、前記演算結果および前記身体特定情報を記憶してもよい。
【0012】
かかる構成により、身体特定情報を参考にしながら使用者の下肢体力を評価できる。よって、使用者の身長、体重、年齢、性別等、身体の状態により適合した適切な評価を行うことができる。
【0013】
本発明の下肢訓練装置において、前記下肢体力は、体重あたりの下肢筋力であり、前記足置き部は、両足それぞれの足裏を置くための右足置き部と左足置き部とを備え、前記演算装置は、前記荷重センサの検出結果に基づいて、使用者の体重を演算し、前記演算装置は、使用者が前記訓練具に下肢を置いた状態において前記下肢の力を抜いた状態における前記荷重を片脚荷重とし、前記演算装置は、使用者が前記訓練具に下肢を押し付けた状態における前記荷重と、前記片脚荷重との差分を下肢筋力とし、前記演算装置は、前記体重および前記下肢筋力に基づいて、前記体重あたりの下肢筋力を演算してもよい。
【0014】
かかる構成により、下肢体力の評価指標として、体重あたりの下肢筋力を利用できる。
【0015】
本発明の下肢訓練装置において、前記下肢体力は、年齢に応じた下肢筋力の強さを含み、
前記身体特定情報は、使用者の年齢を含み、前記演算装置は、使用者が前記訓練具に下肢を置いた状態において前記下肢の力を抜いた状態における前記荷重を片脚荷重とし、前記演算装置は、使用者が前記訓練具に下肢を押し付けた状態における前記荷重と、前記片脚荷重との差分を下肢筋力とし、前記演算装置は、前記年齢と前記下肢筋力に基づいて、前記年齢に応じた下肢筋力の強さを演算してもよい。
【0016】
かかる構成により、下肢体力の評価指標として、年齢に応じた下肢筋力の強さを利用できる。
【0017】
本発明の下肢訓練装置は、さらに、計時装置を備え、前記下肢体力は、重心動揺であり、前記演算装置は、前記荷重センサの検出結果に基づいて、前記重心動揺を演算してもよい。
【0018】
かかる構成により、下肢体力の評価指標として、重心動揺を利用できる。
【0019】
本発明の下肢訓練装置は、さらに、計時装置を備え、前記下肢体力は、年齢に応じた重心動揺の小ささであり、前記身体特定情報は、使用者の年齢を含み、前記演算装置は、前記荷重センサの検出結果に基づいて、前記重心動揺を演算し、前記演算装置は、前記年齢と前記重心動揺に基づいて、前記年齢に応じた重心動揺の小ささを演算してもよい。
【0020】
かかる構成により、下肢体力の評価指標として、年齢に応じた重心動揺の小ささを利用できる。
【0021】
本発明の下肢訓練装置において、前記重心動揺は、片脚起立時の重心動揺であってもよい。
【0022】
かかる構成により、下肢体力の評価指標として、片脚起立時の重心動揺を利用できる。片脚で起立する場合には、両脚起立時に比べ、バランスを保つことが困難であり、下肢体力をより鋭敏に反映することが期待される。片脚起立時の重心動揺を検出することで、より容易かつ的確に、下肢体力を評価できる。
【0023】
本発明の下肢訓練装置において、前記足置き部は、両足それぞれの足裏を置くための右足置き部と左足置き部とを備え、前記演算装置は、前記荷重センサの検出結果に基づいて、使用者の体重を演算し、前記身体特定情報は、前記入力装置により入力された使用者の身長と前記演算された体重とを含み、前記右足置き部および前記左足置き部は、生体インピーダンス検出用の足電極を備え、前記演算装置は、前記足電極を用いた生体インピーダンスの検出結果および前記身体特定情報に基づいて、前記下肢体力を演算してもよい。
【0024】
かかる構成により、下肢体力の評価指標を、足電極を用いた生体インピーダンスの検出値に基づいて演算することができる。よって、例えば両脚の筋肉量を評価指標として、適切な訓練を行うことができる。
【0025】
本発明の下肢訓練装置において、前記足置き部は、両足それぞれの足裏を置くための右足置き部と左足置き部とを備え、前記演算装置は、前記荷重センサの検出結果に基づいて、使用者の体重を演算し、前記身体特定情報は、前記入力装置により入力された使用者の身長と前記演算された体重とを含み、さらに操作ユニットを備え、前記操作ユニットは、生体インピーダンス検出用の手電極を備え、前記右足置き部および前記左足置き部は、生体インピーダンス検出用の足電極を備え、前記演算装置は、前記手電極および前記足電極を用いた生体インピーダンスの検出結果および前記身体特定情報に基づいて、前記下肢体力を演算してもよい。
【0026】
かかる構成により、下肢体力の評価指標を手電極および足電極を用いた生体インピーダンスの検出値に基づいて演算することができる。よって、例えば訓練を行う側の脚(下肢)の筋肉量を評価指標とすれば、より適切な訓練につなげることができる。
【0027】
本発明の下肢訓練装置において、前記演算装置は、前記荷重センサの検出結果に基づいて、重心動揺を演算し、前記演算装置は、使用者が前記訓練具に下肢を置いた状態において、前記下肢の力を抜いた状態における前記荷重を片脚荷重とし、前記演算装置は、使用者が前記訓練具に下肢を押し付けた状態における前記荷重と、前記片脚荷重との差分を、下肢筋力とし、前記演算装置は、前記重心動揺と前記下肢筋力を、二次元グラフとして、前記出力装置に出力してもよい。
【0028】
かかる構成により、重心動揺と下肢筋力がグラフとして視覚的に出力される。グラフを用いると、下肢体力を視覚的に明瞭に把握できるので好適である。
【0029】
本発明の下肢訓練装置において、前記荷重受部は、前記訓練具の前方および後方に、脚あて部を有し、前記訓練具は、左右方向に延びる仮想の主軸の周りに上方に凸状に湾曲し左右の端面が前記主軸に略垂直であるように形成され、前記荷重受部の上面中央に、前記荷重受部の前後軸に沿って、前記訓練具が設けられていてもよい。
【0030】
かかる構成により、本体の前後には脚あて部があるため、太腿やふくらはぎが装置の角に当たることなく、快適に訓練を行うことができる。
【0031】
本発明の下肢訓練装置は、さらに、計時装置を備え、前記下肢体力は、片脚起立可能時間であり、前記演算装置は、前記荷重センサの検出結果に基づいて、前記片脚起立可能時間を演算してもよい。
【0032】
かかる構成により、下肢体力の評価指標として、片脚起立可能時間を利用できる。
【0033】
本発明の下肢訓練装置は、さらに、計時装置を備え、前記下肢体力は、立位安定姿勢移行時間であり、前記演算装置は、前記荷重センサの検出結果に基づいて、前記立位安定姿勢移行時間を演算してもよい。
【0034】
かかる構成により、下肢体力の評価指標として、立位安定姿勢移行時間を利用できる。
【0035】
本発明の下肢訓練装置において、前記演算装置は、前記身体特定情報および前記下肢体力に基づいて、訓練プログラムを決定し、前記制御装置は、前記出力装置の出力を介して、前記訓練プログラムに基づき、使用者の訓練を誘導してもよい。
【0036】
かかる構成により、身体特定情報および下肢体力の評価結果に基づいて訓練プログラムを適宜変更できる。使用者は、出力される訓練プログラムに従って訓練を行うことができる。使用者はより適切な訓練を行うことができる。
【0037】
本発明の下肢訓練装置は、さらに、前記訓練具に生体インピーダンス検出用の訓練具電極を備え、前記演算装置は、前記訓練具電極と前記足電極を用いた生体インピーダンスの検出結果および前記身体特定情報に基づいて、訓練部位の体力を演算してもよい。あるいは本発明の下肢訓練装置において、前記荷重受部は、前記訓練具の前方および後方に脚あて部を有し、前記訓練具は、左右方向に延びる仮想の主軸の周りに上方に凸状に湾曲し左右の端面が前記主軸に略垂直であるように形成され、前記荷重受部の上面中央に、前記荷重受部の前後軸に沿って、前記訓練具が設けられており、前記訓練具に生体インピーダンス検出用の訓練具電極を備え、前記演算装置は、前記訓練具電極と前記足電極を用いた生体インピーダンスの検出結果および前記身体特定情報に基づいて、両太腿部の体力を演算してもよい。
【0038】
かかる構成により、下肢全体ではなく、訓練部位に特化した体力を客観的かつ定量的に把握できるため、より適切に下肢の訓練を行うことが可能となる。
【0039】
本発明の下肢訓練装置において、前記荷重受部は、前記訓練具の前方および後方に脚あて部を有し、前記訓練具は、左右方向に延びる仮想の主軸の周りに上方に凸状に湾曲し左右の端面が前記主軸に略垂直であるように形成され、前記荷重受部の上面中央に、前記荷重受部の前後軸に沿って、前記訓練具が設けられており、前記訓練具に生体インピーダンス検出用の訓練具電極を備え、前記演算装置は、前記訓練具電極と前記手電極と前記足電極を用いた生体インピーダンスの検出結果および前記身体特定情報に基づいて、左太腿部または右太腿部の体力を演算してもよい。
【0040】
かかる構成により、右あるいは左の太腿部に特化した体力を客観的かつ定量的に把握できるため、より適切に下肢の訓練を行うことが可能となる。よって、特に、片方の太腿部のみを集中的に訓練したい場合に有効である。
【0041】
「身体特定情報」とは、使用者の身体を特定する情報であって、使用者の氏名、識別番号、身長、年齢、性別、体重の少なくとも一つを含むものをいう。
【発明の効果】
【0042】
本発明は、以上に説明したような構成を有し、以下のような効果を奏する。すなわち、使用者が自らの下肢体力を客観的かつ定量的に評価でき、評価結果に基づいて訓練を行うことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0044】
(第1実施形態)
[構造]
本発明の第1実施形態の下肢訓練装置は、概略として、本体100と操作ユニット200からなる。図1、図2、図3、図4は、本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の本体100の概略構成の一例を示す上面図、背面図、側面図、断面図である。また、図5、図6、図7は、本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の操作ユニット2の概略構成の一例を示す正面図、上面図、側面図である。以下、図1乃至図7を参照しながら、本実施形態の下肢訓練装置について、ハードウェアと制御系統に分けて説明する。
【0045】
最初に、ハードウェアについて以下に説明する。図1乃至図3に示す通り、本実施形態の下肢訓練装置の本体100は、踏み台101と踏み台101の四隅を支持する脚102とを供えている。踏み台101は略矩形の板状の形状を有し、前端部及び後端部の各中央部に、太ももが入る程度の幅(15cm程度)を有する脚あて部112(切り欠き)がそれぞれ形成されている。踏み台101の上面の中央部には、上述の一対の脚あて部112の間に位置するように膝受部103(下肢受部)が配設されている。膝受部103は、その上面が、左右方向に延びる仮想の主軸の周りに上方に凸状に湾曲し、左右の端面が前記主軸に略垂直であるように形成されている。膝受部103は、硬質プラスチック等からなる基体104と柔軟性のあるクッション105を有し、クッション105が基体104の上面に嵌め込まれる態様で構成されている。これにより、下肢を膝受部103に置いたときに膝裏がクッション105に当たることとなり、快適である。
【0046】
踏み台101の上面にはさらに、膝受部103の右側と左側に、それぞれ右足と左足を載置するための水平な平坦面からなる右足置き部113および左足置き部114が形成されている。右足置き部113には、前後に足電極106A、106Bが配設され、左足置き部114には、前後に足電極106C、106Dが配設されている。かかる構成によれば、使用者が踏み台101に乗ると、右足のつま先が足電極106Aに、右足のかかとが足電極106Bに、左足のつま先が足電極106Cに、左足のつま先が足電極106Dに、接触することになる。また、踏み台101の前面にはカールコードケーブル111が配設され、カールコードケーブル111を介して本体100と操作ユニット200とが接続されている。
【0047】
図4は、図1の線A−A’に沿って矢印方向から見た場合の断面図である。図4に示す通り、脚102の上には板状の裏面パネル107が載せられており、裏面パネル107の上には、脚102の上方に位置するようにロードセル108D(荷重センサ)が配設されている。ロードセル108Dの上端には、支持板109が載せられており、支持板109は半球状のゴムからなるスペーサ110を介して、踏み台101を支持している。踏み台101は、板材を屈曲させて、下面が開放された箱状に形成され、この踏み台101の内部空間に、スペーサ110、支持板109、ロードセル108D、及び裏面パネル107が収容され、脚102が踏み台101から下方に突出している。上面から見れば、踏み台101、支持板109、裏面パネル107はほぼ同一の大きさと形状を有しているが、踏み台101は、支持板109および裏面パネル107とは分離して(浮いて)いる。踏み台101への荷重は、スペーサ110およびロードセル108Dを介して、脚102により支持される。図4は、本体100の4つの隅のうち一つを示すものであり、その他の3つの隅も同様な構成を有する。かかる構造により、踏み台101への荷重を4個のロードセルにより検出できることになる。支持板109は、十分な強度が必要であり、適度な厚さを有する金属の板を用いると好適である。スペーサ110は、必ずしも脚102やロードセルと同数である必要はなく、支持板109の上面全体に分散して多数配設してもよい。
【0048】
本実施形態の下肢訓練装置では、膝受部103が訓練具に相当する。踏み台101と膝受部103は荷重受部を構成している。ロードセル108A乃至108D(荷重センサ)は、踏み台101と膝受部103のいずれについても、その上にかかる荷重を検出する。
【0049】
図5乃至図7に示す通り、本実施形態の下肢訓練装置の操作ユニット200は、複数のボタンを備えた入力部201(入力装置)と、表示部202(表示装置)を前面に備え、上面の右と左にそれぞれ、手電極203A、203Bを、下面の右と左にそれぞれ手電極203C、203Dを、備えている。かかる構成によれば、右手および左手で操作ユニット200を保持する場合、右手人差し指および中指が手電極203Aに、右手の親指が手電極203Bに、左手の人差し指および中指が手電極203Cに、左手の親指が手電極203Dに、接触することになる。操作ユニット200の内部には、スピーカ204も配設されている。本実施形態では、表示部202およびスピーカ204が出力装置に相当する。操作ユニット200の背面には、カールコードケーブル111が接続されている。本実施形態では、表示部202には、例えば液晶パネルや有機ELディスプレイが用いられる。
【0050】
次に、本実施形態の下肢訓練装置が備える制御系統の構成について説明する。図8は、本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の制御系統の一例を模式的に示すブロック図である。図8に示すように、下肢訓練装置の制御系統は、CPU等の演算処理装置からなる制御部301(演算装置)を有している。制御部301は、バスを介して不揮発メモリ等からなる記憶部302(記憶装置)に接続されている。記憶部302には、本実施形態に係る下肢訓練装置の動作を遂行するためのプログラムや各種パラメータ等が記憶されている。制御部301および記憶部302は、I/O305に接続されている。I/O305には、インピーダンス検出回路304、ロードセル108A乃至108D、入力部201、表示部202、スピーカ204、カレンダー付クロック回路からなる計時装置303も接続されている。手電極203A乃至203Dおよび入力部201、表示部202、スピーカ204は、操作ユニット200に配設され、足電極106A乃至106Dおよびロードセル108A乃至108Dは本体100に配設される。インピーダンス検出回路304、I/O305、計時装置303、制御部301、記憶部302は、本体100あるいは操作ユニット200のいずれに配設されていてもよい。インピーダンス検出回路304は、手電極用および足電極用の2系統が設けられていてもよい。
【0051】
次に、本実施形態の下肢訓練装置が備える制御系統の概略動作について説明する。インピーダンス検出回路304は、足電極106A乃至106Dおよび手電極203A乃至203Dに接続されている。足電極106A乃至106Dおよび手電極203A乃至203Dとインピーダンス検出回路304は、公知の方法により生体インピーダンスを検出する。計時装置303は、現在時刻を計時し、適宜、I/O305を介して制御部301へ出力する。計時装置303が計時している現在時刻や年月日は入力部201からの入力に応じて、制御部301の指令により、適宜書き換えられる。インピーダンス検出回路304およびロードセル108A乃至108Dの検出結果および入力部201、計時装置303からの信号は制御部301に送られ、適宜、記憶部302に記憶される。制御部301は、記憶部302に記憶されているプログラムおよびデータに従って演算を行い、演算結果を適宜、計時装置303、表示部202、スピーカ204に出力する。
【0052】
ロードセル108A乃至108DはI/O305、制御部301、記憶部302と公知の方法により連動して、膝受部103への荷重を検出する荷重検出装置、踏み台101に乗った使用者の体重を検出する体重検出装置、踏み台101に乗った使用者の重心動揺を検出する重心動揺検出装置を構成している。足電極106A乃至106Dおよび手電極203A乃至203Dは、インピーダンス検出回路304、I/O305、制御部301、記憶部302と公知の方法により連動して、生体インピーダンス検出装置(筋肉量検出装置、体組成検出装置)を構成している。
【0053】
かかる構成および動作により、本実施形態の下肢訓練装置は、使用者の身長、年齢等を記憶し、使用者の体重や筋肉量、膝受部103が受けている荷重等を検出するとともに、記憶内容や検出結果に基づいて、使用者の下肢訓練を誘導する。
【0054】
[使用方法]
次に、訓練時の使用態様について説明する。図9は、本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の使用態様を示す図である。図9に示すように、使用時には、下肢訓練装置は床に置かれる。使用者の一方の脚はゆるく曲げられ、膝裏が膝受部103のクッション105に置かれる。使用者のもう一方の脚は伸ばして床に置かれ、操作ユニット200が手で保持される。入力部201が操作され、制御部301に訓練の開始が指示される。前記指示を受け取ると、制御部301は、ロードセル108A乃至108Dによって検出された荷重を、初期荷重(片脚荷重)として記憶部302に記憶させる。その後、制御部301は、スピーカ204を通して、訓練開始の合図を音声で出力する。使用者は、訓練開始の合図があった後、膝受部103に置いた脚の膝裏で膝受部103を押す。制御部301は、ロードセル108A乃至108Dによって検出された荷重と、記憶されている初期荷重との差分を演算する。この差分(押圧)は、使用者が下肢に力を入れて膝受部を押すことにより生じる荷重であり、この最大値が言わば使用者の下肢の最大筋力(下肢筋力)に相当する。下肢訓練装置は、この差分を表示部202に即時的に(リアルタイムで)表示する。これにより、使用者は、実際にどの程度の押圧を膝受部103に与えることができているかを客観的に把握しながら、訓練を行うことができる。膝受部103を膝裏で押し、所定荷重を膝受部103に与えた後、脱力するまでの過程を、以下、1回の訓練動作と呼ぶ。
【0055】
[動作]
次に、本実施形態の下肢訓練装置の具体的な動作について以下に説明する。図10は、本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の動作プログラムの概略を示すフローチャートである。以下、図10を参照しながら、動作の概略を説明し、その後に各ステップについての詳細な説明を行う。
【0056】
まず、電源が投入されると、ステップS1が実行される。ステップS1においては、現在時刻等の初期設定ルーチンが実行される。初期設定がすでに行われている場合には、初期設定を省略することとしてもよい。ステップS1が完了すると、ステップS2に進む。
【0057】
ステップS2においては、身体特定情報入力ルーチンが実行される。身体特定情報入力ルーチンでは、使用者毎に、身長、性別、年齢(生年月日でもよい)、体重等のデータが入力され、記憶される。過去の使用時に身体特定情報がすでに記憶されていれば、入力を省略してもよい。ステップS2が完了すると、ステップS3に進む。
【0058】
ステップS3においては、下肢体力評価ルーチンが実行される。下肢体力評価ルーチンでは、下肢筋力、筋肉量、重心動揺、片脚起立可能時間等、下肢体力の指標となるパラメータが演算される。ステップS3が完了すると、ステップS4に進む。
【0059】
ステップS4においては、訓練プログラム作成ルーチンが実行される。訓練プログラム作成ルーチンでは、ステップS2で入力された身体特定情報と、ステップS3で演算された下肢体力指標に基づいて、訓練プログラムの作成あるいは入力が行われる。ステップS4が完了すると、ステップS5に進む。
【0060】
ステップS5においては、訓練誘導ルーチンが実行される。訓練誘導ルーチンでは、ステップS4で作成された訓練プログラムにしたがって、使用者の訓練が誘導される。使用者は、装置の誘導にしたがって効果的な訓練を行うことができる。
【0061】
以下、各ステップについて詳細な説明を行う。
【0062】
(初期設定)
まず、ステップS1の初期設定ルーチンについて説明する。本実施形態の下肢訓練装置では、購入後、初めて電源を投入した際に初期設定を行う。初期設定を行う場合、入力部201を操作して(例えば初期設定ボタンを設けておき、それを押すものとする)、下肢訓練装置を初期設定モードにする。下肢訓練装置の動作モードが初期設定モードに設定された後、入力部201を操作することによって、操作時点における年月日や時刻等のデータを入力する。入力された年月日および時刻により、計時装置303のデータが更新される。下肢訓練装置は、図示されない内臓電池やカレンダー回路を備えており、一度年月日や時刻を入れれば、現在時刻が自動で更新される。なお、工場出荷時に、年月日や時刻を入力しておいてもよい。
【0063】
(身体特定情報の入力)
次に、ステップS2の身体特定情報入力ルーチンについて説明する。本実施形態の下肢訓練装置では、各使用者につき、初めて使用する場合には、身体特定情報の入力が行われる。あるいは、身体特定情報の入力を行う場合、入力部201を操作して(例えば身体特定情報入力ボタンを設けておき、それを押すものとする)、下肢訓練装置を身体特定情報入力ルーチンを実行することとしてもよい。身体特定情報入力ルーチンが実行された場合、入力部201が操作されることにより、使用者の氏名、身長、年齢、性別等、使用者の身体を特定する情報(以下、身体特定情報)が入力される。身体特定情報は、使用者の個人識別番号(例えば使用者の数を最大4とすれば4までの自然数としてもよい)と共に記憶される。識別番号ではなく、氏名を入力することとし、氏名を使用者の識別に用いてもよい。身体特定情報を一度入力しておけば、その後は、起動時に個人識別番号を選択することで身体特定情報の入力を省略することとしてもよい。体重も身体特定情報であるが、本実施形態では、身体特定情報入力ルーチンにおいて使用者の体重を検出し、得られた体重を記憶してもよい。体重を検出する場合には、踏み台101の上面の左側および右側に足置き部を有することが好ましい。着衣等で体重の検出結果に誤差が生じる場合は、入力した体重を用いてもよい。着衣の補正を行ってもよい。
【0064】
(下肢体力の評価)
次に、ステップS3の下肢体力評価ルーチンについて説明する。本発明において、下肢体力の指標として用いることができるパラメータとしてはさまざまなものが考えられる。本実施形態の下肢訓練装置では、下肢体力評価ルーチン実行時に、表示部202にモード選択メニューが表示される。使用者は、各パラメータのうちいずれにより下肢体力を評価するかを選択できる。本実施形態では、下肢体力の一例として、以下のパラメータを用いる。
【0065】
一つ目は、身体特定情報に基づいて補正した下肢筋力である。このパラメータは、上述の方法で求めた下肢筋力を、身体特定情報(体重、身長、年齢)で補正した数値である。体が大きく、体重が重ければ重いほど(身長が高ければ高いほど)、下肢筋力は高くなると考えられる。また、年齢が高くなればなるほど、下肢筋力は低くなると考えられる。下肢筋力を、体重や身長、年齢で補正することで、統一的指標により下肢体力を把握できる。補正方法としては、様々なものが考えられる。例えば、体重(身長)で下肢筋力を除して得られる単位体重(単位身長)あたりの下肢筋力を、下肢体力としてもよい。下肢体力は、年齢に応じた下肢筋力の強さであってもよい。この場合、統計データから年齢と下肢筋力の相関関係を求め、使用者の年齢における下肢筋力の平均値で検出された下肢筋力を除す(平均値に対する指数を求める)。補正後の下肢筋力(指数)は、数値として表示装置に表示される。使用者は、指数により自分の下肢体力を客観的に把握できる。比較対象となる標準的な下肢筋力も同時に表示することとすれば、比較がより容易になり好ましい。下肢筋力と対応させるパラメータは必ずしも一つである必要はなく、年齢、身長、体重、性別を組み合わせて平均的な下肢筋力や指数を演算してもよい。
【0066】
二つ目は、重心動揺である。重心動揺からは、安定立位姿勢保持能力が導き出されると言われる。重心動揺は、筋力ならびに関節構成体である靭帯や半月板等も含めた関節の安定性として、歩行の基本となる静的バランス能力を示すものであり、下肢体力の重要なチェック項目となっている。本実施形態では、本体100が4個のロードセル108A乃至108Dを備えている。本実施形態では、複数(好ましくは3点以上)の部位で荷重を検出することで、重心位置を演算する。重心動揺を下肢体力とする場合、使用者は、訓練が終わった後、あるいは訓練前に、踏み台101に乗り、操作ユニット200の入力部201を操作して、重心動揺検出モードを選択する。重心動揺検出モードが選択されると、制御部301は、それぞれのロードセルによる検出値を用いて、記憶部302に記憶されているプログラム(演算方法は公知のものを用いることができるため説明を省略する)に従って、重心の位置(踏み台101の上面にかかる荷重の重心)を演算する。得られた重心位置は、計時装置303から受け取った時刻データと共に記憶部302に記憶される。所定時間に亘り重心位置を検出すると、制御部301は、重心動揺検出モードを終了し、結果を表示する。重心動揺の検出結果は、所定時間における重心の移動距離や、平均移動速度、重心の軌跡を囲む図形(矩形、多角形、円等)の面積等の数値として表示されてもよいし、2次元のグラフに軌跡を描くことで表示されてもよい。重心動揺検出時は、両脚で起立することとしてもよいし、片脚で起立することとしてもよい。片脚で起立する場合には、よりバランスを保つことが困難であるため、下肢体力をより鋭敏に反映することが期待される。片脚起立時の重心動揺を検出する場合には、足置き部は1個でもよい。年齢や身長、体重等に伴って、標準的な重心動揺量も変化する。重心動揺の結果を年齢や身長、体重等の身体特定情報により補正して表示し、比較できるようにすれば、使用者が下肢体力をより客観的に把握することができ好適である。例えば、下肢体力は、年齢に応じた重心動揺であってもよい。この場合、統計データから年齢と重心動揺の相関関係を求め、使用者の年齢における重心動揺の平均値により、使用者の重心動揺の検出結果を除す(平均値に対する指数を求める)。補正後の重心動揺(指数)は、数値として表示装置に表示される。使用者は、指数により自分の下肢体力を客観的に把握できる。比較対象となる標準的な重心動揺も同時に表示することとすれば、比較がより容易になり好ましい。重心動揺と対応させるパラメータは必ずしも一つである必要はなく、年齢、身長、体重、性別を組み合わせて平均的な重心動揺や指数を演算してもよい。重心動揺の検出結果と上述の方法で検出された下肢筋力とを、二次元のグラフ上に出力させてもよい。グラフを用いると、下肢体力を視覚的に明瞭に把握できるので好適である。
【0067】
三つ目は、生体インピーダンスを用いるものである。本実施形態の下肢訓練装置は、足電極106A乃至106D、手電極203A乃至203Dと、インピーダンス検出回路304を備えている。かかる構成により、生体インピーダンスおよび記憶部302に記憶されている身体特定情報に基づいて、下肢体力に関連する各種の指標を演算できる。生体インピーダンスを用いて得られる下肢体力の指標として代表的なものは、下肢の筋肉量(下肢筋肉量)である。以下、下肢筋肉量を下肢体力とする場合を例に説明する。使用者は、訓練が終わった後、あるいは訓練前に、踏み台101に乗り、操作ユニット200の入力部201を操作して、下肢筋肉量検出モードを選択する。このとき使用者は、右足のつま先を足電極106Aに、右足のかかとを足電極106Bに、左足のつま先を足電極106Cに、左足のかかとを足電極106Dに、接触させる。また、右手人差し指および中指を手電極203Aに、右手の親指を手電極203Bに、左手の人差し指および中指を手電極203Cに、左手の親指を手電極203Dに、接触させる。下肢筋肉量検出モードが選択されると、制御部301は、足電極106A乃至106D、手電極203A乃至203D、インピーダンス検出回路304による検出結果および記憶部302に記憶されている体重および身長を用いて、記憶部302に記憶されているプログラム(演算方法は公知のものを用いることができるため説明を省略する)に従って、下肢筋肉量を演算する。得られた下肢筋肉量は、計時装置303から受け取った時刻データと共に記憶部302に記憶される。下肢筋肉量の演算が終了すると、制御部301は、下肢筋肉量検出モードを終了し、結果を表示する。かかる構成によれば、使用者は、下肢筋肉量を下肢体力の定量的な指標として把握することができる。得られた下肢筋肉量を、年齢や身長、体重等の身体特定情報により補正して表示し、比較できるようにすれば、使用者が下肢体力をより客観的に把握することができ、好ましい。足電極と手電極を両方供える場合には、身体各部(左右の脚、腕等)の筋肉量を検出できる。かかる構成によれば、訓練の対象となっている脚(左脚または右脚)の筋肉量を選択的に検出することができ、訓練効果をより的確に把握できる。なお、下肢筋肉量(両脚の筋肉量の平均または合計)を検出する場合には、手電極を備えず足電極のみを備える構成としてもよい。かかる構成により、より簡潔な構成で下肢体力評価を行うことができる。
【0068】
四つ目は、下肢を用いて行う一定の動作に関連する時間を測定するものである。本実施形態の下肢訓練装置は、ロードセルを4個備えており、さらに計時装置も有している。かかる構成によれば、座位(しゃがんだ体勢)から立位安定姿勢までの時間(立位安定姿勢移行時間)や片脚で立っていられる時間(片脚起立可能時間)を演算することができる。
【0069】
立位安定姿勢移行時間を下肢体力とする場合、使用者は、踏み台の上に両脚を乗せ、しゃがんだ状態で操作ユニット200を操作して、立位安定姿勢移行時間検出モードを選択する。前記モードが選択されると、制御部301は、動作開始の合図を表示部201およびスピーカ204に出力する。使用者は、前記合図を受けて、しゃがんだ状態から立ち上がり、なるべく早く重心を安定させる。制御部301は、前記合図を出力した時点から、重心動揺の検出(上記参照)を開始する。立位の姿勢が安定し、単位時間あたりの重心動揺が所定の閾値を下回ると、制御部301は、合図の出力からの経過時間を演算し、結果を立位安定姿勢移行時間として出力する。下肢体力が高ければ、立位安定姿勢移行時間は短くなる。かかる構成では、使用者は、立位安定姿勢移行時間を指標として、自分の下肢体力を客観的かつ総合的に把握することができる。
【0070】
片脚起立可能時間を下肢体力とする場合、使用者は、踏み台の上に両脚で立ち、操作ユニット200を操作して、片脚起立可能時間検出モードを選択する。前記モードが選択されると、制御部301は、動作開始の合図を表示部201およびスピーカ204に出力する。使用者は、前記合図を受けて、踏み台101の上で片脚立ちを開始する。同時に、制御部301は、ロードセルの検出値を用いて、荷重の検出を開始する。使用者の立位バランスが崩れ、両脚が地面につくと、荷重の検出結果に大きな変動が生じる。制御部301は、荷重の変動が閾値を超えた時点で、片脚立ちが終了したと判定する。制御部301は、前記合図からの経過時間を計時装置303からの入力を用いて演算し、片脚起立可能時間として表示する。下肢体力が高ければ、片脚起立可能時間は長くなる。かかる構成では、使用者は、片脚起立可能時間を指標として、自分の下肢体力を客観的かつ総合的に把握することができる。
【0071】
下肢体力の評価指標としては、上述のもの以外にもさまざまなものが考えられる。荷重センサの検出結果あるいはインピーダンス検出回路の検出結果に基づいて下肢体力を評価できるものであれば、いかなる指標であってもよい。
【0072】
(訓練プログラムの作成)
次に、ステップS4の訓練プログラム作成ルーチンについて説明する。本実施形態の下肢訓練装置では、ステップS2で入力された身体特定情報およびステップS3で演算された下肢体力評価指標に基づいて、訓練プログラムを作成する。本実施形態における訓練プログラムは、例えば、行うべき訓練動作の回数(動作回数)、訓練動作を計数する基準となる押圧(目標押圧)、一回の訓練動作にかけるべき時間(動作時間)、所定の押圧を維持するべき時間(押圧維持時間)、個々の訓練動作の間にとるべき時間間隔(動作間隔)により特定される。
【0073】
例えば、本実施形態の下肢訓練装置は、身体特定情報として、年齢(年齢は、30代、40代、50代等の年代であってもよい)、性別、身長、体重を利用する。制御部301は、記憶部302に記憶されている身体特定情報およびデータテーブル(回帰式でもよい)を用いて、使用者の年齢や性別等における標準的な重心動揺のレベル(例えば、所定時間内における重心移動距離)を求める。求められた標準的な重心動揺のレベルと、使用者について検出された重心動揺のレベルとが比較される。最後に、前記比較の結果に基づいて、訓練プログラムが決定される。例えば、使用者の重心動揺のレベルが標準よりはるかに低ければ、下肢体力が大幅に不足していることになる。かかる場合には、下肢への過大な負荷とならないように訓練プログラムを設定する必要がある。一方、負荷が少なすぎても、訓練の効果を上げることができなくなる。本実施形態では、統計データに基づいて、適正に、目標押圧(例えば5kg)、動作回数(例えば10回)、押圧維持時間(例えば10秒)、動作間隔(例えば10秒)が設定されることで、下肢への過大な負担を防止しつつ、十分な訓練効果を上げることができる。
【0074】
訓練プログラムは、使用者によって入力されることとしてもよい。この場合には、身体特定情報や下肢体力評価指標に基づいて、使用者自身が、その他の資料等も利用しながら自ら訓練プログラムを決定し、入力部201を介して入力する。
【0075】
訓練プログラムにおける目標押圧は、最大筋力(下肢筋力)に所定の割合をかけた値としてもよい。アイソメトリックトレーニングにおいては、最大筋力に対するトレーニング強度(%)と必要な収縮時間(秒)の好適な範囲が知られている(Hettinger T.著、猪飼道夫・松井秀治訳、『アイソメトリックトレーニング』大修館書店、1970、p.98,p.112,p.117,pp.183−192)。本実施形態においては、訓練プログラムとして、目標押圧を最大筋力の60−70%とし、筋収縮時間を6−10秒とすることが好ましい。あるいは目標押圧を最大筋力の80−90%とし、筋収縮時間を4−6秒とすることが好ましい。最大筋力に基づいて目標押圧を決定することで、最大筋力の測定により訓練当日の訓練者の身体状態を把握し、その状態にあった至適運動(訓練)を、医療従事者がいなくとも訓練者に提供できる。よって、強度過剰や強度不足を防止できる。
【0076】
(訓練の誘導)
次に、ステップS5の訓練誘導ルーチンについて説明する。本実施形態の下肢訓練装置では、ステップS4で作成された訓練プログラムに基づいて、出力装置の出力を介して、使用者による下肢訓練を誘導する。使用者は、膝受部103に膝裏を置き、スピーカ204からのアナウンスあるいは表示部202の表示に従って、膝裏で膝受部103を押して訓練を行う。制御部301は、所定のプログラムに従って、押圧を検出し、結果を表示部202に表示する。さらに、制御部301は、押圧が目標押圧に達した場合や、押圧が目標押圧を超えて押圧維持時間が経過した場合、訓練を開始してからの訓練動作の回数が動作回数に達した場合等に、その旨をスピーカ204や表示部202に出力する。かかる動作により、使用者は設定された訓練プログラムに従って容易に訓練を行うことができる。また、訓練に目標が設定されており、その目標に従って訓練することができるため、訓練の継続性を促すことにもつながる。
【0077】
(補足)
なお、初期設定、身体特定情報の入力、下肢体力の評価、訓練プログラム作成は、必ずしも毎回の訓練時に行う必要はなく、適宜省略できるようにしてもよい。あるいは、原則として、直前に設定された訓練プログラムに従って訓練を誘導することとし、必要に応じて、操作ユニット200を操作することで、初期設定や身体特定情報の入力、下肢体力の評価、訓練プログラム作成を行うこととしてもよい。
【0078】
[効果]
以上のように、本実施形態の下肢訓練装置によれば、所定のパラメータを指標として下肢体力を評価できる。よって使用者は、自分の下肢体力を客観的かつ定量的に把握し、評価結果に基づいて訓練を行うことができる。
【0079】
使用者は、膝受部103に膝裏を押し当てることにより訓練を行うが、力を入れる部位(力点)が膝裏であるため、膝関節にかかる負担を極力少なくすることができる。膝受部103の上面はクッション105が嵌め込まれているため、膝裏部への当たりが柔らかく、訓練を行う上で好適である。本体100の前後には脚あて部112があるため、太腿やふくらはぎが装置の角に当たることなく、快適に訓練を行うことができる。訓練に使用する膝受部103と、体重等を検出する本体100が一体として形成されているため、装置全体がコンパクトとなり使いやすい。訓練時に膝受部103が受ける荷重を検出するセンサと、本体100に乗った使用者の体重や重心動揺を検出するセンサに、共通のロードセルを用いるため、構成を簡潔にでき、コストも抑えることができる。
【0080】
ロードセルおよび電極を用いれば、下肢体力の指標のみならず、体脂肪率や血行など、様々な健康上の指標を検出することもでき、総合的な健康維持支援装置としても有用である。
【0081】
[変形例]
操作ユニット200は必須ではなく、入力系統や出力系統が全て本体100に一体として形成されていてもよい。この場合、手電極203A乃至203Dを設けず、足電極106A乃至106Dのみを用いて生体インピーダンスの検出を行ってもよい。
【0082】
ロードセルの個数は必ずしも4個である必要はなく、4個より多くても少なくてもよい。
【0083】
毎回の訓練時において、運動前後の生体インピーダンスの値およびその変化量を蓄積しておき、蓄積されたデータを用いて定期的(例えば一定回数毎)に訓練プログラムを更新してもよい。適宜訓練プログラムを修正することで、身体の変動に従って、より適切に訓練を行うことができる。蓄積されたデータを表示できるように構成してもよい。これにより、訓練の効果を客観的に把握することができる。
【0084】
生体インピーダンスを用いた下肢体力の指標としては、筋肉量以外にも様々なものが利用できる。例えば、BMI、体脂肪率、体脂肪量、内臓脂肪面積指数、筋肉率、筋肉レベル、基礎代謝量、推定骨量、水分量などの体組成、水分分布、脱水度、筋肉の断面積や緊張度や伸展度、あるいは血行の指標といった身体情報を演算し、演算結果を表示してもよい。演算は、基本的には、人の集団のデータから求めた各パラメータの相関式を用いて行う。演算結果を出力することにより、使用者は自らの下肢体力に加え、体組成や身体情報を確認しながら訓練を行うことができる。例えば、体組成の変化を通して、訓練の効果を容易に知ることができる。
【0085】
過去の下肢体力評価指標、訓練の効果度を、訓練を行った年月日および時刻とともに記憶部302に記憶しておいてもよい。また、記憶された過去の下肢体力評価指標、訓練の効果度を、時系列に沿って数値またはグラフ等により表示してもよい。これにより、過去に行った訓練の効果を、体組成、身体情報、訓練の効果度といった客観的指標を通じて明瞭に把握できる。体組成や身体情報の演算結果は、訓練中以外の時に表示できるようにしてもよい。
【0086】
訓練中に、生体インピーダンスを検出してもよい。操作ユニット200に手電極203A乃至203Dを備えているため、下肢の訓練中でも生体インピーダンスを検出できる。生体インピーダンスにより訓練中の下肢への負荷量をモニタしてもよい。例えば、訓練中に検出された生体インピーダンスから筋肉の収縮度を演算して表示すれば、身体への負荷をリアルタイムで把握しながら訓練することができる。筋肉の収縮度が一定の基準を超えたときには、表示部202やスピーカ204から警告を出力してもよい。かかる構成によれば、過剰な負荷による怪我をさらに確実に防止できると期待される。
【0087】
訓練中の生体インピーダンスや荷重の変動パターンから、動作の緩急を検出してもよい。訓練は、ゆるやかな動作で行う方がより効果が高い。急激な動作はかえって怪我の原因となる場合もある。動作の緩急が一定の閾値を超えた場合には、警告を出力してもよい。かかる構成によれば、急激な負荷の変動による怪我をさらに確実に防止できると期待される。
【0088】
手電極203A乃至203D、および、足電極106A乃至106Dを組み合わせて、左腕、右腕、左脚、右脚、胴体、およびそれらを組み合わせた身体の各部位の生体インピーダンスを検出してもよい。これにより、訓練を行う部位(特に左右それぞれの脚)の生体インピーダンスを検出できる。よって、部位毎に身体情報を得ることができる。したがって、訓練の効果をより的確に把握できる。また、部位別の生体インピーダンスを訓練の客観的な指標とすることができる。
【0089】
本実施形態において、操作ユニットを本体と分離し、両者をカールコードケーブルで結線した構成としたが、操作ユニットと本体の間を無線で通信させ、カールコードケーブルを削除した構成としてもよい。かかる変形例の構成は、操作ユニットと本体の間のカールコードケーブルが存在しない以外は上述の構成と同様なものとすることができるため、図は省略する。
【0090】
(第2実施形態)
[構造]
本発明の第1実施形態の下肢訓練装置は、足電極と手電極を備えた構成であったのに対し、本発明の第2実施形態の下肢訓練装置は、さらに膝裏電極を供えた構成である点で異なっている。図11、図12、および図13は、それぞれ本発明の第2実施形態の下肢訓練装置の本体100の概略構成の一例を示す上面図、背面図、および側面図である。図14は、本発明の第2実施形態の下肢訓練装置の制御系統の一例を模式的に示すブロック図である。以下、図11乃至図14を参照しながら、本実施形態の下肢訓練装置400について説明する。なお、本実施形態の下肢訓練装置400は、第1実施形態の下肢訓練装置に対し、膝受部103に膝裏電極115A、115B(訓練具電極)を追加したものであり、その他の部分の構成は、操作ユニット200も含め、第1実施形態の下肢訓練装置と共通である。よって、共通する要素には同一符号および同一名称を付して、説明を省略する。
【0091】
図11、図12、および図13に示すように、膝裏電極115A、115Bは膝受部113の上面に、クッション105の前後にこれを挟むように配設されている。かかる構成により、下肢訓練装置400の使用時(図9参照)において、膝裏のふくらはぎ側が膝裏電極115Aに、膝裏の太腿側が膝裏電極115Bに接触する。下肢訓練装置400では、膝裏電極115A、115Bを利用して、訓練部位(太腿部:大腿四頭筋)の体力を評価することが可能となる。
【0092】
図14に示すように、膝裏電極115A、115Bは、インピーダンス検出回路304に接続されている。本実施形態において、膝裏電極115A、115B、足電極106A乃至106D、手電極203A乃至203Dは、インピーダンス検出回路304、I/O305、制御部301、記憶部302と連動して、生体インピーダンス検出装置(筋肉量検出装置、体組成検出装置)を構成している。
【0093】
[動作]
本実施形態の下肢訓練装置400の動作は、下肢体力評価ルーチンを除けば第1実施形態の下肢訓練装置のもの(図10)と同様である。よって、下肢体力評価ルーチン以外の部分については説明を省略する。
【0094】
図15は、被検者に対し各電極が接触する位置および被検者の各身体部位の生体インピーダンスを模式的に示す図である。以下、図を参照しつつ、下肢訓練装置400における下肢体力評価ルーチン(訓練部位の体力評価)について説明する。以下では、訓練部位の体力評価指標として、生体インピーダンスの検出値に基づき筋肉量を演算する場合について説明する。本実施形態において、訓練部位(左太腿部、右太腿部)の生体インピーダンスを検出するためには、大きく二つのステップを経る。一つ目は立位姿勢での生体インピーダンス検出ステップであり、二つ目は訓練姿勢での生体インピーダンス検出ステップである。
【0095】
使用者は、訓練が終わった後、あるいは訓練前に、踏み台101に乗り、操作ユニット200の入力部201を操作して、訓練部位筋肉量検出モードを選択する。かかる操作により、まず、立位姿勢での生体インピーダンス検出ステップが開始される。このステップにおいて被検者は、両足を踏み台101に載せ、右手および左手で操作ユニット200を保持する。これにより、右足のつま先が足電極106Aに、右足のかかとが足電極106Bに、左足のつま先が足電極106Cに、左足のかかとが足電極106Dに接触し、右手人差し指および中指が手電極203Aに、右手の親指が手電極203Bに、左手の人差し指および中指が手電極203Cに、左手の親指が手電極203Dに接触する。本実施形態の下肢訓練装置400において、足電極106A、106C、手電極203A、203Cは、いずれも電流印加用電極(電流極)として用いられる。また、脚電極106B、106D、手電極203B、203Dは、いずれも電圧検出用電極(電圧極)として用いられる。
【0096】
図15において、記号P1〜P8にて示されるのは、生体インピーダンス検出法において用いられる仮想検出点である。身体各部位の生体インピーダンスを検出するに当たって、後述するような電流印加用電極間の電流路上において電圧検出用電極から最も近い位置に仮想される電圧検出のための検出点である。この仮想検出点は、電流路上に位置しない電圧検出用電極により電流路上の電圧を検出するに当たり、電圧検出用電極から電流路までの最短経路となる電圧検出ラインと電流路との分岐点となる。前記電圧検出ラインに沿っては電流の流通がほとんどなく、電圧の降下がほとんど生じないため、電流路から離間して配置される電圧検出用電極によって仮想検出点間の電圧を検出することが可能となる。
【0097】
立位姿勢での生体インピーダンス検出ステップにおいて、例えば手電極203A(右手の人差し指と中指)と足電極106A(右足のつま先)の間に電流を流した場合、手電極203B(右手の親指)と足電極106D(左足のかかと)の間の電圧を検出すれば、生体インピーダンスZ2+Z3(P2〜P4間:右腕部〜体幹部)を求めることができ、手電極203B(右手の親指)と足電極106B(右足のかかと)の間の電圧を検出すれば、生体インピーダンスZ2+Z3+Z5+Z7(P2〜P6間:右腕部〜右太腿部〜右すね部)を求めることができる。また、二つのインピーダンスの差を計算することで、生体インピーダンスZ5+Z7(P4〜P6間:右太腿部〜右すね部)を求めることができる。また、手電極203C(左手の人差し指と中指)と足電極106C(左足のつま先)の間に電流を流し、手電極203D(左手の親指)と足電極106B(右足のかかと)の間の電圧を検出すれば、生体インピーダンスZ1+Z3(P1〜P4間:左腕部〜体幹部)を求めることができる。このように、使用する電極を切り換えて、電流を印加する経路と電圧を検出する経路を適宜選択することにより、所望の経路の生体インピーダンスを検出することができる。
【0098】
立位姿勢での生体インピーダンス検出が完了すると、検出値が記憶部302に記憶されるとともに、立位姿勢での生体インピーダンス検出ステップが終了した旨が表示部202に表示され、訓練姿勢での生体インピーダンス検出ステップへの移行が誘導される。以下、訓練姿勢での生体インピーダンス検出ステップについて説明する。ここでは右脚を訓練する場合を例に説明する。被検者は、図9のように、右膝裏を膝受部103に載せ、右手および左手で操作ユニット200を保持する。これにより、右膝裏のふくらはぎ側が膝裏電極115Aに、太腿側が膝裏電極115Bに接触し、右手人差し指および中指が手電極203Aに、右手の親指が手電極203Bに、左手の人差し指および中指が手電極203Cに、左手の親指が手電極203Dに接触する。膝裏電極115A、手電極203A、203Cは、いずれも電流印加用電極として用いられる。また、膝裏電極115B、手電極203B、203Dは、いずれも電圧検出用電極として用いられる。ここで、使用者が入力部201を操作することにより、訓練姿勢での生体インピーダンス検出ステップが開始される。
【0099】
訓練姿勢での生体インピーダンス検出ステップにおいて、例えば手電極203Aと膝裏電極115Aの間に電流を流し、手電極203Bと膝裏電極115Bの間の電圧を検出すれば、生体インピーダンスZ2+Z3+Z5(P2〜P8間:右腕部〜体幹部〜右太腿部)を求めることができる。得られた生体インピーダンスの値から、立位姿勢での生体インピーダンス検出ステップにおいて検出された右腕部〜体幹部の生体インピーダンスZ2+Z3を差し引くことで、右太腿部のみの生体インピーダンスZ5が求められる。同様な処理により、左太腿部のみの生体インピーダンスZ4も求められる。さらに、得られた生体インピーダンスと、記憶部302に記憶されている体重、身長等の身体特定情報に基づいて、右太腿部あるいは左太腿部の筋肉量を演算する。得られた筋肉量は、計時装置303から受け取った時刻データと共に記憶部302に記憶される。太腿部の筋肉量の演算が終了すると、制御部301は、結果を表示し、下肢体力評価ルーチンを終了する。
【0100】
[効果]
本実施形態の下肢訓練装置において、対象とする訓練部位は両脚の太腿部(大腿四頭筋)である。下肢訓練装置400によれば、膝受部に電極を備えることで、太腿部そのものの生体インピーダンスを求めることができる。得られた太腿部の生体インピーダンスを用いることにより、下肢体力の指標として、太腿部の筋肉量や体脂肪率等、訓練部位に固有の指標を求めることができる。本実施形態の下肢訓練装置400によれば、訓練部位固有の体力指標を使用者が把握できるため、より効果的な訓練を行うことが可能となる。
【0101】
[変形例]
第1実施形態において、訓練プログラムの設定および訓練の誘導は目標押圧を用いて行われた。下肢訓練装置400でも目標押圧を用いた同様な動作が可能であることは当然であるが、下肢訓練装置400ではさらに、訓練時にリアルタイムで太腿部を含む生体インピーダンスの変化を検出できる。訓練の強度が大きいほど、生体インピーダンスの変化は大きくなる。よって、訓練中の生体インピーダンスを指標として訓練プログラムを設定し、訓練を誘導してもよい。また、訓練部位の生体インピーダンス(あるいはこれを用いて得られる指標)を表示部202に表示し、使用者が該表示に基づいて訓練強度を客観的に把握しながら訓練を行うこととしてもよい。
【0102】
その他、本実施形態においても第1実施形態におけるのと同様の変形例が可能であることは言うまでもない。
【0103】
(第3実施形態)
[構造]
本発明の第2実施形態の下肢訓練装置は、足電極と手電極と膝裏電極を供えた構成であったのに対し、本発明の第3実施形態の下肢訓練装置は手電極を備えない点で異なっている。なお、本実施形態の下肢訓練装置500は、第2実施形態の下肢訓練装置400に対し、操作ユニット200において手電極を削除し、操作ユニット200を置くスタンド205を追加したものであり、その他の部分の構成は、第2実施形態の下肢訓練装置と共通である。よって、共通する要素には同一符号および同一名称を付して、説明を省略する。
【0104】
図16は、本発明の第3実施形態の下肢訓練装置の使用態様を示す図である。図16に示すように、使用時には、本実施形態では、操作ユニット200が使用者により保持されるのではなく、スタンド205により使用者が表示部202を見易い位置に保持される点で第2実施形態と異なるが、その他の点は第2実施形態と同様である。よって、使用態様についての詳細な説明は省略する。
【0105】
[動作]
本実施形態の下肢訓練装置500の動作は、下肢体力評価ルーチンを除けば第2実施形態の下肢訓練装置のものと同様である。よって、下肢体力評価ルーチン以外の部分については説明を省略する。
【0106】
本実施形態において、被検者に対し各電極が接触する位置および被検者の各身体部位の生体インピーダンスは、手電極がないことを除けば第2実施形態と同様である。よって、以下、図15を参照しつつ、下肢訓練装置500における下肢体力評価ルーチンについて説明する。以下では、下肢体力評価指標として、生体インピーダンスの検出値に基づき両太腿部の筋肉量を演算する場合について説明する。本実施形態において、訓練部位(両太腿部)の生体インピーダンスを検出するためには、大きく二つのステップを経る。一つ目は両脚全体の生体インピーダンス検出ステップであり、二つ目は訓練姿勢での生体インピーダンス検出ステップである。
【0107】
使用者は、訓練が終わった後、あるいは訓練前に、踏み台101に乗り、操作ユニット200の入力部201を操作して、訓練部位筋肉量検出モードを選択する。かかる操作により、まず、両脚全体の生体インピーダンス検出ステップが開始される。このステップにおいて被検者は、両足を踏み台101に載せる。これにより、右足のつま先が足電極106Aに、右足のかかとが足電極106Bに、左足のつま先が足電極106Cに、左足のつま先が足電極106Dに接触する。本実施形態の下肢訓練装置500において、足電極106A、106Cは、いずれも電流印加用電極(電流極)として用いられる。また、脚電極106B、106Dは、いずれも電圧検出用電極(電圧極)として用いられる。
【0108】
両脚全体の生体インピーダンス検出ステップにおいては、足電極106A(右足のつま先)と脚電極106C(左足のつま先)の間に既知量の電流が流され、脚電極106B(右足のかかと)と足電極106D(左足のかかと)の間の電圧が検出されることにより、生体インピーダンスZ4+Z6+Z5+Z7(P5〜P4〜P6間:右脚部〜左脚部)が求められる。
【0109】
両脚全体の生体インピーダンス検出が完了すると、検出値が記憶部302に記憶されるとともに、その旨が表示部202に表示され、訓練姿勢での生体インピーダンス検出ステップへの移行が誘導される。以下、訓練姿勢での生体インピーダンス検出ステップについて説明する。被検者は、図16のように、右膝裏を膝受部103に載せ、左足を左足置き部に置く。これにより、右膝裏のふくらはぎ側が膝裏電極115Aに、太腿側が膝裏電極115Bに接触し、左足のつま先が足電極106Cに、左足のつま先が足電極106Dに接触する。膝裏電極115A、足電極106Cは、いずれも電流印加用電極として用いられる。また、膝裏電極115B、足電極106Dは、いずれも電圧検出用電極として用いられる。ここで、使用者が入力部201を操作することにより、訓練姿勢での生体インピーダンス検出ステップが開始される。
【0110】
訓練姿勢での生体インピーダンス検出ステップにおいては、膝裏電極115Aと足電極106Cの間に既知量の電流が流され、膝裏電極115Bと足電極106Dの間の電圧が検出される。これにより、生体インピーダンスZ5+Z4+Z6(P8〜P5間:右太腿部〜左脚部)を求めることができる。得られた生体インピーダンスの値を、両脚全体の生体インピーダンス検出ステップにおいて検出された右脚部〜左脚部の生体インピーダンスZ4+Z6+Z5+Z7から差し引くことで、右すね部のみの生体インピーダンスZ7が求められる。その後、表示部202の誘導に従って脚を入れ替え、同様な方法で、左すね部のみの生体インピーダンスZ6が求められる。さらに、右すね部および左すね部の生体インピーダンスを右脚部〜左脚部の生体インピーダンスから差し引くことで、両太腿部の生体インピーダンスZ4+Z5(P7〜P4〜P8間:右太腿部〜左太腿部)が求められる。得られた生体インピーダンスと、記憶部302に記憶されている体重、身長等の身体特定情報に基づいて、両太腿部の筋肉量が演算される。得られた筋肉量は、計時装置303から受け取った時刻データと共に記憶部302に記憶される。両太腿部の筋肉量の演算が終了すると、制御部301は、結果を表示し、下肢体力評価ルーチンを終了する。
【0111】
[効果]
本実施形態の下肢訓練装置において、対象とする訓練部位は太腿部(大腿四頭筋)である。本実施形態は、片側のみならず両側の太腿部の体力向上を目標とする場合に特に有効である。下肢訓練装置500によれば、膝受部に電極を備えることで、両太腿部の生体インピーダンスを求めることができる。すなわち本実施形態では、両太腿部の生体インピーダンスを用いることにより、下肢体力の指標として、両太腿部の筋肉量や体脂肪率等、訓練部位に固有の指標を求めることができる。本実施形態の下肢訓練装置500によれば、訓練部位固有の体力指標を使用者が把握できるため、より効果的な訓練を行うことが可能となる。また、本実施形態においては手電極を有しない構成であるため、装置構成が簡潔なる。すなわち、簡潔な装置構成であっても、使用者が訓練部位である両太腿部の体力指標を把握することができるという効果を奏する。
【0112】
[変形例]
操作ユニットを本体と一体化してもよい。図17、図18、図19は、本発明の第3実施形態の変形例による下肢訓練装置の本体の概略構成の一例を示す上面図、背面図、側面図である。本変形例の下肢訓練装置は、下肢訓練装置500の操作ユニットが操作パネルとして本体に一体化して構成されるが、その他の部分の構成は下肢訓練装置500と共通である。よって、共通する要素には同一符号および同一名称を付して説明を省略する。
【0113】
図17乃至19に示すように、本変形例では操作ユニットに相当する操作パネル116が本体100の右側面から突出するように設けられている。操作パネル116の上面にはボタン等からなる入力部117と液晶画面等からなる表示部118が設けられている。301、記憶部302、I/O305は、操作パネル116の内部に格納される。本変形例では、本体と分離した操作ユニットがないため、スタンドは使用されない。初期設定や身体特定情報の入力は、操作パネル116の入力部117を使用者が操作することにより行われる。使用者に対する訓練の誘導は、表示部118の表示によって行われる。なお、操作パネル116にスピーカを配設し、音声によって訓練の誘導等が行われてもよい。
【0114】
他の変形例として、例えば膝受部103を回動させることで開閉可能に構成し、膝受部103を開くと操作部が露出する構成としてもよい。かかる構成では、使用時に操作部は視認できないため、表示部を設けず音声で訓練の誘導等が行われるのが好ましい。以上のように操作部が本体と一体に形成されている構成では、持ち運びが容易であり、耐久性も向上するという利点がある。
【0115】
なお、本実施形態においても第1実施形態および第2実施形態と同様の変形例が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明の下肢訓練装置は、使用者が自らの下肢体力を客観的かつ定量的に評価でき、評価結果に基づいて訓練を行うこと可能な下肢訓練装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の本体100の概略構成の一例を示す上面図である。
【図2】本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の本体100の概略構成の一例を示す背面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の本体100の概略構成の一例を示す側面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の本体100の概略構成の一例を示す断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の操作ユニット200の概略構成の一例を示す正面図である。
【図6】本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の操作ユニット200の概略構成の一例を示す上面図である。
【図7】本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の操作ユニット200の概略構成の一例を示す側面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の制御系統の一例を模式的に示すブロック図である。
【図9】本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の使用態様を示す図である。
【図10】本発明の第1実施形態の下肢訓練装置の動作プログラムの概略を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第2実施形態による下肢訓練装置の本体の概略構成の一例を示す上面図である。
【図12】本発明の第2実施形態による下肢訓練装置の本体の概略構成の一例を示す背面図である。
【図13】本発明の第2実施形態による下肢訓練装置の本体の概略構成の一例を示す側面図である。
【図14】本発明の第2実施形態による下肢訓練装置の制御系統の一例を模式的に示すブロック図である。
【図15】被検者に対し各電極が接触する位置および被検者の各身体部位の生体インピーダンスを模式的に示す図である。
【図16】本発明の第3実施形態による下肢訓練装置の使用態様を示す図である。
【図17】本発明の第3実施形態の変形例による下肢訓練装置の本体の概略構成の一例を示す上面図である。
【図18】本発明の第3実施形態の変形例による下肢訓練装置の本体の概略構成の一例を示す背面図である。
【図19】本発明の第3実施形態の変形例による下肢訓練装置の本体の概略構成の一例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0118】
100 本体
101 踏み台
102 脚
103 膝受部
104 基体
105 クッション
106A〜D 足電極
107 裏面パネル
108A〜D ロードセル
109 支持板
110 スペーサ
111 カールコードケーブル
112 脚あて部
113 右足置き部
114 左足置き部
115A、B 膝裏電極
200 操作ユニット
201 入力部
202 表示部
203A〜D 手電極
204 スピーカ
205 スタンド
301 制御部
302 記憶部
303 計時装置
304 インピーダンス検出回路
305 I/O
Z1 左腕部の生体インピーダンス
Z2 右腕部の生体インピーダンス
Z3 体幹部の生体インピーダンス
Z4 左太腿部の生体インピーダンス
Z5 右太腿部の生体インピーダンス
Z6 左すね部の生体インピーダンス
Z7 右すね部の生体インピーダンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の下肢の少なくとも一部を押し付けるための訓練具と使用者の足裏を置くための足置き部とを有する荷重受部と、
前記荷重受部にかかる荷重を検出する少なくとも一つの荷重センサと、
前記荷重に基づいて使用者の下肢体力を演算する演算装置と、
前記演算装置の演算結果を出力する出力装置と、
前記演算結果を記憶する記憶装置と、
使用者の身体特定情報を入力するための入力装置と、を備え、
前記足置き部は、両足それぞれの足裏を置くための右足置き部と左足置き部とを備え、
前記右足置き部および前記左足置き部は、生体インピーダンス検出用の足電極を備え、
前記訓練具に生体インピーダンス検出用の訓練具電極を備え、
前記身体特定情報は、前記入力装置により入力された使用者の身長と前記演算された体重とを含み、
前記演算装置は、前記荷重と前記入力装置により入力された使用者の身体特定情報とに基づいて前記下肢体力を演算し、前記荷重センサの検出結果に基づいて使用者の体重を演算し、前記足電極を用いた生体インピーダンスの検出結果および前記身体特定情報に基づいて前記下肢体力を演算し、前記訓練具電極と前記足電極を用いた生体インピーダンスの検出結果および前記身体特定情報に基づいて訓練部位の体力を演算し、
前記記憶装置は、前記演算結果および前記身体特定情報を記憶する下肢訓練装置。
【請求項2】
使用者の下肢の少なくとも一部を押し付けるための訓練具と使用者の足裏を置くための足置き部とを有する荷重受部と、
前記荷重受部にかかる荷重を検出する少なくとも一つの荷重センサと、
前記荷重に基づいて使用者の下肢体力を演算する演算装置と、
前記演算装置の演算結果を出力する出力装置と、
前記演算結果を記憶する記憶装置と、
使用者の身体特定情報を入力するための入力装置と、を備え、
前記荷重受部は、前記訓練具の前方および後方に脚あて部を有し、
前記荷重受部の上面中央に、前記荷重受部の前後軸に沿って、前記訓練具が設けられており、
前記訓練具は、左右方向に延びる仮想の主軸の周りに上方に凸状に湾曲し左右の端面が前記主軸に略垂直であるように形成され、
前記訓練具に生体インピーダンス検出用の訓練具電極を備え、
前記足置き部は、両足それぞれの足裏を置くための右足置き部と左足置き部とを備え、
前記右足置き部および前記左足置き部は、生体インピーダンス検出用の足電極を備え、
前記身体特定情報は、前記入力装置により入力された使用者の身長と前記演算された体重とを含み、
前記演算装置は、前記荷重と前記入力装置により入力された使用者の身体特定情報とに基づいて前記下肢体力を演算し、前記荷重センサの検出結果に基づいて使用者の体重を演算し、前記足電極を用いた生体インピーダンスの検出結果および前記身体特定情報に基づいて前記下肢体力を演算し、前記訓練具電極と前記足電極を用いた生体インピーダンスの検出結果および前記身体特定情報に基づいて両太腿部の体力を演算し、
前記記憶装置は、前記演算結果および前記身体特定情報を記憶する下肢訓練装置。
【請求項3】
使用者の下肢の少なくとも一部を押し付けるための訓練具と使用者の足裏を置くための足置き部とを有する荷重受部と、
前記荷重受部にかかる荷重を検出する少なくとも一つの荷重センサと、
前記荷重に基づいて使用者の下肢体力を演算する演算装置と、
前記演算装置の演算結果を出力する出力装置と、
前記演算結果を記憶する記憶装置と、
使用者の身体特定情報を入力するための入力装置と、
操作ユニットと、を備え、
前記荷重受部は、前記訓練具の前方および後方に脚あて部を有し、
前記荷重受部の上面中央に、前記荷重受部の前後軸に沿って、前記訓練具が設けられており、
前記訓練具は、左右方向に延びる仮想の主軸の周りに上方に凸状に湾曲し左右の端面が前記主軸に略垂直であるように形成され、
前記訓練具に生体インピーダンス検出用の訓練具電極を備え、
前記足置き部は、両足それぞれの足裏を置くための右足置き部と左足置き部とを備え、
前記右足置き部および前記左足置き部は、生体インピーダンス検出用の足電極を備え、
前記操作ユニットは、生体インピーダンス検出用の手電極を備え、
前記身体特定情報は、前記入力装置により入力された使用者の身長と前記演算された体重とを含み、
前記演算装置は、前記荷重と前記入力装置により入力された使用者の身体特定情報とに基づいて前記下肢体力を演算し、前記荷重センサの検出結果に基づいて使用者の体重を演算し、前記手電極および前記足電極を用いた生体インピーダンスの検出結果および前記身体特定情報に基づいて前記下肢体力を演算し、前記訓練具電極と前記手電極と前記足電極を用いた生体インピーダンスの検出結果および前記身体特定情報に基づいて左太腿部または右太腿部の体力を演算し、
前記記憶装置は、前記演算結果および前記身体特定情報を記憶する下肢訓練装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−61825(P2008−61825A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243036(P2006−243036)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)
【Fターム(参考)】