説明

不安症の治療方法

治療の必要な個体を同定する工程、並びにオピオイド受容体活性にアンタゴナイズし、且つ、シナプス内を通常のモノアミン作動性の正常状態に回復させるために前記個体を治療する工程を含む、個体における不安症、例えば、強迫神経症の治療方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その全体を参照によって本明細書に取り込む2005年11月28日に出願の米国仮特許出願第60/740,000号の優先権の利益を享受する。
【0002】
本発明は、個体における不安症、特に強迫神経症の治療方法の分野に属する。
【背景技術】
【0003】
強迫神経症は、約330万人の米国の成人を悩ませている。強迫神経症は、男性及び女性がほぼ等しい数において悩まされており、多くの場合において幼少期、青年期、又は成人早期に現れ始める。OCDを有する成人の三分の一は、彼らの最初の症状は子供の時に経験したことを報告している。強迫神経症の経過は様々であり、症状は現れたり消えたりする可能性があり、経時的に緩和する可能性あり、あるいは次第に悪化する可能性がある。研究による証拠によって、OCDは遺伝することが示唆されている。
【0004】
強迫神経症(OCD)は不安症であり、再発性の望ましくない考え(強迫観念)及び/又は反復的な行動(強迫衝動)によって特徴付けられる。手洗い、計数、点検、又は掃除などの繰り返す行動は、多くの場合において、強迫観念を抑制し、それらを取り除くために行われる。しかしながら、これらの所謂「儀式」を行うことは一時的な緩和のみを与え、行わなければ不安を顕著に増大させる。
【0005】
OCDを有する人々は、持続的な嫌な考え又は印象によって悩まされ、又はある儀式を行う必要性によって悩まされる可能性がある。彼らは、病原体又は汚物による強迫観念を持ち、何度も手を洗う。彼らは、繰り返して点検する必要がある感覚及び疑いに満たされている可能性がある。
【0006】
強迫観念は、再発性で持続性の望ましくない発想、考え、又は衝動であって、患者が無意識に経験し、無意識に現れる。患者が他のことを考え、実行しようとすると、それらは共通して邪魔をする。共通の強迫観念は、汚物又は汚染の恐れ、順序に対する懸念、対称及び正確さ、ある音、画像、言葉、又は数について常に考えること、家族の一員又は友人への危害の恐れ、並びに悪い考え又は罪深い考えへの恐れを含む。強迫衝動は、患者が彼又は彼女の強迫観念を克服するために通常行うものであり、患者及び他人に対しても理不尽であるように見える可能性がある。患者は「規則」までも作り、それに従って、強迫観念を有する際に彼又は彼女が感じる不安を調節する助けとする。典型的な強迫衝動は、過剰な手洗い、繰り返しドアが施錠されているか及び家電製品の電源が切れているか点検すること、正確な順序に物を配列すること、同じ数を繰り返し計数すること、並びに正確な回数ある物に触れることを含む。患者がこれらの儀式を行う際は、彼又は彼女は、不安からの幾らかの緩和を感じる可能性があるが、長くは持続しない。患者の不安が戻れば直ぐに、患者はやむを得ずに行動を繰り返す感覚を持つ。
【0007】
強迫神経症の決定的な原因は未だ発見されていないが、生物学的な素因と各種の発育上及び心理社会的な影響との間の相互作用の産物であると解されている。文献におけるデータ:セロトニンの機能の末梢マーカー(Bastani et al.,1991)、セロトニンアゴニストを用いた薬理学的負荷試験(Erzegovesi et al.,2001b)及び特には選択的セロトニン再取込みインヒビター(SSRI)による薬剤応答データ(Greist et al.,1995)は、OCDの所謂「セロトニン(5−HT)仮説」を支持する(Barr et al.)。
【0008】
セロトニン仮説によれば、OCDを有する患者は、OCDにおけるSSRIの作用と異なるメカニズムを説明する、シナプス後5−HT受容体の過敏性と共に、セロトニン作動性のシステムにおける調節不全を有する(Billett et al.,1997;Zohar et al.,1987)。例えば、治療作用の開始は、気分障害では3から4週であるのと比較して、OCDでは10から12週である。SSRI投与も、多くの場合において、主な鬱病において使用されるよりも大量に為される。
【特許文献1】米国仮特許出願第60/740,000号
【非特許文献1】Bastani et al.,1991
【非特許文献2】Erzegovesi et al.,2001b
【非特許文献3】Greist et al.,1995
【非特許文献4】Barr et al.
【非特許文献5】Billett et al.,1997
【非特許文献6】Zohar et al.,1987
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現在では、SSRIは、OCDの薬剤治療において第一線の戦略である。しかしながら、OCDの臨床薬理学における主な関心は、薬剤療法に対して応答しない者の数である。少なくとも12週に亘って全量においてSSRIで治療した患者の40から60%ものヒトが、OCDの症状及び全体的な機能における有意な改善を示さない。特に、OCDの運動又は強迫観念は、選択的セロトニン作動薬による手法に限定的な応答を有するようである。したがって、OCD患者の新しい治療方法が、当該技術分野において必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ある実施態様では、本発明は、不安症に罹っているか又は罹る恐れがある患者を同定する工程、並びにオピオイドアンタゴニスト又はオピオイド受容体半アゴニストである第一の化合物と、モノアミン作動性シナプス活性を調節する第二の化合物とを患者に投与する工程を含む、不安症を治療する方法に関する。モノアミン作動性シナプス活性は、セロトニンシナプス活性、ノルエピネフリンシナプス活性、及びドーパミンシナプス活性から選択される、少なくとも1つのモノアミン作動性シナプス活性であって良い。ある実施態様では、不安症は、強迫神経症である。第一の化合物及び第二の化合物は、ほぼ同時に投与されて良い。
【0011】
第一の化合物はMOP受容体であって良い。ある実施態様では、第一の化合物は、アルビモパン、ノルビナルトルフィミン、ナルメフェン、ナロキソン、ナルトレキソン、メチルナルトレキソン、及びナロルフィン、並びにそれらの製薬学的に許容される塩、光学異性体、代謝産物、又はプロドラッグから選択される。第一の化合物は、ナルトレキソン、6−β−ナルトレキソール、又はそれらの製薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグであって良い。第一の化合物は、ドーパミン経路を間接的に調節し得る。
【0012】
第二の化合物は、選択的セロトニン再取込みインヒビター(SSRI)、再取込みプロモーター、又は特異的5−HT受容体アゴニストであって良い。SSRIは、フロキセチン、フロボキサミン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、シブトラミン、デュロキセチン、及びベンラファキシン、並びにそれらの製薬学的に許容される塩又はプロドラッグから選択されて良い。ある実施態様では、SSRIはフロキセチン又はその製薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグである。他の実施態様では、第二の化合物はブプロピオンである。
【0013】
ある実施態様では、第一の化合物はナルトレキソンであり、第二の化合物はフロキセチンである。他の実施態様では、第一の化合物はナルトレキソンであり、第二の化合物はブプロピオンである。
【0014】
ある実施態様では、本発明は、運動障害に罹っているか又は罹る恐れがある患者を同定する工程、並びにオピオイドアンタゴニスト又はオピオイド受容体半アゴニストである第一の化合物と、モノアミン作動性シナプス活性を調節する第二の化合物とを患者に投与する工程を含む、運動障害の治療方法に関する。モノアミン作動性シナプス活性は、セロトニンシナプス活性、ノルエピネフリンシナプス活性、及びドーパミンシナプス活性から選択される少なくとも1つのモノアミン作動性シナプス活性であって良い。運動障害は、トゥレット症候群又はチックであって良い。
【0015】
第一の化合物はMOP受容体アンタゴニストであって良い。第二の化合物は、選択的セロトニン再取込みインヒビター(SSRI)又は特異的5−HT受容体アゴニストであって良い。ある実施態様では、第一の化合物はナルトレキソンであり、第二の化合物はフロキセチンである。他の実施態様では、第一の化合物はナルトレキソンであり、第二の化合物はブプロピオンである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
第一の態様では、本発明は、治療の必要がある個体を同定する工程、並びに機能的オピオイドアンタゴニストである第一の化合物と、セロトニン受容体を調節する第二の化合物とを前記個体に投与する工程を含む、不安症の治療方法に関する。好ましい実施態様では、不安症は強迫神経症(OCD)である。ある実施態様では、不安症は、不安症に罹っている患者を同定し、ナルトレキソン又はそれと関連する光学異性体、代謝産物、若しくはプロドラッグと、例えばブプロピオン又はその光学異性体、代謝産物、若しくはプロドラッグなどの抗鬱剤とを前記患者に投与することによって治療する。他の実施態様では、不安症は、不安症に罹っている患者を同定し、ナルトレキソン及び選択的セロトニン作用化合物、例えばフロキセチン、又はそれらの光学異性体、代謝産物、若しくはプロドラッグを前記患者に投与することによって治療する。
【0017】
第二の態様では、本発明は、治療の必要がある抗体を同定する工程、並びにオピオイドアンタゴニストである第一の化合物と、ドーパミン及びセロトニンを含むモノアミン受容体におけるアゴニズムの増大を生じさせる第二の化合物とを前記個体に投与する工程を含む、強迫観念又は儀式的な行動を含む運動障害を治療する方法に関する。ある実施態様では、運動障害は、不安症に罹っている患者を同定し、ナルトレキソン及び適度のドーパミンエンハンサー、例えばブプロピオン、又はそれらの光学異性体、代謝産物、若しくはプロドラッグを前記患者に投与することによって治療する。他の実施態様では、運動障害は、不安症に罹っている患者を同定し、ナルトレキソン及びセロトニン作動性エンハンサー、例えばフルオキセチン、又はそれらの光学異性体、代謝産物、又はプロドラッグを前記患者に投与することによって治療する。
【0018】
定義
「製薬学的に許容される塩」という用語は、投与対象である生物に対して著しい刺激反応を引き起こさず、その化合物の生物活性及び特性を阻害しない化合物の製剤形態を指す。医薬としての塩は、本発明の化合物と、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などを反応させることによって得ることができる。医薬としての塩は、本発明の化合物を塩基と反応させて、アンモニウム塩、ナトリウム又はカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム又はマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンなどの有機塩基の塩、及び、これらの塩とアルギニン、リジンなどのアミノ酸類との塩を形成することによって得ることもできる。
【0019】
「プロドラッグ」は、in vivoで親作用物質に変換される薬物を指す。プロドラッグは、状況によっては投与が親作用物質より容易になり得るので有用であることが多い。例えば、これらは、親作用物質が生物学的に利用可能でなくても、経口投与で生物学的に利用可能となり得る。プロドラッグは、親作用物質に比べて、医薬組成物において改善された溶解性も有することがあり、あるいは向上した嗜好性を示したり、又は処方するのがより容易になることがある。プロドラッグの一例として、以下に制限されるものではないが、水溶性であることが移動にとって好ましくない細胞膜を横断する透過を容易にするためにエステル(「プロドラッグ」)として投与され、水溶性が有利である細胞内部に一旦入ると、次いで代謝によって有効単位であるそのカルボン酸に加水分解される本発明の化合物がある。プロドラッグの別の例は、酸基に結合された短いペプチド(ポリアミノ酸)であることができ、このペプチドが代謝されて活性残基が供給される。
【0020】
「医薬組成物」という用語は、本発明の化合物と、希釈剤や担体など他の化学成分との混合物を指す。医薬組成物は、生物への本化合物の投与を容易にする。化合物を投与する複数の手法が当該技術分野で存在し、これには経口、注射、エアロゾル、非経口、及び局所的な投与が含まれるが、これらに限定されない。医薬組成物は、化合物を、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などの無機酸又は有機酸と反応させることによって得ることもできる。
【0021】
「担体」という用語は、細胞又は組織へのある化合物の組み込みを容易にする化合物を定義する。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生物の細胞又は組織への多くの有機化合物の取り込みを容易にするので一般に利用されている担体である。
【0022】
「希釈剤」という用語は、着目している化合物を溶解し且つその化合物の生物活性な形態を安定化する、水で希釈された化合物を定義する。緩衝溶液に溶解した塩は、当該技術分野で希釈剤として利用される。一般に使用される緩衝溶液の1つは、リン酸緩衝生理食塩水である。というのは、これがヒト血液の塩状態を模倣しているからである。緩衝塩は、低濃度で溶液のpHを制御することができるので、緩衝希釈剤が化合物の生物活性を改変することはめったにない。
【0023】
「生理的に許容できる」という用語は、本化合物の生物活性及び特性を阻害しない担体又は希釈剤と定義する。
【0024】
「セロトニン1A」、「セロトニン1B」、「セロトニン2C受容体」、「5−HT1b受容体」、及び「5−HT2c受容体」という用語は、げっ歯類においてより一般的に認められる受容体を示す。他の哺乳動物が各種の神経細胞においてセロトニン受容体を有し、それらがげっ歯類の受容体と機能及び形態において類似することは、当業者によって理解されるであろう。これらの非げっ歯類、好ましくはヒトにおけるアゴニスト、アンタゴニスト、又はシナプス再取込みインヒビター、セロトニン受容体は、本発明の範囲内に属する。
【0025】
モノアミン作動性シナプス活性を調節する化合物(例えば、セロトニン、ノルエピネフリン、ドーパミンなど)は、1つ又は複数の脳の領域(例えば、辺縁系又は前頭葉(例えば、眼科前頭前野))においてモノアミン作動性シナプスのシナプス活性を増大又は低減する任意の化合物である。シナプス活性は、シナプス活性の任意の特性、例えば強度又は期間を増大又は低減することによって調節され得る。これらの化合物は、例えば、受容体アゴニスト、アンタゴニスト、逆アゴニスト、又は半アゴニスト、並びに再取込みインヒビターを含む。また、2以上のモノアミン作動性経路に対して混合された親和性を有する化合物、例えば、混合されたドーパミン/ノルエピネフリン再取込みインヒビターも含む。
【0026】
「治療する」又は「治療」という用語は、治癒全体を必ずしも意味するものではない。任意の望ましくない疾患の兆候及び症状の任意の程度の緩和、あるいは疾患の進行の遅延化は治療と解されて良い。さらに、治療は、患者全体の健康及び外観を損ねる可能性がある行為も含んで良い。治療は、たとえ症状が緩和されなくとも、疾患が回復しなくとも、又は患者全体の健康が改善しなくとも、患者の生命を長らえることを含んでも良い。かくして、本発明において、強迫観念の低減又は強迫観念に取り付かれた行動の頻度及び強度の低減は、たとえ患者が治癒しないか又は一般的に気分が良くならなくとも、あるいはある医薬の副作用によって気分が悪くなろうとも、治療であると解される。
【0027】
「不安」は、表面上は認識していない精神内部の衝突に明らかに由来する、実在しないか又は想像上の危険の予想に対する心理生理学的反応を含む不快な感情状態を含むが、それらに限らない。生理学的な付随する現象は、心拍数の増大、呼吸数の増大、発汗、震え、衰弱、及び疲労を含み、生理学的な付随する現象は、切迫した危険の意識、無力感、不安、及び緊張を含む。Dorland’s Illustrated Medical Dictionary,W.B.Saunders Co.,27th ed.(1988)参照のこと。
【0028】
「不安症」は、不安及び回避行動が多い精神疾患を含むが、それらに限らない。不安症の例は、強迫神経症、心的外傷後ストレス障害、社会不安、身体化、特定対人恐怖症、月経前不快気分障害、病状に関連する不安、適応障害、気分変調、特定恐怖症、線維筋痛、パニック発作、広場恐怖症、急性ストレス障害、全般性不安障害、及び/又は物質誘発性不安症を含む。他の不安症は、Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders(American Psychiatric Association 4th ed.1994)において特徴付けられている。当業者は、代替的な用語、疾病分類、及び病理心理学的状態についての分類体系が存在すること、並びにこれらの体系が医学の進歩と共に発展することを認めるであろう。好ましい実施態様では、本明細書に記載の不安症を治療する方法、化合物、及び組成物が、強迫神経症を治療するために使用されて良い。
【0029】
「強迫神経症」又は「OCD」は、個体に顕著な苦痛を与えるのに十分な再発性の強迫観念又は強迫衝動によって特徴付けられる不安症である。それらは、典型的に多大な時間を必要とし、及び/又はヒトの正常な機能、社会活動、又は関係を有意に阻害する。強迫観念は、頭に入ってきて、存続し続け、わずらわしく、且つ、嫌な再発性の着想、考え、又は衝動である。多くの場合において、その考えを無視するか又は抑制しようとする試み、又はある他の考え若しくは行動によってそれらを中和する試みが為されている。個体は、彼又は彼女自身の精神の産物として強迫観念を認識する可能性がある。強迫衝動は、反復的な強迫観念に応じて為される目的ある行動又は動作であり、不快な又は非常に恐ろしい事象又は状況を中和又は予防することを典型的には意図する。例えば、一般的な強迫観念は汚染について考えることに関連し;過剰な反復する目的の無い手洗いが一般的な強迫衝動である。
【0030】
本明細書で使用する「運動障害」は、発声を含む異常な無意識の運動のいかなる形態をも示すものとして使用される。運動障害は、例えば、遅発性ジスキネジー(TD)、チック、Gilles de la トゥレット症候群(TS)、パーキンソン病、ハンチントン病、並びに眼瞼けいれんなどの限局性筋失調症を含む。
【0031】
運動障害
強迫神経症と運動障害とは強い関係が存在する。強迫神経症は、Gilles de la トゥレット症候群(トゥレット症候群)並びにシデナム舞踏病及びハンチントン病を含む幾つかの他の基底核疾患と関連する。強迫神経症とチックとの間の繋がりについての強力な証拠が存在する。トゥレット症候群を有する患者における強迫神経疾患の発生率の推定値は5%から50%以上まで変化する。全ての推定値が、一般的な人口における強迫神経症の有病率よりも優位に高い値である。強迫神経症とトゥレット症候群との間の共通の臨床的特徴は、「症状の増減、低年齢における発症、自我異和的な行動(すなわち、意識的な優先に反する行動)、落ち込み及び不安を伴った悪化、並びに家族内の発生」を含む(Robertson and Yakely,supra)。遺伝学的研究によって、幾つかの家族では、トゥレット症候群、強迫神経症、又はそれらの双方を表現型として発現し得る1つの常染色体優性遺伝子が存在することが示唆されている。トゥレット症候群は、殆どの場合においてドーパミンアンタゴニストで治療され、強迫神経症はセロトニン再取込みインヒビターで治療されている。しかしながら、ドーパミンアンタゴニストの添加は、強迫神経症におけるセロトニン再取込みインヒビターの治療効果を増大し得るものであり、セロトニン再取込みインヒビターの添加は、トゥレット症候群におけるドーパミンアンタゴニストの効果を増大し得るものである。これらの考察の全てが、強迫神経症とトゥレット症候群の重複する生理学的メカニズムが存在するという見解を支持するものである。
【0032】
チックと強迫神経症との双方が、β溶血性連鎖球菌A群感染に対する自己免疫反応−PANDAS症候群−連鎖球菌と関連する小児自己免疫疾患のCNS効果によって生じ得るものである(Swedo S E,et al:Pediatric autoimmune neuropsychiatric disorders associated with streptococcal infections:clinical description of the first 50 cases.Am J Psychiatry,155:264−71,February 1998)。同様に、外傷的脳損傷は、チック及び強迫神経症候群の同時の新たな発症を生じさせ得る(Krauss J K;Jankovic J:Tics secondary to craniocerebral trauma.Mov Disord,12:776−82,September 1997)。
【0033】
強迫神経症は、眼瞼けいれん、基底核疾患によって生じた限局性筋失調症、及び症状は表面的に類似するが末梢神経障害による症候群である片側顔面けいれんを有する患者の間において比較された。眼瞼けいれんを有する患者は、症状のチェックリストにたいして強迫神経症の症状を有意により多く有していた(Brooks,et al.:Higher prevalence of obesessive−compulsive symptoms in patients with blepharospasm than in patients with hemifacial spasm.Am J Psychiatry,155:555−7,April 1998)。
【0034】
強迫神経症は、トゥレット症候群と関連するだけでなく、強迫神経症の現象は、チックの臨床的特徴と共通している。それらの双方は、再発性であり、常同性であり、不随意の現象を伴う。強迫神経症の場合では、思考又は目的行動の連続(強迫衝動儀式)が存在し、チックの場合では、単純な目的がない行動である。それらの双方は、辺縁又は線状体の入力による新皮質における表現の活性化を伴う。
【0035】
したがって、本発明の実施態様は、運動障害を治療する化合物、組成物、及び方法も含む。
【0036】
第一の化合物
ある実施態様では、本明細書に記載の組成物及び方法の第一の化合物はオピオイドアンタゴニストであり、これらの実施態様の幾つかでは、哺乳動物におけるμ−オピオイド受容体(MOP−R)及び/又はκ−オピオイド受容体(KOP−R)に対してアンタゴナイズする。ある実施態様では、オピオイドアンタゴニストは、アルビモパン、ノルビナルトルフィミン、ナルメフェン、ナロキソン、ナルトレキソン、メチルナルトレキソン、6−β−ヒドロキシナルトレキソン、及びナロルフィン、並びにそれらの製薬学的に許容される塩又はプロドラッグからなる群から選択される。ある好ましい実施態様では、オピオイド半アゴニスト又はアンタゴニストはナルトレキソンであり、即時放出又は持続放出(SR)製剤のいずれかとして投与される。
【0037】
他の実施態様では、オピオイドアンタゴニストは、選択的に、半オピオイドアゴニスト又は純粋なアンタゴニストである。この種類の化合物は、オピオイド受容体における幾らかのアゴニスト活性を有する可能性がある。しかしながら、それらは弱いアゴニストであるため、事実上のアンタゴニストとして働く。半オピオイドアゴニストの例は、ペンタコジン、ブプレノルフィン、ナロルフィン、プロピラム、及びロフェキシジンを含む。純粋な又は選択的アンタゴニストの例は、6−β−ナルトレキソールである。
【0038】
第二の化合物
第二の化合物は、各種の脳の領域、例えば、辺縁系又は前頭葉(例えば、眼窩前頭前野)における細胞外モノアミンレベルを増大する可能性がある。興味あるこれらの領域における主要なモノアミン又は神経伝達物質は、セロトニン、ドーパミン、ノルエピネフリン、γ−アミノ酪酸(GABA)、及びグルタメートを含む。ある実施態様では、第二の化合物は、選択的セロトニン再取り込みインヒビター(SSRI)、セロトニン1Aアゴニスト/半アゴニスト/逆アゴニスト/又はアンタゴニスト、セロトニン2Cアゴニスト、並びに/あるいはセロトニン1Bアゴニストからなる群から選択される。更なる実施態様では、第二の化合物は、例えば、フルオキセチン、フルボキサミン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、シブトラミン、デュロキセチン、ベンラファキシン、スマトリプタン、アルモトリプタン、ナラトリプタン、フロバトリプタン、リザトリプタン、ゾミトリプタン、及びエリトリプタン、並びにそれらの製薬学的に許容される塩、光学異性体、代謝産物、又はプロドラッグからなる群から選択される。ある好ましい実施態様では、第二の化合物はフロキセチンである。
【0039】
ある実施態様では、第二の化合物は脳由来神経向性因子(BDNF)遺伝子の発現又は神経ペプチド、例えば、オキシトシン又はバソプレッシンの生産又は放出を抑制する。これらの実施態様の幾つかでは、第二の化合物は、バソプレッシンを発現する神経細胞の活性を抑制する。
【0040】
他の実施態様では、第二の化合物は、NPY遺伝子の発現又は神経ペプチドY(NPY)の生産若しくは放出を抑制する。これらの実施態様の幾つかでは、第二の化合物は、NPYを発現する神経細胞の活性を抑制する。更なる実施態様では、第二の化合物は、NPYアンタゴニスト、グレリンアンタゴニスト、及びレプチンからなる群から選択される。ある他の実施態様では、第二の化合物はNPY Y1又はY2受容体にアンタゴナイズする。
【0041】
本発明の他の実施態様は、第二の化合物が、γ−アミノ酪酸(GABA)インヒビター、GABA受容体アンタゴニスト、並びにGABAチャンネル調節因子からなる群から選択される場合を含む。GABA受容体に対するGABAの結合を妨げるか又はその様な結合の効果を最小化することによって、細胞内のGABAの生産を低減するか、細胞由来のGABAの放出を低減するか、又はその受容体に対するGABAの活性を低減する化合物が、「GABAインヒビター」によって意味される。GABAインヒビターは、5−HT1bアゴニスト、又はNPY/AgRP/GABA神経細胞の活性を阻害する他の薬剤であって良い。加えて、GABAインヒビターは、AgRP遺伝子の発現を抑制するか、又はGABAインヒビターはAgRPの生産又は放出を抑制して良い。しかしながら、5−HT1bアゴニストは、GABA経路のインヒビターとして作用すること無く、NPY/AgRP/GABA神経細胞を阻害(し、それによってプロオピオメラノコルチン(POMC)神経を活性化)して良い。
【0042】
ある実施態様では、GABAインヒビターはPOMC遺伝子の発現を増大する。これらの実施態様の幾つかでは、GABAインヒビターは、POMCタンパク質の生産又は放出を増大する。ある他のこれらの実施態様では、GABAインヒビターは、POMC発現神経細胞における活性を増大する。ある実施態様では、GABAインヒビターはトピラメートである。
【0043】
他の実施態様では、第二の化合物は、ドーパミン再取込みインヒビター又は受容体アンタゴニストである。フェンテルミンは、ドーパミン再取込みインヒビターの一例である。ハロペリドール、オカペリドン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、アミスルプリド、及びピモジドは、ドーパミン受容体アンタゴニストの例である。ある他の実施態様では、第二の化合物は、ノルエピネフリン再取込みインヒビターである。ノルエピネフリン再取込みインヒビターの例は、ブプロピオン、チオニソキセチン(thionisoxetine)、アトモキセチン、及びレボキセチンを含む。他の実施態様は、第二の化合物がドーパミンアゴニストである場合を含む。ある市販のドーパミンアゴニストは、カベルゴリン、アマンタジンリスリド、ペルゴリド、ロピニロール、プラミペキソール、及びブロモクリプチンを含む。
【0044】
ある実施態様では、第二の化合物はブプロピオンである。他の実施態様では、前記第二の化合物はブプロピオンの代謝産物又は光学異性体である。本発明の方法、化合物、及び組成物に含めるために適切なブプロピオンの代謝産物は、ブプロピオンのエリトロ−及びトレオ−アミノアルコール、ブプロピオンのエリトロ−アミノジオール、並びにブプロピオンのモルフォリノール代謝産物を含む。ある実施態様では、ブプロピオンの代謝産物は、(±)−(2R*,3R*)−2−(3−クロロフェニル)−3,5,5−トリメチル−2−モルフォリノールである。ある実施態様では、前記代謝産物は、(−)−(2R*,3R*)−2−(3−クロロフェニル)−3,5,5−トリメチル−2−モルフォリノールであり、他の実施態様では、前記代謝産物は、(+)−(2S,3S)−2−(3−クロロフェニル)−3,5,5−トリメチル−2−モルフォリノールである。好ましくは、ブプロピオンの代謝産物は、(+)−(2S,3S)−2−(3−クロロフェニル)−3,5,5−トリメチル−2−モルフォリノールであり、レダファキシンという一般名で知られており、図面を含む全体を参照によって本明細書に取り込むMorgan et alに対して2001年4月14日に登録された米国特許第6,274,579号に開示されている。
【0045】
更なる実施態様では、第二の化合物は鎮痙剤である。鎮痙剤は、ゾニサミド、トピラメート、ネムブタール、アルピラゾラム、ジアゼパム、ロラゼパム、クロナゼパム、クロラゼペート、チアガビン、ガバペンチン、フォスフェニトイン、フェニトイン、カルバマゼピン、バルプロエート、フェルバメート、レベチラセタム、オクスカルバゼピン、ラモトリジン、メトスクシミド、及びエトスクシミドからなる群から選択されて良い。
【0046】
ある実施態様では、第二の化合物自体が、2つ以上の化合物の組み合わせであって良い。例えば、第二の化合物は、ドーパミン再取込みインヒビターとノルエピネフリン再取込みインヒビター、例えば、ブプロピオン、アトモキセチン、レボキセチン、及びマジンドールとの組み合わせであって良い。代替的には、第二の化合物は、SSRIとノルエピネフリン再取込みインヒビター、例えば、シブトラミン、ミルナシプラン、ベンラファキシン、及びデュロキセチンとの組み合わせであって良い。
【0047】
ある実施態様では、第二の化合物は、POMC神経細胞の活性化因子である。POMC活性化因子の例は、Ptx1及びインターロイキン1β(IL−1β)を含む。代替的には、第二の化合物は、セロトニン及び/又はノルエピネフリンの再取込みを向上させて良く、例えば、チアネプチン又はアミネプチンである。
【0048】
化合物の組み合わせ
ある実施態様では、以下の化合物の組み合わせが投与されるか又は組成物に含まれる:
SSRIと、ドーパミン再取込みインヒビター、ドーパミン/ノルエピネフリン再取込みインヒビター、ノルエピネフリン再取込みインヒビター、オピオイドアンタゴニスト、半オピオイドアゴニスト、GABAインヒビター、あるいはPYY、PYY3−36、又はレプチンなどのペプチドとの組み合わせ;
セロトニンと、ドーパミン再取込みインヒビター、ドーパミン/ノルエピネフリン再取込みインヒビター、オピオイドアンタゴニスト、半オピオイドアゴニスト、又はGABAインヒビターとの組み合わせ;
ドーパミン再取込みインヒビターと、ノルエピネフリン再取込みインヒビター、ノルエピネフリン放出剤、ノルエピネフリンアゴニスト、オピオイドアンタゴニスト、半オピオイドアゴニスト、GABAインヒビター、アデノシン化合物、コリン作動性受容体アンタゴニスト、あるいはPYY、PYY3−36、又はレプチンなどのペプチドとの組み合わせ;
ドーパミン/ノルエピネフリン再取込みインヒビターと、オピオイドアンタゴニスト、半オピオイドアゴニスト、又はGABAインヒビターとの組み合わせ;
ナルトレキソンとブプロピオン;
ナルトレキソンとフロキセチン;
ドーパミンアゴニストと、オピオイドアンタゴニスト、半オピオイドアゴニスト、GABAインヒビター、又はPYY、PYY3−36、又はレプチンなどのペプチドとの組み合わせ;
セロトニン及び/又はノルエピネフリン再取込みエンハンサーと、オピオイドアンタゴニスト、例えば、チアネプチン又はその代謝産物/光学異性体/若しくはプロドラッグと、ナルトレキソン又はその代謝産物/光学異性体/又はプロドラッグとの組み合わせ。
【0049】
ノルエピネフリンアゴニストの例は、フェンジメトラジンおよびベンズフェタミンを含む。アデノシン化合物の例は、全てのキサンチン誘導体、例えば、アデノシン、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン、及びアミノフィリンを含む。ニコチン様コリン作動性受容体アゴニストの例はニコチンであり、ムスカリン様コリン作動性受容体アゴニストの例はキサノメリンである。
【0050】
患者の同定
本明細書に記載の第一の化合物及び第二の化合物を、不安症に罹っているか又は罹る恐れがある患者に投与して良い。好ましい実施態様では、不安症はOCDである。過去に不安症に罹ったことがある患者が不安症を発症する可能性を増大する他の疾患(例えば、鬱病又は運動障害)に罹っているか又は一般的に不安症に罹りやすい場合には、患者は不安症に罹る恐れがある。本明細書に記載の第一及び第二の化合物は、運動障害に罹っているか又は罹る恐れがある患者に投与されて良い。ある好ましい実施態様では、運動障害はチックである。他の好ましい実施態様では、運動障害はトゥレット症候群である。過去に運動障害を経験している患者が、運動障害に冒される可能性を増大する他の疾患(例えば、不安症)に冒されているか又は一般的に運動障害に罹りやすくなっている場合には、患者は運動障害に罹る恐れがある。
【0051】
ある実施態様では、本明細書に記載の第一の化合物及び第二の化合物は、運動障害と不安症との双方に罹っているか又は罹る恐れがある患者に投与されて良い。他の実施態様では、患者は、不安症に罹っており、且つ、運動障害に罹る恐れがあって良い。更なる他の実施態様では、患者は、運動障害に罹っており、且つ、不安症に罹る恐れがあって良い。患者は、不安症又は運動障害に罹っており、且つ、他の疾患に罹る恐れが無くても良い。
【0052】
患者は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、霊長類、例えば、サル、チンパンジー、及び類人猿、並びにヒトからなる群から選択されて良い。
【0053】
鬱病にかかっている個体は、不安症、具体的にはOCDも有している可能性がある。ある実施態様では、患者は鬱病に罹っていない。
【0054】
投与
ある実施態様では、患者は、本明細書に記載の第一の化合物及び第二の化合物をほぼ同時に投与される。これらの実施態様は、同じ投与可能な組成物に2つの化合物が存在する場合、すなわち、単独の錠剤、丸剤、又はカプセル剤、あるいは静脈注射用の単独の溶液剤、あるいは単独の飲用液剤、あるいは単独の糖衣錠剤又はパッチ剤が双方の化合物を含有する。前記実施態様は、各化合物が別々に投与可能な組成物に存在するが、患者は別々の組成物をほぼ同時に服用する、すなわち、1つの丸剤を服用した直後に他の丸剤を服用するか又は1つの化合物の注射の直後に他の化合物を注射するなどの場合も含む。ある実施態様では、患者は、1つの化合物の点滴剤の輸液の直後に他の化合物の点滴剤の輸液を実施して良い。これらの実施態様では、輸液は数時間実施して良く、例えば、数分、30分、又は1時間以上実施して良い。2つの静脈内輸液を一方の直後に一方を実施した場合には、たとえ1つの輸液の開始と次の輸液の開始との間に数時間の空白があっても、その様な投与は本明細書の範囲では、ほぼ同時であると解する。
【0055】
他の実施態様では、投与工程は、1つの第一の化合物及び第二の化合物の投与、次いで他の1つの第一の化合物及び第二の化合物の投与を含む。これらの実施態様では、患者は、1つの化合物を含む組成物が投与され、次いで、ある時間、数分又は数時間後に、他の1つの化合物を含む他の組成物を投与して良い。これらの実施態様には、患者が日常的に又は継続的に化合物の1つを含む組成物を投与され、時折他の化合物を含む組成物を摂取する場合も含まれる。更なる実施態様では、患者は、日常的又は連続的に双方の化合物を摂取、例えば静脈内に連続的に輸液して良い。
【0056】
ある実施態様では、第一の化合物及び第二の化合物が各々投与される。他の実施態様では、第一の化合物と第二の化合物とが互いに共有結合し、それらは単独の化学物質を形成する。単独の化学物質は、次いで消化され、1つは第一の化合物であり、他の1つは第二の化合物である2つの別々の生理活性を有する化学物質に代謝される。
【0057】
本明細書に開示するある実施態様では、個体は、2以上の化合物の組み合わせを含む医薬組成物を与えられ、不安症及び/又は運動障害を治療する。これらの実施態様の幾つかでは、各化合物は、別々の化学物質である。しかしながら、他の実施態様では、前記2つの化合物は、共有結合などの化学結合によって互いに一緒に結合しており、2つの異なる化合物が同じ分子の別々の部分を形成する。化学結合は、体内に入った後に、結合が酵素の作用、酸加水分解、又は塩基加水分解などによって壊れて、次いで前記2つの別々の化合物が形成される。
【0058】
投与経路
適切な投与経路には、例えば、経口、直腸、経粘膜、又は腸管投与と、非経口送達(筋肉内、皮下、静脈内、脊髄内注射、並びにクモ膜下腔、直接脳室内、腹腔内、鼻腔内、又は眼内注入を含む)とが含まれ得る。
【0059】
あるいは、本化合物を、全身投与ではなく、(例えば化合物を、しばしば埋め込み製剤又は徐放性製剤として腎臓又は心臓領域に直接注入することにより)局所投与することができる。さらに、本薬剤を標的化された薬物送達システム、例えば、組織特異的抗体で被覆されたリポソームで投与することができる。リポソームは、その器官を標的とし、それによって選択的に取り込まれる。
【0060】
本発明の医薬組成物は、それ自体周知の方式で、例えば通常の混合、溶解、造粒、糖衣化、分級、乳化、カプセル化、封入、又は打錠プロセスによって製造することができる。
【0061】
したがって、本発明による使用のための医薬組成物及び/又は化合物は、通常の方式で、有効化合物を医薬として使用できる製剤に加工するのを容易にする賦形剤及び添加剤を含む1つ又は複数の生理的に許容される担体を使用して配合することができる。適切な製剤は、選択された投与経路次第で異なる。当技術分野、例えば、上記のRemington's Pharmaceutical Sciencesにおいて適切でかつ理解されたものとして周知の技法、担体、及び賦形剤のいずれを使用してもよい。
【0062】
注入の場合、本発明の作用物質を、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、生理食塩緩衝液などの生理的に適合可能な緩衝液中に配合することができる。経粘膜投与の場合、浸透対象のバリアに適した浸透剤を製剤に使用する。このような浸透剤は、一般に当技術分野で周知である。
【0063】
経口投与の場合、本化合物は、活性化合物を、当技術分野でよく知られた製薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に配合されうる。このような担体によって、本発明の化合物を、治療対象患者による経口摂取用の錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ジェル、シロップ剤、スラリー、懸濁剤などとして配合することができる。経口用途の医薬製剤は、1つ又は複数の固体賦形剤を本発明の医薬組合せと混合し、場合によっては得られた混合物を粉砕し、望むなら、錠剤又は糖衣錠核を得るために適切な添加剤を加えた後に、顆粒の混合物を加工することによって得ることができる。適切な賦形剤は、特に、充填剤であり、例えば、糖類(乳糖、ショ糖、マンニトール、又はソルビトールを含む)、セルロース調製物(トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなど、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)など)である。所望する場合、崩壊剤(架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はそれらの塩等、例えばアルギン酸ナトリウム等)を添加することができる。
【0064】
糖衣錠核に、適切なコーティングを施す。この目的のため、濃縮された糖溶液を使用することができ、これは任意で、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カ−ボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適切な有機溶媒又は溶媒混合物を含む。錠剤又は糖衣錠コーティングに、識別のため、又は有効化合物用量の異なる組合せを特徴付けるために染料又は顔料を、添加してもよい。
【0065】
経口使用できる医薬製剤には、ゼラチンで作製された押し込み型カプセル剤、並びにグリセロール、ソルビトールなどゼラチン及び可塑剤で作製された密封軟質カプセル剤が含まれる。押し込み型カプセル剤は、混合物中に有効成分を、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び任意で安定化剤とともに含有することができる。軟質カプセル剤では、有効化合物は、脂肪油、流動パラフィン、液状ポリエチレングリコールなどの適切な液剤中に溶解又は懸濁することができる。さらに、安定化剤を添加することができる。経口投与用製剤はいずれも、このような投与に適した製剤にすべきである。
【0066】
口腔内又は舌下投与の場合、本組成物は、通常の方式で調製した錠剤又はロゼンジの形態であってよい。
【0067】
吸入投与の場合、本発明に従って使用する化合物は、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガスを使用して、加圧パックからのエアロゾルスプレー、又は噴霧器の形態で送達されることが好都合である。加圧エアロゾルの場合は、用量単位は、定量された量を供給するための弁を備えることによって決定することができる。吸入器又は注入器で使用するための、カプセル剤及びカートリッジ(例えばゼラチン等)は、本化合物と適切な粉末基材(例えば乳糖又はデンプンなど)との粉末ミックスを含有させて調製することができる。
【0068】
本化合物を、注射、例えばボーラス注射又は持続点滴による非経口投与用に製剤することができる。注射用製剤は、単位投与形態、例えばアンプル又は多回投与用容器で、防腐剤を添加して提供することができる。本組成物は、油性又は水性ビヒクル中での懸濁剤、溶液又はエマルションの形態をとることができ、また懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤などの調整剤を含むことができる。
【0069】
非経口投与用の医薬製剤には、水溶性の形態の活性化合物の水性溶液が含まれる。さらに、活性化合物の懸濁剤を、適切な油性の注射懸濁剤として調製することができる。適切な親油性の溶媒又はビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、オレイン酸エチルやトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームが含まれる。水性注射用懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストランなどの懸濁剤の粘度を上昇させる物質を含むことができる。任意に、懸濁剤は、適切な安定化剤、又は化合物の溶解性を増大させて、非常に濃度の高い溶液の調製を可能にする薬剤を含んでもよい。
【0070】
あるいは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば滅菌された発熱性物質を含まない水と組み合わせる構成の散剤の形態とすることができる。
【0071】
本化合物は、例えばココアバターや他のグリセリドなどの通常の坐剤基剤を含有する、坐剤又は停留浣腸などの直腸用組成物として製剤することもできる。
【0072】
先に記載した製剤に加えて、本化合物を埋め込み製剤として製剤することもできる。このような長時間作用型製剤は、移植(例えば、皮下又は筋肉内)によって、あるいは筋肉内注射によって投与することができる。したがって、例えば、本化合物を、適切なポリマー又は疎水性材料(例えば、許容できるオイル中のエマルションとして)、又はイオン交換樹脂とともに調製するか、あるいはわずかに可溶な誘導体(例えばわずかに可溶な塩)として調製することができる。
【0073】
本発明の医薬組成物のための正確な処方及び投与経路は、患者の状態を考慮し
て、個々の医師によって選択されることができる。(例えば、Finglら、1975、「The Phar
macological Basis of Therapeutics」、Ch. 1 p. 1を参照)。
【0074】
医薬担体
他の態様では、本発明は、オピオイドアンタゴニストと、上述のように正常な生理学的状態と比較してモノアミン作動性システムを調節する化合物との組み合わせを含むか、又は本明細書に記載の結合した分子を含み、且つ、生理的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤、あるいはそれらの組み合わせを含む医薬組成物に関する。
【0075】
本明細書に記載の医薬組成物は、それ自体でヒトに投与されて良く、又は他の有効成分と混合された医薬組成物において投与されて良い。本願の化合物の製剤及び投与のための技術は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences,」Mack Publishing co.,Easton,PA,18th edithion,1990に認められる。
【0076】
本発明の疎水性化合物向けの製剤用担体は、共溶媒系であり、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、及び水相を含む。使用する一般的な共溶媒系は、VPD共溶媒系であり、3%w/vベンジルアルコール、8%w/vの非極性界面活性剤Polysorbate 80(登録商標)、及び65%w/vポリエチレングリコール300を無水エタノールで定容とした溶液である。言うまでも無く、共溶媒系のこの割合は、その溶解性及び毒性の特性を損なうことなく大幅に変化させることができる。さらに、共溶媒成分の同一性を変化させることができる。例えば、他の低毒性非極性界面活性剤を、POLYSORBATE 80(登録商標)の代わりに使用することができ、ポリエチレングリコールの比率を変えることができ、他の生体適合性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン)をポリエチレングリコールと置き換えることができ、さらに他の糖類又は多糖類をデキストロースの代わりに使用することができる。
【0077】
あるいは、疎水性医薬化合物用の他の送達システムを採用することもできる。リポソーム及びエマルションは、疎水性薬剤用の送達ビヒクル又は担体の周知の例である。ジメチルスルホキシドなどのいくつかの有機溶媒を、通常は毒性がより高いが採用することもできる。さらに、本化合物は、治療薬を含有する疎水性固体ポリマーの半透過性マトリックスなどの徐放性システムを用いて送達することができる。様々な徐放性材料が確立されていて、当業者によく知られている。徐放性カプセル剤は、その化学的性質に応じて数週間から最高100日までの間化合物を放出する。治療剤の化学的性質、及び生物学的安定性に応じて、タンパク質の安定化のための追加の戦略を採用することができる。
【0078】
本発明の医薬の組合せで用いる化合物の多くは、医薬として適合できる対イオンを有する塩として提供することができる。医薬として適合できる塩は、多数の酸で形成することができ、この酸には、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等が含まれるがこれらに限定されない。塩は、対応する遊離の酸又は塩基の形態である場合より、水性溶媒又は別のプロトン性溶媒に可溶性となる傾向にある。本明細書に記載の化合物の1つ以上が、調節放出形態、例えば、持続放出形態として製剤されて良い。
【0079】
投与量
本発明に使用するのに適した医薬組成物及び/又は化合物には、活性成分が、その意図された目的を実現するのに有効な量で含まれている組成物及び/又は化合物が含まれる。より具体的には、治療上有効な量は、疾病の症状を阻害し、遅延し、予防し、緩和し又は改善する、あるいは治療対象の生存を延長するのに有効な、化合物の量を意味する。治療上有効な量の決定は、特に本明細書で提供した詳細な開示を考慮に入れれば、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0080】
本発明の医薬組成物及び/又は化合物のための正確な処方、投与経路及び用法は、患者の状態を考慮して、個々の医師によって選択されることができる。(例えば、Finglら、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」、Ch. 1 p. 1を参照)。通常は、患者に投与される組成物及び/又は化合物の用量範囲は、患者体重1kg当たり約0.5〜1000mgとすることができる。用法は、患者の必要に応じて、1日又は数日の間に、単回投与又は2回以上の連続投与とすることができる。この開示で述べた具体的な化合物のほとんどすべてについて、少なくとも何らかの状態の治療のためのヒトにおける用量が確立していることに留意されたい。したがって、大半の場合、本発明は、それと同じ用量、あるいはその確立されたヒトにおける用量の約0.1%〜500%、より好ましくは約25%〜250%の用量を使用する。ヒトにおける用量が確立していない場合は、新たに発見された医薬化合物と同様にして、ヒトにおける適切な用量を、ED50又はID50値から、あるいは動物における毒性研究及び有効性研究によって適格と認められたようなin vitro又はin vivo研究に由来する他の適切な値から推定することができる。
【0081】
正確な用量は薬物ごとに決まるものであるが、大半の場合、用量に関して何らかの一般法則化をすることができる。ヒト成人患者の場合の1日の用法は、本発明の医薬組成物の各成分、又は遊離塩基として計算した医薬として許容できるその塩を、組成物を1〜4回/日投与して、例えば経口投与の場合、各成分が0.1mg〜500mg、好ましくは1mg〜250mg、例えば5〜200mg、あるいは静脈内、皮下、又は筋肉内投与の場合、各成分が0.01mg〜100mg、好ましくは0.1mg〜60mg、例えば1〜40mgとすることができる。あるいは、本発明の組成物又は化合物は、静脈内持続点滴で、好ましくは各成分の1日用量最高400mgで投与することができる。したがって、各成分の経口投与の1日の総用量は、通常は1〜2000mgの範囲となり、非経口投与の1日の総用量は、通常は0.1〜400mgの範囲となる。好適には、化合物を連続療法の期間、例えば1週間以上、あるいは何カ月間か又は何年間か投与する。
【0082】
投与量及び間隔は、その調節効果、又は最小有効濃度(MEC)を維持するのに十分な活性成分の血漿濃度及び/又は中枢神経系濃度をもたらすように個別に調整することができる。MECは、各化合物に応じて異なるが、in vitroデータから推定することができる。MECを実現するのに必要な用量は、個々の特性、及び投与経路に応じて異なる。しかし、HPLCアッセイ又はバイオアッセイを用いて、血漿濃度を決定することができる。
【0083】
投与間隔は、MEC値を用いて決定することもできる。本組成物は、その期間の10〜90%、好ましくは30〜90%、最も好ましくは50〜90%の間、血漿濃度をMECより高く維持するレジメンを使用して投与すべきである。
【0084】
局所投与又は選択的取り込みの場合、薬物の局所有効濃度が血漿濃度に関係しないことがある。
【0085】
組成物又は化合物の投与量は、もちろん、治療対象、対象の体重、年齢、現在の医学的状態、併用薬、民族、性別、病気の重症度、投与方法、及び処方する医師の判断に依存する。
【0086】
組成物又は化合物は、所望する場合、活性成分を含有する1つ又は複数の単位投与形態を含むことができる包装又はディスペンサ装置で提供することができる。包装は、例えばブリスター包装などの金属又はプラスチックの箔を含むことができる。包装又はディスペンサ装置は、投与指示書を添付することができる。包装又はディスペンサには、医薬品の製造、用途又は販売を規制する政府機関によって規定されたフォームの容器に関連する注意書きが添付されていることがあり、この注意書きは、政府機関のヒト又は動物への投与用の薬物の形態についての承認を反映するものである。このような注意書きは、例えば米国食品医薬品局によって承認された処方薬に関する表示、すなわち承認済み製品添付文書とすることができる。適合性医薬用担体中に配合された本発明の化合物を含む組成物及び/又は化合物は、適切な容器中で調製、収納し、治療のための適用条件を表示することができる。
【0087】
本発明の精神から逸脱することなく、多数の様々な修正を行うことができることが、当
業者には理解できよう。したがって、本発明の形態は、例示であって、本発明の範囲を限
定するものではないことを明確に理解されたい。本明細書(実施例を含む)に開示する実施態様のいずれにおいて開示されている組成物のいずれについても、本明細書に記載の不安症又は運動障害の治療のための医薬の調製において使用され得る。
【実施例】
【0088】
以下の実施例は、本発明の各種の態様を単に表わすものであり、制限するものではない。
【0089】
(実施例1)
フルオキセチンとナルトレキソン/ナルトレキソン代謝産物との組み合わせ
強迫神経症を有する個体を同定する。各患者はフルオキセチン(PROZAC(登録商標))の20mg錠剤を毎日服用し、加えて、ナルトレキソンの50mg錠剤を毎日服用するよう指示される。
【0090】
個体は、数ヶ月の期間に亘って観察され、それらの行動が記録される。最初の用量が効果的でなかった場合には、次いでフロキセチンの用量を20mg/日毎増大させるが、80mg/日は滅多に超えない。
【0091】
フルオキセチンは、約24時間の生理学的な半減期を有するが、ナルトレキソンは約1.5時間である。しかしながら、それらの代謝産物は24時間を超える半減期を示す可能性がある。かくして、ある場合には、一日に亘って2または3以上の用量のナルトレキソンと組み合わせて、フルオキセチンの一日毎の用量を投与することが有益であって良い。ナルトレキソンは、一日一回投与される持続放出型の製剤であっても良いが、ナルトレキソンは一日を通じて又は12時間の期間の経過において血中に次第に侵入する。
【0092】
フルオキセチン及びナルトレキソンを投与されている個体において、強迫神経症の症状は阻害される。フルオキセチン及びナルトレキソンを投与されている個体において、強迫神経症と関連する悪性の事象は低減される。フルオキセチン及びナルトレキソンを単独で投与することによって予期される効果と比較して、フルオキセチン及びナルトレキソンの双方の投与の強迫神経症に対する効果は相乗的である。
【0093】
(実施例2)
フルオキセチンとナルメフェンとの組み合わせ
強迫神経症を有する個体を同定する。各個体は、フルオキセチン(PROZAC(登録商標))の20mg錠剤を毎日服用するよう指示される。加えて、各個体は、生理食塩水1mL中のナルメフェン100μgの溶液1mLを静脈内、筋肉内、又は皮下に注射する。
【0094】
個体は数ヶ月の期間に亘って観察され、それらの行動を記録する。最初の用量が効果的でない場合には、フルオキセチンの用量を20mg/日毎増加して良いが、80mg/日を超えない。加えて、ナルメフェンの用量が、生理食塩水1mL中のナルメフェン1mgの溶液2mLまで増加する可能性がある。
【0095】
フルオキセチン及びナルメフェンを投与されている個体において、強迫神経症の症状は阻害される。フルオキセチン及びナルメフェンを投与されている個体において、強迫神経症と関連する悪性の事象は低減される。フルオキセチン及びナルメフェンを単独で投与することによって予期される効果と比較して、フルオキセチン及びナルメフェンの双方の投与の強迫神経症に対する効果は相乗的である。
【0096】
(実施例3)
フロキセチンとナロキソンとの組み合わせ
強迫神経症を有する個体を同定する。各個体は、フルオキセチン(PROZAC(登録商標))の20mg錠剤を毎日服用するよう指示される。加えて、各個体は、生理食塩水1mL中のナロキソン400μgの溶液1mLを静脈内、筋肉内、又は皮下に注射する。
【0097】
個体は数ヶ月の期間に亘って観察され、それらの行動を記録する。最初の用量が効果的でない場合には、フルオキセチンの用量を20mg/日毎増加して良いが、80mg/日を超えない。
【0098】
フルオキセチン及びナロキソンを投与されている個体において、強迫神経症の症状は阻害される。フルオキセチン及びナロキソンを投与されている個体において、強迫神経症と関連する悪性の事象は低減される。フルオキセチン及びナロキソンを単独で投与することによって予期される効果と比較して、フルオキセチン及びナロキソンの双方の投与の強迫神経症に対する効果は相乗的である。
【0099】
(実施例4)
オピオイドアンタゴニストとブプロピオンとの組み合わせ
強迫神経症を有する個体を同定する。各個体は、ナルメフェン、ナルトレキソン、又はナロキソンを実施例1〜3に記載の用量で服用するよう指示される。加えて、各個体はブプロピオンを服用するよう指示される。通常の成人用量は300mg/日であり、一日に3回服用する。投与は200mg/日で開始し、一日に100mgで二回服用すべきである。臨床応答に基づいて、この用量を300mg/日まで増大し、一日に100mg3回で服用して良い。1回の用量は150mgを超えるべきではない。
【0100】
個体は数ヶ月の期間に亘って観察され、それらの行動を記録する
【0101】
ブプロピオン及びナルトレキソン、ナルメフェン、又はナロキソンを投与されている個体において、強迫神経症の症状は阻害される。ブプロピオン及びナルトレキソン、ナルメフェン、又はナロキソンを投与されている個体において、強迫神経症と関連する悪性の事象は低減される。ブプロピオン及びナルトレキソン、ナルメフェン、又はナロキソンを単独で投与することによって予期される効果と比較して、ブプロピオン及びナルトレキソン、ナルメフェン、又はナロキソンのいずれの投与の強迫神経症に対する効果は相乗的である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不安症に罹っているか又は罹る恐れがある患者を同定する工程、並びにオピオイドアンタゴニスト又はオピオイド受容体半アゴニストである第一の化合物と、モノアミン作動性シナプス活性を調節する第二の化合物とを前記患者に投与する工程を含む、不安症の治療方法。
【請求項2】
前記モノアミン作動性シナプス活性が、セロトニンシナプス活性、ノルエピネフリンシナプス活性、及びドーパミンシナプス活性から選択される少なくとも1つのモノアミン作動性シナプス活性である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不安症が強迫神経症である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一の化合物がMOP受容体アンタゴニストである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第一の化合物が、アルビモパン、ノルビナルトルフィミン、ナルメフェン、ナロキソン、ナルトレキソン、メチルナルトレキソン、及びナロルフィン、並びにそれらの製薬学的に許容される塩、光学異性体、代謝産物、又はプロドラッグから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第一の化合物が、ナルトレキソン、6−β−ナルトレキソール、又はそれらの製薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第一の化合物がドーパミン経路を間接的に調節する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第二の化合物が、選択的セロトニン再取込みインヒビター(SSRI)、再取込みプロモーター、又は特異的5−HT受容体アゴニストである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記SSRIが、フルオキセチン、フルボキサミン、セルトラリン、パロキセチン、シタロプラム、エスシタロプラム、シブトラミン、デュロキセチン、及びベンラファキシン、並びにそれらの製薬学的に許容される塩又はプロドラッグから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記SSRIが、フロキセチン又はその製薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第一の化合物及び前記第二の化合物がほぼ同時に投与される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第二の化合物がブプロピオン又はその代謝産物である、請求項1から7又は11に記載のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第一の化合物がナルトレキソンであり、前記第二の化合物がフルオキセチンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第一の化合物がナルトレキソンであり、前記第二の化合物がブプロピオンである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
運動障害に罹っているか又は罹る恐れがある患者を同定する工程、並びにオピオイドアンタゴニスト又はオピオイド受容体半アゴニストである第一の化合物と、モノアミン作動性シナプス活性を調節する第二の化合物とを前記患者に投与する工程を含む、運動障害の治療方法。
【請求項16】
前記モノアミン作動性シナプス活性が、セロトニンシナプス活性、ノルエピネフリンシナプス活性、及びドーパミンシナプス活性から選択される少なくとも1つのモノアミン作動性シナプス活性である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記運動障害がトゥレット症候群である、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
前記運動障害がチックである、請求項15から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記第一の化合物がMOP受容体アンタゴニストである、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第二の化合物が、選択的セロトニン再取込みインヒビター(SSRI)又は特異的5−HT受容体アンタゴニストである、請求項15から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記第一の化合物がナルトレキソンであり、前記第二の化合物がフルオキセチンである、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記第一の化合物がナルトレキソンであり、前記第二の化合物がブプロピオンである、請求項15から18のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−517393(P2009−517393A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542469(P2008−542469)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/045416
【国際公開番号】WO2007/064586
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(505401698)オレキシジェン・セラピューティクス・インコーポレーテッド (13)
【Fターム(参考)】