説明

不揮発性メモリの初期化装置および初期化方法

【課題】不揮発性メモリの初期化の手順の簡略化を図るとともに検査装置を検査に必要な最少限の構成とする。
【解決手段】予め不揮発性メモリの特定の値を書き換える信号を電子制御装置に入力し、電源投入により不揮発性メモリに対してイニシャル処理を行い、イニシャル処理で不揮発性メモリの初期化が必要と判断されたとき、前記書き換え信号により、不揮発性メモリに対して不揮発性メモリの特定の値を書き換える初期化処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両等に搭載される電子制御装置に用いられる不揮発性メモリを初期化するための不揮発性メモリの初期化装置および初期化方法の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のエンジン制御、変速機制御、クラッチ制御、チェンジレバー制御等の種々の制御には電子制御装置(ECU)が多々用いられている。このECUとして、不揮発性メモリ(EEPROM)を用いたECUが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載のECUに用いられているEEPROMには、制御中に習得した学習値やシステムの故障を判別するための故障コード(ダイヤグコード)等が記憶されている。
【0003】
ところで、EEPROMは、ECU組立時には何も記録されていない状態のため、最初の電源投入時に記憶すべきデータをイニシャライズする初期値を有している。また、ECUを搭載した車両等のの工場出荷時に検査装置により検査が行われるが、この検査時に検査装置により、検査されるEEPROMには種々の不適切な学習値が記録されたり、種々の不適切なダイヤグコードが記録されたりする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4281222号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、検査時にこのような種々の学習値や種々のダイヤグコードが記録されると、検査終了時にこれらの学習値をリセットしたり、ダイヤグコードを消去したりして検査を終了する必要がある。更に、学習値のリセット後やダイヤグコードの消去後に再び新たな不適切な学習値や新たな不適切なダイヤグコードがEEPROMに記録されないようにするため、検査終了時に再び学習したり、故障を判定したりしないような検査手順や検査装置が必要となる。このため、EEPROMの初期化の手順が煩雑となるばかりでなく、検査装置の構成が複雑となるという問題がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、不揮発性メモリの初期化の手順の簡略化を図るとともに検査装置を検査に必要な最少限の構成とすることのできる不揮発性メモリの初期化装置および初期化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述の課題を解決するために、本発明に係る不揮発性メモリの初期化装置は、予め不揮発性メモリの特定の値を書き換える信号が入力されているとともに、電源投入時に前記不揮発性メモリに対してイニシャル処理を行う前記不揮発性メモリイニシャル処理手段と、前記不揮発性メモリイニシャル処理手段による前記イニシャル処理で前記不揮発性メモリの初期化が必要と判断されたとき、前記信号により、前記不揮発性メモリに対して前記不揮発性メモリの特定の値を書き換える初期化処理を行う不揮発性メモリ初期化処理手段とを有することを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る不揮発性メモリの初期化方法は、予め不揮発性メモリの特定の値を
書き換える信号を電子制御装置に入力し、電源投入により前記不揮発性メモリに対してイニシャル処理を行い、前記イニシャル処理で前記不揮発性メモリの初期化が必要と判断されたとき、前記信号により、前記不揮発性メモリに対して前記不揮発性メモリの特定の値を書き換える初期化処理を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
このように構成された本発明に係る不揮発性メモリの初期化装置および初期化方法によれば、予め不揮発性メモリの特定の数値を書き換える信号を不揮発性メモリイニシャル処理手段に入力しておき、その後電源を投入することにより、不揮発性メモリイニシャル処理手段により不揮発性メモリのイニシャル処理が行われるとともに、不揮発性メモリ初期化手段により不揮発性メモリの初期化処理が行われる。これにより、例えば工場出荷時の検査前に前述の特定の数値を書き換える信号を不揮発性メモリイニシャル処理手段に入力しておくことで、検査後に電源を投入するだけで不揮発性メモリのイニシャル処理および初期化処理を自動的に行うことができる。したがって、不揮発性メモリの数値が書き換えられて、検査時に記録された不適切な学習値が自動的にリセットすることができるとともに不適切なダイヤグコードを自動的に消去することができる。また、学習値のリセット後やダイヤグコードの消去後に再び新たな不適切な学習値や新たな不適切なダイヤグコードを不揮発性メモリに記録されることも防止することができる。
【0010】
このように、検査後に電源を投入するだけで不揮発性メモリが自動的に初期化されるだけで、特別な検査手順や特別な検査装置を不要にすることができる。したがって、不揮発性メモリの初期化の手順を簡略化することが可能となるとともに、検査作業を軽減することが可能となり、更には、検査装置を検査に必要な最少限の簡単な構成にすることが可能となる。
【0011】
また、検査時に実車相当の負荷を必要としなく、車種や車型によらず同じ電子制御装置は同じ検査装置で検査することが可能となる。更に、1つの操作つまり電源投入で不揮発性メモリのすべてのデータの初期化を保障することができ、データの初期化漏れの可能性を低減することができるとともに、作業を更に一層軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る不揮発性メモリの初期化装置の実施の形態の一例を示すブロック図である。
【図2】EEPROMのイニシャル処理のフローを示す図である。
【図3】EEPROMの初期化処理のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明に係る不揮発性メモリの初期化装置の実施の形態の一例を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すように、この例の不揮発性メモリの初期化装置1は、例えば車両に搭載される電子制御装置(ECU)2に配設されるとともに、このECU2に用いられる不揮発性メモリ(EEPROM)3に対して初期化処理を行う。この不揮発性メモリの初期化装置1は、EEPROMイニシャル処理手段4、およびEEPROM初期化手段5を有している。EEPROMイニシャル処理手段4は、イグニッションキースイッチ6を介して電源7に電気的に接続可能とされている。
【0015】
EEPROMイニシャル処理手段4によりEEPROM3のイニシャル処理が行われるとともに、EEPROM初期化手段5によりEEPROM3の初期化処理が行われる。E
EPROM3のイニシャル処理にあたっては、車両の工場出荷時の車両の検査前の工程で、イグニッションキースイッチ6をオンすることで電源7が投入され、EEPROM3の特定の数値を書き換える信号をEEPROMイニシャル処理手段4に入力しておく。そして、検査対象となる車両の検査が行われて検査結果が得られる。このとき、検査装置によりEEPROM3に種々の不適切な学習値が記録されたり、種々の不適切なダイヤグコードが記録されたりする。検査終了によりイグニッションキースイッチ6がオフにされて電源7が遮断される。そして、再びイグニッションキースイッチ6をオンすることで電源7が投入される。これにより、EEPROMイニシャル処理手段4によりEEPROM3のイニシャル処理が行われるとともに、EEPROM初期化手段5によりEEPROM3の初期化処理が行われる。これらのEEPROM3のイニシャル処理および初期化処理により、EEPROM3の数値が書き換えられて、検査時に記録された不適切な学習値が自動的にリセットされるとともに不適切なダイヤグコードが自動的に消去される。また、学習値のリセット後やダイヤグコードの消去後に再び新たな不適切な学習値や新たな不適切なダイヤグコードがEEPROM3に記録されることがなくなる。
【0016】
図2はEEPROMのイニシャル処理のフローを示す図であり、図3はEEPROMの初期化処理のフローを示す図である。
図2に示すように、EEPROM3のイニシャル処理は、工場出荷時の検査終了後にイグニッションキースイッチ6がオンされて電源7が投入されると、EEPROMのイニシャル処理が開始される。まずステップS1でEEPROM3の複数箇所と不揮発性メモリの初期化装置1に保存されている特定の数値とが一致する否かが判断される。EEPROM3の複数箇所と不揮発性メモリの初期化装置1の特定の数値とが一致すると判断されると、ステップS2で一致した特定の数値とイニシャル処理を実行するプログラムに定義した特定の数値とが一致するか否かが判断される。不揮発性メモリの初期化装置1に保存されている特定の数値とプログラムの特定の数値とが一致すると判断されると、ステップS3でEEPROM3の保存データのチェック事項を確認するとともに、保存データの正誤が判断される。EEPROM3の保存データが正しいと判断されると、ステップS4でEEPROM3の保存データが読み出され、読み出された保存データが確認された後、EEPROM3のイニシャル処理が終了する。
【0017】
ステップS1でEEPROM3の複数箇所と不揮発性メモリの初期化装置1の特定の数値とが一致しないと判断されると、ステップS5でEEPROM3に保存されている制御データが強制的に初期化される。つまり、イニシャル処理でEEPROM3の初期化が必要と判断されたとき、EEPROM3の初期化処理が行われる。図3に示すように、この制御データの初期化は、まずステップS6で初期化実行条件が成立しているか否かが判断される。初期化実行条件が成立していると判断されると、工場出荷時の検査前に予め入力されている書き換え信号により、ステップS7でEEPROMの特定の数値が書き換えられる。これにより、EEPROM3の初期化が終了するとともに、EEPROM3のイニシャル処理が終了する。また、ステップS6で初期化実行条件が成立していないと判断されると、そのままEEPROM3の初期化が終了するとともに、EEPROM3のイニシャル処理が終了する。
【0018】
更に、ステップS2で不揮発性メモリの初期化装置1に保存されている特定の数値とプログラムの特定の数値とが一致しないと判断されると、ステップS5に移行し、ステップS5以降の処理が行われる。更に、ステップS3でEEPROM3の保存データが正しくないと判断されると判断されると、同様にステップS5に移行し、ステップS5以降の処理が行われる。
【0019】
この例の不揮発性メモリの初期化装置1によれば、予めEEPROM3の特定の数値を書き換える信号をEEPROMイニシャル処理手段4に入力しておき、その後電源を投入
することにより、EEPROMイニシャル処理手段4によりEEPROM3のイニシャル処理が行われるとともに、EEPROM初期化手段5によりEEPROM3の初期化処理が行われる。これにより、例えば工場出荷時の検査前に前述の特定の数値を書き換える信号をEEPROMイニシャル処理手段4に入力しておくことで、検査後に電源を投入するだけでEEPROM3のイニシャル処理および初期化処理を自動的に行うことができる。したがって、EEPROM3の数値が書き換えられて、検査時に記録された不適切な学習値が自動的にリセットすることができるとともにダイヤグコードを自動的に消去することができる。また、学習値のリセット後やダイヤグコードの消去後に再び新たな学習値や新たなダイヤグコードをEEPROM3に記録されることも防止することができる。
【0020】
このように、検査後に電源を投入するだけでEEPROM3が自動的に初期化されるだけで、特別な検査手順や特別な検査装置を不要にすることができる。したがって、EEPROMの初期化の手順を簡略化することが可能となるとともに、検査作業を軽減することが可能となり、更には、検査装置を検査に必要な最少限の簡単な構成にすることが可能となる。
【0021】
また、検査時に実車相当の負荷を必要としなく、車種や車型によらず同じECUは同じ検査装置で検査することが可能となる。更に、1つの操作つまり電源投入でEEPROM3のすべてのデータの初期化を保障することができ、データの初期化漏れの可能性を低減することができるとともに、作業を更に一層軽減することができる。
【0022】
なお、本発明は前述の例に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術事項の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係る不揮発性メモリの初期化装置は、例えば車両等に搭載される電子制御装置に用いられる不揮発性メモリを初期化するための不揮発性メモリの初期化装置に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1…不揮発性メモリの初期化装置、2…電子制御装置(ECU)、3…不揮発性メモリ(EEPROM)、4…EEPROMイニシャル処理手段、5…EEPROM初期化手段、6…イグニッションキースイッチ、7…電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め不揮発性メモリの特定の値を書き換える信号が入力されているとともに、電源投入時に前記不揮発性メモリに対してイニシャル処理を行う前記不揮発性メモリイニシャル処理手段と、
前記不揮発性メモリイニシャル処理手段による前記イニシャル処理で前記不揮発性メモリの初期化が必要と判断されたとき、前記信号により、前記不揮発性メモリに対して前記不揮発性メモリの特定の値を書き換える初期化処理を行う不揮発性メモリ初期化処理手段と
を有することを特徴とする不揮発性メモリの初期化装置。
【請求項2】
予め不揮発性メモリの特定の値を書き換える信号を電子制御装置に入力し、
電源投入により前記不揮発性メモリに対してイニシャル処理を行い、
前記イニシャル処理で前記不揮発性メモリの初期化が必要と判断されたとき、前記信号により、前記不揮発性メモリに対して前記不揮発性メモリの特定の値を書き換える初期化処理を行う
ことを特徴とする不揮発性メモリの初期化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−108822(P2012−108822A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258563(P2010−258563)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000003333)ボッシュ株式会社 (510)
【Fターム(参考)】