説明

不斉水素化によるキラルなベータアミノ酸誘導体の製造方法

本発明は、生物活性分子の不斉合成に有用なエナンチオマー富化ベータアミノ酸誘導体の効率的な製造方法に関する。本方法は、キラルなフェロセニルジホスフィン配位子と錯形成した遷移金属前駆体の存在下、プロキラルなベータアミノアクリル酸誘導体基質のエナンチオ選択的水素化を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物活性分子の不斉合成に有用なエナンチオマー富化ベータアミノ酸誘導体の効率的な製造方法に関する。方法は、キラルなフェロセニルジホスフィン配位子と錯形成した遷移金属前駆体の存在下でプロキラルなベータ−アミノアクリル酸誘導体基質をエナンチオ選択的に水素化する処理を含む。
【背景技術】
【0002】
本発明は、*記号で示された立体中心に(R)−または(S)−配置を有している構造式I:
【0003】
【化16】

のエナンチオマー富化ベータアミノ酸誘導体を製造する効率的な方法を提供する。式中の、ZはOR、SRまたはNRであり;
はC1−8アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−C1−2アルキルまたはヘテロアリール−C1−2アルキルであり;
及びRの各々は独立に、水素、C1−8アルキル、アリール、または、アリール−C1−2アルキルであるか;あるいは、R及びRはそれらが結合している窒素原子と共に4−から7−員環の複素環系を形成しており、この系は場合によってはO、S及びNC1−4アルキルから選択された追加のヘテロ原子を含有しており;該複素環系が場合によっては5−から6−員環の飽和もしくは芳香族の炭素環系に縮合するか、または、O、S及びNC1−4アルキルから選択された1−2個のヘテロ原子を含有している5−から6−員環の飽和もしくは芳香族の複素環系に縮合しており、該縮合環系は未置換であるか、または、ヒドロキシ、アミノ、フルオロ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ及びトリフルオロメチルから選択された1−2個の置換基で置換されている。
【0004】
本発明の方法は、アミノ基が保護されていない構造式II:
【0005】
【化17】

のプロキラルなエナミンをキラルなフェロセニルジホスフィン配位子の存在下で遷移金属を触媒として不斉水素化することによって、構造式Iのキラルなベータアミノ酸誘導体をエナンチオ選択的に効率よく製造する方法に関する。
【0006】
キラルなフェロセニルジホスフィンをロジウムまたはイリジウム前駆体と錯形成する配位子として使用しエナミンの炭素−炭素二重結合(C=C−N)を不斉に還元する方法は、特許文献に記載されている(1996年10月8日にCiba−Geigy Corp.に許諾された米国特許第5,563,309号及びそれに関連した一群の特許と特許出願参照)。ロジウムMe−DuPHOS触媒錯体を使用するN−アシル化ベータアミノ酸に対する関連のアプローチも公開されている(2002年9月12日に公開されたDegussa AGに譲渡されたU.S.2002/0128509参照)。以下の刊行物もキラルなホスフィン配位子と錯形成したロジウム金属前駆体によるN−アシル化ベータ−アミノアクリル酸の不斉水素化を記載している:(1)T.Hayashiら,Bull.Chem.Soc.Japan,53:1136−1151(1980);(2)G.Zhuら,J.Org.Chem.,64:6907−6910(1999);及び、(3)W.D.Lubellら,Tetrahedron:Asymmetry,2:543−554(1991)。これらの文献に提示されているすべての実施例は、アセトアミド誘導体として保護されたベータアミノアクリル酸誘導体基質中にアミノ基を有している。アミン保護の必要性から反応系列に追加の2つの化学段階、すなわち、保護と脱保護との段階が導入される。また、保護された基質の合成も難しいであろう。本発明の方法では、不斉水素化反応させる基質中の第一級アミノ基を保護する必要性が免除され、方法が優れた反応性及びエナンチオ選択性を伴って進行する。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、構造式Iのエナンチオマー富化ベータアミノ酸誘導体の製造方法に関する。本方法は、第一級アミノ基が保護されていないプロキラルなベータアミノアクリル酸誘導体が、キラルなフェロセニルジホスフィン配位子と錯形成した遷移金属前駆体の存在下で不斉水素化されることを利用する。本発明の方法は、パイロットプラントまたは工業的規模でベータアミノ酸誘導体の製造に使用できる。ベータアミノ酸は多種多様な生物活性分子を製造するために有用である。
【0008】
本発明は、*記号で示された立体中心に(R)−または(S)−配置を有している構造式I:
【0009】
【化18】

のエナンチオマー富化ベータアミノ酸誘導体を対立エナンチオマーに比べて少なくとも70%のエナンチオマー過剰率で製造する効率的な方法を提供する。式中の、ZはOR、SRまたはNRであり;
はC1−8アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−C1−2アルキルまたはヘテロアリール−C1−2アルキルであり;
及びRの各々は独立に、水素、C1−8アルキル、アリール、または、アリール−C1−2アルキルであるか;あるいは、R及びRはそれらが結合している窒素原子と共に4−から7−員環の複素環系を形成しており、この系は場合によってはO、S、NH及びNC1−4アルキルから選択された追加のヘテロ原子を含有しており、該複素環は未置換であるか、または、オキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−4アルコキシ及びC1−4アルキルから独立に選択された1−3個の置換基で置換されており、これらのアルキル及びアルコキシは未置換であるかまたは1−5個のフッ素で置換されており;該複素環系が場合によっては5−から6−員環の飽和もしくは芳香族の炭素環系に縮合するか、または、O、S及びNC0−4アルキルから選択された1−2個のヘテロ原子を含有する5−から6−員環の飽和もしくは芳香族の複素環系に縮合しており、該縮合環系は未置換であるか、または、ヒドロキシ、アミノ、フッ素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ及びトリフルオロメチルから選択された1−2個の置換基で置換されている。
【0010】
本発明の方法は、構造式II:
【0011】
【化19】

のプロキラルなエナミンを適当な有機溶媒中、構造式III:
【0012】
【化20】

[式中、RはC1−4アルキルまたはアリールであり;
及びRの各々は独立にC1−6アルキル、C5−12シクロアルキルまたはアリールであり;
はC1−4アルキルまたは未置換のフェニルである]
のキラルなフェロセニルジホスフィン配位子と錯形成した遷移金属前駆体の存在下で水素化する段階を含む。
【0013】
本発明の方法は、遷移金属前駆体とキラルなフェロセニルジホスフィン配位子との触媒錯体が、(a)遷移金属種とキラルなフェロセニルジホスフィン配位子とを反応混合物に順次にまたは同時に添加することによってin situで形成されること、または、(b)単離を伴うかまたは伴うことなく予め形成し、次いで反応混合物に添加してもよいこと、を考察している。予め形成した触媒錯体は、式:
【0014】
【化21】

によって表され、式中の、Xはトリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロボレート及びヘキサフルオロホスフェートのような非配位アニオンを表し、Lはオレフィンのような中性配位子(または1,5−シクロオクタジエンもしくはノルボルナジエンのようなキレート化ジオレフィン)または溶媒分子(例えばMeOH及びTFE)である。オレフィンがアレーンである場合、錯体は式:
【0015】
【化22】

によって表される。
【0016】
Xがハロゲンを表す場合の予め形成した触媒錯体は、式:
【0017】
【化23】

によって表される。
【0018】
構造式IIIの配位子は当業界でJosiphos配位子として公知であり、Solvias AG,Basel,Switzerlandから市販されている。
【0019】
本発明の方法に有用な式IIIの配位子の1つの実施態様では、**記号で示される炭素立体中心が、式IV:
【0020】
【化24】

で示されるような(R)−配置を有している。
【0021】
本発明の方法に有用な式IIIの配位子の別の実施態様では、RがC1−2アルキル、R及びRがC1−4アルキル、及び、Rが未置換のフェニルである。この実施態様の1つのクラスでは、Rがメチルであり、R及びRがt−ブチルであり、Rが未置換のフェニルである。後者の配位子は当業界でt−ブチルJosiphosとして公知である。t−ブチルJosiphos配位子の市販形態は、S,R及びR,Sエナンチオマー形態である。R,S−t−ブチルJosiphosは以下の式Vで表される{(R)−1−[(S)−(ジフェニルホスフィノ)フェロセニル]}エチル−ジ−tert−ブチルホスフィンである:
【0022】
【化25】

式IIIのフェロセニルジホスフィン配位子は2個の不斉中心を有しており、本発明の方法は、単一エナンチオマー、個別ジアステレオマー、及び、これらのジアステレオマーの混合物の使用を包含する。本発明では、式IIの化合物を不斉水素化するために構造式IIIの配位子のこのような異性体の形態をすべて使用できる。水素化反応の表面的エナンチオ選択率は、反応に使用されている配位子の特定のジアステレオマーに左右されるであろう。式Iの化合物中に新しく形成された*記号で示す立体中心の配置を、式IIIのフェロセニルジホスフィン配位子のキラリティーの適切な選択によって調整することが可能である。
【0023】
本発明の方法に使用する基質の1つの実施態様では、Rがベンジルであり、ベンジルのフェニル基が未置換であるか、または、フッ素、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから成る群から選択された1−3個の置換基で置換されている。本発明方法の別の実施態様では、ZがORまたはNRである。この実施態様の1つのクラスでは、NRが構造式VI:
【0024】
【化26】

の複素環であり、式中の、Rは水素であるか、または、1−5個のフッ素で置換されるかもしくは未置換のC1−4アルキルである。この実施態様の別のクラスでは、ZがORである。
【0025】
本発明の方法に使用する基質の別の実施態様では、Rが6−メトキシ−ピリジン−3−イルであり、ZがC1−4アルコキシである。この実施態様の1つのクラスでは、Zがメトキシまたはエトキシである。
【0026】
本発明の不斉水素化反応は、適当な有機溶媒中で行う。適当な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール、フェノール、2,2,2−トリフルオロエタノール(TFE)のような低級アルカノール及びそれらの混合物;テトラヒドロフラン;メチルt−ブチルエーテル;及びそれらの混合物がある。
【0027】
反応に使用する反応温度は、約10℃−約90℃の範囲でよい。反応に好ましい温度範囲は約45℃−約65℃である。
【0028】
水素化反応は、約20psig−約1500psigの範囲の水素圧で行うことができる。好ましい水素圧範囲は約80psig−約200psigである。
【0029】
遷移金属前駆体は、[M(モノオレフィン)Cl]、[M(ジオレフィン)Cl]、[M(モノオレフィン)アセチルアセトネート]、[M(ジオレフィン)アセチルアセトネート]、[M(モノオレフィン)]X、または、[M(ジオレフィン)]Xであり、式中のXは、メタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート(Tf)、テトラフルオロボレート(BF)、ヘキサフルオロホスフェート(PF)及びヘキサフルオロアンチモネート(SbF)から成る群から選択された非配位アニオンであり、Mはロジウム(Rh)またはイリジウム(Ir)である。式中のMがルテニウム(Ru)を表す遷移金属前駆体は、[M(アレーン)Cl、[M(ジオレフィン)Clまたは[M(ジオレフィン)(η−2−メチル−1−プロペニル)]である。1つの実施態様では、遷移金属前駆体が[Rh(cod)Cl]、[Rh(ノルボルナジエン)Cl]、[Rh(cod)]Xまたは[Rh(ノルボルナジエン)]Xである。この実施態様の1つのクラスでは遷移金属前駆体が[Rh(cod)Cl]である。
【0030】
遷移金属前駆体と基質との比は、約0.01−約10mol%である。遷移金属前駆体と基質の好ましい比は、約0.05mol%−約0.4mol%である。
【0031】
不斉水素化される式IIのベータアミノアクリル酸誘導体基質は1つのオレフィン二重結合を含んでおり、別段の断りがない限り、E及びZ幾何異性体の双方またはそれらの混合物を出発材料として包含することを意味する。構造式IIの基質中に波形線で示した結合は、ZまたはE幾何異性体またはそれらの混合物を表す。
【0032】
本発明の1つの実施態様では、不斉水素化反応の基質となるベータアミノアクリル酸誘導体中の二重結合の幾何配置が、式VII:
【0033】
【化27】

に示すようなZ配置である。
【0034】
本発明の不斉水素化反応に用いられる式II(Z=ORまたはSR)のベータアミノアクリル酸エステルは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン及びそれらの水性混合物のような適当な有機溶媒中でアンモニア源と反応させることによって、構造式VI:
【0035】
【化28】

のベータ−ケトエステルから高収率で製造できる。
【0036】
アンモニア源としては、酢酸アンモニウム、水酸化アンモニウム及びギ酸アンモニウムがある。1つの実施態様ではアンモニア源が酢酸アンモニウムである。ベータ−ケトエステルは、D.W.Brooksら,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,18:72(1979)に記載されたようにして製造できる。
【0037】
ベータアミノアクリルアミドは、Org.Syn.Collect.,Vol.3,p.108に記載されたようにして対応するエステルからアミド交換によって製造できる。
【0038】
本発明の別の実施態様は、***記号で示された立体中心に(R)−配置を有している構造式1:
【0039】
【化29】

[式中、
Arはフッ素、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから成る群から独立に選択された1−5個の置換基で置換されるかまたは未置換のフェニルであり;
は水素、または、1−5個のフッ素で置換されるかもしくは未置換のC1−4アルキルである]
の化合物を、対立(S)配置を有しているエナンチオマーに比べて少なくとも70%のエナンチオマー過剰率で製造する方法に関する。この方法は、
(a)構造式2:
【0040】
【化30】

の化合物を、適当な有機溶媒中で構造式3:
【0041】
【化31】

の化合物をアンモニア源で処理することによって製造する段階と;
(b)構造式2:
【0042】
【化32】

の化合物を、適当な有機溶媒中、ロジウム金属前駆体と構造式IV:
【0043】
【化33】

[式中、RはC1−4アルキルまたはアリールであり;
及びRの各々は独立にC1−6アルキル、C5−12シクロアルキルまたはアリールであり;
はC1−4アルキルまたは未置換のフェニルである]
のキラルなフェロセニルジホスフィンとの存在下で水素化する段階とを含む。
【0044】
この実施態様の1つのクラスでは、Arが2,5−ジフルオロフェニルまたは2,4,5−トリフルオロフェニルである。このクラスのサブクラスでは、Rがトリフルオロメチルである。
【0045】
この実施態様の別のクラスでは、ロジウム金属前駆体がクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー{[Rh(cod)Cl]}である。
【0046】
この実施態様の別のクラスでは、Rがメチルであり、R及びRの双方がt−ブチルであり、Rが未置換のフェニルである。このクラスのサブクラスでは、ロジウム金属前駆体がクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマーである。
【0047】
この実施態様のまた別のクラスでは、Rがメチルであり、R及びRの双方がt−ブチルであり、Rが未置換のフェニルであり、Arが2,5−ジフルオロフェニルまたは2,4,5−トリフルオロフェニルであり、Rがトリフルオロメチルであり、ロジウム金属前駆体がクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマーである。
【0048】
別の実施態様では、構造式1の化合物が90%を上回るエナンチオマー過剰率で得られる。この実施態様の1つのクラスでは、構造式1の化合物が95%を上回るエナンチオマー過剰率で得られる。
【0049】
構造式1の化合物はWO03/004498(公開日2003年1月16日)に、II型糖尿病の治療に有用なジペプチジルペプチダーゼ−IVのインヒビターとして開示されている。
【0050】
本発明の別の実施態様は、構造式1の化合物の製造に有用な構造式2:
【0051】
【化34】

の構造的に新規な中間体を含む。式中の、Arは、フッ素、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから成る群から独立に選択された1−5個の置換基で置換されるかまたは未置換のフェニルであり、Rは、水素であるか、または、1−5個のフッ素で置換されるかもしくは未置換のC1−4アルキルである。
【0052】
式2の新規な中間体のこの実施態様の1つのクラスでは、Arが2,5−ジフルオロフェニルまたは2,4,5−トリフルオロフェニルであり、Rがトリフルオロメチルである。
【0053】
本出願を通じて、以下の用語は以下に定義の意味を有している。
【0054】
“%エナンチオマー過剰率”(略号“ee”)という用語は、多いほうのエナンチオマーの%から少ないほうのエナンチオマーの%を減算した値を意味する。即ち、70%エナンチオマー過剰率は、一方のエナンチオマーが85%で他方が15%であることに相当する。“エナンチオマー過剰率”という用語は“光学純度”という用語と同義である。
【0055】
本発明の方法は、構造式Iの化合物を典型的には70%eeを上回る高い光学純度で提供する。1つの実施態様では、式Iの化合物が80%eeよりも高い光学純度で得られる。この実施態様の1つのクラスでは、式Iの化合物が90%eeよりも高い光学純度で得られる。このクラスの1つのサブクラスでは、式Iの化合物が95%eeよりも高い光学純度で得られる。
【0056】
“エナンチオ選択的”という用語は、一方のエナンチオマーが他方よりも迅速に製造され(または破壊され)その結果として生成物の混合物中に一方のエナンチオマーが優勢に存在する反応を意味する。
【0057】
上記に特定したアルキル基は、指定された長さを有しており直鎖状または分枝状の配置で存在するアルキル基を包含すると理解されたい。このようなアルキル基の代表例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、イソヘキシルなどである。アルキル基は未置換でもよく、または、ハロゲン、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノカルボニル、アミノ、C1−4アルコキシ及びC1−4アルキルチオから成る群から独立に選択された1−3個の基で置換されていてもよい。
【0058】
“シクロアルキル”という用語は、総炭素原子数が5−12個またはこの範囲内の任意の数であるアルカンの環状リング(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、など)を意味すると理解されたい。
【0059】
“ハロゲン”という用語は、ハロゲン原子、即ち、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を包含すると理解されたい。
【0060】
略号“cod”は“1,5−シクロオクタジエン”を意味する。
【0061】
“アリール”という用語は、フェニル及びナフチルを包含する。“アリール”は、未置換であるか、または、フルオロ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、アミノ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから独立に選択された1−5個の置換基で置換されている。
【0062】
“アレーン”という用語は、ベンゼン、ナフタレン、及び、o−、m−またはp−イソプロピルトルエン(o、mまたはp−シメン)を意味する。
【0063】
“オレフィン”という用語は、1つまたは複数の二重結合を含む非環状または環状の炭化水素を意味し、芳香族環状炭化水素を含む。この用語の非限定例は、1,5−シクロオクタジエン及びノルボルナジエン(“nbd”)である。
【0064】
“ヘテロアリール”という用語は、O、S及びNから選択された少なくとも1つの環ヘテロ原子を有している5−または6−員環の芳香族複素環を意味する。ヘテロアリールはまた、アリール、シクロアルキル及び芳香族でない複素環のような別の種類の環に縮合したヘテロアリールも包含する。ヘテロアリール基の非限定例は、ピロリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、オキサゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、チアジアゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フリル、トリアジニル、チエニル、ピリミジニル、ピラジニル、ベンゾイソキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ジヒドロベンゾフラニル、インドリニル、ピリダジニル、インダゾリル、イソインドリル、ジヒドロベンゾチエニル、インドリジニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ナフチリジニル、カルバゾリル、ベンゾジオキソリル、キノキサリニル、プリニル、フラザニル、イソベンジルフラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、インドリル、イソキノリル及びジベンゾフラニルである。“ヘテロアリール”は未置換であるか、または、フルオロ、ヒドロキシ、トリフルオロメチル、アミノ、C1−4アルキル及びC1−4アルコキシから独立に選択された1−5個の置換基で置換されている。
【0065】
上記新規な方法を使用した代表的な実験手順を以下に詳細に示す。以下の実施例は説明のみを目的とするものであり、本発明の方法はこれらの特定化合物を製造する特定の条件に限定されないことを理解されたい。
【実施例1】
【0066】
【化35】

【0067】
(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン(2−5)
3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン,塩酸塩(1−4)の製造
【0068】
【化36】


【0069】
段階Aビスヒドラジド(1−1)の製造
ヒドラジン(20.1g,水中に35wt%,0.22mol)を310mLのアセトニトリルと混合した。31.5gのトリフルオロ酢酸エチル(0.22mol)を60分間で添加した。内部温度が14℃から25℃に上昇した。得られた溶液を22−25℃で60分間エージングした。溶液を7℃に冷却した。17.9gの50wt%NaOH水溶液(0.22mol)と25.3gのクロロアセチルクロリド(0.22mol)とを16℃よりも低温で130分を要して同時に添加した。反応が完了すると、混合物を27〜30℃及び26〜27Hgの真空下で真空蒸留して水及びエタノールを除去した。蒸留中に一定量(約500mL)が維持されるように720mLのアセトニトリルをゆっくりと加えた。スラリーを濾過して塩化ナトリウムを除去した。ケーキを約100mLのアセトニトリルで洗浄した。溶媒を除去すると、ビス−ヒドラジド1−1が得られた(43.2g、収率96.5%、HPLCアッセイによって94.4面積%純粋)。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ4.2(s,2H),10.7(s,1H),及び11.6(s,1H)ppm。
13C−NMR(100MHz,DMSO−d):δ41.0,116.1(q,J=362Hz),155.8(q,J=50Hz),及び165.4ppm。
【0070】
段階B5−(トリフルオロメチル)−2−(クロロメチル)−1,3,4−オキサジアゾール(1−2)の製造
ACN(82mL)中の段階Aで得られたビスヒドラジド1−1(43.2g,0.21mol)を5℃に冷却した。10℃よりも低い温度を維持しながらオキシ塩化リン(32.2g,0.21mol)を添加した。混合物を80℃に加熱し、HPLCで1−1が2面積%未満を示すまでこの温度で24時間エージングした。別の容器で、260mLのIPAcと250mLの水とを混合し、0℃に冷却した。10℃未満の内部温度を維持している反応停止剤に反応スラリーを加えた。添加後、混合物を30分間激しく撹拌し、温度を室温に上げて、水層を分離した。次に、有機層を215mLの水、次いで215mLの5wt%の炭酸水素ナトリウム水溶液、最後に215mLの20wt%のブライン水溶液で洗浄した。処理後のHPLCアッセイ収率は、86−92%であった。55℃、75−80mmHgで蒸留することによって揮発分を除去すると、油が得られた。この油はそれ以上精製することなく段階Cで直接に使用できた。あるいは、生成物を蒸留によって精製すると1−2が70−80%の収率で得られる。
H−NMR(400MHz,CDCl):δ4.8(s,2H)ppm。
13C−NMR(100MHz,CDCl):δ32.1,115.8(q,J=337Hz),156.2(q,J=50Hz)及び164.4ppm。
【0071】
段階CN−[(2Z)−ピペラジン−2−イルイデン]トリフルオロアセトヒドラジド(1−3)の製造
−20℃に冷却したメタノール(150mL)中のエチレンジアミン(33.1g,0.55mol)の溶液に、段階Bで得られた蒸留オキサジアゾール1−2(29.8g,0.16mol)を−20℃の内部温度を維持しながら加えた。添加の完了後、得られたスラリーを−20℃で1時間エージングした。次にエタノール(225mL)を充填し、スラリーを−5℃までゆっくりと加温した。−5℃で60分間維持した後、スラリーを濾過し、−5℃のエタノール(60mL)で洗浄した。アミジン1−3が白色固体として72%の収率で得られた(24.4g,HPLCによって99.5面積wt%純粋)。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ2.9(t,2H),3.2(t,2H),3.6(s,2H),及び8.3(b,1H)ppm。
13C−NMR(100MHz,DMSO−d):δ40.8,42.0,43.3,119.3(q,J=350Hz),154.2及び156.2(q,J=38Hz)ppm。
【0072】
段階D3−(トリフルオロメチル)−5,6,7,8−テトラヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン塩酸塩(1−4)の製造
110mLのメタノール中のアミジン1−3(27.3g,0.13mol)の懸濁液を55℃に加温した。この温度で37%の塩酸(11.2mL,0.14mol)を15分間で添加した。添加中、全部の固体が溶解し、透明な溶液となった。反応物を30分間エージングした。溶液を20℃に放冷し、この温度でシード床が形成されるまでエージングした(10分から1時間)。300mLのMTBEを20℃で1時間を要して充填した。得られたスラリーを2℃に冷却し、30分間エージングし、濾過した。固体を50mLのエタノール:MTBE(1:3)で洗浄し、真空下45℃で乾燥した。トリアゾール1−4の収量は26.7gであった(HPLCによって99.5面積wt%純粋)。
H−NMR(400MHz,DMSO−d):δ3.6(t,2H),4.4(t,2H),4.6(s,2H)及び10.6(b,2H)ppm;
13C−NMR(100MHz,DMSO−d):δ39.4,39.6,41.0,118.6(q,J=325Hz),142.9(q,J=50Hz),及び148.8ppm。
【0073】
【化37】

【0074】
段階A4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−オン(2−3)の製造
2,4,5−トリフルオロフェニル酢酸(2−1)(150g,0.789mol)、Meldrum酸(125g,0.868mol)及び4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(7.7g,0.063mol)を5L容の三つ口フラスコに充填した。室温のN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)(525mL)を一回で添加して固体を溶解した。40℃よりも低温に維持しながら室温のN,N−ジイソプロピルエチルアミン(282mL,1.62mol)を一回で添加した。温度を0−5℃に維持しながらピバロイルクロリド(107mL,0.868mol)を1−2時間で滴下した。反応混合物を5℃で1時間エージングした。40−50℃のトリアゾール塩酸塩1−4(180g,0.789mol)を一回で添加した。反応溶液を70℃で数時間エージングした。次に5%の炭酸水素ナトリウム水溶液(625mL)を20−45℃で滴下した。バッチをシードし、20−30℃で1−2時間エージングした。次いで、追加量の525mLの5%炭酸水素ナトリウム水溶液を2−3時間で滴下した。室温で数時間エージングした後、スラリーを0−5℃に冷却し、1時間エージングした後で固体を濾過した。湿性ケーキを20%の水性DMAc(300mL)、次いで追加量の20%水性DMAc(400mL)で2回、最後に水(400mL)で置換洗浄した。ケーキを室温で吸引乾燥した。最終生成物2−3の単離収率は89%であった。
【0075】
段階B(2Z)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタ−2−エン−2−アミン(2−4)の製造
5L容の丸底フラスコに、メタノール(100mL)、ケトアミド2−3(200g)及び酢酸アンモニウム(110.4g)を充填した。次に、メタノール(180mL)と28%水酸化アンモニウム水溶液(58.6mL)とを添加した。添加中の温度は30℃よりも低温に維持した。追加量のメタノール(100mL)を反応混合物に添加した。混合物を還流温度に加熱し、2時間エージングした。反応混合物を室温に冷却し、次いで氷浴で約5℃に冷却した。30分後、固体を濾過し、乾燥すると、2−4が固体として得られた(180g);m.p.271.2℃。
【0076】
段階C(2R)−4−オキソ−4−[3−(トリフルオロメチル)−5,6−ジヒドロ[1,2,4]トリアゾロ[4,3−a]ピラジン−7(8H)−イル]−1−(2,4,5−トリフルオロフェニル)ブタン−2−アミン(2−5)の製造
500mL容のフラスコに、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー([Rh(cod)Cl](292mg,0.59mmol)と(R,S)t−ブチルJosiphos(708mg,1.31mmol)とを窒素雰囲気下で充填した。次に、ガス抜きしたMeOH(200mL)を添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。4L容の水素化装置にエナミンアミド2−4(118g,0.29mol)をMeOH(1L)と共に充填した。スラリーをガス抜きした。次に、触媒溶液を窒素下で水素化装置に移した。3回ガス抜きした後、エナミンアミドを200psiの水素ガス下、50℃で13時間水素化した。HPLCで測定したアッセイ収率は93%、光学純度は94%eeであった。
【0077】
光学純度を以下のようにして更に高めた。水素化反応から回収したメタノール溶液(180mLのMeOH中に18g)を濃縮し、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)(45mL)に交換した。この溶液に、HPO水溶液(0.5M,95mL)を添加した。層を分離した後、水層に3NのNaOH(35mL)を添加し、次いでMTBE(180mL+100mL)で抽出した。MTBE溶液を濃縮し、溶媒を高温トルエン(180mL,約75℃)に交換した。次に高温トルエン溶液をゆっくりと(5−10時間)0℃まで放冷した。濾過によって結晶を単離した(13g,収率72%,98−99%ee);m.p.114.1−115.7℃。
H NMR(300MHz,CDCN):δ7.26(m),7.08(m),4.90(s),4.89(s),4.14(m),3.95(m),3.40(m),2.68(m),2.49(m),1.40(bs)。
【0078】
化合物2−5はアミド結合回転異性体として存在する。炭素−13シグナルが十分に分解しないので、指示がなければ、多いほう(major)の回転異性体と少ないほう(minor)の回転異性体とを一緒の群にする:13C NMR(CDCN):δ171.8,157.4(ddd,JCF=242.4,9.2,2.5Hz),152.2(major),151.8(minor),149.3(ddd;JCF=246.7,14.2,12.9Hz),147.4(ddd,JCF=241.1,12.3,3.7Hz),144.2(q,JCF=38.8Hz),124.6(ddd,JCF=18.5,5.9,4.0Hz),120.4(dd,JCF=19.1,6.2Hz),119.8(q,JCF=268.9Hz),106.2(dd,JCF=29.5,20.9Hz),50.1,44.8,44.3(minor),43.2(minor),42.4,41.6(minor),41.4,39.6,38.5(minor),36.9。
【0079】
生成物への変換パーセントを測定するためには、以下の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)条件を使用した:
カラム:Waters Symmetry C18,250mm×4.6mm
溶出剤:溶媒A:0.1vol%のHClO/H
溶媒B:アセトニトリル
勾配: 0分 75%A:25%B
10分 25%A:75%B
12.5分 25%A:75%B
15分 75%A:25%B
流速:1mL/分
注入量:10μL
UV検出:210nm
カラム温度:40℃
保持時間:化合物2−4:9.1分
化合物2−5:5.4分
tBu Josiphos:8.7分
光学純度を測定するためには、以下の高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)条件を使用した:
カラム:Chirapak,AD−H,250mm×4.6mm
溶出剤:溶媒A:ヘプタン中に0.2vol%のジエチルアミン
溶媒B:エタノール中に0.1vol%のジエチルアミン
アイソクラチック処理時間:18分
流速:0.7mL/分
注入量:7μL
UV検出:268nm
カラム温度:35℃
保持時間:(R)−アミン2−5:13.8分
(S)−アミン:11.2分。
【実施例2】
【0080】
【化38】

メチル(3S)−3−アミノ−3−(6−メトキシピリジン−3−イル)プロパノエート(3−2)
7mLのバイアルに、クロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマー{[Rh(cod)Cl]}(14.2mg,0.029mmol)と(R,S)−t−Bu Josiphos(31.3mg,0.058mmol)とを窒素雰囲気下で充填した。次にガス抜きしたメタノール(1mL)を加えて、触媒錯体を室温で45分間撹拌した。別の2mLバイアルで、エナミンエステル3−1(0.1g,0.5mmol)を0.9mLの蒸留2,2,2−トリフルオロエタノールに溶解した。同じバイアルに、調製した0.1mLの触媒溶液を加えると1mol%触媒添加量となり、90/10の2,2,2−トリフルオロエタノール/メタノール混合物が得られた。次に、水素化バイアルをシールし、窒素下の水素化ボンベに移した。水素によって3回ガス抜きした後、エナミンエステルを90−psig−水素ガス下、50℃で13.5時間水素化した。HPLCで測定したアッセイ収率は88%、光学純度は89%eeであった。
H NMR(400MHz,CDCl):δ1.81(bs,2H),2.64(m,2H),3.68(s,3H),3.91(s,3H),4.4(dd,1H),6.72(d,1H),7.62(dd,1H),及び8.11(s,1H)ppm。
【0081】
(実施例3−6)
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
*記号で示された立体中心に(R)−または(S)−配置を有している構造式I:
【化1】

[式中、
ZはOR、SRまたはNRであり;
はC1−8アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−C1−2アルキルまたはヘテロアリール−C1−2アルキルであり;
及びRの各々は独立に、水素、C1−8アルキル、アリール、または、アリール−C1−2アルキルであるか;あるいは、R及びRはそれらが結合している窒素原子と共に4−から7−員環の複素環系を形成しており、この系は場合によってはO、S、NH及びNC1−4アルキルから選択された追加のヘテロ原子を含有しており、前記複素環は未置換であるか、または、オキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−4アルコキシ及びC1−4アルキルから独立に選択された1−3個の置換基で置換されており、これらのアルキル及びアルコキシは未置換であるかまたは1−5個のフッ素で置換されており;前記複素環系が場合によっては5−から6−員環の飽和もしくは芳香族の炭素環系に縮合しているか、または、O、S及びNC0−4アルキルから選択された1−2個のヘテロ原子を含有している5−から6−員環の飽和もしくは芳香族の複素環系に縮合しており、前記縮合環系は未置換であるか、または、ヒドロキシ、アミノ、フッ素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ及びトリフルオロメチルから選択された1−2個の置換基で置換されている]
の化合物を対立エナンチオマーに比べて少なくとも70%のエナンチオマー過剰率で製造する方法であって、構造式II:
【化2】

のプロキラルなエナミンを適当な有機溶媒中、構造式III:
【化3】

[式中、RはC1−4アルキルまたはアリールであり;
及びRの各々は独立にC1−6アルキル、C5−12シクロアルキルまたはアリールであり;
はC1−4アルキルまたは未置換のフェニルである]
のキラルなフェロセニルジホスフィン配位子と錯形成した遷移金属前駆体の存在下で水素化する段階を含む方法。
【請求項2】
前記フェロセニルジホスフィン配位子が構造式IV:
【化4】

[式中、**記号で示された立体中心は(R)−配置を有している]
を有している請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がC1−2アルキルであり、R及びRがC1−4アルキルであり、Rが未置換のフェニルである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
がメチルであり、R及びRがt−ブチルであり、Rが未置換のフェニルである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
がベンジルであり、前記ベンジルのフェニル基は未置換であるかまたは、フッ素、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから成る群から選択された1−3個の置換基で置換されている請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ZがORまたはNRである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
NRが構造式VI:
【化5】

[式中、Rは水素であるかまたは1−5個のフッ素原子で置換されるかもしくは未置換のC1−4アルキルである]
の複素環である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属前駆体が[M(cod)Cl]、[M(ノルボルナジエン)Cl]、[M(cod)]Xまたは[M(ノルボルナジエン)]Xであり、Xがメタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェートまたはヘキサフルオロアンチモネートであり、Mがロジウムまたはイリジウムである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記遷移金属前駆体が[Rh(cod)Cl]である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
***記号で示された立体中心に(R)−配置を有している構造式1:
【化6】

[式中、
Arはフッ素、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから成る群から独立に選択された1−5個の置換基で置換されるかまたは未置換のフェニルであり;
は水素、または、1−5個のフッ素で置換されるかもしくは未置換のC1−4アルキルである]
の化合物を対立(S)−配置を有しているエナンチオマーに比べて少なくとも70%のエナンチオマー過剰率で製造する方法であって、構造式2:
【化7】

の化合物を適当な有機溶媒中、ロジウム金属前駆体と構造式IV:
【化8】

[式中、RはC1−4アルキルまたはアリールであり;
及びRの各々は独立にC1−6アルキル、C5−12シクロアルキルまたはアリールであり;
はC1−4アルキルまたは未置換のフェニルである]
のキラルなフェロセニルジホスフィンとの存在下で水素化する段階を含む方法。
【請求項11】
構造式2:
【化9】

の化合物を製造する段階であって、構造式3:
【化10】

の化合物を、適当な有機溶媒中、アンモニア源で処理する段階を更に含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
Arが2,5−ジフルオロフェニルまたは2,4,5−トリフルオロフェニルであり、Rがトリフルオロメチルである請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ロジウム金属前駆体が[Rh(cod)Cl]である請求項10に記載の方法。
【請求項14】
がメチルであり、R及びRの双方がt−ブチルであり、Rが未置換のフェニルである請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ロジウム金属前駆体が[Rh(cod)Cl]である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
がメチルであり、R及びRの双方がt−ブチルであり、Rが未置換のフェニルであり、Arが2,5−ジフルオロフェニルまたは2,4,5−トリフルオロフェニルであり、Rがトリフルオロメチルであり、ロジウム金属前駆体がクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマーである請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記アンモニア源が酢酸アンモニウムである請求項11に記載の方法。
【請求項18】
***記号で示された立体中心に(R)−配置を有している構造式1:
【化11】

[式中、
Arはフッ素、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから成る群から独立に選択された1−5個の置換基で置換されるかまたは未置換のフェニルであり;
は水素、または、1−5個のフッ素で置換されるかもしくは未置換のC1−4アルキルである]
の化合物を対立(S)−配置を有しているエナンチオマーに比べて少なくとも70%のエナンチオマー過剰率で製造する方法であって、
(a)構造式2:
【化12】

の化合物を、適当な有機溶媒中で構造式3:
【化13】

の化合物をアンモニア源で処理することによって製造する段階と;
(b)構造式2:
【化14】

の化合物を、適当な有機溶媒中でロジウム金属前駆体と構造式IV:
【化15】

[式中、RはC1−4アルキルまたはアリールであり;
及びRの各々は独立にC1−6アルキル、C5−12シクロアルキルまたはアリールであり;
はC1−4アルキルまたは未置換のフェニルである]
のキラルなフェロセニルジホスフィンとの存在下で水素化する段階とを含む方法。
【請求項19】
ZがORである請求項2に記載の方法。
【請求項20】
が6−メトキシ−ピリジン−3−イルであり、ZがC1−4アルコキシである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
Zがメトキシまたはエトキシである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
がメチルであり、R及びRがt−ブチルであり、Rがフェニルであり、前記遷移金属前駆体が[Rh(cod)Cl]である請求項21に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
*記号で示された立体中心に(R)−または(S)−配置を対立エナンチオマーに比べて少なくとも70%のエナンチオマー過剰率で有している構造式I:
【化1】

[式中、
ZはOR、SRまたはNRであり;
はC1−8アルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−C1−2アルキルまたはヘテロアリール−C1−2アルキルであり;
及びRの各々は独立に、水素、C1−8アルキル、アリール、または、アリール−C1−2アルキルであるか;あるいは、R及びRはそれらが結合している窒素原子と共に4−から7−員環の複素環系を形成しており、この系は場合によってはO、S、NH及びNC1−4アルキルから選択された追加のヘテロ原子を含有しており、前記複素環は未置換であるか、または、オキソ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−4アルコキシ及びC1−4アルキルから独立に選択された1−3個の置換基で置換されており、これらのアルキル及びアルコキシは未置換であるかまたは1−5個のフッ素で置換されており;前記複素環系が場合によっては5−から6−員環の飽和もしくは芳香族の炭素環系に縮合しているか、または、O、S及びNC0−4アルキルから選択された1−2個のヘテロ原子を含有している5−から6−員環の飽和もしくは芳香族の複素環系に縮合しており、前記縮合環系は未置換であるか、または、ヒドロキシ、アミノ、フッ素、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ及びトリフルオロメチルから選択された1−2個の置換基で置換されている]
の化合物を製造する方法であって、構造式II:
【化2】

のプロキラルなエナミンを適当な有機溶媒中、構造式III:
【化3】

[式中、RはC1−4アルキルまたはアリールであり;
及びRの各々は独立にC1−6アルキル、C5−12シクロアルキルまたはアリールであり;
はC1−4アルキルまたは未置換のフェニルである]
のキラルなフェロセニルジホスフィン配位子と錯形成した遷移金属前駆体の存在下で水素化する段階を含む方法。
【請求項2】
前記フェロセニルジホスフィン配位子が構造式IV:
【化4】

[式中、**記号で示された立体中心は(R)−配置を有している]
を有している請求項1に記載の方法。
【請求項3】
がC1−2アルキルであり、R及びRがC1−4アルキルであり、Rが未置換のフェニルである請求項2に記載の方法。
【請求項4】
がメチルであり、R及びRがt−ブチルであり、Rが未置換のフェニルである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
がベンジルであり、前記ベンジルのフェニル基は未置換であるかまたは、フッ素、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから成る群から選択された1−3個の置換基で置換されている請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ZがORまたはNRである請求項1に記載の方法。
【請求項7】
NRが構造式VI:
【化5】

[式中、Rは水素であるかまたは1−5個のフッ素原子で置換されるかもしくは未置換のC1−4アルキルである]
の複素環である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記遷移金属前駆体が[M(cod)Cl]、[M(ノルボルナジエン)Cl]、[M(cod)]Xまたは[M(ノルボルナジエン)]Xであり、Xがメタンスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェートまたはヘキサフルオロアンチモネートであり、Mがロジウムまたはイリジウムである請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記遷移金属前駆体が[Rh(cod)Cl]である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
***記号で示された立体中心に(R)−配置を対立(S)−配置を有しているエナンチオマーに比べて少なくとも70%のエナンチオマー過剰率で有している構造式1:
【化6】

[式中、
Arはフッ素、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから成る群から独立に選択された1−5個の置換基で置換されるかまたは未置換のフェニルであり;
は水素、または、1−5個のフッ素で置換されるかもしくは未置換のC1−4アルキルである]
の化合物を製造する方法であって、構造式2:
【化7】

の化合物を適当な有機溶媒中、ロジウム金属前駆体と構造式IV:
【化8】

[式中、RはC1−4アルキルまたはアリールであり;
及びRの各々は独立にC1−6アルキル、C5−12シクロアルキルまたはアリールであり;
はC1−4アルキルまたは未置換のフェニルである]
のキラルなフェロセニルジホスフィンとの存在下で水素化する段階を含む方法。
【請求項11】
構造式2:
【化9】

の化合物を製造する段階であって、構造式3:
【化10】

の化合物を、適当な有機溶媒中、アンモニア源で処理する段階を更に含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
Arが2,5−ジフルオロフェニルまたは2,4,5−トリフルオロフェニルであり、Rがトリフルオロメチルである請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ロジウム金属前駆体が[Rh(cod)Cl]である請求項10に記載の方法。
【請求項14】
がメチルであり、R及びRの双方がt−ブチルであり、Rが未置換のフェニルである請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ロジウム金属前駆体が[Rh(cod)Cl]である請求項14に記載の方法。
【請求項16】
がメチルであり、R及びRの双方がt−ブチルであり、Rが未置換のフェニルであり、Arが2,5−ジフルオロフェニルまたは2,4,5−トリフルオロフェニルであり、Rがトリフルオロメチルであり、ロジウム金属前駆体がクロロ(1,5−シクロオクタジエン)ロジウム(I)ダイマーである請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記アンモニア源が酢酸アンモニウムである請求項11に記載の方法。
【請求項18】
***記号で示された立体中心に(R)−配置を対立(S)−配置を有しているエナンチオマーに比べて少なくとも70%のエナンチオマー過剰率で有している構造式1:
【化11】

[式中、
Arはフッ素、トリフルオロメチル及びトリフルオロメトキシから成る群から独立に選択された1−5個の置換基で置換されるかまたは未置換のフェニルであり;
は水素、または、1−5個のフッ素で置換されるかもしくは未置換のC1−4アルキルである]
の化合物を製造する方法であって、
(a)構造式2:
【化12】

の化合物を、適当な有機溶媒中で構造式3:
【化13】

の化合物をアンモニア源で処理することによって製造する段階と;
(b)構造式2:
【化14】

の化合物を、適当な有機溶媒中でロジウム金属前駆体と構造式IV:
【化15】

[式中、RはC1−4アルキルまたはアリールであり;
及びRの各々は独立にC1−6アルキル、C5−12シクロアルキルまたはアリールであり;
はC1−4アルキルまたは未置換のフェニルである]
のキラルなフェロセニルジホスフィンとの存在下で水素化する段階とを含む方法。
【請求項19】
ZがORである請求項2に記載の方法。
【請求項20】
が6−メトキシ−ピリジン−3−イルであり、ZがC1−4アルコキシである請求項19に記載の方法。
【請求項21】
Zがメトキシまたはエトキシである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
がメチルであり、R及びRがt−ブチルであり、Rがフェニルであり、前記遷移金属前駆体が[Rh(cod)Cl]である請求項21に記載の方法。

【公表番号】特表2006−521354(P2006−521354A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507177(P2006−507177)
【出願日】平成16年3月15日(2004.3.15)
【国際出願番号】PCT/US2004/007793
【国際公開番号】WO2004/085378
【国際公開日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】