説明

不斉触媒アルドール反応生成物の製造方法

【課題】アルデヒド−アルデヒド間の不斉触媒アルドール反応において、求核剤としてアセトアルデヒドを用い、アルドール体を高い不斉収率で得ることが可能な不斉触媒アルドール反応生成物の製造方法を提供する。
【解決手段】不斉触媒アルドール反応における不斉触媒として、下記一般式(2)で表される不斉触媒又はそのエナンチオマーを用いる。


[式中、R,Rは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を示し、Rは、水素原子、シリル基、又はアルキル基を示し、Rは、水酸基の保護基を示し、nは0又は1を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不斉触媒アルドール反応生成物の製造方法に関し、より詳細には、アルデヒド−アルデヒド間の不斉触媒アルドール反応において、求核剤としてアセトアルデヒドを用いる不斉触媒アルドール反応生成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルドール反応は有機合成において重要な炭素−炭素結合生成反応である。特に、少量の不斉源から大量の光学活性体を得る不斉触媒アルドール反応については、現在世界中で活発に研究が行われている。
【0003】
ここで、アルデヒド−アルデヒド間のアルドール反応により得られるβ−ヒドロキシアルデヒド化合物は、医薬品、農薬等の合成中間体となり得る。特に、アセトアルデヒドを求核剤として用いた場合、反応生成物としてβ−ヒドロキシ−α−無置換アルデヒド化合物が得られるため、合成化学的に重要である。
【0004】
しかしながら、アセトアルデヒドは、求核的なアルデヒドとしても求電子的なアルデヒドとしても反応性が非常に高いため、その反応の制御は困難である。例えば、下記式(I)に示される反応を考えた場合、得られるアルドール体は求電子剤として優れているため、反応式(II)に示されるように、さらにアセトアルデヒドとアルドール反応を起こしてしまう。また、下記式(I)に示される反応で得られるアルドール体は、α位に置換基がないため、反応式(III)に示されるように、触媒と反応してエナミンを生成し、さらにアセトアルデヒドと反応してしまう。実際、非特許文献1においても、アセトアルデヒドに触媒を作用させると、アセトアルデヒドの三量体である5−ヒドロキシ−2−ヘキセナールが得られると報告されている。
【0005】
【化1】

【0006】
このように、アセトアルデヒドを求核剤とするアルドール反応は困難であったため、これまで間接的な方法が開発されてきた。例えば、非特許文献2〜4には、アセトアルデヒドを対応するシリルエノールエーテルに誘導し、酸又は塩基により活性化した後、アルドール反応を行う方法が開示されている。しかしながら、この方法では、アセトアルデヒドを対応するシリルエノールエーテルに誘導する必要があるため、より直接的な反応方法が望まれていた。
【非特許文献1】Cordova, A.; Notz, W.; Barbas, C. F. III; J. Org. Chem.; 2002, 67, p.301
【非特許文献2】Boxer, M. B.; Yamamoto, H.; J. Am. Chem. Soc.; 2006, 128, p.48
【非特許文献3】Boxer, M. B.; Yamamoto, H.; J. Am. Chem. Soc.; 2007, 129, p.2762
【非特許文献4】Denmark, S. E.; Bui, T.; J. Org. Chem.; 2005, 70, p.10190
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、アルデヒド−アルデヒド間の不斉触媒アルドール反応において、求核剤としてアセトアルデヒドを用い、アルドール体を高い不斉収率で得ることが可能な不斉触媒アルドール反応生成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた。その結果、特定の触媒を用いることにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下の通りである。
【0009】
(1) 下記一般式(1)で表されるアルデヒドとアセトアルデヒドとを、下記一般式(2)で表される不斉触媒又はそのエナンチオマーの存在下で反応させ、下記一般式(3)で表される化合物又はそのエナンチオマーを得ることを特徴とする不斉触媒アルドール反応生成物の製造方法。
【化2】

[式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルケニル基、アルコキシアルキニル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルコキシカルボニルアルケニル基、アルコキシカルボニルアルキニル基、アシル基、アシルアルキル基、アシルアルケニル基、アシルアルキニル基、アミド基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキルアルケニル基、シクロアルキルアルキニル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルケニル基、ヘテロシクロアルキルアルキニル基、シクロアルケニルアルキル基、シクロアルケニルアルケニル基、シクロアルケニルアルキニル基、ヘテロシクロアルケニルアルキル基、ヘテロシクロアルケニルアルケニル基、ヘテロシクロアルケニルアルキニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロアリールアルケニル基、又はヘテロアリールアルキニル基を示し、R,Rは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を示し、Rは、水素原子、シリル基、又はアルキル基を示し、Rは、水酸基の保護基を示し、nは0又は1を示す。]
【0010】
(2) 上記一般式(2)において、R,Rが置換基を有していてもよいアリール基であり、Rが水素原子であることを特徴とする(1)記載の不斉触媒アルドール反応生成物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る不斉触媒アルドール反応生成物の製造方法によれば、アルデヒド−アルデヒド間の不斉触媒アルドール反応において、求核剤としてアセトアルデヒドを用い、アルドール体を高い不斉収率で得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る不斉触媒アルドール反応生成物の製造方法は、下記一般式(1)で表されるアルデヒドとアセトアルデヒドとを、下記一般式(2)で表される不斉触媒又はそのエナンチオマーの存在下で反応させ、下記一般式(3)で表される化合物又はそのエナンチオマーを得ることを特徴とするものである。
【0013】
【化3】

【0014】
<一般式(1)で表されるアルデヒド>
上記一般式(1)中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルケニル基、アルコキシアルキニル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルコキシカルボニルアルケニル基、アルコキシカルボニルアルキニル基、アシル基、アシルアルキル基、アシルアルケニル基、アシルアルキニル基、アミド基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキルアルケニル基、シクロアルキルアルキニル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルケニル基、ヘテロシクロアルキルアルキニル基、シクロアルケニルアルキル基、シクロアルケニルアルケニル基、シクロアルケニルアルキニル基、ヘテロシクロアルケニルアルキル基、ヘテロシクロアルケニルアルケニル基、ヘテロシクロアルケニルアルキニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロアリールアルケニル基、又はヘテロアリールアルキニル基を示す。
【0015】
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「アルキル基」は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜6である。アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、n−へキシル基、n−ヘプチル基等が挙げられる。
このアルキル基は、無置換であっても、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、アルコキシ基、アシル基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、水酸基等が挙げられる。
【0016】
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「アルケニル基」は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルケニル基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜6である。アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、アリル基、イソプロペニル、1−ブテニル基、イソブテニル基等が挙げられる。
このアルケニル基は、無置換であっても、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基の置換基として上述した基が挙げられる。
【0017】
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「アルキニル基」は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルキニル基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜6である。アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、イソプロピニル基、1−ブチニル基、イソブチニル基等が挙げられる。
このアルキニル基は、無置換であっても、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基の置換基として上述した基が挙げられる。
【0018】
本明細書において、「アルコキシ基」は、上記アルキル基に酸素原子が結合した一価の基を示し、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペントキシ基、イソペントキシ基、n−ヘキトキシ基、n−ヘプトキシ基等が挙げられる。
【0019】
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「アシル基」は、カルボン酸から水酸基を除いた基を示す。アシル基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10である。アシル基の例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、フロイル基等が挙げられる。
このアシル基は、無置換であっても、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、水酸基等が挙げられる。
【0020】
本明細書において、「アミド基」は、アミノ基の1つの水素原子が上記アシル基によって置換された基を示し、ホルミルアミド基、アセトアミド基、プロピオンアミド基、ブチルアミド基、イソブチルアミド基、バレルアミド基、イソバレルアミド基、ピバロイルアミド基、ベンズアミド基、ナフトアミド基、フルアミド基等が挙げられる。
【0021】
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「シクロアルキル基」は、非芳香族の飽和環式炭化水素基を示す。シクロアルキル基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは炭素数3〜10、より好ましくは炭素数3〜6である。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基等が挙げられる。
このシクロアルキル基は、無置換であっても、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アシル基、アシルアルキル基、アルキルチオ基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、水酸基等が挙げられる。
【0022】
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「ヘテロシクロアルキル基」は、上記シクロアルキル基の環上の1以上の炭素原子がヘテロ原子によって置換されている基を示す。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子が挙げられる。ヘテロシクロアルキル基の例としては、テトラヒドロフリル基、モルホリニル基、ピペラジニル基、ピペリジル基、ピロリジニル基等が挙げられる。
このヘテロシクロアルキル基は、無置換であっても、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、シクロアルキル基の置換基として上述した基が挙げられる。
【0023】
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「シクロアルケニル基」は、非芳香族の不飽和環式炭化水素基を示す。環上の不飽和結合は1つであってもよく、2以上であってもよい。シクロアルケニル基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは炭素数3〜10、より好ましくは炭素数3〜6である。シクロアルケニル基の例としては、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロへキセニル基、シクロヘプテニル基等が挙げられる。
このシクロアルケニル基は、無置換であっても、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、シクロアルキル基の置換基として上述した基が挙げられる。
【0024】
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「ヘテロシクロアルケニル基」は、上記シクロアルケニル基の環上の1以上の炭素原子がヘテロ原子によって置換されている基を示す。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子が挙げられる。ヘテロシクロアルケニル基の例としては、ジヒドロフリル基、イミダゾリル基、ピロリニル基、ピラゾリニル基等が挙げられる。
このヘテロシクロアルケニル基は、無置換であっても、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、シクロアルキル基の置換基として上述した基が挙げられる。
【0025】
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「アリール基」は、芳香族炭化水素基を示し、2以上の環が縮合していてもよい。アリール基の炭素数に特に制限はないが、好ましくは炭素数5〜14、より好ましくは炭素数6〜10である。アリール基の例としては、フェニル基、インデニル基、ナフチル基、フェナントリル基、アントリル基等が挙げられる。
このアリール基は、無置換であっても、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アシル基、アシルアルキル基、アルキルチオ基、アルキレンジオキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、水酸基等が挙げられる。
【0026】
本明細書において、単独で又は他の基の一部として用いられる「ヘテロアリール基」は、上記アリール基の環上の1以上の炭素原子がヘテロ原子によって置換されている基を示す。ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子が挙げられる。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、トリアジニル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、インドリジニル基、インドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。
このヘテロアリール基は、無置換であっても、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、アリール基の置換基として上述した基が挙げられる。
【0027】
<一般式(2)で表される不斉触媒>
上記一般式(2)中、R,Rは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を示す。これらの基は、上記の定義通りである。
これらの基は、無置換であっても、1以上の水素原子が置換基によって置換されていてもよく、電子吸引性基によって置換されているものが好ましい。電子吸引基としては、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。
【0028】
また、上記一般式(2)中、Rは、水素原子、シリル基、又はアルキル基を示す。
本明細書において、「シリル基」は、HSi−で表される基、又はこの基の1以上の水素原子がアルキル基、アリール基等によって置換された基を示す。シリル基の例としては、トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、t−ブチルジメチルシリル(TBS)基、トリイソプロピルシリル(TIPS)基、t−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基等が挙げられる。
【0029】
また、上記一般式(2)中、Rは、水酸基の保護基を示し、nは0又は1を示す。
水酸基の保護基としては、アルキル基、アシル基、シリル基等の通常用いられている保護基を用いることができる。
n=1である場合、OR基の置換位置は、3位又は4位のいずれであってもよい。
【0030】
この不斉触媒としては、R,Rが置換基を有していてもよいアリール基であり、Rが水素原子であるものが、その不斉収率の高さから好ましい。
【0031】
この一般式(2)で表される不斉触媒は、プロリン又はその誘導体(3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン等)を出発原料として製造することができる((a)Gotoh, H.; Masui, R.; Ogino, H.; Shoji, M.; Hayashi, Y.; Angew. Chem., Int. Ed.; 2006, 45, p.6853、(b)Hayashi, Y.; Okano, T.; Aratake, S.; Hazelard, D.; Angew. Chem., Int. Ed.; 2007, 46, p.4922、(c)Gotoh, H.; Hayashi, Y.; Org. Lett.; 2007, 9, p.2859、等を参照)。
【0032】
<反応条件等>
上述したように、本発明に係る不斉触媒アルドール反応生成物の製造方法は、上記一般式(1)で表されるアルデヒドとアセトアルデヒドとを、上記一般式(2)で表される不斉触媒又はそのエナンチオマーの存在下で反応させ、上記一般式(3)で表される化合物又はそのエナンチオマーを得るものである。
なお、上記一般式(2)で表される化合物を不斉触媒として用いた場合には、上記一般式(3)で表される化合物が得られ、上記一般式(2)で表される化合物のエナンチオマーを不斉触媒として用いた場合には、上記一般式(3)で表される化合物のエナンチオマーが得られる。
【0033】
アセトアルデヒドの使用量は、上記一般式(1)で表されるアルデヒドに対して1〜50当量であることが好ましく、1〜10当量であることがより好ましい。また、不斉触媒の使用量は、上記一般式(1)で表されるアルデヒドに対して0.01〜1当量であることが好ましく、0.05〜0.3当量であることがより好ましい。
【0034】
この反応は、溶媒中で行ってもよく、無溶媒で行ってもよい。溶媒としては、水、メタノール、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、酢酸エチル、ジメトキシエタン(DME)、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。この中でも、DMFが特に好ましい。
【0035】
反応温度は、−10〜40℃であることが好ましく、0〜30℃であることがより好ましい。反応温度が高過ぎると副反応が生じやすく、収率低下を招くことがある。一方、反応温度が低過ぎると反応速度が低下する。
反応時間は、用いるアルデヒド、不斉触媒等の条件に依存するが、通常は12〜120時間である。
反応雰囲気は、特に限定されないが、不活性ガス雰囲気が好ましい。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等を用いることができる。
【0036】
本発明に係る不斉触媒アルドール反応生成物の製造方法によれば、上記一般式(2)で表される不斉触媒又はそのエナンチオマーを用いることにより、求核剤としてアセトアルデヒドを用いたアルデヒド−アルデヒド間の不斉触媒アルドール反応において、アルドール体を高い不斉収率で得ることができる。なお、上記一般式(1)で表されるアルデヒドにおいてRがメチル基である場合、アセトアルデヒドの自己アルドール反応となるが、本発明では、このような自己アルドール反応であっても、アルドール体を高い不斉収率で得ることができる。このようにして得られたアルドール体は、医薬品、農薬等の合成中間体となり得る。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
本実施例では、上記一般式(2)で表される不斉触媒として、以下の4種類の触媒を用いた。
【0039】
【化4】

【0040】
このうち、触媒3は、Aldrich社から購入した(製品番号368199)。また、触媒1,2,4は、文献(Li, K.; Zhou, Z.; Wang, L.; Chen, Q.; Zhao, G.; Zhou, Q.; Tang, C.; Tetrahedron : Asymmetry; 2003, 14, p.95)を参照して製造した。
【0041】
<試験例1>
下記反応式に示すように、o−クロロベンズアルデヒドとアセトアルデヒドとを、上記触媒1〜4、又はプロリンの存在下で反応させ、アルドール体を得た。但し、アルドール体は不安定なため、対応するジオールに還元した後に単離した。
【0042】
【化5】

【0043】
上記反応は、特に明記しない限り、o−クロロベンズアルデヒド(0.4mmol)とアセトアルデヒド(2.0mmol)とを、4℃にて、触媒(0.04mmol、10mol%)を含む溶媒(0.4ml)中で72時間反応させることにより行った。反応雰囲気はアルゴンとした。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】

単離収率。
キラルHPLCの結果から求めた。
触媒の添加量をo−クロロベンズアルデヒドに対して30mol%とした。
無溶媒で行った。
5当量の水を用いた。
【0045】
表1から分かるように、不斉触媒としてプロリンを用いた場合には、得られるアルドール体の収率が低く、不斉収率も低かった(エントリー1)。なお、この反応では、自己アルドール反応及び脱水素反応によって得られるクロトンアルデヒドも生成していた。一方、不斉触媒として触媒1〜4を用いた場合には、高い不斉収率でアルドール体を得ることができ、特に触媒1を用いたときの収率が高かった(エントリー2〜10)。また、触媒1について種々の溶媒を比較したところ、溶媒としてはDMFが最も好ましかった(エントリー2)。
【0046】
<試験例2>
下記反応式に示すように、種々のアルデヒドとアセトアルデヒドとを、上記触媒1の存在下で反応させ、アルドール体を得た。但し、アルドール体は不安定なため、対応するジオールに還元した後に単離した(エントリー1〜15)。エントリー16については、対応するジオールに還元し、さらにジベンゾイルエステルに変換した後に単離した。
【0047】
【化6】

【0048】
エントリー1,16以外の上記反応は、特に明記しない限り、アルデヒド(0.4mmol)とアセトアルデヒド(2.0mmol)とを、所定の温度にて、触媒1(0.04mmol、10mol%)を含むDMF(0.4ml)中で反応させることにより行った。反応雰囲気はアルゴンとした。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】

単離収率。
キラルHPLCの結果から求めた。
アセトアルデヒド(5当量)を24時間毎に3回加えた。
触媒の添加量をアルデヒドに対して30mol%とした。
溶媒としてDMF以外に5当量の水を添加した。
市販の水溶液(60質量%)を用いた。
溶媒としてNMPを用い、ジベンゾイルエステルとして単離した。
【0050】
表2から分かるように、電子不足な芳香族アルデヒド及びオレフィンアルデヒドの双方で、良好な結果が得られた。ベンズアルデヒドや2−ナフトアルデヒドを用いた場合、アセトアルデヒド(5当量)を24時間毎に3回加える必要があったものの、アルドール体が高い不斉収率かつ中程度の収率で得られた(エントリー1,6)。4−ピリジンカルボアルデヒドのようなヘテロ芳香族アルデヒドも、求電子的なアルデヒドとして使用することができた(エントリー13)。また、アセトアルデヒドを用いた場合にも、自己アルドール反応の結果、アルドール体が高い不斉収率かつ中程度の収率で得られた(エントリー16)。
【0051】
以下、表2のエントリー1〜16におけるアルドール体の製造方法及び同定結果(NMR、IR、HRMS)を示す。
【0052】
<(R)−1−フェニルプロパン−1,3−ジオール(エントリー1)の製造>
触媒1(95mg、0.18mmol)及びベンズアルデヒド(61ml、0.60mmol)を含むDMF(0.60ml)中に、アセトアルデヒド(168ml、3.0mmol)を23℃にて加え、反応液を撹拌した。24時間後及び48時間後に、反応液中にアセトアルデヒド(168ml、3.0mmol)を加えた。さらに24時間(合計では72時間)撹拌した後、反応液を0℃に冷却し、メタノール(1ml)及びNaBH(111mg、3.0mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。その後、pH7.0のリン酸緩衝液を加えて反応を停止させた。そして、有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層(酢酸エチル層)を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、有機層を濾過し、溶媒を減圧留去した。残渣を薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製し、(R)−1−フェニルプロパン−1,3−ジオール(49mg、0.32mmol)を収率53%、99%eeで得た。
【0053】
同定は、文献(Chengfu, X.;Chengye, Y.; Tetrahedron; 2005, 61, p.2169)に基づいて行った。
【0054】
不斉収率は、得られた化合物の1級アルコール性水酸基をモノベンゾイルエステルに変換した後、Chiralpac AD−Hカラムを用いたHPLC(λ=231nm、ヘキサン:2−プロパノール=30:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=28.2分(major),T2=36.8分(minor)。
【0055】
<(R)−1−(4−ニトロフェニル)プロパン−1,3−ジオール(エントリー2)の製造>
触媒1(21mg、0.04mmol)及び4−ニトロベンズアルデヒド(60mg、0.40mmol)を含むDMF(0.40ml)中に、アセトアルデヒド(112μl、2.0mmol)を4℃にて加えた。反応液を24時間撹拌した後、反応液を0℃に冷却し、メタノール(1ml)及びNaBH(74mg、2.0mmol)を加え、0℃で1時間撹拌した。その後、pH7.0のリン酸緩衝液を加えて反応を停止させた。そして、有機物を酢酸エチルで3回抽出した後、有機層(酢酸エチル層)を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。その後、有機層を濾過し、溶媒を減圧留去した。残渣を薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製し、(R)−1−(4−ニトロフェニル)プロパン−1,3−ジオール(75mg、0.34mmol)を収率85%、96%eeで得た。
【0056】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ1.92−1.99(2H, m), 3.72(1H, br−s), 3.90(2H, t, J=5.6Hz), 5.05−5.12(1H, m), 7.54(2H, d, J=8.8Hz), 8.16−8.22(2H, m);
13C NMR(CDCl, 100MHz):δ40.2, 61.2, 73.3, 123.7(2C), 126.4(2C), 147.2, 151.7;
IR(KBr):ν3373, 1680, 1604, 1518, 1348, 1051, 854, 750, 701, 414cm−1
HRMS(ESI):[M+Na] 計算値C11NONa:220.0580, 実測値:220.0565;
[α]24=+21.7(c=0.87, MeOH).
【0057】
不斉収率は、得られた化合物の1級アルコール性水酸基をモノベンゾイルエステルに変換した後、Chiralpac AD−Hカラムを用いたHPLC(λ=234nm、ヘキサン:2−プロパノール=20:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=14.3分(major),T2=15.9分(minor)。
【0058】
<(R)−1−(4−トリフルオロメチルフェニル)プロパン−1,3−ジオール(エントリー3)の製造>
4−ニトロベンズアルデヒドの代わりに4−(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドを用いたほかは、エントリー2と同様にして(R)−1−(4−トリフルオロメチルフェニル)プロパン−1,3−ジオールを収率74%、99%eeで得た。
【0059】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ1.89−2.02(2H, m), 2.55(1H, br−s), 3.49(1H, br−s), 3.81−3.91(2H, m), 5.01(1H, dd, J=4.8, 7.6Hz), 7.47(2H, d, J=8.0Hz), 7.60(2H, d, J=8.0Hz);
13C NMR(CDCl, 100MHz):δ40.3, 61.2, 73.5, 122.8(2C), 125.3−125.6(1C, m), 125.9(2C), 129.5−129.9(1C, m), 148.3;
IR(KBr):ν3331, 1621, 1559, 1419, 1327, 1164, 1124, 1068, 1017, 834cm−1
HRMS(ESI):[M+Na] 計算値C1011Na:243.0603, 実測値:243.0587;
[α]24=+25.3(c=1.56, MeOH).
【0060】
不斉収率は、得られた化合物の1級アルコール性水酸基をモノベンゾイルエステルに変換した後、Chiralpac AS−Hカラムを用いたHPLC(λ=254nm、ヘキサン:2−プロパノール=50:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=10.9分(major),T2=13.0分(minor)。
【0061】
<(R)−1−(4−ブロモフェニル)プロパン−1,3−ジオール(エントリー4)の製造>
4−ニトロベンズアルデヒドの代わりに4−ブロモベンズアルデヒドを用い、触媒の添加量を4−ブロモベンズアルデヒドに対して30mol%としたほかは、エントリー2と同様にして(R)−1−(4−ブロモフェニル)プロパン−1,3−ジオールを収率77%、97%eeで得た。
【0062】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ1.86−2.04(2H, m), 2.97(1H, br−s), 3.81−3.92(2H, m), 4.94(1H, dd, J=4.0, 8.4Hz), 7.25(2H, d, J=8.4Hz), 7.48(2H, d, J=8.4Hz);
13C NMR(CDCl, 100MHz):δ40.3, 61.2, 73.5, 121.2(2C), 127.4(2C), 131.5, 143.3;
IR(KBr):ν3399, 2949, 1652, 1592, 1488, 1404, 1280, 1072, 1011, 824cm−1
HRMS(ESI):[M+Na] 計算値C11BrONa:252.9835, 実測値:252.9810;
[α]23=+19.1(c=1.33, MeOH).
【0063】
不斉収率は、得られた化合物の1級アルコール性水酸基をモノベンゾイルエステルに変換した後、Chiralcel OJ−Hカラムを用いたHPLC(λ=227nm、ヘキサン:2−プロパノール=30:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=48.7分(major),T2=52.7分(minor)。
【0064】
<(R)−1−(4−トリフルオロメタンスルホニルフェニル)プロパン−1,3−ジオール(エントリー5)の製造>
4−ニトロベンズアルデヒドの代わりに4−トリフルオロメタンスルホニルベンズアルデヒドを用い、触媒の添加量を4−トリフルオロメタンスルホニルベンズアルデヒドに対して30mol%としたほかは、エントリー2と同様にして(R)−1−(4−トリフルオロメタンスルホニルフェニル)プロパン−1,3−ジオールを収率71%、98%eeで得た。
【0065】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ1.64−1.76(2H, m), 2.06(1H, br−s), 3.42(1H, s), 3.78−3.85(2H, m), 4.95(1H, dd, J=2.4, 10.4Hz), 7.14−7.24(2H, m), 7.40(2H, d, J=8.8Hz);
13C NMR(CDCl, 100MHz):δ46.1, 62.1, 74.6, 121.7(2C), 127.9(2C), 144.2, 151.2;
IR(KBr):ν3373, 1680, 1604, 1518, 1348, 1051, 854, 750, 701, 414cm−1
【0066】
不斉収率は、得られた化合物の1級アルコール性水酸基をモノベンゾイルエステルに変換した後、Chiralpac AS−Hカラムを用いたHPLC(λ=254nm、ヘキサン:2−プロパノール=50:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=25.7分(major),T2=27.2分(minor)。
【0067】
<(R)−1−(ナフタレン−2−イル)プロパン−1,3−ジオール(エントリー6)の製造>
4−ニトロベンズアルデヒドの代わりに2−ナフトアルデヒドを用い、アセトアルデヒド(5当量)を24時間毎に3回加えたほかは、エントリー2と同様にして(R)−1−(ナフタレン−2−イル)プロパン−1,3−ジオールを収率50%、97%eeで得た。
【0068】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ1.98−2.17(2H, m), 3.85−3.93(2H, m), 3.01(1H, br−s), 5.13(1H, dd, J=4.0, 8.4Hz), 7.43−7.52(3H, m), 7.79−7.87(4H, m);
13C NMR(CDCl, 100MHz):δ40.3, 61.4, 74.3, 123.8, 123.9, 124.2, 125.8, 127.6, 127.9, 128.3, 132.9, 133.2, 141.6;
IR(KBr):ν3289, 2928, 1122, 1072, 1038, 983, 860, 826, 743, 484cm−1
HRMS(ESI):[M+Na] 計算値C1314Na:225.0886, 実測値:225.0873;
[α]24=+21.8(c=1.01, MeOH).
【0069】
不斉収率は、Chiralpac ICカラムを用いたHPLC(λ=272nm、ヘキサン:2−プロパノール=10:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=14.7分(minor),T2=17.9分(major)。
【0070】
<(R)−1−(2−クロロフェニル)プロパン−1,3−ジオール(エントリー7)の製造>
4−ニトロベンズアルデヒドの代わりに2−クロロベンズアルデヒドを用いたほかは、エントリー2と同様にして(R)−1−(2−クロロフェニル)プロパン−1,3−ジオールを収率85%、99%eeで得た。
【0071】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ1.88−1.98(1H, m), 2.01−2.11(1H, m), 2.28(1H, br−s), 3.86−3.97(2H, m), 5.37(1H, dd, J=2.8, 8.8Hz), 7.21(1H, dt, J=1.6, 7.6Hz), 7.28−7.35(2H, m), 7.63(1H, dd, J=1.6, 7.6Hz);
13C NMR(CDCl, 100MHz):δ38.5, 61.6, 71.0, 127.06, 127.11, 128.5, 129.4, 131.4, 141.6;
IR(KBr):ν3366, 2954, 1573, 1473, 1439, 1193, 1129, 1034, 978, 754cm−1
HRMS(ESI):[M+Na] 計算値C11ClONa:209.0340, 実測値:209.0336;
[α]24=+60.8(c=0.67, MeOH).
【0072】
不斉収率は、得られた化合物の1級アルコール性水酸基をモノベンゾイルエステルに変換した後、Chiralpac AD−Hカラムを用いたHPLC(λ=254nm、ヘキサン:2−プロパノール=30:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=24.9分(minor),T2=27.1分(major)。
【0073】
<(R)−1−(2−ニトロフェニル)プロパン−1,3−ジオール(エントリー8)の製造>
4−ニトロベンズアルデヒドの代わりに2−ニトロベンズアルデヒドを用いたほかは、エントリー2と同様にして(R)−1−(2−ニトロフェニル)プロパン−1,3−ジオールを収率89%、97%eeで得た。
【0074】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ1.94−2.06(1H, m), 2.08−2.17(2H, m), 3.45(1H, br−s), 3.91−4.06(2H, m), 5.52(1H, dd, J=2.4, 8.8Hz), 7.43(1H, dt, J=1.2, 8.0Hz), 7.67(1H, dt, J=1.2, 8.0Hz), 7.93(2H, dt, J=1.2, 8.0Hz);
13C NMR(CDCl, 100MHz):δ39.6, 61.8, 69.6, 124.3, 128.1, 128.2, 133.6, 139.8, 147.4;
IR(KBr):ν3375, 2962, 1609, 1524, 1347, 1192, 1055, 857, 790, 743cm−1
HRMS(ESI):[M+Na] 計算値C11NONa:220.0580, 実測値:220.0565;
[α]23=−53.0(c=2.08, MeOH).
【0075】
不斉収率は、得られた化合物の1級アルコール性水酸基をモノベンゾイルエステルに変換した後、Chiralpac AD−Hカラムを用いたHPLC(λ=289nm、ヘキサン:2−プロパノール=20:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=17.9分(major),T2=19.9分(minor)。
【0076】
<(R)−1−(3−ニトロフェニル)プロパン−1,3−ジオール(エントリー9)の製造>
4−ニトロベンズアルデヒドの代わりに3−ニトロベンズアルデヒドを用いたほかは、エントリー2と同様にして(R)−1−(3−ニトロフェニル)プロパン−1,3−ジオールを収率89%、97%eeで得た。
【0077】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ1.94−2.09(2H, m), 3.39(1H, br−s), 3.93(2H, t, J=5.6Hz), 5.07−5.15(1H, m), 7.53(1H, t, J=8.0Hz), 7.73(1H, d, J=8.0Hz), 8.10−8.16(1H, m), 8.27(1H, m);
13C NMR(CDCl, 100MHz):δ40.3, 61.3, 73.2, 120.7, 122.4, 129.4, 131.8, 146.6, 148.4;
IR(KBr):ν3334, 3228, 1535, 1340, 1103, 1088, 1065, 893, 817, 737cm−1
HRMS(ESI):[M+Na] 計算値C11NONa:220.0580, 実測値:220.0557;
[α]24=+29.5(c=0.77, MeOH).
【0078】
不斉収率は、得られた化合物の1級アルコール性水酸基をモノベンゾイルエステルに変換した後、Chiralpac AD−Hカラムを用いたHPLC(λ=254nm、ヘキサン:2−プロパノール=20:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=24.2分(minor),T2=32.9分(major)。
【0079】
<(R)−1−(2,6−ジクロロフェニル)プロパン−1,3−ジオール(エントリー10)の製造>
4−ニトロベンズアルデヒドの代わりに2,6−ジクロロベンズアルデヒドを用いたほかは、エントリー2と同様にして(R)−1−(2,6−ジクロロフェニル)プロパン−1,3−ジオールを収率82%、96%eeで得た。
【0080】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ1.94−2.02(1H, m), 2.41−2.52(1H, m), 3.91(2H, t, J=6.0Hz), 5.67(1H, dd, J=2.8, 10.0Hz), 7.11−7.18(1H, m), 7.31(2H, d, J=8.0Hz);
13C NMR(CDCl, 100MHz):δ37.2, 61.0, 71.0, 129.0(2C), 129.5(2C), 134.2, 137.4;
IR(KBr):ν3359, 3187, 1579, 1560, 1436, 1092, 1074, 1040, 972, 872cm−1
HRMS(ESI):[M+Na] 計算値C1012Na:242.9950, 実測値:242.9949;
[α]22=−8.2(c=1.04, MeOH).
【0081】
不斉収率は、得られた化合物の1級アルコール性水酸基をモノベンゾイルエステルに変換した後、Chiralpac AD−Hカラムを用いたHPLC(λ=237nm、ヘキサン:2−プロパノール=50:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=16.1分(major),T2=17.5分(minor)。
【0082】
<(R)−1−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)プロパン−1,3−ジオール(エントリー11)の製造>
4−ニトロベンズアルデヒドの代わりに3,5−ビス(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒドを用いたほかは、エントリー2と同様にして(R)−1−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)プロパン−1,3−ジオールを収率76%、99%eeで得た。
【0083】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ1.93−2.01(2H, m), 3.92(2H, t, J=5.2Hz), 5.10(1H, t, J=6.0Hz), 7.78(1H, s), 7.83(2H, s);
13C NMR(CDCl, 100MHz):δ40.2, 61.2, 73.0, 121.3(2C), 123.3(1C, q, J=272Hz), 125.8(2C), 131.6(1C, q, J=33Hz), 147.0;
IR(KBr):ν3383, 2948, 1667, 1623, 1504, 1378, 1279, 1179, 1127, 901cm−1
HRMS(ESI):[M+Na] 計算値C1110Na]:311.0477, 実測値:311.0473;
[α]23=+25.3(c=1.66, MeOH).
【0084】
不斉収率は、得られた化合物の1級アルコール性水酸基をモノベンゾイルエステルに変換した後、Chiralpac AS−Hカラムを用いたHPLC(λ=254nm、ヘキサン:2−プロパノール=50:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=6.4分(major),T2=6.9分(minor)。
【0085】
<(R)−1−(ペンタフルオロフェニル)プロパン−1,3−ジオール(エントリー12)の製造>
4−ニトロベンズアルデヒドの代わりにペンタフルオロベンズアルデヒドを用い、溶媒としてDMF以外に5当量の水を添加したほかは、エントリー2と同様にして(R)−1−(ペンタフルオロフェニル)プロパン−1,3−ジオールを収率91%、98%eeで得た。
【0086】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ1.87−1.98(1H, m), 2.24−2.38(1H, m), 3.80−3.87(1H), 3.88−3.95(1H, m), 5.31(1H, dd, J=2.8, 9.6Hz);
13C NMR(CDCl, 100MHz):δ37.9, 60.7, 65.0, 136.3, 138.8, 139.3, 141.8, 143.5, 146.1;
IR(KBr):ν3418, 1654, 1524, 1504, 1417, 1303, 1126, 1055, 979, 664cm−1
HRMS(ESI):[M+Na] 計算値CNa:265.0258, 実測値:265.0262;
[α]23=+2.84(c=1.69, MeOH).
【0087】
不斉収率は、得られた化合物の1級アルコール性水酸基をモノベンゾイルエステルに変換した後、Chiralpac AD−Hカラムを用いたHPLC(λ=233nm、ヘキサン:2−プロパノール=50:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=29.2分(minor),T2=38.8分(major)。
【0088】
<(R)−1−(ピリジン−4−イル)プロパン−1,3−ジオール(エントリー13)の製造>
4−ニトロベンズアルデヒドの代わりに4−ピリジンカルボアルデヒドを用いたほかは、エントリー2と同様にして(R)−1−(ピリジン−4−イル)プロパン−1,3−ジオールを収率83%、99%eeで得た。
【0089】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ1.86−1.93(2H, m), 3.59−3.68(1H, m), 3.71−3.80(1H, m), 4.84−4.89(1H, m), 7.41−7.46(2H, m), 8.45−8.50(2H, m);
13C NMR(CDCl, 100MHz):δ42.4, 48.4, 70.7, 122.6, 150.0(2C), 157.3(2C);
IR(KBr):ν3369, 1603, 1414, 1351, 1219, 1099, 1069, 1005, 826, 635cm−1
HRMS(ESI):[M+H] 計算値C12NO:154.0863, 実測値:154.0875;
[α]23=+37.7(c=0.35, MeOH).
【0090】
不斉収率は、Chiralpac AS−Hカラムを用いたHPLC(λ=209nm、ヘキサン:2−プロパノール=10:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=19.4分(major),T2=21.4分(minor)。
【0091】
<(R,Z)−4−ブロモ−5−フェニル−4−ペンテン−1,3−ジオール(エントリー14)の製造>
4−ニトロベンズアルデヒドの代わりに2−ブロモ−3−フェニルアクリルアルデヒドを用いたほかは、エントリー2と同様にして(R,Z)−4−ブロモ−5−フェニル−4−ペンテン−1,3−ジオールを収率53%、98%eeで得た。
【0092】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ2.03−2.10(2H, m), 2.20(1H, br−s), 3.23(1H, br−d, J=3.2Hz), 3.83−3.91(1H, m), 3.91−3.99(1H, m), 4.55−4.62(1H, m), 7.18(1H, s), 7.28−7.34(1H, m), 7.34−7.40(2H, m), 7.59−7.65(2H, m);
13C NMR(CDCl, 100MHz):δ37.1, 60.6, 76.7, 127.7, 128.1(2C), 128.2, 129.0(2C), 129.1, 135.1;
IR(KBr):ν3352, 1642, 1493, 1446, 1279, 1052, 862, 791, 753, 694cm−1
HRMS(ESI):[M+Na] 計算値C1113BrONa:278.9991, 実測値:278.9984;
[α]23=−5.3(c=0.96, MeOH).
【0093】
不斉収率は、得られた化合物をジベンゾイルエステルに変換した後、Chiralpac ICカラムを用いたHPLC(λ=259nm、ヘキサン:2−プロパノール=30:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=9.5分(major),T2=10.4分(minor)。
【0094】
<(R)−4,4−ジメトキシブタン−1,3−ジオール(エントリー15)の製造>
4−ニトロベンズアルデヒドの代わりにジメトキシアセトアルデヒドを用いたほかは、エントリー2と同様にして(R)−4,4−ジメトキシブタン−1,3−ジオールを収率92%、80%eeで得た。
【0095】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ1.62−1.74(1H, m), 1.75−1.89(1H, m), 2.71(1H, br−s), 2.75(1H, br−s), 3.42(3H, s), 3.45(3H, s), 3.77−3.86(3H, m), 4.17(1H, d, J=6.0Hz);
13C NMR(CDCl, 100MHz):δ34.0, 55.5, 55.6, 61.2, 71.4, 107.1;
IR(KBr):ν3428, 2960, 2842, 2359, 1645, 1455, 1192, 1139, 1060, 967cm−1
HRMS(ESI):[M+Na] 計算値C14Na:173.0784, 実測値:173.0798;
[α]21=+56.2(c=0.57, MeOH).
【0096】
不斉収率は、得られた化合物の1級アルコール性水酸基をモノベンゾイルエステルに変換した後、Chiralpac AS−Hカラムを用いたHPLC(λ=254nm、ヘキサン:2−プロパノール=50:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=8.9分(major),T2=9.9分(minor)。
【0097】
<(R)−1,3−ブタンジオールジベンゾイルエステル(エントリー16)の製造>
触媒1(105mg、0.2mmol)を含む無水NMP(297mg、3mmol)中に、アセトアルデヒド(183μl、3.0mmol)を4℃にて加えた。反応液を6日間撹拌した後、メタノール(2ml)及びNaBH(266mg、7.0mmol)を加え、30分間撹拌した。その後、溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジエチルエーテル:メタノール=99:1)で精製して、溶出液を得た。
【0098】
この溶出液に、ピリジン(0.5ml)、DMAP(30mg)、及び塩化ベンゾイル(980mg、7mmol)を0℃にて加え、1時間撹拌した。その後、反応液に希塩酸(2N、15ml)を加えて反応を停止させた。そして、有機物を酢酸エチルで3回抽出し、ブラインで洗浄した後、溶媒を減圧留去することにより、粗生成物を得た。この粗生成物に含水NaHCO(5ml)を含むTHF(5ml)を加え、50℃で6時間加熱した。そして、有機物を酢酸エチルで3回抽出し、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:5)で精製し、(R)−1,3−ブタンジオールジベンゾイルエステル(175mg)を収率59%、87%eeで得た。
【0099】
H NMR(CDCl, 400MHz):δ1.45(3H, d, J=5.6Hz), 2.10−2.27(2H, m), 4.39−4.53(2H, m), 5.35−5.43(1H, m), 7.38−7.43(4H, m), 7.51−7.56(2H, m), 8.02(4H, t, J=8.8Hz).
【0100】
不斉収率は、Chiral OD−Hカラムを用いたHPLC(λ=256nm、ヘキサン:2−プロパノール=20:1、流速1.0ml/分)の結果から求めた。T1=5.25分(major),T2=6.41分(minor)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるアルデヒドとアセトアルデヒドとを、下記一般式(2)で表される不斉触媒又はそのエナンチオマーの存在下で反応させ、下記一般式(3)で表される化合物又はそのエナンチオマーを得ることを特徴とする不斉触媒アルドール反応生成物の製造方法。
【化1】

[式中、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルケニル基、アルコキシアルキニル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アルコキシカルボニルアルケニル基、アルコキシカルボニルアルキニル基、アシル基、アシルアルキル基、アシルアルケニル基、アシルアルキニル基、アミド基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキルアルケニル基、シクロアルキルアルキニル基、ヘテロシクロアルキルアルキル基、ヘテロシクロアルキルアルケニル基、ヘテロシクロアルキルアルキニル基、シクロアルケニルアルキル基、シクロアルケニルアルケニル基、シクロアルケニルアルキニル基、ヘテロシクロアルケニルアルキル基、ヘテロシクロアルケニルアルケニル基、ヘテロシクロアルケニルアルキニル基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、ヘテロアリールアルキル基、ヘテロアリールアルケニル基、又はヘテロアリールアルキニル基を示し、R,Rは、それぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロシクロアルケニル基、アルキル基、アルケニル基、又はアルキニル基を示し、Rは、水素原子、シリル基、又はアルキル基を示し、Rは、水酸基の保護基を示し、nは0又は1を示す。]
【請求項2】
上記一般式(2)において、R,Rが置換基を有していてもよいアリール基であり、Rが水素原子であることを特徴とする請求項1記載の不斉触媒アルドール反応生成物の製造方法。

【公開番号】特開2009−114135(P2009−114135A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290056(P2007−290056)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】