説明

不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の元素分析方法および元素分析装置

【課題】 測定値に対する信頼性の確保しつつ、校正ガスとして高圧の水素ガスを用いることなく、測定精度の高い元素分析方法および元素分析装置を提供すること。
【解決手段】 不活性ガス雰囲気で融解処理された試料S中の水素または水素を含む複数の元素を測定対象とする元素分析装置であって、前記処理によって得られたサンプルガス中の水素を測定するガス分析計2の感度校正用ガス流路に、水素吸蔵合金を内蔵し加熱・冷却が可能な水素処理部5を配設し、冷却状態においてサンプルガス中あるいは校正ガス中の水素を吸蔵するとともに、前記ガス分析計2の校正時に、加熱状態に切り換えた該水素処理部5に対して特定のキャリアガスArを流通して前記ガス分析計2の感度校正を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の元素分析方法および元素分析装置に関するもので、特に、水素または水素を含む複数の元素を測定対象とする元素分析方法および元素分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼やアルミニウムなどの金属やセラミックスなどは、素材中に水素、酸素、窒素等の元素が含まれることによって、その特性が大きく異なることから、こうした元素を簡便かつ正確に測定できる元素分析方法および元素分析装置の要請が強い。かかる水素または水素を含む複数の元素を測定対象とする元素分析装置においては、通常、不活性ガス融解式分析法が用いられる。具体的には、試料を黒鉛ルツボなどに投入した状態で電極炉や高周波炉などで溶融し、キャリアガスを用いて溶融副産物を種々の検出器(赤外線検出器や熱伝導度セル)内に通し、水素、酸素、窒素等の元素の濃度を決定する。このとき、従来は、水素分析に影響をする一酸化炭素(CO)は、常温の酸化剤や酸化銅を用いて二酸化炭素(CO)に変換後脱CO剤によって除去し、発生する水分(HO)は脱HO剤で除去することによって、水素以外のガス成分を除去させた後、カラムを用いて窒素と水素を分離し測定する方法が採られていた。脱CO剤としては、通常はアスカライト(商品名:シリカゲルなどにNaOHを含浸させた試薬)で二酸化炭素を除去させていた。
【0003】
また、単一サンプルで水素、酸素、及び窒素を測定でき、且つ低濃度のサンプルであっても高精度を提供できる単一流路機器が試みられている。例えば、全て直列に連結された複数の赤外線センサ、一個の触媒コンバータ、一個のスクラバ及び一個の熱伝導度セルを含む単一流路アナライザが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
具体的には、図8に示すように、黒鉛ルツボ62の中でサンプル65を約2000℃で溶融するためにインパルス炉61を用いている。サンプル65の溶融物から得られる粒状物を含まない副産物流は、種々の分子形態での窒素、水素、一酸化炭素、二酸化炭素を含み、出力導管64に供給される。第一の赤外線検出器68は一酸化炭素を検出し、導管67で流量コントローラ66と連結されている。酸素の幾分かは黒鉛ルツボと反応して二酸化炭素を生成し、赤外線検出器68の出力は導管69によって第二の赤外線検出器70に連結され、該検出器70は二酸化炭素を検出し、標本ガス中の二酸化炭素の量に比例した酸素の測定を提供する。比較的高濃度の酸素(即ち、約200ppm超)に関しては、検出器68と70の出力が合計されてサンプルの全酸素量を提供する。サンプル流路は導管72を含み、導管72は従来の触媒74に連結されている。触媒74は約650℃で作動し、水素をガス状の形態のHOに転換し、総ての残留一酸化炭素を二酸化炭素に転換する。触媒74における触媒剤としては、酸化銅、希土類、酸化タングステンが挙げられる。
【0005】
次に、導管76は、ガス状水蒸気及び残留溶融副産物をHO赤外線検出セル80に連結する。HO赤外線検出セル80は、サンプル中に存在する水素から触媒74によって直接転換されるHOを検出するように選択されたフィルタを有する。HO赤外線検出セル80の出力は、導管82によって第二の高感度CO赤外線センサ84に連結されており、センサ84は、比較的低レベルの二酸化炭素(即ち、約200ppm未満)を検出する感度を有し、従って、サンプル中の酸素が検出できることになる。導管86は、赤外線検出器84からの溶融副産物の流れをスクラバ88に連結し、スクラバ88は、キャリアガスヘリウム及び残留COの流れからHOを除去する。導管89は、熱伝導度セル92に連結され、熱伝導度セル92は、サンプル中の窒素の量を表す出力信号を提供する。セルのアウトプットは93で大気中に放出される。
【0006】
【特許文献1】特開2003−185579号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記分析装置では、以下のような課題が生じることがあった。
(1)水素を測定する場合は、水素測定用ガス分析計の校正に、可燃性・爆発性の高圧の水素ガスを用いる必要があり、特に測定現場などでの危険性を考慮した煩雑な作業を伴うこととなる。また、試料中あるいは校正ガス中の水素は、回収して再利用することなく放出していたため、連続的な仕様においては、定期的に水素ガスの補充が必要であった。
(2)水素分析に影響をする一酸化炭素を酸化・除去処理した後、カラムを用いて窒素と水素を分離し測定する方法にあっては、分析時間の短縮が困難で、装置構成も複雑であった。
(3)水素を触媒によって酸化し、HOとして検出する方法にあっては、微量水素の測定が難しく、試料流路での吸脱着による誤差や応答遅れ、あるいは校正精度の悪化が大きな課題であった。また、非常に高温の酸化手段を必要とし、HOに転換した後においては流路での吸脱着の影響を防止するために加熱を必要とするという課題があった。
(4)さらに、単一流路に複数の検出器やスクラバ等の処理部を配設する場合において、配設する検出器や処理部の数が多くなると、ガスの拡散や試料流路での吸脱着による誤差や応答遅れが生じ、迅速な測定が難しいという問題があった。
(5)また、水素を熱伝導度検出法で測定する場合は、他成分の干渉影響を最小にするためには、他成分と同時にキャリアガスとの熱伝導度の差を大きくする必要がある。特に融解処理時の不活性ガスとしてヘリウムを用いた場合には、水素とヘリウムの熱伝導度の差が小さいことから、他のキャリアガスの選択(例えばアルゴンガス)およびその使用方法を検討する必要があった。
【0008】
そこで、本発明はこうした問題点を解決し、測定値に対する信頼性の確保しつつ、校正ガスとして高圧の水素ガスを用いることなく、測定精度の高い元素分析方法および元素分析装置を提供することを目的とする。つまり、不活性ガス融解による水素または水素を含む元素分析において、試料ガス成分中から選択的に測定対象の1つである水素を捕集し、その測定対象の測定用分析計の校正時に利用する元素分析方法および元素分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示す元素分析方法および元素分析装置によって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
本発明は、不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の水素または水素を含む複数の元素を測定対象とする元素分析方法であって、前記処理によって得られたサンプルガスに対して所定の二次処理を行うサンプルガス二次処理系を介して得られたサンプルガス中の水素をガス分析計によって測定するとともに、該ガス分析計の校正ガス供給流路に水素吸蔵合金を内蔵し加熱・冷却が可能な水素処理部を配設し、冷却状態の該水素処理部に対してサンプルガスあるいは校正ガスを流通した後加熱状態に切り換えて、吸蔵した水素を含む特定のキャリアガスを前記ガス分析計に流通して、該ガス分析計の感度校正を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の水素または水素を含む複数の元素を測定対象とする元素分析装置であって、前記処理によって得られたサンプルガス中の水素を測定するガス分析計の感度校正用ガス流路に、水素吸蔵合金を内蔵し加熱・冷却が可能な水素処理部を配設し、冷却状態においてサンプルガス中あるいは校正ガス中の水素を吸蔵するとともに、前記ガス分析計の校正時に、加熱状態に切り換えた該水素処理部に対して特定のキャリアガスを流通して前記ガス分析計の感度校正を行うことを特徴とする。
【0012】
従前の水素または水素を含む複数の元素を測定対象とする元素分析においては、上記のような課題を解消する必要があり、水素に対して迅速かつ高い選択性を有する測定を行うとともに、校正ガスとして水素を代用する危険性の少ないガスあるいは高圧の水素ガス自体を不要とすることの要請が強い。本発明は、不活性ガスによる融解処理式元素分析におけるバッチ処理測定方法の特質、および水素に対する選択性の高い水素吸蔵合金の特性を活用し、ガス分析計の校正ガス供給流路に水素吸蔵合金を配設することによって、高圧の水素ガス自体を不要とするとともに、水素に対して測定精度の高い元素分析方法および元素分析装置を提供することを可能としたものである。
【0013】
つまり、金属等の試料を不活性ガス(例えば、ヘリウムガスやアルゴンガスなど)雰囲気で融解処理(一次処理)して得られたサンプルガス中の水素、あるいは初期的に校正ガス中の水素を一時的に冷却状態の水素吸蔵合金に吸蔵させ、その後水素吸蔵合金を加熱状態にして特定のキャリアガス(例えばアルゴンガス)によるパージをしながら校正ガスとして使用することによって、高圧の水素ガスなしで、水素ガス分析計の感度校正を行うことが可能となった。特に、校正ガス中の水素濃度は確定的であるとともに、水素ガス分析計によって測定された後のサンプルガス中の水素濃度の正確性は確保されていることから、こうした水素を吸蔵し放出することによって、高圧の水素ガスと同等の精度の高い感度校正用のガスとして使用することが可能である。
【0014】
本発明は、上記不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の元素分析方法であって、前記水素処理部が配設された流路が、前記ガス分析計の排出ガス流路であり、冷却状態の該水素処理部に対して分析計の排出ガスを流通するとともに、前記ガス分析計の校正時に、加熱状態に切り換えた該水素処理部に対して特定のキャリアガスを流通することを特徴とする。
【0015】
試料中の元素分析装置の生産・調整時あるいは出荷直前には、既知濃度の校正ガスを用いて水素ガス分析計の感度校正を行う調整作業を含む工程がある。このとき、上記のように、校正ガス中の水素濃度は確定的であることから、これを一時的にガス分析計の排出ガス流路に配設された水素処理部に内臓された冷却状態の水素吸蔵合金に吸蔵することによって、現場に設置された後に、高圧の水素ガスなしで水素ガス分析計の感度校正を行うことが可能となる。また、同様に現場で実際に稼動した後においては、校正された水素ガス分析計によって測定された後のサンプルガス中の水素濃度の正確性は確保されていることから、これを一時的にガス分析計の排出ガス流路に配設された水素吸蔵合金に吸蔵することによって、高圧の水素ガスなしで水素ガス分析計の感度校正を行うことが可能となる。
【0016】
本発明は、上記不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の元素分析方法であって、前記ガス分析計の感度校正用ガス流路に、複数の前記水素処理部を配設し、1の水素処理部を加熱状態として特定のキャリアガスを流通して前記ガス分析計の感度校正を行うとともに、冷却状態の他の水素処理部に対して前記校正後のキャリアガスを流通することを特徴とする。
【0017】
上記のように、本元素分析方法は、サンプルガス中の水素を一時的に冷却状態の水素吸蔵合金に吸蔵させ、その後水素吸蔵合金を加熱状態にしてキャリアガスによるパージをしながらガス分析計の感度校正を行うことを基本とする。1つの水素吸蔵合金によってこの処理を行う場合、パージされた校正ガスは何ら変質することなくガス分析計を通過する。本発明は、複数の水素処理部を並列に配設し、1の水素処理部の放出によるガス分析計の感度校正と他の水素処理部による校正ガスの吸蔵を同時平行的に行うことによって、1度校正に用いた校正ガスを循環的に次の校正時にも使用することを可能とした。このように複数の水素処理部の吸蔵工程と放出工程の組合せによって、高圧の水素ガスなしで、正確な水素ガス分析計の感度校正を行うことが可能となった。
【0018】
本発明は、上記不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の元素分析方法であって、前記処理によって得られたサンプルガスに対して所定の二次処理を行うサンプルガス二次処理系に、1の前記水素処理部を配設し、冷却状態の該水素処理部に対して上流からサンプルガスを流通した後、加熱状態の該1の水素処理部に対して特定のキャリアガスを流通してサンプルガス中の水素を測定するとともに、前記ガス分析計の排出ガス流路に、他の水素処理部を配設し、冷却状態の該他の水素処理部に対してサンプルガスを流通し、前記ガス分析計の感度校正時に、加熱状態に切り換えた該他の水素処理部に対して特定のキャリアガスを流通することを特徴とする。
【0019】
水素吸蔵合金は、低温条件下において水素の高い吸蔵・分別機能を有するとともに、高温条件下において脱離・放出能力も高いという特性を有している。本発明は、こうした機能・特性を活用し、サンプルガス二次処理系に設けられた1の水素処理部によって複数の元素が共存するサンプルガスから水素を選択的に捕集し、測定対象として適切な処理を行うとともに、ガス分析計の排出ガス流路に設けられた他の水素処理部によってこうした水素を吸蔵し放出することによって、感度校正用のガスとして使用することを可能にしたものである。つまり、水素ガス分析計によって測定された後のサンプルガス中の水素濃度の正確性は確保されていることから、高圧の水素ガスと同等の精度の高い感度校正用のガスとして使用することができ、高圧の水素ガスなしで水素ガス分析計の感度校正を行い、測定値に対する信頼性の確保し、測定精度の高い水素または水素を含む元素分析方法および元素分析装置を提供することを可能にした。
【0020】
本発明は、上記不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の元素分析装置であって、前記ガス分析計のサンプルガス導入流路に、ガスドージング用キャピラリーを配設することを特徴とする。
【0021】
サンプルガス二次処理系に設けられた水素処理部においては、大小様々な濃度の水素が含まれるサンプルガスが流通する。従って、水素処理部に貯蔵される水素が、一時的校正ガスとして用いるには多すぎる場合がある。また、金属等の試料の量や特性などによって一次処理において使用する不活性ガス(例えばヘリウムガスやアルゴンガス)を変更することがあり、このときガス分析計に導入するガス容量を一定とするためにガスドージングを行う場合がある。本発明は、こうした測定条件を考慮し、ガス分析計のサンプルガス導入流路にガスドージング用キャピラリーを配設したもので、サンプルガスと校正ガスを常に同一条件で一定量をガス分析計に導入することによって、精度の高い感度校正を行い、測定値に対する信頼性の確保することを可能とした。
【0022】
本発明は、上記不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の元素分析方法であって、前記水素吸蔵合金がAB5系の水素吸蔵合金を基本組成とする水素吸蔵合金であることを特徴とする。
【0023】
上記のように、元素分析装置の校正精度の面からは、水素吸蔵合金の水素選択性および吸蔵・放出能力といった機能性の高さが重要である一方、元素分析装置の構成からは、周囲温度条件で作動する手段によってサンプルガスを二次処理することが好ましい。本発明においては、標準分解温度が50℃程度以下の金属結合型水素化物でいわゆるAB5系の水素吸蔵合金を基本組成とした水素吸蔵合金を利用することにより、高い機能性を有するとともに、水素処理部を50℃以上の高温に加熱する必要性がなく、ほぼ常温での脱水素反応が可能となった。従って、高圧の水素ガスなしで水素ガス分析計の感度校正を行うことができるとともに、装置の簡素化および省電力設計が可能となった。なお、ここでいう「AB5系の水素吸蔵合金」とは、具体的には、ランタン−ニッケル系(以下「La−Ni系」と表記する。)などを基本組成とした水素吸蔵合金(LaNi,MmNiなど)をいい、詳細は後述する。
【発明の効果】
【0024】
以上のように、本発明によって、不活性ガス融解による水素または水素を含む元素分析において、測定値に対する信頼性の確保しつつ、校正ガスとして高圧の水素ガスを用いることなく、測定精度の高い元素分析方法および元素分析装置を提供することが可能となった。特に、サンプルガス中の水素を校正ガスとして使用することができることによって、高圧の水素ガスの補充の必要もなく、現場での元素分析方法および元素分析装置として従前にない優れた効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。この発明に係る不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の水素または水素を含む複数の元素を測定対象とする元素分析装置(以下「本装置」という。)は、試料を融解処理する一次処理系、サンプルガス二次処理流路、および二次処理されたサンプルガス中の水素を測定する水素ガス分析計を有し、該ガス分析計の感度校正用ガス流路中に、水素吸蔵合金を収容し加熱手段・冷却手段を有する水素処理部を配設可能な構成からなる。
【0026】
<本装置の第1構成例>
図1は、本装置の第1構成例として、試料中の元素として水素を測定対象の1つとする場合を例示する。第1構成例においては、融解炉1において不活性ガス雰囲気で融解処理し、得られたサンプルガス中の水素を熱伝導度検出式分析計(TCD)2で測定する場合を、その一例として説明する。適切な二次処理を行うことによって他の共存成分の影響を排除し、かつ各測定成分に対応した測定法を選択することによって測定値に対する信頼性および高い測定精度を有する元素分析方法を確保する場合に適している。むろん、他の測定対象として、窒素をTCDで測定し、同じく酸素成分を、一酸化炭素として直接赤外線吸光式分析計(NDIR)で、もしくは二酸化炭素に変換した後にNDIRで測定することも可能であり、各測定対象に対し、適切な二次処理を行うことによって他の共存成分の影響を排除し、かつ各測定成分に対応した測定法を選択することによって、測定値に対する信頼性および高い測定精度を有する元素分析方法を確保することができる。
【0027】
〔第1構成例における測定・校正操作について〕
第1構成例は、融解炉1における一次処理系10とサンプルガス二次処理流路における二次処理系20とからなり、図1に例示する構成において、以下の手順に沿って、測定・校正操作される。
【0028】
(a1)一次処理系10
(a1−1)黒鉛ルツボ1a内に金属等の試料Sを投入し、この黒鉛ルツボ1aを融解炉1内部にセットする。
(a1−2)不活性ガス(例えばアルゴンガス、以下「Ar」という。)を融解炉1に導入し、黒鉛ルツボ1a内の試料SをAr雰囲気とする。融解炉1は、試料Sに対し短時間で高温化することができることが好ましく、電極炉あるいは高周波炉などが好適である。
(a1−3)アルゴン雰囲気において融解炉1を作動させ、試料Sを融解処理する。融解処理開始から所定時間(サンプルガス導入時間)Taの間、融解炉1内にArを流通させ、得られたサンプルガスを、二次処理系20に導入する。このとき、サンプルガス中には、Arをベースとして、水素ガス、窒素ガス、一酸化炭素および微量の二酸化炭素が含まれる。Arは、測定成分を含むサンプルガスを二次処理系20から排出するための時間Tb分をさらに流通させる。このとき、所定流量Laに設定することによって、サンプルガスの総量V( V=La×Ta )を設定することができる。
【0029】
(b1)二次処理系20による試料中の水素成分の測定
(b1−1)図2(A)に例示するように、融解炉1からのサンプルガスを、フィルタ4によって除塵し、二次処理部6によって清浄化した後、切換弁9aを介して、TCD2に導入する。これによって、サンプルガス中の水素を測定することができる。このとき、サンプルガス導入時間Taの間の測定値を積算することによって、試料中の水素成分を測定することができる。
(b1−2)二次処理部6において、サンプルガスは、予め所定の温度に加熱した炭素処理部(図示せず)に導入され、サンプルガス中の一酸化炭素が内蔵された有酸素酸化剤(図示せず)によって酸化され、二酸化炭素に変換される。次に、このサンプルガスは、二酸化炭素処理部(図示せず)に導入され、サンプルガス中の二酸化炭素が除去される。さらに、ここで発生した水分を含むサンプルガスを、水分処理部(図示せず)に導入し、サンプルガス中の水分が除去される。このように清浄化されたサンプルガスが二次処理部6から供出される。ただし、試料の性状によっては、これらの処理のいくつかあるいは全てを省略することが可能である。
【0030】
(c1)二次処理系20におけるTCDの校正
TCD2の水素ガス分析計としての校正には、ゼロ校正と感度校正(スパン校正)があるが、本装置の場合には、ゼロ校正は、通常必要とされない。つまり、上記(b1−1)において、サンプルガス中の水素がTCD2に導入されて出力の変化が生じるまでの不活性ガスのみを測定しているTCD2の出力が、ゼロであり、毎回の測定の基準として実質的にゼロ校正が行われることになる。また、本装置におけるTCD2のスパン校正については、次の2つの段階によって構成される。
【0031】
(c1−1)本装置の始動時においては、予め冷却状態の水素吸蔵合金(以下、図3を除き図示せず)に吸蔵された校正ガス中の水素を使用することができる。つまり、元素分析装置の生産・調整時あるいは出荷直前のTCD2のスパン校正を行う調整作業を含む工程において、既知の水素濃度の校正ガスを所定時間水素処理部5に導入して冷却状態の水素吸蔵合金に吸蔵することによって、一定量の水素を安定的に固定することができる。従って、現場に設置された後に、水素処理部5を加熱状態としキャリアガス(例えば、Ar)を流通することによって、高圧の水素ガスなしでTCD2のスパン校正を行うことが可能となる。具体的には、図2(B)に例示するように、予め加熱状態とした水素処理部5に切換弁9dを作動してArを導入し切換弁9aを作動することによって、水素吸蔵合金に吸蔵されていた水素が放出されて順次TCD2に導入される。校正ガス導入時間Tsの間の測定値を積算することによって、校正ガスとしての水素の総量を測定することができ、校正ガス中の水素濃度は確定的であることから、この測定値を基準にTCD2のスパン校正を行うことができる。
【0032】
(c1−2)始動時に校正された本装置は、その後定期的にあるいは毎回の測定開始前に校正することが好ましい。最初は、(c1−1)で校正されたTCD2において測定された後のサンプルガス中の水素を使用することができる。つまり、測定されたサンプルガス中の水素濃度の正確性は確保されていることから、これを一時的にTCD2の排出ガス流路に配設された水素吸蔵合金に吸蔵することによって、既知量の水素を安定的に固定することができる。従って、水素処理部5を加熱状態としArを流通することによって、TCD2のスパン校正を行うことが可能となる。具体的には、(c1−1)で校正した後、図2(C)に例示するように、(b1−1)と同様、融解炉1からのサンプルガスを、フィルタ4によって除塵し、二次処理部6によって清浄化した後、切換弁9aを介してTCD2に導入するとともに、切換弁9bおよび9cを作動させてTCD2の排出ガスを冷却状態の水素吸蔵合金に吸蔵する。
【0033】
(c1−3)次に、TCD2のスパン校正時に、(c1−1)と同様、図2(B)に例示するように、予め加熱状態とした水素処理部5に切換弁9dを作動してArを導入し切換弁9aを作動することによって、水素吸蔵合金に吸蔵されていた既知量の水素が放出されて順次TCD2に導入される。校正ガス導入時間Tsの間の測定値を積算することによって、TCD2のスパン校正を行うことができる。以降(c1−2)および(c1−3)を繰り返すことによって、TCD2によって確定され水素吸蔵合金に吸蔵される既知量の水素を構成ガスとして使用することができ、高圧の水素ガスなしでTCD2のスパン校正を行うことが可能となる。
【0034】
以上の操作において、融解炉1を含む各処理部は、操作制御部30によって、事前の準備およびその動作を調整・制御されることが好ましい。試料の組成や性状、あるいは特異な分析条件などの入力操作を可能にし、こうした入力を基に、融解炉1における電極炉あるいは高周波炉の作動やArの導入量など、分析計の校正を含む元素分析装置の全体を制御するとともに、TCD2からの出力信号に基づく濃度演算などを行うことが好ましい。
【0035】
〔水素処理部について〕
水素処理部5は、水素吸蔵合金を内蔵し、加熱・冷却が可能な構造を有するものであれば特に制限はないが、例えば、図3に示すような構造が好ましい。具体的には、水素吸蔵合金51を収容するサンプルガス流通部52、サンプルガス流通部52を加熱する加熱手段53を有するとともに、冷却ガス導入口54、障壁部55、整流体56を介してサンプルガス流通部52に吹き付けられ冷却ガス出口57から排出される冷却ガスの流路を有する冷却手段を有する。障壁部55によって導入ガス流を分散し、整流体56によって導入ガス流を均等に分散し、ガス流サンプルガス流通部52に対して均等かつ効率的に冷却ガスが働くようにすることによって、効率的かつ迅速な冷却が可能となる。また、冷却ガスとして、本装置のオペレーションガスであるHeあるいはArを使用することが好ましい。動力源を不要とし、かつ迅速な冷却が可能となる。
【0036】
〔水素吸蔵合金について〕
水素処理部5に内蔵される水素吸蔵合金とは、水素に出会うと発熱しながら水素を吸収し、逆に熱を加えると水素を放出する可逆特性を有する合金をいい、具体的には、チタン−鉄系、La−Ni系、マグネシウム−ニッケル系などの合金を挙げることができる。水素吸蔵合金の種類によって、金属結合型水素化物、共有結合型水素化物あるいはイオン結合型水素化物などの金属水素化物を形成し、高圧ガス容器に封入した場合に比較して、約6〜7倍の密度の水素収容能力を有している。
【0037】
水素吸蔵合金の代表的な組成について表1に示す。
【表1】

【0038】
特に、本発明における検証結果では、いわゆるAB5系の水素吸蔵合金を用いることによって、低温での水素の安定な吸蔵機能を確保することが可能となった。ここで、AB5系の水素吸蔵合金とは、Aとして希土類元素、ニオブ、ジルコニウムあるいはミッシュメタルMm(発火合金:希土類元素同士あるいはそれに他元素を添加した合金やZn−Sn系あるいはU−Fe系合金などをいう)などの元素を1としたときに、Bとして触媒効果を持つ遷移元素(Al、Co、Cr、Fe、Mn、Ni、Ti、V、ZnあるいはZrなど)を5含む合金をベースとしたものであり、表1におけるLaNiやMmNiやCaNiなどを挙げることができる。
【0039】
また、こうした高密度の水素吸蔵特性に加え、水素吸蔵合金には、以下に示すような種々の優れた特性があり、本発明においては、その特性を有効に活かすことによって、優れた機能を実現している。
【0040】
(1)超高純度で安定した水素を放出することが可能
水素吸蔵合金は、水素と選択的に反応して高純度の金属水素化物を形成するとともに、高純度の原料水素を吸蔵することから、超高純度(99.999%以上)で安定した水素の放出が可能となる。従って、本装置のように、サンプルガス中の水素成分を一旦バッチ的に吸蔵した後、Arを用いて水素吸蔵合金から放出された場合、Arを除く水素の純度は非常に高く、これをTCD2によって測定することによって、選択性の高い高精度の測定値を得ることができる。
【0041】
(2)吸蔵状態における気相圧力を低くすることが可能
操作温度における吸蔵時の使用圧力は常圧以下であり、放出時の解離圧が0.2〜0.5MPa程度であることからArをキャリアとする場合には、略常圧において操作することが可能である。
【0042】
(3)低温での水素供給操作が可能
上記のように、水素を酸化する方法の場合には高温での操作が必要となり、供給電源の容量のアップや高温の形成・維持のための部材の追加などによって小型化に対する障害となる。本発明においては、標準分解温度が50℃程度以下の金属結合型水素化物でAB5系を基本組成とした水素吸蔵合金を利用することが好適である。これによって、水素処理部5を、100℃を超えるような高温に加熱する必要性がなく、ほぼ常温での脱水素反応が可能となった。従って、分析計および配管系を高温型仕様にすることなく、測定装置の簡素化および省電力設計が可能となった。
【0043】
(4)初期活性が容易で、迅速な吸蔵・放出が可能
初期活性とは水素を初めて金属に吸蔵することをいい、水素吸蔵合金は、吸蔵に対する高い活性度を有するとともに、温度を操作要素として吸蔵した水素を迅速に放出することができる。金属水素化物が有する特性を有効に活かしたもので、可逆的に何度も利用することができることから、高い資源の利用性を有し、ランニングコストを抑えることも可能となる。また、水素吸蔵合金における吸蔵および放出過程の間での平衡水素圧力の差(ヒステリシス)が小さい点についても、可逆的に再使用を行う操作上優れた特性といえる。さらに金属を主体とした合金であることから、良好な熱伝導性を有しており加熱あるいは冷却などの操作を容易に行うことができる。
【0044】
(5)耐被毒性
水素吸蔵合金は、酸素、一酸化炭素、水分などの不純物に対する被毒に強く、優れた耐食性を有している。つまり、未使用状態においても水素供給手段に対して特別な処理を行う必要がなく、移動後に速やかな使用条件を確保することが可能である。
【0045】
以上の利点を生かすことによって、本発明の目的である、校正ガスとして高圧の水素ガスを用いることなく、水素ガス分析計のスパン校正手段の確保ができるとともに、安全性を確保しながら迅速な操作の切換が可能となる。特に、標準分解温度が50℃程度以下の金属結合型水素化物でAB5系を基本組成とした水素吸蔵合金を利用することによって、水素処理部5を高温に加熱する必要性がなく、ほぼ常温での水素の吸蔵・放出が可能となる。
【0046】
<本装置の第2構成例>
図4(A)は、本装置の第2構成例として、1度校正に用いた校正ガスを循環的に次の校正時にも使用することが可能な構成を例示する。第2構成例は、第1構成例の構成要素を用いつつ、2つの水素処理部5a,5bを配設し、両者の一端が切換弁9c,9fを介してTCD2に接続され、両者の他端が切換弁9d,9gを介してArの導入路に接続される。一方を放出過程としたときに他方を吸蔵過程として並列的に機能させることによって、一方から放出された水素によるガス分析計のスパン校正と他方による校正ガスの吸蔵を同時平行的に行うことができ、1度校正に用いた校正ガスを循環的に次の校正時にも使用することが可能となり、高圧の水素ガスなしで、正確なTCD2のスパン校正を行うことが可能となった。
【0047】
第2構成例は、第1構成例同様、融解炉1における一次処理系10とサンプルガス二次処理流路における二次処理系20とからなり、図4(A)に例示する構成において、以下の手順に沿って、測定・校正操作される。
【0048】
(a2)一次処理系10
(a2−1)〜(a2−3)につき、第1構成例(a1−1)〜(a1−3)と同様であり、説明は省略する。
【0049】
(b2)二次処理系20による試料中の水素成分の測定
(b2−1)〜(b2−2)につき、第1構成例(b1−1)〜(b1−2)と同様であり、説明は省略する。
【0050】
(c2)二次処理系20におけるTCDの校正
TCD2のゼロ校正は、第1構成例と同様であり、説明は省略する。本装置におけるTCD2のスパン校正については、次の2つの段階によって構成される。
【0051】
(c2−1)本装置の始動時においては、予め冷却状態の水素吸蔵合金に吸蔵された校正ガス中の水素を使用することができる。つまり、第1構成例と同様、元素分析装置の生産・調整時あるいは出荷直前のTCD2のスパン校正を行う調整作業を含む工程において、既知の水素濃度の校正ガスを所定時間水素処理部5aまたは5bに導入して冷却状態の水素吸蔵合金に吸蔵することによって、一定量の水素を安定的に固定することができる。従って、現場に設置された後に、水素処理部5または5bを加熱状態としArを流通することによって、高圧の水素ガスなしでTCD2のスパン校正を行うことが可能となる。具体的には、図4(B)に例示するように、予め水素処理部5aにのみ水素を吸蔵しておいた場合について説明する。予め加熱状態とした水素処理部5aに切換弁9gおよび9fを作動してArを導入し切換弁9aを作動することによって、水素吸蔵合金に吸蔵されていた水素が放出されて順次TCD2に導入される。校正ガス導入時間Tsの間の測定値を積算することによって、校正ガスとしての水素の総量を測定することができ、校正ガス中の水素濃度は確定的であることから、この測定値を基準にTCD2のスパン校正を行うことができる。と同時に、切換弁9bおよび9cを作動してTCD2からの排出ガスを、予め冷却状態とした水素処理部5bに導入し切換弁9dおよび9eを作動することによって、水素吸蔵合金に吸蔵された水素を除くArが切換弁9eを介して排出される。このとき、スパン校正前に水素処理部5aに吸蔵されていた水素が、スパン校正後において、そのまま水素処理部5bに吸蔵されることとなり、次のスパン校正時においては、水素処理部5bに吸蔵された水素を使用してスパン校正を行うことが可能となる。
【0052】
(c2−2)始動時以後の定期的にあるいは測定開始前の校正については第1構成例と同様であり、水素処理部5bに吸蔵された水素を使用してスパン校正を行うことが可能となる。具体的には、図4(C)に例示するように、予め加熱状態とした水素処理部5bに切換弁9gおよび9fを介してArを導入し切換弁9aを作動することによって、水素吸蔵合金に吸蔵されていた水素が放出されて順次TCD2に導入される。校正ガス導入時間Tsの間の測定値を積算することによって、校正ガスとしての水素の総量を測定することができ、この測定値を基準にTCD2のスパン校正を行うことができる。
と同時に、切換弁9bおよび9eを作動してTCD2からの排出ガスを、切換弁9cを介して予め冷却状態とした水素処理部5bに導入し、水素吸蔵合金に吸蔵された水素を除くArが切換弁9dおよび9eを介して排出される。このように、TCD2によって確定され水素吸蔵合金に吸蔵される既知量の水素を構成ガスとして使用することができ、高圧の水素ガスなしでTCD2のスパン校正を行うことが可能となる。
【0053】
(c2−3)第2構成例においても、第1構成例と同様、(c2−1)あるいは(c2−2)で校正されたTCD2において測定された後のサンプルガス中の水素を使用することができる。つまり、測定されたサンプルガス中の水素濃度の正確性は確保されていることから、これを一時的にTCD2の排出ガス流路に配設された水素吸蔵合金に吸蔵することによって、既知量の水素を安定的に固定することができる。従って、水素処理部5aまたは5bを加熱状態としArを流通することによって、TCD2のスパン校正を行うことが可能となる。具体的には、(c2−1)あるいは(c2−2)で校正した後、図4(D)に例示するように、第1構成例(b1−1)と同様、融解炉1からのサンプルガスを、フィルタ4によって除塵し、二次処理部6によって清浄化した後、切換弁9aを介してTCD2に導入するとともに、切換弁9bおよび9cを作動させてTCD2の排出ガスを冷却状態の水素吸蔵合金に吸蔵する。
【0054】
<本装置の第3構成例>
図5A(A)は、本装置の第3構成例として、水素処理部をサンプルガス二次処理に使用するとともに、スパン校正時にも使用することが可能な構成を例示する。第3構成例は、第1構成例および第2構成例の構成要素を用いつつ、2つの水素処理部5a,5bをサンプルガス二次処理系に配設し、両者の一端が切換弁9a,9cを介してTCD2に接続され、両者の他端が切換弁9d,9gを介してArの導入路に接続されるとともに9eを介して排出流路と接続される。水素吸蔵合金が有する低温条件下における水素の高い吸蔵・分別機能を利用してサンプルガスから水素を選択的に捕集した一方の水素処理部5aを放出過程としたときに他方を吸蔵過程として並列的に機能させることによって、一方から放出された水素によるガス分析計のサンプルガス中の水素測定と、他方によるサンプルガス中の水素の吸蔵を同時平行的に行うことができ、測定されたサンプルガス中の水素を次の校正時に使用することが可能となり、高圧の水素ガスなしで、正確なTCD2のスパン校正を行うことが可能となった。
【0055】
第3構成例は、第1構成例および第2構成例同様、融解炉1における一次処理系10とサンプルガス二次処理流路における二次処理系20とからなり、図5A(A)に例示する構成において、以下の手順に沿って、測定・校正操作される。主として、図5A(B)実線に例示するように、水素処理部5aを測定用に用いた場合について説明する。
【0056】
(a3)一次処理系10
(a3−1)〜(a3−3)につき、第1構成例(a1−1)〜(a1−3)と同様であり、説明は省略する。
【0057】
(b3)二次処理系20による試料中の水素成分の測定
(b3−1)図5A(B)実線に例示するように、融解炉1からのサンプルガスを、フィルタ4によって除塵し、二次処理部6によって清浄化した後、切換弁9dを介して予め冷却され低温状態にある水素処理部5aに導入する。ここで、サンプルガス中の水素は、内蔵された水素吸蔵合金に吸蔵され、水素が除去されたサンプルガスが水素処理部5aから供出される。供出されたサンプルガスは、切換弁9aを介してTCD2に導入され、切換弁bを介して排出される。このとき、TCD2は水素のないArをベースガスとするサンプルガスであり、ゼロ校正を行うことができる。
(b3−2)融解処理開始からTa経過後、図5A(C)実線に例示するように、水素処理部5aの上流に設置された切換弁9gおよび9dを作動させ、キャリアガス導入路からArを水素処理部5aに導入し、内部の流路をパージする。パージガスは、TCD2および切換弁9bを介して排出される。ここで、Arの導入は、十分なパージ時間が確保できる場合には、図5A(C)実線に例示するように、同一方向からの処理する構成とすることが可能である。ただし、水素処理部5aの下流から行うことも、吸蔵過程と放出過程を向流とすることによって、効率的に各過程を機能させることができることから好ましい。
(b3−3)所定時間Tbのパージ完了後、Arの導入を一端停止し、水素処理部5aを加熱し高温状態にする。
(b3−4)水素処理部5aの温度が十分に上昇した状態で、再度、所定流量LbのArを水素処理部5aに導入する。水素吸蔵合金に吸蔵されていた水素が放出され、水素を含むキャリアガスが、水素処理部5aから供出される。
(b3−5)水素処理部5aからのキャリアガスを、所定時間Tc切換弁9aを介してTCD2に導入する。これによって、キャリアガス中の水素を測定することができる。このとき、所定時間(キャリアガス導入時間)Tcの測定値を積算することによって、試料中の水素成分を測定することができる。TCD2から排出されるキャリアガスは、切換弁9eを介して排出される。また、このとき、水素処理部5aはArによってパージされた状態になり、冷却状態にすることによって、次の測定における水素の選択的吸蔵・分離機能を有する状態とすることができる。
(b3−6)水素処理部5bを測定用に用いた場合は、図5A(B)破線に例示するように、サンプルガスあるいはArガスを水素処理部5bに導入し、同様の操作を行うことによって、測定することができる。
【0058】
(c3)二次処理系20におけるTCD2の校正
TCD2のゼロ校正は、第1構成例および第2構成例と同様であり、説明は省略する。本装置におけるTCD2のスパン校正については、次の2つの段階によって構成される。
【0059】
(c3−1)本装置の始動時においては、予め冷却状態の水素吸蔵合金に吸蔵された校正ガス中の水素を使用することができる。つまり、第1構成例および第2構成例と同様、元素分析装置の生産・調整時あるいは出荷直前のTCD2のスパン校正を行う調整作業を含む工程において、既知の水素濃度の校正ガスを所定時間水素処理部5aまたは5bに導入して冷却状態の水素吸蔵合金に吸蔵することによって、一定量の水素を安定的に固定することができる。従って、現場に設置された後に、水素処理部5aまたは5bを加熱状態としArを流通することによって、高圧の水素ガスなしでTCD2のスパン校正を行うことが可能となる。具体的には、図5B(D)に例示するように、予め水素処理部5bにのみ水素を吸蔵しておいた場合について説明する。予め加熱状態とした水素処理部5bに切換弁9gを作動してArを導入し切換弁9aを作動することによって、水素吸蔵合金に吸蔵されていた水素が放出されて順次TCD2に導入される。校正ガス導入時間Tsの間の測定値を積算することによって、校正ガスとしての水素の総量を測定することができ、校正ガス中の水素濃度は確定的であることから、この測定値を基準にTCD2のスパン校正を行うことができる。
と同時に、切換弁9bおよび9cを作動してTCD2からの排出ガスを、予め冷却状態とした水素処理部5aに導入し切換弁9eを作動することによって、水素吸蔵合金に吸蔵された水素を除くArが切換弁9eを介して排出される。このとき、スパン校正前に水素処理部5bに吸蔵されていた水素が、スパン校正後において、そのまま水素処理部5aに吸蔵されることとなり、次のスパン校正時においては、水素処理部5aに吸蔵された水素を使用してスパン校正を行うことが可能となる。
【0060】
(c3−2)始動時以後の定期的にあるいは測定開始前の校正については第1構成例および第2構成例と同様であり、水素処理部5aまたは5bのいずれかに校正ガスとして吸蔵された水素を使用してスパン校正を行うことが可能となる。水素処理部5aを使用する場合は、図5B(E)に例示するように、切換弁9gおよび9dを作動して予め加熱状態とした水素処理部5aにArを導入し、切換弁9aを作動することによって水素吸蔵合金に吸蔵されていた水素が放出されて順次TCD2に導入される。校正ガス導入時間Tsの間の測定値を積算することによって、校正ガスとしての水素の総量を測定することができ、この測定値を基準にTCD2のスパン校正を行うことができる。
と同時に、切換弁9bを作動してTCD2からの排出ガスを、切換弁9cを介して予め冷却状態とした水素処理部5bに導入し、水素吸蔵合金に吸蔵された水素を除くArが切換弁9eを介して排出される。以降図5B(D)および(E)に例示するように、一方の水素処理部を校正時に使用すると同時に他の水素処理部を校正ガスの吸蔵処理を行うことを繰り返すことによって、高圧の水素ガスなしでTCD2のスパン校正を行うことが可能となる。
【0061】
(c3−3)第3構成例においても、第1構成例および第2構成例と同様、(c3−1)あるいは(c3−2)で校正されたTCD2において測定された後のサンプルガス中の水素を使用することができる。具体的には、(c3−1)あるいは(c3−2)で校正した後、(b3−1)図5A(B)実線によって水素処理部5aに吸蔵させたサンプルガス中の水素を、図5B(E)に例示するように、既知濃度の校正ガスとして使用するとともに、水素処理部5bに吸蔵させることによって、次の校正ガスとして使用することができる。あるいは、(b3−6)図5A(B)破線によって水素処理部5bに吸蔵させたサンプルガス中の水素を、図5B(D)に例示するように、既知濃度の校正ガスとして使用するとともに、水素処理部5aに吸蔵させることによって、次の校正ガスとして使用することができる。
【0062】
<本装置の第4構成例>
図6は、本装置の第4構成例として、サンプルガスや校正ガスを常に同一条件で一定量をガス分析計に導入することが可能な構成を例示する。金属等の試料の量や特性、あるいは試料の組成などによってサンプルガスの性状が異なることがあることから、サンプルガスあるいは校正ガスを常に同一条件で一定量をガス分析計に導入することによって、精度の高い感度校正を行い、測定値に対する信頼性の確保することができる。具体的には、図6に例示するように、第3構成例の構成要素を用いつつ、ガスドージング用キャピラリーGをバイパス流路bと並列的に接続された状態で、サンプルガス二次処理系に配設された2つの水素処理部5a,5bとTCD2の中間に、配設される。キャピラリーGとバイパス流路bは、切換弁hによって切換が可能である。
【0063】
具体的な操作は、まず、キャピラリーGにサンプルガスを流通させてサンプルガスを充当した状態で切換弁hを作動し、その後バイパス流路を含め所定時間Arで流路をパージする。このとき、所定の水素濃度を含む定量のサンプルガスが、キャピラリーGに封じられる。次に、切換弁9aを介してTCD2にArを流通させながら、切換弁hを元に戻してキャピラリーGに封じられたサンプルガスを押し出しTCD2にて測定する。こうした操作によって、常に定容量のサンプルガスあるいは校正ガスをTCD2にて測定することができ、精度の高い感度校正を行い測定値に対する高い信頼性の確保することが可能となった。
【0064】
<本装置の第5構成例>
図7(A)は、本装置の第5構成例として、試料中の元素として水素/酸素/窒素を測定対象とする場合を例示する。第5構成例においては、融解炉1において不活性ガス雰囲気で融解処理し、得られたサンプルガス中の水素および窒素をTCD2で測定し、同じく酸素を二酸化炭素に変換した後、NDIR3で測定する。各測定対象に対し、適切な二次処理を行うことによって他の共存成分の影響を排除し、かつ各測定成分に対応した測定法を選択することによって測定値に対する信頼性および高い測定精度を有する元素分析方法を確保する場合に適している。具体的な実施態様として、測定手段をTCD2およびNDIRとしてCO分析計3を用いた場合を、その一例として説明する。
【0065】
第5構成例は、融解炉1における一次処理系10とサンプルガス二次処理流路における二次処理系20とからなり、図7に例示する構成において、以下の手順に沿って分析される。
【0066】
(a5)一次処理系10
(a5−1)〜(a5−3)につき、第1構成例(a1−1)〜(a1−3)と同様であり、主たる説明は省略する。ただし、(a5−2)につき、不活性ガスとして窒素と熱伝導度が近いArではなく、例えば、ヘリウムガス(以下「He」という。)のように窒素と熱伝導度が相違するガスを融解炉1に導入することが好ましい。
【0067】
(d5)二次処理系20による試料中の酸素成分の測定
(d5−1)融解炉1からのサンプルガスを、フィルタ4によって除塵・清浄化した後、予め冷却され低温状態にある水素処理部5aに導入する。ここで、サンプルガス中の水素は、内蔵された水素吸蔵合金に吸蔵され、水素が除去されたサンプルガスが水素処理部5aから供出される。
(d5−2)水素処理部5aからのサンプルガスを、予め所定の温度に加熱した炭素処理部6aに導入する。ここで、サンプルガス中の一酸化炭素は、内蔵された有酸素酸化剤(図示せず)によって酸化され二酸化炭素に変換される。二酸化炭素を含むサンプルガスが炭素処理部6aから供出される。
(d5−3)炭素処理部6aからのサンプルガスを、CO分析計3に導入する。これによって、サンプルガス中の二酸化炭素を測定することができる。このとき、サンプルガス導入時間Taの間の測定値を積算することによって、試料中の酸素成分を測定することができる。
【0068】
(e5)二次処理系20による試料中の窒素成分の測定
(e5−1)上記CO分析計3からのサンプルガスを、二酸化炭素処理部7に導入する。ここで、サンプルガス中の二酸化炭素が除去されたサンプルガスが二酸化炭素処理部7から供出される。
(e5−2)二酸化炭素処理部7からのサンプルガスを、水分処理部8に導入する。ここで、サンプルガス中の水分が除去されたサンプルガスが水分処理部8から供出される。
(e5−3)水分処理部8からのサンプルガスを、TCD2に導入する。これによって、サンプルガス中の窒素を測定することができる。このとき、サンプルガス導入時間Taの間の測定値を積算することによって、試料中の窒素成分を測定することができる。
【0069】
(b5)二次処理系20による試料中の水素成分の測定
(b5−1)融解処理開始からTaに加え、試料中の測定成分を含むサンプルガスがTCD2を通過し測定が完了した時間Td経過後、図7(B)に例示するように、水素処理部5aの上流に設置された切換弁9aおよび下流に設置された切換弁9bを作動させ、Arを水素処理部5aに導入し、内部の流路をパージする。
(b5−2)所定時間Tbのパージ完了後、Arの導入を一端停止し、水素処理部5aを加熱し高温状態にする。
(b5−3)水素処理部5aの温度が十分に上昇した状態で、再度、図7(B)に例示するように、所定流量LbのArを水素処理部5aに導入する。水素吸蔵合金に吸蔵されていた水素が脱着し、水素を含むキャリアガスが、水素処理部5から供出される。
(b5−4)水素処理部5aからのキャリアガスを、所定時間Tcの間TCD2に導入する。これによって、キャリアガス中の水素を測定することができる。このとき、所定時間(キャリアガス導入時間)Tcの測定値を積算することによって、試料中の水素成分を測定することができる。また、このとき、水素処理部5aはArによってパージされた状態になり、冷却状態にすることによって、次の測定における水素の選択的吸蔵・分離機能を有する状態とすることができる。
【0070】
(c5)二次処理系20におけるTCD2の校正
TCD2のゼロ校正は、第1〜3構成例と同様であり、説明は省略する。本装置におけるTCD2のスパン校正については、次の2つの段階によって構成される。
【0071】
(c5−1)本装置の始動時においては、予め冷却状態の水素吸蔵合金に吸蔵された校正ガス中の水素を使用することができる。つまり、第1〜3構成例と同様、元素分析装置の生産・調整時あるいは出荷直前のTCD2のスパン校正を行う調整作業を含む工程において、既知の水素濃度の校正ガスを所定時間水素処理部5bに導入して冷却状態の水素吸蔵合金に吸蔵することによって、一定量の水素を安定的に固定することができる。従って、現場に設置された後に、水素処理部5bを加熱状態としArを流通することによって、高圧の水素ガスなしでTCD2のスパン校正を行うことが可能となる。具体的には、図7(C)に例示するように、予め加熱状態とした水素処理部5bに切換弁9gを作動してArを導入し切換弁9eを作動することによって、予め水素吸蔵合金に吸蔵されていた水素が放出されて順次TCD2に導入される。校正ガス導入時間Tsの間の測定値を積算することによって、校正ガスとしての水素の総量を測定することができ、校正ガス中の水素濃度は確定的であることから、この測定値を基準にTCD2のスパン校正を行うことができる。TCD2からの排出ガスは、切換弁9cを介して排出される。
【0072】
(c5−2)始動時以後の定期的にあるいは測定開始前の校正については第1構成例と同様であり、最初は、(c5−1)で校正されたTCD2において測定された後のサンプルガス中の水素を使用することができる。具体的には、(c5−1)で校正した後、図7(D)に例示するように、(b5−4)と同様、水素処理部5aから放出された水素を含むキャリアガスをTCD2に導入するとともに、切換弁9cを作動させてTCD2の排出ガスを水素処理部5bに導入し、キャリアガス中の既知濃度の水素を冷却状態の水素吸蔵合金に吸蔵する。水素処理部5bから供出されるキャリアガスは切換弁9eを介して排出される。
【0073】
(c5−3)次に、TCD2のスパン校正時に、(c5−1)と同様、図7(C)に例示するように、予め加熱状態とした水素処理部5に切換弁9dを作動してArを導入し切換弁9aを作動することによって、水素吸蔵合金に吸蔵されていた既知量の水素が放出されて順次TCD2に導入される。校正ガス導入時間Tsの間の測定値を積算することによって、TCD2のスパン校正を行うことができる。以降(c5−2)および(c5−3)を繰り返すことによって、TCD2によって確定され水素吸蔵合金に吸蔵される既知量の水素を構成ガスとして使用することができ、高圧の水素ガスなしでTCD2のスパン校正を行うことが可能となる。
【0074】
このとき、炭素処理部6aは、サンプルガスが酸素を有していない不活性ガスをベースとしていることから、無酸素条件下で一酸化炭素を二酸化炭素に変換できる酸化反応性を有する物質として酸化銅や五酸化ヨウ素を基本組成とする試剤を用いることが好ましい。また、炭素処理部6aを水素処理部5の下流に配設することによって、水素の酸化に伴う水分の発生を回避することができる。
【0075】
二酸化炭素処理部7は、二酸化炭素の除去ができ、窒素に対して反応や吸着等によるロスの発生がなければ、特に試剤の制限はなく、アスカライト(商品名)やMS(ゼオライト系モレキュラシーブ)を基本組成とする試剤を用いることが好ましい。
【0076】
水分処理部8は、窒素の測定に際して誤差となる水分を除去するもので、窒素に対して反応や吸着等によるロスの発生がなければ、特に試剤の制限はなく、例えば、過塩素酸マグネシウムや塩化カルシウムなどを基本組成とする試剤、あるいはMSを基本組成とする試剤などを用いることができる。
【0077】
上記は、単数の水素処理部5または複数の水素処理部5a,5bを配設した構成例について挙げたが、これに加えて、同様に他の処理部についても複数並列的に配設し、一方を機能させながら、他方を再生可能とする構成を選択することも可能である。例えば、炭素処理部6として酸化銅を基本成分とする試剤を使用した場合、二酸化炭素処理部7または水分処理部8としてMSを使用した場合を挙げることができる。前者については、高温条件下において、空気など有酸素ガスを再生ガスとして使用することによって再生することが可能であり、後者については、同じく高温条件下で、上記同様オペレーションガスによって再生することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
以上は、不活性ガス融解による水素または水素を含む元素分析において、主として測定対象が水素、水素/酸素、水素/窒素、水素/酸素/窒素のいずれかの場合について述べたが、特定の元素を特定条件下で吸蔵し、他の条件下で放出することができる試剤があれば、同様の技術を適用することが可能である。例えば、試料中の硫黄などを測定対象とする場合においても、あるいは不活性ガス融解式以外の一次処理方法を用いた元素分析方法あるいは元素分析装置についても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る元素分析装置の第1構成例を示す説明図。
【図2】第1構成例に係る処理部および処理ガスの動作を例示する説明図。
【図3】本発明に係る水素処理部の構成を概略的に例示する説明図。
【図4】本発明に係る元素分析装置の第2構成例を示す説明図。
【図5A】本発明に係る元素分析装置の第3構成例を示す説明図。
【図5B】本発明に係る元素分析装置の第3構成例を示す説明図。
【図6】本発明に係る元素分析装置の第4構成例を示す説明図。
【図7】本発明に係る元素分析装置の第5構成例を示す説明図。
【図8】従来技術に係る元素分析装置の構成を例示する説明図。
【符号の説明】
【0080】
1 融解炉
1a 黒鉛ルツボ
2 熱伝導度検出式分析計(TCD)
4 フィルタ
5,5a,5b 水素処理部
6 二次処理部
9a〜9h 切換弁
10 一次処理系
20 二次処理系
30 操作制御部
S 試料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の水素または水素を含む複数の元素を測定対象とする元素分析方法であって、
前記処理によって得られたサンプルガスに対して所定の二次処理を行うサンプルガス二次処理系を介して得られたサンプルガス中の水素をガス分析計によって測定するとともに、該ガス分析計の校正ガス供給流路に水素吸蔵合金を内蔵し加熱・冷却が可能な水素処理部を配設し、冷却状態の該水素処理部に対してサンプルガスあるいは校正ガスを流通した後加熱状態に切り換えて、吸蔵した水素を含む特定のキャリアガスを前記ガス分析計に流通して、該ガス分析計の感度校正を行うことを特徴とする不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の元素分析方法。
【請求項2】
前記水素処理部が配設された流路が、前記ガス分析計の排出ガス流路であり、冷却状態の該水素処理部に対して前記ガス分析計の排出ガスを流通するとともに、前記ガス分析計の校正時に、加熱状態に切り換えた該水素処理部に対して特定のキャリアガスを流通することを特徴とする請求項1記載の不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の元素分析方法。
【請求項3】
前記ガス分析計の感度校正用ガス流路に、複数の前記水素処理部を配設し、1の水素処理部を加熱状態として特定のキャリアガスを流通して前記ガス分析計の感度校正を行うとともに、冷却状態の他の水素処理部に対して前記校正後の水素を含有するキャリアガスを流通することを特徴とする請求項1または2記載の不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の元素分析方法。
【請求項4】
前記サンプルガス二次処理系に複数の水素処理部を並列に配設し、冷却状態の1の水素処理部に対して上流からサンプルガスを流通した後、加熱状態に切換えた該1の水素処理部に対して特定のキャリアガスを流通してサンプルガス中の水素を測定するとともに、測定後のサンプルガスを冷却状態の他の水素処理部に対して流通し、前記ガス分析計の感度校正時に、加熱状態に切り換えた該他の水素処理部に対して特定のキャリアガスを流通することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の元素分析方法。
【請求項5】
不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の水素または水素を含む複数の元素を測定対象とする元素分析装置であって、
前記処理によって得られたサンプルガス中の水素を測定するガス分析計の感度校正用ガス流路に、水素吸蔵合金を内蔵し加熱・冷却が可能な水素処理部を配設し、冷却状態においてサンプルガス中あるいは校正ガス中の水素を吸蔵するとともに、前記ガス分析計の校正時に、加熱状態に切り換えた該水素処理部に対して特定のキャリアガスを流通して前記ガス分析計の感度校正を行うことを特徴とする不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の元素分析装置。
【請求項6】
前記ガス分析計のサンプルガス導入流路に、ガスドージング用キャピラリーを配設することを特徴とする請求項5記載の不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の元素分析装置。
【請求項7】
前記水素吸蔵合金がAB5系の水素吸蔵合金を基本組成とする水素吸蔵合金であることを特徴とする請求項5または6記載の不活性ガス雰囲気で融解処理された試料中の元素分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−39643(P2008−39643A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−215952(P2006−215952)
【出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】