説明

不燃性化粧板

【課題】 樹脂系の素材を使用しつつ、発熱量をも抑制して充分な耐熱性、耐燃性を備え、また、曲げ加工性の良好な不燃性化粧板を提供する。
【解決手段】 表面層材料と不燃性芯材層材料とが積層されてなり、表面層と不燃性芯材層とを有する不燃性化粧板であって、
上記表面層材料は、表面層基材の意匠面である第一の面側にはメラミン樹脂を含有する樹脂が担持され、意匠面と反対側である第二の面側にはウレタンアクリル樹脂を含有する樹脂が担持されてなり、
上記不燃性芯材層は、第一のアルミニウム層と、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、又は、二酸化珪素とアルミナの混合物から選ばれる無機充填材と熱硬化性樹脂とを含む不燃性コア層材料と、第二のアルミニウム層とがこの順に積層されてなり、
上記表面層材料の第二の面側に上記不燃性芯材層材料が積層されてなることを特徴とする不燃性化粧板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、様々な箇所で不燃性又は難燃性等の耐熱性を要する材料の設置が要求されるに至っている。このような不燃性又は難燃性等を有する耐熱性材料としては、端的には、金属性材料を挙げることができる。
その中でも、特に、アルミニウムは、比較的軽量で加工も容易であることから、耐熱性に関しては材料として適切であるといえる。しかし、アルミニウムをそのまま使用すると、コストが高騰し、その結果、使用量にも限界が生じる問題があった。
【0003】
このため、アルミニウムの代替材として、熱硬化性樹脂系の化粧板において、メラミン樹脂等に水酸化アルミニウム等の無機充填材を添加して、耐熱性を向上させることも提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
しかし、熱硬化性樹脂中への水酸化アルミニウムの分散混合や、得られた樹脂ワニスを塗布ないしは塗工することが必ずしも容易ではなく、その結果、主に、不織布や紙等の基材に樹脂を含浸させたプリプレグを積層して形成される化粧板として適用するには、高度な生産技術を要していた。
このため、現状では、化粧板として装飾的な外観を有しつつ、同時に充分な耐熱性をも併せ持つ板材は殆ど提供されていないのが実情である。
【0004】
加えて、この耐熱性については、2000年に建築基準法が改正され、その第2条第9号に定める不燃材料に該当するための、政令で定める技術的基準に適合するか否かの判断基準となる不燃材料試験が、表面燃焼試験、基材燃焼試験から、コーンカロリーメーター発熱性試験やガス有害性試験に変更され、不燃性材料として使用するためには、発熱量を抑制することが要求されるに至っている。このため、上記のような従来の樹脂系の耐熱性化粧板では、発熱量の抑制が難しく、改正後の建築基準法第2条第9号に定める「不燃材料」の認定を取得することが困難となっている。
【0005】
また、メラミン樹脂化粧板は硬度が高く、かつ、優れた耐水性を有するため、建材や家具用途などの分野で使用されてきたが、硬度が高い反面割れやすい性質を有するため、曲げ加工性が要求される分野においては使われなかった。
近年、意匠性に優れたメラミン樹脂化粧板として加熱曲げ加工が可能なポストフォームタイプの化粧板が開発され、扉等にも使用されてきたが、加熱曲げの加工性は4Rが限界であった。
曲げ加工に際しては、裏面を削る所謂Vカット、Uカット加工を行うことにより曲げ加工性は向上するが、薄くなると脆く割れやすくなるためメラミン樹脂化粧板ではあまり適さない。
一方、アルミニウムなどの金属箔にペンキによる塗装を行った場合では曲げ加工性は良好だが、剛性が不足し傷がつきやすく、また意匠性においても乏しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−56539号公報
【特許文献2】特開平1−56540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、樹脂系の素材を使用しつつ、発熱量をも抑制して充分な耐熱性、耐燃性を備え、また、曲げ加工性の良好な不燃性化粧板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)〜(4)に記載の本発明により達成される。
(1)表面層材料と不燃性芯材層材料とが積層されてなり、表面層と不燃性芯材層とを有する不燃性化粧板であって、
上記表面層材料は、表面層基材の意匠面である第一の面側にはメラミン樹脂を含有する樹脂が担持され、意匠面と反対側である第二の面側にはウレタンアクリル樹脂を含有する樹脂が担持されてなり、
上記不燃性芯材層は、第一のアルミニウム層と、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、又は、二酸化珪素とアルミナの混合物から選ばれる無機充填材と熱硬化性樹脂とを含む不燃性コア層材料と、第二のアルミニウム層とがこの順に積層されてなり、
上記表面層材料の第二の面側に上記不燃性芯材層材料が積層されてなることを特徴とする不燃性化粧板。
(2)上記ウレタンアクリル樹脂は、ウレタンアクリル樹脂のエマルジョンを含有する水性クリヤーである上記(1)に記載の不燃性化粧板。
(3)上記アルミニウム層は、上記表面層材料に積層される側の表面に、エポキシ樹脂によるプライマー処理が施されているものである上記(1)又は(2)に記載の不燃性化粧板。
(4)上記アルミニウム層の厚みは、0.1〜0.3mmである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の不燃性化粧板。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、樹脂系の素材を使用しつつ、発熱量をも抑制して充分な耐熱性、耐燃性を備え、また、曲げ加工性の良好な不燃性化粧板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態を表す不燃性化粧板の概念図である。
【図2】本発明の一実施の形態を表す不燃性化粧板の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の不燃性化粧板について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態の不燃性化粧板101を示し、この不燃性化粧板101は、図1に示すように、不燃性芯材層12と、この不燃性芯材層12の表面に積層された表面層14とから成っている。
【0012】
表面層14は、図1の実施の形態では、化粧層14Aであり、この化粧層14Aは、不燃性芯材層12の意匠面側に配置される。図1の実施の形態では、不燃性芯材層12の片面に、表面層14である化粧層14Aが積層されているのが示されているが、装飾が必要な意匠面を両面に設定する場合には、図2に示したように、両面側に、化粧層14Aを積層した化粧板102の形態とすることもできる。
【0013】
また、図1において、表面層(化粧層)を片面のみに設ける場合には、この表面層とは反対側の面に、更に、図示しない別の芯材層を積層することもできる。
本発明の不燃性化粧板101、102は、表面層14の材料である表面層材料と、不燃性芯材層12の材料である不燃性芯材層材料とを重ね合わせて、これを加熱加圧成形して積層することにより製造することができる。
【0014】
以下に、本発明の不燃性化粧板について詳細に説明する。
本発明の不燃性化粧板は、
表面層材料と不燃性芯材層材料とが積層されてなり、表面層と不燃性芯材層とを有する不燃性化粧板であって、
上記表面層材料は、表面層基材の意匠面である第一の面側にはメラミン樹脂を含有する樹脂が担持され、意匠面と反対側である第二の面側にはウレタンアクリル樹脂を含有する樹脂が担持されてなり、
上記不燃性芯材層は、第一のアルミニウム層と、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、又は、二酸化珪素とアルミナの混合物から選ばれる無機充填材と熱硬化性樹脂とを含む不燃性コア層材料と、第二のアルミニウム層とがこの順に積層されてなり、
上記表面層材料の第二の面側に前記不燃性芯材層材料が積層されてなることを特徴とする。
【0015】
<1.表面層材料>
まず、本発明の不燃性化粧板を構成する表面層材料について説明する。
本発明の不燃性化粧板で用いられる表面層材料は、表面層基材の意匠面である第一の面側にはメラミン樹脂を含有する樹脂が担持され、意匠面と反対側である第二の面側にはウレタンアクリル樹脂を含有する樹脂が担持されてなるものである。
【0016】
上記表面層材料で用いられる表面層基材としては、第一の面側に意匠面が形成されたシート状の基材であり、その材質は特に限定されないが、好ましくは、パルプ、リンター、合成繊維、ガラス繊維などを用いることができ、必要に応じて、酸化チタンなどの顔料を含有する酸化チタン含有化粧紙などを用いることができる。
表面層基材の坪量としては特に限定されないが、坪量40〜150g/mのものを好適に用いることができる。
【0017】
上記表面層材料は、表面層基材の第一の面側にはメラミン樹脂を含有する樹脂が担持されてなる。これにより、不燃性化粧板表面に好適な表面硬度を付与することができる。
ここで用いられるメラミン樹脂としては、通常、メラミンに対するホルムアルデヒドの反応モル比(ホルムアルデヒド/メラミン:以下、単に反応モル比ということがある)を1.0〜4.0、好ましくは1.0〜2.0として反応させて得られたものを好適に用いることができる。
また、上記メラミン樹脂とともに、ウレタンアクリル樹脂を用いることもできる。これにより、不燃性化粧板の表面硬度を有しながら、曲げ加工性を向上させることができる。
【0018】
上記表面層材料は、表面層基材の意匠面の反対側である第二の面側には、ウレタンアクリル樹脂を含有する樹脂が担持されてなる。これにより、表面層と、不燃性芯材層で用いられるアルミニウム層との接着強度を向上させることができるとともに、不燃性化粧板の曲げ加工性を向上させることができる。
ここで用いられるウレタンアクリル樹脂を含有する樹脂としては、ウレタンアクリル樹脂のエマルジョンを含有する水性クリヤーであることが好ましい。ウレタン樹脂とアクリル樹脂とは、各々がアルミニウム層との接着強度が高く、また、微粒子状のエマルジョンとすることで微粒子中にウレタンアクリル樹脂が微細な複合樹脂として存在できるため、アルミニウム層との良好な接着強度を発現することができる。そして、水性クリヤータイプ(透明なもの)とすることにより、表面層が有する意匠面の色調に及ぼす影響を抑制することができる。
【0019】
上記表面層材料を製造する方法としては、表面層基材の第一の面側と第二の面側に、上記樹脂をそれぞれ塗工などの手段により担持させることができる。
上記塗工手段としては例えば、スプレー装置、シャワー装置、キスコーター、コンマコーターなどの手法を適用することができ、その後、50〜60℃程度で加熱乾燥して溶剤の大半を除去することにより、本発明の表面層材料を得ることができる。
【0020】
<2.不燃性芯材層材料>
<2.1 アルミニウム層>
次に、本発明の不燃性化粧板を構成する不燃性芯材層材料について説明する。
上記不燃性芯材層材料は、第一のアルミニウム層と、不燃性コア層材料と、第二のアルミニウム層から構成される。
まず、上記第一及び第二のアルミニウム層について説明する。
ここで用いられるアルミニウム層は、アルミニウム箔又はアルミニウム板を適用することができ、不燃性化粧板に、耐熱性、不燃性、剛性などを付与することができる。
【0021】
このアルミニウム層の厚みとしては、0.1mm以上とすることが好ましい。これにより、不燃性化粧板に充分な耐熱性、不燃性を付与することができる。また、厚みの上限については、特に限定されないが、厚みが大きいほど耐熱性、不燃性は向上するが、メラミン化粧板の厚みと重量が増大すると共に、コストも嵩むため、最終的な製品における設計上、許容される範囲で設定することが好ましく、0.3mm以下にすることが好ましい。
【0022】
上記アルミニウム層は、上記表面層材料に積層される側の表面に、エポキシ樹脂によるプライマー処理が施されているものであることが好ましい。これにより、表面層材料とアルミニウム層との接着強度をさらに向上させることができる。
【0023】
<2.2 不燃性コア層材料>
次に、不燃性コア層材料について説明する。
本発明の不燃性化粧板において、不燃性コア層は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、または二酸化珪素とアルミナの混合物から選ばれる無機充填材と熱硬化性樹脂とを含むものである。
具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、または二酸化珪素とアルミナの混合物から選ばれる無機充填材と、メラミン樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂とを含む配合物を調製し、この配合物を板状に固形化したもの、あるいは、この配合物をガラス繊維不織布に含浸させたシート形状のプリプレグを用いることができる。
【0024】
上記配合物を板状に固形化したものを用いる場合、無機充填材としては二酸化珪素とアルミナの混合物を使用し、熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂を用いることが好ましい。
不燃性コア層をこの形態で用いる場合、上記配合物中における無機充填材と熱硬化性樹脂との配合比率は、両者の合計全体に対して、固形分換算で、二酸化珪素とアルミナの混合物は90〜95重量%、フェノール樹脂は10〜5重量%とすることが好ましい。これにより、不燃性と機械的強度との特性バランスを効果的に発現することができる。
二酸化珪素とアルミナは、平均粒径が10〜30μmのものを好ましく使用することができる。なお、粒子径の大きいものと小さいものを混合使用し、最密充填してもよい。
不燃性コア層としてこの形態のものを用いる場合、形成される不燃性コア層の厚みとしては特に限定されないが、2〜3mmとすることが好ましい。
【0025】
また、上記配合物をガラス繊維不織布に含浸させたシート形状のプリプレグに用いる場合、坪量が30〜150g/cmのガラス繊維不織布を使用することが望ましい。坪量が30g/cm未満のガラス繊維不織布では、強度や自己保形性が充分ではないため、基材であるガラス繊維不織布に、無機充填材と熱硬化性樹脂とを含む配合物を塗工する際、また、積層による成形時等における取扱いが困難となる場合がある一方、坪量が150
g/cm超のガラス繊維不織布では、積層による成形時に各層間の密着性が不十分となることがある。
【0026】
ガラス繊維不織布に含浸させる場合、無機充填材としては水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムが、熱硬化性樹脂としてはメラミン樹脂を用いることが好ましい。
【0027】
ガラス繊維不織布に含浸させる場合、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムとメラミン樹脂との配合比率は、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムとメラミン樹脂との合計(固形分換算)に対して、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウム90〜70重量%、メラミン樹脂10〜30重量%の割合で配合することが好ましい。
この場合、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムの配合率の方を高く設定するのは、充分な不燃性を確保するためであり、メラミン樹脂は、無機充填材の結合剤(バインダ)としての役割を有する。
【0028】
これは、メラミン樹脂を上記下限値未満とすると、メラミン樹脂が結合剤としての機能を充分に発揮できず、不燃性コア層材料の取扱い時に結合力不足のために、取扱いが困難となる場合があり、その結果、成形後の不燃性化粧板において層間接着強度が不十分となることがあるからである。また、配合物の粘度上昇やままこ状態になることを防ぐため高価で特殊な混合装置を使用するか、又は溶剤や水により低粘度化する必要があり、さらに塗布工程でも、高い粘度の樹脂液を塗布する技術が必要となるか、あるいは、多量の溶剤や水で低粘度化した場合は、溶剤燃焼による炭酸ガス増加等の環境負荷増大や乾燥するためのエネルギーや工程が多大となるなど生産性の低下やコストの増大となることがある。一方、メラミン樹脂が上記上限値を越えると、不燃性付与効果が低下することがある。
【0029】
なお、ガラス繊維不織布に含浸させる水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムとメラミン樹脂との配合に際しては、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムの他にカーボン等の無機フィラーも添加すると水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムの分散性が向上するため好ましい。また、メラミン樹脂や、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムは、本発明の目的、効果を損なわない範囲において、その一部を、他の樹脂や無機充填材に置き換えてもよく、この場合も本発明の範囲に含まれるものである。
【0030】
この水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムとメラミン樹脂とを含む配合物は、そのままの状態、もしくは水、アルコール等の溶剤にて希釈して使用する。
この配合物において、固形分に対する水、アルコール等の溶剤(もともと樹脂に含有されているものも含む)の割合を希釈率とすると、希釈率は、配合物中の樹脂の割合にもよるが、通常0.05〜0.5程度、好ましくは0.1〜0.3程度である。この範囲より小さいと配合物の粘度が高く塗工が行いにくい場合があり、一方、この範囲より大きいと粘度が低くなり塗工された配合物がガラス繊維不織布上に保持されにくいことがある。
【0031】
必要により希釈された水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムとメラミン樹脂とを含む配合物をガラス繊維不織布に塗工することにより、基材であるガラス繊維不織布に含浸されて不燃性コア層材料が形成される。この場合、例えば、コンマコーターやダイコーター等の各種の通常のコーター装置により塗工することにより、あるいは、スプレーやノズル等の噴霧装置により吹き付けることにより、無機充填材に剪断力を負荷することなく、基材に含浸させることができる。
【0032】
この場合、塗工時のガラス繊維不織布に対する水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムとメラミン樹脂とを含む配合物(固形分)の割合を含浸率とすると、含浸率は、ガラス繊維不織布の坪量にもよるが、重量比で通常5〜100倍程度、好ましくは10
〜60倍程度とする。上記下限値未満では、必要厚さを維持しにくくなり、表面平滑性も充分でないことがあるためである。更に、耐燃性の低下、コスト上昇となる。一方、上記上限値を越えると、耐燃性はよいが、積層前の材料の取扱い時に崩れやすい等の欠点を生じることがある。
【0033】
なお、熱硬化性樹脂として好適であるメラミン樹脂は、通常メラミンに対するホルムアルデヒドの反応モル比(ホルムアルデヒド/メラミン)が1.0〜4.0のものが使用されるが、必ずしも、この範囲に限定されるものではない。但し、樹脂ワニスとしての保存性等の点からは、1.0〜2.0の範囲とすることが好ましく、また、酸性の硬化剤を適宜配合することができる。
【0034】
一方、無機充填材としての水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムも、特に限定はないが、平均粒径が1〜100μmのものを好ましく使用することができる。なお、粒子径の大きいものと小さいものを混合使用し、最密充填してもよい。
【0035】
不燃性コア層は、好ましくはこのようにして形成された水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムとメラミン樹脂とを含む配合物が含浸されたガラス繊維不織布、または、二酸化珪素とアルミナの混合物とフェノール樹脂とを含む配合物を板状に固めたものを、図1又は図2に示すように、一枚あるいは複数枚積層して形成される。
ガラス繊維不織布に含浸させたシート形状のプリプレグを用いた場合は、これを薄く形成することができ、基材である各ガラス繊維不織布に無機充填材と樹脂とを充分に含浸させることが容易となると共に、1枚の厚い基材に含浸させた場合と異なり、無機充填材が内部まで充分に含浸した複数のプリプレグによって、不燃性コア層のほぼ全ての断面において、万遍なく充分に無機充填材を分散させることができるため、不燃性効果を高めることができる。
なお、この不燃性コア層18は、少なくとも、以上に説明した形態のものを有すれば、他に補強層等を備えていてもよい。
【0036】
<3.不燃性化粧板>
次に、本発明の不燃性化粧板について説明する。
本発明の不燃性化粧板は、以上に説明した表面層材料と不燃性芯材層材料とが積層されてなり、表面層と不燃性芯材層とを有するものである。
この表面層材料は、不燃性芯材層材料の表面に積層され一体化されるが、表面層は不燃性芯材層の両面側に設けることもできる。これにより、不燃性化粧板の反りを抑制することができる。
【0037】
本発明の不燃性化粧板には、上記の表面層材料と不燃性芯材層材料のほか、坪量10〜50g/mのシート又は紙に、メラミン樹脂単独、又はメラミン樹脂60〜95重量%、水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム又はシリカ40〜5重量%からなる配合物を含浸したオーバーレイ含浸シート又は含浸紙を、表面層材料の意匠面側に組合せて積層することもできる。このオーバーレイ含浸シート又は含浸紙のメラミン樹脂又は配合物の含浸率は、通常のシート又は紙に対して50〜80重量%である。
【0038】
以上に説明した表面層材料と不燃性芯材層材料とを各層を重ね合わせて、通常の高圧樹脂化粧板の場合と同様に加熱加圧成形することにより、不燃性化粧板とすることができる。
具体的には、まず、不燃性芯材層材料として、第一のアルミニウム層と、一枚もしくは複数枚の不燃性コア層材料と、第二のアルミニウム層とをこの順に重ね合わせる。
次に、表面層材料を一枚(不燃性化粧板の片面に表面層を設ける場合)もしくは二枚(不燃性化粧板の両面に表面層を設ける場合)用意し、表面層材料の第二の面側と不燃性芯
材層材料とを重ね合わせる。
本発明の不燃性化粧板は、上記の構成を加熱加圧成形して積層することにより製造することができる。
加熱加圧成形時には、用いた熱硬化性樹脂が硬化する程度の温度で加熱しながら、6〜10Mpa程度で加圧することが好ましい。成形時には鏡面仕上げ板、エンボス板またはエンボスフィルム等を重ね合わせることができ、これにより、ミラー仕上げ、エンボス仕上げ等の表面に仕上げることもできる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明の不燃性化粧板を実施例により具体的に説明する。
【0040】
<実施例1>
(1)表面層材料の調製
表面層基材として、米坪80g/mの酸化チタン含有化粧紙を用いた。
上記基材の第一の面側(意匠面側)には、メラミン樹脂(反応モル比1.4、樹脂固形分50重量%)と、ウレタンアクリル樹脂エマルジョンを含有する水性クリヤー(中央理化工業社製「SU−100」)を、固形分比率で90:10(メラミン樹脂:ウレタンアクリル樹脂)で混ぜたものを固形分で50g/m塗工した。
上記基材の第二の面側には、ウレタンアクリル樹脂エマルジョンを含有する水性クリヤー(中央理化工業社製「SU−100」)を固形分で40g/m塗工した。
これにより、表面層材料(a1)を得た
(2)芯材層材料の調製
(2.1)アルミニウム層
表面層材料に積層される側の表面をエポキシ樹脂によるプライマー処理を施した厚み0.3mmのアルミニウム箔を用い、アルミニウム層(b1)とした。
(2.2)不燃性コア層材料
坪量75g/m 、比重0.23g/cm 、有機バインダー量11重量%のガラス繊維不織布に、水酸化マグネシウム(平均粒子径10μm)70重量%と、メラミン樹脂(反応モル比1.5、樹脂固形分50重量%)30重量%(固形分換算)とからなる混合物100重量部に対して、水15重量部及びアルコール15重量部を加えた配合物を塗工し、120℃の条件で加熱乾燥して含浸率20倍の不燃性コア層材料(c1)を得た。(3)不燃性化粧板の製造
上記で得られた各材料を用い、これらを(a1)1枚、(b1)1枚、(c1)4枚、(b1)1枚の順に積層し、140℃、8MPaの条件下で20分間加熱加圧成形して、厚さ4.1mmの不燃性化粧板(1)を得た。
【0041】
<実施例2>
(1)表面層材料の調製
表面層基材として、米坪80g/mの酸化チタン含有化粧紙を用いた。
上記基材の第一の面側(意匠面側)には、メラミン樹脂(反応モル比1.4、樹脂固形分50重量%)を固形分で50g/m塗工した。
上記基材の第二の面側には、ウレタンアクリル樹脂エマルジョンを含有する水性クリヤー(中央理化工業社製「SU−100」)を固形分で40g/m塗工した。
これにより、表面層材料(a2)を得た
(2)芯材層材料の調製
(2.1)アルミニウム層
表面層材料に積層される側の表面をエポキシ樹脂によるプライマー処理を施した厚み0.1mmのアルミニウム箔を用い、アルミニウム層(b2)とした。
(2.2)不燃性コア層材料
平均粒子径30μmの二酸化珪素と平均粒子径10μmのアルミナの混合物(二酸化珪
素:アルミナ=100:1 重量比率)94重量%とフェノール樹脂6重量%(固形分換算)とからなる混合物を120℃の条件で固め、厚み3mmの不燃性コア層(c2)を得た。
(3)不燃性化粧板の製造
上記で得られた各材料を用い、これらを(a2)1枚、(b2)1枚、(c2)1枚、(b2)1枚の順に積層し、140℃、8MPaの条件下で20分間加熱加圧成形して、厚さ3.9mmの不燃性化粧板(2)を得た。
【0042】
<比較例1>
(1)表面層材料の調製
表面層基材として、米坪80g/mの酸化チタン含有化粧紙を用いた。
上記基材の第一と第二の面にメラミン樹脂(反応モル比1.4、樹脂固形分50重量%)を固形分で各55g/mずつ、計110g/m塗工し、表面層材料(a3)を得た。
(2)芯材層材料の調製
(2.1)アルミニウム層
表面層材料に積層される側の表面をエポキシ樹脂によるプライマー処理を施した厚み0.1mmのアルミニウム箔を用い、アルミニウム層(b3)とした。
(2.2)不燃性コア層材料
坪量75g/m 、比重0.23g/cm 、有機バインダー量11重量%のガラス繊維不織布に、水酸化アルミニウム(平均粒子径10μm)70重量%と、メラミン樹脂(反応モル比1.5、樹脂固形分50重量%)30重量%(固形分換算)とからなる混合物100重量部に対して、水15重量部及びアルコール15重量部を加えた配合物を塗工し、120℃の条件で加熱乾燥して含浸率20倍の不燃性コア層材料(c3)を得た。(3)接着層材料の調製
米坪146g/mのクラフト紙を用い、これにレゾール型フェノール樹脂を固形分で110g/m塗工して接着層材料(d3)を得た。
(4)不燃性化粧板の製造
上記で得られた各材料を用い、これらを(a3)1枚、(d3)1枚、(b3)1枚、(c3)4枚、(b3)1枚の順に積層し、140℃、8MPaの条件下で20分間加熱加圧成形して、厚さ4.1mmの化粧板(3)を得た。
【0043】
<比較例2>
(1)表面層材料の調製
表面層基材として、米坪80g/mの酸化チタン含有化粧紙を用いた。
上記基材の第一と第二の面にメラミン樹脂(反応モル比1.4、樹脂固形分50重量%)を固形分で各55g/mずつ、計110g/m塗工し、表面層材料(a4)を得た。
(2)芯材層材料の調製
(2.1)アルミニウム層
表面層材料に積層される側の表面をエポキシ樹脂によるプライマー処理を施した厚み0.3mmのアルミニウム箔を用い、アルミニウム層(b4)とした。
(2.2)不燃性コア層材料
坪量75g/m 、比重0.23g/cm 、有機バインダー量11重量%のガラス繊維不織布に、水酸化マグネシウム(平均粒子径10μm)70重量%と、メラミン樹脂(反応モル比1.5、樹脂固形分50重量%)30重量%(固形分換算)とからなる混合物100重量部に対して、水15重量部及びアルコール15重量部を加えた配合物を塗工し、120℃の条件で加熱乾燥して含浸率20倍の不燃性コア層材料(c4)を得た。(3)不燃性化粧板の製造
上記で得られた各材料を用い、これらを(a4)1枚、(b4)1枚、(c4)4枚、
(b4)1枚の順に積層し、140℃、8MPaの条件下で20分間加熱加圧成形して、厚さ4.1mmの化粧板(4)を得た。
【0044】
以上の実施例で得られた不燃性化粧板(1)、(2)と、比較例で得られた化粧板(3)、(4)について特性を評価した。その結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
(試験方法)
1.不燃性試験
日本建築総合試験場の業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」4.10 不燃性能試験・評価方法における、(2)ii)4.10.2 の発熱性試験・評価方法、及び
4.10.3 のガス有害性試験・評価方法、により実施した。
上記業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」の上記項目には、建築基準法第2条第9号(不燃材料)の規定に基づく認定に係わる性能評価方法について記載されている。2.耐煮沸性試験
JIS K6902の耐煮沸性試験に準拠した方法で処理を行い、沸騰水中に2時間浸漬後の試験片の膨れ、層間はく離の有無を確認した。
3.曲げ成形性試験
各サンプルの表面層と反対側の面を予めUカットにて加工し、最も薄いところで0.5mmとなる様にした。曲げ成形性試験は該サンプルを用いて行った。
JIS K6902の曲げ成形性試験(A法)に準拠し、156℃、3Rにて外曲げ成形を行い、表面層の意匠面の割れの有無を確認した。
4.鉛筆硬度試験
JIS K5600に準拠して評価を行った。
【0047】
上記表1に示す結果から明らかなように、実施例1、2で得られた化粧板(1)(2)は、不燃性が基準等に適合し、曲げ成形性も良好であった。
これに対して、比較例1で得られた化粧板(3)は、不燃性は良好だが曲げ加工性が低下した。
また、比較例2で得られた化粧板(4)は、不燃性は良好だが、耐煮沸性、曲げ加工性が低下した。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の不燃性化粧板は、良好な曲げ加工性、不燃性、層間接着力を有したものである。
そして、表面層(化粧層)には、従来の化粧板と同様の表面層基材が使用できるため、豊富な色柄から自由に選択でき、且つ、公共施設等における不燃性を有する材料の規制を受ける壁等の用途に広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0049】
101 化粧板
102 化粧板
12 不燃性芯材層
14 表面層
14A 化粧層
16 アルミニウム層
18 不燃性コア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層材料と不燃性芯材層材料とが積層されてなり、表面層と不燃性芯材層とを有する不燃性化粧板であって、
前記表面層材料は、表面層基材の意匠面である第一の面側にはメラミン樹脂を含有する樹脂が担持され、意匠面と反対側である第二の面側にはウレタンアクリル樹脂を含有する樹脂が担持されてなり、
前記不燃性芯材層は、第一のアルミニウム層と、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、又は、二酸化珪素とアルミナの混合物から選ばれる無機充填材と熱硬化性樹脂とを含む不燃性コア層材料と、第二のアルミニウム層とがこの順に積層されてなり、
前記表面層材料の第二の面側に前記不燃性芯材層材料が積層されてなることを特徴とする不燃性化粧板。
【請求項2】
前記ウレタンアクリル樹脂は、ウレタンアクリル樹脂のエマルジョンを含有する水性クリヤーである請求項1に記載の不燃性化粧板。
【請求項3】
前記アルミニウム層は、前記表面層材料に積層される側の表面に、エポキシ樹脂によるプライマー処理が施されているものである請求項1又は2に記載の不燃性化粧板。
【請求項4】
前記アルミニウム層の厚みは、0.1〜0.3mmである請求項1ないし3のいずれかに記載の不燃性化粧板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−68066(P2011−68066A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222295(P2009−222295)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】