説明

不燃性看板材料、不燃性看板、及び、不燃性看板材料の製造方法

【課題】不燃性を維持しつつ、良好な機械的強度、光透過性を有する不燃性看板材料と、これを用いた不燃性看板、及び、不燃性看板材料の製造方法を提供する。
【解決手段】第一のポリカーボネート樹脂層、第一のガラスクロス、メラミン樹脂含浸ガラスクロス、第二のガラスクロス、第二のポリカーボネート樹脂層、を、この順序で積層してなる積層体を有することを特徴とする、不燃性看板カバー材料、及び、(1)第一のポリカーボネート樹脂層、第一のガラスクロス、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロス、第二のガラスクロス、第二のポリカーボネート樹脂層、を、この順序で重ね合わせる工程、(2)前記重ね合わせたものを加熱加圧して積層体を成形する工程、を有することを特徴とする、不燃性看板材料の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不燃性看板材料、不燃性看板、及び、不燃性看板材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外広告、駅構内広告、イベント会場などにおける広告、業務等表示においては、看板面を外側から照明で照らす外照式の看板のほか、透光性のある看板面に文字や図柄等を設けると共に、看板面の内部に電灯などの光源を配置し、光源を点灯することにより看板面に透光して電光表示する内照式の電光看板が広く利用されている。
このうち、内照式の看板に用いられる看板材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの樹脂素材のほか、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂シートの表裏面にジアリルフタレート樹脂などの熱硬化性樹脂層を積層してなる化粧板などが使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、建築基準法の改正により、建築物の屋上などの高所に設置する看板等は、その主要な部分を不燃材料で造ること等が義務付けられるようになったため、看板材料として軽量で光透過性に優れ、なおかつ、不燃性を有するものが必要とされるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−328610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、不燃性を維持しつつ、良好な機械的強度、光透過性を有する不燃性看板材料と、これを用いた不燃性看板、及び、不燃性看板材料の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は、下記の本発明[1]〜[10]により達成される。
[1]第一のポリカーボネート樹脂層、第一のガラスクロス、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロス、第二のガラスクロス、第二のポリカーボネート樹脂層、を、この順序で積層してなる積層体を有することを特徴とする、不燃性看板材料。
[2]上記第一及び第二のポリカーボネート樹脂層を構成するポリカーボネート樹脂は、ポリスチレン換算による重量平均分子量が16000〜30000である上記[1]に記載の不燃性看板材料。
[3]上記第一及び第二のポリカーボネート樹脂層を構成するポリカーボネート樹脂は、160℃における溶融粘度が、0.1〜10MPa・sである上記[1]又は[2]に記載の不燃性看板材料。
[4]上記熱硬化性樹脂含浸ガラスクロスを構成する熱硬化性樹脂は、メラミン樹脂である上記[1]ないし[3]のいずれかに記載の不燃性看板材料。
[5]上記第一及び第二のガラスクロスは、単位面積あたりの重量が80〜210g/mである上記[1]ないし[4]のいずれかに記載の不燃性看板材料。
[6]上記積層体は、JIS K 7105に規定された全光線透過率が30〜60%である上記[1]ないし[5]のいずれかに記載の不燃性看板材料。
[7]上記積層体は、JIS K 7105に規定されたヘイズ値が90.0〜99.7%である上記[1]ないし[6]のいずれかに記載の不燃性看板材料。
[8]上記[1]ないし[7]のいずれかに記載の不燃性看板材料を用いて作製されたも
のであることを特徴とする不燃性看板。
[9]上記[1]ないし[7]のいずれかに記載の不燃性看板材料の製造方法であって、(1)第一のポリカーボネート樹脂層、第一のガラスクロス、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロス、第二のガラスクロス、第二のポリカーボネート樹脂層、を、この順序で重ね合わせる工程、
(2)上記重ね合わせたものを加熱加圧して積層体を成形する工程、
を有することを特徴とする、不燃性看板材料の製造方法。
[10]上記(2)工程は、
(2−1)第一の圧力で加熱加圧する昇温工程と、
(2−2)上記第一の圧力よりも高い第二の圧力で加熱加圧する成形工程と、
をこの順で含むものであり、
上記昇温工程は、上記第一の圧力が0.5〜2.0MPa、該工程終了時点における上記第一及び第二のポリカーボネート樹脂層の温度が190〜210℃であり、
上記成形工程は、上記第二の圧力が1.0〜6.0MPa、
である、上記[9]に記載の不燃性看板材料の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不燃性を維持しつつ、良好な機械的強度、光透過性を有する不燃性看板材料と、これを用いた不燃性看板、及び、不燃性看板材料の製造方法を提供することができる。
本発明の不燃性看板材料は、不燃性、光透過性、機械的強度に優れたものであり、例えば、高所に設置された内照式の広告塔、屋上看板、壁面広告など、不燃性が要求される看板材料として好適に用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態を表す不燃性看板材料の構成を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の不燃性看板材料、不燃性看板、及び、不燃性看板材料の製造方法について詳細に説明する。
本発明の不燃性看板材料は、第一のポリカーボネート樹脂層、第一のガラスクロス、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロス、第二のガラスクロス、第二のポリカーボネート樹脂層、を、この順序で積層してなる積層体を有することを特徴とする。
具体的には、図1に示すように、本発明の不燃性看板材料101は、第一のポリカーボネート樹脂層10A、第一のガラスクロス11A、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロス12、第二のガラスクロス11B、第二のポリカーボネート樹脂層10B、を、この順序で積層してなる積層体を有するものである。
【0010】
また、本発明の不燃性看板は、上記本発明の不燃性看板材料を用いて作製されたものであることを特徴とする。
【0011】
そして、本発明の不燃性看板材料の製造方法は、上記本発明の不燃性看板材料の製造方法であって、
(1)第一のポリカーボネート樹脂層、第一のガラスクロス、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロス、第二のガラスクロス、第二のポリカーボネート樹脂層、を、この順序で重ね合わせる工程、
(2)上記重ね合わせたものを加熱加圧して積層体を成形する工程、
を有することを特徴とする。
【0012】
まず、本発明の不燃性看板材料について説明する。
【0013】
本発明の不燃性看板材料は、第一及び第二のポリカーボネート樹脂層を有する。
これにより、不燃性看板材料に、耐衝撃性を付与するとともに、燃焼時の発煙を抑制することができる。また、長期の使用時における良好な耐光性を発現させることができる。
ここで用いられるポリカーボネート樹脂層としては、ポリカーボネート樹脂をフィルム状に加工したポリカーボネート樹脂フィルムを好適に用いることができる。
【0014】
上記第一及び第二のポリカーボネート樹脂層を構成するポリカーボネート樹脂の分子量としては、ポリスチレン換算による重量平均分子量が16000〜30000であることが好ましい。
これにより、不燃性看板材料を製造する際の加熱加圧成形時にポリカーボネート樹脂が充分な水準まで低粘度化し、ガラスクロスへの含浸性を良好なものとすることができるので、不燃性看板材料の機械的強度を向上させ、全光線透過率を高めることができる。
なお、上記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線をもとに計算されたものである。
【0015】
上記第一及び第二のポリカーボネート樹脂層を構成するポリカーボネート樹脂は、160℃における溶融粘度が、0.1〜10MPa・sであることが好ましい。
これにより、不燃性看板材料を製造する際の加熱加圧成形時にポリカーボネート樹脂が充分な水準まで低粘度化し、ガラスクロスへの含浸性を良好なものとすることができるので、不燃性看板材料の機械的強度を向上させ、全光線透過率を高めることができる。
【0016】
ここで用いられるポリカーボネート樹脂フィルムの厚みとしては特に限定されないが、0.10〜0.25mmとすることが好ましい。さらに好ましくは0.13〜0.18mmである。これにより、不燃性看板材料の不燃性を確保しながら、上記作用を効果的に発現させることができる。
【0017】
本発明の不燃性看板材料で用いられるポリカーボネート樹脂層は、第一、第二のポリカーボネート樹脂層として、ポリカーボネート樹脂フィルムの厚みや、ポリスチレン換算による重量平均分子量、160℃における溶融粘度などが同じであるものを用いても良いし、各々異なるものを用いることもできる。
【0018】
本発明の不燃性看板材料は、第一及び第二のガラスクロスを有する。これにより、不燃性看板材料に不燃性、高い機械的強度を付与できるとともに、看板材料として好適な高いヘイズ値を実現することができる。
【0019】
上記ガラスクロスとしては、公知のものを使用することができ、適用される看板の照度などに応じて適宜選択することができるが、得られる不燃性看板材料の光線透過性を高める点で、全光線透過率が高いものであることが好ましい。具体的には、全光線透過率が35%以上であるものが好ましく、45%以上であるものがより好ましい。
なお、本発明において、上記全光線透過率は、JIS K 7105(プラスチックの光学的特性試験方法)に準拠して測定して得られるものであり、本発明においては、東洋精機製作所社製「ヘイズガードII」を用いて測定を行ったものである。
【0020】
ここで用いられるガラスクロスの単位面積あたりの重量としては特に限定されないが、80〜210g/mであることが好ましい。さらに好ましくは150〜210g/mである。これにより、上記作用を効果的に発現させることができる。
【0021】
本発明の不燃性看板材料で用いられるガラスクロスは、第一、第二のガラスクロスとして、単位面積あたりの重量や、全光線透過率などが同じであるものを用いても良いし、各
々異なるものを用いることもできる。
【0022】
本発明の不燃性看板材料は、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロスを有する。これにより、不燃性看板材料の機械的強度を向上させることができるとともに、外観特性を良好なものとすることができる。
【0023】
熱硬化性樹脂含浸ガラスクロスを構成する熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂などを用いることができる。
【0024】
メラミン樹脂としては、通常、メラミンに対するホルムアルデヒドの反応モル比(ホルムアルデヒド/メラミン:以下、単に反応モル比ということがある)を1.0〜4.0、好ましくは1.0〜2.0として反応させて得られたものを好適に用いることができる。
【0025】
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールAD型などのビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型などのノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型、臭素化フェノールノボラック型などの臭素化型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの1種を単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0026】
フェノール樹脂としては、フェノール類とアルデヒド類とを酸性触媒の存在下で反応させて得られるノボラック型フェノール樹脂、フェノール類とアルデヒド類とを塩基性触媒の存在下で反応させて得られるレゾール型フェノール樹脂などが挙げられる。これらの1種を単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0027】
ジアリルフタレート樹脂としては、オルソタイプ、イソタイプ、パラタイプのものがあり、また、これらのプレポリマーも含まれる。これらの1種を単独で使用または2種以上を併用することができる。
【0028】
本発明の不燃性看板材料においては、上記熱硬化性樹脂として、特に、メラミン樹脂を用いることが好ましい。
メラミン樹脂は単位重量あたりの燃焼熱が小さいため、不燃性看板材料に不燃性を付与しやすい。また、メラミン樹脂の硬化物は弾性強度が高いため、不燃性看板材料に高い機械的強度を付与することができる。
【0029】
熱硬化性樹脂含浸ガラスクロスに用いるガラスクロスとしては、公知のものを使用することができ、使用される看板の照度などに応じて適宜選択することができるが、得られる不燃性看板材料の光線透過性を高める点で、全光線透過率が高いものであることが好ましい。具体的には、全光線透過率が35%以上であるものが好ましく、45%以上であるものがより好ましい。
【0030】
ここで用いられるガラスクロスの単位面積あたりの重量としては特に限定されないが、50〜210g/mであることが好ましい。さらに好ましくは100〜150g/mである。これにより、不燃性看板材料に良好な外観特性と光線透過性とを付与することができる。
【0031】
熱硬化性樹脂含浸ガラスクロスは、上記熱硬化性樹脂に必要に応じて溶剤、硬化剤、硬化触媒などを添加した熱硬化性樹脂ワニスをガラスクロスに含浸させることによって製造することができる。
ここで、熱硬化性樹脂の含浸量としては特に限定されないが、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロスに対して、熱硬化性樹脂量が固形分で30〜60重量%とすることが好ましい。
また、熱硬化性樹脂としてメラミン樹脂を用いる場合、メラミン樹脂の含浸量としては特に限定されないが、メラミン樹脂含浸ガラスクロスに対して、メラミン樹脂量が固形分で30〜40重量%とすることが好ましい。
これにより、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロスを効率的に製造することができるとともに、不燃性看板材料に良好な機械的強度、光線透過性を付与することができる。
【0032】
本発明の不燃性看板材料は、以上に説明した第一のポリカーボネート樹脂層、第一のガラスクロス、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロス、第二のガラスクロス、第二のポリカーボネート樹脂層、を、この順序で積層してなる積層体を有することを特徴とする。
本発明の不燃性看板材料は、このような構成の積層体を有することにより、以下の効果を発現させることができる。
まず、第一のガラスクロス、第二のガラスクロス、及び、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロスを構成するガラスクロスの、計三層のガラスクロスを用いる。これにより、不燃性看板材料に高い機械的強度を付与することができるとともに、看板の光源から発せられる光を充分に散乱させ、看板材料として好適な高いヘイズ値を実現することができる。そして、不燃性看板材料に高い不燃性を付与することができる。
また、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロスを用いる。これにより、不燃性看板材料に良好な外観特性と光線透過性とを付与することができる。このメカニズムは明確ではないが、以下のように推測される。すなわち、不燃性看板材料を加熱加圧して成形する際に、ポリカーボネート樹脂層が溶融し、低粘度化して第一及び第二のガラスクロスに含浸するが、この時点で、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロスを構成する熱硬化性樹脂はすでに硬化を開始し、高粘度化しつつある状態なので、第一及び第二のガラスクロスの縦糸、横糸のストランドが自在に動くのを抑制することができる。この結果、加熱加圧によりポリカーボネート樹脂層が溶融して第一及び第二のガラスクロスに含浸する際にもガラスクロスの織目が乱れることがなく、第一及び第二のガラスクロスにポリカーボネート樹脂層を充分に含浸することができる。これにより、良好な外観特性を確保しながら、高い光線透過率を発現することができると考えられる。
そして、第一及び第二のポリカーボネート樹脂層を用いる。これにより、燃焼時の発煙を抑制することができるとともに、長期の使用時における良好な耐光性を発現させることができる。また、熱可塑性樹脂であるポリカーボネート樹脂を用いることで、不燃性看板材料に耐衝撃性を付与することができる。
このように、本発明の不燃性看板材料は、上記のような構成を有することによる相乗的な効果により、不燃性、及び、良好な機械的特性、光線透過性を発現させることができたものであある。
【0033】
本発明の不燃性看板材料を構成する積層体は、JIS K 7105に規定された全光線透過率が30〜60%であることが好ましい。
全光線透過率が上記下限値以上であることにより、不燃性看板材料を用いた不燃性看板において、看板として充分な明るさを有することができる。また、上記上限値以下であることにより、看板内部の蛍光灯など光源の形状が外から透視されるのを防ぐことができる。
【0034】
また、本発明の不燃性看板材料を構成する積層体は、JIS K 7105に規定されたヘイズ値が90.0〜99.7%であることが好ましい。
これにより、この不燃性看板材料を用いた不燃性看板において、散乱光の比率を高くして看板面全体をより均一な明るさにでき、看板材料として好適に用いることができる。
【0035】
本発明の不燃性看板材料は、総厚みが0.4〜0.8mmであることが好ましい。これ
により、不燃性看板として用いたときに軽量化を達成しながら、充分な機械的強度を付与することができる。
【0036】
なお、本発明の不燃性看板材料は、第一のポリカーボネート樹脂層、第一のガラスクロス、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロス、第二のガラスクロス、第二のポリカーボネート樹脂層、を、この順序で積層してなる積層体を有することを特徴とするが、このほかにも、上記積層体に、さらに、意匠性を有したフィルムを積層した形態、文字や模様などを印刷したり貼り付けしたりした形態のものなどを採用することもできる。このような場合も本発明に含まれるものである。
【0037】
本発明の不燃性看板材料は、以上に説明したように、不燃性であり、良好な機械的強度や光線透過性を有するものであるので、例えば、高所に設置された内照式の広告塔、屋上看板、壁面広告など、不燃性が要求される看板材料として好適に用いられるものである。
【0038】
次に、本発明の不燃性看板について説明する。
本発明の不燃性看板は、以上に説明した不燃性看板材料を用いて作製されたものであることを特徴とする。
【0039】
本発明の不燃性看板材料を用いて本発明の不燃性看板を作製するにあたっては、不燃性看板材料を所定の形状、大きさに加工し、必要に応じて、金属などの枠組み材料、蝶番などの取付冶具類を組みこむことによって作製することができる。
【0040】
次に、本発明の不燃性看板材料の製造方法(以下、単に「製造方法」ということがある)について説明する。
本発明の製造方法は、
(1)第一のポリカーボネート樹脂層、第一のガラスクロス、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロス、第二のガラスクロス、第二のポリカーボネート樹脂層、を、この順序で重ね合わせる工程、
(2)上記重ね合わせたものを加熱加圧して積層体を成形する工程、
を有することを特徴とする。
【0041】
本発明の製造方法においては、上記(2)工程は、
(2−1)第一の圧力で加熱加圧する昇温工程と、
(2−2)上記第一の圧力よりも高い第二の圧力で加熱加圧する成形工程と、
をこの順で含むものであり、
上記昇温工程は、第一の圧力が0.5〜2.0MPa、該工程終了時点における第一及び第二のポリカーボネート樹脂層の温度が190〜210℃であり、
上記成形工程は、前記第二の圧力が1.0〜6.0MPa、
であることが好ましい。
上記(2−1)昇温工程の終了時点において、第一及び第二のポリカーボネート樹脂層の温度を190〜210℃とすることにより、ポリカーボネート樹脂層の粘度を、第一及び第二のガラスクロスへ含浸されやすい程度に低くすることができる。
そして、上記(2−2)成形工程において、上記(2−1)昇温工程における圧力よりも高い圧力で加熱加圧することで、第一及び第二のガラスクロスに対するポリカーボネート樹脂の良好な含浸性を確保することができる。
これにより、良好な機械的強度と光線透過性を有する不燃性看板材料を製造することができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を説明する。実施例、比較例において、「部」は「重量部」
、「%」は「重量%」を表す。
【0043】
1.不燃性看板材料の製造
<実施例1>
(1)材料
(a)第一、第二のポリカーボネート樹脂層
・商品名:住友ベークライト社製「ECG100−80」
・厚み:130μm(156g/m
・GPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量:27000
・160℃での溶融粘度:5MPa・s
(b)第一、第二のガラスクロス
・商品名:日東紡社製「7628」
・単位面積あたり重量:209g/m
・全光線透過率:45%
(c)熱硬化性樹脂含浸ガラスクロス
ガラスクロス基材として下記のものを用いた。
・商品名:日東紡社製「2116」
・単位面積あたり重量:104g/m
・全光線透過率:53%
上記ガラスクロス基材に、メラミン樹脂(反応モル比1.4、樹脂固形分50%)の固形分に対して触媒(MRCユニテック社製「キャタニット」)0.4%を添加したメラミン樹脂ワニスを塗布した後乾燥し、メラミン樹脂含浸ガラスクロスに対するメラミン樹脂分33%、揮発分6%のメラミン樹脂含浸ガラスクロスを得た。
【0044】
(2)上記(1)の各材料を、(a)、(b)、(c)、(b)、(a)の順で重ね合わせ、これをプレスプレートにはさんで、熱圧成形装置を用い、下記の成形条件で加熱加圧成形して、厚さ0.5mmの不燃看板材料を得た。下記の昇温工程終了時点において、第一及び第二のポリカーボネート樹脂層の温度は195℃であった。
1)昇温工程(加熱) 熱盤温度30〜215℃、圧力0.5MPa、時間36分間
2)成形工程(加熱) 熱盤温度215℃、圧力5.0MPa、時間4分間
3)冷却工程(冷却) 熱盤温度215〜30℃、圧力5.0MPa、時間28分間
【0045】
<実施例2>
実施例1(1)における、(c)熱硬化性樹脂含浸ガラスクロスとして下記のものを使用した以外は、実施例1と同様にして厚さ0.5mmの不燃看板材料を得た。
(c)熱硬化性樹脂含浸ガラスクロス
ガラスクロス基材として下記のものを用いた。
・商品名:日東紡社製「2116」
・単位面積あたり重量:104g/m
・全光線透過率:53%
エポキシ当量約450のビスフェノールA型エポキシ樹脂70部と、エポキシ当量約190のフェノールノボラック型エポキシ樹脂30部をメチルエチルケトン100部に溶解した溶液に、ジシアンジアミド3部と2−フェニル−4−メチルイミダゾール0.15部をジメチルホルムアミド20部に溶解した溶液を加えて攪拌混合し、エポキシ樹脂ワニスを調製した。
上記ガラスクロス基材に、このエポキシ樹脂ワニスを塗布した後乾燥し、エポキシ樹脂含浸ガラスクロスに対するエポキシ樹脂分45%のエポキシ樹脂含浸ガラスクロスを得た。
【0046】
<比較例1>
厚さ4.0mmのポリカーボネート樹脂板(住友ベークライト社製「ポリカエース:ECG100」)を用いた。
【0047】
2.不燃性看板の製造
実施例1〜2で得られた不燃性看板材料から縦500mm、横700mmの矩形状の材料2枚を作成した。これらを、アルミニウム製の枠材に固定することにより、表裏面に看板材料による表示パネルを有した略直方体形状の看板を作製した。
【0048】
3.不燃性看板材料の評価
実施例1〜2で得られた不燃性看板材料、及び、比較例1のポリカーボネート樹脂板を用いて、下記の項目について評価を行った。評価結果を表1に示す。
(1)不燃性
日本建築総合試験所の業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」4.10 不燃性能試験・評価方法における、4.10.2 発熱性試験・評価方法により実施した。
上記業務標準「防耐火性能試験・評価業務方法書」の上記項目には、建築基準法第2条第9号(不燃材料)の規定に基づく認定に係わる性能評価方法について記載されている。(2)機械的強度(曲げ強度)
JIS K 6902(熱硬化性樹脂高圧化粧板試験方法)に準拠して、横方向の曲げ強さ、曲げ弾性率、たわみ量を測定した。
(3)全光線透過率
JIS K 7105に準拠して、東洋精機製作所社製「ヘイズガードII」を用いて測定を行った。
(4)ヘイズ値
JIS K 7105に準拠して、東洋精機製作所社製「ヘイズガードII」を用いて測定を行った。
(5)耐光性
JIS K 6902に準拠して、D法にて測定を行った。
【0049】
【表1】

【0050】
実施例1〜2は、本発明の不燃性看板材料であり、不燃性を有し、機械的強度に優れ、かつ、全光線透過率、ヘイズ値が高く、看板材料として好適なものであった。
これに対して比較例1は、ポリカーボネート樹脂板を適用したものであるが、不燃性を達成することができず、機械的強度、耐光性についても低下したものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の不燃性看板材料は、不燃性、光透過性、機械的強度に優れたものであり、例えば、高所に設置された内照式の広告塔、屋上看板、壁面広告など、不燃性が要求される看板材料として好適に用いられるものである。
【符号の説明】
【0052】
101 不燃性看板カバー材料
10A ポリカーボネート樹脂層
10B ポリカーボネート樹脂層
11A ガラスクロス
11B ガラスクロス
12 熱硬化性樹脂含浸ガラスクロス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のポリカーボネート樹脂層、第一のガラスクロス、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロス、第二のガラスクロス、第二のポリカーボネート樹脂層、を、この順序で積層してなる積層体を有することを特徴とする、不燃性看板材料。
【請求項2】
前記第一及び第二のポリカーボネート樹脂層を構成するポリカーボネート樹脂は、ポリスチレン換算による重量平均分子量が16000〜30000である請求項1に記載の不燃性看板材料。
【請求項3】
前記第一及び第二のポリカーボネート樹脂層を構成するポリカーボネート樹脂は、160℃における溶融粘度が、0.1〜10MPa・sである請求項1又は2に記載の不燃性看板材料。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂含浸ガラスクロスを構成する熱硬化性樹脂は、メラミン樹脂である請求項1ないし3のいずれかに記載の不燃性看板材料。
【請求項5】
前記第一及び第二のガラスクロスは、単位面積あたりの重量が80〜210g/mである請求項1ないし4のいずれかに記載の不燃性看板材料。
【請求項6】
前記積層体は、JIS K 7105に規定された全光線透過率が30〜60%である請求項1ないし5のいずれかに記載の不燃性看板材料。
【請求項7】
前記積層体は、JIS K 7105に規定されたヘイズ値が90.0〜99.7%である請求項1ないし6のいずれかに記載の不燃性看板材料。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の不燃性看板材料を用いて作製されたものであることを特徴とする不燃性看板。
【請求項9】
請求項1ないし7のいずれかに記載の不燃性看板材料の製造方法であって、
(1)第一のポリカーボネート樹脂層、第一のガラスクロス、熱硬化性樹脂含浸ガラスクロス、第二のガラスクロス、第二のポリカーボネート樹脂層、を、この順序で重ね合わせる工程、
(2)前記重ね合わせたものを加熱加圧して積層体を成形する工程、
を有することを特徴とする、不燃性看板材料の製造方法。
【請求項10】
前記(2)工程は、
(2−1)第一の圧力で加熱加圧する昇温工程と、
(2−2)前記第一の圧力よりも高い第二の圧力で加熱加圧する成形工程と、
をこの順で含むものであり、
前記昇温工程は、前記第一の圧力が0.5〜2.0MPa、該工程終了時点における前記第一及び第二のポリカーボネート樹脂層の温度が190〜210℃であり、
前記成形工程は、前記第二の圧力が1.0〜6.0MPa、
である、請求項9に記載の不燃性看板材料の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−180445(P2011−180445A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45632(P2010−45632)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】