説明

不織布、この不織布の製造方法及びこの不織布を用いたサンドイッチ材

【課題】再生炭素繊維の有効利用を図ることができるとともに、軽量で、剛性に優れた不織布、この不織布の製造方法及びこの不織布を用いたサンドイッチ材を提供することを目的としている。
【解決手段】表面のサイジング剤が除去された状態のチョップド再生炭素繊維5と、熱可塑性樹脂繊維6とからなる積層マット7を解繊機及びカード機8に順に通し、十分にチョップド再生炭素繊維5と、熱可塑性樹脂繊維6とが混合された不織布9を得た。
そして、この不織布9が表面材となり、竹/PPからなる不織布がコア材となる対称三層構造物をニードルパンチしてサンドイッチ材を得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生炭素繊維の有効利用を図ることができる不織布、この不織布の製造方法及びこの不織布を用いたサンドイッチ材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の内装材、例えば、リアパーティションや天井材には、現在、ガラス繊維やケナフなどの天然繊維とポリプロピレン(PP)で構成される不織布マットや,芯材にポリウレタンなどの発泡材、表面にランダム配向したガラス繊維/PP(またはポリエチレン(PE))不織布を貼り付けたサンドイッチ材が用いられている。
これらのマットやサンドイッチ材は、必要な強度を有するだけなく、高い剛性、耐熱性、断熱性、遮音性が要求される一方、軽量化も喫緊の課題である。
一方、炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP」と記す)は、力学的特性に優れているため、現在いろいろな用途に用いられているが、用途が広がるにつれ、使用済み製品、破損品、炭素繊維の端材、未硬化のプリプレグの端材等が廃棄品として多量に発生する。
このようなCFRP由来の廃棄品の処理方法として、いろいろな再生炭素繊維の製造方法が提案されている(特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2523229号公報
【特許文献2】特許第3180463号公報
【特許文献3】特許第3283967号公報
【特許文献4】特許第3401865号公報
【特許文献5】特許第3301099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、再生炭素繊維は、その利用用途が十分に検討されていない。
そこで、本発明の発明者は、自動車の内装材として用いられる不織布に再生炭素繊維を使用することができないかと、鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに到った。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、再生炭素繊維の有効利用を図ることができるとともに、軽量で、剛性に優れた不織布、この不織布の製造方法及びこの不織布を用いたサンドイッチ材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかる不織布は、表面のサイジング剤が除去された状態のチョップド再生炭素繊維と、熱可塑性樹脂繊維とからなることを特徴としている。
【0007】
本発明の不織布において用いられるチョップド再生炭素繊維は、CFRP由来の廃棄品を加熱処理し、処理品を所望の長さに裁断したもの、溶媒により炭素繊維周囲の熱硬化性樹脂やサイジング剤を取り除き、処理品を所望の長さに裁断したものなど、表面のサイジング剤が除去されていれば、特に限定されない。
マトリックス樹脂の炭化物によって炭素繊維同士が連結されているチョップド再生炭素繊維を含む不織布をサンドイッチ材の表面材とする場合、コア材との強い結合を得るため、その不織布全体の再生炭素繊維について、長さ20mm以上の短繊維の割合が5重量%以上含まれていることが好ましい。
【0008】
チョップド再生炭素繊維の長さは、特に限定されないが、不織布製造工程でPPなどのバインダー繊維との絡み合いのし易さ、再生炭素繊維間での応力伝達効率を高め、再生炭素繊維のもつ高剛性の特徴を発揮させるため、長さが20mm以上のチョップド再生炭素繊維が、チョップド再生炭素繊維全体で50重量%以上占めることが好ましい。
不織布中に含まれるチョップド再生炭素繊維の量は、特に限定されないが、サンドイッチ材の曲げ剛性に対する再生炭素繊維の増進効果を得るためには、不織布全体で10重量%以上を占めるようにすることが好ましい。
【0009】
本発明に使用される熱可塑性樹脂繊維は、炭素繊維との接着性に乏しいPPやPEなどの非極性樹脂で形成されたものなど、特に限定されないが、本発明の不織布をサンドイッチ材の芯材と熱融着する場合を考慮すると、芯材を構成する樹脂と熱融着できる熱可塑性樹脂を選択することが好ましい。例えば、芯材として一般に内装材として用いられている天然繊維とPP繊維とからなる不織布を用いる場合、PP繊維を選択することが好ましい。
【0010】
また、上記熱可塑性樹脂繊維の繊維長さは特に限定されないが、例えば、再生炭素繊維と十分絡ませるために、50mm以上が好ましい。
また、熱可塑性樹脂繊維の繊維太さは、特に限定されない。
【0011】
本発明の不織布の製造方法は、特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂繊維からなる綿状体またはスライバー状体の上面側にチョップド再生炭素繊維を層状に配置した状態で、少なくともカード機に投入して解繊混合し、ウエブを得たのち、ニードルパンチで交絡させる方法、熱可塑性樹脂繊維からなる綿状体またはスライバー状体の上面側にチョップド再生炭素繊維を層状に配置した状態で、少なくともカード機に投入して解繊混合し、ウエブを得たのち、このウエブを熱処理して、熱可塑性樹脂繊維の一部を融着させる方法が挙げられる。
なお、上記ウエブを得る工程においては、熱可塑性樹脂繊維からなる綿状体またはスライバー状体の上面側にチョップド再生炭素繊維を層状に配置した状態で、まず、解繊機に投入して解繊混合し、その後、得られた混合物をさらにカード機に投入しウエブを得るようにしてもよい。
【0012】
上記のように、熱可塑性樹脂繊維からなる綿状体またはスライバーの上面側に上記チョップド再生炭素繊維を層状に配置した状態で、予め解繊機に投入して解繊混合し、その後、カード機でウエブを得る工程を備える方法を用いれば、効率よく解繊して均一な混合状態のウエブを得やすい。なお、解繊機への投入は、1回でもよいが、必要に応じて2回以上通すようにしても構わない。
なお、十分かつ均一に解繊混合するために、得られた交絡のみのウエブをさらに1回以上カード機に通すようにしても構わない。
また、得られた不織布あるいはウエブをさらに複数枚重ね合わせ、ニードルパンチするようにしても構わない。
【0013】
上記カード機としては、通常の不織布の製造に用いられるカード機(例えば、池上機械(株)社製 商品名MDKS等)を用いることができる。解繊機としては、通常の不織布の製造に用いられる解繊機(例えば、池上機械(株)社製 商品名リサイクルブレーカRB-100等)を用いることができる。
【0014】
本発明にかかるサンドイッチ材は、芯材の表面に本発明の不織布が積層されていることを特徴としている。
本発明のサンドイッチ材に用いる芯材としては、特に限定されないが、本発明の不織布以外の公知の不織布や樹脂発泡体が挙げられる。
【0015】
上記公知の不織布としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維やケナフ、竹、綿などの天然繊維と、ポリプロピレン(PP)などの熱可塑性樹脂繊維とで構成される不織布が挙げられる。
本発明の不織布と上記公知の不織布との接合方法は、特に限定されないが、たとえば、ニードルパンチを用いる方法、熱融着させる方法、接着剤を介在させる方法などが挙げられる。
【0016】
上記樹脂発泡体としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン樹脂発泡体、PP発泡体、PE発泡体などが挙げられる。
本発明の不織布と上記樹脂発泡体との接合方法は、特に限定されないが、たとえば、接着剤を介在させる方法、熱融着させる方法などが挙げられる。
【0017】
本発明の不織布の用途としては、特に限定されないが、自動車の内装材、上記サンドイッチ材の表面材、X線透過性があることからCT装置のカバー、汎用の高分子系複合材料の強化材,ゴム系柔軟材を強化する帆布等が挙げられる。
また、本発明のサンドイッチ材の用途としては、特に限定されないが、自動車の内装材、医療用装置の構造材、断熱性および電波遮蔽性があることから住宅のパネル、建築家屋用の内装材等が挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の不織布は、表面のサイジング剤が除去された状態のチョップド再生炭素繊維と、熱可塑性樹脂繊維とからなるので、軽量化を図ることができるとともに、薄くても剛性の高いものとすることができる。しかも、再生炭素繊維の有効利用が図れ、環境にやさしく、コストの低いものとすることができる。
【0019】
また、チョップド再生炭素繊維は、表面のサイジング剤が除去されているので、繊維同士が凝集しにくく、解繊によって熱可塑性樹脂繊維と熱可塑性樹脂繊維との間にスムーズに入り込み、均一に分散されやすい。
したがって、均一な性状の本発明の不織布を短時間で容易に得ることができる。
【0020】
一方、本発明のサンドイッチ材は、芯材の表面に剛性の高い本発明の不織布が積層されているので、芯材を薄肉化したり、高発泡倍率の芯材を用いても曲げ剛性的および強度的に十分な特性を有するサンドイッチ材とすることができる。
また、薄肉化することによって、軽量化をはかるとともに、曲げ加工性貴に優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明にかかる不織布の製造工程の1例を工程順に説明する模式図である。
【図2】図1に示す本発明の不織布を用いたサンドイッチ材の製造方法の1例を説明する斜視図である。
【図3】図2の製造方法で得られる本発明のサンドイッチ材の斜視図である。
【図4】図2に示す本発明の不織布を用いたサンドイッチ材の製造方法の他の例を説明する斜視図である。
【図5】実施例のサンドイッチ材を作製するのに用いたニードルの平面図である。
【図6】作製したサンドイッチ材A〜Dの曲げ強度を比較してあらわす図である。
【図7】サンドイッチ材Dの4点曲げ荷重下での変形の様相を説明する図である。
【図8】圧子の曲げ変位との関係を示す図である。
【図9】面内せん断強度の測定方法を説明する図である。
【図10】作製したサンドイッチ材A〜Dの面内せん断強度を比較してあらわす図である。
【図11】ニードルパンチングによる繊維配向分布を比較してあらわす図である。
【図12】表面層に座屈が生じた場合の座屈波長とパンチング密度との関係をあらわす図である。
【図13】サンドイッチ材A〜Cのニードルパンチ時にニードルにかかる反力の変化を比較してあらわす図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1は、本発明にかかる不織布の製造方法を工程順にあらわしている。
【0023】
図1(a)に示すように、綿状またはスライバーをした熱可塑性樹脂繊維としてPP繊維6を平らなマット状に均したのち、その上に上記チョップド炭素繊維5を層状にして重ねて積層マット7とする。
その後、この積層マット7を、解繊機及びカード機8に順に通し、PP繊維6と、チョップド再生炭素繊維5を解繊混合してPP繊維6間にチョップド再生炭素繊維5が均一に分散混合されたウエブを形成し、加熱処理して不織布9を得る。
【0024】
このようにして得られた不織布9は、例えば、図2に示すように、竹(あるいはケナフ)/PP製の芯用不織布10の上下に配置し、ニードルパンチング装置11の上部パンチ盤11aと下部パンチ盤11bとの間に挟み込んで、ニードルパンチによって芯用不織布10と一体化することによって図3のような、芯層12aが芯用不織布10で形成され、表面層12b,12bが不織布9で形成されたサンドイッチ材12を得ることができる。
なお、ニードルパンチング装置11は、ニードルが両パンチ盤11a,11bの両側に設けられていても、上下いずれかに設けられていても構わない。
【0025】
図4は、本発明のサンドイッチ材の製造方法の他の形態をあらわしている。
図4に示すように、この製造方法は、上記不織布9を、上記芯用不織布10の上下に重ね合わせて、熱プレス機13の上下の熱盤13a,13b間で熱プレスすることで、図示していないが、不織布9を構成するPP繊維と、不織布10を構成するPP繊維とがその界面で熱融着されたサンドイッチ材を得るようになっている。
【0026】
この方法で得られたサンドイッチ材は、不織布9を構成するPP繊維と、不織布10を構成するPP繊維とをその界面で熱融着されているので、緻密で接合強度の優れたものとなる。また、この製造方法によれば、熱プレスと同時にサンドイッチ材を所望の形状に型付けすることもできる。
【0027】
以下に、本発明の具体的な実施例を、詳しく説明する。
【0028】
(実施例1)
〔再生炭素繊維入り不織布の作製〕
チョップド再生炭素繊維(財団法人福岡県環境保全公社リサイクル総合研究センターから入手した繊維長20mm±5mmに篩い分けされたもの)と、バインダー繊維としての綿状のポリプロピレン繊維(チッソポリプロ繊維(株)製 繊維長50mm、繊度2.2dtex,)とを重量比で混合割合2:8の比率で上下に重ね合わせて解繊機にまず通した後、カード機を通して100g/cm2の不織布Aを得た。
〔竹繊維入り不織布の作製〕
同志社大学京田辺キャンパスに自生するモウソウチクを、竹材の主成分であるリグニン、ヘミセルロースを除去するためにアルカリ処理した後、冷水で十分に洗浄し、竹繊維束を抽出した。
このようにして得られた剛直な竹繊維を、解繊機に通すことにより柔軟化させた。
その後、解繊した竹繊維と上述の綿状のポリプロピレン繊維(チッソポリプロ繊維(株)製 繊維長50mm、繊度2.2dtex,)とを重量比で7:3の割合にして不織布Aと同様にして、800g/cm2の不織布Bを得た。
〔積層体の作製〕
上記のようにして得られた不織布Aを表面材として用い、コア材としての不織布Bを両側から挟み込み対称3層構造の積層体を得た。
〔サンドイッチ材(スタンパブルシート)の作製〕
得られた積層体を単位面積あたりのニードルの密度を40本/cm2として、ニードルパンチ加工を行った。その後190℃、0.5MPaの条件下にて、5分間プレス成形を行い、サンドイッチ材Aを得た。
なお、用いたニードルは、図5に示すような構造をしており、各部の寸法は以下の通りである。
B=0.6、J=0.1、M=1、T=2.1、G=6.3、H=5(単位:mm)
【0029】
(実施例2)
ニードルの密度を20本/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてサンドイッチ材Bを得た。
【0030】
(実施例3)
ニードルの密度を60本/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてサンドイッチ材Cを得た。
【0031】
(実施例4)
ニードルの密度を0本/cm2とした以外は、上記実施例1と同様にしてサンドイッチ材Dを得た。
【0032】
〔曲げ強度の評価〕
上記実施例1〜実施例4で得られたサンドイッチ材A〜Dについて、それぞれ曲げ強度を以下の4点曲げ試験によって、評価し、その結果を対比させて図6に示した。
(4点曲げ試験)
卓上帯鋸機を用いて、長さ100mm、幅30mmの試験片を切り出し、外側支点間距離80mm、内側の圧子間距離27mm、変位速度30mm/minの条件のもとで4点曲げ試験を行った。試験にはAUTOGRAPH万能試験機(定格100kN、島津製作所製)を用いた。反力及び試験片中央に生じる表面ひずみを、ロードセルおよび試験片表裏に貼り付けたひずみゲージを用いて測定した。各条件での測定回数は5とした。
【0033】
図6から、パンチング密度の増加に伴い、曲げ強度が幾らか向上することがわかった。また、強度の最大改善率を計算すると、パンチング密度が40本/cm2の場合に0本/cm2の場合と比べて約15%向上することがわかる。
なお、パンチング密度が60本/cm2の場合、40本/cm2の場合に比べて、曲げ強度が低下している。これは、ニードルパンチ密度を過度に大きくすると、表面層の弾性率の低下により座屈荷重が低下するためと思われる。
【0034】
また、図7にサンドイッチ材Dの4点曲げ荷重下での変形の様相を、図8に曲げ試験時の負荷の増加に伴う表面層のひずみ変化を示す。ここで、横軸は圧子の変位を表す。
【0035】
初期破壊は内側圧子間において発生し、その後、図7に示すように表面材の局所座屈が見られた。
図8は圧子の曲げ変位と圧子間に作用する曲げモーメントとの関係を示している。図8に示すように、負荷の初期段階の直線部では引張面と圧縮面の表面ひずみの絶対値はほぼ一致した。その後、引張ひずみの大きさが増加し、圧縮ひずみの大きさは小さくなることで両者の大きさに差異が生じた。このとき表面層に座屈が発生し、公称曲げ応力(曲げモーメント)の増加が小さくなった。このひずみの大きさの差異は、中立軸の位置から中央面からの移動を意味し、はく離の発生(後述)を示唆する。
【0036】
サンドイッチ材の局所座屈について、軸方向に圧縮荷重を受ける表面層がサンドイッチ材の中立面に対して対照的に座屈した場合の計算式が、Hoffらによって導かれている。
臨界座屈応力は次式(1)で表現される。
【0037】
【数1】

ただし、Efは表面材のヤング率、Ecはコア材のヤング率、Gcはコア材のせん断弾性率である。
上記式(1)に今回使用した材料の材料定数Ef=4GPa, Ec=0.4GPa, Gc=0.15GPaを当てはめ、座屈荷重を生じる公称曲げ応力を計算すると、250MPaとなるが、実際に座屈を生じた公称曲げ応力は201MPaとなり、測定値は理論値の約80%であった。この差異は、理論式(1)では完全な界面接着を前提としているが、本材料では面材とコア材の間で界面剥離が生じたものと考えられる。
【0038】
〔面内せん断強度の評価〕
得られたスタンバブルシートの面内せん断強度を以下の引張せん断試験によって評価し、その結果を対比させて図10に示した。
(引張せん断試験)
ニードルパンチングを行った際の表面層とコア層の接着力を評価するために、表面層とコア層の間をせん断面とする引張せん断試験を行った。図9に試験の概略図を示す。変位速度2mm/minのもとで引張荷重を負荷した。試験機には小容量引張試験機(Ez-test500:定格500N,島津製作所)を用いた。試験片が破断する際の最大荷重かあら公称せん断強さを求めた。但しここでは試験片の全長を短くする事で曲げモーメントの発生を無視した。各条件での測定回数は5とした。
【0039】
図10に示すように、パンチング密度の増加に伴い、層間の面内せん断強度は増加し、座屈波長は短くなった。これらのことから、ニードルパンチングによる層間接着力の増加により層間はく離が抑制され、再生炭素繊維を含む不織布Aを表面層に竹繊維を含む不織布Bをコア層に配したサンドイッチ材の曲げ強度が改善されることがわかる。
【0040】
図11にサンドイッチ材A及びサンドイッチ材Dの表面層(不織布A)内の再生炭素繊維の配向の測定結果を示す。なお、繊維配向の測定は、繊維の3D配向の計測ソフト(TRI/3D-VOL-FBR)を用いて、サンドイッチ材A及びサンドイッチ材DのX線CT画像(CT装置:TDM1000、ヤマト科学製)をもとに、表面層内に含まれる再生炭素繊維の配向(厚み方向との為す角)の分布を計測した。断面枚数を1024とした。図11中、θ=0°の条件は局所的な繊維の方向が水平方向にあることを意味し、θ=−90°、90°の条件はそれが垂直方向(厚み方向)にあることを意味する。
【0041】
図11から、ニードルパンチングを行わない場合に比べ、ニードルパンチングを行うと、厚み方向に配向するカーボン繊維の割合が相対的に増加することがわかる。
【0042】
図12に表面層に座屈が生じた場合の座屈波長とパンチング密度との関係を示す。
【0043】
〔ニードルへの反力の測定〕
サンドイッチ材内部の繊維の交絡状態を評価するために、サンンドイッチ材A〜Cについて、それぞれニードル挿入時に生じる反力の変化を測定し、その結果を図13に示した。
図13に示すように、ニードル挿入を開始した時点から反力は増加し、最大値に達した後減少した。この減少割合は最大値と比較し、パンチング密度が20,40,60本/cm2のときそれぞれ12%、43%、51%となった。反力の減少は、長手方向に配向している繊維数の割合の減少を示す。
【0044】
上記測定及び評価の結果から、以下のようなことが言える。
1)表面層の座屈の発生時には、表面層とコア層の間の層間はく離が生じ、これが最終曲げ破壊の原因になる。
2)ニードルパンチングによる表面層とコア層の間の面内接着強度の増加がサンドイッチ材の曲げ強度を向上させるといえる。
3)今回対象とした材料及びニードル形状の場合、強度の改善を行う場合の最適なパンチング密度の条件は40本/cm2程度が最も好ましい。
【0045】
なお、本発明は、上記実施の形態及び実施例に限定されるものではない。例えば、上記の実施の形態では、長尺の炭素繊維端材を切断装置でカットして得たチョップド炭素繊維を加熱処理して短尺のチョップド再生炭素繊維を得るようにしていたが、まず、長尺の炭素繊維端材を加熱処理してサイジング剤を除去した後、切断するようにしても構わない。
【符号の説明】
【0046】
5 チョップド再生炭素繊維
6 PP繊維(熱可塑性樹脂繊維)
7 積層マット
8 解繊機およびカード機
9 不織布(本発明の不織布)
12 サンドイッチ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面のサイジング剤が除去された状態のチョップド再生炭素繊維と、熱可塑性樹脂繊維とからなることを特徴とする不織布。
【請求項2】
熱可塑性樹脂繊維がポリプロピレンまたはポリエチレンで形成されている請求項1に記載の不織布。
【請求項3】
熱可塑性樹脂繊維からなる綿状体またはスライバー状体の上面側にチョップド再生炭素繊維を層状に配置した状態で、少なくともカード機に投入して解繊混合し、ウエブを得る工程を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の不織布の製造方法。
【請求項4】
熱可塑性樹脂繊維からなる綿状体またはスライバー状体の上面側にチョップド再生炭素繊維を層状に配置した状態で、まず、解繊機に通し、混合したのち、この混合物をカード機に投入することを特徴とする請求項3に記載の不織布の製造方法。
【請求項5】
芯材の両面に請求項1または請求項2に記載の不織布が積層されていることを特徴とするサンドイッチ材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−193466(P2012−193466A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57560(P2011−57560)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(503027931)学校法人同志社 (346)
【出願人】(511068740)財団法人福岡県環境保全公社 (2)
【Fターム(参考)】