説明

不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法

【課題】プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応によって、対応する不飽和酸、不飽和ニトリルを製造する方法において、高い収率を安定的に維持し、かつ、現状よりも更に効率的にMoを利用できる、不飽和酸、不飽和ニトリルの製造方法を提供する。
【解決手段】反応中に反応器内の触媒濃厚層へ粉末状のモリブデン化合物を、添加量として1日当たり、反応器内の触媒1トン当たり、Moとして0.02〜0.5Kgを添加し、かつ、その添加時の添加速度として0.03〜10Kg/minを満たすように添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体に担持された、少なくともMoを含有する酸化物触媒を用いて、流動床反応器にて、Mo化合物を添加して、プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応によって、対応する不飽和酸、不飽和ニトリルを製造する方法において、高い収率を安定的に維持し、かつ、効率的にMoを利用できる、不飽和酸、不飽和ニトリルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロピレンまたはイソブチレンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化して対応する不飽和カルボン酸または不飽和ニトリルを製造する方法が良く知られているが、近年、プロピレンまたはイソブチレンに替わってプロパンまたはイソブタンを気相接触酸化または気相接触アンモ酸化によって対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを製造する方法が着目されており、種々の酸化物触媒が提案されている。Moを含有する触媒の例として、Mo−V−Nb−(Sb/Te)を含む酸化物触媒が、特許文献1〜2などに開示されている。
【0003】
文献3には、Moは、ガス中に水分が存在すると、逃散することが記載されている。プロピレンなどアルケンに比べ、プロパンなどアルカンは、構造上水素を多く持っており、反応により生じる水分量は多くなる。アルケンに比べアルカンを原料に用いた場合、Moの逃散はより顕著となる傾向が考えられる。
【0004】
特許文献6、7には、Moが逃散する悪影響に関しての記載があり、その対策としてMo化合物を添加することが記載されている。さらに、この添加Mo化合物の粒径および添加量に関しての記載がある。
一方、特許文献4,5には、Teの逃散することによる悪影響が記載されており、その対策としてTe化合物を添加することが記載されている。さらに、Te化合物の添加量に関しての記載がある。
【特許文献1】特開平9−157241号公報
【特許文献2】特開2002−239382号公報
【特許文献3】JOURNAL OF CATALYSIS 10,188−199(1968)
【特許文献4】特開平11−124361号公報
【特許文献5】特開2001−213855号公報
【特許文献6】特開2003−48870号公報
【特許文献7】特開2005−206472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、担体に担持された、少なくともMoを含有する酸化物触媒を用いて、流動床反応器にて、Mo化合物を添加して、プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応によって、対応する不飽和酸、不飽和ニトリルを製造する方法において、高い収率を安定的に維持し、かつ、現状よりも更に効率的にMoを利用できる、新規な不飽和酸、不飽和ニトリルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、Moを添加する際の、添加場所、添加量、添加速度を規定することによって、本発明に到達した。すなわち、本発明は、下記のとおりである。
(1)担体に担持された、少なくともMoを含有する酸化物触媒を用いて、流動床反応器にて、プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応によって、対応する不飽和酸、不飽和ニトリルを製造する方法であって、反応中に反応器内の触媒濃厚層へ粉末状のモリブデン化合物を、添加量として1日当たり、反応器内の触媒1トン当たり、Moとして0.02〜0.5Kgを添加し、かつ、その添加時の添加速度として0.03〜10Kg/minを満たすように添加することを特徴とする不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
(2)該粉末状のモリブデン化合物の平均粒径が75〜500μmであることを特徴とする(1)に記載の不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
(3)該流動床反応器内のガスの線速度が0.02m/s〜1m/sであることを特徴とする(1)または(2)に記載の不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
(4)該酸化物触媒が、SiO2換算で20〜60重量%のシリカに担持されていること
を特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
(5)該触媒が組成式(1)で表されることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
【0007】
MoNbSb (1)
(式中、Xは、W、Ce、Ti、Cr、Mn、Fe、Ge、Sn、Te、希土類元素から選ばれる少なくとも1種以上の元素、a、b、c、d、nはMo1原子当たりの原子比を表し、aは0.01≦a≦1、bは0.01≦b≦1、cは0.01≦c≦1、0≦d<1、そしてnは構成金属の原子価によって決まる数である。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、反応が安定なまま、高い収率を維持し、Moを効率的に利用できる、新規な不飽和酸、不飽和ニトリルの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
少なくともMoを含有する酸化物触媒を用いて、プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応によって、対応する不飽和酸、不飽和ニトリルを製造する場合、その発熱量の多さから、除熱が容易で、触媒温度を均一に保てる流動床反応器が適している。
【0011】
流動床反応器は、触媒が流動しているため、反応器から触媒を容易に抜き出せる。更に反応器へ触媒や逃散するMo元素を補給するためのMo化合物などを容易に添加することが出来る。
【0012】
添加するMo化合物の種類は限定されないが、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、Moを含む複合酸化物、ヘプタモリブデン酸アンモニウム、ジモリブデン酸アンモニウム、ポリモリブデン酸アンモニウムなど酸化物やアンモニウム塩を用いることが可能である。添加したMo化合物が反応器内で分解し、Moが触媒へ移動する。化合物が反応器内で分解し、Moが触媒へ供給されるが、この分解しやすさを考えると、アンモニウム塩が好ましい。特にヘプタモリブデン酸アンモニウムが好ましい。
【0013】
触媒当たりの添加量は、触媒1トン当たり、1日当たり、Moとして0.02〜0.5Kgを添加する。特に0.02〜0.1Kgが好ましい。
【0014】
この範囲より少ないと、触媒からのMo逃散に追いつかず、触媒中のMo含有量が減少を続け、その結果、反応成績を維持できない。また、この範囲より多いと、利用率が悪く無駄になるほか、Mo化合物が分解したものやMo化合物そのものが原料ガス中のアンモニアを燃焼させ、反応温度の上昇などを起こし、反応が安定しない。また、その結果、反応成績が安定せず、プロセス全体が不安定になる。
【0015】
反応器への添加時、Mo化合物の添加速度は、Moとして0.03〜10Kg/minである。好ましくは0.03〜5Kg/minである。この範囲より遅いと、Mo化合物が固まって、Moが有効に利用されなくなり、結果、収率の維持が困難になる。この範囲より早すぎても、Mo化合物が利用される前に系外に排出され、利用率の低下を招き、結果収率の維持が困難になるうえ、急激にMo化合物が分解したものやMo化合物そのものが原料ガス中のアンモニアを燃焼させ、反応温度の上昇などを起こし、反応が安定しない。
【0016】
添加の方法は特に限定されないが、所定の速度になるよう、反応器外のホッパーなどから配管を経由して流動床反応器の触媒濃厚層部分へ圧送して供給することができる。この場合、圧送に用いるガスは、空気、不活性ガスが用いられる。窒素が好ましい。
濃厚層とは反応器下方の、触媒粒子が多量に存在する部分であり、希薄層とは反応器上部の、比較的微細な粒子が存在する部分を言う。
【0017】
反応器に不足分を補給するため触媒と添加する場合は、Mo化合物をこの触媒と共に添加してもかまわない。
【0018】
添加方法は連続的にも、間欠的にも行うことが出来る。
【0019】
連続的に添加する場合は、上記投入量、投入速度となるように添加する。
【0020】
間欠的に添加する場合、添加頻度としては出来るだけ頻度が高い方が好ましいが、添加する手間を考慮して1〜数日に1回で実施できる。添加量はその反応日数1日当たりの平均量が上記範囲に入るように添加する。添加速度は、1回当たりの添加速度が上記範囲に入るようにする。1日当たりとは反応しているある期間における反応日数の1日当たりを言う。
【0021】
一方、Moの利用率は、添加前後の触媒に含まれるMo含量の差から求められるMo増加量と、Mo添加量から求めることが出来る。触媒に含まれるMo含量はXRFなどで求めることが出来る。
【0022】
また、粉末状Mo化合物は、単独で添加しても良いし、触媒と混合して添加しても良い。
【0023】
紛末状モリブデン化合物の平均粒径は、75〜500μmが好ましい。更に好ましくは、100〜400μmである。
【0024】
流動床反応器の線速度は、0.02〜1m/sである。好ましくは0.03〜0.9m/sである。
【0025】
本発明で用いられる複合酸化物触媒は、少なくともMoを含み、担体に担持されたことを特徴とする複合酸化物触媒であり、本発明の複合酸化物触媒は、一般的な方法で調製することができ、例えば次の3つの工程を経て製造することができる。
【0026】
(I)原料調合工程
(II)工程(I)で得られた原料調合液を乾燥し、触媒前駆体を得る工程
(III)工程(II)で得られた触媒前駆体を焼成する工程
(工程I:原料調合工程)
本発明における調合とは、水性溶媒に、触媒構成元素の原料を溶解または分散させることである。
【0027】
原料とは、工程(I)で用いるものである。本発明の複合酸化物触媒を調製するにあたり、金属の原料は特に限定されない。
(工程II:乾燥工程)
工程(I)で得られた原料調合液を噴霧乾燥法によって乾燥させ、乾燥粉体を得る。噴霧乾燥法における噴霧化は遠心方式、二流体ノズル方式または高圧ノズル方式を採用することができる。遠心方式が好ましい。乾燥熱源は、スチーム、電気ヒーターなどによって加熱された空気を用いることができる。熱風の乾燥機入口温度は150〜300℃が好ましい。排風の出口温度は100℃以上が好ましい。特に110〜150℃が好ましい。
(工程III:焼成工程)
乾燥工程で得られた乾燥粉体を焼成に供することによって酸化物触媒を得る。
焼成は、回転炉、トンネル炉、管状炉、流動焼成炉等を用いて行うことができる。焼成は反復することができる。
乾燥粉体は静置して焼成すると、均一に焼成されず性能が悪化するとともに、割れ、ひびなどが生じる原因となるし、工業触媒としての生産性を考慮すると、ロータリーキルンなどで実施する事が好ましい。
【0028】
焼成工程は良好な性能を得るため、前段焼成と本焼成に分けることが可能である。本焼成とは、触媒とするために焼成された過程の中で最も高い温度で保持された段階をいい、前段焼成とはそれ以前の焼成段階をいう。前段焼成が更に数段に分かれていても良い。
【0029】
本焼成は500〜800℃が好ましい。
【0030】
本発明の複合酸化物触媒は、シリカを主成分とする担体によって担持された担持触媒であることが好ましい。複合酸化物触媒がシリカを主成分とする担体によって担持された触媒の場合、高い機械的強度を有するので、流動床反応器を用いた気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応に好適である。シリカの含有量は、触媒構成元素の酸化物とシリカを主成分とする担体から成る担持酸化物触媒の全重量に対して、SiO換算で20〜60重量%であることが好ましく、より好ましくは25〜55重量%である。
【0031】
本発明における好ましい複合酸化物触媒の具体例としては下記の一般組成式(1)で示されるものを例示することができる。
MoNbSb (1)
(式中、Xは、W、Ce、Ti、Cr、Mn、Fe、Ge、Sn、Te、希土類元素から選ばれる少なくとも1種以上の元素、a、b、c、d、nはMo1原子当たりの原子比を表し、aは0.01≦a≦1、bは0.01≦b≦1、cは0.01≦c≦1、0≦d<1、そしてnは構成金属の原子価によって決まる数である。)
Mo1原子当たりのVの原子比aは0.1〜0.4、Nbの原子比bは0.01〜0.2、Sbの原子比cは0.1〜0.5が好ましい。成分Xの原子比dは0〜0.01が好ましい。
【0032】
これら触媒を用いて、流動床反応器にて、プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応によって、対応する不飽和酸、不飽和ニトリルを製造する。
【0033】
反応に用いるプロパンまたはイソブタンとアンモニアの供給原料は必ずしも高純度である必要はなく、工業グレードのガスを使用できる。
【0034】
供給酸素源として空気、酸素を富化した空気または純酸素を用いることができる。更に、希釈ガスとしてヘリウム、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気、窒素などを供給してもよい。
【0035】
プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化は以下の条件で行うことが出来る。
【0036】
反応に供給する酸素のプロパンまたはイソブタンに対するモル比は0.1〜6、好ましくは0.5〜4である。
【0037】
反応温度は300〜500℃、好ましくは350〜450℃である。
【0038】
反応圧力は5×10〜5×10Pa、好ましくは1×10〜3×10Paである。
【0039】
接触時間は0.1〜10(sec・g/cc)、好ましくは0.5〜5(sec・g/cc)である。本発明において、接触時間は次式で決定される。
【0040】
接触時間(sec・g/cc)=(W/F)×273/(273+T)
ここで、W、F及びTは次のように定義される。
【0041】
W=充填触媒量(g)
F=標準状態(0℃、1.013×105Pa)での原料混合ガス流量(Ncc/sec)
T=反応温度(℃)
プロパンまたはイソブタンの気相接触アンモ酸化は以下の条件で行うことが出来る。
【0042】
反応に供給する酸素のプロパンまたはイソブタンに対するモル比は0.1〜6、好ましくは0.5〜4である。
【0043】
反応に供給するアンモニアのプロパンまたはイソブタンに対するモル比は0.3〜1.5、好ましくは0.7〜1.2である。
【0044】
反応温度は350〜500℃、好ましくは380〜470℃である。
【0045】
反応圧力は5×10〜5×10Pa、好ましくは1×10〜3×10Paである。
【0046】
接触時間は0.1〜10(sec・g/cc)、好ましくは0.5〜5(sec・g/cc)である。
【0047】
接触時間は次式で決定される。
【0048】
接触時間(sec・g/cc)=(W/F)×273/(273+T)
ここで
W=充填触媒量(g)
F=標準状態(0℃、1.013×10Pa)での原料混合ガス流量(Ncc/sec)
T=反応温度(℃)
である。
【0049】
本発明の反応は、単流式であってもリサイクル式であってもよい。
【実施例】
【0050】
以下に、本発明の具体的態様を、触媒の調製実施例およびプロパンの気相接触アンモ酸化反応によるアクリロニトリルの製造実施例に代表させて説明するが、本発明はその要旨を越えない限りこれら実施例に限定されるものではない。
【0051】
プロパンのアンモ酸化反応の成績は反応ガスを分析した結果を基に、次式で定義される
プロパン転化率およびアクリロニトリル選択率を指標として評価した。
プロパン転化率(%)=(反応したプロパンのモル数)/(供給したプロパンのモル数)×100
アクリロニトリル選択率(%)=(生成したアクリロニトリルのモル数)/(反応したプロパンのモル数)×100
アクリロニトリル収率(%)=(生成したアクリロニトリルのモル数)/(供給したプロパンのモル数)×100
Moの利用率(%)=添加前後での触媒に含まれるMoの増加量/添加したMo量×100
(実施例1)
内径3BのSUS製流動床型反応器にMo0.2Sb0.25Nb0.1/50wt%SiOなる組成の触媒を0.8Kg充填し、反応温度440℃、反応圧力常圧下にプロパン:アンモニア:酸素:ヘリウム=1:1:3:18のモル比の混合ガスを接触時間2.8(sec・g/cc)で供給し、アンモ酸化反応を行った。反応開始10日目に、ヘプタモリブデン酸アンモニウムを反応器にバルブを介して、触媒濃厚層に導いた供給ラインを通して触媒濃厚層に、5gを1秒間で窒素を流通させて添加した。ヘプタモリブデン酸アンモニウム添加量は、触媒1トン当たり、1日当たり、Moとして0.339Kgである。添加速度は、0.163Kg/minである。
【0052】
添加時、反応温度の変動や混合ガスの流量の変動などもなく、反応は安定であった。
【0053】
添加直前と添加1日後の触媒をそれぞれ少量抜きだし、蛍光X線分析(XRF)によりMoの利用率を求めた。
【0054】
Mo利用率、反応成績を表1に示す。反応成績は、反応開始して10時間後、ヘプタモリブデン酸アンモニウムを添加する直前、添加して1日経過後にそれぞれ反応成績を分析して得られたアクリロニトリル収率で評価した。
(実施例2)
実施例1と同様に反応を行った。ただし、Mo化合物の添加については、反応開始20日目に、ヘプタモリブデン酸アンモニウム10gを0.5秒で添加した。添加量は、触媒1トン当たり、1日当たり、Moとして0.339Kgである。添加速度は、0.652Kg/minである。
【0055】
添加直前と添加1日後の触媒をそれぞれ少量抜きだし、XRFによりMoの利用率を求めた。
【0056】
Mo利用率、反応成績を表1に示す。
(比較例1)
実施例1と同様に反応を行った。ただし、Mo化合物の添加については、反応開始20日目に、ヘプタモリブデン酸アンモニウム0.5gを0.5秒で添加した。添加量は、触媒1トン当たり、1日当たり、Moとして0.017Kgである。添加速度は、0.033Kg/minである。
【0057】
添加直前と添加1日後の触媒をそれぞれ少量抜きだし、XRFによりMoの利用率を求めた。
【0058】
Mo利用率、反応成績を表1に示す。
(比較例2)
実施例1と同様に反応を行った。ただし、Mo化合物の添加については、反応開始10日目に、ヘプタモリブデン酸アンモニウム10gを0.5秒で添加した。添加量は、触媒1トン当たり、1日当たり、Moとして0.679Kgである。添加速度は、0.652Kg/minである。
【0059】
添加直前と添加1日後の触媒をそれぞれ少量抜きだし、XRFによりMoの利用率を求めた。
【0060】
Mo利用率、反応成績を表1に示す。
(比較例3)
実施例1と同様に反応を行った。ただし、Mo化合物の添加については、反応開始20日目に、ヘプタモリブデン酸アンモニウム10gを30秒で添加した。添加量は、触媒1トン当たり、1日当たり、Moとして0.339Kgである。添加速度は、0.011Kg/minである。
【0061】
添加直前と添加1日後の触媒をそれぞれ少量抜きだし、XRFによりMoの利用率を求めた。
【0062】
Mo利用率、反応成績を表1に示す。
(比較例4)
実施例1と同様に反応を行った。ただし、Mo化合物の添加については、反応開始60日目に、ヘプタモリブデン酸アンモニウム35gを0.1秒で添加した。添加量は、触媒1トン当たり、1日当たり、Moとして0.396Kgである。添加速度は、11.403Kg/minである。
【0063】
添加直前と添加1日後の触媒をそれぞれ少量抜きだし、XRFによりMoの利用率を求めた。
【0064】
Mo利用率、反応成績を表1に示す。
(比較例5)
実施例1と同様に反応を行った。ただし、Mo化合物の添加については、反応開始10日目にヘプタモリブデン酸アンモニウム5gを1秒間で窒素を流通させて、触媒希薄層に導いた供給ラインを通して、触媒希薄層に供給した。
【0065】
供給量はヘプタモリブデン酸アンモニウム添加量は、触媒1トン当たり、1日当たり、Moとして0.339Kgである。添加速度は、0.163Kg/minである。
【0066】
添加直前と添加1日後の触媒をそれぞれ少量抜きだし、XRFによりMoの利用率を求めた。
【0067】
Mo利用率、反応成績を表1に示す。
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、プロパンまたはイソブタンを気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応させて対応する不飽和酸または不飽和ニトリルを製造する工業的製造プロセスに有用に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体に担持された、少なくともMoを含有する酸化物触媒を用いて、流動床反応器にて、プロパンまたはイソブタンの気相接触酸化反応または気相接触アンモ酸化反応によって、対応する不飽和酸、不飽和ニトリルを製造する方法であって、反応中に反応器内の触媒濃厚層へ粉末状のモリブデン化合物を、添加量として1日当たり、反応器内の触媒1トン当たり、Moとして0.02〜0.5Kgを添加し、かつ、その添加時の添加速度として0.03〜10Kg/minを満たすように添加することを特徴とする不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項2】
該粉末状のモリブデン化合物の平均粒径が75〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載の不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項3】
該流動床反応器内のガスの線速度が0.02m/s〜1m/sであることを特徴とする請求項1または2に記載の不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項4】
該酸化物触媒が、SiO換算で20〜60重量%のシリカに担持されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
【請求項5】
該触媒が組成式(1)で表されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の不飽和酸または不飽和ニトリルの製造方法。
MoNbSb (1)
(式中、Xは、W、Ce、Ti、Cr、Mn、Fe、Ge、Sn、Te、希土類元素から選ばれる少なくとも1種以上の元素、a、b、c、d、nはMo1原子当たりの原子比を表し、aは0.01≦a≦1、bは0.01≦b≦1、cは0.01≦c≦1、0≦d<1、そしてnは構成金属の原子価によって決まる数である。)

【公開番号】特開2007−308423(P2007−308423A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139778(P2006−139778)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】