説明

与えられたSAE粘度グレード用の低いHTHSを有した潤滑油組成物

【課題】低い高温高剪断粘度を示す潤滑油組成物を開示する。
【解決手段】潤滑油組成物は、0.25以下の動粘度比及び20%以上の剪断安定性指数(SSI)を有する第一のポリマーと、120以上の粘度指数を有する基油から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定の性能特性;特に低い高温高剪断粘度測定値を示す、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油組成物は本技術でよく知られている。潤滑油組成物は、典型的には、基油及び種々の添加剤から成る。潤滑油組成物は、それらの最終用途に従って、特定の性能特性、例えばこれらに限られないが、動粘度及び高温高剪断粘度(HTHS)測定値に適合しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
車両の低燃費が、車両で使用される潤滑油組成物のHTHS値と関係することが知られている。より低いHTHS値を有する潤滑油組成物を用いた車両が、向上した低燃費を示す。各SAE粘度グレードについて、潤滑油組成物の最小のHTHSが、SAE J300エンジン油粘度分類で特定される。従って、SAE粘度グレードで要求される最小値又は最小値近くのHTHSを有する潤滑油組成物は、最良の低燃費を提供すると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、そのSAE粘度グレードについての前記最小値又は最小値近くのHTHSを示す、120以上の粘度指数を有する基油を含んだ潤滑油組成物を提供する。本発明は、120以上の粘度指数を有する基油並びに0.25以下の動粘度比(kinematic viscosity ratio)及び20%以上の剪断安定性指数(shear stability index)(SSI)を有する第一のポリマーを含んだ、潤滑油組成物である。
【0005】
(発明の概要)
限定されない態様において、本発明は、以下を含む潤滑油組成物である:明細書で後に定義されるような動粘度の0.25以下の比及び20%以上の剪断安定性指数(SSI)を有する第一のポリマー;及び120以上の粘度指数を有する基油。
他の限定されない態様において、本発明は以下を含む潤滑油組成物である;0.25以下の動粘度比及び20%以上の剪断安定性指数(SSI)を有する第一のポリマー;及び120以上の粘度指数を有する基油、ここで潤滑油組成物中のリン濃度は0.08質量%より低く、硫黄濃度は0.5質量%より低い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(発明の詳細な説明)
他に示さない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件、容量、物理特性、プロセスパラメーター等を表す全ての数字は、全ての例において用語“約”により変更されるものとして理解されるべきである。従って、これに反することが示されない限り、以下の明細書及び特許請求の範囲で示される数値(numeral value)は、本発明により得ようとする所望の特性によって変動して良い。少なくとも、及び特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限することなく、各数値は報告された有効数字の数を考慮して、及び通常の四捨五入の技術を用いて解釈されるべきである。更に、本明細書に開示された全ての範囲は、最初と最後の範囲の値を含み、及び本明細書において含まれるいかなる全ての部分的な範囲を含むと理解されなければならない。例えば、規定された範囲“1から10”は、1の最小値と10の最大値間(及びこれを含んだ)のいかなる及び全ての部分的範囲、すなわち1以上の最小値から始まって10以下の最大値で終わる全ての部分的範囲、例えば5.5から10が含まれると解釈されるべきである。以下に記載する米国特許又は特許文献又は参考文献は、参照により取り込まれ及びそれが完全に取り込まれると理解されなければならない。
【0007】
本明細書で使用する以下の用語は、以下に定義される。
(A)基油−1以上のベースストックの混合物。
(B)動粘度−ASTM D445に従って測定された温度固有の特性。
(C)ポリマーの動粘度比−100℃(kv100)のポリマー溶液の動粘度で割られた、150℃(kv150)のポリマー溶液の動粘度。ポリマー溶液は、60℃から70℃で45分間APIグループI溶媒ニュートラル100ベースストックに粘度調整剤濃縮物を希釈することにより調製される。kv100とkv150は、ASTM D445に従って測定される。
【0008】
以下の表1は、本発明で使用するものとしての3つの異なるポリマー濃縮物溶液の組成を示し、加えて、ポリマー溶液のkv100、kv150及び動粘度比を示す。3つのポリマー濃縮物は、市場で入手可能である。ポリマー濃縮物1はInfinium USAからSV145として市場で入手可能である;ポリマー濃縮物2はInfinium USAからSV265として市場で入手可能である;及びポリマー濃縮物3はChevron CorporationからParatone 8451として市場で入手可能である。
【0009】
【表1】

【0010】
(D)-30℃[cp]でのCCS−ASTM D5293に従って測定される。
(E)150℃でのHTHS[cp]−ASTM D4741に従って測定される。
(F)剪断安定指数−ASTM D6278に従って決定される。
(G)増粘効率−
【数1】

(式中、cはポリマーの濃度(wt%)であり、kv(ポリマー+油)はポリマー溶液のkv100であり、及びkv(油)は油のkv100である。)。kvはASTM D445に従って測定される。
【0011】
基油及びベースストックの種々の群が、本明細書で検討される。ベースストックに関する定義は、米国石油協会(API)発行の“エンジン油ライセンス認証システム”、産業サービス部(Industry Service Department)、14版、1996年12月、補遺1、1998年12月発行で見いだせるものと同じである。
本発明は、120以上の粘度指数を有する基油と、0.25以下の動粘度比及び20%以上の剪断安定性指数(SSI)を有する第一のポリマーを含んだ潤滑油組成物である。
本発明の限定されない態様において、基油はグループIIIベースストックを含む。グループIIIベースストックは、90%以上の飽和分(saturates)及び0.03%以下の硫黄分を含み、120以上の粘度指数を有する。本発明の他の限定されない態様において、基油はグループIVベースストックを含む。本発明の更に他の限定されない態様において、基油はグループIIIベースストック及びグループIVベースストックを含む。本発明の他の限定されない態様において、基油はグループIV及びグループVベースストックを含む。本発明の更に他の限定されない態様において、基油は、グループII、グループIV及びグループVベースストックを含む。
【0012】
本発明の限定されない態様において、ベースストックは、ガストゥーリキッド(“GTL”)法を用いて製造される。GTLは、天然ガス又は他のガス状の炭化水素を、より長鎖の炭化水素に転換するために用いられる精製プロセスである。例えば、GTLは、直接転換によるか又はフィッシャートロプシュ法を用いた中間体としての合成ガスを介して、メタンリッチなガスを液体燃料に転換するために使用できる。本技術で知られているように、グループIIIベースストックを製造するために異性化触媒をGTLで使用できる。
本発明により、潤滑油組成物は、0.25以下の動粘度比、及び20%以上、例えば35%以上、又は45%以上の剪断安定性指数(SSI)を有する少なくとも一つのポリマー(“第一のポリマー”)を含む。
本発明の限定されない態様において、第一のポリマーは、5質量%以上のスチレンを含む。
【0013】
本発明の更に他の限定されない態様において、第一のポリマーは、2.0以上、例えば2.4以上、又は2.8以上の増粘効率(TE)を有する。
本発明の限定されない態様において、適切な第一のポリマーは、通常のブロックコポリマー(即ち、真のブロックコポリマー)又はランダムブロックコポリマーを含む。通常のブロックコポリマーは、(1)4から10の炭素原子、例えば4から6の炭素原子を有する共役ジエンから、又は(2)8から12の炭素原子、例えば8又は9の炭素原子を有するビニル置換された芳香族から製造できる。
本発明の限定されない態様において、ブロックコポリマーは、共役ジエンから製造される。適切な共役ジエンは、ピペリレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、クロロプレン、イソプレン及び1,3-ブタジエンを含み、イソプレン及び1,3-ブタジエンが特に好ましい。これら共役ジエンの混合物も有用である。
【0014】
本発明の他の限定されない態様において、ブロックコポリマーはビニル置換された芳香族から製造される。適切なビニル置換された芳香族は、スチレン、α-メチルスチレン、オルト-メチルスチレン、メタ-メチルスチレン、パラ-メチルスチレン、パラ-tert.-ブチルスチレンを含む。
本発明の限定されない態様において、通常のブロックコポリマーは、合計で2から5、例えば2又は3の、ビニル置換された芳香族と共役ジエンのポリマーブロックを有し、前記ビニル置換された芳香族の少なくとも一つのポリマーブロックと、前記共役ジエンの少なくとも一つのポリマーブロックが存在する。本明細書で以下により完全に記載するように、共役ジエンブロックは水素化される。通常のブロックコポリマーは、一の単量体単位の十分に長い配列(ブロックI)が他の第二(ブロックII)、第三(ブロックIII)、第四(ブロックIV)又は第五(ブロックV)単量体単位の十分に長い配列に結合した、直鎖のブロックコポリマーであることができる。
【0015】
以下の参考文献は適切なコポリマーを開示し、参照により本明細書に取り込まれる:US5,429,758;US5,429,758。
この態様において、これらコポリマーのビニル置換された芳香族の含有量(即ち、通常のブロックコポリマーにおけるビニル置換された芳香族ブロックの合計量)は、20質量%から70質量%、例えば40質量%から60質量%の範囲内にある。従って、これらコポリマーの脂肪族共役ジエンの含有量(即ち、合計のジエンブロック含有量)は、30質量%から80質量%、例えば40質量%から60質量%の範囲内にある。
記載した通常のブロックコポリマーは、本技術でよく知られた通常の方法で調製できる。本発明の限定されない態様において、コポリマーは、例えばアルカリ金属炭化水素(例えばsec-ブチルリチウム)を重合触媒として使用するアニオン重合により調製される。
【0016】
上記のような通常のブロックコポリマーの商業的な例は、Infineum USA(Linden, NJ)から入手可能な水素化されたスチレン−イソプレンブロックである、Infineum SV140である。
典型的には、本発明のポリマーは、本技術でよく知られたものとしての濃縮物の形態で潤滑油組成物に導入される。濃縮物は油中に1以上の成分を含む。典型的な濃縮物は、3から25質量%のポリマーを含む。
本発明の限定されない態様において、組成物は1よりも多いポリマーを含む。この態様において、組成物は、上記のような第一のポリマーと、“第二のポリマー”を含む。第二のポリマーの適切な例は、オレフィンポリマー、例えばポリブテン;水素化したポリマー及びスチレンとイソプレン及び/又はブタジエンのコポリマー及びターポリマー;アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートのポリマー;アルキルメタクリレートとN-ビニルピロリドン又はジメチルアミノアルキルメタクリレートのコポリマー;エチレンプロピレンと活性モノマー、例えばマレイン酸無水物のポストグラフト(post-grafted)ポリマー;アルコール及びアミンで後反応したスチレン-マレイン酸無水物ポリマーを含むがこれらに制限されない。これらは、潤滑油組成物中で所望の粘度を得るために使用できる。
【0017】
本発明に従って、特定のSAE粘度グレードのための潤滑油組成物は、そのグレードのためお通常の潤滑油組成物よりも、より低いHTHS値で、前記最小値のHTHSにより近い値を示す。例えば、5W30潤滑油組成物のHTHSの前記最小値は2.9である。要求されるHTSTの最小値を含んだSAEエンジン油粘度要求分類に関する以下の表2を参照されたい。
【0018】
表2.SAE J300エンジン油粘度要件
【表2】

【0019】
本発明の潤滑油組成物は、異なるSAE J300粘度グレードを含む。種々の限定されない態様において、本発明の潤滑油組成物は、SAE J300粘度グレード0Wx又は5Wx(xは、10、20、30又は40)に対する要求を満足する。
本発明の限定されない態様において、潤滑油組成物は、洗浄剤阻害剤パッケージ(detergent inhibitor package)を含む。洗浄剤阻害剤パッケージは、以下の1以上を含む:金属又は灰分を含む洗浄剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、さび止め剤、消泡剤、抗乳化剤(demulsifier)、流動点降下剤等。
金属含有又は灰分含有洗浄剤は、堆積物を減少させ又は取り除くための洗浄剤として及び酸中和剤又は防さび剤の両方としてとして機能し、これにより摩擦及び腐食を減少させ、エンジンの寿命を延ばす。洗浄剤は、一般に、長鎖の疎水性の尾を有した極性の頭(polar head)を含み、極性の頭は酸性有機化合物の金属塩を含む。塩は実質的に化学量論的な量の金属を含んで良く、この場合において、これらは通常正塩又は中性塩と記載され、0から80の全アルカリ価又はTBN(ASTM D2896により測定されるであろうものとして)を典型的に有するであろう。過剰な金属化合物、例えば酸化物又は水酸化物と、酸性ガス、例えば二酸化炭素を反応させることにより、大量の金属塩基を含むこともできる。結果得られる過塩基性洗剤は、金属塩基(例えばカーボネート)ミセルの外側層として、中性化した洗浄剤を含む。このような過塩基性洗剤は、150以上のTBN、典型的には250から450以上のTBNを有して良い。
【0020】
使用できる洗浄剤は、油溶性の中性及び過塩基性スルホネート、フェネート、硫化フェネート、チオホスホネート、サリシレート及びナフテネート及び他の金属、特にアルカリ金属又はアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム及びマグネシウムの油溶性カルボキシレートを含む(本明細書中に記載される制限と共に)。最も普通に使用される金属は、ともに潤滑油に使用される洗浄剤中に存在していてもよいカルシウム及びマグネシウム、及びナトリウムとカルシウム及び/又はマグネシウムの混合物である。普通の金属洗浄剤は、250以上のTBN、例えば250から450のTBNを有する過塩基性カルシウムスルホネート;50以上のTBNを有する中性及び過塩基性のカルシウムフェネート;及び50以上のTBNを有する硫化フェネートを含む。
スルホネートは、アルキル置換された芳香族炭化水素、例えば石油の画分から得られるもの又は芳香族炭化水素のアルキル化により得られるものをスルホン化することにより典型的に得られるスルホン酸から調製できる。例は、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニル又はこれらのハロゲン誘導体、例えばクロロベンゼン、クロロトルエン及びクロロナフタレンをアルキル化することにより得られるものを含む。アルキル化は、触媒の存在下で3から70より多い炭素原子を有するアルキル化剤を用いて行うことができる。アルカリールスルホネートは、通常、アルカリ置換された芳香族部分あたり、9から80以上の炭素原子を含む。
【0021】
油溶性スルホネート又はアルキルアリールスルホン酸は、金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド、カーボネート、カルボキシレート、スルフィド、ヒドロスルフィド、ニトレート、ボレート及びエーテルで中和できる。金属化合物の量は、最終生成物の所望のTBNを考慮して選択されるが、典型的には要求される化学量論の100から220wt%で変動する。
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、耐摩耗剤及び酸化防止剤として頻繁に使用される。金属は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、又はアルミニウム、鉛、錫、モリブデン、マグネシウム、ニッケル又は銅であることができる。亜鉛塩は、潤滑油組成物の合計質量に基づいて、0.1から10wt%、例えば0.2から2wt%の量で、潤滑油中に典型的に使用される。これらは、最初に通常は1以上のアルコール又はフェノールとP2S5を反応させることによりジヒドロカルビルジチオホスホン酸(DDPA)を形成する工程、次いで形成したDDPAを亜鉛化合物で中和する工程により、公知の技術に従って調製できる。例えば、ジチオホスホン酸は、一級又は二級アルコールの混合物を反応させることにより製造できる。代わりに、多くのジチオホスホン酸を調製でき、あるもののヒドロカルビル基は完全に二級であり、他のもののヒドロカルビル基は完全に一級である。亜鉛塩を製造するために、いかなる塩基性又は中性の亜鉛化合物が使用できるが、酸化物、水酸化物及びカーボネートが最も一般的に適用される。市販の添加剤は、多くの場合中和反応において過剰な塩基性亜鉛化合物を使用することに起因して、過剰な亜鉛を含む。
【0022】
亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、ジヒドロカルビルジチオホスホン酸の油溶性塩であり、以下の式により表すことができる:
【化1】

(式中、R及びR'は同一又は異なっても良く、1から18例えば2から12の炭素原子を含み、かつ基例えばアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリール及び環状脂肪族基を含むヒドロカルビル基である。)。限定されない態様において、R及びR'基は、2から8の炭素原子のアルキル基である。従って、基は、例えばエチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであることができる。油溶性を得るために、ジチオホスホン酸中の炭素原子(即ちR及びR')の合計数は、一般的に5以上である。従って、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含む。都合の良いことには、ジチオホスホン酸にヒドロカルビル基を導入するために使用されるアルコールの少なくとも50(モル)%が、二級アルコールである。
【0023】
より多くのパーセンテージの二級アルコールが使用できる。いくつかの例において、高窒素システムが要求されて良い。従って、ヒドロカルビル基を導入するために使用されるアルコールは、60モル%より多い二級、又は90モル%より多い二級であることができる。二級の金属ジチオホスフェートは、試験、例えば手順(Sequence)VE(ASTM D5302)及びGM 6.2L試験において、より良好な摩耗制御を与える。粘度に関係するすすを制御するために本発明により要求される窒素を含むTBNの高いレベルは、摩耗及び腐食性能を増加し得る。
酸化防止剤又は抗酸化剤は、劣化が金属表面上の酸化物、例えばスラッジ及びニスのような堆積物の生成により及び粘度の増加により証明されるであろう、鉱油が劣化する傾向を減少させる。このような酸化防止剤は、ヒンダードフェノール、油溶性フェネート及び硫化フェネート、リン酸硫化した又は硫化した炭化水素、リン酸エステル、金属チオカルバメート、米国特許第4,867,890に記載されるような油溶性銅化合物、及びモリブデン含有化合物を含む。このような化合物は、本明細書中で記載された範囲内で適用される。
【0024】
本発明の一側面において、潤滑油は少なくとも0.0008モル%のヒンダードフェノール抗酸化剤を含む。一般的に、ヒンダードフェノールは、一の又は両方のオルト位で置換された油溶性フェノールである。適切な化合物は、一水酸基の単核フェノール、例えば2,6-ジ-tert-アルキルフェノール(例えば、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2-t-ブチルフェノール、4-アルキル,2,6,t-ブチルフェノール、2,6-ジ-イソプロピルフェノール及び2,6-ジメチル4 t-ブチルフェノール)を含む。他の適切なヒンダードフェノールは、多水酸基の多核フェノール、例えばアルキレン架橋されたヒンダードフェノール(4,4メチレンビス(6tertブチル-o-クレゾール)、4,4'-メチレンビス(2-tert-アミル-o-クレゾール)及び2,2'-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール))を含む。ヒンダードフェノールは、ホウ素化され又は硫化されてもよい。
非イオン性ポリオキシアルキレンポリオール及びそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール及びアニオン性アルキルスルホン酸から成る群より選択されるさび止め剤が使用できる。
【0025】
銅及び鉛軸受け腐食防止剤が使用できる。典型的には、このような化合物は、5から50の炭素原子を含むチアジアゾールポリスルフィド、その誘導体及びそのポリマーである。1,3,4チアジアゾールの誘導体、例えば米国特許第2,719125;2,719,126及び3,087,932に記載されたものが典型的である。他の同じような材料は、米国特許第3,821,236; 3,904,537; 4,097,387; 4,107,059; 4,136,043; 4,188,299;及び4,193,882に記載されている。他の添加剤は、チアジアゾールのチオ及びポリチオスルフェンアミド例えば英国特許明細書第1,560,830で記載されたものである。ベンゾトリアゾール誘導体も、この種の添加剤の範囲にある。これら化合物が潤滑油組成物中に含まれる場合、これらは典型的には、活性成分の0.2wt%を超えない量で存在する。
少量の抗乳化成分を使用できる。適切な抗乳化成分はEP330,522に記載されている。これは、ビスエポキシドと多価アルコールを反応させて得られた付加体と、アルキレンオキシドを反応させることで得られる。0.001から0.05質量%の活性成分の処理割合が典型的である。
【0026】
流動点降下剤(あるいは潤滑油流動性向上剤として知られる)は、液体が流動する又は注ぐことができる最低温度を下げる。このような添加剤は公知である。液体の低温流動性を改良するこれら典型的な添加剤は、C8からC18ジアルキルフマレート/酢酸ビニルコポリマー、及びポリアルキルメタクリレートである。同様に、ジアルキルフマレート及び酢酸ビニルを、相溶化剤として使用できる。
自動車油粘度調整剤の製造において使用するためのある種のポリマーがベースストック中に溶解された場合、不適合が起こりえる。混合物に分離する傾向か又は粒が発生する傾向を与える、一様でないポリマー分子の分散物が後で発生する。問題は、分裂又はパッキングを防止する役割を果たす、官能基に結合した炭化水素基を有する相溶化剤を用いることにより解決される。
気泡コントロールは、ポリシロキサンタイプの消泡剤、例えばシリコン油又はポリジメチルシロキサンを含む多くの化合物により与えることができる。
【0027】
いくつかの上記添加剤は、多様な効果を与えることができる;結果として例えば単一の添加剤が、分散剤−酸化防止剤として作用できる。このアプローチは公知であり、及びさらなる詳細を要求しない。上記他の成分の添加が、前記制限に従わなければならないことに注意することが重要である。
限定されない態様において、本発明は1以上の無灰分散剤を含む。無灰分散剤は、アルケニル基がC3-C4オレフィン、とりわけ約700から5000の数平均分子量を有するポリイソブテニルから誘導されるポリアルケニル又はホウ素化したポリアルケニルコハク酸イミドを含むことができる。他の公知の分散剤は、炭化水素で置換されたコハク酸無水物の油溶性ポリオールエステル、例えば、ポリイソブテニルコハク酸無水物、及び炭化水素で置換されたコハク酸無水物及び二置換されたアミノアルコールから誘導された油溶性オキサゾリン及びラクトンオキサゾリン分散剤を含む。
限定されない態様において、潤滑油組成物は0.5から5wt%の無灰分散剤を含む。
【0028】
限定されない態様において、本発明は無灰洗浄剤を含む。その構成に依存して、これらが燃焼において不揮発性の材料、例えば酸化ホウ素(boric oxide)又は5酸化リンを得るであろう事実にもかかわらず、これらは無灰洗浄剤及び分散剤と呼ばれる;しかしながらこれらは通常金属を含まず、従って燃焼において金属を含む灰を産出しない。多くの種類が本技術で知られており、及び潤滑油組成物において使用するために適切である。これらは以下を含む:
(1)窒素含有化合物、例えばアミン、有機ヒドロキシ化合物、例えばフェノール及びアルコール、及び/又は塩基性無機材料と、少なくとも34を含むカルボン酸(又はその誘導体)の反応生成物。これらの例は以下の特許に記載されており、これらは参照により本明細書に取り込まれる:米国特許第3,219,666; 4,234,435; 4,904,401; 及び6,165,235。
(2)アミン、例えばオキシアルキレンポリアミンと比較的高分子量の脂肪族又は脂環式ハロゲン化物の反応生成物。これらの例は以下の特許に記載されており、これらは参照により本明細書に取り込まれる:米国特許第3,275,554; 3,438,757; 3,454,555; 及び3,565,804。
【0029】
(3)アルキル基が少なくとも30の炭素原子を含むアルキルフェノールと、アルデヒド及びアミンとの反応生成物であって、“マンニッヒ分散剤(Mannich dispersant)”として特徴付けられるもの。これらの例は以下の特許に記載されており、これらは参照により本明細書に取り込まれる;米国特許第3,649,229; 3,697,574; 3,725,277; 3,725,480; 3,726,882;及び 3,980,569。
(4)アミン又はマンニッヒ分散剤を、試薬、例えばウレア、チオウレア、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素で置換したコハク酸無水物、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物、リン化合物等で後処理して得た生成物。これらの例は、以下の特許に記載されており、これらは参照により本明細書に取り込まれる;米国特許第3,639,242; 3,649,229; 3,649,659; 3,658,836; 3,697,574; 3,702,757; 3,703,536; 3,704,308; 及び3,708,422。
(5)油溶性モノマー、例えばデシルメタクリレート、ビニルデシルエーテル及び高分子量オレフィンと、極性置換基を含んだモノマー、例えばアミノアルキルアクリレート又はアクリルアミド及びポリ−(オキシエチレン)−置換したアクリレートとのインターポリマー。これらの例は、以下の特許に記載されており、これらは参照により本明細書に取り込まれる;米国特許第3,329,658; 3,449,250; 3,519,565; 3,666,730; 3,687,849;及び3,702,300。
【0030】
本発明の洗浄剤阻害剤パッケージは、リン、硫黄、塩素、灰分等を含むことができる。本発明の限定されない態様において、潤滑油組成物は0.08質量%より少ないリンを含む。本発明の他の限定されない態様において、潤滑油組成物は0.5質量%より少ない硫黄を含む。本発明の更に他の限定されない態様において、潤滑油組成物は150ppmより少ない、例えば50ppmより少ない塩素を含む。及び、本発明の他の限定されない態様において、潤滑油組成物は0.35から2質量%の灰分を含む。
【実施例】
【0031】
以下の制限されない実施例である実施例1−12は、本発明を説明する。第一のポリマー濃縮物と、市場で入手可能なSN100グループIベースストックを60℃から70℃の温度で45分間ブレンドすることにより得た種々の濃度を、異なる実施例を処方するために使用した。異なる第一のポリマー濃縮物であるポリマー濃縮物1-3を使用して、異なる実施例を処方した。ポリマー濃縮物1はInfinium USAからSV145として市場で入手可能である;ポリマー濃縮物2はInfinium USAからSV265として市場で入手可能である;及びポリマー濃縮物3はChevron CorporationからParatone8451として市場で入手可能である。実施例で使用した第一のポリマー濃縮物の動粘度比及び剪断安定性指数(SSI)を表12に示す。
いくつかの異なるグレードの潤滑油組成物を、種々のベースストックと、上記濃縮物を、公知の方法及び技術に従ってブレンドすることで調製した。実施例を製造するために使用した異なるベースストックであるベースストック1−7の粘性特性を表11に示す。
【0032】
種々の実施例において、成分1はInfinium USAからP5224として市場で入手可能な洗浄剤阻害剤パッケージである;成分2はInfinium USAからV385として市場で入手可能な流動点降下剤である;及び成分3はInfinium USAからP6000として市場で入手可能な洗浄剤阻害剤パッケージである。
実施例1−3は、5W20潤滑油組成物の代表例である。実施例1−3に関する組成情報を表3に示す。実施例4−6は、5W30潤滑油組成物の代表例である。実施例1−3に関する組成情報を表5に示す。実施例7−9は、0W30PAO潤滑油組成物の代表例である。実施例7−9に関する組成情報を表7に示す。実施例10−12は、0W20PAO潤滑油組成物の代表例である。実施例10-19に関する組成情報を表9に示す。
典型的な組成物の動粘度を100℃及び150℃で、ASTM D445に従って測定した。潤滑油組成物のHTHSは、ASTM D4741に従って行った。種々の実施例に関する結果を、表4,6,8及び10に示す。
【0033】
表3.典型的な5W20潤滑油に関する組成情報
【表3】

【0034】
表4.典型的な5W20潤滑油に関する性能情報
【表4】

【0035】
結論
実施例1−3は、5W20潤滑油組成物の実例であり、実施例1は本発明の実例である。予想されたように、実施例1は典型的な5W20潤滑油組成物の最も低いHTHSを有する。
【0036】
表5.典型的な5W30ウルトラ潤滑油に関する組成情報
【表5】

【0037】
表6.典型的な5W30ウルトラ潤滑油に関する性能情報
【表6】

【0038】
結論
実施例4−6は、5W30潤滑油組成物の実例であり、実施例4は本発明の実例である。予想されたように、実施例4は、典型的な5W30潤滑油組成物の最も低いHTHSを有する。
【0039】
表7.典型的な0W30PAO潤滑油の組成情報
【表7】

【0040】
表8.典型的な0W30PAO潤滑油の性能情報
【表8】

【0041】
結論
実施例7−9は、0W30PAO潤滑油組成物の実例であり、実施例7は本発明の実例である。予想されたように、実施例7は、典型的な5W30潤滑油組成物の最も低いHTHSを有する。
【0042】
表9.典型的な0W20PAO潤滑油に関する組成情報
【表9】

【0043】
表10.典型的な0W20PAO潤滑油に関する性能情報
【表10】

【0044】
結果
実施例10−12は、0W20PAO潤滑油組成物の実例であり、実施例10は本発明の実例である。予想されたように、実施例10は、典型的な5W20潤滑油組成物の最も低いHTHSを有する。
【0045】
表11.ベースストックの粘度
【表11】

【0046】
表12.ポリマー濃縮物1−3の説明
【表12】

【0047】
表12のポリマー濃縮物の剪断安定性指数は、それぞれポリマー濃縮物1、2及び3と、4.70cStのkv100を有するグループIベースストックをブレンドすることにより調製されたポリマー溶液を用いて、ASTM D6278に従って決定した。溶液のkv100は15.0±0.2cStであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む潤滑油組成物:
0.25以下の動粘度比及び20%以上の剪断安定性指数(SSI)を有する第一のポリマー;及び
120以上の粘度指数を有する基油。
【請求項2】
第一のポリマーが、最低5質量%のスチレンを含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
第一のポリマーが、通常のブロックコポリマー(即ち、真のブロックコポリマー)又はランダムブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
更に第二のポリマーを含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
第二のポリマーが、オレフィンポリマー;水素化したポリマー及びスチレンとイソプレン及び/又はブタジエンのコポリマー及びターポリマー;アルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートのポリマー;アルキルメタクリレートとN-ビニルピロリドン又はジメチルアミノアルキルメタクリレートのコポリマー;エチレンプロピレンと活性モノマー、例えばマレイン酸無水物のポストグラフトポリマー;アルコール及びアミンで後反応したスチレン−マレイン酸無水物ポリマーを含む群から選択される、請求項4に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
以下の1以上を含んだ洗浄剤阻害剤パッケージを含んだ請求項1に記載の潤滑油組成物:金属又は灰分を含む洗浄剤、酸化防止剤、耐摩耗剤、さび止め剤、消泡剤、抗乳化剤、さび止め剤、無灰洗浄剤及び流動点降下剤。
【請求項7】
0.08質量%より低いリンの濃度を有する、請求項6に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
0.5質量%より低い硫黄の濃度を有する、請求項6に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
150ppmより低い塩素の濃度を有する、請求項6に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
0.35から2質量%で変動する灰分含有量を有する、請求項6に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
SAE J300粘度グレード0Wx又は5Wx(式中xは、10、20、30又は40である)の要求を満たす、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
0.25以下の動粘度比及び20%以上の剪断安定性指数(SSI)を有するポリマー;及び
120以上の粘度指数を有する基油を含む潤滑油組成物であって、
潤滑油組成物におけるリンの濃度が0.08質量%より低く、硫黄の濃度が0.5質量%より低い前記組成物。
【請求項13】
基油が、グループIIIベースストック及び/又はグループIVベースストックを含む、請求項12に記載の潤滑油組成物。

【公開番号】特開2009−144162(P2009−144162A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321494(P2008−321494)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(500010875)インフィニューム インターナショナル リミテッド (132)
【Fターム(参考)】