説明

両面プレート式調理器

【課題】 プレート間に被調理物を挟んで上下から加熱する両面プレート式調理器において、ハンバーグ等の被調理物をふっくらとした食感を維持しつつ内部まで充分に加熱調理すること。
【解決手段】 調理器本体の上面に設けられた下プレートと、調理器本体の後部に回動自在に枢着された蓋体の下面に設けられた上プレートと、上下プレートを加熱するヒータと、蓋体を回動させる駆動源となるモータと、モータの駆動を制御する制御装置とからなり、蓋体は、上下プレートが対向してプレート間に被調理物が挟まれる第一及び第二の下降位置と、これら下降位置から所定角度上方に回動して下プレート表面が露出する上昇位置との間で回動可能であり、制御装置は、蓋体を第一の下降位置まで下降させ一旦停止させた後、第一の下降位置より上方の第二の下降位置まで上昇させ、所定時間経過後に上昇位置まで上昇させるようにモータの駆動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は両面プレート式調理器に関し、より詳しくは、上下のプレートの間にハンバーグ等の被調理物を挟んで上下から加熱して調理することができる両面プレート式調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上下のプレートの間に被調理物を挟んで上下から加熱して調理することができる両面プレート式調理器は、下側のプレートからのみ熱を加える方式の調理器に比べて短時間で効率良く被調理物を加熱調理することが可能であるため、短時間で大量の食材を調理しなければならない業務用の調理器として広く利用されている。
【0003】
このような両面プレート式調理器としては、床面上に載置される調理器本体の上面に設けられた下プレートと、調理器本体の後部に回動自在に枢着された蓋体の下面に設けられた上プレートとからなる、いわゆるシェル式の蓋開閉構造を有するものが一般的であり、例えば本願出願人が先に創出した下記特許文献1に記載された調理器もその一例である。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来の両面プレート式調理器では、上プレートを下降させて下プレートとの間で被調理物を挟んだときに、被調理物に加わる圧力が大きいために被調理物が過度に圧縮されてしまい、例えば、ハンバーグを調理した場合には、できあがったハンバーグが固くなって美味しさが大きく損なわれるという問題があった。また、プレート表面に被調理物が付着してしまうという問題もあった。
この問題は、上プレートの下降停止位置を上方にずらすことによって解決するようにも思われるが、単純に下降位置を上方にずらした場合には被調理物の内部にまで熱が充分に伝わらなくなるおそれがあった。
【0005】
また、上プレートの圧力をバネで逃がすことによって被調理物の過度の圧縮を防止する方法も考えられるが、被調理物が1個の場合と複数個の場合とでは被調理物が膨らむときの反発力が異なるため、この方法では被調理物の個数の変化に対応しながら良好な調理を行うことができない。
【0006】
また、ハンバーグ等の被調理物は、工業製品等とは異なり、その厚みには比較的大きなばらつきがある。そのため、調理現場において、上下プレート間の間隔(上プレートの下降停止位置)が適当になるように微調整する作業が必要となる。
しかしながら、従来の両面プレート式調理器では、この微調整作業をシム板を用いて行っていたため、作業効率が非常に悪く、調整に長い時間を要していた。
【0007】
また、両面プレート式調理器において、被調理物がプレートに付着するのを防ぐために、プレートの表面をフッ素樹脂製シートにより被覆したものや、プレート表面に付着防止用の素材をコーティング或いはメッキしたものが存在している。
このプレート表面を被覆するフッ素樹脂製シートは、汚れると交換しなければならないため、短時間で交換できるようにクリップ等の簡易な固定手段によって固定されている。
しかしながら、大量の調理を行う現場では、頻繁にシートを交換しなければならないため、交換作業に多くの時間をとられてしまうという問題があった。一方、コーティングやメッキによる対策がなされているものでは、シートの交換作業は不要であるものの、使用に伴って被膜が徐々に剥がれ、付着防止効果が低下してしまうという問題があった。
また、クリップ等の簡易な固定手段で固定しているため、使用に伴ってフッ素樹脂製シートが弛んでくるという問題もあった。
【0008】
更に、シェル式の蓋開閉構造を有する両面プレート式調理器では、被調理物の厚みが、プレートの後方側(回動支点側)よりも前方側(調理者側)において厚くなる傾向がある。
従って、例えば、下プレート表面に複数のハンバーグを並べて調理した場合、前方側に並べたハンバーグが厚くて小さく、後方側に並べたハンバーグが薄くて大きくなり、仕上がりが不均一となってしまっていた。
【0009】
また、シェル式の蓋開閉構造を有する両面プレート式調理器は、上プレートを取り付けた蓋体の昇降動作をモータ駆動により行っているが、モータの出力軸と蓋体の回動軸との連結部分に何らかの故障が生じることによって、蓋体が急激に下降して作業者に怪我をさせる危険性があった。
【0010】
【特許文献1】実公平6−8836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、上下のプレート間に被調理物を挟んで上下から加熱して調理する両面プレート式調理器において、ハンバーグ等の被調理物を、ふっくらとした食感を維持しつつ内部まで充分に加熱されるように調理できるとともに、上下プレートの間隔の微調整作業を容易に行うことができ、また被調理物のプレートへの付着防止のためのフッ素樹脂製シートの頻繁な交換による作業性の低下やシートの弛みを防ぐことができ、しかも被調理物をプレート全面において均一に仕上げることが可能であり、更に蓋体の急激な下降による事故を防ぐことができる両面プレート式調理器を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、調理器本体の上面に設けられた下プレートと、前記調理器本体の後部に回動自在に枢着された蓋体の下面に設けられた上プレートと、これら上下プレートを加熱するヒータと、前記蓋体を回動させる駆動源となるモータと、該モータの駆動を制御する制御装置とからなり、前記蓋体は、上下のプレートが対向してプレート間に被調理物が挟まれる第一及び第二の下降位置と、これら下降位置から所定角度上方に回動して下プレート表面が露出する上昇位置との間で回動可能であり、前記制御装置は、前記蓋体を第一の下降位置まで下降させて一旦停止させた後、該第一の下降位置よりも上方の第二の下降位置まで上昇させ、所定時間経過後に上昇位置まで上昇させるようにモータの駆動を制御することを特徴とする両面プレート式調理器に関する。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記蓋体の回動軸に固定されて該回動軸と共に回動するマイクロメータと、前記蓋体が回動して前記第一の下降位置まで下降した時に前記マイクロメータの先端部を検出する位置に配設された近接センサとを具備し、前記制御装置は該近接センサの検出信号を受けて前記モータの駆動を停止させることを特徴とする請求項1記載の両面プレート式調理器に関する。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記上プレート表面を被覆するフッ素樹脂製シートを有しており、該フッ素樹脂製シートは、ロールに巻回されて前記上プレートの左右いずれか一方側に配設されるとともに、該上プレートの他方側には前記ロールから引き出されたシートを巻き取る巻き取りローラが配設され、前記一方側に配設されたロール近傍には該ロールから引き出されるシートを押圧する押圧部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の両面プレート式調理器に関する。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記調理器本体の側方にガイド溝付きのカバー板が立設され、前記蓋体の側面には該蓋体の昇降に伴って前記ガイド溝に沿って転動するガイドローラが設けられ、前記ガイド溝は、前記回動軸を中心とする円弧に形成された円弧状部と、該円弧状部の下端部から連続して形成されて垂直下方に延びる垂直部とからなり、前記蓋体と、前記回動軸と該蓋体を連結する回動アームとの連結部は、回動アームに対する蓋体の水平方向移動を許容するクリアランスを有していることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の両面プレート式調理器に関する。
【0016】
請求項5に係る発明は、前記モータが駆動ブレーキ付の中空軸ギアードモータからなり、前記回動軸は該モータの中空の出力軸内に挿通されて一体に回転するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の両面プレート式調理器に関する。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、制御装置が、蓋体を第一の下降位置まで下降させて一旦停止させた後、該第一の下降位置よりも上方の第二の下降位置まで上昇させ、所定時間経過後に上昇位置まで上昇させるようにモータの駆動を制御するように構成されているため、被調理物は、最初に第一の下降位置において加熱されることで膨張を開始し、膨張後は第二の下降位置において加熱されて調理されることとなる。その結果、被調理物が過度に圧縮されることなく、ふんわりとした食感を有しつつ、内部まで充分に加熱された、非常に美味しい調理物を得ることが可能となり、プレート表面への被調理物の付着も防ぐことができる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、マイクロメータを操作して先端部の突出量を目盛で調整することにより、蓋体の第一の下降位置を設定することができるため、被調理物の厚みの違いに応じて蓋体の下降位置の微調整を簡単に行うことが可能となる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、ロールに巻回されたフッ素樹脂製シートを順次プレート表面に繰り出して巻き取りながら使用することができるため、従来のように1枚ずつ交換する方式と比較して交換回数を大幅に削減することが可能となり、しかもロールから引き出されるシートを押圧する押圧部材が設けられているため、シートの弛みの発生を防ぐことができる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、上プレートを下プレートの近傍位置まで下降させた後、下プレートに向けて垂直方向に下降させることが可能となるため、上下プレート間の隙間を均一とすることができ、被調理物の厚みや大きさを一定とすることが可能となる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、モータのブレーキが故障した場合でもモータ内の減速機構の歯車によってブレーキがかかるため、蓋体はゆっくりと降下し、作業者が上下プレート間に手を挟まれる等して怪我をすることが防がれる。また、モータの出力軸と蓋体の回動軸を連結するためのリンク機構等を省くことができるため、装置の構造を簡単且つコンパクトなものとすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係る両面プレート式調理器の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る両面プレート式調理器の全体構成を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
本発明に係る両面プレート式調理器は、床面上に設置される調理器本体(1)と、この調理器本体(1)の後部に1本の回動アーム(23)を介して回動自在に枢着された蓋体(2)とを具備しており、調理器本体(1)の正面には操作パネル(17)が設けられている。
【0023】
図2及び図3は本発明に係る両面プレート式調理器の要部を示す図であって、図2は側面図、図3は平面図である。
調理器本体(1)の上面には下プレート(3)が取り付けられ、蓋体(2)の下面には上プレート(4)が取り付けられている。
上プレート(3)及び下プレート(4)にはそれぞれ加熱用のヒータ(図示略)が接続されており、ハンバーグ等の被調理物はこれら上下プレートの間に挟まれて上下から加熱されることにより調理される。
【0024】
調理器本体(1)の後方部は、蓋体(2)を回動させるための駆動部(18)となっており、この駆動部(18)に駆動源となるモータ(5)が内蔵されている。
モータ(5)としては、駆動ブレーキ付の中空軸ギアードモータが好適に用いられる。
駆動ブレーキ付の中空軸ギアードモータは、モータ回転子の軸と中空の出力軸とを減速機構を構成する複数の歯車を介して直角方向に連結した構造からなる公知の中空軸ギアードモータに、公知の無励磁作動型ブレーキ機構を設けたものである。
モータ(5)の駆動(回転/停止及び正転/逆転)は、制御装置(シーケンサ等)から送信される制御信号によって制御される。
【0025】
蓋体(2)の回動軸(6)は、モータ(5)の中空の出力軸内に挿通されており、これら回動軸と出力軸とはキーにより連結されて一体に回動するようになっている。
蓋体(2)の回動軸とモータ(5)の出力軸とがこのような形態で連結されていることによって、ブレーキが故障した場合でも減速機構の歯車によってブレーキがかかるため、蓋体(2)が急激に落下することが防がれる。
また、図3においては省略されているが、回動軸(6)の中心付近には駆動アーム(23)の基端部が連結されている。
【0026】
回動軸(6)の端部近傍位置には、図3に示すように、その長さ方向に沿って4つの円筒状部材(7a)(7b)(7c)(7d)が外嵌固定されている。
このうち、回動軸(6)の端部に最も近い側の円筒状部材(7a)にはプレート(8)が固定され、このプレート(8)にはマイクロメータ(9)が挿入固定されている。これにより、マイクロメータ(9)は回動軸(6)と共に回動することができる。
マイクロメータ(9)は先端部の向きが回動軸(6)の同心円の接線方向を向くように且つダイヤル部を操作することによってプレート(8)から突出する先端部の長さが可変となるように取り付けられている。
【0027】
回動軸(6)の近傍位置には近接センサ(10)が配置されている。尚、この近接センサ(10)は回動軸(6)と分離独立しており、回動軸と共に回動することはない。
図4は近接センサ(10)とマイクロメータ(9)との位置関係を図3とは別の角度から示す図であって、(a)は図3の下方向から見た図、(b)は図3の右方向から見た図である。
【0028】
近接センサ(10)は、マイクロメータ(9)が回動軸(6)と共に回動し、その先端部が図4に示すように近接センサ(10)の検知部の前方に達するとこれを検知し、前述した制御装置へと検知信号を送信する。制御装置はこの検知信号を受けるとモータ(5)の駆動を停止させ、これによって蓋体(2)の下降が停止する。
【0029】
本発明では、この近接センサ(10)の検知により停止したときの蓋体(2)の下降位置(以下、第一の下降位置と称す)を、マイクロメータ(9)の操作によって簡単に微調整することができる。
すなわち、マイクロメータ(9)のダイヤル部を操作して、プレート(8)から突出する先端部の長さを目盛で微調整することにより、近接センサ(10)がマイクロメータ(9)の先端部を検知するまでの回動軸(6)の回動角度が調整され、これによって蓋体(2)が停止する下降位置(第一の下降位置)が調整される。
【0030】
制御装置は、蓋体(2)を第一の下降位置まで下降させた時に近接センサ(10)からの検知信号を受けて一旦下降動作を停止させて数秒間その位置を維持し、その後、該第一の下降位置よりも僅かに上方の第二の下降位置まで蓋体(2)を上昇させ、所定時間経過後(被調理物の加熱料理が完了する時間経過後)に下プレートの表面が露出して調理作業が可能となる上昇位置まで蓋体(2)を上昇させるように、モータ(5)の駆動を制御する。
【0031】
図5は第一の下降位置と第二の下降位置の位置関係を示す図である。
図において、第一の下降位置は符号(A)、第二の下降位置は符号(B)で示されている。
第一及び第二の下降位置は、いずれも上プレート(3)と下プレート(4)が対向してプレート間に被調理物(H)が挟まれる位置であるが、第一の下降位置は調理前の被調理物(膨張前の被調理物)がちょうど挟まれる位置であるのに対し、第二の下降位置は調理完了時の被調理物(加熱により膨張した被調理物)がちょうど挟まれる位置であるという点で異なる。
第一の下降位置と第二の下降位置の差は、例えば距離(高さ)にして3〜5mm程度、角度(回動軸を中心とした角度)にして0.5°程度とされるが、被調理物の種類に応じて適宜設定することができる。
【0032】
このように蓋体(2)の下降動作が制御されることによって、被調理物は、最初に第一の下降位置において加熱されて膨張を開始し、膨張後は第二の下降位置において加熱されて調理されることとなり、ふんわりとした食感を有しつつ、内部まで充分に加熱された、非常に美味しい調理物を得ることが可能となる。
【0033】
蓋体(2)の回動軸(6)に外嵌された残り3つの円筒状部材(7b)(7c)(7d)は、その外周面にリミットスイッチを作動させるドグとなる突出部(11)を夫々有しており、これらの突出部(11)は夫々周方向に角度をずらして配置されている。
回動軸(6)の近傍位置には3つのリミットスイッチ(12a)(12b)(12c)が配設されている。これら3つのリミットスイッチのヘッド部は、3つの円筒状部材(7b)(7c)(7d)の突出部(11)が描く軌跡上に夫々配置されており、回動軸(6)と共に突出部(11)が特定角度まで回動すると、突出部(11)がリミットスイッチのヘッド部に接触し、リミットスイッチが作動するようになっている。
このとき、3つの突出部(11)が夫々角度をずらして配置されていることにより、3つのリミットスイッチ(12a)(12b)(12c)は、夫々回動軸(6)が異なる角度まで回動したときに作動する。
【0034】
3つのリミットスイッチのうち、第一のリミットスイッチ(12a)は、蓋体(2)の下極限位置を定めるためのものであって、何らかの理由により近接センサ(10)によりモータ(5)の停止が制御できなかったときに作動し、モータ(5)を停止させて蓋体(2)の下降を止めるために設けられている。下極限位置とは、第一の下降位置よりも下方であって上プレート(3)と下プレート(4)が接触しない限界位置であり、第一のリミットスイッチは蓋体(2)がこの位置に達するまで回動軸(6)が回動したときに作動するように設定される。
【0035】
第二のリミットスイッチ(12b)は、蓋体(2)の上限位置を定めるためのものであって、通常の調理時における蓋体(2)の上昇位置における回動角度(例えば65°)まで回動軸(6)が回動したときに作動し、制御装置を介してモータ(5)を停止させるための信号を出力する。
【0036】
第三のリミットスイッチ(12c)は、蓋体(2)の上極限位置を定めるためのものであって、何らかの理由により第二のリミットスイッチ(12b)が作動しなかったときに作動し、モータ(5)を停止させて蓋体(2)の上昇を止めるために設けられている。
上極限位置とは、上記した上昇位置(上限位置)よりも上方であって蓋体(2)が壊れない限界の回動角度(例えば70°)まで上昇した位置であり、第三のリミットスイッチは蓋体(2)がこの位置に達するまで回動軸(6)が回動したときに作動するように設定される。
【0037】
通常の蓋体の開閉(昇降)時には、近接センサ(10)と第二のリミットスイッチ(12b)のみが作動する。
近接センサ(10)は蓋体(2)が第一の下降位置に達した時に作動し、第二のリミットスイッチ(12b)は蓋体(2)が上昇位置に達した時に作動する。すなわち、通常、蓋体(2)は第一の下降位置と上昇位置の間の範囲で昇降する。
【0038】
第一及び第三のリミットスイッチは非常用に設けられており、近接センサや第二のリミットスイッチが作動しなかった場合にのみ作動する。
第一のリミットスイッチ(12a)は蓋体(2)が第一の下降位置を超えて下降したときに作動し、第三のリミットスイッチ(12c)は蓋体(2)が上昇位置を超えて上昇したときに作動する。
【0039】
本発明に係る両面プレート式調理器は、上プレート(3)及び下プレート(4)の表面がフッ素樹脂製シート、具体的にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製シート(以下、フッ素樹脂製シートと称す)により被覆されており、被調理物のプレート表面への付着を防止している。
【0040】
上プレート(3)の表面を被覆するフッ素樹脂製シート(13)は、図2に示すように、ロール(14)に巻回された状態で上プレートの左右いずれか一方側(図示例では右側)に配設されており、上プレートの他方側(図示例では左側)にはロールから引き出されたシートを巻き取るための巻き取りローラ(15)が配設されている。
【0041】
巻き取りローラ(15)には、シート巻き取り部分と異なる部分の外周面に沿って歯が設けられており、この歯はウォームギアを介して蓋体(2)の上方に向けて突出したハンドル(16)の軸と噛合されている。これによって、作業者はハンドル(16)を回転させることによって、巻き取りローラ(15)を回転させてフッ素樹脂製シート(13)を巻き取ることができ、これにより上プレート(3)の表面を被覆するフッ素樹脂製シート(13)を簡単に新しい状態とすることが可能となる。
【0042】
フッ素樹脂製シート(13)が巻回されているロールの近傍には、該ロールから引き出されるシート表面を押圧する押圧部材(16)が設けられている。この押圧部材(16)はフェルトやゴムなどから形成されており、シート(13)が過剰に引き出されることを防止してシートの弛みを防ぐブレーキの役割を果たす。
【0043】
図6及び図7は本発明に係る両面プレート式調理器の別の実施形態(以下、第二実施形態と称す)を示す図であって、図6は側面図、図7は正面図である。
第二実施形態に係る両面プレート式調理器は、上述した実施形態(以下、第一実施形態と称す)のものと基本構成は同じであるため、説明の重複を防ぐために同じ構成には同じ符号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ以下説明する。
【0044】
第二実施形態に係る両面プレート式調理器は、調理器本体(1)の左右両側方にガイド溝付きのカバー板(20)が立設されている。
カバー板(20)は全体として略扇形状に形成されており、ガイド溝(21)は回動軸(6)を中心とする円弧に形成された円弧状部(21a)と、該円弧状部の下端部から連続して形成されて垂直下方に延びる垂直部(21b)とを有している。
【0045】
蓋体(2)の左右両側面には、該蓋体の昇降に伴ってガイド溝(21)に沿って転動するガイドローラ(22)が設けられている。ガイドローラ(22)は転がり軸受等から構成される。
図示例では、ガイドローラ(22)は蓋体(2)の一方の側面に2つ(左右両方の側面合わせて4つ)設けられており、下方(回動アーム基端側)のローラはガイド溝(21)に沿って転動し、上方(回動アーム先端側)のローラは回動軸(6)を中心とする円弧に形成されたカバー板(20)の外縁辺に沿って転動するように構成されている。尚、カバー板(20)の外縁辺も、ガイド溝の円弧状部(21a)と垂直部(21b)に対応する位置に円弧状部と垂直部とを有している。
但し、本発明では、同様のガイド溝(21)を同心円状に2本設けて、上下のガイドローラを共にガイド溝に沿って転動させるように構成してもよい。
【0046】
蓋体(2)と回動軸(6)は回動アーム(23)により連結されており(この点は第一実施形態も同じである)、蓋体(2)と回動アーム(23)との連結部(24)は、蓋体(2)の上部に延設されたプレートに設けられた穴と、回動アーム(23)の先端近傍に設けられた穴を重ねて、ピンを挿入することにより構成されている。
ここで、少なくともいずれか一方の穴の径はピンの径に比べて大きく設定されており、蓋体(2)は回動アーム(23)に対して僅かに移動することが許容されている。尚、この移動の許容は少なくとも水平方向の移動を許容すればよく、水平方向のみの移動を許容するためにはいずれか一方の穴を長穴とすればよい。
【0047】
回動アーム(23)には、連結部(24)を挟んだ左右位置にプレートが固定されており、これらのプレートにはボルト(25)が下向きに突出するように螺合されている。(尚、図6ではプレート及びボルト(25)を見易くするために実線で示している)
これら一対のボルト(25)は、上プレート(3)と下プレート(4)との間が平行となるように調整するために設けられている。すなわち、左右のボルト(25)の下方向への突出長さを調整することにより上プレート(3)の水平度が調整され、これによって上プレート(3)と下プレート(4)との間の平行度が調整される。
【0048】
このように構成された第二実施形態の両面プレート式調理器によれば、回動軸(6)の回動に伴って蓋体(2)が下降すると、蓋体(2)の側面に設けられたガイドローラ(22)がガイド溝(21)に沿って転動する。
ここで、ガイド溝(21)は、円弧状部(21a)と垂直部(21b)とを有しているため、ガイドローラ(22)が垂直部(21b)に達すると、それ以降は垂直部(21b)によりガイドローラの動きが規制され、蓋体(2)は垂直方向に下降することとなる。ここで、回動アームと蓋体との連結部が、回動アームに対する蓋体の水平方向移動を許容するクリアランスを有しているため、蓋体(2)の垂直方向の下降動作が阻害されることがない。
尚、蓋体(2)の一方の側面に設けられる2つのガイドローラ(22)間の距離は、調理作業の邪魔にならない範囲で可能な限り大きく設定することが好ましい。これは、2つのガイドローラ間の距離が大きいほど、蓋体(2)を上下プレート間の平行を保ちながら安定して下降させることが可能となるためである。
【0049】
このように、第二実施形態によれば、上プレートを下プレートの近傍位置まで下降させた後、下プレートに向けて垂直方向に下降させることが可能となるため、上下プレート間の隙間を均一とすることができ、被調理物の厚みや大きさを一定とすることが可能となる。
【0050】
また、第二実施形態の両面プレート式調理器においても、第一実施形態と同様に、近接センサ(10)及びマイクロメータ(9)と、3つのリミットスイッチ(12a)(12b)(12c)が設けられている。
【0051】
近接センサ(10)及びマイクロメータ(9)は、第一実施形態と同様の位置に同様の方法で配設されている。
すなわち、蓋体(2)の回動軸(6)の一端部近傍位置に円筒状部材(7)が外嵌固定され、この円筒状部材(7)にプレート(8)が固定され、このプレート(8)にマイクロメータ(9)が挿入固定されている。これにより、マイクロメータ(9)は回動軸(6)と共に回動することができる。
マイクロメータ(9)は、第一実施形態と同様に、先端部の向きが回動軸(6)の同心円の接線方向を向くように且つダイヤル部を操作することによってプレート(8)から突出する先端部の長さが可変となるように取り付けられている。
【0052】
回動軸(6)の近傍位置には、近接センサ(10)が配置されている。尚、この近接センサ(10)は回動軸(6)と分離独立しており、回動軸と共に回動することはないことは第一実施形態と同様である。
【0053】
近接センサ(10)及びマイクロメータ(9)の作用も第一実施形態と同様である。
すなわち、近接センサ(10)は、マイクロメータ(9)が回動軸(6)と共に回動し、その先端部が近接センサ(10)の検知部の前方に達するとこれを検知し、制御装置(シーケンサ等)へと検知信号を送信する。制御装置はこの検知信号を受けるとモータ(5)の駆動を停止させ、これによって蓋体(2)の下降が停止する。
【0054】
制御装置は、第一実施形態と同様に、蓋体(2)を第一の下降位置まで下降させた時に近接センサ(10)からの検知信号を受けて一旦下降動作を停止させ、その後、該第一の下降位置よりも僅かに上方の第二の下降位置まで蓋体(2)を上昇させ、所定時間経過後に下プレート表面が露出する上昇位置まで上昇させるようにモータ(5)の駆動を制御する。
【0055】
第二実施形態では、蓋体(2)の左右の側面に設けられたガイドローラ(22)が、3つのリミットスイッチ(12a)(12b)(12c)のヘッド部に接触してリミットスイッチを作動させるためのドグとして作用する。
【0056】
蓋体(2)の下極限位置を定めるための第一のリミットスイッチ(12a)は、図7において左側のガイドローラ(22)の紙面奥側に配置されており、調理器本体(1)に対して固定されている。
第一のリミットスイッチ(12a)は、近接センサ(10)によりモータ(5)の停止が制御できなかったときに作動するものであり、蓋体(2)が下極限位置に達するまで下降したときにガイドローラ(22)がヘッド部に接触することによって作動し、モータ(5)を停止させて蓋体(2)の下降を止める。
【0057】
蓋体(2)の上限位置を定めるための第二のリミットスイッチ(12b)は、右側のカバー板(20)の上方部分に固定されている。
第二のリミットスイッチ(12b)は、通常の調理時における蓋体(2)の上昇位置まで蓋体が上昇したときにガイドローラ(22)がヘッド部に接触することによって作動し、制御装置を介してモータ(5)を停止させるための信号を出力する。
【0058】
蓋体(2)の上極限位置を定めるための第三のリミットスイッチ(12c)は、左側のカバー板(20)の上方部分に固定されている。
第三のリミットスイッチ(12c)は、第二のリミットスイッチ(12b)が作動しなかったときに作動するものであり、蓋体(2)が上極限位置に達するまで上昇したときにガイドローラ(22)がヘッド部に接触することによって作動し、モータ(5)を停止させて蓋体(2)の上昇を止める。
【0059】
第二実施形態の両面プレート式調理器も、図示を省略しているが、上プレートの表面を被覆するフッ素樹脂製シートの取り付け構造として、第一実施形態と同様の構造を採用している。
【0060】
本発明では、上記した第一及び第二実施形態の両面プレート式調理器において、モータ(5)としてサーボモータを使用することもできる。
サーボモータを使用した場合、回動軸(6)の停止角度の微調整が可能となるため、近接センサ(10)及びマイクロメータ(9)の設置を省略することができる。
但し、サーボモータは高価であるため、上記したような近接センサ(10)及びマイクロメータ(9)を用いて微調整を可能とする構造は、コスト面において非常に有利である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、ハンバーグやお好み焼き等の被調理物を短時間で効率よく調理することができるため、特に業務用の調理器として好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明に係る両面プレート式調理器の全体構成を示す図であって、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【図2】本発明に係る両面プレート式調理器の要部を示す側面図である。
【図3】本発明に係る両面プレート式調理器の要部を示す平面図である。
【図4】近接センサとマイクロメータとの位置関係を図3とは別の角度から示す図であって、(a)は図3の下方向から見た図、(b)は図3の右方向から見た図である。
【図5】蓋体の第一の下降位置と第二の下降位置の位置関係を示す図である。
【図6】本発明に係る両面プレート式調理器の別の実施形態を示す側面図である。
【図7】本発明に係る両面プレート式調理器の別の実施形態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 調理器本体
2 蓋体
3 上プレート
4 下プレート
5 モータ
6 回動軸
9 マイクロメータ
10 近接センサ
13 フッ素樹脂製シート
14 ロール
15 巻き取りローラ
16 押圧部材
20 カバー板
21 ガイド溝
21a 円弧状部
21b 垂直部
22 ガイドローラ
23 回動アーム
24 蓋体と回動アームとの連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器本体の上面に設けられた下プレートと、前記調理器本体の後部に回動自在に枢着された蓋体の下面に設けられた上プレートと、これら上下プレートを加熱するヒータと、前記蓋体を回動させる駆動源となるモータと、該モータの駆動を制御する制御装置とからなり、前記蓋体は、上下のプレートが対向してプレート間に被調理物が挟まれる第一及び第二の下降位置と、これら下降位置から所定角度上方に回動して下プレート表面が露出する上昇位置との間で回動可能であり、前記制御装置は、前記蓋体を第一の下降位置まで下降させて一旦停止させた後、該第一の下降位置よりも上方の第二の下降位置まで上昇させ、所定時間経過後に上昇位置まで上昇させるようにモータの駆動を制御することを特徴とする両面プレート式調理器。
【請求項2】
前記蓋体の回動軸に固定されて該回動軸と共に回動するマイクロメータと、前記蓋体が回動して前記第一の下降位置まで下降した時に前記マイクロメータの先端部を検出する位置に配設された近接センサとを具備し、前記制御装置は該近接センサの検出信号を受けて前記モータの駆動を停止させることを特徴とする請求項1記載の両面プレート式調理器。
【請求項3】
前記上プレート表面を被覆するフッ素樹脂製シートを有しており、該フッ素樹脂製シートは、ロールに巻回されて前記上プレートの左右いずれか一方側に配設されるとともに、該上プレートの他方側には前記ロールから引き出されたシートを巻き取る巻き取りローラが配設され、前記一方側に配設されたロール近傍には該ロールから引き出されるシートを押圧する押圧部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の両面プレート式調理器。
【請求項4】
前記調理器本体の側方にガイド溝付きのカバー板が立設され、前記蓋体の側面には該蓋体の昇降に伴って前記ガイド溝に沿って転動するガイドローラが設けられ、前記ガイド溝は、前記回動軸を中心とする円弧に形成された円弧状部と、該円弧状部の下端部から連続して形成されて垂直下方に延びる垂直部とからなり、前記蓋体と、前記回動軸と該蓋体を連結する回動アームとの連結部は、回動アームに対する蓋体の水平方向移動を許容するクリアランスを有していることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の両面プレート式調理器。
【請求項5】
前記モータが駆動ブレーキ付の中空軸ギアードモータからなり、前記回動軸は該モータの中空の出力軸内に挿通されて一体に回転するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の両面プレート式調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−143836(P2007−143836A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342031(P2005−342031)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(591174553)ニチワ電機株式会社 (28)
【Fターム(参考)】