説明

両面印刷装置

【課題】用紙の両面に印刷可能な両面印刷装置において、印刷面の擦れや裏移りを防止すると共にインクが多く転写された用紙であってもインクを早く乾燥させて高速印刷を可能にする。
【解決手段】両面印刷装置1は、用紙の一面に印刷する第1の印刷手段3と、一面が印刷された用紙を複数枚貯留する貯留部4と、用紙の他面に印刷する第2の印刷手段5と、第1の印刷手段3により一面を印刷された用紙を貯留部4に搬送する第1の搬送手段7と、貯留部4に貯留された複数枚の用紙を順次第2の印刷手段5に搬送する第2の搬送手段8とを備える。貯留部4が、一面が印刷された複数枚の用紙を、各用紙の両側縁部をそれぞれ所定間隔を空けて複数箇所把持して、互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持する保持機構41を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の表面及び裏面に印刷を行う両面印刷装置に関し、特に表面に印刷したインクの乾燥時間を確保可能な両面印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題の観点等から印刷に使用する用紙の使用量を低減することが望まれており、そのために用紙の表面及び裏面に印刷を行う両面印刷が盛んに行われている。両面印刷を行う両面印刷装置としては、例えば孔版印刷を行う両面孔版印刷装置が提案されており、この装置の一例として、例えば穿孔製版された孔版原紙を外周面に巻装した円筒状の第1ドラムと第2ドラムを隣接して配設し、第1ドラムで用紙の表面に印刷を行い、表面が印刷された用紙を第2ドラムに搬送して該第2ドラムで用紙の裏面に印刷を行う装置がある。
【0003】
上記のような両面印刷装置の場合、表面に印刷が行われた用紙に対してさらに裏面に印刷を行うので、表面に印刷後裏面に印刷を行うための搬送中及び裏面の印刷中に、表面に印刷されたインクが十分に乾いていないことにより用紙が汚れてしまう虞れがあった。
【0004】
そこで、表面印刷が終了した用紙を積載台に一時的に所定時間貯留し、その後貯留した順番に搬送して裏面を印刷することにより、積載台にてインクを乾燥させるようにした両面印刷装置が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−29375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の両面印刷装置は、表面のインクがまだ乾燥していない用紙を積載台に積み重ねており、印刷面の擦れや裏移り等により用紙が汚れてしまう虞がある。またインクが多く転写された用紙は紙中水分が高くなるため、用紙表面の密着性が高くなり、積み重ねられた用紙を一枚ずつ取り出して搬送するときに多重搬送が起こり易くなったり、吸湿による用紙の波打ちによって空搬送が起こり易くなる。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、印刷面の擦れや裏移りを防止すると共にインクが多く転写された用紙であってもインクを早く乾燥させて高速印刷を可能にした面印刷装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の両面印刷装置は、用紙の一面に印刷する第1の印刷手段と、
前記一面が印刷された用紙を複数枚貯留する貯留部と、
前記用紙の他面に印刷する第2の印刷手段と、
前記第1の印刷手段により一面が印刷された用紙を前記貯留部に搬送する第1の搬送手段と、
前記貯留部に貯留された複数枚の用紙を順次前記第2の印刷手段に搬送する第2の搬送手段とを備え、
前記貯留部が、前記一面が印刷された複数枚の用紙を、各用紙の両側縁部をそれぞれ所定間隔を空けて複数箇所把持して、互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持する保持機構を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の両面印刷装置は、前記貯留部が、前記第1の搬送手段により搬送されてきた前記用紙が搬入される搬入位置と、貯留されている前記用紙を前記第2の搬送手段に受け渡す搬出位置とを所定間隔を空けて有し、
前記保持機構が、前記搬入位置に搬入された各用紙を順次把持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で前記搬入位置から前記搬出位置に向けて移動させるものであることが好ましい。
【0009】
本発明の両面印刷装置は、前記保持機構が、前記搬入位置から搬出位置に向けて送られる環状の移動体と、該環状の移動体の外周面に複数配設された把持爪対とを有する側縁把持部材を、前記貯留部に搬入された用紙の一方の側縁部に対応する位置に所定間隔を空けて複数、他方の側縁部に対応する位置に所定間隔を空けて複数備え、
前記把持爪対が、それぞれが前記環状の移動体の外周面に設けられた受爪と該受爪に対向する弾性爪とからなり、該受爪と弾性爪とでそれらの間に挿入された前記用紙の側縁部を把持することが好ましい。
【0010】
本発明の両面印刷装置は、前記保持機構が、前記環状の移動体が掛け渡された、所定間隔を空けて配置された一対のプーリーを備え、
前記貯留部の搬入位置と搬出位置とが、前記一対のプーリーの各々の中心よりも外側の中心近傍位置に設定され、
前記受爪と弾性爪とが、前記環状の移動体が前記プーリー上で円弧状になっているときは両爪の間を開き、前記一対のプーリー間で直線状になっているときは両爪間を閉じて弾性爪の弾性で前記用紙を受爪に押し付けて把持するものであることが好ましい。
【0011】
本発明の両面印刷装置は、前記用紙が前記貯留部の搬入位置に搬入されて該用紙の両側縁部が前記受爪と弾性爪との間に位置したことを検出して検出信号を出力する用紙搬入検出センサと、
該用紙搬入センサから出力された検出信号に基づいて前記環状の移動体を1ピッチ分送り駆動する制御手段とを備えていることが好ましい。
【0012】
本発明の両面印刷装置は、前記第1の搬送手段が前記用紙を吸引しながら前記貯留部内に搬入する吸引部を備え、及び/又は、前記第2の搬送手段が前記用紙を吸引しながら前記貯留部内から搬出する吸引部を備えると共に、
前記第1の搬送手段及び/又は第2の搬送手段の吸引部に吸引された用紙を該吸引部から剥離する剥離手段を備えていることが好ましい。
【0013】
本発明の両面印刷装置は、前記制御手段が、前記環状の移動体を1ピッチ分ずつ間欠送りするものであり、かつ、前記環状の移動体の間欠送りに同期して前記剥離手段を剥離動作させるものであることが好ましい。
【0014】
本発明の両面印刷装置は、前記制御手段が、前記把持爪対が前記用紙の両側縁を把持すると略同時に前記剥離手段を剥離動作させるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の両面印刷装置によれば、一面が印刷された用紙を複数枚貯留する貯留部が、各用紙の両側縁部をそれぞれ所定間隔を空けて複数箇所把持して、互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持する保持機構を備えているので、印刷された面つまりインクが転写された面を他の用紙に接触させることなく複数枚の用紙を保持し、かつ貯留することによりインクを乾燥させることができるので、印刷面の擦れや裏移りを防止できると共にインクが多く転写された用紙であってもインクを早く乾燥させて高速印刷を可能にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態である両面孔版印刷装置1について、図面を参照して詳細に説明する。図1は本実施形態の両面孔版印刷装置1の概略構成図、図2は図1の両面孔版印刷装置1の要部詳細拡大図、図3は図2のA−A線断面図、図4は図2の矢印B方向から見た図である。
【0017】
本実施形態の両面孔版印刷装置1は、図1に示す如く、装置ハウジング10と、装置ハウジング10の一側面(図1中、左側面)に設けられ、印刷媒体である複数枚の用紙P1が積載された給紙台2と、給紙台2から給紙される用紙P1の一面Aに印刷する第1の孔版印刷部(第1の印刷手段)3と、一面Aが印刷された用紙P2を複数枚貯留する貯留部4と、貯留部4に貯留されていた用紙P2の他面Bに印刷する第2の孔版印刷部(第2の印刷手段)5と、装置ハウジング10の他側面(図1中、右側面)に設けられ、両面すなわち一面A及び他面Bが印刷された用紙P3を積載する排紙台6とを備えている。
【0018】
また両面孔版印刷装置1は、給紙台2から第1の孔版印刷部3及び第1の孔版印刷部3から貯留部4内部へ用紙P1、P2を搬送する第1の搬送部(第1の搬送手段)7と、貯留部4内部から第2の孔版印刷部5及び第2の孔版印刷部5から排紙台6まで用紙P2、P3を搬送する第2の搬送部(第2の搬送手段)8とを備えている。
【0019】
第1の搬送部7は装置ハウジング10に設けられ、図1、図2に示す如く、給紙台2に積載された用紙P1の装置ハウジング10側の上方に設けられた第1ピックアップローラ71と、第1ピックアップローラ71によってピックアップされた用紙P1を所定のタイミングにて第1の孔版印刷部3に搬送する第1タイミングローラ72と、第1の孔版印刷部3により上側に位置する一面Aが印刷された用紙P2を円弧状の軌跡に沿って斜め下側(図1、図2中、右下側)に搬送する第1搬送装置73と、第1搬送装置73により搬送される用紙P2をさらに斜め下側に搬送する第2搬送装置76と、第2搬送装置76により搬送される用紙P2を貯留部4内部に搬入して後述する側縁把持部材41に把持させる搬入装置74とで概略構成されている。
【0020】
第2の搬送部8は同じく装置ハウジング10に設けられ、図1、図2に示す如く、貯留部4内部の後述する側縁把持部材41から用紙P2を搬出する搬出装置81と、搬出装置81により搬出される用紙P2をピックアップする第2ピックアップローラ82と、第2ピックアップローラ82によってピックアップされた用紙P2を円弧状の軌跡に沿って反転させて一面Aを下側に位置させ、順次所定のタイミングにて第2の孔版印刷部5に搬送する第2タイミングローラ83と、第2の孔版印刷部5により他面Bが印刷された、すなわち両面が印刷された用紙P3を排紙台6に向けて搬出する排出装置84とで概略構成されている。
【0021】
搬入装置74、第2搬送装置76、搬出装置81及び排出装置84は、それぞれ所定間隔を空けて配置された一対のプーリー74a、76a、81a、84aと、一対のプーリー74a、76a、81a、84aの外周に掛け渡されそれぞれプーリー74a、76a、81a、84aの回転に伴って移動する環状の搬送ベルト74b、76b、81b、84bと、吸引用のファン74c、76c、81c、84cとを備えている。
【0022】
搬送ベルト74b、76b、81b、84bは、例えば図4に示す搬送ベルト74bのように表面に複数の孔74b’76b’、81b’、84b’(76b’、81b’、84b’は図示せず)が設けられており、搬送ベルト74b、76b、81b、84bとプーリー74a、76b、81a、84aとは、用紙P側に位置する搬送ベルト74b、76b、81b、84bの少なくとも上記孔74b’、76b’、81b’、84b’を含む一部のみを外部に露出させて、例えば図3に示すような略密閉されたケース74d、76d、81d、84d(76d、84dは図示せず)の中に配設されている。
【0023】
ファン74c、76c、81c、84cは、各々のケース74d、76d、81d、84dに取り付けられ、ケース74d、76d、81d、84d内部の空気を外部に排出することにより、搬送ベルト74b、76b、81b、84bの孔74b’、76b’、81b’、84b’に吸引力を発生させる。
【0024】
このように構成された各装置74、76、81、84は、図示しないモータによってプーリー74a、76a、81a、84aを回転させて搬送ベルト74b、76b、81b、84bを移動させると共にファン74c、76c、81c、84cを回転させて孔74b’ 、76b’、81b’、84b’に吸引力を発生させることにより、用紙Pを吸引しながら搬送する。
【0025】
また第1搬送装置73は、図2に示す如く、円弧状の軌跡に沿って配設された3つのプーリー73a及び該3つのプーリー73aの近傍に配設された1つのプーリー73aと、この4つのプーリー73aの外周に掛け渡されプーリー73aの回転に伴って移動する環状の搬送ベルト73bと、吸引用のファン73cとを備えており、上記搬送装置74、76、81、84と略同様に構成されている。
【0026】
なお本実施形態の搬入装置74、第2搬送装置76、搬出装置81、排出装置84及び第1搬送装置73は、上記の構成としたが、例えば搬送ベルト73b、74b、76b、81b、84bの内側面にファン73c、74c、76c、81c、84cを取り付けて吸引するようにしてもよいし、用紙Pを搬送可能であればどのような構造であってもよい。
【0027】
また搬入装置74は、一対のプーリー74aの外周に掛け渡された搬送ベルト74b及びファン74cを並列に複数備えて、これらで一枚の用紙を吸引して搬送するようにしてもよい。第2搬送装置76、搬出装置81、排出装置84も同様にすることができる。
【0028】
第1の孔版印刷部3は、図1に示す如く、第1ドラム31と第1プレスローラ32とからなり、第1ドラム31の下流側には図2に示す如く、用紙P2を剥ぎ取る剥取爪33が設けられている。第1ドラム31は内部に図示しない第1インクカートリッジを有し、第1ドラム31の外周面には入力された画像データに基づいて図示しない製版部により感熱穿孔済の、つまり製版された孔版原紙M1が巻装されている。そして第1タイミングローラ72により第1ドラム31の回転に同期して第1ドラム31と第1プレスローラ32との間に送り込まれた用紙P1の一面Aすなわち上側に位置する上面Aが第1プレスローラ32によって孔版原紙M1に押し付けられることにより用紙P1の一面Aに対して孔版印刷が行われる。
【0029】
第2の孔版印刷部5は、上記第1の孔版印刷部3と同様に、第2ドラム51と第2プレスローラ52とからなり、第2ドラム51の下流側には用紙P3を剥ぎ取る剥取爪53が設けられている。第2ドラム51は内部に図示しない第2インクカートリッジを有し、第2ドラム51の外周面には製版された孔版原紙M2が巻装されている。そして一面Aが印刷され、さらに第1搬送装置73及び第2搬送装置76によって搬送された後、貯留部4を経て、第2タイミングローラ83により第2ドラム51の回転に同期して第2ドラム51と第2プレスローラ52との間に送り込まれた用紙P2の他面Bすなわち上側に位置する上面Bが第2プレスローラ52によって孔版原紙M2に押し付けられることにより用紙P2の他面Bに対して孔版印刷が行われる。
【0030】
貯留部4は、第1の孔版印刷部3により一面Aが印刷された用紙P2を、第2の孔版印刷部5で用紙P2の他面Bに印刷を行なう前に複数枚一時的に貯留するものであり、本発明において特徴的なのは、この貯留部4が、この複数枚の用紙P2を、各用紙P2の両側縁部をそれぞれ所定間隔を空けて複数箇所把持して、互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持する保持機構を備えていることである。
【0031】
貯留部4は、第1の搬送部7により搬送されてきた用紙P2が搬入される搬入位置と、貯留されている用紙P2を第2の搬送部8に受け渡す搬出位置とを所定間隔を空けて有し、保持機構が、搬入位置に1枚ずつ搬入された各用紙P2の両側縁部を順次把持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で搬入位置から搬出位置に向けて移動させ、搬出位置から1枚ずつ搬出して他面Bの印刷に供することができるものであることが好ましい。
【0032】
本実施形態における貯留部4は、図1に示す如く、第1の搬送部7から送られてきた用紙P2の搬入口および第2の搬送部8に用紙P2を受け渡す用紙P2の搬出口を上方にして斜めに配設されており、搬入された一面Aが印刷済みの用紙P2を印刷された一面Aを斜め上側(図2中右側)に位置させた状態で図4に示すように両側縁部をそれぞれ所定間隔を空けて複数箇所把持して、複数枚互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持する保持機構を備えている。
【0033】
本実施形態の保持機構は、図2に示す如く、用紙P2の未印刷の他面Bを斜め下方から支える支持体である支持板40aと、支持板40aの両側面(図2中、手前側と奥側)にそれぞれ支持板40aと略直角に設けられて用紙P2の側縁位置を規制する側面ガイド板40bと、用紙P2の印刷された一面Aを斜め上から覆う覆板42と、図4に示すように複数枚の用紙P2をそれらの両側縁部をそれぞれ所定間隔空けて複数箇所把持して、互いに所定間隔を空けて搬入順に順次支持する側縁把持部材41とを備えている。
【0034】
なお、図3に示す如く、支持板40aには上述した搬入装置74のケース74dと第1搬送装置76のケース76d、覆板42には上述した搬出装置81のケース81dがそれぞれ取り付けられて、支持板40a及び覆板42にそれぞれ設けられた図示しない開口から搬送ベルト74b、76b、81bがそれぞれ露出するように構成されている。図5に図2の側縁把持部材41の拡大詳細図を示す。なお図5では便宜上、搬送ベルト41bの片側の外周面の詳細を省略している。
【0035】
側縁把持部材41は、図4に示す如く、搬入される用紙P2の搬入方向に直交する方向の両側縁に対応する位置にそれぞれ所定間隔を空けて2つずつ配設されており、図2に示す如く、一方が貯留部4に搬入された用紙P2の上方に、他方が用紙P2の上下方向中央よりも下方に位置するように配設されている。また装置ハウジング10に取り付けられた図4に示す側縁把持部材ハウジング41hには、図5に示す如く、間隔を空けて配置された一対のプーリー41aと、この一対のプーリー41aの外周に掛け渡されて、図示しないモータによるプーリー41aの回転に伴って移動する環状の移動体の一例である搬送ベルト41bとが配設され、搬送ベルト41bには、搬送ベルト41bの外周面に立設し、搬送ベルト41bの全周に亘って所定間隔を空けて配列された複数のプレート状の受爪41cが設けられている。このように構成された側縁把持部材41は、一対のプーリー41aを結ぶ方向つまり搬送ベルト41の用紙搬送移動方向(図4、図5中の矢印F方向、つまり用紙P2を把持して搬送する役割を担う搬送ベルト部分の移動方向)が、用紙P2の搬入方向(矢印D方向)及び搬出方向(矢印E方向)と略直交するように配設されている。
【0036】
また複数の受爪41cは、図5に示す如く、それぞれ搬送ベルト41bの用紙搬送移動方向F(以下、移動方向Fという)上流側に隣接する受爪41cに向けて延びる金属片等からなる弾性変形可能な弾性爪41eを備えている。隣り合う一対の受爪41cと弾性爪41eとで構成されるそれぞれの凹部41dに、用紙P2が印刷された一面Aを斜め上側(図2中、右側、図5中、上側)にした状態で一枚ずつ挿入されたときに、凹部41dに挿入された用紙P2の側縁部を上流側の受爪41cと下流側の受爪41cの弾性爪41eとで把持することにより複数枚の用紙P2を互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持するように構成されている。このとき下流側の受爪41cに設けられた弾性爪41eと上流側の受爪41cとが1枚の用紙P2を把持するクランプ部(把持爪対)41fとなる。
【0037】
クランプ部41fは、直線状態にある搬送ベルト41b上では、隣接する受爪41c、41cが略平行となり、下流側の受爪41cの弾性爪41eの先端(下端)と上流側の受爪41cとの間隔が用紙P2の厚さより小さくなることから、凹部41dに用紙P2が挿入された場合、弾性爪41eは用紙P2によって該弾性爪41eが設けられている受爪41c側に弾性変形せしめられ、その結果弾性爪41eは用紙P2を上流側の受爪41cに弾性的に押し付けて用紙P2を把持することができ、プーリー41a上に位置して曲線状態にある搬送ベルト41b上では、隣接する受爪41c、41cが平行ではなくなり、先端(上端)側がより離れた状態となって、弾性爪41eの先端(下端)と上流側の受爪41cとの間隔が用紙P2の厚さより大きくなり用紙P2を解放することができる。
【0038】
本貯留部4においては、第1の搬送部7によって搬送されて貯留部4に用紙が搬入される搬入位置C1(図2では矢印D位置)と貯留されている用紙P2を第2の搬送部8に受け渡して該第2の搬送部8によって搬出される搬出位置C2(図2では矢印E位置)とが搬送ベルト41bの移動方向Fに所定間隔を空けて設定されており、側縁把持部材41は一対のプーリー41aがそれぞれ搬入位置C1及び搬出位置C2に対応させて配設されている。より詳しくは、搬入位置C1が、搬送ベルト41bの移動方向F上流側に位置する上流側プーリー(図2中左側、図4及び図5中下側のプーリー)41aの中心よりも僅かに上流側(図2中左側、図4及び図5中下側)に位置するように、また、搬出位置C2が、搬送ベルト41bの移動方向F下流側に位置する下流側プーリー(図2中右側、図4及び図5中上側のプーリー)41aの中心よりも僅かに下流側(図2中右側、図4及び図5中上側)に位置するように設定されている。
【0039】
これにより、図5に示す如く、搬入位置C1に位置するクランプ部41fにおいては、一対の受爪41cのうち少なくとも上流側の受爪41cがプーリー41aに沿った曲線状態となっている搬送ベルト41b上に位置し、それによってそれらの一対の受爪41c間は上端が開いて上流側の受爪41cと下流側の受爪41cに設けられた弾性爪41eとで構成されるクランプ部41fが開状態となり、搬入された用紙P2の側縁部をこのクランプ部41fの凹部41dに受け入れることが可能である。
【0040】
同様に、搬出位置C2に位置するクランプ部41fにおいては、一対の受爪41cのうち少なくとも下流側の受爪41cがプーリー41aに沿った曲線状態となっている搬送ベルト41b上に位置し、それによってそれらの一対の受爪41c間は上端が開いて上流側の受爪41cと下流側の受爪41cに設けられた弾性爪41eとで構成されるクランプ部41fが開状態となっており、クランプ部41fの凹部41dに位置している用紙P2の側縁部の把持が開放されて該用紙P2をクランプ部41fから引き出すことが可能とである。
【0041】
そして、図示しないモータによってプーリー41aを図5中反時計回りに回転させることで搬送ベルト41bを反時計回りに移動させたときに、搬入装置74は搬入位置C1に位置して開状態となったクランプ部41fの凹部41dに用紙P2を搬入し、用紙P2の側縁部を受爪41cと弾性爪41eとの間に位置させる。そして搬入装置74は搬送ベルト41bが凹部41d一つ分移動する毎に搬入位置C1に位置する新たな凹部41dに用紙P2を順次搬入する。
【0042】
搬入位置C1においてクランプ部41fに用紙P2が搬入された後、搬送ベルト41bが移動してそのクランプ部41fが直線状態となった搬送ベルト41b上に位置すると、該クランプ部41fが閉状態となるので受爪41cと弾性爪41eとで用紙P2の側縁部が確実に把持される。
【0043】
そしてさらなる搬送ベルト41bの移動によってクランプ部41fが搬出位置C2に位置すると、該クランプ部41fが開状態となり、搬出装置81が受爪41cと弾性爪41eとの間から用紙P2を搬出する。そして搬出装置81は搬送ベルト41bが凹部41d一つ分移動する毎に、同様にして搬出位置C2に到来したクランプ部41fから用紙P2を順次搬出する。このとき搬出装置81は用紙P2の一面Aを吸引して、第2ピックアップローラ82に向けて搬送する。
【0044】
このように貯留部4において、一面Aが印刷された複数枚の用紙P2が互いに所定間隔をあけて重ねた状態で保持されることにより、印刷された面の擦れや裏移りによる用紙P2の汚れを防止することができる。また搬送ベルト41bが搬入位置C1から搬出位置C2に移動する間、印刷された面すなわち一面Aが他の用紙P2と接触しないことにより、インクを効率よく乾燥させることができる。
【0045】
また搬出位置C2にて用紙P2を凹部41dから搬出するときに、複数枚の用紙P2は一枚ずつ隙間をあけて貯留されているので、用紙P2の多重搬送を防止するために用紙P2表面の密着を剥がす捌き機構を設ける必要がない。これにより捌き機構により用紙P2を捌くときに印刷面が擦れることにより生じる用紙P2の汚れの発生を防ぐことができる。
【0046】
また貯留部4内部の用紙P2は、各クランプ部41fによって両側縁部を把持された状態で搬入位置C1から搬出位置C2まで搬送されるので、用紙P2を単に該用紙P2の自重で落下させて積載させた場合と比して、搬出位置C2における用紙P2の位置精度を確保することができる。
【0047】
また本実施形態の貯留部4の保持機構は、用紙P2の両側縁部を所定間隔を空けて複数箇所支持するものであるため、端部が湾曲する腰折れが生じ易い用紙であっても、用紙のたわみを防ぎ平坦な状態を維持して用紙を保持することができると共に、例えば一面Aに転写されたインクの量が比較的多くて用紙P2の紙中水分が高い場合であっても、用紙P2の吸湿によって生じる上下方向に断面が湾曲するカールつまり用紙P2の搬送方向に沿ったカールが生じ難くなるので、用紙P2の搬送方向に沿ったカールに起因して生じる搬送経路での用紙P2の紙詰まりの発生を防止することができて、片面が印刷された用紙であっても安定して搬送することができるので、両面孔版印刷装置1は高速給紙での印刷に対応することができる。
【0048】
なお本実施形態では側縁把持部材41を上記のような構成としたが、側縁把持部材41はこれに限られるものではなく、用紙P2の側縁部を把持して順次搬入位置C1から搬出位置C2に向けて搬送できるものであればどのような構造のものであってもよい。
【0049】
なお上述した実施形態の貯留部4は、用紙P2の両側端部をそれぞれ所定間隔空けて2箇所把持するべく4つの側縁把持部材41を備えるものとしたが、本発明の貯留部4はこれに限られるものではなく、側縁把持部材41をさらに多数備えていてもよい。
【0050】
次に以上のように構成された本実施形態の両面孔版印刷装置1の一連の動作について説明する。なお各動作は、装置ハウジング10に設けられた図示しない制御部からの指示により行われるものとする。
【0051】
両面孔版印刷装置1は、図1に示す如く、給紙台2に積載された用紙P1をピックアップローラ71が順次ピックアップし、ピックアップされた用紙P1を第1タイミングローラ72が順次第1の孔版印刷部3に搬送し、第1の孔版印刷部3は、搬送された用紙P1を1枚ずつ、第1プレスローラ32により第1ドラム31に押し付けながら第1ドラム31を1回転させて用紙P1の上側一面Aに、第1ドラム31に巻装された製版済孔版原紙M1の画像を順次印刷する。
【0052】
次に第1搬送装置73が、印刷された一面Aを上面にした用紙P2を、他面Bを吸引しながら円弧状の軌跡に沿って順次搬送し、続いて第2搬送装置76が他面Bを吸引しながら貯留部4内に向けて搬送する。そして図2、図4に示す如く、第2搬送装置76によって順次搬送された用紙P2を、搬入装置74が下面つまり他面Bの左右方向の中央部を吸引しながら貯留部4内に下方に向けて順次搬入する。
【0053】
そして搬入装置74によって貯留部4内に搬入された用紙P2は、図5に示す如く、各側縁把持部材41の搬入位置C1の凹部41dに挿入される。このとき図示しないモータが、搬入装置74による用紙P2の搬入と同期して凹部41dを間欠送りして、凹部41dを搬入位置C1に停止させて開いた状態で待機させ、用紙P2が搬入されて両側縁部が凹部41dに挿入されたタイミングで1ピッチ分送るようにプーリー41aを回転させるので、搬入位置C1に搬入される用紙P2は順次搬入位置C1に位置する新たな凹部41dに挿入され、次いで移動方向Fに移動せしめられる。
【0054】
これにより各側縁把持部材41は、搬入位置C1の凹部41dにおいて搬入された用紙P2の側縁を受け入れ、搬送ベルト41bが移動方向Fに移動すると共にクランプ部41fが用紙P2の両側縁部を上述したようにして把持するので、搬入位置C1に順次搬入される複数枚の用紙P2を1枚ずつクランプ部41fによって把持できる。
【0055】
クランプ部41fにより1枚ずつ把持された複数枚の用紙P2は、搬送ベルト41bの移動により搬出位置C2に位置すると、上述したようにしてクランプ部41fから解放される。このとき用紙P2の搬出位置C2への到来と同期して、図2に示す搬出装置81のプーリー81a及びファン81cを図示しないモータにより回転させることにより、搬出装置81で、クランプ部41fから解放された用紙P2の下面つまり一面Aを吸引して該用紙P2を第2の孔版印刷部51に向けて搬出する。
【0056】
このとき用紙P2は、搬入位置C1から搬出位置C2へ移動するために要する時間すなわち貯留部4における貯留時間にて、一面Aに転写されたインクを乾燥させることができるので、搬出装置81によって一面Aを吸引して搬送するときに搬送ベルト81bとの接触によって用紙P2の一面が汚れるのを防ぐことができる。
【0057】
なお用紙P2の一面Aの印刷率に基づいて、つまり一面Aの全面積に対する該一面Aに占める実印刷面積の割合が高い場合には、一面Aへのインクの転写が多いので貯留時間を長くし、実印刷面積の割合が低い場合には、一面Aへのインクの転写が少ないので貯留時間を短くするように貯留時間を制御するようにしてもよい。この印刷率は、用紙P2の一面Aの全面積に対する実印刷面積の割合を意味するものであり、例えば孔版印刷の場合、第1の孔版印刷部3により印刷する画像を表わす白黒の二値画像データ(黒画像データは孔版原紙に穿孔を行う画像データ、白画像データは孔版原紙に穿孔を行わないデータ)の全画像データ数に対する黒画像データ数の割合で示すことができる。
【0058】
貯留時間の制御は、先ず両面印刷を開始する前に上述のようにして第1の孔版印刷部3における印刷率を算出しておき、この印刷率が所定値以下のとき、即ち乾燥時間が比較的少なくてもよいときは、搬送ベルト41bの移動速度つまり用紙P2の移動速度を図5に示す場合に比して2倍にすることによって例えば1つおきのクランプ部41fの凹部41dに用紙P2の側縁部が挿入されるようにする。なお搬送ベルト41bの移動速度は、図示しないモータを制御してプーリー41aの回転速度を変更することにより変更することができる。
【0059】
そして上記のように1凹部おきに用紙P2を把持するように側縁把持部材41を駆動すると、用紙P2の搬送速度が速くなることから、用紙P2が貯留部4に貯留する時間が短くなり、印刷率が低い場合に無駄な乾燥時間を省略して用紙P2を搬出位置C2から搬出することができる。
【0060】
また上記のように搬送ベルト41bの移動速度はモータを制御するだけで変更することができるので、複雑な制御を要することなく貯留時間すなわち乾燥時間を制御することができる。
【0061】
以上のように貯留部4にて一面Aに転写されたインクが乾燥された用紙P2を搬出装置81が貯留部4から搬出した後、第2ピックアップローラ82が搬出装置81から搬出された用紙P2を順次ピックアップし、ピックアップされた用紙P2を第2タイミングローラ83が印刷済の一面Aが下側に位置するように、つまり未印刷の他面Bが上側に位置するように反転しつつ所定のタイミングにて第2の孔版印刷部5に順次搬送する。第2の孔版印刷部5は、搬送された用紙P2の上側の面すなわち他面Bに、第2ドラム51に巻装された製版済孔版原紙M2の画像を順次印刷する。
【0062】
続いて排出装置84が、印刷された他面Bを上面にした用紙P3を、一面Aを吸引しながら順次排紙台6に搬送する。
【0063】
次に他の実施形態の両面孔版印刷装置について説明する。本実施形態の両面孔版印刷装置は、上述した実施形態の両面孔版印刷装置1に、貯留部4の搬入位置C1に用紙P2が搬入されたことを検出して検出信号を出力する用紙搬入センサ43をさらに備えたものである。図6は本実施形態の貯留部4内の要部詳細図、図7Aは図6の用紙搬入センサ43の拡大詳細図、図7Bは図6の用紙搬入センサ43の検出動作を説明する図である。なお図7Aの左側の用紙搬入センサ43は便宜上、光センサ43cの図示を省略している。
【0064】
上述した実施形態は用紙P2の搬入と同期するように、予め定められたタイミングで搬送ベルト41bを間欠送りするものであったが、本実施形態では用紙搬入検出センサ43の検出信号に基づいて搬送ベルト41bが間欠送りされる。
【0065】
本実施形態の用紙搬入センサ43は、図6に示す如く、搬入位置C1から搬入される用紙P2の先端側に所定間隔を空けて並列に2つ配設されており、図7Aに示す如く、軸棒43aを軸にして回動可能に設けられた平板状のストッパ43bと、軸棒43aを挟んでストッパ43bと対向して設けられストッパ43bの回動に伴って回動する回動部材43cと、該回動部材43cの回動によって光が通過又は遮断されることによりON又はOFF信号を検出するコの字型の光センサ43dとを備えている。
【0066】
そして図6に示す如く、搬入装置74により搬入された用紙P2は、該用紙P2の先端が上流の両側つまり手前両側(図6中左側)の側縁把持部材41のクランプ部41fの凹部41dすなわち受爪41cと弾性爪41eとの間を通過し、さらに下流の両側つまり奥両側(図6中右側)の側縁把持部材41のクランプ部41fの凹部41dを通過して、図7Bの左図に示す如く、ストッパ43bに突き当たる。
【0067】
すると用紙P2に突き当たられたストッパ43bは、図7Bの右図に示す如く、用紙P2により右側に押し倒されて軸棒43aを中心にして時計回り(矢印M1回り)に所定角度回動すると共に、回動部材43cも時計回り(矢印M2回り)に所定角度回動し光センサ43cの光を遮断して、光センサ43cが光の遮断すなわちOFF信号を検出する。つまり光センサ43cは用紙P2の先端が各クランプ部41fの凹部41dを通過して用紙P2が搬入位置C1に到達したことを検出する。
【0068】
上記のようにして光センサ43cが検出信号を出力すると、図示しない駆動制御部(制御手段)がこの検出信号に基づいて搬入装置74の搬送ベルト74bを停止させ、ファン74cによる用紙P2の吸引を停止させ、搬送ベルト41bを1ピッチ分だけ移動方向Fに送り駆動させる。これにより上述したようにしてクランプ部41fが閉状態となり、受爪41cと弾性爪41eとで用紙P2の側縁部が把持される。
【0069】
上記構成の用紙搬入センサ43によれば、搬送ベルト41bの移動方向F下流側のクランプ部41fに用紙P2が把持されていても、搬入位置C1に用紙P2が搬入されたことを検出することができると共に、搬送ベルト41bが移動方向Fに移動するときに、用紙P2は先端がストッパ43bに当接した状態で移動方向Fに移動することになるので、移動開始後しばらくの間はクランプ部41fによる用紙P2の把持が行われていないが、用紙P2の先端がストッパ43bに支えられることにより、該先端が用紙P2の自重により下方に垂れるのを防止することができて、用紙P2を所定の高さ位置に維持することができる。
【0070】
また用紙搬入センサ43により用紙P2が搬入位置C1に搬入されたことが検出されてから、搬送ベルト41bは移動方向Fに移動して、クランプ部41fが用紙P2を把持するので、クランプ部41fは用紙P2の両側縁部を確実に把持することできる。
【0071】
次に他の実施形態の両面孔版印刷装置について説明する。本実施形態の両面孔版印刷装置は、図8は本実施形態の側縁把持部材41の駆動動作を説明する図である。本実施形態の両面孔版印刷装置は、図8に示す如く、上述した実施形態の側縁把持部材41にさらに側縁把持部材駆動機構44を備えている。
【0072】
側縁把持部材駆動機構44は、図8に示す如く、側縁把持部材ハウジング41hを搬送ベルト41bの移動方向Fに往復移動させることにより、側縁把持部材41の一対のプーリー41a、41a及び搬送ベルト41bを全体的に移動方向Fに往復移動させるものであり、第1ステッピングモータ44aと、該モータ44aにより回転するピニオンギア44bと、該ピニオンギア44bと噛合する側縁把持部材ハウジング41hに形成された移動方向Fと平行に設けられたラックギア41h’とを備えている。
【0073】
また側縁把持部材駆動機構44は、移動方向F下流側に位置するプーリー41aの近傍に第2ステッピングモータ44cを備えており、該ステッピングモータ44cにより回転するピニオンギア44dが、中間ギア44eを介して前記下流側のプーリー41aに設けられたギア41a’と噛み合うことにより、プーリー41aを回転させる。これらの第2ステッピングモータ44c及びピニオンギア44dも側縁把持部材41と共に移動方向Fに往復移動せしめられる。
【0074】
上記のように構成された側縁把持部材駆動機構44は、図示しない駆動制御部(制御手段)によって、図8(a)に示す如く、用紙P2が未印刷の他面Bを支持板40aに支持されつつ搬入装置74によって搬入位置C1に搬入されると、第1ステッピングモータ44aによって、図8(b)に示す如く、側縁把持部材41と第2ステッピングモータ44c、ピニオンギア44dを上記のようにして全体的に上記移動方向Fと反対側に所定量(下流側のプーリー41aの回転軸が図8(a)のh2から図8(b)のh2’に位置するように)移動させた後、第2ステッピングモータ44cがプーリー41aを上述のようにして反時計回りに回転させることにより搬送ベルト41bを上記移動方向Fに1ピッチ分移動させる。
【0075】
このとき第1ステッピングモータ44aは、搬入位置C1の凹部41dを形成する上記移動方向F下流側の受爪41cの上記移動方向F側の面Mが搬入位置C1にある用紙P2の他面B側に位置する位置(上記面Mが図8(a)中のh1に位置する位置)まで側縁把持部材41を上記移動方向Fと反対の方向に移動させ、続いて第2ステッピングモータ44cが、搬送ベルト41bを上記移動方向Fに1ピッチ分移動させて、図8(b)に示すように搬入位置C1の凹部41dを形成する受爪41cと弾性爪41eとで搬入位置C1にある用紙P2を把持させる。
【0076】
なお、この図8(b)の状態で搬出位置C2に位置する凹部41dは開状態となっており、この搬出位置C2において用紙P2は搬出装置81により吸引されて貯留部4から搬出される。
【0077】
次に第1ステッピングモータ44aが、側縁把持部材41を元の位置(図8(a)に示す位置)まで移動させる。これにより用紙P2が挿入された凹部41dの上記移動方向F上流側の隣の凹部41dが搬入位置C1に開いた状態で位置する。そしてこの凹部41dに搬入装置74が上記と同様にして用紙P2を搬入し、上記動作を繰り返し行うことにより、貯留部4に複数枚の用紙P2を所定間隔を空けて重ねた状態で保持することができる。
【0078】
本実施形態によれば、例えば図8に示すh1の位置を維持したままでクランプ部41fが用紙P2を把持するので、用紙P2は搬送ベルト41bと共に移動することなく支持板40aに未印刷の他面Bを支持された状態のまま、つまりたわみのない平坦な状態を維持したままクランプ部41fにより両側縁部が把持されるので、搬送ベルト41bにより移動される用紙P2が貯留部4内でたわんでしまうのを確実に防止することができる。
【0079】
次に他の実施形態の両面孔版印刷装置について説明する。本実施形態の両面孔版印刷装置は、上述した実施形態の両面孔版印刷装置1の搬入装置74に、ファン74cにより搬送ベルト74bに吸引された用紙P2を剥離する剥離部材(剥離手段)75をさらに備えたものである。図9は、本実施形態の両面孔版印刷装置の貯留部4への用紙P2の搬入から搬出までの工程を説明する図である。なお図9のクランプ部41fは、便宜上図は異なっているが、上記実施形態のクランプ部41fと同様の構造のものである。また図9のクランプ部41fは便宜上、搬入装置74により搬入された用紙P2の先端を把持する図となっているが、実際には図4、図6に示す様に用紙P2の側縁部を把持するものである。
【0080】
剥離部材75は、図9に示す如く、用紙P2を吸引搬送する側の搬送ベルト74bの近傍に配置され、図示しないモータにより回転される回転軸75aと、一端部が回転軸75aに接続されて回転軸75aの回転と共に回転する剥離爪75bとから構成されている。この剥離部材75による剥離動作は図示しない剥離制御部(剥離制御手段)によって制御されるものであり、この剥離動作について以下説明する。
【0081】
図9(a)に示す如く、用紙P2が搬入装置74により吸引搬送され両側縁部が凹部41dに挿入されて搬入位置C1に到達すると、図5に示す搬送ベルト41bの移動により凹部41dが搬入位置C1から搬出位置C2に向かって移動を開始し、この移動に連動してクランプ部41fが閉動作を開始する。
【0082】
そして搬送ベルト41bが1ピッチ分移動して図9(b)に示すようにクランプ部41fが閉状態となって用紙P2を把持すると、該把持と略同時に、搬入装置74の搬送ベルト74bを停止させると共に回転軸75aを回転させ、図9(c)に示すように剥離爪75bによって用紙P2を搬送ベルト74bから剥離する。
【0083】
そして用紙P2が搬送ベルト74bから剥離されると直ぐに、図9(d)に示す如く、回転軸75aを逆回転させ剥離爪75bを用紙搬入の妨げにならない位置まで移動させ、搬入装置74は次の用紙P2を搬入して凹部41dに挿入し、図9(a)から図9(d)に示す動作が繰り返される。
【0084】
以上のような剥離動作を行うことにより、搬送ベルト74bから用紙P2を確実に剥離することができるので、搬入装置74により次回搬送すべき用紙P2が搬送されてきたときにこの次回の用紙P2と前回の用紙P2との衝突による跳ね返り等に起因する用紙P2の位置ズレを防止することができる。また次回の用紙P2の一面Aが前回の用紙P2により擦られてしまうのを防止することもできる。これにより搬入装置74による用紙P2の搬送を確実に安定して行うことができる。
【0085】
またクランプ部41fにより用紙P2の両側縁部が把持されている状態で、剥離動作を行うので、搬送ベルト74bから用紙P2を勢いよく剥離したとしても用紙P2の位置ズレを抑えることができる。なお図9(b)に示すようにクランプ部41fが1ピッチ分移動して用紙P2の側縁部を把持したとき、搬入装置74のファン74cは回転しており用紙P2は搬送ベルト74bに吸引されているので、用紙P2はクランプ部41fに把持された側縁部が搬送ベルト74bに吸引されている中央部よりも搬送ベルト41bの移動方向下流側に湾曲することになるが、実際にはクランプ部41fのピッチ距離は小さく形成されているので、この湾曲は僅かなものであり、用紙Pの搬送時に問題となる位置ズレを招来する可能性は低い。
【0086】
なお上述した実施形態の両面孔版印刷装置1は上記構成としたが、本発明の両面印刷装置はこれに限られるものではなく、例えば装置ハウジング10の上側に、原稿の画像を読み取るスキャナ部や、スキャナ部で読み取った原稿画像の画像データに基づいて生成された孔版画像データに基づいて孔版原紙を穿孔して製版を行う製版部等を備えていてもよい。
【0087】
本発明の両面印刷装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】両面孔版印刷装置の概略構成図
【図2】図1の両面孔版印刷装置の要部詳細拡大図
【図3】図2のA−A線断面図
【図4】図2の矢印B方向から見た図
【図5】図2の側縁支持部の拡大詳細図
【図6】他の実施形態の両面孔版印刷装値の貯留部内の要部詳細図
【図7A】図6の用紙搬入センサの拡大詳細図
【図7B】図6の用紙搬入センサの検出動作を説明する図
【図8】他の実施形態の側縁把持部材の駆動動作を説明する図
【図9】他の実施形態の両面孔版印刷装置の貯留部への用紙の搬入から搬出までの工程を説明する図
【符号の説明】
【0089】
1 両面孔版印刷装置(両面印刷装)
10 装置ハウジング
2 給紙台
3 第1の孔版印刷部(第1の印刷手段)
4 貯留部
41 側縁把持部材(保持機構)
41a プーリー
41b 環状ベルト(環状の移動体)
41c 受爪
41d 凹部
41e 弾性爪
41f クランプ部(把持爪対)
43 用紙搬入検出センサ
5 第2の孔版印刷部(第2の印刷手段)
6 排紙台
7 第1の搬送部(第1の搬送手段)
75 剥離部材(剥離手段)
8 第2の搬送部(第2の搬送手段)
73c、74c、76c、81c、84c ファン(吸引部)
C1 搬入位置
C2 搬出位置
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の一面に印刷する第1の印刷手段と、
前記一面が印刷された用紙を複数枚貯留する貯留部と、
前記用紙の他面に印刷する第2の印刷手段と、
前記第1の印刷手段により一面が印刷された用紙を前記貯留部に搬送する第1の搬送手段と、
前記貯留部に貯留された複数枚の用紙を順次前記第2の印刷手段に搬送する第2の搬送手段とを備え、
前記貯留部が、前記一面が印刷された複数枚の用紙を、各用紙の両側縁部をそれぞれ所定間隔を空けて複数箇所把持して、互いに所定間隔を空けて重ねた状態で保持する保持機構を備えていることを特徴とする両面印刷装置。
【請求項2】
前記貯留部が、前記第1の搬送手段により搬送されてきた前記用紙が搬入される搬入位置と、貯留されている前記用紙を前記第2の搬送手段に受け渡す搬出位置とを所定間隔を空けて有し、
前記保持機構が、前記搬入位置に搬入された各用紙を順次把持して互いに所定間隔を空けて重ねた状態で前記搬入位置から前記搬出位置に向けて移動させるものであることを特徴とする請求項1記載の両面印刷装置。
【請求項3】
前記保持機構が、前記搬入位置から搬出位置に向けて送られる環状の移動体と、該環状の移動体の外周面に複数配設された把持爪対とを有する側縁把持部材を、前記貯留部に搬入された用紙の一方の側縁部に対応する位置に所定間隔を空けて複数、他方の側縁部に対応する位置に所定間隔を空けて複数備え、
前記把持爪対が、それぞれが前記環状の移動体の外周面に設けられた受爪と該受爪に対向する弾性爪とからなり、該受爪と弾性爪とでそれらの間に挿入された前記用紙の側縁部を把持することを特徴とする請求項2記載の両面印刷装置。
【請求項4】
前記保持機構が、前記環状の移動体が掛け渡された、所定間隔を空けて配置された一対のプーリーを備え、
前記貯留部の搬入位置と搬出位置とが、前記一対のプーリーの各々の中心よりも外側の中心近傍位置に設定され、
前記受爪と弾性爪とが、前記環状の移動体が前記プーリー上で円弧状になっているときは両爪の間を開き、前記一対のプーリー間で直線状になっているときは両爪間を閉じて弾性爪の弾性で前記用紙を受爪に押し付けて把持するものであることを特徴とする請求項3記載の両面印刷装置。
【請求項5】
前記用紙が前記貯留部の搬入位置に搬入されて該用紙の両側縁部が前記受爪と弾性爪との間に位置したことを検出して検出信号を出力する用紙搬入検出センサと、
該用紙搬入センサから出力された検出信号に基づいて前記環状の移動体を1ピッチ分送り駆動する制御手段とを備えていることを特徴とする請求項3又は4記載の両面印刷装置。
【請求項6】
前記第1の搬送手段が前記用紙を吸引しながら前記貯留部内に搬入する吸引部を備え、及び/又は、前記第2の搬送手段が前記用紙を吸引しながら前記貯留部内から搬出する吸引部を備えると共に、
前記第1の搬送手段及び/又は第2の搬送手段の吸引部に吸引された用紙を該吸引部から剥離する剥離手段を備えていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項記載の両面印刷装置。
【請求項7】
前記制御手段が、前記環状の移動体を1ピッチ分ずつ間欠送りするものであり、かつ、前記環状の移動体の間欠送りに同期して前記剥離手段を剥離動作させるものであることを特徴とする請求項6記載の両面印刷装置。
【請求項8】
前記制御手段が、前記把持爪対が前記用紙の両側縁を把持すると略同時に前記剥離手段を剥離動作させるものであることを特徴とする請求項6又は7記載の両面印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−5844(P2010−5844A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165844(P2008−165844)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000250502)理想科学工業株式会社 (1,191)
【Fターム(参考)】