説明

両頭側面フライス盤

【課題】ワークの回転ズレが生じず、正確な端面加工が可能な両頭側面フライス盤を提供する。
【解決手段】対向して配置された2台の加工ヘッド10,10と、2台の加工ヘッド10,10の間を通過するように移動自在に設けた加工フレーム3と、加工フレーム3の下部に設けられた、垂直な軸線回りに回転する割出し台4と、加工フレーム3の上部に設けられた、割出し台4の軸線と同一軸上でクランプ動作する上部クランプ5と、割出し台4上のワークWを上部クランプ5によってクランプするため、上部クランプ5の押圧力を伝達する押具と、押具を軸心回りに回転させる制御モータとからなる。制御モータは、割出し台4と同期して起動停止し、同一角度だけ押具を回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両頭側面フライス盤に関する。さらに詳しくは、ワークの対向する2面を同時加工できる両頭側面フライス盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の両頭側面フライス盤として、つぎの従来例(特許文献1参照)がある。
この従来例は、矩形状ワークの前後左右の4面のフライス加工と、左右面のみのフライス加工を、ワークの所要の位置決めを行って選択的に施すようにした数値制御装置内蔵のフライス盤である。
【0003】
前記フライス盤は、第1、第2の2個のヘッドの主軸にフライスが取り付けられている。数値制御装置により垂直な軸線回りに回転されるテーブルが、前記第1、第2のヘッド間に配設された移動路に沿って前後方向に移動可能に設けられており、テーブルは、前後方向に移動制御されるテーブルベース上に回転自在に設置されている。
前記左右のフライスは、図示しない駆動モータにより回転される主軸の回転に伴い、テーブル上に所要に位置決めセットされたワークの対向する2面に対して同時にフライス加工を施すことができる。
そして、テーブルを跨ぐように、門形フレームが前記テーブルベース上に立設され、その門形フレームの中央部に押圧シリンダが設けられている。
【0004】
上記従来例を更に図6に基づき説明する。同図に示すように、押圧シリンダ127のロッド133に設けられた上下方向の押圧軸の下端に、押圧具136が、垂直な軸線回りに回動可能に取り付けられ、この軸線は、位置決めセット場所に停止したと仮定されるテーブル106の回転軸線と合致するように設定されている。そして、ロッド133の下方向への突出によって押圧具136が、テーブル106上に位置決めセットされたワークを押圧することにより、ワークをテーブル106上に固定でき、ワーク固定状態で、テーブル106は、その回転軸線回りに回転できる。
【0005】
しかるに、上記従来例では、テーブル106を回転させても、ワークWが正確に同じ回転角だけ回転するとは限らない、という問題がある。
すなわち、押圧シリンダ127のロッド133と押圧具136との間の摩擦によって、押圧具136の回転角が少し不足するとワークWも回転角が少し不足し、割出し角が不正確になる。
また、ワークWが一体物でなく、複数枚のワークWl〜Wnを積層したものであると、各枚のワークWl〜Wn間で若干の滑りが生じ、ワークWの側面がズレてくるので、正確な端面加工ができなくなる、という問題がある。
【0006】
【特許文献1】特開2003−11012号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、ワークの回転ズレが生じず、正確な端面加工が可能な両頭側面フライス盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明の両頭側面フライス盤は、対向して配置された2台の加工ヘッドと、前記2台の加工ヘッドの間を通過するように移動自在に設けた加工フレームと、該加工フレームの下部に設けられた、垂直な軸線回りに回転する割出し台と、該加工フレームの上部に設けられた、前記割出し台の軸線と同一軸線上でクランプ動作して、前記割出し台上のワークをクランプする上部クランプ機構と、前記上部クランプ機構を軸心回りに回転させる制御モータとからなることを特徴とする。
第2発明の両頭側面フライス盤は、第1発明において、前記上部クランプ機構が、クランプシリンダとロッドからなる上記クランプと、前記割出し台上のワークを前記上部クランプによってクランプするため、前記上部クランプの押圧力を伝達する押具とからなり、前記押具を前記制御モータで回転させるようにしことを特徴とする。
第3発明の両頭側面フライス盤は、第1発明において、前記押具は、前記上部クランプのロッドに対しスラストベアリングを介して回転自在に取付けられていることを特徴とする。
第4発明の両頭側面フライス盤は、第1発明において、前記制御モータは、前記割出し台と同期して起動停止し、同一角度だけ前記押具を回転させる。
ことを特徴とする
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、割出し台によるワークの回転に合わせて上部クランプ機構も回転させると、上部クランプとワークの間に摩擦が生じないので、ワークを正確に割出し角度に合わせて回転させることができる。また、ワークが複数枚を積層したものであっても、ワーク間での回転方向のズレが生じない。このため、ワークの端面を正確な角度で加工することができる。
第2発明によれば、上部クランプ機構のうち、押具のみを回転させるので、全体を回転させる場合に比べ抵抗が小さくなり、制御モータによる回転角度制御が正確に行える。
第3発明によれば、ワークに押圧力を加える押具は、上部クランプのロッドに対しスラストベアリングを介在させているため、回転抵抗が小さく、制御モータによる回転角度制御が正確に行える。
第4発明によれば、制御モータは、割出し台と同期して起動停止し、また同一角度しか上部クランプ機構を回転させないので、割出し台とワークとの間、また上部クランプ機構とワークとの間に回転ズレが全く生じない。このため、極めて正確な両面加工が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図4は本発明の一実施形態に係る両頭側面フライス盤の全体正面図である。図5は図4の全体平面図である。まず、本実施形態の両頭側面フライス盤の基本構成を説明する。
【0011】
図4および図5において、符号1はベースを示しており、このベース1の上面には、前後方向(図4では紙面の裏表方向、図5では上下方向)にレール2が設けられている。そして、このレール2上を移動自在に加工フレーム3が取付けられている。この加工フレーム3は、その下部に割出し台4を備え、その上部に上部クランプ5を設けている。
前記上部クランプ5を伸長させれば、下治具7と上治具9の間にワークWを挟んで、ワークWを割出し台4上に固定することができる。そして、加工フレーム3を前後に移動させれば、ワークWを上治具9と下治具7との間に挟んだままでワークWを加工フレーム3とともに前後に移動させることができる。
【0012】
一方、前記ベース1の左右には、左右一対の加工ヘッド10,10が設けられており、その主軸台11,11は、ベース1の中心線(2本のレール2の間の中間)に対し接近離間方向に移動自在である。
前記一対の主軸台11,11には、一対の主軸がそれぞれ回転自在に支持されており、この一対の主軸は、互いに軸中心が一致するように、水平に設けられている。この一対の主軸の向かいあった一端部には、カッタ13,13がそれぞれ取り付けられており、各主軸の他端部は、例えば、ベルト等によって、主軸台11の上部に設けられたモータ14の主軸と連結されている。
このため、モータ14、14を駆動させれば、カッタ13、13を回転させることができる。
【0013】
以上の基本構成であるので、前記実施形態の両頭側面フライス盤によれば、割出し台4上にワークWを取り付け、ワークWを加工する量の分だけ一対の加工ヘッド10,10を加工フレーム3に向けて移動させる。そして、モータ13を駆動させてカッタ13を回転し、加工フレーム3によってワークWをカッタ13方向に送れば、カッタ13によってワークWの表裏両面を一度に切削することができる。
【0014】
つぎに、割出し台4と上部クランプ5を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る両頭側面フライス盤の要部側面図である。
図1に示すように、前記加工フレーム3は側面視で略C形の部材であり、フレーム下部には走行ガイド3aと前記割出し台4が設けられており、フレーム上部には上部クランプ5が取付けられている。
前記割出し台4は、ワークWの外周面を任意の数に等分する装置であり、上割出し板41、下割出し板42、前記上割出し板42を回転駆動するドライブ軸43、該ドライブ軸43を回転させるサーボモータ44から構成された、公知の装置である。
前記下割出し板42は固定されており、前記上割出し板41は水平面内で旋回して任意の円周方向に向けて固定できる。この上割出し板41の上面にはパレット6が固定され、このパレット6の上面に下治具7を置くようになっている。
【0015】
前記上部クランプ5はクランプシリンダ51とロッド52から構成されており、クランプシリンダ51は前記加工フレーム3に固定され、ロッド52は鉛直下向きに配設されている。このロッド52には押具8が連結されており、この押具8が上治具9を介してワークWを押圧するようになっている。前記上部クランプ5と前記押具8は特許請求の範囲にいう上部クランプ機構に該当する。
【0016】
つぎに、上部クランプ機構の回転構造を図2に基づき説明する。
図2は上部クランプ機構の要部断面図である。
前記クランプシリンダ51のロッド52の外周には、上部外筒53が螺合され、この上部外筒53の下端には下部外筒54がボルト等で固定されている。この下部外筒54の内周はテーパ筒状に形成され、下端の内径が上端の内径より小さくなっている。
一方、前記押具8は丸棒状の部材であり、その上端部には、上部内筒81が嵌合され、その上面に取付けられた軸受ホルダー82と共にボルト等で固定されている。
前記上部内筒81はテーパ筒状の部材で、上端の外径が大きく下端の内径が小さくなっている。そして、前記ロッド52側の下部外筒54の中に収容され、軸回りに回転自在に保持されている。
【0017】
そして、前記軸受ホルダー82には、スラストベアリング83が嵌められ、更にこのスラストベアリング83はロッド側の上部外筒53の下端内周に形成された軸受ホルダー部55に入れられている。このスラストベアリング83により、クランプシリンダ51の押圧力が押具8に強く作用しても、押具8は軽く自転することができるようになっている。
【0018】
つぎに押具8の回転機構を説明する。
前記上部内筒81の外周には大径ギヤ84が嵌められている。この大径ギヤ84には小径ギヤ85が噛み合っており、小径ギヤ85には制御モータ86の主軸が固定されている。制御モータ86は加工フレーム3の適所に固定されている。
この制御モータ86は、サーボモータやステッピングモータ等の回転角を正確に制御できるモータが用いられる。また、その起動停止は前記割出し台4のサーボモータ44と同期するようソフト的に制御されている。
【0019】
つぎに、上記押具8の回転作用を図3に基づき説明する。
図3は上部クランプ回転機構の作用説明図である。
ワークWの一対の側面の加工を終えると他の対の側面を加工すべく、割出し台4によってパレット6を90°回転させる。このとき、パレット6ひいては割出し台4の回転と同期して制御モータ86を起動して、押具8を90°回転させる。この押具8の回転は、スラストベアリング83により低摩擦で行え、押具8の回転とパレット6の回転との間にズレは生じない。
このため、押具8と上治具9との間(符号X1)も、上治具9とワークWの上面との間(符号X2)も回転ズレは生じない。
このため、ワークWの一対の側面と他の対の側面との間の直角を正確に出すことができる。また、ワークWが複数枚を積層したものであっても、各枚のワーク間の回転ズレも生じないので、全てのワークを正確に端面加工することができる。
【0020】
上記実施形態では、押具8のみを回転させるので、小さな抵抗で回転制御できるが、制御モータ86の能力が充分なら、上部クランプ5のロッド52を回転させてもよく、また上部クランプ5全体を回転させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る両頭側面フライス盤の要部側面図である。
【図2】上部クランプ機構の要部断面図である。
【図3】上部クランプ機構の作用説明図である。
【図4】本発明に係る一実施形態に係る両頭側面フライス盤の全体正面図である
【図5】同両頭側面フライス盤の全体平面図である。
【図6】従来例の問題点の説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ベース
3 加工フレーム
4 割出し台
5 上部クランプ
6 パレット
7 下治具
8 押具
9 上治具
83 スラストベアリング
86 制御モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配置された2台の加工ヘッドと、
前記2台の加工ヘッドの間を通過するように移動自在に設けた加工フレームと、
該加工フレームの下部に設けられた、垂直な軸線回りに回転する割出し台と、
該加工フレームの上部に設けられた、前記割出し台の軸線と同一軸線上でクランプ動作して、前記割出し台上のワークをクランプする上部クランプ機構と、
前記上部クランプ機構を軸心回りに回転させる制御モータとからなる
ことを特徴とする両頭側面フライス盤。
【請求項2】
前記上記クランプ機構が、クランプシリンダとロッドからなる上部クランプと、前記割出し台上のワークを前記上部クランプによってクランプするため、前記上部クランプの押圧力を伝達する押具とからなり、
前記押具を前記制御モータで回転させるようにした
ことを特徴とする請求項1記載の両頭側面フライス盤。
【請求項3】
前記押具は、前記上部クランプのロッドに対しスラストベアリングを介して回転自在に取付けられている
ことを特徴とする請求項1記載の両頭側面フライス盤。
【請求項4】
前記制御モータは、前記割出し台と同期して起動停止し、同一角度だけ前記押具を回転させる
ことを特徴とする請求項1記載の両頭側面フライス盤。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate