説明

中枢神経系の疾患および障害の治療および予防用の医薬処方を製造するためのベンゾナフトアズレン類の使用

本発明は、生体アミンまたは他の伝達物質の神経化学的平衡の異常によって引き起こされる中枢神経系(CNS)の疾患、損傷、および障害の治療および予防用の医薬処方を製造するための、ベンゾナフトアズレン類の群、ならびにそれらの医薬上許容される塩および溶媒和化合物の群に由来する化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の開示)
本発明は、生体アミンまたは他の神経伝達物質の神経化学的平衡の異常によって引き起こされる中枢神経系(CNS)の疾患、損傷、および障害の治療および予防用の医薬処方を製造するための、チオフェンクラスのベンゾナフトアズレン類の群、ならびにそれらの薬理学的に許容される塩および溶媒和化合物の群に由来する化合物の使用に関する。
【0002】
(従来の技術)
生体アミン(セロトニン、ノルエピネフリン、ドーパミン)、ならびにCNSにおける中枢神経伝達物質系の一部分である他の神経伝達物質およびそれらの受容体の、定常状態における異常は、様々な精神的疾患、損傷、および障害(例えば、うつ病、統合失調症、躁病的行動および同様の行動)の原因となり得る。神経伝達物質濃度の異常によって引き起こされる、CNSの病理学的変化は、生体アミンおよび/またはいくつかの神経伝達物質の不平衡な(過多なまたは過少な)合成、ならびに貯蔵、放出、代謝および/または再吸収における異常のために生じ得る。
【0003】
精神障害の病因の理解を目的とした調査の結果は、セロトニン平衡の異常が様々な疾患において重要な役割を果たしていることを示している。モノアミン欠乏仮説は、うつ病の症状がモノアミン、特にセロトニン(5−HT)およびノルアドレナリンの神経伝達の低減に結び付けられている最初の説明のうちの1つであり、神経化学的試験によっても、また、モノアミン作動性神経伝達を増大させる物質による患者の治療の成功によっても確認された(Expert Opin.Investig.Drugs 2003年、12、531〜543頁)。セロトニン作動系およびノルアドレナリン作動系に加えて、ドーパミン作動系も、CNS機能障害において非常に重要な役割を果たしている。これらの神経伝達物質系の正確な役割および相互作用の理解は、多数の受容体サブタイプがあり、それらが薬理学的に複雑であるため、かなり困難になっている。すなわち、例えば、ドーパミン作動性の神経伝達は、5−HT2A受容体(L.G.Spampinato,J.Neurochem.2000年、74、693〜701頁)によって調節されていることが観察されており、したがって、5−HT2A受容体も、ドーパミン作動系の機能障害がその病状において重要な役割を果たしている疾患および障害(精神病および様々な嗜癖)を治療する際に標的受容体になり得る。
【0004】
グルタミン酸受容体は、中枢神経系(CNS)における主要な興奮性神経伝達物質のうちの1種として、興奮性シナプス伝達の媒介においてきわめて重大な役割を果たしている。グルタミン酸作動性/NMDAを含めて、σ1受容体リガンドが、中枢神経伝達物質系によって媒介される神経伝達を調節できることが広く一般に認められている(F.P.Monnet,G.Debonnel,J.−L.Junien,C.de Montigny、Eur.J.Pharmacol.、1990年、179、441〜445頁)。多くの薬理学的作用および生理的作用が、σ1に帰されている。これらには、小胞体でのIP3受容体およびカルシウムシグナル伝達の調節、細胞骨格のアダプタータンパク質の動員、神経成長因子によって誘導される神経突起発芽、神経伝達物質放出および神経発火の調節、調節サブユニットとしてのカリウムチャネルの調節、精神刺激薬によって誘導される遺伝子発現の改変、ならびに拡延性抑制の阻害が含まれる。行動的には、σ1受容体は、学習および記憶、精神刺激薬によって誘導される鋭敏化、コカインによって誘導される条件付け場所嗜好性、統合失調症、ならびに疼痛知覚に関与している。したがって、σ1受容体は、少なくとも一部には、生物系におけるシグナル伝達のために高感度にされた状態を作り出す細胞内増幅器であるという仮説が立てられている。
【0005】
病理学的なCNS障害の治療のために、また、特に精神障害の治療法において、最も頻繁に適用される医薬品としての重要な役割が、構造によれば多環式化合物(ベンゾジアゼピン、3環系および4環系の抗うつ薬、モノアミノ酸化酵素(MAO)阻害物質、セロトニン再吸収の選択的阻害物質など)である物質に与えられる。
【0006】
新規な4環系抗うつ薬ミアンセリンを導入することによって、薬物療法の新しい領域が開かれた(Claghorn,J.;Lesem,M.D.Prog.Drug Res.1996年、46、243〜262頁;Sperling,W.;Demling,J.Drugs Today 1997年、33、95〜102頁)。CNSにおける神経化学的平衡の異常の治療において薬理学的作用を示す多数の4環系誘導体が文献で開示されている。WO99/19317、WO97/38991、およびUS6,511,976は、テトラヒドロフラン環を有する4環系誘導体の製造、ならびに抗精神病性、心血管性、および胃運動促進作用を有する物質としてのそれらの使用を記述している。US4,145,434は、ジベンゾ(シクロヘプタ−、オキセピノ−、チエピノ−)ピロリジンおよびジベンゾピロリジノアゼピンの誘導体の製造、ならびに潜在的なCNS作用を有する物質としてのそれらの使用を開示している。いくつかの1,2−ジアザ−ジベンゾアゼピンの製造および抗うつ作用が、EP0063525で開示されている。いくつかの4環系イソオキサゾリジン誘導体の製造および潜在的な抗不安作用も、同様に開示されている(Drugs Fut.2002年、27、補遺A:C41;Drugs Fut.2002年、27、補遺A:P182、WO96/14320、WO96/14321)。オキセピン環を有する4環系構造体にピペリジン環を導入することにより、抗うつ作用を示す分子Org−4428が形成された(Sperling,W.;Demling,J.Drugs Today 1997年、33、95〜102頁)。分子Org−5222は、オキセピン核に縮合されたピロリジン環を有し、潜在的な抗不安薬および抗精神病薬として記述されている(Sperling,W.;Demling,J.Drugs Today 1997年、33、95〜102頁)。抗炎症作用を有する化合物の新規なクラスとしての、1,3−ジアザ−ジベンゾ[e,h]アズレンのいくつかの誘導体およびその塩も同様に公知である(US3,711,489、US4,198,421、およびCA967,573)。
【0007】
しかし、病理学的なCNS障害の治療法において、特に精神障害の治療法において使用される当技術分野で公知の医薬品は、様々な有害作用に関連づけられている。したがって、CNSの疾患および障害の安全かつ効果的な治療が必要とされている。
【0008】
チオフェン環上にアミノアルキルオキシ置換基を有し、抗炎症作用を示す1−チア−ジベンゾ[e,h]アズレンの誘導体が、WO01/87890で開示された。文献では、1−チア−ジベンゾアズレンのクラスから、メチル、メチルケトン、ニトロ基、またはカルボキシル基の誘導体で2位を置換された誘導体(Cagniant PG、C.R.Hebd.Sceances Acad.Sci.、1976年、283:683〜686頁)、および2位にアミノアルキルオキシ置換基を有する誘導体(WO01/87890)、ならびにそれらの抗炎症作用が開示されている。
【0009】
3位をシアノ基で置換された9,14−ジヒドロ−9,14−ジオキソ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレンなどチオフェンクラスのいくつかのベンゾナフトアズレンも公知であるが、2位の置換基として、アミン、尿素、またはアセトアミドがあってもよい(Nyiondi−Bonguen E他、J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1、1994年、15:2191〜2195頁)。
【0010】
2004年4月15日の書状によって補正された、その全体を参照により本明細書に組み込む、本発明者らの以前の国際公開WO03/084961において、本発明者らは、ベンゾナフトアズレンクラスの化合物、それらの医薬上許容される塩および溶媒和化合物、それらを調製するためのプロセスおよび中間体、ならびに、その鎮痛作用とともに、特に腫瘍壊死因子−α(TNF−α)産生の阻害およびインターロイキン−1(IL−1)産生の阻害に対する抗炎症効果を開示している。
【0011】
本発明者らは、次に、驚くべきことに、前述の明細書において説明したベンゾナフトアズレンのクラスに由来する化合物が、CNSの疾患および障害の治療において有効であることを発見した。本発明の化合物は、第5の環としてチオフェン環を有する5環系構造であるため、CNSに作用する当技術分野で公知の4環系化合物(WO99/19317、WO97/38991、Sperling,W.;Demling,J.Drugs Today 1997年、33、95〜102頁)とは構造上異なり、有益な薬理学的および物理化学的な諸特性によってさらに区別される。
【0012】
本発明者らの知識によれば、神経化学的定常状態の異常によって引き起こされる中枢神経系の疾患、損傷、および障害の治療および予防用の医薬処方を製造するための、本発明者らの以前の国際公開WO03/084961において開示されるベンゾナフトアズレン類、ならびにそれらの医薬上許容される塩および溶媒和化合物の使用は、今までに開示されたこともなく、示唆されたこともなかった。
【0013】
(技術的問題の解決)
本発明は、生体アミンの平衡の異常によって引き起こされる中枢神経系の疾患、損傷、および障害の効果的な治療および予防の問題を解決する。したがって、本発明は、一般式I
【化1】


のベンゾナフトアズレン類のクラスに由来する化合物であって、
【0014】
式中、
Xは、CH、またはO、S、S(=O)、S(=O)、およびNR(ここで、Rは、水素、またはC〜Cアルキル、C〜Cアルカノイル、C〜Cアルキルオキシカルボニル、C〜C10アリールアルキルオキシカルボニル、C〜C10アロイル、C〜C10アリールアルキル、C〜Cアルキルシリル、C〜C10アルキルシリルアルキルオキシアルキルからなる群から選択される置換基である)からなる群から選択されるヘテロ原子を意味し、
YおよびZは、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、トリフルオロメチル、ハロC〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、トリフルオロメトキシ、C〜Cアルカノイル、アミノ、アミノC〜Cアルキル、C〜Cアルキルアミノ、N−(C〜Cアルキル)アミノ、N,N−ジ(C〜Cアルキル)アミノ、チオール、C〜Cアルキルチオ、C〜Cアルキルスルホニル、C〜Cアルキルスルフィニル、カルボキシ、C〜Cアルコキシカルボニル、ニトロ、
【0015】
【化2】


(ここで、GまたはGは、構造体
【化3】

を意味する)からなる群から選択される、利用可能な任意の炭素原子に連結された、1つまたは複数の同一または異なる置換基を互いに独立に意味し、
【0016】
は、CHOH、所望により置換されていてもよいC〜CアルキルC〜Cアルキルオキシカルボニル、または一般式II

II
【0017】
[式中、
およびRは、同時にまたは互いに独立に、水素、C〜Cアルキル、アリールを表し、あるいは、Nと一緒になって、所望により置換されていてもよいヘテロ環またはヘテロアリールを意味し、
nは、整数0〜3を表し、
mは、整数1〜3を表し、
およびQは、互いに独立に、酸素、硫黄、または基:
【化4】

(ここで、置換基yおよびyは、互いに独立に、水素、ハロゲン、所望により置換されていてもよいC〜Cアルキルもしくはアリール、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルカノイル、チオール、C〜Cアルキルチオ、C〜Cアルキルスルホニル、C〜Cアルキルスルフィニル、ニトロを意味し、あるいは、一緒になってカルボニルまたはイミノ基を形成する)を意味する]で表される置換基を意味し、
【0018】
前述したすべての置換基について、所望により置換されていてもよいアルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、チオール、C〜Cアルキルチオ、アミノ、N−(C〜C)アルキルアミノ、N,N−ジ(C〜Cアルキル)−アミノ、スルホニル、C〜Cアルキルスルホニル、スルフィニル、C〜Cアルキルスルフィニルである1つ、2つ、または3つ以上の置換基を有するアルキル基であり、アリールは、芳香族環、ならびに少なくとも6個の炭素原子を有する1つの環、または全体として10個の炭素原子を有し、炭素原子間に交互の二重結合を有する2つの環を含む縮合された芳香族環を意味し、ヘテロアリールは、4〜12個の炭素原子を有し、それらのうちの少なくとも1つが、O、SまたはNなどのヘテロ原子である、単環式または2環式の環の芳香族または部分的に芳香族の基である基であり、利用可能な窒素原子または炭素原子は、直接結合によって、またはC〜Cアルキレン基を介して、分子の残りの部分へ基が結合する部位であり、複素環は、O、S、またはNなど少なくとも1つのヘテロ原子を含む、5員または6員の、完全飽和または部分不飽和な複素環系の基であり、利用可能な窒素原子または炭素原子は、直接結合によって、またはC〜Cアルキレン基を介して、分子の残りの部分へ基が結合する部位であり、所望により置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、または複素環は、ハロゲン、C〜Cアルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、チオール、C〜Cアルキルチオ、アミノ、N−(C〜C)アルキルアミノ、N,N−ジ(C〜Cアルキル)−アミノ、スルホニル、C〜Cアルキルスルホニル、スルフィニル、C〜Cアルキルスルフィニルである1つまたは2つの置換基で置換された、アリール、ヘテロアリール、または複素環の基である、化合物、
ならびに、それらの医薬上許容される塩および溶媒和化合物の、生体アミンまたは他の神経伝達物質の神経化学的平衡の異常によって引き起こされる中枢神経系の疾患、損傷、および障害の治療および予防用の医薬処方を製造するための使用に関する。
【0019】
「ハロ」、「ハル(hal)」、または「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素(最も好ましくは塩素または臭素)でよいハロゲン原子に関する。
【0020】
「アルキル」という用語は、遊離基が由来する元のアルカンの意味を有するアルキル基に関し、これらの遊離基は、直鎖、分枝、もしくは環状、または直鎖のものと環状のもの、および分枝状のものと環状のものの組合せでよい。好ましい直鎖または分枝アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、およびtert−ブチルである。好ましい環状アルキルは、例えば、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである。
【0021】
「アルケニル」という用語は、炭化水素基の意味を有するアルケニル基に関し、直鎖、分枝、または環状でよく、あるいは、直鎖のものと環状のもの、または分枝状のものと環状のものの組合せでもよいが、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する。最も一般的なアルケニルは、エテニル、プロペニル、ブテニル、またはシクロヘキセニルである。
【0022】
「アルキニル」という用語は、炭化水素基の意味を有するアルキニル基に関し、直鎖または分枝であり、少なくとも1つ、最大2つの炭素−炭素三重結合を含む。最も一般的なアルキニルは、エチニル、プロピニル、またはブチニルである。
【0023】
「アルコキシ」という用語は、直鎖または分枝鎖のアルコキシ基に関する。このような基の例は、メトキシ、プロポキシ、プロプ−2−オキシ、ブトキシ、ブト−2−オキシ、またはメチルプロプ−2−オキシである。
【0024】
「アリール」という用語は、芳香族環、例えば、フェニルの意味を有する基、ならびに、縮合した芳香族環に関する。アリールは、少なくとも6個の炭素原子を有する1つの環、または全体として10個の炭素原子を有し、炭素原子間に交互の二重(共鳴)結合を有する2つの環を含む。最も頻繁に使用されるアリールは、例えば、フェニルまたはナフチルである。一般に、アリール基は、直接結合によって、またはメチレンやエチレンなどのC〜Cアルキレン基を介して、利用可能な任意の炭素原子によって分子の残りの部分へ連結されることができる。
【0025】
「ヘテロアリール」という用語は、4〜12個の炭素原子を有し、それらのうちの少なくとも1つが、O、SまたはNなどのヘテロ原子である、単環式または2環式の環の芳香族基または部分的に芳香族の基の意味を有する基に関し、利用可能な窒素原子または炭素原子は、直接結合によって、または先に定義したC〜Cアルキレン基を介して、分子の残りの部分へ基が結合する部位である。このタイプの例は、チオフェニル、ピロリル、イミダゾリル、ピリジニル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、テトラゾリル、ピリミジニル(pirimidinyl)、ピラジニル、キノリニル、またはトリアジニルである。
【0026】
「複素環」という用語は、O、S、またはNなど少なくとも1つのヘテロ原子を含む、5員または6員の、完全に飽和または部分的に不飽和な複素環系の基に関し、利用可能な窒素原子または炭素原子は、直接結合によって、または先に定義したC〜Cアルキレン基を介して、分子の残りの部分へ基が結合する部位である。最も一般的な例は、モルホリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、ピラジニル、またはイミダゾリルである。
【0027】
「アルカノイル」基という用語は、ホルミル、アセチルまたはプロパノイルなど直鎖のアシル基に関する。
【0028】
「アロイル」基という用語は、ベンゾイルなどの芳香族アシル基に関する。
【0029】
「置換されていてもよいアルキル」という用語は、1つ、2つ、または3つ以上の置換基で、所望によりさらに置換され得るアルキル基に関する。このような置換基は、ハロゲン原子(好ましくはフッ素もしくは塩素)、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ(好ましくはメトキシもしくはエトキシ)、チオール、C〜Cアルキルチオ(好ましくはメチルチオもしくはエチルチオ)、アミノ、N−(C〜C)アルキルアミノ(好ましくはN−メチルアミノもしくはN−エチルアミノ)、N,N−ジ(C〜Cアルキル)−アミノ(好ましくはジメチルアミノもしくはジエチルアミノ)、スルホニル、C〜Cアルキルスルホニル(好ましくはメチルスルホニルもしくはエチルスルホニル)、スルフィニル、C〜Cアルキルスルフィニル(好ましくはメチルスルフィニル)でもよい。
【0030】
「置換されていてもよいアルケニル」という用語は、1つ、2つ、または3つのハロゲン原子で、所望によりさらに置換されているアルケニル基に関する。このような置換基は、例えば、2−クロロエテニル、1,2−ジクロロエテニル、または2−ブロモ−プロペン−1−イルでもよい。
【0031】
「置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、または複素環」という用語は、1つまたは2つの置換基で、所望によりさらに置換され得るアリール、ヘテロアリール、または複素環の基に関する。これらの置換基は、ハロゲン(好ましくは塩素もしくはフッ素)、C〜Cアルキル(好ましくはメチル、エチル、もしくはイソプロピル)、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ(好ましくはメトキシもしくはエトキシ)、チオール、C〜Cアルキルチオ(好ましくはメチルチオもしくはエチルチオ)、アミノ、N−(C〜C)アルキルアミノ(好ましくはN−メチルアミノもしくはN−エチルアミノ)、N,N−ジ(C〜Cアルキル)アミノ(好ましくはN,N−ジメチルアミノもしくはN,N−ジエチルアミノ)、スルホニル、C〜Cアルキルスルホニル(好ましくはメチルスルホニルもしくはエチルスルホニル)、スルフィニル、C〜Cアルキルスルフィニル(好ましくはメチルスルフィニル)でもよい。
【0032】
XがNRを意味する場合、Rは、水素、または、C〜Cアルキル(好ましくはメチルもしくはエチル)、C〜Cアルカノイル(好ましくはアセチル)、C〜Cアルコキシカルボニル(好ましくはメトキシカルボニルまたはtert−ブトキシカルボニル)、C〜C10アリールアルキルオキシカルボニル(好ましくはベンジルオキシカルボニル)、C〜C10アロイル(好ましくはベンゾイル)、C〜C10アリールアルキル(好ましくはベンジル)、C〜Cアルキルシリル(好ましくはトリメチルシリル)またはC〜C10アルキルシリルアルコキシアルキル(好ましくはトリメチルシリルエトキシメチル)から選択される基に関する。
【0033】
Nと一緒になってRおよびRがヘテロアリールまたは複素環を意味する場合、これは、それらのヘテロアリールまたは複素環の少なくとも1つの炭素原子が窒素原子によって置換されており、これらの基がその窒素原子を介して、分子の残りの部分に連結されていることを意味する。このような基の例は、モルホリン−4−イル、ピペリジン−1−イル、ピロリジン−1−イル、イミダゾール−1−イル、またはピペラジン−1−イルである。
【0034】
個々の置換基の性質によって、式Iで表される化合物は、幾何異性体および1つまたは複数のキラル中心を有することがあり、その結果、鏡像異性体またはジアステレオ異性体が存在し得る。本発明は、ラセミ化合物を含めて、このような異性体およびそれらの混合物の使用にも関する。
【0035】
本発明は、式Iで表される個々の化合物の存在し得るすべての互変異性体にも関する。
【0036】
以下で使用する場合は常に、「式Iで表される化合物」または「本発明の化合物」という用語は、医薬上許容される付加塩および溶媒和化合物も含むことを意図している。
【0037】
本発明の一実施形態では、式Iで表される好ましい化合物は、XがO、S、またはNR(ここで、Rは、水素、またはC〜Cアルキル(好ましくはメチル、エチル、プロピル、もしくはイソプロピル)、C〜Cアルカノイル(好ましくはホルミルもしくはアセチル)、C〜C10アロイル(好ましくはベンゾイル)、およびC〜C10アリールアルキル(好ましくはベンジル)からなる群から選択される置換基である)を表すものである。
【0038】
本発明の別の実施形態では、式Iで表される好ましい化合物は、YおよびZが、水素、フッ素、塩素、臭素、C〜Cアルキル(好ましくはメチル、エチル、プロピル、もしくはイソプロピル)、ハロC〜Cアルキル(好ましくはトリフルオロメチル)、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ(好ましくはメトキシ)、トリフルオロメトキシ、C〜Cアルカノイル(好ましくはホルミルもしくはアセチル)、アミノ、アミノC〜Cアルキル(アミノメチル)、N−(C〜Cアルキル)アミノ(好ましくはN−メチルもしくはN−エチル)、N,N−ジ(C〜Cアルキル)アミノ(好ましくはジメチルアミノもしくはジエチルアミノ)、チオール、C〜Cアルキルチオ(好ましくはメチルチオ)、シアノ、およびニトロからなる群から選択される、利用可能な任意の炭素原子に連結された、1つまたは複数の同一または異なる置換基を互いに独立に意味するものである。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態では、式Iで表される好ましい化合物は、Rが、CHOH、所望により置換されていてもよいC〜Cアルキル、C〜Cアルキルオキシカルボニル、または一般式II
【化5】

II
[式中、
およびRは、同時にまたは互いに独立に、水素、C〜Cアルキル(好ましくはメチル、エチル、プロピル、もしくはイソプロピル)、アリール(上記に定義した意味を有する)を表し、あるいは、Nと一緒になって、モルホリン−4−イル、ピペリジン−1−イル、ピロリジン−1−イル、イミダゾール−1−イル、およびピペラジン−1−イルからなる群から選択されるヘテロ環またはヘテロアリールを意味し、
mは、整数1〜3を表し、
nは、整数0〜3を表し、
およびQは、互いに独立に、酸素またはCH基を意味する]
で表される置換基を意味するものである。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態では、式Iで表される特に好ましい化合物は、
8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
1,8−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
3,10−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
11−メトキシ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
6,7,8,9−テトラヒドロ−10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
(8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イル)−メタノール;
(1,8−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イル)−メタノール;
(3,10−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イル)−メタノール;
【0041】
(10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イル)−メタノール;
(11−メトキシ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イル)−メタノール;
(6,7,8,9−テトラヒドロ−10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イル)−メタノール;
(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イル)−メタノール;
ジメチル−[2−(8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
3−(8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピルアミン;
ジメチル−[3−(1,8−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[2−(3,10−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(3,10−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
【0042】
ジメチル−[2−(10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[3−(11−メトキシ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[2−(6,7,8,9−テトラヒドロ−10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(6,7,8,9−テトラヒドロ−10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
3−(6,7,8,9−テトラヒドロ−10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピルアミン;
メチル−[3−(6,7,8,9−テトラヒドロ−10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[2−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
【0043】
4−[2−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−モルホリン;
1−[2−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−ピペリジン;
1−[2−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−ピロリジン;
ジメチル−[2−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[1−メチル−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
11−ヒドロキシ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
11−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
11−(3−ジメチルアミノ−プロポキシ)−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
ジメチル−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメチル)アミン
である。
【0044】
一般に、式Iによって示されるベンゾナフトアズレンクラスの化合物、医薬上許容されるそれらの塩および溶媒和化合物は、2004年4月15日の書状によって補正された、その全体を参照により本明細書に組み込む、本発明者らの以前の国際公開WO03/084961において説明したプロセスによって調製することができる。
【0045】
本発明の化合物は、セロトニン、ノルエピネフリン、およびドーパミンなどの生体アミンの神経化学的平衡が乱されており、また、ある種の神経伝達物質の不平衡な(過多なまたは過少な)合成、ならびに貯蔵、放出、代謝、および/または再吸収における異常によって引き起こされる可能性がある疾患または障害を治療するのに特に効果的である。
【0046】
本発明の化合物が、セロトニン受容体、特に5−HT2Aおよび5−HT2C、ならびにσ1受容体に対して顕著な結合親和性を示し、高度な選択性を有することが判明している。
【0047】
本発明の一実施形態では、式Iで表される化合物またはその塩もしくは溶媒和化合物は、1μM未満のIC50値として示され、1μM未満のK値を有する濃度において、5−HT2Aおよび5−HT2Cセロトニン受容体に対して結合親和性を示す。
【0048】
本発明の別の実施形態では、式Iで表される化合物またはその塩もしくは溶媒和化合物は、約200nM未満のIC50値として示され、約100nM未満のKi値を有する濃度において、5−HT2Aセロトニン受容体に対して結合親和性を示す。
【0049】
本発明のさらに別の実施形態では、式Iで表される化合物またはその塩もしくは溶媒和化合物は、約200nM未満のIC50値として示され、約100nM未満のKi値を有する濃度において、5−HT2Cセロトニン受容体に対して結合親和性を示す。
【0050】
本発明の化合物はσ1受容体に対して顕著な結合親和性を示すことが判明している。
【0051】
本発明の一実施形態では、式Iで表される化合物またはその塩もしくは溶媒和化合物は、1μM未満のIC50値として示され、1μM未満のKi値を有する濃度において、σ1受容体に対して結合親和性を示す。
【0052】
本発明の別の実施形態では、式Iで表される化合物またはその塩もしくは溶媒和化合物は、約200nM未満のIC50値として示され、約100nM未満のKi値を有する濃度において、σ1受容体に対して結合親和性を示す。
【0053】
セロトニン受容体は、(直接的に、または他の何らかの神経伝達物質、例えば、ドーパミン、および/もしくは受容体の活性化に関与することによって間接的に)一連のCNS障害の病態生理学において非常に重要であるため、本発明の化合物は、生体アミンおよびそれらの受容体が重要な役割を果たしている疾患、損傷、および障害の治療および予防用の医薬処方の製造のために使用することができる。
【0054】
本発明の化合物の上記に説明した有利な生物学的諸特性を考慮すると、式Iで表される化合物の治療有効量の投与は、σ1受容体ならびに5−HT2Aおよび5−HT2Cセロトニン受容体に対する改善された選択性により、付随する副作用のより少ない、CNS疾患および障害の有効な治療方法になる。
【0055】
通常、本発明の化合物は、抗うつ薬、抗不安薬、抗精神病薬として、または偏頭痛を治療するための薬として使用される医薬処方の製造のために使用することができる。
【0056】
さらに、発明の化合物は、例えば、うつ病および中等度のうつ病、不安、双極性障害、睡眠障害、性障害、精神病、境界型精神病、統合失調症、偏頭痛、人格障害および強迫性障害、社会恐怖症またはパニック発作、小児における器質性精神障害、攻撃性、高齢者における記憶障害および人格障害、嗜癖、肥満、過食症および同様の障害、いびき、月経前困難など、中枢神経系における神経化学的平衡の異常の結果である疾患および障害の治療および予防用の医薬処方の製造のために使用することもできる。
【0057】
同様に、これらの化合物は、外傷、脳卒中、神経変性疾患、ならびに高血圧、血栓症、梗塞および同様の疾患など心血管の障害によって、また、胃腸管障害において引き起こされるCNS損傷の治療および/または予防に使用することもできる。
【0058】
本発明の活性物質および医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和化合物の有効用量は、一般式Iで表される化合物の有効性、CNSの疾患および障害の性質および重症度、ならびに、治療される患者の体重に応じて変わり、0.001〜10mg/kg体重となり得る。いずれの場合も、平均体重70kgの成人に対する単位用量は、0.07〜1000mgの一般式Iで表される化合物または医薬上許容されるその塩もしくは溶媒和化合物であると理解される。単位用量は、1日に1回または数回、例えば、1日に2、3、または4回、最も一般的には1日に1〜3回、投与してよい。
【0059】
本発明は、より詳細には、セロトニン、シグマ、アドレナリン、ドーパミン、もしくはムスカリンの受容体に結合し、かつ/または1種もしくは複数の生体アミン(セロトニン、ドーパミン、ノルエピネフリン)の再吸収の阻害物質として作用する、有効量の化合物に関する。
【0060】
「塩」という用語は、酸付加塩または遊離塩基の付加塩を含み得る。医薬上許容される酸付加塩を形成するのに使用できる酸の例としては、それだけには限らないが、硝酸、リン酸、硫酸、または臭化水素酸、ヨウ化水素酸、フッ化水素酸、亜リン酸など無毒性の無機酸から誘導される塩、ならびに、脂肪族のモノおよびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシルアルカン酸、アルカン二酸、芳香族酸、脂肪族および芳香族のスルホン酸、および酢酸、マレイン酸、コハク酸、またはクエン酸など無毒性の有機酸から誘導される塩が挙げられる。このような塩の非限定的な例としては、ナパジシル酸塩、ベシル酸塩、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、硝酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、プロピオン酸塩、カプリル酸塩、イソ酪酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、フタル酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩などが挙げられる。また、アルギン酸などのアミノ酸の塩、およびグルコン酸塩、ガラクツロン酸塩も企図される(例えば、Berge S.M.他「Pharmaceutical Salts,」J.of Pharma.Sci.,1977年;66:1を参照されたい)。
【0061】
前記塩基性化合物の酸付加塩は、従来の方法で遊離塩基型を十分な量の所望の酸と接触させて塩を生じさせることによって調製される。遊離塩基型は、従来の方法でその塩型を塩基と接触させ、遊離塩基を単離することによって、再生することができる。遊離塩基型は、極性溶媒における溶解性などいくつかの物理的諸特性が、それらの各自の塩型といくらか異なるが、他の点では、これらの塩は、本発明の目的のための各自の遊離塩基に等価である。
【0062】
医薬上許容される塩基付加塩は、アルカリおよびアルカリ土類金属または有機アミンなどの金属またはアミンとともに形成される。陽イオンとして使用される金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどである。適切なアミンの例は、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N−メチルグルカミン、およびプロカインである。
【0063】
前記酸性化合物の塩基付加塩は、従来の方法で遊離酸型を十分な量の所望の塩基と接触させて塩を生じさせることによって調製される。遊離酸型は、その塩型を酸と接触させ、遊離酸を単離することによって、再生することができる。
【0064】
本発明による、好ましい医薬上許容される塩は、臭化水素酸、塩酸、過塩素酸、硫酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、シトロン酸(citronic)、安息香酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、およびリン酸の塩に関する。式Iによって表される化合物またはその塩によって形成される、医薬上許容される溶媒和化合物は、水和物、エタノラート、および類似物(最も一般的には水和物)に関する。
【0065】
本発明の組成物に関して使用される「医薬上許容される」という語句は、哺乳動物(例えば、ヒト)に投与された場合に生理学的に容認され、通常は有害反応を生じないような組成物の分子単位および他の成分に関する。好ましくは、本明細書では、「医薬上許容される」という用語は、連邦または州政府の規制機関によって承認されていること、あるいは、米国薬局方、または哺乳動物、より具体的にはヒトで使用するために一般に認識されている他の薬局方に記載されていることを意味する。
【0066】
さらに、本発明は、有効かつ非毒性な用量の本発明の化合物、ならびに製薬上許容される担体または溶剤を含有する医薬処方にも関する。
【0067】
本発明の医薬組成物に使用される「担体」という用語は、活性化合物が一緒に投与される希釈剤、賦形剤、またはビヒクルを意味する。このような薬剤用担体は、ピーナッツ油、ダイズ油、鉱物油、ゴマ油など石油、動物、植物、または合成由来のものを含めて、水、生理食塩水溶液、ブドウ糖水溶液、グリセロール水溶液、油など無菌の液体でよい。しかし、メマンチンは高溶解性であるため、水溶液が好ましい。適切な薬剤用担体は、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」第18版において説明されている。即時放出、すなわち、有効成分の大半またはすべてを60分以下など短期間の間に放出するのに適した担体が、本発明にとって特に好ましく、薬物の迅速な吸収を可能にする。
【0068】
「製薬上許容される賦形剤」とは、一般に安全かつ非毒性であり、生物学的にも他の点でも有害ではない、医薬組成物を調製するのに有用な賦形剤を意味し、獣医学的使用ならびにヒト用の医薬用途に許容されている賦形剤を含む。本出願で使用する「製薬上許容される賦形剤」は、1種および複数のこのような賦形剤の双方を含む。
【0069】
医薬処方は、有効成分としての特定の物質の治療有効量を、所望の投与経路に応じて異なる形態をとってよい製薬上許容される担体とともに混合することによって得られる。これらの医薬処方は、特に、経口、舌下、直腸、経皮、または非経口の投与経路に関する。
【0070】
医薬処方は、従来の医薬助剤および製造経路を用いて製造することができる。経口投与用の形態は、シロップ、カプセル剤、錠剤、ならびに通常の固形担体がラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、マンニトール、および類似物質などの不活性物質である類似の形態でよく、通常の経口用液状助剤には、エタノール、グリセロール、水、および類似物質が含まれる。すべての助剤は、所望により、従来の方法によって、崩壊剤、希釈剤、造粒剤、湿潤剤、結合剤、および類似物質と混合してもよい。非経口用の形態は、水または他の何らかの無菌担体を用いて製造することができる。一般的な液状担体のうちのいくつか、例えば、水、グリコール、油、アルコール、および類似物質が、経口製剤の製造用に使用される場合、製剤は、シロップ、乳剤、軟ゼラチンカプセル剤、もしくは無菌注射液剤、例えば、アンプルの形態、または非水性懸濁液剤の形態でよい。デンプン、糖、カオリン、湿潤剤、結合剤、崩壊剤、および類似物質などの固形担体が、経口製剤の製造用に使用される場合、製剤は、散剤、カプセル剤、錠剤、硬ゼラチンカプセル剤、またはカプセルに入れて投与できる顆粒剤の形態でよく、固形担体の量は、変動してよい(最も一般的には1mg〜1g)。使用が簡単なため、錠剤およびカプセル剤は、固形担体が使用される最も好都合な経口製剤である。非経口製剤の場合、担体は、大部分は滅菌水であるが、溶解性を改善するために、他の成分が同様に含まれてもよい。注射液剤を製造するために、塩化ナトリウム溶液、グルコース溶液、またはそれらの混合溶液が使用される。注射液剤は、有効成分を放出遅延させるための成分を含有してもよい。この目的に使用できる好都合な油は、例えば、ラッカセイ油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、ダイズ油、長鎖脂肪酸の合成グリセロールエステル、または前記油のうちのいくつかの混合物である。注射用懸濁剤は、使用する適切な液状担体が懸濁化剤と混合されるようにして製造することができる。経皮投与に好都合な製剤においては、担体として、活性物質の浸透を改善する物質、および/または適切な湿潤剤が理解されており、これらは、皮膚に有害な影響を引き起こさない、任意の起源の適切な添加剤と混合してよい。前記添加剤は、皮膚投与を容易にすることができ、かつ/または、様々な方法、例えば、経皮的に、スポットオンで、または軟膏剤の形態で適用できる所望の製剤の製造に使用することができる。
【0071】
本発明の化合物の溶解性および/または安定性を改善するために、薬理学的製剤において、α−、β−、またはγ−シクロデキストリンまたはその誘導体、特にヒドロキシアルキル置換されたシクロデキストリン、すなわち2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンを使用してもよい。例えばアルコールなどの補助溶剤もまた、様々な医薬処方において本発明の化合物の溶解性および/または安定性を改善することができる。
【0072】
ある状態、障害、または病態の「治療すること」または「治療」とは、以下のことを含む。
すなわち、(1)その状態、障害、または病態に苦しんでいる、または罹患しやすいが、その状態、障害、または病態の臨床症状または準臨床的症状をまだ経験しておらず示してもいない哺乳動物において生じるその状態、障害、または病態の臨床症状の出現を防ぐことまたは遅らせること、
(2)その状態、障害、または病態を抑制すること、すなわち、その疾患、または少なくとも1種のその臨床症状もしくは準臨床的症状の発現を阻止することまたは軽減すること、あるいは、
(3)その疾患を緩和すること、すなわち、その状態、障害、もしくは病態、またはその臨床症状もしくは準臨床的症状のうちの少なくとも1つを軽減すること。
【0073】
治療対象の被験者に対する恩典は、統計学的に有意であり、または、患者もしくは医師には少なくとも認知できる。
【0074】
「治療有効量」とは、ある状態、障害、または病態を治療するために哺乳動物に投与されたときに、そのような治療を実施するのに十分である化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、疾患およびその重症度、ならびに、治療対象の哺乳動物の年齢、体重、身体状態、および応答性に応じて変わると考えられる。
【0075】
用法用量の計画は、当業者によって理解されているように、年齢、性別、身体状態、さらに、本発明の化合物を適用することによって実現される恩典、ならびに治療対象の患者または哺乳動物被験体における副作用および医師の判断に応じて調整することができる。
【0076】
本明細書で使用する、それを必要とする宿主または被験体という用語は、哺乳動物、好ましくはヒトを指す。
【0077】
神経化学的定常状態に対する本発明の化合物の効果を、5−HT2A(Bonhaus D.W.Br.J.Pharmacol.1995年、115:622頁;Saucier C.J.Neurochem.1997年、68:1998頁)および5−HT2C受容体(Wolf W.A.J.Neurochem.1997年、69:1449頁)に対する、放射性核種で標識した放射性リガンド結合アッセイや、σ1受容体に対するin vitro結合アッセイ(Thomson W.およびDonn R.Arthritis Res.2002年、4:302〜306頁)などのin vitro調査によって、また、尾懸垂試験(Vogel H.G.およびVogel W.H. Drug Discovery and Evaluation Pharmacological Assays,Springer 1997年、304頁)、マウスでのアンフェタミン誘導による自発運動の亢進(hyperlocomotion)(Millan M.J.他、1998年 J Pharmacol.Exp.Ther.287:167〜186頁)、マウスでの強制水泳試験(Porsolt R.D.他、Arch.Int.Pharmacodyn.1977年、229:327〜336頁)、ラットに対するメタクロロフェニルピペラジン(m−CPP)試験(Drug Dev.Res.1989年、18:119〜144頁)、ならびにラットでのアポモルヒネ、トリプタミン、およびノルエピネフリン(ATN)試験(Arch.Int.Pharmacodyn.1977年、227:238〜253頁)におけるin vivo調査によって、測定した。
【0078】
(5−HT2Aおよび5−HT2C受容体に対する結合親和性を測定するためのin vitroの方法)
ある受容体に対する結合親和性が大きい低濃度の放射性リガンドを、ある受容体に富む組織試料(1〜5mgの組織)とともに、緩衝媒体(0.2〜5mL)中でインキュベートした。組換型ヒトHT2AおよびHT2C受容体を、CHO−K1またはCOS−7細胞で発現させ、それらも競合的結合用に使用した。インキュベーションの間に、放射性リガンドは受容体に結合した。結合平衡に達したとき、放射性リガンドが結合している受容体を、前記リガンドが結合していないものから分離し、受容体/放射性リガンド複合体の放射能を測定した。試験化合物と受容体との相互作用を、競合的結合実験において試験した。様々な濃度の試験化合物を、対応する受容体に富む調製された組織および放射性リガンドを含有する培養混合物に加えた。放射性リガンドの結合は、試験化合物によって、ある化合物の受容体に対する親和性およびその化合物の濃度に比例的に阻害された。
【0079】
5−HT2A受容体への結合を測定するのに使用される放射性リガンドは[H]−ケタンセリンであり、使用組織は、ヒトの皮質またはCHO−K1細胞で発現させた組換型5−HT2A受容体であった。5−HT2A受容体への結合を測定するのに使用される放射性リガンドは[H]−ケタンセリンであり、使用組織は、ヒトの皮質、またはCHO−K1細胞で発現させた組換型5−HT2A受容体であった。5−HT2C受容体への結合を測定するのに使用される放射性リガンドは[H]−メスレルギンであり、使用組織は、脈絡叢、またはCHO−K1細胞で発現させた組換型5−HT2C受容体であった。
【0080】
1μM未満の濃度のIC50およびKを示す化合物を活性とみなした。化合物ジメチル−[3−(1,8−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミンおよびジメチル−[3−(3,10−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミンは、200nM未満のIC50値および100nM未満のKi値として表され、5−HT2Aおよび5−HT2Cセロトニン受容体に対する結合親和性を示した。
【0081】
本発明の他の化合物に対しても同様の結果が観察されることが予想される。
【0082】
(σ1受容体に対する結合親和性を測定するためのin vitroの方法)
ジャーカット細胞を、10%ウシ胎児血清、100U/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを添加した培地PRMI中で増殖させ、採取し、その懸濁液をホモジナイズした。遠心分離後、膜画分を取り出し、リン酸緩衝液(pH=7.5)中に再懸濁させ、使用するまで少量ずつ液体窒素中で保存した。
【0083】
以前に説明されているようにして(Ramamoorthy他、1995年)、ジャーカット細胞膜に対する様々な放射性標識リガンド(ligan)の結合を測定した。ジャーカット細胞系のσ結合部位を特徴づけるために、[H]ハロペリドールをリガンドとして最初に使用した。ハロペリドールは、1型および2型のσ受容体の双方に対して高親和性のリガンドである。結合アッセイは、ジャーカット細胞膜を用いて行い、[H]ハロペリドール(10nM)単独の存在下で全結合量を測定し、[H]ハロペリドール(10nM)および非標識ハロペリドール(10μM)の存在下で非特異的結合を測定した。
【0084】
室温で3時間、リン酸緩衝液中でリガンドと一緒に膜をインキュベートした。フィルターを洗浄した後、液体シンチレーション分光計によって、フィルターに結合している放射能を測定した。
【0085】
1μM未満の濃度のIC50およびKを示す化合物を活性とみなした。
【0086】
化合物ジメチル−[2−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミンは、200nM未満のIC50値および100nM未満のKi値として表され、σ1受容体に対する結合親和性を示した。
【0087】
本発明の他の化合物に対しても同様の結果が観察されることが予想される。
【0088】
(マウスにおける強制水泳試験)
体重20〜25gの雄のCD1マウスを実験に使用した。有効性を測定する試験の30分前に、胃管栄養法によって経口的に、試験化合物、イミプラミン(ポジティブコントロール)、またはビヒクル(ネガティブコントロール)で、10匹の動物からなる群を処置した。実験の当日に、22℃に温めた水を高さ10cmまで入れたガラスシリンダ(高さ18.2cm、直径13.3cm)中にそれらの動物を入れた。動物のもがきが終わり、浮き始める状態として定義される不動は、運動が、動物が水面の上に頭を保持するのに不可欠な運動に低減されており、2分後に記録され始め、次いで、4分間観察された。
【0089】
受動的な行動を示す動物の比率を算出し、担体で処置した対照群と比較した。
【0090】
10mg/kgの用量で、対照群より30%以上多く動物の不動を低減した化合物を活性とみなした。
【0091】
本発明の他の化合物に対しても同様の結果が観察されることが予想される。
【0092】
(マウスにおける尾懸垂試験)
体重20〜25gの雄のBalb/cJマウスを実験に使用した。潜在的な抗うつ薬活性を測定する試験の30分前に、腹腔内注射、皮下注射、または胃管栄養法によって経口的に、試験化合物、イミプラミン(ポジティブコントロール)、またはビヒクル(ネガティブコントロール)で、9匹の動物からなる群を処置した。マウスを約90cmの高さで尾部から吊り下げ、5分間観察した。観察期間中、1分間、完全に動かずにぶら下がっているマウスを抑うつ性と定義した。抗うつ作用を有する物質で処置した動物では、不動期間は短縮された。
【0093】
受動的な行動を示す動物の比率を算出し、ビヒクルで処置した対照群と比較した。フィッシャーの正確確率検定を用いて、結果の有意性を解析した。
【0094】
10mg/kgの用量で、対照群より40%以上多く動物の不動を低減した化合物を活性とみなした。
【0095】
1μg/kgおよび10μg/kgの試験用量の化合物ジメチル−[2−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミンは、45〜90%の範囲の不動の低減を示した。
【0096】
本発明の他の化合物に対しても同様の結果が観察されることが予想される。
【0097】
(マウスにおけるアンフェタミン誘導による自発運動の亢進)
自発運動の亢進を誘導する30分前に、ビヒクル(生理食塩水)または試験化合物で、体重30〜35gの雄のSwiss OFAマウスを処置した。硫酸デキサンフェタミンを2mg/kgの用量で腹腔内に投与した。30分後、自発運動を記録するために、光強度の低い(100ルクス)部屋の中の80×80cmの木製の箱に動物を入れた。ビデオ画像解析装置を用いて、30分間、自発運動を測定した。運動の持続期間の合計、運動の発生率、および総移動距離を測定した。ハロペリドールを0.25mg/kgの用量(0.5%メチルセルロース中で調製)で試験し、参照物質とした。
【0098】
10mg/kgの用量で、ビヒクルで処置した対照群と比べて30%以上、実験動物におけるアンフェタミン誘導による自発運動の亢進を低減した場合、化合物を活性とみなした。
【0099】
本発明の他の化合物に対しても同様の結果が観察されることが予想される。
【0100】
(ラットに対するメタクロロフェニルピペラジン(m−CPP)試験)
試験の1時間前に、被験物質をラットに経口投与し、試験の15分前に、m−CPPを1mg/kgの用量で静脈内投与した。実験の初めに、処置動物をラットに対するオープンフィルード試験に供した(Drug Dev.Res.1989年、18,119〜144頁):装置は、1つの壁に直径10cmの穴があり、その穴を通じて、25×21×21cmの寸法を有する光照射されていない区画に連結されている、80×65×35cmの寸法を有する開放型の箱からなり、この穴は、66cmの距離から、光源(IR光源または「Kleverlux(登録商標)」;12V/20W)によって照射された。被験物質の投与の1時間後に、照射されている出口に対して動物の頭部が背を向けるようにして、動物を暗い(照射されていない)区画に入れ、暗室から明室への動物の移動を10分間測定した。
【0101】
m−CPPによって誘導される効果が40%以上低減される用量を、物質の活性な用量として定義した。
【0102】
本発明の他の化合物に対しても同様の結果が観察されることが予想される。
【0103】
(ラットにおけるアポモルヒネ、トリプタミン、ノルエピネフリン(ATN)試験)
実験開始時(t=0)に、1.25mg/kgのアポモルヒネ、次いで、40mg/kgのトリプタミン(t=60分)、および1.25mg/kgのノルエピネフリン(t=90分)を動物に静脈内注射した。
【0104】
異常な興奮状態および正常行動を60分間(アポモルヒネ試験)、次いで、トリプタミン試験における、後足(下肢)の両側性(2つの側面)の間代性痙攣および体の全身の振戦(観察期間5分)、ならびにノルエピネフリン試験における、注射後120分間の死亡率を観察した。
【0105】
受動的な行動を示す動物の比率を算出し、担体で処置した対照群と比較した。
【0106】
10mg/kgの用量で、対照群より40%より多く観察される効果(移動性)の持続期間を低減した化合物を、in vivo試験において活性であるとみなした。
【0107】
本発明の他の化合物に対しても同様の結果が観察されることが予想される。
【0108】
上記のアッセイで試験した本発明の化合物のいくつかは、前記試験のうちの少なくとも2種で作用を示すが、これらの結果は、それらの化合物の生物学的作用の実例を示すものにすぎず、本発明を少しも限定しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I
【化1】


[式中、
Xは、CH、またはO、S、S(=O)、S(=O)、およびNR(ここで、Rは、水素、またはC〜Cアルキル、C〜Cアルカノイル、C〜Cアルキルオキシカルボニル、C〜C10アリールアルキルオキシカルボニル、C〜C10アロイル、C〜C10アリールアルキル、C〜Cアルキルシリル、C〜C10アルキルシリルアルキルオキシアルキルからなる群から選択される置換基である)からなる群から選択されるヘテロ原子を意味し、
YおよびZは、互いに独立して、水素、ハロゲン、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルキニル、トリフルオロメチル、ハロC〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、トリフルオロメトキシ、C〜Cアルカノイル、アミノ、アミノC〜Cアルキル、C〜Cアルキルアミノ、N−(C〜Cアルキル)アミノ、N,N−ジ(C〜Cアルキル)アミノ、チオール、C〜Cアルキルチオ、C〜Cアルキルスルホニル、C〜Cアルキルスルフィニル、カルボキシ、C〜Cアルコキシカルボニル、ニトロ、
【化2】


(ここで、GまたはGは、構造体
【化3】

の意義を有する)からなる群から選択される、利用可能な炭素原子に連結された、1つまたは複数の同一または異なる置換基を意味し、
は、CHOH、置換されていてもよいC〜CアルキルC〜Cアルキルオキシカルボニル、または一般式II
【化4】

II
(式中、
およびRは、同時にまたは互いに独立に、水素、C〜Cアルキル、アリールを表し、あるいは、Nと一緒になって、置換されていてもよいヘテロ環またはヘテロアリールの意義を有し、
nは、整数0〜3を表し、
mは、整数1〜3を表し、
およびQは、互いに独立に、酸素、硫黄、または基
【化5】

(ここで、置換基yおよびyは、互いに独立に、水素、ハロゲン、置換されていてもよいC〜Cアルキルもしくはアリール、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、C〜Cアルカノイル、チオール、C〜Cアルキルチオ、C〜Cアルキルスルホニル、C〜Cアルキルスルフィニル、ニトロを意味し、あるいは、一緒になってカルボニルまたはイミノ基を形成する)の意義を有する)
で表される置換基を意味し、
上記したすべての置換基について、置換されていてもよいアルキル基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、チオール、C〜Cアルキルチオ、アミノ、N−(C〜C)アルキルアミノ、N,N−ジ(C〜Cアルキル)アミノ、スルホニル、C〜Cアルキルスルホニル、スルフィニル、C〜Cアルキルスルフィニルである1つ、2つ、または3つ以上の置換基を有するアルキル基であり、アリールは、芳香族環、ならびに少なくとも6個の炭素原子を有する1つの環、または全体として10個の炭素原子を有し、炭素原子間に交互の二重結合を有する2つの環を含む縮合された芳香族環を意味し、ヘテロアリールは、4〜12個の炭素原子を有し、それらのうちの少なくとも1つが、O、SまたはNなどのヘテロ原子である、単環式または二環式の環の芳香族または部分的に芳香族の基である基であり、利用可能な窒素原子または炭素原子は、直接結合によって、またはC〜Cアルキレン基を介して、分子の残りの部分へ基が結合する部位であり、複素環は、O、S、またはNなど少なくとも1つのヘテロ原子を含む、5員または6員の、完全飽和または部分不飽和な複素環系の基であり、利用可能な窒素原子または炭素原子は、直接結合によって、またはC〜Cアルキレン基を介して、分子の残りの部分へ基が結合する部位であり、置換されていてもよいアリール、ヘテロアリール、または複素環は、ハロゲン、C〜Cアルキル、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、チオール、C〜Cアルキルチオ、アミノ、N−(C〜C)アルキルアミノ、N,N−ジ(C〜Cアルキル)−アミノ、スルホニル、C〜Cアルキルスルホニル、スルフィニル、C〜Cアルキルスルフィニルである1つまたは2つの置換基で置換された、アリール、ヘテロアリール、または複素環の基である]
で示される化合物、
ならびに、それらの医薬上許容される塩および溶媒和化合物の、生体アミンまたは他の神経伝達物質の神経化学的平衡の異常によって引き起こされる中枢神経系の疾患、損傷、および障害の治療および予防用の医薬処方を製造するための使用。
【請求項2】
選択される生体アミンが、セロトニン、ノルエピネフリン、およびドーパミンである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
神経伝達物質がグルタマートである、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
一般式Iで表される化合物が、生体アミンまたは神経伝達物質の合成、貯蔵、放出、代謝、および/または再吸収を調節すること、ならびにそれらの受容体に結合することによって、神経化学的平衡に作用する、請求項1、2、または3に記載の使用。
【請求項5】
一般式Iで表される化合物が、1種または複数の生体アミンの受容体に対する結合親和性を示す、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
一般式Iで表される化合物が、セロトニンの5−HT2Aおよび5−HT2C受容体に対して有意な結合親和性を示す、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
一般式Iで表される化合物が、IC50<1μMの濃度で、選択されたセロトニン受容体に対する結合親和性を示す、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
一般式Iで表される化合物が、IC50<1μMの濃度で、中枢神経伝達物質系を調節することによって、σ1受容体リガンドとして作用する、請求項1に記載の使用。
【請求項9】
一般式Iで表される化合物が、σ1受容体、ならびに5−HT2Aおよび5−HT2Cから選択される少なくとも1つのセロトニン受容体に対して二元的結合親和性を示す、請求項1、6、または8に記載の使用。
【請求項10】
中枢神経系の疾患および障害が、不安、うつ病および中等度のうつ病、双極性障害、睡眠障害、性障害、精神病、境界型精神病、統合失調症、偏頭痛、人格障害および強迫性障害、社会恐怖症またはパニック発作、小児における器質性精神障害、攻撃性、高齢者における記憶障害および人格障害、嗜癖、肥満、過食症および同様の障害、いびき、月経前困難からなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
中枢神経系の損傷が、外傷、脳卒中、神経変性疾患、ならびに高血圧、血栓症、梗塞など心血管の障害によって、また、胃腸管障害によって引き起こされる、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
Xが、O、S、またはNR(ここで、Rは、水素、またはC〜Cアルキル、C〜Cアルカノイル、C〜Cアルコキシカルボニル、C〜C10アロイル、およびC〜C10アリールアルキルからなる群から選択される置換基である)を表す、請求項1に記載の使用。
【請求項13】
YおよびZが、独立して相互に、水素、フッ素、塩素、臭素、C〜Cアルキル、ハロC〜Cアルキル、ヒドロキシ、C〜Cアルコキシ、トリフルオロメトキシ、C〜Cアルカノイル、アミノ、アミノC〜Cアルキル、N−(C〜Cアルキル)アミノ、N,N−ジ(C〜Cアルキル)アミノ、チオール、C〜Cアルキルチオ、シアノ、およびニトロからなる群から選択される、利用可能な任意の炭素原子に連結された、1つまたは複数の同一または異なる置換基を意味する、請求項1または12に記載の使用。
【請求項14】
が、CHOH、置換されていてもよいC〜CアルキルC〜Cアルキルオキシカルボニル、または一般式II:
【化6】

II
[式中、
およびRは、同時にまたは互いに独立に、水素、C〜Cアルキル、アリール(上記と同意義である)を表し、あるいは、Nと一緒になって、モルホリン−4−イル、ピペリジン−1−イル、ピロリジン−1−イル、イミダゾール−1−イル、およびピペラジン−1−イルからなる群から選択されるヘテロ環またはヘテロアリールの意義を有し、
mは、整数1〜3を表し、
nは、整数0〜3を表し、
およびQは、互いに独立に、酸素またはCH基を意味する]
で表される置換基の意義を有する、請求項1、12、または13に記載の使用。
【請求項15】
一般式Iで表される化合物、医薬上許容されるその塩および溶媒和化合物が、
8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
1,8−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
3,10−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
11−メトキシ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
6,7,8,9−テトラヒドロ−10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
(8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イル)−メタノール;
(1,8−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イル)−メタノール;
(3,10−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イル)−メタノール;
(10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イル)−メタノール;
(11−メトキシ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イル)−メタノール;
(6,7,8,9−テトラヒドロ−10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イル)−メタノール;
(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イル)−メタノール;
ジメチル−[2−(8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
3−(8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピルアミン;
ジメチル−[3−(1,8−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[2−(3,10−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(3,10−ジチア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[2−(10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[3−(11−メトキシ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[2−(6,7,8,9−テトラヒドロ−10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(6,7,8,9−テトラヒドロ−10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
3−(6,7,8,9−テトラヒドロ−10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピルアミン;
メチル−[3−(6,7,8,9−テトラヒドロ−10−オキサ−3−チア−ベンゾ[e]ナフト[1,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[2−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
ジメチル−[3−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
4−[2−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−モルホリン;
1−[2−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−ピペリジン;
1−[2−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−ピロリジン;
ジメチル−[2−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−プロピル]−アミン;
ジメチル−[1−メチル−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメトキシ)−エチル]−アミン;
11−ヒドロキシ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
11−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;
11−(3−ジメチルアミノ−プロポキシ)−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−カルボン酸エチルエステル;および
ジメチル−(10,11,12,13−テトラヒドロ−8−オキサ−1−チア−ベンゾ[e]ナフト[3,2−h]アズレン−2−イルメチル)アミン
からなる群から選択される、請求項1に記載の使用。

【公表番号】特表2007−519698(P2007−519698A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550310(P2006−550310)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/HR2005/000008
【国際公開番号】WO2005/072728
【国際公開日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(506261316)グラクソスミスクライン・イストラジヴァッキ・センタル・ザグレブ・ドルズバ・ゼー・オメイェノ・オドゴヴォルノスティオ (25)
【氏名又は名称原語表記】GLAXOSMITHKLINE ISTRAZIVACKI CENTAR ZAGREB D.O.O.
【Fターム(参考)】