中枢神経系への対流増進送達のためのリポソーム組成物
対流増進送達(CED)は、治療薬剤の中枢神経系への直接注入を送達し、したがって、血液−血液関門を迂回する方法として使用される。少なくとも1種の飽和中性リン脂質および少なくとも1種の飽和陰イオンリン脂質と、中に被包される治療薬剤または診断薬剤とを含む、非ペグ化リポソーム組成物は、CEDによって局所的に送達される高ピークの薬物濃度と関連する毒性を克服し、かつ持続的薬物放出を向上させるように組織分散量を増加させるために使用される。一実施形態において、本リポソーム組成物は、7:2:1のDSPC:DSPG:CHOLのモル比を含み、本治療薬剤または診断薬剤は、トポテカン、コノトキシン、ガドジアミド、またはローダミンから選択され、てんかんの治療において使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対流増進送達によって送達可能であり、中枢神経系疾患の治療に有用なリポソーム製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
脳腫瘍のある患者の場合、治療薬の全身送達は、通常、全身性副作用と関連するが、中枢神経系(CNS)では低い治療濃度が得られるに過ぎず、したがって、全身治療の有効性が限定される。認められる有効性の欠如は、主に、治療薬剤が血液脳関門を超えて浸透できないことに起因する。血液脳関門は、腫瘍の中心では破壊されており、全身送達される化学療法薬の腫瘍のほぼ不活性な中心への到達を可能にし得るが、血液脳関門は、通常、薬剤が最も必要とされる腫瘍境界では無傷なままである。
【0003】
血液脳関門を回避する1種のアプローチは、CNSへの治療薬剤の直接注入である。しかしながら、脳に直接注入される薬剤は、拡散によって十分に分散しない。低分子薬物であっても注入部位から数ミリメートル移動させるために、高い濃度勾配が必要とされ、そのような濃度は、神経毒性である場合が多い。この問題を克服するために開発中の戦略は、対流増進送達(CED)と呼ばれる直接脳内注入アプローチである。CEDでは、陽圧を用いて、治療用巨大分子を含む薬剤を細胞外空間に分散させるための局所圧力勾配を生成する(Bobo,R.H.,et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:2076−80、Chen,M.Y.,et al.(1999)J.Neurosurg.90:315 20)。CEDは、所定の標的組織内で再現性のある分散を提供し、分散容積(Vd)全体で均一な薬物濃度を得ることができる(Croteau et al.,2005、Lonser et al.,2002)。
【0004】
CEDによって局所的に送達される化学療法薬剤は、好ましい治療結果をもたらした(Bruce et al.,2000、Degen et al.,2003、Kaiser et al.2000)。しかしながら、神経系に直接送達される大部分の細胞毒性薬は、健康な細胞を損傷する能力を有する。したがって、脳腫瘍へのCED投与に適した候補は、健康な神経細胞と比較して、腫瘍細胞に対して可能な限り最大の治療指数を有していなければならない。リポソーム薬物送達は、顕著な毒性と関連することが多い高い薬物濃度を回避できる可能性を提供し、CEDを介して付与されるリポソーム被包されたカンプトセシン薬物の臨床前試験は、薬物の持続放出においていくらかの改善を示した方で(Moog et al.,2002、Saito et al.,2006、Nobel et al.,2006)、ペグ化リポソームの使用が、組織結合部位の相互作用をマスクし、それによって、組織分散容積を増加させるために必須であると見なされた(Saito et al.,2006)。
【0005】
リポソーム/組織相互作用の克服におけるペグ化の成功にもかかわらず、最近では、ペグ化リポソームが、望ましくなく、かつ生命にかかわる可能性のある免疫応答を生成し得ることが示された(Szebeni et al.(2007)J.Liposome Res.17:107−117、lshida and Kiwada(2008)Int J.Pharm.354−56−62 Epub Nov 9 2007)。ペグ化リポソームは、同一対象に2回投与された場合、血中クリアランスを加速させることに加えて、心肺障害の症状(例えば、呼吸困難、多呼吸、頻脈、胸痛、高血圧、および低血圧)を含む、非IgE媒介性の過敏反応を引き起こす可能性がある(Ishida and Kiwada(2008)、上記、Moghimi et al.(2006)FASEB J.20 2591−3 Epub Oct 25,2006)。
【0006】
したがって、組織分散容積を増加させるが、ペグ化に伴う問題の免疫原性を回避する、対流増進送達のための改良されたリポソーム薬物製剤が必要とされる。
【発明の概要】
【0007】
驚くべきことに、本発明者は、本明細書で記載および特許請求されるように、ペグ化の代わりに陰イオン脂質成分が製剤に用いられる場合、リポソームが中枢神経系の組織内で極めて対流的となり得ることを発見した。さらに、主題の製剤は、当該技術分野において用いられるペグ化製剤と比較可能な薬物動態プロファイルを呈する一方で、ペグ化に伴う問題の免疫原性を回避する。したがって、本明細書では、陰イオンリポソーム製剤の対流増進送達を介して、中枢神経系(CNS)、例えば、限局性CNS腫瘍の組織を分離するための改良された組成物および治療薬を投与する方法が提供される。
【0008】
一態様において、本明細書では、CNS障害、例えば、CNSにおける特定のニューロン集団の死滅および/または機能不全に伴う障害を治療するための方法が説明される。該方法は、CNS障害のある患者に対して、治療上有効量の薬学的組成物を投与することを含み、該薬学的組成物は、対流増進送達によって特定のニューロン集団に対して局所的に送達され、薬学的組成物は、中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和脂質の混合物を含む、非ペグ化リポソームに被包された少なくとも1種の治療薬剤を含み、薬学的組成物の対流増進送達は、CNS障害のある患者を治療する。
【0009】
主題の発明において有利な用途が認められる治療薬剤には、例えば、抗腫瘍薬、放射性ヨウ化化合物、毒素(タンパク質毒素を含む)、細胞増殖抑制薬および細胞溶解薬物を含む細胞毒性薬、遺伝子およびウイルスベクター、ワクチン、合成ベクター、成長因子、神経栄養因子、抗ウイルス薬、抗生物質、神経伝達物質、サイトカイン、酵素、および特定部位の標的病変に対する薬剤が挙げられる。
【0010】
本明細書で提供される組成物および方法によって治療できるCNS障害には、例えば、癌、感染症、頭部外傷、脊髄損傷、多発性硬化症、レヴィー小体認知症、ALS、リソソーム蓄積障害、精神疾患、神経変性障害、脳卒中、てんかん、および他の急性および慢性CNS障害が挙げられる。
【0011】
一実施形態において、本明細書では、CNS腫瘍の成長を阻害する、CNS腫瘍を減少させる、1つ以上のCNS腫瘍細胞を死滅させる、および/またはCNS腫瘍のある患者を治療するための方法が提供される。本方法は、治療上有効量の薬学的組成物をCNS腫瘍のある患者に投与することを含み、本薬学的組成物は、対流増進送達によって、CNS腫瘍に対して局所的に送達され、本薬学的組成物は、中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和脂質の混合物を含む、非ペグ化リポソームに被包された少なくとも1種の細胞毒性薬を含み、本薬学的組成物の対流増進送達は、CNS腫瘍の成長を阻害し、CNS腫瘍を減少させ、CNS腫瘍細胞のうちの1つ以上を死滅させ、および/またはCNS腫瘍のある患者を治療する。
【0012】
別の実施形態において、本明細書では、てんかんのある患者において、発作の回数または期間を阻止または減少させるための方法が提供される。本方法は、治療上有効量の薬学的組成物を、てんかんのある患者に投与することを含み、本薬学的組成物は、異常または過剰な過同期性放電を呈しているCNSニューロンの集合体に対して、対流増進送達によって局所的に送達され、薬学的組成物は、中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和脂質の混合物を含む、非ペグ化リポソームに被包された少なくとも1種の治療薬剤を含み、薬学的組成物の対流増進送達は、てんかんのある患者において、発作の回数または期間を阻止または減少させる。一実施形態において、治療薬剤は毒素、例えば、ペプチド毒素である。一実施形態において、ペプチド毒素は、ω−コノトキシン、例えば、ω−コノトキシンMVIIAまたはω−コノトキシン、GVIAである。別の実施形態において、毒素はボツリヌス毒素、例えば、ボツリヌス毒素血清型A(BOTOX(登録商標)またはDYSPORT(登録商標)等)、ボツリヌス毒素血清型B(MYOBLOC(登録商標)等)である。別の実施形態において、毒素はμ−コノトキシンまたはα−コナントキンペプチドである。
【0013】
一実施形態において、薬学的組成物は、類似の非ペグ化陰イオンリポソームに被包された少なくとも1種の診断薬をさらに含み(本明細書では「トレース剤」または「トレーサ」と称される場合がある)、CED中およびCED後の治療薬剤の分散の可視化を可能にする。好適な実施形態において、治療薬剤を被包している非ペグ化リポソームは、治療薬剤を被包している非ペグ化リポソームと同一の脂質で構成される。したがって、一実施形態において、本明細書に記載される方法は、診断薬を検出するステップをさらに含む。
【0014】
本明細書に記載されるように、非ペグ化リポソームは、治療薬を含有し得る。一実施形態において、治療薬は、不溶性の治療薬である。別の実施形態において、治療薬は、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、カンプトテシンおよびその誘導体)であり、トポイソメラーゼI/II阻害剤が挙げられるが、これに限定されない。例えば、一実施形態において、治療薬は、9−アミノカンプトテシン、7−エチルカンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、9−アミノ−10,11−メチレンジオキシカンプトテシン9−クロロ−10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、7−(4−メチルピペラジノメトリレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−メチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、および7−(2−(N−イソプロピルアミノ)エチル)−(20S)−カンプトテシンから成る群から選択される、カンプトテシン誘導体である。別の実施形態において、カンプトテシン誘導体は、イリノテカン、トポテカン、(7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−メチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、または7−(2−(N−イソプロピルアミノ)エチル)−(20S)−カンプトテシンから成る群から選択される。別の実施形態において、カンプトテシンは、トポテカンである。
【0015】
別の実施形態において、トポイソメラーゼ阻害剤は、トポイソメラーゼI/II阻害剤、例えば、6−[[2−(ジメチルアミノ)−エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン二塩酸塩、アゾトキシン、または3−メトキシ−11H−ピリド[3′,4′−4,5]ピロロ[3,2−c]キノリン−1,4−ジオンである。
【0016】
別の実施形態において、治療薬は毒素、例えば、タンパク質毒素であり、例えば、ω−コノトキシン(例えば、ω−コノトキシンMVIIAまたはω−コノトキシン、GVIA)、ボツリヌス毒素(例えば、ボツリヌス毒素血清型A(BOTOX(登録商標)またはDYSPORT(登録商標)等)、ボツリヌス毒素血清型B(MYOBLOC(登録商標)等))、μ−コノトキシン、α−コナントキンペプチド等である。
【0017】
一実施形態において、初期薬物濃度は、少なくとも約100μg/mL、好ましくは、少なくとも約200μg/mL、およびより好ましくは、少なくとも約300μg/mLである。別の実施形態において、初期薬物濃度は、約2mg/mL〜約5mg/mLである。一実施形態において、治療薬および/または診断薬対脂質の比は、約0.1〜約0.5である。別の実施形態において、治療薬および/または診断薬対脂質の比は、約0.1である。別の実施形態において、治療薬および/または診断薬対脂質の比は、約0.3である。別の実施形態において、治療薬および/または診断薬対脂質の比は、約0.5である。
【0018】
一態様において、非ペグ化リポソームは、診断薬を含有する。一実施形態において、診断薬は、MRI磁石である。別の実施形態において、診断薬は、ガドリニウムキレートである。別の実施形態において、診断薬は、ガドジアミドおよびローダミンから成る群から選択される。別の実施形態において、診断薬はガドジアミドである。
【0019】
本明細書に記載される方法は、少なくとも1種の中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和リン脂質の混合物で構成される非ペグ化リポソームに被包された少なくとも1種の治療薬剤および/または少なくとも1種の診断薬を含む、リポソーム製剤の対流増進送達を含む。一実施形態において、中性飽和リン脂質は、ホスファチジルコリンの誘導体およびその混合物、例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、およびそれらの混合物から成る群から選択される。長鎖飽和脂質、例えば、C20およびC22を使用してもよい。一実施形態において、陰イオン飽和リン脂質は、ホスファチジルグリセロールの誘導体(例えば、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG))、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、およびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0020】
本明細書に記載されるリポソーム製剤は、他の脂質成分、例えば、ステロールおよび誘導体(例えば、コレステロール(CHOL)またはスフィンゴリピド(例えば、スフィンゴミエリンおよびグリコスフィンゴリピド、特にガングリオシド)も含有し得る。好適な実施形態において、リポソーム製剤は、少なくとも1種の中性飽和リン脂質、少なくとも1種の陰イオン飽和リン脂質、および安定剤、例えば、コレステロール等から本質的に成るか、またはそれらから成る。
【0021】
一実施形態において、非ペグ化リポソームは、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)およびジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)の組み合わせで構成される。一実施形態において、非ペグ化リポソームは、約10〜約95モル%のDSPCを含む。一実施形態において、非ペグ化リポソームは、約5〜約90モル%のDSPGを含む。一実施形態において、非ペグ化リポソームは、コレステロール(CHOL)、例えば、約5〜約45モル%のコレステロールをさらに含む。好適な実施形態において、リポソームは、約60〜約90モル%のDSPC、約5〜約10モル%のコレステロール、および約5〜約30モル%のDSPGを含むか、またはそれらから本質的に成る。好適な実施形態において、非ペグ化リポソームは、DSPC、DSPG、およびCHOLを7:2:1のモル比で含むか、またはそれらから本質的に成る。別の実施形態において、非ペグ化リポソームは、DSPC、DSPG、およびCHOLを6:2:2のモル比で含むか、またはそれらから本質的に成る。別の実施形態において、非ペグ化リポソームは、DSPC、DSPG、およびCHOLを5:2:3のモル比で含むか、またはそれらから本質的に成る。
【0022】
一実施形態において、本明細書に記載されるような非ペグ化リポソーム製剤の対流増進送達(CED)は、自由に投与される治療薬のそれぞれの組織分散、毒性、およびインビボ半減期と比較して、組織分散の増加、毒性の減少、および治療薬のインビボ半減期の増加をもたらす。
【0023】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるリポソーム製剤、例えば、少なくとも1種の中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和リン脂質の混合物で構成される非ペグ化リポソームに被包された少なくとも1種の治療薬剤を含むリポソーム製剤を含むカニューレを提供し、製剤は、対流増進送達(CED)によって送達され得る。別の実施形態において、カニューレは、少なくとも1種の中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和リン脂質の混合物で構成される非ペグ化リポソームに被包された診断薬を含むリポソーム製剤をさらに含み、製剤は、CEDによって送達され得る。別の実施形態において、カニューレは、治療薬を含む第1のリポソームと、診断薬を含む第2のリポソームと、を含むリポソーム製剤を含み、第1のリポソームも第2のリポソームもペグ化されておらず、第1および第2のリポソームは、少なくとも1種の中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和リン脂質の混合物で構成され、製剤は、対流増進送達(CED)によって送達され得る。カニューレは、CNSへの対流増進送達と適合する。一実施形態において、カニューレは、逆流防止ステップ設計のカニューレである。
【0024】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるリポソーム製剤を生成するための方法を提供する。一態様において、本発明は、CNSの癌の患者の治療に有用な医薬品を生成するための方法を提供し、医薬品は、本明細書に記載されるリポソーム製剤を含む。一実施形態において、該方法は、遠隔装薬、例えば、硫酸アンモニウム勾配によって、治療薬または診断薬をリポソーム内に取り込むことを含む。
【0025】
本明細書に記載される装置および方法のさらなる目的、特徴、および利点は、本発明の例示的な実施形態を示す添付の図面と併せて考慮すれば、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】脂質組成物、薬物濃度、および薬物脂質比が、ペグ化リポソーム製剤および非ペグ化リポソーム製剤からのトポテカンの放出特性に及ぼす影響を比較する。
【図1B】脂質組成物、薬物濃度、および薬物脂質比が、ペグ化リポソーム製剤および非ペグ化リポソーム製剤からのトポテカンの放出特性に及ぼす影響を比較する。
【図1C】脂質組成物、薬物濃度、および薬物脂質比が、ペグ化リポソーム製剤および非ペグ化リポソーム製剤からのトポテカンの放出特性に及ぼす影響を比較する。
【図1D】脂質組成物、薬物濃度、および薬物脂質比が、ペグ化リポソーム製剤および非ペグ化リポソーム製剤からのトポテカンの放出特性に及ぼす影響を比較する。
【図1E】脂質組成物、薬物濃度、および薬物脂質比が、ペグ化リポソーム製剤および非ペグ化リポソーム製剤からのトポテカンの放出特性に及ぼす影響を比較する。
【図1F】脂質組成物、薬物濃度、および薬物脂質比が、ペグ化リポソーム製剤および非ペグ化リポソーム製剤からのトポテカンの放出特性に及ぼす影響を比較する。
【0027】
【図2】正常な脳組織におけるLs−TPT製剤および遊離トポテカンの薬物動態を示す。
【0028】
【図3】スクロースがローダミンリポソームの対流可能性に及ぼす影響を示す。
【0029】
【図4】線条体への20μL注入後のローダミン装薬リポソームの分散量(Vd)を示す。
【0030】
【図5】治療群による動物の生存を示す。
【0031】
【図6】合計治療群対第2群(0.5mg/mL二重投与)による動物の生存を示す。
【0032】
【図7】腫瘍移植におけるU87細胞負荷による全体生存を示す。
【0033】
【図8】U87MG細胞負荷の低い(6.8×103)動物における、合計治療群対第2群(0.5mg/mL二重投与)による動物の生存を示す。
【0034】
【図9】U87MG細胞負荷の高い(9.7×105)動物における、合計治療群対第2群(0.5mg/mL二重投与)による動物の生存を示す。
【0035】
【図10】無処置齧歯類脳組織における、Ls−Gd−ローダミン−PEと混注される、Ls−TPTマリナブルーDHPEの分散量を示す。各製剤について、n=3であり、各半球に20μLを注入した。
【0036】
【図11】U87MG異種移植齧歯類脳組織における、Ls−Gd−ローダミン−PEと混注される、Ls−TPTマリナブルーDHPEの分散量を示す。各製剤の場合、n=4であり、各半球に20μLを注入した。
【0037】
【図12】治療群による動物の生存を示す(安楽死させた動物は、無検閲と見なされた)。
【0038】
【図13】治療群による動物の生存を示す(安楽死させた動物は、無検閲と見なされた)。
【発明を実施するための形態】
【0039】
定義
【0040】
本明細書で使用される、「リポソーム」は、封入された含水量を含む脂質二層膜を意味する。リポソームは、単一の二層膜を有する単層ベシクルであり得るか、または水性層によって相互に分離された複数の二層膜を有する多層ベシクルであり得る。概して、リポソーム二重層は、疎水性「尾」領域および親和性「頭」領域を有する2つの脂質単層で構成される。二層膜の構造は、脂質単層の疎水性(非極性)の「尾」が、二重層の中心を向き、親水性(極性)の「頭」は、封入された水の容積または過リポソーム水性環境のいずれかに向かっている。一実施形態において、本発明のリポソームは、標的部分、例えば、抗体または他のリガンドを含む。
【0041】
「リポソーム製剤」は、治療薬および/または診断薬の一部またはすべてが、リポソーム内に被包されるものであると理解される。リポソーム製剤に関して本明細書で使用される「〜から本質的に成る」は、引用される脂質成分のみを融資、追加の脂質成分を有しないリポソームを意味する。
【0042】
「リン脂質」は、グリセロールの両親媒性誘導体を意味すると理解され、そのヒドロキシル基の1つが、リン酸でエステル化され、他の2つのヒドロキシル基が、相互に等しいか、または異なり得る長鎖脂肪酸でエステル化されている。
【0043】
飽和リン脂質は、その脂肪酸が、単一の(複数ではない)共有炭素−炭素結合のみを有するものとなる。
【0044】
中性リン脂質は、概して、別のリン酸ヒドロキシルが、極性基(通常、ヒドロキシルまたはアミン)によって置換されたアルコールによりエステル化され、その正味電荷は、生理的pHにおいてゼロであるものである。
【0045】
陰イオンリン脂質は、概して、別のリン酸ヒドロキシルが、極性基によって置換されたアルコールによってエステル化され、その正味電荷が、生理的pHにおいて負であるものである。
【0046】
「荷電飽和リン脂質」という表現、ならびに荷電飽和リン脂質を含むという意味は、正味電荷がゼロではない他の両親媒性化合物も含む。そのような両親媒性化合物は、極性基(例えば、アミン)によって置換された、長鎖炭化水素誘導体および脂肪酸の誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用される、「活性成分」または「治療薬剤」は、高分子量神経治療薬の形態でCNS標的組織に送達され得、そのように送達されると、標的CNS組織において所望の反応をもたらす、任意の分子を意味する。治療薬剤は、抗腫瘍薬、放射性ヨウ化化合物、毒素(タンパク質毒素を含む)、細胞増殖抑制薬または細胞溶解薬を含む細胞毒性薬、遺伝子およびウイルスベクター、ワクチン、合成ベクター、成長因子、神経栄養因子、抗ウイルス薬、抗生物質、神経伝達物質、サイトカイン、酵素、および特定部位の標的病変に対する薬剤を含むが、これらに限定されない。治療薬剤は、核酸類似体を含む核酸、抗体を含むタンパク質、および低分子化学組成物を含むが、これらに限定されない。活性成分は、全身的に投与されると、毒性および望ましくない効果を呈する薬剤を含む。
【0048】
本明細書で使用される、「CNS障害」は、対象の中枢神経系の障害を意味する。障害は、CNSにおける特定のニューロン集団の死滅および/または機能不全と関連付けられ得る。障害は、CNS内の細胞の異常成長と関連し得る。異常に成長するCNS細胞は、CNSに由来し得るか、または他の組織に由来し得る。CNS障害には、癌、感染症、頭部外傷、脊椎損傷、多発性硬化症、レヴィー小体認知症、ALS、リソソーム蓄積障害、精神疾患、神経変性障害、脳卒中、てんかん、および他の急性および慢性CNS障害が挙げられる。
【0049】
神経膠腫は、中枢神経系(CNS)の最も一般的な原発腫瘍である。多形性神経膠腫(GBM)は、最頻する最も悪性型の神経膠腫である。小児よりも成人において、GBMの発症率ははるかに高い。米国統計報告の中枢脳腫瘍レジストリによると、GBMは、米国における脳腫瘍の約20%を占める(CBTRUS,1998−2002)。CNSの他の腫瘍には、線維性(びまん性)星状細胞腫、毛様細胞性星状細胞腫、多形性黄色星状膠細胞腫等の星状細胞腫を含む他の神経膠腫、および脳幹神経膠腫、乏突起膠腫、および上衣腫、ならびに関連傍脳室腫瘤病変、ニューロン性腫瘍、髄芽腫を含む分化不良新生物、原発性脳リンパ腫を含む他の実質腫瘍、胚細胞腫瘍、および松果体実質腫瘍、髄膜腫、転移性腫瘍、腫瘍随伴症候群、神経鞘腫を含む末梢神経鞘腫瘍、神経繊維腫、および悪性末梢神経鞘腫瘍(悪性神経繊維腫)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
てんかんは、CNSにおける特定のニューロン集団の機能不全に伴う最も一般的な深刻なCNS障害である(Shorvon,S,Epidemiology,classification,natural history,and genetics of epilepsy,Lancet 1990 Jul 14,336(8707)93−6,McNamara J.,The neurobiological basis of epilepsy,Trends Neurosci 1992 October,15(10)357−9)。重度の穿通性頭部外傷は、最大50%のてんかん誘発リスクと関連する。てんかんの他の原因は、脳卒中、感染症および遺伝的感受性を含む。発作は、神経学的機能不全であり、中枢神経系ニューロンの集合体からの異常、過剰な過同期性放電に起因する。発作は、(運動系が関与する場合)動作的に呈し得るか、または脳波的に呈し得る。てんかんは、人が、慢性の基礎疾患の経過に起因して、再発発作を有する状態である。臨床および病理学的特性が異なる様々なてんかん症候群が存在するが、共通の基礎病因は、ニューロンの過剰興奮である。したがって、てんかんは、脳波計および臨床所見に従って分類され得る、神経学的機能における慢性の再発性、発作性変化によって特徴付けられる、中枢神経系(CNS)過剰興奮の障害を包含する(Dichter M.,Basic mechanisms of epilepsy:targets for therapeutic intervention,Epilepsia1997;38 Suppl9:S2−6)。
【0051】
てんかんの発作は、限局性(部分的)発作および全身性発作の2つの群に広く分類される。限局性発作は、脳の皮質または皮質下領域における限定されたニューロン群の異常活性から生じる。根本的な構造異常または病変は、出生時障害、頭部外傷、腫瘍、膿瘍、梗塞、血管形成不全、または遺伝疾患の結果として発生し得る(Dichter 1997,Ibid)。限局性活動の位置は、臨床発作所見によって識別することができるか、または潜在的であり得る。同様に、活性病巣は、病変自体が関与しないが、隣接または遠位(であるが結合した)ニューロン集団において生じ得、限局性過剰興奮を基礎とする可塑性シナプスの再組織化の仮説を支持する。(例えば、Prince D.A.,Epileptogenic neurons and circuits.In:Jasper′s Basic Mechanisms of the Epilepsies,Third Edition(1999)、Delgado−Escueta A.V.,et al.,editors)、Advances in Neurology79:665−684を参照)。
【0052】
限局性発作は、意識に明らかな変化がない場合は「単純」と呼ばれ、そうでなければ、「複雑」と呼ばれる。複雑限局性発作には、側頭葉および辺縁系が関与し、成人におけるてんかんの最も一般的な兆候である。拡大して脳波的に両側性になる限局性発作は、同時に意識を喪失し、運動兆候の有無にかかわらず、二次的に全身性になると言われている。原発性全身性発作は、運動けいれんの有無にかかわらず、両側脳波活動、意識の喪失で開始する。限局性発作は、脳のほぼすべての部分が関与し得、通常は、局所病変の機能異常に起因する。限局性発作の現在の治療は、EEGの使用を含み、限局性てんかん発作を起こしやすい有機脳疾患の領域に由来する、異常なスパイク波を位置特定し、続いて、さらなる発作を防ぐために、病巣を外科的に切除する。
【0053】
リポソーム製剤
【0054】
本明細書に記載されるリポソーム製剤、例えば、そのような製剤を含む薬学的組成物は、能動的または受動的装薬方法を含む多様な方法で形成することができる。例えば、1種以上の治療薬および/または診断薬を、膜貫通pH勾配装薬法を使用して、被包してもよい。リポソームの二重層を越える膜貫通能力の使用によって、治療薬とともにリポソームを装薬するための一般的な方法は、当業者によく知られている(例えば、米国特許第5,171,578号明細書、米国特許第5,077,056号明細書、および米国特許第5,192,549号明細書)。
【0055】
簡単に説明すると、例えば、最初に脂質が、有機溶媒、例えば、エタノール、t−ブタノール、それらの混合物等に溶解され得、徐々に加熱され得る(例えば、60℃〜70℃)。非ペグ化リポソームを形成する際に使用される脂質成分は、通常、リン脂質およびステロールを含む、多様なベシクル形成脂質から選択され得る(例えば、米国特許第5,059,421号明細書、米国特許第5,100,662号明細書)、例えば、卵黄、大豆、または他の野菜または動物組織、に由来するリン脂質、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチド酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン等;それらの混合物、例えば、卵黄リン脂質、大豆リン脂質等;その水素化生成;および合成リン脂質、例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルグリセロール等が使用され得る。
【0056】
本明細書に記載されるように、主題の発明の非ペグ化陰イオンリポソームは、2種以上の非ペグ化脂質、例えば、中性リン脂質および陰イオンリン脂質の混合物である。一実施形態において、中性リン脂質は、ホスファチジルコリンの誘導体およびそれらの組み合わせ、例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、およびそれらの組み合わせで構成される群から選択される。一実施形態において、陰イオンリン脂質は、ホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチド酸の誘導体およびそれらの組み合わせ、例えば、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)およびホスファチジルセリンエステルと異なる飽和脂肪酸(PS)の混合物で構成される群から選択される。リポソームの安定化および他の目的で、ステロール(例えば、コレステロール)、σ−トコフェロール、ジセチルリン酸、ステアリルアミン等を添加してもよい。
【0057】
溶解した脂質に、予熱した水溶液を、激しく攪拌しながら添加してもよい。例えば、150〜300mMの緩衝液を含有する溶液を添加してもよい。使用され得る緩衝液には、硫酸アンモニウム、クエン酸、マレイン酸、およびグルタミン酸が挙げられるが、これらに限定されない。混合後に、得られた多層ベシクル(「MLV」)を加熱し、押出装置を通じて押し出して、MLVを単層リポソームベシクルに変換してもよい。脂質を溶解するために最初に使用される有機溶媒は、透析、ダイアフィルタによるろ過等によって、リポソーム調製物から除去され得る。
【0058】
1種以上の治療薬および/または診断薬は、膜貫通pH勾配装薬を使用して、リポソーム中に取り込まれ得る。リポソームの外部の溶液のpHを上昇させることによって、pH差がリポソーム二重層全体に存在することになる。したがって、膜貫通能力がリポソーム二重層全体で形成され、1種以上の治療薬および/または診断薬は、膜貫通能力によって、リポソーム中に装薬される。
【0059】
一般に、治療薬および/または診断薬:脂質比は、約0.01:約0.5(wt/wt)である。一実施形態において、治療薬および/または診断薬:脂質比は、約0.1である。別の実施形態において、治療薬および/または診断薬:脂質比は、約0.3である。一実施形態において、ベシクルは、膜貫通イオン勾配を用いて調製し、治療薬または診断薬の被包をもたらす条件下で、弱酸性または弱塩基性の治療薬および/または診断薬でインキュベートする。別の実施形態において、ベシクルは、治療薬および/または診断薬の存在下で調製され、非被包物質が、透析、イオン交換クロマトグラフィ、ゲルろ過クロマトグラフィ、またはダイアフィルタによるろ過によって除去される。
【0060】
装薬するための好適な実施形態は、米国特許第5,192,549号明細書に基づき、外部媒体からアンモニアを除去することを含む。その結果、pH勾配を誘発する、膜貫通アンモニア濃度勾配が形成される。薬物をベシクルに添加し、高温でインキュベートした後、「遠隔」装薬される。
【0061】
好適な実施形態において、本質的に膜不透過性である薬剤(例えば、ガドジアミド等の診断薬)を用いる場合、薬剤は、リポソームを形成するために使用される緩衝液中に存在し、ベシクル形成時に受動的に被包される。この好適な方法は、他の両性イオン薬剤、例えば、メトトレキセートにも適用する。対照的に、弱塩基(および弱酸)は、リポソームに遠隔装薬され得る。
【0062】
本明細書に記載されるリポソーム製剤は、中枢神経系領域への対流増進送達に使用することができ、CEDは、CNS内で高い組織分散量を達成することができる。したがって、リポソーム製剤は、CNS障害の治療に使用され得る。そのようなCNS障害には、CNS腫瘍、例えば、膠芽細胞腫、およびニューロン細胞の機能不全に伴う障害、例えば、てんかんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
したがって、CNS障害の治療に使用される様々な治療薬は、本明細書に記載されるリポソーム製剤内に取り込むことができ、本明細書に記載される方法において使用される。そのような治療薬には、抗腫瘍薬、毒素、生体生成物質(例えば、ドーパミン、セロトニン)、神経栄養因子(例えば、GDNF、CDNF、MANF)等が挙げられる。
【0064】
一実施形態において、トポイソメラーゼI阻害剤(トポイソメラーゼI/II阻害剤が挙げられるが、これに限定されない)は、本明細書に記載されるリポソーム製剤内に含有される。一実施形態において、トポイソメラーゼ阻害剤は、カンプロテカンまたはその誘導体である。例えば、一実施形態において、治療薬は、9−アミノカンプトテシン、7−エチルカンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、9−アミノ−10,11−メチレンジオキシカンプトテシン9−クロロ−10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、7−(4−メチルピペラジノメトリレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−メチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、および7−(2−(N−イソプロピルアミノ)エチル)−(20S)−カンプトテシンから成る群から選択される、カンプトテシン誘導体である。別の実施形態において、カンプトテシン誘導体は、イリノテカン、トポテカン、(7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−メチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、または7−(2−(N−イソプロピルアミノ)エチル)−(20S)−カンプトテシンから成る群から選択される。別の実施形態において、カンプトテシンは、トポテカンである。別の実施形態において、カンプトテシンは、トポテカンである。所定の薬剤が例示的に説明されるが、多数の他の薬剤も、本発明のリポソーム組成物内で適していることは、当業者には明らかとなる。
【0065】
毒素、例えば、μ−コノトキシン(例えば、μ−コノトキシンGIIIA、μ−コノトキシンGIIIB、μ−コノトキシンGIIIC、μ−コノトキシンPIIIA、μ−コノトキシンSmIIIA、μ−コノトキシンKIIIA等)、ω−コノトキシン(例えば、ω−コノトキシンGVIA(本明細書では、「ω−コノトキシンG」および「ω−CTX−G」とも称される)、ω−コノトキシンMVIIA(本明細書では、「ω−コノトキシンM」および「ω−CTX−M」とも称される)、ボツリヌス毒素(例えば、ボツリヌス毒素A(本明細書では、BTX−Aとも称される)、ボツリヌス毒素B(本明細書では、「BTX−B」とも称される、ボツリヌス毒素C1、ボツリヌス毒素D、ボツリヌス毒素E、ボツリヌス毒素F等)、コナントキンペプチド(例えば、コナントキンG、コナントキンT、コナントキンL、コナントキンS1、コナントキンOc、コナントキンGm、コナントキンCa2、コナントキンCa1、およびコナントキンQu)、その誘導体、ならびにその薬学的に許容される塩を含む、タンパク質毒素も、本明細書における使用が検討される。
【0066】
一実施形態において、イモガイの毒に由来するコノトキシンは、主題の製剤を使用して送達され得る。毒の活性成分は、小ペプチド毒素であり、通常、10〜30個のアミノ酸残基の長さであり、通常、それらの高密度のジスルフィド結合に起因して著しく制約される。毒成分は、電圧依存性のイオンチャネル、リガンド依存性のイオンチャネル、およびGタンパク質結合受容体に作用する。コノトキシンの薬学的選択性は、少なくとも部分的に、ジスルフィドループ内の超可変アミノ酸と結合される、特定のジスルフィド結合フレームワークによって決定される。コノトキシンペプチドの高い能力および優れた選択性に起因して、ヒトの障害の治療用に評価されているものもあり、これらのω−コノトキシンMVIIA(ジコノチド)のうちの1種であるN型カルシウムチャネルブロッカは、現在、髄腔内空間に挿入されるカテーテルとともに、埋込可能かつプログラム可能なポンプによって、ヒト患者の疼痛治療に使用されている。
【0067】
本発明の特定の実施形態において、抗てんかん薬製剤は、ω−コノトキシン、例えば、ω−コノトキシンGVIA、ω−コノトキシンMVIIA、およびω−コノトキシンCVIDを含む。例えば、Gasior et al.J Pharmacol Exp.Ther.323:458−68(2007)を参照されたい。代替実施形態において、抗てんかん薬製剤は、μ−コノトキシン、例えば、μ−コノトキシンGIIIA、μ−コノトキシンGIIIB、μ−コノトキシンGIIIC、μ−コノトキシンPIIIA、μ−コノトキシンSmIIIA、μ−コノトキシンKIIIAを含む。例えば、Zhang et al.,J Biol Chem282:30699−30706(2007)を参照されたい。他の実施形態は、本明細書に記載されるように、コノトキシンの誘導体または薬学的に許容される塩を利用する。
【0068】
本明細書において、ボツリヌス菌に由来するボツリヌス毒素の使用も検討される。7つの免疫学的に明確なボツリヌス神経毒素が特徴付けられており、これらは、それぞれボツリヌス神経毒素血清型A、B、C1、D、E、F、およびGであり、それぞれ型特異的抗体を用いて中性化することによって区別される。異なる血清型のボツリヌス毒素は、それらが作用する動物種において、それらが誘発する麻痺の重篤度および期間が異なる。例えば、ボツリヌス毒素A型は、ボツリヌス毒素B型よりも、ラットにおいてもたらされる麻痺率で測定されるように、500倍強力であることが判明している。さらに、ボツリヌス毒素B型は、霊長類において、480U/kgの用量で、非毒性であることが判明しており、これは、ボツリヌス毒素A型に対する霊長類LD50の約12倍である。したがって、非A型ボツリヌス毒素血清型は、薬効が低い場合があり、および/またはボツリヌス毒素A型と比較して、活性の期間が短い場合がある。
【0069】
すべてのボツリヌス毒素血清型は、明らかに、神経筋接合部において、神経伝達物質の放出を阻害するが、それらは、異なる神経分泌タンパク質に作用し、および/または異なる部位においてこれらのタンパク質を開裂させることによってそれを行う。例えば、ボツリヌス型Aとボツリヌス型Eとは、いずれも25キロダルトン(kD)のシナプトソーム関連タンパク質(SNAP−25)を開裂させるが、それらは、このタンパク質内の異なるアミノ酸配列を標的とする。ボツリヌス毒素型B、D、F、およびGは、ベシクル関連タンパク質(VAMP、スナプトブレビンとも呼ばれる)に作用し、各血清型は、タンパク質を異なる部位で開裂させる。最後に、ボツリヌス毒素型C1は、シンタキシンおよびSNAP−25の両方を開裂させることが示された。作用機序におけるこれらの差異は、様々なボツリヌス毒素血清型の作用の相対能力および/または期間に作用し得る。
【0070】
インビトロでの研究は、ボツリヌス毒素が、一次細胞培養および脳シナプトソーム調製物からの様々な神経伝達物質のカリウム誘導性放出を阻害することを示した。グルタミン酸は、脳におけるシナプス興奮の大部分に関与する神経伝達物質であり、発作性放電の生成および拡散に不可欠であると考えられている。ボツリヌス毒素は、脊椎ニューロンの初代培養においてグルタミン酸の誘発放出を阻害すること、および脳シナプトソーム調整物において、ボツリヌス毒素は、グルタミン酸および他の神経伝達物質の放出を阻害することが報告されている。
【0071】
本発明の一部の実施形態において、抗てんかん薬は、ボツリヌス毒素Aまたはボツリヌス毒素Bである。他の実施形態において、毒素は、親毒素の生物活性を有するボツリヌス毒素Aまたはボツリヌス毒素Bの断片または類似体である。他の実施形態において、毒素は、脳ニューロン上の適切な標的に対して特異的に結合するように修飾される。一部の実施形態において、組み換え技術を使用して、クロストリジウム神経毒素またはそれらの断片あるいは類似体を生成する。
【0072】
本発明では、コナントキンの使用も意図され、それらは、米国特許第6,172,041号明細書および、米国特許第6,399,574号明細書に記載されるものを含み、それらの開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0073】
診断薬は、本明細書に記載されるように、リポソーム内にも封入され得る。適切な薬剤には、MRIで使用するための常磁性イオンが挙げられ、本明細書において「MRI磁石」と称される。適切な金属イオンには、原子番号22〜29(境界値も含む)、42、44および58〜70(境界値も含む)を有するものが挙げられ、+2または+3の酸化状態を有する。そのような金属イオンの実施例は、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、プラセオジム(III)、ネオジミウム(III)、サマリウム(III)、ガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)およびイッテルビウム(III)である。
【0074】
X線画像診断(例えば、CT)を使用してCEDを監視する実施形態において、診断薬は、X線不透過物質を含み得る。適切なX線不透過物質は、よく知られており、ヨード化合物、バリウム化合物、ガリウム化合物、タリウム化合物等が挙げられる。X線不透過物質の特定の例には、バリウム、ジアトリゾエート、ヨード化ケシ油エチルエステル、クエン酸ガリウム、イオカルミン酸、ヨーセタム酸、ヨーダミド、ヨージパミド、ヨードキサム酸、イオグラミド、イオヘキソール、イオパミドール、イオパノン酸、イオプロセム酸、イオセファム酸、イオセル酸、イオスラミドメグルミン、イオスメト酸、ヨータサル、ヨートラン酸、イオタラム酸、イオトロクス酸、イオキソトリロン酸、イポダート、メグルミン、メタザミド、メタゾエート、プロピリオドン、および塩化タリウムが挙げられる。
【0075】
本明細書に記載されるように、リポソーム製剤は、対流増進送達に適している。
【0076】
対流増進送達
【0077】
対流増進送達(CED)は、バルクフロー機序を利用して、巨大分子を臨床的に有意な容積の固体組織に送達および分散させるための直接脳内薬物送達法である。CEDは、単純拡散よりも大量の分散を提供し、治療薬を特定の標的部位に案内するように設計されている。例えば、米国特許第5,720,720号明細書を参照されたい。この開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。つまり、対流増進送達(CED)は、血液−脳関門を回避し、大分子量の物質、例えば、薬物装薬リポソームが、均等に制御された状態で脳の規定された領域内に投与されるのを可能にする(例えば、米国特許出願第11/740,548号明細書を参照されたい。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。CEDは、カテーテルを組織に直接挿入し、所定の流速、例えば、約0.1μL/分〜約12μL/分でカテーテルを通って間質腔に入る圧力下で、薬剤を投与することによって、直接対流間質注入を通して、所定の時間に渡って、液体薬物(例えば、リポソーム製剤)を固体組織(例えば、脳腫瘍)に投与するために使用され得る。
【0078】
本明細書において詳述されるように、本出願人は、CEDが、治療薬および任意で、非ペグ化リポソーム製剤に被包される診断薬の送達に効果的に使用され得、製剤は、少なくとも1種の中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和脂質の混合物を含むか、または本質的にそれらから成ることを発見した。実施例の項で説明されるように、少なくとも1種の治療薬(例えば、トポテカン)および/または本明細書に記載されるような非ペグ化リポソーム製剤に被包される診断薬を含む組成物のCEDは、治療薬の分散量を増加させ、その血清半減期を劇的に向上させる。
【0079】
リポソーム製剤(例えば、薬学的組成物)の投与に使用され得る適切な装置は、リポソーム製剤を充填した容器を含む、ポンプ装置を備え得る。ポンプは、体外に配置されても、または体内に埋め込まれてもよい。ポンプは、カテーテルに接続されてもよく、カテーテルがCNS内の個々の組織に埋め込まれ得る。ポンプは、溶質を特定の組織内で対流させる圧力および流速で、リポソーム製剤を放出するように活性化され得る。
【0080】
リポソーム製剤を、個々の組織を通して、個々の組織に隣接する領域に分散させるように、例えば、リポソーム製剤が脳脊髄液に入らないように、注入の期間および他のパラメータが調整され得る。個々の組織のサイズおよび形状に応じて、複数の埋め込まれた注入カテーテルを使用するか、または複数の溶液出口ポートを有する注入カテーテルを使用する必要があり得る。
【0081】
CEDを使用して、リポソーム製剤は、微細カニューレを通して、陽圧下で間質腔にゆっくり注入することによって分散され得る。ポンプに由来する静水圧によって駆動されるバルクフローは、CNSの細胞外空間内でリポソーム製剤を分散させるように使用され得る。CEDの使用は、カニューレの先端を介して、神経組織内での直接リポソーム製剤の分散を可能にするため、血液−脳関門がバイパスされ、中枢神経系における個々の組織、例えば、癌性であると規定された個々の組織、または従来の手術前評価によって切除対象として識別された個々の組織、および複数の病巣を治療する必要がある場合は、異なる病巣における個々の組織が標的とされ得る。バルクフローの特性に基づいて、CEDは、様々な量のリポソーム製剤を確実、安全、かつ均等に分散させるために使用され得る。例えば、米国特許出願第11/740,508号明細書を参照されたい。さらに、CEDは、注入された組織に対して構造的または機能的損傷をもたらさず、リポソーム製剤の分散に対する優れた制御を提供する。さらに、リポソーム製剤は、リポソーム製剤に含まれるリポソームの分子量に関係なく、注入量に比例する分散量を通して均等に分散され得る。
【0082】
一実施形態において、超微細送達カテーテル(新規の「ステップ」設計で、ポリウレタンおよび溶融シリカで構成される)が、経皮ポートとともに恒久的に埋め込まれてもよい。新規のカテーテル設計は、急速に生体と一体化され得、内的に密閉およびろ過されて、細菌の侵入を回避し、さらなる安全性のためにキャップされ得る。リポソーム製剤は、必要に応じて、このカテーテルシステムのポートを通じて注入され得る。
【0083】
本明細書に記載される一実施形態において、CEDは、注入ポンプを使用して、脳領域内に恒久的に埋め込まれた小径カテーテルにより適用され得る。投与されるリポソーム製剤は、等張水溶液、または他の適切な製剤として調製され得る。投与(例えば、注入)中に、リポソーム溶液は、細胞外空間内を流れ得、脳組織に対する損傷が最小限度に抑えられるか、または損傷をもたらさない。
【0084】
一実施形態において、特に経皮CED送達用に設計された超微細(先端において0.2mmOD)、最小侵襲性カテーテルシステムを使用してもよい。カテーテルシステムは、ステップ設計を有し、カテーテルの側面に沿って、溶液のかん流を排除し得る。そのような溶液の漏出は、直線的な側面のカテーテルにとって大きな問題である。カテーテルシステムは、生体適合性が高く、MRI信号を妨害しないように、ポリウレタンおよび溶融シリカ、またはPeek Optimaで構成され得る。CNS障害の治療は、異なる間隔、例えば、週間隔、月間隔等で、リポソーム製剤の再投与を必要とし得る。例えば、米国特許出願第11/740,124号明細書を参照されたい。この開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。経皮ポートは、間隔期間中に、キャップされたままであり得る。複数のカテーテル設計は、単一カテーテルを用いて可能なより広い領域の個々の組織をかん流させることが可能であり得る。CED注入後のリポソームの分散量は、注入された溶液量に線形相関することが判明した。
【0085】
特に好適なカニューレは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Krauze et al.,J Neurosurg.November 2005;103(5)923−9、ならびに参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許出願公開第US2007/0088295 A1号明細書、および参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0135945 A1号明細書に開示されている。
【0086】
一実施形態において、CEDは、約0.1μL/分から約10μL/分の間の注入速度を含む。別の実施形態において、CEDは、約0.1μL/分から約0.3μL/分の注入速度、例えば、約0.2μL/分、より好ましくは、約0.7μL/分超、より好ましくは、約1μL/分超、より好ましくは、約1.2μL/分超、より好ましくは、約1.5μL/分超、より好ましくは、約1.7μL/分超、より好ましくは、約2μL/分超、より好ましくは、約2.2μL/分超、より好ましくは、約2.5μL/分超、より好ましくは、約2.7μL/分超、より好ましくは、約3μL/分超、および好ましくは、約12μL/分未満、より好ましくは、約10μL/分未満を含む。
【0087】
好適な実施形態において、CEDは、送達中に、「ステッピング」または増加適定(up−titration)と称される流速の増分増加を含む。好ましくは、ステッピングは、約0.1μL/分および約10μL/分の間の注入速度を含む。
【0088】
好適な実施形態において、ステッピングは、約0.5μL/分超、より好ましくは、約0.7μL/分超、より好ましくは、約1mL/分超、より好ましくは、約1.2μL/分超、より好ましくは、約1.5μL/分超、より好ましくは、約1.7μL/分超、より好ましくは、約2μL/分超、より好ましくは、約2.2μL/分超、より好ましくは、約2.5μL/分超、より好ましくは、約2.7μL/分超、より好ましくは、約3μL/分超、および好ましくは、約12μL/分未満、より好ましくは、約10μL/分未満の注入速度を含む。
【0089】
本明細書における治療方法は、好ましくは、標的の位置特定およびカニューレの誘導配置のための診断薬による神経画像診断、好ましくはMRIも含む。好ましくは、診断薬の神経画像診断と併せて、定位固定ホルダを使用し、標的ニューロン集団、またはその近位にカニューレを誘導配置する。トレース剤は、好ましくは、磁気共鳴画像(MRI)またはX線コンピュータ断層撮影によって検出可能である。トレース剤の分散を監視し、高分子量神経治療薬の分散の間接的測定として使用する。この監視は、非標的組織への注入剤の望ましくない送達を検出し、高分子量神経治療薬が、標的組織に到達し、そこで有効濃度を達成していることを検証するために行う。
【0090】
一実施形態において、診断薬は、治療薬とは異なる。診断薬は、治療薬の速度と相関する速度で分散するため、治療薬分散の間接的な指標である。好適な実施形態において、診断薬および治療薬は、個別に投与されるが、同一の非ペグ化陰イオンリポソーム製剤によって被包され、極めて類似した分散特性を付与する。別の実施形態において、診断薬および治療薬は、共投与される。
【0091】
本明細書における治療方法は、好ましくは、注入剤の分散を監視するための神経画像診断も含む。好適な実施形態において、治療方法は、注入される本発明の薬学的組成物の分散を監視するためのMRIの使用を含み、薬学的組成物は、MRI磁石を含む。
【実施例】
【0092】
実施例1 CED用のペグ化リポソーム製と非ペグ化リポソーム製剤との比較
【0093】
実施例1.1 材料および方法
【0094】
実施例1.1.1:DSPC/CHOL(60/40モル比)
【0095】
26.1mgのDSPC(MW790、ロット#C3L006、実重量26.2mg)+8.5mgのコレステロール(MW387、ロット#CH1S003、実重量8.8mg)を計量する。
【0096】
0.5mLのクロロホルムに溶解させ、EtOH中の75μL 5mg/mLのRhPE(0.2モル%のリン脂質)を添加する。
【0097】
渦動させながら、試料を窒素下で乾燥させて薄膜を形成する。真空下で1時間、乾燥を完了させる。
【0098】
1.5mLのHBS(5mM HEPES−145mM NaCl pH7.0、0.1192gのHEPES[MW238.3]+0.8475gのNaCl[MW58.45]、pHをNaOHで調整し、量を100mLにする)中で脂質を60℃で再水和し、MLVを形成する。
【0099】
60℃で2x100nmのフィルタから押出して、LUVを得る(標的サイズ100〜120nm)。
【0100】
リン酸塩の測定−20mM リン脂質に希釈する。
【0101】
2.0mLの血清バイアル(事前に脱発熱化)に入れる。
【0102】
実施例1.1.2:DSPC/CHOL/PEGzoooDSPE(59.5/40/0.5モル比)
【0103】
25.8mgのDSPC(MW790、ロット#C3L006、実重量25.6mg)+8.5mgのコレステロール(MW387、ロット#CH1 S003、実重量8.7mg)+0.75mgのPEG2000DSPE(MW2774、ロット#PPE2011809、実重量50μLの15mg/mL CHCl3溶液を計量し、1.2mL CHCl3中で18mg[実重量17.9mg]を調製する。
【0104】
0.5mLのクロロホルムに溶解させ、75μLのRhPE(0.2モル%のリン脂質)を添加する。
【0105】
渦動させながら、試料を窒素下で乾燥させて薄膜を形成する。真空下で1時間、乾燥を完了させる。
【0106】
1.5mLのHBS(5mM HEPES−145mM NaCl pH7.0)中で脂質を60℃で再水和し、MLVを形成する。
【0107】
60℃で2x100nmのフィルタから押出して、LUVを得る(標的サイズ100〜120nm)。
【0108】
リン酸塩の測定−20mM リン脂質に希釈する。2.0mLの血清バイアル(事前に脱発熱化)に入れる。
【0109】
実施例1.1.3:DSPC/CHOL/PEG2000DSPE(55/40/5モル比)
【0110】
23.9mgのDSPC(MW790、ロット#C3L006、実重量23.8mg)+8.5mgのコレステロール(MW387、ロット#CH1 S003、実重量8.6mg)+7.5mgのPEG2000DSPE(MW2774、ロット#PPE2011809、実重量500μLの15mg/mLCHCl3溶液)を計量する。
【0111】
0.5mLのクロロホルムに溶解させ、75μLのRhPE(0.2モル%のリン脂質)を添加する。
【0112】
渦動させながら、試料を窒素下で乾燥させて薄膜を形成する。真空下で1時間、乾燥を完了させる。
【0113】
2.0mLのHBS(5mM HEPES−145mM NaCl pH7.0)中で脂質を60℃で再水和し、MLVを形成する。
【0114】
60℃で2x100nmのフィルタから押出して、LUVを得る(標的サイズ100〜120nm)。
【0115】
リン酸塩の測定−20mM リン脂質に希釈する。
【0116】
2.0mLの血清バイアル(事前に脱発熱化)に入れる。
【0117】
実施例1.1.4:DSPC/CHOL/NG−DOPE(55/40/5モル比)
【0118】
23.9mgのDSPC(MW790、ロット#C3L006、実重量24.2mg)+8.5mgのコレステロール(MW387、ロット#CH1 S003、実重量8.9mg)+2.4mgのNG−DOPE(MW880 13、ロット#050328L、実重量2.4mg)を計量する。
【0119】
0.5mLのクロロホルムに溶解させ、75μLのRhPE(0.2モル%のリン脂質)を添加する。
【0120】
渦動させながら、試料を窒素下で乾燥させて薄膜を形成する。真空下で1時間、乾燥を完了させる。
【0121】
2.0mLのHBS(5mM HEPES−145mM NaCl pH7.0)中で脂質を60℃で再水和し、MLVを形成する。
【0122】
60℃で2x100nmのフィルタから押出して、LUVを得る(標的サイズ100〜120nm)。
【0123】
リン酸塩の測定−20mM リン脂質に希釈する。
【0124】
2.0mLの血清バイアル(事前に脱発熱化)に入れる。
【0125】
実施例1.1.5:DSPC/PEG2000DSPE(99/1モル比)
【0126】
25.8mgのDSPC(MW790、ロット#C3L006、実重量26.1mg)+0.9mgのPEG2000DSPE(MW2774、ロット#PPE2011809、実重量60μLの15mg/mL CHCl3溶液)を計量する。
【0127】
0.5mLのクロロホルムに溶解させ、75μLのRhPE(0.2モル%のリン脂質)を添加する。
【0128】
渦動させながら、試料を窒素下で乾燥させて薄膜を形成する。真空下で1時間、乾燥を完了させる。
【0129】
2.0mLのHBS(5mM HEPES−145mM NaCl pH7.0)中で脂質を60℃で再水和し、MLVを形成する。
【0130】
60℃で2x100nmのフィルタから押出して、LUVを得る(標的サイズ100〜120nm)。
【0131】
リン酸塩の測定−20mM リン脂質に希釈する。
【0132】
2.0mLの血清バイアル(事前に脱発熱化)に入れる。
【0133】
実施例1.1.6:DSPC/PEG2000DSPE(95/5モル比)
【0134】
24.8mgのDSPC(MW790、ロット#C3L006、実重量24.6mg)+4.6mgのPEG2000DSPE(MW2774、ロット#PPE2011809、実重量307μLの15mg/mL CHCl3溶液)を計量する。
【0135】
0.5mLのクロロホルムに溶解させ、75μLのRhPE(0.2モル%のリン脂質)を添加する。
【0136】
渦動させながら、試料を窒素下で乾燥させて薄膜を形成する。真空下で1時間、乾燥を完了させる。
【0137】
1.5mLのHBS(5mM HEPES−145mM NaCl pH7.0)中で脂質を60℃で再水和し、MLVを形成する。
【0138】
60℃で2x100nmのフィルタから押出して、LUVを得る(標的サイズ100〜120nm)。
【0139】
リン酸塩の測定−20mM リン脂質に希釈する。
【0140】
2.0mLの血清バイアル(事前に脱発熱化)に入れる。
【0141】
実施例1.1.7:DSPC/DSPG(70/30モル比)
【0142】
18.2mgのDSPC(MW790、ロット#C3L006、実重量18.1mg)+7.4mgのDSPG(MW745、ロット#G3L006、実重量7.6mg)を計量する。
【0143】
0.5mLのクロロホルム/MeOH(9/1、v/v)に溶解させ、75μLのRhPE(0.2モル%のリン脂質)を添加する。
【0144】
渦動させながら、試料を窒素下で乾燥させて薄膜を形成する。真空下で1時間、乾燥を完了させる。
【0145】
2.0mLのHBS(5mM HEPES−145mM NaCl pH6.5)中で脂質を60℃で再水和し、MLVを形成する。
【0146】
60℃で2x100nmのフィルタから押出して、LUVを得る(標的サイズ100〜120nm)。
【0147】
リン酸塩の測定−20mM リン脂質に希釈する。
【0148】
2.0mLの血清バイアル(事前に脱発熱化)に入れる。
【0149】
実施例1.1.8:リン酸塩の測定
【0150】
試料1/50(20μL〜1.0mL)を水で希釈し、濃度を最大0.4mMにする。
【0151】
各希釈試料を3×200μLに等分する。
【0152】
ACM−010によるリン酸塩の測定
【0153】
実施例1.2:結果
【0154】
図1A〜1Fを参照。
【0155】
実施例2:齧歯類の脳に脳内送達されるナノリポソーム化合物の薬理学評価
【0156】
実施例2.1:材料および方法
【0157】
実施例2.1.1:被検物質
【0158】
本実施例における実験は、リポソーム−トポテカン(Ls−TPT)およびリポソームガドジアミド(Ls−GD)の両方の研究グレード材料を用いて行った。トポテカン製剤およびLs−TPT調製物用のトポテカン(TPT)は、Hisun Pharmaceuticals(中国浙江省台州市)から入手した。Ls−TPTは、Northern Lipids lnc(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビー)により提供された。つまり、リポソームは、リポソームは、7:2:1のモル比のジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、およびコレステロールで、75〜90nm標的サイズで構成された。トポテカンは、それぞれ硫酸アンモニウム250mM pH5.5およびヒスチジン5mM/NaCl145mM pH6.0から成る、内部および外部緩衝液を使用して、膜貫通pHの勾配に応答して、リポソーム中に遠隔装薬した(能動的に被包された)。0.1および0.3(w/w)薬物脂質比を有する0.67および2.0mg/mLのトポテカン濃度は、それぞれ90〜95%の薬物被包効率を想定して目標を設定した。一定の総脂質濃度目標である6.7mg/mLを、両方の製剤に維持した。製造工程は、実施例2.1.2.に詳述される。
【0159】
Ls−GD調製物用のガドジアミド(GD)は、Beijing SHLHT Science & Trade(中国北京)から入手した。Ls−GDは、ガドジアミドがリポソームに受動的に被包されたことを除いて、Ls−TPTと同様に調製した。内部緩衝液は、250mMの硫酸アンモニウムの代わりに、520mMのガドジアミド、pH5.5で構成した。4〜6%の被包効率を想定して、ガドジアミド対脂質比0.3(w/w)および粒径75〜120nmに目標を設定した。最終製剤の脂質およびガドジアミド濃度は、それぞれ51.1mg/mLおよび17.0mg/mLであった。
【0160】
特に明記されない限り、Ls−TPT被検物質は、冷凍保存した(−20〜−30℃)。投与溶液は、投与する日に新たに調製し、室温で保持した。5mM ヒスチジン、145mM NaCl pH6.0、300mMスクロース原液(Ls−TPTおよび遊離トポテカン)を用いて適切な希釈を行い、所望の濃度を得た。貯蔵被検物質溶液の新しいバイアルを、各投与日に使用した。
【0161】
実施例2.1.2:リポソーム製造工程
【0162】
バッチに必要とされる脂質の量を計算し、脂質粉末を計量ボートに計量した。t−ブタノール、エタノール、および水(45:45:10、vol/vol)から成る溶媒溶液を調製し、70℃に加熱した。攪拌しながら、脂質粉末を溶媒溶液に添加した。溶媒を70℃で維持し、すべての脂質が溶解するまで攪拌した(最長1時間)。溶液中の脂質濃度は、この時点で320mg/mLであった。硫酸アンモニウムの250mM溶液を調製し(体積は脂質溶媒溶液の9倍)、70℃に加熱した。硫酸アンモニウムが温度に到達した後、脂質溶液を、攪拌しながら硫酸アンモニウム溶液に注ぎ入れ、多重膜小胞(MLV)を生成した。MLVを70℃で維持し、80nmの孔の開いた4層ポリカーボネートフィルタから押出した。所望のサイズ(75〜90nmの平均直径)の大きい単層小胞(LUV)を生成するために、2回の通過が必要であった。リポソームのサイズは、押出器を通過する毎に、QELSによって測定した。LUVは、それらが所望のサイズに縮小されるまで70℃で維持し、次に、LUVは、10%溶媒において、最大55℃の相転移温度以下で不安定であったため、ヒスチジン生理食塩水pH6.0緩衝液を用いて、5%溶媒濃度まで希釈した。次に、LUVを、限界ろ過によって最大50mg/mLの総脂質に再濃縮し、続いて、10洗浄量の10mMヒスチジン、145mMのNaCl緩衝液に対してダイアフィルタでろ過して溶媒を除去し、硫酸アンモニウムからの外部緩衝液を、pH6.0ヒスチジン緩衝液に交換した。この緩衝液交換は、膜貫通pH勾配を作りだし、これを使用して、トポテカンを事前形成されたリポソーム中に装薬した。次に、リン酸塩測定によって総脂質濃度を決定した。脂質の総量を決定した後、脂質の総質量にそれぞれ0.1および0.3を掛けることによって、0.1:1または0.3:1(w/w)薬物脂質比を達成するために必要なトポテカンの量を計算する。最終薬物脂質比0.1:1または0.3:1(w/w)を達成するために、90%の装薬効率を想定した。必要とされるトポテカンの総量を計算した後、粉末を清潔なボトルに計量した。LUV懸濁液を60℃に加熱し、トポテカン粉末を添加した。薬物添加に続いて60分間、トポテカンを装薬させて、リポソーム中への最適な装薬を保障した。薬物装薬に続いて、非被包トポテカンを、5洗浄量の5mMヒスチジン、300mMスクロースpH6.0緩衝液を用いて、ダイアフィルタによるろ過で除去した。このステップも、塩化ナトリウム溶液からの外部緩衝液を、抗凍結剤として機能させ、その物理特性を変えることなく製剤を凍結させることができるスクロースに交換するように作用した。推定脂質含有量は、この段階で、8.3mg/mLであった(薬物脂質比が0.3:1の場合)。製剤を50℃に加熱し、0.2μmシリンジフィルタに通した。次に、生成物をバイアルに入れた。最後に、生成物を凍結させて、製造工程を完了する。
【0163】
実施例2.1.3:動物およびグループ分け
【0164】
体重250−350gの成体雄Sprague−Dawleyラット(Harlan,インディアナ州インディアナポリス)(バッチ120806および010507)を使用した。
【0165】
本実施例の製剤スクリーニング成分に対して、表1に概説されるようなLs−TPT製剤または遊離トポテカンに基づいて、動物を4つのグループに分割した。
【表1】
F1:DSPC/CHOL 0.1 DL比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD1.15mg/mL
F2:DSPC/DSPG/CHOL 0.3 DL比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD1.15mg/mL
F3:DSPC/DSPG/CHOL0.1 DL比 Ls−TPT 0.5mg/mL+Ls−GD1.15mg/mL
F4:遊離トポテカン0.5mg/mL
DSPC/DSPG=ジステアロイルホスファチジルコリン/ジステアロイルホスファチジルグリセロール
Chol=コレステロール
DL比=薬物脂質比(w/w)
Ls−TPT=リポソームトポテカン
Ls−GD=リポソームガドジアミド
【0166】
比較可能な群平均体重および標準偏差を達成するように、ラットを体重に基づいてグループ分けした。次に、該グループを、ランダムに治療および時点に割り当てた。
【0167】
実施例2.1.4:外科的処置
【0168】
イソフルラン(導入時は5%、手術中の維持の場合は2.5〜3.0%)吸入またはケタミン(60mg/kg)およびキシラジン(8mg/kg)の組み合わせの腹腔内注入のいずれかによって、ラットに麻酔をかけた。頭蓋の皮膚を剃毛し、動物を定位フレームに載置し、耳バーおよび切歯バーを使用して頭部を配置した。すべての外科的処置に対して無菌法を使用した。皮膚を70%アルコール、続いてベタジン溶液で消毒した。頭蓋上部の皮膚を縦方向に切開し、鈍的切開を使用して、頭蓋を覆う結合組織を除去した。小型の歯科用電気ドリルを使用して、頭蓋骨切除術を行い、ブレグマから0.5mm前方、および3mm左と右に直径1mmの穿頭孔を開けた。自動ポンプ(BASi,Inc.,インディアナ州ウェストラフィエット)に接続された溶融シリカカニューレ(OD168μm、ID102μm)(PolyMicro Technologies,アリゾナ州フェニックス)をCEDに使用し、適切な背腹座標に低下させた(−3.3mmで歯バーを用いて−4.5〜−5mm)。背腹座標は、軟膜表面から計算した。カニューレを、10μLのHamiltonシリンジと接続された27ゲージニードルに挿入し、強力瞬間接着剤で管に固定した。被検物質を両側で一度に各線条体に注入した。本研究では、漸進的注入速度の増分を使用して、半球当たり20μL用量を0.2μL/分(15分)、続いて0.5μL/分(10分)および0.8μL/分(15分)で達成した。注入完了後に、カニューレを所定の位置に5分間留置して、注入液の流出を最小限にした後、徐々に回収した。
【0169】
処置の終了後、ラットを通風のない環境内で維持し、加熱ランプまたは水ボトル、あるいは他の適切な加温方法で保温し、麻酔からの回復を監視した。ブプレノルフィンを、必要に応じて皮下投与した。ホームケージに戻す前に、ラットを処置室で回復させた。
【0170】
実施例2.1.5:組織の採取および処理
【0171】
所定の時点において、動物にイソフルラン(2.5%)で麻酔をかけ、0.9%生理食塩水で心臓内かん流を行った。
【0172】
試験中に死亡したか、または屠殺された(予定および予定外)すべての動物の完全な全身剖検を、剖体および筋肉/骨格系、すべての外表面および開口部、頭蓋腔および脳の外表面、関連器官および組織を伴う頸部、関連器官および組織を伴う胸部、腹部、および骨盤腔に対して行った。
【0173】
脳を除去して、氷上に置き、背面アプローチを使用して線条体を切除し、組織を液体窒素中で凍結させた。続いて、組織を等量の水(1:1v/v)で均質化し、次にメタノールで抽出して、後援者に出荷するまで−70℃で保存した。本実施例の製剤組織および血漿薬物動態成分用に尾静脈血を採取した(1.0mL)。
【0174】
実施例2.1.6:HPLC
【0175】
脳組織および血漿中の総トポテカン(遊離およびリポソーム被包)の高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)が、等張逆相HPLC/UV法を使用して、Northern Lipids Inc.(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビー)によって行われた。方法の詳細は、以下のとおりである。簡単に説明すると、動物(n=3)を1時間および6時間、2日、4日、および7日目に屠殺した。脳を除去して、氷上に置き、背面アプローチを使用して線条体を切除し、組織を液体窒素中で凍結させた。等量の氷冷水(1:1w/w)を添加し、解凍した組織を機械的に2分間均質化して(Biospec)、凍結させた。分析するために凍結ホモジネートをNLIに出荷した。200μLの解凍ホモジネート試料を、800μLの冷メタノール(1:4)を含有するエッペンドルフ管に移し、12,000rpmで2〜5分間遠心分離した。Northern Lipids Inc(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビー)による有効な逆相HPLC法を使用して、上澄み液200μLを即時分析用、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)による分析用に自動サンプラーバイアルに入れる(または最長3ヶ月以内の分析まで−70℃で保存される)。TPTの場合、ラクトン体にはメタノール:水:トリフルオロ酢酸(40:60:0.02)を利用し、カルボン酸体には、20mMホウ酸塩緩衝剤メタノール(60:40)を利用して、標準物質を新たに調製した。分析は、Waters2690/5 Separation Module and EmpowerソフトウェアHPLCシステム上で、C18逆相シリカカラム[Phenomenex Inc Luna C−18(2)カラム、250mm x 46mm 内径、5μm粒径、周囲温度]を用いて、C18セキュリティガードカートリッジ(Phenomenex Inc,4×3.0mm)によって行った。試料を自動サンプラートレイに5±3℃で置き、試料注入量30〜50μLを使用し、カラムを流速1.0mL/分で、移動相A3%トリエチルアミン酢酸緩衝液、pH5.5(TEAA)および移動相Bアセトニトリル3%TEAA(50:50)から成る移動相により溶出した。勾配溶出は、最初の5mmにおいて78:22 A:B〜50:50 A:B、3mm保持されて、0.5mmにおいて最初に戻り、実行時間の合計は15分であった。トポテカンは、Waters 2475 Multi λ蛍光検出器(誘起380nm、発光520nm)で検出された。トポテカンカルボン酸およびラクトン形態の典型的な保持時間は、それぞれ5.5および7.5mmであった。この方法は、0.8ng/mL〜240ng/mLの範囲に渡って、良好な感度および線形性を有する。TPTの抽出方法回復因子は0.9であった。
【0176】
実施例2.1.7:早期死亡/予定外の屠殺
【0177】
動物が試験時に死亡した場合、死亡時刻は、可能な限り厳密に推定および記録し、剖検を可能な限り早急に行った。剖検をすぐに行うことができなかった場合、動物を冷蔵して(冷凍ではない)、組織の自己消化を最小限に抑えた。剖検は、死後12時間以内に行った。
【0178】
動物の健康状態が不良であるか、または死が近づいていると思われる場合は、安楽死させ得る。可能であれば、必要に応じて血液または他の標本を採取および分析して(例えば、臨床病理パラメータ用)、倦怠感/死亡の原因の解明を支援した。
【0179】
実施例2.1.8:統計的手法
【0180】
連続(N、平均および標準偏差)およびカテゴリ(N、%)データの記述統計学は、適切な場合、表形式および図式の両方で提示される。薬物(t1/2)の組織半減期、クリアランス(CL)、脳内の平均滞留時間(MRT)、および濃度対時間曲線(AUC)下の領域を含む、薬物動態(PK)パラメータは、すべてWinNonlin5.0(Pharsight Corporation,米国カリフォルニア州マウンテンビュー)を利用して、非コンパートメント薬物動態データ分析によって決定した。
【0181】
実施例2.1.9:動物の飼育
【0182】
各動物は、番号付き耳タグおよびケージカードによって識別した。試験施設に到着すると、試験処置の最低3日前に、試験動物を部屋に順化させた。試験中は、少なくとも1日1回、それらのケージ内で、飼育スタッフによる日常的な飼育中に動物を観察した。各動物は、全体的な健康状態の変化について観察した。何らかの疾患の兆候があれば、すぐに担当の獣医および研究主任に報告した。
【0183】
薬物注入に先立って体重を測定し、屠殺は、2、4、7、および10日目に予定された。
【0184】
摂餌量は、飼育スタッフによって、各動物に対して、手術の前日に開始して屠殺するまで毎日評価した。摂餌量は、1日の飼料の残りを目視観測することによって評価した。飢餓または脱水の証拠は、担当獣医および研究担当者に報告し、適切な対応を行った。
【0185】
実施例2.2:結果
【0186】
実施例2.2.1:誘導体
【0187】
2つの動物バッチ(バッチ120806および010507)を試験に使用した。6時間、2日、4日、および7日後の時点で動物を屠殺し、全体剖検において、異なる時点で屠殺した数匹の動物における経心臓的かん流時に、心肥大を観察した。観察される心肥大が、被検物質または動物バッチ/株と関連したか否かを決定するために、異なる動物バッチ(バッチ010507)を1時間の時点で使用し、初期バッチ(バッチ120806)から15匹の動物を対照として使用した。対照群は、外科的処置、または任意の被検物質を何も受けていなかった。
【0188】
実施例2.2.2:製剤スクリーニング薬物動態
【0189】
この試験コンポーネントに対して予定された数の動物(60)を試験した。屠殺する前に体重を評価した時点で(2日、4日、7日)、ベースラインと屠殺との間に、有意な体重の喪失(40%以上)は認められなかった。1時間の時点で、4匹の動物を交換する必要があった。2匹は麻酔により死亡し、1匹は被検物質(製剤3)の注入中に目覚めたため、安楽死させる必要があり、1匹は穿頭孔を開けている間に呼吸停止した。全体剖検において、いずれの動物も知見を示さなかった。6時間の時点における動物は、いずれも交換する必要がなかった。2日の時点における1匹の動物は、麻酔により死亡したため、交換する必要があった。4日の時点における1匹の動物は、対照動物として誤って屠殺したため、交換する必要があった(製剤3の注入後3日)。7日の時点における3匹の動物は、不正な製剤1の調製物を投与したため、交換する必要があり、したがって、分析に含めることができなかった。注入は、製剤4に割り当てられた1匹の動物を除いて順調であり、1時間の時点で、27分から40分注入後に注入システムの漏出が認められた。実施例2.2.1において説明されるように、合計15匹の動物を対照として使用し、任意の介入を経なかった。動物処分の概要は、表3において見出すことができる。
【表2】
F1:DSPC/CHOL 0.1D:L比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
F2:DSPC/DSPG/CHOL 0.3 D:L比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
F3: DSPC/DSPG/CHOL 0.1 D:L比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
F4:遊離トポテカン0.5mg/mL
DSPC/DSPG=ジステアロイルホスファチジルコリン/ジステロイルホスファチジルグリセロール
Chol=コレステロール
D:L比=薬物脂質比(w/w)
Ls−TPT=リポソームトポテカン
Ls−GD=リポソームガドジアミド
( )は、交換された動物の数を示す
【0190】
実施例2.2.3:脳組織濃度
【0191】
トポテカン脳組織濃度は、遊離トポテカン群において、1時間および6時間の時点においてのみ測定可能であった(製剤4)。対照的に、Ls−TPT群において、測定可能な脳組織濃度は、48時間(製剤1)または96時間(製剤2および3)を通しても見出可能であった。いずれの製剤も、7日目には検出可能なレベルを有しなかった。すべての時点において、製剤2は、製剤2および3が極めて低く、同様の濃度を有した96時間の時点を除いて、最大の組織濃度を有した。遊離トポテカンの短い半減期を考えると、検出されたトポテカンレベルは、特に6時間を超えると、リポソーム製剤1、2、および3に対して、被包されたトポテカンを反映すると想定される。表4は、製剤および時点別のトポテカンの脳組織濃度の概要である。
【表3】
F1:DSPC/CHOL 0.1D:L比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
F2:DSPC/DSPG/CHOL 0.3 D:L比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
F3:DSPC/DSPG/CHOL 0.1 D:L比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
F4:遊離トポテカン0.5mg/mL
DSPC/DSPG=ジステアロイルホスファチジルコリン/ジステロイルホスファチジルグリセロール
CHOL=コレステロール
D:L比=薬物:脂質比(w/w)
Ls−TPT=リポソームトポテカン
Ls−GD=リポソームガドジアミド
【0192】
実施例2.2.4 濃度−時間変数
【0193】
図2に示されるように、最大脳組織濃度は、DSPC/DSPG/CHOL 0.3 D:L比トポテカンのナノリポソーム製剤により達成されたが、他の2つのリポソーム製剤は、遊離トポテカンと同様に機能した。最初の96時間に渡る脳組織濃度の範囲1.24〜146.4μMは、DSPC/DSPG/CHOL 0.3 D:L比ナノリポソーム製剤に対して決定した。各製剤の薬物の組織1/2、CL、脳内MRT、およびAUCを含む薬物動態(PK)パラメータは、表5において列挙される。回帰を適切に計算するには十分な濃度ポイントがないため(末端傾斜において少なくとも3つの濃度PKパラメータの解釈は慎重に行う(WinNonlin Analysis、別添)。データポイントの数が制限されているため(各データポイントで3匹の動物を屠殺する必要がある)、有意なPK変数は、AUCを除外して計算することはできなかった。AUC(O−最終)は、DSPC/CHOL0.1およびDSPC/DSPG/CHOL0.1(それぞれ38.27および68.21μg・日/g)、および遊離トポテカン(5.5μg・日/g)と比較して、DSPC/DSPG/CHOL0.3 D:L比製剤(153.8μg・日/g)に対して顕著に大きかった。すべてのナノリポソーム製剤は、1日の範囲で半減を生じたが、遊離トポテカンの半減期ははるかに短かった。これらの結果に基づいて、Ls−TPT製剤2(DSPC/DSPG/CHOL0.3 D:L比)を、その後の試験のために選択した。
【表4】
【0194】
実施例2.3:考察
【0195】
本実施例2において提供される試験は、脳内CEDを介して送達される3つの新規Ls−TPT製剤および遊離トポテカンと比較して、複合薬物送達アプローチのラットの正常脳組織における薬物動態プロファイルを評価したものである。評価された3種のナノリポソーム製剤の中で、薬物:脂質比が0.3であり、トポテカン濃度0.5mg/mLである製剤2、DSPC/DSPG/CHOLは、AUC(O−最終)153.8μg−日/gおよび半減期が約1日である、最適な脳内薬物動態プロファイルをもたらすことが判明した。Ls−TPT製剤2(DSPC/DSPG/CHOL 0.3 D:L比)のAUCおよび半減期は、遊離トポテカンのそれをはるかに上回り、リポソームからの長い薬物放出動態、所望のCED送達特性を示す。Ls−TPT製剤2に対して認められる良好な薬物動態プロファイルは、活性薬物のリポソームからの放出が遅いという良好な放出特性に関連する可能性がある。
【0196】
Ls−TPT製剤2の薬物動態プロファイルを大局的に見るために、当試験で見出されたトポテカンの濃度を、以前のインビトロ試験からのデータと比較した。6、48、および96時間における濃度(それぞれ108.8、31.25、および1.24μM)は、様々な悪性グリオーマ細胞株のそれぞれ1、24、72および120時間に渡る曝露後に、2.4、0.038、0.28および0.02−>4μMの50%抑制濃度(IC50)をはるかに上回った(Marchesini 1996,Pollina 1998,Schmidt 2001)。したがって、Ls−TPT製剤2は、少なくとも96時間に渡って、インビボでトポテカンの十分な細胞毒性組織濃度を提供することを想定するための確固とした根拠がある。
【0197】
実施例2.4:結論
【0198】
薬物:脂質比が0.3であり、トポテカン濃度0.5mg/mLであるLs−TPT製剤DSPC/DSPG/CHOLは、最適な脳内薬物動態プロファイルをもたらすことが判明した。
【0199】
実施例3:CEDによるヌードラットの線条体に送達されるローダミンリポソームの対流性
【0200】
実施例3.1:材料および方法
【0201】
9匹のラットを本試験に使用した。ローダミンリポソーム(DSPC/DSPG/Chol、70:20:10モル比)を、0.5モル%ローダミンPEとともに、CED注入によってラットの線条体の両側に送達した。ローダミンリポソームの希釈液は、ヒスチジン/生理食塩水緩衝液を使用して調製し、スクロースを添加して、表7に記載される最終スクロース濃度3mM、15mM、および5mMを達成する。
【表5】
【0202】
CEDの場合、シリコンカニューレを自動ポンプに接続して対流増進送達に使用し、適切な腹側座標まで下げた(AP=+0.5mm、ML=3.0mm、DV=−4.5〜−5mm、−3.3mmにおいて歯バーを用いる)。被検物質は、各線条体中に一度に両側注射した。半球当たり20μL用量を達成する本試験において使用される注入率は、0.2μL/分(15分)+0.5μL/分(10分)+0.8μL/分(15分)であった。ラットは、CED送達後、すぐに屠殺した。脳を除去し、左右の半球に分割した。右半球は、−60℃で、ドライアイス/イソペンタン中で凍結させ、組織学的分析に先立って、−80℃で24時間保存した。各動物の左半球は、Nothern Lipids,Incによる後分析用に−80℃で凍結させた。ラットの一部において、分析用に線条体を左半球から除去した。
【0203】
各ラットの右半球は、20μに分割し、線条体全体で10ごとの切片をスライドに載置した。切片を撮影し、NIH画像を使用して、線条体内の分散量を計算した。線条体の外側で発生しているローダミン蛍光は、分析に含まなかった。組織学的スライドは、Vd分析のためにUCSFに送付した。各ラットの左半球から得られた組織は、抽出効率の判定のために、Northern Lipidsに送付される。
【0204】
実施例3.2:結果
【0205】
ローダミン蛍光は、CED注入を受けているすべてのラットにおいて検出された。すべてのラットにおいて、標識は線条体内で分散した。一部のラットは、脳梁および内包線維トラックにおいて強い標識化を示した(データは図示せず)。表8は、3mM、15mM、および75mMのスクロース濃度における、個別のラットの分散容積(Vd)を示す。CEDチューブに伴う技術的困難に起因して、3匹のラットに、20μLを各線条体に注入するのではなく、40μLのローダミンリポソームを各線条体(斜線部分)に両側注入した。これらのラットは、分析に含まなかった。75mM群の動物は、手術中に(5分)死亡したため含まなかった。注入は、この動物に対して継続したが、リポソームは、動物の死後に部位から押出され、実質に分散しなかった。
【表6】
【0206】
ローダミン蛍光は、40μLおよび20μLの両注入量のスクロース濃度に関係なく、CEDを受けているすべてのラットにおいて検出された(表9)。分散の平均容積は、すべての群において、12.6mm3〜24.9mm3の範囲であった。
【表7】
【0207】
15mM最終スクロース濃度は、3mM最終スクロース濃度と比較して、2倍多い分散量を示した(図3)。スクロース濃度群の統計比較は、群サイズが小さいため、本試験では決定しなかった。
【0208】
このデータは、リポソーム調製物中の異なるスクロース濃度は、CEDガリポソームをラットの実質に分散させる能力に作用しないことを示す。本試験における試料の数は、異なるスクロース濃度が、ローダミンリポソームをラットの線条体にCED送達した後の分散量に及ぼす影響に関する統計分析を行うのに十分でなかった。
【0209】
異なる脂質組成物のローダミン装薬リポソームを使用する以前のデータ(図4)は、本試験において得られる範囲に類似する分散量を示した。
【0210】
本試験において、すべてのスクロース濃度において、半球当たり20μLのリポソームを受けたラットの中で、11.7mm3〜26.6mm3の範囲であった。図4に示されるデータは、製剤1および6に対する同様の範囲におけるVdを示す。図4におけるリポソーム製剤は、いずれも本試験において使用される製剤と同一ではなく、データは、注入処置の技術的側面に関連する可能性がある処置の変動性が高いことを示唆する。さらに、ラットの線条体に隣接する構造および近位の線維束に対するリポソームの分散は、線条体領域の外側のリポソーム分散が、Vd計算に含まれなかったため、両試験において認められる群内差異を説明し得る。
【表8】
【0211】
このデータが、図4にプロットされている。最上列の数字は、それぞれ図4におけるバー1〜7に対応する。個別の動物は、「#1−12」として表される。実際の値は、異なる製剤で得られる分散量を表す。
【0212】
実施例4:無処置齧歯類の脳に脳内送達されるナノリポソーム化合物の薬物動態評価および成体無胸腺ラットにおける脳内異種移植腫瘍に送達されるナノリポソーム化合物の有効性
【0213】
実施例4.1:材料
【0214】
実施例4.1.1:被包物質
【0215】
Ls−TPTおよびLs−GDのGLPグレードの物質は、いずれも実施例1.1および1.2に示したように調製した。
【0216】
実施例4.1.2:動物およびグループ分け
【0217】
6〜8週齢、体重200〜300gの成体雄無胸腺ラットrnu/rnu(Charles River Laboratories,マサチューセッツ州ウィルミントン,バッチ5226156/032607)を使用した。動物は、表11において概説されるように、4つの群に分割した。
【表9】
【0218】
体重に基づいて、同等の群平均体重および標準偏差を達成するように、ラットを群に割り当てた。次に、群を治療レジメンにランダムに割り当てた。単回治療は、腫瘍移植の8日後に予定され、二重治療は、腫瘍移植後8日目および12日目に予定された。
【0219】
実施例4.1.3:外科的処置および治療
【0220】
実施例4.1.3.1:脳内腫瘍異種移植
【0221】
U87MG腫瘍細胞(ヒト膠芽細胞腫、Perry Scientific Inc,カリフォルニア州サンディエゴ,ロットW5051507U87MC)の移植は、標準的な定位固定処置を使用して、右線条体において片側で行った。ラットは、イソフルランで麻酔をかけ(2.5%)、頭蓋の皮膚を剃毛した。ラットを定位フレームに載置し、耳バーおよび切歯バーの使用によって頭部を配置した。無菌法をすべての外科的処置に使用した。皮膚をベタジン溶液で除菌した。頭蓋骨上部の皮膚に縦方向の切開を行い、鈍的切開を使用して、頭蓋骨を覆う結合組織を除去した。小型の歯科用ドリルを使用して、頭蓋骨切除術を行い、ブレグマから0.5mm前方、および3mm左と右に穿頭孔を開けた。30ゲージの25μLのハミルトンシリンジを使用して、U87MG細胞を、軟膜表面から適切な背腹座標を使用して、線条体に定位的に注入した(−3.3mmで歯バーを用いて−4.5〜−5mm)。合計約5.0x105細胞を含有する総量10μLを、10分の期間をかけて右線条体に注入した。予定される動物の数では、すべての介入を1日で行うことができなかったため、腫瘍移植は、異なる2日に行った。したがって、2つの個別の腫瘍懸濁液を調製した。
【0222】
接種後、皮膚をホチキス留めした。ラットは、麻酔からの回復中に監視した。処置を終了する前に、ブプレノルフィンを皮下(SC)投与した後、必要に応じて、ブプレノルフィンをSC投与した。ラットは、腫瘍細胞移植後、1日2回監視した。移植後の生存時間は、約0〜60日となることが予想され、そこで動物を安楽死させて脳を採取した。
【0223】
実施例4.1.3.2:治療
【0224】
麻酔は、イソフルラン(2.5%)を用いて行った。鈍的耳バーを有する定位フレームを使用して、以前に行った穿頭孔を通じてCEDを行った。血栓のみを除去した。右線条体内の腫瘍移植部位に配置されたカニューレを使用して、CEDを解して用量を投与した。自動ポンプ(BASi,Inc.,インディアナ州ウェストラフィエット)に接続された溶融シリカカニューレ(OD168μm、ID102μm)(PolyMicro Technologies,アリゾナ州フェニックス)を使用し、適切な背腹座標に低下させた(−3.3mmで歯バーを用いて−4.5〜−5mm)。背腹座標は、軟膜表面から計算した。カニューレを、27ゲージニードルに挿入し、強力瞬間接着剤で管に固定した。動物は、1用量(20μL)のLs−TPT/Ls−GD製剤を受ける。漸進的の注入速度増分を使用した。20μL量を投与するために使用される注入速度は、0.2μL/分(15分)、0.5μL/分(10分)および0.8μL/分(15分)であった。注入後に、カニューレを所定の位置に5分間留置して、注入液の流出を最小限にした後、徐々に回収した。
【0225】
処置の終了後、ラットを通風のない環境内で維持し、加熱ランプまたは水ボトル、あるいは他の適切な加温方法で保温し、麻酔からの回復を監視した。ブプレノルフィンを、必要に応じて皮下投与した。ホームケージに戻す前に、ラットを処置室で回復させた。
【0226】
実施例4.1.4:60日より前の安楽死基準
【0227】
症状(鼻血/眼窩周囲の出血、不全まひ、脊柱後湾、不活性または食餌を摂取しないか、または毛づくろいしない、ベースライン体重の15%超の体重減少)のうちの任意の1つまたは組み合わせが認められた場合、動物は鎮痛剤で処理した。ブプレノルフィンに加えて、メロキシカムまたはケトロラク等のNSAIDも付与した。動物が48時間以内に改善の兆候を示さなかった場合において、実施例4.1.5において概説されるように安楽死させた。
【0228】
実施例4.1.5:組織採取および処理
【0229】
それぞれの生存期間の最後または60日目に、動物はイソフルランで麻酔吸入され(2.5%)、次いで、PBSの後に4%パラホルムアルデヒドにより心臓内かん流を受けた。
【0230】
試験中に死亡したか、または屠殺された(予定および予定外)すべての動物の完全な全身剖検を、剖体および筋肉/骨格系、すべての外表面および開口部、頭蓋腔および脳の外表面、関連器官および組織を伴う頸部、関連器官および組織を伴う胸部、腹部、および骨盤腔に対して行った。
【0231】
主要な器官を採取し、ホルマリン10%中に保存した。脳を除去し、4%パラホルムアルデヒド中に一晩置いた後、30%スクロース中で平衡化させた。次に、脳を凍結させて、−70℃で保存した。
【0232】
実施例4.1.6:生存中の観察および測定
【0233】
臨床観察および測定は、順応および試験期間を通して、少なくとも1日1回行った。臨床観察および測定は、表12において概説される。
【表10】
【0234】
実施例4.1.7:早期死亡/予定外の屠殺
【0235】
動物が試験時に死亡した場合、死亡時刻は、可能な限り厳密に推定および記録し、剖検を可能な限り早急に行った。剖検をすぐに行うことができなかった場合、動物を冷蔵して(冷凍ではない)、組織の自己消化を最小限に抑えた。剖検は、死後12時間以内に行った。
【0236】
動物の健康状態が不良であるか、または死が近づいていると思われる場合は、安楽死させ得る。可能であれば、必要に応じて血液または他の標本を採取および分析して(例えば、臨床病理パラメータ用)、倦怠感/死亡の原因の解明を支援した。
【0237】
実施例4.1.8:統計的手法
【0238】
生存分析の目的で、動物を治療群別に分類した。さらに、最大トポテカン総用量群(第2群)の動物を、対照群を含む、すべての他の治療群の組み合わせと比較した。後者の分類も、以下に説明されるように、概算U87MG細胞負荷群内で実行した。移植前細胞カウントなしに、2つの個別の腫瘍細胞懸濁液の調製物により、異なる2日で治療されたことにより、移植されたU87MG細胞の数が変動する可能性があるため、治療群は、腫瘍細胞懸濁液によって分析され、したがって、移植後細胞カウントに基づいて、腫瘍移植における概算U87MG細胞負荷によって間接的に分析される(実施例4.2.1を参照)。ログ−ランク試験を使用して、異なる群間の生存を比較した。
【0239】
実施例4.1.9:動物の飼育
【0240】
各動物は、番号の付いた耳タグによって識別した。さらに、各動物のケージは、動物識別番号、試験番号、群、動物の性別を列挙したケージカードによって識別した。
【0241】
動物は、個別にマイクロアイソレータケージに入れ、互いの創傷を害しないようにした。動物を入れた部屋は、試験記録に記録した。他の種は、同一の部屋に入れなかった。部屋は、100%新鮮な空気で十分に換気した(1時間当たり10回より多くの換気)(空気の再循環はしない)。血液採取または他の試験処置を行うために、消灯サイクル期間中に室内灯を点けなければならなかった場合を除いて、12時間照明/12時間消灯の光周期を維持した。室温は、18〜26℃の間で維持した。
【0242】
動物は、断食の期間を除いて、Prolab RMH 2500への自由なアクセスを有していた。本試験の結果を干渉し得るレベルの汚染物質は、食餌中に存在しなかった。水ボトルを介して、各動物は、塩化都市水道水を自由に摂取可能であった。年次水質検査の結果は、PSIアーカイブに維持されている。すべての試験動物は、試験手順に先立って、それらの指定住居に少なくとも3日間順応させた。
【0243】
実施例4.2 結果
【0244】
実施例4.2.1:プロトコル偏差
【0245】
移植後細胞カウントは、移植されたU87MG腫瘍細胞の実数が、プロトコルによって明記されるよりも有意に高かった。また、腫瘍細胞密度は、調製した2つの懸濁液の間で顕著に異なった。具体的に、2つの懸濁液の移植後カウントは、プロトコル特定の数5.0x105と比較して、6.8×105および9.7x105細胞/10μLであった。認められた差異は、懸濁調製物と細胞カウントとの間の細胞成長に起因すると考えられる。考えられる限り、それぞれの移植前カウントは、したがって、より低く、差異は少ないが、それらがプロトコル特定の数に極めて近いとは考えられない。結果の分析において、これらの差異を説明するために、実施例4.1.8において説明されるように、移植後細胞カウントに基づいて、腫瘍移植におけるU87MG腫瘍負荷によって、治療群を分析した。
【0246】
腫瘍移植した動物のうち4匹のみが、ケージ内で死亡したことが認められたため、部分的剖検を行ったか、または全体剖検を行わなかった。これらの動物のうちの3匹は、脳のみを検査したが、1匹はいずれの臓器も検査しなかった。
【0247】
実施例4.2.2:臨床観察および測定
【0248】
4匹の動物のうち2匹を第1群に割り当て、1匹を第3群、および恐らく処置のために行った麻酔に関連して、腫瘍移植前に死亡した1匹を第4群に割り当てた。腫瘍移植群(29匹)の中で、4匹の動物が、試験の経過中に、ケージ内で死亡が認められた。1匹の動物は、第1群に割り当てられ、1匹は第2群、および2匹は第4群に割り当てられていた。第4群に割り当てられた2匹の動物は、高い移植腫瘍細胞負荷を有したが、その他の腫瘍細胞負荷は低かった。他の25匹の動物は、状態不良と見なされたため安楽死させ、動物の大部分において、最も共通する兆候は、15%以上の体重減少、倦怠感、脊柱後湾姿勢、運動障害、振戦、および呼吸困難であった。
【0249】
実施例4.2.3:有効性
【0250】
4匹が麻酔により死亡したため、5匹のみを治療した対照群を除いて、8匹の動物を各群において治療し、残りの動物は、各積極的治療群において、合計8匹の動物を有するように、治療群に再分配した。各動物の個別の生存および各治療群の生存期間の中央値は、表13において概説される。
【表11】
【0251】
治療群別生存期間は、図5に示され、第2群(0.5mg/mL二重投与)において治療された動物の生存期間が長いことが明らかになったが、ログ−ランク検定によって、統計的に有意ではなかった(0.5mg/mL二重投与対対照、p=0.0724;0.5mg/mL二重投与対0.1mg/mL二重投与、p=0.0593;および0.5mg/mL二重投与対0.5mg/mL単一投与、p=0.0742)。第2群の生存期間の中央値は21日であった。
【0252】
第2群(0.5mg/mL二重投与)と比較した合計治療群(1、3、4)の生存期間は、図6に示される。最大Ls−TPT総トポテカン用量において、第2群で治療された動物の生存期間が、併用群と比較して長いことが認められ、これは、ログ−ランク検定によって統計的に有意であった(p=0.0112)。生存期間の中央値は、第2群では21日、合計群1、3、および4では17日であった。
【0253】
低(6.8×105細胞)および高(9.7×105細胞)U87MG細胞負荷による生存期間(すべての治療群を併用)は、表14において、各動物の個別の生存期間および移植細胞負荷群による生存期間の中央値として示され、図7において、全体生存プロットとして示される。生存期間は、腫瘍移植において高細胞負荷を受けた動物の生存期間は、生存期間の中央値が16日であり、低細胞負荷を受けた動物の生存期間の中央値19日に対して短いと考えられるが、(恐らく、少数であるため)生存曲線は、生存期間の最後に向かって収束した。
【表12】
【0254】
低U87MG細胞負荷(6.8×105細胞)の動物において、第2群(0.5mg/mL二重投与)と比較した合計治療群(1、3、4)による生存期間は、図8に示される。併用群と比較して、最大のLs−TPT総トポテカン用量で、第2群において治療される動物の生存期間は長いことが認められるが、ログ−ランク検定によって統計的に有意ではない(p=0.0646)。
【0255】
高U87MG細胞負荷(9.7×105細胞)の動物において、第2群(0.5mg/mL二重投与)と比較した合計治療群(1、3、4)による生存期間が、図9に示される。再度、併用群と比較して、最大のLs−TPT総トポテカン用量で、第2群において治療される動物の生存期間は長いことが認められるが、ログ−ランク検定によって統計的に有意ではない(p=0.1176)。
【0256】
実施例4.3:考察
【0257】
実施例4に開示される試験は、脳内CEDによって無胸腺ラットにおける脳内神経膠腫異種移植モデルに送達される新規のLs−TPT製剤を使用して、複合薬物送達アプローチの有効性を評価したものであった。この実施例は、2種の用量レベルを使用し、一方は、別のグループによって安全性が既に報告されている0.5mg/mL(Saito 2006)であり、低い方は0.1mg/mLである。さらに、2つの投与レジメンは、0.5mg/mLの単一投与、および二重投与を評価し、これまでは単一用量のみが試験されていたため、両方の用量レベルは、4日空けて試験した。他の群と比較して、最大Ls−TPT総トポテカン用量(0.5mg/mL二重投与)に対して、個別に(統計的に有意でない)または組み合わせで(統計的に有意)、長い全体および生存期間の中央値が認められた。用量レベルを占める総用量と投与回数とを比較すると、用量依存効果も認められた。
【0258】
実施例4.4:結論
【0259】
U87MGを使用するラット神経膠腫モデルにおけるこの探索的有効性試験の結果は、CEDによって投与されるLs−TPTが、評価される最大用量レベルにおいて(0.5mg/mL二重投与)、延命効果をもたらすことを示唆する。
【0260】
実施例5:U87MG細胞へのトポテカンおよびリポソームトポテカンの細胞毒性
【0261】
実施例5.1:材料および方法
【0262】
実施例5.1.1:被検物質:
【0263】
遊離トポテカン製剤は、GlaxoSmithKline(ノースカロライナ州Research Triangle Park)およびHisun Pharmaceuticals(中国浙江省台州市)から入手した。
【0264】
GLPグレードLs−TPT製剤調製物用のトポテカンは、Hisun Pharmaceuticals(中国浙江省台州市)から入手した。つまり、リポソームは、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、およびコレステロール7:2:1モル比で、75〜90nm標的サイズで構成される。トポテカンは、それぞれ硫酸アンモニウム250mM pH5.5およびヒスチジン10mM/NaCl145mM pH6.0から成る、内部および外部緩衝液を使用して、膜貫通pH勾配に応答して、リポソーム中に遠隔装薬される(能動的に被包される)。トポテカン濃度2.0mg/mLおよび0.3(w/w)薬物:脂質比は、90〜95%の薬物被包効率を想定して目標を設定した。
【0265】
Ls−GD調製物用のガドジアミドは、Estech Pharma(韓国京畿道安山市)から入手した。GLPグレードLs−GDは、GDがナノリポソームに受動的に被包されたことを除いて、topoCEDと同様に調製した。ダイアフィルタによるろ過によって、非被包GDおよび溶媒を除去した後、最終GD被包率は、90%より大であった。標的GD含有量は、5.0mg/mL±10%であり、粒子サイズは75〜120nmの範囲であった。
【0266】
それぞれ、Ls−TPTの被検物質は凍結保存し(−20〜−30℃)、Ls−GDは冷蔵保存して(2〜8℃)、光から保護した。被検物質溶液は、投与の日に新しく調製し、室温で保持した。5mMヒスチジン、145mM NaCl pH6.0、300mMスクロースまたは0.9%生理食塩水による被検物質原液の適切な希釈を行い、適切な濃度で、所望の試験量の試験溶液を産生した。
【0267】
実施例5.1.2:細胞株および培地
【0268】
U87MGヒト神経膠腫細胞株をすべての実験に使用した(UCSF培養施設、カリフォルニア州サンフランシスコ)。細胞は、T175 Falconフラスコ(BD Bioscience,カリフォルニア州サンノゼ)において確立した。細胞は、10%ウシ胎孔血清、非必須アミノ酸、および抗生物質(ストレプトマイシン100μg/mL、ペニシリン100DImL)を補充した、Eagleの最小必須培地(MEM)から成る、完全最小必須培地(CMEM)に維持した。すべての培地構成要素は、UCSF細胞培養施設から入手した。培地は、5%CO2の加湿したチャンバにおいて、37℃で培養した。95%の集密が達成されると、細胞を0.05%トリプシン−0.02%エチレンジアミンテトラ−酢酸(UCSF培養施設、カリフォルニア州サンフランシスコ)により簡潔にトリプシン化し、細胞を500xgで10分間遠心分離した。上澄みを吸引した後、5mLの完全細胞成長培地において(抗生物質および10%ウシ胎孔血清を伴う)、細胞を直接再懸濁した。細胞カウントは、ヘマトサイターにおいてトリパンブルーにより行った(Hausser Scientific,ペンシルベニア州ホーシャム)。適切な量の完全細胞成長培地を添加して、100μL中100細胞の最終濃度10,000細胞を達成し、蛍光系細胞生死判別試験用に設計された96ウェルプレートの各ウェルに移した(CellTiter−Glo(商標)、Promega,ウィスコンシン州マディソン)。細胞は、被検物質に対する任意の曝露前に24時間付着させることができた。12マルチチャネルピペットを使用して、100μLの被検物質を添加する直前に、96ウェルプレートから培地を除去した。被検物質に対する曝露後、24、48、および72時間に、細胞毒性試験を行った。各被検物質および対照のすべての時点は、3倍で行った。
【0269】
実施例5.1.3:実験設計
【0270】
表15は、対照とともに評価された異なる被検物質および濃度を概説する。
【表13】
【0271】
被検物質のすべての計算および希釈は、第2の調査者によって検証された。被検物質の希釈は、U87MG培養に使用される培地を用いて行った。
【0272】
実施例5.1.4:生死判別試験
【0273】
試験は、熱安定型ルシフェラーゼを使用して、代謝的に活性な細胞の指標として存在するATPの定量に基づく。ルシフェラーゼは、ルシフェリン、酸素、およびATPを、基質として、オキシルシフェリンを生成し、光の形態でエネルギーを放出する反応において使用する。生成される光の量は、存在するATPの量に比例し、生存細胞の数を反映する。所定の時点で、20μLのCellTiter−Glo発光細胞生死判別試験試薬(Promega,ウィスコンシン州マディソン)を、該時点に使用される各ウェルに添加した。プレートを優しく扇動した後、それらを培養器に1時間戻した。次に、FLx800 Multi−Detection Microplate Reader(Biotek,バーモント州ウィヌースキ)を使用して、プレートの発光を読んだ。各ウェルに対して得られる相対光単位(RLU)を、標準曲線に基づいて、生存細胞の数に変換した。細胞生存率およびIC50値は、グラフィック外挿に由来した(Gen5 データ分析ソフトウェア、Biotek,バーモント州ウィヌースキ)。
【0274】
実施例5.1.5:統計的手法
【0275】
すべての細胞毒性試験は3回実行し、すべての濃度および時点における平均値が報告されている。他の統計は適用しなかった。
【0276】
実施例5.2:結果
【0277】
遊離トポテカン(GlaxoSmithKlineおよびHisun Pharmaceutical)およびリポソームトポテカンの細胞毒性および異なる発生源および製剤の能力は、同程度の濃度(0.01、0.1、1.0、および10μM)および時点(24、48、および72時間)で極めて類似し、Ls−TPT製剤の潜在的な有効性を支持していると思われる。Ls−GD単独またはLs−TPTとの共注入は、200μMという極めて高い濃度においても細胞毒性をもたらさず、結果として、Ls−TPTの擬似イメージングトレーサの良好な候補であると考えられる(データ図示せず)。本試験において、遊離トポテカンとリポソームトポテカンとの間の差異が全体的に存在しないことは、リポソームからのトポテカンの急速放出をもたらす環境のインビトロ性質によって説明することができ、リポソーム製剤の薬物動態的利点は、インビボでより明らかとなる。
【0278】
実施例6:脳内対流増進送達によって成体無胸腺ラットに投与されたリポソームトポテカンおよびリポソームガドジアミドの異なる製剤の正常な脳および異種移植U87MG腫瘍における対流プロファイルおよび組織分散
【0279】
実施例6.1
【0280】
実施例6.1.1:被検物質
【0281】
GLPグレード物質Ls−TPTおよびLs−GDを、実施例2.1.1および2.1.2に記載のとおり調製した。Ls−GD製剤のガドジアミドは、Estech Pharma(韓国京畿道安山市)から入手した。Ls−GDは、GDがナノリポソームに能動的に被包されたことを除いて、トポCEDと同様に調製した。非被包GDおよび溶媒をダイアフィルタによるろ過によって除去した後、最終GD被包率は90%以上であった。標的GD含有量は、5.0mg/mL±10%であり、粒径は75〜120nmの範囲であった。
【0282】
異なるフルオロフォアを使用して、顕微鏡蛍光/発光を可能にするように、Ls−TPTおよびLs−GDを標識した(Ls−TPTの場合は、マリナブルー−DHPE(1,2−デヘキサデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)(Invitrogen,カリフォルニア州カールズバッド)およびLs−GDの場合はローダミン−PE(ホスホエタノールアミン)(Invitrogen,カリフォルニア州カールズバッド)。マリナブルー−DHPEおよびローダミン−PE標識リポソームは、DSPC:DSPG:コレステロール:フルオロフォアモル比69.7:20:10:0.3に基づいて、溶媒溶液と同時に、脂質粉末にフルオロフォアを添加して、それぞれLs−TPTおよびLs−GDと同様に調製した。
【0283】
それぞれ、Ls−TPTの被検物質は凍結保存し(−20〜−30℃)、Ls−GDは冷蔵保存して(2〜8℃)、光から保護した。投与液は、投与の日に新しく調製し、室温で保持した。0.9%生理食塩水による被検物質原液の適切な希釈を行い、適切な濃度を産生した。被検物質原液の新鮮なバイアルは、各投与日に使用した。対照物質は、本試験において使用しなかった。
【0284】
実施例6.1.2:動物およびグループ分け
【0285】
6〜8週齢、体重200〜275gの成体雄無胸腺ラットrnu/ru(Taconic,ニューヨーク州ジャーマンタウン)(バッチ071007および073107)を使用した。動物は、表16において概説されるように、4つの群に分類した。
【表14】
第1群:無処置脳組織−DSPC/DSPG/CHOL D:L0.1+Ls−TPT0.38mg/mL+Ls−GD1.15mg/mL
第2群:無処置脳組織−DSPC/DSPG/CHOL D:L0.3+Ls−TPT1.02mg/mL+Ls−GD1.15mg/mL
第3群:腫瘍組織−DSPC/DSPG/CHOL D:L0.1+Ls−TPT0.38mg/mL+Ls−GD1.15mg/mL
第4群:腫瘍組織−DSPC/DSPG/CHOL D:L0.3+Ls−TPT1.02mg/mL+Ls−GD1.15mg/mL
DSPC/DSPG=ジステアロイルホスファチジルコリン/ジステアロイルホスファチジルグリセロール
CHOL=コレステロール
D:L比=薬物:脂質比(w/w)
Ls−TPT=リポソームトポテカン
Ls−GD=リポソームガドジアミド
【0286】
試験の開始時に、体重に基づいて、同等の群平均体重および標準偏差を達成するように、ラットを製剤群と組織群とに割り当てた。両方の製剤群における動物は、無処置脳組織群に割り当てられると、1日目にCED注入を受け、腫瘍組織群に割り当てられると、10日目にCED注入を受けた。
【0287】
実施例6.1.3:外科的処置および治療
【0288】
実施例6.1.3.1:脳内腫瘍異種移植
【0289】
この処置は、腫瘍組織群に割り当てられたラットに対して行った。ヒト神経膠腫細胞(U87MG)は、凍結細胞ストック(Perry Scientific Inc,カリフォルニア州サンディエゴ)から、予定の接種の2週間前に入手した。細胞は、腫瘍接種術の日に採取し、密度を50,000〜100,000細胞/μLに調整した。接種の日(0日目)に、各ラットに合計500,000個のU87MG腫瘍細胞を、5−10μLの懸濁液を使用して、右線条体に片側移植した。定位固定技術およびイソフルラン(2.5%)による麻酔を使用した。ラットは、定位フレームに載置し、耳バーおよび切歯バーを使用して頭部を配置した。すべての外科的処置に対して無菌法を使用した。皮膚を70%アルコール、続いてベタジン溶液で消毒した。頭蓋上部の皮膚を縦方向に切開し、鈍的切開を使用して、頭蓋を覆う結合組織を除去した。小型の歯科用電気ドリルを使用して、頭蓋骨切除術を行い、ブレグマから0.5mm前方、および3mm左と右に穿頭孔を開けた。30ゲージの25μLのHamiltonシリンジを使用し、軟膜表面から適切な背腹座標を使用して(−3.3mmで歯バーを使用して、−4.5〜−5mm)、U87MG細胞を定位的に線条体に注入した。U87MG懸濁液の最終細胞濃度に依存して、注入量を5〜10μLの間で調整し、合計500,000±25,000細胞が、10分間に渡って送達されるようにした。
【0290】
接種後、皮膚をホチキス留めした。ラットは、麻酔からの回復中に監視した。処置を終了する前に、ブプレノルフィンを皮下(SC)投与した後、必要に応じて、ブプレノルフィンをSC投与した。
【0291】
実施例6.1.3.2:治療
【0292】
被検物質は、CED注入を介して、試験1日目に、無処置脳組織群に割り当てられたラットに投与し、10日目に、腫瘍組織群に割り当てられたラットに投与した。用量は、CEDを介して、無処置組織群において、ラットの背腹線条体に対して両側に投与し、腫瘍組織群において、腫瘍移植に使用される座標と同一の座標を使用して、ラットに腫瘍内的に投与した。すべての群全体で同様に、投与時間を分散させる、組織的な順序でラットに投与した。麻酔は、イソフルラン(2.5%)またはケタミン(90mg/kg)およびキシラジン(12mg/kg)の組み合わせのいずれかによって、腹腔内注射を介して行った。鈍的耳バーを有する定位フレームを使用して、CEDを行った。無処置脳組織群に割り当てられたラットにおいて、第5.3.1項に概説されるように、両側穿頭孔を形成した。腫瘍組織群に割り当てられたラットにおいて、頭皮切開部を再度開いて、既に形成された穿頭孔を可視化した。血栓のみを除去した。自動ポンプ(BASi,Inc,インディアナ州ウェストラフィエット)に接続される、溶融シリカカニューレ(OD168μm、ID102μm)(PolyMicro Technologies,アリゾナ州フェニックス)をCEDに使用し、適切な背腹座標に低下させた(−3.3mmで歯バーを使用して、−4.5〜−5mm)。背腹座標は、軟膜表面から計算した。カニューレは、27ゲージニードルに挿入し、強力瞬間接着剤で管に固定した。漸進的注入速度増分を使用した。本試験において、治療当たり20μLの総注入量(Vi)を達成するために使用される注入速度は、0.2μL/分(15分)、0.5μL/分(10分)および0.8μL/分(15分)であった。注入後に、カニューレを所定の位置に5分間留置して、注入液の流出を最小限にした後、徐々に回収した。処置の終了後、ラットを通風のない環境内で維持し、加熱ランプまたは水ボトル、あるいは他の適切な加温方法で保温し、麻酔からの回復を監視した。ブプレノルフィンを、必要に応じて皮下投与した。
【0293】
実施例6.1.3.3:安楽死
【0294】
被検物質のCED注入から1時間後、1日目(無処置脳組織群)または10日後(腫瘍組織群)に、すべての群におけるすべてのラットを安楽死させ、組織学的分析のために脳を除去した。安楽死の際に、動物は、イソフルラン(2.5%)によって深麻酔をかけた後、0.9%生理食塩水(100mL)に続いて4%パラホルムアルデヒド(300mL)による心内かん流を受けた。
【0295】
実施例6.1.3.4:組織採取および処理
【0296】
試験中に死亡したか、または屠殺された(予定および予定外)すべての動物の完全な全身剖検を、剖体および筋肉/骨格系、すべての外表面および開口部、頭蓋腔および脳の外表面、関連器官および組織を伴う頸部、関連器官および組織を伴う胸部、腹部、および骨盤腔に対して行った。
【0297】
脳を除去し、4%パラホルムアルデヒド中で最大24時間培養した後、30%スクロース中で平衡化させた。スクロース平衡化後に、組織をドライアイスおよびイソペンタンの混合物中、−60℃で凍結させ、後の処理のために−70℃で保管した。心臓、肺、肝臓、腎臓、すい臓(またはその一部)も、存在する場合は採取および保存した。これらの組織は、中性緩衝化した10%ホルマリン中で固定した。ホルマリン固定した臓器は、次に肉眼視され、必要に応じて、後の組織病理学的分析用にパラフィンブロックに処理された。
【0298】
実施例6.1.3.5:組織病理学的分析および分散量の評価
【0299】
脳は、20ミクロンで低温切開し、4つおきの切片をガラススライド上に収集し、Fluoromount−Gでカバースリップした。Ls−TPTおよびLs−GD両方の対流プロファイルおよび組織分散は、蛍光顕微鏡、SPOTカメラ、SPOTソフトウェア、およびMacintosh(登録商標) G4コンピュータを使用して撮影された画像によって決定し、切片におけるマリナブルー−DHPEおよびローダミン−PEフルオロフォアの両方の分散量(Vd)は、Macintosh(登録商標)系の画像分析システムを使用して計算した[ImageJ,国立保健研究所(NIH)、メリーランド州ベセスダ]。関心領域(ROI)は、NIH画像ソフトウェアを使用して描き、分散データは、エクセルスプレッドシートに移行させた。分散量(mm3)は、平均ROI領域(mm2)および分散距離(mm)を掛けることによって計算した。残りの切片は、4℃で保管し、追加の免疫組織化学分析に使用することができる。
【0300】
実施例6.1.3.6:生存中の観察および測定
【0301】
臨床観察および測定は、順応および試験期間を通して、少なくとも1日1回行った。ケージサイド観察の記録は、第1回投与の少なくとも3日前に開始し、終了まで継続する。各動物は、全体的な外観および挙動の変化について観察した。
【0302】
実施例6.1.3.7:早期死亡/予定外の屠殺
【0303】
U87MG腫瘍細胞の脳内注入を受けているラットは、通常、17〜25日の寿命を有し、死亡する直前まで無症候のままである。本試験において、10日目に早期屠殺する可能性は低いが、症状(鼻血/眼窩周囲の出血、不全まひ、脊柱後湾、不活性または食餌を摂取しないか、または毛づくろいしない、ベースライン体重の15%超の体重減少)のうちの任意の1つまたは組み合わせが認められた場合、動物を安楽死させ得る。可能な場合、血液または他の標本を採取し、必要に応じて分析して(例えば、臨床病理パラメータ用)、倦怠感/死亡の原因の解明を支援した。
【0304】
動物が試験時に死亡した場合、死亡時刻は、可能な限り厳密に推定および記録し、剖検を可能な限り早急に行った。剖検をすぐに行うことができなかった場合、動物を冷蔵して(冷凍ではない)、組織の自己消化を最小限に抑えた。剖検は、死後12時間以内に行った。
【0305】
実施例6.1.3.8:統計的手法
【0306】
記述統計学(平均および標準偏差)を使用して、データを要約し、それらを図で示した。
【0307】
実施例6.1.4:動物の飼育
【0308】
各動物は、番号の付いた耳タグによって識別した。さらに、各動物のケージは、該動物の動物識別番号、試験番号、群、入手元、到着日、種/株、誕生日、および性別到着日を列挙したケージカードによって識別した。
【0309】
動物は、個別に隔離ケージに入れた。寝床材料は、広葉樹チップ(Sanichips,Harlan,カリフォルニア州)を削り、週に1回交換した。室温は、主に18〜26℃(64〜79F)に維持され、相対湿度は、30〜70%であった。温度および湿度は、連続的に監視し、最小値および最大値を記録した。試験手順を行うために、(消灯サイクル中に)室内灯を点ける必要があった場合を除いて、12時間点灯/12時間消灯の周期的照明期間を維持した。
【0310】
ラットは、試験期間を通して、照射Teklad Global 18% Protein Rodent Diet(齧歯類用プロテイン食餌)(Harlan,米国カリフォルニア州サンディエゴ)および自治体の水道水を自由に摂取させた。食餌または水中に、試験の結果に有害な作用を及ぼすレベルの汚染物質は存在しないことが分かった。年次水質検査の記録は、PSIアーカイブにおいて維持されている。
【0311】
所定の住居に到着すると、初期健康診断後に受領のため受け入れたすべてのラットを、任意の動物関連試験手順の最小3日前に、住環境(主要柵および部屋)に順応させる。順応期間中に、ラットの全体的な健康を毎日監視した。良好な臨床状態(すなわち、体重仕様内)であることが視認されたラットのみを試験に登録した。異常が認められ、不良な健康の兆候(すなわち、フリルコート、有意に低い体重)を呈した任意のラットは、試験から除外した。
【0312】
実施例6.2:結果
【0313】
実施例6.2.1:プロトコル偏差
【0314】
腫瘍組織群に割り当てられた動物は、片側腫瘍移植を受けたが、被検物質のCEDは、(左半球無処置脳組織および右半球腫瘍組織において)両側で行った。脳標本の断片厚は、すべての動物で20μmから30μmに変更し、蛍光信号を増加させるために、4つごとの切片ではなく、5つおきの切片を収集した。
【0315】
実施例6.2.2:臨床観察および測定
【0316】
本試験では、いずれの動物も交換する必要がなかった。いずれの動物も、死亡が認められず、すべて予定通りに屠殺が行われた。屠殺前試験は、無処置脳組織および腫瘍組織群両方のすべての動物において正常であった。
【0317】
実施例6.2.3:対流プロファイルおよび組織分散
【0318】
14匹の動物を、治療スケジュールに従って治療し、予定された数の動物を各群において治療した。平均および標準偏差を伴う個別の分散量(Vd)、および第1群および第2群(無処置脳組織)のLs−TPT−マリナブルーDHPEとLs−Gd−ローダミン−PEの相関係数が表17に示され、図10に図示され、第3群および第4群(腫瘍組織)が、表18に示され、図11に図示される。統計分析システム(SAS)におけるCORR手順を使用して、ピアソンの相関係数を生成した。
【表15】
#動物7643の右半球において、Ls−TPTおよびLs−GDの両方で蛍光信号は見られなかったか、またはごくわずかに見られ、これは恐らく、注入機能不全または操作者のエラーに起因する。
第1群:無処置脳組織−DSPC/DSPG/CHOL D:L 0.1+Ls−TPT 0.38mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
第2群:無処置脳組織−DSPC/DSPG/CHOL D:L 0.3+Ls−TPT 1.02mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
【表16】
【0319】
両製剤のLs−TPT−マリナブルーDHPEのVd値は、無処置脳組織群において狭い範囲内であり(D:Lが0.1:1および0.3:1の場合、それぞれ平均39.0±3.0および38.5±5.6mm3)、対応するVd:Vi比は1.9:2.0であった。対照的に、Vd値は顕著に小さく、概して、腫瘍組織群において変動性が高く、無処置脳組織における2つのLs−TPT製剤の場合は平均25.8mm3+10.6および21.4±11.9であり、腫瘍組織において平均26.8±2.5および31.2±8.0mm3であった。対応するVd:Vi比は、無処置脳組織において1:1〜1:3であり、腫瘍組織において1:3〜1:6であった。腫瘍組織群における2つのLs−TPT製剤間にわずかな差異があったが、一貫しておらず(D:L 0.1:1のVd値は、無処置脳組織において、D:L0.3:1よりも名目上高いが、腫瘍組織において名目上低い)、統計的に有意ではない。
【0320】
Ls−Gd−ローダミン−PEの結果は、Ls−TPT−マリナブルーDHPEと顕著に一致した。特に、平均Vd値は、無処置脳組織群において、39.0±4.2および39.3±5.3mm3であり、対応するVd:Vi比は1.9〜2.0であった。腫瘍組織群において、平均Vd値は、無処置脳組織において、24.0±11.2および22.3±9.2mm3であり、腫瘍組織において、24.1±4.5および32.2±8.1mm3であった。対応するVd:Vi比は、無処置脳組織において1.1〜1.2であり、腫瘍組織において1.2〜1.6であった。
【0321】
個別の分散結果と一致して、Ls−TPT−マリナブルーDHPEおよびLs−Gd−ローダミン−PEの平均Vd値間の相関は、すべての治療群において優れ(0.95〜0.99の範囲)、組織型間(無処置脳対腫瘍組織)の相関において顕著な差異はなかった。
【0322】
DSPC/DSPG/CHOL D:L0.1製剤を受容している3匹の動物すべてにおいて、半球の一方におけるLs−TPT−マリナブルーDHPEとLs−Gd−ローダミン−PEの両方で認められる蛍光信号はないか、または最小であった。これらの動物のうちの1匹は、無処置脳組織群(ラット#7643)であり、他の2匹の動物は、U87腫瘍異種移植を受け(腫瘍組織群)、1つの例は、腫瘍異種移植側で発生したが(ラット#7607)、他の例は、非移植側で発生した(ラット#7633)。すべての奨励は、注入障害または操作者のエラーによる可能性があった。
【0323】
実施例6.3:考察
【0324】
この実施例6は、異なるフルオロフォアを使用して、治療用ナノリポソーム化合物の2つの製剤、Ls−TPT、およびLs−TPT、Ls−Gdの代理画像トレーサの対流プロファイルおよび分散量を評価し、任意の差動組織分散を示すために、これらのリポソームを共標識した。
【0325】
非ペグ化DSPC/DSPG/CHOLリポソーム(7:2:1モル比)に被包されたトポテカンおよびガドジアミドのいずれも、無処置ラット脳組織内で確実に一定して対流した。認められたVd:Vi比1.9〜2.0は、ペグ化リポソーム製剤による公開済みデータに基づく説明と一致した(Saito2004)。重要なことに、Ls−TPTおよびLs−GDの分散は、極めて密接に相関し、Ls−TPT製剤の薬物:脂質比によって顕著に左右されなかった。これは、リポソーム担体が、その薬物装薬から独立して、化合物の分散特性を決定することを示唆すると考えられる。
【0326】
腫瘍組織におけるLs−TPTおよびLs−Gdの分散は、無処置脳組織の場合と同様に密接に相関するが、実際の分散量および対応するVd:Vi比は、顕著に小さい。これは、脳内圧力および腫瘍組織の微小構造に起因するCED動態の改変によって部分的に説明され得る。しかしながら、腫瘍担持ラットの非移植半球の無処置脳組織におけるLs−TPTおよびLs−GDの分散は、いずれも無腫瘍動物と比較して障害された。したがって、過剰な腫瘍成長に起因する組織圧縮による脳内圧力の増加が、腫瘍移植動物の腫瘍組織および無処置脳組織の両方における薬物分散の低下の根底にある最も重要な因子であり得る。これは、以前の研究において、質量効果を伴うカニューレ追跡を通じて、腫瘍異種移植および腫瘍突出と同側の半球拡大を伴う巨大腫瘍成長が見つかっていることから支持される(実施例4を参照)。
【0327】
一般に、薬物分散は、無処置脳組織群よりも、腫瘍組織群において変動性が高い。この場合も、これは、高い脳内圧力と関連する、変化した流体力学挙動によって説明され得る。腫瘍移植した動物における2つのLs−TPT製剤間のわずかな分散差異は、一定ではなく(Vd値は、無処置脳組織においてD:L0.3:1よりも名目上高いD:L0.1:1を有するが、名目上は腫瘍組織よりも低い)、2つの腫瘍組織群間のLs−GDに対して認められた、極めて類似した差異とよく似ている。このため、差異がリポソーム製剤に関連する可能性は低い。
【0328】
3匹の動物の無処置脳または腫瘍組織のいずれかにおける蛍光の欠如または最小の蛍光は、ポンプの機能不全、またはカニューレの亜最適配置による、くも膜下空間への注入液の漏出に起因する。
【0329】
実施例6.4:結論
【0330】
この試験は、Ls−TPTおよびLs−GDのCEDが無処置ラット脳および腫瘍組織の両方において、確実で一定した薬物分散をもたらすことを示した。CED流体力学、脳内圧力によって影響を受けると考えられ、高い脳内圧力は、薬物分散の不全をもたらす過剰な腫瘍成長に起因する。試験したLs−TPTの2つの製剤間に相対的な差異はなく(D:L0.1:1およびD:L0.3:1)、両製剤は、共投与されるLs−GDと良好に共対流し、CED後のLs−TPT薬物分散のリポソームトレーサとして、Ls−GDの適切性を確認する。
【0331】
実施例7:脳内対流増進送達によって成体無胸腺ラットに投与されるリポソームトポテカンおよびリポソームガドジアミドのパイロット毒物性評価
【0332】
実施例7.1:材料および方法
【0333】
実施例7.1.1:被検物質
【0334】
Ls−TPTおよびLs−GDのGLPグレード物質を、いずれも実施例6.1.1において記載されるように調製した。
【0335】
実施例7.1.2:動物およびグループ分け
【0336】
体重200〜270gの成体雄無胸腺ラット(rnu/rnu)(Taconic,ニューヨーク州ジャーマンタウン)(バッチ061207)を使用した。動物は、表19に概説されるように、ナノリポソームトポテカン濃度に基づいて、2つの群に分割した。
【表17】
【0337】
ラットは、同等の群平均体重および標準偏差を達成するように、体重に基づいて群に割り当てた。
【0338】
実施例7.1.3:外科的処置
【0339】
試験の1日目および4日目に、CEDを使用して、ラットは、各半球の線条体に定位的に被検物質の投与を受けた。この反復投与レジメンにおいて、両治療に同一の座標を使用した。ラットは、両群全体に同様に投与時間を分散する、組織的な順序で投薬された。イソフルラン(導入時は5%、手術中の維持の場合は2.5〜3.0%)吸入またはケタミン(90mg/kg)およびキシラジン(12mg/kg)の組み合わせの腹腔内注入のいずれかによって、ラットに麻酔をかけた。頭蓋の皮膚を剃毛し、動物を定位フレームに載置し、耳バーおよび切歯バーを使用して頭部を配置した。すべての外科的処置に対して無菌法を使用した。皮膚を70%アルコール、続いてベタジン溶液で消毒した。頭蓋上部の皮膚を縦方向に切開し、鈍的切開を使用して、頭蓋を覆う結合組織を除去した。小型の歯科用電気ドリルを使用して、頭蓋骨切除術を行い、ブレグマから0.5mm前方、および3mm左と右に直径1mmの穿頭孔を2つ開けた。自動ポンプ(BASi,Inc.,インディアナ州ウェストラフィエット)に接続された溶融シリカカニューレ(OD168μm、ID102μm)(PolyMicro Technologies,アリゾナ州フェニックス)を各半球においてCEDに使用し、適切な背腹座標に低下させた(−3.3mmで歯バーを用いて−4.5〜−5mm)。背腹座標は、軟膜表面から計算した。カニューレを、27ゲージニードルに挿入し、強力瞬間接着剤で管に固定した。被検物質を両側で一度に各線条体に注入した。漸進的注入速度の増分を使用した。半球当たり20μL用量を投与するために使用される注入速度は、0.2μL/分(15分)、0.5μL/分(10分)および0.8μL/分(15分)であった。注入完了後に、カニューレを所定の位置に5分間留置して、注入液の流出を最小限にした後、徐々に回収した。
【0340】
処置の終了後、ラットを通風のない環境内で維持し、加熱ランプまたは水ボトル、あるいは他の適切な加温方法で保温し、麻酔からの回復を監視した。ブプレノルフィンを、必要に応じて皮下投与した。ホームケージに戻す前に、ラットを処置室で回復させた。
【0341】
実施例7.1.4:組織採取および処理
【0342】
安楽死は、11日目に行った。イソフルラン(2.5%)またはCO2吸入によりラットに麻酔をかけた。動物は、トポテカン血漿レベルの決定および必要に応じて他の試験用に経心臓的血液試料を採取された。続いて、動物は、100mLのヘパリン化生理食塩水に続いて、300mLの4%パラホルムアルデヒドによる経心臓的かん流を経て、すぐに剖検された。
【0343】
試験中に死亡したか、または屠殺された(予定および予定外)すべての動物の完全な全身剖検を、剖体および筋肉/骨格系、すべての外表面および開口部、頭蓋腔および脳の外表面、関連器官および組織を伴う頸部、関連器官および組織を伴う胸部、腹部、および骨盤腔に対して行った。
【0344】
脳を除去し、30%スクロース中で平衡化した後、ドライアイスおよびイソペンタンの混合物中、60℃で凍結させた。脳は、後の処理のために−70℃で保管した。心臓、肺、肝臓、腎臓、すい臓(またはその一部)も、存在する場合は、死亡または屠殺された任意の動物から採取および保存した。これらの組織は、すべて中性緩衝化した10%ホルマリン中で固定した。
【0345】
ホルマリン固定した臓器は、必要に応じて、後の組織病理学的分析用にパラフィンブロックに処理された。試験における2つの群のそれぞれから得たすべての脳を30μm厚に切断し、浮遊切片をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)およびアジ化ナトリウム0.2%中で収集した。4つごとの切片をガラススライド上に収集し、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、ヘマトキシリン/エオシン染色用に処理した。残りの切片は、4℃で保管し、追加の免疫組織化学分析に使用し得た。
【0346】
血漿トポテカンおよびガドジアミド抽出および測定用の血液試料を遠心分離して、血漿を分離した。動物当たり400μLの血漿を得た。2.0mLエッペンドルフ管中の冷メタノール1.6mLを氷上に保持し、血漿を管に添加した後、攪拌した。飼料は、その時点ですべての動物が処理されるまで氷上に維持した。管をパラフィンで密閉し、蓋が誤って開かないようにし、凍結保存した。試料は、ドライアイス上でNorthern Lipids lnc(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビー)に出荷した。蛍光検出を用いる高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によってガドジアミド血漿レベルを、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)によって決定した。
【0347】
実施例7.1.5:早期死亡/予定外の屠殺
【0348】
動物が試験時に死亡した場合、死亡時刻は、可能な限り厳密に推定および記録し、剖検を可能な限り早急に行った。剖検をすぐに行うことができなかった場合、動物を冷蔵して(冷凍ではない)、組織の自己消化を最小限に抑えた。剖検は、死後12時間以内に行った。
【0349】
動物の健康状態が不良であるか、または死が近づいていると思われる場合は、安楽死させ得る。可能であれば、必要に応じて血液または他の標本を採取および分析して(例えば、臨床病理パラメータ用)、倦怠感/死亡の原因の解明を支援した。
【0350】
実施例7.1.6:動物の飼育
【0351】
各動物は、番号の付いた耳タグによって識別した。さらに、各動物のケージは、動物識別番号、試験番号、種/株、性別、誕生日、入手元、および到着日を列挙したケージカードによって識別した。
【0352】
動物は、個別に隔離ケージに入れた。寝床材料は、広葉樹チップ(Sanichips,Harlan,カリフォルニア州)を削り、週に1回交換した。室温は、主に18〜26℃(64〜79F)に維持され、相対湿度は、30〜70%であった。温度および湿度は、連続的に監視し、最小値および最大値を記録した。試験手順を行うために、(消灯サイクル中に)室内灯を点ける必要があった場合を除いて、12時間点灯/12時間消灯の周期的照明期間を維持した。ラットは、試験期間を通して、照射Teklad Global 18% Protein Rodent Diet(齧歯類用プロテイン食餌)(Harlan,米国カリフォルニア州サンディエゴ)および自治体の水道水を自由に摂取させた。食餌または水中に、試験の結果に有害な作用を及ぼすレベルの汚染物質は存在しないことが分かった。年次水質検査の記録は、PSIアーカイブにおいて維持されている。
【0353】
所定の住居に到着すると、初期健康診断後に受領のため受け入れたすべてのラットを、任意の動物関連試験手順の最小3日前に、住環境(主要柵および部屋)に順応させる。順応期間中に、ラットの全体的な健康を毎日監視した。良好な臨床状態(すなわち、体重仕様内)であることが視認されたラットのみを試験に登録した。異常が認められ、不良な健康の兆候(すなわち、フリルコート、有意に低い体重)を呈した任意のラットは、試験から除外した。
【0354】
臨床観察および測定は、順応および試験期間を通して、少なくとも1日1回行った。ケージサイド観察の記録は、第1回投与の少なくとも3日前に開始し、終了まで継続する。各動物は、全体的な外観および挙動の変化について観察した。到着後、被検物質投与前、および剖検の日にラットの体重を測定し、体重を記録した。
【0355】
実施例7.2:結果
【0356】
実施例7.2.1:臨床観察および測定
【0357】
本試験では、いずれの動物も交換する必要がなかった。いずれの動物も死亡が認められず、すべて予定通りに屠殺が行われた。屠殺前試験は、すべての動物において正常であった。
【0358】
実施例7.2.2:トポテカン血漿レベルの測定
【0359】
11日目の血漿抽出測定(最後の治療から7日後)は、トポテカン(ラクトン形態のみが検出された)およびガドジアミドレベルが、いずれも非存在であったか、または表20に示されるように、定量の下限以下であったことを明らかにした。トポテカンカルボキシレートの形態は認められなかったか、または極めて低く、血漿からの干渉ピークと重複した。トポテカンラクトンの形態の保持時間におけるピークは、動物番号7214において見出される最大ピークとともに、各試料に対して認められた。このピークがトポテカンであるか、または血漿ブランクに起因するか否かは、決定することができなかった。
【表18】
【0360】
実施例7.3:考察
【0361】
本試験は、脳内CEDにより送達されるラットの正常な脳組織において、固定濃度のLs−GDと共注入される、2つの濃度のLs−TPTの安全性および毒性を評価したものである。Ls−TPTの濃度1.0および1.6mg/mLは、安全(0.5mg/mL)と毒性(5.0mg/mL)との中間である。Ls−TPT濃度は、以前に確立されている。
【0362】
このいずれの濃度も、被検物質に起因する肉眼または顕微鏡変化がなく、等しく安全であると考えられる。急性出血の領域は、カニューレ管に沿って大部分が局在化され、実験手順および薬物送達システムに関連すると推定される。カニューレ挿入およびCEDを含む送達法に関連する肉眼および顕微鏡変化については既に説明されており、本試験で認められる変化は、用いられる送達法と一致する(Lieberman 1995,Lonser 2002)。評価したいずれの濃度も被検物質に起因し得る毒性をもたらさなかったため、観察可能な副作用レベルがないこと(NOAEL)は、本試験において確証されなかった。
【0363】
最後の治療後7日目の血漿抽出測定は、トポテカンおよびガドジアミドレベルの両方が、非存在であるか、または定量の下限以下であったことを明らかにした。すべての試料に存在したトポテカンラクトン形態の保持時間における最大分数は、トポテカンまたは血漿に明らかに起因し得なかった。しかしながら、顕著な血漿レベルは、血液−脳関門をバイパスする局所領域送達方法、および最後の治療と試料採取との間の時間を考えると、ある程度予想外となる。脳は、組織病理学的分析用に切断されたため、本試験において、脳組織濃度は測定しなかった。したがって、血漿における上記ピークが、脳の実質レベルの維持と関連するか否かを結論することは不可能である。別個の試験において、脳内トポテカンは、トポテカン濃度0.5μg/mLで、両半球において、Ls−TPTによる単一治療後7日目に検出された(実施例2)。
【0364】
実施例7.4:結論
【0365】
1.0および1.6mg/mLの濃度で、Ls−GDと共注入されるLs−TPTは、ラットの無処置脳組織において、被検物質に起因する変化の証拠がなく、安全であると考えられる。トポテカンおよびガドジアミド血漿レベルは、送達方法および薬物特性と一致する試験の低レベルの定量以下であった。
【0366】
実施例8:成体無胸腺ラットにおける脳内異種移植U87MG腫瘍に対するリポソームトポテカンおよびリポソームガドジアミドの対流増進送達
【0367】
実施例8.1:材料および方法
【0368】
実施例8.1.1:被検物質
【0369】
Ls−TPTおよびLs−GDの両方のGLPグレード物質を、実施例6.1.1において記載されるように調製した。
【0370】
実施例8.1.2:動物およびグループ分け
【0371】
6〜8週齢、体重200〜275gの成体雄無胸腺ラットrnu/rnu(Taconic,ニューヨーク州ジャーマンタウン,バッチ04/30/2007−150501)を使用した。動物は、表21に概説されるように、3つの群に分類した。
【表19】
【0372】
腫瘍接種は、2日かけて行った(n=15ラット/日)。各治療群の5匹の動物に、連日、U87MG腫瘍細胞を接種した。実際の治療割り当ては、腫瘍移植後、2移植日のそれぞれにおいて、腫瘍移植後に行い、同等の群平均体重および標準偏差を狙った。
【0373】
実施例8.1.3 外科的処置および治療
【0374】
実施例8.1.3.1:脳内腫瘍異種移植
【0375】
ヒト神経膠腫細胞(U87MG)は、予定接種の2週間前に、凍結細胞ストック(Perry Scientific Inc,カリフォルニア州サンディエゴ)から入手した。細胞を腫瘍接種術の日に採取し、50,000〜100,000細胞/μLの濃度に調整した。接種の日(0日目)に、各ラットに合計500,000のU87MG腫瘍細胞を、5〜10μL懸濁液を使用して、右線条体に片側移植した。定位技法およびイソフルラン(2.5%)による麻酔を使用した。ラットを定位フレームに載置し、耳バーおよび切歯バーの使用によって頭部を配置した。無菌法をすべての外科的処置に使用した。皮膚を70%アルコールに続いて、ベタジン溶液で除菌した。頭蓋骨上部の皮膚に縦方向の切開を行い、鈍的切開を使用して、頭蓋骨を覆う結合組織を除去した。ブレグマから0.5mm前方、および3mm左と右に穿頭孔を開けた。30ゲージの25μLのハミルトンシリンジを使用して、U87MG細胞を、軟膜表面から適切な背腹座標を使用して、線条体に定位的に注入した(−3.3mmで歯バーを用いて−4.5〜−5mm)。U87MG懸濁液の最終細胞濃度に基づいて、注入量を5〜10μLの間で調整して、合計500,000±25,000細胞が10分かけて送達されるようにした。
【0376】
接種後、皮膚をホチキス留めした。ラットは、麻酔からの回復中に監視した。処置を終了する前に、ブプレノルフィンを皮下(SC)投与した後、必要に応じて、ブプレノルフィンをSC投与した。ラットは、腫瘍細胞移植後、1日2回監視した。移植後の生存時間は、約0〜60日となることが予想され、そこで動物を安楽死させて脳を採取した。
【0377】
実施例8.1.3.2:治療
【0378】
5日目と8日目の両日に、積極的に治療されたラット(第1群および第2群)は、線条体内の腫瘍移植に使用された同一座標を使用して、CEDによって脳内腫瘍に送達される被検物質を受容する。対照ラットは、未治療のままで疑似手術を受けなかった。ラットは、すべての群に同様に投与時間を分散させる、組織的な順序で投薬された。麻酔は、イソフルラン(2.5%)またはケタミン(90mg/kg)とキシラジン(12mg/kg)の組み合わせのいずれかで、腹腔内注射により行った。鈍的耳バーを有する定位フレームを使用して、以前に開けられた穿頭孔を通じてCEDを行った。血栓のみを除去した。自動ポンプ(BASi,Inc.,インディアナ州ウェストラフィエット)に接続された溶融シリカカニューレ(OD168μm、ID102μm)(PolyMicro Technologies,アリゾナ州フェニックス)をCEDに使用し、適切な背腹座標に低下させた(−3.3mmで歯バーを用いて−4.5〜−5mm)。背腹座標は、軟膜表面から計算した。カニューレを、10μLのHamiltonシリンジと接続された27ゲージニードルに挿入し、強力瞬間接着剤で管に固定した。漸進的注入速度の増分を使用した。治療当たり20μL量を達成するために本試験で使用される注入速度は、0.2μL/分(15分)、0.5μL/分(10分)および0.8μL/分(15分)であった。注入後に、カニューレを所定の位置に5分間留置して、注入液の流出を最小限にした後、徐々に回収した。
【0379】
処置の終了後、ラットを通風のない環境内で維持し、加熱ランプまたは水ボトル、あるいは他の適切な加温方法で保温し、麻酔からの回復を監視した。ブプレノルフィンを、必要に応じて皮下投与した。ホームケージに戻す前に、ラットを処置室で回復させた。
【0380】
実施例8.1.3.3:60日前の安楽死基準
【0381】
症状(鼻血/眼窩周囲の出血、不全まひ、脊柱後湾、不活性または食餌を摂取しないか、または毛づくろいしない、ベースライン体重の15%超の体重減少)のうちの任意の1つまたは組み合わせが認められた場合、動物を安楽死させ得る。可能な場合、血液または他の標本を採取し、必要に応じて分析して(例えば、臨床病理パラメータ用)、倦怠感/死亡の原因の解明を支援した。安楽死の際に、動物は、イソフルラン(2.5%)によって深麻酔をかけた後、0.9%生理食塩水(100mL)に続いて4%パラホルムアルデヒド(300mL)による心内かん流を受けた。
【0382】
実施例8.1.3.4:組織収集および処理
【0383】
試験中に死亡したか、または屠殺された(予定および予定外)すべての動物の完全な全身剖検を、剖体および筋肉/骨格系、すべての外表面および開口部、頭蓋腔および脳の外表面、関連器官および組織を伴う頸部、関連器官および組織を伴う胸部、腹部、および骨盤腔に対して行った。
【0384】
脳を除去し、4%パラホルムアルデヒド中で最大24時間培養した後、30%スクロース中で平衡化させた。スクロース平衡化後に、組織を凍結させて、低温切開するまで−70℃で保管した。心臓、肺、肝臓、腎臓、すい臓(またはその一部)も、存在する場合は採取および保存した。これらの組織は、中性緩衝化した10%ホルマリン中で固定した。ホルマリン固定した臓器は、次に肉眼視され、必要に応じて、後の組織病理学的分析用にパラフィンブロックに処理された。
【0385】
実施例8.1.3.5:組織病理学的分析
【0386】
3つの治療群のそれぞれにおいて、60日目に生存体および非生存体から少なくとも3つのランダムに選択した脳を、20μm厚に切断し、4つごとの切片をガラススライド上に収集し、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、ヘマトキシリン/エオシン染色用に処理して、腫瘍塊のサイズおよび組織学を評価した。残りの切片は、4℃で保管し、追加の免疫組織化学分析に使用し得た。
【0387】
実施例8.1.3.6:生存中の観察および測定
【0388】
臨床観察および測定は、順応および試験期間を通して、少なくとも1日1回行った。ケージサイド観察の記録は、第1回投与の少なくとも3日前に開始し、終了まで継続する。各動物は、全体的な外観および挙動の変化について観察した。臨床観察および測定は、表22において概説される。
【表20】
【0389】
実施例8.1.3.7:早期脂肪/予定外の屠殺
【0390】
動物が試験時に死亡した場合、死亡時刻は、可能な限り厳密に推定および記録し、剖検を可能な限り早急に行った。剖検をすぐに行うことができなかった場合、動物を冷蔵して(冷凍ではない)、組織の自己消化を最小限に抑えた。剖検は、死後12時間以内に行った。
【0391】
動物の健康状態が不良であるか、または死が近づいていると思われる場合は、安楽死させ得る。可能であれば、必要に応じて血液または他の標本を採取および分析して(例えば、臨床病理パラメータ用)、倦怠感/死亡の原因の解明を支援した。
【0392】
実施例8.1.3.8::統計的手法
【0393】
生存期間分析の目的で、動物を治療群別に分類した。比較目的でログランク統計を使用して、Kaplan−Meier生存期間分析を行った。生存期間の中央値は、KM曲線に基づいて示した。生存期間の個別の分析は、安楽死させた動物で行い、無検閲(死亡)および検閲(生存)のいずれかとして意図される。
【0394】
実施例8.1.4:動物の飼育
【0395】
各動物は、番号の付いた耳タグによって識別した。さらに、各動物のケージは、該動物の動物識別番号、試験番号、群、入手元、到着日、種/株、誕生日、および性別を列挙したケージカードによって識別した。
【0396】
動物は、個別に隔離ケージに入れた。寝床材料は、広葉樹チップ(Sanichips,Harlan,カリフォルニア州)を削り、週に1回交換した。室温は、主に18〜26℃(64〜79F)に維持され、相対湿度は、30〜70%であった。温度および湿度は、連続的に監視し、最小値および最大値を記録した。試験手順を行うために、(消灯サイクル中に)室内灯を点ける必要があった場合を除いて、12時間点灯/12時間消灯の周期的照明期間を維持した。
【0397】
ラットは、試験期間を通して、照射Teklad Global 18% Protein Rodent Diet(齧歯類用プロテイン食餌)(Harlan,米国カリフォルニア州サンディエゴ)および自治体の水道水を自由に摂取させた。食餌または水中に、試験の結果に有害な作用を及ぼすレベルの汚染物質は存在しないことが分かった。年次水質検査の記録は、PSIアーカイブにおいて維持されている。
【0398】
指定の住居に到着すると、初期健康診断後に受領のため受け入れたすべてのラットを、任意の動物関連試験手順の最小3日前に、住環境(主要柵および部屋)に順応させる。順応期間中に、ラットの全体的な健康を毎日監視した。良好な臨床状態(すなわち、体重仕様内)であることが視認されたラットのみを試験に登録した。異常が認められ、不良な健康の兆候(すなわち、フリルコート、有意に低い体重)を呈した任意のラットは、試験から除外した。
【0399】
実施例8.2:結果
【0400】
実施例8.2.1:臨床観察および測定
【0401】
いずれの動物も交換する必要はなかった。8匹の動物が、それらのケージ内で死亡が認められた(第1群において5匹、第2群において1匹、および第3群において3匹)。21匹の動物は、状態不良と見なされたため安楽死させる必要があり(第1群において5匹、第2群において9匹、および第3群において7匹)、最も一般的な兆候は、15%以上の体重の喪失、倦怠感、脊椎後湾、および運動障害である(例えば、立ち直り反射の変化、片側に横たわる等)。
【0402】
実施例8.2.2::有効性
【0403】
10匹の動物を、予定通り各群で治療した。主な有効性分析は、安楽死させた動物を無検閲(死亡)として考慮した。結果として、示される生存期間は、死亡するまでの時間を表す。各動物の個別の生存期間、ならびに治療群別の生存期間の中央値および平均を表23に示す。治療群別の生存期間曲線は、図12に表される。
【表21】
【0404】
このデータは、高いトポテカン総用量および濃度の第2群で治療された動物だけでなく、それぞれ生存期間の中央値が33.0(95%CI、31〜40)、29.5(95%CI、27〜33)および20.0(95%CI、19〜21)である対照(第3群)と比較して、低いトポテカン総用量および濃度の第1群においても生存期間が長いことを明らかにした。これらの差異は、対照と比較すると、すべて統計的に有意であった(1.0mg/mL対対照、p<0.0001および0.5mg/mL対対照、p<0.0001)。組み合わされた積極的治療群(第1群および第2群)の生存期間の中央値は、31.5(95%CI、30〜36)日であり、対照と比較すると、統計的に有意であった(p<0.0001)。用量/濃度応答傾向は、ハザード比0.567(95%CI、0.23〜1.38)で認められるが、2つの積極的治療群間の差異は、統計的有意のレベルに到達しない(0.5mg/mL対1.0mg/mL、p=0.215)。
【0405】
二次有効性分析は、安楽死させた動物を検閲済として考慮して行った。治療群別の生存期間の中央値は表24に示され、治療群別の生存曲線は、図13に表される。
【表22】
【0406】
本分析は、安楽死させた動物を無検閲として考慮する分析と一致しこれを支持し、高いトポテカン総用量および濃度の第2群で治療された動物だけでなく、それぞれ生存期間の中央値が48.0(95%CI、未決定)、33.0(95%CI、30.0〜48.0)および23.0(95%CI、20.0〜23.0)である対照(第3群)と比較して、低いトポテカン総用量および濃度の第1群においても生存期間が長いことを明らかにした。これらの差異は、対照と比較すると、すべて統計的に有意であった(1.0mg/mL対対照、p<0.0014および0.5mg/mL対対照、p<0.0001)。組み合わされた積極的治療群(第1群および第2群)の生存期間の中央値は、48.0(95%CI、36.0〜48.0)日であり、対照と比較すると、統計的に有意であった(p<0.0001)。
【0407】
この確認的有効性試験は、脳内CEDによって、無胸腺ラットの腹腔内神経膠腫異種移植モデルに送達される、新規リポソームトポテカン製剤を2つの濃度で使用して、複合薬物送達アプローチの有効性を評価したものである。ガドジアミドを装薬したリポソームは、リポソームトポテカンの潜在的な画像トレーサ代理として共投与される。試験用に選択されるトポテカン濃度には、前述の探索的有効性試験(実施例4)において試験される0.5mg/mL、および前述のパイロット毒物学試験(実施例7)において定義されるような非毒性範囲内である1.0mg/mLが挙げられる。実施例4の知見に基づいて、本試験では、二重投与方法を使用し、腫瘍異種移植後の治療の開始を5日目まで繰り上げて(実施例4における8日目に対して)、過剰な腫瘍負荷を回避し、結果として、分散量による腫瘍被覆を最適化するようにした。また異種移植におけるU87MG腫瘍細胞負荷は、すべての群に渡って、同様に5×105腫瘍細胞に維持され、すべての動物に対して同様の腫瘍負荷が得られるようにした(実施例4に開示される試験において、腫瘍細胞負荷は、6.8〜9.7×105に変動した)。
【0408】
積極的治療群の両方に対して、長い全体生存期間および生存期間の中央値が認められた。対照と比較すると、高いLs−TPT濃度(1.0mg/mL)は、全体生存期間において、極めて統計的に有意な増加をもたらし(p<0.0001)、中央値および平均生存期間は、それぞれ65%および76%増加した。低いLs−TPT濃度(0.5mg/mL)も、対照と比較すると、全体生存期間において、極めて統計的に有意な増加をもたらしたが(p<0.0001)、効果の大きさは、高いLs−TPT濃度を用いる場合よりもわずかに中程度であり、したがって、用量/濃度依存の効果を示唆する。対照に関連する中間値および平均生存期間の増加は、それぞれ48%および56%であり、Ls−TPT濃度は低い。検閲済として考慮される安楽死させた動物で生存期間分析を行った場合に、同様の知見が認められ、これは、Ls−TPTの真の効果の大きさに関する任意の潜在的な過大評価を回避する、より保守的な評価方法であるが、その効果を過小評価する可能性がある。該二次有効性分析の結果は、依然として統計的に有意であり、安楽死させた動物が無検閲として考慮される、一次有効性分析の知見を強力に支持する。
【0409】
この確認的有効性試験において説明される実験の全体知見は、実施例4において開示される試験で報告されるものとは異なる。0.5または1.0mg/mLの濃度でLs−TPTを受容している動物に対して認められる長い中央値および全体生存期間は、異種移植、腫瘍異種移植後の早期治療タイミング、および二重治療(5日目および8日目)における、わずかに低く一定した腫瘍細胞負荷の使用と一致する。生存期間に対する腫瘍細胞負荷の重要性は、本試験において、対照動物の長い生存期間の中央値(20日)によって示され、これは、Saito et al.(Saito 2006)によって報告される値に極めて類似し、実施例4に開示される試験よりも長い(17日)。
【0410】
実施例8.4:結論
【0411】
U87MGを使用して、ラット神経膠腫モデルにおいてCEDにより投与されるLs−TPTは、未治療の対照と比較して、明確かつ一定した延命効果をもたらす。
【0412】
実施例9:キンドリングしたラットに対するリポソームω−コノトキシンの対流増進送達
【0413】
合成ω−CTX−G(27アミノ酸、分子量3037)、ω−CTX−M(25アミノ酸、分子量2639)、およびカルバマゼピンを、Sigma−Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から入手した。それぞれを、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、およびコレステロール(例えば、実施例2.1.2を参照)から成る、リポソームに装薬する。リポソームω−CTX−G、リポソームω−CTX−M、天然ω−CTX−G、天然ω−CTX−M、および天然カルバマゼピンが、キンドリングしたラットに及ぼす影響は、対流増進送達およびGasior et al.(2007)J.Pharmacology and Experimental Therapeutics 323:458−68において説明されているものと実質的に類似するプロトコルを使用して決定する。
【0414】
つまり、カニューレ−双極性刺激電極アセンブリを各ラットに慢性的に移植し、電極の先端が、定位座標において、右へんとう体の基底外側核中に配置されるようにする(ブレグマから測定して、AP:−2.8mm、ML:5.0mm、DV:−8.7mm)(Paxinos G and Watson C(1998)The rat brain in stereotaxic coordinates,4th ed.Academic Press,Sydney)。歯科用アクリルセメント(Lang Dental,イリノイ州ホイーリング)および固定用ステンレススチールネジ(Plastics One)を使用して、カニューレ−電極アセンブリを頭蓋骨に固定し、術後少なくとも10日間回復させた。キンドリングは、3つの相(1)AD閾値のキンドリング前決定、(2)キンドリング開発、および(3)AD閾値のキンドリング後再決定で構成される(Pinel,J P.et al.(1976)Epilepsia 17:197−206,Freeman,F G and Jarvis,M F(1981)Brain Res Bull 7:629−33,Gasior et al.(2007)J Pharmacology and Experimental Therapeutics 323:458−68)。キンドリング中、ラットは、直径29cmのPlexiglasシリンダ内で、カスタムメードの刺激装置(国立衛生研究所、研究サービス部門,メリーランド州ベセスダ)を用いて、チャンバ内で自由に移動できるスイベルアタッチメントを介して、個別に刺激される。
【0415】
対流増進送達システムは、Gasior et al.(2007、上記)において実質的に説明されている。対流増進送達の場合、各ラットは拘束され、注入カニューレは、ガイドカニューレを通じて、脳にゆっくり挿入される。注入カニューレの先端は、刺激電極ワイヤの先端から上に0.5mmの深さに伸長し、カニューレの上部の可塑性止め具によって、適切な深さで維持される。ラットを開放し、全体注入のために可塑性シリンダに入れる。すべての注入は、意識があり、拘束されていない動物で行う。注入カニューレ挿入後、脳組織は、注入の開始前数分間、カニューレの周囲を密閉される。漸進的注入速度の増分を使用する。半球当たり20μL用量を投与するために使用される注入速度は、0.2μL/分(15分)、0.5μL/分(10分)および0.8μL/分(15分)である。注入完了後に、カニューレを所定の位置に5分間留置して、注入液の流出を最小限にした後、徐々に回収した。被検物質が、完全にキンドリングしたラットにおける発作感度に及ぼす影響は、AD閾値を確立し、AD期間、発作段階、および行動発作期間を測定することによって評価する。被検物質のCED注入に続いて、動物を刺激し、キンドリング測定値は、注入後20分、ならびにその後は、注入後24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、4週間、および8週間に決定する。各ラットは、振戦の発生(四肢、頭部、および体幹の律動的な振動運動、または他の神経学的兆候について、被検物質の注入中、注入後少なくとも1時間、および後のそれぞれの刺激セッション前に観察する。
【0416】
キンドリング方法に対する毒性効果を特徴付ける試験の最後に、完全にキンドリングしたラットをランダムに選択し、VersaMax Animal Activity Monitoring System(AccuScan Instruments,オハイオ州コロンバス)を使用して、運動活性試験を行った。つまり、各ラットを、運動−活動チャンバ(Gasior et al.(2007)、上記)に60分間、連続5日間曝露して馴化させる。5日間をかけて安定したベースラインに向かう水平および垂直活動傾向、馴化期間の最後の2日における試験セッション中の活動カウントの平均は、注入試験のベースラインとする。5日の馴化期間の完了後に、各ラットは、被検物質の注入を受ける。注入のパラメータおよび動物の取扱いおよび外部キューを含む他の因子は、キンドリング発作実験におけるそれらと同一である。水平および垂直ビームの遮断は、60分の期間で決定し、注入後20分から始まり、その後は、注入後24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、4週間、および8週間に決定する。
【0417】
試験の完了後、選択した動物を、4%パラホルムアルデヒドにより経心臓的にかん流させて、切断およびクレシルバイオレットおよびシルバー染色用に脳を除去して、カニューレの配置およびニューロン損傷の証拠を評価する。各薬物治療の効果は、以下の式、100X[(治療前の値)−(治療後の値)]/(治療前の値)を使用して計算される、ベースラインからの変化(パーセント)として表される。各ラットのベースラインに関する治療効果を、個別に計算した後、群の平均を出す。キンドリングおよび運動活性試験から得たデータの統計分析は、一方向(群内)および二方向(群間)反復測定分散分析(ANOVA)によって、逆正弦−ルート変換を使用して、パーセンテージ変化データを変換した後に行う。必要に応じて、ダネット検定またはターキー検定を使用して、事後解析を行う。振戦データは、フィッシャーの直接確率法によって分析された頻度として表される。
【0418】
参考文献
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10.Schmidt F, Rieger J, Wischhusen J, Naumann U, Weller M. Glioma cell sensitivity to topotecan: the role of p53 and topotecan−induCED DNA damage. Eur J Pharmacology 412:21−25, 2001
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16.Saito R, Krauze MT, Bringas JR, Noble C, McKnight TR et al. Gadolinium−loaded liposomes allow for real−time magnetic resonance imaging of convection−enhanCED delivery in the primate brain. Exp Neurol 196(2):381−389, 2005
【0419】
すべての引用文献は、参照により、それら全体が明示的に本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、対流増進送達によって送達可能であり、中枢神経系疾患の治療に有用なリポソーム製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
脳腫瘍のある患者の場合、治療薬の全身送達は、通常、全身性副作用と関連するが、中枢神経系(CNS)では低い治療濃度が得られるに過ぎず、したがって、全身治療の有効性が限定される。認められる有効性の欠如は、主に、治療薬剤が血液脳関門を超えて浸透できないことに起因する。血液脳関門は、腫瘍の中心では破壊されており、全身送達される化学療法薬の腫瘍のほぼ不活性な中心への到達を可能にし得るが、血液脳関門は、通常、薬剤が最も必要とされる腫瘍境界では無傷なままである。
【0003】
血液脳関門を回避する1種のアプローチは、CNSへの治療薬剤の直接注入である。しかしながら、脳に直接注入される薬剤は、拡散によって十分に分散しない。低分子薬物であっても注入部位から数ミリメートル移動させるために、高い濃度勾配が必要とされ、そのような濃度は、神経毒性である場合が多い。この問題を克服するために開発中の戦略は、対流増進送達(CED)と呼ばれる直接脳内注入アプローチである。CEDでは、陽圧を用いて、治療用巨大分子を含む薬剤を細胞外空間に分散させるための局所圧力勾配を生成する(Bobo,R.H.,et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:2076−80、Chen,M.Y.,et al.(1999)J.Neurosurg.90:315 20)。CEDは、所定の標的組織内で再現性のある分散を提供し、分散容積(Vd)全体で均一な薬物濃度を得ることができる(Croteau et al.,2005、Lonser et al.,2002)。
【0004】
CEDによって局所的に送達される化学療法薬剤は、好ましい治療結果をもたらした(Bruce et al.,2000、Degen et al.,2003、Kaiser et al.2000)。しかしながら、神経系に直接送達される大部分の細胞毒性薬は、健康な細胞を損傷する能力を有する。したがって、脳腫瘍へのCED投与に適した候補は、健康な神経細胞と比較して、腫瘍細胞に対して可能な限り最大の治療指数を有していなければならない。リポソーム薬物送達は、顕著な毒性と関連することが多い高い薬物濃度を回避できる可能性を提供し、CEDを介して付与されるリポソーム被包されたカンプトセシン薬物の臨床前試験は、薬物の持続放出においていくらかの改善を示した方で(Moog et al.,2002、Saito et al.,2006、Nobel et al.,2006)、ペグ化リポソームの使用が、組織結合部位の相互作用をマスクし、それによって、組織分散容積を増加させるために必須であると見なされた(Saito et al.,2006)。
【0005】
リポソーム/組織相互作用の克服におけるペグ化の成功にもかかわらず、最近では、ペグ化リポソームが、望ましくなく、かつ生命にかかわる可能性のある免疫応答を生成し得ることが示された(Szebeni et al.(2007)J.Liposome Res.17:107−117、lshida and Kiwada(2008)Int J.Pharm.354−56−62 Epub Nov 9 2007)。ペグ化リポソームは、同一対象に2回投与された場合、血中クリアランスを加速させることに加えて、心肺障害の症状(例えば、呼吸困難、多呼吸、頻脈、胸痛、高血圧、および低血圧)を含む、非IgE媒介性の過敏反応を引き起こす可能性がある(Ishida and Kiwada(2008)、上記、Moghimi et al.(2006)FASEB J.20 2591−3 Epub Oct 25,2006)。
【0006】
したがって、組織分散容積を増加させるが、ペグ化に伴う問題の免疫原性を回避する、対流増進送達のための改良されたリポソーム薬物製剤が必要とされる。
【発明の概要】
【0007】
驚くべきことに、本発明者は、本明細書で記載および特許請求されるように、ペグ化の代わりに陰イオン脂質成分が製剤に用いられる場合、リポソームが中枢神経系の組織内で極めて対流的となり得ることを発見した。さらに、主題の製剤は、当該技術分野において用いられるペグ化製剤と比較可能な薬物動態プロファイルを呈する一方で、ペグ化に伴う問題の免疫原性を回避する。したがって、本明細書では、陰イオンリポソーム製剤の対流増進送達を介して、中枢神経系(CNS)、例えば、限局性CNS腫瘍の組織を分離するための改良された組成物および治療薬を投与する方法が提供される。
【0008】
一態様において、本明細書では、CNS障害、例えば、CNSにおける特定のニューロン集団の死滅および/または機能不全に伴う障害を治療するための方法が説明される。該方法は、CNS障害のある患者に対して、治療上有効量の薬学的組成物を投与することを含み、該薬学的組成物は、対流増進送達によって特定のニューロン集団に対して局所的に送達され、薬学的組成物は、中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和脂質の混合物を含む、非ペグ化リポソームに被包された少なくとも1種の治療薬剤を含み、薬学的組成物の対流増進送達は、CNS障害のある患者を治療する。
【0009】
主題の発明において有利な用途が認められる治療薬剤には、例えば、抗腫瘍薬、放射性ヨウ化化合物、毒素(タンパク質毒素を含む)、細胞増殖抑制薬および細胞溶解薬物を含む細胞毒性薬、遺伝子およびウイルスベクター、ワクチン、合成ベクター、成長因子、神経栄養因子、抗ウイルス薬、抗生物質、神経伝達物質、サイトカイン、酵素、および特定部位の標的病変に対する薬剤が挙げられる。
【0010】
本明細書で提供される組成物および方法によって治療できるCNS障害には、例えば、癌、感染症、頭部外傷、脊髄損傷、多発性硬化症、レヴィー小体認知症、ALS、リソソーム蓄積障害、精神疾患、神経変性障害、脳卒中、てんかん、および他の急性および慢性CNS障害が挙げられる。
【0011】
一実施形態において、本明細書では、CNS腫瘍の成長を阻害する、CNS腫瘍を減少させる、1つ以上のCNS腫瘍細胞を死滅させる、および/またはCNS腫瘍のある患者を治療するための方法が提供される。本方法は、治療上有効量の薬学的組成物をCNS腫瘍のある患者に投与することを含み、本薬学的組成物は、対流増進送達によって、CNS腫瘍に対して局所的に送達され、本薬学的組成物は、中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和脂質の混合物を含む、非ペグ化リポソームに被包された少なくとも1種の細胞毒性薬を含み、本薬学的組成物の対流増進送達は、CNS腫瘍の成長を阻害し、CNS腫瘍を減少させ、CNS腫瘍細胞のうちの1つ以上を死滅させ、および/またはCNS腫瘍のある患者を治療する。
【0012】
別の実施形態において、本明細書では、てんかんのある患者において、発作の回数または期間を阻止または減少させるための方法が提供される。本方法は、治療上有効量の薬学的組成物を、てんかんのある患者に投与することを含み、本薬学的組成物は、異常または過剰な過同期性放電を呈しているCNSニューロンの集合体に対して、対流増進送達によって局所的に送達され、薬学的組成物は、中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和脂質の混合物を含む、非ペグ化リポソームに被包された少なくとも1種の治療薬剤を含み、薬学的組成物の対流増進送達は、てんかんのある患者において、発作の回数または期間を阻止または減少させる。一実施形態において、治療薬剤は毒素、例えば、ペプチド毒素である。一実施形態において、ペプチド毒素は、ω−コノトキシン、例えば、ω−コノトキシンMVIIAまたはω−コノトキシン、GVIAである。別の実施形態において、毒素はボツリヌス毒素、例えば、ボツリヌス毒素血清型A(BOTOX(登録商標)またはDYSPORT(登録商標)等)、ボツリヌス毒素血清型B(MYOBLOC(登録商標)等)である。別の実施形態において、毒素はμ−コノトキシンまたはα−コナントキンペプチドである。
【0013】
一実施形態において、薬学的組成物は、類似の非ペグ化陰イオンリポソームに被包された少なくとも1種の診断薬をさらに含み(本明細書では「トレース剤」または「トレーサ」と称される場合がある)、CED中およびCED後の治療薬剤の分散の可視化を可能にする。好適な実施形態において、治療薬剤を被包している非ペグ化リポソームは、治療薬剤を被包している非ペグ化リポソームと同一の脂質で構成される。したがって、一実施形態において、本明細書に記載される方法は、診断薬を検出するステップをさらに含む。
【0014】
本明細書に記載されるように、非ペグ化リポソームは、治療薬を含有し得る。一実施形態において、治療薬は、不溶性の治療薬である。別の実施形態において、治療薬は、トポイソメラーゼI阻害剤(例えば、カンプトテシンおよびその誘導体)であり、トポイソメラーゼI/II阻害剤が挙げられるが、これに限定されない。例えば、一実施形態において、治療薬は、9−アミノカンプトテシン、7−エチルカンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、9−アミノ−10,11−メチレンジオキシカンプトテシン9−クロロ−10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、7−(4−メチルピペラジノメトリレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−メチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、および7−(2−(N−イソプロピルアミノ)エチル)−(20S)−カンプトテシンから成る群から選択される、カンプトテシン誘導体である。別の実施形態において、カンプトテシン誘導体は、イリノテカン、トポテカン、(7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−メチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、または7−(2−(N−イソプロピルアミノ)エチル)−(20S)−カンプトテシンから成る群から選択される。別の実施形態において、カンプトテシンは、トポテカンである。
【0015】
別の実施形態において、トポイソメラーゼ阻害剤は、トポイソメラーゼI/II阻害剤、例えば、6−[[2−(ジメチルアミノ)−エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン二塩酸塩、アゾトキシン、または3−メトキシ−11H−ピリド[3′,4′−4,5]ピロロ[3,2−c]キノリン−1,4−ジオンである。
【0016】
別の実施形態において、治療薬は毒素、例えば、タンパク質毒素であり、例えば、ω−コノトキシン(例えば、ω−コノトキシンMVIIAまたはω−コノトキシン、GVIA)、ボツリヌス毒素(例えば、ボツリヌス毒素血清型A(BOTOX(登録商標)またはDYSPORT(登録商標)等)、ボツリヌス毒素血清型B(MYOBLOC(登録商標)等))、μ−コノトキシン、α−コナントキンペプチド等である。
【0017】
一実施形態において、初期薬物濃度は、少なくとも約100μg/mL、好ましくは、少なくとも約200μg/mL、およびより好ましくは、少なくとも約300μg/mLである。別の実施形態において、初期薬物濃度は、約2mg/mL〜約5mg/mLである。一実施形態において、治療薬および/または診断薬対脂質の比は、約0.1〜約0.5である。別の実施形態において、治療薬および/または診断薬対脂質の比は、約0.1である。別の実施形態において、治療薬および/または診断薬対脂質の比は、約0.3である。別の実施形態において、治療薬および/または診断薬対脂質の比は、約0.5である。
【0018】
一態様において、非ペグ化リポソームは、診断薬を含有する。一実施形態において、診断薬は、MRI磁石である。別の実施形態において、診断薬は、ガドリニウムキレートである。別の実施形態において、診断薬は、ガドジアミドおよびローダミンから成る群から選択される。別の実施形態において、診断薬はガドジアミドである。
【0019】
本明細書に記載される方法は、少なくとも1種の中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和リン脂質の混合物で構成される非ペグ化リポソームに被包された少なくとも1種の治療薬剤および/または少なくとも1種の診断薬を含む、リポソーム製剤の対流増進送達を含む。一実施形態において、中性飽和リン脂質は、ホスファチジルコリンの誘導体およびその混合物、例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、およびそれらの混合物から成る群から選択される。長鎖飽和脂質、例えば、C20およびC22を使用してもよい。一実施形態において、陰イオン飽和リン脂質は、ホスファチジルグリセロールの誘導体(例えば、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG))、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、およびそれらの混合物から成る群から選択される。
【0020】
本明細書に記載されるリポソーム製剤は、他の脂質成分、例えば、ステロールおよび誘導体(例えば、コレステロール(CHOL)またはスフィンゴリピド(例えば、スフィンゴミエリンおよびグリコスフィンゴリピド、特にガングリオシド)も含有し得る。好適な実施形態において、リポソーム製剤は、少なくとも1種の中性飽和リン脂質、少なくとも1種の陰イオン飽和リン脂質、および安定剤、例えば、コレステロール等から本質的に成るか、またはそれらから成る。
【0021】
一実施形態において、非ペグ化リポソームは、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)およびジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)の組み合わせで構成される。一実施形態において、非ペグ化リポソームは、約10〜約95モル%のDSPCを含む。一実施形態において、非ペグ化リポソームは、約5〜約90モル%のDSPGを含む。一実施形態において、非ペグ化リポソームは、コレステロール(CHOL)、例えば、約5〜約45モル%のコレステロールをさらに含む。好適な実施形態において、リポソームは、約60〜約90モル%のDSPC、約5〜約10モル%のコレステロール、および約5〜約30モル%のDSPGを含むか、またはそれらから本質的に成る。好適な実施形態において、非ペグ化リポソームは、DSPC、DSPG、およびCHOLを7:2:1のモル比で含むか、またはそれらから本質的に成る。別の実施形態において、非ペグ化リポソームは、DSPC、DSPG、およびCHOLを6:2:2のモル比で含むか、またはそれらから本質的に成る。別の実施形態において、非ペグ化リポソームは、DSPC、DSPG、およびCHOLを5:2:3のモル比で含むか、またはそれらから本質的に成る。
【0022】
一実施形態において、本明細書に記載されるような非ペグ化リポソーム製剤の対流増進送達(CED)は、自由に投与される治療薬のそれぞれの組織分散、毒性、およびインビボ半減期と比較して、組織分散の増加、毒性の減少、および治療薬のインビボ半減期の増加をもたらす。
【0023】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるリポソーム製剤、例えば、少なくとも1種の中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和リン脂質の混合物で構成される非ペグ化リポソームに被包された少なくとも1種の治療薬剤を含むリポソーム製剤を含むカニューレを提供し、製剤は、対流増進送達(CED)によって送達され得る。別の実施形態において、カニューレは、少なくとも1種の中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和リン脂質の混合物で構成される非ペグ化リポソームに被包された診断薬を含むリポソーム製剤をさらに含み、製剤は、CEDによって送達され得る。別の実施形態において、カニューレは、治療薬を含む第1のリポソームと、診断薬を含む第2のリポソームと、を含むリポソーム製剤を含み、第1のリポソームも第2のリポソームもペグ化されておらず、第1および第2のリポソームは、少なくとも1種の中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和リン脂質の混合物で構成され、製剤は、対流増進送達(CED)によって送達され得る。カニューレは、CNSへの対流増進送達と適合する。一実施形態において、カニューレは、逆流防止ステップ設計のカニューレである。
【0024】
一態様において、本発明は、本明細書に記載されるリポソーム製剤を生成するための方法を提供する。一態様において、本発明は、CNSの癌の患者の治療に有用な医薬品を生成するための方法を提供し、医薬品は、本明細書に記載されるリポソーム製剤を含む。一実施形態において、該方法は、遠隔装薬、例えば、硫酸アンモニウム勾配によって、治療薬または診断薬をリポソーム内に取り込むことを含む。
【0025】
本明細書に記載される装置および方法のさらなる目的、特徴、および利点は、本発明の例示的な実施形態を示す添付の図面と併せて考慮すれば、以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】脂質組成物、薬物濃度、および薬物脂質比が、ペグ化リポソーム製剤および非ペグ化リポソーム製剤からのトポテカンの放出特性に及ぼす影響を比較する。
【図1B】脂質組成物、薬物濃度、および薬物脂質比が、ペグ化リポソーム製剤および非ペグ化リポソーム製剤からのトポテカンの放出特性に及ぼす影響を比較する。
【図1C】脂質組成物、薬物濃度、および薬物脂質比が、ペグ化リポソーム製剤および非ペグ化リポソーム製剤からのトポテカンの放出特性に及ぼす影響を比較する。
【図1D】脂質組成物、薬物濃度、および薬物脂質比が、ペグ化リポソーム製剤および非ペグ化リポソーム製剤からのトポテカンの放出特性に及ぼす影響を比較する。
【図1E】脂質組成物、薬物濃度、および薬物脂質比が、ペグ化リポソーム製剤および非ペグ化リポソーム製剤からのトポテカンの放出特性に及ぼす影響を比較する。
【図1F】脂質組成物、薬物濃度、および薬物脂質比が、ペグ化リポソーム製剤および非ペグ化リポソーム製剤からのトポテカンの放出特性に及ぼす影響を比較する。
【0027】
【図2】正常な脳組織におけるLs−TPT製剤および遊離トポテカンの薬物動態を示す。
【0028】
【図3】スクロースがローダミンリポソームの対流可能性に及ぼす影響を示す。
【0029】
【図4】線条体への20μL注入後のローダミン装薬リポソームの分散量(Vd)を示す。
【0030】
【図5】治療群による動物の生存を示す。
【0031】
【図6】合計治療群対第2群(0.5mg/mL二重投与)による動物の生存を示す。
【0032】
【図7】腫瘍移植におけるU87細胞負荷による全体生存を示す。
【0033】
【図8】U87MG細胞負荷の低い(6.8×103)動物における、合計治療群対第2群(0.5mg/mL二重投与)による動物の生存を示す。
【0034】
【図9】U87MG細胞負荷の高い(9.7×105)動物における、合計治療群対第2群(0.5mg/mL二重投与)による動物の生存を示す。
【0035】
【図10】無処置齧歯類脳組織における、Ls−Gd−ローダミン−PEと混注される、Ls−TPTマリナブルーDHPEの分散量を示す。各製剤について、n=3であり、各半球に20μLを注入した。
【0036】
【図11】U87MG異種移植齧歯類脳組織における、Ls−Gd−ローダミン−PEと混注される、Ls−TPTマリナブルーDHPEの分散量を示す。各製剤の場合、n=4であり、各半球に20μLを注入した。
【0037】
【図12】治療群による動物の生存を示す(安楽死させた動物は、無検閲と見なされた)。
【0038】
【図13】治療群による動物の生存を示す(安楽死させた動物は、無検閲と見なされた)。
【発明を実施するための形態】
【0039】
定義
【0040】
本明細書で使用される、「リポソーム」は、封入された含水量を含む脂質二層膜を意味する。リポソームは、単一の二層膜を有する単層ベシクルであり得るか、または水性層によって相互に分離された複数の二層膜を有する多層ベシクルであり得る。概して、リポソーム二重層は、疎水性「尾」領域および親和性「頭」領域を有する2つの脂質単層で構成される。二層膜の構造は、脂質単層の疎水性(非極性)の「尾」が、二重層の中心を向き、親水性(極性)の「頭」は、封入された水の容積または過リポソーム水性環境のいずれかに向かっている。一実施形態において、本発明のリポソームは、標的部分、例えば、抗体または他のリガンドを含む。
【0041】
「リポソーム製剤」は、治療薬および/または診断薬の一部またはすべてが、リポソーム内に被包されるものであると理解される。リポソーム製剤に関して本明細書で使用される「〜から本質的に成る」は、引用される脂質成分のみを融資、追加の脂質成分を有しないリポソームを意味する。
【0042】
「リン脂質」は、グリセロールの両親媒性誘導体を意味すると理解され、そのヒドロキシル基の1つが、リン酸でエステル化され、他の2つのヒドロキシル基が、相互に等しいか、または異なり得る長鎖脂肪酸でエステル化されている。
【0043】
飽和リン脂質は、その脂肪酸が、単一の(複数ではない)共有炭素−炭素結合のみを有するものとなる。
【0044】
中性リン脂質は、概して、別のリン酸ヒドロキシルが、極性基(通常、ヒドロキシルまたはアミン)によって置換されたアルコールによりエステル化され、その正味電荷は、生理的pHにおいてゼロであるものである。
【0045】
陰イオンリン脂質は、概して、別のリン酸ヒドロキシルが、極性基によって置換されたアルコールによってエステル化され、その正味電荷が、生理的pHにおいて負であるものである。
【0046】
「荷電飽和リン脂質」という表現、ならびに荷電飽和リン脂質を含むという意味は、正味電荷がゼロではない他の両親媒性化合物も含む。そのような両親媒性化合物は、極性基(例えば、アミン)によって置換された、長鎖炭化水素誘導体および脂肪酸の誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0047】
本明細書で使用される、「活性成分」または「治療薬剤」は、高分子量神経治療薬の形態でCNS標的組織に送達され得、そのように送達されると、標的CNS組織において所望の反応をもたらす、任意の分子を意味する。治療薬剤は、抗腫瘍薬、放射性ヨウ化化合物、毒素(タンパク質毒素を含む)、細胞増殖抑制薬または細胞溶解薬を含む細胞毒性薬、遺伝子およびウイルスベクター、ワクチン、合成ベクター、成長因子、神経栄養因子、抗ウイルス薬、抗生物質、神経伝達物質、サイトカイン、酵素、および特定部位の標的病変に対する薬剤を含むが、これらに限定されない。治療薬剤は、核酸類似体を含む核酸、抗体を含むタンパク質、および低分子化学組成物を含むが、これらに限定されない。活性成分は、全身的に投与されると、毒性および望ましくない効果を呈する薬剤を含む。
【0048】
本明細書で使用される、「CNS障害」は、対象の中枢神経系の障害を意味する。障害は、CNSにおける特定のニューロン集団の死滅および/または機能不全と関連付けられ得る。障害は、CNS内の細胞の異常成長と関連し得る。異常に成長するCNS細胞は、CNSに由来し得るか、または他の組織に由来し得る。CNS障害には、癌、感染症、頭部外傷、脊椎損傷、多発性硬化症、レヴィー小体認知症、ALS、リソソーム蓄積障害、精神疾患、神経変性障害、脳卒中、てんかん、および他の急性および慢性CNS障害が挙げられる。
【0049】
神経膠腫は、中枢神経系(CNS)の最も一般的な原発腫瘍である。多形性神経膠腫(GBM)は、最頻する最も悪性型の神経膠腫である。小児よりも成人において、GBMの発症率ははるかに高い。米国統計報告の中枢脳腫瘍レジストリによると、GBMは、米国における脳腫瘍の約20%を占める(CBTRUS,1998−2002)。CNSの他の腫瘍には、線維性(びまん性)星状細胞腫、毛様細胞性星状細胞腫、多形性黄色星状膠細胞腫等の星状細胞腫を含む他の神経膠腫、および脳幹神経膠腫、乏突起膠腫、および上衣腫、ならびに関連傍脳室腫瘤病変、ニューロン性腫瘍、髄芽腫を含む分化不良新生物、原発性脳リンパ腫を含む他の実質腫瘍、胚細胞腫瘍、および松果体実質腫瘍、髄膜腫、転移性腫瘍、腫瘍随伴症候群、神経鞘腫を含む末梢神経鞘腫瘍、神経繊維腫、および悪性末梢神経鞘腫瘍(悪性神経繊維腫)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
てんかんは、CNSにおける特定のニューロン集団の機能不全に伴う最も一般的な深刻なCNS障害である(Shorvon,S,Epidemiology,classification,natural history,and genetics of epilepsy,Lancet 1990 Jul 14,336(8707)93−6,McNamara J.,The neurobiological basis of epilepsy,Trends Neurosci 1992 October,15(10)357−9)。重度の穿通性頭部外傷は、最大50%のてんかん誘発リスクと関連する。てんかんの他の原因は、脳卒中、感染症および遺伝的感受性を含む。発作は、神経学的機能不全であり、中枢神経系ニューロンの集合体からの異常、過剰な過同期性放電に起因する。発作は、(運動系が関与する場合)動作的に呈し得るか、または脳波的に呈し得る。てんかんは、人が、慢性の基礎疾患の経過に起因して、再発発作を有する状態である。臨床および病理学的特性が異なる様々なてんかん症候群が存在するが、共通の基礎病因は、ニューロンの過剰興奮である。したがって、てんかんは、脳波計および臨床所見に従って分類され得る、神経学的機能における慢性の再発性、発作性変化によって特徴付けられる、中枢神経系(CNS)過剰興奮の障害を包含する(Dichter M.,Basic mechanisms of epilepsy:targets for therapeutic intervention,Epilepsia1997;38 Suppl9:S2−6)。
【0051】
てんかんの発作は、限局性(部分的)発作および全身性発作の2つの群に広く分類される。限局性発作は、脳の皮質または皮質下領域における限定されたニューロン群の異常活性から生じる。根本的な構造異常または病変は、出生時障害、頭部外傷、腫瘍、膿瘍、梗塞、血管形成不全、または遺伝疾患の結果として発生し得る(Dichter 1997,Ibid)。限局性活動の位置は、臨床発作所見によって識別することができるか、または潜在的であり得る。同様に、活性病巣は、病変自体が関与しないが、隣接または遠位(であるが結合した)ニューロン集団において生じ得、限局性過剰興奮を基礎とする可塑性シナプスの再組織化の仮説を支持する。(例えば、Prince D.A.,Epileptogenic neurons and circuits.In:Jasper′s Basic Mechanisms of the Epilepsies,Third Edition(1999)、Delgado−Escueta A.V.,et al.,editors)、Advances in Neurology79:665−684を参照)。
【0052】
限局性発作は、意識に明らかな変化がない場合は「単純」と呼ばれ、そうでなければ、「複雑」と呼ばれる。複雑限局性発作には、側頭葉および辺縁系が関与し、成人におけるてんかんの最も一般的な兆候である。拡大して脳波的に両側性になる限局性発作は、同時に意識を喪失し、運動兆候の有無にかかわらず、二次的に全身性になると言われている。原発性全身性発作は、運動けいれんの有無にかかわらず、両側脳波活動、意識の喪失で開始する。限局性発作は、脳のほぼすべての部分が関与し得、通常は、局所病変の機能異常に起因する。限局性発作の現在の治療は、EEGの使用を含み、限局性てんかん発作を起こしやすい有機脳疾患の領域に由来する、異常なスパイク波を位置特定し、続いて、さらなる発作を防ぐために、病巣を外科的に切除する。
【0053】
リポソーム製剤
【0054】
本明細書に記載されるリポソーム製剤、例えば、そのような製剤を含む薬学的組成物は、能動的または受動的装薬方法を含む多様な方法で形成することができる。例えば、1種以上の治療薬および/または診断薬を、膜貫通pH勾配装薬法を使用して、被包してもよい。リポソームの二重層を越える膜貫通能力の使用によって、治療薬とともにリポソームを装薬するための一般的な方法は、当業者によく知られている(例えば、米国特許第5,171,578号明細書、米国特許第5,077,056号明細書、および米国特許第5,192,549号明細書)。
【0055】
簡単に説明すると、例えば、最初に脂質が、有機溶媒、例えば、エタノール、t−ブタノール、それらの混合物等に溶解され得、徐々に加熱され得る(例えば、60℃〜70℃)。非ペグ化リポソームを形成する際に使用される脂質成分は、通常、リン脂質およびステロールを含む、多様なベシクル形成脂質から選択され得る(例えば、米国特許第5,059,421号明細書、米国特許第5,100,662号明細書)、例えば、卵黄、大豆、または他の野菜または動物組織、に由来するリン脂質、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチド酸、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、スフィンゴミエリン等;それらの混合物、例えば、卵黄リン脂質、大豆リン脂質等;その水素化生成;および合成リン脂質、例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルグリセロール等が使用され得る。
【0056】
本明細書に記載されるように、主題の発明の非ペグ化陰イオンリポソームは、2種以上の非ペグ化脂質、例えば、中性リン脂質および陰イオンリン脂質の混合物である。一実施形態において、中性リン脂質は、ホスファチジルコリンの誘導体およびそれらの組み合わせ、例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、およびそれらの組み合わせで構成される群から選択される。一実施形態において、陰イオンリン脂質は、ホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチド酸の誘導体およびそれらの組み合わせ、例えば、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)およびホスファチジルセリンエステルと異なる飽和脂肪酸(PS)の混合物で構成される群から選択される。リポソームの安定化および他の目的で、ステロール(例えば、コレステロール)、σ−トコフェロール、ジセチルリン酸、ステアリルアミン等を添加してもよい。
【0057】
溶解した脂質に、予熱した水溶液を、激しく攪拌しながら添加してもよい。例えば、150〜300mMの緩衝液を含有する溶液を添加してもよい。使用され得る緩衝液には、硫酸アンモニウム、クエン酸、マレイン酸、およびグルタミン酸が挙げられるが、これらに限定されない。混合後に、得られた多層ベシクル(「MLV」)を加熱し、押出装置を通じて押し出して、MLVを単層リポソームベシクルに変換してもよい。脂質を溶解するために最初に使用される有機溶媒は、透析、ダイアフィルタによるろ過等によって、リポソーム調製物から除去され得る。
【0058】
1種以上の治療薬および/または診断薬は、膜貫通pH勾配装薬を使用して、リポソーム中に取り込まれ得る。リポソームの外部の溶液のpHを上昇させることによって、pH差がリポソーム二重層全体に存在することになる。したがって、膜貫通能力がリポソーム二重層全体で形成され、1種以上の治療薬および/または診断薬は、膜貫通能力によって、リポソーム中に装薬される。
【0059】
一般に、治療薬および/または診断薬:脂質比は、約0.01:約0.5(wt/wt)である。一実施形態において、治療薬および/または診断薬:脂質比は、約0.1である。別の実施形態において、治療薬および/または診断薬:脂質比は、約0.3である。一実施形態において、ベシクルは、膜貫通イオン勾配を用いて調製し、治療薬または診断薬の被包をもたらす条件下で、弱酸性または弱塩基性の治療薬および/または診断薬でインキュベートする。別の実施形態において、ベシクルは、治療薬および/または診断薬の存在下で調製され、非被包物質が、透析、イオン交換クロマトグラフィ、ゲルろ過クロマトグラフィ、またはダイアフィルタによるろ過によって除去される。
【0060】
装薬するための好適な実施形態は、米国特許第5,192,549号明細書に基づき、外部媒体からアンモニアを除去することを含む。その結果、pH勾配を誘発する、膜貫通アンモニア濃度勾配が形成される。薬物をベシクルに添加し、高温でインキュベートした後、「遠隔」装薬される。
【0061】
好適な実施形態において、本質的に膜不透過性である薬剤(例えば、ガドジアミド等の診断薬)を用いる場合、薬剤は、リポソームを形成するために使用される緩衝液中に存在し、ベシクル形成時に受動的に被包される。この好適な方法は、他の両性イオン薬剤、例えば、メトトレキセートにも適用する。対照的に、弱塩基(および弱酸)は、リポソームに遠隔装薬され得る。
【0062】
本明細書に記載されるリポソーム製剤は、中枢神経系領域への対流増進送達に使用することができ、CEDは、CNS内で高い組織分散量を達成することができる。したがって、リポソーム製剤は、CNS障害の治療に使用され得る。そのようなCNS障害には、CNS腫瘍、例えば、膠芽細胞腫、およびニューロン細胞の機能不全に伴う障害、例えば、てんかんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
したがって、CNS障害の治療に使用される様々な治療薬は、本明細書に記載されるリポソーム製剤内に取り込むことができ、本明細書に記載される方法において使用される。そのような治療薬には、抗腫瘍薬、毒素、生体生成物質(例えば、ドーパミン、セロトニン)、神経栄養因子(例えば、GDNF、CDNF、MANF)等が挙げられる。
【0064】
一実施形態において、トポイソメラーゼI阻害剤(トポイソメラーゼI/II阻害剤が挙げられるが、これに限定されない)は、本明細書に記載されるリポソーム製剤内に含有される。一実施形態において、トポイソメラーゼ阻害剤は、カンプロテカンまたはその誘導体である。例えば、一実施形態において、治療薬は、9−アミノカンプトテシン、7−エチルカンプトテシン、10−ヒドロキシカンプトテシン、9−ニトロカンプトテシン、10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、9−アミノ−10,11−メチレンジオキシカンプトテシン9−クロロ−10,11−メチレンジオキシカンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、7−(4−メチルピペラジノメトリレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−メチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、および7−(2−(N−イソプロピルアミノ)エチル)−(20S)−カンプトテシンから成る群から選択される、カンプトテシン誘導体である。別の実施形態において、カンプトテシン誘導体は、イリノテカン、トポテカン、(7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−エチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−メチレンジオキシ−20(S)−カンプトテシン、または7−(2−(N−イソプロピルアミノ)エチル)−(20S)−カンプトテシンから成る群から選択される。別の実施形態において、カンプトテシンは、トポテカンである。別の実施形態において、カンプトテシンは、トポテカンである。所定の薬剤が例示的に説明されるが、多数の他の薬剤も、本発明のリポソーム組成物内で適していることは、当業者には明らかとなる。
【0065】
毒素、例えば、μ−コノトキシン(例えば、μ−コノトキシンGIIIA、μ−コノトキシンGIIIB、μ−コノトキシンGIIIC、μ−コノトキシンPIIIA、μ−コノトキシンSmIIIA、μ−コノトキシンKIIIA等)、ω−コノトキシン(例えば、ω−コノトキシンGVIA(本明細書では、「ω−コノトキシンG」および「ω−CTX−G」とも称される)、ω−コノトキシンMVIIA(本明細書では、「ω−コノトキシンM」および「ω−CTX−M」とも称される)、ボツリヌス毒素(例えば、ボツリヌス毒素A(本明細書では、BTX−Aとも称される)、ボツリヌス毒素B(本明細書では、「BTX−B」とも称される、ボツリヌス毒素C1、ボツリヌス毒素D、ボツリヌス毒素E、ボツリヌス毒素F等)、コナントキンペプチド(例えば、コナントキンG、コナントキンT、コナントキンL、コナントキンS1、コナントキンOc、コナントキンGm、コナントキンCa2、コナントキンCa1、およびコナントキンQu)、その誘導体、ならびにその薬学的に許容される塩を含む、タンパク質毒素も、本明細書における使用が検討される。
【0066】
一実施形態において、イモガイの毒に由来するコノトキシンは、主題の製剤を使用して送達され得る。毒の活性成分は、小ペプチド毒素であり、通常、10〜30個のアミノ酸残基の長さであり、通常、それらの高密度のジスルフィド結合に起因して著しく制約される。毒成分は、電圧依存性のイオンチャネル、リガンド依存性のイオンチャネル、およびGタンパク質結合受容体に作用する。コノトキシンの薬学的選択性は、少なくとも部分的に、ジスルフィドループ内の超可変アミノ酸と結合される、特定のジスルフィド結合フレームワークによって決定される。コノトキシンペプチドの高い能力および優れた選択性に起因して、ヒトの障害の治療用に評価されているものもあり、これらのω−コノトキシンMVIIA(ジコノチド)のうちの1種であるN型カルシウムチャネルブロッカは、現在、髄腔内空間に挿入されるカテーテルとともに、埋込可能かつプログラム可能なポンプによって、ヒト患者の疼痛治療に使用されている。
【0067】
本発明の特定の実施形態において、抗てんかん薬製剤は、ω−コノトキシン、例えば、ω−コノトキシンGVIA、ω−コノトキシンMVIIA、およびω−コノトキシンCVIDを含む。例えば、Gasior et al.J Pharmacol Exp.Ther.323:458−68(2007)を参照されたい。代替実施形態において、抗てんかん薬製剤は、μ−コノトキシン、例えば、μ−コノトキシンGIIIA、μ−コノトキシンGIIIB、μ−コノトキシンGIIIC、μ−コノトキシンPIIIA、μ−コノトキシンSmIIIA、μ−コノトキシンKIIIAを含む。例えば、Zhang et al.,J Biol Chem282:30699−30706(2007)を参照されたい。他の実施形態は、本明細書に記載されるように、コノトキシンの誘導体または薬学的に許容される塩を利用する。
【0068】
本明細書において、ボツリヌス菌に由来するボツリヌス毒素の使用も検討される。7つの免疫学的に明確なボツリヌス神経毒素が特徴付けられており、これらは、それぞれボツリヌス神経毒素血清型A、B、C1、D、E、F、およびGであり、それぞれ型特異的抗体を用いて中性化することによって区別される。異なる血清型のボツリヌス毒素は、それらが作用する動物種において、それらが誘発する麻痺の重篤度および期間が異なる。例えば、ボツリヌス毒素A型は、ボツリヌス毒素B型よりも、ラットにおいてもたらされる麻痺率で測定されるように、500倍強力であることが判明している。さらに、ボツリヌス毒素B型は、霊長類において、480U/kgの用量で、非毒性であることが判明しており、これは、ボツリヌス毒素A型に対する霊長類LD50の約12倍である。したがって、非A型ボツリヌス毒素血清型は、薬効が低い場合があり、および/またはボツリヌス毒素A型と比較して、活性の期間が短い場合がある。
【0069】
すべてのボツリヌス毒素血清型は、明らかに、神経筋接合部において、神経伝達物質の放出を阻害するが、それらは、異なる神経分泌タンパク質に作用し、および/または異なる部位においてこれらのタンパク質を開裂させることによってそれを行う。例えば、ボツリヌス型Aとボツリヌス型Eとは、いずれも25キロダルトン(kD)のシナプトソーム関連タンパク質(SNAP−25)を開裂させるが、それらは、このタンパク質内の異なるアミノ酸配列を標的とする。ボツリヌス毒素型B、D、F、およびGは、ベシクル関連タンパク質(VAMP、スナプトブレビンとも呼ばれる)に作用し、各血清型は、タンパク質を異なる部位で開裂させる。最後に、ボツリヌス毒素型C1は、シンタキシンおよびSNAP−25の両方を開裂させることが示された。作用機序におけるこれらの差異は、様々なボツリヌス毒素血清型の作用の相対能力および/または期間に作用し得る。
【0070】
インビトロでの研究は、ボツリヌス毒素が、一次細胞培養および脳シナプトソーム調製物からの様々な神経伝達物質のカリウム誘導性放出を阻害することを示した。グルタミン酸は、脳におけるシナプス興奮の大部分に関与する神経伝達物質であり、発作性放電の生成および拡散に不可欠であると考えられている。ボツリヌス毒素は、脊椎ニューロンの初代培養においてグルタミン酸の誘発放出を阻害すること、および脳シナプトソーム調整物において、ボツリヌス毒素は、グルタミン酸および他の神経伝達物質の放出を阻害することが報告されている。
【0071】
本発明の一部の実施形態において、抗てんかん薬は、ボツリヌス毒素Aまたはボツリヌス毒素Bである。他の実施形態において、毒素は、親毒素の生物活性を有するボツリヌス毒素Aまたはボツリヌス毒素Bの断片または類似体である。他の実施形態において、毒素は、脳ニューロン上の適切な標的に対して特異的に結合するように修飾される。一部の実施形態において、組み換え技術を使用して、クロストリジウム神経毒素またはそれらの断片あるいは類似体を生成する。
【0072】
本発明では、コナントキンの使用も意図され、それらは、米国特許第6,172,041号明細書および、米国特許第6,399,574号明細書に記載されるものを含み、それらの開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0073】
診断薬は、本明細書に記載されるように、リポソーム内にも封入され得る。適切な薬剤には、MRIで使用するための常磁性イオンが挙げられ、本明細書において「MRI磁石」と称される。適切な金属イオンには、原子番号22〜29(境界値も含む)、42、44および58〜70(境界値も含む)を有するものが挙げられ、+2または+3の酸化状態を有する。そのような金属イオンの実施例は、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(II)、鉄(III)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、プラセオジム(III)、ネオジミウム(III)、サマリウム(III)、ガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)およびイッテルビウム(III)である。
【0074】
X線画像診断(例えば、CT)を使用してCEDを監視する実施形態において、診断薬は、X線不透過物質を含み得る。適切なX線不透過物質は、よく知られており、ヨード化合物、バリウム化合物、ガリウム化合物、タリウム化合物等が挙げられる。X線不透過物質の特定の例には、バリウム、ジアトリゾエート、ヨード化ケシ油エチルエステル、クエン酸ガリウム、イオカルミン酸、ヨーセタム酸、ヨーダミド、ヨージパミド、ヨードキサム酸、イオグラミド、イオヘキソール、イオパミドール、イオパノン酸、イオプロセム酸、イオセファム酸、イオセル酸、イオスラミドメグルミン、イオスメト酸、ヨータサル、ヨートラン酸、イオタラム酸、イオトロクス酸、イオキソトリロン酸、イポダート、メグルミン、メタザミド、メタゾエート、プロピリオドン、および塩化タリウムが挙げられる。
【0075】
本明細書に記載されるように、リポソーム製剤は、対流増進送達に適している。
【0076】
対流増進送達
【0077】
対流増進送達(CED)は、バルクフロー機序を利用して、巨大分子を臨床的に有意な容積の固体組織に送達および分散させるための直接脳内薬物送達法である。CEDは、単純拡散よりも大量の分散を提供し、治療薬を特定の標的部位に案内するように設計されている。例えば、米国特許第5,720,720号明細書を参照されたい。この開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。つまり、対流増進送達(CED)は、血液−脳関門を回避し、大分子量の物質、例えば、薬物装薬リポソームが、均等に制御された状態で脳の規定された領域内に投与されるのを可能にする(例えば、米国特許出願第11/740,548号明細書を参照されたい。参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。CEDは、カテーテルを組織に直接挿入し、所定の流速、例えば、約0.1μL/分〜約12μL/分でカテーテルを通って間質腔に入る圧力下で、薬剤を投与することによって、直接対流間質注入を通して、所定の時間に渡って、液体薬物(例えば、リポソーム製剤)を固体組織(例えば、脳腫瘍)に投与するために使用され得る。
【0078】
本明細書において詳述されるように、本出願人は、CEDが、治療薬および任意で、非ペグ化リポソーム製剤に被包される診断薬の送達に効果的に使用され得、製剤は、少なくとも1種の中性飽和リン脂質および少なくとも1種の陰イオン飽和脂質の混合物を含むか、または本質的にそれらから成ることを発見した。実施例の項で説明されるように、少なくとも1種の治療薬(例えば、トポテカン)および/または本明細書に記載されるような非ペグ化リポソーム製剤に被包される診断薬を含む組成物のCEDは、治療薬の分散量を増加させ、その血清半減期を劇的に向上させる。
【0079】
リポソーム製剤(例えば、薬学的組成物)の投与に使用され得る適切な装置は、リポソーム製剤を充填した容器を含む、ポンプ装置を備え得る。ポンプは、体外に配置されても、または体内に埋め込まれてもよい。ポンプは、カテーテルに接続されてもよく、カテーテルがCNS内の個々の組織に埋め込まれ得る。ポンプは、溶質を特定の組織内で対流させる圧力および流速で、リポソーム製剤を放出するように活性化され得る。
【0080】
リポソーム製剤を、個々の組織を通して、個々の組織に隣接する領域に分散させるように、例えば、リポソーム製剤が脳脊髄液に入らないように、注入の期間および他のパラメータが調整され得る。個々の組織のサイズおよび形状に応じて、複数の埋め込まれた注入カテーテルを使用するか、または複数の溶液出口ポートを有する注入カテーテルを使用する必要があり得る。
【0081】
CEDを使用して、リポソーム製剤は、微細カニューレを通して、陽圧下で間質腔にゆっくり注入することによって分散され得る。ポンプに由来する静水圧によって駆動されるバルクフローは、CNSの細胞外空間内でリポソーム製剤を分散させるように使用され得る。CEDの使用は、カニューレの先端を介して、神経組織内での直接リポソーム製剤の分散を可能にするため、血液−脳関門がバイパスされ、中枢神経系における個々の組織、例えば、癌性であると規定された個々の組織、または従来の手術前評価によって切除対象として識別された個々の組織、および複数の病巣を治療する必要がある場合は、異なる病巣における個々の組織が標的とされ得る。バルクフローの特性に基づいて、CEDは、様々な量のリポソーム製剤を確実、安全、かつ均等に分散させるために使用され得る。例えば、米国特許出願第11/740,508号明細書を参照されたい。さらに、CEDは、注入された組織に対して構造的または機能的損傷をもたらさず、リポソーム製剤の分散に対する優れた制御を提供する。さらに、リポソーム製剤は、リポソーム製剤に含まれるリポソームの分子量に関係なく、注入量に比例する分散量を通して均等に分散され得る。
【0082】
一実施形態において、超微細送達カテーテル(新規の「ステップ」設計で、ポリウレタンおよび溶融シリカで構成される)が、経皮ポートとともに恒久的に埋め込まれてもよい。新規のカテーテル設計は、急速に生体と一体化され得、内的に密閉およびろ過されて、細菌の侵入を回避し、さらなる安全性のためにキャップされ得る。リポソーム製剤は、必要に応じて、このカテーテルシステムのポートを通じて注入され得る。
【0083】
本明細書に記載される一実施形態において、CEDは、注入ポンプを使用して、脳領域内に恒久的に埋め込まれた小径カテーテルにより適用され得る。投与されるリポソーム製剤は、等張水溶液、または他の適切な製剤として調製され得る。投与(例えば、注入)中に、リポソーム溶液は、細胞外空間内を流れ得、脳組織に対する損傷が最小限度に抑えられるか、または損傷をもたらさない。
【0084】
一実施形態において、特に経皮CED送達用に設計された超微細(先端において0.2mmOD)、最小侵襲性カテーテルシステムを使用してもよい。カテーテルシステムは、ステップ設計を有し、カテーテルの側面に沿って、溶液のかん流を排除し得る。そのような溶液の漏出は、直線的な側面のカテーテルにとって大きな問題である。カテーテルシステムは、生体適合性が高く、MRI信号を妨害しないように、ポリウレタンおよび溶融シリカ、またはPeek Optimaで構成され得る。CNS障害の治療は、異なる間隔、例えば、週間隔、月間隔等で、リポソーム製剤の再投与を必要とし得る。例えば、米国特許出願第11/740,124号明細書を参照されたい。この開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。経皮ポートは、間隔期間中に、キャップされたままであり得る。複数のカテーテル設計は、単一カテーテルを用いて可能なより広い領域の個々の組織をかん流させることが可能であり得る。CED注入後のリポソームの分散量は、注入された溶液量に線形相関することが判明した。
【0085】
特に好適なカニューレは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Krauze et al.,J Neurosurg.November 2005;103(5)923−9、ならびに参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許出願公開第US2007/0088295 A1号明細書、および参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0135945 A1号明細書に開示されている。
【0086】
一実施形態において、CEDは、約0.1μL/分から約10μL/分の間の注入速度を含む。別の実施形態において、CEDは、約0.1μL/分から約0.3μL/分の注入速度、例えば、約0.2μL/分、より好ましくは、約0.7μL/分超、より好ましくは、約1μL/分超、より好ましくは、約1.2μL/分超、より好ましくは、約1.5μL/分超、より好ましくは、約1.7μL/分超、より好ましくは、約2μL/分超、より好ましくは、約2.2μL/分超、より好ましくは、約2.5μL/分超、より好ましくは、約2.7μL/分超、より好ましくは、約3μL/分超、および好ましくは、約12μL/分未満、より好ましくは、約10μL/分未満を含む。
【0087】
好適な実施形態において、CEDは、送達中に、「ステッピング」または増加適定(up−titration)と称される流速の増分増加を含む。好ましくは、ステッピングは、約0.1μL/分および約10μL/分の間の注入速度を含む。
【0088】
好適な実施形態において、ステッピングは、約0.5μL/分超、より好ましくは、約0.7μL/分超、より好ましくは、約1mL/分超、より好ましくは、約1.2μL/分超、より好ましくは、約1.5μL/分超、より好ましくは、約1.7μL/分超、より好ましくは、約2μL/分超、より好ましくは、約2.2μL/分超、より好ましくは、約2.5μL/分超、より好ましくは、約2.7μL/分超、より好ましくは、約3μL/分超、および好ましくは、約12μL/分未満、より好ましくは、約10μL/分未満の注入速度を含む。
【0089】
本明細書における治療方法は、好ましくは、標的の位置特定およびカニューレの誘導配置のための診断薬による神経画像診断、好ましくはMRIも含む。好ましくは、診断薬の神経画像診断と併せて、定位固定ホルダを使用し、標的ニューロン集団、またはその近位にカニューレを誘導配置する。トレース剤は、好ましくは、磁気共鳴画像(MRI)またはX線コンピュータ断層撮影によって検出可能である。トレース剤の分散を監視し、高分子量神経治療薬の分散の間接的測定として使用する。この監視は、非標的組織への注入剤の望ましくない送達を検出し、高分子量神経治療薬が、標的組織に到達し、そこで有効濃度を達成していることを検証するために行う。
【0090】
一実施形態において、診断薬は、治療薬とは異なる。診断薬は、治療薬の速度と相関する速度で分散するため、治療薬分散の間接的な指標である。好適な実施形態において、診断薬および治療薬は、個別に投与されるが、同一の非ペグ化陰イオンリポソーム製剤によって被包され、極めて類似した分散特性を付与する。別の実施形態において、診断薬および治療薬は、共投与される。
【0091】
本明細書における治療方法は、好ましくは、注入剤の分散を監視するための神経画像診断も含む。好適な実施形態において、治療方法は、注入される本発明の薬学的組成物の分散を監視するためのMRIの使用を含み、薬学的組成物は、MRI磁石を含む。
【実施例】
【0092】
実施例1 CED用のペグ化リポソーム製と非ペグ化リポソーム製剤との比較
【0093】
実施例1.1 材料および方法
【0094】
実施例1.1.1:DSPC/CHOL(60/40モル比)
【0095】
26.1mgのDSPC(MW790、ロット#C3L006、実重量26.2mg)+8.5mgのコレステロール(MW387、ロット#CH1S003、実重量8.8mg)を計量する。
【0096】
0.5mLのクロロホルムに溶解させ、EtOH中の75μL 5mg/mLのRhPE(0.2モル%のリン脂質)を添加する。
【0097】
渦動させながら、試料を窒素下で乾燥させて薄膜を形成する。真空下で1時間、乾燥を完了させる。
【0098】
1.5mLのHBS(5mM HEPES−145mM NaCl pH7.0、0.1192gのHEPES[MW238.3]+0.8475gのNaCl[MW58.45]、pHをNaOHで調整し、量を100mLにする)中で脂質を60℃で再水和し、MLVを形成する。
【0099】
60℃で2x100nmのフィルタから押出して、LUVを得る(標的サイズ100〜120nm)。
【0100】
リン酸塩の測定−20mM リン脂質に希釈する。
【0101】
2.0mLの血清バイアル(事前に脱発熱化)に入れる。
【0102】
実施例1.1.2:DSPC/CHOL/PEGzoooDSPE(59.5/40/0.5モル比)
【0103】
25.8mgのDSPC(MW790、ロット#C3L006、実重量25.6mg)+8.5mgのコレステロール(MW387、ロット#CH1 S003、実重量8.7mg)+0.75mgのPEG2000DSPE(MW2774、ロット#PPE2011809、実重量50μLの15mg/mL CHCl3溶液を計量し、1.2mL CHCl3中で18mg[実重量17.9mg]を調製する。
【0104】
0.5mLのクロロホルムに溶解させ、75μLのRhPE(0.2モル%のリン脂質)を添加する。
【0105】
渦動させながら、試料を窒素下で乾燥させて薄膜を形成する。真空下で1時間、乾燥を完了させる。
【0106】
1.5mLのHBS(5mM HEPES−145mM NaCl pH7.0)中で脂質を60℃で再水和し、MLVを形成する。
【0107】
60℃で2x100nmのフィルタから押出して、LUVを得る(標的サイズ100〜120nm)。
【0108】
リン酸塩の測定−20mM リン脂質に希釈する。2.0mLの血清バイアル(事前に脱発熱化)に入れる。
【0109】
実施例1.1.3:DSPC/CHOL/PEG2000DSPE(55/40/5モル比)
【0110】
23.9mgのDSPC(MW790、ロット#C3L006、実重量23.8mg)+8.5mgのコレステロール(MW387、ロット#CH1 S003、実重量8.6mg)+7.5mgのPEG2000DSPE(MW2774、ロット#PPE2011809、実重量500μLの15mg/mLCHCl3溶液)を計量する。
【0111】
0.5mLのクロロホルムに溶解させ、75μLのRhPE(0.2モル%のリン脂質)を添加する。
【0112】
渦動させながら、試料を窒素下で乾燥させて薄膜を形成する。真空下で1時間、乾燥を完了させる。
【0113】
2.0mLのHBS(5mM HEPES−145mM NaCl pH7.0)中で脂質を60℃で再水和し、MLVを形成する。
【0114】
60℃で2x100nmのフィルタから押出して、LUVを得る(標的サイズ100〜120nm)。
【0115】
リン酸塩の測定−20mM リン脂質に希釈する。
【0116】
2.0mLの血清バイアル(事前に脱発熱化)に入れる。
【0117】
実施例1.1.4:DSPC/CHOL/NG−DOPE(55/40/5モル比)
【0118】
23.9mgのDSPC(MW790、ロット#C3L006、実重量24.2mg)+8.5mgのコレステロール(MW387、ロット#CH1 S003、実重量8.9mg)+2.4mgのNG−DOPE(MW880 13、ロット#050328L、実重量2.4mg)を計量する。
【0119】
0.5mLのクロロホルムに溶解させ、75μLのRhPE(0.2モル%のリン脂質)を添加する。
【0120】
渦動させながら、試料を窒素下で乾燥させて薄膜を形成する。真空下で1時間、乾燥を完了させる。
【0121】
2.0mLのHBS(5mM HEPES−145mM NaCl pH7.0)中で脂質を60℃で再水和し、MLVを形成する。
【0122】
60℃で2x100nmのフィルタから押出して、LUVを得る(標的サイズ100〜120nm)。
【0123】
リン酸塩の測定−20mM リン脂質に希釈する。
【0124】
2.0mLの血清バイアル(事前に脱発熱化)に入れる。
【0125】
実施例1.1.5:DSPC/PEG2000DSPE(99/1モル比)
【0126】
25.8mgのDSPC(MW790、ロット#C3L006、実重量26.1mg)+0.9mgのPEG2000DSPE(MW2774、ロット#PPE2011809、実重量60μLの15mg/mL CHCl3溶液)を計量する。
【0127】
0.5mLのクロロホルムに溶解させ、75μLのRhPE(0.2モル%のリン脂質)を添加する。
【0128】
渦動させながら、試料を窒素下で乾燥させて薄膜を形成する。真空下で1時間、乾燥を完了させる。
【0129】
2.0mLのHBS(5mM HEPES−145mM NaCl pH7.0)中で脂質を60℃で再水和し、MLVを形成する。
【0130】
60℃で2x100nmのフィルタから押出して、LUVを得る(標的サイズ100〜120nm)。
【0131】
リン酸塩の測定−20mM リン脂質に希釈する。
【0132】
2.0mLの血清バイアル(事前に脱発熱化)に入れる。
【0133】
実施例1.1.6:DSPC/PEG2000DSPE(95/5モル比)
【0134】
24.8mgのDSPC(MW790、ロット#C3L006、実重量24.6mg)+4.6mgのPEG2000DSPE(MW2774、ロット#PPE2011809、実重量307μLの15mg/mL CHCl3溶液)を計量する。
【0135】
0.5mLのクロロホルムに溶解させ、75μLのRhPE(0.2モル%のリン脂質)を添加する。
【0136】
渦動させながら、試料を窒素下で乾燥させて薄膜を形成する。真空下で1時間、乾燥を完了させる。
【0137】
1.5mLのHBS(5mM HEPES−145mM NaCl pH7.0)中で脂質を60℃で再水和し、MLVを形成する。
【0138】
60℃で2x100nmのフィルタから押出して、LUVを得る(標的サイズ100〜120nm)。
【0139】
リン酸塩の測定−20mM リン脂質に希釈する。
【0140】
2.0mLの血清バイアル(事前に脱発熱化)に入れる。
【0141】
実施例1.1.7:DSPC/DSPG(70/30モル比)
【0142】
18.2mgのDSPC(MW790、ロット#C3L006、実重量18.1mg)+7.4mgのDSPG(MW745、ロット#G3L006、実重量7.6mg)を計量する。
【0143】
0.5mLのクロロホルム/MeOH(9/1、v/v)に溶解させ、75μLのRhPE(0.2モル%のリン脂質)を添加する。
【0144】
渦動させながら、試料を窒素下で乾燥させて薄膜を形成する。真空下で1時間、乾燥を完了させる。
【0145】
2.0mLのHBS(5mM HEPES−145mM NaCl pH6.5)中で脂質を60℃で再水和し、MLVを形成する。
【0146】
60℃で2x100nmのフィルタから押出して、LUVを得る(標的サイズ100〜120nm)。
【0147】
リン酸塩の測定−20mM リン脂質に希釈する。
【0148】
2.0mLの血清バイアル(事前に脱発熱化)に入れる。
【0149】
実施例1.1.8:リン酸塩の測定
【0150】
試料1/50(20μL〜1.0mL)を水で希釈し、濃度を最大0.4mMにする。
【0151】
各希釈試料を3×200μLに等分する。
【0152】
ACM−010によるリン酸塩の測定
【0153】
実施例1.2:結果
【0154】
図1A〜1Fを参照。
【0155】
実施例2:齧歯類の脳に脳内送達されるナノリポソーム化合物の薬理学評価
【0156】
実施例2.1:材料および方法
【0157】
実施例2.1.1:被検物質
【0158】
本実施例における実験は、リポソーム−トポテカン(Ls−TPT)およびリポソームガドジアミド(Ls−GD)の両方の研究グレード材料を用いて行った。トポテカン製剤およびLs−TPT調製物用のトポテカン(TPT)は、Hisun Pharmaceuticals(中国浙江省台州市)から入手した。Ls−TPTは、Northern Lipids lnc(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビー)により提供された。つまり、リポソームは、リポソームは、7:2:1のモル比のジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、およびコレステロールで、75〜90nm標的サイズで構成された。トポテカンは、それぞれ硫酸アンモニウム250mM pH5.5およびヒスチジン5mM/NaCl145mM pH6.0から成る、内部および外部緩衝液を使用して、膜貫通pHの勾配に応答して、リポソーム中に遠隔装薬した(能動的に被包された)。0.1および0.3(w/w)薬物脂質比を有する0.67および2.0mg/mLのトポテカン濃度は、それぞれ90〜95%の薬物被包効率を想定して目標を設定した。一定の総脂質濃度目標である6.7mg/mLを、両方の製剤に維持した。製造工程は、実施例2.1.2.に詳述される。
【0159】
Ls−GD調製物用のガドジアミド(GD)は、Beijing SHLHT Science & Trade(中国北京)から入手した。Ls−GDは、ガドジアミドがリポソームに受動的に被包されたことを除いて、Ls−TPTと同様に調製した。内部緩衝液は、250mMの硫酸アンモニウムの代わりに、520mMのガドジアミド、pH5.5で構成した。4〜6%の被包効率を想定して、ガドジアミド対脂質比0.3(w/w)および粒径75〜120nmに目標を設定した。最終製剤の脂質およびガドジアミド濃度は、それぞれ51.1mg/mLおよび17.0mg/mLであった。
【0160】
特に明記されない限り、Ls−TPT被検物質は、冷凍保存した(−20〜−30℃)。投与溶液は、投与する日に新たに調製し、室温で保持した。5mM ヒスチジン、145mM NaCl pH6.0、300mMスクロース原液(Ls−TPTおよび遊離トポテカン)を用いて適切な希釈を行い、所望の濃度を得た。貯蔵被検物質溶液の新しいバイアルを、各投与日に使用した。
【0161】
実施例2.1.2:リポソーム製造工程
【0162】
バッチに必要とされる脂質の量を計算し、脂質粉末を計量ボートに計量した。t−ブタノール、エタノール、および水(45:45:10、vol/vol)から成る溶媒溶液を調製し、70℃に加熱した。攪拌しながら、脂質粉末を溶媒溶液に添加した。溶媒を70℃で維持し、すべての脂質が溶解するまで攪拌した(最長1時間)。溶液中の脂質濃度は、この時点で320mg/mLであった。硫酸アンモニウムの250mM溶液を調製し(体積は脂質溶媒溶液の9倍)、70℃に加熱した。硫酸アンモニウムが温度に到達した後、脂質溶液を、攪拌しながら硫酸アンモニウム溶液に注ぎ入れ、多重膜小胞(MLV)を生成した。MLVを70℃で維持し、80nmの孔の開いた4層ポリカーボネートフィルタから押出した。所望のサイズ(75〜90nmの平均直径)の大きい単層小胞(LUV)を生成するために、2回の通過が必要であった。リポソームのサイズは、押出器を通過する毎に、QELSによって測定した。LUVは、それらが所望のサイズに縮小されるまで70℃で維持し、次に、LUVは、10%溶媒において、最大55℃の相転移温度以下で不安定であったため、ヒスチジン生理食塩水pH6.0緩衝液を用いて、5%溶媒濃度まで希釈した。次に、LUVを、限界ろ過によって最大50mg/mLの総脂質に再濃縮し、続いて、10洗浄量の10mMヒスチジン、145mMのNaCl緩衝液に対してダイアフィルタでろ過して溶媒を除去し、硫酸アンモニウムからの外部緩衝液を、pH6.0ヒスチジン緩衝液に交換した。この緩衝液交換は、膜貫通pH勾配を作りだし、これを使用して、トポテカンを事前形成されたリポソーム中に装薬した。次に、リン酸塩測定によって総脂質濃度を決定した。脂質の総量を決定した後、脂質の総質量にそれぞれ0.1および0.3を掛けることによって、0.1:1または0.3:1(w/w)薬物脂質比を達成するために必要なトポテカンの量を計算する。最終薬物脂質比0.1:1または0.3:1(w/w)を達成するために、90%の装薬効率を想定した。必要とされるトポテカンの総量を計算した後、粉末を清潔なボトルに計量した。LUV懸濁液を60℃に加熱し、トポテカン粉末を添加した。薬物添加に続いて60分間、トポテカンを装薬させて、リポソーム中への最適な装薬を保障した。薬物装薬に続いて、非被包トポテカンを、5洗浄量の5mMヒスチジン、300mMスクロースpH6.0緩衝液を用いて、ダイアフィルタによるろ過で除去した。このステップも、塩化ナトリウム溶液からの外部緩衝液を、抗凍結剤として機能させ、その物理特性を変えることなく製剤を凍結させることができるスクロースに交換するように作用した。推定脂質含有量は、この段階で、8.3mg/mLであった(薬物脂質比が0.3:1の場合)。製剤を50℃に加熱し、0.2μmシリンジフィルタに通した。次に、生成物をバイアルに入れた。最後に、生成物を凍結させて、製造工程を完了する。
【0163】
実施例2.1.3:動物およびグループ分け
【0164】
体重250−350gの成体雄Sprague−Dawleyラット(Harlan,インディアナ州インディアナポリス)(バッチ120806および010507)を使用した。
【0165】
本実施例の製剤スクリーニング成分に対して、表1に概説されるようなLs−TPT製剤または遊離トポテカンに基づいて、動物を4つのグループに分割した。
【表1】
F1:DSPC/CHOL 0.1 DL比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD1.15mg/mL
F2:DSPC/DSPG/CHOL 0.3 DL比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD1.15mg/mL
F3:DSPC/DSPG/CHOL0.1 DL比 Ls−TPT 0.5mg/mL+Ls−GD1.15mg/mL
F4:遊離トポテカン0.5mg/mL
DSPC/DSPG=ジステアロイルホスファチジルコリン/ジステアロイルホスファチジルグリセロール
Chol=コレステロール
DL比=薬物脂質比(w/w)
Ls−TPT=リポソームトポテカン
Ls−GD=リポソームガドジアミド
【0166】
比較可能な群平均体重および標準偏差を達成するように、ラットを体重に基づいてグループ分けした。次に、該グループを、ランダムに治療および時点に割り当てた。
【0167】
実施例2.1.4:外科的処置
【0168】
イソフルラン(導入時は5%、手術中の維持の場合は2.5〜3.0%)吸入またはケタミン(60mg/kg)およびキシラジン(8mg/kg)の組み合わせの腹腔内注入のいずれかによって、ラットに麻酔をかけた。頭蓋の皮膚を剃毛し、動物を定位フレームに載置し、耳バーおよび切歯バーを使用して頭部を配置した。すべての外科的処置に対して無菌法を使用した。皮膚を70%アルコール、続いてベタジン溶液で消毒した。頭蓋上部の皮膚を縦方向に切開し、鈍的切開を使用して、頭蓋を覆う結合組織を除去した。小型の歯科用電気ドリルを使用して、頭蓋骨切除術を行い、ブレグマから0.5mm前方、および3mm左と右に直径1mmの穿頭孔を開けた。自動ポンプ(BASi,Inc.,インディアナ州ウェストラフィエット)に接続された溶融シリカカニューレ(OD168μm、ID102μm)(PolyMicro Technologies,アリゾナ州フェニックス)をCEDに使用し、適切な背腹座標に低下させた(−3.3mmで歯バーを用いて−4.5〜−5mm)。背腹座標は、軟膜表面から計算した。カニューレを、10μLのHamiltonシリンジと接続された27ゲージニードルに挿入し、強力瞬間接着剤で管に固定した。被検物質を両側で一度に各線条体に注入した。本研究では、漸進的注入速度の増分を使用して、半球当たり20μL用量を0.2μL/分(15分)、続いて0.5μL/分(10分)および0.8μL/分(15分)で達成した。注入完了後に、カニューレを所定の位置に5分間留置して、注入液の流出を最小限にした後、徐々に回収した。
【0169】
処置の終了後、ラットを通風のない環境内で維持し、加熱ランプまたは水ボトル、あるいは他の適切な加温方法で保温し、麻酔からの回復を監視した。ブプレノルフィンを、必要に応じて皮下投与した。ホームケージに戻す前に、ラットを処置室で回復させた。
【0170】
実施例2.1.5:組織の採取および処理
【0171】
所定の時点において、動物にイソフルラン(2.5%)で麻酔をかけ、0.9%生理食塩水で心臓内かん流を行った。
【0172】
試験中に死亡したか、または屠殺された(予定および予定外)すべての動物の完全な全身剖検を、剖体および筋肉/骨格系、すべての外表面および開口部、頭蓋腔および脳の外表面、関連器官および組織を伴う頸部、関連器官および組織を伴う胸部、腹部、および骨盤腔に対して行った。
【0173】
脳を除去して、氷上に置き、背面アプローチを使用して線条体を切除し、組織を液体窒素中で凍結させた。続いて、組織を等量の水(1:1v/v)で均質化し、次にメタノールで抽出して、後援者に出荷するまで−70℃で保存した。本実施例の製剤組織および血漿薬物動態成分用に尾静脈血を採取した(1.0mL)。
【0174】
実施例2.1.6:HPLC
【0175】
脳組織および血漿中の総トポテカン(遊離およびリポソーム被包)の高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)が、等張逆相HPLC/UV法を使用して、Northern Lipids Inc.(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビー)によって行われた。方法の詳細は、以下のとおりである。簡単に説明すると、動物(n=3)を1時間および6時間、2日、4日、および7日目に屠殺した。脳を除去して、氷上に置き、背面アプローチを使用して線条体を切除し、組織を液体窒素中で凍結させた。等量の氷冷水(1:1w/w)を添加し、解凍した組織を機械的に2分間均質化して(Biospec)、凍結させた。分析するために凍結ホモジネートをNLIに出荷した。200μLの解凍ホモジネート試料を、800μLの冷メタノール(1:4)を含有するエッペンドルフ管に移し、12,000rpmで2〜5分間遠心分離した。Northern Lipids Inc(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビー)による有効な逆相HPLC法を使用して、上澄み液200μLを即時分析用、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)による分析用に自動サンプラーバイアルに入れる(または最長3ヶ月以内の分析まで−70℃で保存される)。TPTの場合、ラクトン体にはメタノール:水:トリフルオロ酢酸(40:60:0.02)を利用し、カルボン酸体には、20mMホウ酸塩緩衝剤メタノール(60:40)を利用して、標準物質を新たに調製した。分析は、Waters2690/5 Separation Module and EmpowerソフトウェアHPLCシステム上で、C18逆相シリカカラム[Phenomenex Inc Luna C−18(2)カラム、250mm x 46mm 内径、5μm粒径、周囲温度]を用いて、C18セキュリティガードカートリッジ(Phenomenex Inc,4×3.0mm)によって行った。試料を自動サンプラートレイに5±3℃で置き、試料注入量30〜50μLを使用し、カラムを流速1.0mL/分で、移動相A3%トリエチルアミン酢酸緩衝液、pH5.5(TEAA)および移動相Bアセトニトリル3%TEAA(50:50)から成る移動相により溶出した。勾配溶出は、最初の5mmにおいて78:22 A:B〜50:50 A:B、3mm保持されて、0.5mmにおいて最初に戻り、実行時間の合計は15分であった。トポテカンは、Waters 2475 Multi λ蛍光検出器(誘起380nm、発光520nm)で検出された。トポテカンカルボン酸およびラクトン形態の典型的な保持時間は、それぞれ5.5および7.5mmであった。この方法は、0.8ng/mL〜240ng/mLの範囲に渡って、良好な感度および線形性を有する。TPTの抽出方法回復因子は0.9であった。
【0176】
実施例2.1.7:早期死亡/予定外の屠殺
【0177】
動物が試験時に死亡した場合、死亡時刻は、可能な限り厳密に推定および記録し、剖検を可能な限り早急に行った。剖検をすぐに行うことができなかった場合、動物を冷蔵して(冷凍ではない)、組織の自己消化を最小限に抑えた。剖検は、死後12時間以内に行った。
【0178】
動物の健康状態が不良であるか、または死が近づいていると思われる場合は、安楽死させ得る。可能であれば、必要に応じて血液または他の標本を採取および分析して(例えば、臨床病理パラメータ用)、倦怠感/死亡の原因の解明を支援した。
【0179】
実施例2.1.8:統計的手法
【0180】
連続(N、平均および標準偏差)およびカテゴリ(N、%)データの記述統計学は、適切な場合、表形式および図式の両方で提示される。薬物(t1/2)の組織半減期、クリアランス(CL)、脳内の平均滞留時間(MRT)、および濃度対時間曲線(AUC)下の領域を含む、薬物動態(PK)パラメータは、すべてWinNonlin5.0(Pharsight Corporation,米国カリフォルニア州マウンテンビュー)を利用して、非コンパートメント薬物動態データ分析によって決定した。
【0181】
実施例2.1.9:動物の飼育
【0182】
各動物は、番号付き耳タグおよびケージカードによって識別した。試験施設に到着すると、試験処置の最低3日前に、試験動物を部屋に順化させた。試験中は、少なくとも1日1回、それらのケージ内で、飼育スタッフによる日常的な飼育中に動物を観察した。各動物は、全体的な健康状態の変化について観察した。何らかの疾患の兆候があれば、すぐに担当の獣医および研究主任に報告した。
【0183】
薬物注入に先立って体重を測定し、屠殺は、2、4、7、および10日目に予定された。
【0184】
摂餌量は、飼育スタッフによって、各動物に対して、手術の前日に開始して屠殺するまで毎日評価した。摂餌量は、1日の飼料の残りを目視観測することによって評価した。飢餓または脱水の証拠は、担当獣医および研究担当者に報告し、適切な対応を行った。
【0185】
実施例2.2:結果
【0186】
実施例2.2.1:誘導体
【0187】
2つの動物バッチ(バッチ120806および010507)を試験に使用した。6時間、2日、4日、および7日後の時点で動物を屠殺し、全体剖検において、異なる時点で屠殺した数匹の動物における経心臓的かん流時に、心肥大を観察した。観察される心肥大が、被検物質または動物バッチ/株と関連したか否かを決定するために、異なる動物バッチ(バッチ010507)を1時間の時点で使用し、初期バッチ(バッチ120806)から15匹の動物を対照として使用した。対照群は、外科的処置、または任意の被検物質を何も受けていなかった。
【0188】
実施例2.2.2:製剤スクリーニング薬物動態
【0189】
この試験コンポーネントに対して予定された数の動物(60)を試験した。屠殺する前に体重を評価した時点で(2日、4日、7日)、ベースラインと屠殺との間に、有意な体重の喪失(40%以上)は認められなかった。1時間の時点で、4匹の動物を交換する必要があった。2匹は麻酔により死亡し、1匹は被検物質(製剤3)の注入中に目覚めたため、安楽死させる必要があり、1匹は穿頭孔を開けている間に呼吸停止した。全体剖検において、いずれの動物も知見を示さなかった。6時間の時点における動物は、いずれも交換する必要がなかった。2日の時点における1匹の動物は、麻酔により死亡したため、交換する必要があった。4日の時点における1匹の動物は、対照動物として誤って屠殺したため、交換する必要があった(製剤3の注入後3日)。7日の時点における3匹の動物は、不正な製剤1の調製物を投与したため、交換する必要があり、したがって、分析に含めることができなかった。注入は、製剤4に割り当てられた1匹の動物を除いて順調であり、1時間の時点で、27分から40分注入後に注入システムの漏出が認められた。実施例2.2.1において説明されるように、合計15匹の動物を対照として使用し、任意の介入を経なかった。動物処分の概要は、表3において見出すことができる。
【表2】
F1:DSPC/CHOL 0.1D:L比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
F2:DSPC/DSPG/CHOL 0.3 D:L比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
F3: DSPC/DSPG/CHOL 0.1 D:L比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
F4:遊離トポテカン0.5mg/mL
DSPC/DSPG=ジステアロイルホスファチジルコリン/ジステロイルホスファチジルグリセロール
Chol=コレステロール
D:L比=薬物脂質比(w/w)
Ls−TPT=リポソームトポテカン
Ls−GD=リポソームガドジアミド
( )は、交換された動物の数を示す
【0190】
実施例2.2.3:脳組織濃度
【0191】
トポテカン脳組織濃度は、遊離トポテカン群において、1時間および6時間の時点においてのみ測定可能であった(製剤4)。対照的に、Ls−TPT群において、測定可能な脳組織濃度は、48時間(製剤1)または96時間(製剤2および3)を通しても見出可能であった。いずれの製剤も、7日目には検出可能なレベルを有しなかった。すべての時点において、製剤2は、製剤2および3が極めて低く、同様の濃度を有した96時間の時点を除いて、最大の組織濃度を有した。遊離トポテカンの短い半減期を考えると、検出されたトポテカンレベルは、特に6時間を超えると、リポソーム製剤1、2、および3に対して、被包されたトポテカンを反映すると想定される。表4は、製剤および時点別のトポテカンの脳組織濃度の概要である。
【表3】
F1:DSPC/CHOL 0.1D:L比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
F2:DSPC/DSPG/CHOL 0.3 D:L比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
F3:DSPC/DSPG/CHOL 0.1 D:L比 Ls−TPT0.5mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
F4:遊離トポテカン0.5mg/mL
DSPC/DSPG=ジステアロイルホスファチジルコリン/ジステロイルホスファチジルグリセロール
CHOL=コレステロール
D:L比=薬物:脂質比(w/w)
Ls−TPT=リポソームトポテカン
Ls−GD=リポソームガドジアミド
【0192】
実施例2.2.4 濃度−時間変数
【0193】
図2に示されるように、最大脳組織濃度は、DSPC/DSPG/CHOL 0.3 D:L比トポテカンのナノリポソーム製剤により達成されたが、他の2つのリポソーム製剤は、遊離トポテカンと同様に機能した。最初の96時間に渡る脳組織濃度の範囲1.24〜146.4μMは、DSPC/DSPG/CHOL 0.3 D:L比ナノリポソーム製剤に対して決定した。各製剤の薬物の組織1/2、CL、脳内MRT、およびAUCを含む薬物動態(PK)パラメータは、表5において列挙される。回帰を適切に計算するには十分な濃度ポイントがないため(末端傾斜において少なくとも3つの濃度PKパラメータの解釈は慎重に行う(WinNonlin Analysis、別添)。データポイントの数が制限されているため(各データポイントで3匹の動物を屠殺する必要がある)、有意なPK変数は、AUCを除外して計算することはできなかった。AUC(O−最終)は、DSPC/CHOL0.1およびDSPC/DSPG/CHOL0.1(それぞれ38.27および68.21μg・日/g)、および遊離トポテカン(5.5μg・日/g)と比較して、DSPC/DSPG/CHOL0.3 D:L比製剤(153.8μg・日/g)に対して顕著に大きかった。すべてのナノリポソーム製剤は、1日の範囲で半減を生じたが、遊離トポテカンの半減期ははるかに短かった。これらの結果に基づいて、Ls−TPT製剤2(DSPC/DSPG/CHOL0.3 D:L比)を、その後の試験のために選択した。
【表4】
【0194】
実施例2.3:考察
【0195】
本実施例2において提供される試験は、脳内CEDを介して送達される3つの新規Ls−TPT製剤および遊離トポテカンと比較して、複合薬物送達アプローチのラットの正常脳組織における薬物動態プロファイルを評価したものである。評価された3種のナノリポソーム製剤の中で、薬物:脂質比が0.3であり、トポテカン濃度0.5mg/mLである製剤2、DSPC/DSPG/CHOLは、AUC(O−最終)153.8μg−日/gおよび半減期が約1日である、最適な脳内薬物動態プロファイルをもたらすことが判明した。Ls−TPT製剤2(DSPC/DSPG/CHOL 0.3 D:L比)のAUCおよび半減期は、遊離トポテカンのそれをはるかに上回り、リポソームからの長い薬物放出動態、所望のCED送達特性を示す。Ls−TPT製剤2に対して認められる良好な薬物動態プロファイルは、活性薬物のリポソームからの放出が遅いという良好な放出特性に関連する可能性がある。
【0196】
Ls−TPT製剤2の薬物動態プロファイルを大局的に見るために、当試験で見出されたトポテカンの濃度を、以前のインビトロ試験からのデータと比較した。6、48、および96時間における濃度(それぞれ108.8、31.25、および1.24μM)は、様々な悪性グリオーマ細胞株のそれぞれ1、24、72および120時間に渡る曝露後に、2.4、0.038、0.28および0.02−>4μMの50%抑制濃度(IC50)をはるかに上回った(Marchesini 1996,Pollina 1998,Schmidt 2001)。したがって、Ls−TPT製剤2は、少なくとも96時間に渡って、インビボでトポテカンの十分な細胞毒性組織濃度を提供することを想定するための確固とした根拠がある。
【0197】
実施例2.4:結論
【0198】
薬物:脂質比が0.3であり、トポテカン濃度0.5mg/mLであるLs−TPT製剤DSPC/DSPG/CHOLは、最適な脳内薬物動態プロファイルをもたらすことが判明した。
【0199】
実施例3:CEDによるヌードラットの線条体に送達されるローダミンリポソームの対流性
【0200】
実施例3.1:材料および方法
【0201】
9匹のラットを本試験に使用した。ローダミンリポソーム(DSPC/DSPG/Chol、70:20:10モル比)を、0.5モル%ローダミンPEとともに、CED注入によってラットの線条体の両側に送達した。ローダミンリポソームの希釈液は、ヒスチジン/生理食塩水緩衝液を使用して調製し、スクロースを添加して、表7に記載される最終スクロース濃度3mM、15mM、および5mMを達成する。
【表5】
【0202】
CEDの場合、シリコンカニューレを自動ポンプに接続して対流増進送達に使用し、適切な腹側座標まで下げた(AP=+0.5mm、ML=3.0mm、DV=−4.5〜−5mm、−3.3mmにおいて歯バーを用いる)。被検物質は、各線条体中に一度に両側注射した。半球当たり20μL用量を達成する本試験において使用される注入率は、0.2μL/分(15分)+0.5μL/分(10分)+0.8μL/分(15分)であった。ラットは、CED送達後、すぐに屠殺した。脳を除去し、左右の半球に分割した。右半球は、−60℃で、ドライアイス/イソペンタン中で凍結させ、組織学的分析に先立って、−80℃で24時間保存した。各動物の左半球は、Nothern Lipids,Incによる後分析用に−80℃で凍結させた。ラットの一部において、分析用に線条体を左半球から除去した。
【0203】
各ラットの右半球は、20μに分割し、線条体全体で10ごとの切片をスライドに載置した。切片を撮影し、NIH画像を使用して、線条体内の分散量を計算した。線条体の外側で発生しているローダミン蛍光は、分析に含まなかった。組織学的スライドは、Vd分析のためにUCSFに送付した。各ラットの左半球から得られた組織は、抽出効率の判定のために、Northern Lipidsに送付される。
【0204】
実施例3.2:結果
【0205】
ローダミン蛍光は、CED注入を受けているすべてのラットにおいて検出された。すべてのラットにおいて、標識は線条体内で分散した。一部のラットは、脳梁および内包線維トラックにおいて強い標識化を示した(データは図示せず)。表8は、3mM、15mM、および75mMのスクロース濃度における、個別のラットの分散容積(Vd)を示す。CEDチューブに伴う技術的困難に起因して、3匹のラットに、20μLを各線条体に注入するのではなく、40μLのローダミンリポソームを各線条体(斜線部分)に両側注入した。これらのラットは、分析に含まなかった。75mM群の動物は、手術中に(5分)死亡したため含まなかった。注入は、この動物に対して継続したが、リポソームは、動物の死後に部位から押出され、実質に分散しなかった。
【表6】
【0206】
ローダミン蛍光は、40μLおよび20μLの両注入量のスクロース濃度に関係なく、CEDを受けているすべてのラットにおいて検出された(表9)。分散の平均容積は、すべての群において、12.6mm3〜24.9mm3の範囲であった。
【表7】
【0207】
15mM最終スクロース濃度は、3mM最終スクロース濃度と比較して、2倍多い分散量を示した(図3)。スクロース濃度群の統計比較は、群サイズが小さいため、本試験では決定しなかった。
【0208】
このデータは、リポソーム調製物中の異なるスクロース濃度は、CEDガリポソームをラットの実質に分散させる能力に作用しないことを示す。本試験における試料の数は、異なるスクロース濃度が、ローダミンリポソームをラットの線条体にCED送達した後の分散量に及ぼす影響に関する統計分析を行うのに十分でなかった。
【0209】
異なる脂質組成物のローダミン装薬リポソームを使用する以前のデータ(図4)は、本試験において得られる範囲に類似する分散量を示した。
【0210】
本試験において、すべてのスクロース濃度において、半球当たり20μLのリポソームを受けたラットの中で、11.7mm3〜26.6mm3の範囲であった。図4に示されるデータは、製剤1および6に対する同様の範囲におけるVdを示す。図4におけるリポソーム製剤は、いずれも本試験において使用される製剤と同一ではなく、データは、注入処置の技術的側面に関連する可能性がある処置の変動性が高いことを示唆する。さらに、ラットの線条体に隣接する構造および近位の線維束に対するリポソームの分散は、線条体領域の外側のリポソーム分散が、Vd計算に含まれなかったため、両試験において認められる群内差異を説明し得る。
【表8】
【0211】
このデータが、図4にプロットされている。最上列の数字は、それぞれ図4におけるバー1〜7に対応する。個別の動物は、「#1−12」として表される。実際の値は、異なる製剤で得られる分散量を表す。
【0212】
実施例4:無処置齧歯類の脳に脳内送達されるナノリポソーム化合物の薬物動態評価および成体無胸腺ラットにおける脳内異種移植腫瘍に送達されるナノリポソーム化合物の有効性
【0213】
実施例4.1:材料
【0214】
実施例4.1.1:被包物質
【0215】
Ls−TPTおよびLs−GDのGLPグレードの物質は、いずれも実施例1.1および1.2に示したように調製した。
【0216】
実施例4.1.2:動物およびグループ分け
【0217】
6〜8週齢、体重200〜300gの成体雄無胸腺ラットrnu/rnu(Charles River Laboratories,マサチューセッツ州ウィルミントン,バッチ5226156/032607)を使用した。動物は、表11において概説されるように、4つの群に分割した。
【表9】
【0218】
体重に基づいて、同等の群平均体重および標準偏差を達成するように、ラットを群に割り当てた。次に、群を治療レジメンにランダムに割り当てた。単回治療は、腫瘍移植の8日後に予定され、二重治療は、腫瘍移植後8日目および12日目に予定された。
【0219】
実施例4.1.3:外科的処置および治療
【0220】
実施例4.1.3.1:脳内腫瘍異種移植
【0221】
U87MG腫瘍細胞(ヒト膠芽細胞腫、Perry Scientific Inc,カリフォルニア州サンディエゴ,ロットW5051507U87MC)の移植は、標準的な定位固定処置を使用して、右線条体において片側で行った。ラットは、イソフルランで麻酔をかけ(2.5%)、頭蓋の皮膚を剃毛した。ラットを定位フレームに載置し、耳バーおよび切歯バーの使用によって頭部を配置した。無菌法をすべての外科的処置に使用した。皮膚をベタジン溶液で除菌した。頭蓋骨上部の皮膚に縦方向の切開を行い、鈍的切開を使用して、頭蓋骨を覆う結合組織を除去した。小型の歯科用ドリルを使用して、頭蓋骨切除術を行い、ブレグマから0.5mm前方、および3mm左と右に穿頭孔を開けた。30ゲージの25μLのハミルトンシリンジを使用して、U87MG細胞を、軟膜表面から適切な背腹座標を使用して、線条体に定位的に注入した(−3.3mmで歯バーを用いて−4.5〜−5mm)。合計約5.0x105細胞を含有する総量10μLを、10分の期間をかけて右線条体に注入した。予定される動物の数では、すべての介入を1日で行うことができなかったため、腫瘍移植は、異なる2日に行った。したがって、2つの個別の腫瘍懸濁液を調製した。
【0222】
接種後、皮膚をホチキス留めした。ラットは、麻酔からの回復中に監視した。処置を終了する前に、ブプレノルフィンを皮下(SC)投与した後、必要に応じて、ブプレノルフィンをSC投与した。ラットは、腫瘍細胞移植後、1日2回監視した。移植後の生存時間は、約0〜60日となることが予想され、そこで動物を安楽死させて脳を採取した。
【0223】
実施例4.1.3.2:治療
【0224】
麻酔は、イソフルラン(2.5%)を用いて行った。鈍的耳バーを有する定位フレームを使用して、以前に行った穿頭孔を通じてCEDを行った。血栓のみを除去した。右線条体内の腫瘍移植部位に配置されたカニューレを使用して、CEDを解して用量を投与した。自動ポンプ(BASi,Inc.,インディアナ州ウェストラフィエット)に接続された溶融シリカカニューレ(OD168μm、ID102μm)(PolyMicro Technologies,アリゾナ州フェニックス)を使用し、適切な背腹座標に低下させた(−3.3mmで歯バーを用いて−4.5〜−5mm)。背腹座標は、軟膜表面から計算した。カニューレを、27ゲージニードルに挿入し、強力瞬間接着剤で管に固定した。動物は、1用量(20μL)のLs−TPT/Ls−GD製剤を受ける。漸進的の注入速度増分を使用した。20μL量を投与するために使用される注入速度は、0.2μL/分(15分)、0.5μL/分(10分)および0.8μL/分(15分)であった。注入後に、カニューレを所定の位置に5分間留置して、注入液の流出を最小限にした後、徐々に回収した。
【0225】
処置の終了後、ラットを通風のない環境内で維持し、加熱ランプまたは水ボトル、あるいは他の適切な加温方法で保温し、麻酔からの回復を監視した。ブプレノルフィンを、必要に応じて皮下投与した。ホームケージに戻す前に、ラットを処置室で回復させた。
【0226】
実施例4.1.4:60日より前の安楽死基準
【0227】
症状(鼻血/眼窩周囲の出血、不全まひ、脊柱後湾、不活性または食餌を摂取しないか、または毛づくろいしない、ベースライン体重の15%超の体重減少)のうちの任意の1つまたは組み合わせが認められた場合、動物は鎮痛剤で処理した。ブプレノルフィンに加えて、メロキシカムまたはケトロラク等のNSAIDも付与した。動物が48時間以内に改善の兆候を示さなかった場合において、実施例4.1.5において概説されるように安楽死させた。
【0228】
実施例4.1.5:組織採取および処理
【0229】
それぞれの生存期間の最後または60日目に、動物はイソフルランで麻酔吸入され(2.5%)、次いで、PBSの後に4%パラホルムアルデヒドにより心臓内かん流を受けた。
【0230】
試験中に死亡したか、または屠殺された(予定および予定外)すべての動物の完全な全身剖検を、剖体および筋肉/骨格系、すべての外表面および開口部、頭蓋腔および脳の外表面、関連器官および組織を伴う頸部、関連器官および組織を伴う胸部、腹部、および骨盤腔に対して行った。
【0231】
主要な器官を採取し、ホルマリン10%中に保存した。脳を除去し、4%パラホルムアルデヒド中に一晩置いた後、30%スクロース中で平衡化させた。次に、脳を凍結させて、−70℃で保存した。
【0232】
実施例4.1.6:生存中の観察および測定
【0233】
臨床観察および測定は、順応および試験期間を通して、少なくとも1日1回行った。臨床観察および測定は、表12において概説される。
【表10】
【0234】
実施例4.1.7:早期死亡/予定外の屠殺
【0235】
動物が試験時に死亡した場合、死亡時刻は、可能な限り厳密に推定および記録し、剖検を可能な限り早急に行った。剖検をすぐに行うことができなかった場合、動物を冷蔵して(冷凍ではない)、組織の自己消化を最小限に抑えた。剖検は、死後12時間以内に行った。
【0236】
動物の健康状態が不良であるか、または死が近づいていると思われる場合は、安楽死させ得る。可能であれば、必要に応じて血液または他の標本を採取および分析して(例えば、臨床病理パラメータ用)、倦怠感/死亡の原因の解明を支援した。
【0237】
実施例4.1.8:統計的手法
【0238】
生存分析の目的で、動物を治療群別に分類した。さらに、最大トポテカン総用量群(第2群)の動物を、対照群を含む、すべての他の治療群の組み合わせと比較した。後者の分類も、以下に説明されるように、概算U87MG細胞負荷群内で実行した。移植前細胞カウントなしに、2つの個別の腫瘍細胞懸濁液の調製物により、異なる2日で治療されたことにより、移植されたU87MG細胞の数が変動する可能性があるため、治療群は、腫瘍細胞懸濁液によって分析され、したがって、移植後細胞カウントに基づいて、腫瘍移植における概算U87MG細胞負荷によって間接的に分析される(実施例4.2.1を参照)。ログ−ランク試験を使用して、異なる群間の生存を比較した。
【0239】
実施例4.1.9:動物の飼育
【0240】
各動物は、番号の付いた耳タグによって識別した。さらに、各動物のケージは、動物識別番号、試験番号、群、動物の性別を列挙したケージカードによって識別した。
【0241】
動物は、個別にマイクロアイソレータケージに入れ、互いの創傷を害しないようにした。動物を入れた部屋は、試験記録に記録した。他の種は、同一の部屋に入れなかった。部屋は、100%新鮮な空気で十分に換気した(1時間当たり10回より多くの換気)(空気の再循環はしない)。血液採取または他の試験処置を行うために、消灯サイクル期間中に室内灯を点けなければならなかった場合を除いて、12時間照明/12時間消灯の光周期を維持した。室温は、18〜26℃の間で維持した。
【0242】
動物は、断食の期間を除いて、Prolab RMH 2500への自由なアクセスを有していた。本試験の結果を干渉し得るレベルの汚染物質は、食餌中に存在しなかった。水ボトルを介して、各動物は、塩化都市水道水を自由に摂取可能であった。年次水質検査の結果は、PSIアーカイブに維持されている。すべての試験動物は、試験手順に先立って、それらの指定住居に少なくとも3日間順応させた。
【0243】
実施例4.2 結果
【0244】
実施例4.2.1:プロトコル偏差
【0245】
移植後細胞カウントは、移植されたU87MG腫瘍細胞の実数が、プロトコルによって明記されるよりも有意に高かった。また、腫瘍細胞密度は、調製した2つの懸濁液の間で顕著に異なった。具体的に、2つの懸濁液の移植後カウントは、プロトコル特定の数5.0x105と比較して、6.8×105および9.7x105細胞/10μLであった。認められた差異は、懸濁調製物と細胞カウントとの間の細胞成長に起因すると考えられる。考えられる限り、それぞれの移植前カウントは、したがって、より低く、差異は少ないが、それらがプロトコル特定の数に極めて近いとは考えられない。結果の分析において、これらの差異を説明するために、実施例4.1.8において説明されるように、移植後細胞カウントに基づいて、腫瘍移植におけるU87MG腫瘍負荷によって、治療群を分析した。
【0246】
腫瘍移植した動物のうち4匹のみが、ケージ内で死亡したことが認められたため、部分的剖検を行ったか、または全体剖検を行わなかった。これらの動物のうちの3匹は、脳のみを検査したが、1匹はいずれの臓器も検査しなかった。
【0247】
実施例4.2.2:臨床観察および測定
【0248】
4匹の動物のうち2匹を第1群に割り当て、1匹を第3群、および恐らく処置のために行った麻酔に関連して、腫瘍移植前に死亡した1匹を第4群に割り当てた。腫瘍移植群(29匹)の中で、4匹の動物が、試験の経過中に、ケージ内で死亡が認められた。1匹の動物は、第1群に割り当てられ、1匹は第2群、および2匹は第4群に割り当てられていた。第4群に割り当てられた2匹の動物は、高い移植腫瘍細胞負荷を有したが、その他の腫瘍細胞負荷は低かった。他の25匹の動物は、状態不良と見なされたため安楽死させ、動物の大部分において、最も共通する兆候は、15%以上の体重減少、倦怠感、脊柱後湾姿勢、運動障害、振戦、および呼吸困難であった。
【0249】
実施例4.2.3:有効性
【0250】
4匹が麻酔により死亡したため、5匹のみを治療した対照群を除いて、8匹の動物を各群において治療し、残りの動物は、各積極的治療群において、合計8匹の動物を有するように、治療群に再分配した。各動物の個別の生存および各治療群の生存期間の中央値は、表13において概説される。
【表11】
【0251】
治療群別生存期間は、図5に示され、第2群(0.5mg/mL二重投与)において治療された動物の生存期間が長いことが明らかになったが、ログ−ランク検定によって、統計的に有意ではなかった(0.5mg/mL二重投与対対照、p=0.0724;0.5mg/mL二重投与対0.1mg/mL二重投与、p=0.0593;および0.5mg/mL二重投与対0.5mg/mL単一投与、p=0.0742)。第2群の生存期間の中央値は21日であった。
【0252】
第2群(0.5mg/mL二重投与)と比較した合計治療群(1、3、4)の生存期間は、図6に示される。最大Ls−TPT総トポテカン用量において、第2群で治療された動物の生存期間が、併用群と比較して長いことが認められ、これは、ログ−ランク検定によって統計的に有意であった(p=0.0112)。生存期間の中央値は、第2群では21日、合計群1、3、および4では17日であった。
【0253】
低(6.8×105細胞)および高(9.7×105細胞)U87MG細胞負荷による生存期間(すべての治療群を併用)は、表14において、各動物の個別の生存期間および移植細胞負荷群による生存期間の中央値として示され、図7において、全体生存プロットとして示される。生存期間は、腫瘍移植において高細胞負荷を受けた動物の生存期間は、生存期間の中央値が16日であり、低細胞負荷を受けた動物の生存期間の中央値19日に対して短いと考えられるが、(恐らく、少数であるため)生存曲線は、生存期間の最後に向かって収束した。
【表12】
【0254】
低U87MG細胞負荷(6.8×105細胞)の動物において、第2群(0.5mg/mL二重投与)と比較した合計治療群(1、3、4)による生存期間は、図8に示される。併用群と比較して、最大のLs−TPT総トポテカン用量で、第2群において治療される動物の生存期間は長いことが認められるが、ログ−ランク検定によって統計的に有意ではない(p=0.0646)。
【0255】
高U87MG細胞負荷(9.7×105細胞)の動物において、第2群(0.5mg/mL二重投与)と比較した合計治療群(1、3、4)による生存期間が、図9に示される。再度、併用群と比較して、最大のLs−TPT総トポテカン用量で、第2群において治療される動物の生存期間は長いことが認められるが、ログ−ランク検定によって統計的に有意ではない(p=0.1176)。
【0256】
実施例4.3:考察
【0257】
実施例4に開示される試験は、脳内CEDによって無胸腺ラットにおける脳内神経膠腫異種移植モデルに送達される新規のLs−TPT製剤を使用して、複合薬物送達アプローチの有効性を評価したものであった。この実施例は、2種の用量レベルを使用し、一方は、別のグループによって安全性が既に報告されている0.5mg/mL(Saito 2006)であり、低い方は0.1mg/mLである。さらに、2つの投与レジメンは、0.5mg/mLの単一投与、および二重投与を評価し、これまでは単一用量のみが試験されていたため、両方の用量レベルは、4日空けて試験した。他の群と比較して、最大Ls−TPT総トポテカン用量(0.5mg/mL二重投与)に対して、個別に(統計的に有意でない)または組み合わせで(統計的に有意)、長い全体および生存期間の中央値が認められた。用量レベルを占める総用量と投与回数とを比較すると、用量依存効果も認められた。
【0258】
実施例4.4:結論
【0259】
U87MGを使用するラット神経膠腫モデルにおけるこの探索的有効性試験の結果は、CEDによって投与されるLs−TPTが、評価される最大用量レベルにおいて(0.5mg/mL二重投与)、延命効果をもたらすことを示唆する。
【0260】
実施例5:U87MG細胞へのトポテカンおよびリポソームトポテカンの細胞毒性
【0261】
実施例5.1:材料および方法
【0262】
実施例5.1.1:被検物質:
【0263】
遊離トポテカン製剤は、GlaxoSmithKline(ノースカロライナ州Research Triangle Park)およびHisun Pharmaceuticals(中国浙江省台州市)から入手した。
【0264】
GLPグレードLs−TPT製剤調製物用のトポテカンは、Hisun Pharmaceuticals(中国浙江省台州市)から入手した。つまり、リポソームは、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、およびコレステロール7:2:1モル比で、75〜90nm標的サイズで構成される。トポテカンは、それぞれ硫酸アンモニウム250mM pH5.5およびヒスチジン10mM/NaCl145mM pH6.0から成る、内部および外部緩衝液を使用して、膜貫通pH勾配に応答して、リポソーム中に遠隔装薬される(能動的に被包される)。トポテカン濃度2.0mg/mLおよび0.3(w/w)薬物:脂質比は、90〜95%の薬物被包効率を想定して目標を設定した。
【0265】
Ls−GD調製物用のガドジアミドは、Estech Pharma(韓国京畿道安山市)から入手した。GLPグレードLs−GDは、GDがナノリポソームに受動的に被包されたことを除いて、topoCEDと同様に調製した。ダイアフィルタによるろ過によって、非被包GDおよび溶媒を除去した後、最終GD被包率は、90%より大であった。標的GD含有量は、5.0mg/mL±10%であり、粒子サイズは75〜120nmの範囲であった。
【0266】
それぞれ、Ls−TPTの被検物質は凍結保存し(−20〜−30℃)、Ls−GDは冷蔵保存して(2〜8℃)、光から保護した。被検物質溶液は、投与の日に新しく調製し、室温で保持した。5mMヒスチジン、145mM NaCl pH6.0、300mMスクロースまたは0.9%生理食塩水による被検物質原液の適切な希釈を行い、適切な濃度で、所望の試験量の試験溶液を産生した。
【0267】
実施例5.1.2:細胞株および培地
【0268】
U87MGヒト神経膠腫細胞株をすべての実験に使用した(UCSF培養施設、カリフォルニア州サンフランシスコ)。細胞は、T175 Falconフラスコ(BD Bioscience,カリフォルニア州サンノゼ)において確立した。細胞は、10%ウシ胎孔血清、非必須アミノ酸、および抗生物質(ストレプトマイシン100μg/mL、ペニシリン100DImL)を補充した、Eagleの最小必須培地(MEM)から成る、完全最小必須培地(CMEM)に維持した。すべての培地構成要素は、UCSF細胞培養施設から入手した。培地は、5%CO2の加湿したチャンバにおいて、37℃で培養した。95%の集密が達成されると、細胞を0.05%トリプシン−0.02%エチレンジアミンテトラ−酢酸(UCSF培養施設、カリフォルニア州サンフランシスコ)により簡潔にトリプシン化し、細胞を500xgで10分間遠心分離した。上澄みを吸引した後、5mLの完全細胞成長培地において(抗生物質および10%ウシ胎孔血清を伴う)、細胞を直接再懸濁した。細胞カウントは、ヘマトサイターにおいてトリパンブルーにより行った(Hausser Scientific,ペンシルベニア州ホーシャム)。適切な量の完全細胞成長培地を添加して、100μL中100細胞の最終濃度10,000細胞を達成し、蛍光系細胞生死判別試験用に設計された96ウェルプレートの各ウェルに移した(CellTiter−Glo(商標)、Promega,ウィスコンシン州マディソン)。細胞は、被検物質に対する任意の曝露前に24時間付着させることができた。12マルチチャネルピペットを使用して、100μLの被検物質を添加する直前に、96ウェルプレートから培地を除去した。被検物質に対する曝露後、24、48、および72時間に、細胞毒性試験を行った。各被検物質および対照のすべての時点は、3倍で行った。
【0269】
実施例5.1.3:実験設計
【0270】
表15は、対照とともに評価された異なる被検物質および濃度を概説する。
【表13】
【0271】
被検物質のすべての計算および希釈は、第2の調査者によって検証された。被検物質の希釈は、U87MG培養に使用される培地を用いて行った。
【0272】
実施例5.1.4:生死判別試験
【0273】
試験は、熱安定型ルシフェラーゼを使用して、代謝的に活性な細胞の指標として存在するATPの定量に基づく。ルシフェラーゼは、ルシフェリン、酸素、およびATPを、基質として、オキシルシフェリンを生成し、光の形態でエネルギーを放出する反応において使用する。生成される光の量は、存在するATPの量に比例し、生存細胞の数を反映する。所定の時点で、20μLのCellTiter−Glo発光細胞生死判別試験試薬(Promega,ウィスコンシン州マディソン)を、該時点に使用される各ウェルに添加した。プレートを優しく扇動した後、それらを培養器に1時間戻した。次に、FLx800 Multi−Detection Microplate Reader(Biotek,バーモント州ウィヌースキ)を使用して、プレートの発光を読んだ。各ウェルに対して得られる相対光単位(RLU)を、標準曲線に基づいて、生存細胞の数に変換した。細胞生存率およびIC50値は、グラフィック外挿に由来した(Gen5 データ分析ソフトウェア、Biotek,バーモント州ウィヌースキ)。
【0274】
実施例5.1.5:統計的手法
【0275】
すべての細胞毒性試験は3回実行し、すべての濃度および時点における平均値が報告されている。他の統計は適用しなかった。
【0276】
実施例5.2:結果
【0277】
遊離トポテカン(GlaxoSmithKlineおよびHisun Pharmaceutical)およびリポソームトポテカンの細胞毒性および異なる発生源および製剤の能力は、同程度の濃度(0.01、0.1、1.0、および10μM)および時点(24、48、および72時間)で極めて類似し、Ls−TPT製剤の潜在的な有効性を支持していると思われる。Ls−GD単独またはLs−TPTとの共注入は、200μMという極めて高い濃度においても細胞毒性をもたらさず、結果として、Ls−TPTの擬似イメージングトレーサの良好な候補であると考えられる(データ図示せず)。本試験において、遊離トポテカンとリポソームトポテカンとの間の差異が全体的に存在しないことは、リポソームからのトポテカンの急速放出をもたらす環境のインビトロ性質によって説明することができ、リポソーム製剤の薬物動態的利点は、インビボでより明らかとなる。
【0278】
実施例6:脳内対流増進送達によって成体無胸腺ラットに投与されたリポソームトポテカンおよびリポソームガドジアミドの異なる製剤の正常な脳および異種移植U87MG腫瘍における対流プロファイルおよび組織分散
【0279】
実施例6.1
【0280】
実施例6.1.1:被検物質
【0281】
GLPグレード物質Ls−TPTおよびLs−GDを、実施例2.1.1および2.1.2に記載のとおり調製した。Ls−GD製剤のガドジアミドは、Estech Pharma(韓国京畿道安山市)から入手した。Ls−GDは、GDがナノリポソームに能動的に被包されたことを除いて、トポCEDと同様に調製した。非被包GDおよび溶媒をダイアフィルタによるろ過によって除去した後、最終GD被包率は90%以上であった。標的GD含有量は、5.0mg/mL±10%であり、粒径は75〜120nmの範囲であった。
【0282】
異なるフルオロフォアを使用して、顕微鏡蛍光/発光を可能にするように、Ls−TPTおよびLs−GDを標識した(Ls−TPTの場合は、マリナブルー−DHPE(1,2−デヘキサデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)(Invitrogen,カリフォルニア州カールズバッド)およびLs−GDの場合はローダミン−PE(ホスホエタノールアミン)(Invitrogen,カリフォルニア州カールズバッド)。マリナブルー−DHPEおよびローダミン−PE標識リポソームは、DSPC:DSPG:コレステロール:フルオロフォアモル比69.7:20:10:0.3に基づいて、溶媒溶液と同時に、脂質粉末にフルオロフォアを添加して、それぞれLs−TPTおよびLs−GDと同様に調製した。
【0283】
それぞれ、Ls−TPTの被検物質は凍結保存し(−20〜−30℃)、Ls−GDは冷蔵保存して(2〜8℃)、光から保護した。投与液は、投与の日に新しく調製し、室温で保持した。0.9%生理食塩水による被検物質原液の適切な希釈を行い、適切な濃度を産生した。被検物質原液の新鮮なバイアルは、各投与日に使用した。対照物質は、本試験において使用しなかった。
【0284】
実施例6.1.2:動物およびグループ分け
【0285】
6〜8週齢、体重200〜275gの成体雄無胸腺ラットrnu/ru(Taconic,ニューヨーク州ジャーマンタウン)(バッチ071007および073107)を使用した。動物は、表16において概説されるように、4つの群に分類した。
【表14】
第1群:無処置脳組織−DSPC/DSPG/CHOL D:L0.1+Ls−TPT0.38mg/mL+Ls−GD1.15mg/mL
第2群:無処置脳組織−DSPC/DSPG/CHOL D:L0.3+Ls−TPT1.02mg/mL+Ls−GD1.15mg/mL
第3群:腫瘍組織−DSPC/DSPG/CHOL D:L0.1+Ls−TPT0.38mg/mL+Ls−GD1.15mg/mL
第4群:腫瘍組織−DSPC/DSPG/CHOL D:L0.3+Ls−TPT1.02mg/mL+Ls−GD1.15mg/mL
DSPC/DSPG=ジステアロイルホスファチジルコリン/ジステアロイルホスファチジルグリセロール
CHOL=コレステロール
D:L比=薬物:脂質比(w/w)
Ls−TPT=リポソームトポテカン
Ls−GD=リポソームガドジアミド
【0286】
試験の開始時に、体重に基づいて、同等の群平均体重および標準偏差を達成するように、ラットを製剤群と組織群とに割り当てた。両方の製剤群における動物は、無処置脳組織群に割り当てられると、1日目にCED注入を受け、腫瘍組織群に割り当てられると、10日目にCED注入を受けた。
【0287】
実施例6.1.3:外科的処置および治療
【0288】
実施例6.1.3.1:脳内腫瘍異種移植
【0289】
この処置は、腫瘍組織群に割り当てられたラットに対して行った。ヒト神経膠腫細胞(U87MG)は、凍結細胞ストック(Perry Scientific Inc,カリフォルニア州サンディエゴ)から、予定の接種の2週間前に入手した。細胞は、腫瘍接種術の日に採取し、密度を50,000〜100,000細胞/μLに調整した。接種の日(0日目)に、各ラットに合計500,000個のU87MG腫瘍細胞を、5−10μLの懸濁液を使用して、右線条体に片側移植した。定位固定技術およびイソフルラン(2.5%)による麻酔を使用した。ラットは、定位フレームに載置し、耳バーおよび切歯バーを使用して頭部を配置した。すべての外科的処置に対して無菌法を使用した。皮膚を70%アルコール、続いてベタジン溶液で消毒した。頭蓋上部の皮膚を縦方向に切開し、鈍的切開を使用して、頭蓋を覆う結合組織を除去した。小型の歯科用電気ドリルを使用して、頭蓋骨切除術を行い、ブレグマから0.5mm前方、および3mm左と右に穿頭孔を開けた。30ゲージの25μLのHamiltonシリンジを使用し、軟膜表面から適切な背腹座標を使用して(−3.3mmで歯バーを使用して、−4.5〜−5mm)、U87MG細胞を定位的に線条体に注入した。U87MG懸濁液の最終細胞濃度に依存して、注入量を5〜10μLの間で調整し、合計500,000±25,000細胞が、10分間に渡って送達されるようにした。
【0290】
接種後、皮膚をホチキス留めした。ラットは、麻酔からの回復中に監視した。処置を終了する前に、ブプレノルフィンを皮下(SC)投与した後、必要に応じて、ブプレノルフィンをSC投与した。
【0291】
実施例6.1.3.2:治療
【0292】
被検物質は、CED注入を介して、試験1日目に、無処置脳組織群に割り当てられたラットに投与し、10日目に、腫瘍組織群に割り当てられたラットに投与した。用量は、CEDを介して、無処置組織群において、ラットの背腹線条体に対して両側に投与し、腫瘍組織群において、腫瘍移植に使用される座標と同一の座標を使用して、ラットに腫瘍内的に投与した。すべての群全体で同様に、投与時間を分散させる、組織的な順序でラットに投与した。麻酔は、イソフルラン(2.5%)またはケタミン(90mg/kg)およびキシラジン(12mg/kg)の組み合わせのいずれかによって、腹腔内注射を介して行った。鈍的耳バーを有する定位フレームを使用して、CEDを行った。無処置脳組織群に割り当てられたラットにおいて、第5.3.1項に概説されるように、両側穿頭孔を形成した。腫瘍組織群に割り当てられたラットにおいて、頭皮切開部を再度開いて、既に形成された穿頭孔を可視化した。血栓のみを除去した。自動ポンプ(BASi,Inc,インディアナ州ウェストラフィエット)に接続される、溶融シリカカニューレ(OD168μm、ID102μm)(PolyMicro Technologies,アリゾナ州フェニックス)をCEDに使用し、適切な背腹座標に低下させた(−3.3mmで歯バーを使用して、−4.5〜−5mm)。背腹座標は、軟膜表面から計算した。カニューレは、27ゲージニードルに挿入し、強力瞬間接着剤で管に固定した。漸進的注入速度増分を使用した。本試験において、治療当たり20μLの総注入量(Vi)を達成するために使用される注入速度は、0.2μL/分(15分)、0.5μL/分(10分)および0.8μL/分(15分)であった。注入後に、カニューレを所定の位置に5分間留置して、注入液の流出を最小限にした後、徐々に回収した。処置の終了後、ラットを通風のない環境内で維持し、加熱ランプまたは水ボトル、あるいは他の適切な加温方法で保温し、麻酔からの回復を監視した。ブプレノルフィンを、必要に応じて皮下投与した。
【0293】
実施例6.1.3.3:安楽死
【0294】
被検物質のCED注入から1時間後、1日目(無処置脳組織群)または10日後(腫瘍組織群)に、すべての群におけるすべてのラットを安楽死させ、組織学的分析のために脳を除去した。安楽死の際に、動物は、イソフルラン(2.5%)によって深麻酔をかけた後、0.9%生理食塩水(100mL)に続いて4%パラホルムアルデヒド(300mL)による心内かん流を受けた。
【0295】
実施例6.1.3.4:組織採取および処理
【0296】
試験中に死亡したか、または屠殺された(予定および予定外)すべての動物の完全な全身剖検を、剖体および筋肉/骨格系、すべての外表面および開口部、頭蓋腔および脳の外表面、関連器官および組織を伴う頸部、関連器官および組織を伴う胸部、腹部、および骨盤腔に対して行った。
【0297】
脳を除去し、4%パラホルムアルデヒド中で最大24時間培養した後、30%スクロース中で平衡化させた。スクロース平衡化後に、組織をドライアイスおよびイソペンタンの混合物中、−60℃で凍結させ、後の処理のために−70℃で保管した。心臓、肺、肝臓、腎臓、すい臓(またはその一部)も、存在する場合は採取および保存した。これらの組織は、中性緩衝化した10%ホルマリン中で固定した。ホルマリン固定した臓器は、次に肉眼視され、必要に応じて、後の組織病理学的分析用にパラフィンブロックに処理された。
【0298】
実施例6.1.3.5:組織病理学的分析および分散量の評価
【0299】
脳は、20ミクロンで低温切開し、4つおきの切片をガラススライド上に収集し、Fluoromount−Gでカバースリップした。Ls−TPTおよびLs−GD両方の対流プロファイルおよび組織分散は、蛍光顕微鏡、SPOTカメラ、SPOTソフトウェア、およびMacintosh(登録商標) G4コンピュータを使用して撮影された画像によって決定し、切片におけるマリナブルー−DHPEおよびローダミン−PEフルオロフォアの両方の分散量(Vd)は、Macintosh(登録商標)系の画像分析システムを使用して計算した[ImageJ,国立保健研究所(NIH)、メリーランド州ベセスダ]。関心領域(ROI)は、NIH画像ソフトウェアを使用して描き、分散データは、エクセルスプレッドシートに移行させた。分散量(mm3)は、平均ROI領域(mm2)および分散距離(mm)を掛けることによって計算した。残りの切片は、4℃で保管し、追加の免疫組織化学分析に使用することができる。
【0300】
実施例6.1.3.6:生存中の観察および測定
【0301】
臨床観察および測定は、順応および試験期間を通して、少なくとも1日1回行った。ケージサイド観察の記録は、第1回投与の少なくとも3日前に開始し、終了まで継続する。各動物は、全体的な外観および挙動の変化について観察した。
【0302】
実施例6.1.3.7:早期死亡/予定外の屠殺
【0303】
U87MG腫瘍細胞の脳内注入を受けているラットは、通常、17〜25日の寿命を有し、死亡する直前まで無症候のままである。本試験において、10日目に早期屠殺する可能性は低いが、症状(鼻血/眼窩周囲の出血、不全まひ、脊柱後湾、不活性または食餌を摂取しないか、または毛づくろいしない、ベースライン体重の15%超の体重減少)のうちの任意の1つまたは組み合わせが認められた場合、動物を安楽死させ得る。可能な場合、血液または他の標本を採取し、必要に応じて分析して(例えば、臨床病理パラメータ用)、倦怠感/死亡の原因の解明を支援した。
【0304】
動物が試験時に死亡した場合、死亡時刻は、可能な限り厳密に推定および記録し、剖検を可能な限り早急に行った。剖検をすぐに行うことができなかった場合、動物を冷蔵して(冷凍ではない)、組織の自己消化を最小限に抑えた。剖検は、死後12時間以内に行った。
【0305】
実施例6.1.3.8:統計的手法
【0306】
記述統計学(平均および標準偏差)を使用して、データを要約し、それらを図で示した。
【0307】
実施例6.1.4:動物の飼育
【0308】
各動物は、番号の付いた耳タグによって識別した。さらに、各動物のケージは、該動物の動物識別番号、試験番号、群、入手元、到着日、種/株、誕生日、および性別到着日を列挙したケージカードによって識別した。
【0309】
動物は、個別に隔離ケージに入れた。寝床材料は、広葉樹チップ(Sanichips,Harlan,カリフォルニア州)を削り、週に1回交換した。室温は、主に18〜26℃(64〜79F)に維持され、相対湿度は、30〜70%であった。温度および湿度は、連続的に監視し、最小値および最大値を記録した。試験手順を行うために、(消灯サイクル中に)室内灯を点ける必要があった場合を除いて、12時間点灯/12時間消灯の周期的照明期間を維持した。
【0310】
ラットは、試験期間を通して、照射Teklad Global 18% Protein Rodent Diet(齧歯類用プロテイン食餌)(Harlan,米国カリフォルニア州サンディエゴ)および自治体の水道水を自由に摂取させた。食餌または水中に、試験の結果に有害な作用を及ぼすレベルの汚染物質は存在しないことが分かった。年次水質検査の記録は、PSIアーカイブにおいて維持されている。
【0311】
所定の住居に到着すると、初期健康診断後に受領のため受け入れたすべてのラットを、任意の動物関連試験手順の最小3日前に、住環境(主要柵および部屋)に順応させる。順応期間中に、ラットの全体的な健康を毎日監視した。良好な臨床状態(すなわち、体重仕様内)であることが視認されたラットのみを試験に登録した。異常が認められ、不良な健康の兆候(すなわち、フリルコート、有意に低い体重)を呈した任意のラットは、試験から除外した。
【0312】
実施例6.2:結果
【0313】
実施例6.2.1:プロトコル偏差
【0314】
腫瘍組織群に割り当てられた動物は、片側腫瘍移植を受けたが、被検物質のCEDは、(左半球無処置脳組織および右半球腫瘍組織において)両側で行った。脳標本の断片厚は、すべての動物で20μmから30μmに変更し、蛍光信号を増加させるために、4つごとの切片ではなく、5つおきの切片を収集した。
【0315】
実施例6.2.2:臨床観察および測定
【0316】
本試験では、いずれの動物も交換する必要がなかった。いずれの動物も、死亡が認められず、すべて予定通りに屠殺が行われた。屠殺前試験は、無処置脳組織および腫瘍組織群両方のすべての動物において正常であった。
【0317】
実施例6.2.3:対流プロファイルおよび組織分散
【0318】
14匹の動物を、治療スケジュールに従って治療し、予定された数の動物を各群において治療した。平均および標準偏差を伴う個別の分散量(Vd)、および第1群および第2群(無処置脳組織)のLs−TPT−マリナブルーDHPEとLs−Gd−ローダミン−PEの相関係数が表17に示され、図10に図示され、第3群および第4群(腫瘍組織)が、表18に示され、図11に図示される。統計分析システム(SAS)におけるCORR手順を使用して、ピアソンの相関係数を生成した。
【表15】
#動物7643の右半球において、Ls−TPTおよびLs−GDの両方で蛍光信号は見られなかったか、またはごくわずかに見られ、これは恐らく、注入機能不全または操作者のエラーに起因する。
第1群:無処置脳組織−DSPC/DSPG/CHOL D:L 0.1+Ls−TPT 0.38mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
第2群:無処置脳組織−DSPC/DSPG/CHOL D:L 0.3+Ls−TPT 1.02mg/mL+Ls−GD 1.15mg/mL
【表16】
【0319】
両製剤のLs−TPT−マリナブルーDHPEのVd値は、無処置脳組織群において狭い範囲内であり(D:Lが0.1:1および0.3:1の場合、それぞれ平均39.0±3.0および38.5±5.6mm3)、対応するVd:Vi比は1.9:2.0であった。対照的に、Vd値は顕著に小さく、概して、腫瘍組織群において変動性が高く、無処置脳組織における2つのLs−TPT製剤の場合は平均25.8mm3+10.6および21.4±11.9であり、腫瘍組織において平均26.8±2.5および31.2±8.0mm3であった。対応するVd:Vi比は、無処置脳組織において1:1〜1:3であり、腫瘍組織において1:3〜1:6であった。腫瘍組織群における2つのLs−TPT製剤間にわずかな差異があったが、一貫しておらず(D:L 0.1:1のVd値は、無処置脳組織において、D:L0.3:1よりも名目上高いが、腫瘍組織において名目上低い)、統計的に有意ではない。
【0320】
Ls−Gd−ローダミン−PEの結果は、Ls−TPT−マリナブルーDHPEと顕著に一致した。特に、平均Vd値は、無処置脳組織群において、39.0±4.2および39.3±5.3mm3であり、対応するVd:Vi比は1.9〜2.0であった。腫瘍組織群において、平均Vd値は、無処置脳組織において、24.0±11.2および22.3±9.2mm3であり、腫瘍組織において、24.1±4.5および32.2±8.1mm3であった。対応するVd:Vi比は、無処置脳組織において1.1〜1.2であり、腫瘍組織において1.2〜1.6であった。
【0321】
個別の分散結果と一致して、Ls−TPT−マリナブルーDHPEおよびLs−Gd−ローダミン−PEの平均Vd値間の相関は、すべての治療群において優れ(0.95〜0.99の範囲)、組織型間(無処置脳対腫瘍組織)の相関において顕著な差異はなかった。
【0322】
DSPC/DSPG/CHOL D:L0.1製剤を受容している3匹の動物すべてにおいて、半球の一方におけるLs−TPT−マリナブルーDHPEとLs−Gd−ローダミン−PEの両方で認められる蛍光信号はないか、または最小であった。これらの動物のうちの1匹は、無処置脳組織群(ラット#7643)であり、他の2匹の動物は、U87腫瘍異種移植を受け(腫瘍組織群)、1つの例は、腫瘍異種移植側で発生したが(ラット#7607)、他の例は、非移植側で発生した(ラット#7633)。すべての奨励は、注入障害または操作者のエラーによる可能性があった。
【0323】
実施例6.3:考察
【0324】
この実施例6は、異なるフルオロフォアを使用して、治療用ナノリポソーム化合物の2つの製剤、Ls−TPT、およびLs−TPT、Ls−Gdの代理画像トレーサの対流プロファイルおよび分散量を評価し、任意の差動組織分散を示すために、これらのリポソームを共標識した。
【0325】
非ペグ化DSPC/DSPG/CHOLリポソーム(7:2:1モル比)に被包されたトポテカンおよびガドジアミドのいずれも、無処置ラット脳組織内で確実に一定して対流した。認められたVd:Vi比1.9〜2.0は、ペグ化リポソーム製剤による公開済みデータに基づく説明と一致した(Saito2004)。重要なことに、Ls−TPTおよびLs−GDの分散は、極めて密接に相関し、Ls−TPT製剤の薬物:脂質比によって顕著に左右されなかった。これは、リポソーム担体が、その薬物装薬から独立して、化合物の分散特性を決定することを示唆すると考えられる。
【0326】
腫瘍組織におけるLs−TPTおよびLs−Gdの分散は、無処置脳組織の場合と同様に密接に相関するが、実際の分散量および対応するVd:Vi比は、顕著に小さい。これは、脳内圧力および腫瘍組織の微小構造に起因するCED動態の改変によって部分的に説明され得る。しかしながら、腫瘍担持ラットの非移植半球の無処置脳組織におけるLs−TPTおよびLs−GDの分散は、いずれも無腫瘍動物と比較して障害された。したがって、過剰な腫瘍成長に起因する組織圧縮による脳内圧力の増加が、腫瘍移植動物の腫瘍組織および無処置脳組織の両方における薬物分散の低下の根底にある最も重要な因子であり得る。これは、以前の研究において、質量効果を伴うカニューレ追跡を通じて、腫瘍異種移植および腫瘍突出と同側の半球拡大を伴う巨大腫瘍成長が見つかっていることから支持される(実施例4を参照)。
【0327】
一般に、薬物分散は、無処置脳組織群よりも、腫瘍組織群において変動性が高い。この場合も、これは、高い脳内圧力と関連する、変化した流体力学挙動によって説明され得る。腫瘍移植した動物における2つのLs−TPT製剤間のわずかな分散差異は、一定ではなく(Vd値は、無処置脳組織においてD:L0.3:1よりも名目上高いD:L0.1:1を有するが、名目上は腫瘍組織よりも低い)、2つの腫瘍組織群間のLs−GDに対して認められた、極めて類似した差異とよく似ている。このため、差異がリポソーム製剤に関連する可能性は低い。
【0328】
3匹の動物の無処置脳または腫瘍組織のいずれかにおける蛍光の欠如または最小の蛍光は、ポンプの機能不全、またはカニューレの亜最適配置による、くも膜下空間への注入液の漏出に起因する。
【0329】
実施例6.4:結論
【0330】
この試験は、Ls−TPTおよびLs−GDのCEDが無処置ラット脳および腫瘍組織の両方において、確実で一定した薬物分散をもたらすことを示した。CED流体力学、脳内圧力によって影響を受けると考えられ、高い脳内圧力は、薬物分散の不全をもたらす過剰な腫瘍成長に起因する。試験したLs−TPTの2つの製剤間に相対的な差異はなく(D:L0.1:1およびD:L0.3:1)、両製剤は、共投与されるLs−GDと良好に共対流し、CED後のLs−TPT薬物分散のリポソームトレーサとして、Ls−GDの適切性を確認する。
【0331】
実施例7:脳内対流増進送達によって成体無胸腺ラットに投与されるリポソームトポテカンおよびリポソームガドジアミドのパイロット毒物性評価
【0332】
実施例7.1:材料および方法
【0333】
実施例7.1.1:被検物質
【0334】
Ls−TPTおよびLs−GDのGLPグレード物質を、いずれも実施例6.1.1において記載されるように調製した。
【0335】
実施例7.1.2:動物およびグループ分け
【0336】
体重200〜270gの成体雄無胸腺ラット(rnu/rnu)(Taconic,ニューヨーク州ジャーマンタウン)(バッチ061207)を使用した。動物は、表19に概説されるように、ナノリポソームトポテカン濃度に基づいて、2つの群に分割した。
【表17】
【0337】
ラットは、同等の群平均体重および標準偏差を達成するように、体重に基づいて群に割り当てた。
【0338】
実施例7.1.3:外科的処置
【0339】
試験の1日目および4日目に、CEDを使用して、ラットは、各半球の線条体に定位的に被検物質の投与を受けた。この反復投与レジメンにおいて、両治療に同一の座標を使用した。ラットは、両群全体に同様に投与時間を分散する、組織的な順序で投薬された。イソフルラン(導入時は5%、手術中の維持の場合は2.5〜3.0%)吸入またはケタミン(90mg/kg)およびキシラジン(12mg/kg)の組み合わせの腹腔内注入のいずれかによって、ラットに麻酔をかけた。頭蓋の皮膚を剃毛し、動物を定位フレームに載置し、耳バーおよび切歯バーを使用して頭部を配置した。すべての外科的処置に対して無菌法を使用した。皮膚を70%アルコール、続いてベタジン溶液で消毒した。頭蓋上部の皮膚を縦方向に切開し、鈍的切開を使用して、頭蓋を覆う結合組織を除去した。小型の歯科用電気ドリルを使用して、頭蓋骨切除術を行い、ブレグマから0.5mm前方、および3mm左と右に直径1mmの穿頭孔を2つ開けた。自動ポンプ(BASi,Inc.,インディアナ州ウェストラフィエット)に接続された溶融シリカカニューレ(OD168μm、ID102μm)(PolyMicro Technologies,アリゾナ州フェニックス)を各半球においてCEDに使用し、適切な背腹座標に低下させた(−3.3mmで歯バーを用いて−4.5〜−5mm)。背腹座標は、軟膜表面から計算した。カニューレを、27ゲージニードルに挿入し、強力瞬間接着剤で管に固定した。被検物質を両側で一度に各線条体に注入した。漸進的注入速度の増分を使用した。半球当たり20μL用量を投与するために使用される注入速度は、0.2μL/分(15分)、0.5μL/分(10分)および0.8μL/分(15分)であった。注入完了後に、カニューレを所定の位置に5分間留置して、注入液の流出を最小限にした後、徐々に回収した。
【0340】
処置の終了後、ラットを通風のない環境内で維持し、加熱ランプまたは水ボトル、あるいは他の適切な加温方法で保温し、麻酔からの回復を監視した。ブプレノルフィンを、必要に応じて皮下投与した。ホームケージに戻す前に、ラットを処置室で回復させた。
【0341】
実施例7.1.4:組織採取および処理
【0342】
安楽死は、11日目に行った。イソフルラン(2.5%)またはCO2吸入によりラットに麻酔をかけた。動物は、トポテカン血漿レベルの決定および必要に応じて他の試験用に経心臓的血液試料を採取された。続いて、動物は、100mLのヘパリン化生理食塩水に続いて、300mLの4%パラホルムアルデヒドによる経心臓的かん流を経て、すぐに剖検された。
【0343】
試験中に死亡したか、または屠殺された(予定および予定外)すべての動物の完全な全身剖検を、剖体および筋肉/骨格系、すべての外表面および開口部、頭蓋腔および脳の外表面、関連器官および組織を伴う頸部、関連器官および組織を伴う胸部、腹部、および骨盤腔に対して行った。
【0344】
脳を除去し、30%スクロース中で平衡化した後、ドライアイスおよびイソペンタンの混合物中、60℃で凍結させた。脳は、後の処理のために−70℃で保管した。心臓、肺、肝臓、腎臓、すい臓(またはその一部)も、存在する場合は、死亡または屠殺された任意の動物から採取および保存した。これらの組織は、すべて中性緩衝化した10%ホルマリン中で固定した。
【0345】
ホルマリン固定した臓器は、必要に応じて、後の組織病理学的分析用にパラフィンブロックに処理された。試験における2つの群のそれぞれから得たすべての脳を30μm厚に切断し、浮遊切片をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)およびアジ化ナトリウム0.2%中で収集した。4つごとの切片をガラススライド上に収集し、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、ヘマトキシリン/エオシン染色用に処理した。残りの切片は、4℃で保管し、追加の免疫組織化学分析に使用し得た。
【0346】
血漿トポテカンおよびガドジアミド抽出および測定用の血液試料を遠心分離して、血漿を分離した。動物当たり400μLの血漿を得た。2.0mLエッペンドルフ管中の冷メタノール1.6mLを氷上に保持し、血漿を管に添加した後、攪拌した。飼料は、その時点ですべての動物が処理されるまで氷上に維持した。管をパラフィンで密閉し、蓋が誤って開かないようにし、凍結保存した。試料は、ドライアイス上でNorthern Lipids lnc(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビー)に出荷した。蛍光検出を用いる高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)によってガドジアミド血漿レベルを、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)によって決定した。
【0347】
実施例7.1.5:早期死亡/予定外の屠殺
【0348】
動物が試験時に死亡した場合、死亡時刻は、可能な限り厳密に推定および記録し、剖検を可能な限り早急に行った。剖検をすぐに行うことができなかった場合、動物を冷蔵して(冷凍ではない)、組織の自己消化を最小限に抑えた。剖検は、死後12時間以内に行った。
【0349】
動物の健康状態が不良であるか、または死が近づいていると思われる場合は、安楽死させ得る。可能であれば、必要に応じて血液または他の標本を採取および分析して(例えば、臨床病理パラメータ用)、倦怠感/死亡の原因の解明を支援した。
【0350】
実施例7.1.6:動物の飼育
【0351】
各動物は、番号の付いた耳タグによって識別した。さらに、各動物のケージは、動物識別番号、試験番号、種/株、性別、誕生日、入手元、および到着日を列挙したケージカードによって識別した。
【0352】
動物は、個別に隔離ケージに入れた。寝床材料は、広葉樹チップ(Sanichips,Harlan,カリフォルニア州)を削り、週に1回交換した。室温は、主に18〜26℃(64〜79F)に維持され、相対湿度は、30〜70%であった。温度および湿度は、連続的に監視し、最小値および最大値を記録した。試験手順を行うために、(消灯サイクル中に)室内灯を点ける必要があった場合を除いて、12時間点灯/12時間消灯の周期的照明期間を維持した。ラットは、試験期間を通して、照射Teklad Global 18% Protein Rodent Diet(齧歯類用プロテイン食餌)(Harlan,米国カリフォルニア州サンディエゴ)および自治体の水道水を自由に摂取させた。食餌または水中に、試験の結果に有害な作用を及ぼすレベルの汚染物質は存在しないことが分かった。年次水質検査の記録は、PSIアーカイブにおいて維持されている。
【0353】
所定の住居に到着すると、初期健康診断後に受領のため受け入れたすべてのラットを、任意の動物関連試験手順の最小3日前に、住環境(主要柵および部屋)に順応させる。順応期間中に、ラットの全体的な健康を毎日監視した。良好な臨床状態(すなわち、体重仕様内)であることが視認されたラットのみを試験に登録した。異常が認められ、不良な健康の兆候(すなわち、フリルコート、有意に低い体重)を呈した任意のラットは、試験から除外した。
【0354】
臨床観察および測定は、順応および試験期間を通して、少なくとも1日1回行った。ケージサイド観察の記録は、第1回投与の少なくとも3日前に開始し、終了まで継続する。各動物は、全体的な外観および挙動の変化について観察した。到着後、被検物質投与前、および剖検の日にラットの体重を測定し、体重を記録した。
【0355】
実施例7.2:結果
【0356】
実施例7.2.1:臨床観察および測定
【0357】
本試験では、いずれの動物も交換する必要がなかった。いずれの動物も死亡が認められず、すべて予定通りに屠殺が行われた。屠殺前試験は、すべての動物において正常であった。
【0358】
実施例7.2.2:トポテカン血漿レベルの測定
【0359】
11日目の血漿抽出測定(最後の治療から7日後)は、トポテカン(ラクトン形態のみが検出された)およびガドジアミドレベルが、いずれも非存在であったか、または表20に示されるように、定量の下限以下であったことを明らかにした。トポテカンカルボキシレートの形態は認められなかったか、または極めて低く、血漿からの干渉ピークと重複した。トポテカンラクトンの形態の保持時間におけるピークは、動物番号7214において見出される最大ピークとともに、各試料に対して認められた。このピークがトポテカンであるか、または血漿ブランクに起因するか否かは、決定することができなかった。
【表18】
【0360】
実施例7.3:考察
【0361】
本試験は、脳内CEDにより送達されるラットの正常な脳組織において、固定濃度のLs−GDと共注入される、2つの濃度のLs−TPTの安全性および毒性を評価したものである。Ls−TPTの濃度1.0および1.6mg/mLは、安全(0.5mg/mL)と毒性(5.0mg/mL)との中間である。Ls−TPT濃度は、以前に確立されている。
【0362】
このいずれの濃度も、被検物質に起因する肉眼または顕微鏡変化がなく、等しく安全であると考えられる。急性出血の領域は、カニューレ管に沿って大部分が局在化され、実験手順および薬物送達システムに関連すると推定される。カニューレ挿入およびCEDを含む送達法に関連する肉眼および顕微鏡変化については既に説明されており、本試験で認められる変化は、用いられる送達法と一致する(Lieberman 1995,Lonser 2002)。評価したいずれの濃度も被検物質に起因し得る毒性をもたらさなかったため、観察可能な副作用レベルがないこと(NOAEL)は、本試験において確証されなかった。
【0363】
最後の治療後7日目の血漿抽出測定は、トポテカンおよびガドジアミドレベルの両方が、非存在であるか、または定量の下限以下であったことを明らかにした。すべての試料に存在したトポテカンラクトン形態の保持時間における最大分数は、トポテカンまたは血漿に明らかに起因し得なかった。しかしながら、顕著な血漿レベルは、血液−脳関門をバイパスする局所領域送達方法、および最後の治療と試料採取との間の時間を考えると、ある程度予想外となる。脳は、組織病理学的分析用に切断されたため、本試験において、脳組織濃度は測定しなかった。したがって、血漿における上記ピークが、脳の実質レベルの維持と関連するか否かを結論することは不可能である。別個の試験において、脳内トポテカンは、トポテカン濃度0.5μg/mLで、両半球において、Ls−TPTによる単一治療後7日目に検出された(実施例2)。
【0364】
実施例7.4:結論
【0365】
1.0および1.6mg/mLの濃度で、Ls−GDと共注入されるLs−TPTは、ラットの無処置脳組織において、被検物質に起因する変化の証拠がなく、安全であると考えられる。トポテカンおよびガドジアミド血漿レベルは、送達方法および薬物特性と一致する試験の低レベルの定量以下であった。
【0366】
実施例8:成体無胸腺ラットにおける脳内異種移植U87MG腫瘍に対するリポソームトポテカンおよびリポソームガドジアミドの対流増進送達
【0367】
実施例8.1:材料および方法
【0368】
実施例8.1.1:被検物質
【0369】
Ls−TPTおよびLs−GDの両方のGLPグレード物質を、実施例6.1.1において記載されるように調製した。
【0370】
実施例8.1.2:動物およびグループ分け
【0371】
6〜8週齢、体重200〜275gの成体雄無胸腺ラットrnu/rnu(Taconic,ニューヨーク州ジャーマンタウン,バッチ04/30/2007−150501)を使用した。動物は、表21に概説されるように、3つの群に分類した。
【表19】
【0372】
腫瘍接種は、2日かけて行った(n=15ラット/日)。各治療群の5匹の動物に、連日、U87MG腫瘍細胞を接種した。実際の治療割り当ては、腫瘍移植後、2移植日のそれぞれにおいて、腫瘍移植後に行い、同等の群平均体重および標準偏差を狙った。
【0373】
実施例8.1.3 外科的処置および治療
【0374】
実施例8.1.3.1:脳内腫瘍異種移植
【0375】
ヒト神経膠腫細胞(U87MG)は、予定接種の2週間前に、凍結細胞ストック(Perry Scientific Inc,カリフォルニア州サンディエゴ)から入手した。細胞を腫瘍接種術の日に採取し、50,000〜100,000細胞/μLの濃度に調整した。接種の日(0日目)に、各ラットに合計500,000のU87MG腫瘍細胞を、5〜10μL懸濁液を使用して、右線条体に片側移植した。定位技法およびイソフルラン(2.5%)による麻酔を使用した。ラットを定位フレームに載置し、耳バーおよび切歯バーの使用によって頭部を配置した。無菌法をすべての外科的処置に使用した。皮膚を70%アルコールに続いて、ベタジン溶液で除菌した。頭蓋骨上部の皮膚に縦方向の切開を行い、鈍的切開を使用して、頭蓋骨を覆う結合組織を除去した。ブレグマから0.5mm前方、および3mm左と右に穿頭孔を開けた。30ゲージの25μLのハミルトンシリンジを使用して、U87MG細胞を、軟膜表面から適切な背腹座標を使用して、線条体に定位的に注入した(−3.3mmで歯バーを用いて−4.5〜−5mm)。U87MG懸濁液の最終細胞濃度に基づいて、注入量を5〜10μLの間で調整して、合計500,000±25,000細胞が10分かけて送達されるようにした。
【0376】
接種後、皮膚をホチキス留めした。ラットは、麻酔からの回復中に監視した。処置を終了する前に、ブプレノルフィンを皮下(SC)投与した後、必要に応じて、ブプレノルフィンをSC投与した。ラットは、腫瘍細胞移植後、1日2回監視した。移植後の生存時間は、約0〜60日となることが予想され、そこで動物を安楽死させて脳を採取した。
【0377】
実施例8.1.3.2:治療
【0378】
5日目と8日目の両日に、積極的に治療されたラット(第1群および第2群)は、線条体内の腫瘍移植に使用された同一座標を使用して、CEDによって脳内腫瘍に送達される被検物質を受容する。対照ラットは、未治療のままで疑似手術を受けなかった。ラットは、すべての群に同様に投与時間を分散させる、組織的な順序で投薬された。麻酔は、イソフルラン(2.5%)またはケタミン(90mg/kg)とキシラジン(12mg/kg)の組み合わせのいずれかで、腹腔内注射により行った。鈍的耳バーを有する定位フレームを使用して、以前に開けられた穿頭孔を通じてCEDを行った。血栓のみを除去した。自動ポンプ(BASi,Inc.,インディアナ州ウェストラフィエット)に接続された溶融シリカカニューレ(OD168μm、ID102μm)(PolyMicro Technologies,アリゾナ州フェニックス)をCEDに使用し、適切な背腹座標に低下させた(−3.3mmで歯バーを用いて−4.5〜−5mm)。背腹座標は、軟膜表面から計算した。カニューレを、10μLのHamiltonシリンジと接続された27ゲージニードルに挿入し、強力瞬間接着剤で管に固定した。漸進的注入速度の増分を使用した。治療当たり20μL量を達成するために本試験で使用される注入速度は、0.2μL/分(15分)、0.5μL/分(10分)および0.8μL/分(15分)であった。注入後に、カニューレを所定の位置に5分間留置して、注入液の流出を最小限にした後、徐々に回収した。
【0379】
処置の終了後、ラットを通風のない環境内で維持し、加熱ランプまたは水ボトル、あるいは他の適切な加温方法で保温し、麻酔からの回復を監視した。ブプレノルフィンを、必要に応じて皮下投与した。ホームケージに戻す前に、ラットを処置室で回復させた。
【0380】
実施例8.1.3.3:60日前の安楽死基準
【0381】
症状(鼻血/眼窩周囲の出血、不全まひ、脊柱後湾、不活性または食餌を摂取しないか、または毛づくろいしない、ベースライン体重の15%超の体重減少)のうちの任意の1つまたは組み合わせが認められた場合、動物を安楽死させ得る。可能な場合、血液または他の標本を採取し、必要に応じて分析して(例えば、臨床病理パラメータ用)、倦怠感/死亡の原因の解明を支援した。安楽死の際に、動物は、イソフルラン(2.5%)によって深麻酔をかけた後、0.9%生理食塩水(100mL)に続いて4%パラホルムアルデヒド(300mL)による心内かん流を受けた。
【0382】
実施例8.1.3.4:組織収集および処理
【0383】
試験中に死亡したか、または屠殺された(予定および予定外)すべての動物の完全な全身剖検を、剖体および筋肉/骨格系、すべての外表面および開口部、頭蓋腔および脳の外表面、関連器官および組織を伴う頸部、関連器官および組織を伴う胸部、腹部、および骨盤腔に対して行った。
【0384】
脳を除去し、4%パラホルムアルデヒド中で最大24時間培養した後、30%スクロース中で平衡化させた。スクロース平衡化後に、組織を凍結させて、低温切開するまで−70℃で保管した。心臓、肺、肝臓、腎臓、すい臓(またはその一部)も、存在する場合は採取および保存した。これらの組織は、中性緩衝化した10%ホルマリン中で固定した。ホルマリン固定した臓器は、次に肉眼視され、必要に応じて、後の組織病理学的分析用にパラフィンブロックに処理された。
【0385】
実施例8.1.3.5:組織病理学的分析
【0386】
3つの治療群のそれぞれにおいて、60日目に生存体および非生存体から少なくとも3つのランダムに選択した脳を、20μm厚に切断し、4つごとの切片をガラススライド上に収集し、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、ヘマトキシリン/エオシン染色用に処理して、腫瘍塊のサイズおよび組織学を評価した。残りの切片は、4℃で保管し、追加の免疫組織化学分析に使用し得た。
【0387】
実施例8.1.3.6:生存中の観察および測定
【0388】
臨床観察および測定は、順応および試験期間を通して、少なくとも1日1回行った。ケージサイド観察の記録は、第1回投与の少なくとも3日前に開始し、終了まで継続する。各動物は、全体的な外観および挙動の変化について観察した。臨床観察および測定は、表22において概説される。
【表20】
【0389】
実施例8.1.3.7:早期脂肪/予定外の屠殺
【0390】
動物が試験時に死亡した場合、死亡時刻は、可能な限り厳密に推定および記録し、剖検を可能な限り早急に行った。剖検をすぐに行うことができなかった場合、動物を冷蔵して(冷凍ではない)、組織の自己消化を最小限に抑えた。剖検は、死後12時間以内に行った。
【0391】
動物の健康状態が不良であるか、または死が近づいていると思われる場合は、安楽死させ得る。可能であれば、必要に応じて血液または他の標本を採取および分析して(例えば、臨床病理パラメータ用)、倦怠感/死亡の原因の解明を支援した。
【0392】
実施例8.1.3.8::統計的手法
【0393】
生存期間分析の目的で、動物を治療群別に分類した。比較目的でログランク統計を使用して、Kaplan−Meier生存期間分析を行った。生存期間の中央値は、KM曲線に基づいて示した。生存期間の個別の分析は、安楽死させた動物で行い、無検閲(死亡)および検閲(生存)のいずれかとして意図される。
【0394】
実施例8.1.4:動物の飼育
【0395】
各動物は、番号の付いた耳タグによって識別した。さらに、各動物のケージは、該動物の動物識別番号、試験番号、群、入手元、到着日、種/株、誕生日、および性別を列挙したケージカードによって識別した。
【0396】
動物は、個別に隔離ケージに入れた。寝床材料は、広葉樹チップ(Sanichips,Harlan,カリフォルニア州)を削り、週に1回交換した。室温は、主に18〜26℃(64〜79F)に維持され、相対湿度は、30〜70%であった。温度および湿度は、連続的に監視し、最小値および最大値を記録した。試験手順を行うために、(消灯サイクル中に)室内灯を点ける必要があった場合を除いて、12時間点灯/12時間消灯の周期的照明期間を維持した。
【0397】
ラットは、試験期間を通して、照射Teklad Global 18% Protein Rodent Diet(齧歯類用プロテイン食餌)(Harlan,米国カリフォルニア州サンディエゴ)および自治体の水道水を自由に摂取させた。食餌または水中に、試験の結果に有害な作用を及ぼすレベルの汚染物質は存在しないことが分かった。年次水質検査の記録は、PSIアーカイブにおいて維持されている。
【0398】
指定の住居に到着すると、初期健康診断後に受領のため受け入れたすべてのラットを、任意の動物関連試験手順の最小3日前に、住環境(主要柵および部屋)に順応させる。順応期間中に、ラットの全体的な健康を毎日監視した。良好な臨床状態(すなわち、体重仕様内)であることが視認されたラットのみを試験に登録した。異常が認められ、不良な健康の兆候(すなわち、フリルコート、有意に低い体重)を呈した任意のラットは、試験から除外した。
【0399】
実施例8.2:結果
【0400】
実施例8.2.1:臨床観察および測定
【0401】
いずれの動物も交換する必要はなかった。8匹の動物が、それらのケージ内で死亡が認められた(第1群において5匹、第2群において1匹、および第3群において3匹)。21匹の動物は、状態不良と見なされたため安楽死させる必要があり(第1群において5匹、第2群において9匹、および第3群において7匹)、最も一般的な兆候は、15%以上の体重の喪失、倦怠感、脊椎後湾、および運動障害である(例えば、立ち直り反射の変化、片側に横たわる等)。
【0402】
実施例8.2.2::有効性
【0403】
10匹の動物を、予定通り各群で治療した。主な有効性分析は、安楽死させた動物を無検閲(死亡)として考慮した。結果として、示される生存期間は、死亡するまでの時間を表す。各動物の個別の生存期間、ならびに治療群別の生存期間の中央値および平均を表23に示す。治療群別の生存期間曲線は、図12に表される。
【表21】
【0404】
このデータは、高いトポテカン総用量および濃度の第2群で治療された動物だけでなく、それぞれ生存期間の中央値が33.0(95%CI、31〜40)、29.5(95%CI、27〜33)および20.0(95%CI、19〜21)である対照(第3群)と比較して、低いトポテカン総用量および濃度の第1群においても生存期間が長いことを明らかにした。これらの差異は、対照と比較すると、すべて統計的に有意であった(1.0mg/mL対対照、p<0.0001および0.5mg/mL対対照、p<0.0001)。組み合わされた積極的治療群(第1群および第2群)の生存期間の中央値は、31.5(95%CI、30〜36)日であり、対照と比較すると、統計的に有意であった(p<0.0001)。用量/濃度応答傾向は、ハザード比0.567(95%CI、0.23〜1.38)で認められるが、2つの積極的治療群間の差異は、統計的有意のレベルに到達しない(0.5mg/mL対1.0mg/mL、p=0.215)。
【0405】
二次有効性分析は、安楽死させた動物を検閲済として考慮して行った。治療群別の生存期間の中央値は表24に示され、治療群別の生存曲線は、図13に表される。
【表22】
【0406】
本分析は、安楽死させた動物を無検閲として考慮する分析と一致しこれを支持し、高いトポテカン総用量および濃度の第2群で治療された動物だけでなく、それぞれ生存期間の中央値が48.0(95%CI、未決定)、33.0(95%CI、30.0〜48.0)および23.0(95%CI、20.0〜23.0)である対照(第3群)と比較して、低いトポテカン総用量および濃度の第1群においても生存期間が長いことを明らかにした。これらの差異は、対照と比較すると、すべて統計的に有意であった(1.0mg/mL対対照、p<0.0014および0.5mg/mL対対照、p<0.0001)。組み合わされた積極的治療群(第1群および第2群)の生存期間の中央値は、48.0(95%CI、36.0〜48.0)日であり、対照と比較すると、統計的に有意であった(p<0.0001)。
【0407】
この確認的有効性試験は、脳内CEDによって、無胸腺ラットの腹腔内神経膠腫異種移植モデルに送達される、新規リポソームトポテカン製剤を2つの濃度で使用して、複合薬物送達アプローチの有効性を評価したものである。ガドジアミドを装薬したリポソームは、リポソームトポテカンの潜在的な画像トレーサ代理として共投与される。試験用に選択されるトポテカン濃度には、前述の探索的有効性試験(実施例4)において試験される0.5mg/mL、および前述のパイロット毒物学試験(実施例7)において定義されるような非毒性範囲内である1.0mg/mLが挙げられる。実施例4の知見に基づいて、本試験では、二重投与方法を使用し、腫瘍異種移植後の治療の開始を5日目まで繰り上げて(実施例4における8日目に対して)、過剰な腫瘍負荷を回避し、結果として、分散量による腫瘍被覆を最適化するようにした。また異種移植におけるU87MG腫瘍細胞負荷は、すべての群に渡って、同様に5×105腫瘍細胞に維持され、すべての動物に対して同様の腫瘍負荷が得られるようにした(実施例4に開示される試験において、腫瘍細胞負荷は、6.8〜9.7×105に変動した)。
【0408】
積極的治療群の両方に対して、長い全体生存期間および生存期間の中央値が認められた。対照と比較すると、高いLs−TPT濃度(1.0mg/mL)は、全体生存期間において、極めて統計的に有意な増加をもたらし(p<0.0001)、中央値および平均生存期間は、それぞれ65%および76%増加した。低いLs−TPT濃度(0.5mg/mL)も、対照と比較すると、全体生存期間において、極めて統計的に有意な増加をもたらしたが(p<0.0001)、効果の大きさは、高いLs−TPT濃度を用いる場合よりもわずかに中程度であり、したがって、用量/濃度依存の効果を示唆する。対照に関連する中間値および平均生存期間の増加は、それぞれ48%および56%であり、Ls−TPT濃度は低い。検閲済として考慮される安楽死させた動物で生存期間分析を行った場合に、同様の知見が認められ、これは、Ls−TPTの真の効果の大きさに関する任意の潜在的な過大評価を回避する、より保守的な評価方法であるが、その効果を過小評価する可能性がある。該二次有効性分析の結果は、依然として統計的に有意であり、安楽死させた動物が無検閲として考慮される、一次有効性分析の知見を強力に支持する。
【0409】
この確認的有効性試験において説明される実験の全体知見は、実施例4において開示される試験で報告されるものとは異なる。0.5または1.0mg/mLの濃度でLs−TPTを受容している動物に対して認められる長い中央値および全体生存期間は、異種移植、腫瘍異種移植後の早期治療タイミング、および二重治療(5日目および8日目)における、わずかに低く一定した腫瘍細胞負荷の使用と一致する。生存期間に対する腫瘍細胞負荷の重要性は、本試験において、対照動物の長い生存期間の中央値(20日)によって示され、これは、Saito et al.(Saito 2006)によって報告される値に極めて類似し、実施例4に開示される試験よりも長い(17日)。
【0410】
実施例8.4:結論
【0411】
U87MGを使用して、ラット神経膠腫モデルにおいてCEDにより投与されるLs−TPTは、未治療の対照と比較して、明確かつ一定した延命効果をもたらす。
【0412】
実施例9:キンドリングしたラットに対するリポソームω−コノトキシンの対流増進送達
【0413】
合成ω−CTX−G(27アミノ酸、分子量3037)、ω−CTX−M(25アミノ酸、分子量2639)、およびカルバマゼピンを、Sigma−Aldrich(ミズーリ州セントルイス)から入手した。それぞれを、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、およびコレステロール(例えば、実施例2.1.2を参照)から成る、リポソームに装薬する。リポソームω−CTX−G、リポソームω−CTX−M、天然ω−CTX−G、天然ω−CTX−M、および天然カルバマゼピンが、キンドリングしたラットに及ぼす影響は、対流増進送達およびGasior et al.(2007)J.Pharmacology and Experimental Therapeutics 323:458−68において説明されているものと実質的に類似するプロトコルを使用して決定する。
【0414】
つまり、カニューレ−双極性刺激電極アセンブリを各ラットに慢性的に移植し、電極の先端が、定位座標において、右へんとう体の基底外側核中に配置されるようにする(ブレグマから測定して、AP:−2.8mm、ML:5.0mm、DV:−8.7mm)(Paxinos G and Watson C(1998)The rat brain in stereotaxic coordinates,4th ed.Academic Press,Sydney)。歯科用アクリルセメント(Lang Dental,イリノイ州ホイーリング)および固定用ステンレススチールネジ(Plastics One)を使用して、カニューレ−電極アセンブリを頭蓋骨に固定し、術後少なくとも10日間回復させた。キンドリングは、3つの相(1)AD閾値のキンドリング前決定、(2)キンドリング開発、および(3)AD閾値のキンドリング後再決定で構成される(Pinel,J P.et al.(1976)Epilepsia 17:197−206,Freeman,F G and Jarvis,M F(1981)Brain Res Bull 7:629−33,Gasior et al.(2007)J Pharmacology and Experimental Therapeutics 323:458−68)。キンドリング中、ラットは、直径29cmのPlexiglasシリンダ内で、カスタムメードの刺激装置(国立衛生研究所、研究サービス部門,メリーランド州ベセスダ)を用いて、チャンバ内で自由に移動できるスイベルアタッチメントを介して、個別に刺激される。
【0415】
対流増進送達システムは、Gasior et al.(2007、上記)において実質的に説明されている。対流増進送達の場合、各ラットは拘束され、注入カニューレは、ガイドカニューレを通じて、脳にゆっくり挿入される。注入カニューレの先端は、刺激電極ワイヤの先端から上に0.5mmの深さに伸長し、カニューレの上部の可塑性止め具によって、適切な深さで維持される。ラットを開放し、全体注入のために可塑性シリンダに入れる。すべての注入は、意識があり、拘束されていない動物で行う。注入カニューレ挿入後、脳組織は、注入の開始前数分間、カニューレの周囲を密閉される。漸進的注入速度の増分を使用する。半球当たり20μL用量を投与するために使用される注入速度は、0.2μL/分(15分)、0.5μL/分(10分)および0.8μL/分(15分)である。注入完了後に、カニューレを所定の位置に5分間留置して、注入液の流出を最小限にした後、徐々に回収した。被検物質が、完全にキンドリングしたラットにおける発作感度に及ぼす影響は、AD閾値を確立し、AD期間、発作段階、および行動発作期間を測定することによって評価する。被検物質のCED注入に続いて、動物を刺激し、キンドリング測定値は、注入後20分、ならびにその後は、注入後24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、4週間、および8週間に決定する。各ラットは、振戦の発生(四肢、頭部、および体幹の律動的な振動運動、または他の神経学的兆候について、被検物質の注入中、注入後少なくとも1時間、および後のそれぞれの刺激セッション前に観察する。
【0416】
キンドリング方法に対する毒性効果を特徴付ける試験の最後に、完全にキンドリングしたラットをランダムに選択し、VersaMax Animal Activity Monitoring System(AccuScan Instruments,オハイオ州コロンバス)を使用して、運動活性試験を行った。つまり、各ラットを、運動−活動チャンバ(Gasior et al.(2007)、上記)に60分間、連続5日間曝露して馴化させる。5日間をかけて安定したベースラインに向かう水平および垂直活動傾向、馴化期間の最後の2日における試験セッション中の活動カウントの平均は、注入試験のベースラインとする。5日の馴化期間の完了後に、各ラットは、被検物質の注入を受ける。注入のパラメータおよび動物の取扱いおよび外部キューを含む他の因子は、キンドリング発作実験におけるそれらと同一である。水平および垂直ビームの遮断は、60分の期間で決定し、注入後20分から始まり、その後は、注入後24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、4週間、および8週間に決定する。
【0417】
試験の完了後、選択した動物を、4%パラホルムアルデヒドにより経心臓的にかん流させて、切断およびクレシルバイオレットおよびシルバー染色用に脳を除去して、カニューレの配置およびニューロン損傷の証拠を評価する。各薬物治療の効果は、以下の式、100X[(治療前の値)−(治療後の値)]/(治療前の値)を使用して計算される、ベースラインからの変化(パーセント)として表される。各ラットのベースラインに関する治療効果を、個別に計算した後、群の平均を出す。キンドリングおよび運動活性試験から得たデータの統計分析は、一方向(群内)および二方向(群間)反復測定分散分析(ANOVA)によって、逆正弦−ルート変換を使用して、パーセンテージ変化データを変換した後に行う。必要に応じて、ダネット検定またはターキー検定を使用して、事後解析を行う。振戦データは、フィッシャーの直接確率法によって分析された頻度として表される。
【0418】
参考文献
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15.Saito R, Bringas JR, McKnight TR, Wendland MF, Mamot C et al. Distribution of liposomes into brain and rat brain tumor models by convection−enhanCED delivery monitored with magnetic resonance imaging. Cancer Res 64:2572−79, 2004
16.Saito R, Krauze MT, Bringas JR, Noble C, McKnight TR et al. Gadolinium−loaded liposomes allow for real−time magnetic resonance imaging of convection−enhanCED delivery in the primate brain. Exp Neurol 196(2):381−389, 2005
【0419】
すべての引用文献は、参照により、それら全体が明示的に本明細書に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対流増進送達を介して中枢神経系に薬学的薬剤を投与するための改良された非ペグ化リポソーム送達媒体であって、少なくとも1種の飽和中性リン脂質および少なくとも1種の飽和陰イオンリン脂質を含む、リポソーム製剤に被包された治療または診断薬剤を含む、媒体。
【請求項2】
前記媒体は、少なくとも1種の飽和中性リン脂質および少なくとも1種の飽和陰イオンリン脂質から本質的に成る、請求項1に記載の非ペグ化リポソーム送達媒体。
【請求項3】
ステロールをさらに含む、請求項1に記載の非ペグ化リポソーム送達媒体。
【請求項4】
前記リポソーム製剤は、DSPC、DSPG、およびCHOLを含むか、またはそれらから本質的に成る、請求項3に記載の非ペグ化リポソーム送達媒体。
【請求項5】
前記リポソーム送達媒体は、7:2:1のモル比のDSPC、DSPG、およびCHOLから本質的に成る、請求項4に記載の非ペグ化リポソーム送達媒体。
【請求項6】
前記リポソーム送達媒体は、トポイソメラーゼ阻害剤を被包する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非ペグ化リポソーム送達媒体を含む、治療用組成物。
【請求項7】
前記トポイソメラーゼ阻害剤は、トポテカンである、請求項6に記載の治療用組成物。
【請求項8】
前記トポイソメラーゼ阻害剤は、少なくとも約500μg/mLの初期薬物濃度で存在する、請求項6に記載の治療用組成物。
【請求項9】
前記リポソーム送達媒体は、毒素を被包する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非ペグ化リポソーム送達媒体を含む、治療用組成物。
【請求項10】
前記毒素は、ω−コノトキシン、ボツリヌス毒素、μ−コノトキシン、およびα−コナントキンペプチドから成る群から選択される、請求項9に記載の治療用組成物。
【請求項11】
前記タンパク質毒素は、コノトキシンである、請求項10に記載の治療用組成物。
【請求項12】
CNS障害を治療する改良された方法であって、それを必要とする患者に、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリポソーム送達媒体、または請求項6〜11のいずれか1項に記載の治療用組成物を投与することを含む、方法。
【請求項13】
前記CNS障害は、CNS腫瘍であり、前記治療薬剤は、トポイソメラーゼ阻害剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記CNS障害は、てんかんであり、前記治療薬剤は、毒素である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記毒素は、コノトキシンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
飽和中性リン脂質および飽和陰イオンリン脂質を含むか、またはそれらから本質的に成るリポソームに被包された少なくとも1種の診断薬剤を共投与することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
CNS腫瘍の治療を必要としている患者において使用するための、請求項6〜8のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項18】
てんかんの治療を必要としている患者において使用するための、請求項9〜11のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項19】
前記リポソーム送達媒体は、MRI磁石を被包する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非ペグ化リポソーム送達媒体を含む、診断用組成物。
【請求項20】
前記MRI磁石は、ガドジアミドおよびローダミンから成る群から選択される、請求項19に記載の診断用組成物。
【請求項1】
対流増進送達を介して中枢神経系に薬学的薬剤を投与するための改良された非ペグ化リポソーム送達媒体であって、少なくとも1種の飽和中性リン脂質および少なくとも1種の飽和陰イオンリン脂質を含む、リポソーム製剤に被包された治療または診断薬剤を含む、媒体。
【請求項2】
前記媒体は、少なくとも1種の飽和中性リン脂質および少なくとも1種の飽和陰イオンリン脂質から本質的に成る、請求項1に記載の非ペグ化リポソーム送達媒体。
【請求項3】
ステロールをさらに含む、請求項1に記載の非ペグ化リポソーム送達媒体。
【請求項4】
前記リポソーム製剤は、DSPC、DSPG、およびCHOLを含むか、またはそれらから本質的に成る、請求項3に記載の非ペグ化リポソーム送達媒体。
【請求項5】
前記リポソーム送達媒体は、7:2:1のモル比のDSPC、DSPG、およびCHOLから本質的に成る、請求項4に記載の非ペグ化リポソーム送達媒体。
【請求項6】
前記リポソーム送達媒体は、トポイソメラーゼ阻害剤を被包する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非ペグ化リポソーム送達媒体を含む、治療用組成物。
【請求項7】
前記トポイソメラーゼ阻害剤は、トポテカンである、請求項6に記載の治療用組成物。
【請求項8】
前記トポイソメラーゼ阻害剤は、少なくとも約500μg/mLの初期薬物濃度で存在する、請求項6に記載の治療用組成物。
【請求項9】
前記リポソーム送達媒体は、毒素を被包する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非ペグ化リポソーム送達媒体を含む、治療用組成物。
【請求項10】
前記毒素は、ω−コノトキシン、ボツリヌス毒素、μ−コノトキシン、およびα−コナントキンペプチドから成る群から選択される、請求項9に記載の治療用組成物。
【請求項11】
前記タンパク質毒素は、コノトキシンである、請求項10に記載の治療用組成物。
【請求項12】
CNS障害を治療する改良された方法であって、それを必要とする患者に、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリポソーム送達媒体、または請求項6〜11のいずれか1項に記載の治療用組成物を投与することを含む、方法。
【請求項13】
前記CNS障害は、CNS腫瘍であり、前記治療薬剤は、トポイソメラーゼ阻害剤である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記CNS障害は、てんかんであり、前記治療薬剤は、毒素である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記毒素は、コノトキシンである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
飽和中性リン脂質および飽和陰イオンリン脂質を含むか、またはそれらから本質的に成るリポソームに被包された少なくとも1種の診断薬剤を共投与することをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
CNS腫瘍の治療を必要としている患者において使用するための、請求項6〜8のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項18】
てんかんの治療を必要としている患者において使用するための、請求項9〜11のいずれか1項に記載の治療用組成物。
【請求項19】
前記リポソーム送達媒体は、MRI磁石を被包する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非ペグ化リポソーム送達媒体を含む、診断用組成物。
【請求項20】
前記MRI磁石は、ガドジアミドおよびローダミンから成る群から選択される、請求項19に記載の診断用組成物。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図1F】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2012−509284(P2012−509284A)
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536717(P2011−536717)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001708
【国際公開番号】WO2010/057317
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(509316604)メドジェネシス セラピューティクス インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001708
【国際公開番号】WO2010/057317
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(509316604)メドジェネシス セラピューティクス インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】
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