説明

中皮腫の治療のためのCDK阻害物質

本発明は、中皮腫の治療に使用するための低分子量ATP競合的CDK阻害物質を提供する。化合物は、1つ以上の細胞傷害性または細胞増殖抑制性剤と共に投与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子量ATP競合的CDK(サイクリン依存性キナーゼ)阻害物質の使用による、中皮腫患者の治療に関するものである。
【背景技術】
【0002】
悪性中皮腫は、アスベスト曝露に関連した局所浸潤性で急性致死的な腫瘍性疾患である。
【0003】
中皮腫の転帰に寄与する多くの遺伝的欠陥がある。p16/CDKN2A(サイクリン依存性キナーゼ阻害物質2A)のホモ接合体欠失は、中皮腫の約75%に見出され、この癌における最も一般的な遺伝子変化であり得る[Hirao T,Bueno R,Chen CJ,Gordon GJ,Heilig E,Kelsey KT.Carcinogenesis 2002;23(7):1127−1130;Whitson BA,Kratzke RA.Cancer Lett 2006;239(2):183−189]。予後に関して、p16/CDKN2Aの損失は、中皮腫のより高悪性度の臨床的挙動と関連している[Kobayashi N,Toyooka S,Yanai H,Soh J,Fujimoto N,Yamamoto H,et al.Lung Cancer 2008 62(1):120−5;Davidson B,Reich R,Lazarovici P,Florenes VA,Risberg B,Nielsen S,Lung Cancer 2004;44(2):159−165]。
【0004】
p16タンパク質は、サイクリン依存性キナーゼを阻害することによって、G1期における細胞周期停止を引き起こす。p16/CDKN2Aの欠乏の結果として、G1/Sチェックポイント制御が失われ、網膜芽細胞腫抑制因子(pRb)の過剰リン酸化およびS期への細胞進行が生じる。
【0005】
さらにトロポミオシン(Thropomyosin)受容体キナーゼA(TRKA)もこの疾患の生物学において重大な役割を果たす。実際に、活性化TRKA(P−TRKA)の高頻度発現は悪性中皮腫で頻繁に見出され、主に滲出液に、および腹膜病変、若年患者に出現する腫瘍に見られる[Whitson BA,Kratzke RA.Molecular pathways in malignant pleural mesothelioma.Cancer Lett 2006;239(2):183−189]。
【0006】
世界の中皮腫の発生率は上昇しており、外科的切除により効果を得られる患者はごくわずかである。治癒的切除が適用されない患者では、全生存期間中央値はおよそ6から7ヶ月である。治療選択肢は限定されている。大半の患者は、治療されても治療されなくても、局部疾患からの合併症で死亡する。単剤としてまたは組合せて販売されている化学治療剤は、生存に著しい影響を及ぼせないことが判明した。
【0007】
現在の治療選択肢は、14.1%の中程度の奏功率および10.7ヶ月の全生存期間中央値を示した、単剤としてのペメトレキセド(商標アリムタ(登録商標)として販売)[Scagliotti GV,Shin DM,Kindler HL,Vasconcelles MJ,Keppler U,Manegold C,et al.J Clin Oncol 2003;21(8):1556−1561]またはペメトレキセドを含む白金誘導体(シスプラチンまたはカルボプラチン)との組合せ[Castagneto B,Botta M,Aitini E,Spigno F,Degiovanni D,Alabiso O,et al.Ann Oncol 2008;19:370−373]の使用を含む。
【0008】
中皮腫の2次治療に承認された薬剤はない。化学療法選択肢は限定されており、ゲムシタビン、ビノレルビンおよび他の葉酸拮抗化合物を含む[Zucali PA,Ceresoli GL,Garassino I,De Vincenzo F,Cavina R,Campagnoli E Cancer 2008;112(7):1555−1561]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Hirao T,Bueno R,Chen CJ,Gordon GJ,Heilig E,Kelsey KT.Carcinogenesis 2002;23(7):1127−1130
【非特許文献2】Whitson BA,Kratzke RA.Molecular pathways in malignant pleural mesothelioma.Cancer Lett 2006;239(2):183−189
【非特許文献3】Kobayashi N,Toyooka S,Yanai H,Soh J,Fujimoto N,Yamamoto H,et al.Lung Cancer 2008 62(1):120−5
【非特許文献4】Davidson B,Reich R,Lazarovici P,Florenes VA,Risberg B,Nielsen S,Lung Cancer 2004;44(2):159−165
【非特許文献5】Scagliotti GV,Shin DM,Kindler HL,Vasconcelles MJ,Keppler U,Manegold C,et al.J Clin Oncol 2003;21(8):1556−1561
【非特許文献6】Castagneto B,Botta M,Aitini E,Spigno F,Degiovanni D,Alabiso O,et al.Ann Oncol 2008;19:370−373
【非特許文献7】Zucali PA,Ceresoli GL,Garassino I,De Vincenzo F,Cavina R,Campagnoli E Cancer 2008;112(7):1555−1561
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
実際に、中皮腫の治療のための新しい強力な薬剤に対して、極めて高度に満たされていない医療上の要求がある。本発明はこの問題に対処する。
【0011】
本発明は、CDKおよびチロシンキナーゼ成長因子介在シグナル伝達経路の阻害によって中皮腫の病因に関与する主要な経路のうち2つを阻害することが可能であり、中皮腫増殖の阻害に効果的である、低分子量化合物を提供する。
【0012】
所望の活性を示す本発明の化合物は、タンパク質キナーゼのATPポケットを標的とするように設計されたピラゾロキナゾリンである。この化合物は、CDKの強力なATP競合的阻害物質であることが明らかになっている。この化合物は、TRKAに対して著しい阻害効力を呈することが見出されている。
【0013】
本発明の化合物は、この生物活性の観点から、中皮腫に罹患している患者集団の治療法の開発のための新たな方針を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の詳細な説明)
第1の態様において、本発明は、中皮腫の治療方法で有用な式(I)の化合物
【0015】
【化1】

またはこの医薬的に許容される塩に関するものである。
【0016】
本明細書で使用する場合、「中皮腫」という用語は、胸膜、腹膜および心膜中皮腫ならびにすべての組織学的カテゴリ:上皮様、肉腫様および混合/2相性を含む。
【0017】
式(I)の化合物は、化学名8−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニルアミノ]−1,4,4−トリメチル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾロ[4,3−h]キナゾリン−3−カルボン酸メチルアミドを有する。この化合物はWO2004104007に記載されているように調製することが可能であり、プロテインキナーゼ阻害活性が与えられており、従って抗腫瘍剤として療法で有用である。特に式(I)の化合物の好ましい調製は、上掲の国際特許出願の実施例58に記載されている。
【0018】
式(I)の化合物の医薬的に許容される塩は、無機酸または有機酸、例えば硝酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、過塩素酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、イセチオン酸およびサリチル酸などによる酸添加塩を含む。
【0019】
式(I)の化合物の考えられるすべての異性体およびこの混合物ならびに代謝産物および医薬的に許容されるバイオ前駆体(そうでなければプロドラッグと呼ばれる。)の両方は、請求される発明の範囲内である。プロドラッグは、インビボで式(I)による活性親ドラッグを放出する、任意の共有結合された化合物である。
【0020】
式(I)による化合物の治療的有効量は、対象が前記化合物を用いた治療により効果を得る疾患または望ましくない状態を有すると決定されたときに、対象に投与され得る。医療または臨床従事者は、対象の疾患または状態の診断の一部として決定を下し得る。この化合物は、対照が状態の1つ以上を有する確率の低下として見なされ得る、このような状態の予防に使用され得る。
【0021】
本明細書で使用する場合、化合物の「治療的有効量」は、この所期の目的を達成するのに十分な量を指す。有効量の決定は、所望の効果の達成に基づいて、十分に当業者の能力の範囲内である。有効量は、これに限定されるわけではないが、対象のサイズおよび/または対象が罹患している疾患もしくは望ましくない状態が進行した程度を含む因子に依存する。有効量は、化合物が対象に単回投薬量でまたは定期的に長期にわたって投与されるか否かにも依存する。
【0022】
本発明の式(I)の化合物は、対象の治療を目的としている。本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、哺乳動物および非哺乳動物を含む。哺乳動物の例は、これに限定されるわけではないが、哺乳動物のクラスの任意のメンバー:ヒト、非ヒト霊長類、例えばチンパンジー、ならびに他の類人猿およびサル種;農場動物、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;愛玩動物、例えばウサギ、イヌおよびネコ;げっ歯類、例えばラット、マウスおよびモルモットを含む実験動物などを含む。非哺乳動物の例は、これに限定されるわけではないが、鳥類、魚類などを含む。
【0023】
「治療すること」という用語は、本明細書で使用する場合、治療上の効果を達成することを含む。治療上の効果とは、治療している根底にある疾患の根絶または改善を意味する。例えば癌患者において、治療上の効果は根底にある癌の根絶または改善を含む。また治療上の効果は、患者が根底にある疾患になお罹患しているかもしれないという事実にもかかわらず、患者に改善が見られるような、根底にある疾患に関連する生理的症状の1つ以上の根絶または改善によって達成される。
【0024】
本発明の別の目的は、悪性中皮腫を治療する方法に用いる、(a)上で定義した式(I)の化合物および(b)1つ以上の細胞傷害性または細胞増殖抑制性化学剤を含む治療的組合せである。
【0025】
例示的な細胞増殖抑制性または細胞傷害性化学剤は、アルキル化剤、アルキル化様剤(即ち白金誘導体、例えばシスプラチンおよびカルボプラチン)、代謝拮抗剤(例えばペメトレキセド)、微小管阻害剤、ホルモン剤、免疫剤、インターフェロンタイプ剤、シクロオキシゲナーゼ阻害物質(例えばCOX−2阻害物質)、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害物質、テロメラーゼ阻害物質、チロシンキナーゼ阻害物質、抗成長因子受容体剤、抗HER剤、抗EGFR剤、抗血管新生剤(例えば血管新生阻害物質)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害物質、ras−rafシグナル伝達経路阻害物質、細胞周期阻害物質、他のcdk阻害物質、チューブリン結合剤、トポイソメラーゼI阻害物質、トポイソメラーゼII阻害物質などを含む。
【0026】
特に好ましい実施形態において、本発明は、悪性中皮腫を治療する方法に用いる、上記で定義した式(I)の化合物、白金誘導体およびペメトレキセドを含む治療的組合せを提供する。
【0027】
本発明は、悪性中皮腫の治療に使用するための、医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合された上で定義した式(I)の化合物を含む、医薬組成物にも関する。
【0028】
さらなる実施形態において、本発明による医薬組成物は、1つ以上の細胞傷害性または細胞増殖抑制性剤をさらに含む。
【0029】
特に好ましい実施形態において、本発明は、悪性中皮腫を治療する方法に用いる、上記に定義した式(I)の化合物、白金誘導体およびペメトレキセドを含む医薬組成物を提供する。
【0030】
本発明の化合物を含有する医薬組成物は、通常は従来の方法に従って調製され、好適な医薬形で投与される。
【0031】
例えば固体経口形は、活性化合物と共に、希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、スクロース、セルロース、コーンスターチもしくはジャガイモデンプン;潤滑剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム、および/またはポリエチレングリコール;結合剤、例えばデンプン、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン;崩壊剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギン酸塩またはグリコール酸デンプンナトリウム;発泡混合物;染料;甘味料;湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩;ならびに概して、医薬配合物で使用される非毒性および薬理的に不活性な物質を含有し得る。これらの医薬調製物は公知の方式で、例えば混合、造粒、打錠、糖衣、またはフィルムコートのプロセスによって製造され得る。
【0032】
経口投与用の液体分散剤は例えばシロップ剤、乳剤または懸濁剤であり得る。
【0033】
一例として、シロップ剤は担体として、サッカロースもしくはグリセリンを含むサッカロースならびに/またはマンニトールおよびソルビトールを含有し得る。
【0034】
懸濁剤および乳剤は、担体の例として、天然ゴム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはポリビニルアルコールを含有し得る。
【0035】
治療用途では、式(I)の化合物は対象に1日に付き約10mg/m体表から約400mg/m体表の投薬レベルで投与される。約20mg/mから200mg/mの投薬レベルは、特に好適な範囲を構成する。ヒト成人対象では、1から28の連続日での約20mgから約800mg/用量、さらに好ましくは約40mgから約400mg/用量の投薬量が非制限的な例として使用され得る。好ましい治療スケジュールは、2週間サイクルで7日間の治療日にわたる150mg/日の用量と、続いての7日間の休止から成る。サイクルは、疾患を制御するために要求される限り反復することができる。
【0036】
本明細書で開示した用量よりも多いまたは少ない用量が必要に応じて使用されてもよい。しかしこのような投薬量は、使用する化合物の活性、治療する状態、投与方法、治療レジメン、個々の対象の要求、治療する状態の重症度および医師の判断に限定されない、幾つかの変動要因に応じて変更され得る。上の範囲が単に示唆であるのは、個々の治療レジメに関する変動要因の数が多く、これらの推奨値からかなり逸脱することは珍しくないためである。
【0037】
本発明をいずれの制限も加えずにさらに説明する目的で、ここで以下の実施例を与える。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】MSTO−211H株化細胞における細胞周期進行に対する効果およびアポトーシスの誘発を評価するための、未治療細胞(C)および式(I)の化合物の2種類の用量(1および3μM)で治療した細胞(T)の細胞蛍光プロフィールを示す。
【図2】未治療細胞(C)および式(I)の化合物の2種類の用量(1および3μM)で治療した細胞(T)におけるタンパク質発現を示す。ホスホリル化Rbタンパク質(CDK2の直接基質)の量、サイクリンAおよびcdc6(細胞周期進行の制御に関与するタンパク質)の量ならびにホスホリル化AKT;ホスホリル化S6;ホスホリル化p44/42MAPKおよび全p44/42MAPKの量を評価して示した。
【0039】
実施例
【実施例1】
【0040】
キナーゼのシンチレーション近接アッセイ(SPA)の構成
このアッセイにより、試験化合物によって得た特異的酵素のキナーゼ活性の阻害の測定が可能となる。異なるキナーゼを並行して試験することができる。
【0041】
ビオチン化基質は、γ33−ATPトレーサを含むATPの存在下で特異的キナーゼによってトランスホスホリル化される。反応の終りに、ホスホリル化基質を次にストレプトアビジンコートSPAビーズを使用して捕捉する。高濃度の5M CsCl溶液を添加して、混合物を4時間インキュベートする。このことによりSPAビーズは、取込まれていない放射性標識ATPを含有するCsCl溶液の上部に浮遊する。
【0042】
βカウンタを使用して、ホスホリル化の程度を測定する。これらのアッセイにおいて、式(I)の化合物は、CDK2/サイクリンA複合体(IC50=45nM)に対して強力な阻害活性を示し、密接に関連するCDK、即ちCDK1、CDK4、およびCDK5(それぞれIC50=398、160および265nM)に対しても活性を示すが、トロポミオシン(Thropomyosin)受容体キナーゼA(TRKA)(IC50=53nM)に対しては活性を示さなかった。
【実施例2】
【0043】
インビトロでの中皮腫細胞中の式(I)の化合物の効果
MSTO−211H、NCI−H2052およびNCI−H28中皮腫株化細胞を、10%FCS、2mMグルタミン、1mMピルビン酸ナトリウムおよび10mM HEPESを添加したRPMI 1640中で培養した。すべての実験で、細胞を化合物によって規定の期間治療した翌日に1×10/cmの密度で播種して、次に報告された時間に収集した。
【0044】
細胞増殖の阻害
治療の72時間後に細胞を洗浄およびカウントした。細胞増殖を細胞アデノシン3リン酸監視システムによって判定した。細胞増殖を対象細胞と比較した。細胞増殖を50%阻害する濃度(IC50)を計算した。
【0045】
細胞周期進行およびアポトーシス誘発の分析
細胞を治療の24時間後に洗浄して、冷メタノール70%によって固定し、−20℃にて貯蔵した。固定した細胞をPBSで洗浄してメタノールを除去し、25μ/mLヨウ化プロピジウム、5μg/mL RNアーゼ、および0.125μg/mLノニデットP40で染色した。細胞を暗所で60分間室温に維持して、Macintosh G4コンピュータにインタフェースされたBD FACSCalibur(商標)システムによって、BD CellQuest(商標)3.3ソフトウェアを用いて分析した。すべてのダブレットまたは凝集体をFL3−A/FL3−Wドットプロットに基づく適切なゲートによる分析の間に除去して、10,000個以上のゲート細胞でDNA含有量分析を行った。DNAヒストグラム(図1に示す。)は、ModFit LT(商標)を使用して分析した。
【0046】
例として、図1に示すように、細胞周期進行は式(I)の化合物に影響を受け、1μMで治療した細胞における明白なG1ブロックおよび3μMで治療した細胞におけるサブG1ピークの上昇(アポトーシスの誘発)を生じる。
【0047】
これらのアッセイの結果も表1に報告する。式(I)の化合物は、試験したすべての中皮腫細胞(第1列)で活性であった:0.23から1.56μMの範囲にて増殖をIC50で阻害することが可能であり(第2列)、サブG1 DNA含有量による細胞のパーセンテージの細胞蛍光分析によって測定されたようにアポトーシスを誘発することも可能であった(第3列)。
【0048】
【表1】

【実施例3】
【0049】
ウェスタンブロット分析による式(I)の化合物の作用機序の評価
治療した細胞を、SDS試料緩衝液(0.125M Tris−HCl pH6.8、5% SDS)を添加することによって溶解させた。試料を95℃に5分間加熱して、次にUltrasonic 2000 ARTEKを使用して超音波処理した。溶解させた細胞を13,000RPMにて10分間、遠心分離した。BCA緩衝液(Pierce)およびBSA標準曲線を使用してタンパク質定量を決定した。タンパク質抽出物20μg/ウェルを添加して、SDS−PAGEゲル7.5から10%(PAGE−PLUS 40%コンセントレートAMRESCO)によって分離した。25mM Tris HCl pH8.3、192mMグリシンおよび20%メタノールを含有する緩衝液中のニトロセルロースフィルタ(Hybond Amersham)にゲルをブロットした。フィルタは、0.1% Tween 20を含有するTBS(TBS−T)中の5%低脂肪乳で室温にて2時間飽和させて、次に1次モノクローナルを用いて4℃にて一晩インキュベートして、TBS−T中での洗浄および2次抗マウス抗体を使用するインキュベーションを続けた。「Super Signal West Pico」Pierceを使用してバンドを描出した。
【0050】
試験したすべての株化細胞で得られた結果により、式(I)の化合物が中皮腫の病因に関与する主な経路をどちらも妨害できることが示された。
【0051】
細胞周期関連マーカーの減少は、試験したすべての中皮腫株化細胞で観察される。図2は例として、24時間治療したNCI−H28細胞(p16/CDKN2Aに変異)における、式(I)の化合物の2回の用量によって得た結果を示す。Rbホスホリル化ならびにサイクリンAおよびcdc6発現の強力な阻害が明らかである。
【0052】
式(I)の化合物がチロシンキナーゼ成長因子受容体が介在する経路も阻害する能力も評価された。NCI−H28細胞でのAKT;S6およびMAPKのホスホリル化の阻害も図2で報告されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
悪性中皮腫を治療する方法に用いる、式(I)
【化1】

の化合物またはこの医薬的に許容される塩。
【請求項2】
悪性中皮腫を治療する方法に用いる、(a)請求項1に記載の式(I)の化合物および(b)1つ以上の細胞傷害性または細胞増殖抑制性化学剤を含む治療的組合せ。
【請求項3】
化学剤がペメトレキセドおよび白金誘導体である、請求項2に記載の治療的組合せ。
【請求項4】
悪性中皮腫の治療に用いる、医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合された請求項1に記載の式(I)の化合物を含む医薬組成物。
【請求項5】
悪性中皮腫を治療する方法に用いる、一種または複数の細胞傷害性または細胞増殖抑制性化学剤をさらに含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
化学剤がペメトレキセドおよび白金誘導体である、請求項5に記載の医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−509859(P2012−509859A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536889(P2011−536889)
【出願日】平成21年11月23日(2009.11.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065643
【国際公開番号】WO2010/058006
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(307012403)ネルビアーノ・メデイカル・サイエンシーズ・エツセ・エルレ・エルレ (55)
【Fターム(参考)】