説明

中空ナノ炭素集合体並びに一重項酸素消去剤、化粧剤、皮膚ガン抑制剤及び退色防止剤

【課題】一重項酸素消去能が数値により特定される中空ナノ炭素集合体、及びこの中空ナノ炭素集合体を用いる一重項酸素消去能を有する酸素除去剤、皮膚老化防止剤、及び皮膚ガン抑制剤の提供。
【解決手段】一重項酸素消去能:3.5×104[L/g/s]から3.5×107 [L/g/s]を有する中空ナノ炭素集合体、この中空ナノ炭素集合体が、カ-ボンナノホ-ン、カ-ボンナノホ-ンがカロテノイド色素を内包していること、フラ-レン、その炭素数がC76,C78,C80,C82,又はC90
から選ばれる高次フラ-レン、高次フラ-レンがCa,Sc,Fe,Sr,Y,Ba,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,又はLuから選ばれる金属内包フラ-レン、一重項酸素消去能を有する酸素除去剤、皮膚老化防止剤、皮膚ガン抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空ナノ炭素集合体並びに一重項酸素消去剤、化粧剤、皮膚ガン抑制剤及び退色防止剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中空ナノ炭素集合体について研究が進められてきた。中空ナノ炭素集合体の一つであるフラ-レンC60が見出された。これは炭素棒の放電によって得られる煤の中からフラ-レンC60が見出され、-240℃で超伝導状態になるなどの特異な性質を有することで注目され、高次フラ-レン、金属内包フラ-レンなどのフラ-レン類似物質が次々と生成、分離され、其の特性が解明されてきた。又、同じくカ-ボンナノホ-ンも見出された。
【0003】
フラ-レンC60は、抗酸化剤として作用する活性酸素消去剤を利用するものである。食品の例えば、脂質の酸化劣化の防止、化粧品、または医薬における、例えば、制ガン剤等に使用できる。又、ラジカルを消去できることも注目されている。
ところで、フラ-レンC60について検討してみる、一重項酸素除去能が殆ど無いことが知られている(非特許文献1、特許文献2)とされており、基底状態のC60には一重項酸素除去能は無く、C70には一重項酸素除去能は無い(特許文献3)とされている。
このことから、フラ-レンC60の活性酸素消去剤は一重項酸素除去能に基づくものではなく、その他の原因により活性酸素消去剤として作用していることが明らかである。そして、フラ-レンC60は光照射により一重項酸素発生能を有している。一重項酸素除去能に基づく活性酸素消去剤があれば、より有効な酸素除去能を有するものとなると考えられる。
【0004】
カ-ボンナノホ-ンに関して、酸化開孔されたカ-ボンナノホ-ンにステロイド系薬物または金属含有の薬物が吸着もしくは内包されている薬物カ-ボンナノホ-ン複合体とすること(特許文献6)、単層カ-ボンナノホ-ン集合体からなる吸着材であって、単層カ-ボンナノホ-ンの壁部および先端部に細孔が径を制御されて開口されているカ-ボンナノホ-ン吸着材(特許文献7)、単層カ-ボンナノホ-ンにランタニド金属が担持されており、メタン吸着性を有する単層カ-ボンナノホ-ン吸着材(特許文献8)が知られている。これらの場合にはカ-ボンナノホ-ンの吸着特性に基づくものであり、その表面特性や構造体の中に物質を取り込んで得られる特性に関する発明はない。
特許文献9には、写真用薬剤を光応答基が設けられたカ-ボンナノチュ-ブ又はカ-ボンナノホ-ンに格納して該感光層中に含有することが記載されている。前記光応答基はスチルベン構造又はアゾベンゼン構造を有する。
カ-ボンナノホ-ンに関しては、抗酸化性を有すること、或いは一重項酸素能の有無については知られていない。又一重項酸素を除去する分子としてはカロテノイド色素が知られており、化粧料や医薬組成物への用途が考えられている(特許文献11)。
【0005】
以上のことを背景にして、中空ナノ炭素集合体について一重項酸素消去能を有する酸素除去剤に期待がもたれているものの、一重項酸素消去能を有する酸素除去剤の存在及びその程度について明らかにされていない。この点を明らかにし、具体的な用途を明らかにすることが求められている。
【特許文献1】特開2005-60380号公報
【特許文献2】特開2005-225772号公報
【特許文献3】特開2004-256090号公報
【特許文献4】特開2002-241307号公報
【特許文献5】特開2005-272350号公報
【特許文献6】特開2006-160664号公報
【特許文献7】特開2005-343885号公報
【特許文献8】特開2002-32632号公報
【特許文献9】特開2005-7281号公報
【特許文献10】特開2005-62739号公報
【特許文献11】特開平06-227961号公報
【非特許文献1】J. Phys. Chem. 95 (1991) 11
【非特許文献2】, Chem. Commun. (1998) 2493.
【非特許文献3】JACS 113 (1991) 8886
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、一重項酸素消去能が数値により特定される中空ナノ炭素集合体、及びこの中空ナノ炭素集合体を用いる一重項酸素消去能を有する酸素除去剤、皮膚老化防止剤、皮膚ガン抑制剤及び退色防止剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意研究し、以下のことを見出して本発明を完成させた。
1 中空ナノ炭素集合体であるカ-ボンナノホ-ンは、一重項酸素消去能:3.5×104から3.5×107[L/g/s]を有するものあること。カ-ボンナノホ-ンの一重項酸素消去能は3.5×104[L/g/s] から3.5×107 [L/g/s]を有するものであること。カ-ボンナノホ-ンはカロテノイド色素を内包していること。カロテノイド色素はカ-ボンナノホ-ンにより安定化されこと。
2 フラ-レンC60、C70及びC76は、一重項酸素消去能は0とみなすことができること。
C82については(3±0.6)×10[L/g/s]
Laを含むC82は(7±1)×10[L/g/s]
Ceを含むC82は(7±1)×10[L/g/s]
Ceを含むC80は(6±1)×10[L/g/s]
であること。
以上から、一般的に、高次フラ-レン及び金属を含む高次フラ-レンはフラ-レンC60、C70及びC76と対比すると、一重項酸素消去能を有していることがわかる。
3 前記1のことがらから前記カ-ボンナノホ-ン及びカロテノイド色素を内包しているカ-ボンナノホ-ン、並びに高次フラ-レン及び金属を含む高次フラ-レンは一重項酸素消去能を有していること、これは従来知られているフラ-レンは一重項酸素消去能を有していないこと、フラ-レンは抗酸化剤である
活性酸素消去剤をとなる。しかしながら、本来、フラ-レンは一重項酸素消去能を有していないものであるから、フラ-レンの活性酸素消去剤の作用は一重項酸素消去能によるものではない。カ-ボンナノホ-ン及びカロテノイド色素を内包しているカ-ボンナノホ-ン、並びに高次フラ-レン及び金属を含む高次フラ-レンについては、一重項酸素消去能に基づく新たな活性酸素消去剤であることがわかる。
4 以上の結果に基づいて、カ-ボンナノホ-ン及びカロテノイド色素を内包しているカ-ボンナノホ-ン、並びに高次フラ-レン及び金属を含む高次フラ-レンについては、一重項酸素消去能に基づく新たな活性酸素消去剤として活性酸素により引き起こされる医薬、皮膚を酸化域から守る老化防止などのための化粧料、その他食品保存のために酸素処理剤として用いることができること。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来知られていない一重項酸素消去能の基づいて、新たな
て活性酸素により引き起こされる医薬、皮膚を酸化域から守る老化防止などのための化粧料、又は皮膚ガン抑制剤として医療用に、繊維などのセルロ-スに混ぜて退色防止剤として、食品保存のために酸素処理剤、高分子化合物の表面のコ-ティング剤として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、一重項酸素消去能が3.5×104[L/g/s]から3.5×107 [L/g/s]である中空ナノ炭素集合体である。
前記中空ナノ炭素集合体が、一重項酸素消去能が3.5×104から3.5×107[L/g/s]であるカ-ボンナノホ-ン、前記カ-ボンナノホ-ンがカロテノイド色素を内包している。
また、前記中空前記中空ナノ炭素集合体には、一重項酸素消去能が2.3×106から10×106[L/g/s]フラ-レンが含まれる。このフラ-レンはその炭素数がC76,C78,C80,C82,又はC90から選ばれる高次フラ-レンである。
前記高次フラ-レンがCa,Sc,Fe,Sr,Y,Ba,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,又はLuから選ばれる金属内包フラ-レンである。
【0010】
カ-ボンナノホ-ンについては以下の通りである。
カ-ボンナノホ-ンは、グラファイトのシ-トが円筒状に丸まったカ-ボンナノチュ-ブの一端が円錐形状となった管状体の構造を有している。カ-ボンナノホ-ンは、通常、各々の円錐部間に働くファンデルワ-ルス力によって、チュ-ブを中心にし、円錐部が角(ホ-ン)のように表面に突き出る形態で集合し、カ-ボンナノホ-ン集合体を形成している(特開2005-194129号公報)。
【0011】
カ-ボンナノホ-ンは、不活性ガス雰囲気中で原料の炭素物質(以下適宜グラファイトタ-ゲットと呼ぶ)に対してレ-ザ-光を照射するレ-ザ-蒸発法によって製造される(特開2001-64004号公報)。チャンバ-内において、バッファ-ガス(He,Ar,N2)雰囲気下、グラファイトタ-ゲット(99.99%純度)に対してCOレ-ザ-(波長10.6マイクロメ-トル、パワ-密度20kW/cm2、パルス長 500ms,周波数1Hz)を当てることによってナノホ-ンの会合体を得ることが出来る(Journal of Physical Chemistry
B106 (2002) 4947)。
また、ア-ク放電によりカ-ボンナノチュ-ブなどのナノカ-ボンを製造する際に得られる、すすの一部にカ-ボンナノホ-ンが含まれる(特開2002-348108号公報)。
【0012】
カ-ボンナノホ-ンについて、一重項酸素消去能については知られていない。カ-ボンナノホ-ンについては、実測の結果、3.5×104[L/g/s]から3.5×107[L/g/s]の範囲であることを確認した。
【0013】
カ-ボンナノホ-ンがカロテノイド色素を内包していることは、カ-ボンナノホ-ンの中空部分にカロテノイド色素を取り込んだ構造しているものである。
【0014】
カロチノイドに関しては、以下の通りである。
動植物に広く分布する色素の総称であり、黄色から赤色又は紫色のポリエン色素である。炭素数40のものが多く、炭素数30から炭素数50程度のものが含まれる。代表的なものとして、α-カロテン、β-カロテン、γ-カロテン、δ-カロテンを挙げることができる。
【0015】
カ-ボンナノホ-ンがカロテノイド色素を内包していることは、カ-ボンナノホ-ンの中空部分にカロテノイド色素を取り込んだ構造しているものである。
一重項酸素消去能は、カロテノイド色素の部分が含まれることにより、3.5×107 [L/g/s]にまで増加する。
【0016】
カロテノイド色素を内包したカ-ボンナノホ-ンの製法は以下の通りである。
単層カ-ボンナノホ-ンを空気雰囲気下530度20分間加熱することで、ナノホ-ンに空孔を空ける(SWNH-ox)。その後、βカロテンが飽和したヘキサン溶液(βカロテン10mg、ヘキサン5ml)にSWNH-ox(2mg)を入れ、一晩置いた後、THFで外側のβカロテンを洗い、最終的な精製物(βカロテン内包カ-ボンナノホ-ン)を得た。
吸収スペクトルの図2に示す。内包されたカロテンの存在に由来する吸収バンドの存在により、βカロテンの内包状況の確認を行った。
【0017】
高次フラ-レン(炭素数はC76,C78,C80,C82,C90)は、以下の通りである。
フラ-レンは、サッカ-ボ-ルやラグビ-ボ-ルのような形状をした、特異な立体構造の炭素の同素体であり、フラ-レン一個は、有機分子一個に対応する新規な有機分子と考えることができる。フラ-レンはその特異な立体構造のために、他の有機分子と比べてフラ-レン間の相互作用が強いという特徴を有して、薄膜化した場合にエネルギ-バンド構造を形成することが知られている(Haddon,R.C.;Perel,A.S.;Morris,R.C.;Palstra,T.T.M;Hebard,A.F. Appl.Phys.Lett.1995,Vol.67,p.121-123)。また、フラ-レン薄膜に特定の不純物をド-プすることにより導電性が得られることが知られている。例えば、K(カリウム)をド-プしたC60フラ-レンからなる薄膜は、臨界温度18K(ケルビン)の超伝導体であることが知られている(R.C.Haddon et al.,Nature,350,320(1991)。炭素数として、C76,C78,C80,C82,C90のものを高次フラ-レンとする。C80としては、特開2005-89249号公報などにより、その特性も知られている。
【0018】
また、フラ-レンの有する内部空間に金属元素を導入したフラ-レンは、金属元素内包フラ-レンと呼ばれており、内包金属元素とフラ-レン骨格との相互作用により特異な分子軌道を形成することが予測されている。
金属元素内包フラ-レンは、フラ-レンに特有な機能を引き出したりすることが行われる。前記金属としてはCa,Sc,Fe,Sr,Y,Ba,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luを挙げることができる。
【0019】
金属元素内包フラ-レンの製法の一例を挙げると以下の通りである。
ア-ク放電法によって作成する。1600度で加熱処理を行った金属酸化物およびグラファイトを含有したロッドを正極におき、直流電流(300-500A)をヘリウム雰囲気下(50-100Torr)においてア-ク放電させ、嫌気下、グラファイトス-トを回収する。
同ス-トからHPLC等の精製を行うことで特定の分子種の高次フラ-レンおよび金属内包フラ-レンの単離を行った(参考文献:H. Shinohara, Rep.
Prog.Phys.63 (2000) 843-892)
【0020】
従来知られているC60には一重項酸素消去能を有しておらず、C80,C82,では一重項酸素消去能が2.9×109から10×109[M-1s-1]を有する高次フラ-レン(C76,C78,C80,C82,C90)では高度の一重項酸素消去能を有する。
又、従来知られているC60には一重項酸素消去能を有しておらず、又、La, Ceに限ると、高度の一重項酸素消去能を有する。
【0021】
これらの評価は以下の手順で行った。
一重項酸素を発生させるendoperoxide of 1,4-dimethylnaphtahalene(EDN) は 1,4-dimethyl naphthalene (DN) から既報[1]の方法に従って調整した。EDNを含むクロロベンゼン、又はCDCL3溶液に試料を溶かし(CNHの場合は超音波分散)、これらサンプルを含む溶液からの一重項酸素に由来する発光の総発光量(S)とサンプルを含まない溶液からの発光総量(S0)を比較した。また、S0とSの比は式(1)に従って、kq値(physical quenching rate constant)と関連づけることが可能である為、各々の試料のkq値を見積もった。
(式1)

クロロベンゼンおよびCDCL3のkd値は1.1×104, 0.33×104 [s-1]の為、式1に従い各試料のkq値を求めた
【0022】
結果は以下の通りである。
【0023】
表1 高次フラ-レン、金属内包フラ-レンの一重項酸素消去能

【0024】
表2 カ-ボンナノホ-ン類のkq値の比較

【0025】
[試料の一重項酸素消去能]
下記、表1に示されるように、高次フラ-レンおよび金属内包フラ-レンの一重項酸素消去能がβカロテンに匹敵もしくは大きな値を持つことが分かる。また、図1に示されるように、モル濃度を等しくさせた場合、可視域の吸光係数はβカロテンと比較して金属内包フラ-レンは一桁少ない。また、表2に示すようにカ-ボンナノホ-ンも一重項酸素消去能を備えることが分かる。抗酸化材料と知られるビタミンEと比較してもより大きな性能を備える。また、βカロテンをカ-ボンナノホ-ンに内包することで一重項酸素消去能の性能の向上が見られることが分かる。
【0026】
前記一重項酸素消去能を有する中空ナノ炭素集合体は、一重項酸素消去剤として用いることができる。この特性を有する中空ナノ炭素集合体は、皮膚老化防止剤として単独に又は化粧料に混合して、又は皮膚ガン抑制剤として医療用に、繊維などのセルロ-スに混ぜて染料や色素の退色防止剤として、食品保存のために酸素処理剤、高分子化合物の表面のコ-ティング剤として用いることができる。
【0027】
〔安全性について〕
ナノ炭素材料は、生体内へ同材料を投入するDDS利用を目的とした研究もなされており(特許公開2005-295854、およびT. Murakami et al. Mol. Pharm. Vol.1, (2004) 399-405)、安全性には一定の了解が得られている。
【0028】
これらフラ-レン類は物質としては既に、化粧品、医薬等に公知の用途がある。この出願の発明のフラ-レン類の塩類とは、たとえば水酸化フラ-レン類や、フラ-レンエステル類の塩類、ポリ水酸化フラ-レン類、フラ-レンジエステル、フラ-レントリエステル、フラ-レンポリエステル等の塩類から選択されてよく、その塩類は生理学的に受容される塩を形成していればよい。これら塩の例としては、無機塩や有機塩が挙げられる。
【0029】
これらの塩としては、アルカリ金属(例、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ土類金属(例、カルシウム、マグネシウムなど)などの金属の塩であってもよく、あるいは、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、エタノ-ルアミン、ジエタノ-ルアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ジシクロヘキシルアミン等の有機塩基との塩であってもよい。安全性の高さ、経済性等の観点から、水酸化フラ-レン類およびフラ-レンモノエステル類の塩類として、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムから選択される一種または二種以上の金属塩が適している。
【0030】
フラ-レン類として水溶性のあるフラ-レン誘導体や有機化合物による修飾体あるいは包接体、そしてフラ-レン類の塩類は安定性が高く、水に溶けやすく、またpHが調整可能なため、細胞毒性が低く生体適合性が高いので、この出願の発明に使用するのにより適している。たとえばフラ-レンと高分子ポリマ-としてのPEG(ポリエチレングリコ-ル)、PVP(ポロビニルピロリドン)や、CD(シクロデキストリン)による修飾あるいは包接体、そして1価の塩類が2価の塩類よりも水に対する溶解性が高いことから好ましい。特に、フラ-レン-PVPや、水酸化フラ-レン類やフラ-レンエステル類のナトリウム、水酸化フラ-レン類やフラ-レンモノエステル類のカリウムが適している。
【0031】
製剤が溶液である場合は、水溶性剤(たとえば、蒸留水等)、水溶性製剤(たとえば、生理的食塩水、リンゲル液等)、油性熔剤(たとえば、ゴマ油、トウモロコシ油、オリ-ブ油等)等の溶剤を用いて、常套手段により調整することもできる。この際、所望により溶解補助剤(たとえば、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等)、緩衝剤(たとえばクエン酸ナトリウム、グリセリン等)、等張化剤(たとえば、ブドウ糖等)、安定剤(たとえばヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコ-ル等)、保存剤(たとえばベンジルアルコ-ル、フェノ-ル等)、無痛化剤(たとえば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカイン等)等の添加剤を用いることもできる。
【0032】
所望により薬理学的、製剤学的に許容され得る添加剤(たとえば、希釈剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、着色剤、安定剤、増量剤、湿潤化剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、矯味剤、矯臭剤、香料、保存剤、溶解補助剤、溶剤、被覆剤、糖衣剤など)を混合またはこれらを用いて製剤化したものを使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】モル濃度を等しくした場合のCe内包フラ-レンとβカロテンの吸収スペクトルを示す図
【図2】(a)βカロテン内包カ-ボンナノホ-ン、(b)カ-ボンナノホ-ンの吸収スペクトルを示す

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一重項酸素消去能:3.5×104[L/g/s]から3.5×107 [L/g/s]を有する中空ナノ炭素集合体。
【請求項2】
前記中空ナノ炭素集合体が、一重項酸素消去能:3.5×104から3.5×107 [L/g/s]を有するカ-ボンナノホ-ンであることを特徴とする請求項1記載の中空ナノ炭素集合体。
【請求項3】
前記カ-ボンナノホ-ンがカロテノイド色素を内包していることを特徴とする請求項2記載の中空ナノ集合体。
【請求項4】
前記中空ナノ炭素集合体が、一重項酸素消去能:2.3×106から10×106[L/g/s]を有するフラ-レンであることを特徴とする請求項1記載の中空ナノ炭素集合体。
【請求項5】
前記フラ-レンは、その炭素数がC76,C78,C80,C82,又はC90から選ばれる高次フラ-レンであることを特徴とする請求項4記載の中空ナノ炭素集合体。
【請求項6】
前記高次フラ-レンがCa,Sc,Fe,Sr,Y,Ba,La,Ce,Pr,Nd,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,又はLuから選ばれる金属内包フラ-レンであることを特徴とする請求項4又は5記載の中空ナノ炭素集合体。
【請求項7】
請求項1から6いずれか一項記載の中空ナノ炭素集合体からなる一重項酸素消去剤。
【請求項8】
請求項1から6いずれか一項記載の中空ナノ炭素集合体からなる皮膚老化防止剤。
【請求項9】
請求項1から6いずれか一項記載の中空ナノ炭素集合体からなる皮膚ガン抑制剤。
【請求項10】
請求項1から6いずれか一項記載の中空ナノ炭素集合体からなる退色防止剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−74766(P2008−74766A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255957(P2006−255957)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】