中空パッケージ
【課題】高い気密性を有する中空パッケージを実現する。
【解決手段】中空パッケージ(1)は,第一基板(10)と,第二基板(18)と,第一基板と第二基板との間に形成され第一基板と第二基板とに両端面が密着している樹脂からなるスペーサー(12)と,スペーサーの側壁面と第一基板と第二基板とに続いて密着している金属膜(14,16)と,を備え,第二基板とスペーサーとの間の一部に金属膜の一部が入り込んでいる。
【解決手段】中空パッケージ(1)は,第一基板(10)と,第二基板(18)と,第一基板と第二基板との間に形成され第一基板と第二基板とに両端面が密着している樹脂からなるスペーサー(12)と,スペーサーの側壁面と第一基板と第二基板とに続いて密着している金属膜(14,16)と,を備え,第二基板とスペーサーとの間の一部に金属膜の一部が入り込んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中空パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009−141036号公報には,樹脂フィルムからなる環状のスペーサーと樹脂フィルムからなる平板状のカバーとを積層し,表面を金属メッキで被覆することによって気密性のある中空パッケージを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−141036号公報
【特許文献2】特開2009−117481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし,特開2009−141036号公報に記載された方法によると,樹脂フィルムからなるスペーサーと樹脂フィルムからなるカバーとをラミネートする際に樹脂フィルム間に空隙が形成される恐れがある。そして,樹脂フィルム間に空隙が形成された場合には,金属メッキで被覆する際にメッキ液がパッケージ内部の中空空間に浸透することになる。また,スパッタ法によって得られる金属膜は湿式メッキ法で得られる金属膜よりも相当薄く,スパッタ法によって表面全体を金属膜で完全に被覆することは困難である。したがって,特開2009−141036号公報に記載された方法によると,高い気密性を有する中空パッケージを歩留まり良く製造することができないという問題がある。
【0005】
本発明は,高い気密性を有する中空パッケージを実現することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための中空パッケージは,第一基板と,第二基板と,前記第一基板と前記第二基板との間に形成され前記第一基板と前記第二基板とに両端面が密着している樹脂からなるスペーサーと,前記スペーサーの側壁面と前記第一基板と前記第二基板とに続いて密着している金属膜と,を備え,前記第二基板と前記スペーサーとの間の一部に前記金属膜の一部が入り込んでいる。
【0007】
本発明によると,第一基板と第二基板との間にスペーサーによって空間が形成される。この空間にはダイヤフラムなどの可動部を配置することができる。スペーサーの側壁面に密着する金属膜は,樹脂よりも気密性が高く,透湿性が低い。したがって本発明によると,樹脂からなるスペーサー単体で気密性を確保する場合に比べてパッケージの気密性を高めることができる。また,スペーサーの側壁面に密着する金属膜は,樹脂から発生するガスを遮断することができる。したがって本発明によると,樹脂から発生するガスによる腐食や汚染を防止することができる。さらに,金属膜の一部が第二基板とスペーサーとの間の一部に入り込んで挟まれているため,金属膜とスペーサーとの剥離を防止することができる。また,樹脂からなるスペーサーが第一基板と第二基板とに密着しているため,第二基板とスペーサーとの間の全域に金属膜が入り込んで挟まれる構成に比べて,第一基板と第二基板との結合強度を高く維持することができる。またスペーサーを金属で構成する場合,製造過程において,スペーサーに接する第二基板とスペーサーとの間に空隙が形成されやすいが,本発明によると,金属膜の下地が樹脂からなるスペーサーであるため,金属膜に接する第二基板と金属膜との間に空隙が形成されにくい。
【0008】
(2)上記目的を達成するための中空パッケージにおいて,前記金属膜の少なくとも一部は,前記第二基板と前記スペーサーとの間に環状に入り込み前記スペーサーの一方の側壁面の全体を覆っていてもよい。
金属膜でスペーサーの内側または外側の側壁面の全体を覆うことにより,真空封止が可能になる。
【0009】
(3)上記目的を達成するための中空パッケージにおいて,前記金属膜の少なくとも一部は,導線を構成してもよい。
金属膜で導線を構成することにより,第一基板と第二基板とを導線で接続することができる。
【0010】
(4)上記目的を達成するための中空パッケージにおいて,前記金属膜は,前記第一基板と前記スペーサーの側壁面と前記スペーサーの一方の端面とに直接結合している第一金属層と,前記第二基板に直接結合している第二金属層とを有し,前記第一金属層と前記第二金属層とは,前記第二基板と前記スペーサーとの間において直接結合していてもよい。
この構成を採用すると,第一基板にスペーサーと第一金属層とを積層し,第二基板に第二金属層を積層した後に,スペーサーの端面上に形成された第一金属層と第二基板上に形成された第二金属層とを固相拡散反応によって直接結合することが可能となる。
【0011】
(5)上記目的を達成するための中空パッケージにおいて,前記スペーサーの側壁面と一方の端面とは角を形成し,前記金属膜は前記スペーサーの角の少なくとも一部を覆っていてもよい。
この構成を採用すると,金属膜がスペーサーの角と第二基板とに挟まれることになるため,スペーサーと第二基板とを密着させる際に,スペーサーの角によって金属膜に対して局所的に強い応力を加えることが可能となり,その結果,スペーサーと金属膜との接合強度を高めることができる。また,スペーサーの角が第二基板に密着する部分においても,スペーサーの角に応力が集中するため,スペーサーと第二基板との接合強度を高めることができる。
【0012】
尚,請求項において「〜上に」というときは,技術的な阻害要因がない限りにおいて「上に中間物を介在させずに」と「〜上に中間物を介在させて」の両方を意味する。また,請求項に記載された動作の順序は,技術的な阻害要因がない限りにおいて記載順に限定されず,同時に実行されても良いし,記載順の逆順に実行されても良いし,連続した順序で実行されなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1Aは本発明の第一実施例にかかる平面図である。図1Bは本発明の第一実施例にかかる断面図である。図1Cは本発明の第一実施例にかかる平面図である。
【図2】本発明の第一実施例にかかる断面図である。
【図3】本発明の実施例にかかるグラフである。
【図4】本発明の実施例にかかる折れ線グラフである。
【図5】本発明の実施例にかかる部分断面図である。
【図6】図6Aは本発明の第二実施例にかかる平面図である。図6Bは本発明の第二実施例にかかる断面図である。図6Cは本発明の第二実施例にかかる平面図である。
【図7】図7Aは本発明の第三実施例にかかる平面図である。図7Bは本発明の第三実施例にかかる断面図である。図7Cは本発明の第三実施例にかかる平面図である。
【図8】本発明の他の実施例にかかる断面図である。
【図9】本発明の他の実施例にかかる断面図である。
【図10】本発明の他の実施例にかかる断面図である。
【図11】本発明の他の実施例にかかる断面図である。
【図12】本発明の他の実施例にかかる断面図である。
【図13】図13Aは本発明の他の実施例にかかる平面図である。図13Bは本発明の他の実施例にかかる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,本発明の実施例を添付図面を参照しながら説明する。尚,各図において対応する構成要素には同一の符号が付され,重複する説明は省略される。
1.第一実施例
図1Bに本発明の第一実施例による中空パッケージ1を示す。中空パッケージ1は,第一基板10と第二基板18とスペーサー12と第一金属層14と第二金属層16とを備えている。図1Aは中空パッケージ1から第二基板18を取り外した状態を示し,図1Cは取り外された第二基板18を示している。中空パッケージ1に収容されるトランスデューサー20に,ダイヤフラムや梁で構成される可動部がフォトリソグラフィ技術を用いて形成されている場合には,トランスデューサー20を樹脂封止することができない。また,ガスや湿気によるトランスデューサー20の腐食が問題となる場合には,トランスデューサー20は真空封止されなければならない。本実施例では,このようなトランスデューサー20を保護するための中空パッケージ1について説明する。
【0015】
スペーサー12は,環状であるため,トランスデューサー20を収容するための空間をパッケージの内部に形成する。スペーサー12は,トランスデューサー20を内側に収容するための十分な厚さを確保しつつ,応力を緩和するため,ポリイミド,BCB(ベンゾシクロブテン)等の樹脂から構成される。樹脂からなるスペーサー12の各端面は第一基板10と第二基板18とに接合されているため,第一基板10と第二基板18とはスペーサー12によって強固に結合される。
【0016】
第一金属層14,第二金属層16は,金(Au)からなり,界面が拡散接合によって強固に結合していることで,環状に連続した金膜を形成している。金属層14,16は,スペーサー12の内壁全面と第一基板10と第二基板18とに続いて密着し,一部が第二基板18とスペーサー12との間の一部に環状に入り込んでいる。金属層14がスペーサー12の内壁全面を覆っているため,スペーサー12の内側に配置されるトランスデューサー20を気密に保護することができる。具体的には,真空封止が可能になる程度の高気密性を有する中空パッケージ1を実現することができる。そして,樹脂からなるスペーサー12から発生するガスも,スペーサー12を透過する湿気も,第一金属層14によって遮断されるため,パッケージ内部のトランスデューサー20がガスや湿気によって腐食したり汚染されることを防止できる。
【0017】
また,樹脂と金との接合強度自体は低いため,第一金属層14の中央部(スペーサー12の内壁を横断している部分)はスペーサー12から剥離しやすい性質を持っている。しかし,第一金属層14の一端部は第一基板10に環状に接合され,第一金属層14の他端部は第二金属層16とともにスペーサー12と第二基板18との間に環状に入り込んでいるため,第一金属層14の中央部は構造的にスペーサー12から剥離しにくくなっている。
【0018】
図2に中空パッケージ1の製造方法を示す。
はじめに図2Aに示すように第一基板10a上にセンサーやアクチュエーターとなるトランスデューサー20を形成する。第一基板10aは,シリコンやガラスからなるウエハである。
【0019】
次に図2Bに示すように第一基板10a上にトランスデューサー20を囲むようにスペーサー12を環状に形成する。具体的には,ポリイミドやBCB等の感光性樹脂膜を第一基板10a上に形成した後に,感光性樹脂膜を光学的にパターニング(露光・現像)することによってスペーサー12が形成される。この段階でスペーサー12はプリキュアによって固化することになる。
【0020】
次に図2Cに示すように第一基板10aからスペーサー12の上端面の内周側縁部までの範囲にわたって金からなる第一金属層14を形成する。具体的には,フォトレジストマスクを用いて密着層となるチタン(Ti)をスパッタ法によって所定領域に形成し,その後,密着層の上に蒸着法またはスパッタ法を用いて金を堆積させることによって,第一金属層14が形成される。
【0021】
次に図2Dに示すように第二基板18a上の第一金属層14と対応する領域に金からなる第二金属層16を環状に形成する。具体的には,フォトレジストマスクを用いて密着層となるチタン(Ti)をスパッタ法によって所定領域に形成し,その後,密着層の上に蒸着法またはスパッタ法を用いて金を堆積させることによって,環状の第二金属層16が形成される。
【0022】
次に図2Eに示すように,スペーサー12の端面上に形成された第一金属層14の領域と第二基板18a上に形成された第二金属層16とを重ねてスペーサー12の端面を第二基板18aに図2E中の矢印の方向に押し当てるとともに加熱する。すると,第一金属層14と第二金属層16とが固相拡散接合によって接合されるとともに樹脂からなるスペーサー12が第二基板18aに接合されることによって,第一基板10aと第二基板18aとが強固に結合する。このとき,第二基板18aに形成されている第二金属層16をアライメントの基準マークとして利用できるため,第一基板10aと第二基板18aとを高い精度で位置合わせして結合することができる。
【0023】
図2Eに示すように第一基板10aと第二基板18aとを結合した後,第一基板10aと第二基板18aとをダイシングによって分割すると,図1に示す中空パッケージ1が完成する。
【0024】
一般にポリイミド等を用いる樹脂接合は250℃から350℃の温度範囲で行われることが知られている。図3は,第一基板10aと第二基板18aとを結合する際の,接合温度と接合強度の関係を調べた実験結果を示したグラフである。縦軸は,第一基板10aと第二基板18aとが引っ張り応力によって分裂する際にスペーサー12の端面に加わっている圧力を示している。この実験において,第一基板10aと第二基板18aを接合する際に加えた圧力は6〜11MPaであり,スペーサー12の材料としてはポリイミドを用い,実験前にプリキュアによって固化させている。実験結果から,320℃以上に加熱した場合に接合強度が顕著に高まることがわかる。プリキュアによって固化したスペーサー12をポストキュアによってガラス転移点近傍の十分高い温度に再加熱することにより,パターン幅を拡張してスペーサー12と第二基板18aとの接触面積を増大させて接合強度を高めることも可能である。一方,350℃を越える高温になると,第一金属層14の角部が切れやすくなる。そして,金同士を固相拡散結合するためには,280℃以上に加熱することが必要となる。したがって,第一基板10aと第二基板18aを接合する際に加える圧力を6〜11MPaとする場合には,320℃〜350℃程度に加熱することによって,第一金属層14と第二金属層16,スペーサー12と第二基板18aのそれぞれを強固に接合できることになる。
【0025】
図4は,第一基板10aと第二基板18aとを結合する際の,接合圧力と接合強度とスペーサー12の幅の関係を調べた実験結果を示したグラフである。この実験において,第一基板10aと第二基板18aを接合する際の温度は300℃で一定であり,スペーサー12の材料としてはポリイミドを用い,実験前にプリキュアによって固化させている。実験結果から,接合圧力を高めるほど,接合強度が高まり,スペーサー12の幅が拡張することがわかる。
【0026】
図5に示すように第一金属層14は,スペーサー12の端面とスペーサー12の側壁面からなる角の一部を覆っている。さらに,第一金属層14はスペーサー12の端面の一部を覆っている。したがって,接合時には,スペーサー12の端面の角近傍に形成されている第一金属層14に応力が集中することになる。また,図5には示されていないスペーサー12の角の残部においても,接合時に応力が集中するため,第二基板18aに対する樹脂接合が強固になる。このような効果は,接合前において,スペーサー12の端面中央部が平坦であったり,若干盛り上がっていたりしても得ることができる。図5に示すようにスペーサー12の端面は,中央部が凹み,周辺部が盛り上がった形状にすることも可能である。このような場合には,第一基板10aと第二基板18aとを接合する工程において,スペーサー12の角に応力をさらに集中させることができる。このため,相対的に低い接合圧力と接合温度で第一金属層14と第二金属層16とを固相拡散接合することが可能になる。
【0027】
以上述べたことから,250℃〜350℃の範囲で接合温度を設定し,6〜11MPaの範囲で接合圧力を設定することにより,第一基板10aと第二基板18aとを強固に結合できることがわかる。好ましくは320〜350℃の範囲で強固に結合できることがわかる。
【0028】
ところで,第一基板10aと第二基板18aとを結合するとき,金からなる第一金属層14と金からなる第二金属層16とが空隙無く拡散接合されることによって気密性を確保できるのであるが,一般に,固相拡散接合においては接合面の平坦度を非常に高くする必要がある。しかし,本実施例によると,第一金属層14の下地となるスペーサー12は金属に比べて柔軟な樹脂からなるため,スペーサー12上に形成された状態での第一金属層14の表面平坦度はそれほど高くなくとも良い。すなわち,仮にスペーサー12自体を第一基板10a上において金属で形成するとともに,第二基板18a上に形成された第二金属層16と接合する場合,歩留まりを上げるためには,接合前にスペーサー12の端面の平坦度を十分に高める工程が必要になる。しかし,本実施例によると,スペーサー12自体は金属に比べて柔軟性の高い樹脂であるため,そのような平坦化工程を必要としない。また,仮に第一金属層14または第二金属層16の表面にパーティクルが付着したとしても,パーティクルの直径が100nm程度までであれば,第一金属層14の下地が樹脂であるため,パーティクルの近傍以外は拡散接合によって結合し,高い気密性を確保できることも確認されている。また,スペーサー12を第一基板10a上において金属で形成する場合に比べると,スペーサー12を樹脂で形成する場合には,第一基板10aと第二基板18aとの線膨張係数の差から生ずる応力を緩和することができ,また,基板材料の選択の幅を広げることができる。
【0029】
2.第二実施例
図6Bに本発明の第二実施例による中空パッケージ2を示す。図6Aは中空パッケージ2から第二基板18を取り外した状態を示し,図6Cは取り外された第二基板18を示している。本実施例において,気密性を確保するための第一金属層24と第二金属層26aはスペーサー12の外側に形成され,スペーサー12の内側には導線となる金属層25,26bが形成される。詳細は以下に述べるとおりである。
【0030】
第一金属層24および第二金属層26aは,金からなり,界面が拡散接合によって強固に結合することで,環状に連続した金膜を形成している。金属層24,26aは,スペーサー12の外壁全面と第一基板10と第二基板18とに続いて密着し,一部が第二基板18とスペーサー12との間の一部に環状に入り込んでいる。金属層24,26aがスペーサー12の外壁全面を覆っているため,第一実施例と同様に,スペーサー12の内側に配置されるトランスデューサー20を気密に保護することができる。
【0031】
第一金属層25および第二金属層26bは,金(Au)からなり,界面が拡散接合によって強固に結合することで,スペーサー12の内壁を横断する導線を形成している。スペーサー12の内壁を横断する第一金属層25は,スペーサー12の内壁面と第一基板10と第二基板18とに密着し,一部が金属層26bとともに第二基板18とスペーサー12との間の一部に入り込んでいる。このため,第二金属層26bのスペーサー12の内壁を横断している部分は構造的にスペーサー12から剥離しにくくなっている。
【0032】
貫通電極21は第二基板18を貫通し,一端部が第二金属層26bに接続されている。このため,第一基板10上に形成されて中空パッケージ2に収容されたトランスデューサー20と電気的に接続するための外部導線を,第二基板10の外面に取り付けることができる。したがって,中空パッケージ2は,実装形態の自由度が高く,例えば複数のパッケージをスタックしてデバイスの実装密度を高めることも可能である。
【0033】
中空パッケージ2の製造方法は,それぞれの金属層のパターンが異なる点と,第二基板18の材料として貫通電極21が予め形成されているウエハを用いる点を除けば,第一実施例と同様であるため,説明を省略する。なお,第一基板10と第二基板18とを結合した後に,貫通電極21を第二基板18に形成することも可能である。
【0034】
3.第三実施例
図7Bに本発明の第三実施例による中空パッケージ3を示す。図7Aは中空パッケージ3から第二基板18を取り外した状態を示し,図7Cは取り外された第二基板18を示している。本実施例においては,第二実施例と同様にスペーサー12の内側には導線となる金属層25,26bが形成されるが,スペーサー12の外側の金属膜は形成されない。金属膜でスペーサー12の内壁の全面または外壁の全面を覆うと,スペーサー12からの脱ガスが不十分になってスペーサー12が安定した樹脂にならない場合がある。このような場合には,本実施例のようにスペーサー12の側壁面には金属層25,26bからなる導線のみを形成してもよい。導線の間からスペーサー12の側壁面を露出させることにより脱ガスを十分行うことができるため,スペーサー12を安定した樹脂で構成することができる。そして,配線を多数配列したり,配線幅を広くすることによって,スペーサー12からの脱ガス性を確保しつつ,金属膜からなる配線による気密封止効果を得ることもできる。なお,気密封止効果を奏するためにダミー配線を形成しても良い。また,配線はスペーサー12の内壁面と外壁面の両方に形成してもよいし,外壁面だけに形成しても良い。
【0035】
4.他の実施例
本発明の技術的範囲は,上述した実施例に限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。そして,上記実施例で示した材質や寸法や金属膜のパターンや成膜方法やパターン形成方法はあくまで例示であるし,当業者であれば自明である工程の追加や削除や工程順序の入れ替えについては説明が省略されている。
【0036】
例えば,金属膜となる第一金属層,第二金属層の材料としては金以外に,金を含む合金,銅(Cu),アルミニウム(Al)を用いることができる。第一基板上に形成される第一金属層と第二基板上に形成される第二金属層の両方にアルミニウムを用いても良いし,一方に金,他方にアルミニウムを用いても良い。アルミニウムと金は,ポリイミドやBCBからなるスペーサー12を第二基板18に接合するのに適した温度と圧力によって固相拡散接合することができる。
【0037】
また例えば,図8に示すようにトランスデューサー20を第二基板18a上に形成してもよい。トランスデューサー20が形成された第一基板10aに樹脂を塗布してスペーサー12を形成しようとすると樹脂の膜厚にムラが出やすいが,第一基板10aにトランスデューサー20が形成されていない場合には,このようなムラが生じにくくなり,スペーサー12の高さを安定させやすい。
【0038】
また例えば,図9に示すように第二基板18aを微細加工してトランスデューサー20を第二基板18aの一部に形成しても良い。またトランスデューサー20を気密に収容するために2枚の第一基板10a,10bを用いても良い。この場合,第一基板10a,10bのそれぞれにスペーサー12a,12bと第一金属層14a,14bが形成され,第二基板18aの表裏両側に,第二金属層16a,16bが形成されることになる。
【0039】
また,第一金属層と第二金属層とは,スペーサー12の端面上でそれらの重なる部分が少なくとも一部存在すれば,お互いに重ならない部分があっても同様の効果を得ることができる。例えば,図10に示す中空パッケージ4のように第一金属層14のスペーサー12の端面上の領域の一部にのみ第二金属層16が重なっていても良い。
【0040】
また例えば,図11に示す中空パッケージ5のように金属層14はスペーサー12の内側の側壁面に密着する領域が存在し,スペーサー12の外側の側壁面に密着する領域が存在していなくとも良い。
また例えば,図12に示す中空パッケージ6のようにスペーサー12の内側と外側の側壁面の両方の全体を第一金属層14によって覆っても良い。これによりパッケージの気密性がさらに高まる。なお,スペーサー12の内側と外側の側壁面の両方に第一金属層14を密着させる場合,スペーサー12の端面の一部が第二基板18と直接接合するようにスペーサー12の端面上において第一金属層14を切り欠くことが望ましい。その場合は,スペーサー12が第二基板18に直接接合されて接合強度が高まるように,第二金属層16を第一金属層14の切り欠きに合わせて切り欠くことがさらに望ましい。さらに,スペーサー12の角が第二基板18に直接接合されるように,第一金属層14,第二金属層16の切り欠きからスペーサー12の角を露出させても良い。これにより,既に述べたように,スペーサー12の角には応力が集中するため,さらに接合強度が高まる。
【0041】
また例えば,図13に示す中空パッケージ7のスペーサー12a,12b,12c,12dのように,スペーサーを複数に分割しても良い。この場合,中空パッケージ5の内部にスペーサー12から放出されるガスが滞留されることを防止できる。なお,スペーサー12a,12b,12c,12dの周囲の全体または一部を覆うように第一金属層14a,14b,14c,14dを配置しても良い。これにより,樹脂が光等によって劣化することを防ぐことができる。
また例えば,第二実施例の第二金属層26bを省略し,配線を構成する第一金属層25と貫通電極21とを直接接合しても良い。貫通電極21の材料は,金(Au)が望ましいが,金を主成分とする合金や複合材料でも良い。
【0042】
また例えば,第一基板と第二基板とスペーサーの側壁面とに続く金属膜を第一金属層のみで構成しても良い。例えば,第一実施例の第二金属層16を省略しても良い。この場合,第一金属層14と第二基板18とは密着するものの接合されない状態となる。しかし,スペーサー12と第二基板18との間に第一金属層14が入り込んでいるため,パッケージの気密性を確保することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…中空パッケージ,2…中空パッケージ,10…第一基板,12…スペーサー,14…第一金属層,16…第二金属層,18…第二基板,20…トランスデューサー,21…貫通電極,24…第一金属層,25…第一金属層,26a…第二金属層,26b…第二金属層
【技術分野】
【0001】
本発明は中空パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009−141036号公報には,樹脂フィルムからなる環状のスペーサーと樹脂フィルムからなる平板状のカバーとを積層し,表面を金属メッキで被覆することによって気密性のある中空パッケージを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−141036号公報
【特許文献2】特開2009−117481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし,特開2009−141036号公報に記載された方法によると,樹脂フィルムからなるスペーサーと樹脂フィルムからなるカバーとをラミネートする際に樹脂フィルム間に空隙が形成される恐れがある。そして,樹脂フィルム間に空隙が形成された場合には,金属メッキで被覆する際にメッキ液がパッケージ内部の中空空間に浸透することになる。また,スパッタ法によって得られる金属膜は湿式メッキ法で得られる金属膜よりも相当薄く,スパッタ法によって表面全体を金属膜で完全に被覆することは困難である。したがって,特開2009−141036号公報に記載された方法によると,高い気密性を有する中空パッケージを歩留まり良く製造することができないという問題がある。
【0005】
本発明は,高い気密性を有する中空パッケージを実現することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための中空パッケージは,第一基板と,第二基板と,前記第一基板と前記第二基板との間に形成され前記第一基板と前記第二基板とに両端面が密着している樹脂からなるスペーサーと,前記スペーサーの側壁面と前記第一基板と前記第二基板とに続いて密着している金属膜と,を備え,前記第二基板と前記スペーサーとの間の一部に前記金属膜の一部が入り込んでいる。
【0007】
本発明によると,第一基板と第二基板との間にスペーサーによって空間が形成される。この空間にはダイヤフラムなどの可動部を配置することができる。スペーサーの側壁面に密着する金属膜は,樹脂よりも気密性が高く,透湿性が低い。したがって本発明によると,樹脂からなるスペーサー単体で気密性を確保する場合に比べてパッケージの気密性を高めることができる。また,スペーサーの側壁面に密着する金属膜は,樹脂から発生するガスを遮断することができる。したがって本発明によると,樹脂から発生するガスによる腐食や汚染を防止することができる。さらに,金属膜の一部が第二基板とスペーサーとの間の一部に入り込んで挟まれているため,金属膜とスペーサーとの剥離を防止することができる。また,樹脂からなるスペーサーが第一基板と第二基板とに密着しているため,第二基板とスペーサーとの間の全域に金属膜が入り込んで挟まれる構成に比べて,第一基板と第二基板との結合強度を高く維持することができる。またスペーサーを金属で構成する場合,製造過程において,スペーサーに接する第二基板とスペーサーとの間に空隙が形成されやすいが,本発明によると,金属膜の下地が樹脂からなるスペーサーであるため,金属膜に接する第二基板と金属膜との間に空隙が形成されにくい。
【0008】
(2)上記目的を達成するための中空パッケージにおいて,前記金属膜の少なくとも一部は,前記第二基板と前記スペーサーとの間に環状に入り込み前記スペーサーの一方の側壁面の全体を覆っていてもよい。
金属膜でスペーサーの内側または外側の側壁面の全体を覆うことにより,真空封止が可能になる。
【0009】
(3)上記目的を達成するための中空パッケージにおいて,前記金属膜の少なくとも一部は,導線を構成してもよい。
金属膜で導線を構成することにより,第一基板と第二基板とを導線で接続することができる。
【0010】
(4)上記目的を達成するための中空パッケージにおいて,前記金属膜は,前記第一基板と前記スペーサーの側壁面と前記スペーサーの一方の端面とに直接結合している第一金属層と,前記第二基板に直接結合している第二金属層とを有し,前記第一金属層と前記第二金属層とは,前記第二基板と前記スペーサーとの間において直接結合していてもよい。
この構成を採用すると,第一基板にスペーサーと第一金属層とを積層し,第二基板に第二金属層を積層した後に,スペーサーの端面上に形成された第一金属層と第二基板上に形成された第二金属層とを固相拡散反応によって直接結合することが可能となる。
【0011】
(5)上記目的を達成するための中空パッケージにおいて,前記スペーサーの側壁面と一方の端面とは角を形成し,前記金属膜は前記スペーサーの角の少なくとも一部を覆っていてもよい。
この構成を採用すると,金属膜がスペーサーの角と第二基板とに挟まれることになるため,スペーサーと第二基板とを密着させる際に,スペーサーの角によって金属膜に対して局所的に強い応力を加えることが可能となり,その結果,スペーサーと金属膜との接合強度を高めることができる。また,スペーサーの角が第二基板に密着する部分においても,スペーサーの角に応力が集中するため,スペーサーと第二基板との接合強度を高めることができる。
【0012】
尚,請求項において「〜上に」というときは,技術的な阻害要因がない限りにおいて「上に中間物を介在させずに」と「〜上に中間物を介在させて」の両方を意味する。また,請求項に記載された動作の順序は,技術的な阻害要因がない限りにおいて記載順に限定されず,同時に実行されても良いし,記載順の逆順に実行されても良いし,連続した順序で実行されなくても良い。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1Aは本発明の第一実施例にかかる平面図である。図1Bは本発明の第一実施例にかかる断面図である。図1Cは本発明の第一実施例にかかる平面図である。
【図2】本発明の第一実施例にかかる断面図である。
【図3】本発明の実施例にかかるグラフである。
【図4】本発明の実施例にかかる折れ線グラフである。
【図5】本発明の実施例にかかる部分断面図である。
【図6】図6Aは本発明の第二実施例にかかる平面図である。図6Bは本発明の第二実施例にかかる断面図である。図6Cは本発明の第二実施例にかかる平面図である。
【図7】図7Aは本発明の第三実施例にかかる平面図である。図7Bは本発明の第三実施例にかかる断面図である。図7Cは本発明の第三実施例にかかる平面図である。
【図8】本発明の他の実施例にかかる断面図である。
【図9】本発明の他の実施例にかかる断面図である。
【図10】本発明の他の実施例にかかる断面図である。
【図11】本発明の他の実施例にかかる断面図である。
【図12】本発明の他の実施例にかかる断面図である。
【図13】図13Aは本発明の他の実施例にかかる平面図である。図13Bは本発明の他の実施例にかかる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下,本発明の実施例を添付図面を参照しながら説明する。尚,各図において対応する構成要素には同一の符号が付され,重複する説明は省略される。
1.第一実施例
図1Bに本発明の第一実施例による中空パッケージ1を示す。中空パッケージ1は,第一基板10と第二基板18とスペーサー12と第一金属層14と第二金属層16とを備えている。図1Aは中空パッケージ1から第二基板18を取り外した状態を示し,図1Cは取り外された第二基板18を示している。中空パッケージ1に収容されるトランスデューサー20に,ダイヤフラムや梁で構成される可動部がフォトリソグラフィ技術を用いて形成されている場合には,トランスデューサー20を樹脂封止することができない。また,ガスや湿気によるトランスデューサー20の腐食が問題となる場合には,トランスデューサー20は真空封止されなければならない。本実施例では,このようなトランスデューサー20を保護するための中空パッケージ1について説明する。
【0015】
スペーサー12は,環状であるため,トランスデューサー20を収容するための空間をパッケージの内部に形成する。スペーサー12は,トランスデューサー20を内側に収容するための十分な厚さを確保しつつ,応力を緩和するため,ポリイミド,BCB(ベンゾシクロブテン)等の樹脂から構成される。樹脂からなるスペーサー12の各端面は第一基板10と第二基板18とに接合されているため,第一基板10と第二基板18とはスペーサー12によって強固に結合される。
【0016】
第一金属層14,第二金属層16は,金(Au)からなり,界面が拡散接合によって強固に結合していることで,環状に連続した金膜を形成している。金属層14,16は,スペーサー12の内壁全面と第一基板10と第二基板18とに続いて密着し,一部が第二基板18とスペーサー12との間の一部に環状に入り込んでいる。金属層14がスペーサー12の内壁全面を覆っているため,スペーサー12の内側に配置されるトランスデューサー20を気密に保護することができる。具体的には,真空封止が可能になる程度の高気密性を有する中空パッケージ1を実現することができる。そして,樹脂からなるスペーサー12から発生するガスも,スペーサー12を透過する湿気も,第一金属層14によって遮断されるため,パッケージ内部のトランスデューサー20がガスや湿気によって腐食したり汚染されることを防止できる。
【0017】
また,樹脂と金との接合強度自体は低いため,第一金属層14の中央部(スペーサー12の内壁を横断している部分)はスペーサー12から剥離しやすい性質を持っている。しかし,第一金属層14の一端部は第一基板10に環状に接合され,第一金属層14の他端部は第二金属層16とともにスペーサー12と第二基板18との間に環状に入り込んでいるため,第一金属層14の中央部は構造的にスペーサー12から剥離しにくくなっている。
【0018】
図2に中空パッケージ1の製造方法を示す。
はじめに図2Aに示すように第一基板10a上にセンサーやアクチュエーターとなるトランスデューサー20を形成する。第一基板10aは,シリコンやガラスからなるウエハである。
【0019】
次に図2Bに示すように第一基板10a上にトランスデューサー20を囲むようにスペーサー12を環状に形成する。具体的には,ポリイミドやBCB等の感光性樹脂膜を第一基板10a上に形成した後に,感光性樹脂膜を光学的にパターニング(露光・現像)することによってスペーサー12が形成される。この段階でスペーサー12はプリキュアによって固化することになる。
【0020】
次に図2Cに示すように第一基板10aからスペーサー12の上端面の内周側縁部までの範囲にわたって金からなる第一金属層14を形成する。具体的には,フォトレジストマスクを用いて密着層となるチタン(Ti)をスパッタ法によって所定領域に形成し,その後,密着層の上に蒸着法またはスパッタ法を用いて金を堆積させることによって,第一金属層14が形成される。
【0021】
次に図2Dに示すように第二基板18a上の第一金属層14と対応する領域に金からなる第二金属層16を環状に形成する。具体的には,フォトレジストマスクを用いて密着層となるチタン(Ti)をスパッタ法によって所定領域に形成し,その後,密着層の上に蒸着法またはスパッタ法を用いて金を堆積させることによって,環状の第二金属層16が形成される。
【0022】
次に図2Eに示すように,スペーサー12の端面上に形成された第一金属層14の領域と第二基板18a上に形成された第二金属層16とを重ねてスペーサー12の端面を第二基板18aに図2E中の矢印の方向に押し当てるとともに加熱する。すると,第一金属層14と第二金属層16とが固相拡散接合によって接合されるとともに樹脂からなるスペーサー12が第二基板18aに接合されることによって,第一基板10aと第二基板18aとが強固に結合する。このとき,第二基板18aに形成されている第二金属層16をアライメントの基準マークとして利用できるため,第一基板10aと第二基板18aとを高い精度で位置合わせして結合することができる。
【0023】
図2Eに示すように第一基板10aと第二基板18aとを結合した後,第一基板10aと第二基板18aとをダイシングによって分割すると,図1に示す中空パッケージ1が完成する。
【0024】
一般にポリイミド等を用いる樹脂接合は250℃から350℃の温度範囲で行われることが知られている。図3は,第一基板10aと第二基板18aとを結合する際の,接合温度と接合強度の関係を調べた実験結果を示したグラフである。縦軸は,第一基板10aと第二基板18aとが引っ張り応力によって分裂する際にスペーサー12の端面に加わっている圧力を示している。この実験において,第一基板10aと第二基板18aを接合する際に加えた圧力は6〜11MPaであり,スペーサー12の材料としてはポリイミドを用い,実験前にプリキュアによって固化させている。実験結果から,320℃以上に加熱した場合に接合強度が顕著に高まることがわかる。プリキュアによって固化したスペーサー12をポストキュアによってガラス転移点近傍の十分高い温度に再加熱することにより,パターン幅を拡張してスペーサー12と第二基板18aとの接触面積を増大させて接合強度を高めることも可能である。一方,350℃を越える高温になると,第一金属層14の角部が切れやすくなる。そして,金同士を固相拡散結合するためには,280℃以上に加熱することが必要となる。したがって,第一基板10aと第二基板18aを接合する際に加える圧力を6〜11MPaとする場合には,320℃〜350℃程度に加熱することによって,第一金属層14と第二金属層16,スペーサー12と第二基板18aのそれぞれを強固に接合できることになる。
【0025】
図4は,第一基板10aと第二基板18aとを結合する際の,接合圧力と接合強度とスペーサー12の幅の関係を調べた実験結果を示したグラフである。この実験において,第一基板10aと第二基板18aを接合する際の温度は300℃で一定であり,スペーサー12の材料としてはポリイミドを用い,実験前にプリキュアによって固化させている。実験結果から,接合圧力を高めるほど,接合強度が高まり,スペーサー12の幅が拡張することがわかる。
【0026】
図5に示すように第一金属層14は,スペーサー12の端面とスペーサー12の側壁面からなる角の一部を覆っている。さらに,第一金属層14はスペーサー12の端面の一部を覆っている。したがって,接合時には,スペーサー12の端面の角近傍に形成されている第一金属層14に応力が集中することになる。また,図5には示されていないスペーサー12の角の残部においても,接合時に応力が集中するため,第二基板18aに対する樹脂接合が強固になる。このような効果は,接合前において,スペーサー12の端面中央部が平坦であったり,若干盛り上がっていたりしても得ることができる。図5に示すようにスペーサー12の端面は,中央部が凹み,周辺部が盛り上がった形状にすることも可能である。このような場合には,第一基板10aと第二基板18aとを接合する工程において,スペーサー12の角に応力をさらに集中させることができる。このため,相対的に低い接合圧力と接合温度で第一金属層14と第二金属層16とを固相拡散接合することが可能になる。
【0027】
以上述べたことから,250℃〜350℃の範囲で接合温度を設定し,6〜11MPaの範囲で接合圧力を設定することにより,第一基板10aと第二基板18aとを強固に結合できることがわかる。好ましくは320〜350℃の範囲で強固に結合できることがわかる。
【0028】
ところで,第一基板10aと第二基板18aとを結合するとき,金からなる第一金属層14と金からなる第二金属層16とが空隙無く拡散接合されることによって気密性を確保できるのであるが,一般に,固相拡散接合においては接合面の平坦度を非常に高くする必要がある。しかし,本実施例によると,第一金属層14の下地となるスペーサー12は金属に比べて柔軟な樹脂からなるため,スペーサー12上に形成された状態での第一金属層14の表面平坦度はそれほど高くなくとも良い。すなわち,仮にスペーサー12自体を第一基板10a上において金属で形成するとともに,第二基板18a上に形成された第二金属層16と接合する場合,歩留まりを上げるためには,接合前にスペーサー12の端面の平坦度を十分に高める工程が必要になる。しかし,本実施例によると,スペーサー12自体は金属に比べて柔軟性の高い樹脂であるため,そのような平坦化工程を必要としない。また,仮に第一金属層14または第二金属層16の表面にパーティクルが付着したとしても,パーティクルの直径が100nm程度までであれば,第一金属層14の下地が樹脂であるため,パーティクルの近傍以外は拡散接合によって結合し,高い気密性を確保できることも確認されている。また,スペーサー12を第一基板10a上において金属で形成する場合に比べると,スペーサー12を樹脂で形成する場合には,第一基板10aと第二基板18aとの線膨張係数の差から生ずる応力を緩和することができ,また,基板材料の選択の幅を広げることができる。
【0029】
2.第二実施例
図6Bに本発明の第二実施例による中空パッケージ2を示す。図6Aは中空パッケージ2から第二基板18を取り外した状態を示し,図6Cは取り外された第二基板18を示している。本実施例において,気密性を確保するための第一金属層24と第二金属層26aはスペーサー12の外側に形成され,スペーサー12の内側には導線となる金属層25,26bが形成される。詳細は以下に述べるとおりである。
【0030】
第一金属層24および第二金属層26aは,金からなり,界面が拡散接合によって強固に結合することで,環状に連続した金膜を形成している。金属層24,26aは,スペーサー12の外壁全面と第一基板10と第二基板18とに続いて密着し,一部が第二基板18とスペーサー12との間の一部に環状に入り込んでいる。金属層24,26aがスペーサー12の外壁全面を覆っているため,第一実施例と同様に,スペーサー12の内側に配置されるトランスデューサー20を気密に保護することができる。
【0031】
第一金属層25および第二金属層26bは,金(Au)からなり,界面が拡散接合によって強固に結合することで,スペーサー12の内壁を横断する導線を形成している。スペーサー12の内壁を横断する第一金属層25は,スペーサー12の内壁面と第一基板10と第二基板18とに密着し,一部が金属層26bとともに第二基板18とスペーサー12との間の一部に入り込んでいる。このため,第二金属層26bのスペーサー12の内壁を横断している部分は構造的にスペーサー12から剥離しにくくなっている。
【0032】
貫通電極21は第二基板18を貫通し,一端部が第二金属層26bに接続されている。このため,第一基板10上に形成されて中空パッケージ2に収容されたトランスデューサー20と電気的に接続するための外部導線を,第二基板10の外面に取り付けることができる。したがって,中空パッケージ2は,実装形態の自由度が高く,例えば複数のパッケージをスタックしてデバイスの実装密度を高めることも可能である。
【0033】
中空パッケージ2の製造方法は,それぞれの金属層のパターンが異なる点と,第二基板18の材料として貫通電極21が予め形成されているウエハを用いる点を除けば,第一実施例と同様であるため,説明を省略する。なお,第一基板10と第二基板18とを結合した後に,貫通電極21を第二基板18に形成することも可能である。
【0034】
3.第三実施例
図7Bに本発明の第三実施例による中空パッケージ3を示す。図7Aは中空パッケージ3から第二基板18を取り外した状態を示し,図7Cは取り外された第二基板18を示している。本実施例においては,第二実施例と同様にスペーサー12の内側には導線となる金属層25,26bが形成されるが,スペーサー12の外側の金属膜は形成されない。金属膜でスペーサー12の内壁の全面または外壁の全面を覆うと,スペーサー12からの脱ガスが不十分になってスペーサー12が安定した樹脂にならない場合がある。このような場合には,本実施例のようにスペーサー12の側壁面には金属層25,26bからなる導線のみを形成してもよい。導線の間からスペーサー12の側壁面を露出させることにより脱ガスを十分行うことができるため,スペーサー12を安定した樹脂で構成することができる。そして,配線を多数配列したり,配線幅を広くすることによって,スペーサー12からの脱ガス性を確保しつつ,金属膜からなる配線による気密封止効果を得ることもできる。なお,気密封止効果を奏するためにダミー配線を形成しても良い。また,配線はスペーサー12の内壁面と外壁面の両方に形成してもよいし,外壁面だけに形成しても良い。
【0035】
4.他の実施例
本発明の技術的範囲は,上述した実施例に限定されるものではなく,本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。そして,上記実施例で示した材質や寸法や金属膜のパターンや成膜方法やパターン形成方法はあくまで例示であるし,当業者であれば自明である工程の追加や削除や工程順序の入れ替えについては説明が省略されている。
【0036】
例えば,金属膜となる第一金属層,第二金属層の材料としては金以外に,金を含む合金,銅(Cu),アルミニウム(Al)を用いることができる。第一基板上に形成される第一金属層と第二基板上に形成される第二金属層の両方にアルミニウムを用いても良いし,一方に金,他方にアルミニウムを用いても良い。アルミニウムと金は,ポリイミドやBCBからなるスペーサー12を第二基板18に接合するのに適した温度と圧力によって固相拡散接合することができる。
【0037】
また例えば,図8に示すようにトランスデューサー20を第二基板18a上に形成してもよい。トランスデューサー20が形成された第一基板10aに樹脂を塗布してスペーサー12を形成しようとすると樹脂の膜厚にムラが出やすいが,第一基板10aにトランスデューサー20が形成されていない場合には,このようなムラが生じにくくなり,スペーサー12の高さを安定させやすい。
【0038】
また例えば,図9に示すように第二基板18aを微細加工してトランスデューサー20を第二基板18aの一部に形成しても良い。またトランスデューサー20を気密に収容するために2枚の第一基板10a,10bを用いても良い。この場合,第一基板10a,10bのそれぞれにスペーサー12a,12bと第一金属層14a,14bが形成され,第二基板18aの表裏両側に,第二金属層16a,16bが形成されることになる。
【0039】
また,第一金属層と第二金属層とは,スペーサー12の端面上でそれらの重なる部分が少なくとも一部存在すれば,お互いに重ならない部分があっても同様の効果を得ることができる。例えば,図10に示す中空パッケージ4のように第一金属層14のスペーサー12の端面上の領域の一部にのみ第二金属層16が重なっていても良い。
【0040】
また例えば,図11に示す中空パッケージ5のように金属層14はスペーサー12の内側の側壁面に密着する領域が存在し,スペーサー12の外側の側壁面に密着する領域が存在していなくとも良い。
また例えば,図12に示す中空パッケージ6のようにスペーサー12の内側と外側の側壁面の両方の全体を第一金属層14によって覆っても良い。これによりパッケージの気密性がさらに高まる。なお,スペーサー12の内側と外側の側壁面の両方に第一金属層14を密着させる場合,スペーサー12の端面の一部が第二基板18と直接接合するようにスペーサー12の端面上において第一金属層14を切り欠くことが望ましい。その場合は,スペーサー12が第二基板18に直接接合されて接合強度が高まるように,第二金属層16を第一金属層14の切り欠きに合わせて切り欠くことがさらに望ましい。さらに,スペーサー12の角が第二基板18に直接接合されるように,第一金属層14,第二金属層16の切り欠きからスペーサー12の角を露出させても良い。これにより,既に述べたように,スペーサー12の角には応力が集中するため,さらに接合強度が高まる。
【0041】
また例えば,図13に示す中空パッケージ7のスペーサー12a,12b,12c,12dのように,スペーサーを複数に分割しても良い。この場合,中空パッケージ5の内部にスペーサー12から放出されるガスが滞留されることを防止できる。なお,スペーサー12a,12b,12c,12dの周囲の全体または一部を覆うように第一金属層14a,14b,14c,14dを配置しても良い。これにより,樹脂が光等によって劣化することを防ぐことができる。
また例えば,第二実施例の第二金属層26bを省略し,配線を構成する第一金属層25と貫通電極21とを直接接合しても良い。貫通電極21の材料は,金(Au)が望ましいが,金を主成分とする合金や複合材料でも良い。
【0042】
また例えば,第一基板と第二基板とスペーサーの側壁面とに続く金属膜を第一金属層のみで構成しても良い。例えば,第一実施例の第二金属層16を省略しても良い。この場合,第一金属層14と第二基板18とは密着するものの接合されない状態となる。しかし,スペーサー12と第二基板18との間に第一金属層14が入り込んでいるため,パッケージの気密性を確保することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…中空パッケージ,2…中空パッケージ,10…第一基板,12…スペーサー,14…第一金属層,16…第二金属層,18…第二基板,20…トランスデューサー,21…貫通電極,24…第一金属層,25…第一金属層,26a…第二金属層,26b…第二金属層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板と,
第二基板と,
前記第一基板と前記第二基板との間に形成され前記第一基板と前記第二基板とに両端面が密着している樹脂からなるスペーサーと,
前記スペーサーの側壁面と前記第一基板と前記第二基板とに続いて密着している金属膜と,
を備え,
前記第二基板と前記スペーサーとの間の一部に前記金属膜の一部が入り込んでいる,
中空パッケージ。
【請求項2】
前記金属膜の少なくとも一部は,前記第二基板と前記スペーサーとの間に環状に入り込み前記スペーサーの一方の側壁面の全体を覆っている,
請求項1に記載の中空パッケージ。
【請求項3】
前記金属膜の少なくとも一部は,導線を構成している,
請求項1または2に記載の中空パッケージ。
【請求項4】
前記金属膜は,前記第一基板と前記スペーサーの側壁面と前記スペーサーの一方の端面とに直接結合している第一金属層と,前記第二基板に直接結合している第二金属層とを有し,
前記第一金属層と前記第二金属層とは,前記第二基板と前記スペーサーとの間において直接結合している,
請求項1から3のいずれか一項に記載の中空パッケージ。
【請求項5】
前記スペーサーの側壁面と一方の端面とは角を形成し,
前記金属膜は前記スペーサーの角の少なくとも一部を覆っている,
請求項1から4のいずれか一項に記載の中空パッケージ。
【請求項1】
第一基板と,
第二基板と,
前記第一基板と前記第二基板との間に形成され前記第一基板と前記第二基板とに両端面が密着している樹脂からなるスペーサーと,
前記スペーサーの側壁面と前記第一基板と前記第二基板とに続いて密着している金属膜と,
を備え,
前記第二基板と前記スペーサーとの間の一部に前記金属膜の一部が入り込んでいる,
中空パッケージ。
【請求項2】
前記金属膜の少なくとも一部は,前記第二基板と前記スペーサーとの間に環状に入り込み前記スペーサーの一方の側壁面の全体を覆っている,
請求項1に記載の中空パッケージ。
【請求項3】
前記金属膜の少なくとも一部は,導線を構成している,
請求項1または2に記載の中空パッケージ。
【請求項4】
前記金属膜は,前記第一基板と前記スペーサーの側壁面と前記スペーサーの一方の端面とに直接結合している第一金属層と,前記第二基板に直接結合している第二金属層とを有し,
前記第一金属層と前記第二金属層とは,前記第二基板と前記スペーサーとの間において直接結合している,
請求項1から3のいずれか一項に記載の中空パッケージ。
【請求項5】
前記スペーサーの側壁面と一方の端面とは角を形成し,
前記金属膜は前記スペーサーの角の少なくとも一部を覆っている,
請求項1から4のいずれか一項に記載の中空パッケージ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−26486(P2013−26486A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160553(P2011−160553)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【出願人】(000236920)富山県 (197)
【Fターム(参考)】
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