中空材の製造方法、及びこれに使用する肉取板
【課題】剛性が高く軽量でもある中空材を、製造のための資材に無駄がないように製造することができる方法を提供すること。
【解決手段】両端部の厚肉部11と、これらの間の薄肉部12とからなり、繊維強化プラスチックにより一体化されて、構造材または巻芯となる中空材10を、次の各工程を含んで製造する方法。(1)成形芯金20の表面に、薄肉部12を形成することになる複数の肉取板30を配置し、(2)各肉取板30の表面に密着阻止材31を配置し、(3)この密着阻止材31及び成形芯金20の表面に、繊維強化プラスチックの未硬化材を取り付け、(4)この未硬化材を硬化させて中空材10とし、硬化した中空材10から成形芯金20を抜き出し、(6)成形芯金20が抜き出された穴10aから、少なくとも各肉取板30を取り出す工程。
【解決手段】両端部の厚肉部11と、これらの間の薄肉部12とからなり、繊維強化プラスチックにより一体化されて、構造材または巻芯となる中空材10を、次の各工程を含んで製造する方法。(1)成形芯金20の表面に、薄肉部12を形成することになる複数の肉取板30を配置し、(2)各肉取板30の表面に密着阻止材31を配置し、(3)この密着阻止材31及び成形芯金20の表面に、繊維強化プラスチックの未硬化材を取り付け、(4)この未硬化材を硬化させて中空材10とし、硬化した中空材10から成形芯金20を抜き出し、(6)成形芯金20が抜き出された穴10aから、少なくとも各肉取板30を取り出す工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱や支持梁等の支持や支えを行う構造材としての中空材、または原反フィルム、紙、あるいはシート等の可撓材の比較的薄い材料を巻取るため等に使用される巻芯としての中空材の製造方法、及びこの中空材の製造に使用する肉取板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柱や支持梁等の支持や支えを行う構造材は、あらゆるものに必要であるが、十分な強度や剛性が要求されることは当然として、その重量が軽いことも要求されている。構造材が軽いことは、その取付工事にあたって作業性を向上させる上で重要だからである。
【0003】
一方、原反フィルム、紙あるいはシート等の可撓材は、非常に長尺なものとして形成されており、これらの可撓材をある製品にするには、何かに一旦巻き取っておくのが通例である。この原反フィルム、紙、あるいはシート等の可撓材を巻取るためには、通常管状の巻芯としての中空材が使用される。すなわち、この巻芯は、これに長尺な原反フィルム、紙、あるいはシート等の可撓材の端部を固定した後、この巻芯を回転させて当該原反フィルム、紙、あるいはシート等の可撓材を巻取る作業に使用され、原反フィルム等の巻き取り及び保護に重要な役割を果すものである。そして、この原反フィルム、紙、あるいはシート等の可撓材は当該巻芯に巻き取った状態のまま所定の加工工程に運搬されるのである。
【0004】
ところが、この原反フィルム、紙、あるいはシート等の可撓材が、近年のように非常に薄いものや、逆に重量のあるものになってくると、巻芯に高い剛性が要求されるだけでなく、製品化する前の巻芯に巻取る際には、しわの発生防止及び裂け防止等に相当な注意を必要としてきている。しかも、この巻芯に対する巻き取り作業にあっては、効率化を図るために当該巻芯を高速で回転させなければならない状況にある。
【0005】
このような高速回転や重量物支持に耐えられる巻芯や構造材としての中空材の製造方法として、出願人は、特許文献1にて既に提案を行っている。また、自転車用の「繊維強化熱硬化樹脂製パイプ」としては、特許文献2にも提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4180554号掲載公報
【特許文献2】特開平06−278671号公報、代表図、段落0017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1で提案した中空材の製造方法では、例えば、
「構造材として使用される中空材を構成し、両端に位置する肉厚部と、これらの肉厚部の内方全体に一体的となって位置する薄肉部とを有した中空材本体を、次の各工程を含んで製造する方法。
(1)成形芯金の表面に、紙あるいは金属薄板からなるハニカムシートを、前記肉厚部となる部分を除いて仮止めする工程;
(2)前記成形芯金及びハニカムシート上に、複数のワインディング層となるべき、樹脂を含浸させた無機繊維あるいは合成繊維、またはプリプレグ化された無機繊維あるいは合成繊維を、所定の傾斜角度で巻回する工程;
(3)前記繊維を硬化させてから前記成形芯金を抜き、前記肉厚部の中心に形成した開口部から、前記ハニカムシートを引き出す工程;
(4)前記硬化された部材の表面の仕上げを行う工程。」
である。
【0008】
この特許文献1で提案した中空材の製造方法は、これはこれで現在まで出願人の中空材製造に大きく貢献してきたのであるが、この製造方法で使用している「紙あるいは金属薄板からなるハニカムシート」は、「肉厚部の中心に形成した開口部から引き出す」とき、変形もしくは破損することがあり、短期間で再使用できなくなってしまうことがあった。
【0009】
特許文献2の「自転車フレーム用繊維強化熱硬化性樹脂製パイプ及びその製造方」は、「軽量で、高強度で、外径が一定で、両端部の肉厚が厚く中央部の肉厚が薄い形状であり、かつパイプの端部においてパイプ内径が拡がることを防止し、同時に最大曲げモーメントを持つ自転車フレーム用繊維強化熱硬化性樹脂製パイプ自体及びその製造方法を提供する」ことを目的としてなされたものであるが、図11及び当該特許文献2の段落0017に記載されているように、「マトリックス樹脂の硬化後、(図11のdに示すように、)常法により徐冷し、金属製マンドレル1を脱芯する。脱芯後、(図11のeに示すように、)繊維強化熱硬化性樹脂層4から自己離型性材料2を適当な器具によって掻き出すか、或いは、水流、空気流等を使用し、除去して、本発明の自転車フレーム用繊維強化熱硬化性樹脂製パイプを得る」ものである。
【0010】
つまり、この特許文献2の技術でおいても、「自己離型性材料2」は、「適当な器具によって掻き出すか、或いは、水流、空気流等を使用し、除去」されてしまうものであり、繰り返して使用することができないものである。
【0011】
そこで、本発明者等は、特許文献1で提案した製造方法の長所を踏襲しながらも、中空材の製造に使用する資材の再使用を長期間に亘って行えるような新たな製造方法とするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0012】
すなわち、本発明の目的とするところは、剛性が高く軽量でもある中空材を、製造のための資材に無駄がないように製造することができる方法、およびこれに使用する肉取板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「両端部の厚肉部11と、これらの間の薄肉部12とからなり、繊維強化プラスチックにより一体化されて、構造材または巻芯となる中空材10を、次の各工程を含んで製造する方法。
(1)成形芯金20の表面に、前記薄肉部12を形成することになる複数の肉取板30を配置する工程;
(2)前記各肉取板30の表面に密着阻止材31を配置する工程;
(3)この密着阻止材31及び前記成形芯金20の表面に、前記繊維強化プラスチックの未硬化材を取り付ける工程;
(4)この未硬化材を硬化させて前記中空材10とする工程;
(5)硬化した前記中空材10から前記成形芯金20を抜き出す工程;
(6)前記成形芯金20が抜き出された穴10aから、少なくとも前記各肉取板30を取り出す工程。」
である。
【0014】
本発明の製造方法の対象となる中空材10は、図1の(a)〜(c)に示すように、繊維強化プラスチックにより一体化されたもので、両端部の厚肉部11と、これらの間の薄肉部12とからなるものである。各厚肉部11の端部には、図1の(c)に示すように、当該中空材10を回転装置に取り付けるための連結板14を取り付けて、この連結板14を介して回転力を付与することもあるため、各厚肉部11は文字通り肉厚を薄肉部12より厚くして剛性を高めてある。一方、薄肉部12は、当該中空材10全体の重量を軽減するために、厚肉部11より薄肉としてある。
【0015】
このような中空材10は、本請求項1の方法によって形成されるのであるが、まず、工程(1)において、図2に示すように、成形芯金20の表面に、薄肉部12を形成することになる複数の肉取板30を配置するのである。なお、これらの肉取板30は、後述するように分割されたものであり、成形芯金20が円筒状のものであればその表面に完全に配置することが困難であるから、図4中の仮想線にて示すように、後述する密着阻止材31を配置するまでの間、粘着テープ等を使用して仮止めしておくとよい。
【0016】
この肉取板30は、図4にも示すように、その複数を成形芯金20の表面に完全に配置したとき、全体形状が成形芯金20に嵌合された筒状のものになるものであり、図1に示す中空材10の肉取空間13の形状にほぼ一致するものである。また、これらの肉取板30は、完成された中空材10には不要なものであるため、中空材10の穴10aから取り出さなければならないから、図2及び図3に示すように、この穴10aから取り出し易くなるような大きさに分割されたものである。
【0017】
工程(2)では、図5に示すように、各肉取板30の表面に密着阻止材31を配置するのであるが、この工程(2)での作業をし易くするために、密着阻止材31としては、テープ状に連続した長尺で粘着材を塗布したものや、単に塗布できるものであるとよい。なお、各肉取板30の配置の際に仮止め用に使用した粘着テープ等が密着阻止材31として役に立たないのであれば、これを外すとよい。密着阻止材13としての粘着テープを仮止め用に使用して一部を仮止めし、その後、各肉取板30の全体に密着阻止材31としての粘着テープを配置しても良い。
【0018】
この密着阻止材31は、繊維強化プラスチックが硬化されて形成された中空材10の薄肉部12の内面と、各肉取板30との密着あるいは接着状態を阻止するものであり、完成された中空材10として不要なものであれば、図10に示すように、後に中空材10の穴10aから取り出されるものである。勿論、この密着阻止材31が各肉取板30上に塗布された薄い膜状のものであって、完成された中空材10の薄肉部12内面に残っていても何ら問題にならない場合には、取り出す必要はない。
【0019】
そして、工程(3)において、肉取板30上に配置された密着阻止材31と、肉取板30の左右に露出している成形芯金20の表面に、繊維強化プラスチックの未硬化材を取り付けて、工程(4)において、この未硬化材を硬化させて硬化した中空材10とするのである。
【0020】
未硬化の繊維強化プラスチックとしては、上記特許文献1や後述する実施形態で例示するように種々なものがあり、また、この未硬化の繊維強化プラスチックの肉取板30等の表面に取り付ける方法も、上記特許文献1や後述する実施形態、そして図6で例示するように、種々なものがある。以上のようにして肉取板30等の表面に配置された繊維強化プラスチックが硬化されたときには、図7の断面図に示すような状態となるのである。
【0021】
工程(5)では、以上のようにして硬化された中空材10から、図8に例示するように、成形芯金20を抜き出すのである。成形芯金20を抜き出せば、中空材10の端部には、図9に示すように、穴10aが形成されることになる。なお、この成形芯金20の抜き出し作業を容易にするために、上記工程(2)の前に、成形芯金20表面に密着阻止材31か離形剤を塗布しておくとよい。
【0022】
最後に、工程(6)において、成形芯金20が抜き出された穴10aから、少なくとも各肉取板30を取り出すのである。この場合、各肉取板30は、薄肉部12の内面に密着阻止材31を介して取り付いた状態にあるため、これを穴10aから差し込んだ工具によって密着阻止材31から外すのであるが、密着阻止材31は、各肉取板30にも繊維強化プラスチックにも密着しないものであるから、図9に示すように、簡単に外れる。また、各肉取板30は複数に分割されたものであったから、その図3の(b)に示した縦幅は、穴10aの直径より小さいものであり、各肉取板30の中空材10内からの取り出しは、図9に示すように、容易に行えるのである。
【0023】
各肉取板30を取り除いた後の中空材10内(特に薄肉部12内面)には、図9に示すように密着阻止材31が残るが、この密着阻止材31が塗布された「膜」ではなくて粘着テープのような「物」である場合には、図10に示すように、穴10aから引き出して取り除くのである。これが、「少なくとも各肉取板30を取り出す」という意味である。
【0024】
以上の各工程によって中空材10が完成するのであるが、必要に応じて、図1の(c)に示すような連結板14の取り付けや、当該中空材10の表面の仕上げ研磨が行われる。
【0025】
ここで、各肉取板30は、繊維強化プラスチックが硬化されて形成された中空材10の内面の密着阻止材31から剥がされる際に、密着阻止材31によって密着や接着が阻止されているから、変形や破損が殆どない状態で剥離される。そして、当該肉取板30は、中空材10の穴10aから取り出し可能な状態に分割されているから、中空材10内から取り出される際に中空材10や肉取板30自身に損傷が与えられることもない。
【0026】
以上の結果、各肉取板30は、次の中空材10を製造する場合にも十分利用できるものであり、中空材10の製造を無駄なく行えることにもなるのである。
【0027】
従って、この請求項1の発明によれば、剛性が高く軽量でもある中空材10を確実に製造し得ることは勿論、製造資材である肉取板30の使い回しを長期間行うことができて、製造資材に無駄を発生させない製造方法となっているのである。
【0028】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、
「両端部の厚肉部11と、これらの間の薄肉部12とからなり、成形芯金20の表面に取り付けられる未硬化の繊維強化プラスチックを硬化させることにより一体化されて、構造材または巻芯となる中空材10を製造するにあたって使用される、3分割以上の分割がなされた肉取板30であって、
厚肉部11内面の延長面と、薄肉部12内面とが作る空間の、成形芯金20の軸心方向に沿った線分で少なくとも3分割以上に分割された形状を有し、
成形芯金20の表面に配置されたとき、当該成形芯金20の、厚肉部11を残した周表面全体を包み込むことができるようにした肉取板30」
である。
【0029】
すなわち、この請求項2に係る肉取板30は、上記請求項1に係る中空材10の製造方法を実施するに当たって使用されるものであり、中空材10の厚肉部11内面の延長面と、中空材10の薄肉部12内面とが作る空間、つまり肉取空間13の、成形芯金20の軸心方向に沿った線分で少なくとも3分割以上に分割された形状を有するものである。換言すれば、この肉取板30は、分割された数の分だけ用意することによって、中空材10の上記製造方法に使用できるものである。
【0030】
各肉取板30は、密着阻止材31を存在させることによって中空材10には密着しないものとなり、分割されていることにより硬化した中空材10の穴10aから容易に取り出し得る形状になっているのであるから、これを構成する材料としては特に拘らない。つまり、この肉取板30は、金属板や木で形成してもよいものであるが、後述する実施形態では、中空材10を構成しているのと同じ繊維強化プラスチックを採用している。
【0031】
各肉取板30の形状が、肉取空間13の、成形芯金20の軸心方向に沿った線分で少なくとも3分割以上に分割されたものであるということは、図2及び図3に示すように、成形芯金20の外周面に隙間なく当接する内面を有するとともに、中空材10の製造に用いるもの全体を成形芯金20の外周面に当接させれば、成形芯金20の外周にスッポリと嵌合する筒状のものになるということを意味している。
【0032】
また、各肉取板30が、肉取空間13の、成形芯金20の軸心方向に沿った線分で分割する必要があるのは、この肉取板30を中空材10の穴10aから取り出さなければならないからである。その意味では、各肉取板30について、成形芯金20の半径方向に沿った図2中に示すような1本の線分で2分割しても、半分になった各肉取板30を両端の各穴10aから取り出すことができるから、成形芯金20の軸心方向に沿った線分で分割した肉取板30を、成形芯金20の半径方向に沿った1本の線分でさらに分割してもよい。
【0033】
さらに、これらの肉取板30を少なくとも3分割以上に分割されたものとする必要があるのは、この肉取板30を中空材10の穴10aから取り出さなければならないからである。各肉取板30が、中空材10の製造方法において使用される際に、図2及び図3に示すような「円筒状」になるものであれば、中空材10の穴10aは円形であるが、この円形の穴10aから各肉取板30が取り出せるためには、図3の(b)に示した各肉取板30の縦幅が、穴10aの直径より小さい必要がある。これらの肉取板30を、肉取空間13を少なくとも3分割以上に分割すれば、各肉取板30の縦幅は、穴10aの直径より小さくなるのである。
【0034】
以上のように構成した各肉取板30は、密着阻止材31によって密着や接着が阻止されるものであるから、請求項1の中空材10の製造方法で用いる際には、繊維強化プラスチックが硬化されて形成された中空材10の内面の密着阻止材31から剥がされるときに変形や破損が殆どない。そして、当該肉取板30は、中空材10の穴10aから取り出し可能な状態に形状に分割されているから、中空材10内から取り出される際に中空材10や肉取板30自身に損傷が与えられることもない。
【0035】
従って、この請求項2に係る肉取板30は、中空材10を製造する場合に十分利用できるものとなっているのであり、中空材10の製造を無駄なく行えるのである。
【発明の効果】
【0036】
以上説明した通り、請求項1に係る発明においては、
「両端部の厚肉部11と、これらの間の薄肉部12とからなり、繊維強化プラスチックにより一体化されて、構造材または巻芯となる中空材10を、次の各工程を含んで製造する方法。
(1)成形芯金20の表面に、前記薄肉部12を形成することになる複数の肉取板30を配置する工程;
(2)前記各肉取板30の表面に密着阻止材31を配置する工程;
(3)この密着阻止材31及び前記成形芯金20の表面に、前記繊維強化プラスチックの未硬化材を取り付ける工程;
(4)この未硬化材を硬化させて前記中空材10とする工程;
(5)硬化した前記中空材10から前記成形芯金20を抜き出す工程;
(6)前記成形芯金20が抜き出された穴10aから、少なくとも前記各肉取板30を取り出す工程。」
にその構成上の特徴があり、これにより、剛性が高く軽量でもある中空材10を確実に製造することができることは勿論、製造資材である肉取板30の使い回しを長期間行うことができて、製造資材に無駄を発生させないで中空材10を製造することができるのである。
【0037】
また、請求項2に係る発明においては、
「両端部の厚肉部11と、これらの間の薄肉部12とからなり、成形芯金20の表面に取り付けられる未硬化の繊維強化プラスチックを硬化させることにより一体化されて、構造材または巻芯となる中空材10を製造するにあたって使用される、3分割以上の分割がなされた肉取板30であって、
厚肉部11内面の延長面と、薄肉部12内面とが作る空間の、成形芯金20の軸心方向に沿った線分で少なくとも3分割以上に分割された形状を有し、
成形芯金20の表面に配置されたとき、当該成形芯金20の、厚肉部11を残した周表面全体を包み込むことができるようにしたこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、中空材10を製造する資材として十分利用できるだけでなく、再利用することができて、中空材10の製造を無駄なく行うことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の方法による製造対象である中空材10を示すもので、(a)は左半分を断面とした中空材10の側面図、(b)は正面図、(c)は連結板14を取り付けた中空材10の斜視図である。
【図2】複数の肉取板30を成形芯金20の周囲に配置しようとしている様子を示す斜視図である。
【図3】中空材10の製造に使用する数の肉取板30を示すもので、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は(a)の部分拡大側面図である。
【図4】成形芯金20の周囲に全ての肉取板30を配置した状態の斜視図である。
【図5】肉取板30の上に密着阻止材31を配置しようとしている状態の斜視図である。
【図6】成形芯金20の上に対する各資材や材料を配置する順序を示す部分斜視図である。
【図7】繊維強化プラスチックの硬化前あるいは硬化後の中空材10を示す縦断面図である。
【図8】中空材10から成形芯金20を抜き出している様子を示す部分破断側面図である。
【図9】穴10aから肉取板30を抜き出している様子を示す部分破断側面図である。
【図10】穴10aから取り出す必要のある密着阻止材31を取り出している様子を示す部分破断側面図である。
【図11】特許文献2の製造方法を(a)〜(e)の順で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、以上のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した実施の形態に従って説明するが、各図面では、主として製造方法を工程を追って示してある。請求項2に係る肉取板30については、この製造方法で用いられるものであるため、製造方法を説明して行く中で説明する。
【0040】
図1の(a)〜(c)には、本発明に係る製造方法の対象となる中空材10が示してあるが、この中空材10は繊維強化プラスチックにより一体化成形したもので、両端部の厚肉部11と、これらの間の薄肉部12とからなるものである。本実施形態では、各厚肉部11の端部に、図1の(c)に示したように、当該中空材10を回転装置に取り付けるための連結板14が取り付けてある。この連結板14は、これを介して中空材10に回転装置からの回転力を付与する「チャッキング部」となるものであり、この回転力が直接的に係る各厚肉部11は、肉厚を薄肉部12より厚くして剛性が高くなるようにしてある。一方、これらの厚肉部11の間に位置している薄肉部12は、当該中空材10全体の重量を軽減すために、厚肉部11より薄肉としてある。
【0041】
また、この中空材10にあっては、両端の厚肉部11の間に薄肉部12を形成した結果、当該薄肉部12の内面には、図1の(a)にも示したように、肉取空間13が形成されている。この肉取空間13は、厚肉部11の内面を延長した面と、薄肉部12の内面とによって形成されるものであり、本実施形態に係る円筒状の中空材10では、円筒状の空間となっている。
【0042】
ここで、中空材10は、本実施形態では、図6に示したように、主として第1ワインディング層16、第2ワインディング層17、及び必要に応じた基材層15からなるものであり、さらに必要に応じて形成されるコーティング層18とからなるものである。この図6には、説明上成形芯金20を入れたままの状態が示してあるが、この成形芯金20は中空材10を完成させた後に取外されるものであって、本発明の製造方法によって製造される中空材10の構成要素ではない。
【0043】
また、この繊維強化プラスチックの未硬化材としては、上記の第1ワインディング層16、第2ワインディング層17等を構成する繊維糸、テープ、布と、これに含浸させた樹脂の他、テープ、布とこれに含浸させた樹脂を半硬化状態にした所謂「プリプレグ」、繊維糸とこれに含浸させた樹脂を半硬化状態にした所謂「トゥプリプレグ」等が採用できる。基材層15の構成材料としては、テープ、布と、これに含浸させた樹脂の他、テープ、布とこれに含浸させた樹脂を半硬化状態にした所謂「プリプレグ」が採用できる。また、繊維糸、布の構成材料として、カーボンやガラスがあることは、特許文献1の場合と同様である。
【0044】
さて、以上の中空材10は、図2に示した肉取板30を使用して形成される。この肉取板30は、図4にも示したように、その複数を成形芯金20の表面に完全に配置したとき、全体形状が成形芯金20に嵌合された筒状のものになるものであり、図1に示した中空材10の肉取空間13の形状にほぼ一致するものである。なお、本実施形態の中空材10は、図1の(a)に示したように、その肉取空間13の内端に段部13aが形成してあるため、図3の(c)に示したように、各肉取板30の対応する部分に段部30aが形成してある。
【0045】
さて、以上のような肉取板30は、図2及び図4に示したように、成形芯金20の表面に配置されるのであるが、この成形芯金20上には、図6にも示したように、密着阻止材31または離形剤を配置または塗布して、この成形芯金20の、各肉取板30及び完成された中空材10からの抜き出しが容易に行えるようになされる。勿論、各肉取板30の成形芯金20上に対する配置の際や配置後には、各肉取板30がバラけないようにするために、図4中の仮想線にて示したように、仮止めを行っておくとよい。
【0046】
以上のように配置した各肉取板30上には、図5に示したように、密着阻止材31を配置する。本実施形態における密着阻止材31は、その配置作業と、使用後の取り出しを容易にするために、「テープ状」の長尺なものとしたものである。勿論、この密着阻止材31としては、テープ状のものに限るものではなく、要するに、各肉取板30の薄肉部12裏面への密着が防止できれば、この密着阻止材31は何を採用してもよいものである。また、密着阻止材31としての粘着テープを仮止めに使用し、その後、各肉取板30全体に密着阻止材31としての粘着テープを配置してもよい。
【0047】
そして、この密着阻止材31や肉取板30から露出している成形芯金20上には、図6に示したように、未硬化の繊維強化プラスチックが配置される。上述した通り、この繊維強化プラスチックの材料や配置方法は、何であってもよいものである。本実施形態では、中空材10を円筒状のものとして製造することを想定しているため、この繊維強化プラスチックは、所謂「ワインディング法」で形成した第1ワインディング層16や第2ワインディング層17を形成するようにしている。なお、中空材10の内面を滑らかに形成するために、第1ワインディング層16の内面に基材層15を採用してもよい。また、中空材10の最外層に平滑性や導電性を持たせるために、最外層としてコーティング層18を採用しているものであり、このコーティング層18は繊維強化プラスチックの硬化後に形成するようにしている。
【0048】
以上の繊維強化プラスチックは、成形芯金20や各肉取板30とともに加熱装置内で加熱されて、その硬化がなされ中空材10となる。その状態は、図7に示してあるが、この中空材10を完成させるために、まず、図8に示したように、成形芯金20を抜き取るのである。
【0049】
成形芯金20が抜き取られれば、図9に示したように、中空材10の両端に穴10aが開口するから、この穴10aを通して、前述した各肉取板30や密着阻止材31を取り出すのである。各肉取板30は、密着阻止材31によって薄肉部12の内面に密着していないから簡単に取り外せるし、肉取板30は分割されているから、穴10aからの取り出しも容易に行える。勿論、密着阻止材31自身の取り出しも、例えば、図10に示したように、簡単に行える。
【0050】
以上のようにして取り出した各肉取板30には、損傷が殆どないから、別の中空材10を製造するための次の工程で再使用することができることは言うまでもないのである。
【符号の説明】
【0051】
10 中空材
10a 穴
11 厚肉部
12 薄肉部
13 肉取空間
13a 段部
14 連結板
15 基材層
16 第1ワインディング層
17 第2ワインディング層
18 コーティング層
20 成形芯金
30 肉取板
30a 段部
31 密着阻止材
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱や支持梁等の支持や支えを行う構造材としての中空材、または原反フィルム、紙、あるいはシート等の可撓材の比較的薄い材料を巻取るため等に使用される巻芯としての中空材の製造方法、及びこの中空材の製造に使用する肉取板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柱や支持梁等の支持や支えを行う構造材は、あらゆるものに必要であるが、十分な強度や剛性が要求されることは当然として、その重量が軽いことも要求されている。構造材が軽いことは、その取付工事にあたって作業性を向上させる上で重要だからである。
【0003】
一方、原反フィルム、紙あるいはシート等の可撓材は、非常に長尺なものとして形成されており、これらの可撓材をある製品にするには、何かに一旦巻き取っておくのが通例である。この原反フィルム、紙、あるいはシート等の可撓材を巻取るためには、通常管状の巻芯としての中空材が使用される。すなわち、この巻芯は、これに長尺な原反フィルム、紙、あるいはシート等の可撓材の端部を固定した後、この巻芯を回転させて当該原反フィルム、紙、あるいはシート等の可撓材を巻取る作業に使用され、原反フィルム等の巻き取り及び保護に重要な役割を果すものである。そして、この原反フィルム、紙、あるいはシート等の可撓材は当該巻芯に巻き取った状態のまま所定の加工工程に運搬されるのである。
【0004】
ところが、この原反フィルム、紙、あるいはシート等の可撓材が、近年のように非常に薄いものや、逆に重量のあるものになってくると、巻芯に高い剛性が要求されるだけでなく、製品化する前の巻芯に巻取る際には、しわの発生防止及び裂け防止等に相当な注意を必要としてきている。しかも、この巻芯に対する巻き取り作業にあっては、効率化を図るために当該巻芯を高速で回転させなければならない状況にある。
【0005】
このような高速回転や重量物支持に耐えられる巻芯や構造材としての中空材の製造方法として、出願人は、特許文献1にて既に提案を行っている。また、自転車用の「繊維強化熱硬化樹脂製パイプ」としては、特許文献2にも提案がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4180554号掲載公報
【特許文献2】特開平06−278671号公報、代表図、段落0017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この特許文献1で提案した中空材の製造方法では、例えば、
「構造材として使用される中空材を構成し、両端に位置する肉厚部と、これらの肉厚部の内方全体に一体的となって位置する薄肉部とを有した中空材本体を、次の各工程を含んで製造する方法。
(1)成形芯金の表面に、紙あるいは金属薄板からなるハニカムシートを、前記肉厚部となる部分を除いて仮止めする工程;
(2)前記成形芯金及びハニカムシート上に、複数のワインディング層となるべき、樹脂を含浸させた無機繊維あるいは合成繊維、またはプリプレグ化された無機繊維あるいは合成繊維を、所定の傾斜角度で巻回する工程;
(3)前記繊維を硬化させてから前記成形芯金を抜き、前記肉厚部の中心に形成した開口部から、前記ハニカムシートを引き出す工程;
(4)前記硬化された部材の表面の仕上げを行う工程。」
である。
【0008】
この特許文献1で提案した中空材の製造方法は、これはこれで現在まで出願人の中空材製造に大きく貢献してきたのであるが、この製造方法で使用している「紙あるいは金属薄板からなるハニカムシート」は、「肉厚部の中心に形成した開口部から引き出す」とき、変形もしくは破損することがあり、短期間で再使用できなくなってしまうことがあった。
【0009】
特許文献2の「自転車フレーム用繊維強化熱硬化性樹脂製パイプ及びその製造方」は、「軽量で、高強度で、外径が一定で、両端部の肉厚が厚く中央部の肉厚が薄い形状であり、かつパイプの端部においてパイプ内径が拡がることを防止し、同時に最大曲げモーメントを持つ自転車フレーム用繊維強化熱硬化性樹脂製パイプ自体及びその製造方法を提供する」ことを目的としてなされたものであるが、図11及び当該特許文献2の段落0017に記載されているように、「マトリックス樹脂の硬化後、(図11のdに示すように、)常法により徐冷し、金属製マンドレル1を脱芯する。脱芯後、(図11のeに示すように、)繊維強化熱硬化性樹脂層4から自己離型性材料2を適当な器具によって掻き出すか、或いは、水流、空気流等を使用し、除去して、本発明の自転車フレーム用繊維強化熱硬化性樹脂製パイプを得る」ものである。
【0010】
つまり、この特許文献2の技術でおいても、「自己離型性材料2」は、「適当な器具によって掻き出すか、或いは、水流、空気流等を使用し、除去」されてしまうものであり、繰り返して使用することができないものである。
【0011】
そこで、本発明者等は、特許文献1で提案した製造方法の長所を踏襲しながらも、中空材の製造に使用する資材の再使用を長期間に亘って行えるような新たな製造方法とするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0012】
すなわち、本発明の目的とするところは、剛性が高く軽量でもある中空材を、製造のための資材に無駄がないように製造することができる方法、およびこれに使用する肉取板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「両端部の厚肉部11と、これらの間の薄肉部12とからなり、繊維強化プラスチックにより一体化されて、構造材または巻芯となる中空材10を、次の各工程を含んで製造する方法。
(1)成形芯金20の表面に、前記薄肉部12を形成することになる複数の肉取板30を配置する工程;
(2)前記各肉取板30の表面に密着阻止材31を配置する工程;
(3)この密着阻止材31及び前記成形芯金20の表面に、前記繊維強化プラスチックの未硬化材を取り付ける工程;
(4)この未硬化材を硬化させて前記中空材10とする工程;
(5)硬化した前記中空材10から前記成形芯金20を抜き出す工程;
(6)前記成形芯金20が抜き出された穴10aから、少なくとも前記各肉取板30を取り出す工程。」
である。
【0014】
本発明の製造方法の対象となる中空材10は、図1の(a)〜(c)に示すように、繊維強化プラスチックにより一体化されたもので、両端部の厚肉部11と、これらの間の薄肉部12とからなるものである。各厚肉部11の端部には、図1の(c)に示すように、当該中空材10を回転装置に取り付けるための連結板14を取り付けて、この連結板14を介して回転力を付与することもあるため、各厚肉部11は文字通り肉厚を薄肉部12より厚くして剛性を高めてある。一方、薄肉部12は、当該中空材10全体の重量を軽減するために、厚肉部11より薄肉としてある。
【0015】
このような中空材10は、本請求項1の方法によって形成されるのであるが、まず、工程(1)において、図2に示すように、成形芯金20の表面に、薄肉部12を形成することになる複数の肉取板30を配置するのである。なお、これらの肉取板30は、後述するように分割されたものであり、成形芯金20が円筒状のものであればその表面に完全に配置することが困難であるから、図4中の仮想線にて示すように、後述する密着阻止材31を配置するまでの間、粘着テープ等を使用して仮止めしておくとよい。
【0016】
この肉取板30は、図4にも示すように、その複数を成形芯金20の表面に完全に配置したとき、全体形状が成形芯金20に嵌合された筒状のものになるものであり、図1に示す中空材10の肉取空間13の形状にほぼ一致するものである。また、これらの肉取板30は、完成された中空材10には不要なものであるため、中空材10の穴10aから取り出さなければならないから、図2及び図3に示すように、この穴10aから取り出し易くなるような大きさに分割されたものである。
【0017】
工程(2)では、図5に示すように、各肉取板30の表面に密着阻止材31を配置するのであるが、この工程(2)での作業をし易くするために、密着阻止材31としては、テープ状に連続した長尺で粘着材を塗布したものや、単に塗布できるものであるとよい。なお、各肉取板30の配置の際に仮止め用に使用した粘着テープ等が密着阻止材31として役に立たないのであれば、これを外すとよい。密着阻止材13としての粘着テープを仮止め用に使用して一部を仮止めし、その後、各肉取板30の全体に密着阻止材31としての粘着テープを配置しても良い。
【0018】
この密着阻止材31は、繊維強化プラスチックが硬化されて形成された中空材10の薄肉部12の内面と、各肉取板30との密着あるいは接着状態を阻止するものであり、完成された中空材10として不要なものであれば、図10に示すように、後に中空材10の穴10aから取り出されるものである。勿論、この密着阻止材31が各肉取板30上に塗布された薄い膜状のものであって、完成された中空材10の薄肉部12内面に残っていても何ら問題にならない場合には、取り出す必要はない。
【0019】
そして、工程(3)において、肉取板30上に配置された密着阻止材31と、肉取板30の左右に露出している成形芯金20の表面に、繊維強化プラスチックの未硬化材を取り付けて、工程(4)において、この未硬化材を硬化させて硬化した中空材10とするのである。
【0020】
未硬化の繊維強化プラスチックとしては、上記特許文献1や後述する実施形態で例示するように種々なものがあり、また、この未硬化の繊維強化プラスチックの肉取板30等の表面に取り付ける方法も、上記特許文献1や後述する実施形態、そして図6で例示するように、種々なものがある。以上のようにして肉取板30等の表面に配置された繊維強化プラスチックが硬化されたときには、図7の断面図に示すような状態となるのである。
【0021】
工程(5)では、以上のようにして硬化された中空材10から、図8に例示するように、成形芯金20を抜き出すのである。成形芯金20を抜き出せば、中空材10の端部には、図9に示すように、穴10aが形成されることになる。なお、この成形芯金20の抜き出し作業を容易にするために、上記工程(2)の前に、成形芯金20表面に密着阻止材31か離形剤を塗布しておくとよい。
【0022】
最後に、工程(6)において、成形芯金20が抜き出された穴10aから、少なくとも各肉取板30を取り出すのである。この場合、各肉取板30は、薄肉部12の内面に密着阻止材31を介して取り付いた状態にあるため、これを穴10aから差し込んだ工具によって密着阻止材31から外すのであるが、密着阻止材31は、各肉取板30にも繊維強化プラスチックにも密着しないものであるから、図9に示すように、簡単に外れる。また、各肉取板30は複数に分割されたものであったから、その図3の(b)に示した縦幅は、穴10aの直径より小さいものであり、各肉取板30の中空材10内からの取り出しは、図9に示すように、容易に行えるのである。
【0023】
各肉取板30を取り除いた後の中空材10内(特に薄肉部12内面)には、図9に示すように密着阻止材31が残るが、この密着阻止材31が塗布された「膜」ではなくて粘着テープのような「物」である場合には、図10に示すように、穴10aから引き出して取り除くのである。これが、「少なくとも各肉取板30を取り出す」という意味である。
【0024】
以上の各工程によって中空材10が完成するのであるが、必要に応じて、図1の(c)に示すような連結板14の取り付けや、当該中空材10の表面の仕上げ研磨が行われる。
【0025】
ここで、各肉取板30は、繊維強化プラスチックが硬化されて形成された中空材10の内面の密着阻止材31から剥がされる際に、密着阻止材31によって密着や接着が阻止されているから、変形や破損が殆どない状態で剥離される。そして、当該肉取板30は、中空材10の穴10aから取り出し可能な状態に分割されているから、中空材10内から取り出される際に中空材10や肉取板30自身に損傷が与えられることもない。
【0026】
以上の結果、各肉取板30は、次の中空材10を製造する場合にも十分利用できるものであり、中空材10の製造を無駄なく行えることにもなるのである。
【0027】
従って、この請求項1の発明によれば、剛性が高く軽量でもある中空材10を確実に製造し得ることは勿論、製造資材である肉取板30の使い回しを長期間行うことができて、製造資材に無駄を発生させない製造方法となっているのである。
【0028】
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、
「両端部の厚肉部11と、これらの間の薄肉部12とからなり、成形芯金20の表面に取り付けられる未硬化の繊維強化プラスチックを硬化させることにより一体化されて、構造材または巻芯となる中空材10を製造するにあたって使用される、3分割以上の分割がなされた肉取板30であって、
厚肉部11内面の延長面と、薄肉部12内面とが作る空間の、成形芯金20の軸心方向に沿った線分で少なくとも3分割以上に分割された形状を有し、
成形芯金20の表面に配置されたとき、当該成形芯金20の、厚肉部11を残した周表面全体を包み込むことができるようにした肉取板30」
である。
【0029】
すなわち、この請求項2に係る肉取板30は、上記請求項1に係る中空材10の製造方法を実施するに当たって使用されるものであり、中空材10の厚肉部11内面の延長面と、中空材10の薄肉部12内面とが作る空間、つまり肉取空間13の、成形芯金20の軸心方向に沿った線分で少なくとも3分割以上に分割された形状を有するものである。換言すれば、この肉取板30は、分割された数の分だけ用意することによって、中空材10の上記製造方法に使用できるものである。
【0030】
各肉取板30は、密着阻止材31を存在させることによって中空材10には密着しないものとなり、分割されていることにより硬化した中空材10の穴10aから容易に取り出し得る形状になっているのであるから、これを構成する材料としては特に拘らない。つまり、この肉取板30は、金属板や木で形成してもよいものであるが、後述する実施形態では、中空材10を構成しているのと同じ繊維強化プラスチックを採用している。
【0031】
各肉取板30の形状が、肉取空間13の、成形芯金20の軸心方向に沿った線分で少なくとも3分割以上に分割されたものであるということは、図2及び図3に示すように、成形芯金20の外周面に隙間なく当接する内面を有するとともに、中空材10の製造に用いるもの全体を成形芯金20の外周面に当接させれば、成形芯金20の外周にスッポリと嵌合する筒状のものになるということを意味している。
【0032】
また、各肉取板30が、肉取空間13の、成形芯金20の軸心方向に沿った線分で分割する必要があるのは、この肉取板30を中空材10の穴10aから取り出さなければならないからである。その意味では、各肉取板30について、成形芯金20の半径方向に沿った図2中に示すような1本の線分で2分割しても、半分になった各肉取板30を両端の各穴10aから取り出すことができるから、成形芯金20の軸心方向に沿った線分で分割した肉取板30を、成形芯金20の半径方向に沿った1本の線分でさらに分割してもよい。
【0033】
さらに、これらの肉取板30を少なくとも3分割以上に分割されたものとする必要があるのは、この肉取板30を中空材10の穴10aから取り出さなければならないからである。各肉取板30が、中空材10の製造方法において使用される際に、図2及び図3に示すような「円筒状」になるものであれば、中空材10の穴10aは円形であるが、この円形の穴10aから各肉取板30が取り出せるためには、図3の(b)に示した各肉取板30の縦幅が、穴10aの直径より小さい必要がある。これらの肉取板30を、肉取空間13を少なくとも3分割以上に分割すれば、各肉取板30の縦幅は、穴10aの直径より小さくなるのである。
【0034】
以上のように構成した各肉取板30は、密着阻止材31によって密着や接着が阻止されるものであるから、請求項1の中空材10の製造方法で用いる際には、繊維強化プラスチックが硬化されて形成された中空材10の内面の密着阻止材31から剥がされるときに変形や破損が殆どない。そして、当該肉取板30は、中空材10の穴10aから取り出し可能な状態に形状に分割されているから、中空材10内から取り出される際に中空材10や肉取板30自身に損傷が与えられることもない。
【0035】
従って、この請求項2に係る肉取板30は、中空材10を製造する場合に十分利用できるものとなっているのであり、中空材10の製造を無駄なく行えるのである。
【発明の効果】
【0036】
以上説明した通り、請求項1に係る発明においては、
「両端部の厚肉部11と、これらの間の薄肉部12とからなり、繊維強化プラスチックにより一体化されて、構造材または巻芯となる中空材10を、次の各工程を含んで製造する方法。
(1)成形芯金20の表面に、前記薄肉部12を形成することになる複数の肉取板30を配置する工程;
(2)前記各肉取板30の表面に密着阻止材31を配置する工程;
(3)この密着阻止材31及び前記成形芯金20の表面に、前記繊維強化プラスチックの未硬化材を取り付ける工程;
(4)この未硬化材を硬化させて前記中空材10とする工程;
(5)硬化した前記中空材10から前記成形芯金20を抜き出す工程;
(6)前記成形芯金20が抜き出された穴10aから、少なくとも前記各肉取板30を取り出す工程。」
にその構成上の特徴があり、これにより、剛性が高く軽量でもある中空材10を確実に製造することができることは勿論、製造資材である肉取板30の使い回しを長期間行うことができて、製造資材に無駄を発生させないで中空材10を製造することができるのである。
【0037】
また、請求項2に係る発明においては、
「両端部の厚肉部11と、これらの間の薄肉部12とからなり、成形芯金20の表面に取り付けられる未硬化の繊維強化プラスチックを硬化させることにより一体化されて、構造材または巻芯となる中空材10を製造するにあたって使用される、3分割以上の分割がなされた肉取板30であって、
厚肉部11内面の延長面と、薄肉部12内面とが作る空間の、成形芯金20の軸心方向に沿った線分で少なくとも3分割以上に分割された形状を有し、
成形芯金20の表面に配置されたとき、当該成形芯金20の、厚肉部11を残した周表面全体を包み込むことができるようにしたこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、中空材10を製造する資材として十分利用できるだけでなく、再利用することができて、中空材10の製造を無駄なく行うことができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の方法による製造対象である中空材10を示すもので、(a)は左半分を断面とした中空材10の側面図、(b)は正面図、(c)は連結板14を取り付けた中空材10の斜視図である。
【図2】複数の肉取板30を成形芯金20の周囲に配置しようとしている様子を示す斜視図である。
【図3】中空材10の製造に使用する数の肉取板30を示すもので、(a)は側面図、(b)は正面図、(c)は(a)の部分拡大側面図である。
【図4】成形芯金20の周囲に全ての肉取板30を配置した状態の斜視図である。
【図5】肉取板30の上に密着阻止材31を配置しようとしている状態の斜視図である。
【図6】成形芯金20の上に対する各資材や材料を配置する順序を示す部分斜視図である。
【図7】繊維強化プラスチックの硬化前あるいは硬化後の中空材10を示す縦断面図である。
【図8】中空材10から成形芯金20を抜き出している様子を示す部分破断側面図である。
【図9】穴10aから肉取板30を抜き出している様子を示す部分破断側面図である。
【図10】穴10aから取り出す必要のある密着阻止材31を取り出している様子を示す部分破断側面図である。
【図11】特許文献2の製造方法を(a)〜(e)の順で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
次に、以上のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した実施の形態に従って説明するが、各図面では、主として製造方法を工程を追って示してある。請求項2に係る肉取板30については、この製造方法で用いられるものであるため、製造方法を説明して行く中で説明する。
【0040】
図1の(a)〜(c)には、本発明に係る製造方法の対象となる中空材10が示してあるが、この中空材10は繊維強化プラスチックにより一体化成形したもので、両端部の厚肉部11と、これらの間の薄肉部12とからなるものである。本実施形態では、各厚肉部11の端部に、図1の(c)に示したように、当該中空材10を回転装置に取り付けるための連結板14が取り付けてある。この連結板14は、これを介して中空材10に回転装置からの回転力を付与する「チャッキング部」となるものであり、この回転力が直接的に係る各厚肉部11は、肉厚を薄肉部12より厚くして剛性が高くなるようにしてある。一方、これらの厚肉部11の間に位置している薄肉部12は、当該中空材10全体の重量を軽減すために、厚肉部11より薄肉としてある。
【0041】
また、この中空材10にあっては、両端の厚肉部11の間に薄肉部12を形成した結果、当該薄肉部12の内面には、図1の(a)にも示したように、肉取空間13が形成されている。この肉取空間13は、厚肉部11の内面を延長した面と、薄肉部12の内面とによって形成されるものであり、本実施形態に係る円筒状の中空材10では、円筒状の空間となっている。
【0042】
ここで、中空材10は、本実施形態では、図6に示したように、主として第1ワインディング層16、第2ワインディング層17、及び必要に応じた基材層15からなるものであり、さらに必要に応じて形成されるコーティング層18とからなるものである。この図6には、説明上成形芯金20を入れたままの状態が示してあるが、この成形芯金20は中空材10を完成させた後に取外されるものであって、本発明の製造方法によって製造される中空材10の構成要素ではない。
【0043】
また、この繊維強化プラスチックの未硬化材としては、上記の第1ワインディング層16、第2ワインディング層17等を構成する繊維糸、テープ、布と、これに含浸させた樹脂の他、テープ、布とこれに含浸させた樹脂を半硬化状態にした所謂「プリプレグ」、繊維糸とこれに含浸させた樹脂を半硬化状態にした所謂「トゥプリプレグ」等が採用できる。基材層15の構成材料としては、テープ、布と、これに含浸させた樹脂の他、テープ、布とこれに含浸させた樹脂を半硬化状態にした所謂「プリプレグ」が採用できる。また、繊維糸、布の構成材料として、カーボンやガラスがあることは、特許文献1の場合と同様である。
【0044】
さて、以上の中空材10は、図2に示した肉取板30を使用して形成される。この肉取板30は、図4にも示したように、その複数を成形芯金20の表面に完全に配置したとき、全体形状が成形芯金20に嵌合された筒状のものになるものであり、図1に示した中空材10の肉取空間13の形状にほぼ一致するものである。なお、本実施形態の中空材10は、図1の(a)に示したように、その肉取空間13の内端に段部13aが形成してあるため、図3の(c)に示したように、各肉取板30の対応する部分に段部30aが形成してある。
【0045】
さて、以上のような肉取板30は、図2及び図4に示したように、成形芯金20の表面に配置されるのであるが、この成形芯金20上には、図6にも示したように、密着阻止材31または離形剤を配置または塗布して、この成形芯金20の、各肉取板30及び完成された中空材10からの抜き出しが容易に行えるようになされる。勿論、各肉取板30の成形芯金20上に対する配置の際や配置後には、各肉取板30がバラけないようにするために、図4中の仮想線にて示したように、仮止めを行っておくとよい。
【0046】
以上のように配置した各肉取板30上には、図5に示したように、密着阻止材31を配置する。本実施形態における密着阻止材31は、その配置作業と、使用後の取り出しを容易にするために、「テープ状」の長尺なものとしたものである。勿論、この密着阻止材31としては、テープ状のものに限るものではなく、要するに、各肉取板30の薄肉部12裏面への密着が防止できれば、この密着阻止材31は何を採用してもよいものである。また、密着阻止材31としての粘着テープを仮止めに使用し、その後、各肉取板30全体に密着阻止材31としての粘着テープを配置してもよい。
【0047】
そして、この密着阻止材31や肉取板30から露出している成形芯金20上には、図6に示したように、未硬化の繊維強化プラスチックが配置される。上述した通り、この繊維強化プラスチックの材料や配置方法は、何であってもよいものである。本実施形態では、中空材10を円筒状のものとして製造することを想定しているため、この繊維強化プラスチックは、所謂「ワインディング法」で形成した第1ワインディング層16や第2ワインディング層17を形成するようにしている。なお、中空材10の内面を滑らかに形成するために、第1ワインディング層16の内面に基材層15を採用してもよい。また、中空材10の最外層に平滑性や導電性を持たせるために、最外層としてコーティング層18を採用しているものであり、このコーティング層18は繊維強化プラスチックの硬化後に形成するようにしている。
【0048】
以上の繊維強化プラスチックは、成形芯金20や各肉取板30とともに加熱装置内で加熱されて、その硬化がなされ中空材10となる。その状態は、図7に示してあるが、この中空材10を完成させるために、まず、図8に示したように、成形芯金20を抜き取るのである。
【0049】
成形芯金20が抜き取られれば、図9に示したように、中空材10の両端に穴10aが開口するから、この穴10aを通して、前述した各肉取板30や密着阻止材31を取り出すのである。各肉取板30は、密着阻止材31によって薄肉部12の内面に密着していないから簡単に取り外せるし、肉取板30は分割されているから、穴10aからの取り出しも容易に行える。勿論、密着阻止材31自身の取り出しも、例えば、図10に示したように、簡単に行える。
【0050】
以上のようにして取り出した各肉取板30には、損傷が殆どないから、別の中空材10を製造するための次の工程で再使用することができることは言うまでもないのである。
【符号の説明】
【0051】
10 中空材
10a 穴
11 厚肉部
12 薄肉部
13 肉取空間
13a 段部
14 連結板
15 基材層
16 第1ワインディング層
17 第2ワインディング層
18 コーティング層
20 成形芯金
30 肉取板
30a 段部
31 密着阻止材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部の厚肉部と、これらの間の薄肉部とからなり、繊維強化プラスチックにより一体化されて、構造材または巻芯となる中空材を、次の各工程を含んで製造する方法。
(1)成形芯金の表面に、前記薄肉部を形成することになる複数の肉取板を配置する工程;
(2)前記各肉取板の表面に密着阻止材を配置する工程;
(3)この密着阻止材及び前記成形芯金の表面に、前記繊維強化プラスチックの未硬化材を取り付ける工程;
(4)この未硬化材を硬化させて前記中空材とする工程;
(5)硬化した前記中空材から前記成形芯金を抜き出す工程;
(6)前記成形芯金が抜き出された穴から、少なくとも前記各肉取板を取り出す工程。
【請求項2】
両端部の厚肉部と、これらの間の薄肉部とからなり、成形芯金の表面に取り付けられる未硬化の繊維強化プラスチックを硬化させることにより一体化されて、構造材または巻芯となる中空材を製造するにあたって使用される、3分割以上の分割がなされた肉取板であって、
前記厚肉部内面の延長面と、前記薄肉部内面とが作る空間の、前記成形芯金の軸心方向に沿った線分で少なくとも3分割以上に分割された形状を有し、
前記成形芯金の表面に配置されたとき、当該成形芯金の、前記厚肉部を残した周表面全体を包み込むことができるようにした肉取板。
【請求項1】
両端部の厚肉部と、これらの間の薄肉部とからなり、繊維強化プラスチックにより一体化されて、構造材または巻芯となる中空材を、次の各工程を含んで製造する方法。
(1)成形芯金の表面に、前記薄肉部を形成することになる複数の肉取板を配置する工程;
(2)前記各肉取板の表面に密着阻止材を配置する工程;
(3)この密着阻止材及び前記成形芯金の表面に、前記繊維強化プラスチックの未硬化材を取り付ける工程;
(4)この未硬化材を硬化させて前記中空材とする工程;
(5)硬化した前記中空材から前記成形芯金を抜き出す工程;
(6)前記成形芯金が抜き出された穴から、少なくとも前記各肉取板を取り出す工程。
【請求項2】
両端部の厚肉部と、これらの間の薄肉部とからなり、成形芯金の表面に取り付けられる未硬化の繊維強化プラスチックを硬化させることにより一体化されて、構造材または巻芯となる中空材を製造するにあたって使用される、3分割以上の分割がなされた肉取板であって、
前記厚肉部内面の延長面と、前記薄肉部内面とが作る空間の、前記成形芯金の軸心方向に沿った線分で少なくとも3分割以上に分割された形状を有し、
前記成形芯金の表面に配置されたとき、当該成形芯金の、前記厚肉部を残した周表面全体を包み込むことができるようにした肉取板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−111135(P2012−111135A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262252(P2010−262252)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(309034515)天龍コンポジット株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(309034515)天龍コンポジット株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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