説明

中空活性炭

【課題】吸着効率が高く、圧力損失が小さく、かつ、強度の大きい、中空活性炭を提供する。特に、繰り返し再生して使用可能な程度まで強度を大きくする。
【解決手段】複数の貫通孔を備えた成型原料を同一反応炉内において連続的に炭化・乾留及び賦活する。具体的には、まず、木、竹、オカラ、コーヒーかす、堆肥、製紙スラッジなどのリグニンを含む有機物の粉末原料を押し出し成型するか、又は、杉、檜、ラワン材、ゴムの木、竹、ラミン、桐などの木片原料を機械加工で成型することによって、内部に複数の貫通孔を備える成型原料が得られる(S1)。次に、成型原料を加熱炉に設置して酸素を遮断した状態で加熱して成型原料を炭化・乾留する(S2)。次に、炭化・乾留工程の後、更に昇温すると共に加熱炉内に水を注入し賦活する(S3)。これら一連の工程により、中空活性炭が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着効率の高い新規な中空活性炭等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
活性炭は脱臭装置等に充填されて使用され、大型の脱臭処理施設から家庭用の小型の脱臭機器に至るまで、臭気の除去という用途に広く利用されている。
【0003】
活性炭はペレット状と呼ばれる略円柱状のものが一般的であるが、内部を軸方向にくり抜いて貫通孔を設けたものや、内部に十字状のリブが構成された中空状の構造が知られている(例えば、特許文献1、2)。これらの構造は圧力損失を低減することができるため、脱臭風量を大きくすることができる。
【0004】
一般に、圧力損失の低い活性炭を製造するには、ペレット状活性炭の場合では、外径を太くする方法が考えられる。しかし、外径を太くすると、賦活ガスが内部に到達しにくいため、賦活時間が長くなる結果全体の大きさが小さくなる。これを防ぐために賦活時間を短くすると結果吸着効率が低下する。そこで、吸着性能を上げるために、賦活ガスを内部まで到達させるために、内部を中空状にするという発想が生まれるのである。
【0005】
ペレット状活性炭は、現在市販されているもので最大7mmφの直径を有し、長さが5mm〜30mm程度のペレット状であるが、内部を軸方向にくり抜いて中空状にすると、賦活工程において賦活ガスが内部に到達しやすいため、賦活時間を短縮して吸着性能を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−65824号公報
【特許文献2】特開2005−52785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、活性炭の性能指標のうち代表的なものは、吸着効率と圧力損失と強度がある。本発明において、吸着効率とは、特定の有機物質(例えばベンゼン)の吸着量で評価される指標を意味する。圧力損失とは、ガス線速度LV(Line Verosity)に対する圧力損失ΔPで表されるもので、脱臭風量を評価するための指標を意味する。圧力損失が高いことは、同じ能力の脱臭ファンを用いた場合には風量が小さくなることを意味する。強度とは、活性炭自体の物理的な破壊強度、すなわち壊れにくさを表す指標を意味する。
【0008】
従来の中空活性炭はいずれも活性炭粉末をバインダーで固めることによって製造されるものであり、圧力損失を低減することができる反面、強度が小さくもろかった。そのため一回だけしか使用できず、再生して繰り返し何度も使用することができなかった。
【0009】
本発明は、吸着効率が高く、圧力損失が小さく、かつ、強度の大きい、理想的な活性炭を提供することを目的としてなされたものであり、特に、従来の吸着量及び圧力損失を維持しながら、繰り返し再生して使用可能な程度までその強度を十分に大きくすることを主たる技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る中空活性炭は、従来のように活性炭粉末をバインダーによって「固める」のではなく、予め原料の段階から中空状に成型し、得られた成型材を後に活性炭化するという方法によって作られる。本明細書では、内部に中空部分が形成された構造を備えた活性炭を総称して「中空活性炭」というが、後述するようにこれには多くの実施形態が考えられる。
【0011】
本発明に係る中空活性炭は、複数の貫通孔を備えた成型原料を同一反応炉内において連続的に炭化・乾留及び賦活することにより得られたことを特徴とする。この中空活性炭は、複数の貫通孔が設けられているため、圧力損失を小さくすることができる。また、成型原料の段階で貫通孔が設けられ、炭化・乾留及び賦活する一連の工程を経ることで、賦活時間を短縮して中空活性炭の寸法の減少を小さくすることができ、従来の中空活性炭よりも強度を大きくすることができる。
【0012】
この成型原料は、出発材料として粉末原料を使用してもよく、具体的には、オガ粉、竹粉、オカラ、コーヒーかす、堆肥、製紙スラッジなどが含まれる。また、完成品の強度をより大きくするために、必要により、粉末リグニンを加えてもよい。
【0013】
また、この成型原料は、出発材料として木片原料を使用してもよい。この木片原料は、炭化・乾留及び賦活工程によって活性炭となりうる原料全般を指す広義に解すべきものであり、例えば、杉、檜、ラワン材、ゴムの木、竹、ラミン、桐など、比較的空隙率の大きい木質が好ましい。すでに活性炭化されているものは「木片原料」には該当しない。
【0014】
この中空活性炭は、具体的には、加熱炉内に成型原料を設置し、酸素を遮断した状態で昇温し、この状態を一定時間保持する工程を段階的に繰り返すことによって、水素及び酸素原子を脱離する炭化・乾留工程と、その後更に加熱すると共に水を注入することで水性化反応を生ぜしめる賦活工程とを連続的にかつ同一の反応炉内で行うことにより得られる。従来は炭化・乾留工程と、賦活工程とが別々の炉で実施されることが通常であったが、このように本発明では、これらの工程を同一の反応炉内で連続的に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る中空活性炭によると、高い吸着性能と低い圧力損失を維持しながら従来の中空活性炭よりも強度を大きくすることができ、繰り返し再生して使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本実施形態の中空活性炭を製造するための工程を示す図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、ステップS1の成型工程後に得られる成型原料1の形状の一例を示している。図2(a)は成型工程後の斜視図であり(b)は正面図、(c)は断面図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、図2のペレット状を角柱状に変更した場合の例を示している。図3(a)は成型工程後の斜視図であり(b)は正面図、(c)は断面図である。これらの図より、成型原料3は、全体が略角柱状であって一辺Sの略正方形の底面に軸方向に沿って直径D2の貫通孔4が形成されている。
【図4】図4は、ステップS2とステップS3の工程におけるヒートカーブの一例である。
【図5】図5は、種々の活性炭の圧力損失を調べたグラフを示している。
【図6】図6(a)〜(c)は、本実施形態の中空活性炭の実施例について説明するための図であり、成型原料の他の実施態様を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施形態の中空活性炭を製造するための工程を示す図である。各ステップの詳細は後述するが、ここでは全体的な流れについて説明する。本実施形態の中空活性炭を製造する製造方法は、予め原料の段階から中空状に成型し、得られた成型材を後に活性炭化するという方法によって作られることが特徴である。
【0018】
ステップS1は、成型工程である。この工程を行う目的は、本発明における出発材料として用いる「活性炭化される前の原料」を予め中空状に成型するためである。出発材料にどのような原料を用いるかによって、大きく2つの方法に分けられる。すなわち、
(1)粉末原料を用いる場合
(2)木片原料を用いる場合
の2つである。なお、出発材料は異なっても成型工程後の原料(本明細書では、これを「成型原料」という。)の形状はほぼ同じになる。但し、大きさは異なっていてもよい。
【0019】
(1)の粉末原料を用いる場合は、オガ粉、竹粉、オカラ、コーヒーかす、堆肥、製紙スラッジなどの粉末原料を中空状に押し出し成型する工程がこれにあたる。押し出し成型の温度条件は常温から200℃までの温度範囲で行うことが好ましい。(2)の木片原料の場合は、杉や檜などの木材を予め中空状に金型などを用いて機械加工して成型する工程がこれにあたる。
【0020】
図2(a)〜(c)は、ステップS1の成型工程後に得られる成型原料1の形状の一例を示している。図2(a)は成型工程後の斜視図であり(b)は正面図、(c)は断面図である。これらの図より、成型原料1は、全体が略円柱状(ペレット状)であって直径D1の底面に軸方向に沿って直径D2の貫通孔2が形成されていることが分かる。柱の長さをLとすると、Lは概ね5mm〜30mm程度である。従来の製法と異なり、この段階ではまだ活性炭化されていない。
【0021】
なお、製造のしやすさ等の理由からペレット状が作りやすいが、金型などを工夫すれば角柱など他の形状も可能である。そのため、後述の実施例では図3に示すような角柱に貫通孔を設けた後活性炭化した中空活性炭を一例試作し、その性能評価を行っている。
【0022】
図3(a)〜(c)は、図2のペレット状を角柱状に変更した場合の例を示している。図3(a)は成型工程後の斜視図であり(b)は正面図、(c)は断面図である。これらの図より、成型原料3は、全体が略角柱状であって一辺Sの正方形の底面に軸方向に沿って直径D2の貫通孔4が形成されている。柱の長さをLとすると、Lは概ね5mm〜30mm程度である。従来の製法と異なり、この段階ではまだ活性炭化されていない。
【0023】
ステップS2は、炭化・乾留工程である。この工程を行う目的は、ステップS1で得られた成型原料を活性炭化するためにまず原料をグルコース分解させるためである。これによって水素(H)及び酸素(O)その他の不純物を脱離して、緻密な炭素構造が得られる。炭化と乾留は厳密には異なる意味を持つが、共に酸素(O)を遮断した状態で一定時間毎に昇温する工程である点で共通するので、本明細書では両者を区別せず、「炭化・乾留工程」と表記する。
【0024】
ステップS3は、賦活工程である。この工程を行う目的は、ステップS2で炭化・乾留された成型原料に水(HO)を注入することで水性化反応を行うためである。これによって緻密な炭素構造から二酸化炭素(CO)の形で炭素が離脱し、多孔質の炭素構造が得られる。この工程は一般に賦活工程と呼ばれている。
【0025】
ステップS4は、篩い分け工程である。この工程を行う目的は、ステップ3で得られた原料を大きさや品質などの基準で篩い分けするためである。
【0026】
ちなみに、木片原料を出発材料とする従来の製造方法では、出発材料となる原料(例えば、ヤシガラや石炭など)を粉砕した後、篩い分けし、炭化・乾留した後、再度篩い分けをし、その後、賦活する。最後にもう一度篩い分けを行って製品が完成する。このように、工程が多くしかも篩い分け作業が3回もあるので、最終製品は原料の1/9乃至1/10の量となることが通常であった。これに対し、本実施形態の中空活性炭を製造する製造方法では、篩い分け工程はたった1回でよく、歩留まりが極めて高い。
【0027】
本実施形態の中空活性炭を製造する製造方法では、ステップS2及びステップS3の間に篩い分け工程が不要となるため、いずれも同一の反応炉で連続的に行うことができる。これは工程を大幅に簡略化させることに大きく寄与する。
【0028】
次に、具体的なヒートカーブについて説明する。このヒートカーブは後述する実施例で説明するサンプルを製造した際に用いたものである。
【0029】
図4は、ステップS2とステップS3の工程における加熱炉内の温度の時間経過を示すヒートカーブの一例である。横軸は経過時間、縦軸は炉内温度をそれぞれ示している。但し、厳密なものではなく、実際には温度制御装置の性能に依存する設定値とのズレは許容するものとする。
【0030】
この図に示すように、酸素(O)を遮断した状態で、約3時間かけて300℃まで昇温し、次に、300℃を3時間維持する。更に、1時間かけて400℃まで昇温し、400℃を3時間維持する。更に、2時間かけて600℃まで昇温し、3時間維持する。ここまでの工程が、ステップS2で説明した炭化・乾留工程である。
【0031】
従来はここで一旦篩い分けのために降温していたが、本発明ではそのまま温度を上げて賦活工程に入る。炭化・乾留工程の後、更に3時間かけて800℃まで昇温し、800℃に達した後、約28時間保温する。賦活工程中は一定間隔で水(HO)を注入する。これによって水性化反応が起こり、多孔質構造が得られる。
【0032】
なお、ヒートカーブはこれ以外のパターンも当然考えられるので、図4は本実施形態の中空活性炭を製造する製造方法の一例を示したものにすぎない。
【0033】
(実施例)
表1は、製造条件の異なる種々の活性炭サンプルについて、仕上がり形状、ベンゼン吸着量、強度、圧力損失を調べた結果を示している。なお、形状は以下の通りとした。
本発明の実施例として、
・ペレット状の活性炭に貫通孔を設けたもの(ペレット状中空炭)
・角柱状の活性炭に貫通孔を設けたもの(角状中空炭)
比較例として、
・ペレット状の活性炭(ペレット炭)
・ペレット炭に貫通孔を設けその内部に十字状のリブが形成されたもの(リブ付中空炭)
・薄片状のもの(破砕炭)
【0034】
表1に示す各サンプルA〜Lの詳細は、以下の通りである。
[粉末原料](本発明)
A オガ粉100%、成型原料の寸法が、底面外径D1=25mmφ、底面内径=10mmφ、長さL=25mmのペレット状中空炭
B オガ粉:竹粉=4:1(重量比)、成型原料の寸法が、底面外径D1=25mmφ、底面内径=10mmφ、長さL=25mmのペレット状中空炭
C オガ粉100%、成型原料の寸法が、底面外径D1=20mmφ、底面内径=8mmφ、長さL=20mmのペレット状中空炭
D オガ粉:竹粉=1:1(重量比)、成型原料の寸法が、底面外径D1=15mmφ、底面内径=6mmφ、長さL=15mmのペレット状中空炭
【0035】
[木片原料](本発明)
E 杉材を金型により加工し、成型原料の寸法が、底面外径D1=25mmφ、底面内径=10mmφ、長さL=25mmのペレット状中空炭
F ラワン材を金型により加工し、成型原料の寸法が、底面外径D1=12mmφ、底面内径=4mmφ、長さL=12mmのペレット状中空炭
G 白樺材を金型により加工し、底面が25mm×25mmの角柱状で底面内径=10mmφの貫通孔を設けた長さL=16mmの角状中空炭
【0036】
上記サンプルのうち、サンプルA〜Fの形状は概ね図2に示すペレット状中空炭、サンプルGの形状は概ね図3に示す角状中空炭であり、いずれも内径D2の貫通孔が設けられている。
【0037】
[比較例](従来例)
以下の比較例H〜Lはいずれも従来の製法で製造したものである。
H ヤシガラ活性炭を約4mm〜5mmの薄片状にしたヤシガラ破砕炭
I 仕上がり形状が約4mmφの石炭ペレット炭、貫通孔なし
J 仕上がり形状が約7mmφの石炭ペレット炭、貫通孔なし
K ヤシガラ活性炭粉末の粉末をバインダーで固めて造粒し、貫通孔を設けたペレット状中空炭(いわゆる「マカロニ炭(製品名及び登録商標)」)
L ヤシガラ活性炭粉末の粉末をバインダーで固めて造粒し、貫通孔と十字状のリブを設けたリブ付中空炭(いわゆる「マカロニ十字炭(製品名及び登録商標)」)
【0038】
(結果)
【表1】

【0039】
なお、表1における「形状」は、ペレット状中空炭、角状中空炭、ペレット炭、リブ付中空炭、破砕炭の概略形状を示している。また、「仕上がり形状」とは、本発明においては成型原料を活性炭化した後の最終形状の寸法を、比較例においては活性炭化された最終製品を篩い分けして得られた形状の寸法を指す。また、ベンゼン吸着量は吸着性能を表す指標であり、数値が大きいほど吸着性能が高いことを示す。また、強度とは、木屋式硬度計で測定した測定値であり、数値が大きいほど強度が大きいことを示す。
【0040】
図5は、種々の活性炭の圧力損失を調べたグラフを示している。サンプルは表1のA、D、H、I、J、Lとした。このグラフは両対数で表示され、横軸はガス線速度LV[m/s]、縦軸は圧力損失ΔP[kPa:HO/m・Bed]を表している。表2は、図5から読み取ったガス線速度LVの大きさが、0.1、0.3及び1[m/s]の3点における圧力損失の値を示している。
【0041】
【表2】

【0042】
(評価)
−吸着性能について−
吸着性能についてはラワン材(サンプルF)が良好であり、白樺(サンプルG)が若干低かった。また、粉末原料についていえば、竹粉を一定量加えるとやや吸着量が増加する傾向が見られたが、全体的にそれほど顕著な差異はみられなかった。もっとも、従来の製法で作られたサンプルKやサンプルLより、吸着性能が高いことが分かった。
【0043】
−強度について−
粉末原料については原料構成比の等しいものの比較から、サイズが大きいものほど強度も大きくなる傾向が明らかとなった。また、オガ粉と竹粉の混合比の比較から、吸着量は竹粉を加えるほど増加するが、反面強度が低下することも明らかとなった。これは、オガ粉にはバインダーとしての働きを持つリグニンが含まれているが、竹粉にはリグニンが殆ど含まれていないためと考えられる。換言すると、粉末原料については、強度を高めるためにリグニンが有効であることが分かる。この意味において、粉末原料として可能なものは、リグニンを含む有機物の粉末(これには、「粉末リグニン」を混合した粉末も含まれる。)が適用できる。具体的には、オガ粉、竹粉、オカラ、コーヒーかすなどに必要な場合は粉末リグニンを添加したものである。その他の可能性としては、堆肥や製紙スラッジなども有効である。実験で試作したサンプルA、C、D及びGについては、いずれも再生利用可能な程度に十分な強度を備えていた。
【0044】
−圧力損失について−
図5及び表2によると、風量を大きくするほど圧力損失が大きくなる傾向が読み取れるが、特に試料1(オガ粉100%)及び試料2(オガ粉:竹粉=1:1)及びリブ付中空炭(それぞれ、サンプルA、D、Lに対応)は、いずれも圧力損失が極めて小さいことが読み取られる。
【0045】
−まとめ−
以上の実験により、吸着性能と強度と圧力損失という3つの評価基準のそれぞれが数値で表されたが、これらの全てが平均的に良好だったのは、サンプルA、C、D及びGであった。
【0046】
(中空活性炭の実施例)
活性炭化後に形状を加工することは殆ど不可能であるため、従来は完成した活性炭を形状・寸法毎に篩い分けして分別し希望の形状を得ていたが、この方法は、歩留まりが非常に低かった。これに対し、杉や檜などの木片原料自体を出発材料とする場合、活性炭化する前の状態の木を加工するため、加工の自由度は非常に大きく、よって、様々な形状が可能である。
【0047】
図6は、本実施形態の中空活性炭の実施例について説明するための図であり、成型原料の実施態様を例示している。すなわち、図6(a)のように、ペレット状の木片原料5aに複数の貫通孔6aを設けたもの、図6(b)のように、球状の木片原料5bに複数の貫通孔6bを設けたもの、図6(c)のように、ハート型の木片原料5cに複数の貫通孔6cを設けたもの、などが考えられる。その他、図示を省略するが、星形など多くのパターンが考えられる。
【0048】
このように木片原料を任意に加工してそこから炭化・乾留工程を行えば、任意の形状の中空活性炭を製造することができる。特に、複数の貫通孔を設けることにより、圧力損失が一層小さくなることはもちろん、更に、賦活時間が短縮化されるため寸法の減少が小さくなるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本実施形態の中空活性炭は、吸着効率が高く、圧力損失が小さく、かつ、強度の大きい、理想的な活性炭であり、以下のような産業上の利用可能性を備えている。
【0050】
(1)脱臭風量の大きい大型脱臭装置への利用
既設の脱臭装置に充填されている活性炭を本発明に係る中空活性炭に置き換えると設備はそのままで風量が大幅に増大する。従来は風量を増大させる必要が生じた場合はもう一基増設しなければならなかった。
(2)家庭用の分野において、居室用の脱臭機器やエアコンなどの吹き出し口に装着する脱臭カートリッジとしての利用
(3)排ガス対策を可能にした屋上排気ファンなどへの利用
【0051】
本実施形態の中空活性炭は、従来の吸着量及び圧力損失を維持しながら、しかも、繰り返し何度も再生できる強度を有しているため、ランニングコストを抑えることができる。従って、本発明が実施された場合の産業上の利用可能性は極めて大きい。
【符号の説明】
【0052】
1、3、5 成型原料
2、4、6 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を備えた成型原料を同一反応炉内において連続的に炭化・乾留及び賦活することにより得られたことを特徴とする中空活性炭。
【請求項2】
前記成型原料は、リグニンを含む有機物の粉末原料からなることを特徴とする請求項1記載の中空活性炭。
【請求項3】
前記粉末原料は、木、竹、オカラ、コーヒーかす、堆肥、製紙スラッジから選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項2記載の中空活性炭。
【請求項4】
前記成型原料は、木片原料からなることを特徴とする請求項1記載の中空活性炭。
【請求項5】
前記木片原料は、杉、檜、ラワン材、ゴムの木、竹、ラミン、桐から選択される少なくとも一つから構成されることを特徴とする請求項4記載の中空活性炭。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−180273(P2012−180273A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−107105(P2012−107105)
【出願日】平成24年5月8日(2012.5.8)
【分割の表示】特願2007−190660(P2007−190660)の分割
【原出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(307027131)株式会社一芯 (4)
【Fターム(参考)】